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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-04-25

ポピュリズムが失敗するとき

Why Trump’s Populism Failed - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】ドナルド・トランプ氏は、かつてエリート層の支配を打ち破り、腐敗した「沼」を掃除すると約束したポピュリストとして当選しました。しかし、就任から3年近くが経とうとする現在、彼の政治は結局のところ既存の統治エリートたちの利益を損なうものにはなっていません。ライアン・マクメイケン氏は、トランプ氏のポピュリズムがなぜ失敗に終わったのかを冷徹に分析しています。

記事によれば、トランプ氏は熱烈な支持者たちが期待したような、ワシントンの統治構造を根本から変える改革には何一つ成功していません。政府支出はかつてないほど増大し、金融政策は相変わらずのインフレ体質です。トランプ氏は選挙での勝利を永続的な法改正に結びつけることができず、代わりに大統領令という安易な手法に頼りました。これでは、次の大統領が就任した瞬間にすべての変更が覆されてしまいます。むしろトランプ氏が拡大させた大統領権限は、将来的に敵対する政党が政権を握った際、国民をより強力に管理する道具として引き継がれることになるでしょう。

真の支配層である「統治エリート」とは、政府機関と利益団体が結びついた、納税者から資源を吸い上げるネットワークのことです。軍需産業や巨大IT企業、金融機関などがこの利権構造に含まれていますが、彼らにとって党派争いはさほど重要ではありません。トランプ氏も結局は、軍事費の大幅な増額を求めることで軍産複合体を取り込み、監視国家を強化する法案を支持し、イスラエル第一主義を掲げるなど、体制側の利益に忠実な大統領へと変貌してしまいました。中絶やLGBT関連の政策で多少の調整はありましたが、こうした「文化戦争」は、権力が交代しているかのような錯覚を国民に与えるための、エリート層にとっての余興に過ぎません。

トランプ流のポピュリズムが失敗する根本的な理由は、それが「体制内ポピュリズム」であるためです。この思想は、国家の枠組みそのものは善であり、その巨大な権力を自分たちのために振るいたいという欲望に基づいています。権力を解体しようとするのではなく、単にその座を奪い合っているだけなのです。真の解決策は、国家を一つの巨大な組織として維持することに反対し、権力を分散・分割させることにしかありません。国家の「団結」や「正統性」というプロパガンダを捨て、腐敗し肥大化した体制を解体することを目指さない限り、どんなに選挙で「より激しく投票」したとしても、支配層が望む現状維持が繰り返されるだけであると、この記事は結論付けています。

経済回廊の争奪戦激化

War on Iran Reshapes the ‘War of Connectivity Corridors’ - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカが主導する対イラン戦争は、単なる地政学的な対立にとどまらず、21世紀のユーラシア統合の核心である「経済接続回廊」の争奪戦を激変させています。現在、ユーラシア大陸では、中国の「一帯一路(BRI)」、ロシア・イラン・インドを結ぶ「南北輸送回廊(INSTC)」、そして欧米が推す「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」などが、複雑に絡み合いながら勢力圏を競っています。イランはその地理的優位性から、古来より東西交流の十字路として機能してきましたが、今回の戦争はこの戦略的なネットワークを根底から揺さぶっています。

中国にとってイランは、アメリカが支配する海上ルートやマラッカ海峡などの急所を回避し、陸路で西ユーラシアへ抜けるための不可欠なパートナーです。2021年に締結された4,000億ドル規模の投資を含む25年間の協定に基づき、中国とイランを結ぶ鉄道回廊はすでに稼働を始めています。これにより、海上輸送で40日かかっていた行程が陸路では15日以内に短縮されました。中国はこのルートを通じてイランの石油を確保しつつ、不安定なパキスタン経由のルート(CPEC)への依存を減らそうとしています。米軍がこの中国・イラン鉄道の一部や、関連する港湾施設を爆撃した事実は、この戦争がユーラシア統合を阻止しようとする意図を孕んでいることを示唆しています。

一方で、南北の軸となるINSTCは、ロシア、イラン、インドを直結する回廊ですが、今回の戦争でその先行きの不透明感が増しています。特にインドにとって、自らが投資してきたイランのチャバハール港は、中央アジアやロシア市場へアクセスするための「王冠の宝石」とも言える重要な拠点でした。しかし、アメリカからの圧力に加え、戦争による物理的な破壊により、インドの投資は停滞を余儀なくされています。対照的に中国は、インドが撤退した隙を突くように、イランの海岸地帯への大規模な投資計画を加速させています。

これらに対抗する形で提唱されたIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)は、イスラエルを戦略的ハブに据え、中国やロシア、イランをバイパスすることを目的とした欧米主導のプロジェクトです。しかし、戦争によってハイファ港などの重要拠点が損傷し、さらにアラブ諸国間の足並みの乱れも表面化しており、この回廊は現在「昏睡状態」にあると言っても過言ではありません。鉄道網の欠落やインフラへの攻撃により、その実現可能性は極めて低くなっています。

また、トルコも独自の「パイプライン国家」としての野望を抱き、カタールやイラク、中央アジアのエネルギーを自国経由で欧州へ運ぶ回廊を模索していますが、政治的合意の欠如や莫大な建設コストが壁となっています。結局のところ、今回の戦争はイラン、中国、BRICS、そしてユーラシア全体の統合に向けた動きを標的にしたものですが、皮肉にも、北極海航路(氷上のシルクロード)を含めた新たな interconnection(相互接続)の模索を加速させる結果となっています。戦争によって回廊を断絶しようとする試みに対し、ユーラシア側はさらなる結束と実利的な接続を強めることで対抗しようとしていると、この記事は伝えています。

核を持つ動機膨らむ

Has Iran Learned the North Korea Lesson: Nukes Are Essential To Deter the US? - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】軍備管理の専門家たちは、イランの核開発を阻止するという名目でアメリカが強行している攻撃が、核不拡散体制そのものを壊滅させる恐れがあると警鐘を鳴らしています。イランは現在、核不拡散条約(NPT)からの脱退を示唆しており、これが実現すれば国際社会による監視の目は完全に失われることになります。かつて朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が2003年に同様の歩みを辿り、核兵器保有へと突き進んだ歴史が繰り返されようとしています。

外交の専門家が注目しているのは、北朝鮮とイランに対するアメリカの対応の驚くべき乖離です。すでに核を保有している北朝鮮に対して、アメリカは極めて抑制的な姿勢を保っています。公式には非核化を求めてはいるものの、実質的には北朝鮮が構築した約50発の核弾頭と弾道ミサイルの存在を前に、軍事行動を控える「慎重な対応」を余儀なくされています。一方で、核兵器を保有していないイランに対しては、アメリカとイスラエルは容赦のない大規模な空爆を続けています。この対照的な現実は、イランの指導者層に対して「自衛のために核抑止力は不可欠である」という強烈な教訓を与えてしまいました。

かつてオバマ政権下で結ばれたイラン核合意(JCPOA)は、厳しい査察を受け入れることで平和的な核利用を担保していましたが、トランプ氏が2018年にこれを「最悪の合意」として一方的に破棄したことが、現在の混乱の起点となりました。イランが核兵器製造に近づいているという確実な証拠がないまま、イスラエルとアメリカの支持者による警告だけが一人歩きし、現在の戦争へと突き進んだのです。こうした状況下で、北朝鮮の金正恩氏が「わが国の核保有という戦略的選択は正しかった」と、イランの窮状を引き合いに出して語ったことは象徴的です。

現在、北朝鮮がイランに対して核開発の支援や、実戦配備可能な兵器の提供を申し出ているという報道もあります。アメリカとイスラエルがイランの核保有を断固として阻止しようとする姿勢は、皮肉にもイランにとって「核を持つ動機」を最大化させてしまいました。経済的、軍事的なリスクを冒してでも核抑止力を構築した北朝鮮の決断が、今やイランや他の対米対立国にとって「賢明な選択」に見えてしまっています。アメリカによる強硬で稚拙な外交手法が、かえって世界に新たな火種を撒き散らし、国民に不必要な危険をもたらしていると、テッド・ガレン・カーペンター博士は分析しています。

正しくない戦争

The Pope Is Right – The US-Israeli War With Iran Violates Just-War Theory - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ローマ教皇レオ14世がSNSで発信した「神はいかなる紛争も祝福しない」という言葉が、波紋を広げています。教皇は、平和は対話と共存の促進からのみ生まれるものであり、爆弾を落とす側にキリストの弟子はいないと説きました。これに対し、トランプ大統領やバンス副大統領らは、キリスト教神学には1000年以上の歴史を持つ「正戦論(正しい戦争の理論)」があると反論し、教皇の姿勢を批判しています。しかし、哲学者ジョーダン・リズ氏によれば、現在のアメリカ・イスラエル連合による対イラン戦争こそが、その正戦論に真っ向から違反しているといいます。

正戦論には大きく3つの柱があります。第一に「開戦事由(ユス・アド・ベルム)」、つまり戦争を始める正当な理由があるかです。これには自衛目的であることや、交渉を尽くした末の「最後の手段」であることが求められます。トランプ政権はイランの核兵器開発阻止を理由に挙げていますが、具体的な証拠は提示されておらず、交渉が続いていたにもかかわらず一方的に対話を打ち切った経緯があります。また、憲法が定める議会の宣戦布告を経ていない点も、正当な権威による宣言という条件を欠いています。

第二に「交戦規定(ユス・イン・ベロ)」、すなわち戦争の遂行方法です。ここでは文民と戦闘員の区別、および必要最小限の暴力にとどめる比例性が求められます。しかし、実際の攻撃ではイランの小学校や医療センター、大学などが破壊され、多数の死傷者が出ています。ヘグセス国防長官が「慈悲は無用」と公言し、トランプ大統領も戦争犯罪を辞さない姿勢を示していることは、軍事目標と民間人を区別する意思が欠如していることを物語っています。

第三に「戦後責任(ユス・ポスト・ベルム)」、停戦時や終戦後の振る舞いです。敗者の権利を尊重し、民間人を罰しないことが重要ですが、アメリカ側は停戦中もホルムズ海峡の封鎖を維持し、経済制裁によってイラン国民に苦難を強いています。相手を「狂人」と呼ぶような蔑視的な態度は、持続可能な平和を遠ざけるものです。

結局のところ、この戦争は自衛のためではなく、征服と利権のためのものであると著者は断じています。教皇が指摘するように、世界を荒廃させる一部の統治者に対し、私たちは平和で公正な世界を築く努力を止めてはなりません。無実の命が失われた事実は取り返しがつきませんが、責任ある者たちを裁き、破壊された国への賠償と復興支援を行うことこそが、今求められている正義であるとこの記事は結論付けています。

中産階級への戦争

Doug Casey on Tax Day, Inflation, and the War on the Middle Class [LINK]

【海外記事より】米国では4月15日の納税の日が過ぎましたが、生産的な人々が毎年春になると「国にいくら貢がなければならないか」を計算することに時間を費やす現状は、社会の歪みを象徴しています。投資家のダグ・ケーシー氏は、税金は文明社会の維持に不可欠なものではなく、むしろ道徳的に問題のある存在だと主張します。世間では税率の妥当性や使い道といった技術的な議論ばかりがなされていますが、国家による強制や通貨の膨張といった仕組みそのものを疑う視点が欠落していると氏は指摘しています。

現在のエリート層は、実は中産階級を破壊したいと考えているのではないか、というのがケーシー氏の見立てです。彼らにとって、自分たちの地位を脅かす可能性のある自立した中間層は邪魔な存在であり、少数の支配層と、それを支える従順な労働者層だけで構成される社会を望んでいるというのです。これは、かつてレーニンが「中間層は税金とインフレという二つの石臼の間で粉砕されるべきだ」と述べた戦略と一致します。税金は資本の蓄積を困難にし、政府が発行する不換紙幣のインフレは、人々の貯蓄価値を密かに奪い去ります。国家という仕組みそのものが、暴力と強制を背景にした再分配の装置と化しているのです。

アメリカ国民は長年の教育を通じて、政府を慈悲深い守護者のように思い込まされてきました。4年ごとの選挙も、実際には似たような二つの選択肢から選ばされているに過ぎず、根本的な変革にはつながっていません。最近ではスコット・ベッセント財務長官が、源泉徴収額の調整を「実質的な賃上げ」と表現しましたが、これは自らの給与の一部を返してもらうだけの話をすり替えた、不誠実な嘘に他なりません。政府が配布するわずかな給付金や、AIによる失業対策としてのユニバーサル・ベーシック・インカムの議論も、個人の責任感を麻痺させ、人々を国家の福祉に依存する「羊」のように変えてしまう危険性を孕んでいます。

政府という組織は、遺伝子レベルで拡大を続けるようにプログラムされています。官僚は部下を増やし、より多くの予算を確保することで昇進しようとするため、税金や借金、通貨膨張は止まることがありません。社会で最も生産的な中間層を追い詰める国家の姿は、宿主を食い潰す寄生虫のようなものです。多くの国民は国家と社会を混同し、依存を強めていますが、莫大な債務によって通貨価値が崩壊したとき、彼らはさらに強力な指導者や政府による救済を求めるという悪循環に陥るでしょう。個人の資産を守る努力は続けなければなりませんが、略奪者として肥大化し続ける国家という巨大な問題に対し、安全かつ合法的な解決策を見出すのは極めて困難であると、著者は警鐘を鳴らしています。

銀、300ドルに上昇?

$300 Silver? Bank of America Says Maybe [LINK]

【海外記事より】バンク・オブ・アメリカが発表した、銀価格が年内に1オンスあたり135ドルから309ドルの範囲に到達する可能性があるという予測が、大きな注目を集めています。この予測の最低ラインである135ドルであっても、現在の水準から75%もの上昇を意味しており、非常に強気な見通しと言えます。これほど予測の幅が広いことは、地政学的な変動が激しい時期に市場を読むことの難しさを示していますが、同行のコモディティ調査責任者マイケル・ウィドマー氏は、この予測の根拠として「金銀比価」に着目しています。

金銀比価とは、金1オンスを購入するのに何オンスの銀が必要かを示す指標です。現代における平均的な比率は40対1から60対1の間ですが、2025年の最初の10ヶ月間は歴史的な高水準である91対1で推移し、一時は107対1まで跳ね上がりました。その後、比率は急低下し、銀価格の大幅な是正が進んでいることを示唆しています。過去の銀の強気相場では、この比率が平均を大きく下回ることが珍しくありません。例えば、2011年には32対1まで低下しており、金価格が5,000ドルに達すると仮定すれば、銀は135ドルになります。さらに、1980年の高騰時には14対1まで縮まった記録があり、これに基づくと銀価格は309ドルにまで跳ね上がる計算になります。

金市場の動向も銀に強い影響を与えます。現在、多くの主要銀行が年内に金価格が6,000ドルに達すると予測しています。貴金属市場は金融市場全体の約4%を占めるに過ぎず、富裕層のポートフォリオにおける金の割合もわずか0.5%にとどまっているため、投資需要が少し増加するだけで金価格はさらに押し上げられる可能性があります。ウィドマー氏は、投資需要が55%増加すれば金は8,000ドルに達すると分析しており、銀は工業用需要が高い一方で根本的には「通貨としての金属」と見なされているため、長期的には金の動きに追随する性質があります。

銀の供給不足という構造的な要因も無視できません。銀市場は2026年で5年連続の供給不足を記録する見通しです。昨年の需要は供給を約1,250トン上回り、過去5年間の累計不足量は約2万2,000トン以上に達しています。これは昨年の銀鉱山生産量に匹敵する規模です。需要が鉱山生産やリサイクルによる供給を上回る場合、利用者は地上在庫を取り崩すしかありません。在庫を保有する側に手放す動機を与えるには価格の上昇が必要であり、さらなる価格高騰、いわゆる「シルバー・スクイーズ」が発生しやすい環境が整っています。300ドルを超えるという予測は最高の場合のシナリオですが、供給不足と市場の勢いを考えれば、決してあり得ない話ではないとこの記事は結論付けています。

真の独立性誓う

Warsh Vows a Leaner, “Strictly Independent” Fed as Gold Brushes $4,800 | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏は、上院の指名承認公聴会において、世界で最も影響力のある中央銀行のあり方を根本的に見直す意向を表明しました。トランプ大統領の支持を受けるウォーシュ氏は、雇用最大化と物価安定という任務を遂行するためには、FRBが真の独立性を再確立することが不可欠であると強調しました。同氏が法案提出者らに対して証言を行う中、市場では安定を求める投資家の動きが加速し、金スポット価格は1オンスあたり4,796ドルという史上最高値を記録しました。これは、既存の法定通貨に対する人々の信頼が揺らいでいることを象徴する出来事となっています。

ウォーシュ氏は、物価安定の責任はFRBではなく議会にあるとする考えを述べつつ、「インフレはFRBの選択の結果である」というミルトン・フリードマンの言葉を引用しました。同氏は、FRBが進むべき道として3つの指針を提示しています。まず、任務を定義するのは議会であること。次に、FRBの自律性は金融政策の実行においてのみ最大化されること。そして最後に、中央銀行は「自らの領分を越えてはならない」ということです。これは、近年のバランスシートの肥大化や、危機対応を名目とした即興的な政策が、現在の根強いインフレを招いたという批判を念頭に置いた、鋭い反論となっています。

公聴会では、大統領による金利への介入が独立性を損なうのではないかという懸念も示されましたが、ウォーシュ氏はこれを否定しました。選出された公職者による発言が独立性を脅かすのではなく、独立性を守り抜けるかどうかはあくまでFRB自身の規律にかかっていると主張したのです。かつての金融危機の際、FRBは不可欠な役割を果たしましたが、同時に経済や社会において過度に大きな役割を演じようとする誘惑に駆られたことも認めました。市場関係者は、同氏がこうした誘惑に抗い、10兆ドル規模に膨れ上がったバランスシートを縮小させ、ドルの購買力を回復させることに期待を寄せています。

ウォーシュ氏が掲げる「厳格で熟慮に基づいた、曇りのない意思決定」が、長年にわたる過剰な流動性供給の歴史を塗り替えられるかは、まだ未知数です。しかし、憲法と連邦準備法、そしてFRBの最良の伝統に忠実であるという同氏の誓約は、明確な転換点を示しています。もし次期議長がこの約束を果たせば、アメリカ国民は本来の役割に専念する中央銀行の姿を目にすることになるでしょう。一方で、金価格が最高値を更新し続けている現状は、中途半端な改革ではもはや市場の信頼を取り戻せないという、厳しい警告であるともこの記事は指摘しています。

金融界、「感染」の危機

The Private Credit Infection | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】「プライベート・クレジット」という非公開市場での融資が、銀行システムを破壊する脅威になり得ると、政治家や経済界から警告の声が上がっています。この問題は、2008年の世界金融危機を引き起こした要因と酷似していると指摘されています。従来の銀行融資に比べて規制が緩いため、公的な「お墨付き」がないまま、様々な形態の債権が蓄積されています。一部の銀行は、債務の質に応じて階層化して管理していますが、プライベート・クレジットを一つのカテゴリーとして一括りに扱うことは、個々のリスクの差異を見誤る可能性を孕んでいます。

懸念されるのは、金融機関が「もし市場が崩壊しても、最終的には政府が救済してくれる」という想定のもとに行動している点です。現在のシステムにおいて、政府による保護はほぼ不可避と見られており、それが皮肉にも銀行に対して、本来であれば負うべきではない高いリスクを伴うプライベート・クレジットへの投資を促す動機となっています。このようにリスクに対する緊張感が失われることで、質の低い債権が重要な金融機関に浸透していく「感染」のような事態が危惧されています。

一方で、プライベート・クレジットには、従来の銀行の枠組みにとらわれない自由で革新的な資金供給という側面もあります。2008年以降の厳しい規制により、銀行から融資を受けられなくなった企業にとって、この市場は重要な受け皿となってきました。必ずしも借り手すべてがハイリスクというわけではありませんが、銀行が規制上の手続きを嫌うような中堅企業や、苦境にある企業にとっての「最後の貸し手」として機能しているのが実情です。そのため、銀行が融資を行う市場よりも、全体としてハイリスク・ハイリターンの傾向が強くなります。

過去の銀行破綻における政府の対応を鑑みれば、一部の銀行がより高い利益を求めて過剰なリスクを取ることは避けられません。周囲の銀行が同様の投資を行っていれば、自らも罰せられることはないという安易な思い込みも生じがちです。しかし、実際に市場が急変した際、明暗を分けるのは単なる投資の有無ではなく、個々の債権の質です。プライベート・クレジットを一様に「怪物」のように恐れるのではなく、リターンとリスクのバランスを冷静に見極める判断力が求められています。

こうしたリスクの連鎖を断ち切るためには、連邦準備制度理事が、緊急事態においても安易な救済は行わないという姿勢を明確に示す必要があります。政府の保護を前提とした無責任な行動が許される限り、金融機関が自らの意思で慎重な判断を下すことは困難です。今後数年間の課題は、銀行を政府の支援から自立させることにあります。そうでなければ、アメリカの金融システムは不必要な混乱にさらされ続け、一般市民が産業上のリスクを背負わされることになると、この記事は分析しています。

最大1万6000人解雇へ

US big tech giants to axe up to 16,000 employees – FT — RT Business News [LINK]

【海外記事より】アメリカの巨大IT企業であるメタとマイクロソフトが、全従業員の最大10%に相当する人員削減に踏み切ることが明らかになりました。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によれば、今回の決定の背景には、人工知能(AI)分野への膨大な投資に伴うコストの急増があります。フェイスブックを運営するメタは、全従業員の10%にあたる約8,000人を削減し、さらに6,000件の未募集枠を閉鎖する方針を社内メモで伝えています。この削減は5月20日から開始される予定です。同社は現在、GoogleやOpenAIといった競合他社に対抗するため、先進的なAIモデルの開発やデータセンターなどのインフラ整備に巨額の資金を投じています。

メタは2026年の資本支出が1,150億ドルから1,350億ドルに達すると予測しており、その主な要因はAI関連のデータセンター資産の減価償却費や運営コストの上昇です。一方で、ライバルのマイクロソフトも、アメリカ国内の従業員の約7%を対象に、早期退職の募集を開始しました。対象となるのは、年齢と勤続年数の合計が70年以上のベテラン社員で、約12万5,000人の米国内従業員のうち8,000人以上が該当します。同社は2025年にも1万5,000人以上の人員削減を行っていますが、独自のAIモデル開発を加速させるために1,400億ドルの支出を予定しており、組織の再編を余儀なくされています。

AI開発に関連した人員削減は、アメリカの労働市場においてますます一般的な現象となりつつあり、雇用への影響に対する懸念が広がっています。ある報道によれば、今年第1四半期だけで、米ITセクターにおけるAI導入に起因する解雇者数は5万2,000人を超えました。技術革新のスピードが、労働者の保護や公的な支援策を追い越している現状が浮き彫りになっています。

