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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-03-01

コレステロールの神話

Statins, Cholesterol, and The Real Cause of Heart Disease [LINK]

【海外記事紹介】アメリカだけで年間約250億ドルもの費用が投じられている「スタチン(コレステロール低下薬)」ですが、その根拠となる「コレステロール仮説」が実は医学界最大の詐欺の一つである可能性が浮上しています。心臓病は依然として死因のトップであり、数十年間にわたるスタチンの普及が、国民の健康を劇的に改善したとは言い難いのが現状です。近年の研究では、コレステロール値を下げても心臓病のリスクは必ずしも減少しないことが示されています。それにもかかわらず、製薬会社から多額の報酬を得ている専門家たちによって、より多くの人々にスタチンを処方するようガイドラインが書き換えられ続けてきました。

この記事では、アンセル・キーズ氏が1960年代に提唱した「脂肪悪玉説」の不備を指摘しています。キーズ氏は自身の理論に都合の良いデータのみを抽出し、砂糖業界からの賄賂によって、本来の元凶である砂糖から脂肪へと責任を転嫁させたことが内部文書から明らかになっています。実際、コレステロール値が低いほど死亡率が高まるという皮肉な研究結果も存在しますが、こうした事実は長年無視されてきました。現在の医学界では、スタチンに疑問を呈する者は「スタチン否定論者」として攻撃される、一種のキャンセル文化が形成されています。

スタチンの副作用についても深刻な懸念が示されています。利用者の約20%が何らかの障害を負っていると推定され、筋肉痛、疲労感、認知機能の低下、糖尿病の発症、さらには腎不全や肝機能障害など、多岐にわたる被害が報告されています。医療現場では、これらの症状を「思い込み(ノセボ効果)」や「不安」として片付ける傾向がありますが、これはコロナワクチンの副反応が軽視された構図と酷似しています。

真の心臓病の原因として注目されているのが、マルコム・ケンドリック博士の「凝固モデル」です。心臓病の本質はコレステロールが動脈に詰まることではなく、汚染物質、ストレス、タバコ、鉛への曝露などによって血管の内膜が繰り返し損傷することにあります。体はその損傷を修復しようと血栓(かさぶた)を作りますが、その層が重なることで「プラーク」が形成されます。真の予防には、高価な新薬を売ることよりも、大気汚染の改善やストレス管理、血管内皮の保護が重要ですが、これらは特許化して利益を生むことができないため、研究資金が投じられにくいのが実情です。私たちは今、マーケティング神話から目を覚まし、利益優先の医療政策を正していくべき転換点に立っています。 

現代の秘密工作機関

NED Leader Cut off in Congress After Boasting of ‘Deploying’ 200 Starlinks to Iran amid Violence - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】全米民主主義基金(NED)のデイモン・ウィルソン会長が、2月24日に行われた米下院の監視聴聞会において、先月のイランでの混乱の最中に約200台の「スターリンク」端末の配備と運用を支援していたことを明らかにしました。ウィルソン氏がこの機密性の高い支援について口にした直後、ロイス・フランケル下院議員が「それについては話さないほうがいい」と遮る場面があり、米国による情報工作の一端が垣間見えました。この記事は、民主主義の促進を掲げる政府出資の非営利組織が、実際には他国の政権転覆を狙う「現代の秘密工作機関」として機能している実態を告発しています。

スターリンクは、イーロン・マスク氏率いるスペースX社が提供する衛星インターネットシステムですが、イラン国内のデジタル封鎖を突破するための武器として利用されています。ウィルソン氏は、NEDが長年にわたって行ってきた投資が、情報の流出入を可能にする安全な通信網を確保したと誇らしげに語りました。ニューヨーク・タイムズ紙などは、これらが「草の根の活動家」によって密輸されたと報じていますが、実際にはNEDがそのネットワークの資金調達と調整を担っていたことが浮き彫りになりました。イラン当局は、1月の暴動の際に数千台のスターリンク端末を無力化することで事態を鎮静化させたとされています。

NEDの歴史を振り返れば、1982年に当時のCIA長官の主導で設立され、かつてCIAが秘密裏に行っていたNGOやメディアへの支援を引き継いだ組織であることがわかります。ウィルソン氏は、イランが現在NEDにとって世界最大かつ最優先のプログラムであることを認め、2022年の「女性、生命、自由」運動においても、一地方の事件に過ぎなかったマフサ・アミニさんの死を世界的な物語へと仕立て上げ、イラン国内に送り返す役割を果たしたと主張しました。また、現在の混乱に関しても、NEDが支援する「人権ネットワーク」を通じて、死者数を大幅に誇張した情報を国際メディアに提供し、反政府感情を煽る情報戦を展開しています。

さらに聴聞会では、イラン以外でもボリビアでリチウム資源がロシアの手に渡るのを防いだことや、ニカラグアで反政府的な報道ネットワークを訓練していることなど、世界各地での介入実績が語られました。ウィルソン氏は、イラン政府が中東の代理勢力支援に資源を浪費したために国内の干ばつに対処できないといった「物語」をイラン国民に共有し続けてきたことも自認しています。こうした活動は、表向きは自由の促進を謳いながら、実態は米国の国益に沿った政権転覆工作であり、その手法はかつての秘密工作を公然と行う「ダークマネー」グループのそれへと変貌を遂げているのです。

フィリピンと台湾有事

The Fatal Costs of the Philippines-Taiwan War Scenario - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】フィリピンのマルコス・ジュニア政権が推進する対米軍事協力の強化が、将来の台湾有事においてフィリピン経済に致命的な代償を強いるリスクについて、経済学者のダン・スタインボック氏が警告しています。現在、フィリピン政府は近代化の名のもとに、米軍のミサイルシステム配備や共同演習を加速させていますが、これが「繁栄と安全」をもたらすという公式見解に対し、専門家は極めて冷徹なシミュレーションを提示しています。

スタインボック氏は、台湾海峡で武力衝突が起き、フィリピンが米軍に基地や補給などの兵站支援を提供した場合、国際法上、フィリピンは事実上の「共同参戦国」と見なされると指摘します。その結果、中国による報復対象となり、経済的な「地政学的分断」が非線形的に加速します。第一のシナリオである数ヶ月の短期戦であっても、南シナ海の船舶保険料は跳ね上がり、主要な港湾のリスクプレミアムが高騰します。投資家はフィリピンを危険視して資本を国外へ逃避させ、通貨ペソは暴落、観光業や中国向け輸出は完全に崩壊します。これだけでも、国内総生産(GDP)は一時的に6%から10%失われると予測されています。

さらに深刻なのは、第二のシナリオである3年から5年に及ぶ長期的な封鎖や紛争の継続です。この場合、フィリピンは世界のサプライチェーンから「恒久的に」排除されるという構造的な悪夢に見舞われます。半導体や電子機器のグローバル・バリューチェーンは破壊され、物流ルートはフィリピンを完全に迂回するように再設計されます。これは一時的な停滞ではなく、2050年までに本来の成長予測からGDPが43%も押し下げられることを意味します。その姿は、2022年以降のウクライナにも例えられます。

結論として、台湾有事への深入りは、フィリピンが長年描いてきた「ASEANの成長株」という夢を終わらせることになります。2035年までにおよそ10年から15年分の開発の遅れが生じ、2050年までには一世代分の豊かさが失われる計算です。かつて期待された経済的キャッチアップの約束は消え去り、フィリピンは「道を見失った成長物語」の典型例として歴史に刻まれることになりかねません。軍事的な同盟強化が、国民を中所得国の罠に固定し、貧困と格差を永続させる構造的な足かせになるという皮肉な現実を、著者は強く訴えています。

ウクライナ和平の方法

How To Bring Peace to Ukraine - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】戦争を終わらせることには常に緊急性が伴いますが、ウクライナにおける戦争を終結させる必要性は今、かつてないほど高まっています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、トランプ政権が交渉による終結の期限を6月に設定したと述べており、NATOのルッテ事務総長も、この悲惨な戦争を終わらせるには困難な選択が必要になるとウクライナ議会で語りました。ロシア側でも、トランプ氏に対するプーチン大統領の忍耐が限界に近づく一方で、ロシア国内からはより決定的な勝利を求める圧力が強まっています。こうした焦燥感の中、戦争初期のイスタンブールでの対話以来、初めてウクライナとロシアの交渉担当者が直接言葉を交わしています。

和平を実現するためには、まず戦争の歴史的背景を認め、双方の安全保障上のニーズに対処し、互いの譲れない一線であるレッドラインを尊重しなければなりません。どちらの側も望むもの全てを手に入れることはできませんが、双方が「核心的な目標を達成した」と国民に説明できる妥協点を見出す必要があります。ウクライナは、かつての最大主義的な約束から一歩引き、NATO加盟の事実上の断念や、クリミアやドンバスの奪還が困難であることを認識し始めています。一方のロシアも、ウクライナが外部から安全保障の提供を受けることや、EUへの加盟を認めるなど、重要な譲歩を見せています。

交渉において最も困難なのは安全保障と領土の扱いです。ロシアが戦争に踏み切った大きな理由はNATOの拡大阻止でした。したがって、ウクライナがNATOに加わらないという保証なしにロシアが矛を収めることはないでしょう。その代わりに、ウクライナはEU加盟国としての防衛援助義務を担保に、強力な軍事力と自衛権を維持する道を探っています。領土については、ロシアはドンバス地方のロシア系住民の保護を外交的に確定させたい考えです。もしウクライナがドンバスの支配権を事実上認める代わりに、独立した主権国家として元の領土の80パーセントを維持し、欧州の一員として生き残ることができれば、それは1940年代にソ連と戦い抜いて繁栄を勝ち取ったフィンランドのような成功と言えるかもしれません。

経済面では、凍結されたロシア資産をウクライナの復興に充てることについても、制裁解除と引き換えにロシア側が妥協する兆しがあります。戦争に勝者はいません。何十万人もの命が失われた今、外交によって避けられたはずの悲劇をこれ以上繰り返さないためにも、双方が最後のハードルを乗り越える勇気が求められています。感情的な正義の追求よりも、冷徹な現実主義に基づいた合意こそが、ウクライナの生存とヨーロッパの安定をもたらす唯一の道なのです。

帝国主義の侵略戦争

US-Israeli war on Iran is NOT about nuclear weapons. It's about imperialism. - Geopolitical Economy Report [LINK]

【海外記事紹介】アメリカとイスラエルによるイランへの軍事行動の本質は、核兵器拡散の防止ではなく、純粋な「帝国主義」による侵略戦争である。ジャーナリストのベン・ノートン氏は、2月28日早朝にトランプ大統領が発表した「イランにおける大規模戦闘作戦」の開始を受け、このように断じました。テヘランへの猛烈な爆撃が続く中、トランプ氏はイラン軍に投降を迫り、反体制派に対して「政府を乗っ取るチャンスだ」と公然と政権転奪(レジーム・チェンジ)を呼びかけています。ネタニヤフ首相もこれに同調し、イランに「自由と平和」をもたらすと主張していますが、皮肉にも同首相自身はガザでの人道に対する罪で国際刑事裁判所から逮捕状が出ている身です。

ワシントンとテルアビブが掲げる「イランの核兵器保有を阻止するための先制攻撃」という口実は、国際法に照らしても、客観的な事実に基づいても、全くのナンセンスです。イランは2015年の核合意(JCPOA)を遵守していましたが、2018年にこれを一方的に破棄したのはトランプ氏自身でした。さらに、融和的な姿勢を見せていたイランのペゼシュキアン大統領に対し、アメリカ側は「偽りの交渉」を隠れ蓑にして、昨年6月に続き今回も突然の爆撃を仕掛けました。オマーンの仲介による交渉で「平和合意は間近だ」と発表されたわずか数時間後に大規模な爆撃が開始された事実は、アメリカとイスラエルに最初から平和の意思がなかったことを如実に物語っています。

この戦争の真の目的は、1979年のイラン革命によって失われた中東における支配権を奪還することにあります。アメリカの巨大企業と帝国主義的な戦略家たちは、イランのみならず地域全体の豊富な石油、天然ガス、そして重要鉱物資源をコントロール下に置くことを画策しています。また、中国へのエネルギー供給路を断つことも重要な狙いの一つです。元欧州連合軍最高司令官のウェズリー・クラーク氏がかつて暴露したように、イランは国防総省が長年計画してきた「転覆すべき7カ国」のリストに残された最後の国家なのです。

アメリカは現在、1953年のCIAクーデターで擁立された旧シャハ(国王)の息子、レザ・パフラヴィ氏を傀儡としてテヘランに据えようとしています。米政府系メディアはイラン国内に向けてパフラヴィ氏を支持するプロパガンダを流し、同氏もまたSNSでトランプ氏を称賛し、現政権の崩壊を煽っています。自らを「平和の大統領」と称する億万長者のトランプ氏は、その実、最も過激なネオコン(新保守主義者)の鷹派たちが抱き続けてきた野望を、最も暴力的な形で実行に移しているのです。

イラン攻撃の不都合な真実

Wars and Rumors of Wars - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】アメリカがイスラエルとともに、脅威をもたらしていないイランに対して一方的な攻撃を開始しました。元CIA工作員で安全保障の専門家であるフィリップ・ジラルディ氏は、この「選択された戦争」が中東全域を巻き込み、さらには核戦争へと発展しかねない致命的な誤りであると警告しています。土曜日の早朝、ドナルド・トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」を通じ、イランのミサイル産業を完全に破壊し、海軍を殲滅すると宣言しました。この軍事行動は、イランの兵器を最大の脅威と見なすイスラエルからの強い要請によるものであることは明白です。

トランプ氏は「勇敢なアメリカの英雄たちの命が失われるかもしれない」と述べ、自国兵士に犠牲が出ることを認めつつも、自身の家族は兵役を逃れてきたという皮肉な現実があります。ジラルディ氏は、平和の使者を自称しながら、ウクライナやガザでの紛争を助長し、ベネズエラやキューバを脅かし、今またイランとの戦争に突き進む大統領の姿勢を「狂気」と表現しています。トランプ氏が主張する「イランの核開発」や「米国を攻撃可能なミサイルの保有」といった開戦の口実は、米情報機関も否定しており、かつてのイラク戦争時に捏造された「大量破壊兵器」の嘘と同様の、惨劇を正当化するための作り話に過ぎません。

この記事が最も深く抉り出しているのは、アメリカの政治階級がイスラエルのネタニヤフ政権や、一部のユダヤ系大富豪による資金提供によって完全に支配されているという不都合な真実です。イスラエルにとって、アメリカは政治的・資金的・軍事的に搾り取るための「使い捨ての資源」に過ぎないと著者は述べています。さらに、ジェフリー・エプスタインをめぐる疑惑の背後にもイスラエル情報機関の影があり、エリート層を操作する工作の一環であった可能性が指摘されていますが、米議会はその核心を突く勇気を持ち合わせていません。

結局のところ、この戦争で犠牲になるのは戦地に送られる若者たちであり、アメリカ自身の繁栄や国際的な信用は失墜するばかりです。ジラルディ氏は、イスラエルとの異常なまでの「特別な関係」を断ち切り、他国を脅迫や武力で屈服させるのではなく、世界中の国々と敬意を持って接する外交に立ち返るべきだと訴えています。多くのアメリカ国民も、他国との平和を望んでおり、イランからの撤退を支持するはずだと結論づけています。

合法とは何か?

