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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-05-04

公理とは?

【キーワード】公理(axiom)とは、それ自体が自明であり、わざわざ証明する必要がないほど明らかな真実、あるいは議論の出発点となる根本的な前提を指します 。数学や論理学の世界ではおなじみの言葉ですが、オーストリア学派経済学においても、揺るぎない知識を積み上げるための「建物の土台」として非常に重要な役割を果たしています 。私たちは普段、何かを正しいと判断する際に実験や統計データを求めがちですが、この学派では、人間の理性が直接理解できる「疑いようのない事実」からすべての理屈を導き出そうとします 。

この学派が最も大切にしている土台が「人間行為の公理」です。これは「人間は目的を持って行動する」という、極めてシンプルで当たり前の事実を指します 。私たちが何かを選ぶとき、それは今の状況をより良くしたいという願いがあり、そのために限られた手段を使おうとしているはずです 。もし誰かが「人間は目的を持って動くわけではない」と反論したとしても、その反論自体が「相手を説得する」という目的を持った一つの行為になってしまいます 。つまり、この公理を否定しようとすること自体がその正しさを証明してしまうため、これは誰にとっても否定できない絶対的な真実なのです 。

注目すべきは、このたった一つの公理から、経済の複雑な仕組みが魔法のように解き明かされていく点です。例えば、人間が行動するという事実からは、必ず「価値の序列」や「資源の不足」、さらには「成功と失敗」といった概念が論理的に導き出されます 。これは、数学者がいくつかの公理から複雑な定理を証明していく過程によく似ています。実験室でのテストが必要な物理学や化学とは異なり、経済学は私たちの心の中にある「行動する」という確信を出発点にして、一歩一歩、論理の鎖をつないでいく純粋な論理の学問なのです 。

こうした考え方は、現代のデータ重視の風潮からは少し意外に思えるかもしれません。しかし、数字やグラフは過去の出来事を記録したものでしかなく、それらが将来も同じように繰り返される保証はありません 。一方で、公理から正しく導き出された結論は、人間が人間である限り、時代や場所を問わず常に正しいものであり続けます 。公理とは、目に見える現象の奥底に流れる変わることのない真実を見抜くための、最も強力な思考の道具であると言えるでしょう。

原油200ドル超えも

U.S. GAS REACHES $4.45 & IRAN HASN'T CLOSED RED SEA YET - w/ Professor Steve Hanke - YouTube [LINK]

【海外動画より】この動画では、経済学者のスティーブ・ハンケ教授が、ホルムズ海峡の封鎖に伴う深刻な世界経済の危機について語っています。教授によれば、供給停止による原油価格の高騰は既に発生していますが、現状の価格はまだ不十分であり、在庫が枯渇すれば200ドルを超えるような次の価格高騰が起こる可能性があると警告しています。原油のような必需品は価格弾力性が低いため、需要を抑えるには価格を劇的に上げるしかなく、それは事実上の世界的な不況を招くことになります。

アジア諸国の備蓄は、パキスタンのように数日分しかない国から、韓国や台湾、日本のように1ヶ月前後の国まで様々ですが、全体として非常に脆弱な状態にあります。一方で、中国は100日分以上の膨大な備蓄を持ち、さらにイランが海峡外に浮かせている大量の原油が中国の小規模製油所に供給され続けているため、7月頃までは持ちこたえられる見通しです。この状況下でトランプ政権が進める封鎖政策は、結果的にイランに外交的なレバレッジを与えてしまっていると教授は指摘します。イランのインフレ率は実際には116%に達しており、極めて厳しい状況にありますが、彼らは西側諸国よりもはるかに高い苦痛への耐性を持っており、この「我慢比べ」においてはイランが有利な立場にあるという分析です。

湾岸諸国においても、将来的な脱化石燃料を見据えて生産を早めたいアラブ首長国連邦がOPECを離脱するなど、独自の動きを見せています。米国に目を向けると、戦費と債務の利払い負担が急増しており、利払い費が国防予算を上回るという、帝国の衰退を示す象徴的な局面を迎えています。教授は、この問題を解決するには憲法を改正し、スイスのように債務に法的上限を設ける「債務ブレーキ」を導入するしかないと主張しています。

最終的にトランプ大統領は、ガソリン価格の上昇という国民からの直接的な圧力に直面し、イランに対して妥協を余儀なくされる可能性が高いというのが教授の見解です。この戦争は、米国の外交政策における歴史的な失敗として記録される恐れがあり、世界経済は私たちが認識している以上に深刻な停滞の入り口に立たされていると言えます。

究極の防衛策

The 91-Year Debasement Trade: Why $4,600 Gold is Just the Beginning - James Grant - YouTube [LINK]

【海外動画より】米国の金融専門家ジェームス・グラント氏が、現在の米国の金融市場が抱える構造的なリスクと、金の歴史的な役割について冷静な分析を述べています。現在の米国経済では、インフレ率が3.5%程度で推移し、30年物国債の利回りが5%に迫る一方で、GDP成長率は2%程度にとどまっています。この状況下でグラント氏は、特にプライベートクレジットと呼ばれる不透明な債務市場に強い懸念を示しています。2020年から2021年にかけてのゼロ金利時代に実行された膨大な融資が、現在の金利上昇局面で大きな重荷となっており、特に生命保険会社などが高利回りを求めてリスクの高い債権を抱え込んでいる現状が指摘されています。

グラント氏は、技術革新の歴史を振り返り、現在のAIブームについても慎重な見方を示しています。過去の鉄道や光ファイバーの事例と同様に、技術そのものが本物であっても、その実用化や収益化に先んじて投資バブルが発生するのが歴史の常です。現在はデータセンターへの過剰投資や過度な借り入れが行われており、実際の利益が伴う前に金融的な破綻を招くリスクがあると警告しています。投資家は期待感から高値で買い、安値で売るという過ちを繰り返す傾向があり、現在の市場も新たなサイクルの始まりというよりは、一つの過剰なサイクルの終焉に向かっている可能性が高いと冷静に論じています。

金の価格が1オンス4,600ドルを超える水準にあることについて、グラント氏はこれを単なる短期的な投機対象ではなく、紙幣がその価値を失っていく歴史的な過程における長期的な投資と捉えています。1934年から続く通貨の価値低下という大きな流れの中で、金は政治的な意図から独立した「真のお金」としての地位を保ち続けています。中央銀行などは金利を生まない金を時代遅れと見なす傾向がありますが、実際にはアジアを中心に中央銀行や個人が再び金への信頼を強めています。米連邦準備理事会(FRB)などの通貨当局が、自らの裁量を制限する金の存在を避ける一方で、金は誰の負債でもない資産として、混乱期における究極の防衛策であり続けていると締めくくっています。

トランプ氏の戦略、中国を強化

Trump’s Strategy Is Making China More Powerful — Unintentionally | Prof. Jiang Xueqin - YouTube [LINK]

【海外動画より】トランプ米大統領の戦略が、皮肉にも中国を世界で最も強力で尊敬される国へと押し上げているという分析について、ジャン教授こと江学勤(ジャン・シュエチン)氏が解説しています。ジャン氏は、現在の中東情勢を俯瞰し、戦場での出来事以上に、中国やパキスタン、そして戦後のアメリカ主導の世界システムに何が起きているのかが重要であると説いています。トランプ氏が中国を弱体化させる意図で行動しながら、実際には中国の戦略的弱点を解消し、その影響力を高めるという正反対の結果を招いているという非常に興味深い指摘です。

中国にとって過去20年間の最大の弱点は、石油輸入の約80%が通過するマラッカ海峡をアメリカ海軍に掌握されている「マラッカ・ジレンマ」でした。しかし、現在の中東での対立を通じ、中国はイランから石油の優先的なアクセス権を得ており、アメリカの制裁下でも購入を続けた忠誠心への報酬として、ホルムズ海峡を自由に通過できています。これにより、中国は長年の脆弱性を克服し、アメリカの意図に反して独自のエネルギー供給網を構築することに成功しています。アメリカの信頼性が揺らぐ中で、多くの国々が代替案としての中国に目を向け始めているのが現状です。

また、停戦の仲介役として意外な存在感を示したのがパキスタンです。パキスタンは、アメリカの同盟国であるサウジアラビアと密接な関係を持ちつつ、隣国イランとも長い国境を接しており、両者から信頼される稀有な立場にあります。1971年にアメリカと中国の歴史的な橋渡しをした時のように、今回も自国の経済的・安全保障上の利益を守るために、米イラン間の交渉を主導しました。これに対し中国は、軍を派遣することなく、技術や経済協力を通じてイランを支え、一貫性のないアメリカに代わって安定をもたらすリーダーシップを外交的に示しました。

歴史を振り返れば、古代ギリシャのアテナイが過剰な拡大によって没落したように、帝国が傲慢さから衰退を加速させるパターンは繰り返されています。アメリカが紛争に注力する一方で、中国は一帯一路などのプロジェクトを通じて着実に同盟を築き、軍事力と同等に重要なソフトパワーや信頼を獲得しています。世界は今、第二次世界大戦後にアメリカが英国に代わったような、覇権の大きな転換期にあるのかもしれません。アメリカが消え去るわけではありませんが、その指導力に疑問が呈される中で、中国が新たな選択肢として台頭している事実は否定できないと動画は結んでいます。

撤退だけが出口

Ep. 6231 - Larry Johnson on Trump’s Tenuous Ceasefire with Iran - 4/30/26 - YouTube [LINK]

【海外動画より】トランプ政権下の米国とイランを巡る緊迫した情勢について、元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏が解説している動画をご紹介します。ジョンソン氏は、米国が現在直面している軍事的な選択肢の乏しさと、今後訪れるであろう経済的な影響について冷静な分析を行っています。まず軍事面において、米国にはイランを打倒するための現実的な選択肢が欠けていると指摘されています。イランが保有する巡航ミサイルやドローンなどの脅威により、米国の艦船はイラン沿岸から200マイル以内に近づくことができず、封鎖の実効性が低いのが現状です。また、これまでの戦闘で精密誘導ミサイル等の在庫が著しく減少しており、それらの製造に不可欠なレアアースを中国が管理しているため、供給体制の構築も困難になっています。地上軍を投入しようにも、現代のミサイル技術の前ではかつてのような大規模な軍の集結は不可能であり、イランの防衛力を突破するには膨大な兵力が必要となるため、現実的ではありません。

ジョンソン氏は、トランプ大統領が「勝利した」と宣言してこの状況から撤退することが唯一の出口であると述べています。一方で、政権内部にはさらなる攻撃を促す圧力もあり、外交的な出口戦略は見えていません。イラン側もまた、1980年代のイラン・イラク戦争を経験した世代が指導部を占めており、結束力は非常に強固です。彼らは国際法に基づいたウラン濃縮の権利を主張しており、米国の要求に簡単に屈する可能性は低いと分析されています。

最も深刻なのは、まだ表面化していない経済的影響です。ジョンソン氏はこれを津波に例え、これから世界を襲う破壊的な混乱を警告しています。ホルムズ海峡の情勢不安により世界の石油供給の20%が影響を受けており、燃料価格の高騰は避けられません。さらに、液化天然ガスや肥料の供給不足が食料生産の減少を招き、1年から2年後には深刻な食糧不安や政治的混乱が世界規模で発生する恐れがあります。中国は、米国が中東で軍事力を消耗し、経済的に疲弊していく様子を静観しており、この紛争が長引くほど米国の戦略的地位は低下し、世界経済への打撃も大きくなっていくと結論づけています。

早まる帝国の衰退

Trump RUSHES Arms to Israel for Imminent Strike, Iran Drops HAMMER on US Navy | KJ Noh - YouTube [LINK]

【海外動画より】中東情勢と米国の地政学的戦略について、ジャーナリストのダニー・ハイフォン氏が専門家のKJ・ノー氏を招いて分析した内容をご紹介します。現在、米国はイスラエルへ大量の武器輸送を急いでいますが、これはイランとの直接的な衝突が再燃する予兆と見られています。一方でイランは、米海軍の封鎖をかいくぐり数十隻のタンカーを通過させるなど、戦略的な優位性を誇示しています。ノー氏は、イランが軍事的・地理的な優位を背景に「エスカレーションの支配権」を握っており、米国は負けが確定している賭けにさらに資金を投じているような状況だと指摘しています。

この紛争による経済的打撃は深刻で、世界の石油市場ではすでに約7億バレルの供給不足が生じていると説明されています。今後この不足分は1兆バレルに達する可能性があり、石油や天然ガス、化学製品の価格高騰は避けられません。興味深いのは、トランプ政権による石油供給の封鎖や依存の強化が、結果として世界の脱炭素化を加速させているという皮肉な分析です。特に中国は再生可能エネルギーや電気自動車の分野で準備を進めており、米国の行動が図らずも中国の産業を後押しする結果を招いています。米国は「支配するか支配されるか」という二元論に固執し、現実的な妥協案を見いだせていないと論じられています。

東アジアにおいても緊張は高まっています。米国はイラン戦に備えて他地域から資源を転用していますが、同時に日本や韓国を「代理人」として中国との対立に組み込もうとする動きを強めています。特に日本については、軍事予算の倍増、殺傷能力のある兵器の輸出解禁、そして台湾情勢への関与強化など、急速な再軍備が進んでいることが指摘されました。米国は自らの覇権を維持するために、同盟国を巻き込んだ軍事的な包囲網「キル・ウェブ」を構築しようとしています。しかし、現実にそぐわない軍事万能主義は帝国の衰退を早めるだけであり、私たちはこの終わりのない紛争の連鎖を止めるための連帯が必要であると締めくくられています。

コロナ関連文書、隠蔽疑惑で起訴

COVID Conniving Receives First Federal Indictment | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】新型コロナウイルスに関連する公文書の隠蔽疑惑を巡り、連邦政府の元高官が起訴されるという異例の事態に発展しました。今回、連邦大陪審によって起訴されたのは、パンデミック対策の責任者であったアンソニー・ファウチ氏の元側近、デビッド・モレンズ被告です。米司法省の発表によれば、同被告は連邦捜査における記録の改ざんや虚偽記載、公文書の隠蔽や切除、さらには米国に対する共謀罪などの疑いが持たれています。モレンズ被告は、新型コロナの起源に関連する可能性がある連邦政府の助成金の役割を隠蔽するため、情報公開法(FOIA)に基づく開示請求を逃れる工作を組織的に行っていたとされています。

起訴状の内容によれば、モレンズ被告は同僚に対し、情報公開請求の調査が始まる前に「メールを消滅させる方法」を学んだと伝え、「ほとんどのメールを個人のGmailに転送した後に削除した」といった趣旨の連絡をしていたことが明らかになっています。公文書の保存と開示は法律で義務付けられていますが、被告はこうした法的手続きを組織的に回避しようとしていました。一方、その上司であったファウチ氏については、ジョー・バイデン氏が大統領退任直前の朝に、過去10年間に犯した可能性のあるあらゆる罪について恩赦を与えたため、起訴の対象からは外れています。議会の調査では、ファウチ氏が新型コロナに関する責任を回避するために裏で糸を引いていた中心人物であったことが指摘されています。

今回の事件の背景には、中国の武漢ウイルス研究所で行われていた、ウイルスの感染力を意図的に高める「機能獲得研究」に対する連邦政府の資金提供を、政府高官らが必死に隠そうとした経緯があると見られています。武漢研究所は以前から安全性の欠如が指摘されており、国務省も機密扱いで警告を発していましたが、その事実が公表されたのはパンデミックが始まってから数年後のことでした。もし、新型コロナが史上最大級の政府の失策の結果であったことが当初から認識されていれば、政治家や科学者たちが「救世主」のように振る舞い、市民の日常生活に対して強大な統制権を行使することは困難だったはずだと著者は述べています。

司法省のトッド・ブランシュ検事総長は、今回の起訴について「国民が最も政府を必要としていたパンデミックの最中に、信頼を著しく裏切る行為が行われた」と厳しく非難しました。これまでワシントンでは、国民を欺く行為は「被害者のいない犯罪」として扱われがちでしたが、今回のモレンズ被告の起訴が、官僚による隠蔽工作を厳しく追及する先例となることが期待されています。長年にわたり情報公開制度の不備や政府の監視体制を批判してきた著者のジム・ボバード氏は、こうした捜査が継続されることこそが、アメリカの民主主義にとっての「追加接種(ブースター)」になると強調しています。

米欧の亀裂、中国の利

How can China best profit from Trump’s latest rift with traditional US allies? | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が伝統的な同盟国である欧州諸国との間で亀裂を深めている現状は、中国にとって戦略的な好機となる可能性があると報じられています。トランプ氏は、イランとの戦争への協力を拒否したことを理由にドイツからの軍隊撤退を命じ、イタリアやスペインに対しても同様の脅しをかけています。これらの国々には合計5万人以上の米軍兵士が駐留しており、特にドイツは米空軍の兵站拠点として極めて重要な役割を担ってきました。さらに、デンマーク領グリーンランドの買収を改めて示唆するなど、主権を軽視するかのようなトランプ氏の言動は、欧州諸国に「もはやアメリカの安全保障には頼れない」という強い危機感を抱かせています。

専門家によれば、中国にとっての最優先事項は、冷静さを保ち、アメリカが対立の矛先を再び中国へと向け直す隙を与えないことだとされています。現在、イギリス、カナダ、フィンランド、スペインといった伝統的な米同盟国のリーダーたちが相次いで訪中しており、ワシントンが残した空白を埋めるべく、中国との関係強化を模索し始めています。専門家は、多くの西側諸国がアメリカからの「脱リスク」の必要性を認識しており、中国との関係修復に努めている現状は、北京にとって相対的に有利な状況であると分析しています。アメリカ自らが同盟の枠組みを乱すことで、結果として中国への圧力が緩和されるという構図が浮かび上がっています。

しかし、欧州諸国がアメリカと距離を置く一方で、中国との経済的な火種も依然として残っています。欧州連合(EU)は、中国による過剰生産や補助金政策が域内産業を圧迫しているとして警戒を強めており、電気自動車(EV)や太陽光発電などの戦略的分野において、中国企業を標的にした厳しい規制を導入し始めています。これに対し中国側は報復を示唆しており、経済面での緊張は続いています。また、トランプ氏によるグリーンランドへの関心については、フィンランドの外相が「領土の保全は譲れない一線である」と強く反発するなど、欧州全体で主権に対する警戒感が高まっています。

結局のところ、中国がこの状況から最大の利益を得るためには、アメリカが自壊させている同盟関係の隙間に静かに浸透し、欧州諸国にとっての「代替的なパートナー」としての地位を確立することが鍵となります。トランプ政権が自国第一主義を強め、NATO(北大西洋条約機構)の団結を損なうほど、中国は直接的な対立を避けつつ、世界政治における自らの影響力を拡大させる余地を得ることになります。アメリカと欧州の間に生じた深い亀裂は、単なる一時的な不和にとどまらず、国際秩序の再編を促す長期的な転換点となる可能性を秘めています。

欧州、個人資産に牙

Europe Explores Wealth Taxes, Capital Taxes, And Exit Taxes | Armstrong Economics [LINK]

【海外記事より】欧州委員会が、富裕税、資本税、そして最も懸念すべき「出国税」に関する詳細な調査報告書を公開しました。この記事の著者であるマーティン・アームストロング氏は、欧州当局がこれまで「公平性」や「連帯」という言葉の裏に隠してきた本音を、ついに隠さなくなったと指摘しています。報告書では、いかにして個人の富に課税し、所有権を監視し、税逃れを防ぐか、そして何より「資本が域外へ逃げ出すのをいかに阻止するか」が公然と論じられています。これは、欧州各国の政府が政府債務危機の最終局面に突入しつつある中で、個人の資産を封じ込めようとする動きの表れであると著者は警鐘を鳴らしています。

現在、欧州経済は深刻な停滞期にあります。ドイツの製造業は衰退し、過度な環境政策や制裁によるエネルギー価格の高騰が産業を圧迫しています。その結果、欧州の資本は長年にわたって米国へと流出し続けてきました。欧州連合(EU)の当局はこの資本逃避の現状を正確に把握しており、政策の抜本的な改革によって信頼を取り戻すのではなく、物理的に資本を閉じ込める「封じ込め」の戦略に舵を切ったようです。報告書の中では、これまでの富裕税が期待したほどの税収を上げられなかった理由として、富裕層が資産を再編したり、物理的に国外へ移住したりすることを挙げています。これこそが、EUが出国税を重要視している最大の理由です。

出国税とは、個人が国外へ移住したり資産を移転したりする際に、まだ売却していない資産の含み益に対して課税する仕組みであり、実質的な「資産没収メカニズム」として機能します。当局はデジタル化された税務システムや不動産登記、実質的支配者の追跡、さらには国際的な情報共有を通じて、個人の資産を完全に可視化しようとしています。これは単なる税制の議論ではなく、政府債務危機が加速する前に、欧州域内に資本をトラップ(罠)にかけるための準備であると著者は分析しています。歴史を振り返れば、債務危機に直面した政府は、最終的に私有財産の権利を再定義し、資本の移動を制限するという道を常に辿ってきました。

欧州の多くの国々では、年金や医療、国防、そして環境対策などの膨大な支出を賄うための数学的な計算がすでに成り立たなくなっています。政治家たちは、公的な破綻を免れるための解決策として、民間の貯蓄を「収穫」の対象と見なしているようです。こうした課税は当初、超富裕層のみをターゲットにしているように見せかけますが、実際には政府の資金源を確保するために、課税対象の閾値は徐々に引き下げられていくのが通例です。著者は、富裕税や出国税にデジタルIDや中央銀行デジタル通貨(CBDC)が組み合わさることで、監視体制が完成し、一度資本規制が導入されれば逃げ出すことは不可能になると予測しています。欧州の信頼が崩壊し、権威主義的な側面が強まる中で、自身の資産を守るための行動を急ぐべきであると、この記事は締めくくられています。