世論調査の結果では、アメリカ人の57%がAIの進化は「早すぎる」と感じており、79%もの人々が、失業から労働者を守るための政府の計画がないことに不安を抱いています。先端技術への野心的な投資が企業の財務を圧迫し、そのしわ寄せが従業員に及ぶという構図は、現代のハイテク業界が抱える矛盾を象徴しています。企業がAIという未来の競争力に資源を集中させる一方で、長年貢献してきた労働力がその代償を払わされているという実態を、今回の報道は淡々と伝えています。

安保の論理、世界貿易の脅威に

Opinion | Flexible dual-use claims could be new global trade chokepoint | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】米海軍がイラン船籍の貨物船を拿捕した事例は、現代のグローバル貿易が直面している新たな課題を浮き彫りにしました。この船は中国からマレーシアを経由して航行していましたが、軍事転用が可能な「デュアルユース(軍民両用)」の部品を運んでいる疑いがあるとされました。かつてこの分類は、明らかに軍事目的に転用可能な特定の品目に限られていましたが、近年の紛争の影響もあり、その範囲は急速に拡大しています。例えば、ウクライナで回収された兵器からは多数の外国製部品が見つかっており、その多くは民間供給網で流通している一般的な電子部品でした。このように、一見すると普通の商業貨物が、いつの間にか戦略的な意味を持つカテゴリーへと押し込まれる事態が起きています。

統計を見ても、欧州連合によるデュアルユース品目の輸出許可額は、2021年の385億ユーロから翌年には573億ユーロへと急増しています。これはすべての貿易が軍事転用を目的としているわけではなく、一般的な工業製品や技術集約型の貨物が、かつてないほど戦略的な関連性を持つようになったことを示しています。金属、電子機器、機械部品、ソフトウェアといった日常的な商品が、いつ戦略的な嫌疑をかけられるかわからない不安定な状況にあります。拡散のリスク自体は現実に存在するため、輸出管理そのものを否定することはできません。しかし、このカテゴリーが伸縮自在になり、正当な商取引が短期間の判断で戦略的措置の対象に書き換えられてしまうことが、大きな問題となっているのです。

海上貿易は予測可能性によって成り立っています。船舶会社や保険会社、物流業者は、実際に拿捕が相次ぐのを待たず、法的な曖昧さやリスクの予兆に即座に反応します。わずかな事例であっても、普通の貨物が突然「疑わしいもの」として再定義される可能性があれば、航路の変更や過剰なコンプライアンス対応、保険料の騰貴といった影響が瞬時に世界へ広がります。その結果、正式な海上封鎖が行われていないにもかかわらず、封鎖に近い経済的なショックが引き起こされることになります。当局が特定の軍事プログラムを支援する可能性があると判断すれば、民生用の工業原材料であっても、政治化された予測不能な環境に置かれることになります。

航行の自由は依然として重要な原則ですが、現在はそれを上回る「安全保障の論理」が台頭し、国家が通常の商取引を戦略的脅威として再定義できる余地が広がっています。かつては例外的に適用されていた法的論理が、今や世界貿易の日常的なインフラの奥深くにまで浸透しています。正当な安全保障規制と、選択的な経済的圧迫の境界線を維持するためには、証拠基準や貨物の分類、最終用途の確認に関する透明性を高める明確なガードレールが不可欠です。こうした枠組みが整備されなければ、拡散を防ぐための仕組みそのものが、世界の貿易を停滞させる新たなボトルネック、すなわちチョークポイントになりかねないと、パキスタンの研究員であるゾハイブ・アルタフ氏は警鐘を鳴らしています。

2026-04-24

エネルギー戦争の背景

The Energy War - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府によるイランへの電撃的な攻撃は、世界的な燃料不足や移動制限、さらには広範囲にわたる飢餓を引き起こしかねない経済的災厄を解き放ちました。この衝撃は、当初こそ局地的な混乱に見えるかもしれませんが、ホルムズ海峡の封鎖が長引くにつれ、その波紋は日々増幅しています。たとえ海峡が再開されたとしても、受け入れ先を失った産油国では油田の閉鎖が相次いでおり、一度停止した油井は地質学的な理由から永久に再開できなくなる恐れもあります。エネルギーインフラの破壊も含め、戦前の生産水準に戻すには数ヶ月の歳月が必要です。

この戦争の背景には、イスラエルの利益だけでなく、中国を封じ込めようとする意図が見え隠れしています。中国は石油の多くをロシア、イラン、ベネズエラから輸入していますが、アメリカは「麻薬テロ」への対処を名目にベネズエラの石油利権を事実上掌握しました。さらにイランへの攻撃でホルムズ海峡を封鎖し、カタールの天然ガス施設やロシアの製油所が相次いで攻撃を受ける中、オーストラリアの主要な製油所でも火災が発生しています。これらを統合して見れば、アメリカによるホルムズ海峡の封鎖は、中国へのエネルギー供給を断つ世界的な禁輸措置の一環であり、世界を米国産ドル建ての石油に依存させるための戦略のようにも映ります。

危機の余波はすでに世界各地に広がっています。アイルランドでは激しい抗議デモが起き、オーストラリアやニュージーランドでは食料輸送に必要なディーゼル燃料が不足し始めています。米国は産油国ではありますが、ディーゼルやジェット燃料の精製に必要な重質原油の多くを輸入に頼っており、自国の製油所も老朽化しています。欧州では航空燃料の在庫が数週間分しか残っておらず、各国の航空会社は欠航を決め、政府はエネルギー節約のために在宅勤務を推奨する事態となっています。かつて石油を断たれた日本が真珠湾攻撃に踏み切ったように、追い詰められた中国が台湾封鎖や希少資源の輸出制限などで激しく反撃する可能性も否定できません。

一方で、不幸中の幸いは、株式相場が記録的な高値を維持し、原油先物価格が100ドルを下回るなど、市場がこの危機を楽観視していることかもしれません。しかし、過去の金融危機やパンデミック直前の暴落時にも株価は直前まで高値を更新しており、現在の静けさが偽りのシグナルである可能性には注意が必要です。イランの指導部が混乱し、封鎖によって資金が枯渇していることで、この紛争が明日終わる可能性もゼロではありません。しかし、地面の揺れが収まったからといって、その後に続く大規模な火災まで免れるとは限らないのです。

世界経済の破綻

Iran-U.S.: The Strategic Limbo Breakdown - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの間で続く緊張は、外交的な停滞を超え、世界経済を巻き込む大規模な海洋封鎖へと発展しています。現在、イラン側の意思決定の中核は、革命防衛隊の指導者らを中心とした治安重視の強力な体制に移行しており、極めて強硬な姿勢を崩していません。彼らの主張は明確です。アメリカによる海上封鎖は事実上の戦争行為であり、自国の船舶が攻撃を受けている状況では、いかなる交渉にも応じないというものです。イランは「封鎖が解除されない限り、交渉はない」と断言しており、世界経済が破綻する責任はすべてアメリカ側にあると突きつけています。

国際法上の観点から見ると、他国の港や海岸を軍事力で封鎖することは侵略行為に該当します。これに対し、イランがホルムズ海峡で行っている通行料の徴収や敵対船舶の規制は、自国の領海を通過する船舶に対する主権の行使であり、帝国主義的な軍事行動に対する正当防衛であると彼らは主張しています。1958年の領海条約などに基づき、イランは自国の安全を脅かす船舶には「無害通航権」を認めない権利があると強調しています。世界で最も重要な戦略的要衝であるホルムズ海峡の管理権を盾に、イランは一歩も引かない構えを見せています。

この海上封鎖の影響はすでに世界経済を直撃しています。わずか2ヶ月足らずで世界のエネルギー供給は60%も減少し、航空便の欠航や肥料不足による食料危機への懸念が現実味を帯びてきました。ホルムズ海峡を通過するタンカーは激減し、湾岸諸国を航行する船舶の保険料はわずか1週間で400%も急騰しました。イラン側は、今後アメリカによる船舶の拿捕などが続けば、さらなる報復措置に出ることを示唆しています。もしサウジアラビアやアラブ首長国連邦の石油パイプラインが攻撃され、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)がバブ・エル・マンデブ海峡を完全に封鎖すれば、世界の石油供給の約32%が瞬時に消失することになります。

現在、世界のエネルギー市場は停止寸前の状態にあります。封鎖の影響を避けるために喜望峰回りのルートを選択すれば、輸送期間は2週間延び、コストは跳ね上がります。また、アメリカの封鎖戦略はイランだけでなく、ロシアや中国を含むグローバル・サウス諸国全体に向けられた「世界規模の海上封鎖」へと拡大しつつあります。沈黙を守っている中国も、自国のエネルギー安保を守るために西アジアへ艦隊を派遣せざるを得ない局面が近づいています。もはや現状維持は不可能であり、アメリカの強硬策がこのまま続けば、世界規模の経済破綻を招くことは避けられないという非常に厳しい見通しが示されています。

寸断される原油供給

A Tale of Two Ceasefires - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】現在のグローバルな石油市場をめぐる状況は、まさに「虚偽の平和」と「差し迫った破綻」が同居する、極めて不透明なものとなっています。トランプ大統領は最近、イランとの無期限の停戦延長を発表しました。これは「提案が提出され、協議が何らかの形で決着するまで」攻撃を控えるという、期限のない約束です。しかし、この握手は誰からも信頼されておらず、事実、発表からわずか数時間後には、イラン海軍がホルムズ海峡で船舶を拿捕し、別の船に発砲するという事態が発生しました。

現在、わずか21マイルの幅しかないホルムズ海峡には、二つの封鎖線が並立しています。一つは4月にトランプ大統領が命じた米海軍による封鎖、もう一つはイランによる封鎖です。米軍は警告を無視して航行を続けようとする貨物船のエンジンルームを砲撃して無力化し、一方でイラン側も独自の「通行料」を支払わない船舶に警告なしで発砲するなど、実力行使に出ています。これを米国は封鎖執行と呼び、イランは海賊行為と呼んでいます。停戦という言葉とは裏腹に、現地では両者が実際に船を奪い合い、砲火を交えるという「武装した静寂」が続いています。

この事態が長引くほど、石油危機の傷跡は深まります。現在、世界は史上最大規模の供給寸断に直面しています。イラクの生産量は60%以上減少し、クウェートやサウジアラビアも大幅な減産を余儀なくされています。これらは戦略的な減産ではなく、ホルムズ海峡が封鎖されて石油の行き場がなくなり、貯蔵施設が満杯になったことによる「強制的な閉鎖」です。一度閉鎖された油田を元の生産能力に戻すには数ヶ月の歳月が必要であり、たとえ海峡が今すぐ再開されたとしても、供給不足の解消には長い時間がかかります。

さらに、世界各地でこの混乱を模倣する動きが出始めています。インドネシアは、世界の貿易の約40%を担うマラッカ海峡において、イランの通行料システムをモデルにした規制や手数料の導入を検討し始めました。これは「自由な海」という幻想が崩れ、世界の海上交通の要所が武器化される時代の到来を予感させます。唯一の勝者は、封鎖に縛られず輸出を拡大できる米国の石油産業ですが、世界的な需要の減退や航空便の欠航、燃料規制などは、世界経済に重い影を落としています。石油価格は「より高く、より長く」維持される見通しであり、危機の出口は見えていません。

欧州、原発回帰の兆し

Atom's Eve in Europe | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】「危機を無駄にするな」という言葉通り、現在の深刻な状況がようやく欧州に建設的な変化をもたらそうとしています。過去30年間、欧州は原子力発電を「厄介者」として扱ってきました。フランスは耐え忍び、ドイツは追放し、イタリアは禁止しました。しかし、ホルムズ海峡にミサイルが飛び交う事態に直面し、欧州各国のエネルギー担当大臣たちは、必死に忘れようとしていた「原子」という言葉を突如として思い出したのです。

かつて欧州の電力の33%を担っていた原子力は、今や15%にまで半減しています。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長はこの状況を「戦略的ミス」と呼びました。2011年の福島第一原発事故後、当時のメルケル政権が下した脱原発の決断で、欧州はロシア産ガスやカタール産LNGに深く依存せざるを得ない状況に追い込まれました。そして今回のイラン危機によるガス価格の暴騰は、産業界と家庭に悲鳴を上げさせ、政治家に現実を直視させることになりました。現代経済は「希望と日光」だけでは動かせません。1月の極寒の深夜、風が止み太陽光パネルが雪に覆われても、安定してハミングし続ける「ベースロード電源」が必要なのです。

この分野で勝利を確信しているのがフランスです。電力の65%を原子力で賄う同国は、新たに6基の欧州加圧水型炉(EPR)の建設を進め、さらに8基の増設を視野に入れています。この動きは欧州全体に波及しており、ベルギーは原発の稼働期間を延長し、ポーランドは米国製原子炉の導入を決め、オランダやギリシャでも議論が進んでいます。欧州委員会も小型モジュール炉(SMR)の戦略を本格化させ、2030年代初頭の稼働を目指して多額の資金援助を表明しました。イタリアも2050年までの原発回帰を口にしていますが、実現にはまだ長い年月を要するでしょう。

真のエネルギー自立にはコストがかかります。しかし、ホルムズ海峡が封鎖されれば数時間で立ち往生するタンカーに頼るより、数年間は燃料交換が不要な原子炉に投資する方が、長期的には賢明な選択です。再生可能エネルギーは素晴らしいものですが、バックアップとしてガスに頼り続ける限り、他国の顔色を窺う状況からは抜け出せません。大人が計画を立て、政治的なリスクを排除したとき、エネルギー安全保障は初めて形になります。原子力はもはや「投資不適格」な対象ではなく、欧州の戦略的なインフラへと再定義されました。

ただし、楽観視は禁物です。欧州はいまだにロシア産のウラニウムや燃料サービスに依存しており、原発建設には常に予算超過や工期の遅れというリスクが付きまといます。現在建設中の原子炉が今年の夏を涼しくしてくれるわけではなく、原子力はあくまで2035年以降の電力価格を下支えする長期的な選択肢です。投資家にとって、原発を抱えるフランスの公益企業やSMR関連のエンジニアリング会社は魅力的な存在となりましたが、2026年の危機を即座に解決する魔法の杖ではないという冷徹な事実も、忘れてはなりません。

持続できない経済

How Much Further? in [Market-Ticker] [LINK]

【海外記事より】現在のレバレッジに依存した資産市場のゲームは、一体どこまで続くのでしょうか。消費者物価への明らかな影響や、一般市民の収入と生活コストの間に広がる絶望的な格差を考えれば、この問いは切実です。政府が短期金利を遥かに上回るペースで赤字支出を続けていることが、政権を問わずこの状況を加速させています。中央銀行の総裁たちは20年以上も「持続不可能だ」と言い続けてきましたが、連邦準備制度(FRB)は抜本的な対策を講じてきませんでした。しかし、真の責任はFRBではなく、2008年以降、こうした政策を要求し続けてきた議会にあります。

一般市民にとっての真の問題は、持続不可能なものはいつか必ず破綻するということです。住宅市場は多くの地域で事実上凍結しており、固定資産税や保険料の高騰が追い打ちをかけています。さらに、かつて安泰と思われていたコンピュータサイエンスや医療などの専門職も、人工知能(AI)や外国人労働者の流入によって将来の収益力が脅かされています。高い年収を前提にレバレッジを効かせた生活を送っていた人々が、突然の解雇で収入が激減し、深刻な窮地に陥る事例が相次いでいます。こうした個人の脆弱性が高まる中で、国家規模の赤字支出はさらに膨らみ続けています。

納税の日(4月15日)を迎え、改めて現状を直視する必要があります。トランプ政権はイランとの戦争を背景に、国防費をほぼ倍増させ、GDPの2%に相当する新たな赤字支出を提案しました。これに加えて、今会計年度のメディケアやメディケアなどの社会保障費はすでに約1.3兆ドルに達し、通年では個人の所得税収の総額を超える2.6兆ドルに及ぶ見通しです。さらに、利払い費用だけで社会保障費の約半分に相当する6,200億ドル以上に膨れ上がっています。議会がFRBに対して引き締めを強く要求しないのは、そうすれば増税か歳出削減という、政治的に痛みを伴う選択を迫られるからです。

結局のところ、抑え込まれているはずの利払いコストは、高い生活費という形で国民に強制的に転嫁されています。剰余資金を市場に投じる余裕のない一般市民が、この強制的なコスト上昇を上回る利益を出し続けることは数学的に不可能です。この状況で利益を得られるのは、全所得を投資に回せる富裕層や、破綻の兆候をいち早く察知して逃げ出せる立場の人々に限られます。市場は、戦争や巨額の支出が不況を招かないという楽観的な賭けを続けていますが、それは極めて危険な賭けです。2008年以来、目先の利益に慣らされてきた投資家たちが、次に投げ与えられる餌が「毒」であることに気づく日は、そう遠くないのかもしれません。

米、デフォルトに現実味

Get Ready for Another US Government Default | James Turk Blog [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府は今、自らの約束を再び破る「デフォルト(債務不履行)」という財政的な転換点に向かって突き進んでいます。かつてのアメリカは、憲法に基づき通貨を金や銀と結びつけることで、無制限なドルの発行を抑制してきました。しかし、こうした健全な規律を放棄して不換紙幣制度に移行した結果、政府は身の丈を超えた支出を続け、その穴を借金で埋めるという悪循環に陥っています。1971年に1オンス35ドルだった金価格が現在約4,800ドルに達している事実は、ドルの購買力がどれほど低下したかを如実に物語っています。

現在の深刻な状況を理解するためには、政府が公表する見かけの数字に惑わされないことが重要です。政府は「純利息」という数字を用いて利払い負担を少なく見せていますが、社会保障基金などへの支払いを含む「総利息」で見れば、その負担は遥かに巨額です。2025年度の実際の利払い費用は1.2兆ドルを超えており、これは政府収入の約23%に達しています。また、公表されている予算赤字と、実際に増えた債務残高の間には大きな乖離があり、真の赤字額は公表値よりも約4,000億ドルも多い2.1兆ドル以上にのぼります。

筆者が提唱する「支払不能比率(総利息÷総収入)」が30%を超えると、経済はもはや負債を維持できなくなり、歴史的に通貨や経済の危機が引き起こされてきました。現在この比率は上昇を続けており、2027年にはその警戒ラインである30%に到達する可能性があります。特にイラン紛争などによる石油価格のショックが重なれば、インフレと金利上昇が加速し、利払い費が防衛費や社会保障費を飲み込む「スタグフレーション・ショック」が現実味を帯びてきます。一度この連鎖が始まれば、政府には支払いをあきらめるか、通貨を大量に刷って価値を暴落させるかの二択しか残されません。

連邦準備制度(FRB)による金利操作や国債の買い支えは、問題を先送りしているに過ぎず、ドルの価値下落という代償を伴います。無秩序な支出を抑制できない政治状況を鑑みれば、通貨制度の崩壊という最悪の事態はもはや避けることができません。こうした歴史的な転換点において、紙の約束に過ぎない通貨や証券はデフォルトの対象となります。個人の資産を守るためには、1933年や1965年のデフォルト時と同様、政府の都合で価値を操作できない物理的な金や銀を保有することが、今、かつてないほど重要になっていると結んでいます。

金、ブロックチェーン技術で進化

The Dead Asset Wakes Up as Crypto Magic Makes Gold Pay Interest [LINK]

【海外記事より】最近の金価格の下落は、ドルの短期的な資金調達圧力によるものであり、金本来の価値を支える要因が変化したわけではありません。各国の準備資産を分散させるという構造的な需要は依然として根強く、さらに暗号資産の技術を用いた「トークン化」という新たな流通経路が、金の需要層を世界的に広げています。足元の金価格の弱含みは、急騰するエネルギー需要や債務支払いのために、市場参加者が追加のドル流動性を求めている「ペトロダラーの資金不足」が引き起こした一時的な現象であると考えられます。

現在、金市場には二つの大きな圧力がかかっています。一つは実質金利の上昇です。中東での対立激化によってエネルギー価格が高騰し、インフレ懸念が再燃したことで米国の長期金利が上昇しました。金は利息を生まない資産であるため、リスクのない債権の利回りが上がると、金を持つ機会費用が増大し、資金が流出するというのがこれまでの定石でした。しかし、この関係性は2022年以降、弱まっています。米国の財政赤字や地政学的リスクへの備えとして、各国の中央銀行が金を購入し続けているため、金利上昇局面でも金価格が支えられる傾向が続いてきました。

もう一つの大きな要因が、世界的なドル資金の枯渇です。日本や中国、欧州といった石油輸入国は、世界全体の原油の約70%を購入しています。今回の衝突を受けて石油価格が40%以上も跳ね上がったことで、同じ量のエネルギーを確保するために必要なドルのコストが急増しました。エネルギー輸入は先送りができず、また国境を越えた債務の多くがドル建てであるため、各国は支払いのために急速にドルを確保しなければならなくなりました。こうした「ドルへの需要ショック」が、換金性の高い金に対する一時的な売り圧力となっているのです。

しかし、こうした短期的な混乱の裏で、金は新たな進化を遂げています。それが、ブロックチェーン技術を活用して金をトークン化し、暗号資産のように扱う手法です。これにより、これまで金市場にアクセスしにくかった新興国の50億人以上の人々が、資産保存の手段として金を持てるようになります。また、デジタル化された金は分散型金融(DeFi)を通じて運用が可能になり、「利息を生む金」としての側面を持ち始めています。中央銀行による根強い需要と、デジタルの魔法による新たな市場の拡大は、一時的な価格の変動を超えて、金の長期的な価値をさらに強固なものにすると期待されています。

不換紙幣と文明の衰退

Fiat Money and the Decline of Civilization [LINK]

【海外記事より】不換紙幣(フィアットマネー)制度の下では、通貨価値が絶えず下落し、人々の購買力は月を追うごとに失われていきます。政府の視点に立てば、これは単なる欠陥ではなく、税収を超えた支出を可能にするための「仕様」です。中央銀行である連邦準備制度(FRB)は、いわば巨大な政府を動かすエンジンとなっています。しかし、この制度がもたらす害悪は経済的なものに留まりません。経済学者のサイファディーン・アモウズ氏は、不換紙幣制度が社会に「高い時間選好」という深刻な負の影響を及ぼしていると説いています。

時間選好とは、現在の消費と将来の消費のどちらを重視するかを示す経済用語です。健全な通貨制度の下では、人々は将来に備えて貯蓄し、目先の満足を後回しにする「低い時間選好」を持ちますが、通貨が減価し続ける制度下では「明日には価値が下がるのだから、今使ってしまおう」という「高い時間選好」が支配的になります。こうした刹那的な思考は、社会のあらゆる側面に浸透し、文明の衰退を招きます。例えば家族形成は究極の「低い時間選好」に基づく行為ですが、通貨下落による生活の圧迫は、若者から将来への投資意欲を奪い、少子化を加速させます。建築においても、数世紀続く美しさよりも、短期的な収益を優先した使い捨ての構造物が溢れるようになります。

