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インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-04-27

容疑者、トランプ政権を批判

DC gala shooting suspect aired grievances against Trump in writings | AP News [LINK]

【海外記事より】ワシントンで先週土曜日の夜に開催されたホワイトハウス記者会見夕食会において、発砲事件を起こした容疑者の男が、犯行直前に家族へ送った手紙の中でトランプ政権の政策を強く批判し、自らを「連邦政府の親切な刺客」と称していたことが明らかになりました。AP通信が確認したメッセージによると、当局はこの事件が政治的な動機に基づくものであるとの見方を強めています。ワシントン・ヒルトンで銃声が響く数分前に送信されたこの文書には、大統領の名前を直接挙げずともトランプ氏を指していることが明白な記述が繰り返されており、東太平洋での麻薬密輸船に対する米軍の攻撃など、政権の様々な行動に対する不満が綴られていました。

捜査当局は、この文書やSNSへの投稿、家族への聞き取り調査を、容疑者の心理状態と動機を解明するための最も有力な証拠として扱っています。逮捕されたのはカリフォルニア州出身の31歳の男、コール・トマス・アレン容疑者で、複数の銃とナイフを持って夕食会のセキュリティ・チェックポイントを突破しようとした疑いが持たれています。アレン容疑者の兄は、この文書を受け取った後にコネチカット州の警察に通報しました。また、メリーランド州に住む容疑者の妹の証言によれば、容疑者はカリフォルニアの銃砲店で合法的に複数の武器を購入し、両親に無断で自宅に保管していたといいます。妹は、兄が過激な発言をする傾向があったとも述べています。

AP通信が精査した1000語を超える文書は、支離滅裂ながらも非常に個人的な内容で、「みなさん、こんにちは!」という軽い挨拶から始まり、家族や同僚、さらには事件に巻き込まれる可能性のある見ず知らずの人々への謝罪へと続いていました。政治的な怒りと宗教的な正当化が混在する中で、男は現場の警備体制が甘いと嘲笑し、武器を所持したまま検知されずにホテル内に侵入できたことに驚きを示していました。当局の調べによれば、容疑者はカリフォルニアから列車でシカゴを経由してワシントン入りし、数日前から会場となったホテルに宿泊して機会を伺っていた単独犯であると見られています。

夕食会が始まって間もなく、容疑者が大宴会場に向かって突進した際に警備員に取り押さえられ、もみ合いの中で発砲がありました。トランプ大統領は無傷でステージから避難しましたが、会場内は一時騒然となり、出席者はテーブルの下に身を隠す事態となりました。司法省の暫定責任者は、容疑者が大統領を含む現政権の関係者を標的にしていた可能性が高いと指摘しています。容疑者はコンピューターサイエンスの修士号を持つ高学歴な家庭教師であり、過去には車椅子用の新しいブレーキを開発してメディアに取り上げられた経験もありました。今回、3度目の暗殺未遂に直面した形となるトランプ氏は、世界的に暴力が増加している現状に対して団結と超党派の癒やしを呼びかけています。

イラン戦費、予算計上これから

Cost of Iran War Not Included in Pentagon's $1.5 Trillion Budget Request - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカの国防総省の予算担当官によれば、トランプ大統領が要求した1.5兆ドルという巨額の2027年度国防予算案には、現在のアメリカとイランとの戦争に要する費用が含まれていないことが明らかになりました。国防総省の最高財務責任者代理を務めるジュールズ・ハースト3世氏は、4月21日の記者会見において、今回の予算案は正直なところイランとの紛争が始まる前に策定されたものであると述べています。今年度の1兆ドルという予算から約50%も増加し、過去最大規模となった今回の予算案ですが、トランプ政権はさらに追加の軍事支出を議会に求める方針です。これは、イランとの戦争によって枯渇した兵器の補充や、その他の軍事作戦に関連する費用を補填するためだとされています。

