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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-04-17

アジア経済へ影響深刻

The Impact of the US/Israel-Iran Crisis on Asia - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】米・イスラエルとイランの危機がアジア経済に与える深刻な影響について、国際的な経済学者ダン・スタインボック博士が警鐘を鳴らしています。今回の危機で原油価格は一時1バレルあたり110ドルから116ドルまで急騰しましたが、より深刻なのは液化天然ガス(LNG)への打撃です。原油が50%超の上昇だったのに対し、LNGは最大143%も暴騰し、3年ぶりの高値を記録しました。世界の石油の20%と主要なLNGがホルムズ海峡を経由してアジアに流れているため、この地域にとっての供給リスクは計り知れません。

エネルギー価格の暴騰は、インフレを通じてアジア全域の経済見通しを悪化させています。燃料や電気、肥料の不足は企業のコスト増を招き、それが幅広い商品やサービスの価格に転嫁されています。特に「世界の工場」であるアジアでは、プラスチックや化学製品の原料となるLNGのショックが工業の停滞を招いており、ガス依存度の高い日本、韓国、ベトナムが最も大きなリスクにさらされています。物流面でも輸送費や保険料が跳ね上がり、サプライチェーンのボトルネックが発生しています。

各国の状況を見ると、日本と韓国はLNGや輸出への依存度が高いため、当初の想定以上に状況が悪化しています。日本ではインフレと円安が同時進行し、日銀は金利政策の再考を迫られています。韓国の成長率は1%以下に落ち込む可能性が出てきました。また、フィリピンではエネルギー危機と通貨ショックが重なり、経済成長率の見通しが大幅に下方修正されるなど、すでに非常事態に陥っています。中国はロシアからのエネルギー供給などで一定の回復力を見せていますが、世界的な需要減退による輸出の弱体化という課題に直面しています。

国際通貨基金(IMF)によれば、このイラン・ショックはすでに世界の80%の国々に影響を及ぼしており、アジアの途上国ではGDP成長率を1.3%も押し下げる可能性があります。もし停戦が失敗し戦争が長引けば、原油価格は150ドル台まで暴騰し、サプライチェーンは完全に崩壊しかねません。市場が一時的に反発したとしても、実体経済が並行して回復することはないでしょう。アジアで起きているこの「負の連鎖」は、やがて欧州や北米にも波及し、世界全体に深刻な経済的傷跡を残すことになるとスタインボック博士は分析しています。

ネオコンを一掃せよ

Purge the Neoconservatives - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカの外交政策を批判する人々の間で、「誰が選ばれたとしても、常にジョン・マケインのような主戦派が現れる」という格言が繰り返されています。選挙キャンペーン中に「体制転換」や「軍事冒険」に反対していた候補者が、大統領に就任した途端にタカ派へと変貌する現状は、超党派の外交工作員たちが国民の抑制的な外交への願いを無視し続けていることを示しています。トランプ大統領の2期目もその例外ではなく、かつて愚かな戦争を批判していたはずの彼は、現在、イランとの戦争を開始し、ネオコン(新保守主義)的な好戦主義を称賛するイデオロギーに MAGA運動を乗っ取られています。

ネオコンの世界観は、民主主義や資本主義を軍事介入によって強制的に広めることで紛争を回避できるというものですが、過去25年の歴史が証明したように、このプロジェクトは標的となった国々だけでなく、仕掛けた側のアメリカ自身をも不安定にし、自由を損なわせる結果を招きました。特に今回のイランとの戦争は致命的な過ちです。イランは数千年の歴史を持つ文明国家であり、安易な介入で崩壊するような国ではありません。アメリカは、イデオロギーに基づいたグローバルな覇権を追求するあまり、自国の戦略的な思考能力を失い、世界を不安定にする主要な原因となってしまいました。

しかし、著者のクリス・モット氏は、ここに現状を打破する機会があると考えています。ネオコンによる悲惨な政策が現実となるたびに、国民の間では彼らに対する反発が強まります。氏は、これまでテロ対策や過激派組織の取り締まりに使われてきた法的枠組みを、ネオコン自身のネットワークに適用すべきだと提案しています。思想的な目的のためにマクロな規模で暴力を提唱する彼らの行動は、政府が定めるテロリズムの定義に当てはまる可能性があるからです。彼らが支持した戦争や制裁による犠牲者の数は、21世紀のどのイデオロギーネットワークよりも多く、その失敗は宗教的過激主義や人身売買の温床となりました。

もちろん、大規模な監視や法執行の技術を政治的に利用することには慎重であるべきですが、イラク戦争の主導者たちが一度も公的な責任を問われなかったことが、今日の悲劇を繰り返す原因となっています。著者は、無益な戦争を計画した者たちを捜査し、その実態を国民に公開することで、二度と政策決定の場に戻れないように「一掃」すべきだと主張しています。国家の利益を損ない、自国を弱体化させるネオコンのネットワークを解体することは、現実的な外交政策を取り戻し、アメリカが本来の共和制の理想に立ち返るために不可欠な一歩なのです。

良心と進退

Quitting Time? - The American Conservative [LINK]

【海外記事より】アメリカの政治専門誌に掲載された最新の論評は、現在のトランプ政権内でかつて反戦を唱えていたJ・D・ヴァンス副大統領が沈黙を守り続けている現状を背景に、歴史上の政治家たちが直面してきた「進退の決断」について深く考察しています。権力の魅力や、裏切り者というレッテルを貼られる恐怖、そして辞任した際の報復の確実性が、大統領に任命された高官たちの勇気ある離反を極めて稀なものにしています。記事は、現在の好戦的な姿勢に異を唱え、良心に従って自らの職を辞した人物と、政権内に留まり続けた人物の対照的な姿を紹介しています。

一人は、ウィルソン政権で国務長官を務めたウィリアム・ジェニングス・ブライアンです。彼は第一次世界大戦中、アメリカが中立を維持すべきだと強く主張しました。ドイツが英国の客船ルシタニア号を沈没させ、多くのアメリカ人が犠牲になった際も、軍需品を積んでいた船が乗客を盾にすべきではないと述べ、政府が中立を放棄することに抗議して辞任しました。ブライアンは「公職にある者は良心に従って行動しなければならない」と述べ、自身の政治的キャリアが破壊されることを覚悟の上で、自らの義務を果たしました。彼は当時の主戦派から嘲笑されましたが、国際的な調査と冷却期間を設けることで、多くの若者の命を救おうとしたのです。

対照的な例として挙げられているのが、ケネディ、ジョンソン両政権で次官を務めたジョージ・ボールです。彼はベトナム戦争が泥沼化することを早くから予見し、政権内では「若者を死に追いやる禿鷹のようだ」と同僚たちを激しく批判しました。しかし、彼は原則に基づいて公に辞任することはありませんでした。その理由は、辞任の意向を示せば大統領側から「無能な失敗者だった」という情報が流され、自身の評判が地に落ちることを恐れたためです。彼は政権内に留まることを選び、結果として自身の意見を無効化してしまいました。

記事は、現在の政権内で自身の良心と現実に苦悩しているであろう愛国的な高官たちに対し、歴史からの教訓を提示しています。かつて『ヒルビリー・エレジー』を執筆した頃のヴァンス氏であれば、神と国に仕えるために自己犠牲を厭わなかったブライアンのような高潔な精神を理解できたはずだと、現在の沈黙を皮肉っています。権力の中枢で批判を封じ込めるよりも、自分の良心に従って行動することの重要性を説き、現代の政治における「潔い辞任」の希少さとその道徳的な意義を冷静な筆致で伝えています。

浮沈神話の崩壊

The Iran War Exposes the Emptiness of American 'Strength' in East Asia | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカが数十年にわたり誇示してきた航空・海軍の優位性は、もはや世界の秩序を維持するための有効な手段ではなく、単に高価な見せ物に過ぎないことが露呈しました。2026年のイランとの戦争は、イランの降伏ではなく、アメリカ側の度重なる屈辱とともに幕を閉じ、戦略的景観を決定的に変えてしまいました。アメリカの誇る軍事力は自国の前方基地すら守れず、弾薬の備蓄を使い果たし、ホルムズ海峡の事実上の支配権をテヘランに譲り渡す結果となりました。この教訓は、中国や台湾にとっても極めて重要な意味を持ちます。イランやフーシ派に対してさえ意志を強要できないアメリカが、より強大な中国人民解放軍から台湾を守るという主張には、もはや信憑性がありません。

事実、イランの報復攻撃により、カタールやサウジアラビアなどの中東各地にある米軍基地は使用不能なダメージを受けました。わずか2週間で損害額は数億ドルに達し、多くの死傷者を出したことは、アメリカの「不沈の神話」を打ち砕きました。特に深刻なのは弾薬の問題です。数週間のうちに、パトリオットなどの高性能な迎撃ミサイルの在庫の約4分の1が消費されましたが、これらを補充するには数年の歳月を要します。対照的に、中国はより安価で大量のミサイルを保有しており、台湾有事の際には数日でアメリカの迎撃能力を圧倒することが可能です。ミサイル1発のコスト差を考えても、この戦いはアメリカにとって極めて不利な非対称戦となります。

中国が構築した接近阻止・領域拒否(A2/AD)網は、西太平洋を米海軍にとっての死地へと変えています。中東での経験は、敵対者が移動式の陣地から数百発のミサイルを放つことができる状況下では、前方展開された米軍は抑止力ではなく単なる「標的」になることを証明しました。また、米国の工業基盤の衰退も深刻で、高度な誘導兵器を大規模に継続生産する能力が欠如しています。こうした現実を目の当たりにし、台湾の政治勢力の間でも、アメリカの軍事介入に無条件で依存し続ける戦略はもはや現実的ではないという認識が広がり、対中対話への模索が始まっています。

結局のところ、年間1兆5,000億ドル近くに達する米国の軍事支出は、もはや機能しない抑止力のために費やされていることになります。マサチューセッツ州程度の経済規模しか持たないイランに対してさえ意志を貫けないモデルを、世界最大の海軍と強固な経済を持つ大国に適用しようとすることは、戦略ではなく慢心に過ぎません。帝国的な軍事介入は高価なだけでなく脆弱であり、最終的には自滅的です。米政府が自らの失敗を真摯に受け入れ、外交や経済的な関与を中心とした現実的な道へ転換しない限り、さらに甚大な犠牲を伴う次の破局を避けることはできないでしょう。

憲法と監視社会

American Heresy - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アンドリュー・ナポリターノ判事による最新の論評によれば、アメリカ合衆国憲法の制定者たちが最も重視したのは、政府に邪魔されずに過ごす「放っておいてもらう権利」でした。憲法修正第4条は、政府による不当な捜索や押収を禁じ、国民のプライバシーを保護するために、犯罪の相当な根拠に基づいた裁判所の令状を求めています。ジェームズ・マディソンら起草者たちは、かつてイギリスが秘密裁判所の令状を用いて植民地人の私生活を自由に荒らした歴史を憎み、新国家ではそのような権力の暴走を許さない仕組みを築こうとしました。

しかし現在のアメリカでは、この憲法の精神に真っ向から対立する「アメリカの異端」とも呼ぶべき事態が進行しています。1978年に制定された外国情報監視法(FISA)は、ワシントンに秘密裁判所を設置しましたが、これはマディソンがかつて非難したロンドンの秘密裁判所と酷似しています。特に問題となっているのが同法の第702条です。この規定は、本来は外国人を対象とした無令状の監視を認めるものですが、実際にはその対象は際限なく拡大されています。例えば、海外のホテルに予約の連絡を入れるだけで、本人だけでなく、その家族や知人に至るまで、最大で「6親等」先までの人々が無令状の監視対象になり得るという驚くべき実態があります。

さらに深刻なのは、こうして無令状で収集されたデータが、連邦捜査局(FBI)による刑事訴追のために利用されることを議会が認めている点です。これは憲法修正第4条が定める令状主義を完全に回避する行為であり、歴史と価値観を公然と無視するものです。かつてルイス・ブランダイス判事が述べたように、憲法は単に物理的な家や書類を守るだけでなく、私たちの信念、思想、感情を政府の飽くなき知的好奇心から守るために書かれました。しかし現在の政府は、国民について詳しく知ろうとする一方で、自らの活動については秘密のベールに包んで隠し続けています。

興味深いことに、かつて民間人時代にこの監視ツールの対象となったはずの現大統領までもが、現在は第702条の延長を支持しています。権力の外側にいる時と内側にいる時では、見える景色が大きく異なるようです。この条項は今月末に期限を迎えますが、憲法の核心を根底から揺るがすこの「異端」の動きに対して、私たちは強い警戒感を持つ必要があります。個人の尊厳とプライバシーを犠牲にして成り立つ監視社会は、建国の父たちが理想とした自由な社会とは対極にあるものだからです。

最も不人気な戦争?

The Most Unpopular War in American History? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元米連邦下院議員のジョン・ダンカン・ジュニア氏は、現在のアメリカが直面しているイランとの戦争が、米国の歴史上最も不人気な戦争になりつつあると警鐘を鳴らしています。かつてイラク戦争が始まった際、テネシー州東部では74%もの人々が賛成していましたが、今回のイランとの戦争については、開戦前の支持率が20%から30%台にとどまる調査もありました。真珠湾攻撃後の97%やアフガニスタン侵攻時の92%といった過去の数字と比較しても、国民の支持が極めて低い状態で戦われているのが現状です。

ダンカン氏は、2016年にドナルド・トランプ氏をいち早く支持した理由として、彼が「アメリカ・ファースト」を掲げ、イラク戦争のような不毛な介入を批判していたことを挙げています。しかし、現在のイランとの戦争はアメリカの利益を優先するものではなく、イスラエルのネタニヤフ首相の夢を叶えるための「イスラエル・ファースト」に変貌してしまったと嘆いています。特に庶民の生活に直結するガソリン価格の急騰や、肥料、天然ガスの値上がりは深刻です。もしガソリンが1ガロンあたり5ドルや6ドルにまで達すれば、共和党は選挙で甚大な打撃を被ることになると予測しています。

また、こうした戦争を煽っている勢力として、ネタニヤフ首相に加え、リンゼイ・グラハム議員やメディア関係者の名を挙げ、彼らがトランプ氏の耳に届く場所で好戦的な主張を繰り返していることを批判しています。背景には巨額の献金や、特定の外交アジェンダに忠実なメディアによるプロパティガンダが存在すると指摘しています。かつてトランプ氏が就任演説で語った「戦わないことによる成功」や、軍事予算の大幅な削減といった約束は、現在の1兆5000億ドルという膨大な国防予算案によって裏切られた形となっています。

ダンカン氏は、保守主義の本質は本来こうした無謀な戦争とは無縁であるべきだと述べています。かつてイラク戦争に反対した際、彼は自身の政治家生命が終わるかもしれないと覚悟しましたが、数年後にはその決断が30年の政治キャリアで最も支持される投票となりました。現在のイランとの戦争に対しても、保守派の間でさえ支持が広がっておらず、過激な介入主義への回帰はアメリカにとって大きな過ちであると、自らの経験をもとに冷静に振り返っています。

売られるアルゼンチン

The Writing on the Wall with Milei [LINK]

【海外記事より】レオン・イシドロ氏による記事は、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領が進める政策の背後にある、極めて不穏な実態を告発しています。記事が最も衝撃を持って伝えているのは、2025年に行われたイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見での発表です。ミレイ氏は、アルゼンチンの広大な領土すべてをイスラエル市民の「隠居先」として提供し、補助金を支給するという公的な合意を交わしたとされています。著者はこれを、アルゼンチンとチリにユダヤ人国家を建設するというかつての陰謀論、アンディニア計画が現実のものとなったようだと描写し、国家の主権を売り渡す行為であると厳しく批判しています。

ミレイ氏の政治指針は、著者の目には極めてシンプルかつ冷酷に映ります。第一に、イスラエルの支配層や米国の請負業者にアルゼンチンの豊かな資源を略奪させる門戸を開き、「イスラエル第一、アルゼンチン最後」という政策を推進している点です。第二に、自らを世界で最もシオニストな大統領と称し、テロ対策や反ユダヤ主義対策という名目で、政府に異を唱える国民の市民権を奪う強権的な法律を制定している点です。第三に、自由や平和を掲げる自由至上主義(リバタリアニズム)を隠れ蓑に、実際には他国への従属と戦争を正当化する「トロイの木馬」と化し、運動を内部から腐敗させている点です。

この記事は、ミレイ氏が政治家としてのキャリアの初期から、特定の宗教的・ビジネス的指導者の強い影響下にあったことを指摘しています。彼の精神的アドバイザーとされる人物は現在、イスラエル大使に任命されており、また彼を経済的に支えてきた大富豪は、過激な選民思想を持つとされる宗教団体のメンバーです。こうした人脈を通じ、アルゼンチンの国家益よりも特定の外国勢力の利益が優先される体制が築かれてきました。

資源の面でも、アルゼンチンは屈辱的な状況にあります。イスラエルの国営水利会社が農業の半分を支配し、係争地であるフォークランド諸島周辺の石油資源についても、イスラエル企業がアルゼンチンの権利を無視して開発を進めることを容認しています。さらに、次世代の重要資源であるリチウムについても、イスラエル企業が採掘を独占する体制が整えられています。著者は、ミレイ氏を米国やイスラエルの世界支配を助けるための傀儡に過ぎないと断じ、彼の「自由」のメッセージに欺かれ、大量虐殺や略奪を黙認している自称自由至上主義者たちに対しても、道徳的な自浄を強く求めています。

インフレは見えない税

The Inflation Tax: You're Still Paying for That Covid Stimulus [LINK]

【海外記事より】マイク・マハリー氏が執筆した最新の分析によると、私たちは税務署に支払う直接的な税金以上に重い、「インフレ税」という目に見えない税金を支払い続けています。政府が収入を大幅に上回る支出を行う際、その資金を賄うために借金をしますが、中央銀行である連邦準備理事会(FRB)は、何もないところからお金を作り出して国債を買い入れる量的緩和を行います。この仕組みによって政府は増税を避けつつ資金を手にし、国民に給付金を配ることができますが、その代償として通貨の価値が薄まり、物価の上昇という形で国民がコストを負担することになるのです。

パンデミックの際に配布された巨額の刺激策を例に挙げると、米政府は2020年から2021年にかけて約9300億ドルの給付金を個人に提供しました。その一方で、FRBは資産規模を約5兆ドルも拡大させました。マハリー氏は、当時の「無料の小切手」のツケを、私たちは今まさに支払わされていると指摘しています。インフレの影響は累積的であり、毎月わずかな上昇であっても、積み重なれば個人の購買力を大きく削り取ります。統計によれば、2021年1月から現在までに物価は約23.6%から27.1%上昇しており、わずか5年ほどの間に人々の購買力の約4分の1が失われた計算になります。

さらに深刻なのは、現在の消費者物価指数(CPI)の算出方法が実態を過小評価している可能性です。マハリー氏は、1970年代の計算式を当てはめれば、実際の物価上昇率は公式発表の約2倍、つまり50%に近い水準に達しているはずだと主張しています。賃金もインフレの影響を受けて上昇はしますが、多くの場合、賃金の伸びは物価の上昇に後れを取ります。その結果、多くの消費者は生活水準を維持するために貯蓄を切り崩したり、クレジットカードに頼ったりすることを余儀なくされており、実質的な生活は苦しくなっています。

この状況が物語っているのは、政府が提供する「無料のもの」など存在しないという現実です。直接的な課税であれインフレによる通貨価値の低下であれ、そのコストは必ず国民やその子供たちの世代が負担することになります。政府は5年ごとに通貨の価値を10%以上下落させることを計画しているようなものであり、これに対抗するためには、ゴールドやシルバーといった「本物のお金」で資産を保存することが不可欠だとマハリー氏は説いています。インフレ税が増大する中で、貴金属は不換紙幣システムの脆弱性から個人の富を守る手段として機能するからです。

銀高騰と供給不足

How a Silver Shortage Sparked a Historic Price Rally [LINK]

【海外記事より】マイク・マハリー氏が執筆した最新の記事によると、2025年に起きた銀市場の供給不足が、ついに価格の歴史的な高騰を引き起こしました。銀の価格は2025年末に、1980年代から続いていた1オンスあたり50ドルの抵抗線を突破しました。この勢いは2026年1月まで続き、一時は100ドルを超える水準まで急騰した後、現在は80ドル台で落ち着いています。調査機関のメタルズ・フォーカスは、在庫の減少やロンドンからの現物流出、上場投資信託への資金流入などが重なり、価格やリースレートにとって爆発的な状況が生まれたと分析しています。

2025年の幕開け時点では、銀の価格は28.84ドルにとどまっており、9月になるまで40ドルの大台に乗ることはありませんでした。しかし、金が注目を浴びていた裏側で、銀は着実にその力を蓄えていました。2025年末には71.30ドルに達し、年間の上昇率は最大147%に及びました。当初は金を選んでいた投資家たちも、現物需要の強さや在庫の逼迫、そして銅をはじめとする産業用金属の価格高騰を背景に、次第にその関心を銀へと移していきました。この傾向は、金1オンスを買うのに必要な銀の量を示す金銀比価にも表れており、一時は107対1という歴史的な格差があったものの、銀の急騰により2026年初頭には50対1を切る水準まで急速に縮小しました。

この市場の変化を決定づけたのは、単純明快な「銀の不足」です。銀市場は5年連続の供給不足を記録しています。昨年の需要は供給を4,020万オンス上回り、過去5年間の累計不足額は7億1,600万オンスに達しています。これは世界全体の年間鉱山生産量である8億4,600万オンスに匹敵する驚くべき規模です。かつて地上在庫は積み上がっていましたが、この15年間でその在庫は大幅に削り取られ、需給のバランスは限界に達していました。

2025年の秋には、ついに深刻な流動性不足による「シルバー・スクイーズ」が発生しました。トランプ政権による関税の影響を懸念し、大量の銀がロンドンから米国のシカゴ・マーカンタイル取引所の保管庫へと移動しました。その結果、ロンドンに残された銀の多くが上場投資信託などの裏付け資産として固定され、市場で自由に取引できる在庫は2025年9月末時点でわずか17%にまで低下しました。そこへインドでの需要急増が追い打ちをかけました。現物を確保するためのプレミアム価格が跳ね上がり、リースレートは200%を超えるという、市場の歪みを象徴する事態となりました。

現在はロンドンの保管庫に現物が戻り、一時的に緊張は緩和されていますが、根本的な構造は変わっていません。メタルズ・フォーカスは、市場は在庫が少ない時代に突入したと指摘しています。法定通貨のように増刷することのできない銀において、今後も供給不足が続く限り、流動性は低く、価格の変動幅は従来よりも大きくなる可能性が高いと考えられます。かつての落ち着いた市場環境にすぐ戻ることは考えにくく、銀市場は新しい局面を迎えているようです。

フォートノックスの不祥事?