食生活や科学の分野でも劣化が進みます。政府の助成金や歪んだインセンティブにより、土壌は疲弊し、栄養価の高い食品は安価で不健康な加工食品に取って代わられます。科学研究も、長期的な真理の探究より、政府の助成金を得るための煽情的な予測や政治的意図に沿った研究が優先されるようになります。教育についても同様で、多額の負債を抱えながら市場価値のない学位を乱発する「借金工場」と化し、真のスキル習得が疎かになっています。さらに、不換紙幣制度は政府に無限に近い戦費の調達を可能にさせるため、納税者の反発を回避したまま終わりのない戦争を継続させる一因にもなっています。

市場の機能も著しく歪められています。政府は特定の「クリーンエネルギー」部門に巨額の補助金を出すなどして、政治的判断に基づいて勝者と敗者を恣意的に選別しています。これにより、本来市場で起こるべき技術革新が妨げられ、資源の浪費を招いています。不換紙幣は単なる経済の問題ではなく、社会のあり方そのものを変質させてしまいます。私たちが文明の質を維持し、健全な社会を取り戻すためには、価値が安定した「健全な通貨」が必要不可欠であるというのが、この記事の筆者たちの共通した主張です。

イラン戦争と米覇権の崩壊

Why Iran war is the surest sign that the US is in decline | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】アメリカが展開する対イラン軍事作戦は、中国の識者や官営メディアの間で、ワシントンによる無敵の覇権が崩壊しつつある決定的な証拠であるとの見方を強めています。人民日報は最近の論評において、かつては国際的なルールの構築者として振る舞っていたアメリカが、今や自国の利益のみを追求する捕食的な覇権国家へと変貌したと厳しく批判しました。この記事によれば、冷戦後のアメリカは表面上こそ責任ある国際社会の一員を装ってきましたが、現在ではその仮面を脱ぎ捨て、自らの支配を維持するために野蛮な弱肉強食の論理に頼る「ルールの破壊者」に成り下がったと指摘されています。

こうした見方は中国国内の多くの専門家に共有されており、アメリカの無謀な行動が同盟国を遠ざけ、国際的な信頼を失墜させているとの分析が相次いでいます。ハーバード大学のスティーヴン・ウォルト教授も、アメリカがその地位を悪用して他国に経済的譲歩を強いる戦略をとっていると批判していますが、中国のような競争相手が存在する多極化した世界では、各国がアメリカへの依存を減らす選択肢を持つため、こうした強硬策はもはや通用しにくくなっています。特にトランプ政権の復帰以降、パナマやベネズエラに対する強圧的な介入や、2月に始まったイスラエルとの共同によるイラン攻撃は、世界に深刻な不安定感をもたらしました。

イランとの戦争は当初の目的に反して泥沼化し、アメリカにとって多大なコストを強いる膠着状態に陥っています。イラン側によるホルムズ海峡での非対称な抵抗策は、世界のエネルギー価格を急騰させ、アメリカ国内でも国民の不満を増大させています。中国の専門家たちは、NATOの主要な同盟国がこの軍事行動への支持を拒否していることや、戦場での苦戦、そして高騰する戦費をアメリカの衰退を示す具体的な兆候として挙げています。かつては鉄の盾と見なされていた中東の米軍基地が、今では報復の標的となっており、湾岸諸国の間ではアメリカの安全保障に依存することが自国の首を絞めることになりかねないという疑念が広がっています。

ワシントンが戦略的資源や貿易ルートの支配を狙って始めたこの戦争は、結果として同盟関係を歪め、支配的な大国としての信頼を根本から揺るがすことになりました。中国の学術機関の分析によれば、今回の軍事作戦は民主的な監視を欠いたまま決定されており、アメリカ国内のシステム上の機能不全を露呈させるとともに、国民の離反を招いています。かつての超大国としての地位がかつてない危機に瀕しているというのが、現在の中国側による一貫した評価です。このように、イラン情勢を巡る一連の混乱は、単なる局地的な紛争に留まらず、アメリカを中心とした世界秩序の終焉を予感させる出来事として捉えられています。

世界経済、混乱広がる

Middle East war fallout hits consumers worldwide — RT Business News [LINK]

【海外記事より】アメリカとイスラエルによる対イラン戦争の余波が世界経済に広がっています。エネルギー供給の混乱や、ホルムズ海峡という重要な海上交通路に関連する輸送ルートの寸断が世界市場に波及しており、多くの企業がコストの上昇や需要の減退に警鐘を鳴らしています。物流コストや原材料費の高騰によって、これまでの貿易の流れが変化し、最終的に消費者がその影響を吸収せざるを得ない状況にあります。ロイター通信の調査によれば、戦争開始以来、世界全体で20社以上の企業が財務見通しを引き下げ、30社以上が製品価格の値上げを示唆しています。経営者たちは、輸送費の増大や石油関連原材料の値上がり、そしてホルムズ海峡の不確実性が大きな圧力になっていると指摘しています。

製造業では石油ベースの材料や輸送費の負担が増しており、3Mなどの大手企業は、原油価格の上昇が製品価格を押し上げる可能性があると警告しています。また、旅行業界への打撃は特に深刻です。ドイツの観光大手TUIは不透明な先行きの影響で業績見通しを下方修正し、ユナイテッド航空やルフトハンザ航空も燃料費の高騰により利益の減少や大幅な減便を余儀なくされています。物流の混乱は食料品にも及んでおり、フランスのダノンでは乳児用粉ミルクの出荷に支障が出ており、一時的な品不足や価格上昇の可能性が報じられています。世界最大のコンドームメーカーであるマレーシアのカレックス社は、原材料費の上昇と配送時間の倍増を理由に、20%から30%の値上げに踏み切る方針を明らかにしました。

一方で、貿易ルートの変更により、意外な場所で需要が急増しています。中東を避ける動きからパナマ運河の利用が集中し、通航枠のオークション価格が以前の約14万ドルから、時には100万ドル以上にまで跳ね上がっています。また、アジアへのエネルギー供給の要であるマラッカ海峡にも注目が集まっています。しかし、こうした物流の変動は全体として家計を圧迫しており、国際通貨基金(IMF)はエネルギー価格の上昇を理由に世界経済の成長見通しを下方修正しました。欧州ではエネルギー輸入費用が急増し、家計や企業の間で太陽光発電への関心が高まっています。アメリカでも燃料価格の高騰により、消費者は旅行を控えたり、電気自動車への転換を検討したりするなど、生活スタイルの変化を余儀なくされています。経済の混乱が長期化すれば、世界経済はさらに厳しい局面を迎えると予想されています。

2026-04-23

世界支える中国の町

Inside Tesla’s hidden supply chain: how a Chinese town shapes the modern world | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】テスラをはじめとする世界の製造業を陰で支えているのは、中国浙江省台州市にある「黄岩(こうがん)」という小さな工業地帯です。一般にはあまり知られていないこの町は、プラスチック金型と成形技術に特化しており、現代の製造業の心臓部とも言える役割を担っています。自動車の内装材からリモコン、キーボード、化粧品のパッケージに至るまで、私たちの身の回りにある多くの製品が、この地の工場で形作られています。

特に電気自動車(EV)分野において、黄岩の存在感は圧倒的です。テスラの上海工場で生産される車両に使用されるプラスチック部品の3分の1以上が、同地区の企業との提携によって製造されています。ダッシュボードやコンソール、バンパー、バッテリーハウジングなど、主要なプラスチック部品の多くがここから供給されており、現地の工場主は「もし黄岩の生産が長期的に止まれば、イーロン・マスク氏も深刻な事態に直面するだろう」と語っています。その影響は上海だけでなく、ドイツのベルリン工場にも及んでおり、紅海での物流混乱が起きた際には、中国からの部品供給が滞りドイツ工場の稼働停止を余儀なくされた例もあります。

黄岩の強みは、設計から材料調達、精密加工までが一つのエコシステムとして完結している点にあります。人口の7分の1にあたる10万人以上が金型・プラスチック産業に従事し、4,000を超える企業が密集しています。ある工場で解決できない課題があれば、隣や向かいの工場が解決策を提示できるほどの密度とスピードを誇っており、専門家は「この効率的な集積地を他国で模倣することは極めて困難だ」と分析しています。この圧倒的な規模と柔軟性が、米国のクライアントが求める厳しい納期や大量発注を支える基盤となっています。

一方で、この供給網は海外技術とも深く結びついています。黄岩の工場では、日本やドイツ、スイスなどの超精密機器や特殊鋼が不可欠であり、世界の製造業は相互依存の状態にあります。中国が規模と効率を提供し、海外諸国が先端技術を提供するというこの関係は、昨今の「デカップリング(切り離し)」の議論がいかに現実と乖離しているかを物語っています。黄岩の事例は、中国の小さな町が、現代の私たちの生活水準やハイテク製品の普及をいかに深く、そして不可欠な形で形作っているかを浮き彫りにしています。

燃料危機、欧州の空直撃

Fight or flight: How the global jet fuel crisis could ground you — RT World News [LINK]

【海外記事より】アメリカ・イスラエルとイランの紛争により、世界のエネルギー航路の要衝であるホルムズ海峡が封鎖され、深刻なジェット燃料危機が欧州の夏休みを直撃しています。ルフトハンザ航空が燃料節約のために10月までに2万便の欠航を決定したほか、KLMやライアンエアーなど欧州主要各社も相次いで減便を発表しました。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、これが「史上最悪のエネルギー危機」になる可能性を警告しており、欧州の空は混乱の渦中にあります。

この危機の背景には、欧州の航空業界が抱える構造的な脆弱性があります。欧州で使用されるジェット燃料の約75%は中東からの輸入に依存しており、その輸送ルートが遮断されたことで供給が極端に引き締まりました。ジェット燃料は原油から精製される割合が10%程度と低く、需要に合わせて急増させることが難しい特性を持っています。2月28日の開戦以来、燃料価格は約2倍に跳ね上がり、航空各社は運賃の値上げや燃油サーチャージの導入、手荷物料金の引き上げなどでコストを乗客に転嫁せざるを得ない状況です。

旅客機が消費する燃料の量は膨大です。ボーイング737などの一般的な中型機でも1時間に約2,500から3,000リットルを消費します。これは、空港で見かける大型タンクローリー1台分の燃料を、わずか10時間程度の飛行で使い果たしてしまう計算になります。こうしたコストの急騰と供給不安を受け、旅行者の間では「飛行機の不確実性」を嫌い、海外旅行を控えて国内で休暇を過ごす動きが広がっています。欧州最大の旅行会社TUIによれば、出発直前まで予約を控える慎重な姿勢が顕著になっているとのことです。

欧州連合(EU)の輸送担当委員は、各国の燃料備蓄を共有する緊急対策を検討しており、米国など代替の供給源からの輸入も模索されています。トランプ大統領はイランとの停戦期間を延長したものの、海上封鎖は継続する方針を崩しておらず、物流の正常化は見通せません。専門家によれば、仮に今すぐ海峡の通航が完全に再開されたとしても、混乱した供給網が正常に戻るには少なくとも7月まではかかると見られており、今年の夏のバカンスシーズンに影を落とすことは避けられない見通しです。

ドバイの幻想

The myth of Emirati neutrality [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦(UAE)、特にドバイは、紛争の砂漠の中に浮かぶ「穏やかなオアシス」という幻想を長年振りまいてきましたが、その実態は「中立」とは程遠いものであるとこの記事は指摘しています。UAEの統治者たちは自国を「アラブのスイス」になぞらえ、秘密性の高い金融業や多くの外国人労働者を受け入れることで経済的な成功を収めてきました。しかし、外交面においてはスイスのような徹底した中立を貫くどころか、地域各地の紛争に深く介入し、膨大な数の敵を作り出しています。現在、自国領土が攻撃にさらされている状況は、これまで海外で撒き散らしてきた火種の報いであると言えるかもしれません。

1971年に英国の保護下から独立したUAEは、アブダビとドバイという二つの富裕な首長国によって実質的に支配されています。ドバイ政府系企業のDPワールドが世界最大級の港湾オペレーターであるように、この国では「私企業」と「国家」の境界線は事実上のフィクションです。オイルマネーによって築かれたドバイは、世界最高の超高層ビルや人工島を誇る国際都市となりましたが、人口の大部分は南アジアなどからの外国人労働者によって占められています。彼らの送金は母国の経済を支える一方で、UAE国内では自由民主主義とは無縁の厳格な統治下に置かれています。

UAEの「中立」という神話が崩れる最大の要因は、アメリカとの軍事同盟と地域紛争への積極的な介入です。UAEはアメリカの条約同盟国としてアル・ダフラ空軍基地を維持し、ドバイのジェベル・アリ港は米海軍にとって中東最大の寄港地となっています。さらに、2011年のリビア介入を皮切りに、シリア、スーダン、ソマリア、そしてイエメンでの戦争に至るまで、UAEは自国の「戦略的深み」や「資源へのアクセス」を求めて軍事・政治的に深く関与してきました。こうした多動的な外交政策は、かつては対岸の火事であった紛争の火の粉を、自国の領土へと呼び寄せる結果を招いています。

特にアブラハム合意によるイスラエルとの関係樹立や、ムスリム同胞団をテロ組織と見なして敵視する姿勢は、イスラム世界や反シオニストからの反感を買っています。首長たちが真に恐れているのは宗教的イデオロギーそのものではなく、自らの封建的で個人的な統治体制を脅かす「現代的な政治運動」です。トランプ政権のように予測不能な同盟国を後ろ盾に、際限のない富で影響力を買おうとするドバイ・モデルは、今や限界に達しつつあります。テロのリスクが高まり、自国領土への攻撃が現実のものとなる中で、金で安全を買い、中立を装いながら紛争に加担し続ける手法が、国の未来を破壊しようとしていると著者は締めくくっています。

自由主義経済とナショナリズム

Peaceful Nationalism as a Foundation for Economic Liberalism - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】自由主義経済とナショナリズムは、一見すると対立する概念のように思われます。特に自由な労働移動を求める経済的合理性と、国境管理を重視する国民意識の衝突は、現代の移民政策を巡る議論においても大きな焦点となっています。この記事は、オーストリア学派の経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの著書『国民、国家、経済』を紐解き、これら二つの概念が「平和的なナショナリズム」という形であれば、実は互いに補完し合い、自由の強固な基盤となり得ることを解説しています。

ミーゼスによれば、自由主義と両立し得るナショナリズムとは、軍事的な帝国主義とは明確に区別される「リベラル・ナショナリズム」です。それは個人の自己決定権を基礎としており、他国を侵略するためではなく、専制的な支配から自らの自由を守るための盾として機能します。歴史的に、独裁的な統治者は国民同士の連帯を嫌い、忠誠心を支配者個人にのみ向けさせようとしますが、国民が互いに強い絆と誇りを持つことは、こうした暴政に対する強力な防波堤となります。つまり、真のナショナリズムの刃は他国民ではなく、常に専制君主に向けられているのです。

また、この記事は「国家(ステート)」と「国民(ネーション)」を混同してはならないと強調しています。ミーゼスの擁護するナショナリズムは、決して国家権力の拡大を意味するものではありません。例えば、自由貿易を促進するために法体系を統一する際、それが欧州連合(EU)に見られるような中央集権的な強制によるものであれば、それは自由主義の理念に反します。国民の合意なしに強制される「共通市場」は、むしろ国家間の不和を招く原因となります。真の自由貿易と平和は、各国民が自らの文化と歴史を誇りに思い、それを尊重し合う自発的な合意の上でこそ成立します。

結論として、平和的なナショナリズムは「世界市民」としての視点や経済的自由主義と決して矛盾しません。むしろ、自らの自由を愛する国民は、同様に他国の自由も尊重し、共通の経済的利益のために協力し合うことができるからです。すべての国民が自由を手に入れ、個人の権利が保障された社会において、もはや戦争の根拠は存在しなくなります。ナショナリズムを専制に対する抵抗の力として再定義することで、それは閉鎖的な排外主義ではなく、世界平和と繁栄を支える「自由の守護神」としての役割を果たすことができるのです。

国民皆兵説く「死の商人」

Palantir CEO Calls for Draft to Fight the Empire’s Wars - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカの軍事・情報関連技術を担うパランティア社の最高経営責任者、アレックス・カープ氏が、その著書やSNSを通じて、志願兵制度から国民皆兵制度への転換を検討すべきだと主張し、大きな物議を醸しています。カープ氏は、2026年4月に発表したマニフェストの中で、国家奉仕は国民共通の義務であるべきだと述べ、誰もが戦争のリスクとコストを分かち合うべきだと提言しました。この記事は、こうした徴兵制の提唱が、国防総省やCIAといった国家安全保障体制と深く結びついた巨大企業にとって、いかに自社の利益にかなうものであるかを批判的な視点で分析しています。

パランティア社は、AIを活用した戦場情報システム「プロジェクト・メイヴェン」を設計し、イラクやシリア、イエメンでの攻撃支援に活用されています。最近ではイランに対する空爆においても、このAIシステムが数千もの標的を特定し、優先順位を付けるために利用されたと報じられています。こうした技術は「キルチェーン」、すなわち標的の特定から殺害に至るまでのプロセスを劇的に短縮させるものであり、イスラエルによるガザへの軍事行動においても、同社のデータ分析ツールが深く関与しているとされています。カープ氏は、イスラエルの戦争努力を全面的に支援していることを誇りに思うと公言しており、そこにはAIを用いた効率的な殺傷能力の提供が含まれています。

著者のカート・ニモ氏によれば、カープ氏が説く「西洋への奉仕」という概念には、個人の意思に反して戦場へ送り出す強制徴用が含まれており、これは自由を尊ぶべき技術先進国の理念とは相容れない「テクノ・ファシズム」とも呼ぶべき実態です。シリコンバレーの有力企業が国家と結託し、政府の資金や契約を通じて自らの影響力を拡大させる姿は、かつての第一次世界大戦時に莫大な利益を上げた「死の商人」の現代版であると厳しく指摘されています。カープ氏が売っているのは銃や弾薬ではなく、AIを通じて数千、数百万の人々をコンピューターの速さと効率で殺害することを可能にする技術であるというわけです。

この記事を執筆したニモ氏は、パランティア社のAIが関与したとされる空爆によって、イランの小学校で多くの子供たちが犠牲になった事例を挙げ、テクノロジーがもたらす惨劇に警鐘を鳴らしています。トランプ大統領は同社の戦争遂行能力を称賛していますが、投資家との通話で笑顔を浮かべながら「時に敵を殺害する」と語るカープ氏の姿勢は、一部のメディアから「不気味なCEO」として批判されています。民間企業が国家の暴力装置と一体化し、国民に徴兵の義務を説く現在の状況は、西洋の民主主義社会が直面している深刻な変容を象徴していると言えるでしょう。

米中レアアース戦争

Forget Iran, China is Next - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】2010年、日本は尖閣諸島付近で中国漁船の船長を拘束しましたが、それに対する中国の返答は、日本へのレアアース輸出を全面的に停止するというものでした。この「レアアースの武器化」により、日本のメーカーは生産ラインの停滞と価格高騰に直面し、供給網の多角化を余儀なくされました。この記事は、かつて日本が経験したこの危機が、今やアメリカにとっても現実の脅威となっていると警鐘を鳴らしています。中国は現在、世界のレアアース採掘の70%、加工・精製においては最大90%を支配しており、特にF-35戦闘機や電気自動車の高性能磁石に不可欠なジスプロシウムやテルビウムの分離に関しては、事実上100%の独占状態にあります。

2025年、中国はアメリカによる関税措置への報復として、主要な重要鉱物7種の輸出を制限しました。これによりアメリカの自動車メーカーや国防関連企業が資源確保に苦慮し、供給網の脆弱性が露呈しました。これを受けてトランプ政権は、二度と同じ事態を繰り返さないよう「プロジェクト・ヴォルト(Project Vault)」を2026年2月に始動させました。これは120億ドルを投じた民間向けの戦略的鉱物備蓄計画であり、レアアースだけでなく、リチウムやウラン、銅、コバルトなど50種類以上の重要鉱物を網羅しています。この備蓄は単なる在庫確保に留まらず、国内生産を経済的に成立させるための需要保証としての役割も担っています。

さらに、アメリカ政府は「冷戦時代の戦略」を彷彿とさせる強力な産業政策を展開しています。従来の補助金制度を超えて、鉱業企業への直接的な出資に乗り出しました。2025年7月には、米国内で唯一稼働しているレアアース鉱山を運営するMPマテリアルズ社に対し、国防総省が4億ドルを投じて15%の株式を取得しました。また、テキサス州で精製施設を建設中のUSAレアアース社に対しても、商務省が10%の出資を行っています。政府が株主となることで、取締役会の監視権や重要決定への拒絶権を持ち、国家戦略に基づいた企業運営を直接支える体制を構築しています。

こうした動きを支えるのが、採掘許可プロセスの劇的な迅速化です。アメリカでは通常7年から10年かかっていた鉱山の認可期間を、大統領令によって週単位にまで短縮する試みが始まっています。アリゾナ州のレゾリューション・カッパー・プロジェクトなどはその象徴であり、長年の規制の停滞を打破して承認が進められました。著者は、中国が30年かけて築き上げた独占体制を、アメリカがわずか5年で再構築しようとしている現在の状況を「国家安全保障上の緊急事態」と位置づけています。次の危機は漁船ではなく、台湾を巡って起こる可能性が高く、その際にレアアースは21世紀の石油に匹敵する戦略物資になると予測されています。

銅は印刷できない

You Can’t Print Copper! | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】「銅は印刷することができない」という刺激的な事実から始まるこの記事は、今後10年で訪れるであろう鉱業セクターの強気相場について、専門的な見地から解説しています。過去15年間、鉱業は株式市場において極めて不遇な時期を過ごしてきました。S&P500指数が鉱業株指数を500%も上回るパフォーマンスを見せる中で、投資家からの資本はテクノロジー分野や再生可能エネルギーへと流れ、鉱業は深刻な「資本不足」に陥りました。企業は投資家を繋ぎ止めるために、本来なら新規探査や開発に向けるべき資金を自社株買いや配当に充てざるを得ず、これが将来の供給不足を招く要因となっています。

鉱山は有限な資源であり、一度掘り尽くせば新しい鉱山を見つけなければなりません。しかし、長年にわたる過少投資により、新たなプロジェクトのパイプラインは極めて不十分な状態にあります。さらに、地表近くにある高品質で採掘しやすい鉱床はすでに掘り尽くされており、現在はより深い場所を高度な技術を用いて探査する必要があります。これには莫大なコストと高いリスクが伴い、投資家から資金を引き出すことを困難にしています。開発の現場でも、大型プロジェクトの多くが予算超過や大幅な遅延に直面しており、新規鉱山の稼働までにかかる平均期間は、かつての12.7年から現在は17.9年へと長期化しています。