当初の報道では、政府は戦争費用として2000億ドルの追加予算を要求する計画であると伝えられていました。しかし、その後の検討により、この金額は800億ドルから1000億ドル程度に下方修正される可能性があるとのことです。ホワイトハウスの行政管理予算局のラッセル・ヴォート局長は、先週の時点で議員らに対し、現段階では具体的な見積額を提示できる状況にはないと説明しています。一方で、保守的な最小見積もりを用いたイラン戦争の費用追跡データによれば、2026年2月28日にアメリカとイスラエルによる対イラン戦争が開始されて以来、すでにアメリカは600億ドル以上の費用を投じていることが示されています。

特に開戦直後の動きは激しく、最初のわずか6日間だけで、弾薬などの軍需品に費やされた金額は113億ドルに達したと報告されています。このように、当初の予算枠を大幅に超える支出が現実のものとなっており、今後のアメリカの財政運営に大きな影響を与える可能性があります。今回の大規模な予算要求は、既存の軍事力を維持するだけでなく、進行中の紛争に対応するための追加措置が不可欠であることを浮き彫りにしています。ホワイトハウスは、消耗した軍備を立て直し、軍事作戦を継続するために必要な資金を確保すべく、間もなく議会に対して補正予算案を提出する見通しです。

この記事を執筆したデイブ・デキャンプ氏は、アンチウォー・ドットコムのニュースエディターとして、アメリカの軍事政策や国際紛争の動向を専門に追っています。彼が指摘するように、公式に示された1.5兆ドルという数字はあくまでも基礎的な予算に過ぎず、実際の戦争継続にはさらなる巨額の公金が投入されることになります。世界最大級の国防予算を誇るアメリカであっても、不測の事態として始まったイランとの戦いは、その予算編成の前提を根底から書き換える事態を招いています。今後の議会での審議において、この追加の軍事支出がどのように扱われるのか、そして実際にどれほどの規模に膨らむのかが注視されています。

ヨルダン、米軍駐留に疑問の声

Jordanians wonder if it's time to kick out US troops | Responsible Statecraft [LINK]

【海外記事より】ヨルダン国内に駐留する米軍の存在が、同国の安全保障に新たな問いを投げかけています。ヨルダン中部の基地には2月、例年の3倍にのぼる60機以上の米軍機が配備されましたが、その直後に米国とイスラエルによるイランへの攻撃が始まり、地域的な紛争が勃発しました。この戦いの中で、ヨルダン国内の米軍システムがイランのドローンによって破壊され、イラン側も自国への攻撃にヨルダンの領土が使用されているとして、同国に強い抗議を行っています。

こうした事態を受け、約4000人の米兵を受け入れているヨルダン国民の間では、米軍基地の価値を疑問視する声が上がっています。本来、これらの基地はホスト国を守るために設置されたはずですが、実際にはイランの攻撃から基地自身を守ることすらできていません。ヨルダン国内の専門家は、米軍が駐留していることでヨルダンの軍事施設がイランやその代理勢力の正当な攻撃目標となり、結果としてヨルダンが直接的な紛争の当事者に引きずり込まれていると指摘しています。また、紛争の影響で3月の観光予約が100%キャンセルされるなど、経済的な打撃も深刻です。

国民の不満をさらに強めているのは、ヨルダン領空で米軍がイスラエルに向かうイランのミサイルを迎撃しているという事実です。ガザでの犠牲者が増え続ける中で、米軍がイスラエルを守るためにヨルダンを利用していることに、多くの国民が反発を感じています。世論調査ではトランプ大統領の外交政策を肯定的に見るヨルダン人はわずか12%にとどまっており、ベテラン議員の中には、米軍基地が国家の安全保障に対する脅威であるとして、その追放を求める者も現れています。

ヨルダン政府は、国内の反米感情を刺激しないよう、米軍の役割を過小評価したり、自国内に「外国の軍事基地は存在しない」と主張したりするなど、慎重な姿勢を崩していません。一方で、米軍の存在が地域紛争の波及を防ぎ、国境の安全確保に貢献していると評価する声も一部には残っています。しかし、過去にイラン支持の武装組織によってヨルダン国内の米兵が殺害された事件もあり、米軍の駐留がヨルダンの国益に本当にかなっているのかという議論は、今後さらに激しさを増していくと考えられます。