A Proper Explanation of the Detestable Terms: 'Legal' and 'Illegal' - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】私たちが日常的に使っている「合法(リーガル)」と「違法(イリーガル)」という言葉の真の意味について、評論家のゲーリー・バーネット氏が批判を投げかけています。氏によれば、これらの言葉は国家という怪物が大衆を威嚇し、支配するために作り出した忌まわしい道具に過ぎません。現代社会の大多数の人々は、自分の言動や所有物、居場所、さらには自分の体に何を摂取するかまで、一握りの「政治家」という人間に決定権を委ねてしまっています。

バーネット氏は、人類の多くが「自分は国家の奴隷であり、国家にはルールを作る権利がある」という誤った前提のもとで生きていると指摘します。しかし、国家を構成しているのもまた同じ人間であり、彼らが他者より優れているわけでも、正当な権利を持っているわけでもありません。彼らが主張する「法」とは、実際には自分たち以外の全員を縛るために勝手に作り上げられた、恣意的な「許可証」のようなものです。つまり、「合法」とは「政府が自由な人間に許可したこと」を意味し、「違法」とは「許可しないこと」を指しているに過ぎないのです。

本来、社会において重要な基準は「合法か違法か」ではなく、自然法に基づいた「正しいか間違っているか」であるべきです。他人に暴力を振るわない、他人の財産を傷つけない、他人の自由を侵害しないという「非侵害の原則」さえ守られていれば、それ以外の「法」など存在する必要はありません。殺人や盗み、拷問といった真の悪は、国家など介さずとも主権を持つ個人が私的な自衛や解決を通じて対処できるはずのものです。

ところが、現在の米国をはじめとする国家は、数百万にも及ぶ規制、制限、命令を積み上げ、世界で最も腐敗した状態にあります。数えきれないほどの法律が存在すること自体が、その国家の不健全さを証明しています。これら膨大な「法」から逃れられるのは、政治家やその執行官、そして彼らを操る一部の富裕層やオリガルヒだけです。残りの一般市民は、単なる支配の対象として扱われています。

バーネット氏は、自らを「自由」だと信じながら国家の顔色をうかがい、盲目的に従う大衆の臆病さと無関心を厳しく批判しています。真に自由な人間を支配することは誰にもできません。「合法」や「違法」という奴隷の言語を捨て、不当な支配に対して常に不服従の精神を持つことなしに、真の自由はあり得ないのです。

中央銀行とお金の劣化

Honest Money in Dishonest Hands - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】経済学者のゲーリー・ノース氏の著書『正直なお金』をもとに、現代の通貨システムがいかに「正直さ」を失い、一部のエリートに利益をもたらす仕組みへと変質してしまったかを解説します。

そもそもお金とは、孤島に一人でいるロビンソン・クルーソーにとっては無価値なものです。彼にとって金(ゴールド)は重いだけで、沈みゆく船から持ち出すべきは道具であり、金ではありません。しかし、他者との交換が発生する社会においては、貨幣は最も交換しやすい媒体として自然発生しました。歴史的に、市場が選んだ「正直なお金」は金や銀でした。これらは市場によって供給量が決まるため、恣意的な操作ができません。

しかし、現代の通貨供給を決めているのは市場ではなく、中央銀行のFRBです。著者は、私たちがパンや靴の価格を政府に決めてほしくないのと同様に、なぜ全ての価格の基準となる「通貨の供給量」を少数の人間に委ねているのかと問いかけます。

この体制下で行われているのが「インフレ」という名の偽造行為です。民間人がお札を刷れば犯罪ですが、政府や銀行が何もないところから通貨を作り出すのは、道徳的な仮面をかぶった「公認の偽造」に他なりません。ある実業家が偽札を刷れば刑務所行きですが、政府機関で紙幣を刷り続ける役人は年金をもらって引退し、経営危機に陥った銀行家は中央銀行から資金を融通してもらうことでボーナスを受け取ります。この新たな資金が銀行システムを通じて何倍にも膨らみ、物価上昇という形で一般市民の購買力を奪っていくのです。

インフレは「累進所得税」の強力な加速装置としても機能します。かつて所得税が導入された1913年当時、税率も低く対象もごく一部の富裕層だけだったため、国民は誰も気に留めませんでした。しかし、インフレによって名目上の給与が上がると、実質的な生活水準は変わらないのに、国民はより高い税率の区分へと押し上げられてしまいます。

FRBの本来の目的は「銀行パニックを防ぐこと」とされていますが、設立以来、世界恐慌を含む10回以上の不況を経験してきました。結局のところ、FRBの真の役割は政府の借金を肩代わりし、大銀行や政治家に利益を誘導することにあると著者は断言しています。「正直なお金」を取り戻すためには、中央銀行による独占を廃止し、市場による通貨の選択と管理を復活させる必要があるのです。

銀は戦略的資産に

Silver, Strategy, and a Structural Deficit [LINK]

【海外記事紹介】銀(シルバー)市場が歴史的な転換点を迎えています。元大統領顧問でコラムニストのチャーリー・ガルシア氏は、銀がもはや単なる「貴金属」ではなく、国家安全保障に直結する「戦略的資産」に変貌したと指摘しています。最大の転換点は2026年1月1日、中国が精製銀の輸出に対して新たなライセンス制度を導入したことです。これにより、世界の精製銀供給の6割から7割を握る中国が事実上の輸出制限をかけられるようになり、世界の供給網に構造的な断絶が生じています。

ガルシア氏によれば、銀市場は2021年から5年連続で構造的な赤字に陥っており、その累積不足量は約8億オンスに達しています。これは世界全体の年間鉱山生産量に匹敵する規模です。需要の構成も劇的に変化しており、10年前には5割程度だった産業用需要がいまや全体の6割を占めています。特に太陽光発電パネルや電気自動車(EV)、AIデータセンター、5Gインフラといった「エネルギー転換」と「デジタル基盤」に不可欠な素材となっており、これらは景気に左右されにくい「必須の購入」である点が特徴です。

供給面での課題は、銀の7割から8割が銅や金などの副産物として生産されていることです。銀価格が上がっても、主産物である銅や金の採掘計画が変わらなければ、銀の供給は自動的には増えません。また、ガルシア氏は防衛産業における銀の重要性にも言及しています。最新鋭のB2爆撃機やレーダー妨害技術、AI兵器などの高度な電子機器には銀が多用されており、地政学的緊張が高まる中、その価値はさらに高まっています。

一方で、市場価格は長年の「ペーパー・トレード(紙上の取引)」や中央銀行による通貨価値の操作によって抑え込まれてきたと氏は主張します。過去20年間、米ドルは年平均で約7%ずつ価値を失ってきたと推計されますが、現物資産である銀は未だに過小評価されています。ガルシア氏は、現在の供給不足という物理的な現実がペーパー市場の圧力を上回れば、銀価格は1オンスあたり200ドルのレンジにまで到達すると予測しています。

また、FRB(米連邦準備理事会)の次期議長にケビン・ウォーシュ氏が指名されたことについても触れています。ウォーシュ氏はAIによる生産性向上がインフレを抑制すると主張していますが、38兆ドルに達した米連邦債務と財政赤字を前に、FRBが長期金利を完全に制御することは困難だとの見方を示しました。

「平和の大統領」の裏切り

Trump Starts a Major Regime-Change War with Iran, Serving Neoconservatism and Israel [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領が、自身の政治運動を通じて10年にわたり否定し続けてきた「体制転換のための戦争」を、ついにイランに対して開始しました。これはイスラエルのネタニヤフ首相やアメリカのネオコン(新保守主義者)たちが長年夢見てきた外交目標の実現であり、トランプ氏が掲げてきた「反ネオコン」の誓いを真っ向から裏切るものです。土曜日の早朝、アメリカとイスラエルはテヘランを含むイランの各都市への大規模な爆撃を開始しました。トランプ氏はこれを「オペレーション・エピック・フューリー(壮大な怒り作戦)」と名付け、イランを「テロ支援国家」や「悪の枢軸」と呼んで攻撃を正当化していますが、その言説はかつてのジョージ・W・ブッシュ政権が用いた使い古されたスローガンの焼き直しに過ぎません。

今回の戦争は、昨年6月に核施設を標的に行った限定的な攻撃とは質が異なります。9300万の人口を抱える大国に対し、政権打倒を目的とした無制限かつ継続的な破壊工作が行われようとしています。トランプ氏はわずか8カ月前にイランの核プログラムを「完全に壊滅させた」と宣言していた事実を棚に上げ、再び「壊滅」や「全滅」といった過激な言葉を並べています。出口戦略も明確な任務説明もないまま、イランの弾道ミサイル網や海軍を根絶やしにすると息巻いているのです。さらに、兵役忌避の過去を持つ大統領でありながら、多くのアメリカ兵の命が失われる可能性を「戦争には付き物だ」と冷淡に突き放しました。

  ジャーナリストのグレン・グリーンウォルド氏は、トランプ氏とその陣営がいかに巨大な欺瞞に満ちているかを鋭く批判しています。選挙戦では「ハリスへの投票は戦争への投票であり、トランプへの投票は戦争を止めるためのものだ」という宣伝を繰り返してきましたが、現実はその真逆となりました。議会の承認も得ず、憲法を無視して独断で開始されたこの戦争は、米国民の利益ではなく、アデルソン夫妻のような大口献金者やイスラエルの利益を最優先した結果だと指摘されています。かつて他人の子供を戦地に送り込む政治家を「社会病質的な戦争屋」と罵ったトランプ氏自身が、今やその象徴となっているのです。この無謀な選択がもたらす破壊の規模は計り知れず、中東地域に巨大な権力の空白を生み出し、今後何十年にもわたってアメリカのリソースを浪費し続けることになるでしょう。

2026-02-28

米株に迫るリスク

The roof and beams are creaking - Pretiorates’s Thoughts [LINK]

【海外記事紹介】金融分析サイト「プレティオレーツ」が最新レポートで、一見堅調に見える米国株式市場の内部崩壊が始まっていると警鐘を鳴らしています。レポートによれば、現在の米国市場は「内側から腐り始めたリンゴ」のような状態にあります。表面上の株価指数は維持されているように見えますが、その実態を詳細に分析すると、かつての主役であった「マグニフィセント・セブン」などの巨大IT株やソフトウェア株から、静かに、しかし着実に資金が流出していることがわかります。特にソフトウェア株指数は、2025年末からすでに30%以上も下落しており、安値拾いをするには時期尚早だと警告しています。

市場を揺るがす大きな要因の一つが、アメリカ最高裁による輸入関税の違法判決です。トランプ政権は1974年通商法122条を発動し、議会の承認なしに150日間限定で関税を維持する代替策を講じましたが、これはあくまで一時しのぎに過ぎません。市場はこれまで「関税によって貿易赤字が減り、国債発行が抑えられる」というシナリオを織り込んで安心しきっていたため、この法的な不確実性は投資家の心理を著しく悪化させています。さらに、最新の経済データも強気派に「酸素」を供給する内容ではなく、市場全体が息切れを起こし始めているのが現状です。

さらに深刻なのが地政学リスクです。レポートは、中東のイラン情勢が極めて危険な段階にあると指摘しています。ホルムズ海峡は世界の石油供給の約20%、さらにはLNG(液化天然ガス)市場の約20%が通過する急所です。米国が中東地域で軍事力を増強する中、イランの背後にはロシアや中国の影があり、既存の防御システムでは防ぎきれない超音速ミサイルの脅威も無視できません。それにもかかわらず、石油市場がまだこのリスクを価格に反映していないことは驚きであり、軍事的緊張が高まれば、海峡が物理的に封鎖されずとも、船主が通航を拒否することでエネルギー供給が止まる恐れがあります。

すでに金や銀などの貴金属市場は、これらのリスクを敏感に察知して価格上昇という形で反応し始めています。一方で、楽観視を続けてきた株式市場や石油市場にも、いよいよ調整の波が押し寄せようとしています。建物全体が崩壊し始める前に、外から静観する準備ができているか。レポートは、投資家に対して今まさに「最初のドミノ」が倒れようとしている現実に目を向けるよう促しています。

大手銀、ゴールドにひれ伏す

Even Banks Now Bow to a Golden Master [LINK]

【海外記事紹介】貴金属投資の専門家マシュー・ピーペンブルグ氏が、かつては「アンチ・ゴールド」の筆頭格だった大手銀行までもが、今や金という「絶対的な主人」にひれ伏し始めたという、パラダイムシフトを報告しています。2025年、金価格は53回も史上最高値を更新し、年間で55%も上昇しました。当初、これはITバブルや仮想通貨のような一過性の熱狂に過ぎないと冷笑する声もありましたが、2026年に入り、その認識は覆されています。

長年、中央銀行や大手銀行は、米ドルという「紙の王国」を守るために、意図的に金の価値を過小評価してきました。金の上昇はドルの弱さを露呈させるため、彼らにとっては不都合な真実だったからです。しかし、世界全体の債務が354兆ドルを超え、アメリカの公的債務も38兆ドルに達する中、インフレという熱にさらされた紙幣は「溶けゆく氷」のようにその購買力を失っています。もはや銀行も、この現実を隠し通すことはできなくなりました。

特筆すべきは、ウォール街の巨人たちの驚くべき「告白」です。かつて貴金属の価格操作で罰金を受けたこともあるモルガン・スタンレーは、従来の「株60:債券40」という投資の黄金比を捨て、債券の半分を金に振り向ける「株60:債券20:金20」という大胆な戦略を推奨し始めました。さらにゴールドマン・サックスは2026年末の予測を5400ドルとし、JPモルガンに至っては6300ドルを「基本シナリオ」に据え、状況次第では8500ドルまで急騰する可能性があると明言しています。

銀行がこれほど強気に転じた背景には、取引所であるコメックス(COMEX)での現物不足があります。価格を抑え込もうにも、保管庫から現物の金や銀が、中国やインドなど実物を求める世界へと流出し続けており、価格を操作する「弾薬」が尽きかけているのです。

ピーペンブルグ氏は、これは単なるブームではなく、歴史が繰り返してきた「悪い金(紙幣)」が「良い金(実物資産)」に駆逐されるプロセスだと指摘します。一般の投資家がようやく金の重要性に気づき始めた今、まだポートフォリオの1%未満しか金を持っていない世界中の資金が流入すれば、価格の上昇余地は計り知れません。銀行すらもドルへの信頼を失い、金に救いを求め始めた今、私たちはマネーの歴史的な転換点に立ち会っているのです。

金採掘に関心再燃

A Story About Digging Money Out of the Ground and a Dumb Finance Professor [LINK]

【海外記事紹介】金価格が1オンスあたり5000ドル前後という歴史的な高値で推移する中、アメリカでは今、ゴールドラッシュを彷彿とさせる「金採掘」への関心が再燃しています。米紙USAトゥデイが報じた特集記事をもとに、現代の金事情と経済の本質について紐解いてみましょう。

コロラド州の川で長年砂金を掘り続けているケビン・シンゲル氏は、高層ビルを遠目に眺めながら、これまでに数万ドル相当の金を収集してきました。しかし、彼は「1万ドルの塊が見つかるわけではなく、歩道に落ちている10円玉を拾い集めて、ようやくランチ代になるようなものだ」と、その厳しさを語っています。

実は、この「手に入れるのが難しい」という性質こそが、金が本物のお金として機能するための重要な特徴なのです。政府が勝手に印刷して権力を拡大できる不換紙幣とは異なり、金は物理的な制約によって政府の肥大化を自然に抑制します。20年前に約6000ドルで10オンスの金を買った人は、現在、その金で新車を買うことができます。20年前なら6000ドルで中古車を買うのが精一杯だったことを考えると、車が高くなったのではなく、紙幣の価値が下落し続けていることが分かります。人々が冷たい川に浸かってまで砂金を追い求めるのは、私たちが日常使っているドルや円という通貨が、水で薄められた牛乳のように、際限のない増刷によってその価値を失い続けているからに他なりません。

一方で、この記事には主流派のファイナンス教授による「なぜ経済が不安な時に金を買うのか理解できない」というあざ笑うようななコメントも紹介されています。教授は「恐怖心に突き動かされているだけだ」と切り捨て、金よりも企業の株式に投資すべきだと主張します。しかし、持続不可能な国家債務、止まらないインフレ、そして株価のバブルといった現実を直視すれば、どちらが「愚か」かは明白です。長年、主流派の金融アドバイザーは金を敬遠するよう宣伝してきましたが、最近では大手証券会社の幹部ですら、ポートフォリオの2割を貴金属に割り当てるべきだと提言し始めています。

結局のところ、金は数千年にわたり、その価値を維持し続けてきた唯一の「真のお金」です。私たちが手にしている紙幣の購買力が日々溶けていく中で、自分の資産をどう守るべきか。砂まじりの砂金を一粒ずつ集めるような地道な視点こそが、現代の不透明な経済を生き抜くための鍵となります。

中国、金需要が一段と拡大

Chinese Gold Market Off to a Strong Start in 2026 [LINK]

【海外記事紹介】世界最大の金市場である中国において、2026年の幕開けとともに金需要が記録的な強さを見せています。1月の金価格はドル建てで14%上昇し、何度も過去最高値を更新しました。元建てではさらに上昇幅が大きく、一時は19%もの急騰を記録しています。その後、価格調整による下落もありましたが、1グラムあたり1000元付近で強力な支持層が形成されており、価格の下落がかえって新たな買いを呼び込む「押し目買い」の好機となっているようです。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の分析によると、価格高騰によって宝飾品としての需要は逆風を受けているものの、それを補って余りあるほど投資需要が爆発しています。昨年の金地金とコインの世界需要は12年ぶりの高水準を記録しましたが、その半分以上を中国とインドの2カ国が占めています。中国国内の卸売需要も極めて旺盛で、上海黄金交易所(SGE)からの引き出し量は1月に126トンに達しました。これは春節(旧正月)を前にした宝飾業者の在庫補充に加え、価格調整のタイミングを逃さなかった投資家たちの活発な買いに支えられた結果です。

特に注目すべきは、中国の金ETF(上場投資信託)への資金流入です。1月だけで保有量は38トン増加し、運用資産残高は過去最高の3330億元(約360億ドル)に達しました。金利の低下やさらなる金融緩和への期待から、国内の債権利回りが低下しており、これが金投資への強力な追い風となっています。これまでは市場参加が限定的だった機関投資家も、金の配分を増やし始めています。あまりの過熱ぶりに、中国政府は銀行に対し、金関連商品を購入する際の投資家へのリスク評価を厳格化するよう指示したほどです。

中国における金は、単なる社会的地位の象徴にとどまらず、不確実な世界における「安全網(セーフティネット)」として広く認識されています。出稼ぎ労働者が金メッキの宝飾品を購入する一方で、ホワイトカラー層は貯蓄を金投資ファンドへ投じるなど、あらゆる階層が金を拠り所にしています。中国は世界最大の金産出国でもありますが、自国生産だけではこの旺盛な需要を賄いきれず、今後も活発な市場環境が続く見通しです。ある投資家が語るように、たとえ価格の上昇が緩やかになったとしても、金がもたらす安心感こそが、今の中国の人々が最も求めているものだと言えるでしょう。

「紙の銀」に危機?