こうした「低価格がさらなる供給不足を呼び、結果として価格を高騰させる」という循環が、今まさに起ころうとしています。パンデミック後の経済回復やエネルギー転換の加速により需要が急増する一方で、供給が追いつかない現状が浮き彫りになっています。今後数年で不足が予想される資源には、銅、グラファイト、リチウム、ニッケル、さらにはネオジムなどのレアアースやコバルトが含まれます。これらは現代のテクノロジーやグリーンエネルギーに不可欠な素材ですが、通貨のように中央銀行が増刷して増やすことは不可能です。

世界的なコンサルティング会社の推計によれば、予測される需要を満たすためには、鉱業分野に4.7兆ドルという天文学的な投資が必要とされています。現在のボトルネックは地中の資源そのものではなく、それを掘り出すための「資金」が決定的に不足していることです。投資家の財布を開き、必要な投資を促すためには、資源価格は現在よりもはるかに高い水準まで上昇する必要があると著者は指摘しています。過去10年の投資戦略に固執し、このセクターへの配分を怠れば、今後訪れる巨大なサイクルを逃すことになると警鐘を鳴らしています。

米国債、需要崩壊の危機

Ex-Treasury Secretary Paulson Urges Emergency Plan for US Treasury Market Crash | CoinMarketCap [LINK]

【海外記事より】元アメリカ財務長官のヘンリー・ポールソン氏が、米国債市場の需要崩壊という事態に備え、当局に対して緊急時の対応計画を策定するよう呼びかけました。ブルームバーグの取材に応じたポールソン氏は、危機が現実のものとなればその影響は極めて激しいものになると予測し、実際に問題が発生する前に「標的を絞った短期的な計画」を準備しておくべきだと述べています。現在、アメリカの連邦債務は39兆ドルを超えており、債務の増大が投資家による利回り上昇の要求を招き、それがさらに利払い負担を増やして財政赤字を拡大させるという、いわゆる「破滅のループ」への懸念が経済学者の間で長らく指摘されてきました。

もし財務省が利払いを賄うだけの資金を調達できなくなった場合、多くの専門家は連邦準備理事会、通称FRBが国債の主要な買い手として介入せざるを得なくなると予想しています。米国債市場は世界の社債や住宅ローン、株式などの価格決定の基準となっているため、この市場の不安定化はアメリカ国内に留まらず、世界経済全体に多大な影響を及ぼすことになります。また、こうした市場の混乱は暗号資産(仮想通貨)市場に対しても二面性の影響を与えると考えられています。一方で、債務を貨幣化するためのFRBによる介入がインフレ懸念を煽り、ドルへの信頼を損なうことになれば、ビットコインや金といった「代替的な価値の保存手段」へ投資家が流れる可能性があります。

しかし短期的には、利回りの急騰と世界的な流動性の低下が、暗号資産を含むリスク資産の売りを誘発する恐れがあります。特に、世界最大のステーブルコイン発行体であるテザー社は、その準備資産の63%を米国債で保有しており、米国債市場の混乱はステーブルコインの安定性を脅かすリスクを孕んでいます。もし信頼が失われ、裏付け資産を投げ売りせざるを得ない状況に陥れば、深刻な取り付け騒ぎやドルの価値との乖離を招く可能性があります。金融当局による国債の買い戻し操作などは流動性を改善させるための手段の一つですが、根本的な債務問題の解決には至っていません。

長期的には、米国債市場の危機は非政府系の価値保存手段への移行を加速させ、アメリカの債務やドルの覇権に対する信頼が揺らぐ中で、ビットコインを「デジタルゴールド」の代替案として位置づけることになるかもしれません。この記事の専門家は、最終的な結果が暗号資産市場にとってプラスに働くかどうかは、危機が限定的な範囲に留まるのか、あるいは広範なシステム全体の崩壊を引き起こすのかにかかっていると分析しています。ポールソン氏の警告は、世界で最も安全とされる資産が抱える深刻な不確実性を浮き彫りにしています。

どの金貨を買うべきか?

I Care Not Whether My Gold and Silver Are Government Minted Coins [LINK]

【海外記事より】貴金属販売の現場で顧客と接しているクリストファー・ラーセン氏は、米ドルの価値が損なわれた際に「実際に使える通貨」として、どのようなコインを購入すべきかという問いに対し、非常に本質的な視点を提示しています。多くの人々は政府が発行した「法定通貨」としての刻印があるコインを求めますが、著者は政府発行のコインにこだわらず、民間企業が製造する「ラウンド」と呼ばれる円形の地金やバーを選択肢に入れることを勧めています。その理由は、金や銀の価値は刻印された通貨単位にあるのではなく、そこに含まれる貴金属そのものの重さと純度にあるからです。著者は、金銀の製品を大きく三つのカテゴリーに分類して解説しています。

第一のカテゴリーは「地金型金貨・銀貨」です。これらは現代の政府発行コインで、カナダのメイプルリーフやアメリカのイーグルなどが代表例です。これらには「5ドル」や「50ドル」といった法定通貨としての額面が刻印されていますが、その額面はあくまで儀式的なものであり、実際の価値は含まれる金銀の市場価格を大きく下回ります。第二のカテゴリーは「スペシー」と呼ばれる歴史的な貨幣です。1933年以前の米国金貨や1965年以前の銀貨などがこれに当たります。これらはかつて実際に流通していた硬貨で、当時は刻印された額面と貴金属の含有価値が概ね一致していました。現在はアンティークや「ジャンクシルバー」として、その含有量に基づいた価値で取引されています。

そして第三のカテゴリーが、民間の精錬所などが製造する「ラウンド」や「バー」です。これらには「1ドル」といった政府の通貨単位は刻印されておらず、代わりに重量と純度のみが記されています。民間製品は政府発行のものに比べてプレミアムと呼ばれる手数料が低く抑えられており、より効率的に貴金属を保有できるという利点があります。たとえ政府の刻印がなくても、これらは価値のある商品として物々交換や取引に利用することが可能です。ラーセン氏は、ドルのような法定通貨の価値は、発行政府への信頼が続く期間だけの限定的なものに過ぎない一方で、金や銀の価値は永続的なものであると指摘しています。

結論として、著者は自分自身の資産形成において、政府発行のコインであるか民間製造の地金であるかを重視していません。最も重要なのは、通貨の額面という「外見」ではなく、その物体がどれだけの純度の金や銀を含んでいるかという「実体」です。経済が不安定になった際に真に頼りになるのは、政府が保証する数字ではなく、貴金属そのものが持つ普遍的な価値であるという考え方に基づいています。私たちは、コインを単なる「お金」として見るのではなく、特定の重さを持った「貴金属の塊」として捉えるべきだという、実務家らしい冷静な助言で締めくくられています。

経済ゆがめる金融政策

Interest Rate Manipulation: The Fed’s Fatal Feature [LINK]

【海外記事より】アメリカの連邦準備理事会、通称FRBは、2026年の最初の2回の方針決定会合において、政策金利を3.50%から3.75%の範囲で据え置きました。インフレ率が目標を上回り、労働市場が堅調を維持する中で、早期の利下げには慎重な姿勢を示しています。当局は今後の調整が経済データ次第であると強調していますが、この記事の著者であるアントン・チェンバレン氏は、こうした議論の前提にある「中央銀行による金利操作」そのものが抱える構造的な欠陥を指摘しています。一般的な見方では、利下げの判断は慎重さや信認の維持という観点から語られます。しかし、現在の経済が直面している苦境は、金利設定の是非によるものではなく、長年にわたる通貨操作によって経済の構造が歪められてしまった結果であると著者は分析しています。

2008年以降やパンデミック期に行われた人工的な低金利政策は、投資家に対して誤った信号を送りました。本来なら採算が合わないはずのプロジェクトが、安価な融資を背景に利益が出るように見えてしまい、資源が不適切に配分されたのです。インフレの急進を受けて中央銀行が金融引き締めに転じたことで、これらの投資の多くが不採算であったことが露呈しました。中央銀行は金利を経済全体を制御するためのダイヤルのように扱っていますが、実際には政治的な思惑に基づいた操作が行われており、それが持続可能な成長に必要な資源の再配分を妨げています。FRBは物価上昇を抑えるために高金利を維持するとしていますが、この記事は物価上昇を病気そのものではなく、通貨膨張という原因から生じる症状に過ぎないと捉えています。

真の問題は、信用拡大による通貨膨張が、人々の実際の貯蓄と投資判断との結びつきを断ち切ってしまったことにあります。一度この結びつきが壊れてしまうと、金利を高く設定しても低く設定しても、命令によって経済構造を修復することはできません。経済の回復に必要なのは、金利が市場で自然に決定される状態に戻り、資本が最も価値のある生産プロセスへ再配分されることです。景気後退を需要不足と捉えて金融緩和で支えようとすれば、生産性の低い分野に資源が固定されたままになり、実質賃金も回復しません。回復のためには過去の誤りを表面化させ、修正させる必要がありますが、金融政策はそのプロセスを加速させるどころか、むしろ干渉して遅らせてしまうのが現実です。

FRBが利下げの速度に悩んでいるのは、金利政策によって消費者の好みを反映した構造調整が可能であるという、誤った前提に基づいているからだと著者は述べます。介入を繰り返すほど市場は政策シグナルに依存するようになり、市場の現実から遠ざかっていきます。今求められているのは、金利を巧みに操ることではなく、金利操作そのものをやめる謙虚な姿勢です。今年のFRBによる慎重な対応は、根本的な制度上の問題の表れに過ぎません。最大の危惧は利下げのタイミングが早いか遅いかではなく、通貨管理に依存し続けることで必要な調整が無期限に先送りされ、真の経済成長が損なわれ続けることにあるのです。

2026-04-22

主流メディアの物語が崩壊

Hope in the Data: Can Palestine Explain America’s Moral Shift? - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカ国民の国際社会に対する視線が、かつてない道徳的な転換点を迎えています。長年、中東の人々の目に映るアメリカ人は、自国の地理の外にある現実に関心がなく、メディアが作り上げた単純な善悪の二元論に支配された、政治的に浅薄な存在として描かれてきました。事実、数十年の間、アメリカ国民はイスラエルが「アメリカ的価値観」を反映した民主主義国家であるという教えを疑わず、パレスチナ人を平和の障害と見なす主流メディアの物語を無批判に受け入れてきました。

しかし、近年この「物語の支配」が崩壊しつつあります。ギャラップ社の調査によれば、民主党支持者、特に若年層の間でパレスチナへの共感がイスラエルを上回る傾向が2010年代半ばから現れ始め、2024年から2025年にかけてその差は劇的になりました。さらに今年2月27日の調査では、アメリカの世論調査史上初めて、国民全体でパレスチナに共感する人が41%に達し、イスラエルの36%を逆転するという構造的な断絶が確認されました。

この変化の背景には、ガザにおける悲劇的な状況が、企業のフィルターを通した既存メディアではなく、SNSや独立したジャーナリズムを通じて直接視覚的に伝えられるようになったことがあります。2025年までにアメリカ国民の主流メディアに対する信頼度は31%という歴史的な低水準に落ち込み、若者の間ではさらに深刻です。国民はもはや、エリートたちが用意した筋書き通りに結論を出すことをやめ、権力の不均衡や市民の苦しみを基準にした、独自の道徳的判断を下し始めています。

主流メディアや政治家たちは、この変化を「戦争疲れ」や経済的不安といった文脈に矮小化しようとしていますが、実態はより深い認知的な変化です。パレスチナ問題は、アメリカ国民の意識変革における道徳的な羅針盤となっており、正義や抵抗、そして権力のあり方を再考する象徴となっています。メディアがいまだにアジェンダを設定する力は持っているものの、大規模に「合意を捏造」する能力はもはや失われており、この流れが逆転することはないと考えられています。

中国、東南アで影響力拡大へ

Opinion | Can Iran fiasco help China edge out US in key arena of Southeast Asia? | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】アメリカがイランに対して開始した「大規模戦闘作戦」は、東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるアメリカの地政学的な地位を揺るがし、中国がその影響力を拡大させる契機となっています。2月末にアメリカがイランへの攻撃を開始して以来、欧州の同盟国が相次いで距離を置く中で、戦略的に重要な東南アジアでも同様の現象が起きつつあります。ASEAN外相会議が発表した声明では、アメリカとイスラエルによる攻撃とそれに対するイランの報復の双方に「深刻な懸念」を表明しており、一部の同盟国を含め、加盟国がワシントン側に立つ意向がないことを示唆しています。

最新の意識調査によれば、米中二択の選択を迫られた場合、東南アジア全体では僅差で中国を支持する傾向が出ています。特にインドネシアでは80.1%が中国を選択しており、マレーシアやシンガポールでも中国支持が優勢です。ホルムズ海峡の封鎖によりエネルギー供給に大きな打撃を受けた地域諸国は、エネルギー源の多角化を急いでいます。インドネシアはロシアとのエネルギー協力を強化しており、アメリカの対露制裁下にあるにもかかわらず、フィリピンが5年ぶりにロシア産原油を輸入するなど、アメリカによる二次的制裁への恐れが抑止力として機能しなくなっています。

地域の人々にとって最大の懸念事項は、トランプ政権下のアメリカによるリーダーシップであり、ASEANが「大国間の競争の場」や「代理人」にされることへの警戒感が高まっています。一方で、中国は地域で最も影響力のある主体として認識されており、16年連続でASEAN最大の貿易相手国であるという地理的・経済的優位性を背景に、その存在感を強めています。アメリカのイランでの行動が「信頼できるパートナー」としての評判を損ねたことで、中国にとっては政治的な影響力を拡大する好機となっています。

ただし、中国がすぐにアメリカをこの地域から完全に追い出す段階にはありません。調査回答者の約66%が中国の政治的・戦略的な影響力の拡大に懸念を示しており、手放しで歓迎されているわけではないからです。中国が今後さらに地位を高めるためには、アメリカの失敗に乗じるだけでなく、自身のソフトパワーを磨く必要があります。最終的には、イランでの戦争の行方に加え、南シナ海において近隣諸国との対立を回避し、平和的な関係を構築できるかどうかが、この地域における米中の勢力均衡を左右することになりそうです。

砕かれる海洋ガス田の夢

Israel’s Lebanon occupation chokes Beirut’s offshore gas options — RT World News [LINK]

【海外記事より】イスラエルによるレバノン南部への新たな軍事侵攻と占領が、深刻なエネルギー不足に悩むレバノンにとって唯一の希望であった海洋ガス田開発の夢を打ち砕いています。イスラエル国防軍(IDF)は今月、レバノン南部に「前方防衛線エリア」と称する地図を公開しました。これは実質的な占領地であり、イスラエル当局者の一部は国家安全保障のためにこの地域の住民を排除する必要があると述べています。この主張領域は海域にも及び、レバノン領海のうち約9km幅の帯状の区域を切り取る形となっています。

2022年に米国の中介で合意に達したイスラエルとレバノンの海上境界線画定は、係争地に眠る天然ガス資源の開発を目的としたものでした。イスラエルが過去20年間で「レビアタン」や「カリシュ」といったガス田を次々と発見・開発し、経済的利益を享受しているのに対し、レバノンはいまだその恩恵を受けていません。レバノンは2022年の合意でカリシュガス田の一部への主張を断念する代わりに、カナ地区での探査権を得ましたが、これまでのところ期待された成果は上がっていませんでした。しかし今年1月、フランスのトタルエナジーを中心とする企業連合が、海岸からさらに離れた「第8ブロック」での新たな探査計画を発表し、再び期待が高まっていました。

レバノンの当時のエネルギー相は、海洋ガス資源が見つかれば同国の20年分に相当する電力を供給できると述べていましたが、現在の地政学的状況はこの展望を極めて困難にしています。トタルエナジーなどの欧州・カタールの企業連合による探査活動は、イスラエルによる海洋域の事実上の占領によって、実施される可能性が極めて低くなっています。境界線紛争によって詳細な地質データの収集が遅れていた海域において、ようやく本格的な調査が始まろうとした矢先の出来事でした。

レバノンは現在、3月初旬から続くイスラエルによる激しい攻撃によって、100万人以上の避難民が発生するという人道危機に直面しています。世界銀行の推計によれば、紛争開始から1年余りでレバノンが被った直接的な被害額は34億ドル、経済的損失は51億ドルに達しています。米国やイランが発表した停戦案を骨抜きにするかのようなイスラエルによる攻撃の激化は、レバノンから海洋資源という「希望の光」をも奪い去ろうとしています。中東におけるエネルギー貿易の構図が塗り替えられようとする中で、イスラエルはレバノンに資源開発の機会を与えない姿勢を鮮明にしています。

無能が招いた敗北

The Consequences of Incompetence - Real Scott Ritter [LINK]

【海外記事より】元国連査察官で軍事アナリストのスコット・リッター氏は、米国とイスラエルによるイランへの軍事作戦は事実上の「壊滅的な敗北」に終わったと分析しています。約40日間にわたる大規模な空爆が行われましたが、イラン政府の転覆や軍事力の無力化という目的は一切達成されませんでした。それどころか、イラン国民は政権の下に結束し、最新世代のミサイルやドローンによって米軍基地やイスラエルの重要拠点を正確に破壊し、既存の防空システムを完全に打破しました。リッター氏は、この失敗の根本原因を、米政権の「無能さ」にあると厳しく断じています。

トランプ大統領は、イランとの戦争を早期に終結させ、勝利のイメージを国内に印象づけることで秋の中間選挙を有利に進めようと焦っています。現在、共和党が議会の過半数を失えば大統領の弾劾や有罪判決が現実味を帯びるという政治的窮地に立たされており、そのためには「屈辱的な敗北」を「大胆な勝利」に書き換える必要がありました。しかし、イラン側は現実的な地政学的利益に基づいて交渉に臨んでおり、トランプ氏の個人的な政治パフォーマンスに付き合うつもりはありません。米国がイランの濃縮ウランの完全放棄や、勝利の立役者であるミサイル計画の破棄を求めているのに対し、イランがこれに応じる可能性は「地獄で雪玉が生き残る確率」ほどもありません。

特に深刻なのはホルムズ海峡の状況です。米国にはこの戦略的要衝を武力で開放する手段がなく、外交解決を模索せざるを得なくなりました。それにもかかわらず、トランプ氏は交渉の進展を待たずに強硬な姿勢を誇示し、実体のない海上封鎖を続けると宣言したため、イラン側は態度を硬化させ、海峡を再び封鎖して交渉を打ち切る事態を招きました。トランプ氏は自ら作り出した袋小路に追い込まれており、残された唯一の選択肢は、一度失敗した軍事作戦を再開することですが、それはさらなる悲劇への引き金にしかなりません。

もし米国が攻撃を再開すれば、イランはもはや段階的な対応を捨て、最初から「急所」を突く攻撃に出るとリッター氏は警告しています。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの周辺国のエネルギー施設だけでなく、生存に不可欠な海水淡水化プラントや発電所が標的となります。酷暑の夏を前に、水と冷房を失ったドバイやアブダビといった近代都市は居住不能なゴーストタウンと化し、イスラエルもまた近代国家としての存立基盤を破壊されることになります。アインシュタインが述べたように、同じことを繰り返して異なる結果を期待するのは「狂気」でしかありません。無能な指導者による誤った戦略判断の結果を、米国民はリアルタイムで思い知らされることになると、著者は強く示唆しています。

世界経済、見えない危機

Will Donald Trump's Iran War Crash the Global Economy?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】米国の政治評論家ロン・アンズ氏が、トランプ政権によるイランとの紛争が世界経済に及ぼす「見えない危機」について、独自の視点から分析しています。米・イスラエル連合とイランの戦いが続く中で、米国の金融市場が驚くほどの平穏を保ち、史上最高値を更新し続けている現状に対し、アンズ氏は「ハンセン病」という医学的な比喩を用いて警鐘を鳴らしています。ハンセン病が痛覚を破壊し、体が傷ついていることに気づかせないまま病状を悪化させるように、現在の株式市場はインフレや供給網の崩壊という「経済的な痛み」を感じる機能を失っており、それが将来の破滅的な事態を招く可能性があると指摘しています。

トランプ大統領は、株価の好調を背景に「戦争が燃料価格に影響するという懸念はフェイク(偽物)だ」と豪語しています。確かに、ベンチマークとなる原油先物価格は100ドル前後と、戦前の予想を大幅に下回る水準で推移しています。しかし、アンズ氏はここに巧妙な「数字の乖離」があることを暴いています。実際に石油を即時取引する「スポット市場」では、一時1バレル150ドルから200ドルという記録的な高値がついており、先物価格(紙の上の価格)と現物価格(実体経済の価格)がかつてないほど乖離しています。この異常な「安価な先物価格」こそが、投資家を安心させ、トランプ氏に強硬な姿勢を続けさせている「麻酔」の正体であると同氏は分析しています。

ホルムズ海峡の封鎖により、世界の石油供給の約10%が市場から消失しました。これは近代史上最大の供給停止ですが、トランプ政権は戦略備蓄の放出やロシア・イランへの制裁解除という、なりふり構わぬ「その場しのぎ」の対策でショックを緩和してきました。しかし、こうした一時的な供給源は数ヶ月で枯渇し、4月以降はインフレの波が世界を襲うことが不可避です。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、この状況を「過去最悪のエネルギー危機」と呼び、特に新興国経済への深刻な打撃を警告しています。

軍事・外交面でも、事態は混迷を極めています。トランプ氏はパキスタンを介した和平交渉に合意したものの、交渉団にJ.D.バンス副大統領や不動産開発業者のジャレッド・クシュナー氏といった、イスラエル寄りの「交渉の素人」を送り込みました。その結果、イラン側の要求を一切無視して米側の要求を押し付けるだけの交渉となり、わずか24時間で決裂しました。さらに、トランプ氏がSNS上で「イランが降伏し、海峡を完全に開放することに同意した」と一方的に勝利宣言を行った際には、市場は一時熱狂しましたが、直後にイラン側が全面否定し、海峡での発砲を再開するという失態も演じています。

アンズ氏は、トランプ氏がイランに対して核攻撃を含む極端な選択肢を検討している可能性や、中国向けの石油タンカーを公海上で拿捕するという「違法な海賊行為」に手を染めている現状を伝えています。一方で、米国内ではペンタゴン(国防総省)の予算が1.5兆ドルにまで膨れ上がり、民間投資ファンド出身の「ディール・チーム6」と呼ばれる専門家集団が国防予算を牛耳るという、国家の私物化も進行しています。市場が現実を無視して楽観を続ける中で、実体経済は確実に「氷山」に向かって突き進んでおり、この麻酔が切れた瞬間に、世界は1930年代の大恐慌を超える破滅的な経済崩壊に直面することになると、著者は結論づけています。

ハイジャックされる米国

Supremacist Alliance: The Zionist-Hindutva Hijacking of America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】マット・ウォルフソン氏によるレポートは、アメリカの政治、経済、軍事の核心部分が、ユダヤ・シオニズムとインドのヒンドゥトヴァ(ヒンドゥー至上主義)という二つの強力なイデオロギーによって「ハイジャック」されていると主張しています。著者は、今年行われたイリノイ州の連邦上院議員選挙を例に挙げ、インド系のラジャ・クリシュナムーティ氏のような候補者が、シリコンバレーのテック企業や軍事産業、そして特定の民族的ネットワークから巨額の資金提供を受けている実態を指摘しています。こうした勢力は、アメリカ憲法が定める本来の自由主義とは異なり、技術的な支配や特権階級による統治を重視する「帝国主義的」な性質を持っていると分析されています。

