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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-03-13

イラン戦争のコスト

Cost of the Iran War—and Why It Will Fuel Inflation - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】米国とイランの戦争が連日大きく報じられていますが、その背後にある「戦争の経済学」が、いかに米国の破綻とインフレを加速させるかについて、著名な投資家ダグ・ケイシー氏が冷徹な分析を提示しています。現代の戦争において、わずか3万5,000ドルの安価なドローンを迎撃するために、米国やイスラエルが数百万ドルのミサイルを消費しているという非対称性は、極めて不条理です。ケイシー氏はこれを、相手を疲れさせてから反撃するボクシングの「ロープ・ア・ドープ」に例え、イラン側が米国の高価な兵器在庫を枯渇させるのを待っていると指摘しています。

ペンタゴンは戦費を1日あたり10億ドルと見積もっていますが、実際にはミサイル防衛だけでそれを遥かに上回る数倍の費用がかかっているという見方もあります。かつての第二次世界大戦でさえ、現在の価値に換算して約4兆ドル程度でしたが、アフガニスタンやイラクでの紛争ですでに数兆ドルを浪費してきた米国にとって、今回のイラン戦は国家を自己破産へと追い込む決定打になりかねません。特にトランプ大統領が「無条件降伏」を要求したことで、この戦いはイラン側にとって存立をかけた宗教的・存亡的な戦いへと変質し、コストが制御不能になるリスクが高まっています。

さらに深刻なのは、この巨額の戦費を調達する手段が「借金」しかないという事実です。現在、中国や日本といった海外の買い手が米国債の購入を手控える中、政府は今年満期を迎える約10兆ドルの旧債務の借り換えと、新たな戦費の調達を同時に行わなければなりません。結局、中央銀行である連邦準備理事会(FRB)が、何もないところからドルを刷ってこれらを買い支える「最後の買い手」にならざるを得ません。この際限のない通貨発行は、必然的にドルの価値を下げ、物価と金利の歴史的な高騰を招くことになります。

国際法についても、ケイシー氏は「フロンティアの酒場における礼儀」のような虚飾に過ぎないと断じています。交渉の最中に奇襲攻撃を仕掛けるような振る舞いは、かつて世界最強の顧客として振る舞っていた米国が、今やツケを溜め込み、周囲から不信と軽蔑を買う「タチの悪い酔っ払い」に成り下がったことを露呈させました。このような状況下では、ドルの暴落や債務危機に備え、金やエネルギー、商品といった「現物資産」こそが唯一の防衛策になると筆者は結論付けています。

イランとの愚かな戦争

The War on Iran Is Dumb. Here's Why. - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】イランとの戦争が「戦略」の名の下に推し進められていますが、その実態は過去の失敗を繰り返す悪癖に過ぎないと、アラン・モズレー氏は厳しく批判しています。この紛争がもたらす代償は、すでにエネルギー市場という最も予測可能な場所に現れています。世界の石油消費量の約20パーセントが通過するホルムズ海峡という急所を脅かすことは、単に敵対国を叩くことにとどまらず、世界中の家庭や企業の家計を直撃するリスクを増大させています。これを「小さな代償」と呼ぶのは、分析ではなく単なる宣伝に過ぎません。

戦争を正当化する理由として語られる「中国への打撃」という論理も、現実を直視すれば破綻しています。米中間の巨額の貿易規模を考えれば、一方を傷つけることは自国にも致命的な副作用をもたらします。国際通貨基金(IMF)も、貿易制限が長期的に世界の経済出力を最大7パーセント減少させると警告しています。また、中国がイラン産原油の主要な買い手であることは事実ですが、戦争によって供給網を破壊すれば、輸送費や保険料の急騰を通じて世界中の国々を巻き込む「世界規模の苦境」を引き起こすことになります。

さらに、核開発を阻止するための先制攻撃という名目も、むしろ逆効果であると指摘されています。北朝鮮が核を保有することで「体制の安全」を確保している現状を世界が見せつけられている中で、核を持たない国が疑いだけで攻撃されれば、他国に与える教訓は「交渉はゆっくり、濃縮は素早く行い、抑止力なしで捕まってはならない」というものになります。事実、2025年の米国の攻撃も核施設を完全に破壊するには至らず、むしろ脅威にさらされた国々に、より深く隠れ、より速く開発を進める動機を与えてしまいました。

外交においても、米国は自らの信頼性を損なっています。2026年2月にオマーンの仲介で進められていた対話は、その直後の空爆によって踏みにじられました。イラン核合意からの離脱や、数々の国際条約からの脱退という過去の経緯は、米国の約束が次の選挙で容易に書き換えられることを世界に知らしめています。相手が約束を守ると信じられなければ、外交という安全装置は機能しません。イランとの戦争は、短期的な戦果のために世界経済を危険にさらし、防ごうとしている核拡散をむしろ助長し、米国の外交的信用を焼き払う「愚かな選択」であると、筆者は結論付けています。

47年間の対イラン戦争

Washington's 47-Year War Against Iran - Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】イランが「47年間にわたり米国に戦争を仕掛けてきた」という言説は大きな嘘であり、実際には1979年の革命以来、帝国の論理を振りかざしたワシントン側がイランに対して執拗な戦争を仕掛けてきたのが実態であると、デビッド・ストックマン氏は指摘しています。米国は革命後の新政権に対し、外交的な対話を拒むだけでなく、経済制裁や武器禁輸を通じて軍事的な無力化を図り、イランを敵対的な立場へと追い込んできました。

ワシントンによる対イラン攻撃の最大の「武器」となったのが、1980年から8年間続いたイラン・イラク戦争におけるサダム・フセインへの大規模な支援です。フセインは革命の波及を恐れ、軍の混乱に乗じてイランに侵攻しましたが、当時のイラン軍は米国製の兵器を主力としていながら、米国の禁輸措置によって部品調達ができず、空軍や装甲部隊の大部分が機能不全に陥っていました。レーガン政権はこの制裁をさらに強化し、世界的な外交工作を通じてイランへの武器流入を徹底的に封じ込めました。

兵器のスペアパーツを奪われたイランは、近代的な機械化戦争を遂行できなくなり、やがて悪名高い人海戦術へと追い込まれました。十分な訓練も受けず、軽武装のみを施された12歳もの少年兵を含む志願兵たちが、自らの身体で地雷原を切り開くという凄惨な光景が繰り返されたのです。この戦術だけで20万人以上のイラン人が命を落としましたが、これこそが米国の禁輸措置によって強行された悲劇であったとストックマン氏は述べています。

さらに米国は、1982年からイラク側へ秘密裏に戦場インテリジェンスを提供し始めました。CIAや国防情報局は衛星写真を用いてイラン軍の動きを詳細に伝え、イラク軍による正確な反撃を支援しました。米国はイラクが化学兵器を使用していることを知りながら、イランの勝利を阻止するために情報共有を継続し、結果として数多くのイラン兵が毒ガスの犠牲となりました。この戦争によるイラン側の死者は50万人を超え、経済的損失は6,000億ドル以上に達しました。こうした歴史的背景こそが、イラン国内における根深い反米感情と現在の強硬な体制を築き上げたのであり、米国の外交政策が招いた自業自得の結果であると結論付けています。

トランプ氏の戦争、世界経済に影

Trump's ‘move fast and break things’ war slams into economy | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事紹介】トランプ政権が掲げる「素早く動いてぶち壊す」というシリコンバレー流の手法が、中東という極めてデリケートな地域で展開され、世界経済に影を落としています。米国とイスラエルによる対イラン攻撃は、単なる軍事作戦を超え、政権交代やイランの解体までを見据えた野心的な目標へと拡大しています。この「ミッション・クリープ(目的の肥大化)」に対し、イラン側はホルムズ海峡の封鎖や石油市場への攻撃で対抗する構えを見せており、紛争の長期化が懸念されています。

経済的な最大の影響は、石油価格の上昇です。北海ブレント原油は、年初の1バレル60ドルから80ドルを突破しました。問題はイランの産出量そのものではなく、世界の石油輸送の要所であるホルムズ海峡の混乱です。すでに複数の船舶が攻撃を受け、民間の保険会社がタンカーへの保険引き受けを停止しています。トランプ大統領は政府機関を通じて安価な海上保険を提供し、米海軍による護衛も示唆していますが、ドローン兵器の進化や物流の不確実性を前に、海運業界には懐疑的な見方が広がっています。

このエネルギー危機の直撃を受けるのは、主にアジアの国々です。ホルムズ海峡を通過する石油の多くは中国、インド、日本、韓国といったアジア諸国に向かっています。特にインドは、原油輸入への依存度が高いだけでなく、中東に住む自国民からの送金が年間約480億ドルにのぼり、これらが滞ることで国際収支が悪化するリスクを抱えています。また、肥料の原料となる天然ガスの供給不安から、肥料価格が高騰しており、作物の植え付け時期を控えた世界の農業に深刻な打撃を与える恐れがあります。

金融市場では、原油高を受けてドル高が進行しています。これは米国のエネルギー自給率の向上と、インフレ懸念による利下げの遅れを反映したものですが、輸入インフレに苦しむ「グローバル・サウス」の国々にはさらなる圧迫となります。さらに米国は、中国だけでなく日本やインドなどに対しても関税による貿易圧力を強めています。過去30年間にわたり世界で最も高い成長を遂げてきたアジア経済が、米国の性急な軍事・通商政策によって不安定化しており、その代償は計り知れません。

私物化された外交

Gangster Foreign Policy   - The American Conservative [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの外交政策がいかに「ギャング化」し、特定の勢力によって私物化されているかについて、痛烈な批判を込めた記事を紹介します。現在、トランプ政権は議会の承認を得ることなくイランとの戦争に踏み切っていますが、これはベネズエラでの紛争と同様に違法なものです。アメリカ国民は歴史的に戦争への関与に反対してきましたが、歴代のどの大統領候補も、当選後には公約を翻して新たな戦争を開始してきました。背後には、政権交代に左右されず戦争を推進し続ける強大な力の存在が示唆されています。

記事は、現在の米外交がイスラエルのネタニヤフ政権に従属しており、政治的暗殺の実行や平和交渉中の奇襲、条約の公然たる無視といった、野蛮で虚無的な振る舞いを模倣していると指摘しています。かつては世界から尊敬されていたアメリカの信頼は失墜し、今や「鎖の外れた狂犬」のように恐れられる存在へと変貌してしまいました。建国以来のキリスト教的な倫理観や抑制、そして宣戦布告の権限を議会にのみ認めた憲法の精神は、現在の指導層の間で急速に失われつつあります。

さらに、国際連合が本来の機能を果たせず、骨抜きにされている現状にも触れています。安全保障理事会の拒絶権は、特定の勢力の暴走を隠蔽するための盾として悪用されてきました。特にイスラエルによるパレスチナへの占領や入植地の拡大は、多くの国連決議で非難されながらも、米英の拒絶権によって事実上黙認され続けています。こうした「力こそが正義」という外交モデルは、特定の外国勢力や多額の寄付を行うロビー団体が、自分たちの民族的な報復や利益のためにアメリカの軍事力を私物化している結果であると断じています。

このような「ギャング的外交」は、アメリカを道徳的にも経済的にも破綻させています。世界各地に800もの軍事基地を維持し、1日あたり10億ドルの戦費を投じる現状は、天文学的な国家債務を積み上げ、アメリカ帝国を崩壊へと導いています。記事は、これ以上の不法な侵略や違憲の戦争を止めるべきだと訴えます。他国の警察官として振る舞うのではなく、自国の主権を取り戻し、憲法に基づく本来の姿に立ち返らなければ、アメリカの未来には際限のない借金と衰退、そして信頼の完全な喪失しか残されていないと結論付けています。

バフェット氏の法人税発言

Warren Buffett on Corporate Taxation: A Reality Check​ | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】著名な投資家ウォーレン・バフェット氏は、自身が率いるバークシャー・ハサウェイ社が2023年度に50億ドル以上の法人税を支払ったことを引き合いに出し、「もし米国の800企業が同額の税金を納めれば、他の国民は所得税や社会保障税を1セントも払わなくて済む」という趣旨の発言をしました。この発言は一部で好意的に報じられましたが、その経済的な実態を冷静に検証すると、いくつかの重要な矛盾が浮かび上がります。

まず、単純な計算から確認してみましょう。2023年度の米連邦政府の税収は約4.4兆ドルでした。バフェット氏が提案するように、800社がそれぞれ50億ドルを支払ったとしても、合計額は4兆ドルにとどまります。つまり、現状よりも4,000億ドルもの減収となり、ただでさえバフェット氏自身が「持続不可能で恐ろしい」と懸念している政府の財政赤字をさらに悪化させることになります。

さらに深刻なのは、誰が実際に税負担を負っているのかという「租税帰着」の問題です。バフェット氏の主張通り、法的には個人が納税義務を免れたとしても、経済的な負担から逃れられるわけではありません。企業の株式や資産の価値は、税引き後のキャッシュフローに基づいて決まります。法人税が課されるということは、その分、経済全体の生産活動や資源配分が変化することを意味します。

例えば、もし法人税率が極端に引き上げられれば、企業家は投資から利益を得ることができなくなり、労働力や土地への投資を控えるようになります。その結果として生じるのは、実質賃金の下落や地代、利子の減少です。つまり、法人税という形で企業が支払う税金は、回り回って労働者の給与削減や物価上昇という形で、実質的にすべての国民の所得を減少させているのです。

利益は経済の生命線であり、利益なしに複雑な生産活動を維持することは不可能です。利益に課税することは、本来なら将来の生産活動に再投資されるはずの資本を奪い、国民の生活水準の向上を阻害する、最も破壊的な課税形態の一つと言えます。バフェット氏の「誰も税を払わなくて済む」という言葉は、法的な形式に過ぎません。経済的な実態としては、国民は生活水準の低下という極めて重いコストを支払い続けることになるのです。

ロスバード、人と功績

The Persona and Legacy of Murray Rothbard | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】オーストリア学派の経済学において最も多産で重要な著述家の一人、マレー・ロスバードの生誕100周年を迎え、その類まれな人物像と功績に注目が集まっています。ロスバードは経済学、歴史、哲学など多岐にわたる分野で20冊以上の著作と数千の記事を残しました。驚くべきことに、彼は旧式のタイプライターを使い、1日に20ページ以上を事もなげに書き上げたと言われています。その博識ぶりは凄まじく、ある書評では期待を遥かに超える26ページもの詳細な改善案を提示し、著者を驚かせたという逸話が残っています。

ロスバードの生涯を特徴づけるのは、一切の妥協を排した自由への徹底的な防衛です。彼はコロンビア大学で数学と経済学を学びましたが、既存の経済学には納得していませんでした。しかし、ナチスから逃れて米国に渡ったルードヴィヒ・フォン・ミーゼスの著書『ヒューマン・アクション』に出会ったことで、オーストリア学派へと転向します。当初は古典的自由主義者でしたが、友人との対話を通じて、警察や司法までをも民営化すべきだと考える一貫した「アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)」へと進化しました。彼は経済的な効率性だけでなく、倫理と道徳をその思想の根幹に据えた点が特徴的です。

また、ロスバードは象牙の塔にこもる学者ではなく、現実の社会変革にも深く関与しました。自由の理念を実現するためであれば、時には左派、時には右派と、柔軟に同盟を組みました。例えば、ベトナム戦争時には、戦争に傾倒する当時の右派を嫌い、反戦を掲げる左派と手を結ぶことを厭いませんでした。彼の文章は非常に明快で、皮肉やユーモアに富んでおり、難解な論文でさえ小説のように読ませる力がありました。こうした率直な物言いは多くの批判を招きましたが、彼は世俗的な成功や名声よりも、真理を語ることを優先しました。

彼の教えの中で最も重要なものの一つは、「勝者によって書かれた公式な歴史を鵜呑みにするな」という姿勢です。ロスバードは、歴史的な事件の背後に「誰が得をするのか」という犯罪捜査のような視点を持ち、金と権力の流れを追うことを重視しました。彼は自身の功績をひけらかすこともなく、学生の奨学金よりも低い給与で教鞭を執りながらも、常に笑顔を絶やさなかったと言います。現代、私たちは彼の膨大な著作や講義をインターネットを通じて自由に学ぶことができます。ロスバードが現代のデジタルツールを手にしていたら、世界はもっと自由な場所になっていたかもしれません。

米国債よりゴールド

What's Up With the Treasury Market? Why Is Gold the Last Safe-Haven Standing? [LINK]

【海外記事紹介】現在の世界情勢において、金が「最後の安全資産」としての地位を固めつつある一方、かつてその役割を担っていた米国債が、有事の際にも買われないという異例の事態が起きていると、経済ジャーナリストのマイク・マハリー氏は指摘しています。通常、戦争などの地政学的な不確実性が高まると、投資家は安全を求めて米国債に資金を投じるものですが、今回は逆の動きが見られます。10年物米国債の利回りは、アメリカとイスラエルによる攻撃開始直前の3.96パーセントから、4.22パーセントへと上昇しました。利回りの上昇は債券価格の下落を意味しており、米国債への需要が極めて乏しいことを物語っています。

なぜ米国債は安全資産としての買いが入らないのでしょうか。マハリー氏は2つの大きな理由を挙げています。第一に、今回の紛争における原油価格の影響です。マクロ経済アナリストのルーク・グローマン氏によれば、世界の石油市場がドル建てで動いていることが、皮肉にも米国債売却を招いています。原油価格が急騰する中、エネルギーや食料を確保しなければならない国々は、手元にある最も流動性の高いドル資産、つまり米国債を売却して、高騰した石油を買うための資金を作らざるを得ない状況に追い込まれているのです。

第二の理由は、アメリカの財政状況に対する不信感と、世界的な「脱ドル化」の動きです。アメリカの国家債務は38.9兆ドルに達し、さらに戦費として1日あたり10億ドルが費やされています。際限なく支出を続けるアメリカ政府に対し、世界各国はこれ以上の資金を貸し付けることに慎重になっています。事実、各国の外貨準備資産において、金が米国債を上回る規模に達したというデータもあります。また、通貨の「武器化」を懸念する中央銀行が、制裁や金融危機から自国を守るために、記録的なペースで現物資産である金の積み増しを続けています。

アメリカの巨大な政府支出は、ドルが基軸通貨として世界中で求められることを前提に成り立っています。しかし、世界がドルを必要としなくなれば、あふれたドルがアメリカ内に還流し、さらなるインフレ圧力を生むことになります。最悪のシナリオではドルの完全な崩壊やハイパーインフレの可能性さえ否定できません。グローマン氏は、アメリカに対立する側が米軍に勝つ必要はなく、ただ「債券市場に打ち勝てばよい」という厳しい現実を突きつけています。こうした背景から、誰の負債でもない「本物の通貨」としての金の価値が再認識されているのです。

米、通貨膨張続く

CPI Steady as Inflation Keeps Increasing [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの2月の消費者物価指数、CPIは、表面上は安定しているように見えますが、その背後でインフレの圧力は着実に高まっているとマイク・マハリー氏は分析しています。2月のCPIは前年同月比で2.4パーセントの上昇となり、1月の数字や市場の予想と一致しました。しかし、これは連邦準備制度理事会、FRBが目標とする2パーセントを依然として上回ったままです。マハリー氏は、そもそもCPIは当局が選んだ品目の価格変動を示す指標に過ぎず、本来の定義である「通貨供給量の増大」というインフレの本質を正確に反映していないと指摘しています。

詳細を見ると、住宅費の伸びが鈍化した一方で、食品価格は上昇し、ガソリン価格も前月比で0.8パーセント上昇しました。衣料品価格の急騰については、関税の影響であると分析されています。また、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIも前年比2.5パーセントと高止まりしており、過去1年以上にわたってこの水準から抜け出せていません。さらにマハリー氏は、現在の統計手法は1970年代以前のものに比べて上昇率を低く見せるように設計されており、当時の計算式を用いれば、現在の物価上昇率は公式発表の倍にあたる6パーセントに近い数字になるはずだと主張しています。

より深刻なのは、通貨供給量の動きです。マハリー氏によれば、通貨供給量は2022年7月以来の速いペースで増加しており、パンデミック時のピークをすでに上回っています。FRBは公に認めてはいませんが、昨年12月から事実上の「量的緩和」を再開しており、何もないところから作り出した資金で米国債を買い支えています。こうした通貨の増大は、いずれ資産価格や消費者物価の上昇という形で経済全体に波及し、私たちが持つお金の価値を確実に目減りさせていくことになります。

さらに、現在進行中の中東での戦争がこの状況を悪化させています。戦争による原油価格の高騰は一時的な「価格ショック」ですが、一方で政府は1日あたり約10億ドルという膨大な戦費を投じています。深刻な財政赤字を抱える米国政府にはその資金がなく、さらなる借金に頼らざるを得ません。需要が低下している米国債を支えるために、FRBは今後さらに積極的な通貨発行を強いられる可能性が高いでしょう。マハリー氏は、戦争がもたらす原油高という表面的な現象だけでなく、その裏で進む際限のない通貨増大が、長期的なインフレを加速させると結論付けています。