米軍拠点の被害甚大

How Iran has damaged the US military footprint in the Middle East (PHOTOS, VIDEOS) — RT World News [LINK]

【海外記事より】現在、中東地域においてアメリカ軍の拠点に甚大な被害が出ているとの報道が相次いでいます。報道によれば、イランとの軍事衝突が激化する中で、アメリカ国防総省は当初の想定を上回る損害を被っており、中東各地にある少なくとも16カ所の米軍基地が攻撃を受けたとされています。当初、国防総省は今回の戦争に関わる費用を約250億ドルと見積もっていましたが、これには基地の修復費用が含まれておらず、実際の総額は400億ドルから500億ドルに達する可能性があるとCNNなどは伝えています。攻撃の対象は、クウェートやサウジアラビア、バーレーンなど8カ国に及び、倉庫や司令部、航空機の格納庫、滑走路、そして高額なレーダーシステムなどが破壊されました。特にクウェートのキャンプ・ブーリングへの攻撃では、長年で初めて敵側の固定翼機による爆撃が確認されたとのことです。

アメリカ政府は、被害の実態を伏せるために情報の制御を試みているようです。3月中旬には、衛星画像を提供する民間企業に対し、敵対勢力への情報流出を防ぐという名目で、画像の公開を14日間遅らせるよう要請しました。さらに4月に入ると、トランプ政権は特定の関心領域に関する画像を自発的に差し控えるよう各社に求めたと報じられています。しかし、流出した画像や各種報道からは、1機約2億7000万ドルのE-3セントリー早期警戒管制機や、F-35戦闘機といった高価値の資産が損傷、あるいは破壊されたことが判明しています。また、イラン側の攻撃により、アメリカ軍の要とも言える長距離レーダーや通信機器の多くが機能を失い、域内に設置されていた防護ドームのほとんどが破壊されたとの調査結果も示されています。人的被害についても、アメリカ軍はこれまでに13人の死亡と400人以上の負傷を認めています。

この状況は、長年アメリカの軍事力に依存してきた湾岸諸国との関係にも変化を及ぼしています。自国の領土に米軍基地を置くことで得られるはずだった「保護の傘」が揺らぎ始めたことで、サウジアラビアなどの周辺国は、アメリカとの同盟関係だけに依存することの危うさを感じ始めています。さらに、ホルムズ海峡の封鎖などによって石油や天然ガスの輸出が滞る中、アラブ首長国連邦が原油取引の決済を米ドルから中国の人民元に切り替える可能性を示唆するなど、経済面での影響も表面化しています。アメリカ軍は中東に5万人規模の兵力を展開し、空母を派遣して態勢を立て直そうとしていますが、かつてのような圧倒的な軍事的優位性が揺らいでいる様子が浮き彫りになっています。現在の中東情勢は、単なる軍事衝突の枠を超え、地域におけるアメリカの影響力そのものを問う事態へと発展しているようです。

2026-05-03

忍び寄る飢餓

In 2026, the World Lost Up to 40% of Food Access in Days as Prices Surged Over 190% in a Silent Descent into Hunger – Preppgroup [LINK]

【海外記事より】2026年に入り、世界は「飽食の時代」から、わずか数日のうちに「食料アクセスの喪失」という深刻な事態へと急激に転換しました。この危機は、食料そのものがこの世から消え去った「飢饉」ではなく、高度に効率化されていたはずの物流システムが機能不全に陥った「分配の失敗」によって引き起こされました。事態は静かに、しかし着実に進行していました。燃料価格が前年比で68%上昇し、天然ガスの不安定化で肥料生産が22%減少、さらに貨物の定時配送率が従来の90%超から72%へと急落しました。こうした数値が積み重なり、ある臨界点を超えた瞬間、システムの脆弱性が一気に露呈したのです。

最も衝撃的だったのは、わずか1週間足らずで都市部の食料供給能力が35%から45%も低下したことです。供給への不安は市場価格に即座に反映され、食用油が192%、小麦粉が148%、米が121%上昇するなど、主要な食品の価格が猛烈な勢いで跳ね上がりました。これは単なる生産コストの上昇によるものではなく、消費者の不安による「買いだめ」が状況を悪化させました。データの分析によると、供給不安が表面化してからわずか72時間以内に主食の購入量が280%急増し、物流が追いつかなくなったことで、低所得層を中心に食料を入手できない人々が続出する事態となりました。

現代の食料供給システムがいかにエネルギーの安定に依存しているかも、今回の危機で浮き彫りになりました。農機具の稼働から肥料の合成、冷蔵保管、そして輸送に至るまで、農業生産の約70%以上が化石燃料に直接依存しています。エネルギー市場の混乱に加え、地政学的な紛争によって世界の穀物輸出の3割が通過する海域で輸送保険料が200%から350%も高騰しました。さらに、干ばつや洪水といった気候変動による収穫量の減少が重なり、これまで地域的な不足を補ってきた国際貿易のバッファー(緩衝材)が完全に失われてしまいました。

驚くべきことに、2026年の世界の総食料生産量は、前年比で8%から11%程度の減少に留まっていました。しかし、物流の効率が35%以上低下したことで、消費者の手元には届かなくなったのです。政府が配給制や流通統制の議論を始めた頃には、人々のシステムに対する信頼はすでに崩壊していました。この記事は、私たちが当たり前だと思っていた食料の安定供給が、実は驚くほど精密で、それゆえに余裕のない「綱渡り」のような調整の上に成り立っているという現実を冷静に突きつけています。

ペトロダラーの終焉

OPEC Just Signalled a Historic Gold Tailwind [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦(UAE)が今週、石油輸出国機構(OPEC)から脱退するという衝撃的な動きを見せました。これは単なる一国の離脱に留まらず、過去50年以上にわたって世界の金融秩序を支えてきた「ペトロダラー体制」、すなわち石油を米ドルのみで取引する仕組みの終焉を告げる歴史的なシグナルと言えます。UAEは今後、米ドル以外の通貨で石油を販売する可能性を示唆しており、これは米ドルの覇権と米国経済の根幹を揺るがす事態に発展しかねません。かつて1974年に結ばれたペトロダラー体制は、世界中に米ドルの需要を作り出し、米国がインフレを国外へ輸出することを可能にしてきました。しかし、その「吸収装置」としての機能が今、音を立てて崩れ始めています。

この変化の背景には、2022年のロシアに対する経済制裁を機に、米国が自国通貨を「武器化」したことへの不信感があります。中東の産油国はもはや、多額の債務を抱え、購買力が低下し続ける米ドルに依存することのリスクを強く意識しています。かつてのような軍事的な保護と引き換えにドルでの決済を強いるモデルは、現在の情勢では説得力を失いつつあります。事実、中国をはじめとする東側の諸国はドルを介さない石油取引を模索しており、UAEがインドに対してルピーで石油を販売し始めたことも、この脱ドル化の流れを象徴しています。世界は今、ドルの覇権に「拒絶」を突きつけているのです。

こうしたドルの衰退と表裏一体の関係にあるのが、金(ゴールド)の重要性の高まりです。世界の中央銀行は、ドルの信頼性が揺らぎ始めた2014年頃から、米国債を売却して金を購入する動きを強めてきました。特に2022年以降、この傾向は加速し、金の保有量は飛躍的に増加しています。かつて大手金融機関は金を「ただの岩」と軽視してきましたが、現在ではドルの武器化や米国の持続不可能な公的債務を背景に、金に対して極めて強気な姿勢に転じています。石油取引の決済手段がドルから金へとシフトしていく可能性は高く、金の希少性と安定した価値保存機能が改めて評価されています。

米ドルという紙の通貨システムが衰退し、インフレや債務危機が深刻化する中で、実物資産である金は歴史的な上昇局面、いわゆる「追い風」の中にあります。ペトロダラーという盾を失った米国経済は、今後、購買力の低下とスタグフレーションという厳しい局面に立たされる可能性が高いでしょう。今回のUAEによるOPEC脱退は、ドルの独占的な支配が終わる「エンドゲーム」への足音が、いよいよ明確に聞こえ始めたことを示唆しています。通貨の信頼が歴史的な転換点を迎える中で、金や銀といった伝統的な資産が再び世界の経済取引の中心へと返り咲こうとしています。

トランプ氏、3つの選択肢

War On Iran: – Trump To Decide On Three Options – Moon of Alabama [LINK]

【海外記事より】イランとの戦争が膠着状態に陥る中、トランプ大統領は今後の方針について三つの選択肢のいずれを選ぶか、決断を迫られています。現在、ホルムズ海峡はほぼ封鎖されたままであり、アメリカによる対イラン海上封鎖も継続されていますが、イラン側はこの状況をさらなる激化の前兆、あるいは新たな衝突の引き金と捉えています。一方のアメリカ軍も、空母1隻を撤退させたものの依然として即応態勢を維持しており、双方がいつでも戦闘を再開できる緊迫した状況にあります。

トランプ大統領が検討している第一の選択肢は、海上封鎖の継続です。最近の会議で大統領は、イランの経済と石油輸出を締め付ける現在の戦略を維持する意向を示したと報じられました。しかし、この封鎖の継続はホルムズ海峡の封鎖をも長引かせ、世界経済の低迷とアメリカ国内のガソリン価格の高騰を招いています。現在、全米の平均ガソリン価格は1ガロンあたり4.23ドルという過去最高水準に達しており、有権者の不満も高まっています。イラン側も封鎖に甘んじるつもりはなく、アメリカの行為を「海賊行為」と呼び、前例のない実力行使による対抗措置を示唆しています。

第二の選択肢は、新たな爆撃作戦の開始です。大統領は軍から、インフラなどを標的とした短期間かつ強力な一斉攻撃案の報告を受ける予定です。これは交渉の行き詰まりを打破するか、あるいは戦争を終結させるための最後の一撃を狙うものですが、これまでの爆撃が成果を上げていない以上、事態が好転する証拠はありません。むしろ、イラン側はアメリカやイスラエルの拠点を弾道ミサイルで大規模に報復すると警告しており、湾岸諸国の石油利権に深刻な打撃を与えるリスクを孕んでいます。

第三の選択肢は、一方的に「勝利」を宣言して撤退することです。戦争が長期化し数千人の死者が出ている現状は、年内の中間選挙を控えたトランプ政権にとって政治的な重荷となっており、米情報機関は撤退した場合のイラン側の反応を分析し始めています。撤退すれば海峡が再開されガソリン価格は下がりますが、アメリカの国際的な威信は低下を免れません。すでにイランのモジタバ・ハメネイ最高指導者は「アメリカは屈辱的な敗北を喫した」と勝利を宣言し、周辺諸国との共同管理による新秩序の構築を強調しています。アメリカにとって、経済・軍事的な圧力で屈服させられなかったことは、覇権の凋落を他国に示す深刻な例となる懸念があります。

世界に迫る経済混乱

Soon Comes The Mother of All Supply Shocks - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ政権の対イラン政策と、それが世界経済に及ぼす影響について、元大統領府予算局長のデビッド・ストックマン氏が厳しい見解を示しています。ストックマン氏は、現在の大統領周辺の閣僚たちが、イランとの対立状況をあまりに楽観的に捉えすぎていると指摘しています。特にベッセント財務長官が、米海軍による海上封鎖によってイランの石油生産が間もなく崩壊し、イランが降伏間近であると主張していることに対し、ストックマン氏はデータに基づき真っ向から反論しています。実態としては、イランを追い詰めているはずの封鎖戦略が、逆に世界規模の深刻な供給ショックを引き起こそうとしているというのです。

ストックマン氏の分析によれば、海上封鎖によってイランが経済的に自滅するというシナリオには大きな誤算があります。まず、イランにはすでに引き渡し済みの石油による未回収の売掛金や、公海上で輸送中の在庫が合わせて2億バレルほど存在しており、金額にして200億ドル相当の現金収入が今後数か月間にわたって見込める状態にあります。また、イラン国内の石油貯蔵施設やタンカーを利用した洋上備蓄にはまだ4100万バレル程度の余裕があり、現在の生産ペースを維持したとしても、あと2か月近くは持ちこたえられる計算になります。つまり、トランプ政権が期待するような数日内での白旗という展開は、現実的には考えにくいというのが氏の主張です。

一方で、世界経済への悪影響はすでに深刻な段階に入っています。ホルムズ海峡の封鎖により、世界の海上石油輸送量の約55%に相当する9億バレルもの資源が市場から消えています。たとえ今すぐに和平が成立したとしても、輸送にかかる日数を考慮すれば、欧州やアジアの主要港に新しいタンカーが到着するのは早くても7月以降になります。市場ではすでに異変が起きており、ドバイ原油と米国のWTI原油の価格差は1バレルあたり35ドルという、1990年以来見られなかった異常な水準にまで拡大しています。この価格の歪みは、世界のエネルギー市場がこれまでにないほど不安定な状態にあることを如実に物語っています。

ストックマン氏は、これから数か月の間に、石油や天然ガスだけでなく、肥料やアルミニウムといった石油化学由来の副産物も含めた広範な物資で、深刻な物理的不足と物流の停滞が発生すると予測しています。供給網が寸断されることで、コスト増による生産縮小と、急激な価格高騰が世界を同時に襲うことになります。ストックマン氏は、トランプ大統領が「イランが取引を懇願している」と主張しているのは事実に基づかない虚偽であり、実際にはアメリカがイランを屈服させる前に、世界経済が過去最大の供給ショックによって深刻な機能不全に陥る可能性が高いと結んでいます。私たちは、かつてのオイルショックを凌ぐような経済的混乱の入り口に立っているのかもしれません。

西洋覇権の衰退

Jeffrey Sachs: Trump's Defeat in Iran & Decline of the U.S. Empire - YouTube [LINK]

【海外動画より】この動画は、アメリカの著名な経済学者であるジェフリー・サックス教授が、冷戦後のアメリカによる一極支配、いわゆる「ユニポーラ・モーメント」の終焉と、西側諸国の覇権の衰退について冷徹に分析したものです。サックス教授は、現在の世界情勢を短期的な出来事として捉えるのではなく、1800年頃から始まった約150年間に及ぶ西欧の支配という長い歴史の文脈から説明しています。教授によれば、かつてはイギリスを中心としたヨーロッパ諸国が、技術や軍事、科学において圧倒的な優位性を誇っていましたが、そのピークは1950年頃だったと指摘します。

第二次世界大戦後、ヨーロッパが植民地を失う一方で、アメリカがソ連と競いながら帝国的な地位を引き継ぎました。1991年にソ連が崩壊した際、アメリカは自らを唯一の超大国と見なし、歴史が終焉したかのような陶酔感に浸りましたが、教授はこれを「経済的な無知に基づく幻想」だったと切り捨てます。水面下では、戦後からアジア諸国の教育水準や都市化、工業化が着実に進み、西側との格差が縮まり続けていたからです。特に世界人口の60%を占めるアジアの台頭こそが、真の歴史的潮流であったと述べています。かつては欧米の市場向けに安価な製品を組み立てる貧しい国と見なされていた中国は、2010年頃を境に技術や製造業の多くの分野で米国に匹敵、あるいは凌駕する存在となりました。

サックス教授は、近年のウクライナ紛争についても、米国の勢力圏拡大の限界を示す象徴的な出来事だと分析しています。制裁によってロシア経済を即座に屈服させられると考えた米国の見通しは甘く、一極支配の限界を露呈する結果となりました。しかし、アメリカの政策決定者たちの間では、依然として西側の支配こそが自然な秩序であるという信念が根強く残っており、他国の台頭を自国への脅威と見なして封じ込めようとする「攻勢的現実主義」の思考から抜け出せずにいます。教授は、こうした覇権維持への固執が、協調による安定を妨げ、世界を不必要に不安定にしていると警鐘を鳴らしています。アメリカは依然として強大な破壊力と影響力を持っていますが、独占的な覇権の時代はもはや過去のものになったという事実を、教授は淡々と提示しています。

消えた建国時の共和国

We Are Living in the Fourth American Republic | Mises Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカの保守層の中には、建国の父たちが作り上げた憲法や共和国が今もなお存続していると信じ、その自由を守らなければならないと主張する人々がいます。しかし、現実に目を向ければ、18世紀後半に誕生した当初の共和国はすでに過去の遺物であり、現在の憲法秩序は少なくとも100年以上前に消失していることがわかります。多くの政治家は1787年制定の憲法に対して忠誠を誓いますが、それは一種の欺瞞に過ぎません。実際には、連邦裁判所の判事たちが解釈した内容こそが憲法となっており、1801年にジェファーソンが大統領に就任した当時の憲法のあり方とは、もはや何の関係もなくなっているのが実情です。

こうした革命的な変化は、体制の表面的な形式を変えることなく、内部から進行してきました。かつての思想家ガレット・ガレットは、多くの国民が「これから革命が起きる」と警戒している間に、実はすでに革命は終わっていたのだと指摘しました。かつて国民に支えられ、国民によって統制されていた政府は、今や国民を支援することで国民を支配する存在へと変貌しています。特に行政権限の肥大化は著しく、大統領が立法に深く関与し、行政法を通じて司法制度さえも取り込む巨大な行政国家が築かれました。政府が一度国民の購買力を保証する役割を担えば、人々は政府に依存するようになり、この変化はもはや不可逆的なものとなっています。

アメリカの歴史を正直に評価するならば、フランスのように複数の共和国を経てきたと考えるのが妥当でしょう。最初の共和国は独立から憲法批准までの分権的な体制でしたが、その後、中央集権を求める勢力によって第2の共和国へと移行しました。さらに南北戦争を経て、中央政府が圧倒的な権力を握り、各州が離脱できない体制へと変わる第2の革命が起きました。その後、20世紀初頭の進歩主義時代には、中央銀行の設立や所得税の導入により、連邦政府が国民を直接監視し徴税する仕組みが整いました。そして1937年以降、ルーズベルト政権のニューディール政策が司法に容認されたことで、現在の第4の共和国が完成したのです。

このように、かつてのチェック・アンド・バランスや州の主権といった概念は遠い昔に一掃されています。現在のアメリカは、巨大な連邦行政国家が自らの権限を自ら定義する体制にあります。建国の父たちが作った共和国を守ろうという言葉は、もはや想像の世界の話でしかありません。憲法という形式や選挙、最高裁判所といった名前は残されていますが、その中身は自由主義とは程遠い、新しい形態の全体主義へと変質しています。民主主義や自由という神聖なスローガンは唱えられ続けていますが、その実態はエリート層や操作された世論によって動かされているのが、2026年現在のアメリカの姿であると、この記事の著者は分析しています。

ドル、再び価値失う

Dollar Lost Every Penny It Gained From the War — The Crack Is Starting - YouTube [LINK]

【海外動画より】貴金属投資の専門家であるピーター・シフ氏が、最新の市場動向と米連邦準備理事会(FRB)の歴史的な失策について分析した内容をご紹介します。先週の貴金属市場は比較的静かでしたが、シフ氏は金の調整局面が続く中でファンダメンタルズはむしろ改善していると指摘しています。特に、イランとの緊張が高まった際に上昇した米ドルの価値が、その後の下落ですべて消失した事実に注目し、ドルが「安全な避難先」としての機能を失いつつあるという見解を示しています。市場では株価が最高値を更新するなど楽観論が漂っていますが、同氏はこれが一時的な期待に基づいたものであり、いずれ株式市場の調整と金の独歩高が起きる「デカップリング」を予測しています。

シフ氏は、退任するパウエルFRB議長のこれまでの実績を厳しく批判しています。議長はパンデミック前のインフレ抑制を自画自賛していますが、事実は異なります。1980年に1.5兆ドルだった米国の通貨供給量(M2)は現在22兆ドルまで膨れ上がり、40年以上にわたって年平均6%のペースで増加し続けてきました。この莫大な通貨供給こそがインフレの根源であり、パンデミックによる供給ショックはあくまで二次的な要因に過ぎないとシフ氏は説いています。過去40年間のCPI平均上昇率は3.2%に達しており、FRBが掲げる2%ターゲットを達成できたのは、2008年の金融危機後のデフレ圧力が働いた特殊な10年間だけだったというデータを示し、FRBの管理能力に疑問を呈しています。

今後の経済見通しについて、シフ氏は「スタグフレーション」の悪化を警告しています。米国債の残高は1兆ドル未満から40兆ドル近くまで40倍に増加し、かつて世界最大の債権国だった米国は今や最大の債務国へと転落しました。このような巨額の債務を抱える中で、戦争のコストを賄うためにさらなる通貨発行が行われれば、ドルの購買力はさらに低下せざるを得ません。同氏は、ビットコインなどの暗号資産を「巨大な砂上の楼閣」と切り捨てる一方で、中央銀行が米国債ではなく金を購入し始めている事実に目を向けるべきだと主張します。名目金利の動きに惑わされる投資家が多い中で、インフレを加味した「実質金利」の低下が金の価値を押し上げる決定的な要因になると冷静に分析し、資産防衛のための貴金属保有の重要性を改めて強調しています。

イラン戦争の集団妄想

SHOCK: Iran Just CRUSHED Trump's Blockade and the Middle East Is Now on Fire | Lawrence Wilkerson - YouTube [LINK]

【海外動画より】現在、ペルシャ湾で展開されている事態は、戦略的な作戦でも米国の軍事力の誇示でもなく、ベトナム戦争初期以来の「集団的な妄想」であると元米陸軍大佐のローレンス・ウィルカーソン氏は警告しています。米海軍は空母打撃群を派遣していますが、実際にイランの船舶を臨検できる能力を持つ艦船はわずか11隻に過ぎません。4月15日以降、100隻から200隻のイラン船舶が航行している中で、米軍が阻止できているのは海上交通のわずか3%から10%程度です。イラン側は米軍の対艦ミサイルの射程内に入らないよう自国の領海内を巧みに航行しており、石油の輸送は今この瞬間も継続されています。イランは既に約1億5000万バレルの石油を1バレル約140ドルで売却済みであり、約210億ドルの収入を確保しているため、経済封鎖は実質的に機能していないのが実態です。