1965年の移民法改正以降、インド系アメリカ人は急速に人口を増やし、現在では500万人を超えています。彼らはアメリカ国内で最も高学歴かつ高所得なグループの一つであり、Google、Microsoft、IBM、FedExといった巨大企業のCEO、さらにはFBI長官や国家情報長官といった政府の重要ポストを占めるようになりました。著者は、これらヒンドゥー系のエリート層と、すでに確固たる地位を築いているユダヤ・シオニストのエリート層が、アメリカの企業、行政、大学の内部で「選民意識」に基づいた強力な連合を形成していると述べています。彼らはワシントン主導の集権的な権力を支持し、草の根の民主主義や各州の自治権を軽視する傾向にあると警鐘を鳴らしています。

さらに、この連合は技術を利用した監視社会の構築を推し進めています。パランティア社のようなテック企業が、不法移民の取り締まりだけでなく、中東政策に反対するイスラム教徒の監視にも関与している例が挙げられています。また、イスラエルとインドは軍事・技術面での提携を深めており、インドはイスラエル製兵器の最大顧客となっています。アメリカ国内でも、AIを用いた「反ユダヤ・反ヒンドゥー感情」のパトロールなど、言論の自由を制限しかねない動きが加速しています。これらの動きは民主党・共和党の両派に浸透しており、カマラ・ハリス氏やJ.D.バンス氏、ヴィヴェック・ラマスワミ氏といった有力政治家たちも、その背後にあるシオニストやヒンドゥトヴァのネットワークと深く結びついていると指摘されています。

著者は結論として、これら二つの勢力がアメリカの政党を「捕獲」した状態は、もはや陰謀論ではなく明白な政治的現実であると述べています。2028年の次期大統領選に向けて、反戦や反帝国主義を掲げる勢力は、こうした特定の民族至上主義的なグループとの決別を明確に要求すべきであると主張しています。憲法に基づいた真の自己決定権を取り戻すためには、背後で糸を引く「至上主義連合」の存在を白日の下にさらし、その影響力を排除する戦略が必要であると締めくくっています。

イラン戦争、激化の公算

Markets Prematurely May Celebrate, But the Next Phase Likely Will be More, Bigger War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元外交官のアラスター・クルック氏が、イランを巡る情勢が新たな、そしてより激しい紛争の局面に入りつつあると警鐘を鳴らしています。トランプ米大統領はホルムズ海峡が完全に開放され、イランが高濃縮ウランの引き渡しに同意したと主張していますが、クルック氏はこれらを事実無根であると断じています。大統領のこうした発言は、市場を操作して原油価格を下落させるための策略か、あるいは現実認識に支障をきたしている可能性が高いと同氏は指摘しています。実際、イラン側は米国との二国間協議を拒否しており、停戦交渉の裏で米国側はイランに対して「ウラン濃縮の永久放棄」や「備蓄ウランの全量引き渡し」といった、イスラエルの長年の要求をそのまま突きつけているのが実態です。

この対立の背景には、国内で政治的に窮地に立たされているイスラエルのネタニヤフ首相の焦りがあります。政権交代やミサイル計画の阻止といった当初の戦争目的が達成困難となる中で、ネタニヤフ氏は「ウラン」という最後の一枚に賭けており、外交的圧力や軍事行動を通じてイランに譲歩を迫るよう米側に強く働きかけています。一方で、バンス副大統領は水面下でパキスタンを仲介役とした交渉を試みていますが、イスラエルによるレバノンへの激しい攻撃が続いており、平和交渉が地上戦の準備を隠すための隠れ蓑として利用されている懸念も浮上しています。ロシア安全保障会議も、米国が地域への増員を続ける中で、これが大規模な地上作戦の布石であると警告を発しています。

経済面では、ベッセント財務長官が「オペレーション・エコノミック・フューリー(経済的怒り作戦)」を掲げ、イランの最大の顧客である中国を標的にした強力な経済封鎖を狙っています。イラン産原油の取引に関与する金融機関に二次的制裁を課すというこの方針は、単なる関税合戦を超え、中国のエネルギー供給ラインを直接脅かすものです。クルック氏は、こうした圧迫策がイランや中国を屈服させるどころか、かえって事態を悪化させ、経済戦をグローバルな規模へと拡大させるリスクがあると分析しています。

結局のところ、イスラマバードでの交渉が決裂したのは、両者の現実認識に埋めがたい溝があったためです。米国はイランが軍事的に追い詰められているという仮定で交渉に臨みましたが、イラン側はホルムズ海峡や紅海の制海権を握る自国の優位性を確信しており、譲歩する段階にはないと考えています。市場は一時的な楽観論に沸くかもしれませんが、現実は、イランのインフラを標的としたさらなる大規模なミサイル攻撃や、世界経済を巻き込む広範な紛争へと向かう「より大きく激しい戦争」の段階に差し掛かっていると、クルック氏は結論づけています。

中国、金輸入量が年初から増加

Chinese Gold Imports Up to Start the Year [LINK]

【海外記事より】世界最大のゴールド市場である中国で、2026年に入り金(ゴールド)の輸入が急増しています。マイク・マハレイ氏の報告によると、中国税関が発表した最新データで、1月の純輸入量は77トンに達しました。前年同月がわずか6トンであったことと比較すると、その差は歴然としています。この勢いは2月に入るとさらに加速し、輸入量は前年比63トン増の96トンを記録しました。こうした需要の強さは3月も継続しており、卸売需要の指標となる上海黄金交易所(SGE)からの金引き出し量は134トンに上っています。これは前月比で57%、前年同期比で12%の増加となっており、旧正月後の在庫補充という季節的な要因に加え、投資家の根強い関心を裏付ける結果となりました。

現在の中国における金需要は、宝飾品販売の低迷を、投資目的の強い需要が補うという二極化の様相を呈しています。金貨や金地金の販売は昨年から続く上昇傾向を維持しており、2025年に世界的な需要が12年ぶりの高水準を記録した際も、その半分以上が中国とインドによるものでした。特筆すべきは、中国の金上場投資信託、いわゆるETFへの資金流入です。中東情勢の影響で価格が一時的に下落した際、北米のファンドが保有量を減らした一方で、中国のファンドは逆に買い増しを行っていました。中国のETFは7ヶ月連続で保有残高が増加しており、3月だけでも8.4トンの資金流入を記録しています。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の分析によれば、中国の投資家は価格の下落にひるむことなく、むしろ安値を拾う動きを見せました。3月には中国の主要株価指数であるCSI300が6%下落し、現地通貨も対ドルで0.8%減価しました。こうした国内資産への不安に加え、米国やイスラエル、イランが関わる戦争や地域の地政学的緊張が、安全資産としての金への関心を高める要因となっています。これらの結果、第1四半期における中国の金ETFの運用資産残高は、価格上昇と流入増が相まって26%増の3,040億元、日本円で約7兆円規模に達し、保有総量は298トンにまで積み上がっています。

なお、ETFは信託会社が保有する金を裏付けとした金融商品であり、投資家にとっては市場に参加する便利な手段です。しかし、マハレイ氏は、ETFを所有することは、物理的な金を直接手元に保有することとは異なるという点にも注意を促しています。物理的な所有権が直接得られるわけではないものの、中国の投資家たちが現在の不透明な経済情勢や国際情勢のリスクヘッジとして、ETFを通じて積極的に金市場への資金投入を続けていることは間違いありません。こうした中国勢の旺盛な買い意欲は、世界の金価格を支える重要な要因の一つとなっており、今後もその動向が注目されます。

膨張続くバランスシート

Inflation Alert: The Federal Reserve Balance Sheet Is Growing Again [LINK]

【海外記事より】マイク・マハレイ氏が、米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートが再び拡大に転じている現状について、その背景とリスクを詳しく解説しています。FRBが昨年12月に量的緩和(QE)の再開を事実上示唆して以来、そのバランスシートは2,000億ドル以上も膨らみました。量的緩和とは、中央銀行が市場から米国債などを買い入れる際、何もないところから資金を創出する行為です。これにより国債に対する人為的な需要が生まれ、金利を本来よりも低く抑えることができます。その結果、連邦政府はより低いコストで借金を重ねることが可能になります。しかし、この手法は本質的にインフレを誘発するものです。金融システムに新たに作り出された資金が注入され、通貨供給量が増大することは、定義そのものがインフレを意味するからです。

FRBが政府の債務を実質的に現金化しているこのプロセスは、債務のマネタイズ(財政ファイナンス)とも呼ばれます。昨年10月の会合でバランスシート縮小の終了が発表された際、マハレイ氏は量的緩和の再開を予見していました。実際、12月の会合では短期国債の買い入れ計画が発表され、当初は数ヶ月後に購入規模を大幅に縮小するとしていましたが、約5ヶ月が経過した現在も、目立った縮小は見られません。FRBのバランスシートは着々と積み上がり、現在は6兆7,000億ドルを超える水準に達しています。当局や主流の専門家たちは「量的緩和」という言葉を避け、「準備金の管理」や「テクニカルな操作」といった表現を使いますが、実態として通貨供給量が増え、資産バブルを助長している点では量的緩和そのものであると筆者は指摘しています。

かつて量的緩和は、2008年の金融危機に際して一時的な緊急措置として導入されました。当時のバーナンキ議長は、危機が去れば速やかに資産を売却し、バランスシートを正常化させると約束していましたが、それはついに実現しませんでした。緩和に依存した経済は、金利が正常化に向かうだけで市場が動揺する「中毒状態」に陥ってしまったからです。パンデミック以前の2019年にもバランスシートが再拡大した例があるように、低金利環境がなければ機能しなくなった経済を支えるため、当局は常に流動性を供給し続けなければならない状況にあります。パンデミックは、こうした脆弱な経済に対して大量の資金を投入する絶好の口実となってしまいました。

現在、FRBは物価上昇を抑えるための高金利政策と、膨大な政府債務を維持するための低金利への要求という、板挟みの状態にあります。物価上昇率が目標の2%を上回っているにもかかわらず、バランスシートを拡大せざるを得ないのは、連邦政府の赤字解消能力を維持しようとする必死の試みです。同時に、財務省もまた、記録的な規模で国債の買い戻しを行い、利回りを抑制しようとしています。これは長期債を買い戻すために短期債を発行するという、支払いを先延ばしにする手法です。現在、政府の利払い費用は年間1兆ドルを超え、社会保障に次ぐ第2の支出項目となっています。こうした綱渡りの政策が続く中で、インフレ再燃のリスクがかつてないほど高まっていると、マハレイ氏は結論づけています。

戦争と量的緩和の結果

Peter Schiff: War and QE Mean Higher Inflation | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏が、中東情勢の緊迫化と中央銀行による無謀な金融政策がもたらす影響について、自身のポッドキャストで分析を行っています。2026年4月現在の市場では、ホワイトハウスやイランからの報道を受けて楽観的な動きが見られます。トランプ氏は、ホルムズ海峡が完全に開放され、二度と閉鎖されることはないと主張していますが、シフ氏はこれに懐疑的です。イラン側は、停戦の行方や交渉次第では一時的な再開に過ぎないと示唆しており、トランプ氏が主張する「交渉は既に終わって勝利した」という見解とは温度差があります。イスラエルとレバノンの間でも停戦が報じられていますが、こうした地政学的な動向が市場を刺激する一方で、シフ氏は米連邦準備制度、いわゆるFRBの動向に強い警鐘を鳴らしています。

シフ氏の指摘によれば、FRBは実質金利の低下を容認しており、そのバランスシートは拡大を続けています。直近の1週間だけで約110億ドル増加し、現在は6兆7000億ドルを超えています。年初からの増加額は2000億ドルを上回っており、FRBは事実上の量的緩和を行っていると言えます。マネーサプライは前年比で5%以上増加しており、シフ氏はこれを極めてインフレを誘発しやすい金融政策であると批判しています。戦争が長引けば長引くほど、この政策によるインフレ圧力はさらに強まることになります。こうした状況下で、シフ氏は中央銀行が緩和姿勢を維持する局面では、健全な通貨や実物資産、あるいは海外資産やコモディティへの投資が賢明な回避策になると助言しています。

また、シフ氏は経済の本質的な原則として、民間の営利企業と政府による事業の違いについても言及しています。ビジネスの成功とは、顧客が求める価値を、その価値よりも低いコストで提供することで利益を生むことです。利益が出なければビジネスは失敗しますが、政府が運営する事業にはこの「利益動機」が欠けています。例えば、市営の食料品店を想定した場合、コストを抑える動機がないため、たとえ非営利であっても民間に比べて価格は高くなってしまいます。効率性を追求するインセンティブがない政府による運営は、結果として不必要なコストを増大させるというのが同氏の見解です。

最後に、シフ氏は住宅所有者に課される固定資産税の問題を指摘しています。賃貸に出さず自身で居住する住宅に対し、収入源がない退職者が税を支払い続けることは困難を伴います。住宅ローンを完済し、贅沢をせずに暮らしたいと願う高齢者であっても、他からの収入がなければ、納税のために家を追われることになりかねません。シフ氏は、所得を生まない財産に対する課税は所得税ではなく、実質的には財産の没収であると述べています。自分の所有する家に住む権利がある以上、税金が払えないという理由だけで政府が国民を追い出す権利はないはずだと、現行の課税制度が個人の所有権を侵害している現状を批判しています。

2026-04-21

拡大政策が招く不安定

Israel's Expansion Means An Unraveling of Middle East Stability | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】記事によれば、イスラエルとイランの間で最近交わされた停戦合意は、直接的な軍事衝突の一時的な休止にすぎず、中東の安定という根本的な課題は解決していません。この記事の著者は、イスラエルの戦略がこれまでの「封じ込め」から、より能動的な「地域再編」へと大きく転換したと指摘しています。現在のイスラエルは、国際法を遵守する通常の民主国家というよりも、野心的な拡大主義国家としての側面を強めています。

特に注目すべきは、「大イスラエル」計画という拡大志向の構想が、かつての非主流派の思想から、現在の政権中枢を担う方針へと格上げされた点です。この構想には、1967年以降の占領地を支配する限定的な解釈から、聖書の記述に基づきエジプトの川からユーフラテス川まで、つまりヨルダン、シリア、レバノンの一部を含む広大な地域を領土とする最大主義的な解釈まで存在します。スモトリッチ財務相やベン・グビール氏といった閣僚は、公然とレバノンやシリアへの領土拡大を口にしており、聖書に記された境界線こそが真の国境であるという主張が、今や世俗派の野党指導者ヤイル・ラピド氏の間でも共有されるほど、イスラエル社会全体が右傾化していると報じられています。

レバノンとの紛争も、このドクトリンの変化を加速させました。イスラエル政府高官は、国境から約30キロ北のリタニ川までの地域を恒久的に占領・併合することを明確に要求し始めています。カッツ国防相は、リタニ川以南の安全が確保されるまで、避難したレバノン住民の帰還を認めず、同地域を軍事的に管理し続ける姿勢を示しました。こうした動きを背景に、南レバノンへのユダヤ人入植を推進する「ウリ・ツァフォン」という運動が台頭し、政府や公衆の広範な支持を集めつつあります。彼らはこの地域を「北ガリラヤ」と呼び、レバノンとの国境を植民地時代の遺物にすぎないと否定しています。

さらにイスラエルは、周辺のアラブ諸国を分断し、軍事能力を解体することで自国の安全を図ろうとする「イノン計画」の系譜を継ぐ戦略を再燃させています。かつての友好国であったトルコとの関係は、カッツ外相がエルドアン大統領をサダム・フセインになぞらえるなど、極めて険悪なものとなりました。ネタニヤフ首相は、インドやギリシャなどと結託して、イランを中心とする「過激な枢軸」や、トルコを念頭に置いた新たな勢力に対抗しようとしています。こうした拡大路線は国際社会との間に深い溝を生んでおり、イギリスによる制裁や貿易交渉の停止を招いています。2026年初頭の軍事衝突とホルムズ海峡の封鎖がもたらした世界的な燃料危機や経済的損失は計り知れず、中東の地図が力によって書き換えられようとしている今、世界はその巨大な代償を支払わされていると記事は締めくくっています。

欧州、対露外交の代償

Impunity? Europe as the 'Strategic Rear' for Ukraine - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】ロシアのラブロフ外相は、ロシア側の我慢にも限界があること、そして彼らが引く「レッドライン」がどこにあるのかを誰にも分からせていない現状は、非常に好ましいことだと述べています。この記事によれば、西欧諸国には長年、自国への報復が及ぶことはないという「戦略的な錯覚」が根付いてきました。これは単なる抑止力への信頼ではなく、どんなに他国へ攻撃を輸出しても、欧州の地は安全なままであり、戦争は過去の抽象的な概念にすぎないという、根拠のない無敵感に近い信念です。こうした認識は、アメリカの圧倒的な軍事力という傘に守られてきた歴史的な背景や、西洋人特有の特権意識によって形作られてきました。

これまでロンドンやパリが、他国への介入に対する直接的な報復を受けることはありませんでした。ウクライナへの膨大な軍事支援に対しても、ロシアの反応が限定的であったことが、欧州の「免罪符」への確信を強めてきました。しかし、この記事はその計算が根本から覆されつつあると警告しています。第一の変化は、ロシアの姿勢の硬化です。メドベージェフ安全保障会議副議長は、ウクライナ向けのドローンを製造する欧州の企業は、ロシア軍の正当な攻撃対象になると明言しました。ロシア国防省はすでに、イギリス、ドイツ、ポーランド、スペインなどにある関連施設の名前と住所を公表しており、これは「戦略的後方」という概念が、すでに攻撃目標の座標に変わっていることを示唆しています。

第二の変化は、イランによる報復モデルの出現です。イランがアメリカやイスラエルの攻撃に対し、その発信源となった周辺国の基地を大規模なミサイル攻撃で叩き、アメリカ軍を撤退させた事実は、ロシアにとって強力な先例となりました。ロシアの戦略家たちは、兵器製造拠点は中立地ではなく、敵の戦争マシンの一部であるという論理を強めています。かつての「不可侵」という前提条件は崩れ去り、ロシアが工場の住所を公開したのは、欧州の市民に対し、自国政府の政策がもたらす直接的なコストを直視させる心理作戦でもあります。

欧州の政治エリートやメディアは、これまでリスクのない強硬な支援政策を推進してきました。しかし、イランの事例に触発されたロシアの新しいドクトリンは、報復がもはや理論上の話ではないことを示しています。ドイツの工業団地やイギリスの研究施設が軍事目標になるリスクを冒してまで、現在のウクライナ支援を継続すべきかという問いが突きつけられています。これまで抑制を訴えてきたプーチン大統領の忍耐がいつまで続くのか、そして2030年頃を見据えて軍備を整えている欧州諸国が、現在進行形の2026年の危機をどれほど認識しているのかは不透明です。代償のない外交政策の時代は、終わりを迎えようとしています。

大親友の3人

Best Buds: Milei, Netanyahu, and Trump - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アダム・ディック氏が執筆した記事によれば、2023年11月にハビエル・ミレイ氏がアルゼンチン大統領に当選した際、同氏はアメリカ政府、ならびにウクライナとイスラエルの戦争を熱狂的に支持する姿勢を鮮明にしていました。ディック氏は当時から、ミレイ氏がイスラエルという国家に惜しみない賛辞を送り、アメリカの政治指導者たちと同様に、イスラエルによる新たな戦争を一貫して支持していることを指摘していました。こうしたミレイ氏の大統領就任当初からのイスラエル政府およびアメリカが支援する戦争に対する献身的な姿勢は、その後も現在に至るまで継続されています。

今週の日曜日、ミレイ氏は大統領就任後で3回目となるイスラエル訪問の際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と面会しました。その時の映像には、お気に入りの歌手に会った熱狂的なファンのような興奮を見せるミレイ氏の姿が映し出されています。ミレイ氏はネタニヤフ首相に対し、「最愛の友人」や「親友」といった言葉を重ねて、親密さを強調しながら挨拶を交わしました。

こうした国家首脳同士の親密な関係は、アメリカも交えた形にまで広がっています。アルゼンチンとイスラエルの関係強化を目的としたイベントにおいて、駐イスラエル・アメリカ大使のマイク・ハッカビー氏は、ミレイ氏とネタニヤフ首相の傍らに立ち、トランプ大統領にとっての最大の友人である二人の指導者と共にいられることは格別な光栄であると述べました。ハッカビー大使は、トランプ大統領が地球上のどの世界の指導者よりも尊敬し、個人的な関係を築いているのはミレイ大統領とネタニヤフ首相の二人であると断言しました。そして、アメリカ大統領の代表として、これら二人の素晴らしい友人と同盟国に対して、アメリカからの挨拶を伝えることができて光栄であると強調しました。

この記事によれば、これら三人の指導者が共有する最優先事項の一つがイランに対する戦いです。ミレイ氏は今回のイスラエル訪問中に、アルゼンチン政府がテロリズムおよびイラン政権との戦いにおいて、アメリカとイスラエルを断固として支持することを改めて表明しました。アダム・ディック氏は、かつてロン・ポール下院議員の立法補佐官を10年間務め、弁護士や選挙管理委員などの経歴を持つ人物ですが、今回の記事を通じて、ミレイ氏、ネタニヤフ首相、トランプ大統領という三者の非常に密接な連携と、共通の敵対勢力に対する強硬な姿勢が現在の国際政治において一つの大きな枠組みを形作っていることを淡々と描き出しています。

アメリカ、不自由の国

America: Land of the (Not Really) Free - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカのロン・ポール氏が執筆した記事によれば、先週、ドナルド・トランプ大統領は所得税の支払い期限に合わせ、ホワイトハウスにマクドナルドの食事をデリバリーで注文しました。これは、2025年に成立した通称「BBB(一つの大きな美しい法案)」と呼ばれる大規模な法案により、チップへの課税が廃止されてから1年が経過したことを祝うためのパフォーマンスでした。かつて議会で最初にチップ非課税法案を提出したポール氏は、この変更に加え、残業代への課税廃止や2017年の減税措置の延長が法案に盛り込まれたことを肯定的に捉えています。しかし一方で、この法案が連邦政府の支出と債務を増大させた点については、懸念を表明しています。ポール氏は、所得税という制度そのものが、個人の権利は政府からの贈り物であり、統治者の意志でいつでも取り消すことができるという考えを暗に認めるものだと指摘しています。所得税の導入は、人間には創造主から与えられた譲ることのできない権利があるという信念を捨て去ったことを意味すると、彼は主張しています。

