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インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-03-18

トランプ氏の無謀な賭け

Trump Risks It All on Regime Change Abroad - The American Conservative [LINK]

【海外記事紹介】2016年当時は「体制転換(レジームチェンジ)を伴う戦争」への強い反対者として知られたトランプ大統領が、2026年現在、皮肉にも自らの政治的命運をかけた巨大な「体制転換の賭け」に出ている現状を分析した記事をご紹介します。

トランプ大統領は現在、ベネズエラとイランに対して軍事キャンペーンを展開しており、さらにキューバの共産政権打倒も視野に入れているとされています。もしこれら3カ国で親米政権への交代に成功すれば、歴史的な功績となり、2026年の中間選挙でも共和党が大きく躍進する可能性があります。しかし、現状の兆候は決して楽観できるものではありません。

ベネズエラでは、左派のマドゥロ大統領を排除したものの、後任のロドリゲス副大統領による体制は不安定で、さらなる強硬策を求める保守層からの圧力と、旧政権支持者による長期的な抵抗のリスクに挟まれています。また、イランでは政権中枢を狙った「斬首作戦」が失敗に終わり、神権政治への不満を持つ国民も、外国からの攻撃に対してはかえって団結を強める傾向にあります。

経済的な影響も深刻です。イランによるホルムズ海峡の通航妨害により、原油価格はすでに20%以上急騰しており、これが世界的な景気後退を招けば、トランプ政権にとって致命的な政治的打撃となるでしょう。さらに、過去の戦争とは異なり、今回の軍事介入は開始当初から国民の広範な支持を得られていないという異例の事態に直面しています。

著者は、トランプ大統領を「リアリズム(現実主義)と抑制」の信奉者だと見なしていた人々は甘かったと指摘します。第1期政権時からの軍備管理指針の破棄やウクライナへの武器供与、そして再選後のグリーンランド買収交渉や報復関税といった行動は、一貫して「攻撃的なナショナリズム」に基づいています。

もしこの「大博打」に勝てば、世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラとイランを米国の影響下に置き、中東での覇権を奪還してロシアや中国に大打撃を与えることができます。しかし、こうした体制転換の試みは成功率の低い「穴馬(ロングショット)」への賭けのようなものであり、失敗した際のリスクはトランプ氏個人の政治生命のみならず、米国という国家の基盤をも揺るがしかねないと結論づけています。

米テロ対策トップ辞任の衝撃

The Explosion Inside Trump’s War Machine: Joe Kent Resigns - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】ラムジー・バルード氏による、トランプ政権の国家テロ対策センター(NCTC)所長ジョー・ケント氏の電撃辞任とその波紋についての分析をご紹介します。この記事は、ケント氏の辞任が単なる一高官の離脱ではなく、政権内部の「忠誠派」ですら耐えきれないほど、今回の対イラン戦争の正当性が崩壊している兆候であると論じています。

ケント氏は元グリーンベレー(陸軍特殊部隊)であり、CIAのパラミリタリー(準軍事)要員も務めた、国家安全保障の核心部にいた人物です。また、トランプ氏に近い共和党員としても知られていました。その彼が、2025年7月に就任したばかりの要職を辞した理由は極めて衝撃的です。

ケント氏は辞任届の中で、「良心に照らして、現在進行中のイラン戦争を支持することはできない」と明言しました。さらに、「イランはわが国に対して差し迫った脅威ではなかった」と断じ、この戦争は「イスラエルとその強力なロビー活動からの圧力」によって始められたものであると直接的に非難しました。彼は、イスラエル側と米国内のメディアが誤情報を流布して「アメリカ・ファースト」の理念を台無しにし、かつての泥沼化したイラク戦争と同じ手法で米国を戦争に引き込んだと告発しています。

特に重みを持っているのは、彼が「ゴールドスター・ハズバンド(戦死者の夫)」であるという個人的な背景です。彼の妻、シャノン・ケント上級兵曹は2019年にシリアで戦死しました。ケント氏は、米国民に利益をもたらさない「捏造された戦争」に、次世代の若者を送り込むことはできないという道徳的な一線を引いたのです。

バルード氏は、今回の紛争が始まってからわずか3週間足らずで、このような政権中枢のインサイダーから「戦争は嘘に基づいている」という公然とした異議申し立てが出たことの重要性を強調しています。これは、かつてのベトナムやイラクの時よりも遥かに早いスピードで政権内部の亀裂が表面化していることを示しており、ワシントンが維持しようとしている戦争の政治的構造が、見かけよりもずっと不安定であることを暴露しています。

イランの抵抗、予期せぬ影響

The Unforeseen Consequences of Iranian Resistance - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】フランスの政治評論家ティエリー・メイサン氏による、イランの抵抗が世界秩序や軍事戦略に与えている予期せぬ影響についての論評をご紹介します。この記事では、イランが米国とイスラエルによる攻撃を退けている現状が、単なる一地域の紛争を超え、世界の軍事バランスやドル覇権を根底から揺るがしていると分析されています。

メイサン氏は、今回の紛争を「歴史上最もコストのかかる戦争」と呼んでいます。例えば、1機約3万5000ドルのイラン製ドローン「シャヘド」を撃墜するために、米国は1発330万ドルのパトリオットミサイルを2発発射しており、投資額の約188倍の支出を強いられています。米国は最初の2日間だけで56億ドル、3月10日までには113億ドルもの弾薬費を費やしました。イラン側の死者数から算出すると、一人を殺害するために約800万ドルを費やしている計算になり、米国の高度で高価な兵器体系が、イランの低コストな戦争手法に対して極めて非効率であることが露呈しています。

さらに重要なのは、イランによる法的アプローチと近隣諸国への反撃モデルです。イランは、植民地主義や人種差別的体制に抵抗する人々への武力援助を認める1974年の国連総会決議3314号を再発見し、自国への攻撃に基地を提供している周辺国への報復の正当性を主張しました。これにより、米軍基地を抱える湾岸諸国などは経済的麻痺に陥り、米国の安全保障能力に疑問を抱き始めています。もしこれらの産油国が、安全保障上の理由からドル以外の通貨で石油を販売し始めれば、国際的な炭化水素市場に支えられているドルの価値は崩壊しかねないとメイサン氏は警告しています。

この「イラン・モデル」は、中国の防衛戦略にも劇的な変化をもたらしました。中国人民解放軍は、米国の攻撃を受けた際の反撃対象を、台湾島内ではなくアジア太平洋地域の24の米軍基地へと振り向けるよう計画を修正したと伝えられています。

最後にメイサン氏は、米国が自らのプロパガンダを信じ込み、イラン国内の抗議活動や政権の脆弱性を過大評価したことが、今回の軍事的敗北と将来的な没落を招く一因になったと指摘しています。イランの抵抗は、ワシントンとの軍事衝突を予見するすべての国家にとって、力の均衡を再定義する革命的なモデルとなっているとしています。

中国・イランの地政学ゲーム

How Iran and China Shaped the War Chessboard - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】イランをめぐる紛争において、中国がどのように軍事・経済の両面で「盤面」を形作り、米国の覇権に挑戦しているかを分析した記事をご紹介します。この記事によると、中国は現在の状況を単なる外交問題ではなく、自国のテクノロジーと金融戦略を融合させた多層的な地政学ゲームと捉えています。

軍事面では、中国の技術がイランの防衛力を劇的に向上させました。イランの軍事ネットワークは中国の衛星測位システム「北斗(BeiDou)」と完全に接続されており、これがイラン製ミサイルの精密な命中精度と、米国・イスラエル連合による電波妨害への高い耐性を実現しています。さらに、中国から供与された長距離レーダーや、ロシアがウクライナ戦線で得た知見を活かしたドローンと弾道ミサイルの連携戦術により、イランの反撃能力はかつてないレベルに達しています。

経済面での動きはさらに戦略的です。世界の石油流通の要所であるホルムズ海峡において、イランは「人民元(ペットユアン)」で決済された貨物のみを通行させるという、実質的な「金融核兵器」とも言える措置を講じています。1974年以来、世界の石油取引を支配し、米国の債務を支えてきた「ペトロダラー(石油ドル)」体制に対し、中国とイランは真っ向から挑戦しています。現在、テヘランの原油輸出の約90%が人民元で決済されており、このモデルが他の「グローバル・サウス」諸国へ波及することが、ドルの予備通貨としての地位を揺るがす最大の脅威となっています。

中国は現在、第15次5カ年計画を通じて、デジタル経済やグリーンエネルギー、知的財産の拡充を一体のシステムとして進めています。これは単なる経済成長の目標ではなく、2030年、そして今世紀半ばまでを見据えた技術覇権への布石です。

記事は、中国が「囲碁」のような長期的な視点で、数年前からBRICSや上海協力機構、一帯一路といった多国間枠組みを構築し、忍耐強く盤面を整えてきたと指摘しています。現在、ホルムズ海峡という急所と人民元という武器を組み合わせることで、中国は決定的な一手を打とうとしています。自らの傲慢さゆえに泥沼に陥った米国に対し、合理的な計算に基づき盤面を支配する中国とイランの戦略が、国際秩序の根本的な変容を迫っています。

戦争を賭ける予測市場

Warriors’ Casino: The People Making A Killing Gambling On War [LINK]

【海外記事紹介】戦争や国際的な重大事件の行方を予測して賭ける「予測市場」が、いまや従来のスポーツ賭博を凌駕する規模に急成長している実態を、ライアン・ラブレース氏が報告しています。この記事によると、最近の米国によるイラン攻撃のタイミングをめぐる取引額は、世界最大の予測市場「ポリマーケット(Polymarket)」において5億2900万ドルを超え、同年のスーパーボウルへの賭け金額を大幅に上回りました。

予測市場は、群衆の知恵を活用して精度の高い予測を生み出す仕組みとされていますが、戦場や政治の現場で重大な動きがある直前に、匿名のアカウントが未来を正確に言い当てるような高額の賭けを行うパターンが繰り返されています。例えば、2月下旬のイラン攻撃の直前には、150以上のアカウントが的中する側に1000ドル以上を投じ、中には攻撃直前に6万ドルを投じて約50万ドルの利益を得たケースもありました。こうした動きに対し、業界の専門家からは「インサイダー取引」を疑う声や、人の死や紛争を賭けの対象にすることへの倫理的な懸念が示されています。

また、予測市場の判定基準となる情報が意図的に操作された疑いも浮上しています。あるシンクタンクが公開している戦況マップが一時的に誤って書き換えられ、それによって予測市場で巨額の配当が発生した事例も報告されました。こうした事態を受けて、イスラエルでは機密情報を利用して賭けを行ったとして軍の予備役らが起訴されており、米国でも議員らが政府職員による予測市場での取引を禁止する法案の準備を進めています。

一方で、ポリマーケットはデータ分析大手のパランティア(Palantir)と提携し、透明性と信頼性を高めるプラットフォームの開発に乗り出すなど、市場の拡大を続けています。かつて英国の将軍が独立戦争の勝利を賭けて敗北した歴史があるように、戦争を対象とした賭け自体は新しいものではありません。しかし、暗号資産とAI、そしてリアルタイムの情報が結びついた現代の「戦士たちのカジノ」は、国家の安全保障や倫理を揺るがす新たな火種となっています。

信条貫いたロスバード

Rothbard Never Abandoned His Principles | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】経済学者であり政治哲学者でもあったマレー・ロスバードの思想的整合性について論じた記事をご紹介します。ロスバードはその晩年、パレオ・コンサバティブ(旧保守主義)と提携し、南部連合の英雄たちを称えるなど、非常に議論を呼ぶ政治的立場をとりました。しかし、この記事は、それらが単なる逆張りや人気取りではなく、生涯を通じて一貫した自由の原則に基づいていたことを強調しています。

著者によれば、ロスバードの政治分析を単に「議論を呼ぶもの」として片付けるのは不十分です。彼の見解は常に、著書『自由の倫理学』で示された哲学的原則に根ざしていました。弟子のハンス・ヘルマン・ホッペ氏は、ロスバードが現実世界の政治問題を論じる際にも、自身の理論を忘れたり放棄したりすることはなかったと説明しています。例えば、アラン・グリーンスパンが体制にすり寄るために変節したのとは対照的に、ロスバードは家族ぐるみの付き合いがあった権威者に迎合することすら拒み、自らの信条を貫き通しました。

ロスバードの思想体系は、自然法や私有財産権、自己所有権といった「古くから継承されてきた真実」に基づいています。彼は自身の倫理学を、単なる学術的な断想ではなく、人間行動の性質に根ざした合理的で体系的な社会哲学として構築しました。ホッペ氏は、ロスバードを「体系的な思考家」と呼び、断片的で探究的な思考に留まったロバート・ノジックのような哲学者とは一線を画すと述べています。

物議を醸した「州の権利」の擁護についても、ロスバードの原則から説明が可能です。自由至上主義(リバタリアニズム)の観点からは、あらゆる国家は私有財産権を侵害する存在ですが、中央集権的な巨大国家はより多くの権利を侵害するため、より大きな脅威となります。したがって、次善の策として中央政府よりも地方政府を支持することは、彼の理論において論理的に整合性が取れた選択でした。

ロスバードは、ユーモアにあふれ「幸福な戦士」として知られましたが、その政治分析の裏には常に正義に関する根本的な原則がありました。この記事は、彼の政治的発言を理解するためには、まずその基礎となる「自然権の哲学」を真剣に検討する必要があると結論づけています。ロスバードが守り抜いたのは、政治的な利便性のために容易に捨て去るような単なる提案ではなく、何が道徳的に正当であるかを突き詰めた強固な信念体系だったのです。

サックス氏ら、中東和平案

Ending the Trump-Netanyahu War in the Middle East - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】コロンビア大学教授のジェフリー・サックス氏らが、中東で激化するイスラエル・米国とイランの紛争を終結させ、世界規模の経済破綻や第三次世界大戦への発展を防ぐための具体的な提言を執筆しました。この記事では、現在の衝突が単なる局地的な紛争ではなく、米国とイスラエルによる中東全域の覇権掌握や「大イスラエル」の建設を目指す長期的な計画の帰結であると分析されています。

著者らは、世界を破滅の淵から救うために、相互に関連する5つのステップからなる包括的な和平案を提示しています。第一に、米国とイスラエルは直ちに地域全体での軍事攻撃を停止して軍を撤退させ、それに応じてイランも報復攻撃を停止することです。第二に、トランプ政権下で破棄されたイラン核合意を復活させ、国際原子力機関による厳格な監視を再導入すると同時に、イランへの経済制裁を解除することです。第三に、世界の石油流通の要であるホルムズ海峡を再開し、イランと湾岸協力会議諸国が共同で安全を保証する枠組みを構築することです。第四に、パレスチナを国連の正式加盟国として認め、二国家解決を即座に実施することです。これにはイスラエルによる占領地からの撤退と、国連平和維持軍による両国の安全確保が含まれます。そして第五に、パレスチナ国家の承認を土台として、ハマスやヒズボラといった非国家武装組織の武装解除を国際的な監視下で実現することです。

サックス氏らは、現在のイスラエル政権の強硬な姿勢や米国の外交方針を鑑みると、この和平案の実現は容易ではないと認めています。しかし、エネルギー供給の遮断や世界経済の崩壊という壊滅的な事態を避けるためには、もはや西洋諸国以外の勢力による介入が不可欠であると説いています。具体的には、世界の人口の約半分、国内総生産の40%以上を占めるまでに成長したBRICS加盟国が緊急サミットを招集し、この和平の枠組みを国際社会に突きつけるべきだと提案しています。

米国やイスラエルの覇権主義がもたらすリスクに対し、国際法と国連憲章に立ち返ることで地域全体の主権と安全を取り戻すべきだという、世界的な識者による切実な提言となっています。

UBS、金2割高を予想

UBS Forecasts 20% Gain for Gold in 2026 Despite Recent Sideways Trading [LINK]

【海外記事紹介】スイスの金融大手UBSが、直近の金市場の動きを踏まえ、2026年中に金価格が現在から20%上昇するとの予測を発表しました。マイク・マハリー氏が執筆したこの記事では、最近の金価格が1オンスあたり5000ドルから5200ドルの範囲で横ばいに推移している現状と、今後の強気な見通しの根拠が詳しく解説されています。

記事によると、年初の売り浴びせやイランでの軍事作戦開始といった地政学的な変動があったものの、金価格は一定の範囲内に留まっています。UBSのアナリストは、これが過去の紛争時と同様のパターンであると指摘しています。歴史的に金は、紛争直後こそ安全資産として買われますが、その後の価格動向は地政学リスクそのものよりも、金融政策などのファンダメンタルズに左右される傾向があります。例えば2022年のロシア・ウクライナ紛争時も、当初は15%上昇したものの、その後の米連邦準備制度による利上げを受けて価格は下落しました。

しかし、UBSは短期的な停滞を超えた先にある、金の力強い上昇を確信しています。年末までに価格は5900ドルから6200ドルに達すると予測しており、その背景には根強い投資需要があります。実際に2月には世界全体で26トンの金がETFに積み増され、保有量は過去最高の4171トンに達しました。中央銀行による継続的な購入や、アジアでの所得向上に伴う宝飾品需要の構造的な成長も、価格を下支えする要因となっています。

さらにUBSは、金が「通貨の減価」や「財政赤字の拡大」、「経済減速」といった金融リスクに対する有力なヘッジ手段であると強調しています。現在の米国政府は膨大な債務問題を抱えており、紛争が長期化すればさらなる財政赤字の拡大と、それを補うための通貨供給量の増加を招きます。これは必然的にインフレを引き起こすシナリオですが、歴史的に金はインフレと正の相関関係にあり、資産を守るためのポートフォリオの分散先として非常に有効です。

今後の金融政策についても、UBSは追加の利下げを予想しています。インフレ圧力の緩和や連邦準備制度内の鳩派的な人員構成の変化により、9月末までに合計0.5%の利下げが行われる可能性が高いとしています。ドル安や実質金利の低下は、金価格にとって追い風となります。このように、地政学的混乱がもたらす広範な経済的影響と緩和的なマクロ環境が、2026年の金市場をさらなる高みへと押し上げるとUBSは結論づけています。

ドルからゴールドへ

Schiff on Global Gambit: Inflation Will Define the Next Crisis | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】経済評論家のピーター・シフ氏が、ポッドキャスト番組「グローバル・ギャンビット」に出演し、地政学リスクと経済危機の行方について語ったインタビューの内容をご紹介します。シフ氏は、イランでの紛争に伴う市場の反応や、深刻化するインフレの正体、そして住宅市場が直面している危機について自身の見解を詳しく述べています。

まず、シフ氏は紛争勃発直後の市場の動きは一時的なものであり、本質を見誤るべきではないと指摘しています。当初、安全資産としてドルが買われ、逆にそれまで最高値を更新し続けていた金価格が一時的に下落する場面がありました。しかし、金は1オンスあたり5000ドルの水準で踏みとどまっており、これが強力な下値支持線になると見ています。一方で株式市場の下落幅は現時点では限定的ですが、水面下ではより深刻なリスクが蓄積されていると分析しています。

シフ氏が最も懸念しているのは、現在進行形で強まっているインフレです。これは単に原油価格の上昇によるものではなく、より構造的な財政問題に起因しています。戦費の調達や停滞する経済の支え、さらには崩壊の危機に瀕している住宅市場の救済のために、政府は財政赤字を拡大させ、通貨の増刷を余儀なくされるためです。米国の住宅価格は過去最高水準の割高な状態にあり、全国的に少なくとも30%以上下落する可能性があるとシフ氏は予測しています。住宅は多額の負債の担保となっているため、この価格下落はそれ自体が大きな経済危機を引き起こす要因となります。

また、世界的な「脱ドル化」の動きについても言及しています。紛争による一時的なドル買いでその流れは停滞したものの、米国債から離脱する長期的な傾向はすぐに再開されると考えています。その際、ドルの代替手段として再び存在感を増すのが金です。各国が金を直接取引に用いるか、あるいは金に裏打ちされた新しい通貨を導入するかは別として、最終的には金が通貨に価値を与える役割を担うことになると述べています。

最後に、シフ氏は政治指導者の対応についても触れ、政府支出の削減や予算の均衡化といった、かつて掲げられた公約が果たされなかったことを批判的に振り返っています。本来行われるべきであった政府の縮小がなされなかったことで、現在の経済的な衝撃に対して米国は非常に脆弱な状態に置かれていると結論づけています。