Fort Knox Gold Scandal? [LINK]

【海外記事より】アメリカの金融的信頼を支えているとされる金準備の実態について、マネー・メタルズ・ミッドウィーク・メモのマイク・マハリー氏が興味深い分析を報告しています。マハリー氏が提起した主要な問題の一つは、アメリカが保有する金準備の多くが、現代の国際基準を満たさない低品質なものである可能性が高いという点です。金はすべて同じ価値を持つわけではなく、投資用として通用する純度には厳格な基準が存在します。宝飾品に使われる22金や14金とは異なり、国際的な決済に用いられる金塊には高い純度が求められます。

公式記録では、アメリカは世界最大となる8133.5トンの金準備を保有しており、その多くはケンタッキー州のフォートノックスなどに保管されています。しかし、マハリー氏が2011年の議会公聴会資料を基に指摘したところによれば、フォートノックスに保管されている金塊のうち、現代の国際取引基準である純度99.5%以上を満たしているものは、わずか17%に過ぎません。残りの大部分は純度約90%程度の「コイン・ゴールド」と呼ばれるものであり、これらはかつて流通していた金貨を溶かして固めたものだとされています。

この歴史的背景には、1933年に当時のルーズベルト大統領が出した大統領令が深く関わっています。この命令により、アメリカ国民は個人所有の金を政府に引き渡すことを強制されました。回収された金貨はバーに鋳造されましたが、当時の金貨の純度が低かったため、現在の金準備もその品質を引き継いでいるのです。マハリー氏は、これらの金が精製されない限り、現代の国際決済において即座に使用することは難しく、流動性に欠けると主張しています。また、1970年代以降、適切な会計監査が行われていないことも透明性の面で大きな課題であると訴えています。

一方で、マハリー氏は銀市場の供給不足についても言及しています。銀の供給の約70%は銅などの採掘過程で副産物として生産されますが、現在、中国が銅の生産に不可欠な硫酸の輸出を制限する動きを見せています。これにより、世界最大の銅生産国であるチリなどで生産が停滞すれば、銀の供給はさらに減少することになります。銀の需要は6年連続で供給を上回る見通しであり、ロンドンやニューヨークなどの主要な在庫も数年で大幅に減少しています。マハリー氏は、米ドルのような法定通貨はいくらでも増刷できますが、金や銀を印刷することはできないと述べ、物理的な貴金属の重要性が高まっていることを示唆しています。

2026-04-16

スタグフレーションの嵐

Orange Jesus, the Dual SOH Blockade and the Stagflation Ahead - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が進める経済政策とイランへの強硬姿勢が、世界経済の根幹を揺るがす深刻な事態を招こうとしています。現在、世界のエネルギー供給の要であるホルムズ海峡では、事実上の二重封鎖が発生しています。一つは、アメリカやイスラエルに友好的な船舶に対し、イラン側が通行を阻止したり高額な通行料を要求したりしていること。そしてもう一つは、アメリカ海軍がイランから中国やインドへ向かう残りの原油出荷を阻止しようとしていることです。この二つの動きが重なることで、本来なら一日あたり2,400万バレル相当の原油や天然ガス、肥料などが通過するこの海峡の機能が完全に停止する恐れが出てきました。

代わりの輸送ルートも困難を極めます。紅海を経由するルートはフーシ派による脅威にさらされており、仮にアフリカの喜望峰を回るルートを選択すれば、日本への航海距離は11,200海里に達し、45日以上の時間を要することになります。エネルギー資源は短期的には需要の弾力性が乏しいため、供給が止まれば価格は2倍から4倍へと跳ね上がるでしょう。これは経済学で言うところの需要破壊、つまり急激な景気後退を意味します。工場の閉鎖や解雇による通勤の減少、レジャー消費の抑制が避けられず、アメリカ経済は物価高騰と不況が同時に進むスタグフレーションの波に飲み込まれようとしています。

アメリカ国内の経済指標も、すでに不穏な動きを見せています。2026年3月までの1年間の連邦財政赤字は1.6兆ドルに達し、今後の軍事費増大や景気後退による税収減で、赤字額はさらに拡大する見通しです。また、雇用情勢も見た目の数字ほど良くはありません。2024年12月以降の就業者数の伸びは月平均2.1万人にとどまり、労働年齢人口の増加に追いついていません。さらに詳しく見ると、政府が資金を出す教育や医療分野以外では、実際には50万件以上の雇用が失われているのが実態です。民間部門の雇用は、トランプ政権の2期目が始まってからの15ヶ月間で、月平均2.1万件のペースで減少を続けています。

物価面では、家庭用燃料やガソリン、電気代などのエネルギー関連がすでに大幅な上昇を記録しており、サービス価格のインフレも高止まりしています。これにホルムズ海峡の封鎖による供給ショックが加われば、製品価格の上昇率は2桁台に達する可能性があります。アメリカの消費者の間では、将来のインフレに対する懸念が過去56年間で最高水準に達しており、現政権がもたらしたスタグフレーションの嵐は、政治的にも大きな打撃を与えることになるでしょう。巨額の債務と投機に依存してきた経済に、自ら火を放つような政策が続けられていると、記事の著者は警鐘を鳴らしています。

トランプ氏、台湾に冷淡

Why Trump Turned Chilly Toward Taiwan - The American Conservative [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領の二期目において、アメリカと台湾の安保協力はさらに強化されるとの見方が大勢を占めていましたが、実際にはトランプ政権は台湾に対して予想外に冷淡な姿勢を見せ始めています。トランプ氏は選挙中から、台湾がアメリカの安全保障に「ただ乗り」していると批判し、さらに台湾の不公平な貿易慣行が米企業に損害を与えているとも主張してきました。こうした態度の変化の背景には、対イラン戦争が激化する中で、アメリカが中国との決定的な対立を避けたいという切実な事情があります。

トランプ氏は現在、対中関係をイデオロギー的な対立ではなく、ビジネス的な「ディール(取引)」として捉えています。レアアースの確保やフェンタニルの流入阻止といった米国の核心的利益を守るためには、中国との実務的な対話が不可欠であると認識しているのです。こうした取引重視の外交スタイルにとって、中国が自国領土と主張する台湾の防衛は、必ずしも最優先事項とは言えなくなっています。ジョン・ボルトン氏ら親台湾派の強硬派からは、トランプ氏が台湾を中国のなすがままに「見捨てる」のではないかという懸念の声が上がっています。

台湾の頼清徳政権は、アメリカの覇権を支持する姿勢を示し、徴兵制の延長や国防予算の増額など、一定の努力は見せています。しかし、それらの措置もトランプ政権が求める水準には達しておらず、中国の侵攻を自力で退けるには不十分だと見なされています。こうした不満を背景に、トランプ氏は昨年12月の習近平国家主席との会談後、「自分の任期中は中国が台湾に軍事行動を起こさないという約束を取り付けた」と誇示しました。さらに今年2月には、台湾への武器売却計画を縮小する可能性を示唆し、台湾側に大きな衝撃を与えています。

中国側はこの機を逃さず、アメリカと台湾の足並みの乱れを利用しようとしています。習近平国家主席は、台湾の野党・国民党の指導者を中国に招待するなど、対立を煽る頼政権を飛び越えて、経済的・文化的な宥和策を提示する動きを見せています。トランプ政権は現在、自ら開始した対イラン戦争に忙殺されており、世界的なエネルギー市場の混乱や原油価格の高騰に直面しています。ワシントンにとって、今この時期に台湾海峡で危機が発生することは最も避けたい事態であり、台湾情勢は対中取引の材料へと変質しつつあります。

インドの沈黙

Modi's Silence: How India Submits to Washington Taking Everything - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】インドのモディ政権が、アメリカの圧力に屈して自国の国益を次々と放棄している実情を、調査ジャーナリストのピーター・フリードリヒ氏が鋭く批判しています。3月初旬、インドが主催した多国間海上演習に参加した直後のイラン軍艦が、インド洋上で米潜水艦に撃沈されました。さらに、インドが10年の歳月と1億2000万ドルを投じて建設したイランのチャバハール港周辺も、米イスラエル軍による爆撃作戦「壮絶な怒り」の標的となりました。しかし、自国の投資先や招待客が攻撃されたにもかかわらず、インド政府は抗議の声を一切上げていません。

かつてインドは、ネルー首相のもとで「非同盟運動」を提唱し、冷戦下でもどの陣営にも属さない独自の外交を展開してきました。しかし、2014年にモディ氏が就任して以来、インドは自らをアメリカの「自然な同盟国」と呼び、外交の軸足をワシントンへと急速に移しています。モディ氏は国内向けには「自立したインド」を強調していますが、対外的には、アメリカの制裁要請に応じてイランやベネズエラからの石油輸入をゼロにし、ロシア産原油の購入についてもアメリカから関税による脅しを受けて削減するなど、追従姿勢を強めています。

こうした「卑屈な服従」の結果、インドは甚大な損失を被っています。アメリカの制裁圧力に屈してチャバハール港の運営を断念したことで、パキスタンを経由せずに中央アジアへ通じる唯一の貿易ルートを失いました。また、20年前のアメリカとの原子力協定では、インド側が核実験の制限や査察を受け入れたものの、アメリカ企業による原子炉建設は未だに一基も実現していません。防衛面でも、ロシアから防空システムを購入する際にアメリカの制裁対象になりかけ、議会で免除を得るためにロビー活動を強いられるなど、主権を侵害される事態が続いています。

フリードリヒ氏は、現在のインドの姿勢は「戦略的自律」ではなく「戦略的依存」であると指摘しています。同じBRICSの創設メンバーであるロシア、中国、ブラジルが対イラン攻撃を非難する中で、インドだけが沈黙を守っています。この沈黙は、アメリカによるインド周辺海域での軍事行動を事実上容認するものであり、周辺諸国に対しても「経済的な強迫が通用する国」という印象を与えています。かつては独自の判断で大国と渡り合ったインドが、今やモディ氏のもとで、ワシントンの利益のために自国の戦略的資産を切り捨て続けている姿を浮き彫りにしています。

ハンガリー政権交代の背景

Autocrat Ousted; Congratulates Victorious Opponent | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】ハンガリーで16年間にわたり政権を維持してきたヴィクトル・オルバン首相が、先週土曜日の総選挙で敗北を認め、退陣することになりました。今回の選挙では、ペーテル・マジャール氏率いる「ティサ党」が議会の3分の2を占める圧倒的な議席を獲得し、歴史的な勝利を収めました。投票率は79.5%という驚異的な数字を記録し、これまで政治に無関心だった層が変化を求めて動いた結果と言えます。独裁的とも評されたオルバン氏ですが、敗北を直ちに認め、対立候補に祝辞を送った姿は、民主主義のルールに従う姿勢を示すものでした。

新首相となるマジャール氏は、もともとオルバン氏の与党内部に20年以上在籍していた人物ですが、政権内の不祥事を告発して決別した経緯があります。しかし、彼が親欧州連合(EU)的なリベラル派に転向したと考えるのは早計です。彼は汚職の撲滅や経済再生を掲げていますが、LGBT問題や移民政策については、EUの主流派とは一線を画す保守的な立場を維持しています。ウクライナ支援についても、武器供与や兵力の派遣は行わない方針であり、ロシアとのエネルギー関係も「地理的・経済的な現実」を重視して、すぐには断絶しない考えを明示しています。

オルバン氏の敗因は、思想的な対立というよりも、経済的な行き詰まりにありました。16年間の長期政権下で、特権階級は富を築きましたが、一般国民の生活水準は停滞し、汚職が無視できないレベルに達していました。国民は、アイデンティティを巡る文化闘争よりも、食費を払えるかという現実的な問題を突きつけたのです。オルバン氏が負けたのは、ハンガリーがリベラル化したからではなく、経済を機能させられなくなり、腐敗したシステムが国民に愛想を尽かされたからです。

この政権交代により、プーチン大統領はEU内での最も信頼できる協力者を失うことになります。また、オルバン氏を称賛してきたトランプ氏にとっても打撃となるでしょう。一方で、EUにとっては対話が可能な相手を得たことになりますが、マジャール氏もまた、国益を優先する「有能な保守主義者」であり、すべてにおいてEUに従順なわけではありません。マジャール氏が期待に応え、汚職を排除して国民の生活を向上させられるか。ハンガリー・モデルが真の意味で再始動できるかどうかが、今後の焦点となります。

憲法が死んだ日

The Constitution Died in Korea | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカ合衆国憲法において、宣戦布告の権限が議会にあることは、第1条第8節に明記されており、疑いようのない事実です。建国の父たちは、一人の指導者が独断で国民を異国の戦場へ送り出すことの危険性を深く理解していました。しかし、この憲法の原則は1950年に「死亡」したと言わざるを得ません。ハリー・トルーマン大統領が議会の承認を得ずに、国連の権限に基づく「警察行動」と称して朝鮮戦争へ軍を派遣したことが、その後の大統領たちが乱用することになる悪しき前例となったからです。

それ以来、ベトナム戦争、グレナダ、パナマ、リビア、そして近年のシリアに至るまで、歴代の大統領は議会を事実上無視して軍事介入を繰り返してきました。現在進行中のベネズエラやイランでの軍事行動も、この憲法浸食の延長線上にあります。ベネズエラの大統領拘束や、イランへの大規模な爆撃作戦「壮絶な怒り」は、議会の承認なしに執行権の独断で進められました。ランド・ポール上院議員やトーマス・マッシー下院議員らは、議会の責任を取り戻すべく戦争権限決議案を提出してきましたが、多くの議員は自らの最も重い責任を放棄し続けています。

憲法学者のルイ・フィッシャー氏は、1789年から1950年までは憲法の設計通り「平時から戦時への移行権限は議会にある」という認識が三権の間で共有されていたと指摘しています。しかし、現在のアメリカ外交は国家利益の定義から切り離され、本国自体の安全を疎かにしながら、世界中で敵と責務を増やし続けています。建国者たちが意図した本来の姿は、他国との平和な通商を維持し、どの国とも「紛糾を招く同盟」を結ばないことでした。

共和国から帝国への変貌は一晩で起きたことではありません。それは前例の積み重ねと、議会の無責任な態度の結果です。現在のイラン戦争は、巨額の財政負担と人命の犠牲を強いていますが、その戦略的根拠は不透明なままです。今こそ国民は、憲法が議会に与えた最も重大な権限を回復させるよう、代表者に求めるべきです。他国の政権交代や経済戦に奔走するのではなく、自国の国境を守り、崩壊するインフラに目を向ける、本来の憲法に基づいた外交政策への回帰が求められています。

大統領の戦争犯罪

Trump Flirts With War Crimes | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカのドナルド・トランプ大統領が、イランとの戦争において「戦争犯罪」に抵触しかねない言動を繰り返しているとして、憲法学者のウィリアム・ワトキンス・ジュニア氏が批判を展開しています。パキスタンの仲介によって実現した14日間の停戦は、トランプ大統領にとって、自身の二期目における最大の失策から抜け出す絶好の機会です。しかし大統領は、この停戦を外交の成果としてではなく、自らがSNSで行った「文明を完全に破壊する」といった軍事的な脅迫の成果であると誤認している節があります。

トランプ大統領は、自らの要求が拒否された場合、イランの発電所や石油施設、海水淡水化施設を破壊すると公言しています。しかし、こうした民間人の生活に直結するインフラを標的にすることは、国際人道法の根幹である「区別の原則」に明確に違反します。ジュネーブ諸条約の追加議定書では、軍事目標と民間の対象物を常に区別し、軍事目標以外への攻撃を禁じています。また、民間人に恐怖を与えることを主目的とした脅迫も禁止されており、大統領の投稿は、国際法上の刑事責任を問われかねない「戦争犯罪の予備的自白」とも言える内容になっています。

トランプ大統領側は、インフラ破壊には軍事的な利益があるとして「比例性の原則」に基づき正当化を図るかもしれませんが、兵士が電気を使い水を飲むからといって、国全体の生命線を破壊することが許されるわけではありません。さらに、大統領が攻撃の理由として掲げる「過去47年間の報復」という主張も、国際法では厳格に禁じられている「民間人に対する報復」にあたります。これらは共和国の指導者としてはあるまじき「野蛮な行為」の概要であると筆者は指摘しています。

もし停戦が恒久的な和平に至らず、トランプ大統領が民間インフラへの攻撃を強行すれば、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出される可能性があります。そうなれば、大統領は米国外への渡航が事実上不可能になり、愛好するアイルランドでのゴルフ旅行さえ叶わなくなるでしょう。国内で行われている他の法的追及とは異なり、国際法違反については大統領自身の言葉がそのまま証拠となり、国際社会における孤立を深めることになると警鐘を鳴らしています。

危うい出口戦略

Is Donald Trump Trying to Create a Nuclear Narrative as his Escape ramp from the War with Iran? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏は、トランプ大統領が対イラン戦争から撤退するために、特定の「ナラティブ(物語)」を構築しようとしている可能性を指摘しています。現在、トランプ政権とその周辺メディアは、アメリカがイランの軍事能力を壊滅させ、核プログラムを粉砕し、経済を破綻させたという情報を流布していますが、ジョンソン氏はこれらを事実に基づかない「プロパガンダ」であると分析しています。トランプ氏がこうした主張を繰り返す真の意図は、自らの支持率低下やMAGA層からの批判を背景に、勝利を宣言して戦争を終わらせるための「出口戦略」にあるのではないかという見方です。

最近の報道によると、トランプ氏は対イラン戦争が「終結に近づいている」と述べ、その正当性を「イランの核武装を阻止するためだった」という一点に集約し始めています。かつて語られていた「体制転換」などの目的は影を潜め、焦点は核問題へと移っています。ダニー・デイビス退役陸軍中佐が提唱する説によれば、トランプ氏は停戦期間が終了した直後に大規模な空爆を行い、その直後に「敵の軍事拠点と核施設は完全に破壊された」と勝利宣言をして、そのまま撤退を図るというシナリオが推測されています。

一方で、アメリカ政府側はホルムズ海峡外側での海上封鎖が劇的な成果を上げ、イラン経済を屈服させつつあるという主張を展開しています。封鎖によってイランの通貨は暴落し、ハイパーインフレに直面しており、抵抗を続けることは経済的に不可能であるという分析がホワイトハウス内で支持されているようです。しかし、ジョンソン氏はこの封鎖の効果についても、特に中国向けの船舶などを阻止しようとすれば、さらなる大規模な戦争に発展する危険性をはらんだ、非常に危ういものであると批判的に見ています。

今後の焦点は、4月20日に期限を迎える停戦期間後の動向です。イラン側には交渉再開の具体的な兆候は見られず、レバノンのヒズボラを巡る問題など、イスラエルとの関係も複雑に絡み合っています。トランプ氏が実際に「核プログラムの消滅」を大義名分として一方的に勝利を宣言し、撤退を強行するのか、あるいは再び軍事的な緊張が高まるのか。石油市場は戦争の終結を予測して動いていますが、筆者はそれを楽観的すぎると見ており、トランプ氏が次にどのような行動に出るかが最大の不確定要素であると結んでいます。

ヒンドゥー至上主義の影

The Imitation Game: With Zionist Help, Hindutva Ideology Rises in America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカ国内において、インドのヒンドゥー至上主義(ヒンドゥートヴァ)が、ユダヤ・シオニズムの政治手法を模倣し、それらと連携することで急速に影響力を拡大している実態を、ジャーナリストのマット・ウォルフソン氏が報告しています。かつてインド人を「第三世界の侵略者」と批判していた右派活動家のローラ・ルーマー氏が、最近では一転して「ヒンドゥー教徒の擁護者」を自称するようになりました。この背後には、ヒンドゥー至上主義のイデオローグであるラジブ・マルホトラ氏による戦略的な働きかけがあったとされています。

こうした動きは、単なる個人の変節ではなく、アメリカにおけるインド系コミュニティの富裕層が、シオニズム団体が過去40年間にわたって築き上げた「特定の外国の利益を米政府に反映させる手法」を組織的に取り入れていることを示唆しています。具体的には、ハイテク産業や金融業界からの巨額の献金、慈善団体や非営利組織を通じたロビー活動、そして政治家への影響力行使です。例えば、民主党のラジャ・クリシュナムルティ下院議員のような政治家は、インドのモディ政権に近い富裕層から多額の資金提供を受けており、その支持基盤にはヒンドゥー至上主義を掲げる有力者が名を連ねています。

ヒンドゥー至上主義者とシオニストの「共鳴」は、イスラム教に対する共通の敵対心や、技術的優位性による近代化への執着に基づいています。両者は「モデル・マイノリティ」としての成功を誇示し、自国への無条件の尊敬を求めない同胞を批判する点でも共通しています。カリフォルニア州で可決されたカースト差別禁止法案に対し、有力な寄付者が政治家へ圧力をかけて知事に拒否権を行使させた事例は、このコミュニティの政治力が、もはや単なるマイノリティの枠を超え、州政府の意思決定を左右する段階に達していることを物語っています。

現在、アメリカの外交政策においても、対中包囲網の一環としてインドとの協力が優先されていますが、それは同時にモディ政権による国内のイスラム教徒弾圧を黙認することにも繋がっています。ウォルフソン氏は、このように外国のイデオロギーがアメリカの政治や文化に浸透し、特定の勢力が「不可侵の権威」を握りつつある現状に対し、主流メディアの報道が極めて少ないことに警鐘を鳴らしています。最終的に、これらの勢力による覇権的な動きは、アメリカの共和制の精神や憲法的価値観を形骸化させる恐れがあると結んでいます。