一喜一憂で失うもの

Why “Dead Investors” Beat the Market as Gold Surges Past $5,000 [LINK]

【海外記事紹介】経済ニュースや相場の急変に直面した際、投資家がいかに冷静さを失いやすいかについて、経済ジャーナリストのマイク・マハリー氏が興味深い視点を提示しています。マハリー氏は、目まぐるしく変わる状況に反応しすぎる投資家の姿を、トカゲを追いかけていたはずが鳥やリスに気を取られてしまう子猫に例えています。特に現在のイランとの戦争のような地政学的な緊張感が高まる時期には、ニュースの速報に感情的に反応してしまいがちですが、それが誤った判断を招く原因になると警鐘を鳴らしています。

特筆すべきは、遺産相続などで放置されたままの口座や、亡くなった方の口座が、結果として市場平均を上回る高い運用成績を収めているという調査結果です。これは、何もしなかったことで、パニック時の売却や過度な熱狂による購入といった感情的なミスを避けられたためだと分析されています。金融心理学の観点からも、人間の生存本能である闘争・逃走反応が投資においては裏目に出ることが指摘されており、短期的なニュースに一喜一憂することは資産と心の平穏の両方を損なう可能性があるとしています。

金市場に目を向けると、米国とイランの紛争により価格は大きく変動しています。一時的に1オンスあたり5,400ドルを超えた後、現在は5,000ドルから5,200ドルの間で推移しています。歴史的に見て、こうした紛争による金価格の上昇は一時的な避難先としての需要によるもので、時間の経過とともに落ち着く傾向があります。しかし、今回の紛争には長期的な不安定要因も含まれています。米国の外交方針の変化や、イランにおけるより強硬な指導部への交代、さらには中東での政権交代が必ずしも安定をもたらさないという過去の教訓が、将来的な不確実性を高めています。

また、従来は安全資産とされていた米国債の地位が揺らいでいることも重要な変化です。巨額の国家債務や財政赤字への懸念から、有事の際でも国債への需要が伸びず、金がその役割を代替しつつあります。さらに、1日あたり約10億ドルにのぼる戦費を賄うための借り入れは、通貨価値の下落を招き、長期的には金や銀の価値を支える要因となります。また、物流面でも中東の空域閉鎖によりドバイに金が滞留するなど、物理的な供給網の混乱が各地で需給の偏りを生んでいます。マハリー氏は、目先の速報に惑わされるのではなく、債務問題や通貨政策といった長期的な本質に目を向けるべきだと締めくくっています。

2026-03-12

楽観シナリオ崩れる

'We've Obliterated Their Missiles' - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】2026年3月初旬、トランプ大統領やイスラエル当局は、イランのミサイル発射台はほぼ壊滅し、戦争は間もなく終了すると楽観的な見通しを示していました。トランプ氏は自身のゴルフリゾートから、イランの戦力は完全に一掃され、作戦は予定よりも早く進んでいると強調しました。しかし、こうした「イランの弾薬は底を突いた」という大本営発表からわずか8日後の3月10日から11日にかけて、事態は一変しました。

イラン側は「第37波」と呼ばれる、開戦以来最大規模かつ最も激しい波状攻撃を仕掛けてきました。3時間を超える連続攻撃には、1トン級の弾頭を備えた超大型ミサイル「ホラムシャハル」などが投入され、テルアビブやバーレーンの米海軍第5艦隊基地、エルビルなどを同時に直撃しました。この攻撃により、米国の地上配備型迎撃システムであるTHAAD(サード)4基が機能不全に陥り、イスラエルの防空網も深刻な麻痺状態に陥っていると報じられています。

さらに、ホルムズ海峡の閉鎖によって原油価格は再び1バレル100ドルを突破し、ドバイなどの主要都市も経済的な打撃を受けています。米国政府内では、海峡が開放されたとする誤った情報を閣僚が発信した直後にホワイトハウスが訂正に追われるなど、混乱が見られます。

特筆すべきは、イランが米国のわずか数十分の一という極めて限定的な軍事予算でありながら、開戦初日に最高指導者を失うほどの猛烈な空爆を受けつつも、依然として攻撃をエスカレートさせる能力を維持している点です。米国国防総省がすでに500億ドルの緊急追加予算を議会に求めている事実は、イラン一国を相手にした戦いがいかに想定外の展開を見せているかを物語っています。ワシントンが描いていた「短期決戦」のシナリオは崩れ去り、圧倒的な軍事力を持ちながらも、イランの抵抗を抑え込めていない現状に厳しい視線が注がれています。

長期戦の様相

Trump Wants a Short War, But The Iranians Are Absolutely Determined To Make It a Long One - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】トランプ大統領はイランとの戦争が短期間で終結すると繰り返し述べてきましたが、現実はその思惑とは大きく異なり、長期化の様相を呈しています。マイケル・スナイダー氏の解説によれば、米国とイスラエルによる前例のない規模の爆撃にもかかわらず、イラン側が屈服する気配は全くありません。

米国軍はすでに5000以上の標的を攻撃しており、ヘグセス国防長官は、火曜日が「イラン国内への攻撃において過去最も激しい一日」であったと述べています。圧倒的な軍事力を見せつけることで相手を追い込む狙いですが、イラン議会議長は「侵略者は罰せられ、教訓を学ばなければならない」と断言し、停戦を検討すらしていないことを明らかにしました。イラン側は、この戦争が終わるのは自分たちが決めた時であると主張し、強い対決姿勢を崩していません。

さらに事態を深刻にさせているのは、世界で最も重要なエネルギーの要衝であるホルムズ海峡の状況です。米国側のインテリジェンス報告によれば、イランは同海峡に機雷の敷設を開始したと報じられています。これに対しトランプ大統領は、機雷の即時撤去を要求し、従わない場合は「かつてないレベルの軍事的報復」を行うと警告しました。しかし、イラン側がこの要求に従う可能性は低く、さらなる事態の激化が予想されます。

イランの革命防衛隊は、今後さらに大規模な弾頭を備えたミサイル攻撃を行うと予告しており、この戦いを今後10年間継続できるとの警告も発しています。当初、今月末までの終結を望んでいたトランプ政権にとって、ホルムズ海峡の封鎖という実害が生じている以上、簡単に手を引くことは不可能な状況です。金融市場もこの地政学的リスクを無視できなくなりつつあり、歴史的な転換点とも言える急速な事態の進展が、世界経済に大きな影を落としています。

プライバシーの静かな侵害

Silent Attacks on Personal Freedom - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】アメリカ憲法修正第4条が保障する「プライバシーの権利」が、政府による監視技術の活用と法制度の拡大によって静かに侵害されています。元判事のアンドリュー・ナポリターノ氏による解説によれば、トランプ政権下でFBIが導入したイスラエル製の監視ソフトウェア「ペガサス」が、その象徴的な存在となっています。

このソフトウェアは「ゼロクリック」と呼ばれ、利用者がリンクをクリックするなどの操作を一切しなくても、スマートフォンやパソコン内のデータを遠隔でダウンロードできる機能を持ちます。かつてFBI長官は、この技術を保有しているものの使用はしていないと議会で証言していました。しかし、バイデン前大統領が国家安全保障上の緊急事態を除いて使用を禁じた大統領令を、トランプ大統領が最近になって密かに撤回したことが明らかになりました。

また、来月に期限を迎える外国インテリジェンス監視法(FISA)第702条の延長についても、トランプ大統領は全面的な支持を表明しています。本来、米憲法下での監視には、犯罪の相当な根拠に基づく裁判所の捜索令状が必要ですが、FISAはこの原則を歪めています。この法律の下では、犯罪の証拠がなくとも「外国人と接触している」という疑いだけで監視が可能となります。

さらに深刻なのは、監視対象が「6次隔たり」まで拡大されている点です。例えば、海外の知人と連絡を取っただけで、その本人だけでなく、その人物と連絡を取ったあらゆる人々が令状なしの監視対象になり得ます。2023年には、この仕組みを通じて300万人のアメリカ人が監視の対象となりました。かつて自分自身が監視の対象になった際にFISAを批判していたトランプ大統領が、再び権力の座に就くとその延長を求める姿勢に転じたことは、個人の自由に対する重大な脅威であるとナポリターノ氏は指摘しています。

こうした政府によるハッキング行為や憲法を軽視する姿勢は、アメリカ人が本来持っている「放っておいてもらう権利」を根底から破壊するものです。憲法を守るべき立場にある人々がそれを無視するとき、個人の自由は音もなく消え去っていくという危機感が示されています。

静かな資産没収

Has the Great Taking Begun? - John Rubino's Substack [LINK]

【海外記事紹介】現在、金融市場ではブラックロックやブラックストーンといった大手資産運用会社が、旗艦ファンドにおいて投資家の解約請求を制限するという事態に直面しています。これは「グレート・テイキング」、すなわちウォール街や政府が投資家の資産を実質的に没収、あるいは管理下に置くシナリオが始まったのではないかという懸念を呼んでいます。

具体的には、ブラックロックの260兆ドル規模のプライベート・クレジット・ファンドにおいて、予想を上回る解約請求が殺到したため、同社は引き出し制限をかけました。背景には米国の雇用統計の悪化や中東情勢の緊迫化に伴う市場全体の冷え込みがあり、同社の株価も下落しています。一方でブラックストーンのファンドでも過去最高の解約請求が発生し、経営陣が自己資金を注入して対応するなどの苦境が報じられています。

こうした動きに対し、ブラックストーン側は、これらの商品は高い収益性を得る代わりに流動性を制限する設計になっており、制限は「不具合ではなく仕様である」と主張しています。しかし、批評家の間では、これは氷山の一角にすぎないとの見方が出ています。

ソラリ・レポートのキャサリン・オースティン・フィッツ氏は、現時点で完全な資産没収が始まったわけではないとしつつも、中央銀行による取引の完全管理や、インフレによる通貨価値の下落といった「静かな没収」はすでに進行中であると警告しています。同氏は、こうした資産強奪を防ぐ唯一の方法は、州レベルで金融取引の自由を確保し、中央集権的な管理に対抗することだと説いています。

不透明で巨大なシャドーバンキングやプライベート・エクイティ部門で、主要なプレーヤーが破綻すれば、投資家が一斉に出口へ殺到するリスクがあります。こうした状況下では、カウンターパーティ・リスク、つまり誰かの約束の上に成り立つ価値ではない、物理的な金や銀を保有することの重要性が改めて浮き彫りになっています。

金鉱株に値上がり余地

As high gold prices become the baseline, mining equities are poised to outperform in 2026 – VanEck’s Casanova | Kitco News [LINK]

【海外記事紹介】金価格が1オンスあたり5000ドルを超える歴史的な高値を維持する中で、金採掘企業の株式が2026年に金地金そのもののパフォーマンスを上回る可能性が高まっています。資産運用会社ヴァンエックのゴールド・貴金属ポートフォリオ・マネージャーであるイマル・カサノバ氏によれば、現在の金鉱業界は記録的な利益率とフリーキャッシュフローを創出しており、業界全体の総維持コストが1オンスあたり2000ドルを下回っていることから、今年も好調な推移が期待できるといいます。

カサノバ氏は最新の解説の中で、金価格がこれ以上上昇しなかったとしても、現在の採掘企業の貸借対照表やコスト構造、利益率は持続的な収益性を示していると分析しています。投資家の間では金価格がさらに上昇するかを疑問視する声もありますが、同氏は新たな上昇要因が毎月のように現れる現状から、さらなる上昇は十分にあり得ると考えています。また、多くの市場参加者がこの数年の上昇を静観してきましたが、現在の記録的な高値が一時的なピークではなく定着しつつあるという認識の変化が生じています。

この価格水準が標準になるという確信が強まることで、株式市場の評価には長期的な金価格の上昇期待が反映され始めます。現在の高い利益率が維持されることは、2026年の金採掘株に対する強い確信の源泉となっています。仮に金価格が横ばいで推移した場合、利益を圧迫するのは生産コストの上昇ですが、各社が提示した2026年の総維持コストの見通しは、前年比で10%から12%程度の増加に留まっています。一方で金価格は年初からすでに20%以上上昇しており、コスト増を補って余りある利益が確保されています。

カサノバ氏は、2月に開催された国際的な会議で40社以上の金採掘企業と面談した結果、業界全体が規律ある現金創出の段階にあり、無謀な拡大サイクルにはないことを確認しました。各社は埋蔵量の算出において1オンス2000ドルという保守的な価格設定を維持しており、経営陣はリターンの質を優先し、技術的な精査に基づいたリスクの低いプロジェクトに投資を絞っています。

許認可の壁や地政学的リスクは依然として存在するものの、強固な資産と改善された運営能力、そして長期的な価値創造への取り組みにより、業界はかつてないほど良好な状態にあります。金価格が現水準を維持、あるいは上昇を続ければ、金採掘株はその財務力と運用レバレッジによって、金地金を凌駕する成果を上げ続ける見通しです。

トランプ氏の屈服と愚行

Launching a War on Iran Was No Act of Courage | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年3月初旬、トランプ大統領がイスラエルと共同でイランへの大規模な空爆を命じたことを受け、米国内の保守派の政治家や論評家たちは、これを47年間誰も成し遂げられなかった歴史的な決断であり、大統領の「驚くべき勇気」の証であると絶賛しました。ホワイトハウスもまた、これらの称賛の声をまとめた文書を公表し、世界をより安全にするための断固たる行動であったと強調しています。しかし、この記事の著者によれば、この戦争の開始は勇気ある行動などではなく、むしろその正反対であるといいます。

著者は、現代のアメリカが、際限なく膨張し富を使い果たし、紛争を増幅させる「戦争国家」の捕虜になっていると分析しています。その背景には二つの歴史的要因があります。一つは、19世紀末のペンドルトン法以降、選挙で選ばれたわけではない終身雇用の官僚機構が肥大化したことです。これら「シビル・サービス(公務員)」は、国民の利益よりも自らの組織の存続と職務の正当化を優先するようになりました。冷戦が終われば新たな敵を必要とし、スターリン、サダム・フセイン、プーチンといった「悪役」を次々と見つけ出すことで、膨大な国防予算と組織の維持を図ってきたのです。

第二の要因は、この巨大な戦争遂行装置が、資金力のある利害関係者によって「買収」されている点です。兵器産業だけでなく、他国のロビー団体がワシントンのシンクタンクやメディアに巨額の資金を投じ、アメリカの外交政策を自国の利益にかなう方向へ誘導しています。今回のイラン攻撃も、アメリカ国民の利益のためではなく、ロビー活動に長けたイスラエル政府の地政学的利益や、兵器産業の収益、そして自らの必要性を証明したい軍・諜報官僚の思惑に合致した「教科書通りのワシントン外交」に過ぎません。

真に勇気ある指導者とは、この巨大な戦争国家という「沼」を相手に回し、既得権益を打破して平和を実現しようとする人物を指します。トランプ氏はかつてその兆候を見せ、既成勢力からの激しい抵抗に遭いましたが、今回の開戦は彼が結局のところワシントンの体制に屈服し、それを拡大する側に回ったことを示しています。同盟国の利益や兵器産業のために、アメリカ兵の命や世界経済をリスクにさらすことは勇気ではなく、単なる「愚行」であると著者は厳しく批判しています。

MAGAの転落

The Tea Party Stumbled So That MAGA Could Fall | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの政治史において、既存の権力構造に挑む草の根の抗議運動が、いかにして既存の体制に取り込まれ、あるいは自らの矛盾によって崩壊していくかという歴史的な教訓が、2026年現在の視点から語られています。歴史家のAlan Mosley氏は、今世紀初頭の二大運動である「ティーパーティー(茶会運動)」と「MAGA(Make America Great Again)」を比較し、両者がいかにして支持者の期待を裏切る結果となったかを鋭く分析しています。

ティーパーティー運動の真の出発点は、2007年のロン・ポール氏の大統領選挙活動にありました。健全な通貨、憲法による政府権限の制限、そして海外での戦争への反対というリバタリアン的な理念が若者の支持を集めたのです。しかし、2010年頃には共和党の既成勢力や大口献金者がこの勢力を自派に取り込み、スローガンだけを利用するようになりました。結果として、政府支出の削減や憲法遵守という本来の要求は骨抜きにされ、運動は静かに党の機構の中に消えていきました。

その空白を埋める形で登場したのがドナルド・トランプ氏によるMAGA運動です。彼は「終わりのない戦争」の終結や不法移民の強制送還、財政赤字の解消を公約に掲げ、既存政治に不満を持つ層を熱狂させました。しかし、政権運営の実態は公約とはかけ離れたものでした。パンデミック時に批判の対象となった官僚への責任追及は行われず、移民の送還数も公約の規模には及びませんでした。さらに、財政赤字は任期中に約7.8兆ドルも膨れ上がり、第2期に入ってからも14ヶ月で2兆ドル以上増加するという、かつてのティーパーティーが最も忌み嫌った「大きな政府」そのものの姿を露呈しています。

決定的な決裂は外交政策で起こりました。戦争を終わらせるという「アメリカ・ファースト」の理念を掲げながら、イランとの軍事衝突に踏み切ったことは、支持者にとって最大の裏切りとなりました。トランプ氏という個人に強く依存したMAGA運動は、彼自身の決断によってその正当性を失い、今や実体のないブランドへと変質しています。著者は、かつてティーパーティーが既成勢力に吸収されて「つまずいた」経験があったからこそ、現在のMAGAの劇的な「転落」がより鮮明に浮き彫りになったと締めくくっています。

ロスバードと合意による国家

Rothbard’s Defense of Border Control | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】自由至上主義(リバタリアニズム)の大家として知られるマレー・ロスバードは、1993年の論文「合意による国家」において、個人の自由は社会から孤立した存在としてではなく、家族や言語、文化といった特定の「国」や「地域」という歴史的文脈の中で育まれるものであると強調しました。ソ連崩壊直後の当時、彼は中央集権的な国家が崩壊し、本来の「国民性」が劇的に再登場した現象を目の当たりにし、国家権力の解体と地方分権化こそが社会紛争を減らし、自由を拡大する道であると説きました。

このロスバードの主張は、現在の国境管理を巡る議論にも重要な示唆を与えています。彼は、国家権力の専制に対する防波堤として「国家の自決権」を重視しました。特定の地理的空間に住む人々の合意に基づく国家という概念こそが、国境管理の正当な根拠になると考えたのです。

一部の批評家は、ロスバードが挙げた東欧や中東の歴史的例証の細かな誤りを指摘することで、彼の理論そのものを否定しようとします。しかし、本稿の著者は、例証の不備が必ずしも理論の誤謬を意味するわけではないと反論しています。数学における「局所的な反例」が定理全体を覆すものではないのと同様に、ロスバードが示した具体的なエピソードはあくまで理論を分かりやすく説明するための手段に過ぎません。

ロスバードが晩年に大量移民の問題を真剣に検討し始めたのは、単に東欧の情勢を知ったからではなく、ソ連崩壊後の民族問題の噴出という時代の変化に直面したからです。彼は、自由貿易や移動の自由を盲信して国民性の問題を無視するリバタリアンに対し、人々が抱く国家アイデンティティへの懸念を無視することは賢明ではないと警鐘を鳴らしました。

今日の欧米諸国で見られる移民問題やナショナリズムの高まりを背景に、ロスバードの「合意による国家」という視点は再び注目を集めています。個人の自由を追求する立場であっても、現実の社会秩序を維持するためには、国境や国民性という枠組みを軽視できないという彼の洞察は、今なお色褪せていません。

中東は誰のものか?