米軍基地、政府発表以上の損害

Report: Iran Caused Far More Damage to US Bases Than the Trump Administration Has Acknowledged - News From Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】米NBCニュースは、中東各地の米軍基地に対するイランの攻撃が、トランプ政権の公表を大幅に上回る深刻な被害をもたらしていたと報じました。匿名当局者の証言によれば、国防総省は議会に対しても被害の詳細を隠蔽しており、衛星画像会社に対して戦場の画像を非公開にするよう要請するなど、組織的な情報操作を行っている疑いがあります。共和党の議会補佐官は、国防総省が過去最高の予算を要求しながら、数週間にわたる具体的な被害状況の問い合わせに一切応じていない実態を明かしています。

攻撃はバレーン、クウェート、サウジアラビアなど中東7カ国の米軍基地に及びました。特に衝撃的なのは、クウェートのキャンプ・ビューリングがイランのF-5戦闘機による爆撃を受けた事実です。米軍の防空システムを突破して敵の固定翼機が米軍施設を攻撃したのは極めて異例の事態です。また、3月1日にクウェートのシュアイバ港で起きたドローン攻撃では、米陸軍予備役兵6人が死亡し20人以上が負傷しました。ヘグセス国防長官は「ドローンが防空網をすり抜けた」と説明していましたが、生存者の証言によれば、実際には施設は無防備な状態だったといいます。

国防総省はこれまでに少なくとも13人の米兵が死亡し、400人以上が負傷したことを認めています。被害を受けた基地の多くは避難を余儀なくされ、ニューヨーク・タイムズ紙は、イランに近いクウェートの基地を含め、地域内の13の基地がほぼ居住不能な状態にあると伝えています。バレーンの米海軍第5艦隊司令部も甚大な被害を受けましたが、これらの損傷は修復可能であるとされています。

ワシントンのシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の評価によれば、イランは11の基地にわたる100以上の目標を的中させました。施設の修復費用だけで少なくとも50億ドルに達すると試算されていますが、これには破壊されたレーダーや武器システム、その他の高額な装備品の損害は含まれていません。トランプ政権が被害を過小に見せようとする中で、実際の戦況は米軍の脆弱性と莫大な経済的損失を浮き彫りにしています。

レバノン介入の教訓

An All-American Retort to Israel's Invasion of Lebanon | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】イスラエルによるレバノンへの爆撃が続いており、今年だけで1000人以上の民間人が犠牲になったと報じられています。また、イスラエルは南部レバノンの占領を目的として、50万人を超える市民を強制的に避難させました。こうした無差別とも言える攻撃の激しさに、ドナルド・トランプ大統領も異を唱えています。トランプ氏は自身のSNSで「イスラエルはこれ以上レバノンを爆撃してはならない。米国はこれを禁止する」と宣言し、これ以上の軍事行動は許容できないという強い姿勢を打ち出しました。

現在の状況は、2006年のイスラエルによるレバノン侵攻を想起させます。当時も多くの民間人が犠牲となり、米国議会はイスラエルの行動を支持する決議を採択しましたが、最終的にイスラエル軍は敗北を喫しました。この記事の著者は、当時のホワイトハウス近くで行われた大規模な抗議活動を振り返り、米国旗とレバノン旗の両方を持ち、伝統的な衣装を着て行進する母子の姿を紹介しています。彼らはごく普通の米国市民であり、一部の過激派が主張するような「生まれながらの敵」ではないことを強調し、介入がもたらす悲劇を訴えています。

