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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-04-15

イスラエルの野望を止める

Ending Israel's War on Peace - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの戦争は2週間の停戦を迎えましたが、この戦争は外交官が午後のひとときで解決できたはずの内容以外、何ら成果を上げませんでした。経済学者のジェフリー・サックス氏らは、この紛争の本質が「平和への戦争」ではなく、イスラエルの野望にアメリカが引きずり込まれた結果であると分析しています。イスラエルはイラン政権を打倒して中東の覇権を握るため、トランプ大統領に「一日で終わる斬首作戦」という甘い見通しを売り込みました。トランプ氏はイランの石油利権に目を奪われ、その提案に乗りましたが、実際にはイランの抵抗を抑えられず、結局はパキスタンを介して自ら停戦を乞う立場に追い込まれました。

停戦の基礎となったのは、イランが提示した「10項目プラン」です。これは中東全域の戦争終結や核問題の解決を目指す妥当な内容ですが、同時にアメリカにとっては大きな譲歩を意味し、イスラエルにとっては到底受け入れがたいレッドラインとなっています。現在の紛争の根源には、イスラエルが、主権を持つパレスチナ国家の樹立に断固反対し、自国の国境を際限なく拡大しようとする「大イスラエル主義」があります。ネタニヤフ首相やその盟友である右派勢力は、パレスチナ全土のみならず、レバノンやシリアの一部までも支配下に置こうと考えており、その障害となる周辺国の政権交代を画策し続けてきました。

サックス氏は、イスラエルがこの停戦を壊そうと画策していると警告します。実際にベイルートへの無差別爆撃などはその兆候であり、イランとアメリカの恒久的な合意は、イスラエルの覇権主義的な夢を終わらせるものだからです。アメリカ政府内では、キリスト教シオニストや一部の実業家たちが、聖書の約束を引用してイスラエルの領土拡大を後押ししていますが、こうした非現実的な信念がホワイトハウスの政策に影響を与えている現状は極めて深刻です。一方で、アメリカ国民の意識は変化しており、最新の調査では大多数のユダヤ系アメリカ人がネタニヤフ首相を信頼せず、二つの国家の共存を支持しています。イスラエルへの好感度は史上最低水準に達しており、政治家たちの認識と国民の感情には大きな乖離が生じています。

中東に真の平和をもたらす唯一の道は、アメリカが現実を直視し、イスラエルに対して出してきた「白紙委任状」を撤回することです。世界が支持する1967年当時の国境線に基づき、イスラエルに国際法を遵守させ、パレスチナ国家の存在を認めるよう圧力をかける必要があります。イランの提案はこの包括的な和平の基盤になり得るものであり、アメリカがイスラエルによる平和の破壊を許さず、自国と世界の利益のために立ち上がるかどうかが問われています。停戦という壊れやすい機会を逃さず、長きにわたる紛争に終止符を打てるかは、これからの交渉次第です。

衰退する帝国

A Few More Conquests Like This, and the Empire Will Be Done For! - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカ帝国がその終焉に向かって、最後あがきのような「征服」を繰り返していると、元空軍中佐のカレン・クウィアトコウスキ氏が痛烈に批判しています。トランプ大統領は4月8日、SNS上で「わが軍は次の征服を楽しみにしている。アメリカが帰ってきた!」と宣言しましたが、著者はこれを、凋落する帝国による虚勢に満ちた、不道徳な帝国主義の表れであると断じています。トランプ氏は自身の不当な軍事介入を正当化するために、かつてのモンロー主義を皮肉った独自のドクトリンを掲げ、宣戦布告もなく8カ月間で8カ国を爆撃するなど、歯止めの利かない権力の行使を続けています。

著者は、現代のアメリカを「衰退する帝国」と呼び、ワシントンの政治家やニューヨークの銀行家たちが進める帝国主義のツケを、一般のアメリカ国民が支払わされている現状を告発しています。膨れ上がる国防予算と連邦債務、そして過去の借金に対する利払いによって、国民は止まらないインフレや生活の質の低下、自由の剥奪に苦しんでいます。かつてトランプ氏は「戦争を終わらせ、兵士を帰還させ、自国を第一に考える」と約束しましたが、現実にはさらなる軍事支出と新たな侵略戦争に資源を投じています。このような、ナショナリズムを煽り行政権力にすべての力を集中させる手法は、かつてのイタリアやドイツでファシズムが台頭した際の構図と酷似しています。

さらに深刻なのは、かつてのファシズムがカロリー制限などのアナログな手段で国民を管理していたのに対し、現代のアメリカはテクノロジーやAI、データネットワークを駆使して、国家に都合の良い物語を捏造し、国民を監視・管理している点です。正当な手続きもなく他国の命や財産を奪う軍事行動は、合衆国憲法修正第5条が保障する個人の権利を著しく侵害するものですが、ワシントンのエリート層は憲法をすでに「時代遅れ」で「無意味」なものと見なしています。トランプ氏もまた、複雑な情報の代わりに派手な図表や映像のみを好む「イディオクラシー(愚民政治)」を体現する存在として描かれています。

現在、アメリカという「債務と戦争の国」は、もはや世界から尊敬されることも、恐れられることもなくなりました。軍事的な支配力は傲慢さと嘘によって切り裂かれ、その経済力もいまや幻想に過ぎません。しかし、著者は一つの希望を見出しています。それは、多くの国民が精神的な進化を遂げ、現行の権力構造や腐敗した政治階級から静かに支持を撤回し始めていることです。トランプ氏が叫ぶ「次の征服」は、アメリカが国家としての根本に立ち返るための、最後の一撃となるのかもしれません。帝国としての虚飾が剥がれ落ちた先に、新たな変革の時が近づいています。

邪悪な封鎖戦略

Annihilating Iranian Civilization with a Blockade - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領とアメリカの国家安全保障機関は、爆弾による攻撃の脅しに続き、今度は「封鎖」という手段でイラン文明を壊滅させようとしています。未来自由財団のジェイコブ・ホーンバーガー氏は、この封鎖が爆撃と同様の「戦争行為」であると指摘します。中間選挙を控える中、ガソリン価格の高騰を招いたイランによるホルムズ海峡支配に対抗するため、米政府は自らも海峡を通過する石油を遮断するという、皮肉な戦略に出ました。

当初、国防総省は軍事力による海峡の再開を検討していましたが、最終的にはイランの港を利用する船舶のみを停止・押収する修正案を採用しました。これは、イランが海峡通過の通行料を得ることを防ぎ、経済的に窒息させることを目的としています。この手法は、ベネズエラやキューバで行われてきた、経済制裁によって国民を飢餓に追い込み、政権交代を迫る手法と同じです。米政府は、国民が飢餓の恐怖に直面すれば、イラン当局が中間選挙前に無条件降伏すると踏んでいます。

著者は、この戦略を「極めて狡猾である」と批判します。なぜなら、多くのアメリカ人は「文明が今夜死ぬ」といった爆撃の脅しには敏感ですが、制裁や封鎖による死には冷淡だからです。制裁は「平和的な外交ツール」として日常化されていますが、その実態は、政治的目的のために罪のない一般市民を困窮させ、病気や飢えで死に追いやるテロリストと変わらない邪悪な行為です。かつて1990年代に、当時の国連大使がイラクの子供50万人の死を「その価値がある」と断言した際、多くのアメリカ人は無関心でした。

こうした冷淡さは、アメリカが国家安全保障国家へと変質し、介入主義を深めてきた結果であると著者は説きます。人々は、ロシアやテロリストといったあらゆるものへの恐怖を植え付けられ、本来神に属するものであるはずの「自らの良心」を国家というカエサルに差し出してしまいました。国家が爆弾ではなく、制裁や封鎖という手段で他国の文明を滅ぼすことも、等しく邪悪な行為です。著者は、国民が良心を取り戻し、政府の行いに対して真剣な自省を行うことが、国を正しい軌道に戻すために不可欠であると訴えています。

失われた家庭の豊かさ

Tucker, A Half-Century of Household Income [LINK]

【海外記事より】アメリカの家庭における豊かさの実態について、エポックタイムズ紙でジェフリー・タッカー氏が鋭い分析を行っています。タッカー氏は、過去50年間のデータを遡り、現代の家庭がいかに「共働きの罠」に陥っているかを明らかにしました。一見すると、世帯年収の数字は数十年前に比べて上昇し、私たちはポケットに高性能な端末を忍ばせ、音声で照明を操るような便利な生活を手に入れたように見えます。しかし、その表面的な豊かさの裏側で、医療費は支払えないほど高騰し、住宅購入は夢のまた夢となり、実質的な収入は伸び悩んでいます。

タッカー氏は、経済学者が個人の所得や世帯年収の数字だけを見て、その収入を得るために費やされた「労働時間」を考慮していない点を批判しています。1950年代、アメリカの母親の約80%は家庭にいて、父親一人の収入だけで中流階級の生活を送ることが十分に可能でした。当時のテレビ番組が描いたような、庭付きの家と二台の車、そして家族の平穏な週末という光景は、一人の稼ぎ手によって支えられていたのです。しかし、1970年代のインフレを境に状況は一変しました。生活水準を維持するために母親たちが労働市場へ出始め、1985年には60%、現在では65%もの家庭が二馬力で家計を支えるようになっています。

この75年間の変化を冷静に分析すると、驚くべき事実が浮かび上がります。世帯に二つ目の収入源を加えたことは、労働負担が100%増加したことを意味しますが、それによって得られた物質的な収入の増加はわずか20%程度に過ぎません。これを家庭単位の「実質的な時給」に換算すると、過去数十年で40%から50%も下落している計算になります。つまり、現代の家庭はかつてよりも多くの時間働いているにもかかわらず、労働の対価としては劇的に貧しくなっているのです。かつて母親が無償で行っていた家事や育児を、現在は夜間や週末に詰め込むか、あるいは託児所や代行サービスに高い費用を払って外注せざるを得ず、それがさらなる出費を生むという悪循環に陥っています。

こうした傾向は、家族の形成にも深刻な影響を及ぼしています。かつて結婚がもたらしていた経済的な安定という恩恵は失われ、子供を育てることは純粋な経済的負担へと変わりました。その結果、出生率は低下し、若者たちは結婚を先延ばしにするようになっています。特に現在のZ世代は、祖父母の世代が当たり前に手に入れていた「普通で幸せな生活」を送ることが極めて困難な状況に直面しています。タッカー氏は、政府だけがインフレや納税者の増加によって恩恵を受ける一方で、家庭が失った「心の平和」や「家族の絆」という価値を再考すべきだと訴えています。私たちが進歩と呼んできたものは、実は生活水準の衰退そのものだったのかもしれません。

覆る世界秩序

Peace!Fire! [LINK]

【海外記事より】アメリカが強行した対イラン戦争という「思慮に欠ける混乱」が、世界秩序を根底から覆しつつあります。金融コラムニストのショーン・リング氏は、この戦争がもたらした「意図せざる結果」によって、過去25年間にわたり警告されてきた「ドルの覇権喪失」や「帝国の崩壊」が現実のものとなっていると指摘します。かつてのアメリカは、同盟国に利益を分配し、安全を保障することで帝国を維持してきましたが、現在のワシントンは自らの行動が招く結末に盲目であり、周辺諸国を守ることも繋ぎ止めることもできなくなっています。

欧州では、大西洋同盟に深刻な亀裂が生じています。アメリカが十分な事前協議もなく戦争を開始したことで、エネルギーコストの急騰を招き、ドイツやフランスの産業は壊滅的な打撃を受けています。安価なロシア産ガスを断たれた欧州は、アメリカ産の高価な液化天然ガス(LNG)に頼らざるを得なくなりましたが、それさえもアジアへ転売される事態に直面し、アメリカの信頼性に強い疑問を抱いています。NATOの解体すら囁かれる中、ロシアのプーチン大統領は高騰する原油価格で戦費を賄い、アメリカの失策を傍観しています。欧州諸国は、アメリカがいずれ自分たちを見捨てると確信し、ロシアとの独自交渉を視野に入れ始めています。

アジアにおいても、アメリカの同盟関係は揺らいでいます。韓国はこれまでアメリカの要請に従って中国との経済関係を犠牲にしてきましたが、米軍が中東へ戦力を再配置したことで、アメリカの安全保障の約束が空虚なものであると悟りました。驚くべきことに、アメリカの多方面での継戦能力に疑念を抱いた南北朝鮮の間では、安定を求めて和解を模索する動きさえ出始めています。一方、台湾でもウクライナの惨状を目の当たりにし、「アメリカのために戦って焦土と化す」ことを拒否する声が高まっています。中国やロシアに対しては、もはや制裁の効果が限定的であることも露呈しており、台湾が「第二のウクライナ」になることを避ける動きが加速しています。

中東の産油国も、これまでの親米路線から明確に脱却しようとしています。湾岸諸国は膨大な米国債を売却し、資産を北京やモスクワへ分散させ始めました。さらに、イスラエルが中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一部であるイラン・中国間の鉄道を爆撃したことは、中国を激怒させる決定的な要因となりました。この戦争は、アメリカが最も恐れていた「脱ドル化」と、ユーラシア大陸を中心とした新たな勢力圏の形成を加速させています。リング氏は、資本の流れがアメリカから流出し、軍事力による覇権が終わりを迎える中で、世界は二度と以前の姿には戻らないだろうと予測しています。

激動の石油市場

Bombs, Barrels, and Blockades… Oh My! - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】世界の石油市場が、かつてない激動の渦中にあります。現在、121隻もの空のタンカーがアメリカのガソリンスタンドならぬ「石油積み出し港」を目指して、メキシコ湾岸へ向かっています。これは一時的な現象ではなく、欧州からの航路で46%、アジアからの航路では132%もタンカーの流入が急増しているという異常事態を反映しています。トランプ大統領もSNSで「世界最大級の空のタンカーが大量にアメリカへ向かっている」と言及しましたが、これは世界の石油動態が根本から変質したことを物語っています。かつては輸出大国だった中東などの供給網が機能不全に陥り、世界中の買い手がアメリカ産の原油を求めて列をなしているのです。

この危機の背景には、解決の糸口が見えない国際情勢があります。先週、一時的に停戦交渉への期待から原油価格が下落する場面もありましたが、現実は残酷でした。イスラマバードで行われた停戦交渉はわずか21時間で決裂し、両者の溝はかつてないほど深まっています。アメリカ側はイランによるウラン濃縮の継続を断固として拒否しており、交渉の余地は全く残されていません。イランが2月28日にホルムズ海峡を事実上封鎖したことで、世界の市場から日量約1100万バレルの供給が断たれました。これは1970年代のオイルショック以来、最大の供給障害となっています。

事態をさらに悪化させているのが、トランプ政権による新たな封鎖作戦です。今週月曜から、イラン産の石油を運ぶすべての船舶を阻止する強力な海上封鎖が開始されました。これにより、これまで封鎖をかいくぐって輸出されていた日量185万バレルのイラン産原油も完全に市場から消えることになります。一方で、サウジアラビアやクウェートなど他の産油国も、イランによる海峡封鎖のために輸出が滞っています。アメリカは過去最大規模の戦略備蓄の放出で時間を稼ごうとしていますが、根本的な解決には程遠いのが現状です。市場では原油価格が再び高騰し、1バレル115ドルを突破しました。

現在、世界中の空のタンカーがアメリカに押し寄せているのは、アメリカのシェールオイルが救世主になると期待しているからです。しかし、現実はそれほど甘くありません。100隻以上のタンカーが一度に押し寄せれば、港湾での積み込み作業に深刻な渋滞が発生し、供給の遅れは避けられません。また、アメリカのシェール生産も過去1年で頭打ちとなっており、かつてのような増産余力は失われつつあります。このまま対立が長引き、エネルギーコストが経済の許容範囲を超えれば、1973年を上回るような世界的な不況に突入する恐れがあります。タンカーの列は、もはや希望の象徴ではなく、エネルギー危機という巨大な壁に突き当たった世界の混迷を象徴しているのかもしれません。

文明は内部から崩れる

"Civilizations Die from Suicide, Not From Murder" [LINK]

【海外記事より】歴史学者のアーノルド・トインビーが提唱した「文明は他殺ではなく、自殺によって死ぬ」という有名な学説が、現在の西洋社会、特にアメリカにおいて驚くほど鮮明に体現されていると著者のジョン・リーク氏は指摘しています。トインビーは世界各地の文明を比較分析した結果、文明の崩壊は外部からの征服ではなく、内部の腐敗によって引き起こされる自己崩壊のプロセスであると結論付けました。この記事では、かつて繁栄を極めた文明がなぜ衰退の道を歩むのか、そのメカニズムを現代のシリコンバレーなどの事例を交えながら冷静に考察しています。

トインビーの理論によれば、文明が成長するのは、環境や社会の課題に対して「創造的少数者」と呼ばれるエリート指導層が適切に対処している期間です。大衆は強制されることなく、自発的にこの指導層に倣い、社会全体が活力を維持します。しかし、衰退はこの創造的少数者が、単なる「支配的少数者」へと変質したときに始まります。過去の成功に溺れ、うぬぼれたエリート層は道徳的権威を失い、人々への責任感や創造への意欲ではなく、武力や強制力によって統治しようとし始めます。社会には傲慢さや偏ったナショナリズム、軍国主義、そして物質的な快適さの追求が蔓延するようになります。

こうした状況下では、社会に「分裂」が生じます。支配層は統治する人々の現実からますます乖離し、一方で大衆はエリート層への信頼と信仰を捨て、精神的に離反していきます。これによって生じる「動乱の時代」には、深刻な階級闘争や、現状を維持しようとする無益な帝国主義的拡大が繰り返されます。トインビーは、古代ギリシャ・ローマ文明を例に挙げ、ローマの強固な帝国機構であっても、内部で進行した精神的な消耗や社会的な疎外を補うことはできなかったと説明しています。外部からの侵略は、すでに内側から腐っていた巨木を嵐がなぎ倒すように、崩壊の速度を速めたに過ぎないのです。

トインビーが1975年に亡くなるまで説いたこの教訓は、現代の西洋諸国にもそのまま当てはまります。過度な誇りや慢心、強欲、そして現実からの逃避によって、自らを維持し構築することを放棄したときに文明の自殺は決定的となります。しかし、トインビーは衰退が決して避けられない運命だとは考えていませんでした。彼は人間の主体性を信じており、新たな創造的少数者が現れることで、衰退を遅らせたり止めたりすることも可能であるとしています。この記事は、現代文明が技術的な卓越性とは裏腹に急速な衰退を見せている今、私たちがどのような選択をするべきかを問い直しています。

米イスラエル、孤立と信頼失墜

The Collapse of the US/Israel’s Coup against Iran—And What It Means - VT Foreign Policy [LINK]

【海外記事より】アメリカとイスラエルによる対イラン工作の失敗と、それがもたらす国際情勢の変化について、VT(ベテランズ・トゥデイ)のシニアエディター、ジョナス・アレクシス氏が分析しています。2026年2月28日、トランプ大統領が対イラン戦争を決断した背景には、ネタニヤフ首相による強気な予測がありました。当時の報告によれば、ネタニヤフ氏は「イランの弾道ミサイル網は数週間で破壊でき、政権は崩壊寸前である」と伝え、トランプ政権の幹部らを納得させたといいます。しかし、現実にはイランは屈せず、ホルムズ海峡の制圧を維持し、米イスラエル双方の資産に打撃を与えるなど、彼らの期待とは正反対の結果を招くことになりました。

この衝突の結果、国際的な優位性はイラン側に傾いているというのがアレクシス氏の見解です。イスラエル側は自らの力を過信し、イランを過小評価していましたが、実際にはイランの反撃能力を予測できていませんでした。また、中国やロシアが米イスラエルの行動に明確な反対を表明し、核兵器の使用が世界大戦を招きかねない状況となったことで、トランプ氏は最終的に和平交渉へと舵を切らざるを得なくなりました。そもそもなぜ、トランプ氏がイスラエル側の無理な戦争計画に合意したのかという点について、アレクシス氏はネタニヤフ政権がトランプ氏の弱みを握っている可能性を示唆しています。これについてはタッカー・カールソン氏なども、過去の政治家が同様の圧力を受けた例を挙げて言及しています。

さらに事態を複雑にしているのが、トランプ大統領夫人のメラニア氏の動向です。彼女は政権の方針に反し、ジェフリー・エプスタインに関連する文書が真実であるとする声明を出し、被害者の声を聴くべきだと主張しました。この発言は政権内に混乱を招きましたが、アレクシス氏はこれを彼女自身の保身のための動きである可能性も指摘しています。いずれにせよ、一連のイラン情勢を通じて、アメリカとイスラエルの国際的な立場は以前の状態に戻れないほど弱体化したというのが多くの専門家の一致した見方です。

今回のイラン攻撃は、アメリカとイスラエルにとって重大な失策となりました。NATOがこの紛争への関与を拒否したことも、両国の孤立と信頼の失墜を象徴しています。一方で、ロシアや中国、インドを含むBRICS諸国は両国の行動を強く批判しており、世界秩序のバランスが大きく変化しつつあります。アレクシス氏は、自らの行動が予期せぬ敗北を招いたこの状況を、哲学者ヘーゲルの言葉を借りて「理性の狡知」と表現し、米イスラエルによる世界的な影響力の崩壊を淡々と描き出しています。

米、支出増が財政圧迫

U.S. Government Spending Addiction Drives Yet Another Big Monthly Deficit [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府の財政は、深刻な支出依存から抜け出せずにいます。マイク・マハリー氏の記事によると、2026会計年度の半年が経過した時点で、連邦予算の赤字はすでに1兆1700億ドルに達しました。2026年3月単月の実績を見ても、歳入が大幅に増加したにもかかわらず、1641億ドルの赤字を計上しています。これは前年同月の赤字額を約2%上回る規模です。こうした慢性的かつ巨額の月次赤字により、連邦債務は膨れ上がり続けています。債務残高は昨年10月に38兆ドルを超えたばかりですが、先月には早くも39兆ドルの大台を突破しました。

歳入面では、関税収入の急増によって今年度の赤字額は前年同期比で約11%減少しており、一見すると改善しているようにも見えます。3月の歳入は前年比5%増の3848億6000万ドルと、3月としての過去最高記録を更新しました。特に関税は前年同月比で170%以上も増加し、大きな財源となっています。しかし、その一方で政府支出は依然として抑制が効かない状態にあります。3月の支出額は5489億6000万ドルに上り、前年同期を4%上回りました。トランプ政権下では一部の省庁で予算削減も行われましたが、全体的な支出の勢いは止まっていません。

さらに懸念されるのは、今後の支出増加要因です。3月のデータには、イランとの戦争に関連する膨大なコストがまだ完全には反映されていません。政府当局の推計では、開戦からわずか6日間で約113億ドルの費用が発生したとされており、今後、兵器の補充などに伴う多額の出費が予算をさらに圧迫することが確実視されています。政府効率化省(DOGE)による無駄の指摘や支出削減の公約も、現時点では実際の予算削減にはほとんど結びついていません。政治的には、支出を削るよりも増やす方が容易であるという現実が浮き彫りになっています。

膨れ上がった約40兆ドルの債務に対する利払い負担も、看過できないレベルに達しています。3月の利払い費だけで1026億4000万ドルを要しており、今年度上半期の累計では、国防費やメディケア(高齢者向け医療保険)の支出を上回る規模となりました。これは社会保障に次いで、連邦予算の中で2番目に大きな支出項目となっています。かつての低金利時代に発行された国債が次々と満期を迎え、より高金利の債務に置き換わっているため、利払いコストは雪だるま式に増加しています。政治家たちがこの持続不可能な財政問題に真剣に取り組もうとしない中で、米政府の財政状態は実質的に債務超過に陥っていると言っても過言ではありません。

金、主流経済学者に勝利?