ネオコン系シンクタンクの世論工作

Think the Iran war is a disaster? Blame these DC think tanks first. | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事より】アメリカとイスラエルによる対イラン戦争が、最終的に失敗であったと評価されることになった場合、その責任の一端は、開戦前の8カ月間にわたって軍事行動を一貫して推進した、ワシントンの5つの親イスラエル系シンクタンクに帰せられるかもしれません。主要な4つの人工知能(AI)プログラムを用いた分析によると、2025年6月の「12日間戦争」から2026年2月28日の開戦までの期間、対イラン軍事行動の推進において最も顕著な役割を果たした組織として、民主主義防衛基金(FDD)、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)、ハドソン研究所、ワシントン近東政策研究所(WINEP)の4団体が、すべてのAIモデルで上位6位以内にランクインしました。また、保守系のヘリテージ財団についても、4つのAIのうち3つがトップ6に含めています。

興味深い事実に、これら5つの組織は、23年前のイラク侵攻を推進した際にも主導的な役割を果たしていたことが、ジェミニやチャットGPTといったすべてのプラットフォームによって指摘されています。特にFDD、AEI、ハドソン研究所、WINEPの4団体は、イスラエルへの支持を世界観の中心に据える新保守主義(ネオコン)の陣営に属しています。中でも全AIモデルで首位となったFDDは、設立当初から北米におけるイスラエルのイメージ向上を目的の一つに掲げていました。一方、ヘリテージ財団は「アメリカ・ファースト」を掲げていますが、イスラエルとの関係を単なる特別な関係から「戦略的パートナーシップ」へと格上げすることを提唱してきました。

これらの組織の専門家たちは、イランの核開発やミサイルがイスラエルとアメリカの本土にとって容認できない脅威であることや、イランが依然として世界最大のテロ支援国家であることを繰り返し主張しました。彼らは議会の証言や主要メディアの寄稿、テレビやラジオ、SNSなどを通じて、軍事行動の必要性をエリート層や公衆に浸透させるための組織的な世論工作を行いました。こうした議論は、イスラエルのネタニヤフ首相や、アメリカ議会の親イスラエル派議員たちが主張する内容と一致していました。AIの分析によれば、これらのネットワークは過去4半世紀にわたって、人員やイデオロギーの面で驚くべき継続性を保っています。

2003年のイラク戦争時、イラク侵攻を主導したリチャード・パール氏などの人物は、FDDやWINEP、ハドソン研究所など複数の組織に深く関与していました。イラク戦争が泥沼化し、かつてのネオコン勢力が一時的に表舞台から退いた後も、FDDがそのネットワークを引き継ぐ形で、イランへの焦点を絞った新たな推進母体となったことが指摘されています。AIプログラムの一つであるグロックは、同じネットワークが20年の時を経て、再び同様の軍事キャンペーンを展開したと分析しています。このように、ワシントンのシンクタンクが形成する言論の「エコーチェンバー(共鳴室)」が、メディアを通じて国民を戦争容認へと導く役割を再び果たしたことが浮き彫りになっています。

イラン戦争後に待つもの

https://www.myrmikan.com/pub/Myrmikan_Research_2026_04_13.pdf [LINK]

【海外記事より】アメリカの投資顧問会社、ミルミカン・キャピタルが発表したレポートの内容をご紹介します。同レポートによると、3月の金市場では中東情勢の緊迫化を背景に大きな価格調整が起こりました。金の価格は3月2日の1オンスあたり5,420ドルという高値から、3月23日には4,099ドルまで、わずか3週間で24.4%も下落しました。この背景には、安全資産としてのドル買いや、原油高に伴うドル需要の急増、インフレ懸念による連邦準備制度、いわゆるFedの引き締め期待など、流動性に関連する10の要因が挙げられています。しかし、レポートの著者であるダニエル・オリバー氏は、これらはあくまで流動性の問題であり、戦争によって確実に高まっている金そのものの価値を反映したものではないと指摘しています。

現在のアメリカ国内では、イランに対する軍事行動をめぐって意見が二分されています。政府主流派は、この戦略を現実政治に基づく成功と捉えています。たとえ体制崩壊に至らなくても、イランの軍事能力を削ぎ、ホルムズ海峡の封鎖によってエネルギー価格が上昇することは、アメリカの生産者に利益をもたらすと考えているからです。また、これによってエネルギーを依存する日本や欧州、韓国を経済的に従属させ、アメリカの利益に資するという冷徹な戦略が透けて見えます。トランプ政権は、他国への補助をやめ、自国の利益のみを追求するアメリカ第一主義を鮮明にしています。中東の紛争が終結すれば石油供給は再開されるものの、対立する国々には厳しいエネルギー価格を強いることで、世界を「味方か敵か」に分断しようとしています。一方で、トランプ氏の支持者の一部からは、この紛争は公約違反であり、経済崩壊を遅らせるための絶望的な軍事行動だとの批判も上がっています。

レポートは、こうした政治的な対立を超えて、深刻な債務問題に注目しています。アメリカの公的債務は2026年時点で40兆ドルに達しており、民間を含む総債務は120兆ドルを超えています。これまで多くの個人や企業が、ドルの価値低下を見越して借金を重ねてきました。現在、エネルギー価格の上昇によって企業の経営が圧迫される中、プライベート・クレジットの世界では投資家からの解約が相次ぎ、アポロやブラックロックといった大手でも払い戻しを制限する動きが出ています。このままではFedは、インフレが進んでいる状況であっても、金融システムを救済するために利下げと資金供給を行わざるを得ない状況に追い込まれると予測されています。

このような混乱の中、金鉱株も流動性不足から20%下落しましたが、今後は各地域のエネルギー事情によって選別が進む見通しです。例えば、燃料を輸入に頼るオーストラリアの鉱山などは操業停止のリスクがありますが、エネルギー資源が豊富な北米や中南米のプロジェクトは相対的に有利になると考えられています。レポートは、世界が経済圏ごとに分断され、インフレが深刻化する中で、中立的な資産としての金の必要性は今後さらに高まっていくと締めくくっています。たとえイラン情勢がどのような結果になろうとも、膨大な債務を抱える金融システムを支えるための通貨発行は避けられず、金はそうした先行きの不透明さを真っ先に反映する動きを見せるだろうと分析しています。

2026-04-15

イスラエルの野望を止める

Ending Israel's War on Peace - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの戦争は2週間の停戦を迎えましたが、この戦争は外交官が午後のひとときで解決できたはずの内容以外、何ら成果を上げませんでした。経済学者のジェフリー・サックス氏らは、この紛争の本質が「平和への戦争」ではなく、イスラエルの野望にアメリカが引きずり込まれた結果であると分析しています。イスラエルはイラン政権を打倒して中東の覇権を握るため、トランプ大統領に「一日で終わる斬首作戦」という甘い見通しを売り込みました。トランプ氏はイランの石油利権に目を奪われ、その提案に乗りましたが、実際にはイランの抵抗を抑えられず、結局はパキスタンを介して自ら停戦を乞う立場に追い込まれました。

停戦の基礎となったのは、イランが提示した「10項目プラン」です。これは中東全域の戦争終結や核問題の解決を目指す妥当な内容ですが、同時にアメリカにとっては大きな譲歩を意味し、イスラエルにとっては到底受け入れがたいレッドラインとなっています。現在の紛争の根源には、イスラエルが、主権を持つパレスチナ国家の樹立に断固反対し、自国の国境を際限なく拡大しようとする「大イスラエル主義」があります。ネタニヤフ首相やその盟友である右派勢力は、パレスチナ全土のみならず、レバノンやシリアの一部までも支配下に置こうと考えており、その障害となる周辺国の政権交代を画策し続けてきました。

サックス氏は、イスラエルがこの停戦を壊そうと画策していると警告します。実際にベイルートへの無差別爆撃などはその兆候であり、イランとアメリカの恒久的な合意は、イスラエルの覇権主義的な夢を終わらせるものだからです。アメリカ政府内では、キリスト教シオニストや一部の実業家たちが、聖書の約束を引用してイスラエルの領土拡大を後押ししていますが、こうした非現実的な信念がホワイトハウスの政策に影響を与えている現状は極めて深刻です。一方で、アメリカ国民の意識は変化しており、最新の調査では大多数のユダヤ系アメリカ人がネタニヤフ首相を信頼せず、二つの国家の共存を支持しています。イスラエルへの好感度は史上最低水準に達しており、政治家たちの認識と国民の感情には大きな乖離が生じています。

中東に真の平和をもたらす唯一の道は、アメリカが現実を直視し、イスラエルに対して出してきた「白紙委任状」を撤回することです。世界が支持する1967年当時の国境線に基づき、イスラエルに国際法を遵守させ、パレスチナ国家の存在を認めるよう圧力をかける必要があります。イランの提案はこの包括的な和平の基盤になり得るものであり、アメリカがイスラエルによる平和の破壊を許さず、自国と世界の利益のために立ち上がるかどうかが問われています。停戦という壊れやすい機会を逃さず、長きにわたる紛争に終止符を打てるかは、これからの交渉次第です。

衰退する帝国

A Few More Conquests Like This, and the Empire Will Be Done For! - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカ帝国がその終焉に向かって、最後あがきのような「征服」を繰り返していると、元空軍中佐のカレン・クウィアトコウスキ氏が痛烈に批判しています。トランプ大統領は4月8日、SNS上で「わが軍は次の征服を楽しみにしている。アメリカが帰ってきた!」と宣言しましたが、著者はこれを、凋落する帝国による虚勢に満ちた、不道徳な帝国主義の表れであると断じています。トランプ氏は自身の不当な軍事介入を正当化するために、かつてのモンロー主義を皮肉った独自のドクトリンを掲げ、宣戦布告もなく8カ月間で8カ国を爆撃するなど、歯止めの利かない権力の行使を続けています。

著者は、現代のアメリカを「衰退する帝国」と呼び、ワシントンの政治家やニューヨークの銀行家たちが進める帝国主義のツケを、一般のアメリカ国民が支払わされている現状を告発しています。膨れ上がる国防予算と連邦債務、そして過去の借金に対する利払いによって、国民は止まらないインフレや生活の質の低下、自由の剥奪に苦しんでいます。かつてトランプ氏は「戦争を終わらせ、兵士を帰還させ、自国を第一に考える」と約束しましたが、現実にはさらなる軍事支出と新たな侵略戦争に資源を投じています。このような、ナショナリズムを煽り行政権力にすべての力を集中させる手法は、かつてのイタリアやドイツでファシズムが台頭した際の構図と酷似しています。

さらに深刻なのは、かつてのファシズムがカロリー制限などのアナログな手段で国民を管理していたのに対し、現代のアメリカはテクノロジーやAI、データネットワークを駆使して、国家に都合の良い物語を捏造し、国民を監視・管理している点です。正当な手続きもなく他国の命や財産を奪う軍事行動は、合衆国憲法修正第5条が保障する個人の権利を著しく侵害するものですが、ワシントンのエリート層は憲法をすでに「時代遅れ」で「無意味」なものと見なしています。トランプ氏もまた、複雑な情報の代わりに派手な図表や映像のみを好む「イディオクラシー(愚民政治)」を体現する存在として描かれています。

現在、アメリカという「債務と戦争の国」は、もはや世界から尊敬されることも、恐れられることもなくなりました。軍事的な支配力は傲慢さと嘘によって切り裂かれ、その経済力もいまや幻想に過ぎません。しかし、著者は一つの希望を見出しています。それは、多くの国民が精神的な進化を遂げ、現行の権力構造や腐敗した政治階級から静かに支持を撤回し始めていることです。トランプ氏が叫ぶ「次の征服」は、アメリカが国家としての根本に立ち返るための、最後の一撃となるのかもしれません。帝国としての虚飾が剥がれ落ちた先に、新たな変革の時が近づいています。

邪悪な封鎖戦略

Annihilating Iranian Civilization with a Blockade - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領とアメリカの国家安全保障機関は、爆弾による攻撃の脅しに続き、今度は「封鎖」という手段でイラン文明を壊滅させようとしています。未来自由財団のジェイコブ・ホーンバーガー氏は、この封鎖が爆撃と同様の「戦争行為」であると指摘します。中間選挙を控える中、ガソリン価格の高騰を招いたイランによるホルムズ海峡支配に対抗するため、米政府は自らも海峡を通過する石油を遮断するという、皮肉な戦略に出ました。

当初、国防総省は軍事力による海峡の再開を検討していましたが、最終的にはイランの港を利用する船舶のみを停止・押収する修正案を採用しました。これは、イランが海峡通過の通行料を得ることを防ぎ、経済的に窒息させることを目的としています。この手法は、ベネズエラやキューバで行われてきた、経済制裁によって国民を飢餓に追い込み、政権交代を迫る手法と同じです。米政府は、国民が飢餓の恐怖に直面すれば、イラン当局が中間選挙前に無条件降伏すると踏んでいます。

著者は、この戦略を「極めて狡猾である」と批判します。なぜなら、多くのアメリカ人は「文明が今夜死ぬ」といった爆撃の脅しには敏感ですが、制裁や封鎖による死には冷淡だからです。制裁は「平和的な外交ツール」として日常化されていますが、その実態は、政治的目的のために罪のない一般市民を困窮させ、病気や飢えで死に追いやるテロリストと変わらない邪悪な行為です。かつて1990年代に、当時の国連大使がイラクの子供50万人の死を「その価値がある」と断言した際、多くのアメリカ人は無関心でした。

こうした冷淡さは、アメリカが国家安全保障国家へと変質し、介入主義を深めてきた結果であると著者は説きます。人々は、ロシアやテロリストといったあらゆるものへの恐怖を植え付けられ、本来神に属するものであるはずの「自らの良心」を国家というカエサルに差し出してしまいました。国家が爆弾ではなく、制裁や封鎖という手段で他国の文明を滅ぼすことも、等しく邪悪な行為です。著者は、国民が良心を取り戻し、政府の行いに対して真剣な自省を行うことが、国を正しい軌道に戻すために不可欠であると訴えています。

失われた家庭の豊かさ

Tucker, A Half-Century of Household Income [LINK]

【海外記事より】アメリカの家庭における豊かさの実態について、エポックタイムズ紙でジェフリー・タッカー氏が鋭い分析を行っています。タッカー氏は、過去50年間のデータを遡り、現代の家庭がいかに「共働きの罠」に陥っているかを明らかにしました。一見すると、世帯年収の数字は数十年前に比べて上昇し、私たちはポケットに高性能な端末を忍ばせ、音声で照明を操るような便利な生活を手に入れたように見えます。しかし、その表面的な豊かさの裏側で、医療費は支払えないほど高騰し、住宅購入は夢のまた夢となり、実質的な収入は伸び悩んでいます。

タッカー氏は、経済学者が個人の所得や世帯年収の数字だけを見て、その収入を得るために費やされた「労働時間」を考慮していない点を批判しています。1950年代、アメリカの母親の約80%は家庭にいて、父親一人の収入だけで中流階級の生活を送ることが十分に可能でした。当時のテレビ番組が描いたような、庭付きの家と二台の車、そして家族の平穏な週末という光景は、一人の稼ぎ手によって支えられていたのです。しかし、1970年代のインフレを境に状況は一変しました。生活水準を維持するために母親たちが労働市場へ出始め、1985年には60%、現在では65%もの家庭が二馬力で家計を支えるようになっています。

この75年間の変化を冷静に分析すると、驚くべき事実が浮かび上がります。世帯に二つ目の収入源を加えたことは、労働負担が100%増加したことを意味しますが、それによって得られた物質的な収入の増加はわずか20%程度に過ぎません。これを家庭単位の「実質的な時給」に換算すると、過去数十年で40%から50%も下落している計算になります。つまり、現代の家庭はかつてよりも多くの時間働いているにもかかわらず、労働の対価としては劇的に貧しくなっているのです。かつて母親が無償で行っていた家事や育児を、現在は夜間や週末に詰め込むか、あるいは託児所や代行サービスに高い費用を払って外注せざるを得ず、それがさらなる出費を生むという悪循環に陥っています。

こうした傾向は、家族の形成にも深刻な影響を及ぼしています。かつて結婚がもたらしていた経済的な安定という恩恵は失われ、子供を育てることは純粋な経済的負担へと変わりました。その結果、出生率は低下し、若者たちは結婚を先延ばしにするようになっています。特に現在のZ世代は、祖父母の世代が当たり前に手に入れていた「普通で幸せな生活」を送ることが極めて困難な状況に直面しています。タッカー氏は、政府だけがインフレや納税者の増加によって恩恵を受ける一方で、家庭が失った「心の平和」や「家族の絆」という価値を再考すべきだと訴えています。私たちが進歩と呼んできたものは、実は生活水準の衰退そのものだったのかもしれません。

覆る世界秩序

Peace!Fire! [LINK]

【海外記事より】アメリカが強行した対イラン戦争という「思慮に欠ける混乱」が、世界秩序を根底から覆しつつあります。金融コラムニストのショーン・リング氏は、この戦争がもたらした「意図せざる結果」によって、過去25年間にわたり警告されてきた「ドルの覇権喪失」や「帝国の崩壊」が現実のものとなっていると指摘します。かつてのアメリカは、同盟国に利益を分配し、安全を保障することで帝国を維持してきましたが、現在のワシントンは自らの行動が招く結末に盲目であり、周辺諸国を守ることも繋ぎ止めることもできなくなっています。

欧州では、大西洋同盟に深刻な亀裂が生じています。アメリカが十分な事前協議もなく戦争を開始したことで、エネルギーコストの急騰を招き、ドイツやフランスの産業は壊滅的な打撃を受けています。安価なロシア産ガスを断たれた欧州は、アメリカ産の高価な液化天然ガス(LNG)に頼らざるを得なくなりましたが、それさえもアジアへ転売される事態に直面し、アメリカの信頼性に強い疑問を抱いています。NATOの解体すら囁かれる中、ロシアのプーチン大統領は高騰する原油価格で戦費を賄い、アメリカの失策を傍観しています。欧州諸国は、アメリカがいずれ自分たちを見捨てると確信し、ロシアとの独自交渉を視野に入れ始めています。

アジアにおいても、アメリカの同盟関係は揺らいでいます。韓国はこれまでアメリカの要請に従って中国との経済関係を犠牲にしてきましたが、米軍が中東へ戦力を再配置したことで、アメリカの安全保障の約束が空虚なものであると悟りました。驚くべきことに、アメリカの多方面での継戦能力に疑念を抱いた南北朝鮮の間では、安定を求めて和解を模索する動きさえ出始めています。一方、台湾でもウクライナの惨状を目の当たりにし、「アメリカのために戦って焦土と化す」ことを拒否する声が高まっています。中国やロシアに対しては、もはや制裁の効果が限定的であることも露呈しており、台湾が「第二のウクライナ」になることを避ける動きが加速しています。

中東の産油国も、これまでの親米路線から明確に脱却しようとしています。湾岸諸国は膨大な米国債を売却し、資産を北京やモスクワへ分散させ始めました。さらに、イスラエルが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一部であるイラン・中国間の鉄道を爆撃したことは、中国を激怒させる決定的な要因となりました。この戦争は、アメリカが最も恐れていた「脱ドル化」と、ユーラシア大陸を中心とした新たな勢力圏の形成を加速させています。リング氏は、資本の流れがアメリカから流出し、軍事力による覇権が終わりを迎える中で、世界は二度と以前の姿には戻らないだろうと予測しています。

激動の石油市場

Bombs, Barrels, and Blockades… Oh My! - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】世界の石油市場が、かつてない激動の渦中にあります。現在、121隻もの空のタンカーがアメリカのガソリンスタンドならぬ「石油積み出し港」を目指して、メキシコ湾岸へ向かっています。これは一時的な現象ではなく、欧州からの航路で46%、アジアからの航路では132%もタンカーの流入が急増しているという異常事態を反映しています。トランプ大統領もSNSで「世界最大級の空のタンカーが大量にアメリカへ向かっている」と言及しましたが、これは世界の石油動態が根本から変質したことを物語っています。かつては輸出大国だった中東などの供給網が機能不全に陥り、世界中の買い手がアメリカ産の原油を求めて列をなしているのです。

この危機の背景には、解決の糸口が見えない国際情勢があります。先週、一時的に停戦交渉への期待から原油価格が下落する場面もありましたが、現実は残酷でした。イスラマバードで行われた停戦交渉はわずか21時間で決裂し、両者の溝はかつてないほど深まっています。アメリカ側はイランによるウラン濃縮の継続を断固として拒否しており、交渉の余地は全く残されていません。イランが2月28日にホルムズ海峡を事実上封鎖したことで、世界の市場から日量約1100万バレルの供給が断たれました。これは1970年代のオイルショック以来、最大の供給障害となっています。

事態をさらに悪化させているのが、トランプ政権による新たな封鎖作戦です。今週月曜から、イラン産の石油を運ぶすべての船舶を阻止する強力な海上封鎖が開始されました。これにより、これまで封鎖をかいくぐって輸出されていた日量185万バレルのイラン産原油も完全に市場から消えることになります。一方で、サウジアラビアやクウェートなど他の産油国も、イランによる海峡封鎖のために輸出が滞っています。アメリカは過去最大規模の戦略備蓄の放出で時間を稼ごうとしていますが、根本的な解決には程遠いのが現状です。市場では原油価格が再び高騰し、1バレル115ドルを突破しました。

現在、世界中の空のタンカーがアメリカに押し寄せているのは、アメリカのシェールオイルが救世主になると期待しているからです。しかし、現実はそれほど甘くありません。100隻以上のタンカーが一度に押し寄せれば、港湾での積み込み作業に深刻な渋滞が発生し、供給の遅れは避けられません。また、アメリカのシェール生産も過去1年で頭打ちとなっており、かつてのような増産余力は失われつつあります。このまま対立が長引き、エネルギーコストが経済の許容範囲を超えれば、1973年を上回るような世界的な不況に突入する恐れがあります。タンカーの列は、もはや希望の象徴ではなく、エネルギー危機という巨大な壁に突き当たった世界の混迷を象徴しているのかもしれません。

文明は内部から崩れる

"Civilizations Die from Suicide, Not From Murder" [LINK]

【海外記事より】歴史学者のアーノルド・トインビーが提唱した「文明は他殺ではなく、自殺によって死ぬ」という有名な学説が、現在の西洋社会、特にアメリカにおいて驚くほど鮮明に体現されていると著者のジョン・リーク氏は指摘しています。トインビーは世界各地の文明を比較分析した結果、文明の崩壊は外部からの征服ではなく、内部の腐敗によって引き起こされる自己崩壊のプロセスであると結論付けました。この記事では、かつて繁栄を極めた文明がなぜ衰退の道を歩むのか、そのメカニズムを現代のシリコンバレーなどの事例を交えながら冷静に考察しています。