ドル安、本番はこれから

Schiff on Triangle Investor: The Dollar is on the Decline | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】経済評論家のピーター・シフ氏が、投資情報番組「トライアングル・インベスター」に出演し、最新の経済状況について語ったインタビューの内容をご紹介します。この記事の中でシフ氏は、昨今の2.4%という消費者物価指数の数値を踏まえ、ドルの下落と貴金属需要の関係、政府債務の利払いコスト増大、仮想通貨の脆弱性、そして不動産市場の歪みについて分析しています。

シフ氏は、金価格の上昇を米国の財政状況や連邦準備制度、そしてドルの価値に対する信頼の低下の現れだと指摘しています。世界の中央銀行がドルから離脱し、その代替先として金を選択していることが、価格を押し上げる要因となっています。シフ氏は将来的に金価格が1オンスあたり1万ドルや2万ドルに達する可能性に言及していますが、それはドルの大幅な切り下げという文脈の中で起こることだと予測しています。これまでドルはスイスフランに対しては安値を更新したものの、他の通貨に対しては歴史的な安値には至っておらず、本格的なドル安はこれから進むという見方を示しています。

また、銀についても技術的な需要から注目すべきだとしています。特に人工知能などの開発に伴う工業用需要が急増している一方で、供給は限られており、高い価格設定が既存の所有者に売却を促すことでしか、新たな需要を満たす供給を確保できない状況にあると述べています。

米国の財政面に目を向けると、国債の利払いコストが急速に膨らんでいることに警鐘を鳴らしています。近いうちに利払い費用は社会保障費を上回る見通しであり、金利の上昇と既存債務の借り換えによって、この負担はさらに加速すると分析しています。一方、仮想通貨については、価値が新規の買い手に依存する脆弱な構造であり、需要が途絶えれば崩壊するリスクがあると見ています。

最後に、不動産市場についても、中央銀行による不自然な低金利が商業用不動産の価値を過大に評価させてきたと論じています。不動産価値は将来のキャッシュフローを金利で割り引いて算出されるため、低金利下では価値が高く見積もられますが、金利が正常化に向かえば、これまで膨らんだ資産価格の正当性は失われることになります。シフ氏は、これら全ての現象が、金利を人工的に低く抑えてきた政策の帰結であると締めくくっています。

2026-03-17

「無計画」が致命傷に

Is Having No War Plan Trump’s ‘Plan’? - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】トランプ大統領は「自分には予測不能な強さがある」と誇示していますが、ことイランとの戦争においては、その「計画のなさ」が致命的な隙となっている可能性があります。現在進行中の紛争において、米イスラエル連合の戦術と、イランが20年かけて準備してきた「非対称戦争」の構想が激突している実態を解説します。

米国とイスラエルが得意とするのは、圧倒的な制空権を利用した短期集中的な空爆で敵の司令部を壊滅させる「首取り作戦」です。実際に今回の開戦直後、ハメネイ師をはじめとするイラン指導部が殺害された際、トランプ氏は「最初の1時間で勝利した」と宣言しました。しかし、イラン側からすれば、これは想定内のシナリオに過ぎませんでした。イランは2003年のイラク戦争で米軍が軍事司令部を瞬時に無力化した様を徹底的に研究し、独自の防衛策「モザイク・ドメイン(モザイク教義)」を構築していたからです。

この教義の核心は、軍の指揮権を各地方の司令部に完全に分散化させることにあります。最高指導者が殺害された瞬間、あらかじめ設定された報復プランが自動的に発動し、各地方の司令官は自らの判断でミサイル発射や軍事行動を継続する権限を持ちます。つまり、中央を叩いても止めることができない「自動報復マシン」へと軍を変貌させたのです。さらに、イランは空軍力の劣勢を補うため、西欧諸国の面積に匹敵する広大な国土の地下深くに、弾道ミサイルやドローンを収容した「地下都市」を無数に建設し、上空からの監視や爆撃を無効化しています。

また、イランの戦略は「長期戦」に特化しています。欧米の軍隊や経済が短期決戦を前提としているのに対し、イランはあえて戦いを長引かせることで、相手側のロジスティクスと政治的忍耐を削り取る「3つの絞め技(スクイーズ)」を仕掛けています。

1. 補給の枯渇: 安価な旧式ドローンを大量に飛ばして、米軍の高価な迎撃ミサイルを消耗させる。
2. 経済的封鎖: ホルムズ海峡を封鎖し、西側諸国にエネルギー危機と市場の混乱を引き起こす。
3. 世論の動揺: 交渉や停戦を拒否し続けることで、米国内の厭戦気分とトランプ氏への不信感を高める。

トランプ氏の伝記作家マイケル・ウォルフ氏は、「彼に計画などない。その場しのぎのパフォーマンスで勝利を演出しているだけだ」と指摘しています。トランプ氏は勝利を宣言しましたが、イラン側は「戦いはまだ始まったばかりだ」と述べています。石油価格の暴騰や市場の暴落が現実味を帯びる中、出口戦略を持たない「計画なき勝利宣言」がいつまで維持できるのか、米国はかつてない試練に立たされています。

「戦場の英雄」の真実

Combat Envy and the Strange Case of American Warlord John McCain | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】戦場での英雄的な経験を捏造したり、過度に誇示したりする心理的傾向を、著者のチャールズ・ゴイエット氏は「コンバット・エンヴィ(実戦への羨望)」と呼んでいます。最新の著作から、この奇妙な心理がいかに米国の外交政策を歪め、好戦的な政治家を生み出す土壌となってきたかを分析した記事をご紹介します。

その象徴的な事例として挙げられているのが、故ジョン・マケイン上院議員と、彼を政界に送り出した有力な新聞発行人、デューク・タリー氏の関係です。マケイン氏は海軍の飛行士として捕虜経験を持つ本物の軍人でしたが、その政治姿勢は極めて攻撃的で、シリア、イラク、北朝鮮、そしてイランなど、数多くの国々への軍事介入や爆撃を叫び続けました。その姿は時に「ベルギーがサッカーで米国に勝ったから爆撃しろ」と風刺されるほど、際限のない主戦論者として知られていました。

このマケイン氏を1982年の連邦下院議員選挙で全面的にバックアップし、無名だった彼をスターに仕立て上げたのがタリー氏でした。二人は「軍人同士」として深い絆で結ばれ、タリー氏はマケイン氏の子供の代父(ゴッドファーザー)になるほどの親交を深めました。タリー氏は自身を「朝鮮戦争とベトナム戦争で100回以上の出撃経験を持つ空軍の英雄」であると周囲に語り、空軍の正装で勲章を胸にイベントに現れては、マケイン氏と戦場談義に花を咲かせていたのです。

しかし、マケイン氏の当選から3年後、衝撃的な事実が発覚します。タリー氏の輝かしい軍歴はすべて真っ赤な嘘でした。彼は軍に入隊したことさえなく、壁に飾られた表彰状も写真もすべて偽物だったのです。この「実戦への羨望」という病的な執着が、タリー氏を本物の軍人であるマケイン氏へと引き寄せ、熱狂的な支援へと駆り立てていました。本物の軍人であったマケイン氏が、長年の付き合いの中でタリー氏の幼稚な嘘を見抜けなかったはずはないと著者は指摘します。しかし、マケイン氏にとって彼は野心を叶えてくれる最大のスポンサーであり、二人の関係は互いの欠落を埋め合う共生関係にありました。

マケイン氏亡き後も、リンゼイ・グラハム議員のような後継者たちが、同様の好戦的な言説を振りかざしています。記事は、国家指導者やメディア関係者が抱えるこうした個人的なコンプレックスや心理的な欠陥が、検証されないまま世界の舞台で展開されることの危うさを警告しています。派手なパレードや軍歌によって「戦争の栄光」という神話が捏造され、国民が再び帝国主義的な殺戮へと駆り出される歴史を繰り返さないためには、こうした過去の欺瞞を忘却の彼方に追いやるべきではないと結んでいます。

ホワイトハウスの狂信者

God, Guns, and Christian Zealots in the White House | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】時の政府が若者を戦地に送り出す際、古来最も効果的に利用されてきたのが「宗教」という大義名分です。現在、トランプ政権下の米軍内部で、この「聖戦」の論理が公然と復活している実態を告発する記事をご紹介します。

軍の宗教的自由を守る団体(MRFF)には、全米50以上の軍施設から200件を超える苦情が寄せられています。その内容は、指揮官が部下に対し「イラン遠征は神の計画の一部である」と説き、トランプ大統領を「ハルマゲドンを引き起こすためにイエスに選ばれた存在」と位置づけるなど、兵士を聖書の預言を実現するための道具として扱う言動が常態化しているというものです。これは一部の過激な個人の問題ではありません。国防長官の腕には十字軍の合言葉である「神がそれを望まれる(デウス・ヴルト)」という刺青があり、ホワイトハウスでは自らを「使徒」や「預言者」と称する人々による祈祷式が定期的に行われています。

憲法が国教の樹立を禁じ、軍法が宗教の強要を禁じている米国において、これは明白な法への抵触です。ある下士官の報告によれば、出動待機中の部隊に対し、指揮官が「トランプはキリストの再臨を告げる火を灯すために選ばれた」と訓示したといいます。自由意志による礼拝ではなく、指揮権を持つ上官が、逃げ場のない兵士に対して特定の預言的物語を押し付けているのです。

こうした動きの背景には「新使徒改革(NAR)」と呼ばれるキリスト教ネットワークの存在があります。彼らは、政府、軍、教育、メディアなど社会の7つの領域をキリスト教徒が支配すべきであるという「セブン・マウンテン・マンデート(7つの山の権能)」という教義を掲げています。2024年の調査では、米国の福音派の約55%がこの枠組みを支持しており、政府を「聖書に従って占領・統治すべき領土」と見なす考えが急速に浸透しています。

リバタリアン(自由至上主義者)の視点から言えば、これは特定の宗教への攻撃ではなく、国家権力の肥大化に対する重大な警告です。国家が「神の名」を借りて行動し始めたとき、その決定は通常の監査や説明責任から切り離されてしまいます。「預言」を会計監査することはできず、「聖書の命令」を法廷で反対尋問することもできないからです。神格化された戦争には明確な勝利の条件も出口戦略も存在しなくなります。

イランは確かに政教一致の国ですが、それに対抗する側が軍事指揮官を通じて兵士に「君たちは聖書の預言の担い手だ」と説くのであれば、政教分離という憲法の原則は崩壊してしまいます。神のために戦っていると言われることは、兵士にとって名誉な昇進ではなく、彼らを戦地に送った政治家の責任を、責任を問えない「神」という存在に転嫁することに他なりません。この記事は、国家が法ではなく預言に従って動き始めたとき、自由な社会が直面する危うさを浮き彫りにしています。

米覇権の終焉?

An Iranian Toll-Gate on the Strait of Hormuz?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事紹介】アメリカとイスラエルによるイランへの軍事行動が開始されてから2週間余りが経過しました。当初、軍事予算で圧倒的な差があるこの戦いは、一方的な展開になると予想されていました。アメリカは過去数十年で最大規模の兵力をペルシャ湾周辺に集結させ、さらにイランの最高指導者や軍高官を会談の場を装った急襲で殺害するという、国家の「首取り」作戦を成功させたからです。主流メディアの多くは、この衝撃的な開戦によってアメリカの迅速かつ決定的な勝利を確信していました。

しかし、その後の数日間で戦況は驚くべき逆転を見せ始めました。軍事専門家の分析によれば、イランのドローンやミサイルによる反撃は予想を遥かに上回る精度と効果を発揮しています。中東全域にあるアメリカ軍基地は壊滅的な打撃を受け、特に高額な弾道ミサイル防衛システムであるパトリオットやイスラエルのアイアンドームは、イランのミサイルに対してほとんど無力であることが露呈しました。波状的に押し寄せる安価なイラン製ドローンが、数個しかない貴重なレーダー施設を破壊し、防衛網を「盲目」にしたのです。

さらに決定的なのは、イランによるホルムズ海峡の封鎖です。世界の石油・天然ガス供給の約20%を担うこの要衝が閉じられたことで、世界経済は1973年の石油ショックを上回る規模のエネルギー危機に直面しています。トランプ政権はイランが屈服するまで封鎖は起きないと楽観視していましたが、現実は正反対となりました。興味深い事実であることに、イランは同盟国である中国への石油輸出は継続しており、自国の輸出量はむしろ戦前より増加していると報じられています。これはアメリカにとって大きな屈辱となっています。

トランプ大統領は米海軍の艦隊を投入して、タンカーを護衛し海峡を強行突破する計画を表明しています。しかし専門家は、ミサイル基地やドローン拠点がひしめく険しい海岸線を持つホルムズ海峡への進入は、海軍にとって「自殺行為」になりかねないと警告しています。かつてペンタゴンが行った演習でも、イラン側が米空母を撃沈し、数日間で2万人の戦死者を出すという結果が出ていました。当時のイランより遥かに強力な兵器を手にした現在の彼らに対し、強行策をとればアメリカ海軍史上最大の敗北を喫する恐れがあります。

この紛争は単なる地域紛争に留まらず、米ドルの基軸通貨体制を支えてきた「ペトロダラー」システムの崩壊を招く可能性があります。長年、中東の産油国はアメリカの軍事的保護と引き換えに、石油をドルで販売し、その利益をアメリカの債券に再投資することで、膨大な債務を抱えるアメリカ経済を支えてきました。しかし、アメリカが保護すべきはずの中東諸国を守れず、逆に混乱を招いている現状は、世界各地でドル離れを加速させる要因となるでしょう。

今回の戦争は、アメリカによる一方的な軍事支配の終焉と、中東における勢力図の根本的な塗り替えを意味しているのかもしれません。トランプ大統領の強硬な姿勢とは裏腹に、現地の基地は破壊され、海軍も身動きが取れない状況にあります。エネルギー価格の暴騰や肥料供給の停止による世界的な飢餓の懸念も浮上しており、この「ホルムズ海峡の通行税」とも言える状況をイランが掌握したことが、アメリカの覇権にとって致命的な一撃となる可能性を、この記事は示唆しています。

スタグフレーションの再来

The Return Of Stagflation – The Felder Report [LINK]

【海外記事紹介】かつて1970年代に世界を苦しめたスタグフレーション、すなわち景気後退とインフレが同時に進行する現象が再び到来するという見方が、市場で広まりつつあります。米国の金融専門誌バロンズは、当時のスタグフレーションの根源は1964年の減税にあると指摘しています。当時はベトナム戦争の戦費や、グレート・ソサエティと呼ばれた大規模な社会福祉プログラムによって政府支出が増大していた時期でしたが、そのさなかに減税を行ったことが問題を引き起こしました。

ひるがえって近年の状況を見てみますと、社会プログラムのコストが急騰しているにもかかわらず、再び減税が実施されています。フォーチュン誌の報道によれば、もし米国政府が上場企業と同じ会計ルールで財務報告を義務付けられた場合、債務の対GDP比は現在の100%という水準ではなく、300%に近い数字になるとされています。こうした厳しい財政状況の中、現在は国際エネルギー機関が歴史上最大と呼ぶほどの石油供給の混乱に直面しています。

石油価格の上昇はインフレを招き、それは通常、金利の上昇を意味します。こうしたコスト増と金利負担の増加は、巨額の負債を抱えながら進められている現在のAI関連のインフラ整備にとって、決して好ましいものではありません。すでに多くの内部関係者の間では、AIバブルが崩壊した際の影響が議論されています。アトランティック誌は、AIブームが崩壊すれば、多くの企業が倒産し、人々が職を失うといった劇的な失敗が起こるだろうという専門家の見解を伝えています。

しかし、シリコンバレーでは、そうした犠牲は世界を永遠に変えるような持続的な企業が生まれるために支払うべき対価であるという考え方が一般的であるようです。約4分の1世紀前、ドットコム・バブルが崩壊した際と同様に、今後はバリュー株、いわゆる割安株が力強く復活する可能性があります。資産運用会社のGMOによる報告では、ディープ・バリュー株と呼ばれる極めて割安な銘柄は、市場全体や過去の歴史と比較しても、異例なほど安値で取引されています。

保守的な予測に基づいても、米国のディープ・バリュー株は市場の他の銘柄を50%以上上回るパフォーマンスを出す可能性があると分析されています。かつてのスタグフレーション期を彷彿とさせる財政やエネルギーの状況、そしてAIバブルへの懸念が重なる中で、投資の視点は再び企業の根源的な価値へと移りつつあるのかもしれません。

破滅に瀕する文明

Is Another Stone Age in the Making? | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】世界最強の軍事力を誇る米国が標的に対して包囲網を敷くとき、多くの人はその勝利を疑いません。しかし、現在の対イラン情勢を巡る米国の外交政策は、あまりに楽観的で危うい前提に立っています。この記事の著者は、トランプ大統領が孫子の兵法を理解し、脅しだけで敵を屈服させられると考えているのかもしれないとしつつも、実際に攻撃が開始された後の破滅的なシナリオに警鐘を鳴らしています。

米国が考慮すべき最大の懸念は、イランの背後にある大国の存在です。2025年にロシアとイランが締結したパートナーシップは、現在では中国をも含む3カ国の強固な協力枠組みへと発展しています。この合意は、軍事調整や外交戦略、経済協力において3カ国を一本化するものです。ウクライナで米国と代理戦争を続けてきたロシアや中国が、苦境に立たされたパートナーであるイランを支援する動機は十分にあります。統合参謀本部議長のダン・ケイン空軍大将も、空爆はあまりにリスクが高く、地域全体に報復の連鎖を招くと警告していますが、トランプ氏はこれを「フェイクニュース」として退けています。

著者は、ポール・クレイグ・ロバーツ氏の言葉を引用し、中東に対する米国民の認識が親イスラエル派のロビー活動によって歪められており、その無知が壊滅的な戦争を引き起こしかねないと指摘します。また、1821年にジョン・クインシー・アダムズが述べた「米国は破壊すべき怪物を求めて海外へ行くことはない」という演説を振り返り、現在の米国が自由の守護者から、支配と力を象徴する「帝国の王冠」を戴く世界的な独裁者へと変質してしまったことを嘆いています。

もし米国の攻撃に対してイランが反撃し、米国の軍艦や戦闘機が破壊されれば、事態は容易にエスカレートします。限定的な核攻撃すら選択肢に浮上する可能性があり、そうなれば2000発もの戦術核を保有するロシアや中国を巻き込んだ第三次世界大戦はもはや空想ではありません。ウクライナ情勢が不安定な中で、イスラエルの影響下にあるトランプ氏が突き進む道は、文明を石器時代へと逆戻りさせるような、人類にとって取り返しのつかない結末を招く危険性を孕んでいるのです。

ドハティ氏の功績

Losing Brian Doherty: Chronicler of Libertarian Weirdos, Burning Man, and Rothbard’s Vision [LINK]

【海外記事紹介】リバタリアン運動の歴史を克明に記録し続けてきた作家でありジャーナリストのブライアン・ドハティ氏が、サンフランシスコ湾沿いの公園での転落事故により、57歳で急逝しました。ダグ・フレンチ氏によるこの記事は、現代アメリカのリバタリアン運動の記念碑的著作『資本主義を求める急進派(Radicals For Capitalism)』をはじめ、多くの優れた著作を残したドハティ氏の功績を称え、その死を悼むものです。

ドハティ氏は、単なる記録者にとどまらず、バーニング・マンやアンダーグラウンド・コミック、暗号資産、そして現代のリバタリアン運動を創り出した「革新的な変わり者たち」に深い愛情を持って接し、その姿を生き生きと描き出しました。同僚のニック・ギレスピー氏は、彼自身もまた、彼が書いた人々と同じように風変わりで、気難しく、そして素晴らしい人物であったと回想しています。

特に、ドハティ氏がそのキャリアを通じて情熱を注いだのが、経済学者マレー・ロスバードの研究でした。彼はロスバードに直接会うことはありませんでしたが、膨大な未発表資料や書簡を調査し、「ロスバードこそが現代アメリカのリバタリアン運動そのものである」と結論づけました。ドハティ氏は、ロスバードの情熱的で、知的で、冷徹かつユーモアに溢れた洞察を、卓越した文章力で読者に伝え続けました。

亡くなる直前に発表された「マレー・ロスバード生誕100周年」と題された最後の寄稿の中でも、ドハティ氏はロスバードの影響力の大きさを強調しています。ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンでさえ、数十年にわたりロスバードによる批判を気にかけ続けていたというエピソードは、その証左といえます。

ドハティ氏は、暴力的な干渉から解放され、自由市場の論理によって人間が互いに最善を尽くせる社会の実現というロスバードのビジョンを支持していました。この記事は、ドハティ氏が遺した高潔で活力に満ちた視点が、今後も世代を超えてリバタリアンたちに影響を与え、世界をより豊かで自由な場所に変えていく助けになるだろうと結んでいます。

今すぐ撤退を!