Mainstream Economists vs. Gold: Who Is Winning the Fight? [LINK]

【海外記事より】主流派経済学者と金の長年にわたる対立において、現在は金が勝利を収めつつあるようです。ブルームバーグのコラムニストであるアーロン・ブラウン氏は、経済学者と金との「戦争」の歴史を振り返り、最新の情勢を分析しています。この対立の口火を切ったのは、1923年に金を「野蛮な遺物」と呼んだジョン・メイナード・ケインズでした。彼は金本位制を時代遅れのものとし、これからは経済の専門家が管理する法定通貨が主流になると信じていました。政府にとって、発行量を金の保有量に縛られる金本位制は、戦費や社会福祉のための支出を制限する邪魔な存在だったため、この理論は歓迎されました。

1930年代、フランクリン・ルーズベルト大統領は支出拡大のため、個人の金保有を事実上禁止し、政府が金を回収してドルの価値を大幅に切り下げました。1944年のブレトンウッズ体制では、各国通貨をドルに固定し、ドルを金と結びつけましたが、金は象徴的な地位に格下げされました。しかし、1960年代に米国がベトナム戦争などで支出を増やすと、ドルの価値が低下し、各国がドルを金に交換し始めたため、米国の金準備が底をつく懸念が生じました。これを受けて1971年、ニクソン大統領は金とドルの交換を停止し、管理通貨制度へと完全に移行しました。当時の経済学者の多くはこの決定を支持しましたが、その後の10年で金の価格は35ドルから850ドルへと急騰し、投資家は現金の価値を大きく失うことになりました。

その後、1980年代のインフレ抑制により経済学者の管理する通貨への信頼が一時的に回復したものの、2008年の金融危機で再び揺らぎました。そして現在、ブラウン氏は「現代において最も重要な局面」が訪れていると指摘します。そのきっかけはインフレではなく、ドル建て資産が本当に安全かという根本的な問いです。ロシアのウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアを国際的な決済システムから排除したことで、中立的な立場の中央銀行は、ドルやユーロによる資産が没収されるリスクを認識しました。他国の政策や制裁によって凍結されず、ハッキングもされず、政府を信頼する必要のない唯一の予備資産として、金が再評価されています。

実際に2025年の各国中央銀行による金準備の拡大は、史上4番目の規模を記録しました。2022年には過去最高の購入量を記録しており、昨年末には、各国の準備資産に占める金の割合が1996年以来初めて米国債を上回りました。これは、主流派経済学者が築き上げたシステムに対する「不信任投票」を意味しています。かつての金高騰は個人投資家やインフレ懸念が主導していましたが、現在の動きは国家機関による戦略的な選択です。ケインズは金の役割を軽視しましたが、流動性と中立性を備え、政治的リスクから自由な金の代替品を見つけることがいかに困難であるかを過小評価していました。5000年の歴史を持つ金と、数百年の歴史しかない経済学者の理論との戦いは、現在、金が優勢となっているようです。

2026-04-14

ローマ教皇、反戦の訴えやめず

In Response to Trump, Pope Leo Says He Will Continue Speaking Out Against War - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ローマ教皇レオ14世は、トランプ大統領から受けた激しい非難に対し、今後も戦争に反対し続ける強い意志を表明しました。事の発端は、トランプ氏が自身のSNSにおいて、米国出身の教皇がイランとの戦争やベネズエラへの攻撃を批判していることを捉え、「犯罪に弱く、外交政策もひどい」「極左に迎合している」と攻撃したことにあります。これに対し教皇は、アフリカ歴訪へ向かう機内で記者団に対し、「平和を築く人々は幸いである」という福音のメッセージは明確であり、平和と和解のための架け橋を築く呼びかけを辞めることはないと語りました。

トランプ氏は、教皇がイランの核武装を容認しているかのような主張を展開し、教皇がかつてのオバマ政権の戦略家と面会したことなども批判の対象としました。さらにトランプ氏は、自身をイエス・キリストになぞらえたようなAI画像を投稿し、米国内のキリスト教徒から強い反発を招くという騒動も起こしています。一方で、教皇は自身を政治家ではなく宗教者であると定義し、特定の政治的議論に深入りすることは避けつつも、あまりに多くの無実な人々が命を落としている現状に対し、より良い道があることを誰かが訴えなければならないと述べています。

教皇は、歴代の教皇として初めて訪問したイスラム教国のアルジェリアにおいても、平和への訴えを続けました。アルジェの殉教者記念碑の前で教皇は、平和とは単に紛争がない状態を指すのではなく、正義と尊厳の現れであるべきだと説きました。演説の最後には、マタイによる福音書の「山上の垂訓」を引用し、平和を求める人々や義に飢え渇く人々への祝福を強調しました。国家間の対話と多角的な関係を促進することで、正義に基づいた解決策を模索し続けるという教皇の姿勢は、対立を深める米国政権の外交方針とは対照的なものとなっています。

イラン攻撃の道徳的誤算

Moral Miscalculation: America’s Misunderstanding of Iran Is Leading to Catastrophe - Crisis Magazine [LINK]

【海外記事より】カトリックのジャーナリスト、マシュー・カリン・ホフマン氏は、現在の米国によるイランへの攻撃は、歴史的な無知と「ファンタジー」に基づいた道徳的な誤算であると指摘しています。トランプ大統領が進める強硬策は、1980年にサダム・フセインがイラン侵攻を決断した際の誤算と酷似しています。当時、フセインはイラン国民が政府に不満を持ち、攻撃者を「解放者」として歓迎すると助言されましたが、現実は正反対でした。イラン国民は愛国心から団結し、民間人までもが志願して軍を支え、圧倒的な犠牲を払いながら侵略者を押し返したのです。この歴史は、イランの現体制が外部からの圧力によって簡単に崩壊するような脆弱なものではないことを示しています。

ホフマン氏は、米国とイランの不幸な関係は1979年の大使館占拠事件ではなく、1953年に米国と英国が仕掛けた「アジャックス作戦」に遡ると説いています。この工作により、民主的に選出されたモサデク政権が打倒され、米国の傀儡であるパフラヴィー国王による独裁体制が構築されました。その後、米国は秘密警察を支援して反対派を弾圧し、イランの資源を搾取しました。1979年の革命は、こうした長年の外国支配に対するナショナリズムの爆発でした。イランの人々にとって米国大使館は「スパイの巣窟」であり、再び民主主義が乗っ取られることを防ぐための行動が、結果として強固な宗教国家を生む引き金となったのです。

現在の米国の政策は、イスラエルの利益を優先するあまり、外交的な解決の道を自ら閉ざしています。トランプ政権は、イランが核兵器を開発していないという情報機関の評価を無視し、イスラエルによる一方的な攻撃を追認する形で対立を煽っています。ホフマン氏は、米国が過去にイラクへ化学兵器の原料を提供してイラン人を殺傷したことなど、自らの過ちを認めるべきだと主張します。キリスト教的な倫理に基づけば、他国の主権を尊重し、対等な立場で交渉のテーブルに戻ることこそが正解です。現在の好戦的な姿勢は、中東全域に壊滅的な破壊をもたらし、世界を未曾有の災害へと導く危険性を孕んでいます。

政府崩壊、5つのサイン

5 Subtle Signs the Government Is Collapsing (And #1 Is Already Here) [LINK]

【海外記事より】政府の崩壊は、多くの人が想像するような劇的なニュースや街頭の戦車から始まるのではありません。歴史を振り返れば、文明は一瞬で倒れるのではなく、内側から空洞化し、表面上は平穏を保ちながら徐々にその実質を失っていくものです。かつてのローマ帝国が、銀貨に含まれる銀の量を減らし、見かけだけの貨幣を兵士に支払うようになった時、すでに崩壊の兆しは現れていました。現在の米国においても、こうした「衰退の兆候」は、政治的な議論ではなく、私たちの日常生活を支える背景的なメカニズムの中に、5つの静かなサインとして現れ始めています。

第1の、そして最も深刻なサインは「通貨の価値低下」です。米国の公的債務は34兆ドルを超え、連邦予算の多くが過去の借金の利息支払いに費やされています。政府はこの圧力を分散させるために通貨供給量を増やし、結果として物価を押し上げています。食費や家賃、保険料の上昇は単なる一時的なインフレではなく、システムが自重に耐えきれなくなっているシグナルです。給与が追いつかず、貯蓄の購買力が失われていく中で、人々は日々の生活を維持するために本質的な支出を削らざるを得なくなっています。歴史的に、アルゼンチンやジンバブエ、ドイツなどで見られた経済不安の初期段階も、こうした「緩やかな購買力の喪失」から始まりました。

第2、第3のサインは、政府が「自己責任」を強調し始め、供給網が脆弱性を露呈することです。FEMA(米連邦緊急事態管理庁)などの機関が、危機の際に最初の72時間は公的支援なしで生き延びるよう推奨しているのは、公的システムが限界に達していることの裏返しです。また、2021年に起きたような供給網の混乱は、効率性を追求するあまり冗長性を失った現代の流通システムがいかに薄氷の上にあるかを示しました。さらに第4、第5のサインとして、公的機関への信頼が長期的に低下し、警察や消防といった地方自治体の基礎的なサービス機能が予算不足や人員不足で損なわれつつある現状が挙げられます。

これらの兆候は、ある日突然すべてが壊れることを予言するものではありません。そうではなく、金融、物流、制度、社会といった複数の層において、社会全体の「回復力(レジリエンス)」が段階的に失われていることを示しています。システムが安定から歪みへと移行する際、これらは常に共通して現れるパターンです。大切なのは、この変化を恐怖としてではなく、一つの事実として認識することです。システムへの依存がこれまで以上にリスクを伴う時代において、個人が自立した生活基盤を整えることの重要性がかつてないほど高まっています。

中国への「宣戦布告」

Will China Retaliate Against Donald Trump's Oil Blockade and Force an American Surrender?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】イスラマバードで行われたアメリカとイランの和平交渉は、開始から24時間足らずで決裂に終わりました。ドナルド・トランプ米大統領は当初、イラン側の提案に基づく交渉を示唆していましたが、実際にはJ・D・バンス副大統領ら交渉団が、核濃縮活動の全面停止やホルムズ海峡の制圧権放棄といった、到底受け入れがたい要求を突きつけたことが原因です。交渉団は、6週間に及ぶ戦火で米軍が成し遂げられなかった成果を、交渉の場でもぎ取ろうとしたようですが、イラン側の態度は揺るぎませんでした。

この交渉決裂を受けて、トランプ大統領はペルシャ湾の封鎖を宣言しました。海軍に対し、ホルムズ海峡を通過するすべてのタンカーを拿捕し、イランの石油収入を断つよう命じたのです。イランによるミサイルの脅威があるため、米軍艦は沿岸から離れた公海上で拿捕を行うことになりますが、これは事実上の海賊行為であり、国際市場から日量150万バレルの石油を奪うことで価格の高騰を招きます。現在、イラン産原油の90%を購入している中国にとって、この封鎖は宣戦布告にも等しい行為です。

米政府内には、大規模な爆撃による勝利を確信する声もありますが、それは戦争の本質を見誤っています。イランは長年、非対称戦略に投資し、山岳地帯に分散配置された精密ミサイルやドローンの軍火庫を構築してきました。これらは開戦直後の米軍による攻撃を生き延び、すでに中東の米軍基地を破壊し、高価なレーダー施設や早期警戒管制機を無力化しています。2兆ドル以上を投じた米海軍の艦隊も、イランのミサイルの前では脆弱で、沿岸から遠ざかることを余儀なくされました。

さらに、イランはホルムズ海峡を閉鎖することで、世界の石油・天然ガス輸出の20%以上を人質に取っています。実物資産の石油価格はすでに1バレル145ドルを超え、過去最高値を更新しました。トランプ大統領は、この窮地を脱するためにイランの濃縮ウランを奪取する特命作戦を試みたようですが、これも輸送機やヘリを多数失う悲惨な失敗に終わったと分析されています。追い詰められた大統領は、SNSでイランの文明そのものを消滅させるといった過激な発言を繰り返しており、かつての支持者や保守派メディアからも、その狂気と非人道性を激しく批判されています。

交渉決裂なら戦禍拡大も

Iran’s Determination to Break Out From the Panopticon of Western 360° Containment - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元英国外交官のアラスター・クルーク氏は、西アジア全域における戦闘停止の行方が、極めて不安定な均衡状態にあると指摘しています。当初、イラン側が提示した恒久停戦に向けた10項目の前提条件には、レバノンを含む「全戦線」での軍事行動停止が含まれていました。トランプ大統領も一度はこの枠組みを直接交渉の「実行可能な基盤」として承認し、仲介者やパキスタン首相もレバノンが停戦対象に含まれることを確認していました。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相からの電話会談を境に、トランプ氏の立場は一転しました。イスラエル側はレバノンの居住地区に対して大規模な攻撃を敢行し、1,000人以上の死傷者を出すことで、ヒズボラに対しては停戦が存在しないことを事実上突きつけたのです。

クルーク氏によれば、この事態の背景には、レバノン国内で内戦を誘発させ、現体制を崩壊させようとするイスラエル側の長年の意図が透けて見えます。イラン側は「全員にとっての停戦か、誰にとっても停戦ではないか」という明確な立場を崩しておらず、交渉が成立するかどうかは、トランプ氏がネタニヤフ首相の攻撃的な姿勢を抑えられるかどうかにかかっています。しかし、米国の軍事的な現実は厳しく、ペルシャ湾周辺の海軍力や基地は損害を受け、ミサイル在庫や防空システムも限界を露呈しています。現在の状況は、米国にとって包括的な戦略的敗北に近い形を呈しており、トランプ氏は政治的にも軍事的にも、かつてイランからのアメリカ人人質救出作戦に失敗したカーター大統領が直面したような窮地に立たされています。

今回の紛争は、もともとイランの最高指導者を殺害し、短期間で体制を転覆させるという見通しの甘い計画から始まったとクルーク氏は分析しています。トランプ氏とネタニヤフ首相は、イランによる即座の報復攻撃や米軍基地への打撃を全く予期していませんでした。内部蜂起によって体制が崩壊するという根拠のない確信に基づいた戦略は、結果として米国を出口のない泥沼へと引きずり込みました。現在、イランは70年にわたる欧米の抑圧的な枠組みを打破しようとしており、米国に大きな譲歩を迫っています。交渉が決裂すればさらなる戦禍が広がる恐れがあり、世界経済や市場への影響を含め、事態は非常に深刻な局面にあります。

海峡「逆封鎖」の愚

Blockading The Blockade? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元米連邦下院議員のロン・ポール氏は、トランプ大統領がイランとの戦争を終結させる絶好の機会を逃し、事態をさらに悪化させていると批判しています。パキスタン政府の仲介により、2週間の停戦と高官級の交渉が実現しましたが、米国側がイランに対してウラン濃縮施設の廃棄など極端な要求を繰り返したことで、協議は決裂しました。ポール氏によれば、この停戦は結果として、米国とイスラエルが軍備を再編し、補充するための時間稼ぎに利用された可能性が高いとのことです。交渉失敗を受けてトランプ大統領は対決姿勢を強め、イランによるホルムズ海峡の封鎖に対抗し、米国自らが同海峡を「逆封鎖」すると宣言しました。

この新たな方針によれば、米軍はイランの港を出入りする全ての船舶を臨検し、押収するリスクを冒すことになります。すでにホルムズ海峡の通行制限によって原油価格や肥料価格は急騰しており、米国内のインフレ加速と世界市場の混乱を招いています。ポール氏は、こうした状況下で米国がさらなる封鎖を強行することは火に油を注ぐ行為に等しく、世界経済に壊滅的な打撃を与える恐れがあると指摘しています。さらに、イエメンのフーシ派がこの動きに反応して紅海を閉鎖すれば、世界的な経済大恐慌に発展する危険性すらあると警鐘を鳴らしています。

トランプ政権の強硬な姿勢とは裏腹に、国際社会の足並みは揃っていません。欧州や日本、韓国などは米国の軍事行動に加わるのではなく、独自にテヘラン側と交渉し、通行料を支払うことで事態を回避する道を選んでいます。また、ホルムズ海峡の通行料が中国の人民元で支払われるようになるなど、石油取引におけるドルの優位性、いわゆるペトロダラー体制も揺らぎ始めています。米国の世界的な覇権がリアルタイムで挑戦を受ける中、大統領は外交的な解決策から遠ざかり、中東への軍備増強を急いでいます。ポール氏は、議会が沈黙を守る中で中国が米国に警告を発するなど、大規模な軍事的衝突の懸念がかつてないほど高まっている現状を危惧しています。

似非オーストリア学派の害悪

Story of an Economyth [LINK]

【海外記事より】オーストリア学派経済学を標榜しながら、その本質的な教義から逸脱した主張を行う「似非オーストリア学派」とも呼ぶべき動向に、警鐘を鳴らす論考が発表されました。フランスでマレー・ロスバードの遺産を広める活動を行うステファン・ゲレス氏は、著名な大学教授であるフランソワ・ファキーニ氏の近著を例に挙げ、学派の看板を掲げながら学術的誠実さを欠く姿勢を批判しています。具体的には、この教授が「明日の税制はどうあるべきか」という著作の中で、本来「課税は略奪である」と説くべき立場にありながら、税金を「必要悪」として容認し、いかに効率的に徴収するかという議論に終始している点に疑問を呈しています。

批判の核心は、経済学における手法の矛盾にあります。ミゼスやロスバード、ホッペといったオーストリア学派の巨頭たちは、経済学を「人間の行動」に関する論理的・先験的な科学と位置づけ、数値化や計測が不可能な分野であると説いてきました。しかし、問題視されている教授は、100年以上にわたる膨大な統計データを用いた実証研究を行い、フランスにおける国家の「最適な規模」は国内総生産(GDP)の30%であると結論づけています。これは、国家が支出する資金は元を正せば略奪されたものであるという学派の根本原理を無視し、犯罪の「最適値」を探るような矛盾した試みであるとゲレス氏は指摘します。

このような妥協的なアプローチは、現実の政治家に対して支出削減を促すための「戦略的で賢明な手法」と見なされることもあります。しかし、ゲレス氏は、こうした妥協が一般の人々の間に「オーストリア学派は最適課税を認めるものだ」という誤解を広め、自由を希求する運動や経済科学そのものを汚すことになると懸念しています。アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領の台頭以降、学派の名が注目を集める中で、自称「オーストリア学派」がその一貫性を失い、既存の権力構造に阿ねるような理論を展開することに対し、真の誠実さと勇気を持って自らの立ち位置を明確にするよう求めています。

AIブーム、失速のリスク

Daisy Chains Of Risk – The Felder Report [LINK]

【海外記事より】現在の世界経済は、1973年の石油ショック時よりもエネルギー供給の混乱に対して脆弱な状態にあるという指摘が出ています。専門家によれば、近年の商品市場の動向はブームの終焉を意味するものではなく、むしろ本格的な上昇相場はまだ始まっていない可能性すらあります。こうしたエネルギー価格の高騰や供給不足といったリスクは、単にコストを押し上げるだけでなく、現代経済の成長を牽引する先端分野にも深刻な影を落とし始めています。特に懸念されているのが、長期化する地政学的な危機が、現在進行中の人工知能(AI)への投資ブームを失速させるという連鎖反応です。

実際に、その予兆はデータセンターの建設現場にも現れています。2025年第4四半期、アメリカにおけるデータセンターの新規プロジェクトの発表数は、前の期と比較してほぼ半減しました。これはAIに対する需要がなくなったためではなく、電力供給の確保が極めて困難になったことが主な原因です。AIインフラの維持には莫大なエネルギーが必要であり、エネルギー供給網の限界が、技術革新のスピードを物理的に制約し始めています。エネルギー不足によるコスト増と供給不安は、技術部門の成長を妨げる大きな要因になりつつあります。

さらに、こうしたリスクの連鎖は、金融システムの深部へと波及する恐れがあります。密接に相互接続された現在の経済システムにおいて、プライベート・クレジット(ノンバンク融資)の弱体化は、巨大IT企業によるAI投資の重荷となります。それが企業の成長期待を削ぐことになれば、最終的には株式市場のポートフォリオに影響を及ぼし、数千万人の人々の退職金や年金基金を脅かすことにもなりかねません。エネルギー、技術投資、そして個人の資産形成までが、リスクの数珠つなぎによって一つの大きな脆弱な連鎖を形成しているという視点が示されています。

ドル不信、元国際化のチャンス

Yuan’s ‘golden window’ is open, former PBOC governor says as US dollar credibility teeters | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】中国人民銀行の元総裁である周小川氏は、米ドルの信頼性が揺らいでいる現状が、中国の通貨である人民元の国際化を推し進めるための「黄金の好機」となっているとの見解を示しました。周氏は今月、上海で開催されたフォーラムにおいて、アメリカによる広範な関税の適用や、制裁措置へのドルの頻繁な使用、そして地政学的な紛争といった要素が、ドルの世界的な公信力を損なわせていると指摘しました。現在の国際通貨システムにおける変化の核心的な原動力は、アメリカ自身の政策選択にあるという分析です。一方で、中国には資本が還流しており、人民元には価値が上昇する方向への圧力がかかっています。周氏は、こうした状況を背景に、人民元の国際化を中国の経済力に見合った水準まで着実に進めるべきだと主張しています。