THE PAPER SILVER CRISIS HAS BEGUN - by Alasdair Macleod [LINK]

【海外記事紹介】貴金属市場のアドバイザーであるアラスデア・マクラウド氏が、世界の銀市場で深刻な構造的危機、いわゆる「ペーパーシルバー(紙の銀)危機」が始まったと警告を発しています。マクラウド氏は、現在起きている事態は単なる投資家の熱狂や投機的なブームではなく、現物の裏付けがないまま取引される西洋のペーパー市場の限界が露呈した結果であると主張しています。

その根拠として、同氏は2つの奇妙な現象を挙げています。通常、価格が上がれば投機筋の買いが増えるものですが、現在のニューヨーク市場(COMEX)では価格が上昇しているにもかかわらず、ヘッジファンドなどの保有ポジションが歴史的な低水準にあり、取引全体の未決済残高も急減しています。これは、価格上昇を狙った買い注文が入っているのではなく、現物での引き渡しができないペーパー契約が、価格の上昇に耐えきれず強制的に買い戻され、市場が縮小していることを意味しています。

市場の裏側では、驚くべき「現物不足」が進行しています。COMEXでは7億オンスものペーパー契約が存在する一方で、実際に引き渡し可能な現物はわずか8800万オンスしかありません。さらに、銀の現物はロンドンやニューヨークから、より高いプレミアム(上乗せ金利)がつく上海へと急速に流出しています。中国が銀を「重要鉱物」として輸出を停止したことも追い打ちをかけました。これにより昨年10月には、銀のリース料率が1%から40%へと暴騰し、銀が手に入らないために取引が2時間停止するという異常事態まで発生しています。

マクラウド氏によれば、現物不足に窮した大手銀行は、ETFの在庫から銀を借りるなどして、なりふり構わず引き渡し義務を果たそうとしているといいます。これは、かつてのサブプライム危機の際に予兆が無視されたのと同様に、水面下で巨大な氷山が衝突しつつあるサインです。アジアの貯蓄者たちが現物確保に動く中、もし現物での決済ができずに「現金による強制決済」が導入されるような事態になれば、ペーパー取引に基づくすべてのコモディティ市場の信頼は失墜するでしょう。同氏は、ETFなどの証券ではなく、銀行システムの外部で現物の銀を保有することこそが、資産を守る唯一の手段であると結論づけています。

中国、元高抑制へドル買い促す

China encourages dollar buying to slow surging yuan | Reuters [LINK]

【海外記事紹介】中国の経済政策に大きな変化が見られました。中国人民銀行(中央銀行)は金曜日、急ピッチで進む「元高」に歯止めをかけるため、企業や銀行がドルを買う際にかかるコストを引き下げる決定を下しました。具体的には、3月2日から「外為先物取引」に対する20%のリスク準備金制度を撤廃します。これまで元安局面では、元を売ってドルを買う動きを抑制するためにこの準備金が必要でしたが、今回はそのハードルをなくすことで、あえてドル買いを促す「元高阻止」へと舵を切ったのです。

この背景には、中国経済を支える輸出企業からの悲鳴があります。現在、中国の元は米ドルに対して約3年ぶりの高値水準にあり、昨年4月からの上昇率は7%を超えています。元が強くなれば、海外にモノを売る輸出企業にとっては、手元に入るドルの価値が目減りし、利益を圧迫します。実際に、あるソフトウェア企業は元高の影響で2025年度の利益が28%も減少したと発表しており、同様の被害を訴える企業が続出しています。中国国内では不動産不況などによる内需の低迷が続いているため、政府としては、唯一の成長エンジンである輸出の競争力をこれ以上削ぎたくないという切実な事情があります。

市場では、今回の措置を「人民銀行による強力な介入の合図」と受け止めています。1月には中国へ約800億ドルの巨額な外貨流入があり、これは過去3番目の規模となる歴史的な多さでした。輸出企業がこぞって手元のドルを売って元に替える一方で、輸入企業は支払いのためのドル買いを先延ばしにするという、極端な「元買い・ドル売り」の状態が続いていたのです。今回のルール変更により、企業が将来の支払いのためにあらかじめドルを買っておく「ヘッジ」がしやすくなり、市場の需給バランスが改善されることが期待されています。

もっとも、専門家の間では、今回の措置は元高のスピードを緩める効果はあるものの、大きな流れを変えるには至らないとの見方が有力です。アメリカの金利低下や、中国の高い輸出競争力を背景に、今後も元には上昇圧力がかかり続けると予想されています。人民銀行は、元が「適正で均衡ある水準」で安定することを目指すと述べていますが、自国の景気を守るために、通貨の急騰という新たな課題と向き合わざるを得ない状況に追い込まれています。

欧州中銀、ドル資産を売り円を買う

ECB sells some dollar assets, cuts weight of dollar in reserves | Reuters [LINK]

【海外記事紹介】欧州中央銀行(ECB)が、外貨準備として保有していた米ドル資産の一部を売却し、日本円へと振り替えていたことが明らかになりました。ECBが発表した最新の財務報告書によると、昨年の第1四半期にポートフォリオの標準的な再バランスの一環としてドルを売却し、その売却益である9億900万ユーロ(約10億7000万ドル)をすべて円資産に再投資したとのことです。ECB側はこの動きを「目標とする資産配分に合わせるための通常の調整」と説明し、市場への影響を最小限に抑えようとしています。

具体的な数字を見ると、ECBのドル保有額は一昨年の519億ドルから昨年は509億ドルに減少した一方で、円の保有額は1.5兆円から2.1兆円へと大幅に増加しました。ユーロ換算で見ると、ECBの外貨資産に占めるドルの割合は83%から78%に低下しています。この背景には、予測不可能なアメリカの経済政策や昨年起きたドル安の影響を受け、一部の大口保有者がドルへの露出を減らそうとしているのではないかという市場の推測もありましたが、ECBはあくまで事務的な調整であるとの立場を崩していません。

また、ECB自身の財務状況についても注目すべき点が報告されています。ECBは2025年度に13億ユーロの最終赤字を計上しました。前年度の79億ユーロという記録的な赤字からは縮小したものの、依然として厳しい状況が続いています。これは、かつてパンデミック期などに行われた大規模な金融緩和策の後遺症によるものです。当時、大量に発行された通貨が市中に残っており、現在の高金利環境下で、ECBはその余剰流動性に対して多額の利息を支払わなければならない構造になっています。

ここ数年で金利が急上昇したことで、ECBは景気を冷やすために金利を上げましたが、これにより自分たちが市中の銀行から預かっている莫大な資金に対しても、高い利息を支払わなければならなくなったのです。一方で、ECBが過去に買い集めた国債などは、金利が低い時期に買ったものなので、そこから得られる収益はわずかです。「支払う利息が高く、入ってくる収益が低い」という逆ざや状態が起きています。

ECBは、今年か来年には黒字に転換すると予測していますが、これまでの累積損失は105億ユーロに達しており、配当を再開できるほど財務が健全化するには、次の10年近くまでかかる可能性があると見られています。

再び膨らむFRBのバランスシート

Fed is Adding $20B a Month to the Balance Sheet | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカ連邦準備制度(FRB)が、量的引き締め(QT)を終了した直後から、事実上の新たな量的緩和(QE)に踏み出しているという衝撃的な分析をご紹介します。最新のデータによると、FRBは過去3カ月間で600億ドルの資産をバランスシートに加算しており、逆レポ取引の影響を除外すれば、実質的に毎月約200億ドル相当の資産を買い増している計算になります。FRBは以前、この買い入れは短期債に限定すると約束していましたが、現在のところはその約束を守りつつも、着実にバランスシートを再び膨らませ始めています。

過去10年の推移を振り返ると、FRBが4年かけて削減した約2.2兆ドルの資産は、2020年のコロナ危機時にはわずか数カ月で3兆ドル以上も急増しました。危機のたびにバランスシートはかつてない規模へ膨張し、次の危機が訪れれば、現在の6.6兆ドルから10兆ドルを突破するのはほぼ確実な情勢です。次期議長候補のケビン・ウォーシュ氏は、バランスシートの拡大を好まない姿勢を示していますが、バブルを維持し、現在の経済システムを崩壊させないためには、本人の意思に関わらず量的緩和を再開せざるを得ないだろうと、この記事は予測しています。

また、FRBの財務状況も深刻です。通常、FRBの利益は国庫に納付されますが、2023年以降は巨額の損失を出し続けています。その累積損失は2450億ドルを超えており、現在は紙幣を増刷することでその穴埋めをしています。さらに、これまで米国債の主要な買い手であった海外勢の動きも鈍化しています。特に中国の保有額は6800億ドルまで減少しており、世界全体でも米国債の買い入れが停滞し始めています。もし世界が米国債を買い支えるのをやめれば、アメリカの財政は深刻な事態に直面することになります。

現在、短期金利を下げて生産性の向上を狙うという危険な賭けが行われていますが、期待通りの成果が出ず、海外投資家も戻らなければ、借入コストの急騰がアメリカの予算を直撃します。すでに利払いだけで限界に近い政府予算にとって、それは壊滅的な打撃となるでしょう。FRBは一度膨らませたバランスシートを元の規模に戻すことはできず、危機のたびにさらに巨大な火種を抱え込む悪循環に陥っているのです。

帝国を支える不換紙幣

Monetary Decay and Imperial Survival | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの自由至上主義的な視点から、現在の国家システムが抱える構造的な欠陥を厳しく批判する論考をご紹介します。筆者は、現代アメリカで起きている事態は単なる官僚の無能によるものではなく、政治、金融、企業の各組織に組み込まれたインフラとインセンティブがもたらした必然的な結果であると主張しています。特に、中央銀行である連邦準備制度(FRB)は、中立的な安定装置などではなく、帝国の債務システムを支える要石に過ぎないと断じています。不換紙幣の増刷は価格信号を歪め、貯蓄者から資産保有者へと富を転置させ、本来なら政治的に不可能なはずの巨額の軍事費や福祉支出、官僚機構の肥大化を可能にしてしまっているというのです。

アメリカという帝国が、世界的な軍事力と恒久的な戦争経済を維持するためには、正直な課税だけでは国民の反乱を招くため、不可能な規模の資金が必要です。その解決策として選ばれたのが、際限のない通貨膨張です。FRBが債務を貨幣化し、金利を抑制することで、財政破綻を先延ばしにしているのが実態です。この枠組みにおいて、インフレは「隠れた税金」として機能します。新たに作られた通貨は、まず金融機関や政府契約者の手に渡り、株や不動産の価格を押し上げますが、労働者の賃金上昇はそれに追いつきません。公的には「物価の安定」と呼ばれているものは、私的な実感としては「永続的な衰退」でしかないのです。

歴史を振り返れば、ローマ帝国も軍事費や民衆への懐柔策を賄うために通貨デナリウスを改鋳し続け、生産基盤を空洞化させて没落しました。1971年の金本位制廃止以降、アメリカも同様の道を歩んでおり、赤字財政への制約が取り払われた結果、過度な介入主義が蔓延しました。現在の政治状況では、進歩派は「公平」や「包容」といった道徳的な言葉で国家権力を正当化し、保守派は本質的な構造を無視したパフォーマンスに終始しています。両派が文化的な対立に明け暮れる裏で、この搾取の仕組みは着々と継続されているのです。

オーストリア学派の経済学によれば、不換紙幣のシステムが永遠に続くことはありません。信頼が崩れたときには、必ず崩壊がやってきます。解決策は、中央銀行の特権を廃止し、通貨の規律を取り戻すこと、そして中央集権から脱却して、自発的な結社や地域の主権を取り戻すことにあります。これ以上の先延ばしは、将来の調整をより過酷なものにするだけです。偽造同然の通貨が破綻し、帝国の過剰な拡大が是正されて初めて、真の経済回復が始まると筆者は結論づけています。

金高騰の警告

Schiff on VRIC Media: Gold is the Tip of an Economic Iceberg | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの著名な経済評論家、ピーター・シフ氏が、VRICメディアのインタビューに応じ、現在の株価指数の上昇が経済の健全性を示すものではないと警鐘を鳴らしています。シフ氏は、トランプ大統領がダウ平均株価の5万ドル達成を自らの政策の成果として誇示していることを批判しています。同氏によれば、就任時からわずか12%程度の値上がりに過ぎず、バイデン政権下でも株価は最高値を更新し続けていました。当時は経済が最悪だと批判していたトランプ氏が、今になって株価を最も重要な指標として持ち出すのは矛盾しており、株価は政権の通信簿としては無意味であると断じています。

シフ氏は、実態は「経済は弱く、インフレは強い」状況にあると指摘します。関税についても、それがアメリカを豊かにするという主張は誤りであり、実際には国民自身が税金としてそのコストを支払っているに過ぎないと述べています。選挙における政治的な嘘についても言及しており、現職は経済が絶好調だと嘘をつき、野党は国民の痛みを知っている振法をして当選を狙うものの、結局はどちらも真実を語っていないと厳しく批判しています。特に関税については、大統領が議会の承認なしに独断で課税するのは憲法違反の疑いがあり、アメリカは大統領が王のように振る舞う国ではないはずだと警告しています。

投資の観点から、シフ氏は長年提言してきた金への投資の重要性を改めて強調しています。かつて彼が「金は5000ドルになる」と予測した際、周囲からは恐怖を煽って金を売るセールスマンだと嘲笑されましたが、現実には金は株式市場を上回るパフォーマンスを見せています。同氏は、現在の金や銀の値動きを「炭鉱のカナリア」に例えています。かつてのサブプライムローン問題が、当初は「限定的だ」と軽視されながら巨大な危機の予兆であったのと同様に、現在の貴金属の上昇は、水面下に潜む巨大な氷山の一角に過ぎないというのです。

これは、政府の債務問題やドルの信用失墜という、より深刻な危機が近づいているサインです。多くの人々がこの警告を無視していますが、シフ氏は、ドル危機が本格化する前に行動を起こすべきだと強く促しています。表面的な数字に惑わされず、通貨の価値が損なわれるリスクに対して、金や銀を通じた自己防衛が必要であるというのが彼の揺るぎない主張です。

政治の嘘、経済の現実

Peter Schiff: Market Reality Always Wins | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの著名な経済評論家、ピーター・シフ氏が、自身のポッドキャストでトランプ大統領の一般教書演説の内容を鋭く批判しています。シフ氏は、政治家がどれほど威勢のいい政策を打ち出そうとも、最終的には市場の現実が勝利するという厳しい見方を示しています。まず、住宅市場についてですが、シフ氏は、政策によって生じた不均衡は必ず市場の力で修正されると主張します。現在、高騰しすぎた住宅価格が下落するのは数学的に避けられない「必然」であり、買い手が支払える価格まで下がることこそが自由市場による解決策であると述べています。

また、トランプ大統領がダウ平均株価が5万ドルの大台を達成したと誇っていることに対しても、シフ氏は冷ややかです。実際には株価はその水準を下回っており、S&P500指数も年初からマイナス圏にあることを指摘し、政治家が自分たちに都合の良い数字を並べ立てることの危うさを警告しています。インフレについても同様です。大統領はバイデン政権下で史上最悪のインフレが起きたと述べていますが、シフ氏は政府の統計を見る限りそれは事実ではなく、むしろトランプ氏が引き継いだのは、2022年をピークに下落傾向にあったインフレ率だったと正しています。

さらに、シフ氏は財政の現実に踏み込み、所得税の廃止と社会保障の維持は両立しないという痛烈な事実を突きつけています。所得税を嫌うのであれば、その税収で支えられている多くの公的プログラムの廃止を受け入れなければなりません。同氏は、本当に支援を必要とする人々を守るためにも、現在のバラマキに近い制度を見直し、受給資格を厳格化して対象者や給付額を減らす「ミーンズテスト」の導入が必要だと訴えています。これらの制度に一切手をつけないという公約は、結果として国民全員を破滅に導くものだと断じています。

最後に、金融不安に対する防衛策として、シフ氏は金や銀、そして鉱山株に極めて強気な見通しを示しています。最近の株価上昇は貴金属市場の先行指標であり、金価格が再び1オンスあたり5500ドルを目指す局面では、関連株は以前よりもはるかに高値をつけるだろうと予測しています。通貨管理の失敗に対するヘッジとして、金や銀への投資がかつてないほど重要になっているというのが、彼の結論です。

2026-02-27

貿易は特権?