対イラン紛争は開始から60日が経過し、戦争権限法に基づく義務が生じる節目を迎えています。しかし、歴代の米政権はこの法律を拘束力のあるものとは見なさず、時計をリセットするなどの手法で制限を回避してきました。現場の軍司令官たちは、これ以上の空爆は目的を達成できず、弾薬の枯渇や事態の激化を招くだけだと助言していますが、政権側はそれを無視する構図が続いています。特に懸念されるのは、特殊部隊の増強や核関連施設を標的とした地上作戦の計画が加速している点です。バイデン大統領は過去にも顧問たちの反対を押し切って攻撃を決定しており、軍の慎重な判断を無視して暴走する危険性が指摘されています。さらに、ロシアのプーチン大統領からの直接的な警告も、イデオロギー的なフィルターを通して軽視されている状況です。

米国側は、イランの指導部が混乱し、崩壊の危機にあるという仮定に基づいて行動していますが、これはイスラエル側から提供された情報の鵜呑みによる「幻想」であるとウィルカーソン氏は断じています。現在のイラン指導部はイラン・イラク戦争の過酷な経験を持つ退役軍人たちであり、脅威に屈するような人々ではありません。むしろ、米国による攻撃はイラン国内で「旗の下への結集」効果を生み、政権に批判的だった国民までもが外敵から国を守るために政府を支持し始めています。また、経済的な損失も甚大です。作戦費用は最大で500億ドルに達し、航空機の損失も深刻です。米国の国家債務は39兆ドルへと加速し、金利負担だけで予算を圧迫しています。

エネルギー市場への影響も深刻で、米国内のガソリン価格は急騰し、家計を直撃しています。ホルムズ海峡の機能不全により2000隻以上の船が停滞し、世界的な貿易へのショックは計り知れません。もしイランが石油インフラへの攻撃に踏み切れば、それは単なる不況ではなく、世界規模の経済大恐慌を招く恐れがあります。ウィルカーソン氏は、米国がこの戦争に軍事的に勝利することは不可能であると結論付けています。イランの広大な国土と戦略的な深み、そして強力なミサイル戦力を考慮すれば、ホルムズ海峡を完全に制御することは物理的に不可能です。現在の米政権が追求している目標は、地理的・物理的な現実を無視した極めて危険な賭けであると警鐘を鳴らしています。

敗北した米国

Prof. John Mearsheimer : How Trump Lost His War - YouTube [LINK]

【海外動画より】国際政治学者のジョン・ミアシャイマー教授が、トランプ政権が自ら選んだはずの対イラン戦争でいかに敗北し、世界規模の危機を招いているかを分析する動画を紹介します。まず、ミアシャイマー教授は、ロシアのプーチン大統領がイランの外相を異例の厚遇で迎えたことに注目しています。これは、アメリカがロシアやイランを追い詰めた結果、両国がかつてないほど緊密な同盟関係を築いたことを象徴しています。現在、ロシアはイランに対して衛星データやドローン・ミサイル用のチップを提供しており、イランの軍事力を大幅に向上させています。教授は、ロシアとイランがアメリカを劣勢に追い込んでいる現状に自信を深めており、特に中東とウクライナの両面でアメリカが苦境に立たされていると指摘しています。

トランプ政権の戦略的失敗について、教授は「イスラエルに騙された」と鋭く批判しています。イスラエルのネタニヤフ首相らは、空爆による電撃的な攻撃でイラン政権を崩壊させ、親米政権を樹立できるとトランプ氏を説得しました。しかし、歴史的に空爆だけで政権交代を成功させた例はなく、この戦略は最初から失敗が約束されていたといいます。トランプ氏の主要なアドバイザーたちもこの無謀さを警告していましたが、同氏はイスラエルの言い分を優先させました。その結果、アメリカは高価な精密兵器を大量に浪費し、在庫が枯渇するという極めて危険な状況に陥っています。これは本来、中国を抑止するために温存すべき資源であり、戦略的な優先順位が完全に崩壊していることを意味します。

経済面では、イランがホルムズ海峡の制裁を強化し、海上封鎖を続けていることが世界経済に多大な苦痛を与えています。イラン側は時間を味方につけており、経済的な圧力がアメリカを交渉のテーブルに引きずり出すのを待っています。一方で、イランは核開発の権利を放棄せず、まず停戦と安全保障を求めるという強硬な3段階プランを提示しています。教授は、アメリカ国内のイスラエル・ロビーの力が強すぎるため、トランプ氏がイランと実効性のある和平合意を結ぶことは極めて困難であると分析します。イスラエルがイランの核保有を容認することはないため、この対立は出口のない迷路に入り込んでいます。

最後に、教授は今後の見通しについて極めて悲観的な見解を示しています。中東だけでなく、ウクライナ情勢もロシアの優位が進み、東アジアでも中国という強大なライバルと対峙しています。特に懸念されるのは、追い詰められた国家が核兵器の使用という過激な手段を検討する可能性です。ロシアのエリート層が戦争を終わらせるために西側へのデモンストレーションとして核使用を議論している現状や、イスラエルがイランに対して核を使用するリスクは無視できないといいます。私たちは今、幸福な結末が見えない複数の紛争が同時進行する「絶望的な未来」に直面しており、冷静な現状認識が不可欠であると教授は締めくくっています。

イラン戦争の代償

The Costs of Trump's War: How Long Until They're Unbearable? - YouTube [LINK]

【海外動画より】アメリカの元下院議員ロン・ポール氏が、現在のトランプ政権下の軍事行動がもたらす経済的代償と、その持続不可能性について警鐘を鳴らす動画を紹介します。動画ではまず、イラン周辺での軍事活動に関連する不透明な予算支出が指摘されています。当局は当初、短期間の活動で済むと説明していましたが、事態は数ヶ月に及び、当初の予測を大幅に上回る250億ドルから500億ドル規模のコストがかかるとの懸念が議会で噴出しています。ポール氏は、これほどの巨額な資金が投じられながらも、政府が国民に対して真実を語らず、明確な目的のないままに戦線が拡大している現状を批判しています。かつては戦争の開始には議会の承認が必要であり、目的も明確にされていましたが、現代では行政が独断で進め、連邦準備理事会(FRB)が通貨を増刷することでその費用を賄うという、不健全な仕組みが定着していると述べています。

経済的な側面では、このような軍事政策がアメリカ国内のインフレを加速させている点が強調されています。パンデミック時の過剰な経済刺激策がもたらした物価上昇の波に続き、今回の軍事コストがさらなる「インフレの津波」となって国民を襲うことが危惧されています。特に石油価格への影響は深刻で、アメリカは本来、世界最大の石油輸出国であるにもかかわらず、イランやベネズエラといった国々への介入や制裁、さらには「石油の略奪」とも呼べる強引な政策を続けることで、かえって国内のガソリン価格を4ドル以上に押し上げる結果を招いていると指摘しています。供給と需要のバランスだけでなく、ドルそのものの価値が下落している事実を直視すべきであり、貴金属価格の上昇は通貨に対する信頼の低下を如実に示しているという見解です。

最後に、ポール氏はこの「終わりのない戦争」が止まる唯一の理由は、アメリカが経済的に破綻することであると述べています。借金に依存した国家運営と、FRBによる金利操作が引き起こす誤った投資は、長期的な経済成長を阻害する大きな要因となっています。特に、一握りの人々が密室で通貨の価格を決める現在の金融システムが、富の不公正な分配と市場の歪みを生んでいると主張しています。世界文明としての歴史が長いイランのような国と対立し続けることは、アメリカ自身の首を絞める行為であり、自国の憲法に立ち返り、他国への介入をやめて速やかに撤退することこそが、アメリカの経済的繁栄を取り戻す唯一の道であると結論づけています。国民はこの高い代償に気づき始めており、抜本的な政策転換が必要であると強く訴えています。

2026-05-02

論理的推論とは?

【キーワード】論理的推論(logical deduction)とは、誰もが否定できないもっともな前提から出発し、一歩一歩、理屈を積み重ねることで、間違いのない結論を導き出す思考の方法です。この手法は、オーストリア学派経済学の大きな特徴の一つであり、私たちの日常の選択や行動の背後にある仕組みを明らかにするために用いられます。例えば、数学者がピタゴラスの定理を証明する時に、最初から正しいとされる前提から論理を組み立てていくのと非常によく似ています。

オーストリア学派は、経済学を単なる数字の集まりではなく、人間が目的を持って行う「意志のある行為」を分析する学問だと考えます。その出発点となるのが、「人間は行為する」という、あまりにも当たり前で否定できない根本的な前提、すなわち公理です。ここから論理的な推論を重ねることで、経済の普遍的な法則を見つけ出そうとするのです。一歩一歩の推論が正しく行われている限り、そこから導き出される結論は、公理と同じように正しいものであることが保証されます。

この論理的推論によって導かれた法則の一つに、物の値段が上がれば、それを欲しがる人の数は減るという「需要の法則」があります。もし、実際に値段が上がったのにある商品の売れ行きが伸びたというデータが見つかっても、それによって論理的に導き出された法則そのものが間違いだとされることはありません。なぜなら、現実の世界では流行の変化や他人の行動など、法則が想定していた条件以外の要素が影響しているだけだと考えられるからです。

ここが、統計や実験などの経験から法則を導き出そうとする一般的な経済学の手法とは大きく異なる点です。統計はあくまで「過去に何が起きたか」という歴史を記録したものであり、将来も必ず同じことが起きるとは限りません。しかし、人間の行動の性質に基づいた論理的推論によって得られた法則は、時代や場所を問わず、いつでもどこでも成り立つ普遍的なものとなります。このように、事実を解釈するための正しい「ものさし」を、論理の力で築き上げることこそが、論理的推論の真髄なのです。

自由世界の新たなリーダー?

No, Zelensky Is Not ‘The Leader of the Free World’ - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ウクライナのゼレンスキー大統領を「自由世界の新たなリーダー」と称賛する言説が一部の欧米メディアで見られますが、政治アナリストのテッド・ガレン・カーペンター氏は、こうした見方は現実から著しく乖離していると批判しています。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストであるデビッド・フレンチ氏は4月、ウクライナ軍を「西洋で最も戦闘経験が豊富な地上軍」であり「ドローン戦争における世界のリーダー」であると絶賛しました。しかし、こうしたプロパガンダに近い賞賛は、かつての湾岸戦争前にイラクを過大評価して恐怖を煽った手法の裏返しであり、実際にはロシアとの消耗戦で劣勢に立たされているウクライナの窮状を隠蔽するものに過ぎません。

実際の戦況に目を向ければ、ロシアは依然として着実に領土を拡大しており、人口や軍事予備力の差から、長期的な消耗戦においてはロシアが有利な立場にあります。欧米の当局やメディアは、ロシアが勝利しつつあるという基本的な現実を覆い隠そうとしていますが、ウクライナ側の死傷者数の推定値を公表することを頑なに拒んでいる姿勢そのものが、現場の状況が芳しくないことを示唆しています。また、ウクライナの軍事的成果は自力によるものではなく、米国や欧州が数百億ドルにのぼる資金と高度な兵器、さらには軍事情報まで提供し続けている結果です。大規模な支援がなければ、ウクライナが第三勢力に抗う力を持っていないことは明白であり、実態はNATOの対露代理人に過ぎません。

政治的側面においても、ゼレンスキー氏を「自由民主主義の気高き擁護者」とする神話は崩れつつあります。2025年にゼレンスキー政権が汚職対策機関の独立性を抑制する決定を下したことで、国内では大規模な反政府デモが発生し、国民の間でも政権に対する冷ややかな見方が広がっています。かつては熱狂的に支持していた欧州の主要メディアでさえ、2025年末頃からゼレンスキー氏の非民主的な手法を批判的に報じるようになりました。汚職が蔓延し、権威主義的な傾向を強める政権を、自由世界の道徳的な中心地と呼ぶのは無理があると言わざるを得ません。

フレンチ氏は、米国が落とした自由のトーチをキエフが引き継いだと主張していますが、これは現実の世界とは別の宇宙の話のようです。現実のウクライナは、米国にとって戦略的、経済的、あるいは道徳的な関連性が薄い汚職国家であり、色あせつつあるNATOを活性化させたり、欧米の民主主義を救ったりするような存在ではありません。カーペンター氏は、このような根拠のない英雄崇拝を捨て、ウクライナという国家の実像を冷静に見極めるべきだと説いています。過度な偶像化は、事態の本質を見誤らせ、米国をさらなる外交的な迷走へと導く危険性があるからです。

最悪のエネルギー危機へ

Oil Crisis Worst in History and Worse than Most People Imagine [LINK]

【海外記事より】現在のガソリン価格の急騰は、多くの人々が想像している以上に深刻な「歴史上最悪のエネルギー危機」へと発展しています。米国のガソリン平均価格は1ガロンあたり4.23ドルに達し、地域によってはレギュラーが6ドル、プレミアムが7ドル、ディーゼルにいたっては8ドルという、かつてない高値を記録しています。トランプ大統領による最新の発表を受け、原油価格はブレント原油で1バレル120ドル、WTI原油で108ドルを突破しました。これは2022年夏のウクライナ侵攻直後のピークに匹敵する水準であり、世界経済が再び「死の螺旋」に直面していることを物語っています。

トランプ政権は、イランの核開発放棄を迫るため、ホルムズ海峡の封鎖に伴うイランの石油輸出停止を長期化させる方針を固めました。専門家によれば、イランの石油備蓄はあと12日から22日分しか残っておらず、輸出先を失ったイラン経済は死に体となっています。失業者は100万人を超え、年間インフレ率は67%という驚異的な数字を記録しています。しかし、これはイラン一国だけの問題ではありません。トランプ氏が選択した戦略は、直接的な武力行使ではなく、世界全体を巻き込んだ「消耗戦」です。ホルムズ海峡の閉鎖が長引けば、世界中の消費者が極端な原油高と、それに伴うあらゆる物価の上昇という代償を支払わされることになります。

今回の危機の深刻さは、過去のどのエネルギー危機とも異なります。ホルムズ海峡を経由して石油を輸出している近隣諸国も、生産停止を余儀なくされる恐れがあります。一度油井を閉鎖すれば、長期にわたる損傷を招くリスクがあり、海峡が再開した後も生産能力が元に戻らない可能性があるからです。トランプ大統領は、イランが「崩壊状態」にあるとして、相手が屈するまでこの包囲網を維持する自信を見せていますが、これは世界中の人々がどれだけの苦痛に耐えられるかという、危険な賭けでもあります。金融市場はこのリスクを過小評価していますが、夏休みのドライブシーズンが本格化すれば、さらなる価格衝撃が人々の生活を直撃し、厳しい「審判の日」が訪れると予測されています。

経済的な付随的被害は石油だけにとどまりません。トランプ大統領が掲げた関税政策にもかかわらず、米国の貿易赤字は3月に予想を超えて拡大しました。輸入の増加が輸出を上回り、経済成長の重荷となっています。富裕層や石油利権を持つ一部の層がこの混乱で利益を得る一方で、一般市民の家計は燃料費と食料品価格の高騰によって破壊されつつあります。大統領の強硬姿勢がイランを屈服させるのが先か、それとも世界経済が先に耐えきれなくなるのか。私たちは今、かつてない規模のエネルギー戦争の渦中にあり、その影響はこれからさらに悪化していくことが懸念されています。

金売却で赤字穴埋め

Russia Selling Gold to Fill Budget Hole [LINK]

【海外記事より】金(ゴールド)を保有する最大の利点の一つは、必要な時にいつでも換金できる高い流動性にあります。現在、ロシア政府はこの利点を最大限に活用し、多額の戦費や経済制裁による打撃で生じた財政赤字を埋めるために、膨大な金準備の売却を進めています。2026年に入ってから、ロシア中銀は政府の予算不足を補うために22トンの金を売却しました。現在の金価格で換算すると、その価値は約34億ドルに達します。公式データによれば、ロシアの金準備高は4月1日時点で7410万トロイオンスまで減少しており、中銀による売却の実態が浮き彫りになっています。

ロシアの財政を圧迫しているのは、長期化する戦争に加え、石油・ガス収入の減少です。3月末時点での財政赤字は4.6兆ルーブル(約613億ドル)に達しており、専門家は今後も予算不足を補うための金売却が続くと予測しています。こうした動きはロシアに限ったことではなく、トルコもエネルギー価格の高騰や通貨リラの下支えのために、2月と3月の短期間に約60トンの金を売却しました。中央銀行によるこのような準備資産の放出は、特に発展途上国において一貫して見られる緊急時の対応策となっています。

ロシアが現在の危機に対処できているのは、過去数年にわたる周到な準備があったからです。ロシア中銀は2014年から金の大量購入を開始し、その後の6年間で準備高を約1244トンも増加させました。当時は金価格が1オンス1100ドルから1500ドルという比較的安価な水準にあり、安値で買い溜めることに成功していました。さらにウクライナ侵攻前には、国家福祉基金の資産構成を人民元60%、金40%へと組み替えていました。これは欧米による経済的圧力が強まることを見越した機敏な動きであり、実際に戦争中の現在、これらの資金が予算維持の生命線となっています。

侵攻開始時、ロシアは準備資産の半分をドルやユーロ、ポンドで保有していましたが、これらは制裁により凍結されました。しかし、残りの半分を占めていた人民元と金は、現在もアクセス可能な貴重な資産として機能しています。ロシアによる最近の金売却は、なぜ世界の中央銀行が金を保有し続けるのかという根本的な理由を証明しています。金は特定の国家の信用に依存しないため、相手方のリスクに左右されることがありません。地政学的な動乱期において、金は国家の支払い能力を維持するための「究極の安全資産」としての役割を果たしているのです。

救済できない危機

Schiff w/ Lutz: Washington Can’t Bail Itself Out This Time | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏は、現在のマクロ経済と米ドルの地位について深刻な警告を発しています。シフ氏は現在の経済情勢を、数十年にわたる財政および金融政策の誤りが招いた必然的な結果であると位置づけています。多くの人々は危機が迫っていることに依然として気づいていませんが、シフ氏は15年以上にわたって警鐘を鳴らし続けてきた「審判の日」がいよいよ近づいていると述べています。政治家たちが問題の解決を先送りし、痛みを伴う決断を避けてきたツケを、最終的には市場が強制的に支払わせることになるという見解です。

今回の危機がこれまでのものと決定的に異なる点は、危機の中心が政府自身の貸借対照表、つまり米国債と米ドルにあるという点です。かつての財務長官であるハンク・ポールソン氏でさえ、米国債の需要が不足する事態に備えた緊急計画の必要性に言及し始めています。しかしシフ氏は、ワシントンが用意するいかなる緊急計画も実効性を持たないと懐疑的です。危機が起きてからの事後策を練るのではなく、今すぐ危機を回避するための行動が必要だと主張しています。また、投資家は今、利益を追うことよりも「資本の保全」を最優先に考えるべき時期に来ていると促しています。

これまで米国債は絶対的な安全資産と見なされてきましたが、シフ氏はその前提を疑うべきだと指摘します。米国はかつて金本位制のもとでドルを金と交換する約束を反故にした歴史があり、政府がデフォルト(債務不履行)を起こさないという保証はどこにもありません。預金者や投資家は、投資による「収益」を期待する段階から、投資した「元本」が戻ってくるかどうかを心配する段階に移行しつつあります。米国債も例外ではなく、もはや絶対的な避難先とは言えない状況にあるというのがシフ氏の分析です。

最も重要な警告は、今回は政府による救済が期待できないという点です。2008年の金融危機の際には、政府が介入して人々を救い出すことができましたが、今回の危機は「政府の債務」そのものが原因です。ドルの価値が揺らぐ危機において、政府ができることはさらなるドルの増刷だけであり、それは火に油を注ぐ行為にほかなりません。過去のような大規模な政府救済を期待している人々は、手痛い失望を味わうことになるでしょう。シフ氏は、政府が自らを救済できない以上、個人が自衛のために資本を守る手段を講じるべきだと結論づけています。

米英露、高まる緊張

King Charles Is Being Accused of Telling Congress That War With Russia Is Coming and It Appears That Putin’s Health Is Failing - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】私たちは今、人類史において極めて危険な局面を迎えています。ヨーロッパでは第2次世界大戦以来最大規模の地上戦が続き、中東ではイランとの戦闘再開により危機が新たな段階に突入しようとしています。こうした中、ホワイトハウスを訪れた英国のチャールズ国王とトランプ大統領の間で交わされた会話や、国王による議会演説が、ロシアとの緊張をさらに高める要因として注目されています。トランプ大統領は国王に対し、プーチン大統領と対話していることを明かした上で、彼が戦争を望んでおり、もし宣言通りの行動に出れば「人口を全滅させるだろう」という極めて不穏な見通しを語ったと報じられています。

チャールズ国王は米連邦議会での演説において、ウクライナ支援に向けた英米両国の「不屈の決意」を強調しました。国王は過去の2つの世界大戦や冷戦において両国が肩を並べて戦ってきた歴史を引き合いに出し、現在のウクライナ防衛も同様の決意が必要であると説きました。この演説でロシアの名が直接挙げられることはありませんでしたが、ロシアのメディアや軍事アナリストたちは、これを「英米による対露戦争の準備要請」であると敏感に反応しています。実際に英国政府は、ロシアの「影の船団」と呼ばれる商船への臨検を許可するなど挑発的な姿勢を強めており、英露間の緊張はここ数十年間で最高潮に達しています。