周氏は2002年から2018年まで中央銀行総裁を務め、2009年に人民元による国境を越えた貿易決済を導入するなど、その国際化の基礎を築いた人物です。同氏は、中国の貿易黒字が通貨の海外流出の妨げになるという理論的な懸念に対し、資本勘定や海外融資を通じて世界市場に人民元を供給できるため障壁にはならないと反論しています。また、準備通貨としての実際の需要は米国債の発行残高よりもはるかに低いため、中国がアメリカのような巨額の債務を発行する必要はないとも述べています。ただし、人民元の国際化を成功させるためには、安全で換金性が高く、流動性のある資産の供給が依然として不可欠であり、中国の国債市場の開放や投資の利便性については、さらなる改善が必要であると付け加えました。

現在、ドルに代わる強力な通貨が短期間で現れる可能性は低いものの、周氏は人民元の自由な利用や資本勘定の兌換性を高め、過度な規制を避けるべきだと提言しています。あわせて、上海のような国際金融センターの育成や、決済インフラの整備を求めています。実際に中国政府は、欧米主導の決済ネットワークに対抗する独自のシステムであるCIPSの運営規則を、2026年2月に大幅に改定しました。この改定ではオフショア人民元が対象に加えられ、金融機関の参加枠も拡大されました。こうした動きは、ドルの支配力が問われる中で、人民元が国際的な決済手段としての地位を強化しようとする中国の姿勢を反映したものです。

金、安保インフラに

Op-Ed: How gold became national security infrastructure - MINING.COM [LINK]

【海外記事より】フランスの中央銀行は4月、自国が保有する全ての金準備を国内に回収したことを明らかにしました。2025年7月から2026年1月にかけて、ニューヨーク連邦準備銀行に預けていた129トンの金を売却し、欧州市場で同等の金を購入することで、合計2,437トンの保有量を維持したまま、100%自国での管理を実現したのです。この動きは、北大西洋条約機構(NATO)の創設メンバーであるフランスが、主要な同盟国であるアメリカの預かりから資産を引き揚げたという政治的な意味合いを持っています。同様の動きは世界的に加速しており、ドイツも一部を国内に戻しているほか、インドも2023年以降に大規模な本国送還を実施しました。これは、2022年にロシアの準備資産が凍結されたことを受け、外国の司法権の下で資産を保有することに伴う主権リスクを、各国の中央銀行が強く認識し始めた結果と言えます。

中央銀行による金の購入は、2025年には863トンに達し、4年連続で高い水準を維持しています。特にポーランドの中央銀行は、金の保有を国家安全保障の観点から捉え、積極的な積み増しを続けています。ゴールドマン・サックスは、金の価格が一時的な調整局面にあっても、長期的には1オンスあたり5,400ドルに達すると予測しています。金市場への需要は、単なる投機的なものではなく、準備資産の安全性を守るための構造的な再編によるものです。世界的な金の需要は初めて5,000トンを超え、上場投資信託(ETF)や地金への流入も過去最高水準にあります。各国の主権者や機関投資家は、従来の準備資産に対するルールが変化した現代において、金の価値を再評価しているのです。

中国の戦略も、単なる資産運用を超えた体系的なものです。中国人民銀行は16ヶ月連続で金を購入し、米国債の保有を減らすことで、制裁の影響を受けないポートフォリオへの転換を進めています。中国は世界最大の金産出国であるだけでなく、西アフリカなどの海外での鉱山開発や、戦略的鉱物の精錬能力の確保にも注力しています。また、ドバイやロンドンなどの物流拠点が地政学的な危機にさらされた際、金の供給網が混乱するリスクも顕在化しました。これを受け、金の精錬所や物流網そのものが、国家の金融主権を支える戦略的なインフラとして重視されるようになっています。金はもはや単なる商品ではなく、国家の安全保障を担う戦略的な能力そのものとして位置づけられているのです。

2026-04-13

ガザ人道支援の外注

Is Board of Peace handing Gaza over to private contractors? | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が主導する「平和委員会(Board of Peace)」がガザ地区での新たなイニシアチブを始動させる中、人道支援業務をアメリカの民間軍事会社に委託する動きが再浮上し、懸念を呼んでいます。フィナンシャル・タイムズ紙などの報道によれば、以前ガザで支援物資の配布拠点などを警備していたUGソリューションズ社などが、トランプ氏の計画下で新たなビジネスチャンスを積極的に模索しています。ある請負業者は、現在の状況をかつてのイラクやアフガニスタンの再来のように捉え、多くの企業が民営化された支援事業から利益を得ようと群がっている実態を明かしています。

こうした動きは、人道支援と軍事作戦の境界をさらに曖昧にし、パレスチナの人々にさらなる苦しみをもたらす恐れがあります。平和委員会の取り組みは、かつての「ガザ人道基金(GHF)」と同様のモデルを踏襲しているように見受けられます。このモデルは、経験豊富な支援団体ではなく軍事計画担当者や利益追求者によって構想されたもので、中立的な組織ではなく、米国の税金で雇われた民間請負業者がイスラエル軍の統制下で支援システムを運用する仕組みです。過去の事例では、イスラム教に否定的な姿勢を持つ武装グループに近い人物が警備にあたるなど、不透明な運営が指摘されてきました。また、物資の配布がガザ市以南の特定の場所に限定されたことで、北部の飢餓を加速させるといった、公平性の原則を著しく欠く事態を招いています。

現地の医療現場からは、組織的な物資の剥奪がもたらす惨状が報告されています。2024年12月に現地で活動した医師によれば、子供たちは重度の栄養失調に苦しみ、タンパク質不足で数ヶ月前の傷さえ癒えない状態にあります。汚染された水によるA型肝炎の蔓延や、燃料不足による衛生システムの崩壊も深刻です。医療従事者は、麻酔なしでの切断手術や、助かる見込みの高い子供を優先して選別せざるを得ないなど、極限の倫理的決断を強いられています。これらは紛争による自然な結果ではなく、組織的な供給制限がもたらした予見可能な事態であると記事は指摘しています。

国際法では、民間人の生存を脅かす生活条件を意図的に課すことを禁じていますが、現実には経験豊富なNGOが排除され、軍事化された不透明なシステムへの置き換えが進んでいます。トランプ政権の平和委員会は、人道危機の解決策というよりも、民間警備会社にとっての永続的で収益性の高い事業へと危機を変質させるものだと批判されています。軍事的な統制から支援を切り離し、中立的な人道支援組織に権限を戻さない限り、支援は単なる戦争の道具に成り下がってしまうと、記事は強く警告しています。

イラン、第4の極へ

Opinion | The War Is Turning Iran Into a Major World Power - The New York Times [LINK]

【海外記事より】これまで世界のパワーバランスは、アメリカ、中国、ロシアの3極を中心に動いていると考えられてきました。しかし、シカゴ大学のロバート・ペイプ教授は、世界秩序を劇的に塗り替える「第4の極」として、イランが急速に台頭していると指摘しています。イランの力は経済規模や軍備の総量ではなく、世界経済の急所であるホルムズ海峡を実質的に支配しているという事実に由来します。

現在、世界の石油と液化天然ガスの約5分の1がこの海峡を通過していますが、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事作戦をきっかけに、イランは海峡の「選択的封鎖」を敢行しました。海峡を物理的に完全に閉鎖しなくとも、数日おきに貨物船を攻撃し、保険会社が戦争リスクを理由に保険引受を停止、あるいは保険料を跳ね上げる状況を作るだけで、海上交通量は9割以上減少します。現代経済においてエネルギーは、単に存在すれば良いわけではなく、予測可能なリスクと規模で「時間通り」に届く必要があります。この信頼性が崩れた今、エネルギーアクセスは市場取引ではなく、複雑な戦略的課題へと変質しました。

この状況は、アメリカにとって極めて不利な非対称性を生んでいます。アメリカが全輸送船をドローンやミサイルから守るには膨大な軍事資源を24時間投入し続けなければなりませんが、イランは時折攻撃を仕掛けるだけで供給の信頼性を破壊できるからです。フランスのマクロン大統領が「武力による海峡開放は非現実的だ」と述べたように、イランの合意なしには石油の安定供給が保証されない現実を世界が認め始めています。これにより、湾岸諸国や日本、韓国、インドといったエネルギー依存度の高い国々は、自国の輸出入の安定を握るイランに対して妥協や配慮を迫られることになります。

さらに深刻なのは、イラン、ロシア、中国の利害が一致し始めている点です。ロシアはエネルギー価格の高騰を歓迎し、中国はイランとの連携を強めることで資源の確保を優先します。仮にこれら3国が緩やかな「エネルギー・カルテル」を形成し、世界の石油供給の約30%をコントロールする事態になれば、欧米の権威は失墜し、世界秩序は不可逆的に変化します。アメリカは、海峡の支配権を取り戻すために出口の見えない長期戦に挑むか、あるいはイランを新たな世界の中心勢力として受け入れるかという、極めて困難な選択を迫られていると、著者は警鐘を鳴らしています。

米消費者への「爆撃」

The Market Law of One Price – How the Donald Bombed Energy Consumers, Too - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領がネタニヤフ首相の誘いに乗り、イランに対して全面的な軍事攻撃を開始したことで、エネルギー市場は混迷を極めています。全米のガソリン価格が1ガロン4ドルを突破し、さらなる上昇が見込まれる中、大統領は必死に事態の収拾を図ろうとしています。しかし、彼が打ち出した「アメリカは中東からの石油輸入に依存していないため、ホルムズ海峡の封鎖は他国の問題だ」という論理は、市場の現実を無視した大きな誤解であると、元米予算管理局長のデイビッド・ストックマン氏は指摘しています。

現代のエネルギー市場には「一物一価の法則」が存在します。デジタル化された今日の市場では、物理的な石油の流れ以上に、世界的な供給と需要のバランスを反映した価格情報が瞬時に共有されます。もし欧州やアジアで石油価格が高騰すれば、裁定取引、いわゆるアービトラージが働き、割安な米国内のエネルギーも輸出へと回され、最終的に世界の価格は均衡します。つまり、アメリカがエネルギー自給を達成していても、世界的な価格高騰の影響を100%受けることになるのです。

具体的にデータを見ると、2025年のアメリカの石油・ガス生産量は日量4110万バレル(石油換算)に達し、国内需要の3630万バレルを上回っています。この余剰分が輸出されることで、国内価格は世界市場と直結しています。特に天然ガス市場では、イランによるカタールの液化天然ガス(LNG)施設への攻撃で欧州の価格が急騰しました。現在、米国内のガス価格は欧州のスポット価格のわずか12%程度という極端な格差が生じており、市場原理によって米国のガスは急速に海外へ引き寄せられています。この輸出の加速は、やがて米国内の供給を絞り、一般家庭の光熱費を押し上げる結果を招きます。

トランプ大統領は、アメリカを世界市場から切り離された「安価なエネルギーの島」にできると信じているようですが、それは妄想に過ぎません。2026年初頭に1バレル60ドルだった原油価格は、紛争によって100ドルを超え、それに連動して米国内のガソリン価格も上昇し続けています。結局のところ、世界最大の供給拠点の一つであるペルシャ湾の安定を自ら破壊した以上、その代償として米国の消費者が高価なエネルギーを買い支えることになるのは避けられない事実なのです。

中国の硫酸禁輸、銀不足に拍車か

Chinese Sulfuric Acid Export Ban Could Exacerbate Physical Silver Shortage [LINK]

【海外記事より】中国当局が来月から硫酸の輸出を停止する方針を示したことで、すでに逼迫している銀の供給不足がさらに悪化する可能性が出てきました。この輸出禁止措置は2026年末まで続く見通しです。一見すると銀とは無関係に思える硫酸ですが、実は銅の採掘において不可欠な材料です。銅鉱石から成分を溶かし出すために大量の硫酸が使用されるため、その不足や価格高騰は銅の生産量に直結します。ここで重要なのは、世界で採掘される銀の約70%が、銅などの生産過程で生まれる副産物であるという点です。つまり、銅の採掘が減少することは、そのまま銀の生産減少を意味するのです。

この問題の背景には、イランでの紛争による物流の混乱があります。中東は世界の硫黄供給の約3分の1を占めていますが、ホルムズ海峡の封鎖などにより出荷が制限され、世界的に硫酸の原材料が不足し、価格が急騰しています。この影響はチリやコンゴ民主共和国、ザンビアといった主要な銅産出国を直撃しており、特に世界最大の銅生産国であるチリでは、先月だけで硫酸価格が44%も上昇しました。チリは中国から年間約100万トンの硫酸を輸入しているため、中国の輸出停止による損失を補うことは極めて困難であると予測されています。たとえ紛争解決に向けた進展があったとしても、供給網へのダメージは深く、中国による輸出規制は長期化する可能性が高いと分析されています。

現在、銀の市場は深刻な供給不足に直面しています。現物投資の需要が20%増加していることなどを背景に、2026年には6年連続で需要が供給を上回る見通しです。シルバー・インスティテュートの暫定データによれば、昨年の不足分を含めた過去5年間の累積不足量は8億オンスを超えており、これは世界の一年間の鉱山生産量に匹敵します。供給が不足すれば地上在庫を取り崩すしかありませんが、ロンドン市場の保管在庫はこの5年で約40%減少し、アメリカのCOMEX在庫にいたっては約70%も減少しています。上海の在庫も過去10年で最低水準にあり、こうした現物の不足が、最近の銀価格を1オンスあたり100ドル超へと押し上げた一因となっています。今回の中国の動きがどこまで銀の生産に波及するかは不透明ですが、継続的な不足状態にさらなる圧力を加える要因として、今後の動向が注目されます。

インフレ、本当の話

CPI Spikes on Energy Prices But That's Not the Real Inflation Story [LINK]

【海外記事より】アメリカの3月の消費者物価指数、いわゆるCPIのデータが発表され、イランとの紛争によるエネルギー価格の急騰が反映される結果となりました。労働統計局が発表したデータによると、CPIの算出に用いられる商品バスケットのコストは前月比で0.9%上昇しました。これはパンデミック後の急騰がピークに達した2022年以来、単月としては最大の上昇幅です。この大幅な月間上昇により、年間の総合CPIは3.3%に達しました。これは2024年3月以来の高水準ですが、月間および年間の数字は、いずれも事前の予測通りの内容となっています。今回のCPIの上昇は、ほぼ全面的にエネルギー価格の急騰によるものです。エネルギー指数は前月比で10.9%上昇し、その背景にはガソリン価格の21.2%という大幅な月間上昇がありました。一方で、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアCPIは前月比0.2%の上昇に留まり、比較的落ち着いた動きを見せています。年間のコアインフレ率は2月の2.5%から3月の2.6%へとわずかに上昇しました。多くの指標では価格上昇が見られず、例えば食品価格は2月から3月にかけて横ばいであり、サービス価格も前月比0.2%増と穏やかな推移でした。

しかし、著者のマイク・マハレイ氏は、政府が発表するCPIのデータは実態を正確に反映していない可能性があると指摘しています。現在のCPIは過去の不透明なデータを算入しているほか、労働データの頻繁な修正も数字の信頼性に疑問を投げかけています。さらに、1990年代に改定された現在のCPI算出式は、実際の物価上昇を過小評価するように設計されているという見方もあります。仮に1970年代に用いられていた古い算出式を適用すれば、現在のCPIは公式発表の約2倍にあたる6%に近い数字になると推測されています。CPIはあくまで政府が選定した特定の商品群の価格動向を示すものに過ぎず、経済学的な定義におけるインフレの全貌を語るものではありません。本来のインフレとは、単なる「物価の上昇」ではなく、通貨供給量と信用の増加を指します。消費者物価の上昇は、この通貨膨張によって引き起こされる一つの症状に過ぎないのです。

実際の通貨供給量に目を向けると、エネルギー価格の変動とは無関係にインフレが加速している実態が浮かび上がります。連邦準備制度、いわゆるFRBのM2データに基づくと、通貨供給量は2025年2月の21.61兆ドルから2026年2月には22.67兆ドルへと増加しました。これは4.9%の増加に相当し、実質的なインフレ率は5%に近い水準であることを示唆しています。通貨供給量は2023年10月に底を打って以降、再び増加に転じており、現在はパンデミック時のピークを大きく上回っています。さらに、FRBは昨年12月から事実上の量的緩和を再開し、再び米国債の買い入れを通じて通貨を創出しています。このような通貨の膨張は、最終的に資産価格や消費者物価の上昇を招き、通貨価値の下落をもたらします。仮に紛争が終結してエネルギー価格が落ち着いたとしても、政府が通貨を増やし続ける限り、インフレという根本的な問題は解決しないと記事は締めくくっています。

欧州でエネルギー配給制

Europe Begins Energy Rationing As The Crisis Moves Into Daily Life | Armstrong Economics [LINK]

【海外記事より】欧州連合(EU)は現在、イランとの戦争によるエネルギー危機の深刻化を受け、市民に対して在宅勤務や運転の抑制、制限速度の引き下げなど、エネルギー消費の削減を求める緊急対応を開始しました。政府が数百万人の労働者に在宅を促すという事態は、水面下で極めて深刻な供給不足が形成されていることを示しています。ホルムズ海峡の封鎖により、世界の石油・ガスの約20%が通過する主要な動脈が寸断されました。欧州は石油の7%、液化天然ガス(LNG)の8.5%、さらに航空燃料やディーゼルの最大40%をこのルートに依存しており、これらを短期間で代替する手段は存在しません。

現在、欧州各国の政府が行っているのは、供給を増やせない代わりに需要を抑え込もうとする事実上の「配給制」への移行です。国際エネルギー機関(IEA)は、高速道路の速度制限や自家用車の利用制限、公共交通機関への転換、そして可能な限りのリモートワークを推奨する措置を概説しました。これはもはや環境政策ではなく、1970年代のオイルショックと同様の、生活の制限による危機管理です。一部の国では週休4日制の導入や、移動を不可欠な活動のみに制限する動きもあり、エネルギー問題が机上の理論ではなく、日々の経済活動に直接的な影響を与え始めていることを示しています。

今回の供給ショックは、1973年や1979年のショック、あるいは近年のエネルギー供給寸断を合わせたものよりも深刻であると警告されています。欧州は昨冬の影響でガス貯蔵量が容量の30%程度と低い水準でこの危機に直面しており、価格高騰と供給不足に対して非常に脆弱な状態にあります。現在は封鎖前に輸送中だった石油やガスがまだシステム内に残っているため、最悪の事態は先送りされていますが、これらが枯渇すれば、これまでの「勧告」としての需要削減は、回避不能な「義務」としての配給制へと変わるでしょう。

すでに産業界への影響も現れ始めています。化学や製造業などのエネルギー集約型セクターではコストが急騰しており、操業を維持するために最大30%の上乗せ料金を課したり、減産を余儀なくされたりするケースが出ています。これは生産の停滞と価格上昇、そして経済成長の鈍化が同時に進む、典型的な「スタグフレーション」のシナリオです。当局はパニックを避けるために段階的な措置を講じていますが、国民の働き方や移動手段の変更を求める現時点ですでに危機の領域に入っており、この影響は長期にわたる可能性が高いと見られています。

金銀、空売りの買い戻し続く

The Big 8 Commercial Shorts Continue to Cover | SilverSeek [LINK]

【海外記事より】金・銀市場で、大手商業トレーダーによる空売りの買い戻し(ショートカバー)が続いています。金価格はニューヨーク時間の木曜夜から金曜午前にかけて軟調に推移し、一時は1オンスあたり4,747.20ドルのスポット価格で引け、前日比で18.30ドルの下落となりました。取引高は10万4,000枚と極めて低調でしたが、特筆すべきは米先物市場(COMEX)における建玉の状況です。金の総建玉数は2009年半ば以来、約17年ぶりの低水準にまで減少しており、市場が極限まで整理されていることを示唆しています。

銀市場も金とほぼ同様の価格推移をたどりましたが、価格面では1オンスあたり75.764ドルのスポット価格で引け、前日比で55セントの上昇となりました。銀の建玉数も前週からさらに減少し、14年ぶりの低水準となっています。最新の建玉報告によると、大手8社の商業トレーダーによる純空売り残高は、金・銀ともに記録的な低水準を更新し続けています。特に銀においては、これら大手勢の空売りポジションが過去最低を記録しており、市場の需給が構造的に逼迫していることを裏付けています。銀の現物需要は依然として旺盛で、今年に入ってからのCOMEXからの現物引き出し量は1億3,500万オンスを超えています。

貴金属市場全体の動向を見ると、金と銀の価格比率は62.7対1となっており、歴史的な平均値である15対1と比較すると、依然として銀が極端に割安な状態に据え置かれています。もし歴史的な比率にまで修正されれば、現在の金価格を基準にすると銀は1オンス300ドルを超える計算になります。現在の市場では、中央銀行や大手銀行による価格操作とも取れる動きが散見されますが、銀の供給不足という構造的な欠陥は6年連続で続いており、現物在庫の枯渇が懸念されています。

また、金融市場全体に目を向けると、米10年債利回りは4.31%台で推移しており、連邦準備理事会(FRB)による市場介入が利回りのさらなる上昇を抑え込んでいる状況です。先般発表された消費者物価指数(CPI)の結果を受け、年内の利下げ観測は事実上消滅したと見られています。このような不透明な経済環境下で、ヘッジファンドや大手銀行はデリバティブ市場で膨大なポジションを抱えており、米国の大手4銀行が保有する貴金属関連のデリバティブ残高は8,300億ドルを超え、前四半期比で18%増加しました。これは現物の裏付けなしには決してカバーできない規模に達しており、将来的な価格高騰の火種となっている可能性が指摘されています。

米国債に何が起こっているか?