米国の政治は、レーガン政権時代から長年にわたってレバノンの泥沼に引きずり込まれてきました。1982年のイスラエルによる「ガリラヤの平和作戦」では、当初の目的を大きく超えて軍が進軍し、ベイルートを封鎖して水や電気を遮断する事態に至りました。この作戦では1万人以上の死傷者が出たと推定されています。当時の米国大使館は、イスラエルの侵攻がテロを誘発し、アラブ世界における米国の地位を損なうと警告していましたが、その懸念は現実のものとなり、1983年には数百人の米海兵隊員が犠牲になる爆破テロが発生しました。

レーガン元大統領は、その大惨事を受けて部隊をレバノンから撤退させました。著者は、現在のトランプ政権が当時の政策担当者たちのような賢明さや勇気を一貫して示せるかは疑問であると述べています。米国にとってレバノンでの戦いは自国の戦争ではなく、介入による利益も存在しません。中東政策において最善の選択は、速やかに撤退し、これ以上関与しないことであると著者は結論づけています。トランプ氏による爆撃停止の命令が、今後イスラエルの行動を真に抑制できるのか、その実行力が問われています。

トランプ氏、狂気の戦略

Trump Reposts the Homicidal Fantasy of a Bush Neocon - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ大統領が、イランとの戦争を終結させるための手段として、ブッシュ政権時代の新保守主義者(ネオコン)であるマーク・ティーセン氏の過激な提案を引用し、物議を醸しています。ティーセン氏は、イラン内部に交渉派と反対派の2つの派閥があるならば、交渉に応じない側を殺害すればよいという、殺人をも厭わない解決策を提示しました。同氏はワシントン・ポスト紙への寄稿などを通じ、イラン指導部への爆撃再開や殺害を主張しており、トランプ氏もこれに同調する動きを見せています。

ティーセン氏は、ブッシュ元大統領やラムズフェルド元国防長官のスピーチライターを務めた経歴を持つ人物です。同氏が所属するアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)は、イスラエルを擁護し、世界各地での戦争を積極的に提唱することで知られるシンクタンクです。また、同氏はかつて水責めなどの拷問を正当化する主張を展開したこともあり、国際法や人道的な規範よりも、武力による抑圧を優先する傾向が強いとされています。今回の提案も、外交的な駆け引きというよりは、特定の指導者を暗殺することでイランを屈服させようとする極めて暴力的な発想に基づいています。

こうした主張の背景には、イランをリビアのような破綻国家に追い込もうとする意図が見え隠れします。ティーセン氏やマーク・レヴィン氏といった強硬派は、イランの核の脅威を強調し、米軍による地上介入やウランの確保を求めています。しかし、専門家の指摘によれば、イランの指導者を数人殺害したところで、すぐに新たな指導者が現れるだけであり、こうした暗殺キャンペーンが実質的な勝利をもたらす可能性は低いのが現実です。また、トランプ政権側は「イランの軍事力はすでに壊滅した」という心理的なナラティブ(物語)を広めていますが、客観的な証拠は乏しい状況にあります。

トランプ氏はこれまでも、イランの文明そのものを消し去るような過激な発言を繰り返してきましたが、今回のティーセン氏の提案を肯定的に引用したことは、同政権の外交方針が一段と危険な方向に傾いていることを示唆しています。実際にはイランが降伏する気配は見えず、戦況は泥沼化していますが、トランプ氏は虚偽の勝利宣言を行って関心を他国へ転じようとしているとの見方もあります。平和的な解決を模索するのではなく、暗殺や大量殺戮を視野に入れた「狂気」とも取れる戦略が、アメリカの外交政策の表面に現れ始めていることに、強い警戒が集まっています。

独裁者の戦争

Donald Trump Goes to War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】トランプ米大統領の政治手法や軍事への執着は、アメリカという共和国にとって大きな転換点になる可能性を秘めています。かつてカエサルがルビコン川を渡った際、自らの野心のために既存の政治支配を無視したように、トランプ氏もまた、自らの直感や感情を優先し、国際法や憲法、市民の権利を軽視する姿勢を見せています。軍事介入や戦争に引き寄せられる同氏の姿勢は、第2次世界大戦後で最大となる1.5兆ドルの軍事予算にも現れています。