トインビーの理論によれば、文明が成長するのは、環境や社会の課題に対して「創造的少数者」と呼ばれるエリート指導層が適切に対処している期間です。大衆は強制されることなく、自発的にこの指導層に倣い、社会全体が活力を維持します。しかし、衰退はこの創造的少数者が、単なる「支配的少数者」へと変質したときに始まります。過去の成功に溺れ、うぬぼれたエリート層は道徳的権威を失い、人々への責任感や創造への意欲ではなく、武力や強制力によって統治しようとし始めます。社会には傲慢さや偏ったナショナリズム、軍国主義、そして物質的な快適さの追求が蔓延するようになります。

こうした状況下では、社会に「分裂」が生じます。支配層は統治する人々の現実からますます乖離し、一方で大衆はエリート層への信頼と信仰を捨て、精神的に離反していきます。これによって生じる「動乱の時代」には、深刻な階級闘争や、現状を維持しようとする無益な帝国主義的拡大が繰り返されます。トインビーは、古代ギリシャ・ローマ文明を例に挙げ、ローマの強固な帝国機構であっても、内部で進行した精神的な消耗や社会的な疎外を補うことはできなかったと説明しています。外部からの侵略は、すでに内側から腐っていた巨木を嵐がなぎ倒すように、崩壊の速度を速めたに過ぎないのです。

トインビーが1975年に亡くなるまで説いたこの教訓は、現代の西洋諸国にもそのまま当てはまります。過度な誇りや慢心、強欲、そして現実からの逃避によって、自らを維持し構築することを放棄したときに文明の自殺は決定的となります。しかし、トインビーは衰退が決して避けられない運命だとは考えていませんでした。彼は人間の主体性を信じており、新たな創造的少数者が現れることで、衰退を遅らせたり止めたりすることも可能であるとしています。この記事は、現代文明が技術的な卓越性とは裏腹に急速な衰退を見せている今、私たちがどのような選択をするべきかを問い直しています。

米イスラエル、孤立と信頼失墜

The Collapse of the US/Israel’s Coup against Iran—And What It Means - VT Foreign Policy [LINK]

【海外記事より】アメリカとイスラエルによる対イラン工作の失敗と、それがもたらす国際情勢の変化について、VT(ベテランズ・トゥデイ)のシニアエディター、ジョナス・アレクシス氏が分析しています。2026年2月28日、トランプ大統領が対イラン戦争を決断した背景には、ネタニヤフ首相による強気な予測がありました。当時の報告によれば、ネタニヤフ氏は「イランの弾道ミサイル網は数週間で破壊でき、政権は崩壊寸前である」と伝え、トランプ政権の幹部らを納得させたといいます。しかし、現実にはイランは屈せず、ホルムズ海峡の制圧を維持し、米イスラエル双方の資産に打撃を与えるなど、彼らの期待とは正反対の結果を招くことになりました。

この衝突の結果、国際的な優位性はイラン側に傾いているというのがアレクシス氏の見解です。イスラエル側は自らの力を過信し、イランを過小評価していましたが、実際にはイランの反撃能力を予測できていませんでした。また、中国やロシアが米イスラエルの行動に明確な反対を表明し、核兵器の使用が世界大戦を招きかねない状況となったことで、トランプ氏は最終的に和平交渉へと舵を切らざるを得なくなりました。そもそもなぜ、トランプ氏がイスラエル側の無理な戦争計画に合意したのかという点について、アレクシス氏はネタニヤフ政権がトランプ氏の弱みを握っている可能性を示唆しています。これについてはタッカー・カールソン氏なども、過去の政治家が同様の圧力を受けた例を挙げて言及しています。

さらに事態を複雑にしているのが、トランプ大統領夫人のメラニア氏の動向です。彼女は政権の方針に反し、ジェフリー・エプスタインに関連する文書が真実であるとする声明を出し、被害者の声を聴くべきだと主張しました。この発言は政権内に混乱を招きましたが、アレクシス氏はこれを彼女自身の保身のための動きである可能性も指摘しています。いずれにせよ、一連のイラン情勢を通じて、アメリカとイスラエルの国際的な立場は以前の状態に戻れないほど弱体化したというのが多くの専門家の一致した見方です。

今回のイラン攻撃は、アメリカとイスラエルにとって重大な失策となりました。NATOがこの紛争への関与を拒否したことも、両国の孤立と信頼の失墜を象徴しています。一方で、ロシアや中国、インドを含むBRICS諸国は両国の行動を強く批判しており、世界秩序のバランスが大きく変化しつつあります。アレクシス氏は、自らの行動が予期せぬ敗北を招いたこの状況を、哲学者ヘーゲルの言葉を借りて「理性の狡知」と表現し、米イスラエルによる世界的な影響力の崩壊を淡々と描き出しています。

米、支出増が財政圧迫

U.S. Government Spending Addiction Drives Yet Another Big Monthly Deficit [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府の財政は、深刻な支出依存から抜け出せずにいます。マイク・マハリー氏の記事によると、2026会計年度の半年が経過した時点で、連邦予算の赤字はすでに1兆1700億ドルに達しました。2026年3月単月の実績を見ても、歳入が大幅に増加したにもかかわらず、1641億ドルの赤字を計上しています。これは前年同月の赤字額を約2%上回る規模です。こうした慢性的かつ巨額の月次赤字により、連邦債務は膨れ上がり続けています。債務残高は昨年10月に38兆ドルを超えたばかりですが、先月には早くも39兆ドルの大台を突破しました。

歳入面では、関税収入の急増によって今年度の赤字額は前年同期比で約11%減少しており、一見すると改善しているようにも見えます。3月の歳入は前年比5%増の3848億6000万ドルと、3月としての過去最高記録を更新しました。特に関税は前年同月比で170%以上も増加し、大きな財源となっています。しかし、その一方で政府支出は依然として抑制が効かない状態にあります。3月の支出額は5489億6000万ドルに上り、前年同期を4%上回りました。トランプ政権下では一部の省庁で予算削減も行われましたが、全体的な支出の勢いは止まっていません。

さらに懸念されるのは、今後の支出増加要因です。3月のデータには、イランとの戦争に関連する膨大なコストがまだ完全には反映されていません。政府当局の推計では、開戦からわずか6日間で約113億ドルの費用が発生したとされており、今後、兵器の補充などに伴う多額の出費が予算をさらに圧迫することが確実視されています。政府効率化省(DOGE)による無駄の指摘や支出削減の公約も、現時点では実際の予算削減にはほとんど結びついていません。政治的には、支出を削るよりも増やす方が容易であるという現実が浮き彫りになっています。

膨れ上がった約40兆ドルの債務に対する利払い負担も、看過できないレベルに達しています。3月の利払い費だけで1026億4000万ドルを要しており、今年度上半期の累計では、国防費やメディケア(高齢者向け医療保険)の支出を上回る規模となりました。これは社会保障に次いで、連邦予算の中で2番目に大きな支出項目となっています。かつての低金利時代に発行された国債が次々と満期を迎え、より高金利の債務に置き換わっているため、利払いコストは雪だるま式に増加しています。政治家たちがこの持続不可能な財政問題に真剣に取り組もうとしない中で、米政府の財政状態は実質的に債務超過に陥っていると言っても過言ではありません。

金、主流経済学者に勝利?

Mainstream Economists vs. Gold: Who Is Winning the Fight? [LINK]

【海外記事より】主流派経済学者と金の長年にわたる対立において、現在は金が勝利を収めつつあるようです。ブルームバーグのコラムニストであるアーロン・ブラウン氏は、経済学者と金との「戦争」の歴史を振り返り、最新の情勢を分析しています。この対立の口火を切ったのは、1923年に金を「野蛮な遺物」と呼んだジョン・メイナード・ケインズでした。彼は金本位制を時代遅れのものとし、これからは経済の専門家が管理する法定通貨が主流になると信じていました。政府にとって、発行量を金の保有量に縛られる金本位制は、戦費や社会福祉のための支出を制限する邪魔な存在だったため、この理論は歓迎されました。

1930年代、フランクリン・ルーズベルト大統領は支出拡大のため、個人の金保有を事実上禁止し、政府が金を回収してドルの価値を大幅に切り下げました。1944年のブレトンウッズ体制では、各国通貨をドルに固定し、ドルを金と結びつけましたが、金は象徴的な地位に格下げされました。しかし、1960年代に米国がベトナム戦争などで支出を増やすと、ドルの価値が低下し、各国がドルを金に交換し始めたため、米国の金準備が底をつく懸念が生じました。これを受けて1971年、ニクソン大統領は金とドルの交換を停止し、管理通貨制度へと完全に移行しました。当時の経済学者の多くはこの決定を支持しましたが、その後の10年で金の価格は35ドルから850ドルへと急騰し、投資家は現金の価値を大きく失うことになりました。

その後、1980年代のインフレ抑制により経済学者の管理する通貨への信頼が一時的に回復したものの、2008年の金融危機で再び揺らぎました。そして現在、ブラウン氏は「現代において最も重要な局面」が訪れていると指摘します。そのきっかけはインフレではなく、ドル建て資産が本当に安全かという根本的な問いです。ロシアのウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアを国際的な決済システムから排除したことで、中立的な立場の中央銀行は、ドルやユーロによる資産が没収されるリスクを認識しました。他国の政策や制裁によって凍結されず、ハッキングもされず、政府を信頼する必要のない唯一の予備資産として、金が再評価されています。

実際に2025年の各国中央銀行による金準備の拡大は、史上4番目の規模を記録しました。2022年には過去最高の購入量を記録しており、昨年末には、各国の準備資産に占める金の割合が1996年以来初めて米国債を上回りました。これは、主流派経済学者が築き上げたシステムに対する「不信任投票」を意味しています。かつての金高騰は個人投資家やインフレ懸念が主導していましたが、現在の動きは国家機関による戦略的な選択です。ケインズは金の役割を軽視しましたが、流動性と中立性を備え、政治的リスクから自由な金の代替品を見つけることがいかに困難であるかを過小評価していました。5000年の歴史を持つ金と、数百年の歴史しかない経済学者の理論との戦いは、現在、金が優勢となっているようです。

2026-04-14

ローマ教皇、反戦の訴えやめず

In Response to Trump, Pope Leo Says He Will Continue Speaking Out Against War - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ローマ教皇レオ14世は、トランプ大統領から受けた激しい非難に対し、今後も戦争に反対し続ける強い意志を表明しました。事の発端は、トランプ氏が自身のSNSにおいて、米国出身の教皇がイランとの戦争やベネズエラへの攻撃を批判していることを捉え、「犯罪に弱く、外交政策もひどい」「極左に迎合している」と攻撃したことにあります。これに対し教皇は、アフリカ歴訪へ向かう機内で記者団に対し、「平和を築く人々は幸いである」という福音のメッセージは明確であり、平和と和解のための架け橋を築く呼びかけを辞めることはないと語りました。

トランプ氏は、教皇がイランの核武装を容認しているかのような主張を展開し、教皇がかつてのオバマ政権の戦略家と面会したことなども批判の対象としました。さらにトランプ氏は、自身をイエス・キリストになぞらえたようなAI画像を投稿し、米国内のキリスト教徒から強い反発を招くという騒動も起こしています。一方で、教皇は自身を政治家ではなく宗教者であると定義し、特定の政治的議論に深入りすることは避けつつも、あまりに多くの無実な人々が命を落としている現状に対し、より良い道があることを誰かが訴えなければならないと述べています。

教皇は、歴代の教皇として初めて訪問したイスラム教国のアルジェリアにおいても、平和への訴えを続けました。アルジェの殉教者記念碑の前で教皇は、平和とは単に紛争がない状態を指すのではなく、正義と尊厳の現れであるべきだと説きました。演説の最後には、マタイによる福音書の「山上の垂訓」を引用し、平和を求める人々や義に飢え渇く人々への祝福を強調しました。国家間の対話と多角的な関係を促進することで、正義に基づいた解決策を模索し続けるという教皇の姿勢は、対立を深める米国政権の外交方針とは対照的なものとなっています。

イラン攻撃の道徳的誤算

Moral Miscalculation: America’s Misunderstanding of Iran Is Leading to Catastrophe - Crisis Magazine [LINK]

【海外記事より】カトリックのジャーナリスト、マシュー・カリン・ホフマン氏は、現在の米国によるイランへの攻撃は、歴史的な無知と「ファンタジー」に基づいた道徳的な誤算であると指摘しています。トランプ大統領が進める強硬策は、1980年にサダム・フセインがイラン侵攻を決断した際の誤算と酷似しています。当時、フセインはイラン国民が政府に不満を持ち、攻撃者を「解放者」として歓迎すると助言されましたが、現実は正反対でした。イラン国民は愛国心から団結し、民間人までもが志願して軍を支え、圧倒的な犠牲を払いながら侵略者を押し返したのです。この歴史は、イランの現体制が外部からの圧力によって簡単に崩壊するような脆弱なものではないことを示しています。

ホフマン氏は、米国とイランの不幸な関係は1979年の大使館占拠事件ではなく、1953年に米国と英国が仕掛けた「アジャックス作戦」に遡ると説いています。この工作により、民主的に選出されたモサデク政権が打倒され、米国の傀儡であるパフラヴィー国王による独裁体制が構築されました。その後、米国は秘密警察を支援して反対派を弾圧し、イランの資源を搾取しました。1979年の革命は、こうした長年の外国支配に対するナショナリズムの爆発でした。イランの人々にとって米国大使館は「スパイの巣窟」であり、再び民主主義が乗っ取られることを防ぐための行動が、結果として強固な宗教国家を生む引き金となったのです。

現在の米国の政策は、イスラエルの利益を優先するあまり、外交的な解決の道を自ら閉ざしています。トランプ政権は、イランが核兵器を開発していないという情報機関の評価を無視し、イスラエルによる一方的な攻撃を追認する形で対立を煽っています。ホフマン氏は、米国が過去にイラクへ化学兵器の原料を提供してイラン人を殺傷したことなど、自らの過ちを認めるべきだと主張します。キリスト教的な倫理に基づけば、他国の主権を尊重し、対等な立場で交渉のテーブルに戻ることこそが正解です。現在の好戦的な姿勢は、中東全域に壊滅的な破壊をもたらし、世界を未曾有の災害へと導く危険性を孕んでいます。

政府崩壊、5つのサイン

5 Subtle Signs the Government Is Collapsing (And #1 Is Already Here) [LINK]

【海外記事より】政府の崩壊は、多くの人が想像するような劇的なニュースや街頭の戦車から始まるのではありません。歴史を振り返れば、文明は一瞬で倒れるのではなく、内側から空洞化し、表面上は平穏を保ちながら徐々にその実質を失っていくものです。かつてのローマ帝国が、銀貨に含まれる銀の量を減らし、見かけだけの貨幣を兵士に支払うようになった時、すでに崩壊の兆しは現れていました。現在の米国においても、こうした「衰退の兆候」は、政治的な議論ではなく、私たちの日常生活を支える背景的なメカニズムの中に、5つの静かなサインとして現れ始めています。

第1の、そして最も深刻なサインは「通貨の価値低下」です。米国の公的債務は34兆ドルを超え、連邦予算の多くが過去の借金の利息支払いに費やされています。政府はこの圧力を分散させるために通貨供給量を増やし、結果として物価を押し上げています。食費や家賃、保険料の上昇は単なる一時的なインフレではなく、システムが自重に耐えきれなくなっているシグナルです。給与が追いつかず、貯蓄の購買力が失われていく中で、人々は日々の生活を維持するために本質的な支出を削らざるを得なくなっています。歴史的に、アルゼンチンやジンバブエ、ドイツなどで見られた経済不安の初期段階も、こうした「緩やかな購買力の喪失」から始まりました。

第2、第3のサインは、政府が「自己責任」を強調し始め、供給網が脆弱性を露呈することです。FEMA(米連邦緊急事態管理庁)などの機関が、危機の際に最初の72時間は公的支援なしで生き延びるよう推奨しているのは、公的システムが限界に達していることの裏返しです。また、2021年に起きたような供給網の混乱は、効率性を追求するあまり冗長性を失った現代の流通システムがいかに薄氷の上にあるかを示しました。さらに第4、第5のサインとして、公的機関への信頼が長期的に低下し、警察や消防といった地方自治体の基礎的なサービス機能が予算不足や人員不足で損なわれつつある現状が挙げられます。

これらの兆候は、ある日突然すべてが壊れることを予言するものではありません。そうではなく、金融、物流、制度、社会といった複数の層において、社会全体の「回復力(レジリエンス)」が段階的に失われていることを示しています。システムが安定から歪みへと移行する際、これらは常に共通して現れるパターンです。大切なのは、この変化を恐怖としてではなく、一つの事実として認識することです。システムへの依存がこれまで以上にリスクを伴う時代において、個人が自立した生活基盤を整えることの重要性がかつてないほど高まっています。

中国への「宣戦布告」

Will China Retaliate Against Donald Trump's Oil Blockade and Force an American Surrender?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】イスラマバードで行われたアメリカとイランの和平交渉は、開始から24時間足らずで決裂に終わりました。ドナルド・トランプ米大統領は当初、イラン側の提案に基づく交渉を示唆していましたが、実際にはJ・D・バンス副大統領ら交渉団が、核濃縮活動の全面停止やホルムズ海峡の制圧権放棄といった、到底受け入れがたい要求を突きつけたことが原因です。交渉団は、6週間に及ぶ戦火で米軍が成し遂げられなかった成果を、交渉の場でもぎ取ろうとしたようですが、イラン側の態度は揺るぎませんでした。

この交渉決裂を受けて、トランプ大統領はペルシャ湾の封鎖を宣言しました。海軍に対し、ホルムズ海峡を通過するすべてのタンカーを拿捕し、イランの石油収入を断つよう命じたのです。イランによるミサイルの脅威があるため、米軍艦は沿岸から離れた公海上で拿捕を行うことになりますが、これは事実上の海賊行為であり、国際市場から日量150万バレルの石油を奪うことで価格の高騰を招きます。現在、イラン産原油の90%を購入している中国にとって、この封鎖は宣戦布告にも等しい行為です。

米政府内には、大規模な爆撃による勝利を確信する声もありますが、それは戦争の本質を見誤っています。イランは長年、非対称戦略に投資し、山岳地帯に分散配置された精密ミサイルやドローンの軍火庫を構築してきました。これらは開戦直後の米軍による攻撃を生き延び、すでに中東の米軍基地を破壊し、高価なレーダー施設や早期警戒管制機を無力化しています。2兆ドル以上を投じた米海軍の艦隊も、イランのミサイルの前では脆弱で、沿岸から遠ざかることを余儀なくされました。

さらに、イランはホルムズ海峡を閉鎖することで、世界の石油・天然ガス輸出の20%以上を人質に取っています。実物資産の石油価格はすでに1バレル145ドルを超え、過去最高値を更新しました。トランプ大統領は、この窮地を脱するためにイランの濃縮ウランを奪取する特命作戦を試みたようですが、これも輸送機やヘリを多数失う悲惨な失敗に終わったと分析されています。追い詰められた大統領は、SNSでイランの文明そのものを消滅させるといった過激な発言を繰り返しており、かつての支持者や保守派メディアからも、その狂気と非人道性を激しく批判されています。

交渉決裂なら戦禍拡大も

Iran’s Determination to Break Out From the Panopticon of Western 360° Containment - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元英国外交官のアラスター・クルーク氏は、西アジア全域における戦闘停止の行方が、極めて不安定な均衡状態にあると指摘しています。当初、イラン側が提示した恒久停戦に向けた10項目の前提条件には、レバノンを含む「全戦線」での軍事行動停止が含まれていました。トランプ大統領も一度はこの枠組みを直接交渉の「実行可能な基盤」として承認し、仲介者やパキスタン首相もレバノンが停戦対象に含まれることを確認していました。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相からの電話会談を境に、トランプ氏の立場は一転しました。イスラエル側はレバノンの居住地区に対して大規模な攻撃を敢行し、1,000人以上の死傷者を出すことで、ヒズボラに対しては停戦が存在しないことを事実上突きつけたのです。

クルーク氏によれば、この事態の背景には、レバノン国内で内戦を誘発させ、現体制を崩壊させようとするイスラエル側の長年の意図が透けて見えます。イラン側は「全員にとっての停戦か、誰にとっても停戦ではないか」という明確な立場を崩しておらず、交渉が成立するかどうかは、トランプ氏がネタニヤフ首相の攻撃的な姿勢を抑えられるかどうかにかかっています。しかし、米国の軍事的な現実は厳しく、ペルシャ湾周辺の海軍力や基地は損害を受け、ミサイル在庫や防空システムも限界を露呈しています。現在の状況は、米国にとって包括的な戦略的敗北に近い形を呈しており、トランプ氏は政治的にも軍事的にも、かつてイランからのアメリカ人人質救出作戦に失敗したカーター大統領が直面したような窮地に立たされています。

今回の紛争は、もともとイランの最高指導者を殺害し、短期間で体制を転覆させるという見通しの甘い計画から始まったとクルーク氏は分析しています。トランプ氏とネタニヤフ首相は、イランによる即座の報復攻撃や米軍基地への打撃を全く予期していませんでした。内部蜂起によって体制が崩壊するという根拠のない確信に基づいた戦略は、結果として米国を出口のない泥沼へと引きずり込みました。現在、イランは70年にわたる欧米の抑圧的な枠組みを打破しようとしており、米国に大きな譲歩を迫っています。交渉が決裂すればさらなる戦禍が広がる恐れがあり、世界経済や市場への影響を含め、事態は非常に深刻な局面にあります。

海峡「逆封鎖」の愚

Blockading The Blockade? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元米連邦下院議員のロン・ポール氏は、トランプ大統領がイランとの戦争を終結させる絶好の機会を逃し、事態をさらに悪化させていると批判しています。パキスタン政府の仲介により、2週間の停戦と高官級の交渉が実現しましたが、米国側がイランに対してウラン濃縮施設の廃棄など極端な要求を繰り返したことで、協議は決裂しました。ポール氏によれば、この停戦は結果として、米国とイスラエルが軍備を再編し、補充するための時間稼ぎに利用された可能性が高いとのことです。交渉失敗を受けてトランプ大統領は対決姿勢を強め、イランによるホルムズ海峡の封鎖に対抗し、米国自らが同海峡を「逆封鎖」すると宣言しました。