What’s going on with dollar debt? [LINK]

【海外記事より】イランとの戦争が、諸外国の政府にドル建て債務を手放させる要因になっているのではないかという疑問が、現在市場で渦巻いています。米国債の入札が低調なことや、開戦以降に10年物国債の利回りが一時50ベーシスポイント近く急騰したことがその背景にあります。連邦準備理事会(FRB)の保管データによると、開戦以来、米国外の中央銀行は820億ドル相当の米国債を売却しており、その保有残高は2012年以来の低水準となっています。この売却は、必ずしも反米感情によるものではなく、激動の時代に備えて防衛的な資金を確保しようとする各国の動きを反映していると考えられますが、イランがホルムズ海峡の通行料を中国人民元や暗号資産で支払うよう要求しているとの報道もあり、市場の懸念を強めています。

一方で、中央銀行以上に注目すべき存在がヘッジファンドです。ニューヨーク連銀の調査によれば、2018年以降、レバレッジを効かせたヘッジファンドが米国債の保有量を劇的に増やしています。特に、先物と現物の価格差を利用する「ベーシス取引」や、異なる証券間で入れ替える「スワップ取引」が急増しました。2025年末時点で、ヘッジファンドの米国債買い持ちポジションは2.4兆ドルに達しており、3年前の約3倍に膨れ上がっています。中国政府などが米国債の購入を控える中で、ヘッジファンドが市場の主要な買い手となっているのです。驚くべきことに、ケイマン諸島を拠点とするヘッジファンドによる保有額は、今や日本や中国、イギリスを上回り、外国勢としては最大の米国債保有主体となっています。

ヘッジファンドによる需要は、銀行が市場仲介業務を縮小する中で流動性を提供するという利点もありますが、同時に大きなリスクも孕んでいます。ヘッジファンドの取引は政治的バイアスがなく純粋に経済合理性に基づいて行われるため、金利の上昇などで状況が変化すれば、一斉に市場から撤退して金融安定性を損なう恐れがあります。これは2020年3月のコロナショックや、2025年4月の関税導入時にも見られた現象です。ベッセント財務長官は市場の安定維持に努めており、現在のところイランとの戦争による混乱は限定的ですが、戦争が長期化してインフレリスクや地政学的ショックが重なれば、この平穏が続く保証はありません。

来年、アメリカは33%に及ぶ公的債務、金額にして10兆ドルの国債を借り換える必要があります。これは投資家がイラン情勢だけでなく、ケイマン諸島のヘッジファンドの動向にも目を光らせておくべき理由です。中央銀行の動きが注目を集めやすい一方で、実際には不透明なヘッジファンドの資金フローが、今後の米国債市場や世界の金融システムの安定を左右する鍵を握っています。経済のファンダメンタルズが急変した際に、これらの巨大なポジションが維持されるのか、あるいは一気に解消されるのかが、今後の大きな焦点となるでしょう。ベッセント長官による巧みな市場管理が今後も機能し続けるかどうかに、市場の期待と不安が交錯しています。

交渉を破綻させた「毒薬」

Joe Kent Says Demand for Zero Iranian Nuclear Enrichment Is a 'Poison Pill' That Killed Pakistan Talks - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】イランとの戦争に反対して国家対テロセンターの局長を辞任したジョー・ケント氏は、パキスタンで行われた米イラン交渉が合意に至らなかった原因について、アメリカ側が突きつけた「イランによる核濃縮の完全停止」という条件が、交渉を台無しにする「毒薬(ポイズン・ピル)」になったとの見解を示しました。ケント氏は自身のSNSにおいて、イスラマバードでの交渉はこの条件によって決裂したようだと指摘し、休戦期間が残り9日ある中で、アメリカはイスラエルの目標ではなく、自国の目標を追求すべきだと述べています。報道によれば、アメリカが提示した条件には、全てのウラン濃縮の中止や主要な核施設の解体、さらに60%まで濃縮されたウランの回収などが含まれており、これらはイラン側が繰り返し拒否してきた内容です。

ケント氏は退任後のインタビューなどで、現在のアメリカ政府が「いかなる核濃縮も核兵器の開発に直結する」と決めつけている現状を批判しています。同氏の指摘によれば、戦争が始まる前、イラン側は60%の濃縮ウランをより低いレベルに希釈することや、兵器級に必要な90%を大幅に下回る水準まで濃縮度を下げる意向を示していました。また、2025年6月のアメリカによる空爆で濃縮プログラムが一時停止して以降、イランは3年から5年間にわたってウラン濃縮を停止する用意もあったと報じられています。しかし、交渉後の記者会見でバンス副大統領が述べたように、アメリカ側は、イランが核兵器を求めないという確約だけでなく、核兵器を迅速に製造可能にするいかなる手段も持たないことを求めており、濃縮技術そのものを拡散の脅威と見なしています。

これに対しケント氏は、イラン政府が核兵器を追求しないことは長年の公式方針であることを強調しています。トランプ大統領が掲げてきた譲れない一線は、あくまで「イランに核兵器を持たせないこと」であり、「核濃縮の完全停止」ではなかったはずだとケント氏は主張します。イラン側も核兵器を持たないことには同意していますが、自国の安全保障上の政策を維持するために、核濃縮能力自体は保持し続ける必要があると考えています。ケント氏は、アメリカとイランの間には実行可能な合意案が存在していたものの、そのような妥協案は、アメリカにイランとの戦争を継続させたいイスラエルにとっては脅威であったと分析しています。さらに、ケント氏はイスラエルが核兵器を使用する可能性についても言及し、現在の交渉の背後にある複雑な利害関係に警鐘を鳴らしています。

トランプ氏、海峡封鎖を宣言

Trump Declares US Blockade on Strait of Hormuz After No Deal Reached With Iran - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領は、パキスタンで行われたイランとの直接交渉が決裂したことを受け、アメリカ海軍に対してホルムズ海峡の封鎖を命じたと発表しました。アメリカとイランの当局者は約20時間にわたる協議を行いましたが、合意には至りませんでした。トランプ氏は、核問題に関する合意が成立しなかったと述べており、アメリカ側は引き続きイランに対して核濃縮を完全に停止するよう求めている模様です。また、交渉におけるもう一つの大きな障害として、イスラエルがレバノンでの停戦を拒否し、空爆を継続している事実が挙げられています。米イラン間の休戦開始以降も、イスラエルの攻撃によって数百人の民間人が犠牲になっています。トランプ氏は自身のSNSにおいて、会議自体は順調で多くの点で合意できたものの、最も重要な核問題で折り合えなかったと説明しています。そのため、直ちにアメリカ海軍がホルムズ海峡を出入りする全ての船舶を封鎖するプロセスを開始するとしています。

トランプ氏は、イランが「どこかに機雷があるかもしれない」と主張し、航行の自由を妨げていることは世界に対する恐喝であると批判しました。さらに同氏は、イランに通行料を支払った全ての船舶を国際水域で捜索し、阻止するよう海軍に指示したことも明かしています。イラン軍に対しては、アメリカ側や平和的な船舶に発砲すれば、徹底的に反撃するという強い警告を発しています。これを受けて、アメリカ中央軍は米東部標準時間で月曜日の午前10時(日本時間で火曜日の深夜0時)から、イランの港に出入りする全ての海上交通の封鎖を開始すると発表しました。この措置はアラビア湾やオマーン湾にある全てのイランの港を対象とし、あらゆる国の船舶に対して公平に実施されますが、イラン以外の港へ向かう船舶の自由な航行は妨げないとしています。トランプ氏は、イラン側が停戦合意の一環として海峡を開放しなかったことを不誠実だと非難していますが、合意にはレバノンでの停戦も含まれており、イスラエルの爆撃激化を受けてアメリカ側が最終的にこれを拒否したという経緯があります。

バンス副大統領も、核問題が合意の主な妨げになったとの認識を示しました。バンス氏は21時間に及ぶ交渉を振り返り、イラン側と議論を重ねたことは評価しつつも、合意に至らなかったことはアメリカよりもイランにとって悪いニュースになると述べています。アメリカ側は超えてはならない一線を明確にし、譲歩できる点とできない点を提示しましたが、イラン側がその条件を受け入れなかったとしています。一方、イラン側の代表団は、過去の経験からアメリカ側を信頼することができなかったと表明しました。イランのガリバフ議長は、自分たちは必要な善意を持って臨み、前向きな提案も行ったものの、最終的に相手側が信頼を得ることに失敗したと説明しています。なお、イラン代表団はパキスタンへの航空便に、2月にアメリカのミサイル攻撃で犠牲となった子供たちの名前を冠し、その遺影を携えて交渉に臨んでいました。アメリカとイランの対立は、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖という新たな局面を迎えています。

2026-04-12

アフリカの中銀、金購入の波に乗る

Global gold accumulation hits about $2 billion as African central banks join buying wave | Business Insider Africa [LINK]

【海外記事より】世界の中央銀行による金(ゴールド)の蓄積が加速しており、約20億ドル相当に達しています。これは年初の停滞からの回復を示すもので、外貨準備の多角化を目指す動きが持続していることを反映しています。中央銀行による需要は、金融システム全体に均等に広がっているわけではなく、特定の少数の買い手に集中しているのが特徴です。ここ数年で60以上の中央銀行が金を追加していますが、需要の大部分は新興国を中心とした積極的な蓄積を行うグループによって支えられています。

中でもポーランド国立銀行は2025年に約80から95トンを追加するなど極めて積極的な姿勢を見せており、中国人民銀行も16か月以上にわたり一貫して買い増しを続け、その保有量は2300トンを超えています。カザフスタンも着実に保有量を増やしており、トルコやインドは国内の経済状況や市場環境に応じて、購入と一時停止を繰り返す周期的なアプローチをとっています。こうした特定の国々による集中した需要によって、世界全体の金需要は2022年以降、過去の平均を上回る高い水準を維持しています。

一方で、アフリカ諸国の中央銀行も、規模こそまだ控えめですが、戦略的な参加を強めています。ウガンダは、通貨のボラティリティへの露出を減らし、バランスシートの安定性を高めることを目的として、国内で産出される金を購入するプログラムを開始しました。また、ガーナは自国通貨セディを支えるために積極的に金を増強しており、エジプトは安定性を重視した慎重なアプローチを維持しています。ジンバブエでは金に裏打ちされた通貨を試験的に導入し、短期的には安定を達成しましたが、信頼性の面では依然として課題を抱えています。

アフリカの他の地域でも動きが見られます。ケニアは現在、金の保有量が極めて低い水準にありますが、政策担当者は段階的な蓄積を開始する計画を示唆しています。また、コンゴ民主共和国は2026年に15トンの小規模採掘による金生産を目標に掲げており、鉱産物の管理を強化し、国家としての保有量を増やす取り組みを進めています。世界の中央銀行の保有量全体に占めるアフリカの割合は依然としてわずかですが、不確実な金融市場において、金の重要性を再認識し、長期的かつ構造的に保有を増やしていくという世界的な潮流に同調する動きが鮮明になっています。

イラン戦争、世界経済に重い代償

The Unwarranted Iran War: US-China Stakes, Regional Costs, Global Losses - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領と中国の習近平国家主席による米中首脳会談が、アメリカのイランに対する軍事作戦の影響で延期されました。この延期は、トランプ政権がイランの抵抗力を大幅に過小評価していたことを示唆しています。開戦から1か月が経過した現在、アメリカとイスラエルは制空権を握っているものの、戦況は膠着状態にあります。イランはミサイルや代理勢力、そしてホルムズ海峡という地理的優位性を利用した拒否戦略を維持しており、決定的な勝利は見えていません。この事態により、世界は1970年代以来最悪のエネルギー危機に直面しています。

今回の危機は、米中両大国にとって異なる課題を突きつけています。アメリカは中東各地に基地や艦隊を保有しているため軍事的な負担が非常に大きく、戦略的に限界まで引き伸ばされています。対して、軍事的プレゼンスが最小限である中国は、エネルギーの輸入依存度が高いために経済的な打撃を直接的に受けています。現在、ホルムズ海峡を通過する通常交通の94%以上が停止し、世界の石油消費量の20%を脅かす事態となっています。原油価格は50%以上急騰して1バレル110ドルから120ドルに達し、世界的な航空路の閉鎖や海運ルートの変更など、経済システム全体に深刻な悪影響が及んでいます。

イラン国内の被害も甚大です。アメリカとイスラエルによる攻撃で、学校や病院を含む9万か所以上の民間施設が破壊され、320万人以上が国内避難民となりました。レバノンでも国民の5、6人に1人が避難を余儀なくされています。トランプ大統領は「任務完了」を繰り返し主張していますが、実態は長期的な消耗戦の様相を呈しています。イスラエルではイランのミサイル攻撃により迎撃ミサイルの備蓄が底を突き始め、政府に対する抗議デモが激化しています。また、中東に駐留するアメリカ軍の基地の多くも、ミサイル攻撃により居住不可能な状態に陥っていると報告されています。

経済的な余波は地域全体に広がり、イランやイスラエルなどの当事国だけでなく、エジプトやトルコ、さらには湾岸諸国も大幅なマイナス成長に直面しています。アメリカは現在、この戦争に1日あたり10億ドル近い巨費を投じており、初月だけで約370億ドルを費やしたと推計されています。もしホルムズ海峡の閉鎖が続き、戦争がさらに長引けば、原油価格は150ドルから200ドルにまで跳ね上がる最悪のシナリオも懸念されます。現代のグローバル経済はかつてないほど相互に依存しているため、この危機は単なる地域紛争に留まらず、世界経済全体に極めて重い代償を強いることになるでしょう。

米財政赤字の膨張加速

Coming Soon – Federal Red Ink Barfing Skyward Like You’ve Never Seen - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカの公的債務が39兆ドルの大台を突破し、国家財政が空前の危機に向かって猛スピードで突き進んでいます。わずか4年前は29兆ドル、9年前は19兆ドルの水準でしたが、瞬く間に膨れ上がりました。この急激な負債の増大において、トランプ大統領が果たした役割は極めて甚大です。大統領の1期目に8兆ドル、2期目の現在ですでに3兆ドルの債務が上積みされており、トランプ政権下で発生した計11兆ドルの負債は、ジョージ・ワシントン以来のアメリカの全公的債務の28%を占める計算になります。さらに現在進行中の中東情勢の緊迫化に伴い、国防費のさらなる増大が確実視されており、財政の赤字は今後さらに加速することが懸念されています。

トランプ政権がイランに対して示した15項目の要求プランは、最初から交渉を目的としたものではなく、拒絶されることを前提とした圧力のための文書であったと分析されています。イラン側が自国の戦略的柱をすべて解体することを求めるこのプランは、拒絶されることで次の段階の軍事攻撃や事態の激化を正当化するための口実として存在しています。一方で、2026年度の予算状況を見ると、2月までの5か月間で支出が3.1兆ドルを超えたのに対し、収入は2.1兆ドルにとどまっており、すでに1兆ドルもの赤字を出しています。これは収入の約48%に相当する巨額の赤字ですが、トランプ政権下のワシントンでは、一時的なタイミングのずれによる赤字の微減を捉えて楽観視する向きさえあります。

しかし、足元の税収の内訳を詳しく見ると、その楽観が幻想であることが分かります。これまでの税収増の95%は、関税や富裕層のキャピタルゲイン課税といった、税収全体のわずか15%を占めるに過ぎない不安定な項目によって支えられています。すでに最高裁判所がトランプ氏による一部の関税措置を無効化する判断を下しており、還付の手続きが進めばこの税収増は消滅します。また、エネルギー価格の高騰や製造業の混乱により、昨年の株式市場のような大幅な利益を期待することも難しくなっています。対照的に、所得税や給与税といった税収の柱となる項目の伸びは前年比でわずか0.7%にとどまっており、財政の基礎体力は極めて脆弱な状態にあります。

社会保障費の増大や金利負担の急増により、連邦予算の支出は前年比で7%増加する見通しでしたが、現在は軍事費の爆発的な増加により2桁の伸びに向かっています。税収が横ばいであるにもかかわらず、支出だけが跳ね上がるという構造的な欠陥に加え、給与の減少とインフレが同時に進むスタグフレーションの兆候も現れています。かつての石油危機をも上回るような世界的な経済混乱が目前に迫る中、アメリカの財政赤字はこれまでにない規模で空へと噴き上がろうとしています。軍事的な勝利を追求する代償として、アメリカは深刻な財政破綻のリスクという、極めて重い現実を突きつけられているのです。

キューバが屈しない理由

Why Trump’s Cuba Plan Won’t Work - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ政権が進める対キューバ政策が、なぜうまくいかないのかについて米国の専門家が分析しています。共和党や民主党の強硬派はキューバの政権交代を望んでいますが、世論調査では米国、キューバ、そして国際社会のいずれにおいても、こうした強硬路線は支持されていません。マルコ・ルビオ氏ら強硬派は、キューバがかつて米国のカジノ企業が支配し、親米独裁者のバティスタ氏が統治していた時代のように、経済を完全に開放することを求めています。トランプ政権はベネズエラで行ったように「最大級の圧力」をかけ、米国に都合の良い新たな指導者を据えようと交渉を進めていますが、ハバナの支援ネットワークが崩壊しているというホワイトハウスの認識は、希望的観測に過ぎません。

米国は1958年から続く経済封鎖をトランプ氏のもとでさらに強化しており、島内の状況は深刻です。1日20時間に及ぶ計画停電が発生し、病院では人工呼吸器の停止により患者が亡くなり、冷蔵設備の不足で食品が傷んで子供の栄養失調率が1990年代以来の水準に達しています。しかし、これほどの苦難に直面してもキューバ政府は屈服する気配を見せていません。キューバの人々は米国の支配下にあった過去を忘れておらず、また現在のベネズエラで米国が現地の人々を顧みず資源を搾取している様子を目の当たりにしています。若者による大規模な抗議活動も起きていますが、彼らが批判しているのは米国とその経済封鎖であり、国内からのクーデターが起きる可能性は極めて低いのが現状です。

米国によるキューバへの介入の歴史は長く、1961年のピッグス湾侵攻の失敗やフィデル・カストロ氏に対する数百回の暗殺計画など、あらゆる手段が講じられてきましたが、どれも成功していません。トランプ氏やルビオ氏ら強硬派の多くは、旧バティスタ政権に関わりのあった富裕層の家系の出身であり、社会主義キューバに対して個人的、イデオロギー的な復讐心を抱いています。彼らが望んでいるのは、米国の企業や軍の言いなりになるかつての親米政権の復活です。しかし、キューバは米国が過去に打倒してきた政権よりも回復力があり、強固な体制を築いています。1991年のソ連崩壊により経済の80%を失った際も、彼らは生き延びてきました。

現在のトランプ政権は、ウクライナやイラン、ガザなど世界各地の軍事作戦に忙殺されており、歴史的に見ても戦線を広げすぎた帝国は衰退の道を歩みます。さらにキューバは、医療外交などを通じて1990年代よりも多くの同盟国を得ています。ロシアは石油を、中国は食料支援や投資を行い、カナダは観光客を送り続けています。また、キューバにはイラクやベネズエラのような、米国の企業が介入を強く望むような戦略的資源も存在しません。米国が描く「従順な属国」という幻想に基づく戦略は、キューバの人々が望まないものであり、経済封鎖は苦しみを生むだけで降伏をもたらすことはありません。真の進展には、外交的なパートナーシップと人道主義が必要なのです。

米安保支出、実質2.5兆ドル超えへ

Trump's Total 2027 National Security Spending Will Exceed $2.5 Trillion - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が要請した2027年度の軍事予算案は、表面上の数字である1.5兆ドルをはるかに上回り、実際の国家安全保障関連支出の総額は2.5兆ドル(約375兆円)を超える見通しです。これは、長年ワシントンで国防分析に携わってきたベテランアナリスト、ウィンスロー・ウィーラー氏が算出したものです。同氏は、国防総省(ペンタゴン)の予算だけでなく、他省庁による軍事関連支出や、膨大な軍事費を賄うために積み上がった国債の利払い分などを精査した結果、この驚異的な数字を導き出しました。

ホワイトハウスの予算管理局によれば、2027年度の1.5兆ドルという軍事予算は、今年度から約42%もの大幅な増額となります。この内訳には、ペンタゴンの基本予算に加えて、議会の調整手続きを通じて確保される「追加の義務的財源」3500億ドルが含まれています。トランプ政権は昨年成立した大規模な歳出法案によってペンタゴン予算を底上げしており、来年度も同様の手法で巨額の軍事費を確保しようとしています。また、イランとの戦争で消費された防空ミサイルや弾薬の在庫を補充するため、さらに800億ドルから2000億ドルの追加支出が必要になると見込まれています。

ウィーラー氏は、こうした補正予算や追加支出が、使途の詳細が不明確なまま議会で承認される実態を厳しく批判しており、それらを「裏金(スラッシュ・ファンド)」と呼んでその不透明さを指摘しています。トランプ氏は大統領就任当初、軍事予算の削減に関心があるかのような姿勢を見せていましたが、実際には軍事介入を劇的に拡大させ、過去に例を見ない水準の軍事支出を追求する形となりました。国家の安全保障に投じられるこの巨額の資金が、国民の生活や国の財政にどのような影響を及ぼすのか、その実態が問われています。

信頼失った米外交

Regime Uncertainty in Wartime America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカが帝国の末期にあることは、大統領がSNSに残す常軌を逸した投稿を、国民が日々確認しなければならないという現状によく表れています。イランに対し「文明を消滅させる」といったジェノサイド的な脅しをかける一方で、2週間の停戦と攻撃の延期を発表するという、支離滅裂な言動が繰り返されています。イラン側は、交渉の最中に爆撃を受けるという過去の経緯から、もはや現政権を一切信頼していません。この記事の著者アラン・モズレー氏は、こうした政府の行動が予測不能で不安定な状態を、経済学の用語を用いて「体制の不確実性」と呼び、その深刻な弊害を指摘しています。

経済において、政府の規制や課税が突然変わる可能性があると、投資家はリスクを恐れて投資を控えます。これと同じ論理が外交にも当てはまります。トランプ大統領は、平和的な交渉を進めていると言いながら、実際には「先制攻撃」という名の不意打ちを行い、国際法や憲法を軽視する姿勢を鮮明にしています。このような外交スタイルは、敵対国だけでなく同盟国に対しても、アメリカがもはや法や契約に基づく予測可能なパートナーではないというメッセージを送ることになります。信頼が損なわれた結果、将来のあらゆる交渉には多大な保証や検証が必要となり、それが国際的な取引や外交における大きなコスト、いわば「不確実性という税金」となってのしかかります。