一方で、ロシアのプーチン大統領の健康状態についても深刻な憶測が飛び交っています。公式には健康であるとされていますが、最近の演説中に激しい咳き込みで呼吸が困難になったり、会議中に机の端を強く握りしめて震えを隠そうとしたりする姿が映像に捉えられています。73歳になったプーチン氏の顔の腫れや不自然に硬直した姿勢は、パーキンソン病やがんを患っているのではないかという疑念を強めています。記事の著者は、プーチン氏が非常に重病であり、長くはもたないのではないかと推測していますが、真実が公表されることはないでしょう。

懸念されるのは、もしプーチン氏が退陣した場合、後任には彼よりもはるかに過激で危険な人物が就く可能性があるということです。現在は中東情勢に世界の注目が集まっていますが、ロシアはウクライナでの大規模な攻勢を準備している兆候があり、それが成功すれば西側諸国によるさらなる強力な軍事介入を招く恐れがあります。世界が「狂気」に包まれていく中、リーダーたちの不用意な言動や健康不安が、取り返しのつかない事態、つまりロシアとの直接的な武力衝突を引き起こす引き金になりかねない状況にあると記事は警告しています。

楽観論に疑念

Vance Reportedly Questions Pentagon's Rosy Assessment Of Iran War | ZeroHedge [LINK]

【海外記事より】米国のJD・ヴァンス副大統領が、イランに対する軍事作戦「壮絶な怒り」の進捗に関する国防総省の楽観的な報告に対し、強い疑念を抱いていると報じられました。報道によると、ヴァンス氏は非公式の場で、米軍の弾薬在庫が危機的な水準まで減少している可能性を指摘しています。シンクタンクの調査では、開戦からわずか5週間でパトリオット・ミサイルを含む高度な迎撃弾や精密誘導兵器の在庫の約半分を使い果たしたとの分析が出ていますが、国防総省はこうした否定的な見解を一貫して否定し、在庫は依然として強固であると主張し続けています。

ヴァンス氏が最も懸念しているのは、イランでの武器の大量消費が、他の地域での抑止力を低下させている点です。米国は現在、アジアの同盟国から防空システムを中東へ移送せざるを得ない状況にあり、これは台湾を巡って対峙する中国を利することになりかねません。もし弾薬が枯渇すれば、欧州での対ロシア戦や東アジアでの有事に対応できなくなる恐れがあります。ホワイトハウス内部からは、大統領に対して「都合の良いニュース」ばかりが報告され、米軍の即応能力が低下しているという極めて重要なリスクが隠蔽されているとの声も上がっています。

さらに、軍上層部がイランに甚大な打撃を与えたと宣伝する一方で、実際の内部評価はそれほど芳しくありません。イランは依然として空軍の3分の2を維持し、ミサイル発射能力やホルムズ海峡で船舶を攻撃できる小型高速艇の大部分を保持しているとされています。海上貿易の再開を目指す米国にとって、これらは依然として現実的な脅威です。ヴァンス氏はこうした実態を踏まえ、戦略計画について厳しい質問を投げかけていますが、現時点では閣僚らと公然と対立することは避け、あくまで個人の懸念としてトランプ大統領に伝えているようです。

トランプ大統領自身も、ホルムズ海峡の封鎖に伴う燃料や食料価格の高騰により、有権者の間で戦争への支持が低下することを警戒しています。ヴァンス氏はこの紛争に対して必ずしも積極的ではないと見られていますが、一方でイランの核の脅威を強調する発言も行っています。かつてのブッシュ政権下での「キノコ雲」の議論を彷彿とさせるような、核テロの危険性を煽るような言及もあり、専門家の間では困惑も広がっています。政権内部での情報の不一致と、世界規模での軍事的即応能力の低下という二重の課題が、現在の米国を揺さぶっています。

露の戦略的忍耐

Is Russia Really 'Too Soft' in Enforcing Its Red Lines? - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、ロシア国内の軍関係者の間では、政府の対応が「生ぬるい」との不満が募っています。元ロシア軍参謀総長のユーリ・バルエフスキー将軍をはじめとする軍高官たちは、欧米諸国が設定された「レッドライン(越えてはならない一線)」を繰り返し無視している現状に警鐘を鳴らしています。ウクライナ側がNATOの支援を受けてロシア本土の石油施設や民間インフラ、さらにはクレムリンまでをも攻撃対象としているにもかかわらず、ロシア政府が決定的な報復を控えていることが、さらなる挑発を招いているという主張です。軍の現場からは、言葉だけの警告ではなく、敵に恐怖を植え付けるような「本物の戦争」を求める声が上がっています。

しかし、記事の著者であるドラゴ・ボスニッチ氏は、プーチン政権が戦略的な忍耐を続けている背景には、極めて冷静な計算があると分析しています。ロシアが直ちにNATOの挑発に対して直接的な軍事報復を行わない最大の理由は、西側諸国の足並みを乱したままにしておくためです。現在、米国と欧州の関係は歴史的な低水準にあり、トランプ政権がNATOからの離脱を公然と示唆している状況です。もしロシアが今、強力な報復を行えば、崩壊の危機にあるNATOを再び団結させてしまうことになります。ロシアにとって、敵対的な軍事同盟を自らの手で「修復」してやる理由はなく、今はただ分裂を待つ方が得策であるという判断が働いています。

また、ロシアが全力を出さないもう一つの理由は、ウクライナという土地そのものに対する歴史的な認識にあります。ロシアにとってウクライナは1200年来の自国の領土であり、そこに住む人々は西側諸国によって洗脳された「同胞」であるという考えが根底にあります。軍事力でウクライナを完全に壊滅させることは容易ですが、それは自国の歴史的遺産や同胞を自ら破壊することを意味します。西側諸国はウクライナ人を単なる使い捨ての駒と見なしていますが、ロシア側は将来的に数世代をかけてでも、その「洗脳」を解き、非ナチ化と非軍事化を物理的に進める必要があると考えています。そのため、あえて片手を縛ったような状態で戦い続けているのです。

結局のところ、現在のロシア政府の姿勢は弱さの表れではなく、極めて長期的な地政学的戦略に基づいたものです。軍内部のフラストレーションは理解できるものの、性急なエスカレーションはロシアにとって最も避けたい「西側の再団結」を招くリスクがあります。経済活動への支障や本土へのドローン攻撃といった損害を許容してでも、戦略的な忍耐を維持することで、米国主導の既存秩序が自壊するのを待つ構えです。希望的観測に基づく戦略は危険ですが、ロシア政府は現在の苦境を乗り越えた先に、より有利な国際秩序が到来することを見据えて、あえて抑制的な対応を続けていると記事は結論づけています。

真の和平合意は困難

Iran Plays Tough With Trump - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏は、トランプ政権が直面しているイランとの極めて厳しい対立状況を分析しています。現在、ロシアが対米国・イスラエル戦においてイランを勝利させるために深く関与しており、地政学的な構図は複雑さを増しています。イラン側は戦争を終結させるための3段階の提案を示していますが、その内容は米国にとって受け入れがたい条件ばかりです。第1段階は戦争の終結と再戦防止の確実な保証ですが、これはイランに対する米国の交渉力を削ぐことになります。続く第2段階はホルムズ海峡の制圧権に関する合意であり、これがイラン主導となれば、米国とイスラエルにとっては事実上の敗北を意味します。

核問題については、提案の最終段階である第3段階に置かれています。米国とイスラエルはこの問題を最優先事項に据えたいと考えていますが、イラン側にその意思はありません。さらに、イランは核濃縮能力の放棄を断固として拒否しています。トランプ大統領は、かつて自身が10年間にわたって批判し続けてきた核合意(JCPOA)に近い内容でさえ、合意を取り付けることは困難な情勢にあります。これらに加え、地域内の米軍基地の将来や、イランのミサイル開発、武装組織への支援、凍結資産の返還、制裁解除、さらにはイランへの賠償金といった、今回の提案には含まれていない多くの難題が解決を阻んでいます。

一方、イスラエル側には戦争を終わらせる気配がなく、国防相の発言にあるようにイランを徹底的に破壊することを目指しています。米国国内で強大な影響力を持つイスラエル・ロビーも、この強硬姿勢を全面的に支持するでしょう。こうした現実を鑑みると、ミアシャイマー氏は、自身の存命中に真の平和合意が実現する光景を想像することは難しいと述べています。トランプ政権に唯一残された現実的な道は、世界経済が崩壊の淵に追い込まれるのを防ぐため、ホルムズ海峡の開放を優先した部分的な合意を急いでまとめることだけです。世界経済へのダメージはすでに深刻であり、一刻の猶予もありませんが、核濃縮などの核心的な問題で実効性のある合意を得る見通しは立っていないのが実情です。

石油危機から経済統制へ

Doug Casey on Energy Lockdowns and the New Era of Government Control [LINK]

【海外記事より】政府はコロナ禍を通じて、緊急事態という名目であれば、国民が異例の制限を受け入れることを学習しました。作家のダグ・ケーシー氏は、次のエネルギー危機が、パンデミック時のようなロックダウンに近い統制の口実になる可能性を指摘しています。ケーシー氏は、現在の状況をすでに第3次世界大戦に突入していると見ており、ウクライナや中東での紛争は数か月から数年にわたって長期化すると予測しています。もしイランが追い詰められれば、ドローンやミサイルによる攻撃だけでなく、本格的なサイバー戦に発展する恐れがあります。世界がコンピュータに依存している現状では、それは核戦争に匹敵する壊滅的な打撃を社会に与えることになります。

現在の中東での紛争はエネルギー供給の遮断に直結しており、世界の人口の3分の2を占めるアジア諸国はペルシャ湾からの石油に依存しているため、甚大な経済的影響は避けられません。ケーシー氏は、すでに一部の国で見られるような週4日勤務制や移動制限、リモート授業、計画停電といった深刻なエネルギー不足への対策を、今から想定しておくべきだと述べています。歴史的に見ても、戦争は国家権力を拡大させる大きな要因となってきました。政府が市場原理による価格上昇を認めず、価格統制によってエネルギーを割り当てようとすれば、新たな官僚機構の肥大化と、ルールを回避しようとする人々による腐敗を招くことになります。国家が拡大する一方で、個人の自由は縮小していくというのがケーシー氏の基本的な見方です。

投資家や個人が取るべき行動について、ケーシー氏はいくつかの具体的な助言をしています。まず、自給自足が可能な体制を整えることが理想であり、大都市やその周辺に住むのは避けるべきだとしています。ポートフォリオについては、エネルギー不足や通貨の不安定化から利益を得られる企業の株を保有することを勧めており、特にエネルギー関連や鉱山株は他の投資対象に比べてまだ割安であると考えています。また、物理的な備えとして、現金で私的に購入した金や銀のコイン、長期保存が可能な食料、アルコールなどの備蓄を推奨しています。戦争の影響を受けやすい欧州や中東、ドバイなどはリスクが高い一方で、アルゼンチンやウルグアイ、ニュージーランドなどは比較的安定していると評価しています。

ケーシー氏は、今後5年から10年は厳しい時期が続くと予測しており、このエネルギー危機が世界的な大恐慌を引き起こす可能性にも言及しています。一方で、人類は過去50年の間に何度も困難な状況を乗り越えてきたという楽観的な側面も示しています。技術的な特異点、いわゆるシンギュラリティの到来によって、この難局を乗り切ることができれば、地球上の生活はかつてないほど良くなるかもしれないという希望も語っています。しかし、ただ希望を持つだけでは戦略とは言えません。ケーシー氏の記事は、政府によるデジタルIDや炭素制限、緊急令といった管理社会の進展に備え、個人が生存と繁栄のために現実的な対策を講じることの重要性を説いて締めくくられています。

2026-05-01

人間の行為とは?

【キーワード】人間の行為(human action)とは、私たちが毎日何気なく行っている選択の裏にある、経済学の最も根本的な出発点となる概念です。これは、20世紀を代表する経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが提唱した考え方で、単なる無意識の反応や反射的な動きとは明確に区別されます。例えば、まぶしい時に目が細くなるのは身体の反射ですが、太陽がまぶしいからサングラスを買おうと決めるのは、まさに人間の行為にあたります。つまり、自分の置かれた状況をより良くしようという明確な目的を持って、不足しているものを補おうとする意志のある行動を指すのです。この視点に立つと、経済学は単にお金の動きを追う学問ではなく、人間の心や選択の仕組みを解明する学問へと姿を変えます。

私たちが何かをしようと決断する時、そこには必ず三つの前提条件が必要であるとミーゼスは説きました。第一に「今のままでは満足できない」という現状への不満、つまり「不快な状態」があることです。第二に「こうなればもっと良いはずだ」という、より満足のいく状態への期待やイメージを持っていることです。そして第三に、自分の意志を持った行動によって、その不満を完全に取り除くか、少なくとも和らげることができるという見込みがあることです。もし、どれほど不満があっても、自分の力ではどうにもならないと諦めていれば、それは「行為」にはつながりません。私たちは、これら三つが揃った時に初めて、限られた時間や自分自身の能力、そして手元にあるお金といった資源をどう使うべきか考え、行動に移すのです。

このプロセスにおいて、私たちは常に何かを選び、同時に他の選択肢をあきらめています。ある目的を達成するために最も価値があると思う手段を選び抜く知的な作業こそが、人間の行為の本質です。オーストリア学派の考え方では、このような個人の目的意識こそが社会を動かすエネルギーであり、外側から数字だけで完全に予測したり操作したりすることはできないと考えます。このように「人間の行為」を理解することは、自由な社会の価値を再認識することに繋がります。一人ひとりが自分の価値観に基づいて最適な選択を行える環境こそが、結果として社会全体を豊かにしていくのです。市場経済とは、誰かに命令されて動くシステムではなく、無数の人々がそれぞれの目的のために協力し、交換を行う壮大なネットワークです。私たち一人ひとりが自分の人生の主人公として、より良い未来を目指して行動する。その一歩一歩が、複雑でダイナミックな経済という仕組みを形作っているのです。

カダフィ大佐の教訓

The Lesson of Gaddafi - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】米国の投資家ジェフリー・ワーニック氏は、リビアの元指導者カダフィ大佐の辿った運命が、世界の地政学にどのような決定的な教訓を与えたかを論じています。かつての米国人は、カダフィを単なる独裁者やテロの支援者としか教えられてきませんでしたが、彼の統治下のリビアはアフリカで最高水準の一人当たり所得を誇り、教育や医療、住居が権利として保障された、大陸で最も繁栄した国の一つでした。カダフィはさらに、金に裏打ちされたアフリカ共通通貨を創設し、欧米の金融システムや米ドルへの依存から脱却するという、アフリカの経済的自立を目指す壮大なビジョンを持っていました。

しかし、2003年にカダフィは大きな決断を下します。イラク戦争を目の当たりにし、米国との対立を避けるために大量破壊兵器の放棄と核施設の開放、テロとの戦争への協力に応じたのです。当時のブッシュ政権はこれを歓迎し、リビアは「国際社会への復帰」を果たしました。カダフィは武装を解除し、米国を信頼したのです。ところがその8年後、NATOによる軍事介入が行われました。表向きの理由は「文民の保護」でしたが、後の英国議会の調査では、人道危機の数字は誇張されていたことが判明しています。また、ヒラリー・クリントン氏の流出したメールからは、介入の真の目的がリビアの石油への優先的アクセスや、米ドルを脅かす共通通貨構想の阻止にあったことが示唆されています。

カダフィは最終的に無残な死を遂げ、ヒラリー氏はその死を笑いながら称賛しました。この出来事は、世界中の国々に「米国との約束に従い武装を解除しても、身の安全は保障されない」という強烈なメッセージとして伝わりました。イランや北朝鮮がそれを見て何を考えたかは想像に難くありません。2015年のイラン核合意も、イラン側が合意を遵守していたにもかかわらず、米国の政権交代によって一方的に破棄されました。こうした行動の積み重ねが、現在のイランとの紛争の火種となっているのです。

現在のリビアは、かつての繁栄を失い、複数の勢力が対立し、奴隷市場さえ存在する崩壊国家へと変わり果ててしまいました。著者は、カダフィやイランを擁護するのではなく、米国の外交政策が招いた「信頼性の欠如」という現実を直視すべきだと訴えています。法の支配に基づく共和国として誕生したはずの米国が、自らの都合で約束を反故にし続ける姿は、世界に対して「体制転換を免れる唯一の手段は核武装することだ」という極めて危険な教訓を与えてしまいました。カダフィが死の間際に学んだこの教訓こそが、今日の不安定な国際情勢の根源にあるとこの記事は結んでいます。

嘘の帝国、信頼失う

Trump's Idolatry of Israel Is Too Clever By Half | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】米国の経済・政治評論家チャールズ・ゴイエット氏は、トランプ政権がイスラエルの諜報・軍事戦術に心酔し、それを模倣している現状について、冷静かつ批判的な視点で分析しています。記事がまず挙げるのは、2024年9月にレバノンで発生したポケベル爆発事件です。イスラエルの諜報機関モサドが仕掛けたこの作戦では、罪のない子供を含む多くの死傷者が出ましたが、ネタニヤフ首相はトランプ氏にこのポケベルの記念モデルを贈呈し、トランプ氏もその「優れた作戦」を称賛したと報じられています。著者は、こうした欺瞞やだまし討ちを尊ぶイスラエルの手法にトランプ氏が強く惹かれている点に、重大な懸念を表明しています。

この影響は、対イラン政策に顕著に現れています。2026年2月、ネタニヤフ首相はホワイトハウスのシチュエーションルームにおいて、イランの弾道ミサイル網を数週間で破壊でき、民衆の蜂起を促せば政権交代が可能であるという楽観的な見通しを提示しました。CIAや国務省など、米政権内の専門家たちがこの予測を荒唐無稽だと一蹴したにもかかわらず、トランプ氏はこれを信じ込み、米国主導によるイラン攻撃に踏み切ったのです。著者は、トランプ氏が用いる「石器時代に戻してやる」といった過激で終末論的な言辞を、ビデオゲームに興じる子供のような未熟な振る舞いであると切り捨て、健全な人間の意識を持つ大人の対応ではないと述べています。

また、米国がイスラエルと共同で行ったイランへの介入工作の詳細も明かされています。財務省によるドル不足の創出や、主要銀行の破綻を通じたハイパーインフレの誘発といった経済戦により、イラン国民を街頭デモへと追い込みました。さらにトランプ氏自身が、抗議活動を行う人々へ武器を供与したことを認めています。モサドの工作員がイランの街頭で騒乱を煽る中、米国は経済・軍事の両面から国家の不安定化を図りました。著者は、こうした「嘘の帝国」による内政干渉は、1953年のイランや2014年のウクライナでも繰り返されてきた、米国の長年にわたる悪習であると指摘しています。

結論として著者は、このような「あまりに賢すぎる」欺瞞工作や軍事挑発は、最終的に自らに跳ね返ってくると警告しています。交渉の場を爆撃し、停戦を一方的に破棄し続ける国家は、世界中から不信の目で見られ、真の危機が訪れた際に誰からも助けを得られなくなります。1776年の独立宣言時にジェファーソンが掲げた「人類の公論に対する適切な尊敬」という精神は、今の米国からは失われてしまいました。建国250周年を機に、米国は他国への干渉や膨大な軍事費の投入をやめ、自国の内政に専念すべきであるというのが著者の主張です。それが米国、そして依存から脱却せざるを得なくなるイスラエル双方にとって、真に賢明な道であると結んでいます。

利下げの可能性消えず

Fed Stands Pat But There Was Dissension in the Ranks [LINK]

【海外記事より】米連邦準備理事会(FRB)は、直近の連邦公開市場委員会(FOMC)において、政策金利を3回連続で3.50%から3.75%の範囲に据え置くことを決定しました。イランでの紛争が長引く中、経済が直面している不確実性を踏まえれば、この決定自体に驚きはありません。声明では、インフレが高止まりしている要因として、近年の世界的なエネルギー価格の上昇が挙げられています。実際に、4月の消費者物価指数(CPI)は前月比0.9%上昇し、パンデミック直後の2022年以来で最大の上昇幅を記録しました。これは主にガソリン価格が1ヶ月で2割以上も急騰したことによるもので、エネルギーショックが物価を押し上げている現状が浮き彫りになっています。

パウエル議長は、現在の金利水準を「中立的」で妥当な範囲内にあるとし、当面は忍耐強く状況を見守る姿勢を示しました。しかし、今回の決定では委員会内部で異例の意見対立が見られました。4名の委員が反対票を投じたのは1992年以来の出来事です。一人は以前から継続的に0.25%の利下げを主張していますが、注目すべきは他の3名の反対理由です。彼らは金利の据え置きには賛成したものの、声明文の中に将来的な利下げを予感させる「緩和バイアス」が含まれていることに異議を唱えました。これは、エネルギーショックによるインフレ懸念がある中で、安易に緩和の兆候を見せるべきではないという、当局内のタカ派的な警戒感の表れと言えます。

市場では、イラン戦争による物価上昇に対抗するため、FRBが金利を高く維持し続けるという見方が強まっています。この予測は金や銀といった利息を産まない資産にとって逆風となります。しかし、現在の米国経済が抱える「債務のブラックホール」という根本的な問題を無視することはできません。過去10年以上にわたるゼロ金利政策と巨額の資金供給により、経済は安易な融資に依存しきっており、巨大な債務バブルが形成されています。高金利の維持は、このバブルを崩壊させるリスクを孕んでいます。トランプ大統領らが利下げを求める背景には、さらなる刺激策によってこのバブルを維持し続けたいという思惑があります。