Just Get Out! Now! - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】元米連邦下院議員のロン・ポール氏は、トランプ大統領自身の声明や側近の発言、そして一連の報道から明らかになった事実として、米国が専門家の助言を完全に無視したまま、中東で大規模な戦争を開始したと厳しく批判しています。ホワイトハウスの報道官によれば、国務省や国防総省、国家安全保障会議などの専門機関は一切関与しておらず、大統領は「イランが攻撃してくるという予感があった」という理由だけで攻撃を決定しました。

その「予感」を補強したのは、イラン外相との交渉から帰国した大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏と友人のスティーブ・ウィトコフ氏でした。しかし、ポール氏が引用した報告によれば、両氏は核開発に関する基礎的な技術知識や歴史的経緯を致命的に誤解しており、イラン側の提案を大統領に誤って伝えたことで戦争を後押しした可能性が指摘されています。専門家が立ち会わない不正確な情報が決断の根拠となり、憲法上の責務を果たすべき連邦議会も機能せず、国民への十分な説明もないまま開戦に至ったとポール氏は憤りを見せています。

トランプ氏が掲げた「新たな戦争を始めない」という公約は空虚なものとなり、イランは事前の警告通りに域内の米軍基地への報復攻撃を断行し、ホルムズ海峡を封鎖しました。これにより石油価格は高騰し、世界経済と米ドルの価値は崩壊の危機に瀕しています。トランプ氏は3月上旬に「イランとの戦争に勝った」と早すぎる勝利宣言をしましたが、直後に封鎖された海峡を開放するため他国に艦船の派遣を懇願し、各国から拒絶されるという事態を招いています。

ポール氏は、この戦争ですでに多くの兵士が犠牲となり、数十億ドル相当の軍事設備が壊滅的な被害を受けたことは、米国史上最悪の軍事的大失敗の一つであると述べています。核兵器の使用という破滅的な選択肢を除けば、もはや有効な軍事手段は残されていません。唯一の現実的な選択肢は、かつてのベトナム戦争時と同様に「今すぐ撤退すること」だけです。中東の基地を放棄し、帝国的支配に終止符を打たなければ、状況はさらに悪化する一方であるとポール氏は強く警告しています。

米債務のブラックホール、拡大続く

U.S. Government Debt Black Hole Got Bigger in February [LINK]

【海外記事紹介】米国の連邦政府債務という巨大なブラックホールが、2026年2月もさらに拡大を続けています。国家債務が39兆ドルに迫る中、トランプ政権は先月だけで3075億ドルの財政赤字を計上しました。これにより、2026年度の予算赤字は、わずか5カ月間で1兆ドルを突破しています。オバマ政権下での年間最大赤字額が2009年の1.41兆ドルであったことを踏まえると、現在の赤字がいかに速いペースで積み上がっているかが分かります。

明るい材料を挙げれば、今年度の赤字額は関税収入の大幅な増加により、前年同期比で約12%減少しています。特に関税による収入は前年比で約294%という驚異的な伸びを見せ、累計1510億ドルに達しました。しかし、この増収傾向も長くは続かない可能性があります。関税収入はピーク時の月平均300億ドルから、2月には266億ドルへと減少に転じました。さらに、最高裁判所がトランプ氏による一方的な関税措置を違憲と判断したことが、今後の収入に追い打ちをかけると予測されています。

最大の問題は、連邦政府の支出が依然として制御不能な状態にあることです。先月の支出額は6206億ドルを超え、前年同期比で2.8%増加しました。政府効率化省(DOGE)の存在感や、教育省などの予算削減といった動きはあるものの、全体的な支出の勢いは止まっていません。昨年度の連邦政府支出は総額7兆ドルを超えており、1日あたりに換算すると192億ドルを消費している計算になります。さらに現在は戦争という新たな支出要因も加わっています。

こうした膨大な債務に伴う利息の支払いも、財政を圧迫する深刻な要因となっています。2月の利息支払い額は934億ドルに上り、今年度の累計は前年同期比8.8%増の5200億ドルとなりました。驚くべきことに、利息への支出はすでに国防費やメディケア(高齢者向け公的医療保険)を上回り、社会保障に次ぐ第2の支出項目へと成長しています。過去の低金利時代に発行された国債が次々と満期を迎え、より高い利回りの新債券に置き換わっているため、金利負担は今後も増大し続ける見通しです。

「支出削減」という言葉とは裏腹に、実態としては歳出の絶対額が増え続けている米国の財政状況は、極めて危うい均衡の上に立たされているといえます。

500枚の金貨の行方

A Comedy or a Tragedy? Treasure Hunter Freed from Prison [LINK]

【海外記事紹介】2年間の実刑判決を受けたはずの男性が、実際には10年間も投獄されていました。この物語の主人公であるトミー・トンプソン氏は、悲劇の犠牲者なのか、あるいは驚異的な自制心を持つ策略家なのか、その真実は誰にも分かりません。海洋工学を学んだトンプソン氏は、1857年に沈没した蒸気船「SSセントラル・アメリカ号」の捜索に乗り出し、1988年に大西洋の深海で大量の金貨や金塊を発見しました。当時回収された約3トンの金は、1億ドルから1億5000万ドルの価値があると推定されました。

この輝かしい成功の直後から、トンプソン氏の人生は法廷闘争へと一変します。投資家たちが利益の分配を求めて提訴したものの、彼は出廷を拒否して逃亡し、2015年に潜伏先のフロリダで逮捕されました。彼は出廷拒否の罪を認めましたが、問題は回収された金のうち、未だに行方が分からない500枚の金貨にありました。トンプソン氏は「金貨は信託に預けており、現在の所在は知らない」と主張し続けましたが、裁判所はこれを虚偽とみなし、彼を「法廷侮辱罪」で勾留しました。

法廷侮辱罪による勾留は、本人が情報の開示に協力するまで継続される性質を持っており、トンプソン氏の場合、この状態が異例の長期間に及びました。彼は2020年の法廷でも「金貨の行方は分からず、自分を自由にする鍵を持っていない」と訴えましたが、釈放が認められたのは2024年になってからのことでした。そこからさらに、本来の出廷拒否による2年間の刑期を終え、ようやく先週、彼は自由の身となりました。

10年以上もの歳月を刑務所で過ごしたトンプソン氏の物語が、喜劇か悲劇かを分けるのは、その500枚の金貨の行方です。もし彼が本当に所在を知らずに10年間を失ったのであれば、それは救いようのない悲劇です。しかし、もし彼が金の隠し場所を知りながら、釈放後の報酬のために10年間の沈黙を貫いたのだとすれば、それは彼がシステムに対して最後の大笑いを収めた、壮大な喜劇といえるのかもしれません。現在、その金貨には約250万ドルの価値があるといわれています。

2026-03-16

トランプ氏側近の戦争責任

Not so diplomatic: Witkoff, Kushner, and Trump’s march to war in Iran | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】米国とイランの間で戦火が上がった「壮絶な怒り」作戦の裏側で、トランプ大統領の側近であるスティーブ・ウィトコフ氏と、娘婿のジャレッド・クシュナー氏の言動が大きな議論を呼んでいます。イランとの交渉を任された外交特使であるウィトコフ氏は、外交官とは言い難い強硬な発言を繰り返しており、彼らが大統領に提供した誤解を招く助言が、米国を紛争へと押し流す決定的な要因になったとの疑惑が浮上しています。

報道によると、ウィトコフ氏とクシュナー氏は作戦開始直前、大統領に対して「イランは交渉を時間稼ぎに利用しているだけだ」と報告しました。しかし、交渉の仲介にあたったオマーンの外相や核軍縮の専門家たちは、これに強く反論しています。実際にはイラン側は、2015年の核合意を上回る大幅な譲歩を提示していたとされています。それにもかかわらず、両氏がイラン側の提案を拒絶し、交渉が決裂したと報告した背景には、彼らの専門知識の欠如があったのではないかと指摘されています。

専門家によれば、両氏はイランが医療用原子炉で低濃縮ウラニウムを使用することを「核兵器開発の兆候」と誤認していましたが、物理的にその原子炉で核爆弾を作ることは不可能でした。また、国際原子力機関(IAEA)や米情報機関も、イランが核兵器製造を追求していないとの結論を出していましたが、ウィトコフ氏はそれとは正反対の主張を公に展開しました。交渉に立ち会った第三者からは、ウィトコフ氏が事実を歪曲し、平和的な解決を意図的に妨害したのではないかという深刻な疑念も呈されています。

さらに、この両氏とイスラエルの極めて密接な関係も、不信感に拍車をかけています。ウィトコフ氏はネタニヤフ首相から贈られた特製ポケベルを愛用するほどの親イスラエル派であり、クシュナー氏もまた、幼少期からネタニヤフ氏と家族ぐるみの付き合いがある人物です。両氏は開戦前からイスラエル当局と連日連絡を取り合っており、現在はイスラエルと連携して対イラン戦争の調整役を担っていると報じられています。

交渉の参加者たちの間では、両氏の無能さ、あるいは意図的なサボタージュによって平和的な解決策が台無しにされたという認識が広がっています。米国が中東で再び泥沼の戦争に巻き込まれる中、両氏が果たした役割について、議会やメディアによる厳格な検証が求められています。

銃所有はなぜ必要か

We Need Our Guns - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】銃を所有する権利を巡る議論は、憲法修正第2条の解釈に焦点が当たりがちですが、より本質的な問題は、個人が自らの身体と正当に得た財産を守るという基本的な権利にあります。リバタリアンの視点に立てば、各個人は自分自身の所有者であり、その権利を守るために防衛手段を講じる権利を有しています。自由権があっても、それを武力で妨害する者を阻止する権利がなければ、その権利は無価値に等しいからです。

経済学者のマレー・ロスバードが指摘したように、銃やナイフ、あるいは棒といった物理的な物体そのものが攻撃性を持っているわけではありません。それらは、攻撃にも防衛にも、あるいは犯罪とは無関係な目的にも使用され得ます。特定の物体を禁止したり購入を制限したりするのではなく、法は実際の犯罪者を捕らえることに集中すべきです。銃の所有を制限しない地域の方が、制限の厳しい地域よりも犯罪率が低いというデータもあります。経済学者のジョン・ロットの研究によれば、銃は犯罪に使われるよりも自衛のために使われる頻度の方が高く、銃のない「ガンフリー・ゾーン」は犯罪を抑止するどころか、かえって犯罪者を引き寄せる傾向にあります。

また、銃の登録制度についても、その実効性には疑問が残ります。犯罪現場に銃が残されることは稀であり、残されていたとしても犯罪者が自分名義の銃を放置することはまずありません。カナダや米国のハワイ、シカゴなどの事例を見ても、登録制度が凶悪犯罪の解決に直接貢献した例はほとんど報告されていません。むしろ、膨大な警察の労働時間と多額の公金が、犯罪解決には繋がらない事務手続きに費やされているのが実態です。

歴史的な観点からも、銃の普及と暴力犯罪の減少には相関が見られます。歴史学者のジョイス・リー・マルコムの研究によれば、中世の英国は銃が普及していなかったにもかかわらず、現代の想像以上に暴力的で殺人率も高かったことが示されています。銃が普及し、個人の自衛の権利が確立されるにつれて、殺人率は急激に低下していきました。銃が豊富に存在した19世紀末の英国では、武装犯罪は過去最低水準に達していました。

このように、個人の権利保護と治安維持の両面において、銃を所有する権利を維持することは極めて重要です。自衛の手段を確保することは、個人の自由を守るための不可欠な要素であると言えます。

力は正義なり

'Might Makes Right' Declares Trump White House | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領による一連の強硬な外交姿勢は、これまで米国の軍事介入に際して用いられてきた道徳的な口実を剥ぎ取り、その本質が「力は正義なり」という弱肉強食の論理であることを図らずも露呈させています。この記事の著者は、ベネズエラやイランに対する軍事行動、さらにはグリーンランドの併合への意欲といったトランプ氏の行動が、米国の帝国主義的な野心をかつてないほど明確に示していると分析しています。

過去の政権、例えば1991年の湾岸戦争以降、米国は軍事介入の際に「正義の戦い」という概念を掲げ、民主主義の普及や人道的危機の回避といった正当な理由を国民や国際社会に提示してきました。しかし、トランプ氏はこうした修辞をかなぐり捨て、ベネズエラへの介入目的が石油資源の支配にあると公言し、グリーンランドについても「我々には必要だ」という個人的な欲求に近い論理を押し通しています。これは、国際法や権利の概念ではなく、単なる「力」による支配の表明に他なりません。

著者は、スティーブン・ミラー大統領次席補佐官代行の「世界は力によって支配されている」という言葉を引用し、現在の政権がリアリズムを極端な形で追求していると指摘します。かつてオバマ政権下でドローン兵器が普及した際、軍事介入の「最後の手段」という原則が失われましたが、トランプ政権ではさらに「正当な権威」という制約すら無視されるようになりました。一国の選挙で選ばれた指導者が、他国の国民の運命を左右し、命を奪う権利を当然のごとく行使している現状に、強い警鐘を鳴らしています。

また、カナダやグリーンランドといった主権国家の併合を口にする背景には、軍需産業のロビー活動や、米国が動かなければロシアや中国が動くという「ドミノ理論」の再来があります。他国を独立した主体として認めず、自国の利益のために吸収すべき対象とみなす「アメーバのような」拡張主義は、第二次世界大戦後の国際秩序を根底から覆すものです。

「アメリカを再び偉大に」という運動が、今や異次元のレベルでの世界覇権の追求へと変質しており、著者はこれが最終的に世界大戦へと発展し、世界の境界線が塗り替えられる事態に陥るのではないかと危惧しています。他国の主権を否定し、大統領個人の「感情」や「感覚」で他国の指導者を排除する現在の米国の姿勢は、もはや道徳的な正当性を失った剥き出しの力による統治であると結論づけています。

スペインの反乱

The Iberian Rebellion Against NATO Imperialism | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月28日、米国とイスラエルによる対イラン軍事作戦「壮絶な怒り作戦」が開始されました。多くのNATO加盟国が同調する中、スペインのペドロ・サンチェス政権は、自国内のモロン空軍基地とロタ海軍基地の使用を拒否するという、同盟内で異例の決断を下しました。サンチェス首相はこの作戦を、国際法を逸脱した不当で危険な軍事介入であると強く批判し、報復を恐れて自国の価値観や利益に反する行為に加担することはないと断言しました。

スペインのこうした独自路線は、歴史的な背景に根ざしています。かつてのフランコ政権はアラブ諸国との関係を重視し、1948年の建国から長らくイスラエルを国家として承認しませんでした。1986年にようやく外交関係を樹立した後も、パレスチナ問題に関しては一貫して批判的な立場を維持してきました。2023年10月のガザ紛争勃発後、その溝は決定的なものとなり、スペインは2024年にパレスチナを国家承認し、2025年にはイスラエルに対し武器禁輸や軍事契約の破棄を含む包括的な制裁を課しました。

今回の対イラン作戦への協力拒否に対し、米国のトランプ大統領は即座に反発し、スペインとの全貿易の中止を示唆するなど、経済的な圧力を強めています。しかし、サンチェス首相の姿勢は「地理的リアリズム」に基づいた冷静な戦略によるものです。首相は、スペインにとっての脅威はロシアがピレネー山脈を越えて侵攻してくることではないと明言しています。東欧や北欧の国々が直面する安全保障上の課題は、必ずしもスペインの課題とは一致しないという考えです。

この認識の差は、防衛予算にも表れています。スペインはNATOが掲げるGDP比5%という新たな国防費目標を拒否し、社会保障を優先する立場から2.1%に留める方針を維持しています。スペインの事例は、米国の普遍的な外交方針が、必ずしも全加盟国の地政学的・経済的利益と合致しないことを示しています。アラブ世界との歴史的絆や、米国とは異なる脅威認識を持つスペインは、西側の枠組みを完全に放棄することなく、自国の利益を最優先する多極化時代の先駆けとなっています。この「イベリアの反乱」は、単なる政治的ポーズではなく、遠く離れた超大国の思惑よりも自国の実利を重んじる、実利的な選択の結果であると言えます。

軍事化する北極圏

Militarization of the Arctic: A new arena for US imperial ambition in Cold War Two - Geopolitical Economy Report [LINK]

【海外記事紹介】 かつて国際的な科学調査の協力の場であった北極圏が、急速に軍事化の舞台へと変貌を遂げています。この記事は、トランプ大統領によるグリーンランド併合への意欲や、NATOの拡大、そして中国の商業的関心の高まりを背景に、この地域が「第二の冷戦」の最前線となった現状を分析しています。

トランプ氏は、グリーンランドを米国の影響圏とみなすモンロー主義の延長線上で捉えており、その豊富な鉱物資源と、中国の海上活動を制約できる戦略的要衝としての価値に注目しています。これはデンマークの主権やNATOの結束を揺るがす動きですが、米国の帝国的な野心の表れといえます。また、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟により、ロシアは北側から完全に包囲される形となりました。ロシアと中国の連携が強まる中で、対立の構図は明確化しています。

かつて北極圏の活動は、1920年のスバールバル条約に基づき、軍事利用を排除した学術調査が中心でした。現在、日本や韓国を含む45カ国が締約しており、これら非北極圏国も、気候変動の影響を理由に「近北極国家」としての関与を強めています。日本は2015年に北極政策を策定し、北極海航路の商業利用や資源開発を目指してノルウェーとの連携を深めています。一方、インドはロシアと協力してインフラ整備を進め、韓国は砕氷船建造の拠点として存在感を示しています。

しかし、最も重要なプレイヤーは米国、ロシア、中国の3カ国です。ロシアは北極海航路の支配権を強め、中国と共同で砕氷船の開発や海底ケーブルの敷設を進めています。中国は北極を「氷上のシルクロード」と位置づけ、独自の衛星測位システムを用いたデジタル化を推進しています。これに対し、米国は北極圏を自国の安全保障に直結する「西半球」の枠組みに取り込み、軍事的な優位を確立しようとしています。

2026年2月には、NATO加盟国である北極圏7カ国の軍事力を調整する「アークティック・セントリー」が発足しました。これにより、米国は加盟国の基地への自由なアクセスや兵器の配備が可能になります。ドローン技術などの新しい軍事技術の導入も検討されており、かつて平和的だった北極圏は、米国の野心と大国間の競争が激突する、軍事化された新たな対立の場へと変質しているのです。

独は米の属国か?