たとえ今回の戦争がすぐに終結したとしても、失われた国家の信用を回復するには長い年月がかかります。大統領が自身の「直感」や「取引の術」の名の下に、文明の破壊や民間インフラへの攻撃を示唆することは、国際社会におけるアメリカの評判を決定的に傷つけました。一度費やされた信用は、後から買い戻すことはできません。この reputational disaster(名声の破滅)による代償は、ニュースのサイクルではなく、今後何年にもわたって測定されることになるでしょう。アメリカが法の支配に従う国家なのか、それとも選出された独裁者の衝動によって動く国家なのか。世界はその答えを冷徹に見つめています。

イラン攻撃、米国の闇

What Is Wrong With Us? | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカの法学者スコット・ボイキン氏は、トランプ政権によるイラン攻撃を「息を呑むほどの愚行」と断じ、自国がなぜこのような事態に陥ったのかを厳しく問い直しています。米インテリジェンス機関は、イランに核兵器プログラムは存在しないと繰り返し結論づけており、イランがアメリカに直接的な軍事脅威を与えていないことは明白です。しかし、トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相や一部の強硬派議員に同調し、イランを完全に破壊するというジェノサイド(大量虐殺)的な意図すら表明して、この挑発的な戦争を開始しました。現在、2週間の停戦期間に入っていますが、ペルシャ湾情勢はかつてない混迷を極めています。

この戦争の本質は、過去のイラク戦争と同じ「嘘」に基づいたものであると氏は指摘しています。アメリカの国益ではなく、地域の覇権を狙う他国の「夢」のために13人の米兵が命を落としました。トランプ氏は自身の公約を裏切り、世界経済を混乱に陥れていますが、その背景には軍需産業や外国政府から多額の資金提供を受けるシンクタンク、そして介入政策によって予算と権限を拡大させてきた政府内の専門職階級の存在があります。彼らにとって、他国への軍事介入は利益を生む「ビジネス」であり、たとえ大統領が変わっても、この巨大な構造的圧力を変えることは極めて困難であるというのが現実です。

さらに深刻なのは、米国民の約38%がいまだにこの戦争を支持しているという事実です。自分たちを脅かしていない国を徹底的に破壊することに賛成する数千万人の隣人が存在し、その無関心と冷酷さがこの無意味な殺戮を支えています。選挙や民主主義というシステムが、もはや平和を導く力として機能していないことが、今回の事態で露呈しました。空爆だけで体制転換を図ることは不可能であり、交渉を通じた意味のある勝利も期待できない中、トランプ氏は自らの失敗を認める誠実さも持ち合わせていません。権力が一部に集中し、理性を失った指導者が「感情」で戦争を動かす現状に対し、この記事はアメリカという国家が抱える深い闇を浮き彫りにしています。

停戦合意の詐欺

When Is a Ceasefire a Scam? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの間で合意された停戦について、元CIA工作員で安全保障の専門家であるフィリップ・ジラルディ氏は、これがイスラエルの利益を守り、次なる大規模攻撃への準備期間を稼ぐための「詐欺」に過ぎないと厳しく指摘しています。ホワイトハウスは、イスラエルの関与なしに停戦案を受け入れたかのように装っていますが、これまでのトランプ政権とイスラエルの蜜月関係を考えれば、ネタニヤフ首相が事前に計画を把握していなかったとは考えにくいと氏は述べています。実際に、停戦合意から24時間も経たないうちにイスラエルはレバノンへの猛烈な爆撃を再開し、数百人の民間人を殺害しました。これは、平和への動きを力ずくで阻止しようとするイスラエルの明確な意思表示と言えます。

さらに、停戦を継続するための交渉役に、J・D・ヴァンス副大統領だけでなく、トランプ氏の娘婿ジャレッド・クシュナー氏らが起用されている点も、交渉を失敗させるための演出であると分析されています。クシュナー氏らはかつてイランやロシアとの交渉で成果を出せなかっただけでなく、熱烈なシオニストとしてイスラエルと深く結びついています。特にクシュナー氏については、数万人の遺体が埋まるガザの瓦礫の上に、トランプ氏の名を冠したリゾート地を建設することに関心があるのではないかと報じられており、こうした人物が中立な立場で平和交渉を導くことは期待できません。トランプ氏自身も、自らの政策に反対する保守派の言論人たちをSNSで激しく攻撃するなど、正常な判断力を欠いているのではないかと危惧されています。

世論調査では、イスラエルのために戦争を続けるトランプ氏の姿勢に、国民の不満はかつてないほど高まっています。しかし、イスラエルとそのロビー団体によるホワイトハウスへの圧力は極めて強く、ネタニヤフ首相は戦争を終わらせるつもりはないようです。ジラルディ氏は、今後イスラエルが中東の米軍を標的にした「偽旗作戦」を実行し、その罪をイランに着せることで、アメリカを戦争に引き留め続ける可能性すらあると警告しています。憲法によるチェック・アンド・バランスが機能せず、特定の外国や富豪の意向に左右される現在のワシントンの姿は、建国の理念から遠くかけ離れてしまったと、この記事は絶望に近いトーンで締めくくられています。

金、短期変動と長期上昇

Gold, Geopolitics, and Volatility: Insights from Joe Cavatoni [LINK]

【海外記事より】急速に変容する地政学環境の中で、金(ゴールド)は金融資産としての強靭さと複雑さを同時に示しています。ワールド・ゴールド・カウンシルの戦略家、ジョー・カバトーニ氏は、アメリカ・イラン・イスラエル間の紛争やマクロ経済の不透明感の中で、金がどのように動いたかを分析しています。紛争が激化した際、金は一時的に急騰しましたが、その後下落に転じました。投資家の間では混乱も見られましたが、カバトーニ氏はこれを「予想通りの動き」だったと述べています。というのも、年初に金価格は投機的な動きによって1オンス5500ドル付近まで暴騰しており、その後の調整局面と重なったからです。

投資家が誤解しがちな点として、金が「安全資産」であるということは、危機に際して常に値上がりし続けるという意味ではなく、いざという時の「流動性の源泉」になるという側面があります。市場にストレスがかかると、投資家は現金(キャッシュ)を確保するために、信頼性の高い資産である金を売却することがあります。今回の紛争下でも、トルコなどの国々が経済的ショックに対処するために金準備の一部を売却したと報じられています。また、ポーランドのように、保有する金の利益を政府支出に充てる動きも見られました。このように金は、守りの資産であると同時に、有事の際の重要な資金調達手段としても機能しているのです。

現在の市場は、予測不可能な政策変更や地政学リスクが常態化する「体制の不確実性」の時代にあります。かつて金は「退屈な資産」と見なされることもありましたが、現在は価格変動が激しく、ポートフォリオの中心的な存在となっています。アジア市場では、金を世代を超えた富の貯蔵手段や通貨不安へのヘッジとして捉える傾向が強く、金価格がアメリカの金利やドル指数の動きと連動しない「デカップリング」という現象も起きています。欧米の投資家が金を短期的な取引対象として扱う一方で、アジアの投資家は長期保有の傾向を強めており、これが金需要の構造的な変化をもたらしています。

カバトーニ氏は、短期的にはボラティリティ(価格変動)が続くものの、長期的な見通しは依然として強気であると述べています。マクロ経済の状況次第では、年間10%から20%、場合によっては30%の上昇も期待できるとの見解を示しました。金はもはや金融システムの傍観者ではなく、地政学、原油価格、中央銀行の政策、そして技術的な変化と深く結びついた資産となっています。不確実性が定義となる現代において、価値の貯蔵手段と流動性の供給源という二つの役割を果たす金の重要性は、今後も揺らぐことはないとこの記事は結論づけています。

海の道、東西交易の主役に

【グローバルヒストリーを読む】ユーラシア大陸南方の海上を船で往来する「海の道」は、草原の道、オアシスの道(シルクロード)と並び、東西交流の3つの道の1つだった。今回はこのルートにスポットを当ててみよう。

教養のグローバル・ヒストリー 大人のための世界史入門

紀元後1世紀中頃にギリシア系商人によって書かれた『エリュトゥラー海案内記』は、当時の紅海・インド洋方面の海上交易の様子を記している。その中で、「ティーナイと呼ばれる内陸の大きな都」から生糸や織物がインドに運ばれてくることを述べている。この「ティーナイ」とは中国の王朝名の「秦」の音訳だ。

なお現在の英語の「チャイナ」(China)も、語源は「秦」(中国語でチン)である。また、ロシア語で中国は「キタイ」というが、これは契丹からきている。

インド洋沿岸ではローマ帝国の貨幣が多く出土しており、ローマ帝国時代にインド洋海上交易が盛んだったことがわかる。2世紀の中頃には、ローマ帝国「大秦王安敦(あんとん)」の使者を名乗る西洋人の一団が、後漢最南端の日南郡(現ベトナム中部)に到達した。

大秦王安敦とは、五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニヌス帝のことだと考えられている。本当にローマ皇帝の使者だったかどうかはわからないが、彼らは断片的に成立していた海洋ネットワークをたどり、紅海を進みアラビア海を季節風に乗って渡り、ベンガル湾岸からインド人の船で進み、南シナ海に出て、後述する扶南、チャンパーを経て日南に到達したと思われる。

東アジアの海域では、8世紀以降、アラブやイランのムスリム(イスラム教徒)商人が海上に進出し、広州や泉州、揚州など中国沿岸の海港に出入りし、居留地をつくるようになった。10世紀からは、中国人の海上進出も活発になった。その交易の範囲は東シナ海から南シナ海、インド洋にまで及び、陶磁器、絹、銅銭などがジャンク船(中国式帆船)によって各地に輸出された。船で運ばれた中国の陶磁器は各地で珍重されたため、中国からインド洋に至る海上交易路は「陶磁の道」とも言われる。

インド洋から地中海に至る海域では、ムスリム商人、インド商人、イタリア商人などが交易活動の中心になった。ムスリム商人はインド商人と提携してインド、東南アジア産の香辛料、香料、木材、中国産の絹織物、陶磁器などを買い入れ、これらの商品を三角の帆を持つ木造船(ダウ船)に積んでインド洋から紅海沿岸に運び、さらにナイル川を利用してカイロやアレクサンドリアにもたらした。エジプト、シリアを支配したアイユーブ朝、マムルーク朝の首都カイロは、海上東西交易の中心として栄えた。

ヴェネツィア、ジェノヴァ、ピサなどのイタリア商人は、十字軍の物資輸送を担当したことをきっかけに、地中海交易の主要勢力として成長した。彼らはムスリム商人と連携してアジアの物産をヨーロッパに売りさばき、またアイユーブ朝やマムルーク朝の君主にも、戦争に必要な鉄や木材を供給した。地中海の活発な交易に伴い、イスラム地域の医学、哲学、数学、化学などの知識がヨーロッパに伝えられ、アラビア語からラテン語に翻訳された。さらにムスリムが中国から学んだ製紙法、羅針盤、火薬なども、シチリア島やイベリア半島を経由してヨーロッパに伝えられた。11〜13世紀は、十字軍とムスリム軍との戦争にもかかわらず、地中海での交流・交易が活発になった時期だった。

沿岸航路による海上交易が発展すると、インド洋と南シナ海を中継する港市国家が生まれた。2世紀末までには、ベトナム中部沿岸にチャム人のチャンパー(林邑)が、メコン川下流域には扶南が建国された。5世紀に入り、中国の南朝が繁栄すると、華中の都市で香辛料など南海の物産の需要が増大した。扶南は海や河川を利用して、東はモルッカ諸島(マルク諸島)、西はスマトラ島の港市国家群から、また林邑は背後の山地や平原から熱帯物産を集めて中国に輸出した。こうして東南アジアには、東西の国際市場と連動した港市国家の交易網が形成された。

東西の国際市場とのかかわりが強まるとともに、漢字や儒教などの中華文明がベトナム北部に伝わった。また、サンスクリット語や文学作品、ヒンズー教、仏教などのインドの文明が、その他の諸地域の港市国家に伝わった。それらは、やがて基層の文化と融合して、独自な東南アジアの文明が形成された。

様々な人々が行き交い、古くから多文化共存が当たり前だった港市国家は、グローバル・ヒストリーの最も重要な主役といえる。歴史学者の北村厚氏は「東アジアや南アジアからみれば東南アジアは辺境だが、東西交易の観点からみるとその辺境が世界を結ぶ中心になる」(『教養のグローバル・ヒストリー』)と述べている。

こうしてユーラシアの東西を結ぶ交易の主役は、大量の商品を効率よく運べる海上ルートへと次第に移行していった。

15世紀末から始まる「大航海時代」は、しばしばヨーロッパ人の先駆的な偉業として語られる。しかし、その背景には、アジアの商人たちが長年かけて築き上げた高度な海洋ネットワークが存在していた。ヨーロッパ人を海へと駆り立てたのは、まさにアジアの海域に溢れていた香辛料や陶磁器などの特産品と、それがもたらす莫大な富だったのだ。

2026-04-11

米、徴兵制復活の足音

'Automatic' Draft Registration Begins in December - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】軍事的な緊張が高まる中、選抜徴兵局(SSS)は、徴兵対象者の情報を自動的に収集・登録する「自動徴兵登録制度」の導入に向けた具体的な計画をホワイトハウスに提出しました。この制度は、若者に自ら登録を促すこれまでの方式から、連邦政府機関が保有するデータを集約して自動的に登録を行う方式へと転換するものです。この新制度を定めた法律は2025年12月に制定されており、実際の運用開始は2026年12月を目指しているとのことです。選抜徴兵局は軍事的なエスカレーションの最中に徴兵の基盤を整えようとしているとの批判を避けるためか、この計画の詳細は公表されておらず、ウェブサイトにも掲載されていません。

一部の報道では、全米の男性市民や居住者が自動的に登録されると伝えられていますが、筆者のエドワード・ハズブルック氏は、これが実際に可能かどうかは疑問であると指摘しています。個人の居住地の特定や対象者の判別には多くの実務的な課題があり、プライバシー法やコンピュータ・マッチング法など、数々の法的・規制的な手続きをクリアする必要があるからです。選抜徴兵局は小規模な機関でありながら、他の全ての連邦機関からデータを入手する前例のない権限を与えられようとしています。しかし、同局には過去に情報収集に関する法的要件を軽視してきた経緯があり、今後、情報の利用目的や提供先をめぐって、プライバシー保護団体や市民団体からの法的異議申し立てに発展する可能性があります。

この「自動登録」の仕組みは、十分な公聴会や予算審査、国民的な議論が行われないまま導入が決まったとされています。筆者は、この制度が失敗に終わる可能性が高いだけでなく、より攻撃的な戦争計画を可能にする一助となると警告しています。現在、議会に対しては、自動登録が始まる前に徴兵制度そのものを廃止するよう求める動きも出ています。反戦団体や市民の間では、政府による大規模なデータ収集への懸念とともに、徴兵制復活に向けた動きを阻止するための活動が急務であるという認識が広がっています。戦争に向けた準備が着々と進められる中で、この新制度がどのような影響を及ぼすのか、重大な関心が寄せられています。

イスラエル、核報復に現実味

Is the Samson Option unthinkable? - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】イスラエルの最終防衛手段としての核報復ドクトリン、いわゆる「サムソン・オプション」は、もはや単なる理論上の仮定ではなくなっています。中東での紛争が長期化する中で、この選択肢が現実味を帯びてきていると、この記事は警鐘を鳴らしています。アメリカとイスラエルが主導したイランの体制転換や指導部の排除を狙った作戦は、戦略的な失敗に終わったと分析されています。ホルムズ海峡の閉鎖や米軍基地の撤退、さらにはイランの核施設を狙った作戦の失敗などにより、欧米の力の限界が露呈しました。イスラエルが約200発の核弾頭を保有していることは公然の事実であり、問題は「持っているか」ではなく「いつ使うか」という段階に移行していると述べられています。

これまでイスラエルの核の剣が鞘に収められていたのは、アメリカが通常兵器による強固な盾を提供してきたからです。しかし、その前提が崩れつつあります。アメリカの全面的な支援があってもイランを決定的に敗北させることは困難であり、もしアメリカの支援が弱まれば、イスラエルは国家の存亡に関わる敗北に直面することになります。パキスタンで行われた交渉はトランプ氏の焦りを露呈させただけであり、イラン側のミサイルやドローンの攻撃によってイスラエルの防空システムも限界に近づいています。通常兵器による勝利の道が閉ざされたとき、自国が生き残れないのであれば敵も生存させないという「サムソン・オプション」の論理が、指導者にとって魅力的な選択肢に浮上してくるのです。

イスラエルの指導層にとって、核使用に対する倫理的な躊躇はほとんどないと筆者は指摘します。ガザで見せた壊滅的な破壊や、イランを聖書上の宿敵「アマレク」になぞらえる言説は、彼らがこの戦いを総力戦、あるいは宗教的な義務と見なしていることを示唆しています。また、ワシントンのクリスチャン・シオニストたちも、この衝突を予言の成就として歓迎する傾向があり、こうした背景が核使用のハードルを下げています。イスラエルが核に踏み切るのは、理性を失ったからではなく、アメリカの離反や通常兵器での敗北を冷徹に計算した結果、「合理的」な戦略として選択される危険性があるというのです。中東では今、これまで考えられなかった事態が現実の検討事項になろうとしています。

米イラン、合意は困難

Iran: Won’t Get Fooled Again - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が、パキスタンのイスラマバードに交渉チームを派遣し、イラン側と接触を図ろうとしていることが報じられています。今回の交渉チームには、副大統領のJ・D・ヴァンス氏をはじめ、不動産開発業者のスティーブ・ウィトコフ氏、そして大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏が含まれています。クシュナー氏はパレスチナ占領地におけるイスラエルの不法入植地の拡大を支援しており、こうした人物が交渉に加わることには重大な利益相反の懸念があると著者のカート・ニモ氏は指摘しています。また、イラン側からは、ガリバフ国会議長やアラグチ外相が出席する見通しですが、トランプ氏を支持する層はイラン側がイスラム的な策略に出ると警戒しています。しかし、筆者はむしろトランプ氏側の誠実さに疑問を呈しており、現在の米政権がキリスト教徒やユダヤ人を問わず、シオニズムの思想に深く染まった人々によって占められている現状を強調しています。

これまでの経緯を振り返れば、イランがこうした会合から何を得られるのかは不透明です。イスラエルは最高指導者ハメイニ師をはじめ、多くの要人や科学者を暗殺してきました。トランプ氏はイスラエルのネタニヤフ首相に対し、ハメイニ師の殺害を思いとどまるよう伝えたとされていますが、多額の献金を受け、イスラエルとの結びつきが強いトランプ氏の言葉がどれほどの影響力を持つかは疑問視されています。パキスタンのシャリフ首相は外交的な成果を期待するコメントを出していますが、クシュナー氏のような人物が関与する中で、イランにとって有益な結果がもたらされる可能性は低いというのが筆者の見解です。メディアについても、シオニストの影響下にある富豪による買収が進んでおり、こうした交渉の不条理性やクシュナー氏が抱える矛盾が正しく報じられることは期待できないと述べられています。

トランプ氏は自身の支持者に対し、紛争にはすでに勝利したと宣言していますが、現実はそれとは異なると筆者は見ています。イラン側は外交的な姿勢を保とうとしているものの、核兵器を保有し、排他的な思想を持つ相手と交渉を行うことの危険性を認識すべきであると警告しています。政権幹部を見渡しても、ルビオ氏やヘグセス氏など、イスラエルに対して強い支持を表明する人物が名前を連ねており、イランが受け入れられるような合意が成立する余地はほとんど残されていないようです。結局のところ、イスラエルが過去に合意を破棄してきた歴史や、相手を対等な交渉相手と見なさない姿勢を考慮すれば、今回の交渉もイランにとって大きな成果を生むものではなく、むしろ厳しい現実を突きつける場になる可能性が高いと、この記事は冷ややかに分析しています。

真の支配者はFRB

Peter Schiff: Markets Rally on Peace — But the Fed Rules Everything | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏は、自身の番組において、イランとの緊張緩和に対する市場の奇妙な反応と、戦時経済の行方について分析しています。シフ氏は、戦争や平和に関するニュースが世間を騒がせていても、実際には連邦準備理事会、いわゆるFRBという単一の力がすべてを支配していると指摘しました。彼は、金などの安全資産の価格を動かしている真の要因は、一時的な地政学的イベントではなく、実質金利であると主張しています。まずシフ氏は、イランに対して文明を壊滅させるとまで警告した大統領の過激なSNS投稿に触れ、そのような極端な作戦が実際に実行される可能性は極めて低いとの見解を示しました。その後に出された一時的な攻撃停止の発表についても、それは長期的な和平合意とはほど遠いものであり、事態が解決したかのように宣伝するのは欺瞞にすぎないと批判しています。

ホワイトハウスやメディアはイラン側が譲歩したかのように報じていますが、シフ氏の分析によれば、提示された10項目の提案は実質的にイラン側の完全な勝利に近い内容です。もし米国がこれを受け入れれば、イランの地位は戦前よりも向上し、米国の立場は弱まることになります。シフ氏は、両者の主張は依然として平行線のままであり、大統領が自ら招いた混乱をあたかも収拾したかのように装っているに過ぎないと述べています。こうした情勢の中で、市場には直感に反する動きが見られます。通常、戦争の懸念が高まれば安全資産である金は買われますが、最近では緊張が高まると金が売られ、逆に停戦の気配が見えると金が急騰するという逆転現象が起きています。シフ氏は、この現象こそが、現在の市場があらゆる事象をFRBの動向と結びつけて判断している証拠であると論じています。

こうした市場の反応は、金融市場におけるFRBの権力が肥大化しすぎていることを物語っています。シフ氏は、多くの投資家が本質を見誤っていると指摘しました。重要なのは単なる利下げの有無ではなく、インフレ率を差し引いた「実質金利」がどこにあるかという点です。たとえFRBが金利を操作しても、それ以上にインフレが加速すれば実質金利は低下し、結果として金の価格を押し上げることになります。また、原油価格の上昇が直接インフレを引き起こすのではなく、あらゆるものの価格上昇を可能にしている根本的な原因は、FRBが通貨を増刷し続けていることにあると彼は断言しています。シフ氏は、私たちが直面している物価高騰の本質は、地政学的なリスクよりも、中央銀行による通貨価値の毀損にあるという事実を冷静に見つめるよう促しています。

政府の情報を信じるな

Peter Schiff: Start Stacking Precious Metal | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏が、最新のインタビューの中で、戦争や誤った情報、そして市場操作が横行する現代において、どのように資産を守るべきかという論理を語っています。シフ氏は、政府が発表する公式な統計数字や政治的な意図を含む情報操作は信頼に値しないと断言しています。特に、現在の大統領が市場に対してリアルタイムで多大な影響を及ぼしている現状を指摘し、こうした不安定な要素が強まっているからこそ、米ドルから離脱してゴールド、つまり金へ資産を分散させる必要性が増していると説いています。これは、将来的に起こり得る金融政策の失敗に対する有効なヘッジ手段になると彼は考えています。シフ氏はまず、紛争の勃発が、物価が上昇しきる前に現物の商品を購入しておくべきだという主張を、より強固なものにしていると説明しました。以前であれば、将来必要になるものを安いうちに買っておくという単純な節約の観点からの助言でしたが、現在は有事という背景があり、手元に現金を置くよりも実物資産を蓄えておく実利的な準備が重要であると強調しています。

政府や政治家から発信される情報の信頼性について、シフ氏は極めて批判的です。政府からの情報の多くは不正確であるか、あるいは完全な虚偽であると考えており、トランプ氏の発言についても、かつては経済について、現在は戦争についても真実ではないことが含まれていると述べています。彼は公式なプレスリリースではなく、実際に何が起きているかという客観的な事実にのみ注目すべきだと警告しています。また、政権が公式メッセージを演出することに意欲的である場合、内部関係者がその情報を利用して利益を得る誘惑に駆られる懸念についても触れています。例えば、市場を動揺させるような投稿を出すことを事前に知っていれば、自信を持って先物取引などを行い、巨額の利益を得ることが可能になってしまうからです。一国の大統領が、雇用統計のような定期的な経済指標の発表以外で、日々の市場にこれほどの影響力を持つのは歴史的にも極めて異例な事態であると、彼は現在の状況を分析しています。

こうした市場のメカニズムの変化を受けて、ポートフォリオに与える影響についても言及しています。シフ氏は、米国政府の政策自体がドルへの依存度を下げ、金の保有率を高める動機をより強く生み出していると主張します。金の重要性を認識する民間投資家は今後さらに増え、この傾向は加速していくでしょう。彼は、1999年から2000年以降の25年間の実績を例に挙げ、米国の株式市場をドルではなく金の価値で測定した場合、その価値は75%以上も下落しているという事実を指摘しました。これは、通貨の価値が実質的にいかに損なわれているかを示しています。最後に、彼は今後の連邦準備制度理事会、いわゆるFRBの動向についても予測を述べています。戦争や経済の根本的な弱さを理由に、FRBは再び利下げや量的緩和に踏み切る可能性が高いと見ています。たとえ消費者物価指数などの公式なインフレ率が目標の2%を大きく上回り、5%や6%に達していたとしても、FRBはそれを見て見ぬふりをして金融緩和を強行するだろうと予測しています。シフ氏は、これを予測可能な政策上の誤りと呼び、法定通貨の購買力がさらに低下することへの警戒を呼びかけています。

イラン協議は時間稼ぎ?