Who Owns the Middle East? | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】2026年2月18日に行われたタッカー・カールソン氏によるマイク・ハッカビー駐イスラエル米国大使へのインタビューが、中東の土地所有権を巡る大きな議論を呼んでいます。この対談でハッカビー氏は、創世記の記述を根拠に、イスラエルがユーフラテス川からエジプトの川に至る広大な土地に対する「神授の権利」を持つとの考えを支持しました。しかし、この記事の著者によれば、このような聖書に基づく主張は、現代の国際政治や法的な妥当性の観点から多くの問題を抱えています。

まず、キリスト教徒やユダヤ教徒の間でも、現代のイスラエル国家をアブラハムへの約束の正当な後継者とみなすかどうかについては意見が分かれています。また、世界の大半の人々や米国の若い世代にとっては、聖書の記述は土地の所有権を正当化する根拠にはなり得ません。著者が重要視するのは、アメリカ独立宣言の起草者トーマス・ジェファーソンが掲げた「自然法」の原則です。ジェファーソンは、政府の正当性は支配される側の同意に由来し、すべての人間には生命、自由、幸福追求という不可譲の権利があると考えました。

この自然法の視点から土地所有を分析すると、土地の所有権は権力者による恣意的な配分ではなく、未開の地に労働を投じて所有権を確立する「ホームステッディング」によって生じるものです。自由至上主義の哲学者マレー・ロスバードの理論を当てはめると、ヨルダン川から地中海に至る地域の約半分は、かつてパレスチナのアラブ人が所有・使用していた土地でした。しかし、その90%がイスラエル国家によって奪われ、現在はイスラエル土地庁がこの地域の土地の93%を封建的な地主のように管理し、差別的なリースを行っている実態があります。

結論として、アメリカの建国理念や自然法を支持すると称しながら、聖書の記述を口実にイスラエル国家を無条件に支持することは、論理的な矛盾を孕んでいます。ジェファーソンが示した「被統治者の同意」という原則は、土地を追われたアラブ人に対して全く守られていません。著者は、特定宗教の経典を根拠にした不透明な土地の権利主張よりも、普遍的な自然法に基づいた公正な権利の検証が必要であると説いています。

アルゼンチン大統領、シオニズムに隷従

The Zionist Road to Serfdom in Argentina, by Oscar Grau - The Unz Review [LINK]

【海外記事紹介】アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は、自らを「アナルコ・キャピタリスト(無政府資本主義者)」と称していますが、その実態は米国のシオニズム帝国主義に従属し、国家権力を強化する「統制への道」を歩んでいるとの批判があります。ミレイ氏は2023年12月の就任以来、一貫して米国やイスラエルを支持する外交を展開してきました。2024年4月にはNATOのグローバル・パートナーへの加盟申請を行い、軍事演習を通じて米軍との関係を深化させています。さらに、トランプ氏を平和のヒーローと称賛し、ベネズエラやイランへの介入を支持するなど、新保守主義的な姿勢を鮮明にしています。

内政面では、自由至上主義的な主張とは裏腹に、国家による監視体制と軍事力の強化を推し進めています。2024年にはAIを用いた「未来の犯罪予測」や仮想空間の監視を行う部隊を創設しました。また、大統領令によって、議会の承認なしに軍を国内の「戦略的標的」の保護やサイバー空間の防衛に投入することを可能にしました。これは社会紛争が軍事的に鎮圧されるリスクを高めるものです。さらに2025年には、FBIをモデルとした連邦捜査局(DFI)を設立し、中央集権的な犯罪捜査体制を構築しました。全国民のDNA登録や指紋データベースの統合など、プライバシーを侵害する強権的な手法を導入しようとしています。

また、パランティア・テクノロジーズなどの米国のハイテク企業や、米国・イスラエルの諜報機関との協力関係も指摘されています。ミレイ氏はアルゼンチンの国家情報を外国の利益に差し出しているとの疑念も持たれています。特にイスラエルに対しては無条件の支持を表明しており、ガザでの行動を自衛権の行使として擁護し、反ユダヤ主義対策を名目に刑法改正による罰則強化を図っています。

結局のところ、ミレイ氏は自由を象徴するスローガンを掲げながら、実際には軍事費を増大させ、警察国家化を推進するデマゴーグであると著者オスカー・グラウ氏は分析しています。2026年3月にニューヨークのイェシーバー大学で行った演説で、ミレイ氏自身が「世界で最もシオニストな大統領」であると自認したことは、彼が本来の自由至上主義から最も遠い存在であることを象徴しているといえるでしょう。

2026-03-11

船とともに沈む?

Going Down With the Ship - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】かつて「自由世界」と呼ばれた国々が、社会主義的あるいはファシズム的な警察国家へと変貌し、衰退の一途を辿るなか、自国を離れてより自由な新天地へ移住すべきか、あるいは沈みゆく船と運命を共にするのかという切実な議論が起きています。この記事では、移住を断念し「船と共に沈む」ことを受け入れた人々の心理と、その背景にある現実的な障壁を分析しています。

移住を阻む最大の要因の一つは、経済的な不安です。ある投稿者は、移住した瞬間に現在の収入(ビジネスや年金、投資など)が絶たれる恐怖を語っています。彼らにとって、自由の喪失や富の緩やかな減少を受け入れることは、未知の世界へ飛び込むという「大きな賭け」に伴う不確実性や変化への恐怖よりも、まだ耐えられる選択肢となっているのです。また、実際にアメリカを離れてアイルランドへ移住したものの、以前の4分の1の収入しか得られず、わずか8か月で帰国せざるを得なかったという失敗談も紹介されています。

こうした事例から、移住を決断できる層には一定の傾向があることが分かります。一つは、蓄えがあり「自由を買い取ること」ができる退職者層。もう一つは、失うものが少なく、どこでもキャリアを築ける独身の若年層です。しかし、そのどちらにも該当しない多くの人々は、ビジネスや扶養家族を抱え、崩壊が予見される自国に留まり「立て籠もる」道を選びます。彼らは、事態が好転するという淡い期待を抱きつつも、実際には救命ボートのない沈没船で演奏を続ける楽団のような状況に置かれています。

著者は、国際化という名の「救命ボート」は、誰かが用意してくれるものではなく、個人の選択と変化への恐怖を克服することによって自ら作り出すものであると説いています。手遅れになる前に、自らの生存戦略をどのように構築すべきか、改めて問い直す時期に来ていると言えるでしょう。

米、徴兵の足音

As U.S. Military Threats and Actions Escalate, Coalition Calls for Ending Preparations for a Military Draft - Antiwar.com Blog [LINK]

【海外記事紹介】アメリカでは、軍事徴兵に向けた準備を強化する連邦法の成立を受け、その撤廃を求める広範な勢力による抗議の動きが広がっています。エドワード・ハスブルック氏の報告によれば、2026年度国防権限法に盛り込まれた新しい規定により、連邦政府の徴兵制度局(SSS)は、他の連邦政府機関のデータベースを活用して、徴兵対象となる若者を自動的かつ強制的に登録する権限を与えられました。

アメリカでは1980年以来、18歳に達したほぼ全ての男性市民や居住者に徴兵登録が義務付けられてきましたが、登録率の低さとデータの不正確さが課題となっていました。今回の法改正はこの問題を解決するため、本人の意思に関わらず強制的にリスト化することを目指したものです。しかし、平和団体や宗教団体、人権活動家らで構成される連合体は、この動きに強く反発しています。彼らは、自動登録は個人の異議申し立ての機会を奪うものであり、不十分なデータに基づくリストの作成は混乱を招くだけだと警告しています。

また、徴兵登録リストが移民の強制送還や、特定の少数グループへの攻撃に悪用される懸念も指摘されています。連合体は、徴兵制という仕組み自体が存在することで、政治家や軍の計画者が国民の支持を顧みず、より大規模で長期的な戦争を計画することに自信を持ってしまうと主張しています。つまり、徴兵の準備を進めること自体が、戦争への障壁を取り除き、不人気な戦争を継続させる一因になっているという分析です。

こうした中、ホワイトハウスの報道官は先日のインタビューで、イランとの地上戦に伴う徴兵の可能性について問われた際、「大統領はいかなる選択肢も排除しない」と回答しました。これを受けて反対派は、徴兵制を定めた軍事徴兵奉仕法の完全な廃止を求めています。徴兵という選択肢を法的に取り除くことこそが、無謀な軍事的エスカレーションを抑止する唯一の手段であるという考えからです。自動登録が開始される2026年12月を前に、徴兵制廃止を求める超党派の法案審議が急務であると訴えています。

史上最悪の選択

Is America Winning or Losing the War with Iran?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのジャーナリスト、ロン・アンズ氏は、トランプ政権によるイラン攻撃の現状を分析し、アメリカがかつてない軍事的・外交的な失敗に直面している可能性を指摘しています。アンズ氏はまず、今回の開戦の経緯が極めて不誠実なものであったと述べています。和平交渉を隠れ蓑にしてイランの指導部を一堂に集め、そこをイスラエルのミサイルで狙い撃ちにするという「指導部の斬首作戦」は、国際法を無視した奇襲であり、かつての真珠湾攻撃以上に不名誉な行為であると批判しています。

米主要メディアは当初、この攻撃による指導部の壊滅と、その後の爆撃によって完全な勝利が目前であるかのように報じました。しかし、軍事専門家たちの分析によれば、現実は全く異なります。アメリカはわずか数日の戦闘で、トマホーク巡航ミサイルなど貴重な精密誘導兵器を在庫の10%から20%も浪費してしまいました。これは数年分の生産量に匹敵し、自ら「一方的な武装解除」を行っているような状態です。一方、イランは反撃の手を緩めず、弾道ミサイルやドローンを用いて、中東地域にある米軍の戦略的レーダー網を次々と破壊しています。1基10億ドルもする希少なレーダーの約半分が失われ、米軍は事実上「盲目」にされていると伝えられています。

また、アンズ氏はマサチューセッツ工科大学のテッド・ポストル名誉教授らの意見を引き、米軍やイスラエルの防衛システムが、イランのミサイルに対してほとんど機能していないという衝撃的な事実を紹介しています。メディアが報じる「迎撃率90%」という数字は虚偽であり、実際には迎撃に失敗したミサイルが次々と着弾している様子がインターネット上の動画で確認できるといいます。さらに、イランによるホルムズ海峡の封鎖は、世界の石油・天然ガス供給に深刻な打撃を与え、原油価格の高騰を招くことで世界経済を破綻させる恐れがあります。

アンズ氏は、トランプ氏が「平和の候補者」として当選しながら、ベトナム戦争以来の泥沼の戦争を始めたことへの強い失望を隠しません。保守派の知識人からも「嫌悪すべき悪」との非難が上がっており、軍事的な出口を失ったトランプ政権が、絶望的な勝利を求めて核兵器の使用に走るのではないかという懸念も示されています。トランプ氏による今回の戦争は、アメリカの軍事的名誉を失墜させただけでなく、国家を災厄へと導く「史上最も愚かな選択」になるかもしれないと論じています。

破滅への道

Maybe Attacking Iran Was Not Such A Good Idea, by Philip Giraldi - The Unz Review [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの元情報将校フィリップ・ジラルディ氏は、アメリカとイスラエルによるイランへの攻撃が、開始からわずか1週間余りで地政学的な狂気を露呈させたと論じています。この攻撃はイスラエルを保護し、ペルシャ湾周辺の米軍施設の被害を最小限に抑えることを目的としていましたが、実際にはイランのミサイルやドローンによってイスラエル国内および米軍基地に相当な被害が出ており、成功とは言い難い状況です。また、165人の女子生徒が犠牲になった爆撃は、イラン国内や周辺地域のシーア派コミュニティに強い怒りと抵抗の意志を呼び起こし、紛争を拡大させています。

トランプ大統領はSNSを通じて、イランのミサイル産業や海軍を完全に壊滅させると宣言し、これまで標的ではなかった地域や集団への攻撃も辞さない構えを見せています。ジラルディ氏は、軍務経験のないトランプ氏が「アメリカ人英雄の命が失われるかもしれない」と語る背景には、他国の息子や娘を捨て駒にしながらも、有権者への政治的配慮を示す意図があると冷ややかに指摘します。ジラルディ氏の分析によれば、この戦争の根底にはアメリカの政治家に対するイスラエルの絶対的な支配があり、米政府は自国民の利益よりもイスラエルの領土拡張を優先しているのが実態です。

その証左として、ジラルディ氏はイスラエルによって殺害された多くのアメリカ市民の事例を挙げています。西岸地区で入植者の暴挙を止めようとして射殺された青年や、抗議活動中に軍に殺害された活動家など、近年だけで9人もの米市民が亡くなっていますが、米政府は独立した調査を行わず、イスラエル当局の判断に委ねるのみで、誰も責任を問われていません。こうした姿勢は、ハッカビー駐イスラエル大使のような熱烈なシオニストが外交を担っていることに起因しています。

さらに、ヘグセス国防長官のようなキリスト教シオニストは、中東での紛争を聖書にある「ハルマゲドン」の始まりと捉え、宗教的な救済を夢想していると氏は批判します。このような選民思想に基づいた神権政治的なドクトリンは、国際法や人権を軽視し、他者を非人間化するものです。ジラルディ氏は、トランプ政権がイスラエルによる虐殺や土地の略奪を事実上容認している現状は、アメリカを破滅へと導く道であると警鐘を鳴らしています。

トランプ氏の失墜

Trump the Destroyer - Alexander Dugin [LINK]

【海外記事紹介】ロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏は、現在のイラン情勢とトランプ政権の振る舞いが、アメリカの信頼性を失墜させ、多極化世界への移行を加速させていると論じています。ドゥーギン氏によれば、イランは停戦に応じることなく抵抗を続けており、最高指導者の後継者を選出するなど体制を立て直しています。イランによる米軍基地への攻撃では、中立的な推計で1,000人以上の米兵が死亡したと氏は述べており、わずかな被害だとするトランプ氏の説明を否定しています。

イランはイスラエルだけでなく、世界経済の要である湾岸諸国のエネルギー拠点をも標的にする戦略をとっています。ホルムズ海峡の封鎖と相まって、世界市場は大きな損失を被っており、事態は悪化の一途を辿っています。これまで中立を保とうとしてきた湾岸諸国は、自国の安全を脅かす米軍基地の存在に疑問を抱き始めており、トランプ氏を裏切り者と見なしているといいます。

ドゥーギン氏は、トランプ氏が期待した「安く簡単な勝利」は失敗したと指摘します。米国内でもイランとの戦争を支持するのはごく少数であり、かつての支持基盤であるMAGA層も、エプスタイン事件などを理由にトランプ氏から離反し、急進的な反トランプ派に転じていると分析しています。パニックに陥ったトランプ氏は、勝利を宣言して軍をキューバへ転進させようとしていますが、もはや世界で彼を信じる者はいないと氏は断言します。

特にクシュナー氏のような人物が、不透明なネットワークを通じて交渉に関わる一方で、イランへの卑劣な攻撃が行われたことが不信感を決定づけました。ドゥーギン氏は、ウクライナと中東は、欧米の覇権に抗い主権を求める人類の戦いにおける同一の戦場であると定義します。トランプ氏はリベラリズムなどの偽装を剥ぎ取り、西側の恐ろしい素顔を晒した「破壊者」であると評しています。

かつて期待された「アメリカ第一主義」による多極共存の可能性をトランプ氏は自ら捨て去り、BRICSへの攻撃や中東でのジェノサイド支持へと突き進んだと氏は批判します。ロシアにとって西側諸国は死活的な敵であり、トランプ氏の破壊工作を利用しながら、ロシアはユーラシアにおける自らの主権を確立し、新しい多極的な世界秩序を築くべきであると結んでいます。

甘い出口戦略

What if Iran Says No? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのトランプ政権内では、激化するイランとの紛争を終結させるための出口戦略を模索する動きがあると言われています。ホワイトハウスの一部では、相次ぐ軍事攻撃で打撃を受けたイラン側も停戦を歓迎するはずだという楽観的な予測が立てられています。しかし、こうした計算はイラン側の決意や歴史的な背景、戦略上の必要性を完全に見誤っている危険性があります。もしイランが「ノー」と答えたらどうなるでしょうか。

まず大きな障害となるのは、アメリカに対する信頼の欠如です。2018年の核合意からの不当な離脱に加え、2026年2月28日に起きた奇襲攻撃は、和平交渉の最中に行われました。交渉中に攻撃を仕掛けるという行為は外交上の信頼を根本から破壊するものであり、イラン当局にとってワシントンの言葉はもはや無意味なものとなっています。また、米・イスラエル双方の政権が抱える思想的な背景も妥協を困難にしています。トランプ政権内やイスラエル政府内の強硬な勢力にとって、イランへの譲歩は戦略ではなく「背信」と見なされるからです。

さらに、具体的な交渉条件においても大きな隔たりがあります。イランが真剣に交渉に応じるならば、ペルシャ湾からのアメリカ軍基地の撤退や、制裁の全面的かつ即時の解除を求めるはずです。しかし、これらはアメリカにとって政治的に受け入れがたい「敗北」や「後退」と映るため、合意の余地はほとんどありません。加えて、アメリカやイスラエルに対する賠償請求が行われる可能性を考えれば、事態はさらに複雑になります。

何より重要なのは、イラン国内の感情的、文化的な現実です。イランは報復を誓う「赤旗」を掲げており、殉教に対する正義の追求は宗教的な責務となっています。特に交渉中に攻撃を受けたことへの憤りは凄まじく、現状復帰という安易な解決は不可能です。殺害された最高指導者の息子であるモジタバ氏が新指導者に選出されたことも、アメリカの介入に対する拒絶の意志の表れと言えます。

トランプ政権は事態の制御権を握っていると過信していますが、イランは自国の譲れない一線を持ち、報復の能力と意志を証明してきた戦略的主体です。もしイランがアメリカの提示する出口戦略を拒絶すれば、紛争はより危険で長期的な局面へと突入します。イラン側の誇りや主権、信仰を無視した制裁頼みの戦略は、事態を解決するどころか、世界規模の嵐へと発展させる恐れがあります。

石油、深刻な供給不足

War On Iran – Oil Prices Lag Supply Deficit – Arab’s Won’t Fight Iran – Khamenei Son Succeeds Father - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】中東情勢の緊迫化に伴い、世界のエネルギー供給網に深刻な事態が生じています。イラクをはじめ、クウェート、カタール、バーレーン、アラブ首長国連邦、サウジアラビアといった産油国が、一部の油井を閉鎖しました。これは、ホルムズ海峡が実質的に封鎖状態にあることや、脆弱な生産設備がミサイルやドローンの標的になる懸念があるためです。石油価格は現在1バレル90ドル台後半で推移していますが、市場は供給不足の深刻さを十分に認識していません。需要を抑制するレベルまで達するには、150ドルを超える水準への上昇が必要になると見られます。仮に明日戦争が終わり、海峡が再開されたとしても、供給が正常化するには数週間を要します。一度閉鎖された油井は沈殿物による閉塞やバルブの故障が起きやすく、再稼働には膨大な修復作業が伴うからです。

特にカタールの液化天然ガス施設の停止は深刻な問題です。ガスから液体の製品を作る工程は極めて複雑で、一度装置を停止して製品を抜き取ると、金属構造が温度変化に耐えられず故障が発生しやすくなります。再稼働には少なくとも2ヶ月はかかり、世界の供給量の2割を占めるLPGが長期間失われることになります。

こうした中、湾岸諸国はアメリカが自国の領土を使用してイランを攻撃していることに不満を募らせています。クウェートなどの砂漠からはアメリカ軍が使用したミサイル容器が見つかり、サウジアラビアの領空も爆撃機への給油に使われました。しかし、湾岸諸国の当局者は、アメリカが主導する戦争に加わることには慎重です。カタールの元首相やアラブ首長国連邦の実業家は、アメリカが地域の平和ではなく、石油資源の支配や自国の利益のためにこの戦いを煽っていると指摘しています。彼らは、他国の利益のために自国民の命を犠牲にするつもりはないと明言しています。

一方で、アメリカはサウジアラビアから外交官を避難させ、給油機などの拠点を移動させています。これに対し、アメリカの政治家からは、共通の敵であるイランとの戦いに協力しないサウジアラビアを非難する声も上がっています。また、イラン国内では、殉職した最高指導者ハメネイ師の後継者として、息子のモジタバ氏が選出されました。この人事は、困難な状況下での体制の継続性と抵抗の意思を示すものと受け止められています。中東全域で緊張が続く中、エネルギー供給と地域政治の行方が注視されています。 

印、金銀に新たな需要源

New Rule Allows Indian Equity Funds to Allocate 35% to Gold and Silver [LINK]

【海外記事紹介】インドの規制当局が発表した新たな規則改正が、同国における貴金属需要をさらに押し上げる可能性が出てきました。中国に次ぐ世界第2位の金市場であり、銀の消費国としても上位に位置するインドにおいて、投資環境が大きな転換期を迎えています。インド証券取引委員会(SEBI)が発表した新規定により、株式型投資信託(エクイティ・ファンド)は、その資産の最大35%を金や銀の関連商品に配分することが可能になりました。

この改革は、投資信託スキームの柔軟性を高め、多様化を促進することを目的とした幅広い改革の一環です。ブルームバーグのデータによれば、インドには3850億ドル規模の活発に運用されている株式ファンドが存在しますが、今回の改正により、ファンドマネージャーはより広範な「ツールキット」を手にすることになります。これまでは主に上場株式に投資されてきた資金の一部が貴金属へ流れることで、記録的な上昇を見せる金や銀に、新たな需要の源泉が生まれることが期待されています。