皮肉なことに、トランプ氏はかつてベトナム戦争を回避した経歴があり、自身だけでなく一族の4世代にわたって兵役の経験者は一人もいません。それにもかかわらず、同氏は米国の安全を直接脅かさない遠く離れた国々に若者を送り込むことに執着しているように見えます。イランとの戦いについても、犠牲者が出ることを当然のこととして語っています。また、自身の名前を冠した「トランプ級戦艦」の建造を急がせるために海軍長官を解任しました。2028年までの完成を目指すこの巨大戦艦は、1隻で1700億ドルという膨大な予算が投じられる計画ですが、現代のミサイル戦においては脆弱で、非効率なものになるという批判が根強くあります。

平和を唱えて当選した同氏ですが、実際にはロシア・ウクライナ間の戦闘を煽り、ガザやヨルダン川西岸での惨事に対して資金や政治的な後ろ盾を提供しています。さらに、イランやレバノンへの関与、中東やカリブ海など複数の地域での紛争も続いています。一方で、カナダやグリーンランドを米国の州に加えるといった野心的な発言も繰り返されています。これらは平和をもたらすための行動というより、他国の主権や国際的な秩序を破壊する行為に映ります。

同氏はまた、自身をノーベル平和賞の候補と見なすだけでなく、軍人としての功績を称える米国の最高位である名誉勲章を自らに授与することさえ検討しているようです。1期目のイラク訪問時に暗い滑走路に着陸したことを「勇敢な行為」として挙げていますが、これは本来の受章基準とは大きくかけ離れています。かつてのカエサルが独裁者へと至った歴史をなぞるかのように、法やルールを無視して個人の感情で国を動かそうとする現在の姿勢は、アメリカのみならず世界全体にとって極めて不安定な要素となっていると言えるでしょう。

豪鉱業大手、人民元建て取引で合意

Will China’s deal with Australian mining giant BHP boost yuan internationalisation? | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】オーストラリアの鉱業大手であるBHPが、中国の主要な買い手に対し、鉄鉱石の価格指標を人民元建てに連動させることを認めました。これは、長らく米ドルが支配してきた資源取引の分野において、中国政府が勝ち取った大きな成果であると分析されています。中国は世界の海上鉄鉱石輸入の約75%を占める最大の顧客でありながら、これまで価格形成への影響力は限定的でした。今回の合意により、中国国内の市場取引データが価格算定式に組み込まれることになり、価格決定の主導権が大きく動こうとしています。

この合意は、中国の国営機関である中国鉱産資源集団(CMRG)との数ヶ月にわたる交渉の末に成立しました。具体的には、BHPの主力製品であるジンブルバー粉鉱の価格について、その51%を中国の港での実取引に基づいた人民元建て指標で決定し、残りの49%を従来の米ドル建て指標で算出する仕組みです。これまでは米ドル建てのプラッツ指標などが主に使われてきましたが、今後は人民元ベースの価格が過半を占めることになります。専門家は、この変化によって鉄鉱石の価格が実際の需給バランスをより正確に反映するようになり、採掘業者による価格操作が難しくなると指摘しています。

こうした動きの背景には、米国による「ドルの武器化」への懸念や、地政学的な対立が深まる中で、中国が人民元の国際化を加速させている実情があります。BHPのような業界最大手が人民元建ての指標を受け入れたことは、リオ・ティントやヴァレといった他の巨大鉱山企業にとっても無視できない前例となります。実際、他のオーストラリア企業であるフォーテスキュー・メタルズも、昨年すでに人民元建て取引の拡大に同意しており、その見返りとして中国の銀行から極めて有利な条件で融資を受けています。