Germany a 'Vassal' of US? - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】ドイツのフリードリヒ・メルツ政権が、アメリカの「属国(ヴァッサル)」化しているとの批判が欧州内で高まっています。スペインのヨランダ・ディアス副首相は、メルツ首相がドイツをアメリカの従順な家来へと変えてしまったと厳しく批判しました。この論争の背景には、アメリカとスペインの間の外交危機があります。ドナルド・トランプ大統領は、スペインがアメリカによる対イラン戦争を非難し、自国領土を軍事作戦に使用することを禁止したことに対し、スペインへの制裁と貿易関係の断絶を表明しました。メルツ首相はこのトランプ氏の声明が出された際、まさにホワイトハウスの執務室で同大統領と会談していましたが、スペインへの脅しに対して公に反対することなく沈黙を守りました。

ディアス副首相は、このメルツ首相の不作為を「弱さと卑屈さの表れ」であると断じ、欧州が直面している歴史的な局面を管理する能力が欠けていると批判しました。欧州が必要としているのはリーダーシップであり、トランプ氏に敬意を払うだけの属国ではないという主張です。また、ドイツが経済的に極めて脆弱な立場にあり、技術、金融、エネルギーの面でアメリカに依存していることが、こうした弱腰な態度につながっていると指摘されています。ドイツは欧州連合の中でフランスと共に主導的な役割を果たそうとしていますが、加盟国であるスペインへの不当な制裁を前に沈黙することは、その指導力としての正当性を自ら損なう行為と言わざるを得ません。

しかし、記事によれば、こうしたドイツの態度は欧州連合の構造的な問題を反映したものであり、驚くべきことではありません。欧州連合は長年、防衛や主要技術、戦略的分野においてアメリカに従属しており、ドイツに至っては数十年にわたり米軍の軍事占領下にあります。メルツ首相がどれほど「強いドイツ」や「欧州のリーダー」というイメージを投影しようとしても、アメリカに対するドイツの構造的な弱さは隠しようがないのが現実です。

一方で、アメリカによるイランへの軍事行動を拒否したスペインの姿勢は政治的勇気として評価されています。これは、アメリカの中東政策に対する欧州内の不一致や疲弊の表れでもあります。ただし、スペインが真にアメリカからの独立を目指すのであれば、現在の欧州連合の枠組みに期待するのは間違いであるとも指摘されています。欧州連合全体がアメリカの属国的な性質を帯びている以上、ドイツに期待するのではなく、独自の道を模索すべきだというのがこの記事の主張です。一連の騒動で最も傷ついたのは、ブロックのリーダーとしてのイメージをさらに失墜させたメルツ政権下のドイツであることは間違いありません。

AIは雇用を奪わない

The Robot Won’t Take Your Job. The Government Might | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】人工知能(AI)の進化が人々の仕事を奪うという懸念が広がっていますが、歴史を振り返れば、私たちはかつての「ラッダイト運動」と同じ過ちを繰り返している可能性があります。1812年、イギリスの織物職人たちは機械が自分たちの仕事を奪うと信じて織機を打ち壊しました。確かに職としての手織りは消えましたが、労働は消滅したわけではありません。代わりに工場や鉄道、都市、そして当時の人々が想像もできなかった新たな産業が生まれ、雇用を吸収していきました。今日、AIがもたらす変化は当時の織機とは比較にならないほど大規模ですが、「恒久的な大量失業が起き、人間の経済的価値がなくなる」という結論は、過去と同じ誤解に基づいています。

19世紀の経済学者ジャン=バティスト・セーは、生産こそが購買力の源泉であると説きました。価値のあるものが生産されれば、それが所得を生み、他の商品への需要を作り出します。例えば、米国の農業従事者はかつての40%から現在は2%未満に減少しましたが、残りの38%の人々が失業したわけではありません。彼らはプログラマーや看護師、パイロットといった、かつては存在しなかった職に就きました。また、ATMが登場した際も銀行窓口係の雇用崩壊が予測されましたが、実際には運営コストの低下によって店舗数が増え、雇用はむしろ数十年にわたって増加しました。人間は、より高度な判断や対人交渉という価値の高い仕事へと移行したのです。

AIが人間に取って代わることができない決定的な要素は「責任」です。市場は単に知的な出力を取引する場所ではなく、責任の所在を割り当てる場所でもあります。外科医や弁護士、起業家は、自らの評判や資本、資格を賭けて判断を下し、失敗すればその代償を負います。AIには失うべき評判も資本もなく、結果に対して責任を負うことができません。この責任を伴う人間関係こそが、経済活動の根幹を支える価値として残り続けます。

真の脅威は自動化そのものではなく、政府による規制を通じた「独占」です。現在、大手IT企業は安全性を名目に、新規参入を阻むような複雑な規制やライセンス制度を構築しようとしています。これは「規制の虜」と呼ばれる現象で、公衆の安全を盾に競合他社を排除し、カルテルを形成する動きです。もし将来的に失業が起きるとすれば、それは機械が有能すぎるからではなく、規制によって人々が機械を自由に利用できなくなることが原因でしょう。私たちが求めるべきは、技術の制限ではなく、職業免許や住宅規制といった移動や適応を妨げる障壁の撤廃、そして誰もがAIを活用できるオープンソース化の促進です。脅威は機械ではなく、その周りに築かれる檻なのです。

ハーバーマス対ホッペ

Habermas, Hoppe’s Teacher and PhD Advisor, dies at 96 [LINK]

【海外記事紹介】ドイツを代表するネオ・マルクス主義の哲学者、ユルゲン・ハーバーマス氏が2026年3月14日、96歳で死去しました。ハーバーマス氏は、現代で最も影響力のある公的知識人の一人として知られていますが、リバタリアン(自由至上主義)の思想家として著名なハンス・ヘルマン・ホッペ氏の指導教授であったことでも知られています。ホッペ氏は1968年から1974年にかけて、フランクフルトのゲーテ大学でハーバーマス氏のもと、デヴィッド・ヒュームとイママヌエル・カントに関する博士論文を執筆しました。

当時、ホッペ氏は24歳で、時代の精神を反映して左派的な思想を持っていました。しかし、その後の知的成熟を経て、ホッペ氏はハーバーマス氏やフランクフルト学派の左派思想を離れ、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスのオーストリア学派経済学や、マレー・ロスバードのアナルコ・キャピタリズム(無政府資本主義)へと傾倒していきました。ホッペ氏は、ハーバーマス氏の教え子の中で最も有名でありながら、政治的には最も対極に位置する人物と見なされています。

ホッペ氏は、自身の重要な貢献である「議論の倫理学」を確立する際、ハーバーマス氏の「討議倫理学」の要素を一部参照していますが、そのつながりは限定的です。ホッペ氏によれば、学生時代にはハーバーマス氏の討議倫理学については詳しく知らず、むしろハーバーマス氏の友人であるカール・オットー・アーペルの見解や、ミーゼス、ロスバードの思想からより大きな影響を受けたといいます。ホッペ氏は、哲学的なトレーニングを与えてくれた師としてのハーバーマス氏には感謝しつつも、同氏がドイツの世論や政治に与えた影響については、リバタリアンの観点から「完全な災厄」であると厳しく批判しています。具体的には、ハーバーマス氏が社会民主主義や福祉国家主義、多文化主義、そして政治的中央集権化の「最高司祭」として機能し、ドイツ社会を左傾化させたと指摘しています。

ホッペ氏は後に、計画経済の非効率性を目の当たりにし、カント的理性的アプローチを通じて、経済学の法則が経験によって反論できない「先験的(アプリオリ)」な真理であることを発見しました。こうして、かつての師の思想からは完全に決別し、独自の自由社会の理論を構築するに至ったのです。

銀、一段高の舞台整う?

Silver’s Endgame: Almost Too Obvious [LINK]

【海外記事紹介】銀(シルバー)市場において、かつてないほど明白な投資の好機、いわゆる「絶好球」が到来しています。これまでニューヨークの商品取引所であるCOMEX(コメックス)では、銀行などの大手プレーヤーが価格操作を行い、銀の価格を不当に抑え込んできました。直近の2026年1月にも、証拠金を引き上げることで強制的な売りを誘発し、過去44年間で最悪の暴落を仕組んだばかりです。しかし、こうした紙の上での価格操作による支配は、物理的な現物供給の限界という壁に突き当たり、終焉を迎えようとしています。

現在、銀の市場では「ペーパーシルバー」と呼ばれる紙の上の請求権と、実際に引き渡し可能な現物の在庫との間に、絶望的なまでの乖離が生じています。具体的には、コメックスにおける現物配送の要求に対し、実際に保管されている銀の量はわずか7分の1程度に過ぎません。さらにデリバティブや上場投資信託なども含めた市場全体で見れば、現物1オンスに対して350倍もの紙の請求権が存在しているという分析もあります。これは「椅子取りゲーム」に例えるなら、音楽が止まった瞬間に座れる椅子がほとんど残っていない状態を意味します。実際に現物の引き出しは加速しており、2026年1月の配送申請は通常の40倍に達しました。このペースが続けば、今後90日以内にコメックスで現物の引き渡しが不可能になる「債務不履行」の状態に陥る可能性すらあります。

実需面でも銀の需給は逼迫しています。銀は工業需要が全体の60%を占め、太陽光パネルや軍事用ミサイルなど、現代社会に欠かせない用途を持っていますが、過去5年間で累計10億オンス近い供給不足に陥っています。さらに、主要産出国の輸出制限や、中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の上昇によるインフレ懸念も、通貨の代替資産としての銀の価値を押し上げる要因となっています。銀の供給の多くは他の金属採掘の副産物であり、需要が増えたからといってすぐに増産できるものではありません。このように、歴史的な供給不足、現物在庫の枯渇、そして高まる工業・通貨的需要が重なる現在の状況は、銀の価格が劇的に上昇するための舞台が整ったことを示しています。

ミレイ氏の暗号資産疑惑、500万ドル支払いの草案

Draft $5M Deal Linked to Milei’s Libra Promotion Found on Lobbyist’s Phone [LINK]

【海外記事紹介】アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が暗号資産「リブラ」の宣伝に関与したとされる疑惑で、新たな展開がありました。ロビイストのマウリシオ・ノヴェリ氏のスマートフォンに対するフォレンジック調査の結果、ミレイ大統領によるリブラ・トークンの宣伝に関連して、500万ドルの支払いを記した契約書の草案が見つかったと報じられています。

この文書は2025年2月11日に英語で作成されており、ミレイ大統領がXでリブラについて投稿するわずか3日前のものでした。草案には3段階の支払い構造が明記されており、まず前払いとして150万ドルの現金またはトークン、次にミレイ大統領が特定の人物を顧問として紹介する投稿を行うことで150万ドル、そして最終的にブロックチェーンやAIに関するコンサルティング契約を締結することで200万ドルを支払うという内容が含まれていました。ただし、この文書には資金の受取人が誰であるかは明記されていません。

この騒動の発端は2025年2月、ミレイ大統領がSNS上で特定の人物をブロックチェーンとAIのアドバイザーとして紹介したことにあります。この投稿を受けてリブラというミームコインの価格は一時急騰し、時価総額は40億ドルに達しましたが、わずか数時間で94%暴落しました。この急落によって約4万人の個人投資家が合計で約2億5000万ドルの損失を被ったとされています。当局の調査では、この騒動の直後に事態を沈静化させるための声明案もノヴェリ氏の端末から見つかっています。そのメモには、プロジェクトへの支持を表明しつつ金銭的な関与を否定し、疑惑を政治的ライバルによる攻撃と位置づける内容が記されていました。

ノヴェリ氏の通話記録からは、大統領が投稿を行う前後でミレイ大統領やその親族、さらに政府のアドバイザーと連絡を取り合っていたことも判明しています。このリブラの暴落を受けて野党議員からは大統領の弾劾を求める声も上がりましたが、ミレイ大統領自身は単に情報を広めただけであり、宣伝したわけではないと主張しています。

2026-03-15

米医療カルテルの病理

How Medical Licensing Serves Big Pharma at the Expense of Public Health | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカにおける医師免許制度が、実は公衆衛生の向上ではなく、製薬業界と結託した「医療カルテル」の利益保護のために機能していると指摘する論評をご紹介します。私たちは、免許制度が「ヤブ医者」から消費者を守るためのものだと信じ込まされていますが、著者はこの制度こそが高騰する医療費と、慢性疾患の増加という悲惨な健康状態の根本原因であると主張しています。

19世紀半ばまで、アメリカの医療は「自由取引」の状態にあり、多様な治療法が競い合うことでコストは低く抑えられ、乳児死亡率も世界最低水準でした。しかし、1847年に設立されたアメリカ医師会(AMA)は、自由市場での競争を避け、政府の強制力を利用して独占体制を築こうとしました。彼らは医学部の数を制限し、カリキュラムを統制することで、自分たちが認める標準治療以外の実践を排除していったのです。

この独占を決定づけたのが、1910年の「フレックスナー報告書」です。ロックフェラー財団やカーネギー財団の支援を受けたこの報告書は、医学教育を石油化学由来の医薬品を用いる手法に一本化し、代替療法を教える多くの学校を閉鎖に追い込みました。その結果、医学研究は製薬業界の利益に沿った「症状を薬で抑える」アプローチに偏り、根本的な原因に対処するホリスティックな視点が失われてしまいました。

また、医療カルテルは、20世紀の死亡率低下をワクチンや現代医学の功績だと宣伝していますが、統計データによれば、主要な感染症による死亡率は、ワクチンが普及するずっと前から、衛生環境や栄養状態の改善によって劇的に減少していました。著者は、現代の免許制度が、患者の健康よりも「体制が承認した標準」への準拠を優先しており、インフォームド・コンセント(説明を受けた上での同意)という基本的人権を侵害していると批判しています。

結論として、著者は医師免許制度の廃止を提言しています。教育や認定の基準は市場原理に任せれば十分に機能し、消費者は自らの判断で治療者を選択できるはずです。政府が医療を独占的に管理する現状を「がん」に例え、健康を取り戻すための唯一の治療法は、政府を医療ビジネスから完全に撤退させることだと締めくくっています。

文化マルクス主義の本質

Cultural Marxism Masquerading as True History | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカで現在進行している「文化マルクス主義」を巡る論争と、トランプ政権の対応について、保守的な視点から分析した論評をご紹介します。この記事の著者は、大学などの教育機関や文化施設を支配する勢力が、学問の自由や「真実の歴史」という美名の下で、実は過激な思想を学生に植え付けていると警鐘を鳴らしています。

トランプ政権は、こうした動きに対抗して「アメリカの歴史に真実と正気を取り戻す」と題した大統領令を出し、歴史修正主義的なプロジェクトを解体しようと試みました。しかし、記事の著者はこの戦略を「弱点がある」と指摘しています。なぜなら、歴史の再解釈自体は学問的に正当な行為であり、問題の本質は歴史論争ではなく、西洋文明の根幹を破壊しようとする文化マルクス主義という毒性のあるイデオロギーそのものにあるからです。大統領令が挙げた具体例には、スミソニアン博物館が「勤勉」や「核家族」を「白人文化」の特徴として批判的に扱うなど、アメリカの伝統的価値観を抑圧的なものとして描き出す傾向が含まれています。

文化マルクス主義を信奉する人々は、自分たちの活動を「歴史的な情報の提示」に過ぎないと主張し、批判を「陰謀論」として嘲笑します。しかし、彼らが過去の奴隷制などの負の側面にのみ焦点を当てるのは、客観的な分析のためではなく、先祖の仇を討つという報復の感情や、西洋文明の解体を目的としているためだと著者は断じます。その証拠として、彼らが歴史の正確さを重んじると言いながら、一方で各地の歴史的記念碑を破壊し、墓石までなぎ倒す破壊主義に走っている事実を挙げています。

歴史学者のクライド・ウィルソン氏は、これはもはや過去の解釈を巡る議論ではなく、自分たちの文化そのものに対する戦争であると述べています。文化マルクス主義のルーツは、フランクフルト学派やグラムシの思想、そして「批判的人種理論」へと明確に繋がっており、彼らの最終的な狙いは国家や地域の独自性を消し去り、新たな世界秩序を構築することにあります。

著者は、証拠を提示して彼らを説得できる段階はすでに過ぎていると強調します。歴史修正という仮面の裏に隠された、イデオロギーによる攻撃の本質を見抜く必要があると訴えています。この記事が描く米国の分断は、単なる歴史観の違いではなく、文化の存続をかけた深刻な対立であることを示唆しています。

国家を消去する

Deleting the State: Skoble’s Deleter | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの哲学者イオン・J・スコーブル教授が2026年に再版した著書『国家を消去する:幻想へのレクイエム』の内容について、日本の読者の皆様にその核心をご紹介します。著者は長年ブリッジウォーター州立大学で教鞭を執る分析哲学の権威であり、リバタリアニズム(自由至上主義)の立場から「最小国家」をも否定する稀有な視点を提示しています。

この記事の主な目的は、政治的権威の正当性を問う論理的な枠組みを検証することにあります。スコーブル教授は、人間にとって自由であることが善であるならば、強制力を伴う政治的権威は不当であるというシンプルな三段論法を提示します。ここで重要なのは、彼が否定しているのはあくまで「政治的」な権威であり、教師と生徒、あるいは親と子の間にあるような教育的・道徳的な権威までを否定しているわけではないという点です。

一般的な自由至上主義者の多くは、国家を「必要悪」として認めます。国家による強制や徴税は本来好ましくないものの、国家がなければ社会が崩壊し、無秩序に陥るという「ホッブズ的な恐怖」を抱いているからです。彼らは、人間が自分の生存のみを優先し、自発的な協力や分業が成立しなくなると考えています。しかし、スコーブル教授はこの恐怖こそが一種の幻想であると反論します。

教授が反論の根拠として挙げるのが、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」の解釈です。国家が必要だと主張する人々は、人間が一度限りの取引では相手を裏切る方が得だと考え、信頼関係が築けないと想定します。これに対し、教授は現実の社会における人間関係は一度きりではなく、何度も繰り返される「反復ゲーム」であると指摘します。ロバート・アクセルロッドが提唱した「しっぺ返し戦略」などの研究や歴史的な事例を引くと、人間は繰り返し接する相手とは協調した方が長期的に利益を得られることを学び、国家の強制がなくても秩序を維持できる可能性が高いことが示されています。

記事の結びにおいて、スコーブル教授はこうした国家のない社会が「非現実的だ」という批判に対しても明確な答えを用意しています。現代において国家権力が拡大し続けているのは、それが「必要かつ適切である」という検証されていないイデオロギーを人々が受け入れているからに過ぎません。かつての「王権神授説」が市場の失敗や「黙示的同意」といった現代的な理論に形を変えて、国家の存在を正当化しているだけなのです。教授は、こうした既存の固定観念に挑戦し、真の自由を追求するプログラムこそが、現代において検討されるべき真実であると説いています。

蘭新政権、軍事化に意欲

New Government of the Netherlands Is a Poster Boy for Europe’s Thirst for War - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】オランダで2月に発足したイェッテン連立政権の方針は、欧州における軍事化への強い意欲を象徴しています。イェッテン首相率いる民主66、自由民主国民党、キリスト教民主同盟の3党によるこの少数与党政権は、連立合意において国防予算を現在の260億ドルから225億ドル上乗せしてほぼ倍増させるという、前例のない軍拡案を提示しました。これは国防支出を対GDP比で3.5%に引き上げることを目指すもので、この基準を法律で義務化する動きも見せています。

新政権の閣僚の顔ぶれも、こうした強硬な姿勢を反映しています。国防大臣にはルッテ前首相の後継者であるイェシルギョズ氏が就任し、外務大臣には欧州の防衛産業の重要性を説き、中国に対して厳しい姿勢を取るベレンゼン氏が起用されました。外交政策においては、国際法を重視すると標榜しながらも、米国による中東での軍事行動に理解を示すなど、米国の戦争遂行を支持する姿勢を鮮明にしています。

こうした軍備増強のしわ寄せは、国民の生活に直接及んでいます。国防予算を確保するため、ヘルスケアや社会支出で約196億ドルの削減が提案される一方、所得税などの増税が行われる見通しです。これによって、国民の平均的な購買力は年率0.4%以上低下すると試算されています。さらに、年金受給開始年齢を引き上げて71歳とする案や、外交官の削減、大使館の閉鎖といった外交機能の縮小も進められています。

深刻なのは、軍の要員確保に向けた強硬な動きです。政権は軍人を現在の1.5倍にあたる12万2000人に増やす計画ですが、国民の戦意は低く、政府は広報活動や王室を利用した宣伝に力を入れています。アマリア王女やマキシマ王妃が予備役として訓練に参加する姿を公開し、愛国心を煽る手法が取られています。また、女性を徴兵対象に含める法改正を静かに進め、17歳半からの若者の勧誘も強化しています。

記事は、国際法の守護者であり貿易と協力を重視してきたオランダが、国民の利益よりも軍事を優先する姿勢へ転換したと指摘しています。イェッテン政権は、現在の状況を「平和でもなければ戦争でもない」と定義し、志願者が集まらなければ強制的な徴兵制の再導入も排除しない構えを見せています。これは、オランダ一国に留まらず、欧州全体の優先事項が変質しつつあることを示唆しています。

イラン戦争の黒幕

The Iran War Whisperer: One U.S. Senator Has His Hands All Over This Conflict - Haaretz Today [LINK]

【海外記事紹介】サウスカロライナ州選出のリンゼー・グラム上院議員が、イラン戦争の舞台裏で事実上の「中東特使」として振る舞い、トランプ大統領とネタニヤフ首相の間に立って戦争のグランドデザインを描いています。かつてはトランプ氏の政敵だったグラム氏ですが、今や共和党内の介入主義派(タカ派)の筆頭として、長年の悲願であったイランへの軍事介入を実現させました。

グラム氏は、トランプ氏に「イランを再び偉大に(Make Iran Great Again)」と書かれた帽子を手渡したり、ネタニヤフ首相にトランプ氏への説得術を伝授したりするなど、開戦に至るプロセスを周到に調整してきました。彼の野心は単なる勝利に留まらず、戦争の先にある「利益」を見据えています。彼はテレビ番組で「現体制が崩壊すれば、新しい中東が誕生し、我々は巨額の利益を得るだろう。ベネズエラとイランだけで世界の石油埋蔵量の31%を占めており、これは中国にとっての悪夢であり、米国にとって素晴らしい投資だ」と露骨な本音を語っています。