結局のところ、FRBはインフレを抑えるために利上げが必要な一方で、崩壊寸前の経済を救うために利下げも必要という、身動きの取れない「キャッチ22」の状況に陥っています。現在は綱渡りのような運用を続けていますが、エネルギーショックが引き金となって経済に亀裂が入れば、インフレが収まっていなくても再びゼロ金利や量的緩和に踏み切らざるを得なくなるでしょう。歴史を振り返れば、中央銀行は口ではインフレ抑制を唱えながらも、実際には景気支えのための緩和策を選ぶ傾向があります。最悪のシナリオとして、物価高と不況が同時に進むスタグフレーションが長期化する恐れがあり、インフレに対する備えを解くべきではないと著者は警鐘を鳴らしています。

一線を越えた通貨増刷

The Money Printers Have Crossed the Point of No Return – GAINS, PAINS & CAPITAL [LINK]

【海外記事より】投資の世界は今、新たな章に突入しています。パンデミックをきっかけに、かつては考えられなかった規模の通貨増刷と経済刺激策の扉が開かれました。政府や中央銀行といった政策立案者たちが一度この一線を越えてしまった以上、もはや以前の「正常」な状態に戻ることはないでしょう。米国、欧州、日本は依然としてパンデミック前を遥かに上回る財政支出を続けており、この「新しい常態」が通貨価値の急激な下落とインフレ率の上昇を招いています。

無謀な支出を続けているのは政府だけではありません。中央銀行もまた、インフレが以前の水準まで十分に沈静化していないという明白な証拠があるにもかかわらず、金融緩和を継続しています。米連邦準備理事会(FRB)は、月に400億ドル規模の無制限な量的緩和を実施しており、新規に増刷した資金で米国債を買い支えています。FRBはこの仕組みを別の名称で呼んでいますが、実態は紛れもない量的緩和に他なりません。さらに、FRBは2023年末から既に6回の利下げを行っており、欧州やスイスなど各国の中央銀行も同様に相次ぐ利下げに踏み切っています。

現在、私たちは政府による積極的な財政支出と、中央銀行による通貨増刷・利下げが組み合わさった「財政支配」の時代にあります。これは金融システムにおける地殻変動であり、投資家にとって重大な意味を持ちます。世界で最も多額の資金を動かす政策当局が通貨の増刷に完全にコミットしたことで、金融市場はその影響を敏感に察知しています。その結果、金(ゴールド)の価格はドルやユーロ、円といった主要通貨に対して放物線を描くように急騰しており、コモディティ価格も12年間にわたる下落トレンドを打破して上昇に転じました。

こうした状況は、私たちがインフレヘッジ資産にとって「一生に一度」とも言える好機の真っ只中にいることを示唆しています。実物資産の価格が急点火している現状は、金融システムが新たな章へ移行したことを告げる叫びのようなものです。賢明な投資家たちは、このインフレの嵐を生き抜き、利益を得るために既に行動を開始しています。特に貴金属鉱山株など勢いのある銘柄は、2025年に数百%という驚異的な上昇を見せました。現在の政策転換が続く限り、2026年も同様のパフォーマンスが繰り返される可能性が高いと専門家は分析しています。

カルテルは自滅する

The UAE and the FTC | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】米連邦取引委員会(FTC)は、企業間の価格カルテルや不当な共謀は規制によってのみ打破できるという前提に立っています。しかし、最近のアラブ首長国連邦(UAE)による石油輸出国機構(OPEC)からの離脱表明は、いかなる強固な共謀も内部から崩壊する運命にあるという、FTCの前提を覆す有力な証拠となっています。OPECは法的にも国際的にも認められた公然のカルテルであり、長年、加盟国間で生産枠を設けて国際価格を操作してきました。しかし、UAEのように他国よりも圧倒的に低いコストで石油を生産できる国にとって、生産上限を守り続けることは、自国の経済的利益を著しく損なうことを意味していました。

共謀を維持することがいかに困難であるかは、今回のUAEの決断が物語っています。UAEは以前から、自国の低い生産コストを活かして増産したいという強い動機を持っていましたが、最終的な決定打となったのはイランとの戦争でした。戦争中、UAEはイランから多大な攻撃を受けたにもかかわらず、地域の同盟国から十分な支援が得られていないと感じていました。かつて「中東の安全な避難所」として栄えた観光業も大打撃を受け、経済構造の変化を余儀なくされました。結局、イラン戦争はきっかけに過ぎず、根本にはコスト構造の異なる国同士が長期にわたって価格を吊り上げ続けることの限界があったのです。

FTCは、国内企業が不法に価格を固定することを常に警戒していますが、UAEの事例は、たとえ法的強制力のある公的な枠組みであっても、共謀というものは常に自壊するリスクを孕んだ「時限爆弾」であることを示しています。企業は同じコスト構造を持っていても、輸送条件やサービスの質などで他社を出し抜こうとする本能を持っています。ましてや、生産効率に差がある場合、その枠組みを維持することはさらに困難になります。FTCが莫大なリソースを割いてカルテルを摘発しようとしなくても、市場の原理によって、ほぼすべてのカルテルは時間の経過とともに自然消滅してきたのが歴史の教訓です。

この記事の著者は、FTCが特定の業界を共謀の疑いで訴追する前に、共謀という行為そのものが本質的に不安定であることを理解すべきだと主張しています。政府の介入によって維持されている共謀でさえこれほど脆いのであれば、民間の違法な共謀を維持することはそれ以上に困難です。FTCがいつまでも存続しないものに固執して規制を強めるよりも、市場の自己修正能力を信じることが賢明であると説いています。UAEのOPEC離脱は、国家間の強力な結束であっても、個々の経済的利益の前では無力であることを世界に知らしめる結果となりました。

原油高騰、FRBの失策

Schiff on Resource Talks: Oil Will Stay High, the Fed Blew It | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏が、エネルギー価格や中央銀行の政策、そして市場心理が今後数年間にどのような影響を与えるかについて語りました。シフ氏は、投資家の多くが地政学的なリスクを過小評価しており、エネルギー価格の暴落を期待しすぎていると警告しています。同氏の見解によれば、仮に現在進行中の戦争が終結したとしても、原油価格は高止まりし続ける可能性が高いといいます。そもそも原油価格は構造的な要因によって、戦争の有無に関わらず上昇する運命にあったというのが同氏の主張です。

シフ氏はエネルギー価格の上昇そのものがインフレを引き起こすのではなく、むしろ景気後退の要因になると指摘しています。真のインフレは、価格上昇による景気悪化に対して中央銀行が利下げや通貨供給などの緩和策を講じたときに発生します。米国では、連邦準備制度理事会、いわゆるFRBがまだ利下げを行っていない段階でも、消費者のインフレ期待は5%程度と高い水準にあります。同氏は、FRBのパウエル議長が長期間にわたって金利を低く据え置きすぎたことを批判しており、インフレの兆候が明らかであったにもかかわらず、断固とした措置を取るのが遅すぎたと述べています。

こうした状況を踏まえ、シフ氏はドルや米国債といった紙の資産から離れ、金への投資を推奨しています。市場では実質金利が重要な役割を果たしますが、名目金利が一定であってもインフレ率が上昇すれば、それは実質的な利下げと同じ効果をもたらします。同氏は、今後数年間の見通しとして、ダウ工業株30種平均と金の価格比率が劇的に変化する可能性を予測しています。

具体的には、ダウ平均と金の比率が1対1から1対2程度の水準まで低下すると予測しています。もしダウ平均が5万ドルの水準であれば、この比率を実現するためには金の価格が1オンスあたり2万5000ドルから5万ドルに達する必要があります。あるいは、ダウ平均が1万ドルまで下落し、金価格が2倍になることで、この比率に到達するシナリオも考えられます。いずれにせよ、同氏は現在の市場が前提としている価値基準が大きく揺らぎ、貴金属が重要なヘッジ手段になると考えています。

OPEC終焉と石油価格

What Does The End Of OPEC Mean For The Iran War And Global Energy Prices? | ZeroHedge [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦(UAE)が、60年間加盟してきた石油輸出国機構(OPEC)を5月1日付で脱退すると表明しました。これは世界のエネルギー市場において、1世紀に一度とも言える大きな転換点になる可能性があります。イランとの戦争が湾岸諸国やイランの間の不協和音を露呈させる中、今回の脱退はカルテルとしてのOPECに大きな打撃を与えました。OPEC全体の輸出量の15%を占める主要生産国であるUAEの離脱は、世界の石油供給に対するOPECの支配力を弱め、さらにUAEとサウジアラビアの間の亀裂を深めることになります。また、こうした枠組みの解体は、将来的にイランが石油輸出を経済的な交渉材料として利用する能力を著しく阻害することにもつながります。

OPECの本質は、競争を排除し、人為的に供給不足を作り出すことにあります。1960年代に石油生産国の貿易コンソーシアムとして結成されたOPECは、1970年代に米国やイスラエル支援国に圧力をかけるための経済兵器となりました。これにより世界の石油供給の40%を掌握し、ガソリン価格の高騰と10年にわたるスタグフレーションを引き起こしました。それ以来、輸出制限による高価格維持が常態化し、イランも加盟国としてその恩恵を受けてきました。しかし、今や世界のエネルギー情勢は劇的に変化しました。OPECの制約から解放された独立国としてのUAEは、現在の1日あたり300万バレルから500万バレル以上へと増産する能力を持っています。新たな競争の導入は、サウジアラビアにも増産を促す可能性が高いでしょう。

UAEのエネルギー相は、今回の決定は自国のエネルギー戦略を精査した上での政策決定であり、他国と協議した結果ではないと述べています。世界がより多くのエネルギーを必要としている中で、UAEは市場に石油を供給するための戦略的な優位性を確保しようとしています。サウジアラビアも2027年に向けた増産意向を表明しており、これらはイランとの戦争終結後の時代が、供給側の活況によって今後2年間にわたりエネルギー価格が大幅に下落することを示唆しています。過去50年間に及ぶ供給制限市場が完全に覆される可能性があるのです。UAEは、ホルムズ海峡を完全にバイパスして1日約200万バレルを輸送できるパイプラインを保有しており、紛争を乗り切る上で有利な立場にあります。

湾岸諸国での競争的な増産と、米国での掘削・精製拡大への抵抗が弱まることで、西側諸国の長期的なエネルギー安全保障は確保される見通しです。短期的には、海峡再開後の輸送回復に2026年末まで時間を要しますが、ガソリン価格は今年の年末までに1ガロンあたり3.5ドル程度まで下がり、2027年には3ドルを下回ると予測されています。2027年以降の価格下落はさらに顕著になるでしょう。OPEC主要国の離脱は前例のない出来事であり、世界を変える影響を及ぼします。イランは石油による影響力を失うまいと抵抗するでしょうが、貯蔵能力の限界から交渉を優先せざるを得ない状況にあります。UAEをはじめとする湾岸の輸出拠点は、こうした事態を見据えて戦略的な布陣を整えているようです。

脱退は妙手か悪手か

The UAE’s OPEC gambit: Clever power play or road to chaos? — RT World News [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦(UAE)が石油輸出国機構(OPEC)および「OPECプラス」の枠組みから離脱すると表明したことは、単なるエネルギー戦略を超えた、極めて政治的な動きであると言えます。UAEは長年、サウジアラビアを中心とした湾岸の石油秩序において、二次的な役割に甘んじてきました。しかし今回の離脱によって、UAEは自国の戦略的自律性を強化し、サウジアラビアの指導力に挑戦する姿勢を鮮明にしています。これは、米国やイスラエルとの連携を深め、イランへの圧力キャンペーンにおいて中心的な役割を担おうとする、新たな地域秩序への移行を象徴する出来事です。

経済面では、UAEは以前からOPECの生産制限によって自国の能力を十分に活用できないことに不満を抱いていました。UAEは2027年までに1日あたり500万バレルの生産能力を目指していますが、これまでは制限により340万バレル程度に抑えられていました。離脱によってこの制約がなくなれば、UAEは段階的に増産を進め、最大で日量130万バレルから150万バレルの追加供給を行う可能性があります。これにより市場の価格は安定し、消費国には利益をもたらしますが、サウジアラビアにとっては自国の経済改革に必要な高油価を維持できなくなるリスクが生じます。両国の対立は、石油のシェア争いだけでなく、どちらが将来の湾岸地域の中心地となるかという構造的なライバル関係にまで発展しています。

米国、特にトランプ政権にとって、今回のUAEの決断は戦略的な追い風となります。トランプ大統領は長年OPECによる価格維持を批判してきましたが、UAEが市場に増産分を供給することで、サウジアラビアと直接対決することなくエネルギー価格を抑制し、国内のインフレ対策として政治的勝利を宣伝できるからです。これはUAEにとっても、石油の供給と引き換えにワシントンでの政治的影響力を手に入れるという、高度な政治取引と言えます。また、イスラエルとの関係を正常化させているUAEは、イランへの圧力が続く中でエネルギー市場を安定させるパートナーとして、自国の存在感を高める狙いもあります。

一方で、この決断には大きなリスクも伴います。サウジアラビアがUAEの動きを自国への反逆とみなし、外交的に孤立させようとする可能性があります。また、ロシアとのエネルギー協力関係にも影を落とすでしょう。最も懸念されるのは、イランとの緊張が激化し、ホルムズ海峡が完全に封鎖されるような事態です。UAEはイランに圧力がかかりつつも、石油施設が戦場にならない「冷たい紛争」状態を望んでいますが、現実はそのコントロールが及ばない展開になる可能性も否定できません。UAEはカルテルの規律よりも自国の自律性を選びましたが、これが新たなエネルギー秩序への道となるか、あるいは既存の秩序を破壊した代償を払うことになるのか、その真価は今後の情勢にかかっています。

原油、4年ぶり高値

Global oil price hits 4-year high on concerns Iran war could worsen | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】4月30日、世界の原油価格の指標である北海ブレント先物が一時1バレル126.41ドルまで急騰し、約4年ぶりの高値を記録しました。これは、停滞している米国とイランの紛争がさらに悪化し、中東からの石油供給が長期的に途絶することへの強い懸念を反映したものです。一部の専門家からは、和平交渉の決裂により、価格が150ドルに達する可能性があるとの警告も出ています。

今回の価格高騰に拍車をかけたのは、トランプ米大統領がイランの核計画に関する交渉再開を迫るため、一連の軍事攻撃計画について報告を受ける予定であるとの報道でした。現在、世界の石油と液化天然ガスの約5分の1が通過するホルムズ海峡が事実上閉鎖されており、2月後半に軍事行動が開始されて以来、ブレント原油の価格は2倍に、米国指標のWTI原油は約90%も上昇しています。このエネルギー価格の上昇は、世界的なインフレの再燃を招き、米国内のガソリン価格を押し上げることで、年後半の中期選挙を控えるトランプ政権への政治的圧力となっています。

紛争解決に向けた交渉は完全に膠着状態にあります。米国側はイランの核兵器開発疑惑の議論を譲らず、一方でイラン側はホルムズ海峡の制約解除と戦争被害に対する賠償を求めています。トランプ大統領は今月、一時的な停戦を呼びかける一方で、イランの港湾に対して独自の海上封鎖を強行しました。米中央軍によれば、この封鎖によってイラン側は約6900万バレルの石油を販売できず、60億ドル以上の損失を被っているとされています。大統領は、イランが経済的に追い詰められている現状を強調し、封鎖を数ヶ月継続する構えを見せています。

市場関係者の注目は、この米イラン紛争の行方と海峡閉鎖のリスクに集中しており、アラブ首長国連邦(UAE)のOPEC脱退といった長期的な構造変化の影響すら二の次となっています。国際連合開発計画は、この戦争による肥料価格の高騰などで、世界160カ国で3000万人以上が貧困に陥る可能性があると警告しており、経済開発が逆行する事態を危惧しています。緊迫する情勢の中、市場はイラン紛争が数ヶ月に及ぶ供給不足を招くという最悪のシナリオを警戒し続けています。

2026-04-30

トレードオフとは?

【キーワード】トレードオフ(tradeoff)とは、私たちが何かを手に入れようとする時、必ず別の何かを諦めなければならないという、逃れることのできない「二者択一」の関係を指します。この概念は、オーストリア学派経済学の核心である「人間の行為」を理解する上で非常に重要です 。なぜなら、私たちの周りにある資源や時間には限りがある一方で、かなえたい欲望には限りがないからです 。何か一つの目的を達成するために自分の能力や時間、お金を使えば、それを別の目的のために使うことは物理的に不可能になります 。

例えば、あなたが休日を家でゆっくり過ごすと決めたなら、その同じ時間を使って車で遠出することはできません 。また、手元にある1万円でおいしい食事をすれば、そのお金で新しい本を買うことはできなくなります 。貯金をする場合でも、今そのお金を使って楽しむことを将来のために諦めるという選択が必要です 。このように、私たちの人生は朝起きてから寝るまで、常に無数のトレードオフの連続で成り立っています 。何かを選び取るということは、同時に「選ばなかった方」を捨てる行為でもあるのです 。

経済学では、この時に諦めた選択肢の中で最も価値が高いものを「機会費用」と呼びます 。プロの職人に頼めば50万円かかる家の修理を、自分で道具を揃えて10万円で済ませたとしましょう。一見すると40万円得したように思えますが、もし修理に100時間を費やし、その時間を使って仕事で80万円稼げたはずだとしたら、実は目に見えない大きな損失を出していることになります 。自分自身の時間という最も希少な資源をどう配分するかという問いにおいて、トレードオフの視点は欠かせません 。

この考え方は、政府の政策を評価する際にも役立ちます 。例えば、政府が特定の研究に多額の税金を投じると決めた時、そのお金は他の医療や教育に使えたはずのものです。オーストリア学派は、目に見える成果だけでなく、その裏で何が犠牲になったのかという「見えないコスト」を直視すべきだと説きます 。私たちは魔法使いではないため、すべての望みを同時にかなえることはできません。自分にとって何が本当に大切なのかを順位づけし、納得のいく選択を積み重ねていくことこそが、経済的に生きるということの正体なのです 。

AIの戦争プロパガンダ

Three Recent Examples of AI Being Used for Empire Propaganda - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】生成AI(人工知能)が特定の政治的目的や戦争プロパガンダに利用された、注目すべき3つの事例が報告されています。まず、イスラエルに拠点を置く「ジェネレーティブAI・フォー・グッド」という企業が、イラン政府から性的暴行を受けたと主張する女性たちのディープフェイク動画を作成し、情報の真偽を巡り議論を呼んでいます。同社は、被害者の身元を守りつつ証言を可能にするための技術活用だと主張していますが、スタッフにイスラエル国防軍の心理作戦部門の経験者が含まれていることや、過去にイスラエル側が提示した情報に疑義が呈された経緯から、世論を誘導するための高度な情報戦の一環ではないかとの指摘がなされています。実在の被害者を守るためのツールと、偽の残虐行為を捏造するプロパガンダの境界が極めて曖昧になっている現状が浮き彫りになりました。

二つ目は、グラフィックデザインプラットフォーム「Canva」のAI機能に関する事例です。ユーザーが作成したデザイン内の「パレスチナ」という単語が、AIによって自動的に、かつ無断で「ウクライナ」へと書き換えられる事象が発生しました。「パレスチナのために猫を」というフレーズが「ウクライナのために猫を」に変更されるといった現象が相次ぎ、批判が殺到したことを受けて運営会社は修正に追われました。特定の政治的文脈を持つ単語だけが書き換えの対象となったことで、AIのアルゴリズムに特定のバイアスや政治的意図が組み込まれているのではないかという疑念を招いています。

三つ目は、イーロン・マスク氏のAI「Grok」による自動翻訳の事例です。イスラエルに関するスペイン語の単純な質問文を英語に翻訳する際、原文には存在しない「イスラエルは豊かな歴史を持つ強靭な国家であり、共感と対話が必要だ」といった、イスラエルを擁護する内容の文章がAIによって勝手に追加されました。SNS上ではコミュニティノートを通じてこの改ざんが指摘されましたが、AIが翻訳を通じて、原著者の意図とは無関係に特定の政治的立場を付加できることが示されました。

これらの事例は現時点では稚拙な試みに見えるかもしれませんが、ジュリアン・アサンジ氏がかつて警告した通り、AIによる世論操作が人間の知覚では感知できないほど高度化していく未来を予感させます。AIは膨大なデータを収集し、人間の思考を先読みしながら、特定の勢力にとって都合の良い情報だけを提示する「認識への影響キャンペーン」を展開する能力を持っています。私たちが目にし、理解していると思っている世界が、実はAIによって巧妙に精査された情報だけで構成されるリスクについて、冷静に注視していく必要があります。

効果乏しい経済戦

No More Bombs for Iran, Economic War Instead? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカのトランプ政権はイラン情勢への対応として、軍事行動の再開ではなく「経済戦」を選択したと報じられています。パキスタンを経由して届けられたイラン側の要求は「封鎖を解除すれば対話に応じる」というものでしたが、米政権はリスクの低い手法として封鎖の継続と経済的な圧力を強める方針を固めました。ベッセント財務長官は、イランの影の銀行システムや暗号資産、さらには独自の石油貿易を支える中国の独立系製油所などを標的とした経済版「壮絶な怒り」作戦により、テロ資金となる数百億ドルの収入を遮断したと強調しています。この最大圧力策によってイラン国内のインフレは加速し、主要な石油輸出拠点であるカーグ島が貯蔵能力の限界に達することで、イランの石油インフラに壊滅的な打撃を与えられると財務省は予見しています。

しかし、元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏は、こうした米政府の見通しは極めて不透明で実行不可能なものであると批判しています。現実には、米海軍による封鎖をすり抜けてイランの石油タンカーが公海へと進出しており、位置情報を偽装した「ゴースト艦隊」がマレーシアを経由して中国へ石油を運び続けています。広大な海域において、米海軍には全ての船舶を拿捕し、随伴させるだけの十分な艦艇が不足しています。イランが多数のタンカーを同時に出港させれば、その多くは目的地に到達してしまいます。また、陸路においてもパキスタンがイランとの間に6つの回廊を開放しており、3000個以上のコンテナが封鎖を回避して輸送されるなど、経済戦の実効性には疑問が残ります。