現地の資産運用担当者は、この新規定がファンドに柔軟性をもたらし、市場が混乱する局面での安定性を高めると指摘しています。貴金属への配分を増やすことは、株式相場の下落リスクを軽減する助けとなる一方で、強気相場における収益率を抑制する側面もありますが、インフレによる現金の価値低下を防ぐ避難先としても機能します。インドの人々は伝統的に現物の金や銀を好む傾向が強く、過去10年間で1800トンもの金貨や金地金を購入してきました。しかし、ここ数年は「ペーパー・ゴールド」と呼ばれる金融商品への関心も急速に高まっています。

実際に、インドの金ETF(上場投資信託)が保有する金残高は、2023年12月の42.3トンから、2026年1月には110.5トンへと160%以上も急増しました。投資家数も飛躍的に伸びており、金ETFの口座数は1140万件に達しています。直近の1ヶ月間では、金ETFへの流入額が株式ファンドへの流入額を上回るという、市場の不確実性を象徴する珍しい逆転現象も起きています。

専門家の分析によれば、この新規則がインド全体の金需要を劇的に底上げするわけではないものの、地政学的緊張や株価の割高感が意識される局面において、ファンドマネージャーが戦略的なヘッジ手段として金や銀を組み入れる動きが強まる見通しです。株式がポートフォリオの主役であることに変わりはありませんが、コモディティへの戦術的な露出が増えることで、インド市場における需要の層がより厚くなることは間違いありません。

長期の金買い要因に

Could the Iran War Give a Long-Term Boost to Gold Bulls? [LINK]

【海外記事紹介】アメリカとイスラエルによる対イラン攻撃を受け、この紛争が金強気相場に対して長期的な支援材料となり得るのか、専門家組織であるメタルズ・フォーカスの分析をもとに考察します。歴史的に見れば、戦争が金市場に与える影響は初期の有事買いに限定され、戦況が長引くにつれて中央銀行の金融政策などの要因が支配的になるのが通例です。投資家が状況に慣れてしまうことで、安全資産としての需要は次第に減退していくためです。

今回の対イラン攻撃直後にも、金価格は一時5400ドルを超える急騰を見せましたが、その後は利益確定売りや情報の錯綜による激しい価格変動に見舞われました。しかし、メタルズ・フォーカスの分析によれば、今回の紛争は従来のケースとは異なり、金市場にとって長期的なプラス要因になる可能性があるといいます。その理由は、大きく分けて3つの要素に集約されます。

第一に、アメリカの外交方針の変化です。短期間に複数の政権交代に関与し、同盟国との協調よりも単独行動を優先する姿勢を強めていることは、地政学的な不確実性を増大させています。世界最大の経済・軍事大国によるこうした方針転換は、市場に長期的な不安を植え付けることになります。

第二に、中東地域の長期的な不安定化です。政権交代が必ずしも安定をもたらすわけではなく、より過激な指導者の台頭や、国内の勢力争いが周辺国へ波及するリスクは排除できません。こうした混沌とした情勢は、伝統的に金にとって追い風となります。

そして第三に、米国債が安全資産としての機能を失いつつある点です。かつては危機の際の逃避先だった米国債ですが、今回の紛争開始後も利回りは上昇しており、需要の停滞を示しています。相対的に、消去法で金が「最後に残された安全資産」としての地位を固めているのです。さらに、イランによる石油輸送の制限が世界経済を混乱に陥れるリスクもくすぶっています。

結論として、日々の戦況による一時的な価格変動はあるものの、インフレ圧力や膨大な債務問題という既存の背景に加え、今回の紛争がもたらす構造的な地政学の変化は、長期的に金への投資意欲を下支えすることになると予測されています。

戦争という目くらまし

Schiff on Redacted: This War is a Distraction | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの経済評論家であるピーター・シフ氏が、中東での紛争拡大がもたらす経済的および地政学的な影響について、自身の見解を述べています。シフ氏は、現在進行中の中東における戦争が、すでに市場やエネルギーの流れ、そして通貨のあり方を再編しつつあると指摘しています。この紛争は、消費者物価指数で測定される物価の上昇や、貴金属への需要再燃に直結しており、そもそも脆弱だった市場に対してさらなる圧力をかけていると分析しています。

シフ氏は、政治指導者たちが物価上昇の責任を戦争に転嫁することを懸念しています。ガソリン価格をはじめとするあらゆる物価は、紛争以前から上昇傾向にあり、2026年のインフレ率は2022年以来の最大の上昇幅を記録する勢いでした。しかし、現政権は自らの政策判断で戦争に関与したにもかかわらず、高まるインフレを戦争のせいにする格好の口実にし、国民の目を本来の問題からそらそうとしていると主張しています。

こうした状況下で、貴金属市場は敏感に反応しています。金価格は1オンスあたり5000ドルを超える高値を維持しており、シフ氏は金が通貨のヘッジ手段として機能していると説明します。歴史的に見ても、政府は通貨を増刷することで戦費を賄い、インフレを引き起こすため、戦争は金価格にとって上昇要因となります。また、銀についても、長らく抵抗線となっていた1オンス50ドルを突破したことは、市場にとって重要な節目であると述べています。供給が制限される一方で産業需要が引き締まれば、銀の価格はさらに劇的に上昇する可能性があると考えています。

エネルギー市場においては、中東での紛争が石油生産国を巻き込み、製油施設の破壊や船舶の運航停止を招いています。これが供給ショックのリスクを高め、消費者物価を押し上げる要因となっています。一方で、株式市場、特にハイテク株中心の指数は、こうした地政学リスクを十分に織り込んでいないとシフ氏は警告します。市場は過大評価された状態にあり、経済の深刻な構造問題を無視しているというのです。

最後に、シフ氏は軍事行動に伴う人道的なコストと政治的な反発についても言及しています。民間人の犠牲を伴う戦争は、アメリカに対する激しい敵対心を生み出し、将来的な不安定化の火種となります。解放を喜ぶという楽観的な予測とは裏腹に、実際にはより多くの敵を作り出し、さらなる混乱を招く結果になると警鐘を鳴らしています。

2026-03-10

米軍、トランプ氏主張に異論

U.S. Military Refuses to Endorse Trump Claim That Iran Bombed Girls’ School [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのトランプ大統領が、イラン南部のミナブにある小学校への攻撃について「アメリカではなくイランによるものだ」と主張したことに対し、米軍内部や国防総省から強い反論の声が上がっています。この攻撃は、第二次イラン戦争において民間人の死者が最も多く出た惨事の一つとされていますが、大統領自身の身内であるヘグセス国防長官や、中東を管轄する中央軍(CENTCOM)までもが、大統領の主張を裏付けることを拒否する異例の事態となっています。

大統領は先週、専用機内での記者会見で、175人以上の死者(その多くは子供)を出したこの攻撃について「私が見た限りではイランによるものだ」と断言しました。これに対し、衛星画像を分析した政府高官は、学校に隣接する革命防衛隊の基地からのロケット弾失敗によるものという説を「嘘である」と一蹴しました。現場の映像や分析結果によれば、使用されたのは巡航ミサイル「トマホーク」である可能性が極めて高く、この兵器は米国のみが運用しており、イランやイスラエルは保有していません。専門家は、学校への着弾は「目標の誤認」、つまり米軍が学校を軍事施設と見誤って精密爆撃を行った結果である可能性を指摘しています。

軍事専門家によれば、建物の屋根に垂直にあいた穴は、高高度から精密に誘導された兵器特有の痕跡であり、短距離ミサイルの軌道とは明らかに異なります。また、攻撃のタイミングも、米国とイスラエルによる攻撃開始の直後であり、イラン側が報復を開始する前の出来事であったことが衛星画像やSNSの投稿から裏付けられています。中央軍の広報官は、調査中の事案について大統領のように断定的なコメントをすることは「不適切である」と述べ、暗に大統領の振る舞いを批判しました。

調査団体の報告によれば、この戦争の初期段階では過去の軍事作戦を上回るペースで標的への攻撃が行われており、人口密集地への爆撃が相次いでいます。ヘグセス国防長官は「交戦規定に縛られない、史上最も致命的で精密な空爆」を誇示していますが、その一方で無実の子供たちが犠牲になった事実を敵のせいにしようとする政権の姿勢に対し、元国防総省顧問は「独裁者が自らの面目を保つためにプロパガンダを捏造するような行為であり、自由世界のリーダーの振る舞いではない」と厳しく批判しています。

米、中東支配の終焉

After Trump’s War, the US Military Won’t Be Invited Back - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】退役空軍中佐のカレン・クウィアトコウスキ博士が、トランプ政権によるイラン戦争がもたらす地政学的な大変動と、米国による中東支配の終焉について痛烈な分析を行っています。クウィアトコウスキ氏は、今回の紛争を経て、米軍が二度と中東へ戻ることはないだろうと予測しています。

ペンタゴンが予想だにしていなかったとされる数十億ドル規模の軍備損失は、今も拡大し続けています。さらに深刻なのは、湾岸諸国のアラブ同盟国の間で、米国には自分たちを守る意図が最初からなかったという認識が広がっている点です。アラブ諸国の役割は、米国の軍事産業に投資し、高額な製品を買い、言われるままに従うことだったと著者は指摘します。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、カタールなどは経済の多様化を図り、イランを含む東西両陣営と友好的な関係を築こうとしてきましたが、他国の主権や経済的自立を許容できないイスラエルが、米国を動かして今回の行動に出たと分析しています。

著者は、米国の戦争の本質は1947年のCIA設立以来、一貫して「持続的な戦争」にあると述べています。アフガニスタンからウクライナへ、そしてイランへと、利益を得る側が途切れることなく資源と富を移動させてきたに過ぎません。これらの戦争は価値観のためではなく、武器やエネルギー、AI、天然資源といったあらゆる分野で多国籍企業が利益をむさぼるためのものです。膨れ上がった巨額の債務を帳消しにする手段として、歴史的に戦争が利用されてきた側面もあります。

現在、中東全域で米軍の基地や設備が破壊されていますが、これは無計画で不当な戦争の結果であり、軍事国家としての米国の正当な後退を意味しています。トランプ氏はアブラハム合意という偽りの約束に期待した国々まで敵に回し、中東全域を米国に対して団結させてしまいました。ワシントンが軍事拠点の再建費用を地域諸国に求めたとしても、もはや応じる国はないでしょう。

世界中の空母をかき集め、太平洋や欧州の備蓄を使い果たしている現状は、米国の経済的、軍事的、外交的な弱さを露呈させています。一方で、攻撃対象とされた国々の間では革新的な進歩と協力関係が強まっています。国内では厳しい情報検閲が行われていますが、現場からの映像は全く異なる真実を世界に伝えています。著者は、この状況が新たな平和の時代の幕開けになることを期待しつつも、追い詰められた米国やイスラエルが核兵器の使用という最悪の選択をする可能性についても、広く懸念が共有されるべきだと警鐘を鳴らしています。いずれにせよ、米軍が戻る場所はもうなく、トランプ氏は不本意な形であっても、結果的に兵士たちを故郷へ帰すことになるだろうと結んでいます。

御用メディアのプロパガンダ

The Shamelessness of U.S-&-Allied ‘News’-Media - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】フランスの主要紙「ル・モンド」が報じたイラン情勢に関する記事を巡り、その報道姿勢がいかに政府寄りの偏ったものであるかを批判する論評が注目を集めています。ル・モンド紙は3月8日付の記事で、「イラン社会はイスラエルと米国の攻撃を巡って分裂している」との見出しを掲げ、現体制の崩壊への期待と、長引く破壊への恐怖の間で国民が揺れ動いていると報じました。

この記事では、当局の追及を避けるために仮名を用いたイラン国内の女性の証言を紹介しています。彼女は1月の反体制デモへの弾圧以降、外国の介入以外に解決策はないと信じており、空爆で最高指導者のハメネイ師が殺害された際には歓喜したと述べています。一方で、彼女の夫であるエンジニアは「爆弾が民主主義をもたらすわけがない」と反論し、夫婦間でも意見が対立しているといったエピソードを伝え、イラン社会が爆撃や抑圧、不確実性によって分断されていると描き出しました。

しかし、今回の論評の著者は、こうしたル・モンド紙の報道を「露骨なプロパガンダ」であると厳しく批判しています。イランには1953年に米国が主導したクーデターで民主的な指導者が追放され、非道な独裁体制が敷かれた歴史があります。1979年の革命でその体制を覆した国民が、かつての「大悪魔」である米国による侵略を、再び自国を支配するために歓迎するなどという想定は、歴史的背景を無視した極めて不自然なものであると指摘しています。

さらにル・モンド紙は、イラン当局による査証の発給拒否を理由に、自社の記者が現地入りできず、パリから電話やビデオ通話、衛星画像などを通じて遠隔で取材を行っていることを明かしています。これに対し、著者は同紙が自らを「検閲の被害者」のように装いつつ、実際にはワシントンやイスラエルの意向を汲んだ情報を発信しているに過ぎないと断じています。読者がこうした偏った情報を鵜呑みにすると決めつけているような報道姿勢こそが、メディアとしての誠実さを欠いているという痛烈な批判です。

米、兵役拒否の相談急増

Conscientious Objector Group: Phone 'Ringing Off Hook' As Huge Mobilization Underway | ZeroHedge [LINK]

【海外記事紹介】アメリカとイスラエルによるイランへの軍事行動が開始されたことを受け、米軍内部で良心的兵役拒否を希望する兵士からの相談が急増しています。1940年創設の非営利団体「良心と戦争センター(CCW)」によれば、相談窓口の電話は鳴り止まない状態にあり、その切迫感は2003年のイラク地上侵攻直前の状況に酷似しているといいます。

同センターのマイケル・プリズナー執行責任者は、公表されている以上に多くの部隊に対して、すでに派遣への動員がかけられていると指摘しています。相談に訪れる兵士たちの中には、イランのミナーブにある女子校での惨劇や、国際水域でのイラン艦船への攻撃など、米軍が関与したとされる非人道的な作戦に強い嫌悪感を抱き、自らの部隊内でも戦争への反対意見が広がっていると証言する者もいます。特に、インドでの式典から帰還途中の軽武装の艦船を撃沈し、生存者を放置したとされる事案については、ジュネーブ条約に違反する戦争犯罪であるとの批判が根強くあります。

米軍の規定では、良心的兵役拒否は「宗教的訓練や信念に基づき、いかなる形式の戦争への参加や武器の携行にも断固として反対すること」と定義されています。そのため、国の防衛には賛成するものの、今回のイラン戦争を不道徳なものとみなす兵士がこの地位を認められるのは容易ではありません。しかし、同団体は入隊1年以内の兵士に対し「適応不全」として除隊を求めるなど、戦地行きを回避するための現実的な助言を行っています。

さらに深刻な報告として、一部の部隊指揮官が、今回の戦争を「キリストの再臨」や「ハルマゲドン(最終戦争)」といった宗教的信念と結びつけ、兵士たちの戦意を高揚させようとしている実態が明らかになっています。軍の宗教的自由を守る財団(MRFF)にも、トランプ大統領が「イランで聖なる火を灯すために選ばれた」といった過激な神学的正当化を上官から押し付けられたという苦情が、40以上の部隊から寄せられています。

かつてイラク戦争に従軍した経験を持つプリズナー氏は、米兵に犠牲者が出始めたことで、自らの役割に疑問を抱く兵士が今後さらに増えるだろうと予測しています。

まもなく終戦か、長期戦か

Trump Says He Hasn't 'Won Enough' in Iran While IRGC Says It's Ready To Fight for 10 Years - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事紹介】トランプ大統領は3月9日、イランとの紛争が間もなく終了する可能性があるとの見解を示しましたが、一方でイラン側は10年に及ぶ長期戦も辞さない構えを見せており、両国の主張は真っ向から対立しています。トランプ氏は会見で、イランの海軍や空軍、通信網はすでに壊滅状態にあり、戦争は「ほぼ完了している」と述べました。しかし、同日の別の発言では「まだ十分には勝っていない」とも口にしており、さらなる勝利を追求するために攻撃を継続する意向をにじませるなど、政権内でのメッセージには一貫性を欠く部分も見受けられます。

これに対し、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の高官は、一時的な休戦は米国やイスラエルによる再攻撃の準備期間を与えるだけだとして、停戦に応じる姿勢を否定しました。イブラヒム・ジャバリ准将は、イラン軍は数年前から米国の攻撃を想定して準備を進めてきており、必要であれば今後10年間戦い続ける準備があると言明しています。イラン側の最終的な要求は、米国が中東地域から完全かつ永久に撤退することであり、将来にわたって二度と攻撃が行われないという決定的な保証がない限り、戦いを止めることはないとしています。

特に緊張が高まっているのが、現在革命防衛隊によって事実上閉鎖されているホルムズ海峡の扱いです。トランプ大統領は同海峡を「制圧」することを検討していると言及しましたが、ジャバリ准将はこれに強く反発しています。准将は、米国の軍艦が戦略的要衝である同海峡に進入するのを待ち構えており、未公開の最新鋭ミサイルで撃沈する準備ができていると警告しました。すでに少なくとも10隻の石油タンカーを攻撃した実績を誇示し、米軍艦を「海の底へ送る」と挑発的な姿勢を崩していません。

原油価格はこの情勢を反映し、一時1バレル120ドル近くまで急騰しましたが、トランプ氏が紛争終結の可能性を示唆したことで90ドル以下まで下落するなど、極めて不安定な動きを見せています。米政権内ではイスラエルと共同での空爆強化が主な方針とされており、最終的な終結の判断はイスラエルのネタニヤフ首相と共に行うとトランプ氏は述べています。泥沼の長期戦か、それとも政権が主張する早期終結か、事態は予断を許さない局面が続いています。

問われる湾岸諸国・印の姿勢

Russia Serves a Cold Dish to the GCC and India - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏が、激化するイラン紛争を背景に、ロシアが中東の湾岸協力会議(GCC)諸国やインドに対して、極めて冷徹かつ戦略的な外交を展開している様子を報告しています。ジョンソン氏は、ロシアが「復讐は冷めてから供される料理」(復讐は怒りに任せてとっさに行うのではなく、時間を置いて冷静に実行する方が効果的 )という格言を地で行くような立場で、自国の利益を優先しつつ、米国やイスラエルに同調してきた国々に厳しい現実を突きつけていると分析しています。

2026年3月5日、モスクワで開催された大使級の会合において、ロシアのラブロフ外相はGCC諸国の大使らに対し、異例の厳しい態度で臨みました。GCC側は、イスラエルと米国による奇襲攻撃への報復としてイランが行っている軍事作戦を、プーチン大統領の介入によって停止させるよう求めました。しかし、ラブロフ外相はこれを一蹴し、GCC側の「選択的な批判」を痛烈に批判しました。彼は、米国とイスラエルによるイランへの侵略戦争や、罪のない女学生らが犠牲になった事件をGCCが非難したのかを問い質し、一方的にイランにのみ圧力をかける要求は受け入れられないと断言しました。ロシア側は、米国とイスラエルの作戦こそがイランとアラブ近隣諸国の間に楔を打ち込み、近年の関係改善の動きを妨害するものであると看破しています。

一方、インドのモディ首相も苦境に立たされています。モディ首相は、イスラエルと米国がイランを攻撃するわずか3日前という最悪のタイミングでイスラエルを訪問し、イスラエルとの関係を「特別な戦略的パートナーシップ」へと格上げする16の協定に署名しました。BRICSの創設メンバーでありながら、ジェノサイドの疑いがある国と親密さを演出したことは、他の加盟国への侮辱と受け止められています。さらに、イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖により、石油の約85パーセントから88パーセントを輸入に頼るインドは、深刻なエネルギー危機に直面しています。

ロシアはこの状況を冷徹に利用しています。かつてロシアはインドに対し、北海ブレント原油価格から10ドル以上の大幅な割引価格で石油を販売していました。しかし、今回の供給危機を受け、ロシアはインドへの支援を約束しつつも、3月・4月分からは逆にブレント価格に4ドルから5ドルのプレミアム(上乗せ)を課すと通告しました。これは「友情に基づく譲歩」を排し、純粋な「ビジネス」として対応するという強いメッセージです。ジョンソン氏は、ホルムズ海峡の閉鎖が長期化すれば、モディ首相はイスラエルとの合意を再考せざるを得なくなるだろうと予測しています。

イラン戦争とドルの失墜

Will the Dollar be a Casualty of the Iran War? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】元米下院議員のロン・ポール氏が、トランプ政権によるイランとの紛争が、米ドルとその覇権に及ぼす壊滅的なリスクについて論じています。ポール氏は、この紛争が憲法に抵触し不当なものであると批判した上で、政権が掲げる「物価抑制」の計画を根底から覆していると指摘しました。

現在、ペルシャ湾からの唯一の石油輸送路であるホルムズ海峡の通航が困難になったことで、ガソリン価格が大幅に上昇しています。このコスト増は単なる給油価格の上昇にとどまらず、輸送費の増大を通じて食料品を含むあらゆる物資の価格を押し上げ、消費者を直撃しています。ホワイトハウスの閣僚や補佐官らは対策を急いでおり、海峡の安全確保のために米軍を恒久的に配置する可能性も浮上していますが、これはさらなる泥沼化を予感させます。