また、グラム氏はSNSやメディアを通じて、同盟国に対しても「米国の戦争目的」に従うよう公然と圧力をかけています。サウジアラビアにはイランへの攻撃に加わるよう脅しをかけ、アラブ首長国連邦(UAE)には非協力的だと非難を浴びせ、さらにはレバノンへの戦火拡大まで促しています。イスラエルに対しては、戦後の新体制樹立に支障が出ないよう「燃料貯蔵庫への攻撃は慎重に」と注文をつけるなど、まるで自身が政権の中枢にいるかのような発言を繰り返しています。

これまでのグラム氏の言動は、孤立主義を掲げるトランプ氏を無理やり戦争へ引き戻そうとする「極端なタカ派の遠吠え」として片付けられてきました。しかし、現在の彼はトランプ政権内で絶大な影響力を持つ「戦争の設計者」の一人です。彼の言葉はもはや単なる一議員の意見ではなく、米国政府が進む危うい未来を予言するものとして、世界中が注視すべき事態となっています。

謎のカーグ島攻撃

Trump’s Kharg Island Fantasy… All Bark, No Bite - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領はSNSへの投稿で、イランのカーグ島にある軍事施設を攻撃したと主張しましたが、元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏はこの主張を現実離れした「幻想」であると厳しく批判しています。トランプ氏は石油ターミナル自体は攻撃していないと認める一方で、島の防空システムを完全に破壊したと述べています。しかし、現地からの報告によれば、攻撃の1時間後にも島の防空活動が確認されており、大統領の主張は事実によって否定されています。また、イランのミサイル能力を完全に壊滅させたという主張も、48回にわたるイラン側からのミサイルやドローン攻撃が続いている現状とは明らかに矛盾しています。

カーグ島にはイランの主要な石油輸出ターミナルがありますが、調査会社ケプラーのデータによれば、イランは過去1ヶ月で島のタンクから石油を運び出す量を1.5倍に増やしており、攻撃を予期して備えていたことが伺えます。重要なのは、もしイランの石油インフラが実際に破壊されれば、イランはペルシャ湾沿岸のすべての国々の石油・ガス施設に対して同等の報復攻撃を行うと警告している点です。これには、世界最大の積み出し拠点であるサウジアラビアのラス・タヌラや、カタールの世界最大級の液化天然ガス施設などが含まれます。もしこれらの施設が炎上すれば、地域全体のエネルギー供給網は壊滅的な打撃を受けることになります。

今回の限定的な攻撃とその後の誇大な主張には、二通りの解釈が可能です。一つは、トランプ氏がイランを打倒したという虚偽の宣伝を行い、アメリカ国民に対して勝利を宣言することで、米軍撤退への足がかりにしようとしている可能性です。もう一つは、大統領自身が自らの嘘を真実だと信じ込み、こうした攻撃によってイランを屈服させられると本気で考えている可能性です。いずれにせよ、軍事的な実態と大統領の発言との間には深刻な乖離が生じています。

現実にはイランの石油インフラは無傷であり、最悪のシナリオである地域全体のエネルギー施設への連鎖的な攻撃は辛うじて回避されました。しかし、トランプ氏が現実を直視せず、不正確な情報に基づいて勝利を演出しようとする姿勢は、情勢をさらに不安定にする危険を孕んでいます。イランによる反撃が今も継続している中で、この紛争がどこへ向かうのか、冷静な見極めが求められています。

米外交政策、イスラエルが支配

Time to Pull the Plug On Trump and Netanyahu - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの外交政策がいかにイスラエルの利益に支配されているかは、ドナルド・トランプ大統領の就任1年目に行われた、イスラエルのネタニヤフ首相による7回もの訪米と、議会やメディアでの熱狂的な歓迎ぶりを見れば明らかです。ガザでの悲劇的な事態や、西岸地区、レバノン、シリアへの攻撃の責任者であるにもかかわらず、彼がこれほど手厚く迎えられる背景には、イスラエル・ロビーによる巨額の献金と、メディアを通じた世論操作があります。こうしたイスラエルによる米政治界の支配は超党派的なもので、ジョー・バイデン氏もトランプ氏も、武器と資金を提供し、国際連合などの場で政治的な盾となってイスラエルの行為を擁護し続けてきました。

最近のイランに対する軍事行動も、こうした力学の延長線上にあります。マルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障補佐官は、イスラエルがイランの破壊を最優先事項としており、もしアメリカが攻撃に加わらなければイスラエルが単独で実行すると主張したことが、開戦の決定打になったと明かしています。また、トランプ氏に近い親イスラエル派の顧問であるジャレッド・クシュナー氏やスティーブ・ウィトコフ氏が、核開発に関する根拠の薄い情報を提示して大統領を動かしたとも報じられています。これらは、イスラエルが自国の目的のためにアメリカを罠にかけた、いわゆる「ネズミ捕り」にかかったような状況を強く示唆しています。

ユダヤ系の資金によって腐敗したアメリカの政治家たちは、必要であれば常にイスラエルに資金を提供し、武器を与え、外交的に保護し、自国の兵士を投入して戦わせなければならないと受け入れています。オバマ元大統領が決定した10年間で380億ドルの支援枠も、その規模はさらに拡大される見込みです。トランプ氏は13日の朝にも、イランを激しく非難する投稿を行い、交渉による解決の道を自ら閉ざしています。こうした現状に対し、アメリカ国民の間では、多大なコストと兵士の命を犠牲にしながら自国に何の利益ももたらさないイスラエルとの関係を断ち切るべきだという声が広がりつつあります。

しかし、トランプ政権の内部では、この戦争を善と悪の最終決戦になぞらえる終末論的な言説さえ聞かれます。こうした「ギャング的な外交政策」は、道徳的にも財政的にもアメリカを破綻させています。より深刻な懸念は、核のボタンを握るトランプ氏とネタニヤフ氏の双方が、極めて無謀な行動をとる可能性があることです。イスラエルには、自国が危機に陥った際に敵対国だけでなく支援が不十分だった国々までも核攻撃の対象とする「サムソン・オプション」と呼ばれる教義があるとされています。このような「すべてを焼き尽くす」思考が、現在のアメリカの指導者にも共有されているのではないかという懸念が拭えません。

米クレジットカード消費が限界に?

After a Holiday Surge, Consumer Borrowing Slowed in January Signaling Continued Consumer Stress [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの消費者はクリスマス休暇中に多額の支出を行い、その多くをクレジットカード決済に頼りましたが、年明けとともにその勢いは急速に衰えています。米連邦準備理事会(FRB)が発表した最新データによると、2026年1月の消費者信用残高の伸びは前月比で大幅に鈍化し、年率換算で1.9%増の81億ドルにとどまりました。これにより、住宅ローンを除く消費者債務の総額は5.11兆ドルに達しています。この伸びの鈍化は、一見すると債務膨張に歯止めがかかった好ましい兆候のように見えますが、実態は消費者がクレジットカードの利用限度額に達し、支出を抑えざるを得なくなった可能性を示唆しています。個人消費に依存して辛うじて持ち堪えている現在のアメリカ経済にとって、これは非常に懸念すべき事態と言えます。

家計の苦境を裏付けるデータとして、大手会計事務所のKPMGは、リボ払いやカードローンの伸び悩みは「ますます困窮している」下位80%の世帯による借り入れと支出の減少を反映していると分析しています。現在、アメリカの全消費の約3分の2を上位20%の富裕層が占めており、インフレ調整後の実質ベースで見ると、残りの80%の世帯の支出は停滞しています。クレジットカードを中心とするリボ払い債務の伸びは、12月にはクリスマス支出の影響で過去2年で最大となる11.3%を記録しましたが、1月には4.3%へと急落しました。さらに、利息負担も重くのしかかっています。FRBによる利下げが実施された後も、クレジットカードの平均年利(APR)は19.58%と高止まりしており、一部では28%という高金利を課されているケースも見られます。

こうした経済的ストレスは、法的な指標にも顕著に現れています。民間の調査によると、2025年後半には自己破産に関する法的相談指数が前年同期比で15.6%上昇しました。このデータは実際の自己破産申請の先行指標として知られており、今後さらなる破綻の増加が予想されます。また、住宅の差し押さえに関する相談も前年比で15.0%増加しており、住宅コストの上昇に苦しむ家計の姿が浮き彫りになっています。ニューヨーク連銀のデータでも、2025年末時点で全債務の4.8%が何らかの延滞状態にあり、特に学生ローンの延滞率は9.6%と深刻な水準に達しています。クレジットカードの延滞については、これまで信用スコアが高かった層の間でも急増している点が特徴的です。

コロナ禍の給付金によって一時的に改善した家計の貯蓄は、その後の歴史的なインフレによって使い果たされ、多くの人々が生活を維持するためにクレジットカードに頼らざるを得なくなりました。1月の借り入れ鈍化は、消費者がついに「限界」に達したことを示している恐れがあります。消費者がこれ以上借金を重ねて買い物を続けることができなくなれば、アメリカ経済の先行きには一段と不透明感が漂うことになります。

金銀上昇の構造要因

Brien Lundin on the Future of Precious Metals [LINK]

【海外記事紹介】貴金属市場の権威であり、ジェファーソン・フィナンシャルの最高経営責任者であるブライアン・ランディン氏は、現在のゴールドとシルバーの市場を動かしている真の要因について、極めて冷静な分析を提示しています。2026年3月現在、イランを巡る地政学的な緊張により金価格は一時1オンス5400ドルまで急騰しましたが、ランディン氏は、こうした戦争のニュースによる価格変動は一時的なものに過ぎないと指摘します。短期的な投機家は危機の初期に市場へ押し寄せますが、騒動が沈静化すればすぐに去っていくからです。金を持つ真の理由は、歴史を通じて一貫しており、法定通貨の購買力低下に対する保護にあります。現在の金価格の上昇は、政府債務の増大や中央銀行による継続的な買い入れといった、長期的な通貨サイクルの末期症状を反映した構造的な動きなのです。

現在の金強気相場は約2年前から続いていますが、過去のサイクルと比較して大きな調整が少ないのが特徴です。その背景には、ドルの武器化を懸念する各国の中央銀行による戦略的な蓄積があります。また、ランディン氏は興味深い視点として、富をドルではなく金で測るべきだと説いています。2025年には主要な株価指数がドル建てで史上最高値を記録する一方で、金建てで見ると12年ぶりの安値を付けるという現象が起きました。これは富が増えたのではなく、ドルの価値が目減りしたことを意味します。金で換算すれば、現在の株価は1930年代から40年代と同水準であり、アイビーリーグの学費やハンバーガーの価格も、金建てでは数十年前からほとんど変わっていないか、むしろ安くなっています。金は価値の安定した基準であり、政府が通貨供給を増やす中で、通貨の側がその周囲を変動しているに過ぎません。

一方、シルバーについては独自の供給動向が注目されています。歴史上初めて、太陽光発電などの産業需要と投資需要が限られた在庫を奪い合う状況が生じています。長年の供給不足により地上在庫は激減しており、製造業者は供給を確保するために、投資家と競合しながら高い価格を支払わざるを得なくなっています。一部では、銀価格が1オンス125ドルから135ドルの範囲に達すれば、太陽光パネルの生産コストに影響が出始めると予測されています。

さらに、ウォール街の機関投資家が「通貨価値の下落」に備えた取引を本格化させている点も見逃せません。世界全体の投資可能資本は2008年の約3倍に膨れ上がっており、これら巨額の資金がポートフォリオのわずか1%でも貴金属に振り向ければ、市場規模の小さいこのセクターには莫大なインパクトを与えます。地政学的な混乱は表面的な変動に過ぎず、政府債務の膨張という深い経済的現実が、今後数年にわたる貴金属市場の強力な上昇を支える土台となっているのです。

エネルギー危機の足音

Running On Empty | Economic Prism [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月28日に開始された「壮絶な怒り」作戦による大規模な攻撃は、イラン政権の中枢に打撃を与えましたが、同時に中東に極めて深刻な地政学的不安定化をもたらし、世界経済の大動脈を遮断することとなりました。テヘランの惨状以上に文明の形を変えてしまうような真の破壊は、今、誰もいなくなったホルムズ海峡の航路で起きています。急騰する原油価格は経済活動減退の前兆であり、ガソリン代の上昇は、消費活動を行うすべての人々に対する逆進的な税金として機能します。燃料価格が跳ね上がりポンプが乾くとき、世界経済の土台そのものが崩壊するのです。

3月12日の時点で、カリフォルニア州のガソリン価格は1ガロンあたり5.36ドルに達しています。しかし、人間の生存という観点から計算すれば、この価格でも一生に一度の格安販売といえます。現代社会は、エネルギー生産性という、努力なしに手に入れた遺産に依存して生きてきました。石油という液体燃料がなければ、翌日配送の物流から、冬場に新鮮な野菜を食べること、中央冷暖房の使用に至るまで、現代のあらゆる利便性は維持不可能です。

エネルギーの価値を物理的な労働に換算すると、驚くべき格差が見えてきます。1ガロンのガソリンには約33.7キロワット時のエネルギーが含まれていますが、健康な人間が1日8時間の過酷な肉体労働で生み出せるのはわずか0.6キロワット時です。つまり、1ガロンのガソリンは、人間による56日分の重労働に相当します。時給20ドルの労働力でこれを賄おうとすれば、その価値は8960ドルに達し、エンジンの効率を考慮しても、人間がピストン運動と競合できるガソリンの適正価格は1ガロンあたり2240ドルとなります。私たちが車でコーヒーを買いに行く行為は、本来、一人の人間が2週間連続で車を押し続けるほどのエネルギーを消費しているのです。

ホルムズ海峡の封鎖は、単にガソリン代が高くなるだけでなく、世界が食料を確保できなくなることを意味します。世界の窒素・リン酸肥料の約30%がこの海峡を通過しており、北半球が春の種まき期という最も脆弱な時期を迎える中で、供給が途絶えています。天然ガスは尿素の主原料であり、これが不足すれば作物の収穫量は半分以下に落ち込むでしょう。現代の農業インフラは、化石燃料をカロリーに変換する仕組みそのものです。燃料が止まれば、地球が支えられる人口は数十億人単位で減少してしまいます。

G7や国際エネルギー機関は、戦略備蓄から最大4億バレルを放出する計画を立てており、一時的に原油価格は下落しました。しかし、ホルムズ海峡が閉鎖されたことで世界は1日あたり2000万バレルの不足に直面しています。4億バレルの備蓄を放出したとしても、その穴を埋められるのはわずか20日間、3週間足らずに過ぎません。さらに、備蓄の汲み上げ能力には物理的な限界があり、失われた流量を補うことは不可能です。もし作戦が3週間以内に終了しなければ、G7の備蓄は底をつきます。そのとき、1世紀以上にわたるエネルギーの豊かさが消失した後の、極めて厳しい現実が明らかになるでしょう。

2026-03-14

英政治の欺瞞

Iran, Keir Starmer, and the War On the British People | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】開始から2週間が経過したイランとの「実体のない戦争」は、イギリス国内にも深刻な影を落としています。ガソリン価格の上昇といった直接的な痛みに加え、この危機はイギリス政治の欺瞞と、国民に対する「見えない戦争」を浮き彫りにしました。

キア・スターマー首相は当初、アメリカからの参戦要請を拒絶する姿勢を見せましたが、その決意は長くは続きませんでした。スターマー氏得意の「Uターン」により、すぐにアメリカに歩み寄り、イギリス軍基地の「防御的行動」への使用を許可するという譲歩案を提示しました。これは、支持率が歴史的に低迷し、国内ではインフレや失業、そして閣僚の不祥事に揺れる中、アメリカという「同盟国」に媚びを売りつつ、直接参戦によるさらなる支持率低下を避けようとする苦肉の策です。

一方で、反既成勢力(アンチ・エスタブリッシュメント)を標榜するナイジェル・ファラージ氏率いるリフォーム党の正体も露呈しました。ファラージ氏は当初、イラン戦争への支持を表明していましたが、世論を見て「軍事能力の欠如」を理由に直接関与に反対する姿勢へと転じました。しかし、これは理念的な反対ではなく、単に「今は戦えない」と言っているに過ぎず、軍備が整っていればアメリカの戦争マシンに追随する準備があることを示唆しています。リフォーム党は、UAEとの利権を持つナディム・ザハウィ氏ら旧保守党の「既成政治家」を次々と受け入れており、実態は既成勢力に完全に乗っ取られた偽の反体制派に成り下がっています。

さらに深刻なのは、イラン戦争の陰でスターマー政権がイギリス国民の権利を密かに削り取ろうとしている点です。デビッド・ラミー司法相は、司法システムの停滞を解消するという名目で、一部の犯罪における陪審裁判の廃止を画策しています。言論の自由を犯罪化し、司法を麻痺させておきながら、何世紀も続く法伝統を解体しようとしているのです。

「ネットゼロ」という名の経済的自殺、終わりのない増税、デジタルIDの導入など、イギリス政府は数十年にわたり自国民に対して戦争を仕掛けてきました。海外での戦争が注目を集めている隙に、国内では司法制度の崩壊と管理社会化が進行しています。この記事は、国民の関心が遠くの戦場に向けられている間に、イギリス国内での「自由を巡る戦い」が着実に敗北へ向かっていると警告しています。

多数が外交解決を支持

Most Iranian Americans want diplomacy with Iran: poll | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】現在進行中のアメリカとイランの戦争について、アメリカ国内のイラン系アメリカ人コミュニティが深い分断に直面していることが、最新の調査で明らかになりました。全米イラン系アメリカ人協議会(NIAC)が公表したデータによると、回答者の61.6%という明確な多数派が、緊張緩和に向けた外交交渉による解決を支持しています。これは、ネット上の議論で主流となっている「イラン系アメリカ人の多くが戦争を支持している」という見方とは一線を画す結果です。

この調査は2026年2月27日から3月5日にかけて行われ、イラン系アメリカ人の複雑な胸中を浮き彫りにしました。そもそもアメリカがイランに対して戦争を開始すべきだったかという点については、反対が49.3%、賛成が48.9%と、コミュニティの意見はほぼ真っ二つに分かれています。NIACのジャマル・アブディ会長は、戦争支持が圧倒的だと思われていたことに驚きを示しつつ、実際には戦争を正当化するようなコミュニティ全体の一致した支持は存在しないと指摘しています。

戦争に反対する人々は、主に無実の民間人が犠牲になることや、イラン国内がさらなる不安定化を招くことを深く懸念しています。一方で、戦争を支持する人々は、軍事行動によって現体制が転換される可能性や、イランの核プログラムによる脅威が減少することに期待を寄せています。このように、それぞれの立場には固有の論理と背景があります。

アブディ会長は記者会見で、一部の著名なイラン系アメリカ人が「戦争こそが唯一の道であり、反対する者は現体制のロビイストだ」といった極端な言説を流布し、世論を誘導しようとしている現状に苦言を呈しました。しかし、実際のコミュニティの声ははるかに繊細で多層的です。今回のデータは、トラウマと分断に直面しているコミュニティの実像を正しく伝え、誤った情報によって形成されたステレオタイプを払拭しようとする試みといえます。

核のタブーを破る

Breaking the Nuclear Taboo - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】トランプ米大統領の行動は、留まるところを知りません。今年に入ってからだけでも、ベネズエラ大統領の拘束やグリーンランドへの侵攻示唆、そして先週にはイスラエルと共にイランへの攻撃を開始し、歴代のタカ派大統領ですら避けてきた新戦争へと突き進んでいます。2024年の選挙で掲げた「永遠の戦争を終わらせる平和の大統領」という公約は霧散し、外交を軽視した抑制のない武力行使へと取って代わられました。

トランプ氏は国際法や伝統ではなく、自分自身の道徳と直感に従うと公言しており、その側近たちも同様に制御不能な状態です。ヘグセス国防長官は敵への「圧倒的で過酷な暴力」を説き、ルビオ国務長官は西側による支配時代の再来を呼びかけ、ミラー大統領次席補佐官は「世界は力によって支配される」と断言しています。さらに深刻なのは核兵器を巡る動向です。トランプ氏は新戦略兵器削減条約(新START)の延長を拒否し、核実験の再開を表明するなど、核軍拡競争を再燃させています。

世界が最も懸念すべきは、80年以上守られてきた最後の禁忌、すなわち核兵器の使用が現実味を帯びていることです。トランプ氏にとって、挑発的で不必要な行動をとることこそが自らの優位性を示す手段となっており、精神的な衰えや肥大化した自己愛がその危険性を高めています。プーチン露大統領や習近平中国国家主席がイラン攻撃に対して慎重な反応を見せているのも、トランプ氏を刺激して予測不能な破滅を招くことを恐れているからだと言われています。