自然権を信じる立場からは所得税は受け入れられず、同様に中央銀行が通貨価値を下げ、人々の購買力を奪う「隠れたインフレ税」も、国民の権利の侵害であると記事は述べています。現在の所得税制度が個人の権利を否定している象徴的な例として、ポール氏は源泉徴収制度を挙げています。これは政府が個人の稼ぎに対して優先的な請求権を持つ仕組みであり、政府はその中から一部を「還付金」として返却します。しかし、本来の還付とは顧客が商品やサービスに不満を感じた際に企業が支払いを戻すものであり、盗んだ金の一部を返すような行為とは異なると、彼は批判的な見解を示しています。源泉徴収は第二次世界大戦中の「一時的」な措置として導入されましたが、数十年が経過した今も存続しています。著名な経済学者ミルトン・フリードマンも若き日にこの制度の開発に関わりましたが、後に彼は自由市場の支持者となり、徴兵制の廃止を訴えることで、過去の自身の過ちを償おうとしたと紹介されています。

ポール氏にとって、政府が建国の理念を否定している最悪の例は徴兵制です。徴兵制は政府に対し、若者を軍隊に強制加入させ、戦争で人を殺害させる、あるいは自らが殺されることを強いる権限を与えます。一部の進歩主義者が主張するような、軍務か他の奉仕活動かを選択できるという形であっても、強制的な奉仕であることに変わりはなく、正当化はされないと説いています。現在、アメリカに徴兵制はありませんが、選抜徴兵制度への登録を通じてその基盤は維持されています。今年の国防権限法には、18歳から25歳のすべての男性を自動的に登録できる規定が含まれており、これにより政府はこれまで以上に容易に徴兵制を復活させることが可能になりました。所得税や徴兵制、その他の強制的な奉仕活動は、自由な社会とは相容れないものであり、自由と平和を重んじるすべての人が反対すべきだとポール氏は結んでいます。かつてロナルド・レーガンが述べたように、徴兵制は「子供は国家に属する」という前提に立っていますが、その考えはかつてのナチスと同じものであると、記事は警鐘を鳴らしています。

金相場、和平でも追い風続く

The $41.8 Trillion Golden Question - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】金価格は現在、地政学的な混乱と通貨への不安が交錯する中で、歴史的な転換点を迎えています。1980年にソ連のアフガニスタン侵攻やイラン革命を背景に記録した当時の最高値、850ドルという水準は、28年もの間破られることはありませんでした。そして今、私たちは再び「地政学的な混沌」と「金融パニック」が相まみえる、金にとっての「完璧な嵐」の中にいます。

金価格は今年1月に1オンスあたり5,595ドルの最高値を記録した後、現在は4,900ドルを下回る水準で推移しており、約15%の調整局面を経験しています。この背景には、アメリカとイランの間で繰り返される停戦合意と交渉決裂、そしてトランプ政権による海上封鎖といった、目まぐるしく変わるニュースに翻弄される市場の姿があります。現在、ホルムズ海峡では「10日間の航行延長」が合意されていますが、これは真の平和というよりも、一時的な演出に過ぎないとの見方も強く、多くのトレーダーは「平和が続けば金の上昇は止まるのか」という問いに向き合っています。

しかし、JPモルガンなどの大手金融機関は、今回の調整を「下落トレンドへの転換」ではなく「一時的な地固め」と捉えています。その最大の理由は、構造的な需要の柱である中央銀行の動向にあります。中国人民銀行は今年3月に5トンの金を追加し、17ヶ月連続で購入を続けています。ポーランドもまた、準備資産に占める金の割合を高めるために大規模な買い入れを継続しています。特筆すべきは、こうした公的機関は価格の短期的な変動で狼狽売りをせず、むしろ調整局面を絶好の買い場と見なしている点です。

さらに、世界的な「脱ドル化」の動きが加速しています。今年第1四半期時点で、世界の中央銀行の準備資産において、金は米国債と並びそれぞれ約25%を占めるまでになりました。これは1990年代半ば以来の事態であり、ドル覇権の揺らぎを象徴しています。2022年のロシア資産凍結以降、多くの国々が他国によって無効化されない「制裁に強い資産」として、現物で保有可能な金を求めているのです。

今後、金価格が6,000ドルの大台に乗るかどうかは、単に戦争が続くかどうかという点だけにかかっているわけではありません。たとえ平和が実現したとしても、中央銀行による年間750トンから850トン規模の戦略的購入、そして莫大な財政赤字や債務問題という構造的な追い風は消えません。現在の調整局面は、初期の上昇に乗り遅れた投資家にとっての新たな入り口に過ぎないのかもしれません。金は再び足場を固め、6,000ドルへの道を歩み始めています。

米国株、危うい上昇

Bull Trap Snaps Shut? | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】現在の株式市場では、投資家の心理と実際の資金動向が大きく乖離する、極めて矛盾した状況が生じています。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の4月の調査によれば、ファンドマネジャーたちの警戒感は2025年6月以来の最高水準に達していますが、その一方で彼らは記録的な規模となる1722億ドルの現金を市場に投入しました。口では「怖い」と言いながら、実際には強気な姿勢を崩していないこの状況は、典型的な「ブルトラップ(強気の罠)」の様相を呈しています。

ブルトラップとは、下落局面にある相場が一時的に反発し、重要な抵抗線を突破した後に急反転して下落トレンドに戻る現象を指します。最近のナスダックは13営業日連続で上昇し、2009年以来最長の上昇を記録しました。S&P500もわずか11日間で「売られすぎ」から「買われすぎ」の状態へと急激にシフトしています。これは空売りの買い戻し(ショートスクイーズ)や、トレンド追随型のファンドによる強制的な買いが引き起こしたもので、実需に基づかない危うい反発と言わざるを得ません。

資金の流出入を詳しく見ると、世界中の投資家が新興国や日本、中国、欧州、さらには米国のハイテク株からさえも資金を引き揚げ、米国の一般株へと一斉に群がっている実態が浮かび上がります。また、ヘッジファンドのレバレッジは過去5年間で上位2%に達するほど極限まで高まっており、市場はいつ破裂してもおかしくないほど緊密に巻き上げられています。先週末には、イランの外相が「ホルムズ海峡は開かれている」と発言したとの報道を受けて原油価格が急落し、株価が急騰する場面がありましたが、こうした不確実なヘッドラインに左右される展開こそが、ブルトラップ特有の脆さを物語っています。

今後の焦点は、インフレが本当にピークを打ったのかという点に集約されます。もし第2四半期に原油価格が反発し、消費者物価指数(CPI)が上昇を続ければ、2022年から2023年にかけての悪夢のような相場展開が再来する恐れがあります。BofAのアナリスト、マイケル・ハートネット氏は、リスクヘッジとして商品(コモディティ)や中国株への注目を促していますが、多くの投資家が盲目的に飛びついた現在の米国株ラリーは、誰も予期せぬ罠となる可能性を秘めています。13日連続の上昇や極端なレバレッジなど、市場に点灯している数々の警告灯を無視すべきではありません。

停戦実現でも深い傷跡

Peace Won’t Fix This: The Closure of the Strait of Hormuz Has Already Done Its Damage – GAINS, PAINS & CAPITAL [LINK]

【海外記事より】ホルムズ海峡を巡る混乱は、たとえ停戦が実現したとしても、世界経済に拭い去れない深い爪痕を残しています。世界の石油と液化天然ガス(LNG)の20%が通過するこの要衝では、物理的な封鎖こそないものの、イランによる攻撃リスクを懸念した保険会社が引き受けを拒否し、運送会社が航行を断念したことで、3月上旬から通航量が激減しました。この事態によるエネルギー供給へのダメージは、平和が戻ればすぐに解消されるという単純なものではありません。

専門機関の分析によれば、仮に4月末までに海峡が完全に正常化し、通航量が100%回復したとしても、これまでの閉鎖に関連した石油の生産損失は累計で約11億2000万バレルに達すると試算されています。中東の産油国は、出荷不能に伴い生産を縮小させており、4月だけで約3億3000万バレルが市場から失われた計算になります。さらに、陸上の貯蔵施設が満杯になっているため、生産をフル稼働に戻すにはまずこれらを空にする必要があり、消費地に石油が届くまでには航行と荷揚げを含めて30日から45日の空白期間が生じます。

こうした供給不足を補うため、世界各国は4月に7500万バレルもの戦略備蓄を放出する見通しですが、供給網の目詰まりを完全に解消するには至っていません。また、イランが海峡を通過する船舶に対して「通行料」を課す可能性も浮上しており、これが実現すれば新たなコスト増要因となります。これらの複雑な要因が絡み合い、たとえ停戦が維持されたとしても、中期的には原油価格の高止まりが避けられない情勢です。

米国経済に目を向けると、このエネルギー危機が起きる前から、インフレの圧力は着実に強まっていました。米連邦準備理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)価格指数の構成項目のうち、3%を超える上昇を示している品目の割合は、昨年の45%から現在は54%へと拡大しており、インフレが広範囲に波及していることを示しています。今回の原油高はこの傾向に拍車をかけることになり、株式市場が堅調であっても、実体経済は深刻なインフレの嵐にさらされ続けることになります。投資家は、もはや「平和による解決」という楽観論に頼るのではなく、長期化する物価上昇という新たな現実に備えるべき段階に来ています。

海峡封鎖、世界経済を破壊

The Blockade Stage of Trump’s Absurdities, by Michael Hudson - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】トランプ政権によるペルシャ湾およびオマーン湾の封鎖宣言は、イランとの対立をかつてないほど不条理な段階へと押し進めています。米当局はこの措置を、イランによるホルムズ海峡の支配への対抗策としていますが、軍事資産が数千キロも離れた場所にある米国に、実効性のある封鎖が可能かどうかは極めて疑わしいのが現状です。実際、イラン関連の船舶が海峡を通過しているとの報告もあり、米国の威信は揺らいでいます。この封鎖の試みは、単にイランを標的にするだけでなく、エネルギー供給の寸断を通じて世界経済全体を「経済的な核の冬」とも呼べる深刻な不況に陥れる危険性を孕んでいます。

経済学者のマイケル・ハドソン教授は、現在の状況を「第4の通貨価値低落サイクル」における重大な局面と指摘しています。米国によるドルの武器化や制裁の乱用は、世界各国にドルの保有がリスクであると認識させ、金や他国通貨への移行を加速させています。特にヘリウムや肥料の原料となる硫酸など、ハイテク産業や農業に不可欠な資源の供給が滞ることで、物価の高騰だけでなく、実体経済の生産能力そのものが破壊される「傷跡」が残ることが懸念されます。ハドソン氏は、米連邦準備理事会がインフレ対策として利上げを行う従来の手法は、エネルギー価格などの供給側の問題には無力であり、むしろさらなる不況を招く「ジャンク経済学」であると批判しています。

さらに、この紛争の本質は核開発問題ではなく、イランの石油資源の支配にあるとの見方が示されています。トランプ氏は米国がエネルギーの純輸出国であることを強調し、混乱の中でも自国は優位に立てると主張していますが、これは債務超過に陥っている米国内の一般市民や、同盟国である欧州、日本、韓国に多大な犠牲を強いるものです。イラン側は、自国の石油施設が攻撃されれば、サウジアラビアなど周辺諸国の輸出施設を破壊し、世界全体を道連れにする構えを見せています。このような極限状態において、これまで米国に依存してきた各国は、自国の安全と繁栄を守るために、米国中心の秩序から離脱し、中国やロシアを含む新たな多極的枠組みへの移行を真剣に検討せざるを得ない状況に追い込まれています。

歴史的に米国の「忠実な僕」と見なされてきた英国でさえ、イランへの攻撃に加わらない意向を示すなど、NATO(北大西洋条約機構)の結束にも亀裂が生じています。米国がもはや世界の安全や繁栄の守護者ではなく、むしろ最大の脅威になりつつあるという認識が世界中に広まっています。日本や韓国といった同盟国も、米国の軍事基地を維持し続けることが、イランからの石油供給停止という致命的な報復を招くリスクとなっている現実に直面しています。このように、トランプ政権が引き起こした不条理な封鎖劇は、米国が世界経済の中心的地位から周辺的な存在へと転落していく、歴史的な転換点となる可能性を強く示唆しています。

銀価格押し上げる供給不足

Silver Price Surged Last Year Despite Modest Drop in Demand [LINK]

【海外記事より】2025年の銀市場は、需要が2%減少したにもかかわらず、価格が年初の28.84ドルから一時100ドルを超えるという、147%もの劇的な上昇を記録しました。この現象は、物理的な銀の供給不足がいかに深刻であるかを浮き彫りにしています。調査機関のメタルズ・フォーカスがまとめたデータによると、昨年の銀需要は11億3000万オンスでした。産業用の需要が3%減少した一方で、投資需要の伸びがその落ち込みを補う形となりました。産業面では、人工知能(AI)インフラや自動車向け、電力網への投資による構造的な成長が需要を支えましたが、銀価格の高騰によって太陽光パネル製造における銀の使用量を抑える動きや代替品の活用が進んだことが響きました。

宝飾品についても、価格上昇が足かせとなり、世界全体の需要は8%減少しました。特にインドでは販売が20%も落ち込みましたが、中国では金からの乗り換え需要により5%増加するという対照的な結果となっています。また、銀食器の需要は24%減少し、過去4年間で最低の水準となりました。こうした価格高騰による実需の減少を下支えしたのが、14%の急増を見せた銀貨や地金への投資需要です。地域別で見ると、インドが33%増と牽引し、欧州や中東、中国でも大幅な伸びを記録しました。唯一の例外は米国で、トランプ大統領の当選によって安全資産としての買いが抑制されたことや、価格上昇局面での利益確定売りが出たことで、3年連続の減少となりました。

供給面では、鉱山生産量が3%増加し、リサイクルも12年ぶりの高水準となりましたが、それでも需要を満たすには至りませんでした。その結果、供給不足は5年連続となり、昨年は需要が供給を4020万オンス上回りました。この5年間の累積不足量は7億1600万オンスに達しており、これは昨年の年間総生産量に迫る規模です。メタルズ・フォーカスは、今年も4630万オンスの供給不足が続くと予測しています。需要が供給を上回り続ける状況では、市場参加者は地上にある在庫を取り崩すしかなく、保有者に売却を促すためにはさらなる価格上昇が必要になります。こうした物理的な不足が、昨年の価格急騰を招いた要因と言えます。2026年も、産業用や宝飾用の需要減を投資需要が補うという、昨年と同様の市場動向が続くと見られています。

金、来年8000ドルも

Wells Fargo: Debasement Trade Could Drive Gold to $8,000 [LINK]

【海外記事より】米国の金融大手ウェルズ・ファーゴのアナリストが、金価格が来年までに1オンスあたり8000ドルという極めて高い水準に達する可能性があるとの強気な予測を示しました。同社のチーフ・エクイティ・ストラテジストであるオーソン・クォン氏によれば、この背景には「ディベースメント取引」と呼ばれる動きがあります。これは、投資の世界でドルなどの法定通貨が価値を減じる中で、中央銀行や諸機関がそれらを売却し、より中立的な安全資産である金へと資金を移す動きを指します。いわゆる「脱ドル化」を象徴する言葉であり、金は相手方の信用リスクに左右されない真の通貨として再評価されています。

クォン氏は、2022年から始まった現在の状況を「第4の通貨価値低落サイクル」と位置づけています。同氏のモデルによれば、現在の金価格の適正値は4500ドルに近いとされていますが、今後さらに通貨の価値が下がる要因が揃っているといいます。実際、世界の中央銀行による金の購入量は2022年に急増し、それ以降も高い水準を維持しています。もともと米国政府の財政規律の欠如による将来への不安はありましたが、それに追い打ちをかけたのがロシアに対する経済制裁でした。米国とその同盟国がロシアをドル主体の金融システムから排除し、資産を凍結したことで、ドルが外交の武器として利用されることへの警戒感が世界中で強まりました。

制裁のリスクを回避したい、あるいは世界的な金融危機から自国を守りたいと考える中央銀行は、記録的なペースで金を積み増しています。その結果、金は準備資産としてユーロを抜き、今や米国債を上回るシェアを占めるまでになりました。過去の通貨価値低落サイクルを分析すると、平均して8.5年ほど継続しており、2022年に始まった現在のサイクルはまだ半分にも達していない計算になります。過去のサイクルは大恐慌やニクソン・ショック、リーマン・ショックといった大きな経済危機と重なってきましたが、今回は明確な危機が見当たらない点が特徴的です。

しかし、パンデミック時に連邦準備理事会(FRB)が5兆ドル近い資金を供給したことが、通貨価値の低下を決定づけた可能性があります。急激に価値が目減りし、政治的な武器にもなり得る通貨を保有し続ける動機は薄れています。世界はドルの役割が縮小する多極的なシステムへと移行しつつあり、これは借金と通貨増刷に依存する米国経済にとって厳しい状況を意味します。ウェルズ・ファーゴは、想定される5つの経済シナリオのうち4つで金の強気相場が続くと見ており、2026年の標準的な予測価格を6000ドルから6300ドルの範囲に設定しています。最も弱気なシナリオであっても、2027年には4000ドルまでしか下がらないと予測されています。

2026-04-20

トランプ氏は核を使うのか?

Will Trump nuke Iran? - Bulletin of the Atomic Scientists [LINK]

【海外記事より】物理学者のパルヴェーズ・フッドボーイ氏は、米イスラエルによる対イラン戦争が一時的な停戦に入る中、トランプ大統領が核兵器を使用する可能性について、深刻な懸念を投げかけています。トランプ氏は4月初旬、イランのインフラ破壊を予告し、「今夜、一つの文明が死ぬことになる」とジェノサイド(集団殺害)を想起させる過激な脅しを口にしました。パキスタンの仲介で2週間の停戦が合意されたものの、予測不能で報復的な性格を持つトランプ氏の指が核のボタンに近いという事実は変わりません。

イランは度重なる空爆やインフラ破壊、指導者の殺害にも屈せず、依然としてホルムズ海峡を支配し、爆撃下での交渉を拒否しています。これまでの通常兵器による「バンカーバスター(地中貫通爆弾)」では、強固な岩盤の下にあるフォルドゥの核濃縮施設などを完全に破壊できていないことが、事態をより危険な方向に導いています。イランが核兵器級のウラン製造に近づく中、同施設を完全に沈黙させるためには、米国がB61-11のような戦術核兵器の使用を選択する「核のハンマー」が必要になるという軍事的エスカレーションの論理が働き始めています。

もし核攻撃が行われれば、それは「臨床的な必要性」に基づく限定的なものと説明されるでしょうが、イランの猛烈な報復を招き、地域全体の終末的な惨事へと拡大する恐れがあります。また、すでに攻撃の兆候があるブシェール原子力発電所への直接攻撃が行われた場合、チェルノブイリや福島を遥かに凌ぐ放射能汚染がペルシャ湾周辺の諸国を覆い尽くすことになります。これは政権への攻撃に留まらず、地域全体の環境と人々に死刑宣告を下すに等しい行為です。

著者によれば、イスラエルは米国よりもさらに核使用へのためらいが少ない可能性があり、イランのミサイル防衛網突破が常態化すれば、核攻撃が現実的な戦略オプションに浮上すると警告しています。今回の戦争から世界の中堅国家や、いわゆる「ならず者国家」が学ぶ教訓は明白で、それは「核を持っていれば爆撃されない」という極めて危険な軍拡競争の再燃です。トランプ氏の核の野望は、米国内の選挙や世論によって一定の制約を受けるものの、かつては想像もできなかった「核のタブー」が崩壊する瀬戸際にあるという冷徹な事実を、この記事は示唆しています。

米、揺らぐ西欧への影響力

The US is losing leverage over Western Europe — RT World News [LINK]

【海外記事より】米国と西欧諸国の関係において、現在、根本的な構造変化が起きています。長年、米国が欧州を「守ってあげている」という構図が一般的でしたが、実態はその逆で、今や米国の方が欧州を必要としているという皮肉な状況が浮き彫りになっています。米国は第二次世界大戦の勝者として欧州に軍事支配を確立し、ソ連との対抗軸としてこの地を前方拠点に利用してきました。しかし、欧州のエリート層には、米国の恩恵を受けつつも、自らの安全保障を他国に委ねていることへの冷めた不信感が常に根底にありました。

この「米欧の亀裂」を象徴するのが、最近の英国の動向です。スターマー首相が、米国の主導するイランへの海上封鎖への参加を予期せず拒否したことは、強固とされた大西洋同盟の論理が崩れ始めている兆候です。西欧諸国は、米国が欧州という拠点を失えば、地政学的に孤立することを熟知しています。NATOの存在意義は「地元を守るため」という美名に隠されていますが、実際にはロシアとの緩衝地帯を確保し、自国本土への直接打撃を避けるという米国の戦略的利益こそが最大のものなのです。

西欧諸国のリーダーたちは、米国の「安全保障の傘」が絶対ではないことを冷静に見抜いています。冷戦期から、パリが核攻撃を受けた際に米国がニューヨークを犠牲にしてまで報復してくれるとは信じておらず、それがフランスの独自核武装などにも繋がってきました。近年の湾岸諸国を守りきれなかった米国の力の限界を見て、欧州の疑念は確信に変わっています。西欧諸国は米国から離反するわけではありませんが、経済的・金融的に米国に依存せざるを得ない限界を認めつつも、今や独自の立ち回りができる「交渉の余地」が広がったと考えています。

現在、米国はロシアとの関係安定化、欧州のつなぎ留め、そして中国との戦略的対峙という、両立の困難な課題を同時に抱えています。この不安定さが、西欧諸国に譲歩を引き出すための絶好の機会を与えてしまいました。ワシントンが自らの行動によって招いたこの脆弱性を、欧州側は慎重かつ決定的に利用しようとしています。米国が失いつつある主導権をどう取り戻すのか、あるいは自らが何を失おうとしているのかを本当に理解しているのか、その先行きは不透明です。

米民主党とイスラエル

The Winner at the DNC’s Latest Meeting? Israel, Ethnic Cleansing and Genocide - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】米国の民主党全国委員会(DNC)がニューオーリンズで開催した会合の結果、バイデン・ハリス政権に近い民主党主流派や親イスラエル団体が安堵の声を上げています。記事によれば、今回の会合では、イスラエルによる国際人道法違反が疑われる場合の武器供与停止を求める決議案など、イスラエルに批判的な一連の決議がすべて却下、あるいは先送りされました。親イスラエル団体である「民主党のイスラエル過半数派(DMFI)」などは、この結果を「分裂を招く反イスラエル決議を退けた」と高く評価しています。しかし、その舞台裏では、党内の意思決定プロセスを意図的に停滞させる仕組みが機能していたと、著者のノーマン・ソロモン氏は批判しています。

ソロモン氏が特に問題視しているのは、中東作業部会と呼ばれるパネルの存在です。このグループは、中東問題を巡る党内の意見調整を行う名目で設置されましたが、実際には活動実態がほとんどなく、イスラエル批判の決議案を棚上げにするための「隠れみの」として機能していたと指摘されています。決議委員会の議長は、この作業部会が毎月会合を開き専門家の意見を聞いていると主張しましたが、実際には会合はほとんど開かれておらず、党内の官僚組織が意図的に議論を遅延させていたという実態を、ポリティコ紙などのメディアも報じています。