しかし、今回の合意がすぐに米ドルの覇権を覆すわけではありません。分析によれば、依然として複数の指標が併存する状態が続くと見られており、人民元建て指標がどれだけ広く受け入れられるかは、その透明性や流動性にかかっています。中国はトランプ政権下の米国の孤立を背景に、ドル依存からの脱却を図るチャンスをうかがっていますが、鉄鉱石の価格決定権を巡る争いは、まだ入り口に立ったばかりだと言えるでしょう。鉄鉱石という重要資源のルールが変わることで、今後、世界の資源貿易における人民元の存在感がじわじわと高まっていくことが予想されます。

人民元、国際化の条件

Exclusive | Daniel Gros on what China can learn from the euro as it works towards a global yuan | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】欧州の著名な経済学者であるダニエル・グロス氏は、中国の通貨である人民元の国際化について、その成否は中国指導部が為替レートの自由な変動を容認するかどうかにかかっていると指摘しています。ユーロ誕生の際、多くの人が米ドルに対抗できると期待しましたが、実際には米ドルの優位性は揺るぎませんでした。その理由は、米ドルが非常に深く開かれた金融市場を持っていること、そして一度世界中で使われ始めた通貨は簡単には変えられないという「ロックイン効果」があるからです。

グロス氏によれば、ある通貨が国際的な基軸通貨になるためには、資本勘定を開放し、その価値を市場に委ねる必要があります。これは自国の通貨価値に対するコントロールを失うことを意味し、過去のドイツがマルクの国際化を望まなかった理由でもあります。中国も同様に、金融市場を外国人に開放し、当局が通貨の変動を容認できるかが鍵となります。しかし、現在の中国指導部が通貨への支配権を手放し、自由な変動を許すとは考えにくいと同氏は分析しています。

デジタル人民元やステーブルコインといった新しい技術についても、既存の決済システムがすでに効率的であるため、それらが世界の通貨秩序を根本的に変える可能性は低いと見られています。また、香港が仮想通貨やオフショア人民元市場のテストの場として機能しているものの、本土とのリンクが制限されている限り、オフショア市場が劇的に拡大することはないでしょう。

世界経済の枠組みにおいて、トランプ政権下での米国の保護主義的な動きにより、米国は世界の貿易秩序から離脱した形となりましたが、その他の国々は依然として自由貿易の維持に関心を持っています。欧州と中国も世界貿易の維持という共通の利益を持っていますが、ウクライナ情勢を巡る対立や、中国政府主導の産業政策への懸念から、両者の関係が大幅に改善することは現実的ではないようです。政治的な緊張をコントロールし、貿易への影響を最小限に抑えることが今後の現実的な優先事項になるとグロス氏は述べています。

中東はウクライナを助けるか?

Zelensky is looking for help in the Middle East. He will be disappointed — RT World News [LINK]

【海外記事より】ウクライナのゼレンスキー大統領が中東諸国との外交を活発化させていますが、その試みは期待外れに終わる可能性が高いようです。これまでウクライナ指導部は、米国や欧州が武器、資金、諜報、外交的保護を必要な限り提供し続けるという前提で戦略を立ててきました。しかし現在、米国の支援は政治問題化し、欧州社会には支援疲れが目立ち始めています。さらに戦場では兵士や装備の不足が続いており、従来の支援者たちが以前ほど頼りにならなくなった今、ゼレンスキー氏は新たな政治的・財政的な支援を求めて中東に活路を見出そうとしています。

ウクライナ当局は、自国が戦場で得た経験を、裕福な中東諸国に売却できる「商品」として提示しようとしています。特に、イラン製のドローンやロシアのミサイル攻撃、エネルギーインフラへの攻撃をいかに防ぐかという教訓は、中東諸国にとっても関心事です。ウクライナは自国を現代戦の「実験場」として売り込んでいますが、ここには明らかな矛盾が存在します。自国の防空を外国のシステムに依存し、今なお西側に支援を求め続けている国が、他国の安全保障を担う専門知識の提供者として信頼を得るのは容易ではありません。