Speculation Surges That Pakistan Talks Are A Delay Tactic Ahead Of Expanded US Action On Iran - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカのトランプ政権が、ホルムズ海峡の再開を求めてペルシャ湾周辺に米軍を駐留させ続ける意向を明確にする中、パキスタンのイスラマバードで予定されている米イラン直接協議に注目が集まっています。しかし、この停戦合意に向けた話し合いが、実はさらなる米軍増強と大規模な軍事作戦のための「時間稼ぎ」に過ぎないのではないかという懸念が急速に広がっています。専門家の間では、海峡再開に向けた危険な離島作戦に備え、海兵隊や空挺部隊の主力派遣部隊を配置するための時間をワシントンが必要としているとの見方が強まっています。

現在の休戦期間は2週間と設定されていますが、米イラン双方の要求には依然として大きな隔たりがあり、戦争を完全に終結させるような画期的な合意に至る可能性は極めて低いのが現状です。軍事ロジスティクスのデータによれば、アメリカ、欧州、中東を結ぶ輸送機が活発に動いており、首脳会談の直前まで部隊の再編成と増強が行われている様子がうかがえます。アメリカ側は、イランによる地域基地や同盟国への激しい反撃を想定しきれていなかった節があり、この停戦期間を態勢の立て直しに利用しているとの指摘もあります。

一方で、トランプ大統領にとっては、この紛争が泥沼化すれば秋の連邦議会中間選挙で共和党が壊滅的な打撃を受けるリスクがあり、何らかの「出口戦略」が必要なのも事実です。さらに、長期的な地上戦への発展は、バンス副大統領の将来の政権獲得のチャンスを損なうことにもなりかねません。そのバンス氏が交渉の場に赴くことは、1979年のイラン革命以降、アメリカ政府の最高レベルがイラン側と直接接触する極めて稀な機会となります。これはオバマ大統領時代以来の歴史的な対話の場面となります。

現時点でホルムズ海峡を実効支配しているイランは、世界経済に対して強力なレバレッジを握っています。これに対抗するようにアメリカが中東での軍事力を増強しているのは、さらなる攻撃をほのめかすことで交渉における主導権を取り戻し、より有利な条件を引き出すための圧力であるとも考えられます。パキスタンでの協議が真の和平に向けた一歩となるのか、それとも戦火が拡大する前の束の間の静寂に過ぎないのか、世界がその行方を注視しています。

金ベース決済、広がるか

A new gold rush: States stockpile bars, encourage gold-backed debit cards • Stateline [LINK]

【海外記事より】米国では現在、インフレへの備えとして、州政府が金(ゴールド)を蓄積したり、住民に金を裏付けとしたデビットカードの利用を促したりする動きが広がっています。テキサス州やフロリダ州に続き、多くの州で「取引型ゴールド法」と呼ばれる、消費者が自身の口座を通じて金を貯蓄し、決済に利用できる法律の整備が進められています。ジョージア州のマーティ・ハービン州上院議員は、インフレを「目に見えない一酸化炭素」に例え、金の法的地位を確立し、電子決済システムを構築することで、一般消費者の購買力を守る必要があると訴えています。オクラホマ州やアリゾナ州などでも同様の法案が議論されており、ユタ州では州知事の懸念がありながらも、金を裏付けとした電子決済システムの構築を義務付ける法律が成立しました。

こうした動きに対し、批判的な意見も少なくありません。左派系の税制専門家などは、金の保有は経済成長や雇用創出に寄与する社会的な利益がほとんどなく、金取引を非課税にすることは富裕層向けのタックスヘイブン(租税回避地)を生み出すだけだと指摘しています。また、そもそも多くの米国人にとって、金に投資する余裕自体がないという現実もあります。さらに、金投資家を支援する団体の中からも、既存の民間サービスで十分であり、政府が関与する新たなシステムは不要であるという声が上がっています。金保有者の多くは政府の介入を好まず、金を日常的な決済手段ではなく長期的な資産と見なしているため、実際の利用需要は低いという見方もあります。

一方で、推進派は新しいテクノロジーによって金がより身近になると主張しています。例えばイギリスのグリント社は、スイスの金庫に保管された実物の金と連動したプリペイド型デビットカードを展開しています。カードを利用すると、その瞬間に相当量の金がドルに換金されて決済が行われる仕組みで、これにより金に即時的な流動性が生まれます。支持者たちは、こうした仕組みがドル安に対する緩衝材になり、預金の補完的な役割を果たすと考えています。現在、金価格は1オンスあたり5000ドル近くまで高騰していますが、こうしたプラットフォームを通じて少額から金を積み立てることで、一般の人々も購買力を維持できるという理屈です。

現在、テキサス州やワイミイング州、ユタ州などでは実際に州レベルで金の備蓄が進んでいます。背景には、膨れ上がる連邦債務やインフレが州の財政に及ぼす影響への危機感があります。また、1971年に金本位制が廃止されて以来、金は収集品として課税対象となっていますが、州が決済システムに関与することで、この税制上の扱いに異議を唱える狙いもあります。専門家は、こうした金ベースの決済システムがステーブルコインのような普及を見せるかはまだ不透明であるものの、今はまさに市場が形成されるスタートラインに立っている状態であると分析しています。州政府がどこまで関与し、どのような規制や税制が整っていくのか、今後の動向が注目されています。

金銀、資産防衛の役割加速へ

Have gold and silver bottomed? - Research - Goldmoney [LINK]

【海外記事より】金と銀の価格は底入れしたのかという問いに対し、現在の市場はリスクの回避策をめぐって大きな議論の渦中にあります。筆者のマクラウド氏は、規制当局が投資マネージャーに対し、金は規制対象外の資産でありヘッジ手段にはならないと教育・立法化してきた背景を指摘しています。その結果、多くの投資マネージャーは現物金や銀のETFすら避け、自国通貨での現金保有をリスクフリーな立場と考えています。しかし、こうした当局による市場への介入こそが、現在のイランをめぐる紛争のような「ブラックスワン」的イベントに対する混乱の根本原因であると分析しています。

今週の貴金属市場は停滞が続いていますが、大局的に見れば、激しい変動を経て金と銀のスポット価格は年初からプラス圏を維持しています。イースター休暇明けの欧州市場で金は4750ドル、銀は75.20ドル近辺で取引されており、コメックス市場の建玉は過去20年間で最低水準にあるものの、下地となるトーンは堅調です。一部で報じられている中央銀行による金売却の噂については、中央銀行間の取引が主であり、市場に直接売却されているわけではないと冷静に捉えるべきです。特にトルコの動きは、金を通貨供給量の調節ツールとして使う独自の政策によるものであり、表面的な見出しを鵜呑みにしないよう注意を促しています。

一方、マクロ経済学者が好む安全資産であるドルは、主要通貨に対して勢いを失いつつあり、これが貴金属価格を支える要因となっています。現在、債券利回りや株価の上昇が一時停止する一方で、原油などのエネルギー価格はニュースの見出しに振り回され、極めて不安定な動きを見せています。トランプ氏によるイランへの言及や、イスラエルによるレバノン南部への攻撃、それに対するイランのホルムズ海峡閉鎖といった地政学リスクにより、原油価格は乱高下を繰り返しています。アジア市場での実物不足もあり、先物価格が実態を反映しきれていない面もあります。

投資家たちは現在、こうした事態がもたらす結末を無視して沈黙を守っているように見えます。しかし、エネルギー価格の高騰や物資不足が世界的な不況を招くか、あるいは政府が補助金や価格統制を拡大して通貨価値をさらに下落させるかの二択に迫られるのは時間の問題です。政治的には後者の道が選ばれる可能性が高く、投資家たちがこの確実な未来に気づき、規制の枠組みを捨てて動き出したとき、資産防衛のための金や銀への資金流入は凄まじいものになるだろうと予測しています。法定通貨であるドルが消滅へと向かう流れの中で、金と銀の役割は今後さらに加速していくと考えられます。

金、宇宙開発で活用

Astronauts Looking Through Gold-Colored Visors [LINK]

【海外記事より】「金(ゴールド)は役に立たない」という主張を耳にすることがありますが、宇宙開発の最前線を知れば、その見方がいかに誤りであるかがわかります。マイク・マハリー氏が紹介する記事によれば、次世代の月面着陸ミッション「アルテミス3」で宇宙飛行士が着用するヘルメットのバイザーには、金が不可欠な要素として組み込まれています。この金色の輝きは単なるデザインではなく、宇宙の過酷な環境から人間を守るための極めて重要な機能を果たしています。地球上と違い、宇宙空間における太陽光の刺激は非常に強く、目を突き刺すような鋭さがあります。そのため、目を保護しながら最大限の視界を確保する特別なシステムが必要とされるのです。

バイザーの開発を担当したのはサングラスで有名なオークリー社で、同社の技術責任者であり自らも宇宙飛行を経験した若田光一氏は、過酷な月面環境で作業するための視覚保護の重要性を説いています。なぜ金が選ばれるのかというと、金には赤外線や紫外線を効果的に遮断する性質があるからです。金の電子構造は、赤外線が当たるとエネルギーを吸収して振動し、光を透過させるのではなく反射する特性を持っています。紫外線に対しても同様のプロセスで反射や吸収を行い、宇宙飛行士の目に有害な光が届くのを防ぎます。この物理的特性を活かすため、バイザーには24金のコーティングが施されています。製造過程では電子ビームを用いて金を蒸発させ、レンズに吹き付けることで、視界を妨げないほど薄く、かつ有害な光を遮るのに十分な厚みの完璧な層を作り出しています。

投資家のウォーレン・バフェット氏などは過去に「金には実用性がない」といった趣旨の発言をしていますが、実際には金は世界で最も有用な金属の一つです。その希少性と実用性が組み合わさることで、極めて高い価値を生み出しています。金は数千年にわたりその美しさで人々を魅了し続け、昨年の金需要の約44%にあたる1550トンが宝飾品の製造に使用されました。しかし、金は単に美しいだけではありません。宇宙服のバイザーに見られるような独自の物理的・化学的特性により、産業やテクノロジーの分野でも欠かせない存在となっています。

特にテクノロジー部門での活用は年々進んでおり、昨年は主に電子機器の分野で228トンの金が使用されました。これは金が高い導電性を持ち、銀とは異なり腐食しないという優れた特性を持っているためです。また、展延性に優れているため、微細で精密な接続部品の材料としても最適です。もし金がこれほど希少で高価でなければ、さらに多くの用途で使われていたことでしょう。結論として、金は決して「役に立たない石」などではなく、実用的な工業素材であると同時に、誰もが求める実物資産としての価値を兼ね備えた、極めて多機能な存在であると言えます。

中銀の金購入、鈍化は一時的

Central Bank Gold Buying Has Slowed But the Bullish Case Remains [LINK]

【海外記事より】中央銀行による金(ゴールド)の購入ペースがここ数ヶ月で大幅に鈍化していますが、専門家はこの状況を一時的な反応であり、長期的なトレンドの変化ではないと分析しています。マイク・マハリー氏が紹介するメタルズ・フォーカス社の見解によれば、近年の金価格上昇を牽引してきたのは中央銀行による旺盛な需要でした。昨年の購入量は863.3トンに減少したものの、2010年から2021年までの年間平均である473トンを大きく上回っています。実際、2025年は中央銀行の金準備金が史上4番目の規模で拡大した年となりました。過去最高を記録したのは2022年の1136トンで、これは1950年以降、また1971年の金・ドル交換停止以降でも最大の純購入量となっています。今年の1月には金価格が5000ドルを大幅に超えて急騰しましたが、その後はイランをめぐる紛争による不確実性や、インフレ再燃への懸念から価格への下落圧力が強まりました。

こうした中、トルコがリラ相場を支えるためにここ一ヶ月で大量の金を売却しています。ブルームバーグのデータによると、3月の数週間で合計約58トンの減少が確認され、メタルズ・フォーカスの分析ではその後さらに売却が進み、総計131トンに達しました。紛争に伴うエネルギー価格の上昇は、リラ安を緩やかに抑えたいトルコ中央銀行にとって負担となっています。エネルギー価格の上昇はドル需要を高め、リラへの下落圧力を強めるため、金を担保にドルで市場介入を行う必要があるのです。トルコの保有量減少の半分以上はゴールド・スワップによるもので、これは金を担保に安価なドル資金を調達する手法です。また、ロシアもウクライナ侵攻に伴う制裁下で経済を支えるため、予算不足を補う目的で金を売却しています。ガーナもポートフォリオの再構築として保有量を約50%減らしましたが、これは産金国によく見られる動きであり、今後も売買の両面で活発な動きが予想されます。

一方で、ポーランドのように防衛費捻出のために金売却の可能性が示唆されながらも、実際には2月に20トンを買い増して保有量を570トンまで拡大させた国もあります。今後の展望として、イラン情勢の不透明感からエネルギー価格の高止まりが予想されるため、流動性確保や経済支援を目的とした中央銀行による金の売却やスワップが続く可能性は否定できません。しかし、メタルズ・フォーカス社はこれらをあくまで短期的な動きであると強調しています。中央銀行がポートフォリオを多様化するために金を保有するという論理は、特に保有比率の低い国々において依然として有効です。

むしろ、イラン紛争や米国の他国への介入などは、ドルの「武器化」に対する懸念や米国の財政悪化の問題を浮き彫りにし、特定の通貨に依存しない資産としての金の魅力をさらに高めることになると指摘されています。主要国の財政見通しの悪化や中央銀行の独立性への懸念も重なり、地政学的な不確実性が続く中では、分散投資先としての金の重要性は今後も変わらないというのが、この記事の主な見解です。中央銀行による一時的な売却の動きがあったとしても、ドルの保有を抑え、資産を多様化させようとする長期的な姿勢には揺るぎがないと考えられます。

2026-04-10

戦争は繁栄を妨げる

Opinion | Wartime spending doesn’t deserve its economy-boosting reputation - The Washington Post [LINK]

【海外記事より】戦争や軍拡の時期になると、当局者や評論家は決まって「軍事支出は経済に良い」という主張を展開します。防衛契約が増えれば工場が稼働し、失業率が下がって国内総生産(GDP)が押し上げられるという理屈です。しかし、アメリカ経済研究所のシニア・リサーチフェローであるジュリア・カートライト氏は、この前提はGDPという指標の性質に対する根本的な誤解に基づいていると指摘します。GDPは個人消費、投資、政府支出、純輸出の合計ですが、統計上、政府が「病院の建設」に投じた10億ドルと、「砲弾の製造」に投じた10億ドルは、全く同じ価値として加算されてしまいます。

健全な経済においては、個人消費や民間投資が主役となります。そこでは、人々が自分の意志と資金で何に価値があるかを判断し、需要に応じてリソースが最も生産的な場所へと流れる「規律」が働いています。これに対し、政府支出にはこうした市場の規律が及びません。公共支出の財源は税金や借金、あるいは通貨増発であり、これらは民間の購買力を奪ったり将来に負担を回したりしているだけで、新たな富を創出しているわけではありません。特に国防調達においては、1万ドルの便座カバーや巨額の予算超過、膨大な官僚的無駄遣いといった歪みが頻発します。さらに、戦争関連の生産物は誰も自発的に購入するものではなく、その本質は「死と破壊」にあります。

歴史を振り返れば、第二次世界大戦中のアメリカではGDPが急増した一方で、国民生活は肉やバター、ガソリンなどの配給制に苦しみました。自動車工場は戦車や爆撃機の製造に転用され、消費財は市場から消え去りました。GDPの数値上は好景気に見えても、生活水準は低下していたのです。これは「大砲」を手に入れるために、文字通り生活の糧である「バター」を犠牲にした結果です。こうしたリソースの転用は長期的な弊害ももたらします。優秀な技術者が消費者の生活を豊かにする技術開発ではなく、レーダーや信管の設計に年月を費やすことで、民間部門のイノベーションは停滞を余儀なくされます。

最近の例でも、2000年代初頭のアメリカの軍事支出増大はGDP成長に寄与しましたが、同時に赤字を拡大させ、後の金融危機の一因となりました。また、現在のロシアもGDPの7%以上を軍事費に投じることで制裁下での経済崩壊を免れていますが、その内実では労働力が生産的産業から引き抜かれ、物不足とインフレが進行しています。崩壊を回避することと、繁栄を築くことは同義ではありません。カートライト氏は、軍事力の維持や必要な戦争を否定しているわけではなく、GDPという指標に対して正直であるべきだと訴えています。経済成長とは単なる支出の規模ではなく、人々の生活を向上させる「価値の創造」を指すべきであり、その基準に照らせば、戦争は繁栄の源泉ではなく、繁栄を妨げる要因でしかないのです。

米対外援助の内幕

Why America’s Money Always Follows War - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカの対外援助は、表向きは人道的な慈善活動とされていますが、その実態は戦略、戦争、そして影響力の買収に他なりません。経済アナリストのマーティン・アームストロング氏が分析した1946年から2024年までの長期データによると、インフレ調整後の援助額で上位を占めるのはイスラエル、エジプト、旧南ベトナム、アフガニスタン、韓国の5か国です。これら5か国だけで、第二次世界大戦後の全援助額の約30%を占めており、その金額は1兆ドルを超えています。援助の3分の2は経済目的、3分の1は軍事目的と分類されていますが、資金の流れを追えば、それが常に紛争地帯や軍事同盟、地政学的な要衝に向けられていることが分かります。

イスラエルが首位に君臨しているのは、中東におけるアメリカの「アンカー(錨)」として機能しているからです。建国以来3000億ドル以上の援助を受けており、現在もミサイル防衛を含む多額の軍事支援が継続されています。これは貧困救済ではなく、世界で最も不安定な地域の一つに米国の権益を投影し続けるための長期的な軍事投資です。同様に2位のエジプトも、イスラエル周辺の地域バランスとスエズ運河を維持し、アメリカの勢力圏に留まらせるために多額の資金が投じられています。人権問題への懸念がある中でも2024年に巨額の軍事援助が承認された事実は、援助が内政への賛同ではなく、戦略的な役割への対価であることを物語っています。

ベトナムとアフガニスタンの事例は、国家建設を装った冷戦期や対テロ戦争の支出でした。南ベトナムへの援助は共産主義の拡大を食い止めるための戦費であり、1975年に防衛線が崩壊すると同時に援助も打ち切られました。アフガニスタンでは20年間で1440億ドル以上の再建資金が投じられましたが、その多くが浪費や汚職に消え、放棄された資産も少なくありません。これらは「援助」という名の占領の維持費であり、傀儡国家を支えるための補助金に過ぎませんでした。唯一の成功例とされる韓国も、その動機は利他的なものではなく、北朝鮮や中国に対する反共の拠点としての価値があったからです。

これら5か国の共通点を見れば、アメリカの意図は明白です。イスラエル、エジプト、韓国はアメリカの影響力を固定するために支払われ、南ベトナムとアフガニスタンは戦域およびクライアント国家の実験場として資金が投じられました。アメリカ政府自身の説明でも、援助が国家安全保障や地域の安定に寄与することが強調されています。結論として、ワシントンはお金が余っているから、あるいは慈悲深いから資金を配っているわけではありません。支配したい場所にこそ、資金を投入するのです。「対外援助」とは、同盟関係への融資、戦争への助成、そして帝国の支配力を維持するための、聞こえの良い言葉に過ぎません。