また、軍内部からは不気味な報告が届いています。200人以上の兵士が、上官たちがこの戦争を「聖書に記された終末の兆し」として熱狂的に歓迎していると証言しています。ある部隊の指揮官は、イランとの戦争は神の計画の一部であり、トランプ氏はハルマゲドンを引き起こしてイエス・キリストの再臨を導くために選ばれた存在だと述べているそうです。

核による滅亡の危機は、かつてないほど高まっています。国際的な法や規範を次々と破壊してきたトランプ氏が、最後に残された核の禁忌を破る可能性は、もはや無視できない段階にあります。私たちは今、想像を絶する危機の瀬戸際に立たされているのです。

宗教戦争への変質

The Madness of King Trump: War Games, War Crimes and a Wrecking Ball Presidency - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】現在のトランプ政権の中核には、機能不全と退廃、そして死のカルトのような思考が居座っています。特に深刻なのは、イランへの攻撃を善と悪の「終末の戦い」と位置づけ、宗教的な言説で正当化しようとする動きです。現場の指揮官の中には、大統領を「ハルマゲドンを引き起こすために神に選ばれた存在」と称する者まで現れており、軍内部からはこれが宗教戦争に変質しているとの苦情が相次いでいます。戦争が「聖なる任務」と化せば、残虐行為は容易に美徳へとすり替わってしまいます。

その影響は戦場に直結しています。米軍のミサイルがイランの女子校を直撃し、165人以上の少女が犠牲になったと報じられました。さらに、生存者を救助しようとする親や当局者を狙って二度目の攻撃を加える「ダブル・タップ」という、国際法で戦争犯罪とされる戦術が使われた疑いも浮上しています。ピート・ヘグセス国防長官は、国際水域での潜水艦による攻撃を自慢げに語り、民間人の犠牲を顧みず「情け無用」の勝利を強調しています。

トランプ氏は、議会の承認を得ないままイランやベネズエラなどで軍事作戦を繰り返し、残虐性と攻撃性をアメリカのリーダーシップの象徴にしようとしています。SNSでは「死、火、そして怒り」といった過激な言葉をまき散らし、暴力と破壊を賛美するプロパガンダを展開しています。こうした姿勢は、アメリカ軍の評判を傷つけるだけでなく、政府が道徳的な指針を完全に失っていることを示しています。

議会や最高裁判所も、大統領の暴走を止める憲法上の守護者としての役割を果たせていません。議会が承認していない戦争に56億ドルもの血税が投じられ、無実の人々が命を落としています。もはやこれは政党間の争いではなく、不道徳で権力に飢えたデマゴーグによって政府が乗っ取られたという危機の問題です。

ジェームズ・マディソンが警告したように、一人の手に権力が集中することは、まさに暴政の定義そのものです。憲法を裏切り、戦争犯罪を肯定し、法治主義を軽視する大統領は、もはや公職に留まる資格はありません。党派を問わず、憲法と国民を裏切った全ての高官に対して、弾劾を含む厳格な責任追及を行うべき時が来ています。

自由を守る地方分権

Only Power Can Check Power: Why We Need Decentralization | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】政治理論における古くからの難問は「誰が監視者を監視するのか」という点です。国内外の脅威から国民を守るために、国家に武力の独占を認めた瞬間、その強大な権力が濫用された際にどう抑え込むかという問題が浮上します。アメリカ建国期の連邦派は、憲法による統治や選挙、議会という仕組みが権力濫用の防壁になると約束しました。しかし歴史が示す通り、その目論見は外れました。今日の連邦政府の権限は18世紀の人々の想像を絶するほど肥大化し、州政府は単なる行政単位へと格下げされています。

なぜ憲法は権力の抑制に失敗したのでしょうか。最大の理由は、連邦政府をチェックできる「独立した権力」が存在しないことにあります。政府が自らの権力濫用を調査するのは、警察が自分たちの不正を身内で調べるようなものです。独立革命を経験した当時のアメリカ人たちは、紙に書かれた法律だけでは不十分であることを知っていました。彼らは「権力をチェックできるのは、事実上の力(パワー)だけである」という冷徹な真理を理解していたのです。

これに対し、中央集権に反対したアンチ・フェデラリスト(反連邦派)たちは、州が自衛のための武力を保持し続けることを重視しました。パトリック・ヘンリーは、民衆が武器を奪われ、中央に常備軍が置かれれば、暴政を罰することなど不可能だと喝破しました。中央政府が全ての軍事力と徴税権を握れば、抵抗は狂気の沙汰となります。彼らにとっての解決策は、中央の常備軍に反対し、地方(州)が中央の侵食に対抗できる実力を維持することでした。

同様の懸念は、フランス革命後の自由主義者たちの間でも共有されました。トクヴィルやベンジャミン・コンスタンといった思想家は、革命政府が旧体制下で進んでいた中央集権化を引き継ぎ、地方の自律性を粉砕したことを批判しました。彼らは「分権化」を掲げ、地方への愛着や宗教といった地方固有の利害こそが、中央権力に対する抵抗の種になると説きました。急進的なバスティアに至っては、常備軍を廃止し、武装した市民がそれに代わるべきだとまで主張しています。

個人の自由と国家の権力は、一方が勝てば一方が退くというゼロサムの関係にあります。内部的な「抑制と均衡」という甘い言葉に惑わされず、国家による武力の独占を疑い、地方や個人の側に実効性のある対抗力を保持すること。このリアリズムこそが、中央集権の怪物から自由を守るための唯一の道であると、歴史の教訓は語っています。

迫り来るLNG不足

80/20 - Trader Ferg [LINK]

【海外記事紹介】現在、私たちは嵐の目にいます。それは、ひどいタコスを食べてから腹痛の激震が襲うまでの、あの一瞬の静けさのようなものです。トランプ大統領のイラン攻撃によって、世界の石油と液化天然ガス、つまりLNGの貿易の約20%が遮断されました。どんなに金融的な操作を行っても、この巨大な物理的損失を埋め合わせることはできません。

一部では、戦略備蓄の放出で問題が解決したという声もありますが、それは住宅火災に庭のホースで立ち向かうようなものです。道具はあっても、問題の規模に全く見合っていません。特にLNGの状況は深刻です。石油には海上在庫やパイプラインによる迂回ルートがありますが、カタールのLNGには選択肢がなく、完全に封じ込められています。現在、ホルムズ海峡を通過する船は、以前の1日平均140隻から、わずか20隻程度にまで激減しました。タンカーの爆発も相次いでおり、状況は悪化の一途をたどっています。

さらに衝撃的なのは、世界のLNG輸出能力の20%が、カタールのラス・ラファンという、たった一つの場所に集中しているという事実です。この施設は3月初旬のドローン攻撃で停止しており、たとえ被害がなくても、再稼働には最低でも4週間から8週間はかかります。もし主要な設備が損傷していれば、復旧には数ヶ月、最悪の場合は10年単位の歳月が必要です。これらの設備は世界で1社しか製造できず、注文から納品まで数年を要するからです。

軍事面でも米軍の防衛網は危機に瀕しています。イランは、1台3億ドルもする移動式迎撃ミサイル・システム、THAADの心臓部であるレーダーを正確に破壊しました。これは世界に8台しかない極めて希少な戦略資源です。現代の高度なレーダーに不可欠なガリウムの供給を中国が制限している今、修理がいつになるか見当もつきません。イランは安いドローンで防衛網を疲弊させ、弱ったところで精密ミサイルを叩き込むという「消耗戦略」をとっているようです。

この供給分断が長引けば、世界中で限られたエネルギーの奪い合いが始まります。LNGの不足を補うために石炭の活用が最大化されるでしょう。ヨーロッパ、特にイタリアなどの輸入依存国は窮地に立たされます。今回のガス価格の動きはまだ序の口にすぎず、この封鎖が直ちに解決されなければ、今後さらに巨大な危機が押し寄せてくることになります。

イラン戦争の大失敗

Donald Trump’s War on Iran is Turning into a Debacle [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ大統領によるイランへの軍事行動は、当初の予測に反して深刻な行き詰まりを見せています。元情報分析官のラリー・ジョンソン氏は、今回の事態を「大失敗(デバクル)」と評し、その政治的・経済的・軍事的な誤算を厳しく指摘しています。トランプ政権は、2月末に敢行した首脳部への攻撃によってイラン国民が決起し、現体制が崩壊すると信じ込んでいました。しかし、統合参謀本部議長や国家情報会議(NIC)の警告を無視したこの決断は、最悪の結果を招いています。

経済面での最大の誤算は、イランによるホルムズ海峡の封鎖です。ペルシャ湾からの石油や天然ガス、肥料の供給が断たれたことで、世界経済に深刻な衝撃が走っています。米国はエネルギー自給が可能とされてきましたが、実際には国内のガソリン価格は1週間足らずで1ガロンあたり0.65ドルも急騰しました。この燃料コストの上昇は、輸送、航空、農業といったあらゆる産業を直撃し、消費者に転嫁されます。このまま封鎖が1ヶ月以上続けば、世界的なリセッション(景気後退)どころか、世界恐慌を招く恐れがあります。

軍事面においても、米国とイスラエルの連合軍はイランに大きな損害を与えたものの、イラン側の弾道ミサイルや巡航ミサイル、ドローンの戦力を無力化することには失敗しました。それどころか、イランは予想を上回る規模の反撃を開始しています。衛星画像や検証済み動画の分析によれば、クウェート、カタール、バーレーン、サウジアラビアなどにある少なくとも17の米軍関連施設が被害を受けています。これには第5艦隊司令部や主要な空軍基地、港湾施設が含まれており、米軍の作戦継続能力は著しく損なわれています。

トランプ大統領は事態の収拾を図るため、停戦や「段階的な勝利」を演出した撤退を模索し、イランとの対話を再開しようとしているとの報告もあります。しかし、イラン側はこれに応じる気配を見せず、米軍施設やイスラエルへの攻撃を続行する構えです。事前の国民的合意形成を欠いたまま踏み切ったこの戦争は、トランプ氏を政治的な孤立へと追い込み、世界を未曾有の経済危機にさらしています。

プライベートクレジットの罠

A 33 Billion Dollar private credit fund just told its investors: “You can’t have your money back.” [LINK]

【海外記事紹介】戦争や原油高、インフレが再燃する中で、私たちの老後の資金を支える年金や401kが、出口のない「プライベート・クレジット」という罠に静かに閉じ込められようとしています。330億ドル規模を誇るクリフウォーター社のファンドが先日、投資家に対して「お金は返せない」という事実上の制限を通知しました。投資家が14%の解約を求めたのに対し、ファンド側は7%に制限をかけたのです。つまり、半分は引き出せましたが、残りの半分はロックされてしまいました。

こうした事態は一部の例外ではありません。モルガン・スタンレーやJPモルガンといった金融大手も、解約制限や貸付の抑制に動いています。テレビではあまり語られませんが、皆さんの公的年金や企業の退職金制度、あるいは「安全」と信じられているターゲット・デート・ファンドなどは、このプライベート・クレジットに深く関わっています。株とは違い、この分野ではファンド側が「いつ、いくら返すか」を決定する権利を握っています。そして今、彼らの答えは「ノー」になりつつあります。

この状況は、2008年の金融危機の始まりに酷似しています。最初は小さな解約制限から始まり、やがてパニックが起きて出口に人が殺到し、資産価値が暴落してクレジット市場が凍結します。今回はさらに悪いことに、戦争や原油高、インフレが同時に進行しています。本来警鐘を鳴らすべき立場の人々が、自ら出口に鍵をかけて回っているのが現状です。

紙の上での約束が制限され、金融システムが牙を剥く中で、本当の逃げ道となるのは現物の「銀」です。銀は誰かからの支払い約束ではなく、それ自体が価値を持つ資産です。カウンターパーティ・リスク、つまり取引相手が破綻して価値がなくなるリスクがなく、データセンターや太陽光パネル、電気自動車に不可欠な現代社会の「神経系」とも言える実需に基づいています。

金融システムがあなたの将来を勝手に動かしている間に、現物の銀を所有することは、自分の人生の主導権を取り戻す行為です。不透明なファンドから離れ、実体のある銀という資産に再配分することは、単なる投機ではなく、老後を守るための合理的な自己防衛です。市場が「あなたはもう自分のお金をコントロールできない」と告げている今、自分で判断し、動くことが何よりも重要です。

戦争とインフレが壊す経済

Peter Schiff: War, Oil, and Inflation Are Crushing the Economy | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】経済アナリストのピーター・シフ氏は、最新のポッドキャストにおいて、イランとの衝突が引き起こした原油市場の混乱と、それが米国経済に与える深刻な影響について分析しています。週明けの原油価格は1バレルあたり119ドルを超え、年初の55ドル付近からわずかな期間で2倍以上に跳ね上がりました。これは原油取引の歴史の中でも最大級の一日あたりの上昇幅であり、性急な軍事的緊張がもたらした不必要な痛みであると彼は指摘しています。

シフ氏は、政府が長期的な利益のために短期的な痛みを許容すると主張するのであれば、その姿勢を財政赤字の削減や政府支出のカット、社会保障制度の見直しに向けるべきだと説いています。ミサイルを破壊に費やすよりも、それを再構築するコストの方が高くつき、その裏では防衛産業の請負業者が莫大な利益を上げているという構図を批判しています。また、現政権による支離滅裂な外交上の言葉遣いや関税への無理解が、米国の信頼性を損なっているとも述べています。

さらに、米ドルが世界の基軸通貨であるという事実が、米国に際限のない借金と支出を許している現状にも警鐘を鳴らしています。世界中が米国に資金を貸し付けているからこそ、膨大な赤字を出しても軍備を維持できているのですが、世界はこのシステムが「フランケンシュタインの怪物」を生み出してしまったことに気づき始めています。米ドルの価値に依存した一方的な権力行使は、結果として世界を敵に回し、自国経済に跳ね返ってくる義務を負うことになります。

最後に、政策立案者がインフレ抑制の根拠とする消費者物価指数、いわゆるCPIの数字についても、現実を過小評価していると断じています。現在の数字ですら連邦準備制度が目標とする2%には程遠く、しかもこれは原油価格が高騰する前のデータに基づいたものです。政府が発表する不正確な数字とは裏腹に、インフレは今後さらに加速していくでしょう。こうした状況下では、実体のある資産に裏打ちされた通貨、つまり「健全な貨幣」によって自らを守ることの重要性がますます高まっていると、シフ氏は結論づけています。

お金の価値はなぜ生まれる?

No, Governments Don't Give Money Value | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】スーパーでの買い物で、去年よりも手元のお金で買えるものが少なくなったと感じることはないでしょうか。アメリカの連邦準備理事会、いわゆるFRBが通貨供給量を数兆ドルも増やしたことと、この物価の上昇は深く結びついています。そもそも、なぜ直接食べることもできない紙切れに価値があるのかという経済学の根本的な謎を紐解くと、現在のインフレの本質が見えてきます。かつてのお金は、金や銀、塩のように、それ自体に価値がある商品でした。しかし現代の法定通貨は、政府の命令によって価値が宣言された、裏付けのない紙幣にすぎません。

お金の価値は他の商品と同様に供給と需要で決まりますが、お金には、増えても豊かさを生み出さないという特殊な性質があります。小麦が増えればより多くの人が食べられますが、お金が増えれば、一単位あたりの価値が薄まるだけです。FRBが通貨を倍に増やしても、新たな富は創出されず、物価が不均一に上がるだけなのです。ここで、なぜお金に価値があるのかという循環論法の謎に突き当たります。人々がお金を欲しがるのは購買力があるからですが、その購買力とはお金の価値そのものです。

経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスは、この謎を「回帰定理」で解決しました。今日のお金の価値は昨日の購買力に依存し、それはさらにその前日に依存するという鎖を遡ると、最終的には物々交換の時代に、装飾品などの実用的な価値を持っていた商品に到達します。現代の米ドルも、1971年に金との結びつきが断たれるまでの記憶、つまり「過去の正当性」を頼りに生きながらえているにすぎません。FRBが通貨供給量を操作すると、市場の自然なプロセスが乱されます。

新たなお金が供給されると、それを最初に手にする政府の請負業者や金融機関などは、まだ物価が上がる前の価格で買い物ができ、利益を得ます。一方で、後からそのお金が回ってくる賃金労働者や年金生活者は、すでに値上がりした物価に直面し、実質的な富を奪われることになります。インフレによる富の再分配は、ローマ帝国が銀貨の質を落とした時代から変わらない原理です。お金の価値は政府の命令だけで維持できるものではなく、人類の協力の歴史に基づいています。

通貨の操作は価格体系を歪め、誠実な交換の基盤を損なうものです。FRBがこの原則を無視して通貨を膨張させ続ける限り、現在私たちが直面している経済的な痛みは続いていくことになります。

2026-03-13

イラン戦争のコスト

Cost of the Iran War—and Why It Will Fuel Inflation - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】米国とイランの戦争が連日大きく報じられていますが、その背後にある「戦争の経済学」が、いかに米国の破綻とインフレを加速させるかについて、著名な投資家ダグ・ケイシー氏が冷徹な分析を提示しています。現代の戦争において、わずか3万5,000ドルの安価なドローンを迎撃するために、米国やイスラエルが数百万ドルのミサイルを消費しているという非対称性は、極めて不条理です。ケイシー氏はこれを、相手を疲れさせてから反撃するボクシングの「ロープ・ア・ドープ」に例え、イラン側が米国の高価な兵器在庫を枯渇させるのを待っていると指摘しています。

ペンタゴンは戦費を1日あたり10億ドルと見積もっていますが、実際にはミサイル防衛だけでそれを遥かに上回る数倍の費用がかかっているという見方もあります。かつての第二次世界大戦でさえ、現在の価値に換算して約4兆ドル程度でしたが、アフガニスタンやイラクでの紛争ですでに数兆ドルを浪費してきた米国にとって、今回のイラン戦は国家を自己破産へと追い込む決定打になりかねません。特にトランプ大統領が「無条件降伏」を要求したことで、この戦いはイラン側にとって存立をかけた宗教的・存亡的な戦いへと変質し、コストが制御不能になるリスクが高まっています。

さらに深刻なのは、この巨額の戦費を調達する手段が「借金」しかないという事実です。現在、中国や日本といった海外の買い手が米国債の購入を手控える中、政府は今年満期を迎える約10兆ドルの旧債務の借り換えと、新たな戦費の調達を同時に行わなければなりません。結局、中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が、何もないところからドルを刷ってこれらを買い支える「最後の買い手」にならざるを得ません。この際限のない通貨発行は、必然的にドルの価値を下げ、物価と金利の歴史的な高騰を招くことになります。

国際法についても、ケイシー氏は「フロンティアの酒場における礼儀」のような虚飾に過ぎないと断じています。交渉の最中に奇襲攻撃を仕掛けるような振る舞いは、かつて世界最強の顧客として振る舞っていた米国が、今やツケを溜め込み、周囲から不信と軽蔑を買う「タチの悪い酔っ払い」に成り下がったことを露呈させました。このような状況下では、ドルの暴落や債務危機に備え、金やエネルギー、商品といった「現物資産」こそが唯一の防衛策になると筆者は結論付けています。

イランとの愚かな戦争

The War on Iran Is Dumb. Here's Why. - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】イランとの戦争が「戦略」の名の下に推し進められていますが、その実態は過去の失敗を繰り返す悪癖に過ぎないと、アラン・モズレー氏は厳しく批判しています。この紛争がもたらす代償は、すでにエネルギー市場という最も予測可能な場所に現れています。世界の石油消費量の約20パーセントが通過するホルムズ海峡という急所を脅かすことは、単に敵対国を叩くことにとどまらず、世界中の家庭や企業の家計を直撃するリスクを増大させています。これを「小さな代償」と呼ぶのは、分析ではなく単なる宣伝に過ぎません。

戦争を正当化する理由として語られる「中国への打撃」という論理も、現実を直視すれば破綻しています。米中間の巨額の貿易規模を考えれば、一方を傷つけることは自国にも致命的な副作用をもたらします。国際通貨基金(IMF)も、貿易制限が長期的に世界の経済出力を最大7パーセント減少させると警告しています。また、中国がイラン産原油の主要な買い手であることは事実ですが、戦争によって供給網を破壊すれば、輸送費や保険料の急騰を通じて世界中の国々を巻き込む「世界規模の苦境」を引き起こすことになります。