この新たな方針によれば、米軍はイランの港を出入りする全ての船舶を臨検し、押収するリスクを冒すことになります。すでにホルムズ海峡の通行制限によって原油価格や肥料価格は急騰しており、米国内のインフレ加速と世界市場の混乱を招いています。ポール氏は、こうした状況下で米国がさらなる封鎖を強行することは火に油を注ぐ行為に等しく、世界経済に壊滅的な打撃を与える恐れがあると指摘しています。さらに、イエメンのフーシ派がこの動きに反応して紅海を閉鎖すれば、世界的な経済大恐慌に発展する危険性すらあると警鐘を鳴らしています。

トランプ政権の強硬な姿勢とは裏腹に、国際社会の足並みは揃っていません。欧州や日本、韓国などは米国の軍事行動に加わるのではなく、独自にテヘラン側と交渉し、通行料を支払うことで事態を回避する道を選んでいます。また、ホルムズ海峡の通行料が中国の人民元で支払われるようになるなど、石油取引におけるドルの優位性、いわゆるペトロダラー体制も揺らぎ始めています。米国の世界的な覇権がリアルタイムで挑戦を受ける中、大統領は外交的な解決策から遠ざかり、中東への軍備増強を急いでいます。ポール氏は、議会が沈黙を守る中で中国が米国に警告を発するなど、大規模な軍事的衝突の懸念がかつてないほど高まっている現状を危惧しています。

似非オーストリア学派の害悪

Story of an Economyth [LINK]

【海外記事より】オーストリア学派経済学を標榜しながら、その本質的な教義から逸脱した主張を行う「似非オーストリア学派」とも呼ぶべき動向に、警鐘を鳴らす論考が発表されました。フランスでマレー・ロスバードの遺産を広める活動を行うステファン・ゲレス氏は、著名な大学教授であるフランソワ・ファキーニ氏の近著を例に挙げ、学派の看板を掲げながら学術的誠実さを欠く姿勢を批判しています。具体的には、この教授が「明日の税制はどうあるべきか」という著作の中で、本来「課税は略奪である」と説くべき立場にありながら、税金を「必要悪」として容認し、いかに効率的に徴収するかという議論に終始している点に疑問を呈しています。

批判の核心は、経済学における手法の矛盾にあります。ミゼスやロスバード、ホッペといったオーストリア学派の巨頭たちは、経済学を「人間の行動」に関する論理的・先験的な科学と位置づけ、数値化や計測が不可能な分野であると説いてきました。しかし、問題視されている教授は、100年以上にわたる膨大な統計データを用いた実証研究を行い、フランスにおける国家の「最適な規模」は国内総生産(GDP)の30%であると結論づけています。これは、国家が支出する資金は元を正せば略奪されたものであるという学派の根本原理を無視し、犯罪の「最適値」を探るような矛盾した試みであるとゲレス氏は指摘します。

このような妥協的なアプローチは、現実の政治家に対して支出削減を促すための「戦略的で賢明な手法」と見なされることもあります。しかし、ゲレス氏は、こうした妥協が一般の人々の間に「オーストリア学派は最適課税を認めるものだ」という誤解を広め、自由を希求する運動や経済科学そのものを汚すことになると懸念しています。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領の台頭以降、学派の名が注目を集める中で、自称「オーストリア学派」がその一貫性を失い、既存の権力構造に阿ねるような理論を展開することに対し、真の誠実さと勇気を持って自らの立ち位置を明確にするよう求めています。

AIブーム、失速のリスク

Daisy Chains Of Risk – The Felder Report [LINK]

【海外記事より】現在の世界経済は、1973年の石油ショック時よりもエネルギー供給の混乱に対して脆弱な状態にあるという指摘が出ています。専門家によれば、近年の商品市場の動向はブームの終焉を意味するものではなく、むしろ本格的な上昇相場はまだ始まっていない可能性すらあります。こうしたエネルギー価格の高騰や供給不足といったリスクは、単にコストを押し上げるだけでなく、現代経済の成長を牽引する先端分野にも深刻な影を落とし始めています。特に懸念されているのが、長期化する地政学的な危機が、現在進行中の人工知能(AI)への投資ブームを失速させるという連鎖反応です。

実際に、その予兆はデータセンターの建設現場にも現れています。2025年第4四半期、アメリカにおけるデータセンターの新規プロジェクトの発表数は、前の期と比較してほぼ半減しました。これはAIに対する需要がなくなったためではなく、電力供給の確保が極めて困難になったことが主な原因です。AIインフラの維持には莫大なエネルギーが必要であり、エネルギー供給網の限界が、技術革新のスピードを物理的に制約し始めています。エネルギー不足によるコスト増と供給不安は、技術部門の成長を妨げる大きな要因になりつつあります。

さらに、こうしたリスクの連鎖は、金融システムの深部へと波及する恐れがあります。密接に相互接続された現在の経済システムにおいて、プライベート・クレジット(ノンバンク融資)の弱体化は、巨大IT企業によるAI投資の重荷となります。それが企業の成長期待を削ぐことになれば、最終的には株式市場のポートフォリオに影響を及ぼし、数千万人の人々の退職金や年金基金を脅かすことにもなりかねません。エネルギー、技術投資、そして個人の資産形成までが、リスクの数珠つなぎによって一つの大きな脆弱な連鎖を形成しているという視点が示されています。

ドル不信、元国際化のチャンス

Yuan’s ‘golden window’ is open, former PBOC governor says as US dollar credibility teeters | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】中国人民銀行の元総裁である周小川氏は、米ドルの信頼性が揺らいでいる現状が、中国の通貨である人民元の国際化を推し進めるための「黄金の好機」となっているとの見解を示しました。周氏は今月、上海で開催されたフォーラムにおいて、アメリカによる広範な関税の適用や、制裁措置へのドルの頻繁な使用、そして地政学的な紛争といった要素が、ドルの世界的な公信力を損なわせていると指摘しました。現在の国際通貨システムにおける変化の核心的な原動力は、アメリカ自身の政策選択にあるという分析です。一方で、中国には資本が還流しており、人民元には価値が上昇する方向への圧力がかかっています。周氏は、こうした状況を背景に、人民元の国際化を中国の経済力に見合った水準まで着実に進めるべきだと主張しています。

周氏は2002年から2018年まで中央銀行総裁を務め、2009年に人民元による国境を越えた貿易決済を導入するなど、その国際化の基礎を築いた人物です。同氏は、中国の貿易黒字が通貨の海外流出の妨げになるという理論的な懸念に対し、資本勘定や海外融資を通じて世界市場に人民元を供給できるため障壁にはならないと反論しています。また、準備通貨としての実際の需要は米国債の発行残高よりもはるかに低いため、中国がアメリカのような巨額の債務を発行する必要はないとも述べています。ただし、人民元の国際化を成功させるためには、安全で換金性が高く、流動性のある資産の供給が依然として不可欠であり、中国の国債市場の開放や投資の利便性については、さらなる改善が必要であると付け加えました。

現在、ドルに代わる強力な通貨が短期間で現れる可能性は低いものの、周氏は人民元の自由な利用や資本勘定の兌換性を高め、過度な規制を避けるべきだと提言しています。あわせて、上海のような国際金融センターの育成や、決済インフラの整備を求めています。実際に中国政府は、欧米主導の決済ネットワークに対抗する独自のシステムであるCIPSの運営規則を、2026年2月に大幅に改定しました。この改定ではオフショア人民元が対象に加えられ、金融機関の参加枠も拡大されました。こうした動きは、ドルの支配力が問われる中で、人民元が国際的な決済手段としての地位を強化しようとする中国の姿勢を反映したものです。

金、安保インフラに

Op-Ed: How gold became national security infrastructure - MINING.COM [LINK]

【海外記事より】フランスの中央銀行は4月、自国が保有する全ての金準備を国内に回収したことを明らかにしました。2025年7月から2026年1月にかけて、ニューヨーク連邦準備銀行に預けていた129トンの金を売却し、欧州市場で同等の金を購入することで、合計2,437トンの保有量を維持したまま、100%自国での管理を実現したのです。この動きは、北大西洋条約機構(NATO)の創設メンバーであるフランスが、主要な同盟国であるアメリカの預かりから資産を引き揚げたという政治的な意味合いを持っています。同様の動きは世界的に加速しており、ドイツも一部を国内に戻しているほか、インドも2023年以降に大規模な本国送還を実施しました。これは、2022年にロシアの準備資産が凍結されたことを受け、外国の司法権の下で資産を保有することに伴う主権リスクを、各国の中央銀行が強く認識し始めた結果と言えます。

中央銀行による金の購入は、2025年には863トンに達し、4年連続で高い水準を維持しています。特にポーランドの中央銀行は、金の保有を国家安全保障の観点から捉え、積極的な積み増しを続けています。ゴールドマン・サックスは、金の価格が一時的な調整局面にあっても、長期的には1オンスあたり5,400ドルに達すると予測しています。金市場への需要は、単なる投機的なものではなく、準備資産の安全性を守るための構造的な再編によるものです。世界的な金の需要は初めて5,000トンを超え、上場投資信託(ETF)や地金への流入も過去最高水準にあります。各国の主権者や機関投資家は、従来の準備資産に対するルールが変化した現代において、金の価値を再評価しているのです。

中国の戦略も、単なる資産運用を超えた体系的なものです。中国人民銀行は16ヶ月連続で金を購入し、米国債の保有を減らすことで、制裁の影響を受けないポートフォリオへの転換を進めています。中国は世界最大の金産出国であるだけでなく、西アフリカなどの海外での鉱山開発や、戦略的鉱物の精錬能力の確保にも注力しています。また、ドバイやロンドンなどの物流拠点が地政学的な危機にさらされた際、金の供給網が混乱するリスクも顕在化しました。これを受け、金の精錬所や物流網そのものが、国家の金融主権を支える戦略的なインフラとして重視されるようになっています。金はもはや単なる商品ではなく、国家の安全保障を担う戦略的な能力そのものとして位置づけられているのです。

2026-04-13

ガザ人道支援の外注

Is Board of Peace handing Gaza over to private contractors? | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が主導する「平和委員会(Board of Peace)」がガザ地区での新たなイニシアチブを始動させる中、人道支援業務をアメリカの民間軍事会社に委託する動きが再浮上し、懸念を呼んでいます。フィナンシャル・タイムズ紙などの報道によれば、以前ガザで支援物資の配布拠点などを警備していたUGソリューションズ社などが、トランプ氏の計画下で新たなビジネスチャンスを積極的に模索しています。ある請負業者は、現在の状況をかつてのイラクやアフガニスタンの再来のように捉え、多くの企業が民営化された支援事業から利益を得ようと群がっている実態を明かしています。

こうした動きは、人道支援と軍事作戦の境界をさらに曖昧にし、パレスチナの人々にさらなる苦しみをもたらす恐れがあります。平和委員会の取り組みは、かつての「ガザ人道基金(GHF)」と同様のモデルを踏襲しているように見受けられます。このモデルは、経験豊富な支援団体ではなく軍事計画担当者や利益追求者によって構想されたもので、中立的な組織ではなく、米国の税金で雇われた民間請負業者がイスラエル軍の統制下で支援システムを運用する仕組みです。過去の事例では、イスラム教に否定的な姿勢を持つ武装グループに近い人物が警備にあたるなど、不透明な運営が指摘されてきました。また、物資の配布がガザ市以南の特定の場所に限定されたことで、北部の飢餓を加速させるといった、公平性の原則を著しく欠く事態を招いています。

現地の医療現場からは、組織的な物資の剥奪がもたらす惨状が報告されています。2024年12月に現地で活動した医師によれば、子供たちは重度の栄養失調に苦しみ、タンパク質不足で数ヶ月前の傷さえ癒えない状態にあります。汚染された水によるA型肝炎の蔓延や、燃料不足による衛生システムの崩壊も深刻です。医療従事者は、麻酔なしでの切断手術や、助かる見込みの高い子供を優先して選別せざるを得ないなど、極限の倫理的決断を強いられています。これらは紛争による自然な結果ではなく、組織的な供給制限がもたらした予見可能な事態であると記事は指摘しています。

国際法では、民間人の生存を脅かす生活条件を意図的に課すことを禁じていますが、現実には経験豊富なNGOが排除され、軍事化された不透明なシステムへの置き換えが進んでいます。トランプ政権の平和委員会は、人道危機の解決策というよりも、民間警備会社にとっての永続的で収益性の高い事業へと危機を変質させるものだと批判されています。軍事的な統制から支援を切り離し、中立的な人道支援組織に権限を戻さない限り、支援は単なる戦争の道具に成り下がってしまうと、記事は強く警告しています。

イラン、第4の極へ

Opinion | The War Is Turning Iran Into a Major World Power - The New York Times [LINK]

【海外記事より】これまで世界のパワーバランスは、アメリカ、中国、ロシアの3極を中心に動いていると考えられてきました。しかし、シカゴ大学のロバート・ペイプ教授は、世界秩序を劇的に塗り替える「第4の極」として、イランが急速に台頭していると指摘しています。イランの力は経済規模や軍備の総量ではなく、世界経済の急所であるホルムズ海峡を実質的に支配しているという事実に由来します。

現在、世界の石油と液化天然ガスの約5分の1がこの海峡を通過していますが、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事作戦をきっかけに、イランは海峡の「選択的封鎖」を敢行しました。海峡を物理的に完全に閉鎖しなくとも、数日おきに貨物船を攻撃し、保険会社が戦争リスクを理由に保険引受を停止、あるいは保険料を跳ね上げる状況を作るだけで、海上交通量は9割以上減少します。現代経済においてエネルギーは、単に存在すれば良いわけではなく、予測可能なリスクと規模で「時間通り」に届く必要があります。この信頼性が崩れた今、エネルギーアクセスは市場取引ではなく、複雑な戦略的課題へと変質しました。

この状況は、アメリカにとって極めて不利な非対称性を生んでいます。アメリカが全輸送船をドローンやミサイルから守るには膨大な軍事資源を24時間投入し続けなければなりませんが、イランは時折攻撃を仕掛けるだけで供給の信頼性を破壊できるからです。フランスのマクロン大統領が「武力による海峡開放は非現実的だ」と述べたように、イランの合意なしには石油の安定供給が保証されない現実を世界が認め始めています。これにより、湾岸諸国や日本、韓国、インドといったエネルギー依存度の高い国々は、自国の輸出入の安定を握るイランに対して妥協や配慮を迫られることになります。

さらに深刻なのは、イラン、ロシア、中国の利害が一致し始めている点です。ロシアはエネルギー価格の高騰を歓迎し、中国はイランとの連携を強めることで資源の確保を優先します。仮にこれら3国が緩やかな「エネルギー・カルテル」を形成し、世界の石油供給の約30%をコントロールする事態になれば、欧米の権威は失墜し、世界秩序は不可逆的に変化します。アメリカは、海峡の支配権を取り戻すために出口の見えない長期戦に挑むか、あるいはイランを新たな世界の中心勢力として受け入れるかという、極めて困難な選択を迫られていると、著者は警鐘を鳴らしています。

米消費者への「爆撃」

The Market Law of One Price – How the Donald Bombed Energy Consumers, Too - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領がネタニヤフ首相の誘いに乗り、イランに対して全面的な軍事攻撃を開始したことで、エネルギー市場は混迷を極めています。全米のガソリン価格が1ガロン4ドルを突破し、さらなる上昇が見込まれる中、大統領は必死に事態の収拾を図ろうとしています。しかし、彼が打ち出した「アメリカは中東からの石油輸入に依存していないため、ホルムズ海峡の封鎖は他国の問題だ」という論理は、市場の現実を無視した大きな誤解であると、元米予算管理局長のデイビッド・ストックマン氏は指摘しています。

現代のエネルギー市場には「一物一価の法則」が存在します。デジタル化された今日の市場では、物理的な石油の流れ以上に、世界的な供給と需要のバランスを反映した価格情報が瞬時に共有されます。もし欧州やアジアで石油価格が高騰すれば、裁定取引、いわゆるアービトラージが働き、割安な米国内のエネルギーも輸出へと回され、最終的に世界の価格は均衡します。つまり、アメリカがエネルギー自給を達成していても、世界的な価格高騰の影響を100%受けることになるのです。

具体的にデータを見ると、2025年のアメリカの石油・ガス生産量は日量4110万バレル(石油換算)に達し、国内需要の3630万バレルを上回っています。この余剰分が輸出されることで、国内価格は世界市場と直結しています。特に天然ガス市場では、イランによるカタールの液化天然ガス(LNG)施設への攻撃で欧州の価格が急騰しました。現在、米国内のガス価格は欧州のスポット価格のわずか12%程度という極端な格差が生じており、市場原理によって米国のガスは急速に海外へ引き寄せられています。この輸出の加速は、やがて米国内の供給を絞り、一般家庭の光熱費を押し上げる結果を招きます。

トランプ大統領は、アメリカを世界市場から切り離された「安価なエネルギーの島」にできると信じているようですが、それは妄想に過ぎません。2026年初頭に1バレル60ドルだった原油価格は、紛争によって100ドルを超え、それに連動して米国内のガソリン価格も上昇し続けています。結局のところ、世界最大の供給拠点の一つであるペルシャ湾の安定を自ら破壊した以上、その代償として米国の消費者が高価なエネルギーを買い支えることになるのは避けられない事実なのです。

中国の硫酸禁輸、銀不足に拍車か

Chinese Sulfuric Acid Export Ban Could Exacerbate Physical Silver Shortage [LINK]

【海外記事より】中国当局が来月から硫酸の輸出を停止する方針を示したことで、すでに逼迫している銀の供給不足がさらに悪化する可能性が出てきました。この輸出禁止措置は2026年末まで続く見通しです。一見すると銀とは無関係に思える硫酸ですが、実は銅の採掘において不可欠な材料です。銅鉱石から成分を溶かし出すために大量の硫酸が使用されるため、その不足や価格高騰は銅の生産量に直結します。ここで重要なのは、世界で採掘される銀の約70%が、銅などの生産過程で生まれる副産物であるという点です。つまり、銅の採掘が減少することは、そのまま銀の生産減少を意味するのです。

この問題の背景には、イランでの紛争による物流の混乱があります。中東は世界の硫黄供給の約3分の1を占めていますが、ホルムズ海峡の封鎖などにより出荷が制限され、世界的に硫酸の原材料が不足し、価格が急騰しています。この影響はチリやコンゴ民主共和国、ザンビアといった主要な銅産出国を直撃しており、特に世界最大の銅生産国であるチリでは、先月だけで硫酸価格が44%も上昇しました。チリは中国から年間約100万トンの硫酸を輸入しているため、中国の輸出停止による損失を補うことは極めて困難であると予測されています。たとえ紛争解決に向けた進展があったとしても、供給網へのダメージは深く、中国による輸出規制は長期化する可能性が高いと分析されています。

現在、銀の市場は深刻な供給不足に直面しています。現物投資の需要が20%増加していることなどを背景に、2026年には6年連続で需要が供給を上回る見通しです。シルバー・インスティテュートの暫定データによれば、昨年の不足分を含めた過去5年間の累積不足量は8億オンスを超えており、これは世界の一年間の鉱山生産量に匹敵します。供給が不足すれば地上在庫を取り崩すしかありませんが、ロンドン市場の保管在庫はこの5年で約40%減少し、アメリカのCOMEX在庫にいたっては約70%も減少しています。上海の在庫も過去10年で最低水準にあり、こうした現物の不足が、最近の銀価格を1オンスあたり100ドル超へと押し上げた一因となっています。今回の中国の動きがどこまで銀の生産に波及するかは不透明ですが、継続的な不足状態にさらなる圧力を加える要因として、今後の動向が注目されます。

インフレ、本当の話

CPI Spikes on Energy Prices But That's Not the Real Inflation Story [LINK]

【海外記事より】アメリカの3月の消費者物価指数、いわゆるCPIのデータが発表され、イランとの紛争によるエネルギー価格の急騰が反映される結果となりました。労働統計局が発表したデータによると、CPIの算出に用いられる商品バスケットのコストは前月比で0.9%上昇しました。これはパンデミック後の急騰がピークに達した2022年以来、単月としては最大の上昇幅です。この大幅な月間上昇により、年間の総合CPIは3.3%に達しました。これは2024年3月以来の高水準ですが、月間および年間の数字は、いずれも事前の予測通りの内容となっています。今回のCPIの上昇は、ほぼ全面的にエネルギー価格の急騰によるものです。エネルギー指数は前月比で10.9%上昇し、その背景にはガソリン価格の21.2%という大幅な月間上昇がありました。一方で、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前月比0.2%の上昇に留まり、比較的落ち着いた動きを見せています。年間のコアインフレ率は2月の2.5%から3月の2.6%へとわずかに上昇しました。多くの指標では価格上昇が見られず、例えば食品価格は2月から3月にかけて横ばいであり、サービス価格も前月比0.2%増と穏やかな推移でした。

しかし、著者のマイク・マハレイ氏は、政府が発表するCPIのデータは実態を正確に反映していない可能性があると指摘しています。現在のCPIは過去の不透明なデータを算入しているほか、労働データの頻繁な修正も数字の信頼性に疑問を投げかけています。さらに、1990年代に改定された現在のCPI算出式は、実際の物価上昇を過小評価するように設計されているという見方もあります。仮に1970年代に用いられていた古い算出式を適用すれば、現在のCPIは公式発表の約2倍にあたる6%に近い数字になると推測されています。CPIはあくまで政府が選定した特定の商品群の価格動向を示すものに過ぎず、経済学的な定義におけるインフレの全貌を語るものではありません。本来のインフレとは、単なる「物価の上昇」ではなく、通貨供給量と信用の増加を指します。消費者物価の上昇は、この通貨膨張によって引き起こされる一つの症状に過ぎないのです。

実際の通貨供給量に目を向けると、エネルギー価格の変動とは無関係にインフレが加速している実態が浮かび上がります。連邦準備制度、いわゆるFRBのM2データに基づくと、通貨供給量は2025年2月の21.61兆ドルから2026年2月には22.67兆ドルへと増加しました。これは4.9%の増加に相当し、実質的なインフレ率は5%に近い水準であることを示唆しています。通貨供給量は2023年10月に底を打って以降、再び増加に転じており、現在はパンデミック時のピークを大きく上回っています。さらに、FRBは昨年12月から事実上の量的緩和を再開し、再び米国債の買い入れを通じて通貨を創出しています。このような通貨の膨張は、最終的に資産価格や消費者物価の上昇を招き、通貨価値の下落をもたらします。仮に紛争が終結してエネルギー価格が落ち着いたとしても、政府が通貨を増やし続ける限り、インフレという根本的な問題は解決しないと記事は締めくくっています。