AIバブルが弾けるとき

Doug Casey on Whether the AI Tech Bubble Has Found Its Pin—and What Investors Are Overlooking [LINK]

【海外記事より】著名な投資家であるダグ・ケイシー氏は、現在のAIブームを「本物の技術革命」であると同時に、針を待ち構えている「典型的な投機バブル」であると分析しています。コンピューターやインターネットの時もそうであったように、革命そのものは本物であっても、大半の企業は淘汰され、投資家の多くは資産を失うのが歴史の常です。現在、テック企業の株価は伝統的な評価基準を完全に逸脱しており、極めて割高な水準にあります。さらに、AIデータセンターに数千億ドルもの巨額資本が投じられていますが、その多くが実質的な利益を生む製品やサービスの開発ではなく、人々の監視や制御に費やされている点にケイシー氏は強い懸念を表明しています。こうした投資は、AI自体の急速な進化によって現在のチップやプロセッサが短期間で陳腐化するため、投資回収が終わる前に無価値になる可能性が高いのです。

現在、市場を支配しているのは「他人がやっているから自分もやる」という、乗り遅れることへの恐怖、いわゆるFOMO(Fear Of Missing Out)による群集心理です。膨大な不換紙幣のクレジットがハイテク分野に流れ込み、企業はそれを使い切らなければならないという強迫観念に駆られています。しかし、歴史を振り返れば、自動車や航空機が社会を劇的に変えた時も、関連企業の多くは倒産し、投資家は報われませんでした。加えて、現在の経済は政府と産業が密接に結びついたファシズム的な様相を呈しており、当局がビッグデータの収集を通じて国民への支配を強めるツールとしてAIを利用する危険性が高まっています。ケイシー氏は、このような状況下でアマチュアの投資家が無理にこの荒波に乗ろうとすれば、致命的な打撃を受けることになると警鐘を鳴らしています。

今後の見通しとして、米国では文化的分断による内戦のような状況や、イランとの戦争によるさらなる混乱が予想されます。一方、欧州は社会主義的な停滞により沈みゆく船のようであり、今後数十年で最も有望なのは中国や東アジア諸国であると氏は予測します。また、多くの投資家が華やかなソフトウェアやテック企業に目を奪われている一方で、エネルギーや銅、ウラン、農産物といった「ハードアセット」が過小評価されている点も見逃せません。中東情勢の悪化により肥料の供給が滞る可能性を考慮すると、農業関連への投資は非常に論理的です。ケイシー氏は、市場が過熱するハイテク株を避け、ゴールドやシルバー、エネルギー資源などの実物資産や関連銘柄を長期保有し、それらが市場の主役になる時期を待つべきだと説いています。

プロパガンダの勝利

The Triumph of Propaganda [LINK]

【海外記事より】ドイツのメディア、ヴェルトヴォッヘ誌に掲載されたフィリップ・グート氏の記事は、アルゼンチンのハビエル・ミレイ政権を「チェーンソーによる勝利」と称賛し、自由市場資本主義への急速な移行を高く評価しています。しかし、この記事の著者であるオスカー・グラウ氏は、こうした評価をプロパガンダの勝利に過ぎないと厳しく批判しています。グラウ氏によれば、2023年12月に発足したミレイ政権は、実際には前政権と同様に社会主義的であり、実態を伴わない見せかけの規制緩和に留まっているといいます。事実、ミレイ政権下でも高水準の税金や通貨増発、債務の拡大といった国家主導の経済運営が続いており、明らかな改善は見られないのが現状です。具体的には、一部で減税が行われたものの、主要な税体系は維持されており、2024年には約100万人の賃金労働者を対象とした所得税が復活しました。さらに、公的債務および対外債務もミレイ政権下で大幅に増加しています。

グート氏は、貧困率が2年間で53%から28%に低下したと指摘していますが、グラウ氏はこの数字を政府の公式発表に基づく非現実的なものだと切り捨てています。ミレイ政権は実質的な投資の誘致に失敗しており、企業の閉鎖が相次ぎ、多くの生産部門が打撃を受けているからです。仮に貧困率が低下したとしても、それは自由市場の成果ではなく、ペロン主義の前政権よりも50%も増加した社会福祉手当による所得再分配の結果であると分析されています。また、グート氏は予算の黒字化を強調しますが、それは歳出削減だけでなく増税によって達成されたものであり、経済には悪影響を及ぼしています。さらに、ミレイ政権は過去に例を見ない規模での通貨増発を行っており、2年足らずでマネタリーベースを4倍に拡大させました。これは、インフレと戦う英雄というミレイ氏のナラティブ(物語)を完全に否定する事実です。

オーストリア学派の観点からも、ミレイ氏をミルトン・フリードマンやアダム・スミスの弟子と呼ぶグート氏の主張は、彼がいかにロスバードやミーゼスといった真のオーストリア学派の思想から遠い存在であるかを露呈させています。GDP成長率についても、2024年の深刻な不況を軽視するグート氏の分析は不正確であり、経済政策の本質を見誤っていると指摘されています。加えて、アルゼンチン国内では自由が厳しく制限されており、シオニスト的な警察国家化が進んでいるという懸念も示されています。ミレイ氏が支持する外交政策や戦争への関与が、世界的な物価高騰を招き、自国民の首を絞めているのが実情です。グラウ氏は、このような事実に目をつぶった安易な称賛記事が溢れている現状を嘆き、ミレイ政権の真の姿を冷静に見極める必要があると結んでいます。

ドル体制、緩やかな解体

Iran war has caused lasting damage to the dollar system [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの間で繰り広げられた戦争は、世界の貿易システムに対して取り返しのつかないほどの負荷を与えました。米イラン間の停戦合意が発表された後も、その影響は長く残ると予測されています。特筆すべきは、世界の中央銀行が保有する資産において、価値調整後のドル資産をゴールドが上回ったことです。これは数十年の間で初めての出来事であり、第二次世界大戦後から続いてきたルールに基づく国際秩序を、ドナルド・トランプ大統領が事実上解体しつつあることを示唆しています。これまで何度もドル体制の終焉が誇張されてきましたが、基軸通貨の交代は劇的な一瞬で起こるものではなく、長い時間をかけて複数の節目を経て進行するものです。かつての英ポンドがそうであったように、現代のドルもまた、ウクライナ情勢に伴うロシア資産の差し押さえや、ドルの「武器化」といった出来事を経て、その支配的な地位が揺らいでいます。

国際通貨基金の統計を詳細に分析すると、金利収入を差し引いた実質的なドル需要の低下が浮き彫りになります。ドルの名目上の保有額は約7.5兆ドルに達しますが、金利の影響を除いた評価額で見れば、ドルの重みは2014年頃のピーク時から15%減少しています。一方で、新興国を中心とした中央銀行はゴールドの実物保有量を15%増加させており、ドルに対する実質的な需要が明らかに弱まっていることは否定できません。信頼できるグローバルな担保として、市場は再びゴールドという古くからの解決策に注目しています。これはドルに対する不信感の高まりと、既存の金融システムから独立した代替資産の欠如によるものです。中央銀行の行動にも変化が見られ、以前のようなドル安局面での買い支えも行われなくなっています。さらに、エネルギー価格の上昇や供給の制約が、ドル体制への圧力を強めています。

世界金融システムの根幹を支えてきたのは、貿易で得た利益をドル資産に再投資し、米国が安価に資金調達を行う代わりに、米国が安全保障と秩序の安定を提供するという暗黙の了解でした。しかし、この仕組みはもはや当然のものとはみなせません。ホルムズ海峡が完全に再開されたとしても、産油国が以前のように余剰資金を米国債に投じるとは限らないのです。サウジアラビアなどの輸出国は経済の多角化を進めており、自国内への投資を優先するようになっています。より深刻なのは、米国が安全保障の保証人として信頼されなくなった場合、ドルで取引を行い、その利益を米国に還流させる動機が失われることです。ドルの循環構造は今、重大な局面にあります。

ドルの衰退は一晩で起きる現象ではありません。有力な代替資産が不足しているため、急激な崩壊は避けられるでしょうが、システムに開いた穴から空気が漏れ続けるような状況が続くでしょう。世界のドル建て貿易の割合は約40%に低下し、ユーロや人民元の存在感が増しています。また、国際的な融資におけるドルの比率も60%まで低下しました。中央銀行の米国債保有高がゴールドの保有高を下回ったことは、一つの象徴的な出来事です。米国がイランとの戦争において一方的な行動をとったことで、国際社会のルールが変わったことは今や公然の事実となりました。ドル資産の保有を減らすという選択は、かつてないほど論理的なものとなっており、ドルの支配力が時間をかけて衰えていく一方で、ゴールドの価値がさらに再評価されていく流れは避けがたいものと考えられます。

米経済、多重危機に直面

Recession Watch: Everything All At Once [LINK]

【海外記事より】経済アナリストのジョン・ルビノ氏による最新の記事は、現在のアメリカが直面している多重的な経済危機の深刻な実態を報告しています。特にハイテク業界の雇用環境は壊滅的な状況にあり、ある大手州立大学のコンピュータサイエンス学科では、卒業生の就職率が2023年の89%から2025年には34%にまで急落しました。2026年の予測値はわずか12%という衝撃的な数字が出ています。企業がAIツールの導入によって少数のシニアエンジニアのみを雇用し、ジュニア開発者の枠を廃止していることが主な原因ですが、大学側は授業料収入を維持するために、この事実を伏せたまま学生を募集し続けていると指摘されています。

雇用問題に加え、金融面では「プライベート・クレジット」がかつてのサブプライム・ローンを上回る規模のバブルと化しており、エネルギー市場でも石油価格が放物線を描くように急騰しています。複数の国で原油や燃料が底をつき始める中、債券市場も混乱に陥っており、米10年物国債の利回りは住宅ローン金利7%、自動車ローン金利10%を想起させる水準にまで上昇しています。こうした経済的な歪みは、国民の消費意欲を著しく減退させており、あらゆる悪材料が同時に噴出する「景気後退の監視」が必要な局面に入っています。

さらに深刻なのが、中東情勢の緊迫化による地政学リスクです。トランプ大統領はSNS上で、イランの主要な石油輸出拠点であるカーグ島への軍事攻撃を認めた上で、イランがホルムズ海峡の再開を含む合意に応じなければ「今夜、一つの文明が滅びるだろう」という過激な警告を発しました。大統領はこれを「世界の歴史において最も重要な瞬間の一つ」と呼び、体制転換を迫る強硬姿勢を崩していません。この記事の著者は、こうした軍事的緊張が経済にさらなる追い打ちをかけ、世界経済に予測不能な打撃を与える可能性を示唆しています。

現在のアメリカは、AIによる雇用の喪失、金融バブルの崩壊、エネルギー危機、そして戦時体制に近い軍事行動という、前例のない複数の危機に同時に見舞われています。かつて新卒エンジニアが手にしていた高額な年収提示は過去のものとなり、学位が実質的に価値を失いつつある国内状況の中で、対外的な戦争のコストとリスクが膨れ上がっています。著者は、これらの要因がすべて一つの臨界点に向かって突き進んでいる現状を、極めて冷静かつ批判的な視点で描き出し、読者に対して現在の危機的な経済状況への警戒を呼びかけています。

休戦は事実上破綻

Trump Got Played by Israel… And the Game Continues - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏による今回の記事は、アメリカとイランの間で合意されたはずの休戦が事実上破綻し、トランプ政権がイスラエルの戦略に翻弄されている現状を鋭く分析しています。公式な発表こそないものの、両国の停戦状態は終わりを迎え、ワシントンが喧伝する「対イラン軍事勝利」という言葉は、何ら戦略的目標を達成していない虚構に過ぎないと指摘されています。実際には、イランによるホルムズ海峡の支配を招き、世界経済のサプライチェーンが人質に取られるという、アメリカにとって極めて不利な状況に陥っています。

事態が混迷を極める中、仲介役のパキスタンとイランは、トランプ政権がイラン側の提示した「10項目」を交渉の基礎として受け入れたと主張しています。その項目には、アメリカとイスラエルによる不侵略の約束、ホルムズ海峡の主権維持、核開発権利の承認、すべての経済制裁の解除、さらには戦争賠償金の支払いや中東からの米軍撤退といった、アメリカにとっては到底受け入れがたい内容が含まれていました。これに対し、トランプ氏を支持するシオニスト勢力やネタニヤフ政権は激怒し、即座に反発しました。結果として政権側は「合意したのは別の内容だ」と主張を翻し、イスラエルがレバノンへの空爆を強行したことで、交渉の道は完全に閉ざされました。

こうした泥沼の事態を招いた元凶について、ニューヨーク・タイムズ紙などの報道は、ネタニヤフ首相がトランプ大統領を戦争へと誘導した構図を描き出しています。2026年2月にホワイトハウスで行われた密談で、ネタニヤフ氏はイランの脅威を強調し、イスラエルによる単独行動を示唆することで、迷っていたトランプ氏に大規模攻撃を決断させたとされています。ジョンソン氏は、こうした報道が今このタイミングで出る背景には、政策失敗の罪を誰かに押しつけようとするワシントン特有の政治的儀式があると見ています。

記事によれば、ピート・ヘグセス国防長官が主な非難の対象となる一方で、JD・ヴァンス副大統領らは開戦に反対した理性的存在として描かれ始めています。しかし、現実は好転しておらず、イランによる米軍基地や湾岸諸国の経済インフラ、さらにはイスラエルへの反撃が続く中で、トランプ氏は近く「アメリカはイランを打倒できない」という現実に直面せざるを得なくなると予測されています。戦争の継続が米経済と共和党の政治的展望に壊滅的な打撃を与えることが明白になる「審判の時」が近づいていると、著者は冷徹に締めくくっています。

中国、金取引の世界拠点へ

As France pulls gold from the US, how can China develop into the next global gold hub? | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】フランス中央銀行がアメリカに預けていた金準備を本国へ引き揚げたことを受け、経済アナリストの間では、中国がこの「戦略的転換期」を捉えて次なる世界の金取引の拠点へと発展すべきだという声が上がっています。フランスは2025年7月から2026年1月の間に、ニューヨークで保管されていた、標準に満たない地金を売却し、同等量を欧州で購入してパリへ移送しました。こうした動きは異例のシグナルと受け止められており、ドイツの経済学者らからも、トランプ政権下の不確実性や、アメリカが自国の金融力を武器として利用することへの懸念から、アメリカ国内の連邦準備銀行に預けている金を回収すべきだという主張が出ています。

こうした欧米でのドルの信頼性低下と脱ドル化の流れを背景に、中国、特に香港が果たす役割に注目が集まっています。ANZ銀行の中国担当チーフエコノミスト、レイモンド・ヤン氏は、ブロックチェーンやステーブルコインといった金融テクノロジーを活用し、香港を現代的な金取引センターとして構築すべきだと指摘しています。中国の強みは、GDP成長や金融政策における「政策の安定性」にあり、世界的なボラティリティが高まる中でその安定性が大きな魅力になると分析されています。香港政府も、年内に金の集中決済システムの試験運用を開始する予定であり、今後3年以内に2000トンを超える保管能力を確保することで、世界から信頼される「グローバル・ボルト(保管庫)」としての地位を確立することを目指しています。

スタンダードチャータード銀行の丁爽氏は、上海での金取引の強化や香港での保管施設の拡大は、投資家に対して中国に関連する資産に資金を置くよう促す戦略の一環であると述べています。一方で、欧州諸国がすぐに金を香港へ移送するかについては慎重な見方もありますが、すでにカンボジアが自国の金準備の一部を中国で保管することを計画していると報じられており、他の数カ国も同様の関心を示している模様です。このように、一部の国々ではすでに自国の資産をアメリカから中国へ移す動きが具体化し始めています。

中国人民銀行自体も、2026年3月まで17カ月連続で金を買い増しており、その保有量は過去最高の7438万オンスに達しました。世界的に金への投資需要が高まる中、アメリカの政策の予測不能さがリスクと見なされる一方で、インフラ整備と技術導入を急ぐ中国が、これまでのロンドンやニューヨークに代わる新たな金のハブとしての存在感を高めています。アメリカがドルの裏付けとなる金の管理において信頼を揺るがせている間に、中国は着実にその受け皿となる準備を整えており、国際的な金融秩序における金の流れが大きく変わろうとしていることが示唆されています。

金ETF、米欧で資金流出

ETFs Dumped Gold in March Except In Asia [LINK]

【海外記事より】マイク・マハリー氏の記事によると、3月の世界の金ETF市場では、アジアを除く主要地域で大幅な資金流出が観測されました。1月の価格調整やイラン紛争の発生を受けた動きとして、世界全体で84.8トンの金がETFから流出し、金額ベースでは過去最大の月間流出額となる120億ドルに達しました。重量ベースでも2022年9月以来の大きな減少となりましたが、アジア市場の堅調な動きが北米市場の弱さを補ったことで、2026年第1四半期全体で見れば、世界全体でネット62トンの純増を維持しています。3月末時点の世界の金ETFの運用資産残高は6060億ドルにのぼり、2025年度末を9%上回る水準となっています。

地域別で見ると、北米市場の動向が際立っています。3月の北米のETFからは、130億ドル相当に及ぶ87トンの金が流出しました。これにより、2008年の金融危機やコロナ禍の時期に匹敵する9カ月連続の流入記録が途絶え、第1四半期で唯一の流出地域となりました。ワールド・ゴールド・カウンシルはこの背景として、中東での軍事作戦に端を発したリスクオフ局面で投資家が換金売りを急いだことや、ドルの上昇と金利の高止まりが金需要を圧迫したことを挙げています。特に米国の金利見通しが、当初予想されていた2026年の利下げから、2027年9月まで据え置かれるという予測に変化したことが、投資家の判断に大きな影響を与えたと分析されています。

欧州市場でも、ドイツやフランス、イタリアを中心に7.3トンの流出が見られましたが、北米ほどの規模には至っていません。一方でアジア市場は、世界的な逆風の中でも3月に9.9トンの増加を記録し、四半期ベースでも過去最大の流入超となりました。特に中国の投資家による買いが目立っており、地政学リスクの高まりや国内株式市場の下落、さらに通貨安への懸念から、欧米の投資家が売却する中でも安全資産としての金への投資を加速させています。インドでも1億7700万ドルの増加が見られ、アジア全体で価格下落時の押し目買いが活発に行われました。

金ETFは物理的な金を持つこととは異なりますが、マウス操作だけで取引できる高い流動性が特徴です。そのため、今回の北米で見られたような急激な資金移動が起こりやすい側面があります。記事は、金ETFが投資家に現物を直接保有することなく市場に参加する便利な手段を提供している一方で、その利便性が投機的な動きや急速な資金流出を招く要因にもなっていることを示唆しています。北米や欧州で価格変動に連動した売却が進む中、対照的にアジアが金への投資を強化しているという、地域ごとの投資行動の鮮明な違いが浮き彫りになった1カ月であったと締めくくられています。

米、金準備の大半が低品質

Ft. Knox Full of Impure Gold UNFIT for International Transactions [LINK]

【海外記事より】アメリカのフォートノックス金保管所に収蔵されている金準備の大部分が、国際的な取引には適さない不純物を含んだ「非標準」の地金であるという事実が、マイク・マハリー氏の記事によって報告されています。現在、アメリカの金準備高は8133.5トン、約2億6150万トロイオンスとされていますが、その約半分を保管するフォートノックスの金のうち、現代の国際基準を満たす純度99.5%以上の地金は、わずか17%に過ぎません。残りの多くは純度90%前後のコインゴールドと呼ばれる質の低いものであり、国際決済の標準とされるLBMAの基準を満たしていないため、即座に市場で通用する流動性を欠いています。これは、最近フランス中央銀行がニューヨークに保管していた同様の非標準的な金を売却し、自国で高純度の地金に買い替えた動きとは対照的です。

こうした事態を招いた背景には、1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領が行った金没収に近い政策があります。当時、政府は個人の金保有を禁止し、回収した90%純度の金貨を溶かして地金にしたため、そのまま不純な状態で保管され続けてきました。記事では、マネー・メタルズ社のステファン・グリーソン氏が、アメリカの金準備を現在の通貨政策と同様に「老朽化した遺物」であり、世界基準よりも低い水準に甘んじていると批判しています。さらに深刻な問題として、これらの金準備に対する実効性のある監査が1970年代以降行われていないことが挙げられています。1974年に実施された公開監査も、一部の保管庫を見せるだけの宣伝活動に近いもので、個々の地金の重量や純度を厳密に検証するものではなかったと指摘されています。

その後も、財務省による独自の点検は行われていますが、透明性や会計基準を満たしておらず、一部の報告書が紛失したり、保管庫の封印が正当な理由なく破られたりといった不透明な管理実態が浮かび上がっています。こうした状況を受け、米議会ではマイク・リー上院議員らにより、金準備の包括的な監査と、すべての非標準的な地金を現代の国際基準に合わせて精錬し直すことを義務付ける法案が提出されました。精錬には数年を要すると見られていますが、この記事の著者は、アメリカの金準備が現状では過去の欺瞞の産物であり、ドルの金本位制からの離脱という負の遺産を象徴するものになっていると述べています。世界最大の金保有国という表向きの数字の裏で、実際には国際市場で即戦力とならない質の低い金が、不透明な管理下で眠り続けているという実態が浮き彫りになっています。

2026-04-09

1.5兆ドルの国防予算案

A $1.5 Trillion Pentagon Budget? | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】アメリカの政治学者であり経済学者のジョセフ・ソリス=ミューレン氏は、トランプ政権が2027年度に向けて提示した1.5兆ドルの国防予算案に対し、国家の財政を破綻させる無謀な試みであると強く批判しています。現在のアメリカはすでに39兆ドルを超える莫大な債務を抱えていますが、今回の提案が通れば、核兵器の維持管理や退役軍人への支援などを含めた軍事関連の総支出は、年間で3兆ドルに迫る規模となります。これは一国のGDPに占める割合としても戦時下レベルであり、アメリカの納税者にとって極めて深刻な事態です。