戦略国際問題研究所の推計によれば、米国政府は現在、この紛争に1日あたり約8億9140万ドルという巨額の支出を投じています。さらにトランプ政権は、国防予算とは別に50億ドルの補正予算を議会に要求する準備を進めています。この金額はあくまで最低ラインに過ぎず、超党派の支持を得て成立する過程で、議員やロビイストたちの要望が積み重なり、さらなる膨張は避けられない見通しです。

すでに38兆ドルを超えている米国の国家債務は、1日10億ドル近い戦費によって加速度的に増大しています。この状況は、連邦準備制度に対して金利を低く抑え、国債を買い支えることで政府の借金をマネタイズ(通貨発行による穴埋め)するよう強い圧力をかけることになります。一方で、米国の無秩序な財政支出や過度な干渉主義に反発し、他国が米国債の購入を控える動きを強めています。

ポール氏は、これらの要因がドルの世界準備通貨としての地位喪失を加速させると警鐘を鳴らしています。もしドルがその地位を失えば、世界恐慌よりも深刻な経済崩壊を招く「ドル危機」へと発展する恐れがあります。このような崩壊は、現在の福祉・軍事・不換紙幣のシステムに終止符を打つでしょう。同氏は、平和と繁栄を取り戻す鍵は、自由市場、限定された政府、そして個人と国家間の平和的な通商関係にあると結んでいます。

銀、供給不足続く

Silver Demand Expected to Outstrip Supply and Other Silver News [LINK]

【海外記事紹介】マイク・マハリー氏の報告によれば、2026年の世界銀市場は、投資需要の根強い強さを背景に、構造的な供給不足が続く見通しです。シルバー・インスティテュートの最新レポートを引用し、銀価格を1オンスあたり100ドル超へと押し上げた要因が依然として健在であることを伝えています。

具体的な要因としては、ロンドン市場における現物供給の逼迫に加え、不安定な地政学的背景、米国政策の不確実性、連邦準備制度の独立性を巡る懸念などが挙げられます。銀の需要が供給を上回るのはこれで6年連続となる予測で、特に現物投資の引き合いが20パーセント増加することが大きな原動力となっています。暫定データによれば、昨年の需要超過は約9500万オンスに達しました。これにより、過去5年間の累計不足額は8億オンスを超え、これは世界全体の年間鉱山生産量に匹敵する規模となっています。

投資需要の拡大は、価格高騰に伴う工業用需要のわずかな減少を補う形になります。太陽光発電パネルなどの分野では、銀の使用量を節約する動きや代替素材への転換が進んでいますが、マクロ経済環境や金価格の堅調さが銀価格の下支えとなり、価格の変動性は続くものの、大幅な下落リスクは限定的であると分析されています。

また、銀に関連する興味深い技術開発についても紹介されています。スタンフォード大学の研究チームは、リチウムイオン電池の電解質を銀の層で覆うことで、ひび割れを減少させ、電池の寿命と安全性を向上させる手法を発見しました。ブラジルの技術者は銀と塩化銀を用いた電極を組み込んだ、精神疾患に関連するタンパク質を唾液から検出できる約2ドルの安価なバイオセンサーを開発し、早期治療への貢献が期待されています。

さらに、銀のトレーサビリティを向上させる新技術も登場しています。分子レベルで見えない標識を埋め込むことで、精錬や加工を経てコインや宝飾品となった後でも、その銀の原産地をブロックチェーン上で追跡することが可能になります。加えて、日本の科学研究所などのチームが、分子一つの厚さしかない銀ベースの原子スイッチを製作したことにも触れられており、銀が文明や最新技術に与える影響は今後も拡大し続けると考えられています。

金の物流に混乱

Iran War Creates Disruptions in Gold Market [LINK]

【海外記事紹介】マイク・マハリー氏による最新の報告によれば、イランでの紛争が世界の金市場に深刻な物流の混乱をもたらしています。特にアラブ首長国連邦(UAE)は、世界有数の金精錬拠点であり、アジア市場への主要な輸出ルートですが、現在その機能が大きく阻害されています。紛争により航空路が閉鎖され、多くの便が欠航となったことで、ドバイなどの拠点には大量の金が滞留する事態となりました。通常、鉱山会社から届く金を含む合金は、UAEで精錬されて金地金や宝飾品となり、再びアジア各地へ輸出されます。しかし、現在は輸送業者が動けず、保管料の負担を避けるために、一部の業者は1オンスあたり30ドル近い割引価格で投げ売りを始めています。

金は通常、民間機で輸送されますが、空域の閉鎖に加え、保険料の急騰や輸送コストの増大が大きな障壁となっています。サウジアラビアやオマーンを経由する陸路での輸送も、価値の高い貨物を国境越えで運ぶリスクや複雑さから敬遠されています。このUAEでの滞留は、他国の市場に供給不足を波及させています。世界第2位の金市場であるインドでは、現時点では1月までの大量輸入による在庫で需要を賄えているものの、貨物の遅延が相次いでおり、実物の入手が困難になりつつあります。専門家は、この状況が数ヶ月続けば、インド国内の在庫も底をつき、深刻な問題に発展すると予測しています。

また、インド最大の精錬会社では、中東の鉱山からの原材料供給が途絶え、他地域からの調達に切り替えざるを得ない状況ですが、その物流コストは従来より60パーセントから70パーセントも上昇しています。かつて関税への懸念から銀の供給網が混乱し、それが市場全体に波及した例があるように、今回の金の流動性低下も市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。銀に比べれば金の需給はまだ極端な逼迫には至っていませんが、主要なハブ機能が停止している現状は、世界の金取引の安定性を揺るがす要因となっています。紛争という地政学的リスクが、実体経済の物流網をいかに麻痺させ、市場価格や供給体制に変調をきたすかを物語る事例と言えるでしょう。

戦争は経済を壊す

Schiff w/ Diesen: War Will Wreck the Economy | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの経済評論家であるピーター・シフ氏が、最新のインタビューで、現在進行中の戦争が経済に与える深刻な影響について詳細な分析を行っています。シフ氏は、政策立案者が最悪のタイミングで債務の拡大と通貨の発行に突き進んでいると指摘し、これが雇用やインフレ、そして米ドルの価値にどのような結末をもたらすのか、冷静な視点で警鐘を鳴らしています。

まず、米国の労働市場について、今回の紛争が始まる前からすでに脆弱な状態にあったと述べています。2026年2月の雇用統計では9万2000件の雇用が失われ、これは過去5年間で最悪の数字となりました。2025年10月にも大幅な下方修正を伴う雇用減少が見られましたが、今回の戦争はすでに高まっていたインフレ圧力をさらに増幅させることになるとシフ氏は分析しています。

戦争には多額の費用がかかりますが、政府はそれを借金と通貨増刷で賄う傾向があるため、必然的にさらなるインフレを招くというわけです。また、この経済的苦境は政治情勢にも影を落とし、現職の大統領や共和党にとって中間選挙で厳しい結果をもたらすだけでなく、2028年の大統領選挙で民主党がホワイトハウスを奪還する要因になり得ると予想しています。

さらにシフ氏は、以前から主張している関税の問題についても触れています。関税は外国人が負担するものではなく、実際には米国内の消費者が支払う税金であると説いています。輸入価格の推移を見れば、外国側が関税を相殺するほど価格を下げた事実はなく、関税の影響がそのまま消費者の負担増につながっている現状を指摘しました。

地政学的なリスクについては、中東各地にある米軍基地が攻撃の対象となっている現状から、ミサイルの応酬による民間への被害や、予期せぬ他国の巻き込みによる紛争拡大の懸念を強調しています。こうした状況下で防衛関連企業などが利益を得る側面はありますが、世界全体で見れば繁栄は損なわれ、人々はより貧しくなるとシフ氏は見ています。

命を落とす人々の人的損失を考慮に入れずとも、経済的な純損失は避けられないというのが彼の見解です。このような不確実な経済環境において、貯蓄を守るための現実的で健全な手段として、金や銀によるヘッジの重要性が一段と高まっていると締めくくっています。

2026-03-09

【寄稿】1776年の道徳的権威

ダニエル・B・クライン
(Daniel B. Klein)

今から250年前のこの日(1776年3月9日)、アダム・スミスの『国富論』が刊行された。これまでに書かれた政治経済学の著作の中で、同書は最も大きな影響力を持つものであった。なぜだろうか。

若き日のスミスはグラスゴー大学の教授となった。1759年、36歳のときに『道徳感情論』を出版して以降、彼の名声は大きく高まった。

『道徳感情論』は徳についての書、すなわち、いかにすればわれわれの行為をより道徳的に正しいものにできるかを論じている。道徳思想家であることにスミスの卓越性はある。自らが道徳的指針を提示しているという人物のことである。

スミスは、極めて高い評価を受けていた。彼は耳を傾けるに値する道徳思想家として受け入れられていたのである。すなわち、彼は道徳的権威でもあった。

したがって、1776年に『国富論』が世に出たとき、その教えは、貿易や金融に関する単なる興味深い議論ではなかった。それは道徳的権威による指針であった。教えが大きな影響力を持ったのは、それが彼自身から発せられたものであったからである。そこには彼の道徳的な承認が与えられていた。多くの人々がそれを心に刻んだ。

その結果はどうであったか。私は、西洋世界における経済の劇的な成長は、その結果であったと考える。

『国富論』の出版後まもなく、西洋世界における経済成長率と生活水準は急激に上昇した。数百年にわたる一人当たり所得やGDPの推移を示す図表を見ると、長い停滞の歴史の後に、スミスの没年頃から著しい加速が始まっているのが分かる。まるで彼の業績が変化を引き起こしたかのようである。経済学者ディアドラ・マクロスキーはこれを「大いなる豊穣(The Great Enrichment)」と呼んでいる。この曲線の形は「ホッケースティック」とも称され、その刃の部分が過去250年間の驚異的な豊かさの増大を表している。

では、スミスはいったい何を教えたのか。彼は何を道徳的に承認したのか。

今日の視点からすると、スミスの教えの新規性を理解するのは難しいかもしれない。というのも、われわれは経済活動に関するスミスの主要な道徳的教えにすでに親しんでいるからである。しかし、人間社会は本能的に、自己の所得のみを追求する個人に対して疑念を抱くということを理解しなければならない。社会の一員が「私は社会の利益ではなく、自分自身の所得に関心がある」と宣言すれば、人々は警戒心を抱く。

また、所得が社会の利益に反する手段によって得られる場合もある。したがって、われわれは所得の得方の違いを見分ける必要がある。

スミスの教えを、二つの主要な道徳的承認に分けて考えてみよう。

第一に、スミスは、誰かが「まっとうな所得」を追求する場合、その活動は社会の善に寄与すると教えた。すなわち、スミスは「まっとうな所得」の追求を道徳的に承認したのである。彼は事実上、「早起きして懸命に働き、まっとうな所得を求めるならば、神はそれを是認する」と人々に語ったのである。同様の考えは聖職者の説教や他の著作にも現れていたが、『国富論』はそれを驚くほど説得力があり、堂々たる形で展開した。

1776年のスミスの著作は、「まっとうな所得」を追求することが、無罪であるだけでなく、原則として徳であることを教えた。「まっとうな所得」の追求に与えられた道徳的承認は、経済生活に活力を与えた。

人々が早起きして自らの職務に励んだだけではない。それは革新をも活気づけた。「まっとうな所得」を得る一つの方法は、新しい財やサービス、あるいはそれらを生産する新しい方法を生み出すことである。「まっとうな所得」が道徳的に承認されたことで、人々は伝統的な職業の枠から踏み出し、正直である限りにおいて、いかなる形であれ革新を試みる勇気を得た。

「まっとうな所得」への青信号は革新を活性化させ、それこそが「大いなる豊穣」に不可欠であった。

第二の大きな道徳的承認は、政策立案者に向けられたものである。スミスは、人々が「まっとうな所得」を追求することを可能にする政策を支持することを、政策立案者に対して道徳的に承認した。

彼は「各人が自らの利益を、自らのやり方で追求することを認める」ことを原則として支持する道徳的推定を与えた。それは、所有権や結社・契約の自由を制限しないことを意味し、規制を緩和することを意味する。

もっとも、個人の自由を支持するスミスの原則は、あくまで推定的なものであり、絶対的なものではない。実際、スミス自身も自由の原則に例外を設けている。

スミスの道徳的承認は、「見えざる手」という表現と深く関わっている。

『国富論』においてスミスは、市場において私的利益に専念する人間が、意図せぬままに、見えざる手に導かれて社会の利益を促進すると述べている。彼は投資先を決める個人について次のように書いている。「彼は一般に……公共の利益を促進しようとは意図しておらず、また自分がどれほどそれを促進しているかを知らない」。

なぜスミスは、自己利益の追求が社会の利益を促進すると結論づけたのだろうか。

「まっとうな所得」とは、詐欺、虚偽表示、威圧、強制を伴わないものである。得られた金銭は、顧客が自発的に支払ったものであり、彼らが支払う金銭よりも、販売された商品――たとえば掃除機――を高く評価した結果である。この交換は双方に利益をもたらす、すなわち交易からの相互利益であった。

掃除機市場で競争するためには、人々が他の取引よりも良いと感じる品質と価格を提示しなければならない。他の売り手の条件が優れていれば、消費者はあなたの取引を受け入れない。したがって、報酬を得るためには消費者に奉仕しなければならない。そして消費者は社会の一部である。報酬を得るためには、社会に奉仕しなければならないのである。

また、あなた自身も社会の一部である。『道徳感情論』において、スミスは社会全体の善を増進する義務を説いた。その「全体」にはあなた自身も含まれている。あなたは全体の一部であり、自らの部分の善を増進するとき、全体の善をも増進するのである。

すべての部分が自らをよくケアすれば、全体もまたよくケアされる。自分自身の部分を大切にすることが道徳的に承認されるのは、それが全体の善を最も効果的に増進できる場所だからである。共通善を促進する効果性は能力に依存し、その能力は知識に依存する。『道徳感情論』においてスミスは次のように記している。「人は誰しも、疑いなく、本性により、第一に、そして主として、自分自身の配慮を委ねられている。そして人は他人よりも自分自身を世話するのに最も適しているのだから、そうであることは適切であり、正しいのである」。

社会全体の他の部分を助ける方法として、良質で安価な掃除機を提供することもあるだろう。あるいは工場での正直な労働もそうである。

掃除機工場を設立すれば、労働需要が増加し、労働市場における賃金率も上昇する。正直な所得を追求することは、社会全体の善を増進する優れた方法なのである。

もし、この偉大な全体的体系とその潜在力が神によって設計され、創造されたものであるならば、その体系の内部で行為する人々は、たとえ間接的であっても、神の見えざる手によって導かれていると言える。なぜなら、価格、利潤、損失といった行動を促す市場のシグナルそのものを、神が創り出したからである。この解釈において、見えざる手とは神の手なのである。

しかし、この世界に存在するシグナルは市場のものだけではない。より根源的なのは、道徳的権威から発せられる徴や合図である。摂理的観点からすれば、神の代理者はこの地上において神の似姿として創られており、われわれは特定の人間を道徳的権威として仰ぐよう促されている。その中には、1776年の人々も含まれる。彼らは今もなお生き続けているのである。

ダニエル・クラインは、ジョージ・メイソン大学マーケタス・センターの経済学教授であり、JIN講座教授を務め、同センターでアダム・スミス研究プログラムを主宰している。著書に The Spirit of Smithian LawsCentral Notions of Smithian LiberalismSmithian MoralsSmithian Essays がある。

(翻訳)Karras J Lambert、吉田寛

文明に対する戦争

Empire of Lies Launches a War of Aggression Against Iran and the World - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】現在、イランで起きている軍事衝突について、国際的な視点からその異常性と危うさを告発する論評をご紹介します。記事は、アメリカとその同盟国によるイランへの攻撃を「文明に対する戦争」と呼び、過去2年にわたってガザ地区で続いてきた惨劇が、今やイラン全土へと拡大している現状に強い懸念を表明しています。2月28日の開戦以来、テヘランをはじめとする主要都市では無差別な爆撃が行われ、小学校や病院、住宅地、さらには文化遺産までもが組織的に破壊されていると報じられています。

国際法学者のアルフレッド・デ・ザヤス氏は、今回の軍事行動が国連憲章やジュネーブ条約に明白に違反していると指摘しました。特に、開戦初日に小学校が精密爆撃を受け、165人の児童が犠牲になった事件は、世界中に衝撃と怒りを与えています。わずか6日間で死者数は1,200人を超え、その数は急速に増加しています。最高指導者ハメネイ師が自宅への爆撃で家族と共に殺害された際、トランプ大統領が「イランを浄化する」といった表現を用いたことに対し、記事はこれを国家による犯罪行為であると厳しく批判しています。

さらに、この記事の著者は、こうした暴力の背景にアメリカ指導層の歪んだ特権意識や、一部の支配層が関与したとされる過去のスキャンダルに見られるような道徳的腐敗があると主張しています。イギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領、ドイツのメルツ首相といった欧州の指導者たちも、この「ファシズム的な電撃戦」に従属していると切り捨てています。しかし、こうした絶望的な破壊活動は、実はアメリカ帝国の末期的な弱さを露呈しているに過ぎないとも分析しています。

現在、イラン側も数十年にわたって準備してきた軍事戦略をもって激しく抵抗しており、アメリカやイスラエルの防衛網を圧倒する兆しを見せています。また、膨大な債務を抱える欧米経済は、紛争によるエネルギー価格の高騰や供給網の混乱によって、未曾有の崩壊に直面する可能性があると警告しています。記事は、平和な世界を取り戻すためには、虚偽に基づいた軍事介入を繰り返す現在の欧米主導の帝国主義的システムそのものが、歴史の審判を受ける必要があると締めくくっています。 

違憲で不当な戦争

Mr. Trump Goes To War - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】リバタリアニズムの論客であるルーウェリン・ロックウェル・ジュニア氏は、トランプ政権がイスラエルと共同で開始したイランへの大規模軍事攻撃について、憲法違反であり不当な戦争であると厳しく批判しています。この攻撃では、イランの最高指導者ハメイニ師をはじめとする政府高官が殺害され、核関連施設の破壊が図られました。しかし、イラン側も米軍基地やイスラエル、周辺諸国への報復攻撃を続けており、事態は全面的な核戦争に発展しかねない極めて危険な局面を迎えています。

ロックウェル氏は、今回の軍事介入がリバタリアンが支持する不干渉主義の原則に真っ向から対立するものであると指摘します。マレー・ロスバードやロン・ポールが主張するように、戦争が正当化されるのは自国への侵略や差し迫った脅威がある場合に限られます。しかし、今回のトランプ氏による攻撃以前に、アメリカに対する差し迫った脅威が存在したという証拠は提示されていません。さらに、合衆国憲法は宣戦布告の権限を議会に与えており、議会への相談なしに独断で開始されたこの戦争は憲法上の根拠を欠いています。これは、外国の戦争への介入を避ける「アメリカ・ファースト」の公約を信じた支持者に対する裏切りであるとも論じています。

また、エド・フェーザー氏の分析を引用し、戦争の口実の矛盾を突いています。トランプ政権は昨年夏、イランの核プログラムを「完全に破壊した」と発表していましたが、わずか8ヶ月後には「イランは核兵器完成の1週間前にある」と警告を発しました。このように二転三転する説明は、戦争を始めるための単なる口実であり、真の開戦理由ではないと批判しています。もしイランの核がイスラエルの脅威であるとしても、それはイスラエル自身が対処すべき問題であり、アメリカが介入して経済的損害や弾薬の枯渇を招くことは、国益に反すると述べています。

憲法学者らの見解によれば、大統領が持つ「最高司令官」の権限は、議会が宣戦布告した後の軍の指揮権、あるいは予期せぬ攻撃を撃退する緊急権を指すものであり、自ら進んで戦争を開始する権限を含みません。ロン・ポール氏は、交渉の最中に軍事攻撃を仕掛けるような姿勢は、アメリカの外交的信頼を失墜させると警告しています。ロックウェル氏は、目的の見えないこの「不当な戦争」を直ちに中止し、中東から完全に撤退することこそが、真の意味でのアメリカ第一主義であると結んでいます。

帝政ロシア時代の大量の金貨

Archaeologists reveal major hoard of Imperial Russian gold [LINK]

【海外記事紹介】ロシア西部のトヴェリ州にある歴史都市トルジョークにて、2025年に行われた発掘調査で発見された帝政ロシア時代の大量の金貨について、ロシア科学アカデミー考古学研究所がその詳細を明らかにしました。この発見は、住宅建設に先立つ救済発掘調査の中で行われたもので、1848年から1911年にかけて鋳造された金貨が計409枚も含まれています。これほど大規模な帝政後期の金貨の山が、正式な考古学的発掘によって発見されるのは極めて稀なケースです。