こうしたDNC指導部の姿勢は、米国の一般有権者、特に民主党支持層の世論から大きく乖離しています。最新の世論調査では、民主党支持者の75%が「イスラエルはジェノサイド(集団殺害)を行っている」と考えており、パレスチナに対して同情的な意見を持つ人々が、イスラエル支持を4対1の割合で上回っています。ピュー・リサーチ・センターの報告でも、民主党支持者の8割がイスラエルに対して否定的な見解を持っており、その割合は近年急上昇しています。しかし、DNCの指導部や作業部会のメンバーの多くは依然として強固な親イスラエル派で占められており、党員全体の意見が反映されない構造になっていると、ソロモン氏は憤りを示しています。

ソロモン氏は、人道的危機を前にしても「忍耐」や「妥協」を優先する政治文化が、パレスチナでの民族浄化や大量虐殺を黙認する結果を招いていると警鐘を鳴らしています。このような党執行部の対応は、倫理的に問題があるだけでなく、次回の選挙において若者や進歩派の投票意欲を削ぎ、共和党に対抗するために必要な得票を失わせるリスクがあるとも述べています。ガザでの惨状という命に関わる現実を前にして、政治的な帳尻合わせを優先するDNCの姿勢は、極めて不誠実なものであるというのがこの記事の核心です。現実を歪める楽観主義を捨て、緊急性を持って政策転換を求めるべきだと、ソロモン氏は結論づけています。

「自由のため」の空虚

It Has Never Been About Freedom – Jon Hoffman [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が2月28日に対イラン軍事作戦「壮絶な怒り」を開始した際、彼はイラン国民に向けて「自由の時が来た」と宣言しました。しかし、それから5週間以上が経過した4月7日、政権交代の失敗に苛立った彼は、停戦に応じなければ「一つの文明が今夜死ぬことになる」という脅迫的な最後通告を突きつけました。ジョン・ホフマン氏はこの論考の中で、こうした言動の変遷は驚くべきことではなく、中東におけるアメリカの伝統的な役割に合致していると指摘しています。つまり、ワシントンがこの戦争を正当化するために用いた「イラン国民の解放」という物語は、歴史的事実に照らせば極めて疑わしいということです。

米国の中東政策は80年以上にわたり、特定の独裁国家が地域の安定と米国の利益を保証するという「権威主義的安定という神話」に根ざしてきました。ワシントンは自国の利益に従順な独裁体制を維持することを優先し、必要とあれば、10年に一度のペースで敵対的な政府の転覆を試みてきました。今回のイランとの戦争も、自由のためではなく、米国主導の秩序の外にいる最大の敵対者を制圧し、自国のネットワークに組み込むことが真の目的であったとホフマン氏は分析しています。自由という言葉は、他の正当化理由が虚偽であると判明した際に、大衆を納得させるために持ち出される空虚なレジテマシー(正当性)の仕組みに過ぎません。

歴史を遡れば、1953年にCIAと英国のMI6がイランのモサデク首相を失脚させた「アジャックス作戦」や、その後のパフラヴィー国王への膨大な武器支援が示す通り、米国は常に自国の影響力を優先してきました。1979年の革命以降、米国はイランに対して軍事・経済的な圧力をかけ続けてきましたが、この強硬な姿勢は皮肉にもイラン国内の強硬派を勢いづかせ、改革派の基盤を弱める結果を招いてきました。今回の戦争においても、作戦開始から24時間以内に最高指導者ハメネイ師を暗殺したものの、現体制は崩壊していません。むしろ、戦争によってイラン国内ではより若く強硬な世代が台頭し、米国の思惑とは裏腹に、今後の民主化運動に対してより暴力的な手段を用いる可能性が高まっています。

ホフマン氏は、イラン国民が自らの未来を決定する自由を持つべきだとした上で、米国が国内の反対派を戦争の口実に利用することは、彼らを政治的な駒として扱っているに過ぎないと批判しています。戦術的な勝利が戦略的な成功に結びつかなかったことが、民間人を標的とした破壊の脅しへと繋がったのです。イランの新しい現状は、戦争によって外部から押し付けられるものではなく、国内から自発的に生まれるものでなければ持続しません。この記事は、米国のレトリックと現実の間の深い溝を浮き彫りにし、自由を掲げた戦争が実際には権威主義的な支配構造の維持を目的としていることを冷徹に説いています。

トランプ氏襲うインフレの波

Why the Donald Is Up Shit’s Strait Without a Paddle - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】元米予算管理局長のデビッド・ストックマン氏は、トランプ大統領が直面している経済状況を「出口のない苦境」と厳しく分析しています。トランプ氏は2月のダボス会議などで「インフレは克服された」と豪語してきましたが、実態はそれとは正反対です。3月の生産者物価指数(PPI)は前年比で4%を超え、単月の年率換算では6%以上に達しています。トランプ氏はバイデン前政権がインフレを引き起こし、自分がそれを鎮火させていると主張していますが、統計によれば、パンデミック後の過剰な流動性に起因するインフレのピークは2022年であり、彼が就任する1年以上前にはすでに沈静化に向かっていました。

現在のインフレ再燃の最大の要因は、イランとの衝突によるペルシャ湾でのエネルギー供給網の混乱です。ホルムズ海峡の封鎖により、世界のエネルギー供給の約13%を占める石油や天然ガスの流れが滞り、市場には深刻な欠乏状態が生まれています。画面上の先物価格は約100ドル前後で推移していますが、実際に市場へ届けられる現物価格は、すでに1バレルあたり140ドルから150ドルの高値圏に突入しています。これが継続すれば、ガソリン価格は1ガロンあたり6ドルに達する可能性があり、その影響が今後数か月かけて本格的に供給網全体に波及していくことは避けられません。

市場の一部には、トランプ氏が何らかの和平合意をとりまとめ、海峡が再開されるという楽観的な期待もあります。ストックマン氏は、ウラン濃縮の停止や制裁の解除、さらにはペルシャ湾からの米軍撤退を含む包括的な和平案を提示していますが、これが実現する可能性は極めて低いと見ています。なぜなら、自らの政治的延命のために戦争を必要とするイスラエルのネタニヤフ首相が、こうした妥協を許さないからです。一方で、トランプ氏が海峡を封鎖してイランの石油輸出を完全に阻止しようとすれば、イランはペルシャ湾全体の輸出を妨害し、事態はさらに悪化します。

最大のエネルギー輸入国である中国も、自国の経済を守るためにトランプ氏の強硬姿勢に屈することはないでしょう。結局のところ、トランプ氏は自ら招いた地政学的リスクと、それによって引き起こされる猛烈なスタグフレーションの波に飲み込まれようとしています。もしインフレがこのまま加速し、国民生活を圧迫し続ければ、トランプ氏は政治的な指導力を失い、次回の議会選挙で手痛い報いを受けることになると、ストックマン氏は冷徹に予測しています。現状を「勝利」と呼ぶトランプ氏の言葉は、冷酷な経済指標の前では説得力を欠いているのが実情です。

金の不変の価値

Matthew Piepenburg: Why, as Everything Changes, Gold’s Trust Never Changes [LINK]

【海外記事より】貴金属投資の専門家であるマシュー・ピーペンブルグ氏は、中東情勢の緊迫化やインフレ、信用不安といった激動のニュースが続く中で、金(ゴールド)が果たすべき本質的な役割について解説しています。同氏がパートナーを務めるフォン・グライヤーズ社は、数十年にわたり現在の市場が抱えるリスクを警告してきましたが、金の価値が上昇している理由は非常にシンプルかつ歴史的な数学に基づいています。それは、過剰に発行され、価値が希釈された紙幣(通貨)が下落しているからに他なりません。数千年の歴史の中で、金は実物資産として、国家が発行する通貨よりも優れた価値の保存手段であり続けてきました。米ドルといえども、この冷厳な事実から逃れることはできないと同氏は指摘します。

通貨に対する金の優位性を示す証拠は、私たちの身の回りに溢れています。近年の世界的な脱ドルの動きや、中央銀行による記録的な金買い、さらには国際決済銀行(BIS)が金の戦略的予備資産としての重要性を認める発言をしていることなどが、その証左です。かつては金に対して懐疑的だった株式や債券市場の著名な投資家たちも、今やポートフォリオにおける金の重要性を一様に認めるようになっています。ピーペンブルグ氏は、最近見られた金の一時的な価格下落について、アルゴリズム取引やレバレッジ型ETFの売却、あるいは流動性確保のための換金売りといったテクニカルな要因によるものだと説明しています。

同氏は、金を「死にゆく通貨に対する生命保険」と表現しています。市場の流動性トラップや一時的な混乱によって価格が上下することはあっても、長期的な富の保存という観点からは、金の信頼性は揺るぎないものです。世界中で金融システムへの不信感が高まる中で、金は信頼できる唯一の価値の貯蔵庫としての地位を確立しています。ヘッドラインを飾るニュースや金融情勢がどれほど激しく変化しようとも、金の役割だけは不変であるという視点は、投資家にとって冷静な判断基準を与えてくれます。

ピーペンブルグ氏は、1999年のナスダック・バブル期にヘッジファンドを立ち上げて以来、長年オルタナティブ投資に携わってきた経験から、実物資産の重要性を説いています。特に銀行システムの外で物理的な金や銀を保有することは、現代の不安定な金融環境において極めて有効な資産防衛策であると強調しています。多くの人々が経済の先行きに不安を抱く中で、裏付けのない紙幣に依存するリスクを避け、歴史が証明してきた「本物の貨幣」である金に目を向けるべきだというのが、同氏のメッセージの核心です。激変する世界において、金の持つ普遍的な価値こそが、賢明な投資家を守る唯一の盾になると結論づけています。

ギャンブル化する市場

‘Gambling Fever Sets In’ – The Felder Report [LINK]

【海外記事より】金融アナリストのジェシー・フェルダー氏は、現在の市場に「ギャンブル熱」とも呼ぶべき過剰な投機的兆候が表れていると指摘しています。著名コラムニストのジェイソン・ツヴァイク氏の分析を引用し、2月の時点で資産運用会社が、株式などの日次リターンの4倍から5倍を目指す極めてリスクの高い上場投資信託(ETF)を数十本も申請した事実に触れています。当局の承認が得られない可能性が高いにもかかわらず、こうした申請が相次ぐ現状や、ビットコインの価格変動に対して数分単位で賭ける予測市場の活況は、投資が本来の姿を失い、ギャンブル化していることを示唆しています。

こうした投機の中心にあるのが、人工知能(AI)ブームの恩恵を受けるハイテク企業です。第1四半期の増益分の約80%をテックセクターが占めるとの予測もあり、市場の期待は非常に高まっています。しかし、その裏側では危うい構造も露呈しています。大手テック企業は今年、エネルギー消費の激しいデータセンターやAIインフラの構築に8000億ドルという巨額の設備投資を計画していますが、その多くが負債によって賄われています。そのため、現在のテック株はエネルギー価格の上昇や金利コストに対して、かつてないほど敏感な状態にあると分析されています。

また、AI投資が収益に結びつくまでのプロセスにも暗雲が立ち込めています。フィナンシャル・タイムズ紙は、供給網のボトルネックが足かせとなり、膨大な投資が収益化されるまでに想定以上の時間がかかる懸念を報じています。さらに技術的な課題も根深く、AIが事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション(幻覚)」の問題は未だ解決されていません。グーグルのチャットボットが、存在しない注文データを作り出した実例などが報告されており、この技術的な欠陥は現在のモデルを単に大規模化するだけでは克服できないという見解が専門家の間で強まっています。

AIの専門家であるヤヌシュ・マレツキ氏は、巨大なデータセンターを必要とする大規模モデルに固執するのではなく、ローカル環境で動作するより小型で効率的なモデルに注力すべきだと提言しています。フェルダー氏が紹介した一連の指摘は、華やかなAIブームの裏側に潜む、過剰な投機熱や技術的な限界、そして膨大な負債に伴うリスクを冷静に見つめ直す必要性を説いています。投資家にとって、この「熱狂」が持続可能なものなのか、それとも危うい砂上の楼閣なのかを判断する重要な局面が訪れているようです。

2029年に迫る破局

“A Turning” Is Coming In 2029 - Porter & Co. [LINK]

【海外記事より】金融アナリストのポーター・スタンスベリー氏は、現在の株式市場の急騰を勝利の兆しではなく、むしろ最終的な破局への警告であると分析しています。同氏によれば、現在の株高の本質は世界的な信用膨張によるものであり、通貨価値のさらなる下落を恐れた投資家が優良株や金へとパニック的に資金を逃避させている結果に過ぎません。同氏は歴史的なサイクル論である「第四の節目(フォース・ターニング)」を引き合いに出し、2029年に現在の経済システムが決定的な終わりを迎えると予測しています。この理論では、歴史は約85年の周期で「高揚」「覚醒」「分解」「危機」という四つの段階を繰り返すとされており、現在は2008年の金融危機から始まった「危機」の最終局面に位置しているといいます。

スタンスベリー氏は、過去の経済データをこの歴史サイクルに重ね合わせることで、その正確性を強調しています。1946年から1964年の「高揚」期には、米ドルは金と結びつき、中産階級が拡大する安定した繁栄を享受しました。しかし、1971年の金本位制停止を境に始まった「覚醒」期から歯車が狂い始め、インフレが国民の貯蓄を破壊しました。その後、1984年からの「分解」期には資産価格こそ上昇しましたが、ドルの実質的な購買力は下落し続け、社会の土台は崩れていきました。そして2008年に始まった現在の「危機」の時代において、政府は際限のない通貨発行と借金によって、かろうじて破綻を先延ばしにしているに過ぎないというのが同氏の見解です。

実際に現在の米国の債務状況を見ると、連邦債務は40兆ドルに迫り、対国内総生産(GDP)比は120%を超えて第2次世界大戦直後の記録を塗り替えています。国債の利払いだけで年間1兆ドルを超え、国防費を上回る異常事態となっています。同氏は、これは単なる一時的な景気後退ではなく、金融システム全体の完全なリセットを必要とする「最終的な嵐」であると述べています。実質的な価値を持つ金で測った場合、米国の繁栄はすでに20年以上も右肩下がりの状態にあり、それが2029年に向けて底を打つことになると警鐘を鳴らしています。

投資家にとって、目先の株価の上昇は魅力的に映るかもしれませんが、その背景にあるのはイラン情勢を巡る戦費調達や、歯止めの利かない政府支出を賄うための通貨増刷です。スタンスベリー氏は、歴史のサイクルと膨大な債務データという二つの側面から、現在の繁栄がいかに脆いものであるかを説いています。2029年に訪れるとされるサイクルの終焉に向けて、これまでの常識が通用しない金融の再編が待ち受けている可能性を示唆し、読者に対して表面的な市場の動きに惑わされず、経済の底流にある深刻な歪みを直視するよう促して記事を締めくくっています。

ウォーシュ氏とドルの価値下落

Kevin Warsh and the Erosion of the Dollar - WSJ [LINK]

【海外記事より】米連邦準備理事会(FRB)の次期議長候補であるケビン・ウォーシュ氏の指名承認公聴会を前に、通貨価値の守り手としての本来のあり方を問う議論が活発化しています。現在、議長を務めるジェローム・パウエル氏には、FRB本部の改修費用に関する証言の信憑性を巡り司法省の捜査が及んでいますが、より本質的な問題は、米ドルの購買力が長期にわたって損なわれてきたことにあります。合衆国憲法第1条第8節では、度量衡の基準を定めるのと同様に、通貨の価値を規制する権限を議会に与えています。建国の父の一人であるジェームズ・マディソンが、通貨価値の下落を「土地の価値を奪うのと同様に財産権を侵害するものであり違憲である」と考えたように、本来のドルは信頼できる価値の尺度であるべきでした。

しかし現在のFRBは、物価安定という名目のもとで、毎年2%ずつ通貨価値を意図的に下落させる政策を採用しています。仮にこの目標が達成され続けたとしても、アメリカ人の平均寿命の間にはドルの購買力は約80%も失われる計算になります。パウエル氏が議長に就任した2018年2月以降、消費者物価指数に基づけば、累積インフレによってドル建ての物価は31%以上も上昇しました。それにもかかわらず、FRBのトップが司法省の召喚状を無効にするよう求めるなど、公的な説明責任が果たされているとは言い難い状況が続いています。通貨の安定という責務を果たせなかったことに対し、罰則もなければ謝罪もないという現状は、健全な通貨というアメリカの理想とはかけ離れたものです。

こうした中、ウォーシュ氏は、FRBが経済を操る役割を不適切に拡大させてきたと主張しています。同氏は、政府機関に無限の権限を与えることは自身の信条に合わないと述べ、経済機関が信頼を得るためにはその有能さを証明しなければならないと強調しています。議会は、ドルの購買力を維持できなかったこれまでの過ちを認めるべきです。中央銀行の裁量権に委ねるだけでは、憲法が議会に課した責務を果たしているとは言えません。ウォーシュ氏の公聴会が、通貨は誠実な尺度であるべきだという建国の原則に立ち返る機会となることが期待されています。経済学者のジュディ・シェルトン氏は、通貨の信頼性こそが個人の自由と経済的自由を守る基盤であると指摘し、新しいリーダーシップによるFRBの思考の転換を促しています。

金銀、次の上昇局面へ

Greg Weldon on Gold, the Dollar, China, and the Stagflation Threat [LINK]

【海外記事より】金融市場のベテラン・アナリストであるグレゴリー・ウェルドン氏は、最近のポッドキャスト番組に出演し、貴金属や米ドルの動向、そして世界経済が直面する課題について独自の分析を語りました。ウェルドン氏は、金や銀の価格が最近調整局面にあることについて、驚きはないと述べています。同氏によれば、イランを巡る地政学的な緊張が米ドルの買い戻しを誘発し、それが金銀価格を押し下げる要因となりました。しかし、これは一時的なものであり、米ドルは長期的な下落トレンドにあるという見方を変えていません。投資家の間で停戦への期待が高まれば、再びドル安が進み、金銀は次の上昇フェーズに入ると予測しています。

また、ウェルドン氏は現在の市場が経済の実態から乖離していると指摘します。特に米国の労働市場については、公式な数字が示すよりも深刻な状況にあると警鐘を鳴らしています。3月の雇用統計では就業者数が増加した一方で、労働力人口から外れた人々が大量に存在するため、実質的な失業率は公式発表の4.3%を大きく上回る5.6%に達しているとの試算を示しました。さらに、個人消費についても、ガソリン価格の記録的な上昇やクレジットカードの延滞率の上昇など、消費者が多方面から圧迫されている現状を解説しています。同氏の目には、インフレと景気後退が同時に進むスタグフレーションは、将来のリスクではなく、すでに起きている現実として映っています。

国際情勢に目を向けると、米国が同盟国を遠ざけ、多くの国々を中国との経済的連携に向かわせているという構造的な変化を指摘しています。2018年の上海原油先物の上場を「ペトロドラー体制」終焉の始まりと捉え、人民元や中国の需要に結びついた通貨の重要性を強調しました。さらに、台湾での野党の動きなどが、武力行使を伴わずに中国の立場を強める可能性があるとも述べています。

最後に、ウェルドン氏は見落とされがちなリスクとして、異常気象と水資源の問題を挙げました。記録的な少雪や海水温の上昇が農作物に打撃を与え、食料インフレを再燃させる恐れがあること、また人工知能のデータセンターが大量の水を消費することで水資源の価値が高まっていることに触れています。株式市場が見かけ上の強さを保つ一方で、その土台となる経済基盤は非常に脆くなっているというのが、同氏の一貫したメッセージです。金や銀への投資判断だけでなく、こうしたマクロ経済の歪みに注視すべきであると締めくくっています。

2026-04-19

勢力均衡、新興経済国へシフト

Russia’s Lavrov says balance of power shifting to emerging economies | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】ロシアのラブロフ外相は、トルコで開催された「アンタルヤ外交フォーラム」において、米国主導のグローバル化が終焉を迎え、世界の勢力均衡が中国やインドといった新興経済国へとシフトしているとの見解を示しました。ラブロフ氏は、米国の覇権は米国自身の行動によって損なわれており、特にトランプ大統領が導入した一律10%の輸入関税は、自由市場と公正な競争に基づくグローバル化時代の黄昏を象徴していると批判しています。

現在、世界は多極化に向けた歴史的な過渡期にあり、米ドルの独裁的な地位から逃れようとする動きが加速しています。ラブロフ氏は、ドルが「戦争の道具」へと変質したことで、BRICS諸国だけでなく多くの地域団体が独立した決済システムの構築に関心を寄せていると指摘しました。特にイランとの戦争などの経済的緊張がこの傾向を強めており、イランが制裁を回避するために石油取引の決済をドルから人民元へ切り替えていることは、ペトロダラー体制への重大な挑戦となっています。中国やインドの経済成長率が米国を上回り続ける中、客観的な経済指標に裏打ちされた勢力図の変化はもはや不可逆的であり、それに伴って政治的な影響力も新興国側へ移りつつあります。

一方で、ウクライナ情勢や対イラン戦争といった紛争解決において、パキスタンやトルコといった「ミドルパワー(中堅国家)」の役割が重要性を増しています。トルコのエルドアン大統領は、米国とイランに対し、イスラエルによる挑発を警戒し、現在の停戦を永続的な平和へとつなげるよう強く促しました。エルドアン氏は「平和は片翼の鳥ではない」と述べ、対話と外交こそが最も近い解決策であると強調しています。かつてのような大国主導の秩序が崩壊する中で、自国の安全保障や経済的利益を追求する中堅国家たちが、多極化する世界の新たな調整役として台頭している現状が浮き彫りになりました。

こうした地政学的な激動の中で、欧米諸国間の足並みの乱れも表面化しています。トランプ政権が制裁対象であるロシア産原油の海上購入を一時的に認める「適用除外」を更新したことに対し、ウクライナ支援を継続する欧州諸国からは、ロシアへの資金源を断つ努力を妨げるものだとして批判の声が上がっています。米国が自国の利益を優先して一貫性を欠く行動をとる一方で、中国やロシアは戦略的連携を強化しており、世界のパワーバランスはより複雑で予測困難なフェーズへと突入しています。

中国も注目、イランの安価ミサイル

Lesson for China? Iran’s low-cost 358 missile takes out million-dollar US assets | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】現在進行中の米国・イスラエルによる対イラン戦争において、イランが開発した低コストの迎撃兵器「ミサイル358」が、米国の高額な無人機を次々と撃墜し、中国をはじめとする世界中の軍事関係者から注目を集めています。通称「ドローン・キラー」とも呼ばれるこの兵器は、重量約50キログラムで、マイクロターボジェットエンジンを搭載した「徘徊型」の迎撃ミサイルです。時速マッハ0.6という、従来の対空ミサイルと比較して極めて低速なため、ジェット戦闘機の迎撃には不向きですが、中高度・長時間滞空型の無人機に対しては極めて有効な「隠れた矢」となります。