また、政治的な面でも大きな課題があります。中東諸国は、ロシアを西側のような感情的・イデオロギー的なレンズでは見ていません。彼らにとってロシアは、長年にわたる戦略的、経済的、外交的な関係を築いてきた国際システムの重要な権力センターの一つです。特にサウジアラビアやアラブ首長国連邦などは、ロシアとのパートナーシップを犠牲にしてまでウクライナの要求を受け入れることはないでしょう。彼らはロシアをエネルギー市場や外交調停における不可欠なパートナーと見なしており、内政干渉や政治的条件を突きつけない相手として評価しています。

ゼレンスキー氏は、米国や欧州に対して行ってきたような価値観への訴えが中東でも通用すると考えているようですが、これは地域の理解不足と言わざるを得ません。中東の政治は実利主義に基づいており、戦時下のレトリックが彼らの現実的な判断を覆すことはありません。ウクライナは、伝統的な支援者が十分ではなくなったからこそ中東に接近していますが、中東諸国は自国の優先事項に合致しない戦争の負担を引き受けるつもりはないのです。最終的にウクライナが得られるのは、特定の技術や食料安全保障に関する限定的な協力にとどまり、中東が戦争の新たな財政的エンジンになることはないでしょう。

2026-04-26

誠実な通貨、帝国の崩壊

Honest Money Would Destroy Today's World - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】ジョージ・スミス氏は、市場の自発的な交換から生まれる「誠実な貨幣(オネスト・マネー)」の重要性と、それが現代の国家体制によっていかに破壊されてきたかを論じています。スミス氏の定義によれば、誠実な貨幣とは金や銀のように市場が自ら選択し、政府の恣意的な干渉を許さない媒体を指しますが、現在の私たちはそのような貨幣を使用する自由を事実上奪われています。

政府が貨幣供給を独占する最大の目的は、国家の際限ない肥大化を支え、自らの協力者である金融機関を救済することにあります。金本位制であれば政府の支出には物理的な制約がかかりますが、紙幣やデジタル通貨による現在のシステムでは、インフレという手法を用いて国民の富を密かに収奪することが容易になります。政府は「1930年代の大恐慌は金本位制のせいだ」という宣伝を教育機関を通じて流布し、インフレを正当化する経済学者を雇い入れることで、国民をこの不誠実なシステムに従順にさせてきました。

スミス氏は、1913年に連邦準備制度(FRB)が設立される前の米国経済が、1870年から1900年にかけてデフレ(物価の下落)を経験しながらも、記録的な生産性の向上を達成していた事実を指摘しています。当時は、現金を保有しているだけで人々の生活は豊かになりました。しかし、政府のインフレ計算機が示す1913年以降のデータによれば、ドルの購買力は2000年までの100年間で約95.2%も失われました。これに対し、1800年から1900年の間では、ドルの価値は約104%上昇していたのです。

現代のFRBは、年2%のインフレを「物価の安定」と定義していますが、これは本来、生産性の向上に伴って価格が下がるはずの自由市場の恩恵を否定するものです。現在の世界は、軍事費の膨張や膨大な社会プログラムを維持するために、この「通貨の海賊行為」に完全に依存しています。スミス氏は、誠実な貨幣への回帰は政府の無制限な支出を不可能にするため、帝国としての地位や既得権益を維持したい現代の支配層にとって、それは既存の世界を「破壊」するかのように受け止められるだろうと結んでいます。

イラン戦争の嘘

The Great Iran Lie and the Persian Gulf Catastrophe - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】元米予算管理局長であるデビッド・ストックマン氏は、現在ペルシャ湾で起きている事態を「言葉を失うほど腐敗している」と痛烈に批判しました。ストックマン氏は、ホワイトハウスによるイランへの大規模な軍事攻撃は、世界経済と金融システムを破滅的な混乱に陥れる暴挙であり、その根拠とされている物語は「歴史に残る恥ずべき大嘘」に基づいていると主張しています。