TGIF: Justice Thomas's Pathetic Tariff-Case Dissent | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカ連邦最高裁判所は、トランプ大統領が議会の承認なしに独断で関税を課す権限(国際緊急経済権限法:IEEPA)は認められないという、歴史的な判断を下しました。ジョン・ロバーツ最高裁判所長官は、6対3の多数派意見の中で、関税を課すという「無限の権限」を行使するには議会による明確な授権が必要であり、従来の法律にはそれを裏付ける文言はないと断じました。これは、世界中に関税をかけようとするトランプ氏の強権的な姿勢に対する大きな打撃と言えます。

しかし、注目すべきはこの判決に反対したクラレンス・トーマス判事の驚くべき論理です。トーマス氏は保守派の重鎮として知られますが、今回の反対意見では、関税の賦課をトランプ氏個人の裁量に委ねることを全面的に肯定しました。通常、国民の生命や自由、財産を奪う「核心的な立法権」は議会にのみ帰属し、大統領に譲渡することはできません。ところがトーマス氏は、外国との貿易は個人の「権利」ではなく政府が与える「特権」に過ぎないという独自の解釈を展開しました。

トーマス氏によれば、国内の税金は財産権に関わるため議会の専権事項ですが、外国との取引にかかる関税は「外部の問題」であり、国際法上の主権国家間の関係に属します。つまり、関税は税金ではなく、国から輸入の許可をもらうための「手数料」のようなものだという理屈です。この論法に立てば、大統領が関税をいくら引き上げようとも、国民の基本的な財産権を侵害したことにはならず、したがって議会の承認も不要であるということになります。

この記事の著者であるシェルドン・リッチマン氏は、このトーマス氏の論理を「手品のようなすり替え」だと厳しく批判しています。関税は実質的にアメリカの輸入業者が支払う税金であり、自由な取引を制限するものです。しかし、トーマス氏は自らの政治的な結論を正当化するために、過去の判例や特権という概念を都合よく持ち出したのだと指摘しています。法治国家の名の下で、いかに恣意的な解釈が行われ得るかを示す、非常に象徴的な事例と言えるでしょう。

カトリックの伝統

Why Every Catholic Is a Traditional Catholic (Or Should Be) - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】言葉の意味を操作し、本来の定義を書き換えることは、急進的なイデオロギーを推進する人々が好んで用いる武器です。ジョージ・オーウェルがかつて警告した「言葉の死」が、今、カトリック教会における「聖なる伝統(トラディション)」という言葉に対しても起きていると、この記事は鋭く告発しています。本来、言葉は真理を伝えるためのダイヤモンドのように硬い不変の側面を持つべきですが、現代の全体主義的な手法は、曖昧な表現や偽善的な言い換えによって人間の想像力を狭め、支配を容易にしようとしています。

かつて神聖不可侵であった「伝統」という言葉は、20世紀半ざま以降の革新的な神学者たちによって、「新しい人間」や「新しい教会」の誕生を阻む足かせとして、その価値を貶められてきました。彼らはまず伝統の必要性を否定し、次に芸術や音楽、建築、典礼といった伝統を支える象徴的な構造を破壊しました。さらに巧妙な近年の戦略は、伝統という言葉を否定するのではなく、その中身を密かにすり替えることです。教皇フランシスコの自発教令『トラディティオニス・クストデス(伝統の守護者たち)』に見られるように、今や「伝統」という言葉は、2000年にわたる不変の意味から切り離され、わずかここ60年ほどの新しい慣習を指す言葉として、手品のように定義が変更されているのです。

しかし、聖パウロがテモテへの手紙で「預けられた宝を守れ」と命じたように、教義の本質とは、時代とともに「発展」することはあっても、別のものに「変質」してはならないものです。5世紀の聖ヴィンセンティウスが説いたように、子供が大人へと成長してもその人自身の本質が変わらないのと同様に、信仰もまた、年月を経てより強固に、より壮大になりつつも、その根本的な意味や判断において同一性を保たなければなりません。そうでなければ、それは発展ではなく、教会の死を意味する怪物的な変容になってしまいます。

現在、教会の伝統を忠実に守り、何世紀にもわたって受け継がれてきた典礼や祈りを愛する人々は、「伝統主義者(トラディショナリスト)」という蔑称で呼ばれ、まるで忌むべき存在であるかのように扱われています。しかし、この記事の筆者は断言します。カトリックという名に値するすべての信徒は、本来、伝統的なカトリック信徒であるはずであり、そうでなければカトリックですらありません。聖なる伝統とは、使い古された過去の遺物ではなく、天国の栄光を今に伝える生きた宝なのです。

カールソン氏、世界を救うか?

If Trump Does Not Go To War With Iran, We Will Need To Thank One Man - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】現在、トランプ大統領がイラン攻撃に向けた軍備を増強し、中東情勢はかつてない緊張状態にあります。もしこの破滅的な開戦が土壇場で回避されるとしたら、私たちは一人の男、タッカー・カールソン氏に感謝しなければならないかもしれません。保守派の牧師でありコラムニストのチャック・ボールドウィン氏は、カールソン氏が行ったマイク・ハッカビー駐イスラエル大使へのインタビューが、世界の歴史を劇的に変えた可能性があると指摘しています。

ハッカビー氏は、キリスト教シオニズムの代表的な論客ですが、インタビューの中で驚くべき本音を漏らしました。カールソン氏から、聖書の記述を引用して「イスラエルの領土はエジプトからユーフラテス川まで、つまり中東全域に及ぶという考えか」と問われた際、ハッカビー氏は「イスラエルがそのすべてを占領しても構わない」と言い放ったのです。この一言は、イスラエルの自衛という建前を根底から覆し、それが単なる祖国の防衛ではなく、中東全域の征服と民族浄化を目的とした「大イスラエル計画」であることを図らずも世界に露呈してしまいました。

この発言の外交的波及効果は絶大でした。サウジアラビア、エジプト、ヨルダンを含む14以上のイスラム諸国が即座に共同声明を出し、これを国際法への重大な脅威として強く非難しました。これまでアメリカと協力関係にあった湾岸諸国は、もしイランが破壊されれば次は自分たちが標的になると確信し、アメリカ軍に対して領空の通過や基地の使用を拒否し始めたと報じられています。イギリスもディエゴガルシア基地の使用を拒んでいるとされ、アメリカによるイラン空爆作戦は実行不可能なほど困難な状況に陥っています。

ボールドウィン氏は、トランプ氏がこれまでイスラエルの言いなりになってきた「操り人形」のような存在であったと批判しつつも、今回の不測の事態が開戦を阻む決定打になることを期待しています。タッカー・カールソン氏がジャーナリストとして放った鋭い質問が、ハッカビー氏の「正直すぎる失言」を引き出し、結果として数万人のアメリカ人の命を救い、世界規模の核戦争を回避させたのかもしれないというのです。私たちは今、歴史の転換点に立っており、その結末は間もなく明らかになるでしょう。

ゲイツ氏とエプスタイン文書

Bill Gates Admits Russian Affairs As Epstein Files Fuel Calls for Justice in America - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのIT大手マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツ氏が、児童買春などの罪で有罪判決を受けたジェフリー・エプスタインとの過去の交流について、釈明に追われています。2026年1月30日に公開されたエプスタイン関連文書の新たな開示を受け、ゲイツ氏は財団のスタッフに対し、エプスタインと過ごした時間は「大きな間違いだった」と認めつつも、自身に不法な行為は一切なかったと強調しました。一方で、これまで噂されていたロシア人女性との不倫関係については、ブリッジの選手や核物理学者との交際があったことを初めて公式に認めました。

今回の文書公開は不完全なものではありますが、ゲイツ氏とエプスタインの密接な関係を裏付ける新たな事実が次々と浮上しています。特に注目されているのは、ゲイツ氏がエプスタインを介してロシア人女性から性感染症をうつされ、それを妻に悟られないよう抗生物質の調達を依頼したことを示唆するメールの下書きです。ゲイツ氏側はこのメールの内容を全面的に否定していますが、2013年という、エプスタインが既に有罪判決を受けた後も交流が続いていた事実は重く、世界的な慈善活動を展開するゲイツ財団の信頼性に暗い影を落としています。

この問題の影響はアメリカ国外でより顕著に現れており、イギリスのアンドリュー王子やピーター・マンデルソン元駐米大使が一時拘束されるなど、各国で政財界の大物たちが責任を問われています。ノルウェーやスウェーデン、スロバキア、ドバイなどでも、エプスタインとの不適切な関わりを理由に政府高官や組織のトップが辞任や訴追に追い込まれる事態となっています。対照的に、アメリカ国内では依然として逮捕者が出ていない現状があり、トーマス・マシー下院議員らは、司法省が法の定めに従わず、重要な情報を隠蔽しているとして不満を募らせています。

マシー議員は、エプスタインの共謀者としてFBIのリストに載っている人物や、明らかに不審な資金提供を行っていた投資家たちがなぜ捜査されないのかと議会で厳しく追及しました。2008年のエプスタインに対する異例の軽すぎる判決が、その後のさらなる犯罪被害を生んだ背景には、司法当局による何らかの意図的な判断があったのではないかという疑念が深まっています。世界を揺るがすこのスキャンダルは、単なる個人の醜聞に留まらず、西側諸国の司法制度そのものの公明正大さが問われる深刻な事態へと発展しています。

政府が生む階級対立

Class Conflict, the Jacksonians, and Exploitation | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】自由な市場経済においては、本来、異なる産業や経済的関心の間に衝突は存在しないという視点から、国家の介入がいかに「階級闘争」を生み出しているかを分析した興味深い論考をご紹介します。経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが「利益の調和」と呼んだように、分業に基づく自由な取引と競争が行われる環境では、消費者も生産者も資産家も等しく恩恵を受けます。しかし、そこに国家という存在が加わると話は一転します。さまざまな利益団体が国家権力という魅力的な道具を利用して、規制や課税、あるいは通貨膨張を通じて他者を搾取しようと躍起になるからです。これにより社会は、国家と結託して甘い汁を吸う「搾取階級」と、その一方で自らの生産物を奪われ再分配される「被搾取階級」という二つの陣営に分断されてしまいます。

こうした国家の本質を見抜いていたのが、19世紀のアメリカで活躍した自由主義者やジャクソン支持者たちでした。彼らは政府を「法的な略奪」の手段と見なし、特に中央銀行や保護関税を、一部の金融エリートや大企業が一般市民から富を吸い上げるための装置として激しく批判しました。当時の民主党は、特定の企業への補助金や独占権に反対する「自由放任」の政党であり、彼らの思想は現代のリバタリアンに近いものでした。彼らにとっての敵は銀行家や製造業者そのものではなく、国家と居心地の良い関係を築いて特権を享受する「政治的な不平等」だったのです。

20世紀に入ると、こうした鋭い洞察は「多元主義」という楽観的な政治観に取って代わられました。これは、多様な利益団体が民主的なプロセスの中で妥協し合うことで、より代表性の高い統治が実現するという考え方です。しかし、この一見公平に見える理想論こそが、国家権力の無制限な拡大を許す土壌となりました。現代の有権者は、いかなる政治問題も話し合いと参加で解決できると信じ込まされていますが、実際には国家による強制力を用いた富の奪い合いが続いているに過ぎません。私たちが今、直面している格差や対立の根源は、市場そのものではなく、国家が特定の勢力に与える特権にあるという事実を、過去の思想家たちは厳しく指摘しています。

対話か、戦争か

Is Trump Wavering on Iran? - by John J. Mearsheimer [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの著名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏が、トランプ政権の対イラン政策の変遷について興味深い分析を公表しました。2026年2月25日に配信されたポッドキャストにおいて、同氏は前夜に行われたトランプ大統領の一般教書演説を踏まえ、アメリカがイランへの軍事攻撃を回避する方向に動き出している可能性を指摘しています。トランプ氏は演説の中で、イランに核兵器を持たせてはならないと強調しつつ、イラン側から「核兵器は決して保有しない」という、いわば「魔法の言葉」をまだ聞いていないと述べました。しかし、これに呼応するかのように、イランの外相は演説直前に「いかなる状況下でも核兵器は開発しない」という明確な信念を表明しており、ミアシャイマー氏はこの発言がトランプ氏の要求を満たすものであると分析しています。

注目すべきは、今回のトランプ氏の主張に、これまで大きな障壁となっていた「ウラン濃縮能力の放棄」や「弾道ミサイル開発の停止」、さらには「ハマスやヘズボラへの支援中止」といった条件が含まれていなかった点です。これらの要求が省かれたことは、イランとの合意形成を容易にする大きな変化と言えます。さらにミアシャイマー氏は、トランプ氏を取り巻く国際情勢の変化も挙げています。現在、イスラエルを除く世界中の国々が攻撃に反対しており、通常はイランと対立する湾岸諸国までもが自制を求めている状況です。米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長も、イラン攻撃には有効な軍事的選択肢がなく、泥沼の戦争に陥る危険性を警告しています。

加えて、米国内の政治的要因も無視できません。支持率の低迷に悩むトランプ氏に対し、政治顧問らは11月の中間選挙で上下両院の過半数を民主党に奪われるリスクを説き、開戦に反対しています。失敗に終わる戦争は、政権にとって致命傷になりかねないからです。しかし、ミアシャイマー氏は楽観視しすぎることに釘を刺しています。依然としてイスラエルと、米国内で強大な影響力を持つイスラエル・ロビーはイランへの軍事行動を強く働きかけているからです。もしトランプ氏がこれらの圧力に屈して戦争を開始すれば、それは再び「イスラエルのための戦争」という構図になると同氏は警鐘を鳴らしています。対話の兆しと、戦争への圧力が交錯する極めて危うい局面にあると言えるでしょう。

国際分散投資という自衛

Rising Capital Controls, Tighter Borders, and What You Can Do About It - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】世界的な政治リスクが急速に高まる中、自分たちの身を守るための「プランB」、すなわち国外での第2の居住権や資産、避難場所の確保がかつてないほど重要になっています。しかし、国際情勢の専門家であるダグ・ケイシー氏によれば、こうした準備を実行に移すことは、以前よりもはるかに困難で、費用がかかり、官僚的で、監視の厳しいものへと変化しています。

世界的な傾向として、政府の規模は拡大し続けています。第一次世界大戦以前、ほとんどの国には所得税や相続税が存在せず、国家が国内総生産(GDP)に占める割合は5%から10%程度でした。しかし現在では、多くの国でその割合は40%から60%にまで達しています。さらに、各国政府は結託して国民を管理下に置こうとしており、個人の自由な行動を制限する動きを強めています。

こうした変化の背景には、貧しい国から豊かな国への大規模な移民流入があります。特定の文化や習慣を持つ人々が大量に流入することで、受け入れ側の社会構造が根本的に変質し、内乱のような混乱を招くリスクが生じています。例えばカナダでは、全人口の25%が国外生まれとなっており、西洋文明の価値観を重視する立場から見れば、国全体の性質が取り返しのつかないほど変容していると指摘されています。

また現在、国際的な分散投資は、もはや単なる自由や機会の追求ではなく、防衛のための必需品となりました。金融機関に対する規制が厳格化された結果、今では居住権なしに海外で銀行口座を開設することはほぼ不可能です。特にデジタル通貨の導入や人工知能(AI)による監視の強化によって、国際的な資金移動のハードルはさらに高まっています。

ケイシー氏は、パスポートを「政府が国民を所有していることを示す奴隷カード」と呼び、政府に依存しない生き方を推奨しています。かつては投資によって他国の市民権を購入できるプログラムも盛んでしたが、現在は各国政府の圧力により、より長期の居住や関与が求められるなど、条件が厳しくなっています。

結論として、経済の崩壊や戦争の危機が迫る中、自由市場の価値観を持つ人々は政府から「国家の敵」と見なされる恐れがあります。もはや「何をすべきか」を検討している時間は残されていません。政府の手が完全に及ばなくなる前に、貴金属の現物保有や第2のパスポート取得など、具体的な行動を今すぐ起こすべきであると記事は警告しています。

非対称な正義

Anarcho-Tyranny and the UK Grooming Gangs Scandal | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】英国で開催された、集団的性搾取(グルーミング・ギャング)スキャンダルに関するパネルディスカッションの報告です。この記事は、長年英国の政治・文化的エスタブリッシュメントが避けてきたこの問題を通じ、現代社会が「無政府専制」に陥っていると警告しています。

1. 制度的な裏切りと「人種」の視点

被害者のフィオナ・ゴダード氏は、警察に被害を相談した際、その情報が加害者グループに漏洩していたという衝撃的な実態を語りました。また、加害者たちは彼女が「白人であること」を理由に標的にし、「白人の少女を破壊する」という意図を明確に口にしていたと証言しました。

しかし、国家の対応は冷淡でした。#MeToo運動では告発が即座に事実として扱われたのに対し、彼女のような労働者階級の被害者は、多数の弁護士から執拗な精査を受け、信憑性を疑われ続けました。

2. 「人種差別」という非難への恐れ

検察官で政治家(リフォーム党)のレイラ・カニンガム氏は、自身もムスリムでありながら、当局の「臆病さ」を厳しく批判しました。警察や自治体は「人種差別主義者」というレッテルを貼られることを恐れるあまり、特定のコミュニティ主体の犯行グループに対して、何年もの間、意図的な隠蔽と不作為を続けてきたというのです。彼女は、加害者の人種によって法執行が躊躇される「正義の非対称性」を指摘し、厳しいビザ規制などを訴えました。

3. アナーコ・タイラニー:放置される犯罪と処罰される言論

この記事が最も強調するのは、サミュエル・フランシスが提唱した「無政府専制」の概念です。

  • 無政府: 少女たちを守るという基本的な法執行は放棄され、略奪的な犯罪が放置される。

  • 専制: 一方で、体制に不都合な「言葉」や「思想」に対しては、国家権力が過剰に行使される。

英国で「白人でも大丈夫」というステッカーを貼った男性が投獄される一方で、深刻な強姦事件が無視されるといった倒錯した事態が起きています。

結論:沈黙の時代の終わり

ディスカッションの最後には、パキスタン系の出席者からも「メディアの沈黙が真実を語ることを罪に変えている」という批判が出ました。長年続いた「多文化主義」というドグマが、弱者を守るための連帯を弱め、国家を腐敗させてきたという認識が、エリート層の間でも広がりつつあります。