さらに、核開発を阻止するための先制攻撃という名目も、むしろ逆効果であると指摘されています。北朝鮮が核を保有することで「体制の安全」を確保している現状を世界が見せつけられている中で、核を持たない国が疑いだけで攻撃されれば、他国に与える教訓は「交渉はゆっくり、濃縮は素早く行い、抑止力なしで捕まってはならない」というものになります。事実、2025年の米国の攻撃も核施設を完全に破壊するには至らず、むしろ脅威にさらされた国々に、より深く隠れ、より速く開発を進める動機を与えてしまいました。

外交においても、米国は自らの信頼性を損なっています。2026年2月にオマーンの仲介で進められていた対話は、その直後の空爆によって踏みにじられました。イラン核合意からの離脱や、数々の国際条約からの脱退という過去の経緯は、米国の約束が次の選挙で容易に書き換えられることを世界に知らしめています。相手が約束を守ると信じられなければ、外交という安全装置は機能しません。イランとの戦争は、短期的な戦果のために世界経済を危険にさらし、防ごうとしている核拡散をむしろ助長し、米国の外交的信用を焼き払う「愚かな選択」であると、筆者は結論付けています。

47年間の対イラン戦争

Washington's 47-Year War Against Iran - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】イランが「47年間にわたり米国に戦争を仕掛けてきた」という言説は大きな嘘であり、実際には1979年の革命以来、帝国の論理を振りかざしたワシントン側がイランに対して執拗な戦争を仕掛けてきたのが実態であると、デビッド・ストックマン氏は指摘しています。米国は革命後の新政権に対し、外交的な対話を拒むだけでなく、経済制裁や武器禁輸を通じて軍事的な無力化を図り、イランを敵対的な立場へと追い込んできました。

ワシントンによる対イラン攻撃の最大の「武器」となったのが、1980年から8年間続いたイラン・イラク戦争におけるサダム・フセインへの大規模な支援です。フセインは革命の波及を恐れ、軍の混乱に乗じてイランに侵攻しましたが、当時のイラン軍は米国製の兵器を主力としていながら、米国の禁輸措置によって部品調達ができず、空軍や装甲部隊の大部分が機能不全に陥っていました。レーガン政権はこの制裁をさらに強化し、世界的な外交工作を通じてイランへの武器流入を徹底的に封じ込めました。

兵器のスペアパーツを奪われたイランは、近代的な機械化戦争を遂行できなくなり、やがて悪名高い人海戦術へと追い込まれました。十分な訓練も受けず、軽武装のみを施された12歳もの少年兵を含む志願兵たちが、自らの身体で地雷原を切り開くという凄惨な光景が繰り返されたのです。この戦術だけで20万人以上のイラン人が命を落としましたが、これこそが米国の禁輸措置によって強行された悲劇であったとストックマン氏は述べています。

さらに米国は、1982年からイラク側へ秘密裏に戦場インテリジェンスを提供し始めました。CIAや国防情報局は衛星写真を用いてイラン軍の動きを詳細に伝え、イラク軍による正確な反撃を支援しました。米国はイラクが化学兵器を使用していることを知りながら、イランの勝利を阻止するために情報共有を継続し、結果として数多くのイラン兵が毒ガスの犠牲となりました。この戦争によるイラン側の死者は50万人を超え、経済的損失は6,000億ドル以上に達しました。こうした歴史的背景こそが、イラン国内における根深い反米感情と現在の強硬な体制を築き上げたのであり、米国の外交政策が招いた自業自得の結果であると結論付けています。

トランプ氏の戦争、世界経済に影

Trump's ‘move fast and break things’ war slams into economy | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】トランプ政権が掲げる「素早く動いてぶち壊す」というシリコンバレー流の手法が、中東という極めてデリケートな地域で展開され、世界経済に影を落としています。米国とイスラエルによる対イラン攻撃は、単なる軍事作戦を超え、政権交代やイランの解体までを見据えた野心的な目標へと拡大しています。この「ミッション・クリープ(目的の肥大化)」に対し、イラン側はホルムズ海峡の封鎖や石油市場への攻撃で対抗する構えを見せており、紛争の長期化が懸念されています。

経済的な最大の影響は、石油価格の上昇です。北海ブレント原油は、年初の1バレル60ドルから80ドルを突破しました。問題はイランの産出量そのものではなく、世界の石油輸送の要所であるホルムズ海峡の混乱です。すでに複数の船舶が攻撃を受け、民間の保険会社がタンカーへの保険引き受けを停止しています。トランプ大統領は政府機関を通じて安価な海上保険を提供し、米海軍による護衛も示唆していますが、ドローン兵器の進化や物流の不確実性を前に、海運業界には懐疑的な見方が広がっています。

このエネルギー危機の直撃を受けるのは、主にアジアの国々です。ホルムズ海峡を通過する石油の多くは中国、インド、日本、韓国といったアジア諸国に向かっています。特にインドは、原油輸入への依存度が高いだけでなく、中東に住む自国民からの送金が年間約480億ドルにのぼり、これらが滞ることで国際収支が悪化するリスクを抱えています。また、肥料の原料となる天然ガスの供給不安から、肥料価格が高騰しており、作物の植え付け時期を控えた世界の農業に深刻な打撃を与える恐れがあります。

金融市場では、原油高を受けてドル高が進行しています。これは米国のエネルギー自給率の向上と、インフレ懸念による利下げの遅れを反映したものですが、輸入インフレに苦しむ「グローバル・サウス」の国々にはさらなる圧迫となります。さらに米国は、中国だけでなく日本やインドなどに対しても関税による貿易圧力を強めています。過去30年間にわたり世界で最も高い成長を遂げてきたアジア経済が、米国の性急な軍事・通商政策によって不安定化しており、その代償は計り知れません。

私物化された外交

Gangster Foreign Policy   - The American Conservative [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの外交政策がいかに「ギャング化」し、特定の勢力によって私物化されているかについて、痛烈な批判を込めた記事を紹介します。現在、トランプ政権は議会の承認を得ることなくイランとの戦争に踏み切っていますが、これはベネズエラでの紛争と同様に違法なものです。アメリカ国民は歴史的に戦争への関与に反対してきましたが、歴代のどの大統領候補も、当選後には公約を翻して新たな戦争を開始してきました。背後には、政権交代に左右されず戦争を推進し続ける強大な力の存在が示唆されています。

記事は、現在の米外交がイスラエルのネタニヤフ政権に従属しており、政治的暗殺の実行や平和交渉中の奇襲、条約の公然たる無視といった、野蛮で虚無的な振る舞いを模倣していると指摘しています。かつては世界から尊敬されていたアメリカの信頼は失墜し、今や「鎖の外れた狂犬」のように恐れられる存在へと変貌してしまいました。建国以来のキリスト教的な倫理観や抑制、そして宣戦布告の権限を議会にのみ認めた憲法の精神は、現在の指導層の間で急速に失われつつあります。

さらに、国際連合が本来の機能を果たせず、骨抜きにされている現状にも触れています。安全保障理事会の拒絶権は、特定の勢力の暴走を隠蔽するための盾として悪用されてきました。特にイスラエルによるパレスチナへの占領や入植地の拡大は、多くの国連決議で非難されながらも、米英の拒絶権によって事実上黙認され続けています。こうした「力こそが正義」という外交モデルは、特定の外国勢力や多額の寄付を行うロビー団体が、自分たちの民族的な報復や利益のためにアメリカの軍事力を私物化している結果であると断じています。

このような「ギャング的外交」は、アメリカを道徳的にも経済的にも破綻させています。世界各地に800もの軍事基地を維持し、1日あたり10億ドルの戦費を投じる現状は、天文学的な国家債務を積み上げ、アメリカ帝国を崩壊へと導いています。記事は、これ以上の不法な侵略や違憲の戦争を止めるべきだと訴えます。他国の警察官として振る舞うのではなく、自国の主権を取り戻し、憲法に基づく本来の姿に立ち返らなければ、アメリカの未来には際限のない借金と衰退、そして信頼の完全な喪失しか残されていないと結論付けています。

バフェット氏の法人税発言

Warren Buffett on Corporate Taxation: A Reality Check​ | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、自身が率いるバークシャー・ハサウェイ社が2023年度に50億ドル以上の法人税を支払ったことを引き合いに出し、「もし米国の800企業が同額の税金を納めれば、他の国民は所得税や社会保障税を1セントも払わなくて済む」という趣旨の発言をしました。この発言は一部で好意的に報じられましたが、その経済的な実態を冷静に検証すると、いくつかの重要な矛盾が浮かび上がります。

まず、単純な計算から確認してみましょう。2023年度の米連邦政府の税収は約4.4兆ドルでした。バフェット氏が提案するように、800社がそれぞれ50億ドルを支払ったとしても、合計額は4兆ドルにとどまります。つまり、現状よりも4,000億ドルもの減収となり、ただでさえバフェット氏自身が「持続不可能で恐ろしい」と懸念している政府の財政赤字をさらに悪化させることになります。

さらに深刻なのは、誰が実際に税負担を負っているのかという「租税帰着」の問題です。バフェット氏の主張通り、法的には個人が納税義務を免れたとしても、経済的な負担から逃れられるわけではありません。企業の株式や資産の価値は、税引き後のキャッシュフローに基づいて決まります。法人税が課されるということは、その分、経済全体の生産活動や資源配分が変化することを意味します。

例えば、もし法人税率が極端に引き上げられれば、企業家は投資から利益を得ることができなくなり、労働力や土地への投資を控えるようになります。その結果として生じるのは、実質賃金の下落や地代、利子の減少です。つまり、法人税という形で企業が支払う税金は、回り回って労働者の給与削減や物価上昇という形で、実質的にすべての国民の所得を減少させているのです。

利益は経済の生命線であり、利益なしに複雑な生産活動を維持することは不可能です。利益に課税することは、本来なら将来の生産活動に再投資されるはずの資本を奪い、国民の生活水準の向上を阻害する、最も破壊的な課税形態の一つと言えます。バフェット氏の「誰も税を払わなくて済む」という言葉は、法的な形式に過ぎません。経済的な実態としては、国民は生活水準の低下という極めて重いコストを支払い続けることになるのです。

ロスバード、人と功績

The Persona and Legacy of Murray Rothbard | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】オーストリア学派の経済学において最も多産で重要な著述家の一人、マレー・ロスバードの生誕100周年を迎え、その類まれな人物像と功績に注目が集まっています。ロスバードは経済学、歴史、哲学など多岐にわたる分野で20冊以上の著作と数千の記事を残しました。驚くべきことに、彼は旧式のタイプライターを使い、1日に20ページ以上を事もなげに書き上げたと言われています。その博識ぶりは凄まじく、ある書評では期待を遥かに超える26ページもの詳細な改善案を提示し、著者を驚かせたという逸話が残っています。

ロスバードの生涯を特徴づけるのは、一切の妥協を排した自由への徹底的な防衛です。彼はコロンビア大学で数学と経済学を学びましたが、既存の経済学には納得していませんでした。しかし、ナチスから逃れて米国に渡ったルードヴィヒ・フォン・ミーゼスの著書『ヒューマン・アクション』に出会ったことで、オーストリア学派へと転向します。当初は古典的自由主義者でしたが、友人との対話を通じて、警察や司法までをも民営化すべきだと考える一貫した「アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)」へと進化しました。彼は経済的な効率性だけでなく、倫理と道徳をその思想の根幹に据えた点が特徴的です。

また、ロスバードは象牙の塔にこもる学者ではなく、現実の社会変革にも深く関与しました。自由の理念を実現するためであれば、時には左派、時には右派と、柔軟に同盟を組みました。例えば、ベトナム戦争時には、戦争に傾倒する当時の右派を嫌い、反戦を掲げる左派と手を結ぶことを厭いませんでした。彼の文章は非常に明快で、皮肉やユーモアに富んでおり、難解な論文でさえ小説のように読ませる力がありました。こうした率直な物言いは多くの批判を招きましたが、彼は世俗的な成功や名声よりも、真理を語ることを優先しました。

彼の教えの中で最も重要なものの一つは、「勝者によって書かれた公式な歴史を鵜呑みにするな」という姿勢です。ロスバードは、歴史的な事件の背後に「誰が得をするのか」という犯罪捜査のような視点を持ち、金と権力の流れを追うことを重視しました。彼は自身の功績をひけらかすこともなく、学生の奨学金よりも低い給与で教鞭を執りながらも、常に笑顔を絶やさなかったと言います。現代、私たちは彼の膨大な著作や講義をインターネットを通じて自由に学ぶことができます。ロスバードが現代のデジタルツールを手にしていたら、世界はもっと自由な場所になっていたかもしれません。

米国債よりゴールド

What's Up With the Treasury Market? Why Is Gold the Last Safe-Haven Standing? [LINK]

【海外記事紹介】現在の世界情勢において、金が「最後の安全資産」としての地位を固めつつある一方、かつてその役割を担っていた米国債が、有事の際にも買われないという異例の事態が起きていると、経済ジャーナリストのマイク・マハリー氏は指摘しています。通常、戦争などの地政学的な不確実性が高まると、投資家は安全を求めて米国債に資金を投じるものですが、今回は逆の動きが見られます。10年物米国債の利回りは、アメリカとイスラエルによる攻撃開始直前の3.96パーセントから、4.22パーセントへと上昇しました。利回りの上昇は債券価格の下落を意味しており、米国債への需要が極めて乏しいことを物語っています。

なぜ米国債は安全資産としての買いが入らないのでしょうか。マハリー氏は2つの大きな理由を挙げています。第一に、今回の紛争における原油価格の影響です。マクロ経済アナリストのルーク・グローマン氏によれば、世界の石油市場がドル建てで動いていることが、皮肉にも米国債売却を招いています。原油価格が急騰する中、エネルギーや食料を確保しなければならない国々は、手元にある最も流動性の高いドル資産、つまり米国債を売却して、高騰した石油を買うための資金を作らざるを得ない状況に追い込まれているのです。

第二の理由は、アメリカの財政状況に対する不信感と、世界的な「脱ドル化」の動きです。アメリカの国家債務は38.9兆ドルに達し、さらに戦費として1日あたり10億ドルが費やされています。際限なく支出を続けるアメリカ政府に対し、世界各国はこれ以上の資金を貸し付けることに慎重になっています。事実、各国の外貨準備資産において、金が米国債を上回る規模に達したというデータもあります。また、通貨の「武器化」を懸念する中央銀行が、制裁や金融危機から自国を守るために、記録的なペースで現物資産である金の積み増しを続けています。

アメリカの巨大な政府支出は、ドルが基軸通貨として世界中で求められることを前提に成り立っています。しかし、世界がドルを必要としなくなれば、あふれたドルがアメリカ内に還流し、さらなるインフレ圧力を生むことになります。最悪のシナリオではドルの完全な崩壊やハイパーインフレの可能性さえ否定できません。グローマン氏は、アメリカに対立する側が米軍に勝つ必要はなく、ただ「債券市場に打ち勝てばよい」という厳しい現実を突きつけています。こうした背景から、誰の負債でもない「本物の通貨」としての金の価値が再認識されているのです。

米、通貨膨張続く

CPI Steady as Inflation Keeps Increasing [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの2月の消費者物価指数、CPIは、表面上は安定しているように見えますが、その背後でインフレの圧力は着実に高まっているとマイク・マハリー氏は分析しています。2月のCPIは前年同月比で2.4パーセントの上昇となり、1月の数字や市場の予想と一致しました。しかし、これは連邦準備制度理事会、FRBが目標とする2パーセントを依然として上回ったままです。マハリー氏は、そもそもCPIは当局が選んだ品目の価格変動を示す指標に過ぎず、本来の定義である「通貨供給量の増大」というインフレの本質を正確に反映していないと指摘しています。

詳細を見ると、住宅費の伸びが鈍化した一方で、食品価格は上昇し、ガソリン価格も前月比で0.8パーセント上昇しました。衣料品価格の急騰については、関税の影響であると分析されています。また、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年比2.5パーセントと高止まりしており、過去1年以上にわたってこの水準から抜け出せていません。さらにマハリー氏は、現在の統計手法は1970年代以前のものに比べて上昇率を低く見せるように設計されており、当時の計算式を用いれば、現在の物価上昇率は公式発表の倍にあたる6パーセントに近い数字になるはずだと主張しています。

より深刻なのは、通貨供給量の動きです。マハリー氏によれば、通貨供給量は2022年7月以来の速いペースで増加しており、パンデミック時のピークをすでに上回っています。FRBは公に認めてはいませんが、昨年12月から事実上の「量的緩和」を再開しており、何もないところから作り出した資金で米国債を買い支えています。こうした通貨の増大は、いずれ資産価格や消費者物価の上昇という形で経済全体に波及し、私たちが持つお金の価値を確実に目減りさせていくことになります。

さらに、現在進行中の中東での戦争がこの状況を悪化させています。戦争による原油価格の高騰は一時的な「価格ショック」ですが、一方で政府は1日あたり約10億ドルという膨大な戦費を投じています。深刻な財政赤字を抱える米国政府にはその資金がなく、さらなる借金に頼らざるを得ません。需要が低下している米国債を支えるために、FRBは今後さらに積極的な通貨発行を強いられる可能性が高いでしょう。マハリー氏は、戦争がもたらす原油高という表面的な現象だけでなく、その裏で進む際限のない通貨増大が、長期的なインフレを加速させると結論付けています。

一喜一憂で失うもの

Why “Dead Investors” Beat the Market as Gold Surges Past $5,000 [LINK]

【海外記事紹介】経済ニュースや相場の急変に直面した際、投資家がいかに冷静さを失いやすいかについて、経済ジャーナリストのマイク・マハリー氏が興味深い視点を提示しています。マハリー氏は、目まぐるしく変わる状況に反応しすぎる投資家の姿を、トカゲを追いかけていたはずが鳥やリスに気を取られてしまう子猫に例えています。特に現在のイランとの戦争のような地政学的な緊張感が高まる時期には、ニュースの速報に感情的に反応してしまいがちですが、それが誤った判断を招く原因になると警鐘を鳴らしています。

特筆すべきは、遺産相続などで放置されたままの口座や、亡くなった方の口座が、結果として市場平均を上回る高い運用成績を収めているという調査結果です。これは、何もしなかったことで、パニック時の売却や過度な熱狂による購入といった感情的なミスを避けられたためだと分析されています。金融心理学の観点からも、人間の生存本能である闘争・逃走反応が投資においては裏目に出ることが指摘されており、短期的なニュースに一喜一憂することは資産と心の平穏の両方を損なう可能性があるとしています。

金市場に目を向けると、米国とイランの紛争により価格は大きく変動しています。一時的に1オンスあたり5,400ドルを超えた後、現在は5,000ドルから5,200ドルの間で推移しています。歴史的に見て、こうした紛争による金価格の上昇は一時的な避難先としての需要によるもので、時間の経過とともに落ち着く傾向があります。しかし、今回の紛争には長期的な不安定要因も含まれています。米国の外交方針の変化や、イランにおけるより強硬な指導部への交代、さらには中東での政権交代が必ずしも安定をもたらさないという過去の教訓が、将来的な不確実性を高めています。

また、従来は安全資産とされていた米国債の地位が揺らいでいることも重要な変化です。巨額の国家債務や財政赤字への懸念から、有事の際でも国債への需要が伸びず、金がその役割を代替しつつあります。さらに、1日あたり約10億ドルにのぼる戦費を賄うための借り入れは、通貨価値の下落を招き、長期的には金や銀の価値を支える要因となります。また、物流面でも中東の空域閉鎖によりドバイに金が滞留するなど、物理的な供給網の混乱が各地で需給の偏りを生んでいます。マハリー氏は、目先の速報に惑わされるのではなく、債務問題や通貨政策といった長期的な本質に目を向けるべきだと締めくくっています。

2026-03-12

楽観シナリオ崩れる

'We've Obliterated Their Missiles' - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】2026年3月初旬、トランプ大統領やイスラエル当局は、イランのミサイル発射台はほぼ壊滅し、戦争は間もなく終了すると楽観的な見通しを示していました。トランプ氏は自身のゴルフリゾートから、イランの戦力は完全に一掃され、作戦は予定よりも早く進んでいると強調しました。しかし、こうした「イランの弾薬は底を突いた」という大本営発表からわずか8日後の3月10日から11日にかけて、事態は一変しました。

イラン側は「第37波」と呼ばれる、開戦以来最大規模かつ最も激しい波状攻撃を仕掛けてきました。3時間を超える連続攻撃には、1トン級の弾頭を備えた超大型ミサイル「ホラムシャハル」などが投入され、テルアビブやバーレーンの米海軍第5艦隊基地、エルビルなどを同時に直撃しました。この攻撃により、米国の地上配備型迎撃システムであるTHAAD(サード)4基が機能不全に陥り、イスラエルの防空網も深刻な麻痺状態に陥っていると報じられています。