欧州でエネルギー配給制

Europe Begins Energy Rationing As The Crisis Moves Into Daily Life | Armstrong Economics [LINK]

【海外記事より】欧州連合(EU)は現在、イランとの戦争によるエネルギー危機の深刻化を受け、市民に対して在宅勤務や運転の抑制、制限速度の引き下げなど、エネルギー消費の削減を求める緊急対応を開始しました。政府が数百万人の労働者に在宅を促すという事態は、水面下で極めて深刻な供給不足が形成されていることを示しています。ホルムズ海峡の封鎖により、世界の石油・ガスの約20%が通過する主要な動脈が寸断されました。欧州は石油の7%、液化天然ガス(LNG)の8.5%、さらに航空燃料やディーゼルの最大40%をこのルートに依存しており、これらを短期間で代替する手段は存在しません。

現在、欧州各国の政府が行っているのは、供給を増やせない代わりに需要を抑え込もうとする事実上の「配給制」への移行です。国際エネルギー機関(IEA)は、高速道路の速度制限や自家用車の利用制限、公共交通機関への転換、そして可能な限りのリモートワークを推奨する措置を概説しました。これはもはや環境政策ではなく、1970年代のオイルショックと同様の、生活の制限による危機管理です。一部の国では週休4日制の導入や、移動を不可欠な活動のみに制限する動きもあり、エネルギー問題が机上の理論ではなく、日々の経済活動に直接的な影響を与え始めていることを示しています。

今回の供給ショックは、1973年や1979年のショック、あるいは近年のエネルギー供給寸断を合わせたものよりも深刻であると警告されています。欧州は昨冬の影響でガス貯蔵量が容量の30%程度と低い水準でこの危機に直面しており、価格高騰と供給不足に対して非常に脆弱な状態にあります。現在は封鎖前に輸送中だった石油やガスがまだシステム内に残っているため、最悪の事態は先送りされていますが、これらが枯渇すれば、これまでの「勧告」としての需要削減は、回避不能な「義務」としての配給制へと変わるでしょう。

すでに産業界への影響も現れ始めています。化学や製造業などのエネルギー集約型セクターではコストが急騰しており、操業を維持するために最大30%の上乗せ料金を課したり、減産を余儀なくされたりするケースが出ています。これは生産の停滞と価格上昇、そして経済成長の鈍化が同時に進む、典型的な「スタグフレーション」のシナリオです。当局はパニックを避けるために段階的な措置を講じていますが、国民の働き方や移動手段の変更を求める現時点ですでに危機の領域に入っており、この影響は長期にわたる可能性が高いと見られています。

金銀、空売りの買い戻し続く

The Big 8 Commercial Shorts Continue to Cover | SilverSeek [LINK]

【海外記事より】金・銀市場で、大手商業トレーダーによる空売りの買い戻し(ショートカバー)が続いています。金価格はニューヨーク時間の木曜夜から金曜午前にかけて軟調に推移し、一時は1オンスあたり4,747.20ドルのスポット価格で引け、前日比で18.30ドルの下落となりました。取引高は10万4,000枚と極めて低調でしたが、特筆すべきは米先物市場(COMEX)における建玉の状況です。金の総建玉数は2009年半ば以来、約17年ぶりの低水準にまで減少しており、市場が極限まで整理されていることを示唆しています。

銀市場も金とほぼ同様の価格推移をたどりましたが、価格面では1オンスあたり75.764ドルのスポット価格で引け、前日比で55セントの上昇となりました。銀の建玉数も前週からさらに減少し、14年ぶりの低水準となっています。最新の建玉報告によると、大手8社の商業トレーダーによる純空売り残高は、金・銀ともに記録的な低水準を更新し続けています。特に銀においては、これら大手勢の空売りポジションが過去最低を記録しており、市場の需給が構造的に逼迫していることを裏付けています。銀の現物需要は依然として旺盛で、今年に入ってからのCOMEXからの現物引き出し量は1億3,500万オンスを超えています。

貴金属市場全体の動向を見ると、金と銀の価格比率は62.7対1となっており、歴史的な平均値である15対1と比較すると、依然として銀が極端に割安な状態に据え置かれています。もし歴史的な比率にまで修正されれば、現在の金価格を基準にすると銀は1オンス300ドルを超える計算になります。現在の市場では、中央銀行や大手銀行による価格操作とも取れる動きが散見されますが、銀の供給不足という構造的な欠陥は6年連続で続いており、現物在庫の枯渇が懸念されています。

また、金融市場全体に目を向けると、米10年債利回りは4.31%台で推移しており、連邦準備理事会(FRB)による市場介入が利回りのさらなる上昇を抑え込んでいる状況です。先般発表された消費者物価指数(CPI)の結果を受け、年内の利下げ観測は事実上消滅したと見られています。このような不透明な経済環境下で、ヘッジファンドや大手銀行はデリバティブ市場で膨大なポジションを抱えており、米国の大手4銀行が保有する貴金属関連のデリバティブ残高は8,300億ドルを超え、前四半期比で18%増加しました。これは現物の裏付けなしには決してカバーできない規模に達しており、将来的な価格高騰の火種となっている可能性が指摘されています。

米国債に何が起こっているか?

What’s going on with dollar debt? [LINK]

【海外記事より】イランとの戦争が、諸外国の政府にドル建て債務を手放させる要因になっているのではないかという疑問が、現在市場で渦巻いています。米国債の入札が低調なことや、開戦以降に10年物国債の利回りが一時50ベーシスポイント近く急騰したことがその背景にあります。連邦準備理事会(FRB)の保管データによると、開戦以来、米国外の中央銀行は820億ドル相当の米国債を売却しており、その保有残高は2012年以来の低水準となっています。この売却は、必ずしも反米感情によるものではなく、激動の時代に備えて防衛的な資金を確保しようとする各国の動きを反映していると考えられますが、イランがホルムズ海峡の通行料を中国人民元や暗号資産で支払うよう要求しているとの報道もあり、市場の懸念を強めています。

一方で、中央銀行以上に注目すべき存在がヘッジファンドです。ニューヨーク連銀の調査によれば、2018年以降、レバレッジを効かせたヘッジファンドが米国債の保有量を劇的に増やしています。特に、先物と現物の価格差を利用する「ベーシス取引」や、異なる証券間で入れ替える「スワップ取引」が急増しました。2025年末時点で、ヘッジファンドの米国債買い持ちポジションは2.4兆ドルに達しており、3年前の約3倍に膨れ上がっています。中国政府などが米国債の購入を控える中で、ヘッジファンドが市場の主要な買い手となっているのです。驚くべきことに、ケイマン諸島を拠点とするヘッジファンドによる保有額は、今や日本や中国、イギリスを上回り、外国勢としては最大の米国債保有主体となっています。

ヘッジファンドによる需要は、銀行が市場仲介業務を縮小する中で流動性を提供するという利点もありますが、同時に大きなリスクも孕んでいます。ヘッジファンドの取引は政治的バイアスがなく純粋に経済合理性に基づいて行われるため、金利の上昇などで状況が変化すれば、一斉に市場から撤退して金融安定性を損なう恐れがあります。これは2020年3月のコロナショックや、2025年4月の関税導入時にも見られた現象です。ベッセント財務長官は市場の安定維持に努めており、現在のところイランとの戦争による混乱は限定的ですが、戦争が長期化してインフレリスクや地政学的ショックが重なれば、この平穏が続く保証はありません。

来年、アメリカは33%に及ぶ公的債務、金額にして10兆ドルの国債を借り換える必要があります。これは投資家がイラン情勢だけでなく、ケイマン諸島のヘッジファンドの動向にも目を光らせておくべき理由です。中央銀行の動きが注目を集めやすい一方で、実際には不透明なヘッジファンドの資金フローが、今後の米国債市場や世界の金融システムの安定を左右する鍵を握っています。経済のファンダメンタルズが急変した際に、これらの巨大なポジションが維持されるのか、あるいは一気に解消されるのかが、今後の大きな焦点となるでしょう。ベッセント長官による巧みな市場管理が今後も機能し続けるかどうかに、市場の期待と不安が交錯しています。

交渉を破綻させた「毒薬」

Joe Kent Says Demand for Zero Iranian Nuclear Enrichment Is a 'Poison Pill' That Killed Pakistan Talks - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】イランとの戦争に反対して国家対テロセンターの局長を辞任したジョー・ケント氏は、パキスタンで行われた米イラン交渉が合意に至らなかった原因について、アメリカ側が突きつけた「イランによる核濃縮の完全停止」という条件が、交渉を台無しにする「毒薬(ポイズン・ピル)」になったとの見解を示しました。ケント氏は自身のSNSにおいて、イスラマバードでの交渉はこの条件によって決裂したようだと指摘し、休戦期間が残り9日ある中で、アメリカはイスラエルの目標ではなく、自国の目標を追求すべきだと述べています。報道によれば、アメリカが提示した条件には、全てのウラン濃縮の中止や主要な核施設の解体、さらに60%まで濃縮されたウランの回収などが含まれており、これらはイラン側が繰り返し拒否してきた内容です。

ケント氏は退任後のインタビューなどで、現在のアメリカ政府が「いかなる核濃縮も核兵器の開発に直結する」と決めつけている現状を批判しています。同氏の指摘によれば、戦争が始まる前、イラン側は60%の濃縮ウランをより低いレベルに希釈することや、兵器級に必要な90%を大幅に下回る水準まで濃縮度を下げる意向を示していました。また、2025年6月のアメリカによる空爆で濃縮プログラムが一時停止して以降、イランは3年から5年間にわたってウラン濃縮を停止する用意もあったと報じられています。しかし、交渉後の記者会見でバンス副大統領が述べたように、アメリカ側は、イランが核兵器を求めないという確約だけでなく、核兵器を迅速に製造可能にするいかなる手段も持たないことを求めており、濃縮技術そのものを拡散の脅威と見なしています。

これに対しケント氏は、イラン政府が核兵器を追求しないことは長年の公式方針であることを強調しています。トランプ大統領が掲げてきた譲れない一線は、あくまで「イランに核兵器を持たせないこと」であり、「核濃縮の完全停止」ではなかったはずだとケント氏は主張します。イラン側も核兵器を持たないことには同意していますが、自国の安全保障上の政策を維持するために、核濃縮能力自体は保持し続ける必要があると考えています。ケント氏は、アメリカとイランの間には実行可能な合意案が存在していたものの、そのような妥協案は、アメリカにイランとの戦争を継続させたいイスラエルにとっては脅威であったと分析しています。さらに、ケント氏はイスラエルが核兵器を使用する可能性についても言及し、現在の交渉の背後にある複雑な利害関係に警鐘を鳴らしています。

トランプ氏、海峡封鎖を宣言

Trump Declares US Blockade on Strait of Hormuz After No Deal Reached With Iran - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領は、パキスタンで行われたイランとの直接交渉が決裂したことを受け、アメリカ海軍に対してホルムズ海峡の封鎖を命じたと発表しました。アメリカとイランの当局者は約20時間にわたる協議を行いましたが、合意には至りませんでした。トランプ氏は、核問題に関する合意が成立しなかったと述べており、アメリカ側は引き続きイランに対して核濃縮を完全に停止するよう求めている模様です。また、交渉におけるもう一つの大きな障害として、イスラエルがレバノンでの停戦を拒否し、空爆を継続している事実が挙げられています。米イラン間の休戦開始以降も、イスラエルの攻撃によって数百人の民間人が犠牲になっています。トランプ氏は自身のSNSにおいて、会議自体は順調で多くの点で合意できたものの、最も重要な核問題で折り合えなかったと説明しています。そのため、直ちにアメリカ海軍がホルムズ海峡を出入りする全ての船舶を封鎖するプロセスを開始するとしています。

トランプ氏は、イランが「どこかに機雷があるかもしれない」と主張し、航行の自由を妨げていることは世界に対する恐喝であると批判しました。さらに同氏は、イランに通行料を支払った全ての船舶を国際水域で捜索し、阻止するよう海軍に指示したことも明かしています。イラン軍に対しては、アメリカ側や平和的な船舶に発砲すれば、徹底的に反撃するという強い警告を発しています。これを受けて、アメリカ中央軍は米東部標準時間で月曜日の午前10時(日本時間で火曜日の深夜0時)から、イランの港に出入りする全ての海上交通の封鎖を開始すると発表しました。この措置はアラビア湾やオマーン湾にある全てのイランの港を対象とし、あらゆる国の船舶に対して公平に実施されますが、イラン以外の港へ向かう船舶の自由な航行は妨げないとしています。トランプ氏は、イラン側が停戦合意の一環として海峡を開放しなかったことを不誠実だと非難していますが、合意にはレバノンでの停戦も含まれており、イスラエルの爆撃激化を受けてアメリカ側が最終的にこれを拒否したという経緯があります。

バンス副大統領も、核問題が合意の主な妨げになったとの認識を示しました。バンス氏は21時間に及ぶ交渉を振り返り、イラン側と議論を重ねたことは評価しつつも、合意に至らなかったことはアメリカよりもイランにとって悪いニュースになると述べています。アメリカ側は超えてはならない一線を明確にし、譲歩できる点とできない点を提示しましたが、イラン側がその条件を受け入れなかったとしています。一方、イラン側の代表団は、過去の経験からアメリカ側を信頼することができなかったと表明しました。イランのガリバフ議長は、自分たちは必要な善意を持って臨み、前向きな提案も行ったものの、最終的に相手側が信頼を得ることに失敗したと説明しています。なお、イラン代表団はパキスタンへの航空便に、2月にアメリカのミサイル攻撃で犠牲となった子供たちの名前を冠し、その遺影を携えて交渉に臨んでいました。アメリカとイランの対立は、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖という新たな局面を迎えています。

2026-04-12

アフリカの中銀、金購入の波に乗る

Global gold accumulation hits about $2 billion as African central banks join buying wave | Business Insider Africa [LINK]

【海外記事より】世界の中央銀行による金(ゴールド)の蓄積が加速しており、約20億ドル相当に達しています。これは年初の停滞からの回復を示すもので、外貨準備の多角化を目指す動きが持続していることを反映しています。中央銀行による需要は、金融システム全体に均等に広がっているわけではなく、特定の少数の買い手に集中しているのが特徴です。ここ数年で60以上の中央銀行が金を追加していますが、需要の大部分は新興国を中心とした積極的な蓄積を行うグループによって支えられています。

中でもポーランド国立銀行は2025年に約80から95トンを追加するなど極めて積極的な姿勢を見せており、中国人民銀行も16か月以上にわたり一貫して買い増しを続け、その保有量は2300トンを超えています。カザフスタンも着実に保有量を増やしており、トルコやインドは国内の経済状況や市場環境に応じて、購入と一時停止を繰り返す周期的なアプローチをとっています。こうした特定の国々による集中した需要によって、世界全体の金需要は2022年以降、過去の平均を上回る高い水準を維持しています。

一方で、アフリカ諸国の中央銀行も、規模こそまだ控えめですが、戦略的な参加を強めています。ウガンダは、通貨のボラティリティへの露出を減らし、バランスシートの安定性を高めることを目的として、国内で産出される金を購入するプログラムを開始しました。また、ガーナは自国通貨セディを支えるために積極的に金を増強しており、エジプトは安定性を重視した慎重なアプローチを維持しています。ジンバブエでは金に裏打ちされた通貨を試験的に導入し、短期的には安定を達成しましたが、信頼性の面では依然として課題を抱えています。

アフリカの他の地域でも動きが見られます。ケニアは現在、金の保有量が極めて低い水準にありますが、政策担当者は段階的な蓄積を開始する計画を示唆しています。また、コンゴ民主共和国は2026年に15トンの小規模採掘による金生産を目標に掲げており、鉱産物の管理を強化し、国家としての保有量を増やす取り組みを進めています。世界の中央銀行の保有量全体に占めるアフリカの割合は依然としてわずかですが、不確実な金融市場において、金の重要性を再認識し、長期的かつ構造的に保有を増やしていくという世界的な潮流に同調する動きが鮮明になっています。

イラン戦争、世界経済に重い代償

The Unwarranted Iran War: US-China Stakes, Regional Costs, Global Losses - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談が、アメリカのイランに対する軍事作戦の影響で延期されました。この延期は、トランプ政権がイランの抵抗力を大幅に過小評価していたことを示唆しています。開戦から1か月が経過した現在、アメリカとイスラエルは制空権を握っているものの、戦況は膠着状態にあります。イランはミサイルや代理勢力、そしてホルムズ海峡という地理的優位性を利用した拒否戦略を維持しており、決定的な勝利は見えていません。この事態により、世界は1970年代以来最悪のエネルギー危機に直面しています。

今回の危機は、米中両大国にとって異なる課題を突きつけています。アメリカは中東各地に基地や艦隊を保有しているため軍事的な負担が非常に大きく、戦略的に限界まで引き伸ばされています。対して、軍事的プレゼンスが最小限である中国は、エネルギーの輸入依存度が高いために経済的な打撃を直接的に受けています。現在、ホルムズ海峡を通過する通常交通の94%以上が停止し、世界の石油消費量の20%を脅かす事態となっています。原油価格は50%以上急騰して1バレル110ドルから120ドルに達し、世界的な航空路の閉鎖や海運ルートの変更など、経済システム全体に深刻な悪影響が及んでいます。

イラン国内の被害も甚大です。アメリカとイスラエルによる攻撃で、学校や病院を含む9万か所以上の民間施設が破壊され、320万人以上が国内避難民となりました。レバノンでも国民の5、6人に1人が避難を余儀なくされています。トランプ大統領は「任務完了」を繰り返し主張していますが、実態は長期的な消耗戦の様相を呈しています。イスラエルではイランのミサイル攻撃により迎撃ミサイルの備蓄が底を突き始め、政府に対する抗議デモが激化しています。また、中東に駐留するアメリカ軍の基地の多くも、ミサイル攻撃により居住不可能な状態に陥っていると報告されています。

経済的な余波は地域全体に広がり、イランやイスラエルなどの当事国だけでなく、エジプトやトルコ、さらには湾岸諸国も大幅なマイナス成長に直面しています。アメリカは現在、この戦争に1日あたり10億ドル近い巨費を投じており、初月だけで約370億ドルを費やしたと推計されています。もしホルムズ海峡の閉鎖が続き、戦争がさらに長引けば、原油価格は150ドルから200ドルにまで跳ね上がる最悪のシナリオも懸念されます。現代のグローバル経済はかつてないほど相互に依存しているため、この危機は単なる地域紛争に留まらず、世界経済全体に極めて重い代償を強いることになるでしょう。

米財政赤字の膨張加速

Coming Soon – Federal Red Ink Barfing Skyward Like You’ve Never Seen - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカの公的債務が39兆ドルの大台を突破し、国家財政が空前の危機に向かって猛スピードで突き進んでいます。わずか4年前は29兆ドル、9年前は19兆ドルの水準でしたが、瞬く間に膨れ上がりました。この急激な負債の増大において、トランプ大統領が果たした役割は極めて甚大です。大統領の1期目に8兆ドル、2期目の現在ですでに3兆ドルの債務が上積みされており、トランプ政権下で発生した計11兆ドルの負債は、ジョージ・ワシントン以来のアメリカの全公的債務の28%を占める計算になります。さらに現在進行中の中東情勢の緊迫化に伴い、国防費のさらなる増大が確実視されており、財政の赤字は今後さらに加速することが懸念されています。

トランプ政権がイランに対して示した15項目の要求プランは、最初から交渉を目的としたものではなく、拒絶されることを前提とした圧力のための文書であったと分析されています。イラン側が自国の戦略的柱をすべて解体することを求めるこのプランは、拒絶されることで次の段階の軍事攻撃や事態の激化を正当化するための口実として存在しています。一方で、2026年度の予算状況を見ると、2月までの5か月間で支出が3.1兆ドルを超えたのに対し、収入は2.1兆ドルにとどまっており、すでに1兆ドルもの赤字を出しています。これは収入の約48%に相当する巨額の赤字ですが、トランプ政権下のワシントンでは、一時的なタイミングのずれによる赤字の微減を捉えて楽観視する向きさえあります。

しかし、足元の税収の内訳を詳しく見ると、その楽観が幻想であることが分かります。これまでの税収増の95%は、関税や富裕層のキャピタルゲイン課税といった、税収全体のわずか15%を占めるに過ぎない不安定な項目によって支えられています。すでに最高裁判所がトランプ氏による一部の関税措置を無効化する判断を下しており、還付の手続きが進めばこの税収増は消滅します。また、エネルギー価格の高騰や製造業の混乱により、昨年の株式市場のような大幅な利益を期待することも難しくなっています。対照的に、所得税や給与税といった税収の柱となる項目の伸びは前年比でわずか0.7%にとどまっており、財政の基礎体力は極めて脆弱な状態にあります。

社会保障費の増大や金利負担の急増により、連邦予算の支出は前年比で7%増加する見通しでしたが、現在は軍事費の爆発的な増加により2桁の伸びに向かっています。税収が横ばいであるにもかかわらず、支出だけが跳ね上がるという構造的な欠陥に加え、給与の減少とインフレが同時に進むスタグフレーションの兆候も現れています。かつての石油危機をも上回るような世界的な経済混乱が目前に迫る中、アメリカの財政赤字はこれまでにない規模で空へと噴き上がろうとしています。軍事的な勝利を追求する代償として、アメリカは深刻な財政破綻のリスクという、極めて重い現実を突きつけられているのです。

キューバが屈しない理由

Why Trump’s Cuba Plan Won’t Work - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ政権が進める対キューバ政策が、なぜうまくいかないのかについて米国の専門家が分析しています。共和党や民主党の強硬派はキューバの政権交代を望んでいますが、世論調査では米国、キューバ、そして国際社会のいずれにおいても、こうした強硬路線は支持されていません。マルコ・ルビオ氏ら強硬派は、キューバがかつて米国のカジノ企業が支配し、親米独裁者のバティスタ氏が統治していた時代のように、経済を完全に開放することを求めています。トランプ政権はベネズエラで行ったように「最大級の圧力」をかけ、米国に都合の良い新たな指導者を据えようと交渉を進めていますが、ハバナの支援ネットワークが崩壊しているというホワイトハウスの認識は、希望的観測に過ぎません。