「イランの脅威」の嘘

Trump’s Iran Buildup Is Based on a Lie | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】トランプ政権によるイランへの軍事圧力の強化は、ある「嘘」に基づいている――。ミゼス研究所に掲載されたこの記事は、開戦の危機が迫る中、米政府やイスラエルが主張する「イランの脅威」の真実を暴いています。

1. 史上空前の軍事増強と「核の嘘」

トランプ大統領は現在、空母打撃群2個、4万人以上の米軍兵士、E-3セントリー(早期警戒管制機)などをイラン周辺に配備しています。これほどの規模の軍隊が配備されて使われなかった例はありません。

政府がこの軍事行動を正当化する唯一の理由は、「イランに核兵器を持たせてはならない」というものです。タカ派勢力は、イランが核を持てば即座にイスラエルへ発射し、「国家レベルの無理心中」を図ると示唆しています。しかし、記事はこれを「明白な嘘」だと断じます。もしイランが本当に自滅覚悟の攻撃を望んでいるなら、数週間の猶予があれば核を完成させられたはずのこの数十年、なぜ国際的な査察を受け入れ、交渉のテーブルに着き続けてきたのか説明がつかないからです。

2. 真の目的は「宗教戦争」ではなく「地域覇権」

米・イスラエルとイランの対立は、しばしば「数千年にわたる宗教・文明の血の争い」として描かれますが、これもまた「便利な嘘」に過ぎません。実際には、地政学的な利害が一致すれば双方は過去に何度も協力してきました。

真の目的は、イランから核を取り上げることそのものではなく、「イスラエルを中東における唯一の圧倒的な覇権国家にする」ことにあります。もしイランが核を保有すれば、米国やイスラエルがイランに対して行使できる軍事的な選択肢(政権転覆や軍事介入)が大幅に制限されてしまいます。インド・パキスタンのように「核による抑止力」が働いてしまうことを恐れているのです。

3. 「限定的」という言葉の罠

リーク情報によれば、トランプ氏はイランの軍事・政府施設への「限定的」な空爆を計画しているとされます。しかし、一度火がつければそれが全面戦争へと発展するリスクは極めて高く、昨年6月のようにイスラエルが独自の攻撃を仕掛けることで米軍を戦火に引きずり込む可能性もあります。

結論:アメリカ人が死ぬ理由

著者は、イラン政府が自国民を犠牲にしてまで核心中を図るような狂気の集団ではないと指摘します。現在のエスカレーションは、あくまでイスラエルのライバルを排除し、米国の自由な介入権を維持するための地政学的闘争です。もしトランプ政権が、このためにアメリカ人の若者を戦地に送り込みたいのであれば、せめて「何のために死ぬのか」について正直に語るべきであると締めくくっています。

FRBゲームの出来レース

When It Comes to the Fed, It's Always a Rigged Game | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】「連邦準備理事会(FRB)を操り、景気の波を乗りこなせるか?」そんなコンセプトの新作ゲーム『Federal Reserve Simulator』(Steamで2.99ドル)が登場しました。しかし、ミーゼス研究所のジョナサン・ニューマン氏によるレビューは、このゲームが「いかに主流派経済学の枠に縛られ、現実の歪みを反映しているか」を鋭く突いています。

ゲームの仕組み:目隠しをされた中央銀行家

プレイヤーはFRB議長として、四半期ごとに「フェデラル・ファンド金利」「公定歩合」「公開市場操作」といったレバーを操作し、インフレ率2%、失業率4%、着実なGDP成長を目指します。UI(ユーザーインターフェース)は時代ごとに変化し、フォワード・ガイダンス(将来の予測発表)によって「市場の信頼」を勝ち取ることが求められます。

「仕組まれた」シナリオ:逃れられない大恐慌

ニューマン氏が最も批判しているのは、このゲームが徹底してケインズ主義的である点です。オーストリア学派の理論では「中央銀行による過剰な金融緩和こそがバブルと崩壊の原因」とされますが、このゲームでは不況は「外部から突然やってくる災厄」として扱われます。

  • 1929年の壁: 1920年代にどんなに慎重な政策をとっても、1929年には必ず株価が暴落し、大恐慌に突入します。プレイヤーが事前にバブルを防ぐことは不可能です。

  • 「何もしない」戦略: 著者が一切の操作をせず放置したところ、インフレ抑制では現実のFRBに勝ったものの、他の指標では敗北しました。しかし、プレイヤーの介入が結果に与える影響は驚くほど小さく設定されています。

結論:勝つための唯一の手段は「プレイしないこと」

このゲームには、市場金利の実態、政府債務、信用状況(延滞率など)といった重要なデータが欠落しています。著者は、制作者が「FRBの仕事がいかに困難で尊敬に値するか」をプレイヤーに分からせようと意図的に情報を絞ったのではないかと推測し、ロスバードの言葉を借りて「げんなりだ(Yuck!)」と切り捨てています。

最大の問題は、「FRBを廃止する」ボタンが存在しないことです。1983年の映画『ウォー・ゲーム』の名台詞「奇妙なゲームだ。勝つための唯一の手段は、プレイしないことだ」を引用し、著者は「FRBを廃止し、資産を清算し、人道に対する罪を裁くゲーム」を自分でコードしたいと結んでいます。

収用権の横暴

Rothbard and Eminent Domain: Confused History and Legal Sleight of Hand | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】マレー・ロスバード(リバタリアニズムの思想家)による「収用権(Eminent Domain)」への批判を軸に、私有財産を強制的に没収する国家権力が、いかに「歴史的混乱」と「法的な手品」によって正当化されてきたかを分析しています。現代の法学において、国家が「正当な補償」と引き換えに私有地を強制収用する権利は、主権に固有の属性として当然視されていますが、ロスバードはその道徳的・歴史的基盤がいかに脆いものであるかを暴いています。

盗みを正当化する「法的手段」

ロスバードの論理は明快です。正当な財産権は「最初の占有(ホームステッド)」か「自発的な交換」によってのみ成立します。個人に他人の財産を奪う権利がない以上、個人の集合体である政府もそのような権利を持ち得ません。したがって、収用権は本質的に「合法化された窃盗」であり、強制的な徴収である点において課税や徴兵と同じカテゴリーに属します。

歴史的なすり替え:特例から原則へ

興味深いのは、収用権がアメリカ法において「当然の権利」となった経緯です。

  • コモン・ロー(英米法)の誤読: 本来、中世イギリスの法やマグナ・カルタは王権による財産没収を厳格に制限していました。道路建設などのための収用は、主権固有の権利ではなく、個別の「議会法」による例外的な政治判断でした。

  • ウィリアム・ブラックストンの影響: アメリカの法学者たちは、ブラックストンの注釈書を誤読し、例外的な「緊急避難的措置」を、法の下の「一般的原則」へと変換してしまいました。

  • 憲法修正第5条のトリック: 「正当な補償なしに私有財産を公共のために収用してはならない」という規定は、収用権を「授与」しているのではなく、その存在を「前提」として規制しているに過ぎません。これにより、「収用してよいか」という道徳的問いが、「補償額はいくらか」という実務的・価格的な問いへとすり替えられたのです。

「公共の利益」という名の際限なき拡大

かつては道路や橋といった「公共の利用」に限定されていた収用対象は、時代とともに再開発や、さらには「経済成長や税収増が見込める」という広範な「公共の目的」へと拡大しました。2005年のケロ対ニューロンドン市事件判決(民間企業の利益のために私有地を収用することを認めた)は、突飛な逸脱ではなく、収用権の論理がたどり着くべくして到達した終着点であると著者は指摘します。

結論:主権という名の「世俗的な神権」

擁護派は「インフラ整備には不可欠だ」と主張しますが、ロスバードはこれを一蹴します。交渉の不便さやコストを理由に窃盗を正当化することはできません。市場には自発的な合意や契約という解決策が存在します。

「収用権」というドメインは、国家を一般の道徳ルールから免れさせるためのレトリックであり、主権という概念を「世俗的な王権神授説」のように利用したものです。ロスバードの功績は、この蓄積された偽りの正当性を剥ぎ取り、収用権が「社会秩序の必然」ではなく、国家が正義を標榜しながら権利を侵害するための「都合の良いフィクション」であることを明らかにした点にあります。

中小企業ロビーがない理由

Why You Never Hear Anyone Talk about the "Small Business Lobby" | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】「スモールビジネス(中小企業)・ロビー」という言葉を耳にしないのはなぜか。この記事では、大企業が享受するような強力なロビー活動や政府からの巨額の補助金・救済策が、中小企業セクターには存在しない理由を歴史的・経済的な視点から分析しています。

金融、航空、鉄鋼といった巨大産業が政府から手厚い保護を受ける一方で、中小企業が「特権」を得ることは稀です。その最大の理由は、中小企業セクターの圧倒的な多様性にあります。専門サービスから製造、小売、建設まで多岐にわたるため、あるグループに有利な政策が別のグループには不利益になることも多く、足並みを揃えることが極めて困難です。19世紀の政治経済学者ジョン・テイラーは、農民や職人(当時の中小企業層)が政府の富の分配から取り残される理由を「政治的愚者(団結できない)」と表現しましたが、その構図は今も変わっていません。

政治学者の研究によれば、中小企業は「大企業と癒着した与党」に対抗する野党(アウト・パーティー)を支持する傾向があります。しかし、いざその支持政党が政権を握っても、中小企業に目に見える利益がもたらされることはほとんどありません。政府による中小企業支援の象徴である中小企業庁(SBA)も、大企業への補助金に比べれば微々たる予算しか持たず、近年では本来の業務よりも「DEI(多様性・公平性・包括性)」関連の融資に注力しており、中小企業全般の利益を代表しているとは言い難いのが現状です。

2025年の最新研究「中小企業主の政治学」によれば、中小企業主は一貫して右派・保守政党を支持する傾向にあります。興味深いのは、その背景が学歴や理論ではなく、「ビジネスを通じた直接的な経験」にあるという点です。彼らは日々の業務で政府の規制や介入の弊害を肌で感じており、その結果として「政府は放っておいてくれ(Leave us alone)」という反介入主義的な姿勢を強めています。

現代の政治動向において、中小企業主はHILE(High-Income, Low-Educated)と呼ばれる特殊な層を形成しています。大学での理論教育(著者は「教化」と呼んでいます)よりも、市場での実体験を重視する彼らは、高学歴化が進み左傾化する現代のエリート層とは対照的に、規制緩和や減税を求める右派の強力な支持基盤となっています。結局、政府からの「おこぼれ」を期待できない彼らにとって、最善の政策とは「政府の介入を最小限に抑えること」に他ならないのです。

米市民脅かす「戦争の論理」

ICE Brings the War Home - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】ベトナム戦争の「死のカード(デス・カード)」という忌まわしい遺産が、現代のアメリカ国内に蘇っています。ジャーナリストのニック・タース氏とトム・エンゲルハート氏が、コロラド州で発生したICE(出入国在留管理庁)による異常な威圧行為と、深刻化する暴力の実態を告発しています。

先月、コロラド州イーグル郡でICEの捜査官が複数の車両を停車させ、乗員を拘束して連行しました。現場には、エンジンがかかったままの車とともに、「ICEデンバー分室」と記された「スペードのエース」のカードが残されていました。これはベトナム戦争当時、米軍兵士が殺害したベトナム人の遺体の口に「殺害の証」としてカードをねじ込んだ習慣を彷彿とさせます。コロラド州の民主党議員団は、このカードが白人至上主義団体にも利用されてきた「恐怖と暴力の象徴」であり、ラテン系コミュニティを威嚇する目的で使われたとして、国土安全保障省に独立調査を求めています。

現在、アメリカ国内の移民取り締まりはかつてないほど過激化しており、ICEに対する不信感はピークに達しています。1月の世論調査では、有権者の63%がICEの活動を支持せず、61%が「やりすぎだ」と回答しています。特に衝撃を与えたのは、ミネアポリスでICEの活動を記録していた法務オブザーバーのルネ・グッド氏(35歳の米国市民)が捜査官に射殺された事件です。昨年9月以降、連邦移民捜査官は少なくとも13人を銃撃し、グッド氏を含む5人が死亡しました。当局は現場を監視・撮影する人々を「公務執行妨害」や「国内テロリスト」と位置づけ、武器を向けたり暴行を加えたりするなどの威圧を強めています。

ICEの活動は人種的な偏りも指摘されています。コロラド州では、連邦判事による「人種のみを理由とした拘束の禁止」命令があるにもかかわらず、肌の色を理由とした不当な逮捕が繰り返されているとしてACLU(アメリカ自由人権協会)が訴えを起こしています。また、ミネソタ州での銃撃事件では、連邦当局が州の捜査機関による現場検証や証拠へのアクセスを遮断するなど、隠蔽体質も露呈しています。

タース氏は、かつてベトナムで繰り広げられた人種差別的な残虐行為が、今やICEを通じてアメリカ国内の街頭へと「逆輸入」されていると指摘します。50年以上前の戦争で名を馳せた「死のカード」の再登場は、自国の一部住民を敵と見なし、恐怖によって支配しようとする現在の政権の姿勢を象徴しているというのです。これは単なる移民取り締まりの問題ではなく、アメリカの法執行機関が「戦争の論理」を国内に持ち込み、市民の権利を侵害しているという深刻な危機の表れです。

イラン「解放」の欺瞞

As Trump Threatens Iran, We’re On the Brink of a Generational Catastrophe | Truthout [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月19日、トランプ大統領が主導する新組織「ピース・ボード(平和評議会)」の初会合が開催されました。表向きはガザの復興を目的としていますが、実際には国連を形骸化させ、トランプ氏好みの「恐喝外交」を正当化するための装置であると、ネギン・オウリアイ氏が『Truthout』で厳しく告発しています。特に懸念されるのは、この「平和」を冠した組織の会合で、トランプ氏がイランへの爆撃を繰り返し示唆したことです。

現在、イラン周辺には2003年のイラク戦争前夜を彷彿とさせる規模の米軍部隊が集結しています。トランプ氏はイランに対し「10日から15日以内」に交渉に応じるよう最後通牒を突きつけており、アナリストはいつ攻撃が始まってもおかしくないと見ています。昨年6月には、米国の支援を受けたイスラエルによるイラン攻撃で1,000人以上のイラン人が犠牲になりましたが、今回の計画はイラン指導者を直接標的とした「政権交代」を狙う、より過激なものになると報じられています。

この戦争計画に対し、国際社会や米国内からは強い反対の声が上がっています。イギリス政府は国際法違反を懸念し、インド洋のディエゴ・ガルシア基地の使用を拒否する異例の姿勢を見せました。また、米国内の世論調査でも大多数が武力行使に反対していますが、議会ではチャック・シューマー院内総務(民主党)が過去にトランプ氏の攻撃を「手ぬるい」と批判するなど、タカ派的な姿勢が超党派で根強く、実効性のある歯止めがかかっていません。

記事は、戦争に「正しい方法」など存在しないと断言します。たとえ議会の承認を得たとしても、精密爆撃と称してテヘランの住宅街で妊婦や子供が殺害された昨年の悲劇が繰り返されるだけです。また、イラン国内で独裁体制と戦っている労働者、学生、女性たちの運動も、戦争による混乱と体制の引き締めによって壊滅的な打撃を受けることになります。パレスチナでの虐殺を支持してきた勢力が「解放」の名の下に他国を爆撃するなど、言語道断の欺瞞であると著者は糾弾し、今すぐ路上や投票箱、そして議会を通じて、この「選択された戦争」を阻止するために立ち上がるよう訴えています。

真にイラン国民を支援するなら…

True Support for Iranians Means Saying No to War - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】イランでの政治活動により2年近い投獄を経験し、現在はシカゴで難民として暮らすアリ・タロク氏が、緊迫する米イラン情勢に対し「真にイラン国民を支援するなら、戦争にNOと言うべきだ」と切実な訴えを行っています。イラン・イラク戦争の最中に生まれ、戦争がいかに民主主義の土台となる市民社会を破壊するかを身をもって知る同氏は、欧米で安穏と暮らしながら米イスラエルによる軍事介入や政権交代(レジーム・チェンジ)を求める一部のイラン人ディアスポラ(国外移住者)の動きを、「国民の代表ではない」と強く批判しています。

タロク氏は、戦争を煽る移住者たちが持つ「脱出資本(Exit Capital)」という概念を提示しています。彼らは二重国籍や経済的余裕、国際的なコネクションを持っており、イラン国内での改革が困難になればいつでも安全な国へ「脱出」できる立場にあります。彼らは最高レベルの圧力や軍事打撃をロビー活動で求めますが、実際に爆撃が始まっても、テヘランの防空壕に隠れたり食料配給の列に並んだりすることはありません。それどころか、ネット上では革命家を気取りながら、実際にはイランのパスポートを維持して帰国を繰り返すなど、体制の恩恵を享受しつつ現状維持を望んでいるという「二重生活」の実態を暴露しています。