金貨は、かつて住宅があった場所の石の土台の下に、持ち手のある小さな陶器の壺に入れられた状態で埋まっていました。調査チームを率いるナタリア・サラファノワ氏によると、これらは1917年のロシア革命という激動の時代に、当時の所有者が後で回収するつもりで隠したものと考えられます。しかし、所有者が再びその場所に戻ることは叶わず、100年以上の時を経て日の目を見ることとなりました。金貨の大部分は、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世の時代のもので、最も古いものは1848年のニコライ1世時代の5ルーブル金貨でした。

このコレクションには、1897年のセルゲイ・ヴィッテによる貨幣改革期に作られた珍しい7.5ルーブル金貨や15ルーブル金貨も含まれており、額面合計は4,070ゴールド・ルーブルに達します。発見場所は12世紀から居住が続いている歴史的な区域で、かつては聖デメトリウス教会の隣という立地でした。専門家は、これらの金貨が帝政末期の貨幣流通の実態を解明する上で極めて貴重な資料になると期待を寄せています。

発見された金貨は、今後トルジョークにある全ロシア歴史・民族博物館に移送され、展示の一部となる予定です。一方で、研究者たちは、この莫大な財産を隠し、そのまま帰らぬ人となった当時の所有者が一体誰であったのか、その正体を突き止めるための調査を続けています。

金取引ハブ巡り火花

Hong Kong, Singapore square off in race to become world’s gold trading hub | South China Morning Post [LINK]

【海外記事紹介】現在、アジアを代表する二つの金融都市、香港とシンガポールが、世界の金取引ハブの座を巡って激しい火花を散らしています。最新の報道によれば、両都市は地政学的な不確実性が高まり貴金属価格が急騰する中で、自国を世界的な取引拠点に押し上げようと、国家規模の戦略を加速させています。

シンガポール金融管理局(MAS)は、JPモルガンやUBSといった世界的なマーケットメイカーとの提携を視野に入れ、昨年から金市場の成長を支援する取り組みを強化していることを認めました。一方、香港も負けてはいません。2月25日に発表された政府予算案の中で、ポール・チャン財務長官は、税制優遇措置を盛り込みながら、香港を国際的な金取引ハブにする目標を改めて強調しました。香港金銀業貿易場(HKGX)のヘイウッド・チャン理事長は、中国本土との強力なコネクションこそが香港の「代替不可能な強み」であると指摘しています。中国は世界最大の金の生産国であり、かつ消費国でもあるため、人民元建てによる決済や本土との相互取引制度である「ゴールド・コネクト」の実現が、香港に圧倒的な優位性をもたらすという見解です。

インフラ面でも香港は具体的な計画を進めています。香港空港管理局は、金貯蔵庫の容量を1,000トン規模に拡大するプロジェクトを開始しました。さらに、今後3年以内に貯蔵能力を2,000トン以上にまで引き上げ、世界的に信頼される「金庫」としての地位を確立する方針です。同時に、今年中には政府系の中央清算機関による試験運用が始まる予定で、取引の透明性と効率性を高める仕組み作りが急ピッチで進んでいます。

これに対し、専門家からはシンガポールの先進的な姿勢を評価する声も上がっています。シンガポールは仮想通貨関連の金融商品において柔軟な姿勢を見せており、香港もトークン化された金(デジタル・ゴールド)などの革新的な分野で対抗していく必要があります。立法会議員のロバート・リー氏は、この競争を前向きに捉えており、アジア太平洋地域全体に金ビジネスを呼び込み、市場全体の成長につながると述べています。

世界の金市場の重心が欧米からアジアへとシフトする中で、香港の「中国本土との橋渡し役」としての機能がどこまで力を発揮するのか、今後の推移が注目されます。

アヒルのお腹から金の粒・中国

Chinese man discovers gold particles in duck’s stomach, weighing 10 grams, worth US$1,800 | South China Morning Post [LINK]

【海外記事紹介】中国内陸部の湖南省隆回県で、一人の男性が飼っていたアヒルをさばいたところ、その胃の中から本物の金の粒が発見されるという、まるで昔話のような出来事が報じられています。発見された金の粒は合計で約10グラムに達し、現在の価値で12,000元、日本円にして約27万円相当にのぼります。この驚きのニュースは中国のSNSで瞬く間に拡散され、1,000万回以上の再生数を記録するなど大きな注目を集めています。

発見者のリウさんによれば、アヒルは川の近くで放し飼いにされており、砂金が含まれる泥をエサと一緒に飲み込んだ可能性が高いとのことです。実はこの地域を流れる陳水という川は、1970年代から90年代にかけてゴールドラッシュに沸いた歴史があり、現在も川底に金が眠っていることで知られています。地元当局も、昨年同じ川で砂を洗っていた住民が10グラム以上の金を見つけた事例があるとして、アヒルの体内から金が見つかる可能性を否定していません。しかし、今回のような大量の金が一度に見つかるのは極めて稀なケースであり、専門機関による最終的な確認が進められています。

このニュースがこれほどまでに世間を賑わせている背景には、現代の中国社会における金への関心の高さがあります。経済的な不透明感が増す中で、中国の多くの家庭や若者たちの間で、金は最も信頼できる安全資産として再評価されています。会社員が金連動型の投資信託に資金を投じたり、若者が手頃な金製品を購入したりする動きが加速しており、アヒルの胃から金が見つかったというエピソードは、人々の「金への渇望」を象徴する出来事として受け止められています。

一方で、法的な観点からは複雑な問題も浮上しています。中国の法律では、地下資源や鉱物は国家に帰属すると定められているため、アヒルが飲み込んでいた金の所有権が誰にあるのか、当局も判断に苦慮しているようです。SNS上では「自分もその川で1,000羽のアヒルを飼いたい」といった冗談交じりの投稿が相次ぐ一方で、他のアヒルたちが金目当てに乱獲されるのではないかと心配する声も上がっています。

プライベートクレジットの崩壊

Recession Watch: Is Private Credit The New Subprime Mortgage? [LINK]

【海外記事紹介】現在、世界経済は中東での新たな紛争という事態に直面していますが、真に警戒すべきリスクは目に見える戦争そのものではなく、金融システムの深部で進行している「プライベート・クレジット」の崩壊であるとジョン・ルビノ氏が警鐘を鳴らしています。これまで安定していた原油価格が紛争の勃発によって急騰し、ガソリン価格の上昇が懸念される一方で、株式市場などは長期戦への懸念から軒並み下落しています。しかし、筆者はこれらよりも深刻な問題として、プライベート・エクイティやプライベート・クレジットと呼ばれる「影の銀行システム」の機能不全を挙げています。

具体的には、投資大手のブラックストーンが運営する旗艦ファンドにおいて、投資家による解約請求が急増しています。同社の820億ドル規模の信託基金では、通常の設定枠を超える約37億ドルの引き出し要求があり、これに対応するために会社側が異例の措置を講じる事態となりました。このニュースを受けて同社の株価は2年ぶりの安値を記録し、競合する他の投資運用会社の株価も連鎖的に下落しています。およそ2兆ドル規模にまで急速に膨れ上がったプライベート・クレジット業界は、資産価値の透明性の欠如や、一部の融資先企業の破綻などによって、投資家からの信頼を急速に失いつつあります。

こうした基金は、富裕層や個人投資家から資金を集めて中堅企業に融資を行う仕組みですが、専門家は現在の状況を、かつての不動産バブル崩壊時の前兆に似ていると指摘しています。実際に、プライベート・クレジット分野への資金流入は2026年には前年比で40%も減少すると予測されており、投資家がこの分野から一斉に逃げ出し始めている様子が伺えます。

現在の状況を総括すると、不透明なまま急速に拡大してきた金融システムの一部が今、音を立てて崩れ始めています。業界内では、さらなる隠れた問題が次々と露呈することを予感させる不穏な言葉が飛び交い、資本は出口を求めて殺到しています。どの銀行やヘッジファンドが、この劣化しつつある債権をどれほど抱え込んでいるのか、その全容は誰にも把握できていません。この記事は、かつてのサブプライム・ローン問題にも似たこの危機が、生命保険など庶民の身近な資産にまで波及する恐れがあることを示唆しています。

中国で金不足

Gold shortages in China - Research - Goldmoney [LINK]

【海外記事紹介】現在、中国の金市場で異例の事態が起きています。最新の報告によれば、中国最大手の中国工商銀行(ICBC)と中国農業銀行において、投資用の金地金が在庫切れになるという事態が発生しました。これは、不安定な国際情勢を背景に、中央銀行から個人投資家に至るまで現物資産への需要が極めて強まっていることを示しています。特に中国では、年間5兆ドルから6兆ドル規模に達する莫大な家計貯蓄の一部が、金の積立口座や地金購入へと一気に向かっており、銀行側がその需要を賄いきれなくなっているのが実情です。

貴金属市場全体に目を向けると、先週末のアメリカとイスラエルによるイランへの軍事行動を受け、市場では一時的に「安全資産としてのドル」を買う動きが強まりました。その結果、金と銀の価格は指標上で下落しましたが、これはあくまでペーパーアセット、つまり書類上の取引における現象に過ぎません。実態としては、価格が下がった隙に現物を確保しようとする動きが加速しています。特に銀については、上海市場での価格がロンドン市場に対して12%から14%もの高いプレミアム(上乗せ)で取引されており、世界中の保管庫から現物の銀が流出し続けています。ニューヨークのコメックス市場でも、引き渡し可能な銀の在庫が急減しており、市場の信頼性が揺らぐほどの危機的な状況にあります。

この背景には、中東での紛争が長期化するとの懸念があります。ホルムズ海峡の封鎖リスクによって原油や天然ガスの価格が急騰しており、これがさらなるインフレを招くとの見方が強まっています。かつてのロシアによるウクライナ侵攻時と同様に、エネルギー価格の上昇は債券や株式市場を不安定にし、結果として金や銀といった実物資産への逃避を促しています。投資家たちの関心は、もはや実体のない金融商品から、手元に置くことができる現物へと明確に移り変わっているのです。

現在の金・銀価格の下落は、現物を積み増したい人々にとっては絶好の機会と捉えられており、特に中国での旺盛な需要は止まる気配がありません。金融バブルの崩壊が懸念される中で、伝統的な安全資産である貴金属の希少性が改めて浮き彫りになっています。

共和党の変節

Rockwell Is Right Again: The Disaster of Republican Rule | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの政治情勢において、共和党が政権を握るたびに繰り返される変節と、その結果として招かれる経済的・政治的混乱について、自由主義の論客リュー・ロックウェルの洞察を引用しながら鋭く分析する記事をご紹介します。ロックウェル氏は、2000年にジョージ・W・ブッシュ氏が当選する前から、共和党政権の本質を見抜いていました。彼は当時、民主党政権が終わる解放感の一方で、また別の「政治の暗い夜」がやってくると警告していました。政権が代わっても、寄生的な支配層が入れ替わるだけで、権力の乱用や無駄な支出が繰り返されるという予測は、その後の歴史によって皮肉にも証明されることとなりました。

ブッシュ政権下の8年間、共和党は「小さな政府」という看板とは裏腹に、連邦政府の権限と支出を空前の規模で拡大させました。国土安全保障省や運輸保安庁を新設し、愛国者法を成立させたほか、莫大な戦費と人命を投じた二つの戦争を開始しました。さらに、2008年の世界金融危機に際しては、巨額の公的資金を投入した企業救済や量的緩和を行い、現在のインフレや経済的不平等の種をまいたのです。こうした共和党による政府拡大のツケは、その後のオバマ政権へと引き継がれ、民主党がその肥大化した権力構造を自らの支持層のために利用するという悪循環を生み出しました。

そして現在、再び共和党が政権を握っていますが、状況は以前にも増して深刻です。共和党は現在、アメリカへの直接的な脅威がない国での新たな戦争を正当化しようとしており、地上軍の派遣を求める声さえ上がっています。記事によれば、共和党は特定の利害関係者のために、エネルギー価格の上昇や国民の生活コスト増大、さらには米兵の犠牲をも厭わない姿勢を見せています。財政面でも、トランプ政権の1期目と2期目を通じて連邦債務は膨れ上がり、過去最大級の財政赤字を記録していますが、もはや支出を抑制しようとする姿勢すら見られません。

結局のところ、共和党が野党の時には「憲法遵守」や「自由市場」を訴えますが、いざ政権に就けば、軍事・福祉国家の拡大に全力を注ぐのが常態化しています。このような共和党の統治スタイルは、次なる民主党政権に対して、史上最強の権力装置を明け渡す準備をしているに等しいと記事は指摘します。選挙が近づけば、彼らは再び「限定的な政府」を掲げて有権者を欺こうとするでしょうが、その言葉と行動の乖離を冷静に見極める必要があると結んでいます。

学校・病院を攻撃

'Punching them while they're down': US & Israel bomb Iran's schools & hospitals, with 'no stupid rules of engagement' - Geopolitical Economy Report [LINK]

【海外記事紹介】現在、イランではアメリカとイスラエルによる軍事行動が激化しており、その実態についてベン・ノートン氏が報告しています。この報告によると、両国はイランの国家を破壊するだけでなく、社会そのものを崩壊させることを目的に、学校や病院、住宅地といった民間施設を意図的に攻撃しているといいます。アメリカのピート・ヘグセス国防長官は3月4日の記者会見で、この戦略を「弱っている相手を叩いているのであり、それこそがあるべき姿だ」と述べ、空からの攻撃を24時間体制で継続していることを明らかにしました。「エピック・フューリー作戦」と名付けられたこの軍事行動では、開始から4日間で、2003年のイラク侵攻時の2倍に及ぶ航空戦力が投入されたと報じられています。ヘグセス長官は、国際機関の主張に関わらず、史上最も殺傷能力の高い空爆を展開していると強調し、交戦規定に縛られずに民間地域を標的にしていることを認めています。

具体的な被害状況について、世界保健機関やユニセフの報告によれば、2月28日の開戦からわずか1週間で、少なくとも13の医療施設と20の学校が爆撃されました。さらに、淡水化プラントが破壊されたことで多くの村々が水不足に陥り、犠牲者は1,300人を超え、その3割を子供が占めているとされています。特に南部ミナブの小学校への攻撃では、生存者がいないことを期すために40分間隔で2度の爆撃が行われ、児童168人と教師14人が命を落としたことが確認されています。イスラエル側の意図についても、フィナンシャル・タイムズ紙は、イランの指導者層を組織的に排除し、統治不能な混沌状態に陥れる計画であると伝えています。元情報当局者は、政権の柱をすべて破壊し、内戦や社会不安を引き起こすことが狙いであり、イランの将来の安定には関心がないと語っています。

こうした軍事行動に対し、法的な専門家からは国際法違反であるとの指摘が相次いでいます。ユネスコは学校への攻撃を重大な人道法違反と批判し、スタンフォード大学の専門家も、差し迫った脅威がない中での「先制攻撃」は自衛権の範囲を超えており、違法であるとの見解を示しました。また、戦争の口実とされたイランの核兵器開発についても、国際原子力機関のラファエル・グロッシ事務局長は、組織的な核兵器製造計画を示す情報は存在しないと明言し、アメリカ側の主張を否定しています。記事は、この戦争が虚偽の情報に基づいて強行され、パレスチナのガザ地区で見られたような壊滅的な被害をイラン社会にもたらそうとしている現状を伝えています。

2026-03-08

草原の道、ユーラシア激動の震源地

【グローバルヒストリーを読む】古来、ユーラシア大陸の東西全体をつなぐネットワークは三つの道で構成されていた。一つは前回取り上げた「オアシスの道(シルクロード)」で、中央アジアの砂漠地帯を越え、ラクダなどの隊商交易によってつながっていた。もう一つはインド洋と南シナ海を結ぶ「海の道」で、港市国家によって結びつけられていった。そしてもう一つが、ユーラシア北部に広がる「草原の道」で、騎馬遊牧民の世界である。今回はこの草原の道にスポットを当てよう。


草原の道とは、モンゴル高原から西へカザフ高原、アラル海、カスピ海の北方を通って黒海北岸に達するルートを指す。この広大な草原地帯は、騎馬遊牧民の活動舞台であり、スキタイや匈奴(きょうど)をはじめとして、様々な遊牧国家が興亡した。

これらの遊牧民は、騎馬による高い機動性を持っており、すでにスキタイの時代に、草原地帯の東西を通じて共通の特色を持つ武器や馬具が見られることから、活発な交流があったとみられる。遊牧民は、オアシス諸都市などを軍事的に保護し、代わりに税を徴収するという方法を取ることが多かった。

紀元後4世紀から5世紀は、草原地帯を震源地として世界史が大変動した時期であった。寒冷化などの気候変動を背景に、遊牧民の移動が活発化する。東部では、鮮卑(せんぴ)などが中国の農耕地帯に侵入した。西部では、東部から移動してきたフン人(匈奴の一部とされる)がヨーロッパに侵入し、民族大移動を引き起こした。

その後、草原地帯ではトルコ系民族が優勢となり、東部では突厥(とっけつ)やウイグルの大帝国が成立した。10世紀以降は、トルコ系民族の西方への進出が顕著となり、この地がトルキスタン(トルコ人の地域)と呼ばれるようになった。13世紀には、モンゴルがユーラシア大陸をまたぐ大帝国を作り上げた。

ここから、遊牧民とアジアの諸国家との関係を見ていこう。

紀元前4世紀ごろから、草原の道をゆく騎馬遊牧民の活動が活発になり、モンゴル高原南部に匈奴などが登場する。これらの勢力のうち最初の覇者となったのが匈奴である。紀元前3世紀末、卓越した指導者、冒頓単于(ぼくとつぜんう)に率いられて強大となった匈奴は、東の大興安嶺からオアシス地帯までを統一する大帝国を築いた。

折しも中華帝国を統一した前漢の高祖劉邦は、匈奴帝国の急速な拡大を抑えようと出兵するが、前200年に大敗を喫した。以後70年間にわたり、前漢は匈奴に貢納を支払うという屈辱的な和親策を取らされることになった。歴史学者・北村厚氏(『教養のグローバル・ヒストリー』)の指摘によれば、漢帝国は匈奴の事実上の従属下におかれたと述べる高校世界史の教科書もあるほどである。

その後中央集権化を完成させた前漢は、前141年に即位した武帝が、ついに匈奴に対する従属関係を打破しようと行動を起こした。

外交面では、匈奴を挟み撃ちにする同盟を築くため、張騫を大月氏や烏孫(うそん)に派遣した。また、朝鮮半島にあった衛氏朝鮮を滅ぼし、楽浪郡など四郡を置き、東方への外交の窓口とした。

軍事面では、衛青や霍去病に命じてたびたび匈奴と戦争を行い、甘粛地方を奪って敦煌郡など四郡を設置した。さらにフェルガナ地方の大宛(だいえん)を打ち破り、汗血馬を獲得するなど成果を上げた。

こうして匈奴はオアシスの道から駆逐され、北方に追いやられた。東西交易の利益を失った匈奴は急速に衰退し、まもなく東西に分裂する。紀元前1世紀、オアシスの道の東半分の覇権は、匈奴から漢帝国へと移行したのである。

4~5世紀にユーラシア大陸で起こった民族大移動は、日本(当時の倭国・ヤマト王権)にも大きな影響を及ぼした。

朝鮮半島での戦乱から逃れた人々や、百済などの同盟国から送られた技術者たちは「渡来人」と呼ばれ、日本の発展に不可欠な役割を果たした。彼らによって急速な技術革新が起きたのである。

まず、馬文化だ。それまで日本にいなかった馬に乗る風習、飼育技術、馬具が伝わった。古墳時代中期以降の前方後円墳から出土する馬具の副葬品にその影響が見られる。また、大陸の騎馬民族が使用していた鉄製のよろいや武器が大量に生産されるようになった。さらに、漢字の使用が本格化し、後の歴史書編纂や律令制度の導入の基礎となった。

この時期の急激な変化を説明するために、かつて東洋史学者の江上波夫氏によって「騎馬民族征服王朝説」が提唱された。現在では主流の説ではないが、東アジアにおける民族の移動と文化交流が、古代日本の国家形成に与えた影響の大きさは議論の余地がない。

晩年を横浜市で過ごした江上氏が同市に寄贈した資料をもとに開設された「横浜ユーラシア文化館」はホームページで、「ユーラシアという一続きの広大な世界で様々な民族が接し合い影響し合って多様な文化を形成してきました」と指摘している。

草原の道を震源地とするユーラシアの激動は、結果として日本列島に技術革新と先進文化をもたらし、ヤマト王権の軍事力や経済力、文化水準を一気に高めた。古代日本の骨格を形作ったと言えよう。

プライベートクレジットに動揺

Hal Turner Radio Show - BlackRock LIMITING WITHDRAWALS From High-End "HLEND" Private Credit Fund [LINK]

【海外記事紹介】世界最大の資産運用会社であるブラックロックが、同社の旗艦ファンドの一つであるプライベート・クレジット・ファンド「HLEND」において、投資家による資金の引き出しを制限し始めたことが明らかになりました。世界で最も影響力を持つ資産運用会社が顧客に対して現金の返還を制限するという事態は、これまでになかった異例の出来事です。この決定を受け、一部の投資家の間ではかつてのエンロン事件を連想する声も上がるなど、動揺が広がっています。今回の制限の背景には、2兆ドル規模に達するプライベート・クレジット業界全体への懸念が強まる中で、解約請求が急増したことがあります。今年の第1四半期には、純資産価値の9.3パーセントに相当する12億ドルの解約請求が殺到しました。これに対しブラックロックは、ファンドの規定に基づき、支払額を純資産の5パーセントである6億2000万ドルに制限する措置を講じています。

このニュースに加えて、米国の雇用統計が予想を下回ったことや、中東情勢の緊迫化に伴う市場全体の売りが重なり、ニューヨーク証券取引所におけるブラックロックの株価は6.7パーセント下落しました。しかし、資金流出に直面しているのはブラックロックだけではありません。同様のファンドを運営するブラックストーンでも、過去最高となる7.9パーセントの解約請求が発生しました。ブラックストーンは需要に応じるため、引き出し枠の上限を引き上げた上で、4億ドルの自己資金を注入せざるを得ない状況に追い込まれました。また、ブルー・アウルにいたっては解約への対応を完全に停止し、代わりに借用証書を交付するという極めて厳しい対応をとっています。

プライベート・クレジット・ファンドは、流動性の低いローン、つまりすぐには売却できない債権に投資しています。そのため、多くの投資家が一斉に解約を求めた場合、支払いに充てるための十分な現金を確保できなくなります。ブラックロックは直近でも、3カ月前まで全額の価値があると評価されていた2500万ドルのローンを、一夜にして価値ゼロとみなして減損処理を行いました。こうした不透明さやレバレッジの高さに対し、JPモルガンのビル・アイゲン氏は、悪いニュースは一度に重なってやってくるものだと警鐘を鳴らしています。1.8兆ドルから2兆ドル規模の巨大市場は今、原油価格の上昇や中東での紛争、さらにはAI技術の普及による既存ソフトウェア企業の衰退、そして利下げ期待の後退といった複数の逆風にさらされています。世界最大級のファンドが投資家に対して返金を拒み始めた事態は、市場全体に対する重大な警告と言えます。

イランの罠戦略?