米国は1958年から続く経済封鎖をトランプ氏のもとでさらに強化しており、島内の状況は深刻です。1日20時間に及ぶ計画停電が発生し、病院では人工呼吸器の停止により患者が亡くなり、冷蔵設備の不足で食品が傷んで子供の栄養失調率が1990年代以来の水準に達しています。しかし、これほどの苦難に直面してもキューバ政府は屈服する気配を見せていません。キューバの人々は米国の支配下にあった過去を忘れておらず、また現在のベネズエラで米国が現地の人々を顧みず資源を搾取している様子を目の当たりにしています。若者による大規模な抗議活動も起きていますが、彼らが批判しているのは米国とその経済封鎖であり、国内からのクーデターが起きる可能性は極めて低いのが現状です。

米国によるキューバへの介入の歴史は長く、1961年のピッグス湾侵攻の失敗やフィデル・カストロ氏に対する数百回の暗殺計画など、あらゆる手段が講じられてきましたが、どれも成功していません。トランプ氏やルビオ氏ら強硬派の多くは、旧バティスタ政権に関わりのあった富裕層の家系の出身であり、社会主義キューバに対して個人的、イデオロギー的な復讐心を抱いています。彼らが望んでいるのは、米国の企業や軍の言いなりになるかつての親米政権の復活です。しかし、キューバは米国が過去に打倒してきた政権よりも回復力があり、強固な体制を築いています。1991年のソ連崩壊により経済の80%を失った際も、彼らは生き延びてきました。

現在のトランプ政権は、ウクライナやイラン、ガザなど世界各地の軍事作戦に忙殺されており、歴史的に見ても戦線を広げすぎた帝国は衰退の道を歩みます。さらにキューバは、医療外交などを通じて1990年代よりも多くの同盟国を得ています。ロシアは石油を、中国は食料支援や投資を行い、カナダは観光客を送り続けています。また、キューバにはイラクやベネズエラのような、米国の企業が介入を強く望むような戦略的資源も存在しません。米国が描く「従順な属国」という幻想に基づく戦略は、キューバの人々が望まないものであり、経済封鎖は苦しみを生むだけで降伏をもたらすことはありません。真の進展には、外交的なパートナーシップと人道主義が必要なのです。

米安保支出、実質2.5兆ドル超えへ

Trump's Total 2027 National Security Spending Will Exceed $2.5 Trillion - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が要請した2027年度の軍事予算案は、表面上の数字である1.5兆ドルをはるかに上回り、実際の国家安全保障関連支出の総額は2.5兆ドル(約375兆円)を超える見通しです。これは、長年ワシントンで国防分析に携わってきたベテランアナリスト、ウィンスロー・ウィーラー氏が算出したものです。同氏は、国防総省(ペンタゴン)の予算だけでなく、他省庁による軍事関連支出や、膨大な軍事費を賄うために積み上がった国債の利払い分などを精査した結果、この驚異的な数字を導き出しました。

ホワイトハウスの予算管理局によれば、2027年度の1.5兆ドルという軍事予算は、今年度から約42%もの大幅な増額となります。この内訳には、ペンタゴンの基本予算に加えて、議会の調整手続きを通じて確保される「追加の義務的財源」3500億ドルが含まれています。トランプ政権は昨年成立した大規模な歳出法案によってペンタゴン予算を底上げしており、来年度も同様の手法で巨額の軍事費を確保しようとしています。また、イランとの戦争で消費された防空ミサイルや弾薬の在庫を補充するため、さらに800億ドルから2000億ドルの追加支出が必要になると見込まれています。

ウィーラー氏は、こうした補正予算や追加支出が、使途の詳細が不明確なまま議会で承認される実態を厳しく批判しており、それらを「裏金(スラッシュ・ファンド)」と呼んでその不透明さを指摘しています。トランプ氏は大統領就任当初、軍事予算の削減に関心があるかのような姿勢を見せていましたが、実際には軍事介入を劇的に拡大させ、過去に例を見ない水準の軍事支出を追求する形となりました。国家の安全保障に投じられるこの巨額の資金が、国民の生活や国の財政にどのような影響を及ぼすのか、その実態が問われています。

信頼失った米外交

Regime Uncertainty in Wartime America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカが帝国の末期にあることは、大統領がSNSに残す常軌を逸した投稿を、国民が日々確認しなければならないという現状によく表れています。イランに対し「文明を消滅させる」といったジェノサイド的な脅しをかける一方で、2週間の停戦と攻撃の延期を発表するという、支離滅裂な言動が繰り返されています。イラン側は、交渉の最中に爆撃を受けるという過去の経緯から、もはや現政権を一切信頼していません。この記事の著者アラン・モズレー氏は、こうした政府の行動が予測不能で不安定な状態を、経済学の用語を用いて「体制の不確実性」と呼び、その深刻な弊害を指摘しています。

経済において、政府の規制や課税が突然変わる可能性があると、投資家はリスクを恐れて投資を控えます。これと同じ論理が外交にも当てはまります。トランプ大統領は、平和的な交渉を進めていると言いながら、実際には「先制攻撃」という名の不意打ちを行い、国際法や憲法を軽視する姿勢を鮮明にしています。このような外交スタイルは、敵対国だけでなく同盟国に対しても、アメリカがもはや法や契約に基づく予測可能なパートナーではないというメッセージを送ることになります。信頼が損なわれた結果、将来のあらゆる交渉には多大な保証や検証が必要となり、それが国際的な取引や外交における大きなコスト、いわば「不確実性という税金」となってのしかかります。

たとえ今回の戦争がすぐに終結したとしても、失われた国家の信用を回復するには長い年月がかかります。大統領が自身の「直感」や「取引の術」の名の下に、文明の破壊や民間インフラへの攻撃を示唆することは、国際社会におけるアメリカの評判を決定的に傷つけました。一度費やされた信用は、後から買い戻すことはできません。この reputational disaster(名声の破滅)による代償は、ニュースのサイクルではなく、今後何年にもわたって測定されることになるでしょう。アメリカが法の支配に従う国家なのか、それとも選出された独裁者の衝動によって動く国家なのか。世界はその答えを冷徹に見つめています。

イラン攻撃、米国の闇

What Is Wrong With Us? | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカの法学者スコット・ボイキン氏は、トランプ政権によるイラン攻撃を「息を呑むほどの愚行」と断じ、自国がなぜこのような事態に陥ったのかを厳しく問い直しています。米インテリジェンス機関は、イランに核兵器プログラムは存在しないと繰り返し結論づけており、イランがアメリカに直接的な軍事脅威を与えていないことは明白です。しかし、トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相や一部の強硬派議員に同調し、イランを完全に破壊するというジェノサイド(大量虐殺)的な意図すら表明して、この挑発的な戦争を開始しました。現在、2週間の停戦期間に入っていますが、ペルシャ湾情勢はかつてない混迷を極めています。

この戦争の本質は、過去のイラク戦争と同じ「嘘」に基づいたものであると氏は指摘しています。アメリカの国益ではなく、地域の覇権を狙う他国の「夢」のために13人の米兵が命を落としました。トランプ氏は自身の公約を裏切り、世界経済を混乱に陥れていますが、その背景には軍需産業や外国政府から多額の資金提供を受けるシンクタンク、そして介入政策によって予算と権限を拡大させてきた政府内の専門職階級の存在があります。彼らにとって、他国への軍事介入は利益を生む「ビジネス」であり、たとえ大統領が変わっても、この巨大な構造的圧力を変えることは極めて困難であるというのが現実です。

さらに深刻なのは、米国民の約38%がいまだにこの戦争を支持しているという事実です。自分たちを脅かしていない国を徹底的に破壊することに賛成する数千万人の隣人が存在し、その無関心と冷酷さがこの無意味な殺戮を支えています。選挙や民主主義というシステムが、もはや平和を導く力として機能していないことが、今回の事態で露呈しました。空爆だけで体制転換を図ることは不可能であり、交渉を通じた意味のある勝利も期待できない中、トランプ氏は自らの失敗を認める誠実さも持ち合わせていません。権力が一部に集中し、理性を失った指導者が「感情」で戦争を動かす現状に対し、この記事はアメリカという国家が抱える深い闇を浮き彫りにしています。

停戦合意の詐欺

When Is a Ceasefire a Scam? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの間で合意された停戦について、元CIA工作員で安全保障の専門家であるフィリップ・ジラルディ氏は、これがイスラエルの利益を守り、次なる大規模攻撃への準備期間を稼ぐための「詐欺」に過ぎないと厳しく指摘しています。ホワイトハウスは、イスラエルの関与なしに停戦案を受け入れたかのように装っていますが、これまでのトランプ政権とイスラエルの蜜月関係を考えれば、ネタニヤフ首相が事前に計画を把握していなかったとは考えにくいと氏は述べています。実際に、停戦合意から24時間も経たないうちにイスラエルはレバノンへの猛烈な爆撃を再開し、数百人の民間人を殺害しました。これは、平和への動きを力ずくで阻止しようとするイスラエルの明確な意思表示と言えます。

さらに、停戦を継続するための交渉役に、J・D・ヴァンス副大統領だけでなく、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏らが起用されている点も、交渉を失敗させるための演出であると分析されています。クシュナー氏らはかつてイランやロシアとの交渉で成果を出せなかっただけでなく、熱烈なシオニストとしてイスラエルと深く結びついています。特にクシュナー氏については、数万人の遺体が埋まるガザの瓦礫の上に、トランプ氏の名を冠したリゾート地を建設することに関心があるのではないかと報じられており、こうした人物が中立な立場で平和交渉を導くことは期待できません。トランプ氏自身も、自らの政策に反対する保守派の言論人たちをSNSで激しく攻撃するなど、正常な判断力を欠いているのではないかと危惧されています。

世論調査では、イスラエルのために戦争を続けるトランプ氏の姿勢に、国民の不満はかつてないほど高まっています。しかし、イスラエルとそのロビー団体によるホワイトハウスへの圧力は極めて強く、ネタニヤフ首相は戦争を終わらせるつもりはないようです。ジラルディ氏は、今後イスラエルが中東の米軍を標的にした「偽旗作戦」を実行し、その罪をイランに着せることで、アメリカを戦争に引き留め続ける可能性すらあると警告しています。憲法によるチェック・アンド・バランスが機能せず、特定の外国や富豪の意向に左右される現在のワシントンの姿は、建国の理念から遠くかけ離れてしまったと、この記事は絶望に近いトーンで締めくくられています。

金、短期変動と長期上昇

Gold, Geopolitics, and Volatility: Insights from Joe Cavatoni [LINK]

【海外記事より】急速に変容する地政学環境の中で、金(ゴールド)は金融資産としての強靭さと複雑さを同時に示しています。ワールド・ゴールド・カウンシルの戦略家、ジョー・カバトーニ氏は、アメリカ・イラン・イスラエル間の紛争やマクロ経済の不透明感の中で、金がどのように動いたかを分析しています。紛争が激化した際、金は一時的に急騰しましたが、その後下落に転じました。投資家の間では混乱も見られましたが、カバトーニ氏はこれを「予想通りの動き」だったと述べています。というのも、年初に金価格は投機的な動きによって1オンス5500ドル付近まで暴騰しており、その後の調整局面と重なったからです。

投資家が誤解しがちな点として、金が「安全資産」であるということは、危機に際して常に値上がりし続けるという意味ではなく、いざという時の「流動性の源泉」になるという側面があります。市場にストレスがかかると、投資家は現金(キャッシュ)を確保するために、信頼性の高い資産である金を売却することがあります。今回の紛争下でも、トルコなどの国々が経済的ショックに対処するために金準備の一部を売却したと報じられています。また、ポーランドのように、保有する金の利益を政府支出に充てる動きも見られました。このように金は、守りの資産であると同時に、有事の際の重要な資金調達手段としても機能しているのです。

現在の市場は、予測不可能な政策変更や地政学リスクが常態化する「体制の不確実性」の時代にあります。かつて金は「退屈な資産」と見なされることもありましたが、現在は価格変動が激しく、ポートフォリオの中心的な存在となっています。アジア市場では、金を世代を超えた富の貯蔵手段や通貨不安へのヘッジとして捉える傾向が強く、金価格がアメリカの金利やドル指数の動きと連動しない「デカップリング」という現象も起きています。欧米の投資家が金を短期的な取引対象として扱う一方で、アジアの投資家は長期保有の傾向を強めており、これが金需要の構造的な変化をもたらしています。

カバトーニ氏は、短期的にはボラティリティ(価格変動)が続くものの、長期的な見通しは依然として強気であると述べています。マクロ経済の状況次第では、年間10%から20%、場合によっては30%の上昇も期待できるとの見解を示しました。金はもはや金融システムの傍観者ではなく、地政学、原油価格、中央銀行の政策、そして技術的な変化と深く結びついた資産となっています。不確実性が定義となる現代において、価値の貯蔵手段と流動性の供給源という二つの役割を果たす金の重要性は、今後も揺らぐことはないとこの記事は結論づけています。

海の道、東西交易の主役に

【グローバルヒストリーを読む】ユーラシア大陸南方の海上を船で往来する「海の道」は、草原の道、オアシスの道(シルクロード)と並び、東西交流の3つの道の1つだった。今回はこのルートにスポットを当ててみよう。

教養のグローバル・ヒストリー 大人のための世界史入門

紀元後1世紀中頃にギリシア系商人によって書かれた『エリュトゥラー海案内記』は、当時の紅海・インド洋方面の海上交易の様子を記している。その中で、「ティーナイと呼ばれる内陸の大きな都」から生糸や織物がインドに運ばれてくることを述べている。この「ティーナイ」とは中国の王朝名の「秦」の音訳だ。

なお現在の英語の「チャイナ」(China)も、語源は「秦」(中国語でチン)である。また、ロシア語で中国は「キタイ」というが、これは契丹からきている。

インド洋沿岸ではローマ帝国の貨幣が多く出土しており、ローマ帝国時代にインド洋海上交易が盛んだったことがわかる。2世紀の中頃には、ローマ帝国「大秦王安敦(あんとん)」の使者を名乗る西洋人の一団が、後漢最南端の日南郡(現ベトナム中部)に到達した。

大秦王安敦とは、五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝のことだと考えられている。本当にローマ皇帝の使者だったかどうかはわからないが、彼らは断片的に成立していた海洋ネットワークをたどり、紅海を進みアラビア海を季節風に乗って渡り、ベンガル湾岸からインド人の船で進み、南シナ海に出て、後述する扶南、チャンパーを経て日南に到達したと思われる。

東アジアの海域では、8世紀以降、アラブやイランのムスリム(イスラム教徒)商人が海上に進出し、広州や泉州、揚州など中国沿岸の海港に出入りし、居留地をつくるようになった。10世紀からは、中国人の海上進出も活発になった。その交易の範囲は東シナ海から南シナ海、インド洋にまで及び、陶磁器、絹、銅銭などがジャンク船(中国式帆船)によって各地に輸出された。船で運ばれた中国の陶磁器は各地で珍重されたため、中国からインド洋に至る海上交易路は「陶磁の道」とも言われる。

インド洋から地中海に至る海域では、ムスリム商人、インド商人、イタリア商人などが交易活動の中心になった。ムスリム商人はインド商人と提携してインド、東南アジア産の香辛料、香料、木材、中国産の絹織物、陶磁器などを買い入れ、これらの商品を三角の帆を持つ木造船(ダウ船)に積んでインド洋から紅海沿岸に運び、さらにナイル川を利用してカイロやアレクサンドリアにもたらした。エジプト、シリアを支配したアイユーブ朝、マムルーク朝の首都カイロは、海上東西交易の中心として栄えた。

ヴェネツィア、ジェノヴァ、ピサなどのイタリア商人は、十字軍の物資輸送を担当したことをきっかけに、地中海交易の主要勢力として成長した。彼らはムスリム商人と連携してアジアの物産をヨーロッパに売りさばき、またアイユーブ朝やマムルーク朝の君主にも、戦争に必要な鉄や木材を供給した。地中海の活発な交易に伴い、イスラム地域の医学、哲学、数学、化学などの知識がヨーロッパに伝えられ、アラビア語からラテン語に翻訳された。さらにムスリムが中国から学んだ製紙法、羅針盤、火薬なども、シチリア島やイベリア半島を経由してヨーロッパに伝えられた。11〜13世紀は、十字軍とムスリム軍との戦争にもかかわらず、地中海での交流・交易が活発になった時期だった。

沿岸航路による海上交易が発展すると、インド洋と南シナ海を中継する港市国家が生まれた。2世紀末までには、ベトナム中部沿岸にチャム人のチャンパー(林邑)が、メコン川下流域には扶南が建国された。5世紀に入り、中国の南朝が繁栄すると、華中の都市で香辛料など南海の物産の需要が増大した。扶南は海や河川を利用して、東はモルッカ諸島(マルク諸島)、西はスマトラ島の港市国家群から、また林邑は背後の山地や平原から熱帯物産を集めて中国に輸出した。こうして東南アジアには、東西の国際市場と連動した港市国家の交易網が形成された。

東西の国際市場とのかかわりが強まるとともに、漢字や儒教などの中華文明がベトナム北部に伝わった。また、サンスクリット語や文学作品、ヒンズー教、仏教などのインドの文明が、その他の諸地域の港市国家に伝わった。それらは、やがて基層の文化と融合して、独自な東南アジアの文明が形成された。

様々な人々が行き交い、古くから多文化共存が当たり前だった港市国家は、グローバル・ヒストリーの最も重要な主役といえる。歴史学者の北村厚氏は「東アジアや南アジアからみれば東南アジアは辺境だが、東西交易の観点からみるとその辺境が世界を結ぶ中心になる」(『教養のグローバル・ヒストリー』)と述べている。

こうしてユーラシアの東西を結ぶ交易の主役は、大量の商品を効率よく運べる海上ルートへと次第に移行していった。

15世紀末から始まる「大航海時代」は、しばしばヨーロッパ人の先駆的な偉業として語られる。しかし、その背景には、アジアの商人たちが長年かけて築き上げた高度な海洋ネットワークが存在していた。ヨーロッパ人を海へと駆り立てたのは、まさにアジアの海域に溢れていた香辛料や陶磁器などの特産品と、それがもたらす莫大な富だったのだ。

2026-04-11

米、徴兵制復活の足音

'Automatic' Draft Registration Begins in December - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】軍事的な緊張が高まる中、選抜徴兵局(SSS)は、徴兵対象者の情報を自動的に収集・登録する「自動徴兵登録制度」の導入に向けた具体的な計画をホワイトハウスに提出しました。この制度は、若者に自ら登録を促すこれまでの方式から、連邦政府機関が保有するデータを集約して自動的に登録を行う方式へと転換するものです。この新制度を定めた法律は2025年12月に制定されており、実際の運用開始は2026年12月を目指しているとのことです。選抜徴兵局は軍事的なエスカレーションの最中に徴兵の基盤を整えようとしているとの批判を避けるためか、この計画の詳細は公表されておらず、ウェブサイトにも掲載されていません。

一部の報道では、全米の男性市民や居住者が自動的に登録されると伝えられていますが、筆者のエドワード・ハズブルック氏は、これが実際に可能かどうかは疑問であると指摘しています。個人の居住地の特定や対象者の判別には多くの実務的な課題があり、プライバシー法やコンピュータ・マッチング法など、数々の法的・規制的な手続きをクリアする必要があるからです。選抜徴兵局は小規模な機関でありながら、他の全ての連邦機関からデータを入手する前例のない権限を与えられようとしています。しかし、同局には過去に情報収集に関する法的要件を軽視してきた経緯があり、今後、情報の利用目的や提供先をめぐって、プライバシー保護団体や市民団体からの法的異議申し立てに発展する可能性があります。

この「自動登録」の仕組みは、十分な公聴会や予算審査、国民的な議論が行われないまま導入が決まったとされています。筆者は、この制度が失敗に終わる可能性が高いだけでなく、より攻撃的な戦争計画を可能にする一助となると警告しています。現在、議会に対しては、自動登録が始まる前に徴兵制度そのものを廃止するよう求める動きも出ています。反戦団体や市民の間では、政府による大規模なデータ収集への懸念とともに、徴兵制復活に向けた動きを阻止するための活動が急務であるという認識が広がっています。戦争に向けた準備が着々と進められる中で、この新制度がどのような影響を及ぼすのか、重大な関心が寄せられています。

イスラエル、核報復に現実味

Is the Samson Option unthinkable? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】イスラエルの最終防衛手段としての核報復ドクトリン、いわゆる「サムソン・オプション」は、もはや単なる理論上の仮定ではなくなっています。中東での紛争が長期化する中で、この選択肢が現実味を帯びてきていると、この記事は警鐘を鳴らしています。アメリカとイスラエルが主導したイランの体制転換や指導部の排除を狙った作戦は、戦略的な失敗に終わったと分析されています。ホルムズ海峡の閉鎖や米軍基地の撤退、さらにはイランの核施設を狙った作戦の失敗などにより、欧米の力の限界が露呈しました。イスラエルが約200発の核弾頭を保有していることは公然の事実であり、問題は「持っているか」ではなく「いつ使うか」という段階に移行していると述べられています。

これまでイスラエルの核の剣が鞘に収められていたのは、アメリカが通常兵器による強固な盾を提供してきたからです。しかし、その前提が崩れつつあります。アメリカの全面的な支援があってもイランを決定的に敗北させることは困難であり、もしアメリカの支援が弱まれば、イスラエルは国家の存亡に関わる敗北に直面することになります。パキスタンで行われた交渉はトランプ氏の焦りを露呈させただけであり、イラン側のミサイルやドローンの攻撃によってイスラエルの防空システムも限界に近づいています。通常兵器による勝利の道が閉ざされたとき、自国が生き残れないのであれば敵も生存させないという「サムソン・オプション」の論理が、指導者にとって魅力的な選択肢に浮上してくるのです。