また、こうした強硬派の移住者たちの言動は、皮肉にもイランの現体制にとって絶好のプロパガンダ材料となっています。国営メディアは、彼らが欧米のタカ派政治家と密会する姿を流すことで、国内の真の民主化運動を「外国の代理人による国家転覆工作」としてレッテル貼りし、弾圧を正当化しているのです。民主主義を米軍に「外注」しようとする試みは、国内で独裁と戦う活動家たちのネットワークを壊滅させ、中産階級を疲弊させるだけであり、過去に戦争によって真の民主主義がもたらされた例はないと氏は断言します。

真の支援とは、戦争や制裁で国民を追い詰めることではなく、外交を通じてイラン国内の市民社会を強化することです。学生、労働者、女性といった国内の勇気ある抗議者たちに主体性を取り戻させることこそが、時間はかかっても永続的な民主主義を築く唯一の道です。戦争に反対することは「融和政策」ではなく、イランの未来を自分たちの手で築こうとする人々を守るための、最も理知的な選択であると締めくくっています。

トランプ氏の瀬戸際外交

SOTU: Trump threatens Iran but doesn't go all the way | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ米大統領は一般教書演説(SOTU)で、イランに対して「核兵器保有を断じて許さない」と強い警告を発しつつも、外交による解決の余地を残すという、緊張感漂う「瀬戸際外交」の姿勢を示しました。トランプ氏は演説で、イランが反政府デモ隊3万人を殺害したという主張や、米国本土に届くミサイル開発を進めているという疑惑を列挙し、開戦に向けた理論武装を整える一方で、「テヘランが核開発を完全に放棄すると誓約するなら引き下がる」と、交渉のドアをわずかに開けた状態にしています。

中東情勢については、2003年のイラク戦争以来となる規模で米軍部隊が急増しており、現場の緊張は最高潮に達しています。クインシー研究所のトリタ・パルシ氏は、今回の演説を「開戦の口実を作りつつ、取引の可能性も探る非常にタフなトーンだった」と分析しています。一方で、大統領は自身の平和外交の成果を強調し、就任から10ヶ月でインド・パキスタン紛争やエジプト・エチオピア間の戦争の火種など「8つの戦争を終わらせた」と自画自賛しました。しかし、二期目の早い段階での終結を公約していたウクライナ戦争については、「毎月2万5,000人が死亡している」と早期終結を促すにとどまり、具体的な解決策への言及は限定的でした。

また、トランプ氏は自身の「関税戦略」が平和維持に貢献していると主張し、先週の最高裁による関税違憲判決を「遺憾」としつつも、「多くの戦争を終わらせることができたのは関税という脅しがあったからだ」と自論を展開しました。中南米政策については、1月に行われたベネズエラのマドゥロ大統領拘束を「世界史上最も壮大な軍事的快挙の一つ」と称賛し、作戦で負傷したパイロットに名誉勲章を授与。さらに、カリブ海での麻薬密輸船への空爆作戦によって「もはや誰も海へ釣りに行きたがらなくなった」と成果を誇り、メキシコの麻薬王「エル・メンチョ」の殺害についても自身の功績として強調しました。

今回の演説は、イランに対する武力行使の準備を整えつつも、決定的な一線を越えるかどうかは相手の出方次第という、トランプ流の「ディール(取引)」を世界に突きつける形となりました。

トランプ関税と「体制の不確実性」

The Supreme Court Struck Down Trump's Tariffs, But Will It Matter? | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月20日、米国最高裁判所は、トランプ大統領が1977年の「国際緊急経済権限法(IEEPA)」に基づき、ほぼすべての貿易相手国に課した広範な関税措置について、「大統領の法的権限を逸脱している」として6対3で違憲判決を下しました。これは憲法上の大きな勝利に見えますが、トランプ政権は即座に1930年代から70年代に制定された別の法律(1974年通商法122条など)に根拠を切り替え、関税路線の継続を表明しました。この記事の著者ジョセフ・ソリス=ミューレン氏は、一つの法的扉が閉じても別の扉が開かれる現状に対し、真の問題は「体制の不確実性」による経済的損失にあると警告しています。

最高裁のジョン・ロバーツ長官は多数意見において、憲法第1条が「関税を含む徴税権」を議会に与えているという基本原則に立ち返りました。裁判所は「重大な質問の教義(Major Questions Doctrine)」を適用し、数百億ドル規模の経済的影響を及ぼす関税のような重要な権限を、議会が曖昧な言葉(IEEPAの「輸入の規制」という表現)で大統領に白紙委任したとは見なせないと結論付けました。ニール・ゴーサッチ判事も同意意見の中で、歴代政権による行政権の肥大化を厳しく批判しています。しかし、すでに徴収された1,000億ドルを超える関税の還付問題は未解決のまま下級審へ引き継がれ、混乱に拍車をかけています。

オーストリア学派の経済学的視点から見れば、関税は「外国」ではなく、米国の消費者や企業が支払う税金であり、供給網の寸断や実質賃金の低下を招く強制的な介入です。特に問題なのは、大統領令によって一夜にして関税率が変わる「体制の不確実性」です。企業は長期的な投資計画を立てることができず、防御的で投機的な判断を強いられます。トランプ政権がIEEPAの代わりに持ち出した1974年通商法122条は、国際収支の是正を理由に150日間限定で最大15%の関税を認めるものですが、これにより企業は今後、頻繁に変わる税率だけでなく、根拠となる法律の解釈までも監視しなければならなくなりました。

結局のところ、最高裁の判決は憲法上の「行政権暴走への歯止め」にはなりましたが、経済的な実態としては、形態が変わっただけで混乱は続いています。保護主義は「国家戦略」と称されますが、その実態は価格シグナルではなく政治的判断によって資源を再配分する「中央計画経済」の一種です。議会が自らの憲法上の役割(通商政策の決定)を回復し、行政への権限委譲を止めない限り、自由な市場秩序の回復は望めません。今回の判決は一つの幕引きではなく、管理貿易という巨大な実験における一時的な中断に過ぎないのかもしれないと、この記事は締めくくっています。

移民政策の根幹

Immigration Policy Requires Facts, Not Sentimentalism | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年ミラノ冬季五輪で金メダルを獲得したアリサ・リュウ選手の快挙は、アメリカ社会に大きな喜びをもたらしました。しかし、彼女のような成功例を「移民制度に問題がない証拠」として政治利用する風潮に対し、歴史学者のアラン・モズレー氏は「感情論ではなく、事実に基づく冷静な議論が必要だ」と一石を投じています。モズレー氏は、一言に「移民」と言っても、その技能や教育水準、財政的な影響は多岐にわたり、それらを十把一絡げに「良いもの」として扱うのは、薬の種類や用量を無視して「薬は体に良い」と言うのと同じくらい無責任な政策論だと指摘します。

全米アカデミーズ(NAS)の報告書によれば、高技能移民は生涯を通じて政府収入に大きく貢献する一方、低技能移民は、教育、医療、社会保障といった公共サービスのコストが貢献を上回り、長期的には財政的なマイナス要因となる傾向があります。ハーバード大学のジョージ・ボージャス教授の研究でも、低技能移民の流入による賃金抑制効果は、彼らと直接競合する低所得の労働者やマイノリティ層に最も重くのしかかっていることが示されています。また、制度の不備を突いた不正事件も無視できません。ミネソタ州ではソマリア系移民コミュニティに関連したパンデミック支援金の詐取事件が発生し、2億5,000万ドル以上が失われました。これは特定の民族への攻撃ではなく、統合支援が不十分なまま低技能層を大量に受け入れ、性善説に基づいた公的支援を行った政策の失敗と見るべきです。

さらに、エリート層が歓迎する「高技能移民」についても、実態は「安価な労働力の確保」という側面が強いとモズレー氏は分析します。H-1Bビザなどのプログラムは、高度な専門職を補うためと言われながら、実際には米国人よりも20〜40パーセント低い賃金で働く外国人労働者を供給する仕組みに変質しており、STEM分野(科学・技術・工学・数学)の賃金は長期的に停滞しています。また、教育現場では一部の留学生によるアカデミック・インテグリティ(学問の誠実性)の欠如が問題視されており、提出書類の偽造や盗作の多さが大学の信頼性を揺るがせています。

政治的な側面でも、大規模な移民受け入れは特定の政党に有利な人口動態の変化をもたらしており、これが政策決定の強力な動機となっているという現実があります。不法移民に至っては、主権国家の法律を犯して入国する行為であり、これを是認することは法秩序そのものを軽視することに繋がります。モズレー氏は、韓国の脳外科医やドイツの技術者の受け入れと、住宅や学校、社会インフラに負担をかける低技能層の無差別な受け入れは「全く別の計算」であるべきだと強調します。移民政策の根幹は、すでにそこに住んでいる市民の利益に資することであり、国境を持つ政府としての基本的機能に立ち返るべきであると締めくくっています。

大統領職の私物化

Fool’s Gold: The Art of the Steal and the Privatization of the Presidency - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領は一般教書演説で、アメリカが「黄金時代」に突入したと宣言しました。しかし、ジョン・ホワイトヘッド氏らによるこの記事は、その黄金が国民のものではなく、大統領とその一族、そして特権階級のためだけの「見せかけの黄金(愚者の金)」に過ぎないと痛烈に批判しています。国民の約6割が1年前より生活が悪化したと感じ、食費や住居費の高騰に喘ぐ一方で、億万長者層だけが肥え太る「帝国経済」の実態を、筆者は「大統領職の私物化」という言葉で表現しています。

かつて「沼地のヘドロをかき出す(腐敗の一掃)」と公約したトランプ氏ですが、実際にはその沼地を私物化し、公権力を私的な利益に変える「略奪の技術(The Art of the Steal)」を実践していると指摘されています。ニューヨーク・タイムズ紙の試算によれば、トランプ氏は再選後、米国の平均的な世帯年収の1万6000倍以上に相当する約14億ドルもの利益を大統領の地位から得たとされています。例えば、私邸マール・ア・ラーゴでの休暇に多額の税金が投じられ、秘密検察局の宿泊費として自身の所有施設に公金が流れ込むなど、国家予算が個人の収益源へと巧妙に変換されているのです。

さらに、この記事が列挙する不適切な支出や利権のリストは驚くべき内容です。企業から資金提供を受けたホワイトハウスの舞踏会建設に4億ドル、閣僚の移動のための豪華プライベートジェットに7,000万ドルが費やされる一方で、国際的な飢餓救済のための1,500万ドルが予算管理局長の警備費用に転用されました。また、IT大手企業への極端な優遇税制や、支持者が経営する企業への巨額の政府契約など、公的な政策が「ビジネス」として取引されています。驚くべきことに、公共インフラに自身の名前を冠して商標権を得ようとしたり、外国政府から贈られた豪華航空機を退任後も私物化しようとするなど、前代未聞の事態が続いています。

米国憲法には、大統領が公務を通じて私的な報酬を得ることを禁じる「報酬条項」がありますが、議会も裁判所もこの歯止めとして機能していません。筆者は、公職が私有財産と化したとき、共和国としての米国は崩壊の危機に直面すると警告しています。現在の米国政府は、正当な権力を装った「資金洗浄企業」に変質しつつあり、法による支配ではなく、利害と忠誠心によってのみ動く「取引型の統治」が行われているというのです。この記事は、党派を超えた憲法上の危機として、国民にこの略奪の実態を直視するよう強く促しています。

「法の支配」の完璧な無視

The Price of Perfect Nihilism  - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領が、米国向けの違法薬物を運んでいるとされる公海上の漁船やスピードボートに対し、国防総省に攻撃を命じたというニュースは、憲法を重んじる人々に大きな衝撃を与えています。アンドリュー・ナポリターノ元判事によれば、米国や軍関係者に直接的な脅威を与えていない非戦闘員の民間人を意図的に殺害することは、法律上「殺人」に該当します。この命令を下した者、そして現場で実行した者は、軍事裁判や国際法における戦争犯罪の当事者となる可能性を孕んでいますが、現在の政権内では、法の支配を無視した不気味な虚無主義(ニヒリズム)が蔓延していると筆者は警告しています。

この凄惨な事態に対し、議会の一部メンバーが異議を唱えたところ、政権側は報復として現職の上院議員でもある元海軍大佐の軍人年金を削減しようとしたり、司法省を通じて議員らを起訴しようとしたりする暴挙に出ました。幸い、連邦裁判所は「言論を理由とした年金削減は前代未聞である」としてこれを無効化し、大陪審も議員らの起訴を拒絶しましたが、これは政権側が適正手続きを経ずに個人を処罰し、批判者を弾圧しようとしている姿勢を明確に示しています。さらに深刻なのは、攻撃で生き残った民間人が海面を漂っている際、あえて救助せずに追加攻撃を行って殺害したり、救助要請を意図的に遅らせて溺死を待つといった、人命に対する徹底的な冷遇が常態化している点です。

最近の事例では、国防総省が自ら救助することを避け、管轄外の沿岸警備隊に救助を丸投げするケースが増えています。しかし、国防総省は攻撃計画を事前に共有しないため、救助機が現場に到着するまでに44時間も要したり、不可解な迂回ルートを飛んで捜索を遅延させたりする事態が発生しています。筆者は、これは偶然ではなく、「生存者が法廷で真実を語るよりも、海で溺れ死ぬ方が都合が良い」という政府内の歪んだ意思決定の結果であると指摘しています。法的には、罪を問われていない被疑者は生きていようと死んでいようと無実であり、攻撃を仕掛けた軍には救助の義務がありますが、現在の当局はその義務すら放棄しています。

こうした一連の行動は、人間の行動基準をすべて拒絶し、権力の行使に何の制約も認めず、普遍的な正邪の概念さえ受け入れない「完璧な虚無主義」の現れです。国外でこうした無法な殺戮を行う政府は、国内においても個人の権利を守らず、透明性を欠き、法を尊重しなくなるという代償を伴います。ナポリターノ氏は、このような人命と憲法を軽視する政治を、果たして誰が望んで票を投じたのかと厳しく問いかけています。法の支配が崩壊し、道徳的基準を失った権力が暴走する危うい現状に、私たちは強い警戒心を抱かざるを得ません。

一極集中か多極化か

US unipolarity vs China's multipolarity: Whose vision will shape the new global order? - Geopolitical Economy Report [LINK]

【海外記事紹介】現在、世界は「第二の冷戦」とも呼ぶべき局面を迎えており、米国と中国という二つの大国が、正反対の国際秩序のビジョンを掲げて激しく対立しています。2026年2月に開催されたミュンヘン安全保障会議での両国の発言は、その決定的な違いを浮き彫りにしました。米国は、かつての植民地時代を彷彿とさせる「一極集中」の支配を再構築しようとする一方で、中国は、すべての国が対等な立場を持つ「多極化」した世界秩序を提唱しており、この二つのビジョンのどちらが次世代の国際社会を形作るのかが問われています。

米国のビジョンを象徴するのが、マルコ・ルビオ国務長官による演説です。ルビオ氏は、かつての欧州による植民地支配を肯定的に捉え、「偉大なる西洋帝国」の復活と「新たな西洋の世紀」の構築を呼びかけました。また、トランプ政権の補佐官であるスティーブン・ミラー氏は、米国によるベネズエラへの介入を正当化し、「超大国として自国の利益を追求することに謝罪は不要だ」と断言しています。これは、力を持つ者がルールを決めるという「弱肉強食」の論理であり、19世紀的な勢力圏の概念に回帰して、グローバルサウス諸国の主権を軽視する「一極構造」への執着と言えます。

これに対し、中国の王毅外相が提示したのは、国連憲章を土軸とした「真の多国間主義」です。王氏は、少数の国による権力の独占はもはや受け入れられないと批判し、国の大小や貧富に関わらず、すべての国が国際舞台で発言権と等しい権利を持つべきだと主張しました。中国は自らが植民地支配に苦しんだ歴史的背景から、主権の平等を神聖な原則と見なしています。彼らが提唱する「多極化」モデルは、一方的な制裁や武力行使を否定し、互恵的な協力関係を通じて、発展途上国が国際社会の主役となる公平な秩序を目指すものです。

このように、ワシントンが軍事力と経済封鎖を用いて自らの意志を世界に強要しようとする一方で、北京は国際法の遵守と多極的な対話を呼びかけています。米国は「脱植民地化」の流れを逆転させようとしていますが、中国はグローバルサウスの台頭を背景に、より民主的な国際関係の構築を求めています。世界は今、かつての帝国主義的な支配に戻るのか、それとも多様な国々が共存する新たな共栄の時代へ進むのかという、歴史的な分岐点に立たされています。この競争の結果が、私たちの将来の平和と安定を大きく左右することになるでしょう。

AIブームとプライベートクレジット

Could the AI Bubble Pop and Cause a Credit Crisis? [LINK]

【海外記事紹介】現在の世界経済は、記録的な水準に達した巨額の債務が「負のブラックホール」のようにあらゆる事象を歪めており、いつ爆発してもおかしくないダイナマイトのような状態にあります。マイク・マハレイ氏の報告によれば、その導火線に火を付ける「マッチ」になり得るとスイスの銀行大手UBSが警告しているのが、昨今の「AIバブル」です。UBSの最悪のシナリオでは、AIが企業に急激な混乱をもたらした場合、銀行以外の金融機関が担う「プライベート・クレジット(ノンバンク融資)」市場において、債務不履行(デフォルト)率が15パーセントまで急騰する可能性があると予測されています。