中国の軍事専門家は、この兵器の最大の利点はその圧倒的なコストパフォーマンスにあると分析しています。米空軍の無人機「MQ-9 リーパー」が1機あたり数千万ドル(数十億円)するのに対し、イランのミサイル358は1ユニットあたり3万ドルから9万ドル程度と推定されています。実際に、2月末から4月上旬にかけて米空軍はイランで24機のリーパーを失い、その損失額は7億2000万ドルに達したと報じられています。これに対し、イラン側は極めて安価な兵器でこれに対抗しており、まさに「安価な武器が高価な兵器を消耗させる」という非対称戦争の典型的な成功例となっています。

このミサイルは単に安いだけでなく、技術的にも理にかなっています。小型エンジンは赤外線の放出が少ないため、最新鋭の無人機のセンサーでも検知が難しく、隠密性に優れています。また、最大で60分間も空中を徘徊できるため、敵の無人機の侵入ルート付近で待ち伏せをし、一度攻撃に失敗しても再び旋回して標的を狙うことが可能です。こうした「執拗な追跡」が、低速ながらも確実な撃墜を可能にしています。

中国はこのイランの成功を重要な教訓として捉えており、自国の防衛産業においても、こうした大量生産が可能で低コストな「消耗戦用兵器」の開発を加速させています。すでにイラン製の自爆ドローンを参考にした、より安価な同等品の開発も進んでおり、今後の現代戦においては、高機能な高額兵器だけでなく、コストを極限まで抑えた大量の自律型兵器が戦場の主役となっていく可能性をこの記事は示唆しています。

欧州の危うい二面外交

NATO Allies Adopt Evasive Policies on US War in Iran - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ政権がイランとの戦争を進める中で、長年の同盟国であるNATO諸国の多くが、米国の政策に対して回避的、あるいは公然と反対する姿勢を強めているとテッド・ガレン・カーペンター氏が報告しています。4月12日、トランプ大統領はイランによるホルムズ海峡の封鎖に対抗し、イランの港を封鎖するためにNATO各国の海軍力の結集を呼びかけました。しかし、この提案に対して英国のスターマー首相は、イランとの戦争に「引きずり込まれる」ことはないと述べ、参加を明確に拒否しました。フランスのマクロン大統領もこれに同調し、軍事封鎖ではなく国際会議による外交的な解決を求めています。

こうした同盟国の拒絶は、トランプ大統領の世界情勢へのアプローチに対する欧州諸国の深い不満を反映しています。ニューヨーク・タイムズ紙のセルジュ・シュメマン氏は、欧州がもはやトランプ氏を「自由世界のリーダー」とは見なしていない現状を指摘しています。これに対し、トランプ氏は協力を拒む同盟国を「臆病者」と激しく非難し、ルビオ国務長官も「米国の危機に際して基地の使用も認めないなら、なぜNATOに巨額の資金を投じる必要があるのか」と、同盟の価値そのものに疑問を呈しています。トランプ政権の閣僚内では、非協力的なパートナーへの報復措置も検討されていると伝えられています。

しかし、実態はより複雑な様相を呈しています。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、スペインのように公然と反旗を翻す国がある一方で、英国、フランス、イタリアなどは、政治的には戦争に反対しつつも、運用面では水面下で米軍の活動を支援し続けています。欧州の指導者たちは、イラン攻撃を非難することで自国民や国際社会の支持を得つつ、同時にイランの影響力拡大を懸念する中東諸国や米国への配慮も欠かさないという、極めて繊細な二面外交を展開しているのです。

この「両立を図る」という綱渡りのような政策が今後も通用するかは不透明です。米国の外交・軍事・情報コミュニティ内には欧州の懸念に理解を示す層もいますが、強硬派は大統領の優先事項に従わない同盟国に対して不快感を募らせています。何よりも、自身の政策を裏切りと見なして激怒するトランプ氏の姿勢は、大西洋を挟んだ同盟関係に決定的な亀裂を生じさせかねません。イランとの戦争が早期に終結しない限り、この緊張は劇的に悪化し、NATOそのものの存続を脅かす重大な局面を迎えることが懸念されています。

トランプ氏の空想

Trump Pushes Fantasy about Iran, Hormuz and Enriched Uranium - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ米大統領はSNSやインタビューを通じて、イランとの戦争が終結に向かっているとする極めて楽観的な見解を相次いで表明しました。トランプ氏の主張によれば、ホルムズ海峡の封鎖状況は解消され、イランは二度と海峡を閉鎖しないことに同意したといいます。また、イランが核開発の永久停止を含む米国の要求のほぼすべてを受け入れ、早ければこの週末にも最終合意に至る可能性があると述べています。トランプ氏は、パキスタン側の要請を受けて2週間の停戦に合意したとしつつも、合意が完全に完了するまではイランの港への海上封鎖を継続する方針を示しました。

さらにトランプ氏は、中国の習近平国家主席が海峡の再開を喜んでおり、中国がイランへの武器支援を行わないことにも同意したと主張しました。NATOについては、必要な時に役に立たない「紙の虎」であると一蹴し、海峡再開後の支援の申し出を拒絶したと述べています。こうした発言を受けて、米国の株式市場は急騰し、原油先物価格は大幅に下落しました。トランプ氏の狙いは、こうした市場の操作にあったと考えられます。しかし、元CIAアナリストのラリー・ジョンソン氏は、これらの中身は事実に基づかない「空想」であると厳しく指摘しています。

実際には、イラン側はトランプ氏の主張を強く否定しています。イラン外務省の報道官は、濃縮ウランをいかなる状況下でも国外に搬出することはないと明言しました。トランプ氏は「ショベルカーを持ち込んでウランを回収する」といった安易な見通しを語っていますが、交渉の現実はそれとは大きくかけ離れています。また、ホルムズ海峡についても、イラン側は米国やイスラエルに関連しない商船の通行のみを許可しており、依然として革命防衛隊による厳格な管理下にあります。軍艦のペルシャ湾進入も認めておらず、海峡の状況が完全に解決したというトランプ氏の説明は事実に反しています。

ジョンソン氏は、トランプ氏が勝利を宣言して早期撤退を正当化しようとしているのか、あるいは合意間近であるという偽の期待を抱かせた上で、交渉決裂をイランのせいにして4月末に新たな攻撃を命じるための口実を作っているのか、そのどちらかであると分析しています。米軍機が依然として中東地域に流入し続けている現状を鑑みると、後者の可能性が懸念されます。イラン側は、制裁の解除と凍結資産の解放を求める10項目の要求を一切崩しておらず、状況は依然として予断を許しません。イスラエルが沈黙を守り、停戦が維持されるかどうかが、今後の大きな焦点となります。

トランプ氏と核のボタン

Donald Trump Pulls the Trigger - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元CIA工作員のフィリップ・ジラルディ氏は、トランプ米大統領の精神状態と、それが招きかねない核戦争のリスクについて極めて厳しい懸念を表明しています。記事によれば、トランプ氏は2025年後半から認知機能の低下や激しい感情の起伏を見せており、ホワイトハウス内では側近たちが大統領の怒りを恐れて萎縮しているという報告があります。こうした状況下で、対イラン戦争が進められていますが、これは米国の国家安全保障上の利益ではなく、イスラエルのネタニヤフ首相の影響によるものだとの見方が国民の間で広まっています。

トランプ氏の外交政策は好戦的であり、仮想敵だけでなく同盟国やローマ教皇に対しても攻撃的な姿勢を隠しません。教皇レオが戦争の終結を訴えた際、トランプ氏はSNS上で教皇を激しく非難し、さらにバチカンの外交代表を国防総省に召喚して、米国の軍事力による報復をちらつかせたと報じられています。こうした態度はカトリック教徒のみならず、これまで忠実だったNATO加盟国の反発も招いています。スペインや英国が米軍機による領空や基地の使用を拒否し始めたほか、イタリアのメローニ首相も、トランプ氏による教皇批判を「容認できない」として、イスラエルへの武器供給停止を決定するなど、同盟関係に大きな亀裂が生じています。

最も深刻な懸念は、精神的に不安定とされるトランプ氏が、独断で核兵器を使用する可能性です。著者の調査によれば、米国の大統領には核攻撃を命じる絶対的な権限があり、それを阻止する法的な「チェック・アンド・バランス(抑制と均衡)」は事実上存在しません。合衆国憲法は、大統領に軍の最高司令官として武器の使用を決定する直接的な権限を与えています。特に他国からの攻撃が差し迫っていると大統領が判断した場合、議会の承認を得ることなく、数分以内に核兵器の起動命令を下すことが可能です。

たとえ先制攻撃であっても、実務上、核のボタンを収めた「核のフットボール」による発射命令は、議会の承認を待たずに実行できてしまうのが現実です。記事は、イスラエルが偽旗作戦などを用いて、トランプ氏にイランへの核攻撃を決断させるよう誘導するリスクを指摘しています。ネタニヤフ首相がホワイトハウスに強い影響力を持ち、不正確な情報をトランプ氏に吹き込んでいる可能性があるからです。ジラルディ氏は、大統領の個人的な感情や誤った情報に基づいて人類に破滅をもたらす決断がなされないよう、米国が直接攻撃を受けていない状況では核の使用権限を制限する法整備が急務であると訴えています。トランプ氏という一人の人物の手に、世界の運命を左右する「引き金」が握られている現状に、強い警鐘を鳴らしています。

体制融和の自由主義

Economyth, I am your father… [LINK]

【海外記事より】フランスの自由主義経済学界における「ガレロ一族」の遺産と、その限界についてステファン・ゲイルズ氏が鋭く考察しています。この記事では、一年前に他界したジャック・ガレロ氏を取り上げています。彼はフランスにおいて「ハイエク主義者の巨頭」として知られ、長年「フランスにおけるオーストリア学派」の顔として君臨してきました。しかし著者は、彼を純粋な自由至上主義者(リバタリアン)ではなく、既存の体制に妥協した「エコノミス(経済神話の住人)」の父であったと評しています。

ジャック・ガレロ氏の活動を振り返ると、その影響力は学術界のみならず政治の舞台裏にも及んでいました。彼は、かつてのフランス財務大臣で大統領候補でもあったアラン・マドラン氏の選挙対策本部長を務めていました。彼の所属した「自由民主党」という党名や、彼が30年以上にわたって会長を務めた「経済自由・社会進歩協会(ALEPS)」という組織名には、本来のリバタリアニズムとは距離のある、進歩主義的で民主主義的な色彩が混じっていたと著者は指摘します。また、彼は有力企業からの多額の資金を背景に、フランスの自由主義コミュニティを統制し、より急進的なリバタリアンの台頭を阻む壁のような存在でもあったといいます。

著者自身、ガレロ氏との忘れられない衝突を経験しています。2023年末のカンファレンスで、著者がロスバードやホッペに近い思想を持つフランスの無政府主義的な先達について講演していた際、ガレロ氏は突然立ち上がり、激昂して怒鳴り散らしたのです。彼は、自身が信奉するハイエクやバスティアの枠組みを超える急進的な自由の概念を許容できなかったようです。その後、彼は個人的に謝罪に訪れましたが、なぜホッペのような理論家たちが自分と対話しようとしないのかと当惑していたといいます。

フランスの経済論壇において、このガレロ氏の遺産、つまり「体制に融和的な自由主義」をいかに克服するかが現在の課題であると著者は説いています。ハイエク的な妥協を排し、私有財産権と自由を徹底的に追求する真のオーストリア学派の視点を広めるためには、こうした過去の権威が作り上げた「神話」を打ち破らなければなりません。グイド・ヒュルスマン氏のような強力な仲間とともに、既存のぬるま湯のような議論に絶えず異を唱え続けることが、フランス、ひいては世界の経済思想を健全化するために必要であると締めくくられています。

銅時代の夜明け

The Dawn of the Copper Age - by Robert Sinn [LINK]

【海外記事より】銅価格が1ポンドあたり6ドルを超えて急騰し、過去最高値を更新しようとする中で、銅市場が「銅器時代の夜明け」とも呼べる新たな強気相場に突入したとする分析をロバート・シン氏が紹介しています。著名な鉱山実業家であるロバート・フリードランド氏は、現在の需要増がかつてないレベルにあると指摘しています。これまでも電動化による需要はありましたが、生成AIの台頭とデータセンターの急拡大が、銅や銀、パラジウムといった重要金属の需要を異次元の段階に押し上げたのです。例えば、500メガワット規模のデータセンター一つをとっても、膨大な量の銅が必要になります。フリードランド氏によれば、今後18年間で必要とされる銅の量は、人類が歴史上でこれまでに採掘してきた総量に匹敵する約7億トンに達すると予測されています。

これほどの需要がある一方で、供給側には深刻な構造的問題が横たわっています。新しい鉱山が承認され、資金調達を経て稼働するまでには膨大な時間がかかります。さらに、地政学的な緊張も供給の制約に拍車をかけています。現在、世界のサプライチェーンは中国に高度に集中していますが、中国当局が電子グレード以外の硫酸(銅の抽出に不可欠な資材)の輸出禁止を発表するなど、供給網の脆弱性が露呈しています。米国はこれに対抗し、60種類の重要鉱物を備蓄する120億ドル規模の「プロジェクト・ボルト」を開始して産業の回復力を強化しようとしていますが、資源の確保は一朝一夕には進みません。フリードランド氏は「鉱山をお金のように印刷することはできない」と述べ、現物の制約が冷徹な現実として立ちふさがっていることを強調しています。

また、伝説的な投資家であるリック・ルール氏も、銅価格の衝撃的な上昇は避けられないと警告しています。過去30年間にわたり、探査、技術開発、そして鉱山建設への投資が決定的に不足していたため、供給不足を解消する手段が人類には残されていないというのです。鉱山の許可を得るだけでも、地域によっては10年から30年近い歳月を要します。例えばアリゾナ州の有望な鉱床でさえ、許可手続きに10年以上を費やしており、未だ建設に至っていません。供給が追いつかない以上、今後5年から10年は、価格の高騰によって需要を強制的に抑制する「価格による配分」が行われる段階に入ると予測されます。銅の有用性は極めて高く、価格が上がっても需要が減りにくい性質があるため、価格は想像を絶する水準まで押し上げられる可能性があります。世界は今、重要鉱物をめぐる激しい争奪戦のスタートラインに立っており、銅セクターは長期的なマクロサイクルにおける大きな転換点を迎えています。

米経済に新たなブーム?

Climbing While the World Wobbles - Pretiorates’s Thoughts [LINK]

【海外記事より】世界情勢が不安定な中でも、株式市場が力強い上昇を見せている現状について、投資ブログのプレティオレーツが分析しています。現在、S&P 500種株価指数は史上最高値を更新する勢いです。中東情勢の緊迫化や原油高によるインフレ懸念、さらに利下げ期待の後退といった悪材料が重なっているにもかかわらず、なぜ市場は堅調なのでしょうか。その背景には、大口投資家による旺盛な買い意欲があります。主要な投資家による水面下での取引を測る指標を見ると、極めて積極的な蓄積が行われていることが分かります。投資家心理はようやく楽観的な領域に入ったばかりであり、経験則から言えば、こうした時期こそが最も大きな利益を生む局面となりやすいのです。

現在、投資家は米経済が新たな上昇気流に乗ることを予見しているかのように、景気敏感セクターの銘柄を好んで購入しています。一方で、不況時に強いとされる公共事業などの防衛的な銘柄は、相対的に関心を失っています。興味深いのは、週末を前にした投資家のリスク回避姿勢を反映する「ハッピー・フライデー指標」が、ここ最近の極端な緊張感によって過去数年で最低水準にまで落ち込んでいたことです。逆張り指標として機能するこのデータが底入れしたことは、皮肉にも複数の買いサインを点灯させる結果となりました。こうした市場の動きを牽引しているのは、人工知能(AI)と量子コンピューティングの分野です。AI関連株はすでに新高値を更新していますが、時間外の取引動向などを見ても、この勢いはまだ長く続くと予想されています。

一方で、ソフトウェア株については慎重な見方が示されています。AIの進化によってプログラミングの効率は上がりますが、同時に多くのソフトウェア利用者の作業がAIに代替されるため、将来的にソフトウェアのライセンス販売数が大幅に減少するリスクがあるからです。AIと量子コンピュータの組み合わせは、今後数年で私たちの生活を劇的に変え、中長期的にウォール街を押し上げる原動力となるでしょう。量子コンピュータが現在の暗号技術を打破する力を持つとされる「Qデー」も、2029年には到来すると予測されています。

最後に、米経済がブームを迎えつつある背景として、一つの刺激的な仮説が紹介されています。それは、トランプ大統領がホルムズ海峡の制御を掌握し、封鎖したという状況に関連するものです。これが長引けば、特にアジア諸国にとって深刻なエネルギー不足を招きます。もし中国などのエネルギー供給源が絶たれ、米国が世界的なエネルギー供給拠点として台頭することになれば、地政学的なパワーバランスは一変します。米ドルの基軸通貨としての地位、いわゆるペトロダラーの再評価につながる可能性すらあります。現時点ではあくまで推測の域を出ない理論ですが、米国内へ向かう空のタンカーが急増しているという報告もあり、今後の動向から目が離せません。市場はこうした大きな変化を先取りして動き始めているのかもしれません。

金デビットカードに脚光

A ‘new gold rush’: Why gold-backed debit cards are taking off [LINK]

【海外記事より】金価格が史上最高値を更新し続ける中、金を単なる投資資産としてだけでなく、日常的な支払いに使える「通貨」として活用する動きが広がっています。最新のテクノロジーにより、消費者はデビットカードを通じて、購入時に少額の金を現金に換えて決済できるようになりました。この仕組み自体は以前から存在していましたが、インフレによる通貨価値の減少と金価格の上昇を受けて、フィンテック企業や一部の州政府がこの動きを後押ししています。このサービスの魅力は非常に明快です。物価上昇によって現金の価値が目減りする一方で、インフレへの備えとして知られる金は、その価値を維持、あるいは高めることが期待できるからです。例えば、2020年当時の1000ドルをそのまま現金で持っていた場合、現在の価値は約780ドルにまで下がっていますが、同じ額を金に換えていた場合は、現在1800ドルから2000ドル程度の価値になっている計算になります。

金本位のデビットカードでは、利用者はドルの代わりに、スイスなどの安全な金庫に保管された実物の金を保有します。カードを使って買い物をすると、その瞬間に必要な分だけの金が売却され、通貨に変換されて決済が完了します。こうした仕組みは、中央銀行や不換紙幣のシステムに依存しない独立した資産を求める層からも支持されています。また、テキサス州やユタ州などの一部の地域では、金による取引を容易にするための法整備が進められており、税制上の摩擦を減らす取り組みも行われています。ただし、これらは米ドルを法定通貨として置き換えるものではありません。一方で、このシステムには課題や批判的な意見も存在します。まず、金の購入や保管、さらには決済時の通貨換算にかかる手数料の問題です。これらの費用が積み重なると、金が持つインフレ対策としての利点が相殺されてしまう可能性があります。

さらに、税制面の複雑さも無視できません。アメリカの連邦法では、金は依然として課税対象の資産とみなされているため、購入時より価値が上がった状態で金を使用すると、資本利得税が発生する可能性があります。また、金は長期的な価値の保存手段としては優れていますが、短期的には価格変動が激しく、利用者の残高が予想以上に変動するリスクもあります。加えて、多くの投資家にとって金は長期保有を目的としたものであり、日常の買い物に使うことへの需要がどこまで広がるかについては、懐疑的な見方も根強く残っています。この記事の筆者は、金裏付けのデビットカードが普及するかどうかは、これらの手数料や税金といった摩擦をどこまで解消できるか、そして消費者が金を「使う」という習慣を受け入れるかどうかにかかっていると指摘しています。新たなゴールドラッシュとも呼べるこの動きが、人々の決済手段として定着するかどうかが注目されています。

貿易紛争をなくす健全通貨

Fixing Trade With Sound Money [LINK]

【海外記事より】健全な通貨制度、つまり信頼できる通貨基準を採用することで、貿易をめぐる議論を解決できるとジョセフ・ソリス=ミューレン氏は提唱しています。現代の経済学や政策論争では、貿易収支の黒字や赤字、あるいは補助金や関税の是非ばかりが注目されています。しかし、金本位制のような健全な通貨制度があれば、市場の公平な働きによって貿易の不均衡は自然に調整され、誰の不利益にもならず、すべての人に利益をもたらす状態が保たれるといいます。この仕組みは、二国間の貿易を例に考えると非常に単純です。仮にある国が貿易黒字になり、輸出が輸入を上回った場合、その差額は金で決済されます。すると、黒字国には金が流れ込み、国内の通貨供給量が増えて物価や賃金が上昇します。その結果、その国の製品は国際的に割高になり、輸出競争力が低下する一方で輸入が魅力的になります。逆に赤字国では、金が流出することで通貨供給量が減り、物価や賃金が下がります。これにより生産コストが低下して国際競争力が高まり、輸出が増えて赤字が解消されます。このように、政府が介入しなければ、一時的な不均衡は自ら逆転しようとする力を生み出し、持続的な調整が行われるのです。

この論理は、多国間のグローバルなシステムにおいても同様に成り立ちます。各国の貿易収支は通貨の移動を通じて互いに結びついており、金の動きが国内物価に影響を与え、それが貿易パターンを再形成します。これは固定された均衡ではなく、価格や資本配分、消費者の好みの変化に応じた継続的な調整プロセスです。中央当局による調整は必要なく、分散化された意思決定と通貨による制約から、このプロセスは自然に生まれます。したがって、貿易の黒字や赤字は経済的な優位や衰退を示すものではなく、より深い経済状況を反映する信号に過ぎません。これらの不均衡が長期化し、病的な問題となるのは、政府の介入がある場合に限られます。貿易は国家間のゼロサムゲームではなく、利益を期待する個人同士の自発的な交換の連続です。健全な通貨制度はこの恩恵を最大化します。こうした見解は、オーストリア学派、特にルートヴィヒ・フォン・ミーゼスによって明確に示されてきました。ミーゼスは、貿易収支の統計はあくまで記述的なものであり、それ自体が管理すべき目標ではないと説いています。

現在の通貨制度から利益を得ている政府や銀行などは、健全な通貨への移行に強く反対するでしょう。しかし、中央銀行が管理する変動相場制の弊害をなくし、金本位制のような制度下で自由で公正な貿易を行うことは、世界中の繁栄に貢献するはずです。現在の体制のために、優秀な人材が貿易に関する無益な計算や議論に膨大な時間を費やしていることは、大きな機会損失と言わざるを得ません。産業政策や関税などがもたらす経済的な損失に加え、これらの人材が消費者の望むものを生産するために力を注いでいれば、どれほどの価値が生まれていたでしょうか。現在の不換紙幣制度がもたらす不必要な悪影響を取り除き、健全な通貨制度の利点をより多くの人が認識することで、世界はより良い方向へ進むことができると著者は結論づけています。