イスラエルの指導層にとって、核使用に対する倫理的な躊躇はほとんどないと筆者は指摘します。ガザで見せた壊滅的な破壊や、イランを聖書上の宿敵「アマレク」になぞらえる言説は、彼らがこの戦いを総力戦、あるいは宗教的な義務と見なしていることを示唆しています。また、ワシントンのクリスチャン・シオニストたちも、この衝突を予言の成就として歓迎する傾向があり、こうした背景が核使用のハードルを下げています。イスラエルが核に踏み切るのは、理性を失ったからではなく、アメリカの離反や通常兵器での敗北を冷徹に計算した結果、「合理的」な戦略として選択される危険性があるというのです。中東では今、これまで考えられなかった事態が現実の検討事項になろうとしています。

米イラン、合意は困難

Iran: Won’t Get Fooled Again - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が、パキスタンのイスラマバードに交渉チームを派遣し、イラン側と接触を図ろうとしていることが報じられています。今回の交渉チームには、副大統領のJ・D・ヴァンス氏をはじめ、不動産開発業者のスティーブ・ウィトコフ氏、そして大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が含まれています。クシュナー氏はパレスチナ占領地におけるイスラエルの不法入植地の拡大を支援しており、こうした人物が交渉に加わることには重大な利益相反の懸念があると著者のカート・ニモ氏は指摘しています。また、イラン側からは、ガリバフ国会議長やアラグチ外相が出席する見通しですが、トランプ氏を支持する層はイラン側がイスラム的な策略に出ると警戒しています。しかし、筆者はむしろトランプ氏側の誠実さに疑問を呈しており、現在の米政権がキリスト教徒やユダヤ人を問わず、シオニズムの思想に深く染まった人々によって占められている現状を強調しています。

これまでの経緯を振り返れば、イランがこうした会合から何を得られるのかは不透明です。イスラエルは最高指導者ハメイニ師をはじめ、多くの要人や科学者を暗殺してきました。トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、ハメイニ師の殺害を思いとどまるよう伝えたとされていますが、多額の献金を受け、イスラエルとの結びつきが強いトランプ氏の言葉がどれほどの影響力を持つかは疑問視されています。パキスタンのシャリフ首相は外交的な成果を期待するコメントを出していますが、クシュナー氏のような人物が関与する中で、イランにとって有益な結果がもたらされる可能性は低いというのが筆者の見解です。メディアについても、シオニストの影響下にある富豪による買収が進んでおり、こうした交渉の不条理性やクシュナー氏が抱える矛盾が正しく報じられることは期待できないと述べられています。

トランプ氏は自身の支持者に対し、紛争にはすでに勝利したと宣言していますが、現実はそれとは異なると筆者は見ています。イラン側は外交的な姿勢を保とうとしているものの、核兵器を保有し、排他的な思想を持つ相手と交渉を行うことの危険性を認識すべきであると警告しています。政権幹部を見渡しても、ルビオ氏やヘグセス氏など、イスラエルに対して強い支持を表明する人物が名前を連ねており、イランが受け入れられるような合意が成立する余地はほとんど残されていないようです。結局のところ、イスラエルが過去に合意を破棄してきた歴史や、相手を対等な交渉相手と見なさない姿勢を考慮すれば、今回の交渉もイランにとって大きな成果を生むものではなく、むしろ厳しい現実を突きつける場になる可能性が高いと、この記事は冷ややかに分析しています。

真の支配者はFRB

Peter Schiff: Markets Rally on Peace — But the Fed Rules Everything | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏は、自身の番組において、イランとの緊張緩和に対する市場の奇妙な反応と、戦時経済の行方について分析しています。シフ氏は、戦争や平和に関するニュースが世間を騒がせていても、実際には連邦準備理事会、いわゆるFRBという単一の力がすべてを支配していると指摘しました。彼は、金などの安全資産の価格を動かしている真の要因は、一時的な地政学的イベントではなく、実質金利であると主張しています。まずシフ氏は、イランに対して文明を壊滅させるとまで警告した大統領の過激なSNS投稿に触れ、そのような極端な作戦が実際に実行される可能性は極めて低いとの見解を示しました。その後に出された一時的な攻撃停止の発表についても、それは長期的な和平合意とはほど遠いものであり、事態が解決したかのように宣伝するのは欺瞞にすぎないと批判しています。

ホワイトハウスやメディアはイラン側が譲歩したかのように報じていますが、シフ氏の分析によれば、提示された10項目の提案は実質的にイラン側の完全な勝利に近い内容です。もし米国がこれを受け入れれば、イランの地位は戦前よりも向上し、米国の立場は弱まることになります。シフ氏は、両者の主張は依然として平行線のままであり、大統領が自ら招いた混乱をあたかも収拾したかのように装っているに過ぎないと述べています。こうした情勢の中で、市場には直感に反する動きが見られます。通常、戦争の懸念が高まれば安全資産である金は買われますが、最近では緊張が高まると金が売られ、逆に停戦の気配が見えると金が急騰するという逆転現象が起きています。シフ氏は、この現象こそが、現在の市場があらゆる事象をFRBの動向と結びつけて判断している証拠であると論じています。

こうした市場の反応は、金融市場におけるFRBの権力が肥大化しすぎていることを物語っています。シフ氏は、多くの投資家が本質を見誤っていると指摘しました。重要なのは単なる利下げの有無ではなく、インフレ率を差し引いた「実質金利」がどこにあるかという点です。たとえFRBが金利を操作しても、それ以上にインフレが加速すれば実質金利は低下し、結果として金の価格を押し上げることになります。また、原油価格の上昇が直接インフレを引き起こすのではなく、あらゆるものの価格上昇を可能にしている根本的な原因は、FRBが通貨を増刷し続けていることにあると彼は断言しています。シフ氏は、私たちが直面している物価高騰の本質は、地政学的なリスクよりも、中央銀行による通貨価値の毀損にあるという事実を冷静に見つめるよう促しています。

政府の情報を信じるな

Peter Schiff: Start Stacking Precious Metal | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏が、最新のインタビューの中で、戦争や誤った情報、そして市場操作が横行する現代において、どのように資産を守るべきかという論理を語っています。シフ氏は、政府が発表する公式な統計数字や政治的な意図を含む情報操作は信頼に値しないと断言しています。特に、現在の大統領が市場に対してリアルタイムで多大な影響を及ぼしている現状を指摘し、こうした不安定な要素が強まっているからこそ、米ドルから離脱してゴールド、つまり金へ資産を分散させる必要性が増していると説いています。これは、将来的に起こり得る金融政策の失敗に対する有効なヘッジ手段になると彼は考えています。シフ氏はまず、紛争の勃発が、物価が上昇しきる前に現物の商品を購入しておくべきだという主張を、より強固なものにしていると説明しました。以前であれば、将来必要になるものを安いうちに買っておくという単純な節約の観点からの助言でしたが、現在は有事という背景があり、手元に現金を置くよりも実物資産を蓄えておく実利的な準備が重要であると強調しています。

政府や政治家から発信される情報の信頼性について、シフ氏は極めて批判的です。政府からの情報の多くは不正確であるか、あるいは完全な虚偽であると考えており、トランプ氏の発言についても、かつては経済について、現在は戦争についても真実ではないことが含まれていると述べています。彼は公式なプレスリリースではなく、実際に何が起きているかという客観的な事実にのみ注目すべきだと警告しています。また、政権が公式メッセージを演出することに意欲的である場合、内部関係者がその情報を利用して利益を得る誘惑に駆られる懸念についても触れています。例えば、市場を動揺させるような投稿を出すことを事前に知っていれば、自信を持って先物取引などを行い、巨額の利益を得ることが可能になってしまうからです。一国の大統領が、雇用統計のような定期的な経済指標の発表以外で、日々の市場にこれほどの影響力を持つのは歴史的にも極めて異例な事態であると、彼は現在の状況を分析しています。

こうした市場のメカニズムの変化を受けて、ポートフォリオに与える影響についても言及しています。シフ氏は、米国政府の政策自体がドルへの依存度を下げ、金の保有率を高める動機をより強く生み出していると主張します。金の重要性を認識する民間投資家は今後さらに増え、この傾向は加速していくでしょう。彼は、1999年から2000年以降の25年間の実績を例に挙げ、米国の株式市場をドルではなく金の価値で測定した場合、その価値は75%以上も下落しているという事実を指摘しました。これは、通貨の価値が実質的にいかに損なわれているかを示しています。最後に、彼は今後の連邦準備制度理事会、いわゆるFRBの動向についても予測を述べています。戦争や経済の根本的な弱さを理由に、FRBは再び利下げや量的緩和に踏み切る可能性が高いと見ています。たとえ消費者物価指数などの公式なインフレ率が目標の2%を大きく上回り、5%や6%に達していたとしても、FRBはそれを見て見ぬふりをして金融緩和を強行するだろうと予測しています。シフ氏は、これを予測可能な政策上の誤りと呼び、法定通貨の購買力がさらに低下することへの警戒を呼びかけています。

イラン協議は時間稼ぎ?

Speculation Surges That Pakistan Talks Are A Delay Tactic Ahead Of Expanded US Action On Iran - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカのトランプ政権が、ホルムズ海峡の再開を求めてペルシャ湾周辺に米軍を駐留させ続ける意向を明確にする中、パキスタンのイスラマバードで予定されている米イラン直接協議に注目が集まっています。しかし、この停戦合意に向けた話し合いが、実はさらなる米軍増強と大規模な軍事作戦のための「時間稼ぎ」に過ぎないのではないかという懸念が急速に広がっています。専門家の間では、海峡再開に向けた危険な離島作戦に備え、海兵隊や空挺部隊の主力派遣部隊を配置するための時間をワシントンが必要としているとの見方が強まっています。

現在の休戦期間は2週間と設定されていますが、米イラン双方の要求には依然として大きな隔たりがあり、戦争を完全に終結させるような画期的な合意に至る可能性は極めて低いのが現状です。軍事ロジスティクスのデータによれば、アメリカ、欧州、中東を結ぶ輸送機が活発に動いており、首脳会談の直前まで部隊の再編成と増強が行われている様子がうかがえます。アメリカ側は、イランによる地域基地や同盟国への激しい反撃を想定しきれていなかった節があり、この停戦期間を態勢の立て直しに利用しているとの指摘もあります。

一方で、トランプ大統領にとっては、この紛争が泥沼化すれば秋の連邦議会中間選挙で共和党が壊滅的な打撃を受けるリスクがあり、何らかの「出口戦略」が必要なのも事実です。さらに、長期的な地上戦への発展は、バンス副大統領の将来の政権獲得のチャンスを損なうことにもなりかねません。そのバンス氏が交渉の場に赴くことは、1979年のイラン革命以降、アメリカ政府の最高レベルがイラン側と直接接触する極めて稀な機会となります。これはオバマ大統領時代以来の歴史的な対話の場面となります。

現時点でホルムズ海峡を実効支配しているイランは、世界経済に対して強力なレバレッジを握っています。これに対抗するようにアメリカが中東での軍事力を増強しているのは、さらなる攻撃をほのめかすことで交渉における主導権を取り戻し、より有利な条件を引き出すための圧力であるとも考えられます。パキスタンでの協議が真の和平に向けた一歩となるのか、それとも戦火が拡大する前の束の間の静寂に過ぎないのか、世界がその行方を注視しています。

金ベース決済、広がるか

A new gold rush: States stockpile bars, encourage gold-backed debit cards • Stateline [LINK]

【海外記事より】米国では現在、インフレへの備えとして、州政府が金(ゴールド)を蓄積したり、住民に金を裏付けとしたデビットカードの利用を促したりする動きが広がっています。テキサス州やフロリダ州に続き、多くの州で「取引型ゴールド法」と呼ばれる、消費者が自身の口座を通じて金を貯蓄し、決済に利用できる法律の整備が進められています。ジョージア州のマーティ・ハービン州上院議員は、インフレを「目に見えない一酸化炭素」に例え、金の法的地位を確立し、電子決済システムを構築することで、一般消費者の購買力を守る必要があると訴えています。オクラホマ州やアリゾナ州などでも同様の法案が議論されており、ユタ州では州知事の懸念がありながらも、金を裏付けとした電子決済システムの構築を義務付ける法律が成立しました。

こうした動きに対し、批判的な意見も少なくありません。左派系の税制専門家などは、金の保有は経済成長や雇用創出に寄与する社会的な利益がほとんどなく、金取引を非課税にすることは富裕層向けのタックスヘイブン(租税回避地)を生み出すだけだと指摘しています。また、そもそも多くの米国人にとって、金に投資する余裕自体がないという現実もあります。さらに、金投資家を支援する団体の中からも、既存の民間サービスで十分であり、政府が関与する新たなシステムは不要であるという声が上がっています。金保有者の多くは政府の介入を好まず、金を日常的な決済手段ではなく長期的な資産と見なしているため、実際の利用需要は低いという見方もあります。

一方で、推進派は新しいテクノロジーによって金がより身近になると主張しています。例えばイギリスのグリント社は、スイスの金庫に保管された実物の金と連動したプリペイド型デビットカードを展開しています。カードを利用すると、その瞬間に相当量の金がドルに換金されて決済が行われる仕組みで、これにより金に即時的な流動性が生まれます。支持者たちは、こうした仕組みがドル安に対する緩衝材になり、預金の補完的な役割を果たすと考えています。現在、金価格は1オンスあたり5000ドル近くまで高騰していますが、こうしたプラットフォームを通じて少額から金を積み立てることで、一般の人々も購買力を維持できるという理屈です。

現在、テキサス州やワイミイング州、ユタ州などでは実際に州レベルで金の備蓄が進んでいます。背景には、膨れ上がる連邦債務やインフレが州の財政に及ぼす影響への危機感があります。また、1971年に金本位制が廃止されて以来、金は収集品として課税対象となっていますが、州が決済システムに関与することで、この税制上の扱いに異議を唱える狙いもあります。専門家は、こうした金ベースの決済システムがステーブルコインのような普及を見せるかはまだ不透明であるものの、今はまさに市場が形成されるスタートラインに立っている状態であると分析しています。州政府がどこまで関与し、どのような規制や税制が整っていくのか、今後の動向が注目されています。

金銀、資産防衛の役割加速へ

Have gold and silver bottomed? - Research - Goldmoney [LINK]

【海外記事より】金と銀の価格は底入れしたのかという問いに対し、現在の市場はリスクの回避策をめぐって大きな議論の渦中にあります。筆者のマクラウド氏は、規制当局が投資マネージャーに対し、金は規制対象外の資産でありヘッジ手段にはならないと教育・立法化してきた背景を指摘しています。その結果、多くの投資マネージャーは現物金や銀のETFすら避け、自国通貨での現金保有をリスクフリーな立場と考えています。しかし、こうした当局による市場への介入こそが、現在のイランをめぐる紛争のような「ブラックスワン」的イベントに対する混乱の根本原因であると分析しています。

今週の貴金属市場は停滞が続いていますが、大局的に見れば、激しい変動を経て金と銀のスポット価格は年初からプラス圏を維持しています。イースター休暇明けの欧州市場で金は4750ドル、銀は75.20ドル近辺で取引されており、コメックス市場の建玉は過去20年間で最低水準にあるものの、下地となるトーンは堅調です。一部で報じられている中央銀行による金売却の噂については、中央銀行間の取引が主であり、市場に直接売却されているわけではないと冷静に捉えるべきです。特にトルコの動きは、金を通貨供給量の調節ツールとして使う独自の政策によるものであり、表面的な見出しを鵜呑みにしないよう注意を促しています。

一方、マクロ経済学者が好む安全資産であるドルは、主要通貨に対して勢いを失いつつあり、これが貴金属価格を支える要因となっています。現在、債券利回りや株価の上昇が一時停止する一方で、原油などのエネルギー価格はニュースの見出しに振り回され、極めて不安定な動きを見せています。トランプ氏によるイランへの言及や、イスラエルによるレバノン南部への攻撃、それに対するイランのホルムズ海峡閉鎖といった地政学リスクにより、原油価格は乱高下を繰り返しています。アジア市場での実物不足もあり、先物価格が実態を反映しきれていない面もあります。

投資家たちは現在、こうした事態がもたらす結末を無視して沈黙を守っているように見えます。しかし、エネルギー価格の高騰や物資不足が世界的な不況を招くか、あるいは政府が補助金や価格統制を拡大して通貨価値をさらに下落させるかの二択に迫られるのは時間の問題です。政治的には後者の道が選ばれる可能性が高く、投資家たちがこの確実な未来に気づき、規制の枠組みを捨てて動き出したとき、資産防衛のための金や銀への資金流入は凄まじいものになるだろうと予測しています。法定通貨であるドルが消滅へと向かう流れの中で、金と銀の役割は今後さらに加速していくと考えられます。

金、宇宙開発で活用

Astronauts Looking Through Gold-Colored Visors [LINK]

【海外記事より】「金(ゴールド)は役に立たない」という主張を耳にすることがありますが、宇宙開発の最前線を知れば、その見方がいかに誤りであるかがわかります。マイク・マハリー氏が紹介する記事によれば、次世代の月面着陸ミッション「アルテミス3」で宇宙飛行士が着用するヘルメットのバイザーには、金が不可欠な要素として組み込まれています。この金色の輝きは単なるデザインではなく、宇宙の過酷な環境から人間を守るための極めて重要な機能を果たしています。地球上と違い、宇宙空間における太陽光の刺激は非常に強く、目を突き刺すような鋭さがあります。そのため、目を保護しながら最大限の視界を確保する特別なシステムが必要とされるのです。

バイザーの開発を担当したのはサングラスで有名なオークリー社で、同社の技術責任者であり自らも宇宙飛行を経験した若田光一氏は、過酷な月面環境で作業するための視覚保護の重要性を説いています。なぜ金が選ばれるのかというと、金には赤外線や紫外線を効果的に遮断する性質があるからです。金の電子構造は、赤外線が当たるとエネルギーを吸収して振動し、光を透過させるのではなく反射する特性を持っています。紫外線に対しても同様のプロセスで反射や吸収を行い、宇宙飛行士の目に有害な光が届くのを防ぎます。この物理的特性を活かすため、バイザーには24金のコーティングが施されています。製造過程では電子ビームを用いて金を蒸発させ、レンズに吹き付けることで、視界を妨げないほど薄く、かつ有害な光を遮るのに十分な厚みの完璧な層を作り出しています。

投資家のウォーレン・バフェット氏などは過去に「金には実用性がない」といった趣旨の発言をしていますが、実際には金は世界で最も有用な金属の一つです。その希少性と実用性が組み合わさることで、極めて高い価値を生み出しています。金は数千年にわたりその美しさで人々を魅了し続け、昨年の金需要の約44%にあたる1550トンが宝飾品の製造に使用されました。しかし、金は単に美しいだけではありません。宇宙服のバイザーに見られるような独自の物理的・化学的特性により、産業やテクノロジーの分野でも欠かせない存在となっています。

特にテクノロジー部門での活用は年々進んでおり、昨年は主に電子機器の分野で228トンの金が使用されました。これは金が高い導電性を持ち、銀とは異なり腐食しないという優れた特性を持っているためです。また、展延性に優れているため、微細で精密な接続部品の材料としても最適です。もし金がこれほど希少で高価でなければ、さらに多くの用途で使われていたことでしょう。結論として、金は決して「役に立たない石」などではなく、実用的な工業素材であると同時に、誰もが求める実物資産としての価値を兼ね備えた、極めて多機能な存在であると言えます。

中銀の金購入、鈍化は一時的

Central Bank Gold Buying Has Slowed But the Bullish Case Remains [LINK]

【海外記事より】中央銀行による金(ゴールド)の購入ペースがここ数ヶ月で大幅に鈍化していますが、専門家はこの状況を一時的な反応であり、長期的なトレンドの変化ではないと分析しています。マイク・マハリー氏が紹介するメタルズ・フォーカス社の見解によれば、近年の金価格上昇を牽引してきたのは中央銀行による旺盛な需要でした。昨年の購入量は863.3トンに減少したものの、2010年から2021年までの年間平均である473トンを大きく上回っています。実際、2025年は中央銀行の金準備金が史上4番目の規模で拡大した年となりました。過去最高を記録したのは2022年の1136トンで、これは1950年以降、また1971年の金・ドル交換停止以降でも最大の純購入量となっています。今年の1月には金価格が5000ドルを大幅に超えて急騰しましたが、その後はイランをめぐる紛争による不確実性や、インフレ再燃への懸念から価格への下落圧力が強まりました。

こうした中、トルコがリラ相場を支えるためにここ一ヶ月で大量の金を売却しています。ブルームバーグのデータによると、3月の数週間で合計約58トンの減少が確認され、メタルズ・フォーカスの分析ではその後さらに売却が進み、総計131トンに達しました。紛争に伴うエネルギー価格の上昇は、リラ安を緩やかに抑えたいトルコ中央銀行にとって負担となっています。エネルギー価格の上昇はドル需要を高め、リラへの下落圧力を強めるため、金を担保にドルで市場介入を行う必要があるのです。トルコの保有量減少の半分以上はゴールド・スワップによるもので、これは金を担保に安価なドル資金を調達する手法です。また、ロシアもウクライナ侵攻に伴う制裁下で経済を支えるため、予算不足を補う目的で金を売却しています。ガーナもポートフォリオの再構築として保有量を約50%減らしましたが、これは産金国によく見られる動きであり、今後も売買の両面で活発な動きが予想されます。

一方で、ポーランドのように防衛費捻出のために金売却の可能性が示唆されながらも、実際には2月に20トンを買い増して保有量を570トンまで拡大させた国もあります。今後の展望として、イラン情勢の不透明感からエネルギー価格の高止まりが予想されるため、流動性確保や経済支援を目的とした中央銀行による金の売却やスワップが続く可能性は否定できません。しかし、メタルズ・フォーカス社はこれらをあくまで短期的な動きであると強調しています。中央銀行がポートフォリオを多様化するために金を保有するという論理は、特に保有比率の低い国々において依然として有効です。

むしろ、イラン紛争や米国の他国への介入などは、ドルの「武器化」に対する懸念や米国の財政悪化の問題を浮き彫りにし、特定の通貨に依存しない資産としての金の魅力をさらに高めることになると指摘されています。主要国の財政見通しの悪化や中央銀行の独立性への懸念も重なり、地政学的な不確実性が続く中では、分散投資先としての金の重要性は今後も変わらないというのが、この記事の主な見解です。中央銀行による一時的な売却の動きがあったとしても、ドルの保有を抑え、資産を多様化させようとする長期的な姿勢には揺るぎがないと考えられます。