かつてのドットコムバブルやリーマン・ショック前の住宅バブルと同様に、現在のAIブームには危うい予兆が見て取れます。MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査によると、米企業はAIプロジェクトに約400億ドルを投資していますが、その95パーセントが測定可能な投資収益を生み出せていません。実力以上の期待だけで巨額の資金が流れ込む構図は、かつてのインターネット・バブルと酷似しています。特に懸念されるのは、プライベート・クレジットの貸し手の多くが、ソフトウェア産業に深く関与している点です。融資の約4割がこの分野に集中しているとの推計もあり、AIバブルが弾ければ、その衝撃は金融システム全体へ一気に波及する恐れがあります。

現場ではすでに歪みが生じています。金利を現金で支払えず、借金残高に上乗せする「現物払い(PIK)」という手法がパンデミック後の最高水準に達しており、これは借り手の資金繰りが限界に近いことを示す明らかな警告サインです。また、投資会社が機関投資家だけでなく、リスクを十分に理解していない一般の個人投資家向けに複雑な金融商品を売り急いでいる現状は、2008年の危機を引き起こしたサブプライムローンの再パッケージ化を彷彿とさせます。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOも、この「愚かな行為」が次の危機の引き金になり得ると警鐘を鳴らしています。

米国の非金融法人の債務は14兆ドルを超え、経済全体が低金利なしでは機能しない「債務依存症」に陥っています。インフレが続いているにもかかわらず、市場が必死に利下げを求めているのは、そうしなければこの巨大な債務の山が維持できないからです。2007年当時、多くの専門家が「サブプライム問題は限定的だ」と楽観視していたように、現在も「経済は健全だ」という声はあります。しかし、未だかつて淘汰を経験していないプライベート・クレジットという巨大なリスクが、AIバブルの崩壊をきっかけに牙を剥く可能性を、私たちは真剣に考慮しなければなりません。

プライベートクレジット危機と金投資

Private Credit’s Slow-Death: Sending Banks Down & Gold Higher [LINK]

【海外記事紹介】世界的な金融システムの舞台裏で、今まさに「プライベート・クレジット(ノンバンク融資)」という時限爆弾が、銀行システムと通貨の価値を道連れに、かつてない危機の連鎖を引き起こそうとしています。この記事の著者マシュー・ピーペンブルグ氏は、現在の状況を「2008年のリーマン・ショック前夜に酷似した悲喜劇」と表現しています。当時、サブプライムローンが世界を震撼させたように、現在は数兆ドル規模に膨れ上がったプライベート・クレジット市場が、次の「大量破壊兵器」になろうとしています。

プライベート・クレジットとは、ヘッジファンドやプライベート・エクイティなどが、銀行から資金を借り入れ、審査の甘い、あるいはリスクの高い企業へ高金利で融資を行う仕組みです。これらは通常の銀行のような厳しい資本規制や預金保険の対象外であり、不透明な「影の銀行(シャドー・バンキング)」として機能しています。現在、借り手のデフォルト(債務不履行)率が急上昇しており、利息を現金で払えず、代わりに「自社株(PIK)」で支払うという、末期的な兆候が至る所で見られます。世界最大の資産運用会社ブラックロックの関連ファンドですら、わずか90日間で価値の5分の1を失ったという事実は、この火山が噴火間近であることを示しています。

さらに深刻なのは、これらのリスクが巡り巡って商業銀行の首を絞めている点です。影の銀行の貸し手たちに資金を融通しているのは、他ならぬ既存の銀行だからです。ひとたびプライベート・クレジットの連鎖倒産が始まれば、銀行は再び巨額の不良債権を抱え、流動性危機に陥ることになります。最近、銀価格の高騰で損失を出した大手銀行を救うために証拠金が引き上げられるという「銀の金曜日」騒動がありましたが、これは銀行がいかにリスクに対して脆弱で、手元のキャッシュが不足しているかを露呈した象徴的な事件でした。

ピーペンブルグ氏は、銀行が自らの無策と無謀な投資で危機を招くたびに、中央銀行が「偽の流動性(ドルの増刷)」を注入して帳尻を合わせるサイクルを激しく批判しています。この「解決策」は、ドルの価値を破壊し、国民の富を実質的に奪い去るだけです。こうした崩壊しつつある金融システムにおいて、唯一拍手喝采を受けるのは金(ゴールド)です。信用、流動性、そしてハッピーエンドが失われつつある現代において、銀行システムの外で物理的な現物資産を保有することは、単なる投資ではなく、富を守るための「誠実な選択」であると結論付けています。

NY住宅政策、危機を増幅

New York Can’t Afford to Sideline Private Developers [LINK

【海外記事紹介】ニューヨーク市の住宅価格高騰という深刻な危機を巡り、新しく就任したゾラン・マムダニ市長の急進的な政策が波紋を広げています。民主社会主義者を自認するマムダニ市長は、住宅問題の解決策として規制の強化や公的支出の拡大を打ち出していますが、この記事の著者アダム・ミルサップ氏は、民間デベロッパーを排除し政府主導で進める手法は、財政的にも構造的にもニューヨークを破綻させかねないと厳しく批判しています。

現在のニューヨーク市は22億ドルの財政赤字に直面しており、住宅バウチャープログラム(CityFHEPS)の費用は2019年の1.7億ドルから2025年には12億ドルへと爆発的に膨れ上がっています。さらに市長が掲げる幼児教育の無償化には年間60億ドルが必要とされ、市の財政はすでに限界です。統計によれば、2032年までに市が必要とする47万戸以上の住宅を公費だけで建設しようとすれば、年間340億ドル、つまり市の年間税収の約4割を投じなければなりません。民間セクターの力を借りずに住宅不足を解消することは、物理的にも不可能な数字なのです。

マムダニ市長が指名した住宅政策の責任者は、私有財産を「公共財」として扱うべきだと主張し、持ち家制度を批判するなど、過激な思想が目立ちます。しかし、歴史や研究が示す現実は非情です。家主が不適切な店主や家賃滞納者を退去させることを過度に制限すれば、賃貸住宅の供給は減り、結果として家賃はさらに数パーセント上昇します。良かれと思って導入した「正当な理由なき立ち退きの禁止」といった厳しい店主保護法が、皮肉にも低所得層の家賃負担を増大させているという皮肉な研究結果も出ています。

さらに懸念されるのは、増税による富裕層や企業の流出です。すでにニューヨーク州からは過去数年で380億ドルの所得と48万人以上の人口が流出しており、これ以上の増税は金融機関などの主要産業がダラスなど他都市へ逃げ出す引き金になりかねません。著者は、住宅危機は修正可能であるが、それは市長が教条主義的な思想を捨て、競争力のある民間市場の力を活用した場合に限られると結論付けています。政府にすべてを委ねるのではなく、民間デベロッパーが「自らの仕事」をできる環境を整えることこそが、皮肉にも最も早く安価に住宅を供給する近道なのです。

米株式市場、不吉なシグナル

The Same Signal That Preceded 2000, 2008, and 2011 Just Triggered Again – GAINS, PAINS & CAPITAL [LINK]

【海外記事紹介】現在の米国株式市場において、2000年のドットコムバブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、そして2011年の欧州債務危機直前にも現れた「不吉なシグナル」が再び点灯したと、ストラテジストのグラハム・サマーズ氏が警告しています。その核心は、ハイテク株中心の「ニューエコノミー」と、製造業などの「オールドエコノミー」の間の異常な乖離にあります。ここ数週間、GAFAMに代表される「マグニフィセント・セブン」が調整局面にある一方で、エネルギーや生活必需品といった防御的なセクターがS&P500指数を押し上げてきましたが、この「ねじれ」こそが、市場が崩壊へ向かう前兆だというのです。

具体的には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の騰落率がナスダック(NASDAQ)を大きく上回っており、その差(スプレッド)は現在13パーセントを超えています。過去のデータでは、強気相場の絶頂期にこの差が11パーセントを超えると、例外なく市場の「天井」となってきました。投資家は今、ハイテク株から資金を逃がし、防御的な銘柄へと移動させて指数を支えていますが、これは市場が健全なのではなく、逃げ場を失った資金が最後にあがいている状態に近いと分析されています。サマーズ氏は、最終的にS&P500はハイテク株の下落を追う形で約10パーセント急落し、6,200ポイント台まで引き下げられると予測しています。

さらに危機を深刻にさせているのが、投資家の「過剰な楽観」と「借金」です。2026年1月の米国ETFへの流入額は1,560億ドルという過去最高を記録し、個人投資家の強気姿勢も1年ぶりの高水準にあります。さらに懸念すべきは、株を買うための借金である「証拠金債務」が7ヶ月連続で最高値を更新し、1.2兆ドルという天文学的な数字に達していることです。これは、あらゆる押し目買いが借金によって支えられているバブル末期の典型的な兆候です。投資家が「オールイン(全賭け)」している状態で、市場の構造に亀裂が入れば、連鎖的な投げ売りを招くのは避けられません。

この記事は、現在の市場の盛り上がりは「底打ち」ではなく「天井」で見られる現象であり、歴史が示すシグナルを無視すべきではないと結論付けています。オールドエコノミー銘柄への資金シフトという見せかけの安定に惑わされず、市場の構造的な脆弱性と、過剰なレバレッジがもたらす反動に備える必要があります。暴落の足音は、多くの人が最も強気になっている時にこそ、静かに、しかし確実に出現するという教訓を、私たちは今一度思い出すべき時期に来ているようです。

2026-02-26

ロシア、5つの難問に直面

Russia Faces Five Geostrategic Challenges As The Special Operation Enters Its Fifth Year - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】ロシアによるウクライナでの「特別軍事作戦」が5年目に突入する中、ロシアは自国の主権と安全を維持するために、極めて困難な5つの地政学的課題に直面しています。この記事では、NATOの後援を受けるウクライナとの紛争が長期化する一方で、ロシアを取り巻く包囲網が多方面で強化されている現状を鋭く分析しています。

第一の課題は、ロシアの南側境界におけるNATOの影響力拡大です。アルメニア南部を通過する「TRIPP」と呼ばれる国際物流ルートが、NATOの中央アジアへ至る軍事物流回廊としての機能を持ち始めています。トルコとアゼルバイジャンが主導するこの動きは、カスピ海を越えてカザフスタンなどの周辺国を刺激し、ロシアの地域安全保障を根底から揺るがす恐れがあります。

第二に、ポーランドの「大国化」が挙げられます。ポーランドは現在、EU最大規模の軍隊を保有し、ロシア封じ込めの中心的な役割を担おうとしています。2025年9月以降、ポーランドは米国の国家安全保障戦略における要衝となり、歴史的な宿敵であるロシアに対抗する姿勢を鮮明にしています。第三の課題として、ドイツを中心としたEU全体の空前の軍事化が進んでおり、8,000億ユーロ規模の「欧州再軍備計画」や、軍隊の移動を円滑にする「軍事シェンゲン」の構築が、ロシア国境付近での圧力を高めています。

第四の懸念は、伝統的な友好国であるインドの戦略的な「変節」です。インドは米国との貿易協定を経て、ロシア産原油の輸入削減や軍事技術協力の見直しを示唆するなど、米国寄りの姿勢を強めています。これはロシアの財政収入に数十億ドル規模の打撃を与えるだけでなく、アジアの地政学バランスを塗り替える可能性があります。

そして第五に、核拡散の危機です。新戦略兵器削減条約(新START)の失効を受け、ポーランドが核保有の意向を示し、トルコもそれに続く動きを見せています。歴史的ライバルである両国が核武装することは、ロシアにとって生存を脅かす最大の脅威となります。

ロシアはこれらの課題に対処するため、米国との和平交渉を模索しつつ、外交や軍事、インテリジェンスを総動員して主権を守る構えです。しかし、譲歩できない一線も多く、5年目を迎えたこの紛争は、単なる二国間抗争を超えた「世界秩序の再編」を伴う極めて危険な局面にあると言わざるを得ません。

ハラリ氏の奇妙なAI論

Harari’s Follies at Davos: Setting the Record Straight on AI and Humanity - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】ベストセラー作家であり歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏が、ダボス会議(世界経済フォーラム)で行ったAIに関するプレゼンテーションが、哲学的・論理的な欠陥に満ちているとして批判を浴びています。ハラリ氏は「AIは単なる道具ではなくエージェント(主体)である」と断言し、包丁がサラダを切るか殺人を行うかを自ら決めるようなものだという衝撃的な比喩を用いました。さらに、AIは言語を操ることで法律、詩、宗教すら支配し、人間よりも優れた思考を行うようになると主張しています。しかし、この記事の著者は、こうしたハラリ氏の主張が「知性」や「思考」の定義をあまりに矮小化し、人間性の本質を無視した暴論であると厳しく指摘しています。

まず、哲学的な観点から「主体性」の定義が問われています。真の主体とは、内面的な目的意識を持ち、自ら目標を定めて行動する存在を指します。対してAIは、人間が設定したパラメーターの範囲内でしか機能せず、電力やハードウェアの維持、データの入力に至るまで外部に依存しています。ハラリ氏はAIが「嘘をつき、操作する」とも述べましたが、それは確率的なデータの出力に過ぎず、意思を持って欺くこととは根本的に異なります。オックスフォード大学のジョン・レノックス教授が指摘するように、AIは言葉を並べることには長けていても、その言葉が指し示す現実や意味を一切理解していません。

記事では具体的な例として、AIの時間認識の欠如が挙げられています。例えば、2026年2月11日に亡くなった俳優ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク氏に関する情報をAIに問うた際、AIは事実を肯定したり否定したりと、時間軸が支離滅裂な回答を繰り返しました。AIには過去、現在、未来という内面的な時間の把握がなく、単に言語的な記号を操作しているに過ぎないのです。また、AIが「私は存在する」と出力したとしても、そこには何の存在体験も伴いません。人間の思考が真理を志向し、肉体的な経験に裏打ちされているのに対し、AIの出力はあくまで確率的で、真理に対して無関心であるという質的な決定差があります。

最後に、ハラリ氏が聖書の「初めに言(ことば)があった」という一節を引用し、AIが新しい「言葉の主」になると予言したことに対し、著者はその傲慢さを批判しています。ハラリ氏は知性を単なる言語処理に還元し、人間の肉体性や感情を主観的な領域へと追いやろうとしていますが、それは真理や光を説く聖書の精神とは真逆の、暗闇と非肉体化への誘いでしかありません。AIを万能な神のごとく崇めるエリート層の哲学的な誤謬を正し、人間だけが持つ身体性や意志、真理への理解という固有の価値を再認識すべきであると、この記事は締めくくっています。

リーマンショックの再来近い?