著者は、この膨大な予算が「本土の防衛」のためではなく、世界中に張り巡らされた基地の維持や終わりのない介入、そして次なる「脅威」を捏造して軍事支出を正当化するために使われていると指摘しています。この資金循環の背景には、ロッキード・マーティンやボーイングといった大手軍需産業と政治家、シンクタンクによる強固な癒着があり、調達プロセスそのものが自己目的化した巨大な機械のようになっています。3万ドルのドローンを撃退するために200万ドルのミサイルを使用するといった戦術的な不条理が、戦略的な検討もなされないまま常態化しているのです。

こうした過剰な軍事支出は、一般市民の生活を直撃しています。政府が「大砲(軍事)」と「バター(生活)」の両方に執着し、その穴埋めを連邦準備制度(Fed)による通貨供給の拡大で補おうとするため、インフレという「隠れた税金」となって食料品やガソリン価格を押し上げ、ドルの価値を減じさせています。すでに利払い費だけで年間1兆ドルを超えており、債務残高がGDP比120%に達すると予測される中で、さらなる軍事費の積み増しは財政破綻への道を加速させるだけです。

ソリス=ミューレン氏は、本来の共和制の理念に基づき、他国との平和的な通商を重んじ、軍隊は自国の防衛のみを目的とすべきだと説いています。1.5兆ドルの軍事予算は国家の強さの象徴ではなく、むしろ衰退の兆候です。アメリカがこの「帝国プロジェクト」に伴う財政的・道徳的な破綻に向き合わない限り、生活水準の低下と権威主義への傾斜は止まらないだろうと警鐘を鳴らしています。

必要ない戦争

A War of Choice, Not Necessity - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】テネシー州選出の元連邦下院議員であるジョン・J・ダンカン・ジュニア氏は、現在のアメリカによるイランとの戦争が、国家の生存に必要な「不可欠な戦争」ではなく、政権が自ら選んだ「選択の戦争」であると厳しく批判しています。世論調査ではアメリカ国民の3分の2がこの戦争を選択の戦争であると感じており、保守層や中道層の間でも、トランプ大統領の政策には賛成しつつも、この戦争だけは支持できないという声が広がっています。

ダンカン氏は、この戦争がもたらす経済的な壊滅に強い懸念を示しています。著名な経済学者であるジェフリー・サックス氏は、中東のエネルギー・インフラが破壊されたことで、現代史において最大の経済的災害の瀬戸際にあると警告しています。ホルムズ海峡の混乱は肥料の供給を滞らせ、ディーゼル燃料の高騰は農家や運送業者を直撃し、食料品を含むあらゆる物価を押し上げています。また、アメリカの電力の約43%が天然ガスに依存しているため、供給の混乱は各家庭の光熱費の大幅な上昇を招くことになります。

ダンカン氏は、この戦争が始まった背景には、特定の富豪による巨額の政治献金や、かつて「新保守主義者(ネオコン)」と呼ばれた勢力による、中東への一方的な介入政策があると指摘しています。同氏は、イラク戦争を当初支持したもののわずか2年後に批判した保守派の重鎮ウィリアム・F・バックリー・ジュニアらの言葉を引き、この戦争には「保守的な要素は何一つない」と断じています。また、元海軍長官の息子であるジミー・ウェッブ氏の「アメリカ軍を他国の利益のために戦う傭兵部隊に変えることに誇りはない」という言葉を紹介し、愛国心ゆえにこの戦争に反対する軍関係者の苦悩を代弁しています。

アメリカの債務はすでに39兆ドルを超え、軍事予算は膨れ上がる一方です。ダンカン氏は、ロナルド・レーガン元大統領が掲げた「戦争は国家の死活的利益に関わる場合にのみ、最後の手段として行われるべきである」という原則に立ち返るべきだと訴えています。同氏は、現在の政策が国民の自由を守るためのものではなく、アメリカの軍事的な攻撃欲を助長するものであると批判し、保守主義の原点である「自制ある外交政策」の重要性を改めて強調しています。

殺戮と無関心

Killing and Indifference - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカの元判事であり、憲法学者としても知られるアンドリュー・ナポリターノ氏は、現在の政治状況において「個人の自由」や「法の支配」がいかに危機に瀕しているかを問いかけています。同氏は、政府が本来守るべき憲法や権利章典がもはや形骸化し、統治される側の国民の意思ではなく、一部の資金提供者や目に見えない勢力によって権力のレバーが引かれているのではないかと指摘しています。特に、大統領が犯罪の疑いがあるというだけで、正当な法の手続きを経ずに人命を奪うことが許されるのかという問いは、アメリカ法学の根幹を揺るがす問題です。本来、あらゆる人は有罪が確定するまで無罪と推定され、公正な裁判を受ける権利があるはずですが、現実はその原則から大きく逸脱しています。

ナポリターノ氏は、戦争のあり方についても厳しい視線を向けています。宣戦布告なき戦争が常態化し、大統領が自らの判断で他国のインフラを破壊したり、一般市民を巻き込む攻撃を命じたりすることを、議会が黙認し資金を提供し続けている現状を強く批判しています。大統領が「石器時代に追い戻す」と脅して民間人を標的にすることは、人道上も国際法上も許されない行為です。しかし、憲法を遵守すると誓ったはずの指導者たちが、自ら署名し批准したジュネーブ条約や国連憲章を無視し、法を恣意的に選択して運用していることに同氏は深い懸念を示しています。

また、政府と国民の関係性についても根本的な疑問が呈されています。政府は国民に対して嘘をついても許される一方で、国民が政府に嘘をつけば罪に問われるという不均衡な現実があります。自由な社会において、真実こそが統治者と被統治者を結ぶ不可欠な絆であるはずですが、政府が国民の同意を得ていない行為を繰り返すとき、その正当性は失われます。ナポリターノ氏は、生命、自由、幸福の追求という権利が、単なる歴史的な修辞ではなく、人間性に不可欠な不可譲の権利であることを強調しています。

大統領が地球の裏側にある文明を全滅させると脅し、国全体を恐怖に陥れるような状況下で、私たちは今一度、憲法が定めるチェック・アンド・バランスの機能を問い直さなければなりません。一人の人間に権力が集中し、法を無視した殺戮や破壊が繰り返されるとき、それを抑制する仕組みが機能しなければ、自由な社会は存続し得ません。ナポリターノ氏の問いかけは、政府が国民のために働いているのか、それとも国民が政府のために働かされているのかという、民主主義の原点を私たちに突きつけています。

神を演じる狂人

Trump and Netanyahu: Two Madmen Playing God - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】著名な経済学者であるジェフリー・サックス氏は、アメリカのトランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相という、強大な権力を持つ二人の指導者が世界を未曾有の危険にさらしていると警鐘を鳴らしています。サックス氏は、両氏を「自己愛性パーソナリティ障害」や「サイコパス」といった臨床的な用語を用いて分析し、彼らが共通して抱く「自分は神に選ばれた救世主である」という宗教的な妄想が、国際社会に壊滅的な破滅をもたらしかねないと指摘しています。トランプ氏はイランに対して「地獄を見ることになる」と公然と脅し、ネタニヤフ氏もまた、聖書の物語になぞらえてイランの壊滅を示唆するような発言を行っています。彼らにとって核兵器を含む軍事力は、責任を伴う負担ではなく、自らの肥大化した自己を誇示するための道具に変貌してしまっているというのです。

特に深刻なのは、彼らの周囲を熱狂的な信奉者や軍事的なタカ派が固め、その妄想を助長している点です。アメリカのヘグセス国防長官は、国防総省内でキリスト教の礼拝を主催し、イランとの戦いを「聖戦」と位置づけて「圧倒的な暴力」を祈り求めています。また、ハッカビー駐イスラエル大使は、聖書の預言を成就させるために周辺諸国の領土を併合することさえ容認する姿勢を示しています。一方のイスラエル側でも、極右派の閣僚たちがネタニヤフ氏の権力基盤を支え、国際法を無視した入植地の拡大や他民族への抑圧を、神から与えられた神聖な義務であると主張しています。このように政治的な野心と宗教的な狂信が結びつくことで、外交による理性的な解決という選択肢が事実上排除されているのが現状です。

サックス氏は、現在の両氏の行為を、かつてニュルンベルク裁判でナチス指導者が問われた罪、すなわち侵略戦争や民間インフラの破壊、集団的罰といった「国際法上の最高犯罪」に該当すると厳しく批判しています。本来、こうした暴走を止めるべき国連安保理や国際刑事裁判所などの枠組みも、アメリカによってその機能が妨げられています。サックス氏は、教皇の声や、トルコ、エジプト、サウジアラビアといった国々、そして中国やパキスタンによる平和への取り組みなど、国際社会の良識ある勢力が結束して、この狂気を食い止めなければならないと訴えています。指導者が自らの政治的手段として「神による破滅」を持ち出すとき、その犠牲になるのは彼らの敵対者だけでなく、世界中の人々であることを忘れてはなりません。

仏、金引き揚げの背景

Gold, Jobs, and the Story Behind France’s Move [LINK]

【海外記事より】今回は、フランスによる金準備の再編やアメリカの雇用統計の裏側に隠された真実について、専門家の見解をご紹介します。物事には表向きの理由がありますが、それがすべてとは限りません。フランス中央銀行は最近、ニューヨークに預けていた129トンの金を売却し、本国で新たな金塊に買い替えました。これはフランスの全金準備の約5%に相当します。公式発表では、古い規格の金塊を現代の国際基準に適合する高品質なものへ更新するための「技術的な調整」とされています。確かにニューヨークで規格外の金を売却し、欧州で標準的な金塊を買い直す方が、輸送や鋳造の手間を省けるため、この説明には合理性があります。

しかし、この動きには政治的な意図も隠されていると考えられます。金を米国の影響が及ぶ場所から自国内へ移すことで、将来的な政治的・経済的な圧力から資産を守る狙いがあるという見方です。フランスは1960年代にも、当時のド・ゴール大統領のもとで米国から大量の金を引き揚げた歴史があります。当時は米国の通貨政策への不信感が背景にありましたが、現在も多くの国が同様の疑念を抱き始めています。特に、米国が制裁手段としてドルシステムや外貨準備を利用する中、世界的に「脱ドル」の動きが加速しています。ドイツなど他の欧州諸国でも、有事に備えて金準備を本国へ戻すべきだという声が強まっており、中央銀行が「自国で直接管理すること」を重視する傾向は鮮明になっています。

一方で、経済指標の信頼性にも疑問が投げかけられています。米国の中央銀行にあたる連邦準備制度(Fed)の政策に影響を与える雇用統計ですが、速報値が好調であっても、後から発表される改定値で大幅に下方修正されるケースが相次いでいます。直近の報告でも、見かけの雇用者数は予想を大きく上回りましたが、過去数ヶ月分を精査すると、実際には雇用が失われていた月もあり、実態は数字ほど強くないことが示唆されています。

結局のところ、中央銀行の金の移動も、不透明な経済データの修正も、既存の金融システムや制度への信頼が揺らいでいることを象徴しています。通貨の購買力が長期的に低下し続ける法定通貨システムにおいて、短期的なニュースの変動に一喜一憂するのではなく、地政学的なリスクや債務の増大といった構造的な問題を注視する必要があります。信頼が揺らぐ時代だからこそ、現物資産として金を自国や手元で管理する重要性が、国家レベルでも個人レベルでも改めて見直されているのです。

AIは市場の知恵に勝てない

The Wisdom of the Market - by Quoth the Raven [LINK]

【海外記事より】人工知能(AI)がいかに進化を遂げようとも、市場経済という仕組みを打ち負かすことはできないとする興味深い論考を、ピーター・ベトケ教授が紹介しています。計算能力が飛躍的に向上するたびに、AIを使えば市場よりも効率的に経済を管理できるという中央計画経済の支持者が現れます。彼らは、AIが最適な税率を算出し、人々のニーズを満たす資源配分を完璧に行えると主張しますが、この考え方は根本的な誤解に基づいています。経済とは単に数式やデータ、処理能力だけで解決できる計算問題ではないからです。18世紀のアダム・スミスが指摘したように、一着のコートを作るのにも無数の人々の協力が必要であり、そのネットワークは「あらゆる計算」を超えています。

19世紀の経済学者パレートも、経済全体を数式で解こうとすれば、変数の数は爆発的に増加し、解決不能になると指摘しました。さらに、20世紀のノーベル経済学賞受賞者フリードリヒ・ハイエクは、問題の本質はデータの量ではなく、情報の質にあると説きました。経済を動かす知識の多くは、個々の現場に分散しているだけでなく、言葉にできない「暗黙知」です。例えば、地元の店主が知っている顧客の微妙な購買習慣や、まだ見ぬ製品を夢見る起業家の発想を、AIに入力可能なデータに変換することは不可能です。何より重要なのは、価格という信号の存在です。価格はアルゴリズムが弾き出すものではなく、現実の取引を通じて立ち上がってくる発見のプロセスそのものなのです。

小麦の価格が上がるのは、限られた供給を巡って人々が競い合う結果であり、それが希少性を伝え、節約や技術革新を促す道しるべとなります。ハイエクが市場を「発見の手続き」と呼んだのは、それが単なる資源配分以上の役割を果たしているからです。AIは過去の膨大なデータを処理することには長けていますが、経済活動は常に創造的で未来志向のものです。20年前にソーシャルメディアのインフルエンサー市場を予測できるアルゴリズムが存在しなかったように、未来の価値はまだ誰にも想像されていない領域から生まれます。AIは物流や在庫管理を効率化する優れた道具にはなり得ますが、何十億もの自由な取引から生み出される市場の知恵に取って代わることはできないのです。

停戦案の3条項に違反と非難

Iran's Parliament Speaker Says US Violating 'Three Clauses' of Tehran's Ceasefire Proposal - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】イランのガリバフ国会議長は、アメリカがイラン側の提示した10項目の停戦案のうち、すでに「3つの条項」に違反しているとする声明を発表しました。ガリバフ議長は、アメリカがこれまでの約束を繰り返し破ってきた歴史に触れ、今回もまた同様の裏切りが繰り返されたとして、アメリカに対する深い不信感をあらわにしています。イラン側によれば、トランプ大統領は当初、イランの提案を交渉の優れた基盤であると述べていたにもかかわらず、ホワイトハウスはその発言を撤回しようとする動きを見せているとのことです。

ホワイトハウスのリービット報道官は、イランが最初に提示した案は「ゴミ箱に捨てられた」ものであり、現在は修正された停戦案が提出されていると主張していますが、イラン側は核心的な要求を撤回した様子を一切見せていません。声明で指摘された具体的な違反の1つ目は、レバノンを含む全地域での即時停戦を定めた第1条項を遵守していないことです。これはパキスタンのシャリフ首相も明言していた合意事項ですが、アメリカ側はこれを守っていないとイランは主張しています。2つ目は、領空侵犯の禁止条項に反して、米軍のドローンがイラン領空に侵入したことです。このドローンは、イラン南部ファールス州のラール上空で撃墜されたと報告されています。

3つ目の違反は、合意の第6条項に含まれていたイランのウラン濃縮の権利を、アメリカ側が否定したことです。ガリバフ議長は、交渉が始まる前から、交渉の土台となるべき原則が公然と踏みにじられている現状を厳しく非難しています。このような状況下では、二国間の停戦や交渉を継続することは「不合理である」と付け加え、アメリカの姿勢に強い懸念を表明しました。交渉の進展が期待される一方で、合意の前提条件を巡る双方の認識の乖離が浮き彫りになっており、停戦に向けたプロセスの不透明さが改めて示された形です。

NATO加盟国に「報復」検討

Report: Trump Considers Pulling Troops Out of NATO Countries Deemed 'Unhelpful' to Iran War Effort - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカのトランプ政権が、対イラン・イスラエル戦への協力が不十分であると見なしたNATO加盟国に対し、駐留米軍の撤退を伴う「報復措置」を検討していることが、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道で明らかになりました。この記事を執筆したデイブ・デキャンプ氏によれば、トランプ大統領は、戦争努力を支援しない国から軍を引き揚げ、より協力的であると判断した同盟国へ再配置する計画を立てているとのことです。これは、かつてトランプ氏が示唆したNATOそのものからの離脱には至らないものの、同盟内の軍事バランスを劇的に変える可能性を秘めています。

今回の措置で特に「非協力的な国」の筆頭として挙げられているのがスペインです。スペイン政府は、自国の領土や領空が中東紛争に関連する軍事活動に使用されることを阻止する措置を講じました。また、イタリアも中東へ向かう米軍機のシチリア島基地への着陸を拒否しており、ドイツを含む複数の加盟国からも戦争に対する強い批判の声が上がっています。特にドイツでは、右翼政党の「ドイツのための選択肢」が、国内に駐留する数万人規模の米軍部隊の撤退を求めており、トランプ氏の計画には、ドイツやスペインにある軍事基地の閉鎖が含まれる可能性が浮上しています。

トランプ氏は、ホルムズ海峡の開放を求める自身の要請に、NATO加盟国が一つも応じなかったことに強い不満を抱いています。撤退した部隊の移転先としては、ロシアに近いポーランドやルーマニア、リトアニアといった、より対米協力に前向きな諸国が検討されています。大統領はNATOのマルク・ルッテ事務総長と会談する予定であり、この問題が主要な議題になると見られています。ホワイトハウスの報道官は、大統領がNATO離脱の可能性についても言及してきたことを認め、ルッテ事務総長との会談でもその話題が上るだろうと述べており、同盟の結束が揺らぐ局面を迎えています。

聖戦の代償

President Makes the News for Declaring Holy War, and America Will Pay the Price [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領がイランに対し「聖戦」を彷彿とさせる過激な最後通牒を突きつけたことで、アメリカ国民は極めて重い代償を支払うことになると、経済評論家のデビッド・ハギス氏は警鐘を鳴らしています。トランプ氏は自身のSNSで、ホルムズ海峡を48時間以内に開放しなければ地獄が降り注ぐと警告し、さらには「神に栄光あれ」や「アッラーに称賛あれ」といった宗教的な文言をあえて使用しました。歴代の大統領は、中東での紛争が宗教戦争と解釈され、イスラム世界の団結を招く事態を避けるために細心の注意を払ってきましたが、現政権はその禁忌を破り、自らジハードを煽るような危険な言動を繰り返しています。

この紛争の影響は、すでに経済的な負担としてアメリカ国民にのしかかっています。米国内の石油指標であるWTI原油価格が欧州の北海ブレント原油を上回る逆ザヤ現象が起きており、石油業界や一部の富裕層が巨額の利益を得る一方で、一般市民はあらゆる物価の上昇という形で「戦争税」を支払わされています。ハギス氏は、政府が石油の輸出関税を30%から40%引き上げることで、軍事産業の不当な利益を回収し、国民の負担軽減や戦費に充てるべきだと主張しています。しかし、事態はさらに深刻で、過去のオイルショックとは異なり、今回は石油の精製施設や輸送インフラそのものが破壊されているため、たとえ停戦が実現しても供給網の回復には数年を要すると見られています。

経済学者のマーク・ザンディ氏も、原油価格が戦前の水準に戻ることは当面なく、最悪の場合は永遠に戻らない可能性があると指摘しています。1970年代のスタグフレーション時と比べ、現在のアメリカは家計の購買力がすでにインフレで浸食されており、公的および民間債務の合計は対GDP比で343%という、当時の2倍以上の水準に達しています。債務残高は約108兆ドルにのぼり、この膨大な借金が金利の上昇圧力を生むため、景気後退を防ぐための利下げも困難な状況です。エネルギー価格の高騰は輸送コストや肥料代に直結し、7月までには食料品の価格も急騰すると予測されています。トランプ氏が始めたこの戦争は、経済を制御不能なスタグフレーションへと突き動かしており、国民が負う傷跡は長期にわたって残ることになりそうです。

戦争は終わっていない

Statement of Iran’s Supreme National Security Council on the Two-Week Ceasefire and Negotiation Conditions - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元CIA分析官のラリー・ジョンソン氏によれば、イランは決して停戦に合意したわけではなく、アメリカやイスラエルが攻撃を停止する限りにおいて報復を控えることに同意したに過ぎません。ホワイトハウスはホルムズ海峡の安全を強調していますが、実際にはイランが通行する船舶を個別に審査し、通行料を徴収する体制を維持しています。この通行料は中国の元で支払われ、イランとオマーンで分配される仕組みであり、年間で推定960億ドルの収益が見込まれています。イランの最高国家安全保障評議会は、今回の事態をイラン国民の勝利と位置づけており、最高指導者の指導力や国民の団結によって、アメリカに10項目の計画を受け入れさせたと主張しています。この計画には、アメリカによる不侵略の保証、ホルムズ海峡の管理権の承認、ウラン濃縮の容認、すべての制裁解除、国連安保理決議の撤回、損害賠償、米軍の地域からの撤退、そしてレジスタンス勢力への攻撃停止が含まれています。

イラン側は、過去40日間にわたりレバノンやイラク、イエメン、パレスチナの勢力と協力して敵に壊滅的な打撃を与えたと説明しています。当初、敵側は軍事力でイランを屈服させ、ミサイルやドローンの能力を無力化できると考えていましたが、イランとその同盟勢力による強力な反撃を予測できていませんでした。イランは、アメリカとイスラエルに対して歴史上最大級のハイブリッド戦を展開し、地域内やイスラエル管理下のインフラ、軍事資産に甚大な損害を与えたとしています。その結果、敵側は勝利が不可能であることを悟り、イランに対して執拗に停戦を求めてきたと伝えています。イランは当初、目標達成のためにこれらの要求を拒絶してきましたが、主要な軍事目標が達成されたと判断し、イスラマバードでの15日間の詳細交渉に応じることを決定しました。

パキスタンを通じて提示されたイランの要求は、イラン側の主導権を強調するものであり、凍結資産の解除や拘束力のある安保理決議による条件の承認も求めています。パキスタンによれば、アメリカは公的な姿勢とは裏腹に、これらの原則を交渉の基礎として受け入れたとのことです。ただし、これは戦争の終結を意味するものではなく、すべての条件が最終決定されるまでは、イランは完全な紛争終了を認めない方針です。また、これまでの経緯からイランはアメリカの欺瞞を警戒しており、要求を軟化させるつもりはありません。一方、イスラエルのネタニヤフ政権はこの状況に動揺しており、もしアメリカがイランとの合意を優先すれば、イスラエルへの軍事支援が途絶える可能性もあります。今後2週間の交渉期間中にイスラエルが攻撃を行えば、イランは即座に報復する構えです。さらにレバノンのヒズボラによる動きも、今後の展開を左右する不安定要素として残っています。