さらに皮肉なことに、ホルムズ海峡の封鎖によって世界経済が停滞する中で、米国が自らの封鎖を誇示することは、国際社会からの非難の矛先をイランではなく米国自身に向けさせる結果を招いています。イランは友好国向けの船舶を通過させることで支持を取り付ける一方、米国は実効性の乏しい象徴的な封鎖を続けることで、2008年の金融危機を上回る世界的な経済停滞の責任を負わされるリスクがあります。ロシアや中国の全面的な経済支援を背景に持つイランが、現政権の圧力に屈して交渉のテーブルに着く可能性は低く、経済戦という選択は最終的に米国にさらなる困難をもたらす可能性が高いと分析されています。

ニッケルの強気相場

Five Cent Bull | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】ニッケル市場がかつてない活況を呈しています。一般的にニッケルは硬貨やキッチンのステンレス素材として知られていますが、実は超高層ビルから戦闘機のエンジン、そして高性能な電気自動車(EV)のバッテリーに至るまで、現代社会を支える最も戦略的な金属の一つです。現在、金や銀に注目が集まる陰で、ニッケル先物価格は約2年ぶりの高値となる1トン当たり1万9200ドルを突破しました。この1ヶ月で11%以上、1年で23%も上昇しており、この勢いは今後も続くと見られています。

ニッケル需要の約3分の2は、橋や病院設備、食品加工場などに使われるステンレス鋼向けですが、近年は航空機エンジンやガスタービンなどの超合金分野、そしてEV用バッテリー向けの需要が急増しています。特に航続距離の長いプレミアムEVには高ニッケル正極材が不可欠であり、大手自動車メーカー各社はこの資源の確保に奔走しています。供給面では、これまで市場に安価な供給を続けてきた世界最大の生産国インドネシアが、鉱石の価格体系を引き上げ、採掘割当を削減するなど方針を転換しました。これにホルムズ海峡の混乱による物流コストの上昇が重なり、安価な供給というこれまでの前提が崩れつつあります。

市場環境も劇的に変化しています。国際ニッケル研究会は、2026年には世界全体でニッケル供給が不足に転じると予測しています。また、欧米諸国がカーボンボーダー税や調達規制を強化していることで、市場は「安価で環境負荷の高いニッケル」と「クリーンで高品質なクラス1ニッケル」の二つに分断されつつあります。後者は軍事防衛やエネルギー転換において不可欠な戦略資源と見なされており、構造的な供給不足が懸念されています。主要な産出国に地政学的リスクを抱える国が多いことも、価格を押し上げる要因となっています。

ニッケルの価格チャートは、以前の高値である1万8700ドルを明確に上抜けており、次の節目である2万2000ドル、さらには3万ドルの大台も視野に入ってきました。各国政府がニッケルを重要鉱物に指定し、国内プロジェクトへの補助金や備蓄を進める中で、この「5セントの金属」はもはや単なる工業原料ではなく、国家の安全保障とエネルギー転換の鍵を握る資産としての地位を確立しようとしています。派手な注目を浴びる投資先ではありませんが、着実にその価値を高めていく戦略的な資産であると紹介されています。

イラン攻撃が裏目に

Iran War Backfires: Gulf Elites Flee, Dump Treasuries, and Blow Up the Petrodollar [LINK]

【海外記事より】アメリカによる対イラン攻撃は、自らの首を絞める極めて深刻な経済的失策であったことが浮き彫りになっています。ワシントンがペルシャ湾で引き起こした事態は、単なる紛争にとどまらず、アメリカの覇権を支えてきた金融構造そのものを根底から破壊しつつあります。ホルムズ海峡を封鎖しながら原油価格の下落を強いるという、矛盾に満ちた現政権の政策は、市場に混乱をもたらし、大規模な資本逃避を引き起こしました。かつて富の集積地であったドバイからは資金が流出し、安定を求める湾岸諸国の資産や富裕層が香港などへ移動したことで、現地の賃料が数週間で15%から25%も急騰するという事態を招いています。

さらに深刻なのは、ペルシャ湾の産油国が原油代金をドルで受け取り、それを米国債などで運用する「ペトロダラー」の仕組みが崩壊の危機に瀕していることです。原油の輸出が滞りドルの流入が途絶えた一方で、ドル建て債務の返済義務は残るため、湾岸諸国は深刻なドル不足に陥っています。その結果、米国債や株式といったアメリカの金融資産を強制的に売却せざるを得ない状況となっており、これが国債価格の下落と利回りの急騰を招いています。アメリカ経済が不安定化する中で借り入れコストが上昇するという、悪循環が始まっているのです。

今回の危機は、ドルを武器化して他国を威圧しようとしたワシントンの賭けが裏目に出た結果と言えます。この強硬な姿勢は、むしろ「脱ドル化」を加速させ、既存のシステムの脆弱性を世界にさらけ出すことになりました。多くの有識者は、この戦争を国家運営としての戦略的自殺行為であると批判しています。制裁の影響を受けず、通貨スワップ協定にも依存しない金や銀といった代替資産への関心が高まっているのは、迷走する現政権の政策に対する不信感の表れでもあります。アメリカの財務当局が発信する情報は、もはや経済の実態を反映しないプロパガンダと化しており、大国としての信頼が内部から崩壊しつつある現状が指摘されています。

米予算の一律削減案

Rand Paul’s “Six Penny Plan” to Balance the Federal Budget in Five Years [LINK]

【海外記事より】2026年に入り、アメリカの連邦債務問題が深刻さを増す中で、ケンタッキー州選出のランド・ポール上院議員が提出した「6ペニー・プラン」と呼ばれる予算抑制案が注目を集めています。この計画は極めて簡潔なもので、今後5年間にわたり、連邦予算を前年度比で一律6%ずつ削減し続けるという内容です。このペースで削減を継続すれば、5年後には単年度予算の均衡が達成され、膨大な連邦債務を完済するための道筋がつくという計算に基づいています。

この計画が、かつてのトランプ政権下で成果を上げられなかった政府効率化案などと決定的に異なる点は、議会が具体的な削減項目を特定しないことにあります。ペンタゴン、社会保障、メディケア、環境保護局といったあらゆる政府機関に対し、一律で6%の予算削減を課す仕組みです。どの事業を削り、どの事業に予算を重点配分するかという具体的な判断は、議会ではなく、各省庁の現場を熟知した管理者に委ねられます。この手法は「補完性の原理」に基づいており、意思決定を現場に近いレベルで行うことで、より効率的かつ効果的な資源配分が可能になると期待されています。

現在、中東での紛争や関税の影響により、ヘリウムなどの重要資源が不足し、民間企業が供給制限への対応を迫られている状況があります。こうした民間企業や家庭では当たり前に行われている「限られた資源の中でのやりくり」を、政府機関にも等しく適用すべきだというのがこの案の根本的な考え方です。特定の優先事業を守るために他の不要不急な支出を削るという交渉は、各部門の内部で行われることになります。

オーストリア学派の経済学者が指摘するように、現実の世界は常に不確実性と希少性に支配されています。無制限の資源を保証されている組織は存在せず、政府機関もその例外ではありません。公的資金という資源が希少なものへと変化していく中で、それを受け取る側がどのように適応していくべきかを問うこの計画は、人間社会の根本的な条件に政府を立ち返らせる試みといえます。議会が個別の数千に及ぶプログラムの適否を判断するのではなく、各省庁の長がその責任を負うことで、実効性のある財政再建を目指すという現実的なアプローチが示されています。

崩壊する帝国とドル

Schiff w/ Nawfal: The Empire is in Decline | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏はマリオ・ナウファル氏とのインタビューに応じ、イランとの戦争がもたらす経済的帰結と、アメリカという「帝国」の行方について極めて慎重な見解を述べています。シフ氏はまず、現在の市場に見られる楽観論に異を唱えました。投資家は戦争が終結し、原油価格がいずれ下落すると想定して株価を押し上げていますが、同氏は戦争が目的を達成することもなく、エネルギー価格が高止まりし続ける可能性が高いと予測しています。また、アルゴリズム取引や集団心理によって、大統領のSNS投稿などのニュースに市場が過敏に反応する現状を指摘し、特に言動の極端な現大統領の発言に対する市場の信憑性に疑問を投げかけています。

経済の根幹を揺るがす問題として、シフ氏は政治的な腐敗と自己保身についても厳しく言及しました。大統領本人やその家族を含め、政権とのつながりを利用して私腹を肥やす構造がシステム化しており、こうした公権力の乱用が国民の信頼を損なわせ、経済的帰結にも悪影響を及ぼしていると論じています。さらに、紛争がもたらす実体経済へのダメージは深刻です。エネルギー関連のインフラは数分で破壊されますが、その再建には数年を要します。精製能力などの供給力が失われれば、需要が変わらない限り価格は上昇し続けるしかなく、特に石油輸入への依存度が高い国々には計り知れない打撃となると分析しています。

シフ氏は、過去の金融危機時に行われた公的資金による救済策や量的緩和といった手法を繰り返す現在の政策を、出口のない「古い台本」であると批判しています。連邦政府の債務は加速的に膨らんでおり、歴史を振り返れば、あらゆる帝国は過度な借金、通貨の改鋳、そして守り切れない政治的約束によって自滅してきたと指摘します。アメリカもまた、自国の能力を超えて手を広げすぎた結果、国力が衰退する過程にあるというのが同氏の冷徹な見立てです。通貨リスクが高まり、長期的な購買力が失われていく中で、中央銀行による安易な解決策に頼ることの危険性を強調し、健全な通貨の重要性を改めて訴えています。

警備体制、わざと弱体化?

US presidential security deliberately weak – anti-terrorism expert — RT World News [LINK]

【海外記事より】ワシントン・ヒルトンで催された夕食会において、トランプ大統領の暗殺未遂事件が発生しました。カリフォルニア州出身の31歳の男が散弾銃や拳銃、刃物を所持して会場へ突入し、シークレットサービスとの銃撃戦の末に拘束されたこの事案について、ロシア連邦保安局の特殊部隊「アルファ」の元隊員であるアンドレイ・ポポフ氏は、警備体制の不備を鋭く指摘しています。ポポフ氏によれば、事前の宿泊客の身元確認や建物の設計図の精査、換気口の封鎖、そして金属探知機の適切な配置といった標準的なテロ対策の手順が守られていれば、このような事態は決して起こり得なかったといいます。同氏は、一般客がVIPゾーンへ物理的に侵入できる現状を挙げ、基本的な組織運営上のミスが重なっていると述べています。

ポポフ氏は、こうした警備の失敗が繰り返される背景には、単なる偶然ではなく、シークレットサービスが組織的に弱体化させられているという「システムの欠陥」があると主張しています。具体的には、慢性的な予算不足や不適切な人事異動、そして特定の性別を優先するような偏った組織再編が、警備能力の向上を妨げているという見解です。同氏は、アメリカの大統領警備が意図的に脆弱な状態に置かれている可能性を示唆しています。それは、大統領が「特定の勢力」の意志に反する行動を取った際に、物理的に排除できる余地を残しておくためであり、この構造はケネディ大統領の時代から続いているのではないかと推測しています。大統領に、常に背後から誰かの監視の目を感じさせるための仕組みであるという厳しい見方を示しました。

一方で、今回の暗殺未遂事件そのものに不自然な点があることもポポフ氏は認めています。銃声が響いた際の出席者たちの落ち着き払った反応や、大統領自身の態度は、事件が演出されたものである可能性を否定できないと同氏は指摘しています。アメリカでは、自国にとって不利なニュース、例えば現在のアメリカによる対イラン戦の戦況が悪化しているといった情報を遮断するために、こうした衝撃的な出来事を利用することがあると説明しています。過去の事例と同様に、今回の事件でも警備責任が問われることはなく、シークレットサービスの体制も改善されないだろうとポポフ氏は予測しています。不適切な大統領が選ばれた際にそれを「修正」する手段を保持しておくことこそが、彼らの考える民主主義の一部なのだと、同氏は結論づけています。

産油国の結束崩れる

The UAE’s exit from Opec could bring ‘even bigger trouble’: Chinese expert | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦、通称UAEが石油輸出国機構であるOPEC、およびOPECプラスから5月1日付で脱退することを発表しました。中国の専門家は、この決定について、湾岸協力会議、いわゆるGCCの内部で亀裂が広がっていることを反映したものだと分析しています。UAEは1971年の建国時から組織に加わり、それ以前の1967年には構成自治体の一つであるアブダビが加盟していましたが、今回の決断によって長きにわたる協力関係に終止符を打つことになります。UAEのインフラ省は声明の中で、この決定は自国の国家利益に基づいたものであり、世界の市場需要に応えるための公約であると述べています。UAEは世界でも最大級の石油生産・輸出能力を誇る国の一つです。

近年、OPECからは2019年にカタール、2020年にはエクアドル、そして2024年にはアンゴラといった加盟国が相次いで離脱しています。今回のUAEの脱退について、復旦大学の中東研究センター長である孫徳剛氏は、GCCの結束力が深刻な問題に直面していることの表れであると指摘しています。主要な産油国であり、湾岸地域の重要な一翼を担うUAEが組織を去ることは、地域的な協力枠組みの脆弱さを浮き彫りにしています。世界的な供給能力を持つ国が自国の利益を優先して独自の道を選ぶことで、産油国間の足並みをそろえることがこれまで以上に困難になるとの見方が強まっています。

この記事が伝える専門家の視点によれば、UAEの離脱は単なる一国の経済政策の変更にとどまらず、中東の産油国が共有してきたこれまでの秩序に大きな変化をもたらす可能性があります。UAEは市場の需要に対してより柔軟に対応できる立場を確保したことになりますが、それは同時に、これまでOPECが果たしてきた価格調整や供給管理の機能を弱めることにもつながります。組織としての結束が崩れ、主要メンバーが相次いで離脱する現状は、産油国間の利害調整が極めて難しい段階に入ったことを示唆しています。世界有数の輸出量を誇るUAEの不在は、今後の国際的なエネルギー市場の動向や、産油国同士の政治的な力関係にさらなる不安定な要素を投げかけることになりそうです。

中国、慎重姿勢の理由

China won’t fight the US, but may still pay the price — RT World News [LINK]

【海外記事より】2026年に入り、世界秩序が激変する中で、中国の役割が改めて注目されています。数十年にわたる急速な台頭を経て、中国は現在、米国やロシアと並ぶ経済大国、かつ自信に満ちた政治的アクターとしての地位を確立しました。2013年に始まった「一帯一路」構想は、単なる経済圏の拡大にとどまらず、中国の資本とインフラを世界各地の開発の原動力として位置づけました。西側諸国が政治的な条件を課す一方で、中国は内政不干渉と安定を強調してきたため、アジア、アフリカ、中南米の多くの国々にとって、西側モデルに代わる魅力的な選択肢となってきました。こうした背景から、多くの国が中国に対し、西側の主導権に対するカウンターウェイト、あるいはその後継者としての役割を期待するようになっています。

しかし、最近の動向からは、中国のより慎重な現実が見えてきます。国際的な緊張が高まる中でも、北京は自国の核心的利益が直接脅かされない限り、介入を控える姿勢を一貫させています。例えば、米国によるベネズエラへの攻撃やキューバの危機、さらには中東での米国・イスラエルによるイランへの行動に対しても、中国は冷静かつ抑制された対応を維持しています。中国にとってイランは重要なエネルギー供給源であり、上海協力機構やBRICSの仲間でもありますが、ワシントンとの直接的な対立を避け、対話を維持しながら長期的な戦略的利益を守ることに専念しているようです。この慎重さは一部で期待外れと受け止められるかもしれませんが、短絡的な衝突を避け、長期的視点でライバルを凌駕しようとする意図的な戦略の表れといえます。

こうした中国の戦略には、独自の脆弱性も存在します。米国やロシアと異なり、中国は国内に十分なエネルギー資源を持たず、外部からの供給に依存しているためです。対外的な経済関係が分断されれば、自国が最も優先する国内の安定そのものが揺らぎかねません。現在の北京は、自国の勢力圏に引きこもることで経済的な自給自足の限界を露呈するリスクと、世界の紛争に深く関与して国力を消耗させるリスクの板挟みにあります。結局のところ、中国が今後どのような選択をするかは、世界経済への依存度によって左右されることになるでしょう。変動し続ける世界において、この慎重な姿勢が持続可能なのか、その結果が中国の内外にどのような代償をもたらすのかが、今後の焦点となります。

2026-04-29

希少性とは?

【キーワード】希少性(scarcity)とは、私たちが手に入れたいと願う目的や欲望に対して、それらを満たすための手段が不足している状態を指します 。オーストリア学派経済学において、この概念は単なる「物の少なさ」を意味するのではなく、人間の「意志のある行動」と切り離せない最も根本的な出発点とされています 。私たちが何かを選んで行動するということは、自分の持っている時間や資源が限られているからに他なりません 。もし、あらゆる手段が無限に存在し、何の苦労もなくすべての望みが同時に叶う世界であれば、そもそも「選択」をする必要すらなくなり、経済学という学問も存在し得ないからです 。

この希少な資源のことを、経済学では「経済財」と呼びます 。一方で、空気のように、誰もが望むだけ十分に存在し、自分の目的のために工夫して節約する必要がないものは「自由財」と呼ばれ、経済学の分析対象からは外されます 。私たちが日常生活で行うすべての決断は、この希少な「手段」をどの「目的」に割り当てるかという知的な格闘なのです 。例えば、今日という一日の時間は誰にとっても24時間しかなく、非常に希少な資源です 。この時間を趣味に使うか仕事に使うか選ばなければならないのは、時間が希少だからです 。このように、希少性は私たちの生活のあらゆる場面に潜んでおり、逃れることのできない現実と言えます 。

さらに重要なのは、希少性が存在するからこそ、物事に「価値」が生まれるという点です 。オーストリア学派は、物の価値はその物自体に備わっているのではなく、限られた資源を自分の目的のために役立てようとする人間の心の中で決まると説きました 。資源が希少であればあるほど、人はそれを慎重に扱い、より重要な目的のために優先して使おうとします 。市場で見かける「値段」も、実はこの一人ひとりの主観的な評価と、資源の希少さが反映された結果に過ぎません 。つまり、希少性とは私たちが限られた条件の中で、いかにして現状をより良くしようと創意工夫を凝らすかという、人間らしい営みの源泉なのです。

キャッシュレス監視国家の脅威

Trump Is Putting Americans into Digital Prison - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ政権が「不法移民対策」を口実にして、全米国市民をデジタル的な監視下に置こうとしているという、元米財務次官補の経済学者ポール・クレイグ・ロバーツ氏の極めて厳しい見解を紹介します。現在、政府が検討しているとされる大統領令は、すべての市民に対してバイオメトリック顔認証データを提供することを義務付け、これに応じない場合は銀行システムから完全に締め出すという、強権的な監視社会の構築を強いるものだと批判されています。ベッセント財務長官が進めるこの方針では、金融機関は顧客の市民権を確認するために、無線自動識別(RFID)チップと顔認証データが埋め込まれた米国パスポートの提示を求めることになります。

この措置により、パスポートを持たない数百万人の市民は、政府の集中データベースと連動した高解像度の顔スキャンを強制されることになります。著者は、個人の生体情報が資金と恒久的に紐付けられれば、政府は政治的な見解や従順さに応じて、いつでも個人の資産を追跡、凍結、拒否できる「キャッシュレス監視国家」が完成すると警鐘を鳴らしています。「国境の安全」や「顧客の把握」という名目の下で、個人の自由を奪う専制政治のインフラが着々と構築されているというのです。また、トランプ氏が国内監視計画の承認を議会に促していることも、憲法が保障する市民的自由の放棄につながると非難の対象となっています。

歴史的に見ても、米国の自由は段階的に破壊されてきたと著者は述べています。リンカーンによる州の権利の抑制から始まり、所得税の導入、そして近年の歴代政権下での適正手続きを欠いた権力行使を経て、いまやトランプ政権がその専制的な統治体制を完成させようとしているという主張です。かつての米国植民地人がイギリス政府に対して無防備であったのと同様に、現代のアメリカ人もまた、政府の巨大な権力に対して完全に無防備な状態に置かれようとしています。

著者は、アメリカが自由な社会として存続できる時間は終わりを迎えたと断じています。組織化された利権団体や軍事・安全保障複合体の思惑が国民の平穏な生活を圧倒し、自由の象徴であった建国精神はもはや形骸化しているというのです。国民が分断され、団結して抵抗することも困難になっている現状において、アメリカが享受してきた「輝ける時間」は過ぎ去ったとする非常に悲観的な見通しで締めくくられています。

社会を変える希望

Hope for America - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】テキサス州の湾岸部で開催された平和・繁栄研究所のカンファレンスにおいて、元米下院議員のロン・ポール氏は、混迷を極める現代アメリカにおいて「希望」を見出すための重要なメッセージを発信しました。今回の会議の主要なテーマは、2025年6月と2026年2月28日にトランプ政権がイランに対して行った、挑発的な戦争という壊滅的な決定についてです。シカゴ大学のロバート・ペイプ教授は、米国が中東の警察官という役割を放棄し、地域の安全保障を現地諸国に委ねるべきだとする、ネオコン的な束縛からの脱却に向けた青写真を提示しました。

この会議で特に注目を集めたのは、信念を貫くために自らの地位や利益を犠牲にした2人の人物の登壇です。一人は、かつて「MAGA軍の将軍」を自認していたマージョリー・テイラー・グリーン前下院議員です。彼女はトランプ氏に忠誠を誓ってきましたが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)への支持やエプスタイン関連文書の公開拒否といった裏切りを目の当たりにし、最終的に大統領と決別しました。彼女はトランプ氏から「裏切り者」と呼ばれ、相次ぐ殺害予告によって議員辞職に追い込まれましたが、自身の信念を曲げることなく、正しいと思う道を選んだと述べています。

もう一人の登壇者は、国家情報長官室のテロ対策局長を務めていたジョー・ケント氏です。彼は軍人として数々の勲章を授与された戦闘経験者であり、政権内でも重要なポストに就いていましたが、今回の戦争がアメリカではなくイスラエルの利益のために戦われていると批判し、職を辞しました。彼は、戦争が特別な利害関係者による嘘の積み重ねによって始められたと主張し、将来の有望なキャリアを捨ててまで真実を語る道を選びました。彼もまた、グリーン氏と同様に激しい誹謗中傷にさらされていますが、その勇気ある行動は多くの人々に感銘を与えています。

ポール氏は、現状を変えるために多数派である必要はないと説いています。平和と自由という原則に献身する目的意識を持った少数派こそが、山をも動かす力を持つというのです。党派やイデオロギーの垣根を超えて協力し、原則を犠牲にしない強力な連合を築くことこそが、アメリカの再生に向けた希望であると強調しました。同研究所は、今後も平和と自由を求める運動を継続していく決意を新たにし、2026年9月の労働者の日の週末にはバージニア州ダレスで10回目となる会議を開催することを発表しています。

自作自演のヘイト?