A Sequel to 2008 in the Making [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの経済界では今、現在の経済状況が2008年のリーマン・ショック直前、つまり2006年から2007年にかけての不気味な静けさに酷似しているという警鐘が鳴らされています。経済ジャーナリストのマイク・マハレー氏によれば、資産価格の高騰、極端な債務水準、そして楽観的な市場心理という三拍子が揃った現状は、当時よりもさらに深刻な「続編」を予感させる危険な状態にあります。驚くべきは、この警告が一部の悲観論者だけでなく、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOのようなウォール街の重鎮からも発せられている点です。ダイモン氏は、現在の過剰なレバレッジや貸付基準の緩和を「かつての愚かな行為の再来」と断じ、強い不安を表明しています。

足元の米連邦政府債務は38兆ドルを突破し、個人のクレジットカード未払いや企業の倒産件数も、過去10年で類を見ない水準に達しています。それにもかかわらず、連邦準備制度(FRB)は再び利下げに転じ、経済という名の「債務のブラックホール」にさらなる流動性を注入し続けています。マハレー氏は、アメリカ経済が「安易な資金供給」という毒薬に依存しており、利上げをすればシステムが崩壊し、利下げをすればインフレと債務が加速するという、逃げ場のない状況に陥っていると分析しています。この構造的な問題は、最終的にドルの購買力低下を招く避けられない道筋を示しています。

こうした危機感を背景に、皮肉にもかつて銀相場操作で巨額の制裁金を課されたJPモルガンが、金価格の予測を1オンス6,300ドル、将来的には8,000ドルにまで引き上げました。投資家のポートフォリオにおいて、金や貴金属の割り当てを従来の数パーセントから20パーセント程度まで引き上げるべきだという議論が現実味を帯びています。また、プラチナ市場も供給不足を背景に爆発的な上昇を見せており、2026年初頭には一時2,923ドルの史上最高値を記録しました。現在は調整局面にあるものの、慢性的な供給不足と現物需要の強さが、価格を下支えする構造となっています。

結論として、私たちは今、債務に依存した経済システムの限界点に立たされているのかもしれません。資産価格が実態を離れて膨らみ続ける中で、金、銀、プラチナといった「形のある資産」を保有することは、単なる投資や投機ではなく、通貨価値の崩壊に対する「備え」としての意味合いを強めています。歴史は繰り返すとよく言われますが、今回の危機が現実となった場合、その衝撃は2008年を上回るものになる可能性があるため、日本の投資家も最悪のシナリオを想定した準備が求められています。

NY市場で銀在庫が急減

Comex Silver Supplies Continue to Shrink Rapidly | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】世界的な貴金属取引の指標となるニューヨーク商品取引所(コメックス)において、銀の在庫が急速に減少しており、現物市場が非常に緊迫した状況にあります。最新の報告によると、銀市場では「バックワーデーション」と呼ばれる、現物価格が先物価格を上回る逆転現象が発生しています。これは通常、目先の供給不足や現物に対する強烈な需要がある際に現れる市場の警告サインです。投資家が将来の受け取りを待つよりも、プレミアムを支払ってでも「今すぐ現物を手に入れる」ことを優先している姿が浮き彫りになっています。

特筆すべきは、コメックスの保管庫から現物の銀が流出するスピードです。取引所での決済を終えた金属がそのまま保管されるのではなく、多くの投資家が実際に現物を手元に引き出し、保管庫の外へと持ち出しています。配送可能な在庫(レジスタード在庫)は2025年9月以降、大幅な取り崩しが続いており、このまま5,000万オンスを下回るようなことがあれば、コメックスの供給体制は極めて深刻な限界点に達すると予測されています。2026年2月の配送量も、過去の同時期と比較して非常に高い水準を維持しており、現物確保への執念とも言える動きが止まりません。

一方で金市場に目を向けると、2025年に見られたような異常な熱狂は落ち着きを見せつつありますが、依然として現物需要は根強く残っています。金の場合は銀とは逆に、先物価格が現物価格を大きく上回る状態が続いており、この価格差を利用した裁定取引によってロンドンからニューヨークへ大量の金が移動しました。しかし、一度保管庫に入った金も、最近では再び外部へと流出し始めています。これは価格が史上最高値圏にあるにもかかわらず、ドルの先行き不安などを背景とした「安全資産としての実物保有」の動きが衰えていないことを示唆しています。

結論として、2026年の貴金属市場は非常に不安定な局面を迎えています。金は高値圏でも需要が底堅く、銀は供給不足と現物引き出しの加速という「完璧な嵐」の渦中にあります。投機的な資金が一部で引き揚げられた後も、実需に基づいた大口の買い手が市場を支えており、これがコメックスの在庫に多大な圧力をかけ続けています。今後、在庫の枯渇が現実味を帯びてくれば、価格形成や取引の仕組みそのものにさらなる混乱が生じる可能性もあり、日本の投資家にとっても注視すべき事態と言えるでしょう。

BRICSがドルをなくせない理由

Why Brics can’t do away with US dollar even as currency cooperation rises | South China Morning Post [LINK]

【海外記事紹介】ブラジルのルラ大統領がインドを訪問した際、BRICS独自通貨の導入について「提案も草案も、内部での議論すら存在しない」と明言し、世間の憶測を打ち消しました。この記事によれば、加盟国の間では共通通貨という政治的にハードルの高い目標よりも、自国通貨建て決済の拡大や中央銀行間の通貨スワップ、決済システムの連携といった、より現実的な協力関係を優先する動きが強まっています。ルラ大統領は、インドとブラジルは米ドルに依存せず自国通貨で取引が可能であると強調しましたが、これはドル支配への直接的な挑戦というより、経済的な柔軟性を確保するための実務的な選択と言えます。

背景には、近年の「脱ドル化」の動きと、2025年のブラジルでのサミットでロシアのプーチン大統領が自国通貨利用を促した経緯があります。また、アメリカの大統領選挙では、BRICSがドルに代わるライバル通貨を作れば、対象国からの輸入品に100パーセントの関税を課すという警告もなされました。こうした政治的圧力が強まる中で、アナリストは、BRICSが独自の電子決済システムや暗号資産の活用、中国の国際間銀行決済システムの利用拡大などを通じて、ドルへの依存を段階的に減らしていく道を探ると分析しています。

しかし、共通通貨の実現には依然として大きな壁が立ちはだかっています。ロシアのルーブルやイランのリアルのように価値の変動が激しい通貨の問題や、中国の人民元の影響力拡大を警戒するインドの思惑など、加盟国間の利害は必ずしも一致していません。インドはむしろ、中央銀行が発行するデジタル通貨の連携を提案しており、実務的なクロスボーダー決済の効率化に注力しています。また、加盟国は多額の米ドル資産を外貨準備として保有しているため、急激なドル離れは自国の資産価値を損なうリスクがあります。

2024年の統計で、BRICS域内の貿易額は20年前の約14倍となる1.17兆ドルに達し、世界貿易の5パーセントを占めるまでになりました。経済的な存在感は確実に高まっており、インドとブラジルはレアアースやAI分野での協力を深め、2030年までに二国間貿易額を300億ドルに引き上げる目標を掲げています。それでも、米ドルの圧倒的な優位性は当面揺らぐことはなく、BRICSはドルと共存しながら、いかに自立した経済圏を構築できるかという長期的な課題に直面しているのが実情です。

2026-02-25

ウクライナ和平への道

Peace in Ukraine Requires Urgency From Both Sides | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】ウクライナでの戦争を終結させるための外交交渉が、かつてないほどの緊迫感を持って語られています。2026年2月現在、ゼレンスキー大統領がトランプ政権から「6月の交渉期限」を提示されたと明かし、NATOのルッテ事務総長も「悲惨な戦争の終結には困難な選択が必要だ」と述べるなど、和平への圧力が急速に高まっています。ロシア側でも、強硬派からの突き上げや米国との交渉の遅れに対する苛立ちが募っており、戦況がロシア優位に進む中で、開戦初期以来となる直接対話がようやく動き出しています。

この記事の著者は、平和を実現するためには「双方の安全保障上のニーズとレッドライン(譲れない一線)の尊重」が不可欠であると説いています。驚くべきことに、両国はすでに重要な譲歩を見せ始めています。ウクライナは事実上のNATO加盟断念と、クリミアやドンバス地方の割譲を容認する姿勢を示し、対するロシアも、ウクライナが第三国から安全保障を受けることやEUへ加盟することを認め、凍結資産を再建費用に充てることについても妥協の余地を見せています。

最大の焦点は、安全保障の枠組みと領土の線引きです。ロシアはウクライナのNATO不加盟を絶対条件としていますが、ウクライナはこれに対し、EU条約に基づく強力な防衛援助義務を代替案として検討しています。領土問題では、ロシアはドンバス全域の確保を外交的に確定させたい考えですが、ウクライナは軍事的に維持している土地を守りつつ、自国の80%を独立した主権国家として存続させる道を探っています。これは1940年代にソ連との戦争を経て独立を守り抜いたフィンランドの歴史的な決断にも重なります。

4年以上にわたる戦いで、数十万人の尊い命が失われ、国土は荒廃しました。著者は、今の外交交渉でテーブルに乗っている条件の多くは、実は開戦直後にも合意可能だった内容であると指摘し、その遅れを深く嘆いています。しかし、双方が自国の「勝利」として国民に説明できるナラティブを構築し、安全保障上の実利を確保できる外交の道は、まだ残されています。さらなる犠牲を重ねる前に、この「最後の一線」を越えて平和を掴み取ることが、すべての関係者に求められています。

ガザ再建計画と米不動産マネー

The Gaza Plan’s 'Sick Kind of Detachment' and its Dangers for America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】トランプ政権によるガザ再建計画「レイズ・アンド・リビルド」、すなわち「破壊と再建」が孕む深刻な欺瞞と、それが米国社会に及ぼす危険性について、ジャーナリストのマット・ウルフソン氏が鋭く告発しています。2026年1月、ダボス会議の壇上に立ったジャレッド・クシュナー氏は、未来的な高層ビルや高級リゾート、データセンターが並ぶガザの完成予想図を披露し、これを「ガザの人々のための夢の計画」であると胸を張りました。クシュナー氏は100%の雇用や最新の教育・医療制度を約束し、投資家には利益を、メディアには「前向きな物語に集中せよ」と呼びかけましたが、その口調は中堅コンサルティング会社の営業プレゼンのように軽やかで、現場の悲劇とはあまりにかけ離れたものでした。

この記事の著者は、この光景を「異常な乖離」と呼び、厳しく批判しています。ガザでは今この瞬間も、浸水したテントで子供たちが凍え死に、瓦礫の下に無数の遺体が埋もれているのです。それにもかかわらず、その場所を不動産開発の対象として語る感性は、過去の植民地主義者がインドやパリで行った、歴史を消去して近代化を強行する手法と何ら変わりません。こうした「近代化」という美名は、かつての英仏帝国が石油資源を管理するために用いたコードネームと同じ役割を果たしています。イスラエルの指導層もまた、1990年代からハイテク技術を武器に、パレスチナ人を監視下に置きながら「シンガポールのような繁栄」という餌をぶら下げ、その実態は自由を奪う「屋根のない監獄」を作り上げてきたと指摘されています。

今回の再建計画の背後には、米国の有力な不動産開発業者や技術者たちのネットワークが存在します。彼らはガザを白紙の状態から作り直すために、まずは現地の住民を移動させ、テロ組織の武装解除を条件に掲げていますが、その本質は「強圧と懐柔」による支配にあります。しかし、著者が最も警鐘を鳴らしているのは、この「ガザ・モデル」がガザだけに留まらず、すでにアメリカ国内にも輸入されているという点です。ニューヨークやマイアミで進められているスマートシティ化や、監視カメラによる厳格な治安維持、そして不動産価格の高騰による元々の住民の追い出しは、ガザで行われていることと構造的に同じです。かつての中間層が家を追われ、その子供たちが低賃金の配達員として働く現状は、帝国的な開発が生む共通の帰結なのです。

トランプ大統領が提唱する、連邦地に建設予定の「フリーダム・シティ」構想もまた、歴史や地域性を無視した管理社会の雛形と言えます。著者は、私たちがガザで起きている「異常な乖離」を他人事として見過ごし、この冷酷な開発論を受け入れてしまえば、最終的にはアメリカ国民自身も、クシュナー氏が描くような「上からの心理的コントロール」が行き届いた未来に閉じ込められることになると警告しています。ガザの悲劇を不動産ビジネスの好機として捉えるような価値観が、私たちの社会の屋台骨をも蝕もうとしている事実に、私たちは今すぐ目を向ける必要があります。

揺らぐ韓国の対米観

Watching Uncle Sam From Seoul - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】「ソウルからアンクル・サム(米国)を注視する」——元外交官で東アジア専門家のジェフリー・ロバートソン氏による、トランプ政権の予測不能な外交が韓国に与えている衝撃と、同盟の変質を分析した論考を要約します。

著者は、2026年1月のベネズエラでのマドゥロ大統領拘束作戦(アブソリュート・リゾルブ作戦)や激化する対イラン紛争を機に、韓国の対米観が「信頼」から「不信と計算」へと決定的に変化したと指摘しています。

記事が分析する韓国側の主な懸念は以下の通りです。

  • 「予測可能性」の崩壊: かつての米韓同盟は、6カ国協議や緻密な同盟調整といった「プロセス」に基づき、リスクを管理し安定を維持することを目的としていました。しかし現在のトランプ外交は、SNSや大統領個人の感情に突き動かされた「即興劇」のように見えます。韓国にとって、この不確実性は死活的な脅威です。

  • ベネズエラとイランの衝撃: 国連の承認も自衛権の行使でもないベネズエラでの電撃作戦や、明確な戦略的根拠(民主化か、核阻止か、体制転換か)が見えないイランへの攻撃は、ソウルの専門家たちに「朝鮮半島も単なるパフォーマンスの舞台にされるのではないか」という恐怖を植え付けました。

  • 「戦略的支点」としての悪用: 朝鮮半島は米国のインド太平洋戦略における「支点(テコ)」ですが、韓国側は、米国(あるいはトランプ一族)の利益を守るために自分たちが中国やロシアに対する盾として使い捨てられることを恐れています。

  • 同盟の空洞化: 韓国世論は依然として同盟を支持していますが、その中身は変質しています。若手の政策立案者は、パートナーシップの多角化、独自の防衛力強化、外交的自律性の拡大といった「ヘッジ(保険)戦略」を公然と議論し始めています。中には、BRICSへの接近や、中国の覇権を容認した場合の利得を検討する者さえ現れています。

「韓国人は米国の力を信じなくなったのではなく、米国の『着実さ(steadiness)』を信じなくなったのだ」。著者は、米国があらゆる地域を混乱の舞台として扱うなら、ソウルは米国との間に距離を置き、共通の運命ではなく「冷徹な計算」に基づいて動くようになると警告しています。

経済制裁による殺人

The Architectures of Ruin – How Sanctions Kill in Venezuela and Beyond - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】「崩壊の構造 —— ベネズエラと世界で制裁がいかに人を殺すか」。著名な経済学者フランシスコ・ロドリゲス氏の著書『ベネズエラの崩壊』と、医学誌『ランセット』に掲載された共同研究を基に、制裁という名の「経済的包囲網」がもたらす凄惨な結末を分析した論考をご紹介します。

著者のマイケル・ホームズ氏は、ベネズエラの悲劇を単なる「社会主義の失敗」という道徳劇として片付ける見方を否定します。ロドリゲス氏の厳密なデータ分析によれば、ベネズエラの経済崩壊の約半分は、金融アクセスや石油市場を遮断した米国の制裁が直接的な原因であると指摘されています。

記事の主なポイントは以下の通りです。

  • 「焦土作戦」としての制裁: 2017年の金融制裁と2019年の石油禁輸は、すでに危機にあったベネズエラ経済を「死の淵」へと突き落としました。これにより、国家は電力網、水道、公共医療を維持するための収入を失いました。これは政権の銀行口座を狙ったものではなく、国民の生存基盤そのものを狙った「経済的包囲戦」であったと著者は論じています。

  • 年間50万人以上の超過死亡: ロドリゲス氏らが『ランセット』誌で発表した研究では、過去50年間の150カ国以上のデータを分析。その結果、米国や欧州による一方的な経済制裁は、年間約56万4000人の超過死亡と関連していることが判明しました。これは現代の戦争による死者数に匹敵、あるいはそれを上回る規模であり、その犠牲者の多くは5歳未満の子供たちです。

  • 民主主義という名の欺瞞: 西側諸国は「民主主義のため」という名目で制裁を正当化しますが、実際には医療品や食料の輸入を困難にし、500万人以上の難民を生み出す人道的大惨事をもたらしました。これは、 regime change(政権交代)という政治目的を人命よりも優先させた結果であると厳しく告発しています。

  • 民意の乖離: ベネズエラ国民の約75%が制裁の緩和を望み、約65%が対話による解決を求めています。しかし、マドゥロ政権、米国の強硬策、そしてそれと足並みを揃える急進的な野党勢力という三者の「ゼロサム・ゲーム」によって、国民の切実な願いは無視され続けています。

著者は、現代の金融ツールは従来の兵器と同じくらい破壊的であり、ベネズエラは「帝国による新しい戦争の実験場」にされたと結論づけています。

トランプ氏変節、揺れる支持層

Does MAGA want Trump to ‘make regime change great again’? | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】「MAGAはトランプに『レジームチェンジ(政権交代)』の再興を望んでいるのか?」——ジャーナリストのジャック・ハンター氏による、2026年に入り急変したトランプ政権の外交姿勢と、揺れる支持層(MAGA)の動向を分析した記事を要約します。

2016年の初当選時、トランプ氏は「イラクやリビアのような失敗した国家建設や政権交代の政策を放棄する」と宣言し、反戦・非介入主義を掲げる「アメリカ・ファースト」派の支持を集めました。しかし、2026年1月現在、その姿は一変しています。

記事が指摘する「トランプ変節」の現状は以下の通りです。

  • ベネズエラでの電撃作戦: 年明け早々、米国はベネズエラのマドゥロ大統領夫妻を拘束。トランプ氏は「現在ワシントンがベネズエラを統治している」と豪語しています。

  • 次なる標的への脅し: メキシコの麻薬カルテルへの攻撃を示唆し、キューバの体制崩壊を狙い、イランに対しても「地上軍(ブーツ・オン・ザ・グラウンド)を恐れない」と介入を警告しています。

  • 側近の入れ替わり: 非介入主義の旗手と期待されたJD・ヴァンス副大統領は、ベネズエラの石油や反共主義を理由に攻撃を正当化。かつて政権交代に反対していたトゥルシ・ギャバード氏は沈黙し、代わってマルコ・ルビオ国務長官やリンゼイ・グラハム議員といった「タカ派」がトランプ氏の耳目を独占しています。

MAGA支持層の反応:

興味深いのは、支持層の反応です。マージョリー・テイラー・グリーン議員のように「いつから政権交代が流行りになったのか」と困惑する声がある一方で、スティーブ・バノン氏やマット・ウォルシュ氏のような有力インフルエンサーは、「中東(イラク)の二の舞にさえならなければ、西半球(ベネズエラ等)での権力行使は歓迎だ」と、独自の論理でこの「新レジームチェンジ」を正当化し始めています。

世論調査(YouGov)では、ベネズエラ侵攻への米国民全体の支持は39%にとどまる一方、共和党支持者に限れば74%が賛成という「タカ派への回帰」が見て取れます。

著者は、タッカー・カールソン氏のような抑制派が依然としてトランプ氏のそばにいるものの、現在のホワイトハウスは新保守主義(ネオコン)のウィッシュリストを実現しているかのような状態にあり、2026年の外交は極めて危険な領域に入っていると結んでいます。