Step into My Parlor - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】軍事・技術アナリストのウィリアム・シュライバー氏が、イラン戦争における米軍の弾薬備蓄の限界と、今後の戦況が迎える「危険な転換点」について独自の視点から分析しています。

シュライバー氏は、米国とイスラエルがイランを圧倒し、無条件降伏の直前にあるという「ハリウッド映画のような物語」に対し、冷徹な実数(在庫数)を突きつけて異を唱えます。

現在、米軍の長距離精密誘導兵器(トマホークやJASSMなど)の在庫は危機的な水準に達していると氏は指摘します。推定されるトマホークの有効在庫は2,000〜2,500発、JASSMは約3,000発程度であり、合計5,000発ほどの亜音速巡航ミサイルでは、イランを完全に制圧しつつ、ロシアや中国といった他地域での紛争に備えるには到底足りません。

このため、米軍は貴重なミサイルを温存するために、より安価で射程の短い滑空爆弾(JDAM等)の使用へと切り替えざるを得ない局面(転換点)に差し掛かっています。

しかし、滑空爆弾を投下するためには、航空機が標的から40海里(約74km)以内に接近する必要があります。これは、イラン側の対空防衛システムの「射程圏内」に飛び込むことを意味します。氏は、イランがこれまで防衛システムを温存してきたのは、米軍機が自ら射程内に踏み込んでくるこの瞬間を待ち構えていたため(「クモの巣に誘い込む」戦略)ではないかと推測しています。

もし米国がステルス機(B-2、F-22、F-35)や非ステルス機を投入して短距離攻撃を試みれば、イランの防衛網によって撃墜される機体が出てくることは避けられません。その時、米軍は「制空権を完全に握っている」という前提が崩れ、さらなる深刻な危機に直面することになると警告しています。

不純な聖戦

The Trump-Netanyahu Iran Crusade - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】国際的なコラムニストであるエリック・マルゴリス氏が、トランプ政権によるイラン攻撃の背後にある動機を「司法からの逃避」と「イスラエルへの同調」という2つの視点から鋭く批判しています。

マルゴリス氏は、今回の戦争が開始された第一の理由として、今秋の連邦議会選挙に向けたトランプ氏の「国内的な苦境」を挙げています。世論調査で民主党の圧勝が予想される中、トランプ氏は議会の支配権を失えば数々の刑事訴追に直面するリスクがあります。今回の巨大な軍事行動は、依然として燻り続けるジェフリー・エプスタインのスキャンダルから国民の目を逸らすための「目くらまし」であると氏は分析しています。

第二の理由は、トランプ氏とイスラエルのネタニヤフ首相との密接な相互依存関係です。ネタニヤフ氏もまた、自身の汚職疑惑による公判を回避するためにガザ紛争を継続させる必要があり、両リーダーにとって「戦争」は司法や有権者の審判を避けるための唯一の手段となっていると指摘します。さらに、イスラエルを支持する米国内の強力な資金源や、マイク・ハッカビー駐イスラエル大使(キリスト教シオニスト)に見られる「神の意志」を掲げた領土拡張主義的な思想が、この「聖戦(クルセード)」を後押ししていると述べています。

マルゴリス氏は、かつてのイラク戦争で使われた嘘が再び繰り返されていると警告します。また、ベトナム戦争で徴兵を逃れた過去を持つトランプ氏が、今や「戦争大統領」になろうとしている皮肉を突きつけています。この無謀な介入は、誰も望まない(イスラエルを除く)終わりのない対外戦争の始まりであり、中国による台湾への行動を正当化する口実にもなりかねないと結論づけています。

「歴史の教訓」の悪用

The Full Story of 1983 Beirut Barracks Bombing (That Pete Hegseth Won't Tell You) | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】トランプ大統領やヘグセス国防長官がイランへの攻撃を正当化する際、必ずと言っていいほど言及するのが、241名の米軍兵士が犠牲となった1983年のベイルート米海兵隊宿舎爆破事件です。しかし、作家のジム・ボバード氏は、この悲劇が現在の戦争の口実として利用される一方で、当時の米政府による「失策」と「欺瞞」の側面が意図的に無視されていると指摘しています。

1982年、レバノン内戦の最中にイスラエルが侵攻したことを受け、米軍は停戦監視のためにベイルートへ派遣されました。当初の「平和維持活動」はやがて変質し、米軍はキリスト教系のレバノン政府軍を支援・訓練するようになります。これがイスラム教勢力の反感を買い、米軍は中立な調停者ではなく、紛争の当事者と見なされるようになりました。事件直前、米海軍がイスラム勢力側に艦砲射撃を行ったことが、宿舎爆撃の直接的な引き金になったという見方が軍内部でも有力でした。

1983年10月23日、爆薬を満載したトラックが宿舎に突入しましたが、当時の警備体制は驚くほど脆弱でした。事前にCIAから攻撃の警告があったにもかかわらず、司令官たちはテロを主要な脅威と見なさず、衛兵の銃に弾丸さえ込めていなかったことが後の調査で判明しています。レーガン大統領は当初「攻撃は不可避だった」と国民に説明し、責任の所在を曖昧にしました。最終的に「責任はこの執務室にある私にある」と述べつつも、誰も処分せず、休暇に旅立つことで幕引きを図りました。

ボバード氏は、この事件が証明しているのは「イランが常に宿命的な敵であること」ではなく、当時の政権がいかに無謀な介入を行い、自軍の防衛に失敗し、その失策をプロパガンダで塗り固めたかであると論じています。現在、再び同じ事件を理由にイランへの戦争が叫ばれていますが、歴史の教訓を歪めて利用することの危うさを、この記事は冷静に突きつけています。

米軍死傷者数を隠蔽?

The Trump Administration is Lying About American Casualties in the Persian Gulf Region - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏が、ペルシャ湾地域での紛争開始から1週間が経過した現在、トランプ政権が米軍の死傷者数を過小評価し、事実を隠蔽している可能性について警鐘を鳴らしています。ジョンソン氏は、インターネット上に現れたいくつかの「予兆」をもとに、米軍が公表されている以上の深刻な戦闘損失を被っていると分析しています。

第一の有力な手がかりは、ドイツにある米軍のランドシュトゥール地域医療センター(LRMC)が出した異例の通知です。欧州・中東・アフリカ地域における米軍最大の外傷・後送拠点である同センターは、3月4日付で産科サービスを「追って通知があるまで」一時停止すると発表しました。ジョンソン氏の知人で国防総省の負傷兵プログラムを監督していた人物によれば、同病院には現在、負傷した兵士が洪水のように運び込まれており、もはや出産にリソースを割く余裕がない状態だといいます。

第二の兆候は、第82空挺師団の展開に向けた動きです。2月下旬に予定されていた演習会議が突如キャンセルされた直後に戦争が始まった経緯から、ジョンソン氏は今回の空挺師団の派遣準備も、トランプ大統領やヘグセス国防長官が示唆した「地上軍投入」が単なる脅しではないことを示していると指摘します。

SNS上には、ペルシャ湾の米軍基地への攻撃による被害を示す画像も出回り始めています。ジョンソン氏は、国防総省がこうした情報の流出を必死に防ごうとしているのは、大半のアメリカ国民が望んでいないこの「いわれのない戦争」に対する反対世論が、死傷者の増大によって一気に爆発することを恐れているからだ、と結論づけています。

ロスバードの国際関係論

Rothbard’s Theory of International Relations and the State | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】リバタリアニズムの思想家マレー・ロスバードが提唱した、国際関係と国家の本質に関する理論をまとめた論評を紹介します。ロスバードは国家による戦争や帝国主義に一貫して反対したことで知られますが、この記事はその「道徳的な主張」だけでなく、国際社会がいかなる構造で動いているかという「客観的な分析(実証的理論)」に焦点を当てています。

ロスバードの国際関係論は、主に以下の4つの柱で構成されています。

第一に、国際システムは「アナーキー(無政府状態)」であるという点です。世界全体を統治する単一の政府は存在せず、それぞれが暴力の独占権を持つ複数の国家が並立しています。国家の本質が「強制」にある以上、このシステムには常に暴力の可能性が内包されています。

第二に、国家は国民を代表するものではなく、少数の「支配エリート(オリガルヒ)」によってコントロールされているという事実です。ロスバードは、民主主義か独裁かに関わらず、国家は常に寄生的なエリートによって運営されていると断言します。民主主義国家における唯一の違いは、国民の承認を取り付けるために、より高度で集中的な「プロパガンダ」が必要とされる点にあります。

第三に、国家の最優先事項は「自己保存」です。支配エリートにとって国家権力の喪失は富と地位の喪失を意味するため、彼らは何よりもシステムの維持を優先します。戦時中、国家は「国民を守るため」という口実で人々を動員しますが、ロスバードに言わせれば、それは国家が「自分自身を守るため」に国民を利用しているに過ぎません。

第四に、戦争は「国内政策の道具」として利用されます。戦争は国家が国内の警察権力を強化し、中央集権的な計画経済を推し進める絶好の機会(「進歩主義の成就」)となります。特に、相手が弱小国でリスクが低い場合、国家は自らの権威を高めるために好んで紛争を利用します。

ロスバードによれば、これが国際社会の「ありのままの姿」です。この記事は、平和と人権を追求するためには、こうした国家の本質を見抜き、徴兵制や軍拡、警察国家化といった国家の戦争遂行能力を高めるあらゆる要素に、一貫して反対し続ける必要があると結論づけています。

「無条件降伏」求める愚

With His "Unconditional Surrender" Goal, Trump Signals a Long War | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのドナルド・トランプ大統領がSNS上で、現在進行中のイランとの紛争における最終目標は「無条件降伏」であると表明しました。トランプ氏は、イラン側とのいかなる妥協も否定し、米国が容認できる指導者を選出する権利を持つと主張しています。しかし、この記事は、この「無条件降伏」という要求こそが、紛争を不必要に長期化させ、双方に甚大な犠牲を強いる危険なシグナルであると分析しています。

歴史的に見ても、無条件降伏の要求は相手側の抵抗心を煽り、戦争を長引かせる傾向があります。国家の解体や占領、制裁を一方的に突きつける条件を、まともな政府が受け入れることは稀だからです。国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏は、イランは決して弱小国ではなく、地形的にも防衛に有利であるため、米国やイスラエルがこの戦争で勝利することは「ほぼ不可能」であると指摘しています。また、米国の攻撃によって穏健派の指導者が失われ、より過激な指導層が台頭している現状では、米国に従順な政権を作るという目標は極めて困難です。ミアシャイマー氏は「イラン側は生き残るだけで勝利となる」と述べ、トランプ氏の戦略が泥沼の長期戦を招く可能性を警告しています。

アメリカにおける無条件降伏への執着は、第二次世界大戦の成功体験に端を発していますが、実際には極めて異例なケースです。歴史家リデル・ハートは、この方針がドイツ国民の結束を強め、結果として米軍の犠牲者を増やしたと批判しました。また、日本との終戦においても、実際には天皇制の維持という条件を米国が事実上受け入れる形で決着しており、完全な無条件降伏は現実には稀です。

本来、国際紛争の多くは双方の妥協による合意で終結するものです。軍事専門家の間でも「あらゆる降伏には条件が伴うものだ」という認識が一般的です。記事は、過去にバイデン政権がロシアに対して掲げた政権交代の要求が、核戦争のリスクや長期戦の懸念から立ち消えになった例を引き合いに出し、トランプ政権もこの「無条件降伏」という非現実的な目標を速やかに放棄し、理性的かつ交渉による解決を模索すべきであると結論づけています。

政権転覆作戦が招いたもの

Operation Ajax (1953): The CIA’s Template—and Warnings for Today | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカによるイランへの直接的な軍事行動と政権交代の動きが強まる中、1953年にCIA(米中央情報局)が主導した伝説的な政権転覆工作「アジャックス作戦」の歴史的教訓を振り返る論評が発表されました。この記事は、72年前の「過去の出来事」がいかに現在の泥沼化した米イラン関係を規定し、負の連鎖を生んできたかを鋭く分析しています。

1953年、イランの民主的に選ばれたモサデク首相が石油の国有化を断行した際、英国とCIAは秘密裏にクーデターを仕掛け、彼を失脚させました。代わって実権を握ったパーレビ国王(シャー)は、米国から多額の援助を受ける一方で、秘密警察による強権的な弾圧体制を敷きました。この記事は、この歴史的介入が中東全体の独裁者たちに「西側や石油利権に友好的でありさえすれば、無限の抑圧も許容される」という誤った教訓を与え、地域の民主化を阻害したと指摘しています。

1979年のイラン革命は、この25年間にわたる抑圧と外国支配への反動として爆発しました。当時の革命勢力が米大使館を占拠し、444日間に及ぶ人質事件を引き起こした背景には、「再び1953年のようなクーデターが起き、国王が復権させられるのではないか」という根深い恐怖がありました。この事件によって米イランの外交関係は崩壊し、その後のイラン・イラク戦争における米国のイラク支援や、イスラム主義の過激化を招く一因となりました。

記事はさらに、ロバート・ペイプ教授の研究を引用し、現代の自爆テロの本質的な原因は「宗教的狂信」ではなく「外国軍による占領への抵抗」であると述べています。1953年の秘密工作から1979年の革命、そして現代の軍事介入に至るまで、歴史は断絶することなく地続きです。かつてジミー・カーター米大統領は1953年の事件を「遠い過去の話(古代史)」と呼びましたが、実際にはその「古代史」が70年以上にわたって中東の対立構造を作り上げてきました。2026年の今、再び強行されようとしている政権交代が、今後さらに70年以上にわたってどのような予期せぬ悲劇を招くのか、歴史の重みを直視すべきであると結論づけています。

ロスバードの思い出

Murray Rothbard as David Gordon Remembers Him | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】経済学者・哲学者であるマレー・ロスバードの生誕100周年(2026年3月2日)に際し、長年の友人であり愛弟子でもあったデイヴィッド・ゴードン氏が、稀代の知性との思い出を回想しています。ゴードン氏は、ロスバードとの会話こそが人生最大の喜びの一つであったと語り、その底知れない知識の幅と、議論の本質を瞬時に見抜く鋭い洞察力を振り返っています。

ロスバードの関心は、シュンペーターの経済理論からユダヤ神学、ヘーゲル哲学、さらには当時のO.J.シンプソン事件まで多岐にわたりました。どの話題においても、彼は膨大な学識に基づいた啓蒙的な見解を、独特の笑い声を交えながら早口でまくしたてたといいます。あるセミナーでは、ミルトン・フリードマンがミーゼスを批判した記事に対し、一息もつかずに各段落を論破してみせたエピソードや、老子から公共選択学派までを網羅した政治権力論を即興で講じた圧倒的な知性が紹介されています。

また、ロスバードの知識は学術分野に留まらず、全米の連邦議会選挙の動向や各選挙区の争点までも詳細に把握していました。彼は学生たちがオーストリア学派やリバタリアニズムの研究に取り組むことを常に奨励し、古書店を巡れば棚にあるほぼ全ての書籍について解説を加えるほど、本そのものへの深い愛情を持っていました。

人柄としては、非常に情熱的で、好き嫌いもはっきりしていました。ビル・クリントンを激しく嫌悪し、ロバート・ノージックとはイスラエル問題や効用理論を巡って対立したこともありました。妥協を許さない姿勢ゆえに激しい議論になることもありましたが、それは彼が自身の信じる正義に忠実であったからだとゴードン氏は分析しています。知的天才でありながら自由への情熱を燃やし続けたロスバードの姿は、今なお多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

2026-03-07

イラン人の求める自由とは?