さらに、ホルムズ海峡の閉鎖によって原油価格は再び1バレル100ドルを突破し、ドバイなどの主要都市も経済的な打撃を受けています。米国政府内では、海峡が開放されたとする誤った情報を閣僚が発信した直後にホワイトハウスが訂正に追われるなど、混乱が見られます。

特筆すべきは、イランが米国のわずか数十分の一という極めて限定的な軍事予算でありながら、開戦初日に最高指導者を失うほどの猛烈な空爆を受けつつも、依然として攻撃をエスカレートさせる能力を維持している点です。米国国防総省がすでに500億ドルの緊急追加予算を議会に求めている事実は、イラン一国を相手にした戦いがいかに想定外の展開を見せているかを物語っています。ワシントンが描いていた「短期決戦」のシナリオは崩れ去り、圧倒的な軍事力を持ちながらも、イランの抵抗を抑え込めていない現状に厳しい視線が注がれています。

長期戦の様相

Trump Wants a Short War, But The Iranians Are Absolutely Determined To Make It a Long One - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】トランプ大統領はイランとの戦争が短期間で終結すると繰り返し述べてきましたが、現実はその思惑とは大きく異なり、長期化の様相を呈しています。マイケル・スナイダー氏の解説によれば、米国とイスラエルによる前例のない規模の爆撃にもかかわらず、イラン側が屈服する気配は全くありません。

米国軍はすでに5000以上の標的を攻撃しており、ヘグセス国防長官は、火曜日が「イラン国内への攻撃において過去最も激しい一日」であったと述べています。圧倒的な軍事力を見せつけることで相手を追い込む狙いですが、イラン議会議長は「侵略者は罰せられ、教訓を学ばなければならない」と断言し、停戦を検討すらしていないことを明らかにしました。イラン側は、この戦争が終わるのは自分たちが決めた時であると主張し、強い対決姿勢を崩していません。

さらに事態を深刻にさせているのは、世界で最も重要なエネルギーの要衝であるホルムズ海峡の状況です。米国側のインテリジェンス報告によれば、イランは同海峡に機雷の敷設を開始したと報じられています。これに対しトランプ大統領は、機雷の即時撤去を要求し、従わない場合は「かつてないレベルの軍事的報復」を行うと警告しました。しかし、イラン側がこの要求に従う可能性は低く、さらなる事態の激化が予想されます。

イランの革命防衛隊は、今後さらに大規模な弾頭を備えたミサイル攻撃を行うと予告しており、この戦いを今後10年間継続できるとの警告も発しています。当初、今月末までの終結を望んでいたトランプ政権にとって、ホルムズ海峡の封鎖という実害が生じている以上、簡単に手を引くことは不可能な状況です。金融市場もこの地政学的リスクを無視できなくなりつつあり、歴史的な転換点とも言える急速な事態の進展が、世界経済に大きな影を落としています。

プライバシーの静かな侵害

Silent Attacks on Personal Freedom - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】アメリカ憲法修正第4条が保障する「プライバシーの権利」が、政府による監視技術の活用と法制度の拡大によって静かに侵害されています。元判事のアンドリュー・ナポリターノ氏による解説によれば、トランプ政権下でFBIが導入したイスラエル製の監視ソフトウェア「ペガサス」が、その象徴的な存在となっています。

このソフトウェアは「ゼロクリック」と呼ばれ、利用者がリンクをクリックするなどの操作を一切しなくても、スマートフォンやパソコン内のデータを遠隔でダウンロードできる機能を持ちます。かつてFBI長官は、この技術を保有しているものの使用はしていないと議会で証言していました。しかし、バイデン前大統領が国家安全保障上の緊急事態を除いて使用を禁じた大統領令を、トランプ大統領が最近になって密かに撤回したことが明らかになりました。

また、来月に期限を迎える外国インテリジェンス監視法(FISA)第702条の延長についても、トランプ大統領は全面的な支持を表明しています。本来、米憲法下での監視には、犯罪の相当な根拠に基づく裁判所の捜索令状が必要ですが、FISAはこの原則を歪めています。この法律の下では、犯罪の証拠がなくとも「外国人と接触している」という疑いだけで監視が可能となります。

さらに深刻なのは、監視対象が「6次隔たり」まで拡大されている点です。例えば、海外の知人と連絡を取っただけで、その本人だけでなく、その人物と連絡を取ったあらゆる人々が令状なしの監視対象になり得ます。2023年には、この仕組みを通じて300万人のアメリカ人が監視の対象となりました。かつて自分自身が監視の対象になった際にFISAを批判していたトランプ大統領が、再び権力の座に就くとその延長を求める姿勢に転じたことは、個人の自由に対する重大な脅威であるとナポリターノ氏は指摘しています。

こうした政府によるハッキング行為や憲法を軽視する姿勢は、アメリカ人が本来持っている「放っておいてもらう権利」を根底から破壊するものです。憲法を守るべき立場にある人々がそれを無視するとき、個人の自由は音もなく消え去っていくという危機感が示されています。

静かな資産没収

Has the Great Taking Begun? - John Rubino's Substack [LINK]

【海外記事紹介】現在、金融市場ではブラックロックやブラックストーンといった大手資産運用会社が、旗艦ファンドにおいて投資家の解約請求を制限するという事態に直面しています。これは「グレート・テイキング」、すなわちウォール街や政府が投資家の資産を実質的に没収、あるいは管理下に置くシナリオが始まったのではないかという懸念を呼んでいます。

具体的には、ブラックロックの260兆ドル規模のプライベート・クレジット・ファンドにおいて、予想を上回る解約請求が殺到したため、同社は引き出し制限をかけました。背景には米国の雇用統計の悪化や中東情勢の緊迫化に伴う市場全体の冷え込みがあり、同社の株価も下落しています。一方でブラックストーンのファンドでも過去最高の解約請求が発生し、経営陣が自己資金を注入して対応するなどの苦境が報じられています。

こうした動きに対し、ブラックストーン側は、これらの商品は高い収益性を得る代わりに流動性を制限する設計になっており、制限は「不具合ではなく仕様である」と主張しています。しかし、批評家の間では、これは氷山の一角にすぎないとの見方が出ています。

ソラリ・レポートのキャサリン・オースティン・フィッツ氏は、現時点で完全な資産没収が始まったわけではないとしつつも、中央銀行による取引の完全管理や、インフレによる通貨価値の下落といった「静かな没収」はすでに進行中であると警告しています。同氏は、こうした資産強奪を防ぐ唯一の方法は、州レベルで金融取引の自由を確保し、中央集権的な管理に対抗することだと説いています。

不透明で巨大なシャドーバンキングやプライベート・エクイティ部門で、主要なプレーヤーが破綻すれば、投資家が一斉に出口へ殺到するリスクがあります。こうした状況下では、カウンターパーティ・リスク、つまり誰かの約束の上に成り立つ価値ではない、物理的な金や銀を保有することの重要性が改めて浮き彫りになっています。

金鉱株に値上がり余地

As high gold prices become the baseline, mining equities are poised to outperform in 2026 – VanEck’s Casanova | Kitco News [LINK]

【海外記事紹介】金価格が1オンスあたり5000ドルを超える歴史的な高値を維持する中で、金採掘企業の株式が2026年に金地金そのもののパフォーマンスを上回る可能性が高まっています。資産運用会社ヴァンエックのゴールド・貴金属ポートフォリオ・マネージャーであるイマル・カサノバ氏によれば、現在の金鉱業界は記録的な利益率とフリーキャッシュフローを創出しており、業界全体の総維持コストが1オンスあたり2000ドルを下回っていることから、今年も好調な推移が期待できるといいます。

カサノバ氏は最新の解説の中で、金価格がこれ以上上昇しなかったとしても、現在の採掘企業の貸借対照表やコスト構造、利益率は持続的な収益性を示していると分析しています。投資家の間では金価格がさらに上昇するかを疑問視する声もありますが、同氏は新たな上昇要因が毎月のように現れる現状から、さらなる上昇は十分にあり得ると考えています。また、多くの市場参加者がこの数年の上昇を静観してきましたが、現在の記録的な高値が一時的なピークではなく定着しつつあるという認識の変化が生じています。

この価格水準が標準になるという確信が強まることで、株式市場の評価には長期的な金価格の上昇期待が反映され始めます。現在の高い利益率が維持されることは、2026年の金採掘株に対する強い確信の源泉となっています。仮に金価格が横ばいで推移した場合、利益を圧迫するのは生産コストの上昇ですが、各社が提示した2026年の総維持コストの見通しは、前年比で10%から12%程度の増加に留まっています。一方で金価格は年初からすでに20%以上上昇しており、コスト増を補って余りある利益が確保されています。

カサノバ氏は、2月に開催された国際的な会議で40社以上の金採掘企業と面談した結果、業界全体が規律ある現金創出の段階にあり、無謀な拡大サイクルにはないことを確認しました。各社は埋蔵量の算出において1オンス2000ドルという保守的な価格設定を維持しており、経営陣はリターンの質を優先し、技術的な精査に基づいたリスクの低いプロジェクトに投資を絞っています。

許認可の壁や地政学的リスクは依然として存在するものの、強固な資産と改善された運営能力、そして長期的な価値創造への取り組みにより、業界はかつてないほど良好な状態にあります。金価格が現水準を維持、あるいは上昇を続ければ、金採掘株はその財務力と運用レバレッジによって、金地金を凌駕する成果を上げ続ける見通しです。

トランプ氏の屈服と愚行

Launching a War on Iran Was No Act of Courage | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年3月初旬、トランプ大統領がイスラエルと共同でイランへの大規模な空爆を命じたことを受け、米国内の保守派の政治家や論評家たちは、これを47年間誰も成し遂げられなかった歴史的な決断であり、大統領の「驚くべき勇気」の証であると絶賛しました。ホワイトハウスもまた、これらの称賛の声をまとめた文書を公表し、世界をより安全にするための断固たる行動であったと強調しています。しかし、この記事の著者によれば、この戦争の開始は勇気ある行動などではなく、むしろその正反対であるといいます。

著者は、現代のアメリカが、際限なく膨張し富を使い果たし、紛争を増幅させる「戦争国家」の捕虜になっていると分析しています。その背景には二つの歴史的要因があります。一つは、19世紀末のペンドルトン法以降、選挙で選ばれたわけではない終身雇用の官僚機構が肥大化したことです。これら「シビル・サービス(公務員)」は、国民の利益よりも自らの組織の存続と職務の正当化を優先するようになりました。冷戦が終われば新たな敵を必要とし、スターリン、サダム・フセイン、プーチンといった「悪役」を次々と見つけ出すことで、膨大な国防予算と組織の維持を図ってきたのです。

第二の要因は、この巨大な戦争遂行装置が、資金力のある利害関係者によって「買収」されている点です。兵器産業だけでなく、他国のロビー団体がワシントンのシンクタンクやメディアに巨額の資金を投じ、アメリカの外交政策を自国の利益にかなう方向へ誘導しています。今回のイラン攻撃も、アメリカ国民の利益のためではなく、ロビー活動に長けたイスラエル政府の地政学的利益や、兵器産業の収益、そして自らの必要性を証明したい軍・諜報官僚の思惑に合致した「教科書通りのワシントン外交」に過ぎません。

真に勇気ある指導者とは、この巨大な戦争国家という「沼」を相手に回し、既得権益を打破して平和を実現しようとする人物を指します。トランプ氏はかつてその兆候を見せ、既成勢力からの激しい抵抗に遭いましたが、今回の開戦は彼が結局のところワシントンの体制に屈服し、それを拡大する側に回ったことを示しています。同盟国の利益や兵器産業のために、アメリカ兵の命や世界経済をリスクにさらすことは勇気ではなく、単なる「愚行」であると著者は厳しく批判しています。

MAGAの転落

The Tea Party Stumbled So That MAGA Could Fall | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの政治史において、既存の権力構造に挑む草の根の抗議運動が、いかにして既存の体制に取り込まれ、あるいは自らの矛盾によって崩壊していくかという歴史的な教訓が、2026年現在の視点から語られています。歴史家のAlan Mosley氏は、今世紀初頭の二大運動である「ティーパーティー(茶会運動)」と「MAGA(Make America Great Again)」を比較し、両者がいかにして支持者の期待を裏切る結果となったかを鋭く分析しています。

ティーパーティー運動の真の出発点は、2007年のロン・ポール氏の大統領選挙活動にありました。健全な通貨、憲法による政府権限の制限、そして海外での戦争への反対というリバタリアン的な理念が若者の支持を集めたのです。しかし、2010年頃には共和党の既成勢力や大口献金者がこの勢力を自派に取り込み、スローガンだけを利用するようになりました。結果として、政府支出の削減や憲法遵守という本来の要求は骨抜きにされ、運動は静かに党の機構の中に消えていきました。

その空白を埋める形で登場したのがドナルド・トランプ氏によるMAGA運動です。彼は「終わりのない戦争」の終結や不法移民の強制送還、財政赤字の解消を公約に掲げ、既存政治に不満を持つ層を熱狂させました。しかし、政権運営の実態は公約とはかけ離れたものでした。パンデミック時に批判の対象となった官僚への責任追及は行われず、移民の送還数も公約の規模には及びませんでした。さらに、財政赤字は任期中に約7.8兆ドルも膨れ上がり、第2期に入ってからも14ヶ月で2兆ドル以上増加するという、かつてのティーパーティーが最も忌み嫌った「大きな政府」そのものの姿を露呈しています。

決定的な決裂は外交政策で起こりました。戦争を終わらせるという「アメリカ・ファースト」の理念を掲げながら、イランとの軍事衝突に踏み切ったことは、支持者にとって最大の裏切りとなりました。トランプ氏という個人に強く依存したMAGA運動は、彼自身の決断によってその正当性を失い、今や実体のないブランドへと変質しています。著者は、かつてティーパーティーが既成勢力に吸収されて「つまずいた」経験があったからこそ、現在のMAGAの劇的な「転落」がより鮮明に浮き彫りになったと締めくくっています。

ロスバードと合意による国家

Rothbard’s Defense of Border Control | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】自由至上主義(リバタリアニズム)の大家として知られるマレー・ロスバードは、1993年の論文「合意による国家」において、個人の自由は社会から孤立した存在としてではなく、家族や言語、文化といった特定の「国」や「地域」という歴史的文脈の中で育まれるものであると強調しました。ソ連崩壊直後の当時、彼は中央集権的な国家が崩壊し、本来の「国民性」が劇的に再登場した現象を目の当たりにし、国家権力の解体と地方分権化こそが社会紛争を減らし、自由を拡大する道であると説きました。

このロスバードの主張は、現在の国境管理を巡る議論にも重要な示唆を与えています。彼は、国家権力の専制に対する防波堤として「国家の自決権」を重視しました。特定の地理的空間に住む人々の合意に基づく国家という概念こそが、国境管理の正当な根拠になると考えたのです。

一部の批評家は、ロスバードが挙げた東欧や中東の歴史的例証の細かな誤りを指摘することで、彼の理論そのものを否定しようとします。しかし、本稿の著者は、例証の不備が必ずしも理論の誤謬を意味するわけではないと反論しています。数学における「局所的な反例」が定理全体を覆すものではないのと同様に、ロスバードが示した具体的なエピソードはあくまで理論を分かりやすく説明するための手段に過ぎません。

ロスバードが晩年に大量移民の問題を真剣に検討し始めたのは、単に東欧の情勢を知ったからではなく、ソ連崩壊後の民族問題の噴出という時代の変化に直面したからです。彼は、自由貿易や移動の自由を盲信して国民性の問題を無視するリバタリアンに対し、人々が抱く国家アイデンティティへの懸念を無視することは賢明ではないと警鐘を鳴らしました。

今日の欧米諸国で見られる移民問題やナショナリズムの高まりを背景に、ロスバードの「合意による国家」という視点は再び注目を集めています。個人の自由を追求する立場であっても、現実の社会秩序を維持するためには、国境や国民性という枠組みを軽視できないという彼の洞察は、今なお色褪せていません。

中東は誰のものか?

Who Owns the Middle East? | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月18日に行われたタッカー・カールソン氏によるマイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使へのインタビューが、中東の土地所有権を巡る大きな議論を呼んでいます。この対談でハッカビー氏は、創世記の記述を根拠に、イスラエルがユーフラテス川からエジプトの川に至る広大な土地に対する「神授の権利」を持つとの考えを支持しました。しかし、この記事の著者によれば、このような聖書に基づく主張は、現代の国際政治や法的な妥当性の観点から多くの問題を抱えています。

まず、キリスト教徒やユダヤ教徒の間でも、現代のイスラエル国家をアブラハムへの約束の正当な後継者とみなすかどうかについては意見が分かれています。また、世界の大半の人々や米国の若い世代にとっては、聖書の記述は土地の所有権を正当化する根拠にはなり得ません。著者が重要視するのは、アメリカ独立宣言の起草者トーマス・ジェファーソンが掲げた「自然法」の原則です。ジェファーソンは、政府の正当性は支配される側の同意に由来し、すべての人間には生命、自由、幸福追求という不可譲の権利があると考えました。

この自然法の視点から土地所有を分析すると、土地の所有権は権力者による恣意的な配分ではなく、未開の地に労働を投じて所有権を確立する「ホームステッディング」によって生じるものです。自由至上主義の哲学者マレー・ロスバードの理論を当てはめると、ヨルダン川から地中海に至る地域の約半分は、かつてパレスチナのアラブ人が所有・使用していた土地でした。しかし、その90%がイスラエル国家によって奪われ、現在はイスラエル土地庁がこの地域の土地の93%を封建的な地主のように管理し、差別的なリースを行っている実態があります。

結論として、アメリカの建国理念や自然法を支持すると称しながら、聖書の記述を口実にイスラエル国家を無条件に支持することは、論理的な矛盾を孕んでいます。ジェファーソンが示した「被統治者の同意」という原則は、土地を追われたアラブ人に対して全く守られていません。著者は、特定宗教の経典を根拠にした不透明な土地の権利主張よりも、普遍的な自然法に基づいた公正な権利の検証が必要であると説いています。

アルゼンチン大統領、シオニズムに隷従

The Zionist Road to Serfdom in Argentina, by Oscar Grau - The Unz Review [LINK]

【海外記事紹介】アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、自らを「アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)」と称していますが、その実態は米国のシオニズム帝国主義に従属し、国家権力を強化する「統制への道」を歩んでいるとの批判があります。ミレイ氏は2023年12月の就任以来、一貫して米国やイスラエルを支持する外交を展開してきました。2024年4月にはNATOのグローバル・パートナーへの加盟申請を行い、軍事演習を通じて米軍との関係を深化させています。さらに、トランプ氏を平和のヒーローと称賛し、ベネズエラやイランへの介入を支持するなど、新保守主義的な姿勢を鮮明にしています。

内政面では、自由至上主義的な主張とは裏腹に、国家による監視体制と軍事力の強化を推し進めています。2024年にはAIを用いた「未来の犯罪予測」や仮想空間の監視を行う部隊を創設しました。また、大統領令によって、議会の承認なしに軍を国内の「戦略的標的」の保護やサイバー空間の防衛に投入することを可能にしました。これは社会紛争が軍事的に鎮圧されるリスクを高めるものです。さらに2025年には、FBIをモデルとした連邦捜査局(DFI)を設立し、中央集権的な犯罪捜査体制を構築しました。全国民のDNA登録や指紋データベースの統合など、プライバシーを侵害する強権的な手法を導入しようとしています。

また、パランティア・テクノロジーズなどの米国のハイテク企業や、米国・イスラエルの諜報機関との協力関係も指摘されています。ミレイ氏はアルゼンチンの国家情報を外国の利益に差し出しているとの疑念も持たれています。特にイスラエルに対しては無条件の支持を表明しており、ガザでの行動を自衛権の行使として擁護し、反ユダヤ主義対策を名目に刑法改正による罰則強化を図っています。

結局のところ、ミレイ氏は自由を象徴するスローガンを掲げながら、実際には軍事費を増大させ、警察国家化を推進するデマゴーグであると著者オスカー・グラウ氏は分析しています。2026年3月にニューヨークのイェシーバー大学で行った演説で、ミレイ氏自身が「世界で最もシオニストな大統領」であると自認したことは、彼が本来の自由至上主義から最も遠い存在であることを象徴しているといえるでしょう。