Tucker, The Hustle Thus Exposed? [LINK]

【海外記事より】米国のリベラル層において絶大な影響力を誇ってきた「南部貧困法律センター(SPLC)」が、深刻な岐路に立たされています。これまでSPLCは、全米の「ヘイト(憎悪)」を監視する番人として、国内に潜む過激派組織の脅威を訴え、多額の寄付金を集めてきました。しかし、アラバマ州の連邦大陪審が発行し、司法省が法制化した起訴状の内容は、同団体の活動が「自作自演」の詐欺(ラケット)であった可能性を強く示唆しています。

この記事の著者ジェフリー・タッカー氏は、SPLCが約8億2200万ドル(約1200億円)もの巨額資産を蓄えながら、その一部をケイマン諸島のオフショア口座に保有していた事実を指摘した上で、起訴状に含まれる驚くべき内容を紹介しています。それによれば、SPLCは自身が「ヘイト組織」として監視リストに掲載していた個人や団体に対し、裏で数百万ドルもの資金を提供していた疑いがあるというのです。つまり、寄付者の金を使って「敵」を自ら養い、活動を継続させていたことになります。

特に衝撃的なのは、2017年にバージニア州シャーロッツビルで起きたネオナチによる暴動に関する指摘です。起訴状によると、あのデモの主催者の一人はSPLCの給与名簿に載っており、物流や輸送の手配を行っていたとされています。松明を掲げた群衆の行進は、全米でヘイト運動が台頭しているという印象を植え付け、寄付を募るための「演劇」だった疑いが出ています。実際に、この事件の翌年にはSPLCの寄付収入が5100万ドルから1億3300万ドルへと急増しており、悲劇を資金調達の道具にしていた実態が浮き彫りになっています。

こうした背景には、米国の非営利団体(NPO)に課される税法上のルールも関係しています。多額の資産を持つ団体は、その地位を維持するために一定割合の一般寄付を常に集め続けなければならず、それが過激な資金調達活動を助長する構造的な要因となっていると著者は分析しています。長年、米国社会を脅かすとされてきた「白人至上主義の台頭」や「ヘイトの蔓延」という言説が、実は政治的な演劇や経済的な詐欺であった可能性があり、この記事は過去10年の政治史を根本から見直す必要があると結論づけています。

不換紙幣と金融利権

Wall Street and Sound Money [LINK]

【海外記事より】健全な貨幣制度、すなわち金本位制のような「強い通貨」への回帰は、一般の預金者や労働者、中小企業に価格の安定をもたらす一方で、ウォール街(金融資本)という強力な反対勢力に直面しています。この記事の著者は、現代の金融業界がいかに法定通貨(不換紙幣)による「操作可能な通貨制度」から恩恵を受けているかを鋭く分析しています。現在の金融機関が享受している巨大な権力と利益は、通貨発行の裁量が中央銀行に委ねられているという構造的な背景の上に成り立っているというのです。

金融機関が不健全な貨幣から得る最大の利益は、限りない信用拡大にあります。金本位制のもとでは、融資の規模は実際の貯蓄量という物理的な制約を受けますが、現代の制度では中央銀行の政策次第で、貯蓄の裏付けがないままに融資を拡大し、それを証券化してさらに利益を膨らませることが可能です。また、中央銀行が人為的に低金利を維持することで、ウォール街は安価な資金調達を行い、巨額のレバレッジをかけた投資で利ざやを稼ぐことができます。もし硬貨の現物に裏打ちされた制度になれば、金利は政策意図ではなく市場の需給やリスクを反映して上昇し、過剰な投機は抑え込まれることになります。

さらに、金融機関の無謀なリスクテイクを支えているのが「政府による救済」という暗黙の了解です。中央銀行が「最後の貸し手」として控えていることで、彼らは利益を私物化し、損失を社会化する(公的資金で埋め合わせる)という歪んだ構造の中で活動しています。「大きすぎて潰せない」という盾は、通貨を無から生み出せる現制度があってこそ成立するものであり、通貨供給量に上限がある金本位制では、国家による救済能力も厳しく制限されることになります。また、政府の巨額の赤字財政を支える国債の引き受けや販売も、ウォール街にとっては極めて収益性の高いビジネスとなっており、これも通貨の弾力性に依存しています。

新しく作られた資金が、まず銀行や金融システムを通じて経済に流入することで、彼らが物価上昇の前に資産を取得できる「カンティロン効果」も、金融界が現在の制度に執着する大きな理由です。著者は、法定通貨制度は決して中立なインフラではなく、レバレッジと複雑性、そして国家との癒着を特徴とする特定の金融モデルを存続させるための条件であると結論づけています。したがって、真に健全な貨幣制度を求める動きに対して、ウォール街が自ら協力することは期待できず、むしろ激しく抵抗し続けるだろうと述べています。

忍び寄る石油危機

The Oil Crisis Nobody’s Pricing In - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】最近、米国産の原油を積んだ大型タンカー「オーティス」が日本に到着し、メディアでは歓迎のムードが漂いました。中東への石油依存度が約90%に達する日本にとって、ホルムズ海峡が59日間も封鎖されている中で米国産原油の輸入が実現したことは、一見すると明るいニュースに映ります。しかし、この記事の著者は、こうした楽観的な見方は極めて危ういものであると警告しています。なぜなら、このタンカーが運んできた約91万バレルの原油は、日本の1日の消費量のわずか3分の1に過ぎず、輸送にはパナマ運河を経由して35日もの時間を要したからです。

現在のエネルギー市場は、多くの投資家が想定している以上に深刻な「原油の最終局面」に向かっています。ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関は、世界の在庫減少ペースが異常であるとして、原油価格の見通しを上方修正し始めました。4月には世界の在庫が1日あたり1,100万から1,200万バレルという猛烈な勢いで減少しており、ペルシャ湾周辺諸国では貯蔵施設が満杯になったことで、逆に生産停止を余儀なくされる事態に陥っています。一度生産を停止した油井は再開が難しく、将来的に海峡が再開されたとしても、供給能力が完全に回復するまでには数ヶ月を要すると見られています。

さらに深刻なのは、外交による解決の出口が見えない点です。米国とイランは互いに封鎖措置を続けており、仮に今日和平合意がなされたとしても、海峡に敷設された機雷を除去するだけで最低6ヶ月はかかると国防総省は試算しています。また、皮肉なことに、各国政府が補助金などで価格高騰を抑え込んでいるために、本来起こるべき「需要の減退」がまだ起きていません。しかし、在庫には限りがあり、限界を迎えた時に訪れる需要の崩壊は、非常に急激で残酷なものになると著者は予測しています。

この混沌とした状況の中で、唯一の供給拠点として機能しているのが米国のエネルギー部門です。中東の混乱に左右されない米国産の原油や、高い利益率を維持している米国の製油業者は、現在「現金を刷っている」ような独占的な状態にあります。メディアが日本へのタンカー到着を祝う一方で、現実には在庫の枯渇と生産能力の損傷という、より大きな危機が進行しています。この記事は、主流メディアが事態の深刻さに気づく頃には、原油価格は1バレルあたり100ドルを優に超え、世界経済は決定的な打撃を受けることになると結んでいます。

米運送業界の危機

America's Ticking Trucking Time Bomb | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】アメリカの道路では毎日112人が命を落としており、2023年だけで約4万人の死者と240万人以上の負傷者を出すという深刻な事態に陥っています。この記事の著者は、かつて熟練のトラック運転手だった自身の父親の時代と比較し、現在の運送業界が「時限爆弾」のような危うい状況にあると警鐘を鳴らしています。かつては車両を熟知したプロが支えていた業界ですが、現在は十分な教育を受けていない素人が、40トンもの重さがある車両を運転しており、それが多くの悲劇を招いていると指摘しています。

こうした危機の背景には、深刻な熟練ドライバー不足があります。現役運転手の平均年齢が58歳まで上昇して引退が加速している一方、薬物やアルコールの違反による資格喪失者も続出しています。背に腹を代えられない運送業者が採用基準を極限まで下げた結果、「カメレオン・キャリア」と呼ばれる悪質な業者が横行しています。これは、劣悪な安全記録で閉鎖を命じられた会社が、翌日には別の名前で新会社を設立し、不適格な運転手と整備不良の車両で営業を再開する手口です。これらの業者は、一般の業者に比べて重大事故を起こす確率が4倍も高いというデータが紹介されています。

さらに著者が問題視しているのは、商業運転免許を短期間で不正に発行する養成所の存在と、運転手の英語能力の欠如です。連邦規則では道路標識の理解などのために英語力が求められていますが、これまでは厳格に運用されてきませんでした。英語の標識を読めない運転手が公道を走っている現状を受け、2025年からは英語力が不十分な運転手をその場で業務停止にするなどの締め付けがようやく始まりましたが、長年の放置が問題を根深いものにしています。

記事は、解決策として英語基準の厳格化や悪質業者のブラックリスト化、事故を起こした企業の幹部への刑事罰の適用などを挙げています。しかし、物流を優先する業界の論理やロビイストの活動が障壁となり、抜本的な対策は先送りされ続けてきました。著者は、危機をただ「管理」している現状は、毎日積み上がる犠牲を黙認しているのと同じであると強く批判しています。アメリカの道路を再び安全にするためには、実効性のある厳しい監視と法的処置が不可欠であると結論づけています。

債務主導の経済に転機

A Macro View as FOMC Week Begins [LINK]

【海外記事より】米連邦公開市場委員会(FOMC)の開催週を迎え、市場では戦争による商品価格の上昇やインフレへの懸念から、国債利回りが反発しています。これを受けてイールドカーブは平坦化しており、市場は連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢を警戒し始めています。現在の金利先物市場では、2027年6月まで政策金利が据え置かれるとの見方が過半数を占めていますが、こうした予測は多分に流動的です。むしろ重要なのは、次期FRB議長候補とされるケビン・ウォーシュ氏を含むトランプ政権の新経済チームが、中間選挙に向けてどのような市場刺激策を講じるかという点です。

FRBが表面上の政策金利を維持したとしても、経済や市場を支える手段は他にあります。その一つが量的緩和(QE)の拡大です。実際のデータを見ると、FRBの総資産は反転に向けた底固めの動きを見せており、前年比の変化率からも、新たな刺激策の段階に入りつつあることが示唆されています。経済学者は公式のインフレ率に基づいた「実質GDP」の成長を強調しますが、その成長は際限なく拡大する債務によって支えられているのが実態です。GDPが上昇する一方で、それを維持するために必要な債務はそれ以上のペースで膨らみ続けています。

投資家やマネーマネージャーの多くは、依然として2020年までの古いマクロ経済のルールに従って行動しています。しかし、2022年に長期的な金利低下トレンドが崩れたことで、局面は大きく変化しました。2026年後半にかけては市場全体が強含む可能性がありますが、それ以降の長期的な視点では、債務を積み上げることで成長を偽装する従来の仕組みは限界を迎えるでしょう。過度に金融化された市場から資本が逃避し、貴金属や資源国市場、実体のある生産活動といった「ハードアセット」や実物資産へのシフトが鮮明になると予想されます。

トランプ政権下でのFRBは、かつてのイエレン財務長官がパウエル議長に影響を与えたように、政権の意向を汲んだ運営を行う可能性があります。債券市場における構造的な変化を背景に、投資家はデットレバレッジに依存したこれまでの手法を改め、新しいマクロ経済環境に適応することが求められています。これからの時代、資本は実力のある資源や生産性を持つ分野へと流れ、長年続いた債務主導の経済モデルは大きな岐路に立つことになるでしょう。

破滅早める帝国

Trump's war: the kind of military misadventure that ends empires - Asia Times [LINK]

【海外記事より】歴史家プルタルコスが説いた「マイクロ・ミリタリズム」という概念は、衰退期にある帝国がかつての栄光を取り戻そうとして強引な軍事行動に打って出た結果、かえって破滅を早める現象を指します。紀元前413年のアテネによるシチリア遠征や、1578年のポルトガルによるモロッコ侵攻、さらには20世紀初頭のスペインによるリーフ戦争などは、いずれも不適切な指導者による無謀な賭けが、帝国の終焉や国力の決定的な低下を招いた歴史的実例です。1956年のスエズ危機においても、英国がエジプトのナセル大統領による運河国有化に対して軍事介入を行いましたが、国際的な非難を浴びて通貨危機を招き、大英帝国の没落を世界に印象づけることとなりました。

こうした歴史の教訓を背景に、現在の米国による対イラン政策が、帝国の衰退を加速させる新たな「軍事的な失策」となる可能性が指摘されています。トランプ大統領は2025年の再就任後、関税による中国への圧力やグリーンランド買収の試みが相次いで失敗に終わる中、イスラエルと共にイランへの大規模な空爆を開始しました。米軍は短期間でイランの軍事施設や指導部を無力化し、無条件降伏を迫りましたが、イラン側は1956年のナセル大統領と同様の戦略で応じました。すなわち、ドローン攻撃によってホルムズ海峡を事実上封鎖し、世界のエネルギー供給を遮断することで、世界経済を未曾有の危機に陥れたのです。

米国はさらなる報復としてイランのインフラ破壊や海上封鎖を警告していますが、戦略的な目標の達成には至っていません。イランのような劣勢な側は、甚大な被害を受け入れつつも安価な兵器で相手に持続不可能な打撃を与える非対称戦を展開しており、米国の圧倒的な武力も決定打にはなっていません。この紛争により、80年にわたり米国の覇権を支えてきた同盟国との関係は亀裂が深まり、国際社会からの信頼も失われつつあります。

かつての英国がスエズで露呈したように、現在の米国もまた、軍事的な戦術には長けていても、もはや意味のある戦略的目標を勝ち取ることができなくなっています。同盟が形骸化し、軍事的な威信が蒸発していく中で、米国の覇権はかつての帝国と同様に衰退の一途をたどる運命にあるのかもしれません。今回のホルムズ海峡における軍事行動が終わる頃には、米国中心の世界秩序は終焉を迎え、世界は極めて不透明な新しい秩序へと向かうことになると予測されています。

露、中東平和のカギに

Tehran turns to Moscow: Why Russia is crucial for Middle East peace — RT World News [LINK]

【海外記事より】現在、中東情勢は武力行使による解決が困難な段階に達しており、イランのアラグチ外相がロシアを訪問するなど、外交による打開を図る動きが活発化しています。米国やイスラエルによるこれまでの圧力は、イランを屈服させるどころか、むしろ事態を複雑な交渉の場へと戻す結果となりました。イラン側は、米国などが優先したい核問題ではなく、まずは安全保障の確立を交渉の中心に据えるべきだと主張しています。具体的には、パキスタンを介して米国に届けられたとされる提案の中で、武力衝突の停止とホルムズ海峡の再開を優先し、核問題の議論は後回しにする段階的なアプローチを求めています。

米国がこの提案を拒否すれば、世界の海上交通の要所であるホルムズ海峡周辺の危機が長期化するリスクがあります。一方で提案を受け入れれば、これまでの軍事的圧力が機能しなかったことを認めることになります。イスラエルもまた、レバノン情勢の不安定さや国内の政治的圧力など、複数の課題に直面しています。イランは孤立を避けるべく、パキスタンやオマーン、そしてロシアという複数の外交ルートを駆使しています。特にオマーンは、信頼性の高い仲介者としてホルムズ海峡の安全確保に向けた議論を進めています。レバノンでの停戦後も続くイスラエルの軍事行動は、イランに「保証のない合意は無意味である」という認識を強めさせています。

こうした中で行われたアラグチ外相の訪露は、中東全域に影響力を持つロシアを外交の盾にする狙いがあります。プーチン大統領は、イランと地域住民の利益に資する平和を早期に実現するために尽力すると表明しました。ロシアはイランを一方的に追い詰める対象とは見ておらず、米国やイスラエルが主導する外交環境に、客観的な視点をもたらす役割を果たしています。ロシアはイランとの戦略的な絆を持ちつつ、イスラエルや湾岸諸国とも実利的な関係を維持しており、欧米の窓口が信頼を失う中で、独自の安定化勢力として機能しています。

イランは、ロシアがサウジアラビアやアラブ首長国連邦などとの良好な関係を通じて、地域全体の安全を考慮した持続可能な解決策を後押しすることを期待しています。また、交渉が決裂した際の再度の軍事攻撃に備え、ロシアとの間で軍事技術協力や防空システム、情報の共有といった安全保障面での連携を深めることも視野に入れています。今後の外交が、イランの提唱する段階的なプロセスへと移行するか、あるいは再び紛争が激化するかは、米国が安全保障の要求にどう応えるか、そしてロシアやオマーンなどの仲介がどれほど実を結ぶかにかかっています。

2026-04-28

物々交換とは?

【キーワード】物々交換(barter)とは、自分が必要としていない物やサービスを、自分が必要としている他人の物やサービスと直接取り替える取引のことです。経済学ではこれを「直接交換」と呼び、私たち人類が社会の中で協力し合うための最も原始的な形であると考えています。オーストリア学派の創始者であるカール・メンガーは、この交換がなぜ起こるのかを深く分析しました。彼は、交換が「等価」だから行われるという古い経済学の考え方を否定し、交換が成立するためには、当事者の双方が「手放すものよりも、受け取るものの方に高い価値を感じている」必要があると指摘しました。つまり、物々交換は単なる物の移動ではなく、お互いの満足度を高め合う幸福なプロセスなのです。しかし、この一見シンプルで分かりやすい仕組みには、現代のような豊かな経済を築く上では、避けては通れない大きな壁が立ちはだかっています。

その壁の一つが「欲求の二重の一致」と呼ばれる問題です。例えば、あなたが卵を持っていて靴を欲しがっているとしましょう。このとき、単に靴を持っている人を見つけるだけでは不十分です。その靴職人が、ちょうどその瞬間に卵を欲しがっていなければ、取引は成立しません。もし靴職人が卵ではなく肉を欲しがっていたら、あなたはまず肉を持っている人を探し、卵と肉を交換してから、改めて靴職人の元へ行かなければなりません。また、家を建てる労働の対価として、完成した家の一部を切り分けて支払うことができないといった「分割できない」という問題も発生します。このような制約があるため、物々交換だけに頼る社会では、多くの人々が自分の得意分野に専念する「分業」を高度に発達させることができず、生活水準は原始的なレベルにとどまってしまいます。

人々はこうした不便さを解消するために、歴史の中で知恵を絞りました。その過程で、市場で最も多くの人が欲しがり、受け取りやすい商品、つまり「売れやすさ」が高い商品を、交換の仲介役として利用し始めたのです。これが「お金」の誕生であり、物々交換から「間接交換」への歴史的な転換点となりました。お金という便利な道具が登場したことで、私たちは欲求が一致する相手を必死に探す必要がなくなり、複雑な生産や遠く離れた場所との貿易も可能になりました。現代の私たちが享受している豊かさは、このお金という発明によって、物々交換の限界を突破したからこそ実現したものなのです。

一方で、戦争や急激なインフレによって国が発行するお金の価値が信じられなくなったとき、人々は自分たちの生活を守るために、再び物々交換に頼ることがあります。これは、文明的な経済システムが壊れた際に現れる、緊急避難的な原始状態への回帰と言えるでしょう。このように、物々交換の仕組みと向き合うことは、私たちが普段当たり前のように使っているお金が、どれほど社会の調和を保ち、人々の暮らしを支えているかを再確認させてくれます。お金は単なる紙切れや金属ではなく、物々交換の不便さを克服して文明を前進させてきた、人類の知恵の結晶なのです。一見古臭く思える物々交換というテーマは、実は現代経済の根幹を理解するための大切な鍵を握っているのです。

政権転覆の末路

Rule by Secrecy – How Covert Regime Change Shaped Our World - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ボストン大学のリンゼイ・オルーク准教授による著書『秘密の政権転覆(Covert Regime Change)』は、西側諸国が掲げる「民主主義の守護者」という表向きの顔と、裏で行われてきた「秘密工作」という冷酷な実態の矛盾を鋭く突いています。本書は、1947年から1989年の冷戦期における米国の政権交代への関与70件を精緻に分析しており、そのうち64件が秘密裏に行われていたことを明らかにしました。この数字は、権力行使において民主的な制約や公的な説明責任を回避しようとする戦略的な意図を浮き彫りにしています。

オルーク氏の統計分析によれば、秘密工作による介入は民主主義をもたらすどころか、圧倒的に独裁政権を生み出す結果となっています。米国は秘密工作を行った64件のうち44件で独裁勢力を支持し、その中には自由民主主義政権を打倒して独裁政権に置き換える工作も含まれていました。介入を受けた国々は、その後10年以内に米国と軍事紛争を起こす確率が6.7倍に跳ね上がり、内戦や大量虐殺が発生するリスクも3倍近く高まっています。秘密裏の介入は安定をもたらすのではなく、むしろ暴力と不安定を制度化させてきたのです。