What Is 'Freedom' And Do Iranians Want It? | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事紹介】アメリカのライターであるブラッド・ピアース氏が、現在進行中のイランへの軍事行動の背後にある「自由」という言葉の危うい解釈について論じています。政権交代を画策する際、決まって「抑圧された大衆が自由を渇望している」というプロパガンダが流されますが、氏はモンテスキューの言葉を引用し、「自由」ほど多様な意味を持ち、人々に異なる印象を与える言葉はないと指摘します。

多くの人々にとっての自由とは、抽象的な政治理念ではなく「自国民によって、自国の法律で統治される特権」、つまり「慣れ親しんだ生活を送ることを許されること」に他なりません。アメリカ独自の「自由な政府」という概念を他国の人々も望んでいると考えるのは、好戦主義者が作り上げた神話に過ぎないと氏は切り捨てます。

実際、自由の解釈は国や文化によって大きく異なります。イギリスの伝統を継ぐアメリカでは「徴税」が自由の主要な争点となりますが、フランスでは「経済的安定や過度な労働からの解放」が自由の中核を成しています。また、かつての東欧や脱植民地化した国々では、自由とは「農奴制からの解放」や「食事、教育、職を得る権利」を意味していました。たとえ北朝鮮のような国であっても、外国の支配を受けず独立を保っていることに自由を感じる人々がいる可能性を否定できません。

現代において「民主主義(選挙)」が自由と同義に扱われることも多いですが、歴史的に見れば民主主義は手段に過ぎません。特定のNGOや亡命者が主張する「自由」が、単に西洋資本への市場開放を指している場合もあります。

イランの現状に当てはめれば、国民が宗教的な統治に不満を抱いている可能性はあっても、彼らが望んでいるのは爆撃によってもたらされる「西洋的な自由」ではないはずだと氏は主張します。空爆で殺されないこと、家族を養えるだけの給料を得ること、そして国家の独立が守られること。それこそが、市井の人々にとっての切実な「自由」の本質であると結論づけています。

戦争の請求書

The $300,000 Question Nobody in Washington Can Answer - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事紹介】政治アナリストのジェリー・ノーラン氏が、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー市場の劇的な混乱と、それが世界経済に及ぼす致命的な影響について警鐘を鳴らしています。わずか1週間足らずで、液化天然ガス(LNG)の輸送運賃が1日あたり4万ドルから30万ドルへと650%も急騰しました。これは単なる一時的な価格変動ではなく、リアルタイムで進行している「経済的破局」の象徴であると氏は述べています。

世界の海上石油貿易の20%以上が通過するホルムズ海峡は、事実上、商業航路としての機能を停止しました。物理的な封鎖以上に深刻なのは、保険市場や主要な運送業者がリスクを嫌ってこの海域から撤退したことです。特にカタールがガス輸出に「不可抗力条項(フォース・マジュール)」を適用したことは極めて重大です。LNG施設はマイナス160度という極低温を維持する必要がある特殊なインフラであり、一度停止すると再稼働には数週間におよぶ慎重な工程を要します。たとえ今すぐに戦闘が止まったとしても、供給網の切断によるダメージはすでに確定しており、回復には時間がかかります。

カタールは世界のLNG供給の20%を担っており、その停止は日本、韓国、台湾、インドといったアジア諸国を直撃します。これらは半導体工場や病院、肥料生産などを支えるライフラインであり、供給の5分の1が突如失われたスポット市場で激しい奪い合いが始まっています。欧州の天然ガス指標価格も1週間で約76%上昇し、2022年のエネルギー危機の記憶が新しい中で、さらなる衝撃に見舞われています。

さらに、マースクなどの大手海運会社がホルムズ海峡の通航を見合わせ、アフリカ南端の喜望峰を回るルートに変更したことで、輸送時間は数週間単位で延び、コストは跳ね上がっています。このコストは最終的に、戦争とは無関係な世界中の一般消費者の光熱費や製品価格へと転嫁されます。ノーラン氏は、この事態を「意図的なエネルギー供給の除去」と呼び、自国でエネルギーを自給できず、基軸通貨を発行できない国々、特にグローバル・サウスの国々が最も高い代償を払わされることになると批判しています。今回の危機はパンデミックを上回る規模の経済的損失をもたらす可能性があり、その「請求書」は間もなく世界中の家庭に届くことになると警告しています。

イラン戦争の構造問題

War on Iran, Pentagon After-Action Report, Week 1 - LewRockwell [LINK]

【海外記事紹介】元アメリカ空軍中佐のカレン・クウィアトコウスキー博士が、イランに対する軍事作戦開始から1週間が経過した時点での、国防総省(ペンタゴン)による事後報告書の検討内容を分析しました。この記事によれば、今回の戦争には計画段階から多くの構造的な問題が含まれていたと指摘されています。

まず、開戦前の世論工作において、過去のイラク戦争などの際に見られたような緻密な国内世論の形成が不十分であったことが挙げられます。核兵器開発の脅威を強調する従来のメッセージは、国民の間に広がっていた戦争への懸念を払拭するには至りませんでした。また、政治的目的も極めて不透明でした。当初は短期間で終了するはずの作戦でしたが、実行開始からわずか8日間で、政府から発表された戦争目的は6回も変遷しました。さらに、イスラエルとの共同作戦でありながら、明確な防衛条約や共通の目標が確立されていない点も混乱に拍車をかけています。

軍事的な側面では、国防総省がリソースをアジアへシフトさせていた時期と重なり、中東での即応能力が分散していたことが指摘されています。兵站についても、紅海や地中海に展開する空母打撃群への依存は、現代のドローンや極超音速ミサイルの前では脆弱性が高まっています。また、過去4年間のウクライナへの軍事支援によって弾薬の備蓄が正確に把握できていない可能性があり、政治指導者には質の低い情報が伝えられている懸念もあります。

さらに深刻なのは、「プランB」の欠如です。作戦が予定通りに進まなかった場合の撤退路や代替案が準備されておらず、エネルギー価格の高騰や失業といった国内の不満、さらには国際的な反発も十分に予測されていなかったと分析されています。博士は、このまま戦争が長期化すれば、憲法上の義務を軽視したまま軍事予算だけが膨張し、地域全体の混乱が収拾不能になるリスクがあると警告しています。この記事は、十分な準備と明確なビジョンを欠いたまま開始された軍事行動が、いかに危うい状況にあるかを淡々と提示しています。

金がドルとユーロに勝ち続ける理由

Why Gold Keeps Beating the Dollar and Euro [LINK]

【海外記事紹介】マネー・メタルズのポッドキャストにおいて、ホストのマイク・マハリー氏とタラ・コインの創設者であるマーク・オバーン氏が、金や銀が通貨として果たしてきた歴史的役割と、現代の法定通貨制度におけるその重要性について対談を行いました。オバーン氏は20年以上にわたり貴金属業界に携わってきた専門家であり、アイルランドにおける投資用金貨の欠如を埋めるためにタラ・コインを設立しました。

この対談では、まずコインのデザインに込められた象徴性が語られました。アイルランドの文化遺産である「生命の木」やハープ、ケルトの三重らせんといった紋様は、単なる装飾ではなく、再生や豊かさ、そして過去から未来へと続く伝統を象徴しています。オバーン氏は、コインがその時代の文明や価値観を伝える歴史的な語り部であると指摘します。アレクサンドル大王の時代や英国のソブリン金貨、米国のリバティ金貨などの例を挙げ、通貨がいかに国家の理想や経済的統合と結びついてきたかを説明しました。

また、アイルランドの初期経済において家畜が主要な通貨であったという通説に対し、考古学的な証拠に基づき、古くから貴金属が交換手段として使われていた事実を強調しました。河川で採掘された金や銀が円盤状の原始的な貨幣やリング・マネーへと進化し、数千年前から経済的な役割を担っていたのです。その後、バイキングやノルマンの支配を経て鋳造技術が広まりましたが、やがて通貨発行権はロンドンの王立造幣局に集約されていきました。これは、政治権力が経済を支配するために通貨を独占しようとする歴史的なパターンの現れであると述べています。

現代の金融システムについても、厳しい視点を向けています。1913年の連邦準備制度創設以来、米ドルは金に対してその購買力の約99%を失いました。1999年に導入されたユーロも同様で、金に対して年平均約11.3%のペースで下落し、26年間で価値の約93%を失っています。オバーン氏は、金の価値が上がっているのではなく、法定通貨の購買力が低下しているのだと主張します。主要な中央銀行が債務や通貨増刷によってマネーサプライを拡大させることで、通貨の減価が構造的な特徴となっているのです。

現在、世界的に「脱ドル化」の動きが加速しており、中央銀行による金の保有量はユーロを抜いて世界第2位の準備資産となりました。ヴァンエック社の研究によれば、世界のマネーサプライ(M2)を金で完全に裏付けた場合、理論上の金価格は1オンスあたり18万ドルを超えるという試算もあります。これは短期的な予測ではありませんが、いかに通貨が過剰に供給されているかを示しています。オバーン氏は、歴史上、帝国が興亡し通貨が減価しても、金と銀は一貫して信頼できる価値の保存手段であり続けてきたと結論づけています。

戦争は経済問題の身代わり

Schiff w/ Nawfal: War is an Economic Scapegoat | SchiffGold [LINK]

【海外記事紹介】アメリカの著名な経済評論家であるピーター・シフ氏が、マリオ・ナウファル氏とのインタビューの中で、戦争がもたらす憲法上の制限や政治経済への影響、そして財政的な現実について語りました。シフ氏はまず、戦争という重い決断は本来、大統領が独断で行うべきものではなく、議会が決定すべきものであるという憲法上の原則を強調しています。建職者の意図によれば、戦争は熟議を経た上での最終手段であるべきですが、現在のアメリカの対イラン政策における政権交代を目指すような姿勢は、実質的に戦争そのものであると彼は指摘しています。

経済的な観点からは、戦争が経済問題の責任転嫁、つまり「身代わり」として利用される可能性に警鐘を鳴らしています。本来なら避けられないはずの不況やインフレといった経済的な苦境を、戦争のせいにすることで、政治的な責任から逃れる口実を与えてしまうというのです。また、戦争の継続には膨大な資金が必要ですが、アメリカが多額の債務を抱え、中央銀行が通貨を増刷し続けている現状では、ドルの価値が維持できなくなるリスクがあります。世界中の投資家がドルの保有を避ける「ドル逃避」が起これば、戦争の資金調達は困難になりますが、直近数日のようにドルが強さを保っていれば、当面は財政的な維持が可能になるという側面も説明しています。

さらにシフ氏は、軍事介入の実効性についても疑問を呈しています。空爆だけで目的を達成することは難しく、地上軍の派遣や占領という高い代償を伴う可能性が高いこと、そして仮に現政権を倒したとしても、その後に誕生する政権が以前よりも悪いものにならないという保証はないと述べています。

最後に、資産価値の保存という文脈で、金とビットコインについても言及しました。ここ数ヶ月、金はビットコインに対して優位なパフォーマンスを示しており、シフ氏は自身の議論の焦点が単なる金と仮想通貨の対立ではなく、「トークン化された金」にあると明かしました。彼は、ビットコインが解決しようとしている課題に対して、トークン化された金の方がより優れた解決策を提供できると考えています。このように、シフ氏は地政学的なリスクを常に市場や通貨、そして実体経済の裏付けと結びつけて冷静に分析しています。

金ETFに資金流入続く

ETFs Added More Gold in February Despite Recent Price Correction [LINK]

【海外記事紹介】金(ゴールド)は最近の大幅な価格調整にもかかわらず、投資意欲は衰えるどころか、むしろ記録的な勢いを見せています。マイク・マハリー氏が紹介する最新のレポートによれば、2026年2月の金ETF(上場投資信託)の現物保有量は26トン増加し、世界全体で4171トンという過去最高記録を更新しました。運用資産残高も7010億ドルに達し、世界的な資金流入は9ヶ月連続となっています。特に北米市場での動きが顕著で、価格の下落を絶好の投資機会と捉えた新規投資家が相次いで参入しました。ワールド・ゴールド・カウンシルの分析では、こうした長期にわたる連続流入は、リーマンショック時やパンデミック発生時といった「システム的なリスク」が高まった時期にしか見られない特異な現象であると指摘されています。

北米における金投資を牽引している主な要因は4つあります。第一にイランをめぐる地政学的リスクの増大、第二にドル安や金利低下による金保有のコスト低下、第三に関税に関する最高裁の判決後の政策的不透明感、そして第四にソフトウェア関連株の下落に伴う株式市場への不安です。アジア市場でも6ヶ月連続で資金が流入しており、特に日本は2月初旬の政治的不安や中国との緊張、円安を背景に流入を主導しました。インドでも利益確定の売りを上回る旺盛な需要が続いており、伝統的な現物志向からETFへのシフトが進んでいます。一方、欧州だけは唯一、イギリスを中心に資金が流出しましたが、これは一時的な調整であり、長期的な構造変化ではないと見られています。

ただし、金ETFはマウス操作だけで売買できる流動性の高さが魅力である一方、投資家が注意すべき点もあります。ETFはあくまで「紙の上の権利」であり、現物の金を直接手元に保有するのとは根本的に異なります。特に市場に急速に資金が流れ込む局面では、ファンド側が裏付けとなる現物資産を十分に確保できず、引き出しに遅延が生じるリスクも否定できません。利便性を重視する投機的な動きには適していますが、現物保有とは別物であるという認識が必要です。

2月の金取引高は、前月の過去最高記録からは一服したものの、依然として2025年の平均を32パーセントも上回る高水準を維持しています。アジアの旧正月による取引減少や利益確定の動きがあったものの、世界的な地政学リスクや経済の不透明感が続く中で、金は「安全な避難先」としての存在感をかつてないほど高めています。市場の過熱感は収まりつつありますが、長期的な視点で見れば、金への信頼は揺るぎないものとなっているようです。

死者の投資術

Why Dead People Might Be Better Investors Than You [LINK]

【海外記事紹介】投資の世界では、意外なことに「亡くなった人」こそが最も優れた投資家である可能性が高いという、興味深い研究結果が報告されています。マイク・マハリー氏が紹介するこの記事によれば、大手金融機関のフィデリティやバンガードなどの調査で、最も高い運用成績を収めたグループは、すでに亡くなっているか、あるいは口座を持っていること自体を忘れて放置していた人々だったのです。なぜ、生身の人間が死者に負けてしまうのでしょうか。その理由は、死者は「何もしない」からです。彼らは日々のニュースに一喜一憂せず、相場の暴落にパニックを起こすことも、根拠のない期待で買いに走ることもありません。ただひたすらに市場に居座り続け、時間の経過とともに複利の恩恵を最大限に享受しているのです。

人間は感情の生き物であり、私たちの脳は進化の過程で、危機に直面すると「闘争か逃走か(闘うか逃げるか)」を選択するようにプログラムされています。この本能は、原始時代のサバンナで生き残るには不可欠でしたが、現代の金融市場においては、しばしば最悪の結果を招きます。相場が急落すると恐怖に駆られて底値で売り払い、相場が過熱すると乗り遅れまいと高値で飛びついてしまうのです。多くの投資家は、自分の感情と戦う「自分自身の最大の敵」になってしまっています。投資心理学の専門家は、こうした集団心理に流される行動こそが、運用成績を悪化させる最大の要因であると指摘しています。

優れた投資家になるために、実際に命を落とす必要はもちろんありません。しかし、死者のように振る舞う、つまり「感情を排除し、一貫性を保ち、退屈なほど忍耐強くあること」は学ぶことができます。短期的なニュースに翻弄されるのではなく、より大きなマクロ経済の視点に立ち、ファンダメンタルズに根本的な変化がない限り、静観を貫くことが重要です。例えば、政府の膨大な債務や中央銀行の政策といった現実を無視した一時的な価格変動に反応してはいけません。

結局のところ、賢い投資とは、賢明な判断を積み重ねること以上に、愚かな行動をいかに控えるかという点にかかっています。まずは戦略を立てて自動的に積み立てを行い、あとは感情というノイズをシャットアウトして、ただそこに立ち尽くす勇気を持つことが、富を築くための近道なのです。もし目の前の数字に心が乱れそうになったなら、一度立ち止まって、死者ならどうするかを考えてみるのも一つの手かもしれません。

米・イスラエルはすでに敗北

Mar 6, 2026 Brilliant Piece on Iran!!!! David Z 321gold [LINK]

【海外記事紹介】イスラエルのジャーナリスト、アロン・ミズラヒ氏による、現在進行中の中東紛争に関する分析をご紹介します。ミズラヒ氏は、我々がいま歴史的な転換点の目撃者になっていると主張しています。同氏によれば、開戦からわずか4日間で、イランは世界の予想を裏切る圧倒的な規模と決定力で、中東全域のアメリカ軍基地を徹底的に破壊しています。バーレーン、クウェート、カタール、サウジアラビアにあるこれら巨大施設は、過去30年以上にわたり数兆ドルもの巨費を投じて築かれた「世界で最も高価な軍事インフラ」ですが、それが一瞬にして灰燼に帰しているというのです。1基で数億ドルもするレーダーが破壊され、基地が放棄・略奪される惨状は、アメリカ軍の歴史において真珠湾攻撃をも上回る壊滅的な打撃であると同氏は指摘します。

興味深いのは、この戦争に関する情報の乏しさです。35年前の湾岸戦争ではハイテク兵器の映像が連日公開されましたが、今回の対イラン戦では、アメリカ軍の圧倒的な支配を示す映像がほとんど出てきません。世界最強の空軍力を誇るはずのアメリカですが、イランの空を支配している兆候は見られず、イラン防空網の突破すらままならない状況が示唆されています。トランプ政権からは、ペルシャ湾を出る石油タンカーに護衛艦を付けるといった案も出ていますが、数千発のイラン製ミサイルの射程圏内に艦船を送り込むのは無謀であり、現在、ホルムズ海峡を通過できる者は誰もいないというのがミズラヒ氏の見立てです。

ミズラヒ氏は、アメリカとイスラエルはこの戦争にすでに敗北していると断言します。強力な爆弾で民間人を殺傷することはできても、イラン全土の地下深くに張り巡らされた広大な軍事インフラに到達する術はありません。クルド人勢力などの民兵組織を利用した地上侵攻というアイデアも、イランの広大な国土と軍事力を考えれば非現実的であり、アメリカ軍を飲み込んでしまうだろうと警告しています。同氏は確信を持って、この紛争が終わる時、アメリカは二度と中東に戻ることはなく、この地域におけるアメリカのプレゼンスは完全に消失すると予測しています。

石油価格がすべてのカギに

The oil price is at the conductor's podium [LINK]

【海外記事紹介】今回の経済分析記事によれば、現在の世界情勢と金融市場は「石油価格」がすべてを指揮する、極めて危うい局面を迎えています。執筆者は、中東での紛争、特にアメリカ・イスラエル対イランの対立が長期化・拡大する可能性を強く警告しています。紛争はすでにトルコやサウジアラビアなどの周辺国を巻き込み始めており、生き残りをかけるイラン政権と威信をかけた米大統領との間で、妥協の余地はほとんど残されていません。特筆すべきは、中東の民衆が政府の枠を超えて連帯し始めているという兆候です。

金融市場に目を向けると、投資家たちはすでにこの「嵐」に備えて守りを固めています。S&P500指数の先物市場では、ヘッジファンドが2024年12月以来となる明確な売りポジションを取っており、プット・オプション(売る権利)の比率は過去15年で最高水準に達しました。このように事前に十分なヘッジ(リスク回避)が行われているため、実際の市場の下落がパニック的な売りにつながらず、一見すると「緩やかな動揺」に留まっているように見えるのです。

通貨市場では、米ドルが再び「安全な逃避先」としての強さを証明しています。一方でユーロは、欧州の政治的・経済的な構造的不況により、資本流出の危機にさらされています。また、金や銀といった貴金属は、本来は有事の買いが入るはずですが、現在はドルの独歩高や、投資家が利益の出ている流動資産を現金化しようとする動きに押され、一時的に軟調な展開となっています。しかし、過去の金融危機やパンデミック時と同様、こうした局面の後に貴金属が最大の勝者となる可能性は極めて高いと分析されています。

今後数週間の焦点は、世界の石油・ガス輸出の約20%が通過するホルムズ海峡の動向です。WTI原油価格が1バレル80ドルを安定的に超えて上昇し続ければ、貴金属から始まり、石油、産業用金属、そして農産物へと波及する大規模なコモディティ・サイクルの連鎖が現実のものとなります。結局のところ、現在の地政学というオーケストラの指揮台に立っているのは石油市場であり、投資家はこの「指揮者」の動きを注視しながら、神経質な相場展開に備える必要があると結論づけています。

世界大戦の兆し

"The beginning of a world war" - Emmanuel Todd [LINK]

【海外記事紹介】フランスの著名な人口学者で歴史家のエマニュエル・トッド氏による、ウクライナ戦争の現状と欧米社会の変容に関する分析をご紹介します。トッド氏は1976年にソ連の崩壊を的中させたことで知られますが、現在はアメリカ帝国の崩壊を確信しています。同氏によれば、ウクライナ戦争は実質的に西側諸国の敗北に終わっており、バイデン政権がこの敗北を隠そうとした結果、トランプ氏がその「敗北を引き受ける大統領」として再登板しました。しかし、トランプ氏が進める「MAGA(アメリカを再び偉大に)」という再工業化の試みは、技術者や熟練労働者の深刻な不足、さらには若年層の識字率低下といった国内社会の荒廃により、実現不可能な段階に達しています。アメリカは自国の弱体化を隠すため、ベネズエラやグリーンランドへの関心といった「矛先をそらす戦術」を展開していますが、現実にはロシア、中国、イランといった敵対勢力の結集を招き、世界大戦の入口に立たされているのです。

トッド氏が特に強い危機感を抱いているのが、ドイツの変貌です。かつて平和主義的だったドイツは、フリードリヒ・メルツ政権の誕生によって軍事化の道へ舵を切りました。西側メディアは「ロシアが欧州を脅かす」という虚構の物語を流布していますが、実際にはプーチン大統領に欧州征服の意図はなく、むしろドイツが危機を克服するために産業の軍事化を進め、欧州の覇権を握ろうとしていると氏は指摘します。欧州連合の本来の理想は消え去り、各国のナショナリズムが再燃する中で、ドイツは大陸最強の軍隊を持つ自己中心的な強国へと戻りつつあります。これはフランスにとっても潜在的な脅威であり、かつてド・ゴールが核武装したのはドイツから自国を守るためであったという歴史的視点を忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。

さらにトッド氏は、現代の西側諸国が「リアリティ(現実感覚)」を喪失していると分析します。アメリカが主導したウクライナでの戦争は、歴史的宿敵であるロシアに敗北したことで、ベトナムやイラクでの失敗とは比較にならないほど致命的なシステムの崩壊を露呈させました。トランプ氏がどれほど外交的な駆け引きを演じようとも、戦場での決着はすでについており、ウクライナ体制の崩壊は避けられません。我々は今、かつてのソ連崩壊時のような文明の終わりの目撃者となっていますが、当時のロシアが尊厳を持って帝国を解体させたのに対し、現在のアメリカや欧州は「見苦しい敗者」として、虚偽と軍事的な暴走に突き進んでいます。ドイツの権威主義的な体質の再浮上と、アメリカの制御不能な凋落が交差する中で、世界は想像を絶するような不確実な未来、いわばサイエンス・フィクションのような現実へと足を踏み入れているのです。