具体的な事例として、1963年のベトナムでのゴ・ディン・ジエム大統領に対するクーデター支援や、1954年のグアテマラでのアルベンス政権転覆が挙げられます。特にグアテマラでは、介入後に数十年にわたる軍事独裁と30年以上続く内戦が引き起こされ、約20万人の市民が犠牲となりました。また、ドミニカ共和国の事例では、米国が自国の利益に沿う「親米派の序列」を維持するためには、現地の民主主義の存続さえ二の次であったことが実証されています。

さらに本書は、代理戦争(プロキシ・ウォー)がもたらす道徳的欠如についても言及しています。アフガニスタンでは、ソ連を弱体化させるために過激なイスラム主義勢力に巨額の支援を行いましたが、その結果として内戦が勃発し、タリバンや国際的なテロネットワークが台頭する土壌を作りました。東欧でも、反共主義という名目でかつてのナチス協力者やファシストを秘密裏に利用していた実態があります。秘密工作は、政策決定者が自国の国民の目を欺きながら他国を実験場のように扱い、その破壊的な帰結に対する責任を転嫁することを可能にしてきました。私たちが生きる現代の分断された世界は、こうした「目撃者なき権力行使」が残した負の遺産なのです。

経済制裁、年数十万人の命奪う

Report: America's Economic Sanctions Kill Hundreds of Thousands Annually | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】米国の外交政策において不可欠な強制手段となっている経済制裁が、年間で数十万人もの命を奪っているという衝撃的な研究結果が報告されています。ランセット・グローバル・ヘルス誌に掲載された2025年の画期的な調査によると、米国や欧州連合(EU)などによる一方的な制裁によって、毎年約56万4000人が亡くなっており、これは武力紛争による年間死亡者数に匹敵する規模です。1971年から2021年までの累計では、その死者数は約3800万人に達すると推計されています。

経済制裁は、対象国の経済を国際貿易や金融システムから遮断することで、食料の輸入を制限し、医薬品のサプライチェーンを破壊し、公衆衛生インフラを崩壊させます。この「静かなる兵器」の犠牲者の内訳を見ると、5歳未満の子どもが全体の51%を占めており、労働力や政府のエリート層よりも、社会的に脆弱な層が最も深刻な被害を受けている実態が浮き彫りになりました。かつてウッドロー・ウィルソン米大統領は、制裁を「平和的で沈黙の、しかし致命的な手段」と表現しましたが、歴史はこの手段が平和的どころか、無実の市民に対する過酷な集団的罰となっていることを証明しています。

具体的な事例として、1990年から2003年までのイラクへの制裁では、最大150万人が命を落とし、そのうち50万人以上が子どもであったと報告されています。また、近年のベネズエラでは、制裁によって現代の平時における歴史上最大の経済収縮が引き起こされました。同国の一人当たり所得は2012年から2020年の間に71%減少し、これに伴って一般死亡率が31%上昇、4万人以上の過剰死亡が発生したと分析されています。経済学者のフランシスコ・ロドリゲス氏は、こうした包括的な制裁を「包囲戦」と呼び、米国の世界恐慌に匹敵する経済的打撃を与えていると指摘しています。

国連の専門家や人道支援団体からは、こうした制裁がローマ規程第7条に基づく「人道に対する罪」に相当する可能性があるとの批判も上がっています。制裁は軍事力に代わる非暴力的な選択肢と誤解されがちですが、実際には対象国の国民全体を窮乏させ、死に追いやる極めて殺傷力の高い政策です。現在、世界の約27%の国々が何らかの制裁下にありますが、制裁が拡大し続ける一方で、その人道的な代償については十分に議論されていないのが現状です。政治的な目的を達成するために市民の命を犠牲にするこの「経済兵器」の在り方が、今改めて問われています。

ゴールドの進化

Gold's Next Evolution: From Florentine Florins to Blockchain Bars - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】1252年、イタリアのフィレンツェ共和国で鋳造された「フローリン金貨」は、その金の含有量を300年間にわたって一度も変えなかったことで、中世ヨーロッパで最も信頼される通貨となりました。王たちが戦争資金を捻出するために通貨を改悪する中で、フィレンツェが守り抜いたこの「不変の信頼」こそが、金の価値の本質を物語っています。そして774年が経過した2026年現在も、金は依然として政府が価値を損なうことのできない唯一の資産であり続けています。

現在の金価格は1オンスあたり4,700ドル前後で推移しており、本年1月に記録した最高値の5,595ドルからは落ち着きを見せているものの、長期的な上昇トレンドは揺らいでいません。ウォール街の大手銀行は、年末までに5,000ドルから6,000ドルに達すると予測しています。その背景には、中央銀行による継続的な買い越しがあります。2025年には863トンの金が公的に購入され、中国やポーランド、チェコなどが戦略的備蓄を加速させています。中央銀行は短期的な利益ではなく、数十年のスパンで購買力を維持することを目的に動いており、これが市場の強力な下支えとなっています。

また、マクロ経済環境も金に有利に働いています。米国のインフレ率は目標の2%を上回る3.5%付近で高止まりし、実質金利が低水準にあることに加え、2026年内にさらなる利下げが見込まれていることが、金保有の機会費用を下げています。さらに、中東での「第三次湾岸戦争」の長期化や、米中対立、米国の膨大な財政赤字といった地政学的・財政的リスクも、カウンターパーティーリスク(取引相手の破綻リスク)のない金への需要を押し上げています。

こうした伝統的な需要に加え、現在注目されているのが「金のデジタル化」という新たな進化です。これは単なるETFではなく、物理的な金塊と1対1で裏付けられた「トークン化された金」を指します。ブロックチェーン技術を活用することで、24時間365日の即時決済や小口取引が可能になります。先月には、トークン化された金市場を標準化するための重要な業界イニシアチブも発足しました。フィレンツェのフローリン金貨が信頼によって中世の覇権を握ったように、現代のデジタル・ゴールドも、透明性の高い台帳と厳格な監査によってその信頼を担保しようとしています。物理的な裏付けと最先端のインフラが融合することで、金は新たな次元の資産へと進化を遂げようとしています。

インテルの復活

Intel’s Resurrection | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】かつて1990年代に「インテル・インサイド(インテル入ってる)」のキャッチフレーズで世界を席巻したインテルが、劇的な復活を遂げようとしています。長年、同社は競合のエヌビディアに大きく引き離され、投資家の間では「終わった企業」と見なされてきました。記事の著者自身も、電力不足や建設の遅延、巨額の設備投資負担といった懸念から、同社の先行きには懐疑的な立場をとってきました。しかし、最新の決算報告は、そうした弱気な見方を根底から覆すものとなりました。

今回の決算でインテルが発表した数字は、市場の予想を大幅に上回るものでした。売上高は前年同期比6.9%増の135億8000万ドルに達し、調整後の1株当たり利益も事前の予測を大きく超えました。これを受けた株式市場の反応は凄まじく、株価は1日で23.6%も上昇するという、同社の歴史でも稀に見る急騰を記録しました。株価がこれほど跳ね上がるのは、単に業績が「好調」なだけでなく、将来のキャッシュフローに対する市場の評価、つまり同社を巡る物語そのものが再構築されたことを意味しています。

復活の原動力となっているのは、データセンターおよびAI部門です。この分野の売上成長率は20%台に乗っており、以前の「下げ止まり」を期待する段階から、供給不足が成長を牽引するフェーズへと完全に移行しました。これまで市場は、インテルを「パソコン市場の景気に左右される銘柄」として扱ってきましたが、今回の決算によって、同社がAIインフラの次なる段階を支える中核企業であるという認識が広まりました。AIの処理がより複雑化する中で、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)だけでなく、インテルが得意とする中央演算処理装置(CPU)に対する実需が多年にわたって継続することが証明されたのです。

今回の教訓は、マクロ経済の混乱やプロジェクトの遅延が起きていても、基幹部品の供給元は強い需要と価格決定権を維持できるということです。AIへの投資サイクルは、初期のGPUへの集中投資から、システム全体を網羅する第2段階へと進んでいます。投資家は、特定の銘柄に固執するのではなく、新たな事実に基づいて自らの見解を更新していく柔軟性が求められます。インテルが物語の主役に戻ることはないかもしれませんが、プロットを動かす重要な「ベテラン俳優」としての地位を確固たるものにしました。現在は、サービスナウやヒューレット・パッカード・エンタープライズといった、まだ割高感のない関連銘柄にも注目が集まっています。

米経済、深刻な事実

18 Shocking Facts That Prove The US Economy Is In Far Worse Shape Than Most People Realize | ZeroHedge [LINK]

【海外記事より】アメリカ経済が一般に認識されているよりもはるかに深刻な状況にあることを示す、18の事実が報告されています。長年、米国の有権者にとって経済は最大の関心事でしたが、現在は消費者信頼感の歴史的な低下、インフレの再加速、各地での大量解雇、そして債務不履行の急増という厳しい現実に直面しています。中東情勢の緊迫化がさらなる混乱を招く懸念もあり、現状だけでなく将来の見通しも極めて不透明です。

具体的な指標を見ると、まず消費者心理の悪化が顕著です。ミシガン大学の調査では、エネルギー価格の上昇やイラン戦争の影響への不安から、消費者信頼感指数が過去最低を記録しました。個人の財務状況も危機的で、学生ローンの延滞率はコロナ禍前の約3倍に達し、クレジットカードの支払いを全額完了できない層は1億1100万人を超えて過去最多となりました。住宅コストの急騰も家計を圧迫しており、持ち家の月間維持費は6年前から72%も上昇し、2026年第1四半期の差し押さえ件数は前年同期比で26%増加しています。生活費の捻出のために、401k(確定拠出年金)から緊急引き出しを行う労働者の割合も過去最高水準に達しています。

物価の高騰は、国民の食生活にも影を落としています。 主要食品の価格は2019年比で40%以上上昇し、コーヒーの価格は2倍以上になりました。特に深刻なのは、ひき肉1ポンドの価格が、多くの地域で連邦最低賃金の時給725セントを上回ったことです。雇用面でも、2025年末時点で最近の大学卒業生の42.5%が不完全雇用状態にあり、これは2020年以来最悪の水準です。

産業界では、大手企業のリストラと店舗閉鎖が相次いでいます。ウェンディーズやパパ・ジョーンズ、グロサリー・アウトレットといった小売・飲食チェーンが数百規模の店舗閉鎖を決定し、メタやイーベイ、モーガン・スタンレーといった大手企業も数千人規模の人員削減を敢行しています。さらに、電気自動車(EV)向け電池工場などのサプライチェーンでも大量解雇が発生しています。最後に、政府の財政も危機的で、社会保障プログラムの将来的な不足額を含む連邦政府の未積立債務総額は、政府自身の試算で約130兆ドルに達しています。これらの事実は、現在の米国経済が極めて脆い基盤の上に立っていることを示唆しています。

麻薬カルテルから金購入か

Report: U.S. Gov’t Buying Cartel Gold [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府が、コロンビアの凶悪な麻薬カルテル「クラン・デル・ゴルフォ(通称ガルフ・クラン)」の支配下にある鉱山から産出された金を購入している疑いがあることが、ニューヨーク・タイムズ紙の調査で明らかになりました。マルコ・ルビオ国務長官が「暴力的で強力な犯罪組織」と呼び、米国の経済制裁対象にもなっているこの組織が、巡り巡って米国政府の金貨鋳造の源流に関与しているという実態が浮き彫りになっています。

調査によれば、コロンビアの町カウカシアでは、小規模な採掘チームがこのカルテルに対し、採掘の許可料として月額約400ドルを支払っています。採掘された金は地元の商店に売却されますが、これらの商店もまた、カルテルに同額の上納金を支払っています。商店で溶かされた金は金型に流し込まれ、最初の変貌を遂げます。コロンビア政府は環境保護や違法採掘防止のために台帳の記録を義務付けていますが、実際には手作業以外の機械や水銀が使われるなど規制は形骸化しており、当局もその出所を厳密に調査することは稀であると報告されています。

こうして集められた金は、その後コロンビアの国営輸出業者に売却され、他の地域から届いた金と混ぜ合わされて金塊になります。輸出記録によれば、過去1年ほどで約2億5500万ドル相当の金塊がテキサス州に到着し、そこで「米国産」として扱われるようになります。これらの金は民間企業を通じて米国造幣局へ売却され、最終的に年間10億ドル以上売り上げられる投資用金貨へと姿を変えています。造幣局は、2001年以降の金ブームのほぼ全期間にわたり、供給元に対して金の購入先を一度も確認していなかったことが財務省の監察官報告書で指摘されています。

この事態を受け、造幣局を監督するベッセント財務長官は、調達慣行を調査する方針を固めました。同氏は、供給業者が法律を遵守しているか確認し、国家安全保障と市場の誠実さを守るためにあらゆる措置を講じると表明しています。以前から米国造幣局は、需要に見合った供給ができないなどの運営上の問題が指摘されてきましたが、今回の調査結果は、犯罪組織の資金源を断つという米国の外交方針と、政府機関の調達実態が矛盾している現状を浮き彫りにしています。カルテルは力ずくで他国の企業の鉱山を占拠し、採掘現場に麻薬を持ち込むなどの無法地帯を築いており、その資金源を浄化できるかが課題となっています。

インフレは憲法違反

A Gold Bug vs. Washington D.C.: Judy Shelton on the Fed, Gold, and Monetary Policy [LINK]

【海外記事より】米連邦準備理事会(FRB)の理事候補にも名を連ねた経済学者、ジュディ・シェルトン氏が、現在の通貨政策の危うさと「健全な貨幣」としての金の重要性を説いています。彼女はワシントンの主流派とは一線を画す「ゴールドバグ(金信奉者)」として知られており、政府による通貨の武器化や財政の放漫によってドルの信頼が急速に失われている現状に警鐘を鳴らしています。シェルトン氏は、戦争や革命といった破滅的な事態を避けつつ通貨制度をリセットするためには、人々が政府から独立した「信頼できる価値の尺度」を求める原理的な変革が必要だと主張しています。

シェルトン氏が金を重視するのは、それが数世紀にわたって購買力を維持してきた「中立的な準備資産」だからです。現在のドルは、年率2%のインフレを目標とする政策によって意図的に価値が減らされており、5年で購買力の10%が失われる計算になります。パンデミック後の急激なインフレでは、指標によっては25%前後も物価が上昇しました。彼女は、こうした通貨価値の下落を、国民の財産を奪う「憲法違反の収奪」であると厳しく批判しています。かつてソ連の経済崩壊を予測した彼女は、政府による過度な通貨管理が、最終的に通貨を「ゴミ」に変えてしまうリスクを熟知しているのです。

歴史を振り返ると、1971年にニクソン大統領が金とドルの交換を停止した際、それは一時的な措置と説明されていました。当時のポール・ボルカー氏ら当局者も、金との結びつきが完全に断たれるとは予想していなかったといいます。しかし結果として、政府が自らの支出を賄うために際限なく通貨を膨張させられる「柔軟性」という名の無規律な体制が定着してしまいました。シェルトン氏は、為替相場の変動に翻弄される現在の仕組みよりも、かつての金本位制のように世界共通の尺度を持つ方が、健全な経済活動に資すると考えています。

現在、中国などの国々が金を蓄積し、ニューヨーク連邦準備銀行に預けていた金の返還を求める動きがあるのは、政府発行の通貨に対する不信感の表れだと言えます。シェルトン氏は、通貨に再び金の裏付けを持たせるための第一歩として、金と交換可能な長期財務省証券の発行や、金を担保としたステーブルコインの活用を提案しています。彼女は、FRBが金利操作によって市場に巨大な足跡を残し続ける現状を不健全だと断じ、人々がインフレを心配することなく将来の計画を立てられる「誠実な貨幣」の実現こそが、真に豊かな社会への道であると結論づけています。

人民元の静かな台頭

Opinion | For the US dollar, a subtler shift than a ‘petroyuan’ order is underfoot | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】イラン戦争の最中で囁かれる「ドルの崩壊」や「ペトロ人民元」時代の到来といった極端な議論は、本質を見誤っています。より重要な変化は、もっと微細で、しかし重大な形で進行しています。今月、アラブ首長国連邦のアブダビ皇太子が訪中し、中国がイラン戦争に関する立場を表明した一方で、パキスタンが米イラン外交の中介役として浮上しました。同時に米国がイラン産原油の買い手への圧力を強める中、ホルムズ海峡の通航に関連する支払いに人民元が使用されているとの報告が流れています。こうした動きは、長年議論されてきた「ペトロ人民元」が現実味を帯び始めているのではないかという問いを投げかけています。

現状、ペトロダラー体制は依然として強固です。世界の公認準備資産の約57%をドルが占めるのに対し、人民元は2%未満に過ぎません。ドルの圧倒的な流動性や安全資産としての地位は、一つの地域紛争で消え去るものではありません。ペトロダラーとは単なる決済通貨ではなく、エネルギー価格、国際金融、外貨準備、そして米国の軍事力による安全保障が一体となったシステムです。産油国はドルで稼ぎ、それをドル資産で運用し、米国の安全保障の傘の下で活動してきました。しかし、この密接な結びつきに構造的な変化が生じています。

第一の理由は構造的なミスマッチです。湾岸諸国のエネルギーの輸出先は東アジアへシフトしており、中国は制裁下にあるイラン産原油の主要な買い手となっています。需要の中心がアジアに移る一方で、金融と安全保障の仕組みは依然として大西洋側に固定されています。第二の理由は地政学的な変化です。現在の戦争により、米国の安全保障の信頼性が揺らぎ始めています。湾岸諸国は米国との関係を断つわけではありませんが、外交や金融インフラにおいて、より公然とリスク分散を図るようになっています。

中国は長年、上海での原油先物取引や独自の決済システム(CIPS)の構築など、人民元によるエネルギー決済の基盤を整備してきました。イラン戦争は、この仕組みに戦略的な意義を与えました。米国がドル決済を武器として圧力を強める際、非ドル決済は単なる政治的野心ではなく、実用的な回避策となります。ホルムズ海峡に関連する支払いで人民元が使われているという事実は、脱ドル化が単なる修辞から、戦時下における実利的な選択肢へと進化したことを示しています。

もちろん、これが即座に通貨革命につながるわけではありません。人民元には、ドルが持つような深い資産市場や自由な換金性が欠けています。また、湾岸諸国の多くは自国通貨をドルに固定しており、急激なドル離れは自国の金融安定を損なう恐れがあります。したがって、現実的なシナリオは、ドルが主要通貨として存続する一方で、中国向けの取引や制裁対象国との取引において、人民元による補完的なルートが並行して成長する「二重構造」の定着です。世界は一晩でドルを捨てるのではなく、ドルへの絶対的な依存を少しずつ減らすための仕組みを構築し始めているのです。

ウクライナで政変の嵐?

Knives out: Is a coup brewing in Kiev? — RT Russia & Former Soviet Union [LINK]

【海外記事より】ウクライナのゼレンスキー政権が、かつてない政治的試練に直面しています。約半年前に発生した「ミンディッチゲート」と呼ばれる汚職疑惑は、政権中枢を巻き込み、一時は大統領の退陣さえ危ぶまれる事態となりました。ゼレンスキー大統領は地位を安定させるため、長年の盟友であったイェルマク氏を解任し、後任として国防省情報総局のトップであったキリロ・ブダノフ氏を起用するという譲歩を余儀なくされました。この人事により内閣も再編され、汚職対策機関による政権への追及も沈静化しましたが、ウクライナの権力構造は大きく変貌を遂げることとなりました。

この変化の中で最も象徴的なのが、ブダノフ氏の台頭です。当初は控えめな態度を保っていた同氏ですが、次第に公式の場で自信に満ちた発言を増やしています。4月に入ると、ブダノフ氏の言葉はゼレンスキー大統領の方針とは一線を画すようになりました。大統領が長期戦の構えを強調する一方で、ブダノフ氏は交渉の継続について言及し、平和は遠くないかもしれないという見解を示しています。また、大統領が技術革新を誇示する場面でも同氏はそれを控えめに評価し、さらには戦時下の政府高官としては極めて稀なことに、兵士の動員が困難になっている現状を公然と認めています。

ブダノフ氏は自身のイメージ戦略も巧みに進めています。欧米のメディアに対しては、戦争の英雄でありながらも紛争終結の必要性を理解する現実的な「鳩派」として振る舞う一方、国内向けには自ら作戦に参加し死線を潜り抜けてきた勇敢な司令官という横顔をアピールしています。こうした周到な役作りにより、彼は今や「次期大統領」に近い政治的人格を確立したと言えます。ブダノフ氏の支持率は、かつて大統領のライバルと目されたザルジニー前総司令官に匹敵するとされています。国外ではトランプ陣営に近い人物らとの人脈を築き、国内では与党内の有力者からの支持を固めるなど、着実に基盤を広げているのです。

ゼレンスキー大統領にとって、ブダノフ氏を政権中枢に招き入れたのは、潜在的な敵を近くに置くことで制御しようとする計算があったのでしょう。しかし実際には、ブダノフ氏に高い知名度と組織的な影響力を与える結果となりました。戦況が厳しさを増す中、エリート層の間でロシアとの妥協を模索する動きが強まれば、それが大統領の方針と衝突し、最終的には指導者の交代を求める「宮廷クーデター」のような事態に発展する可能性も否定できません。ロシア側からすれば、指導者が誰であれ自国に有利な条件で紛争を終わらせる姿勢こそが重要であり、ウクライナ国内の権力闘争の帰結が今後の決定的な要因になると考えられます。