ストックマン氏によれば、イランが過去47年間にわたって米国に惨害をもたらしてきたという主張は事実ではありません。イランは1979年以来、一度も隣国を侵略しておらず、むしろ1980年代にはイラクから攻撃を受け、30年間にわたりワシントンによる経済制裁とイスラエルによる暗殺や工作にさらされてきました。また、レバノンのヒズボラやイエメンのフーシ派といった、いわゆる「イランの代理勢力」についても、それらはイランが人工的に植え付けた傭兵ではなく、イスラエルの侵攻や現地の内戦といった地域固有の背景から生まれた自生的な勢力であると解説しています。

特に論争の的となっている「イランが47年間で1,000人以上のアメリカ人を殺害した」という数字について、ストックマン氏は詳細なファクトチェックの結果を提示しています。
* 1,050人の死者のうち、アメリカ本土で発生したものは1人もいない。
* 死者の96%は、ベイルートの海兵隊宿舎爆破事件以降、アメリカが中東に軍を派遣し、現地の紛争に介入した文脈で発生したものである。
* これらの軍事展開はアメリカの本土防衛には不要な「帝国の追求」であり、アメリカ人を不当に危険な場所に置いた結果である。

ストックマン氏は、これらの悲劇的な死を政治的に利用し、世界経済を支えるエネルギーや半導体用ヘリウムの供給路であるペルシャ湾で戦争を始めることは、およそ理性的ではないと説いています。同氏は比較対象として、過去47年間にアメリカ国内で発生した「ベッドからの転落死(10,300人)」や「蜂に刺されての死亡(3,900人)」、さらには「芝刈り機の事故(3,200人)」などの数字を挙げ、特定の政治的物語のために世界を破滅の危機にさらすことの異常性を浮き彫りにしています。現在の危機は、不正確な物語によって正当化された、回避可能な人災であるという厳しい見解を示しています。

米議会の戦争権限放棄

BRANDAN BUCK: Why Congress Keeps Surrendering Its War Powers | The Daily Caller [LINK]

【海外記事より】ケイトー研究所の研究員ブランダン・バック氏はコラムで、トランプ政権によるイランとの紛争を背景に、議会が自らの「宣戦布告権」を放棄し続けている現状に強い警鐘を鳴らしています。合衆国憲法の起草者たちは、権力の肥大を防ぐために各機関が競い合う仕組みを設計しましたが、現代の議会は自発的にその権限を大統領に明け渡しており、この「権限の放棄」がアメリカ国民に多大な代償を強いていると著者は主張します。

こうした変化の主な要因として、第二次世界大戦後のアメリカ政治の「全国一律化」が挙げられます。かつては地域ごとの政治的アイデンティティが独自の外交観を持っていましたが、政党改革やメディアの発達により、外交は中央の政党主導へと変貌しました。議員たちは地域の代表としてではなく、恒久的な戦時動員体制を中心とした国家政治経済の一部として競争するようになり、議会の監視機能は次第に萎縮していきました。かつてロバート・タフト上院議員のような「オールド・ライト」の共和党員は、議会が大統領に従属することの危険性を警告していましたが、その保守主義の系譜は冷戦期の政治の中で淘汰されてしまいました。

現在では、民主・共和の両党とも、大統領が戦争と平和に関する憲法外の広範な権限を持つという考えを受け入れています。野党側は大統領のやり方を批判することはあっても、機関としての「帝国的大統領制」そのものを解体しようとする誠実な意欲は持っていません。この4世代にわたる「形式の中の革命」を経て、アメリカの政治階級は既存の枠組みの外で思考する能力を失ってしまいました。その結果、議会は戦術的な不満を述べるだけの場となり、実質的な国民の代表としての役割を果たせなくなっています。

バック氏は、有権者の多くが外交よりも国内問題を優先しているにもかかわらず、議会がそれに応じようとしない現状を批判しています。累積する債務、コストの上昇、そして経済的不透明感に直面する中で、国民は「戦争か平和か」という最も重要な問題を議論する手段を失っています。米国が名実ともに共和国であり続けるためには、議会が本来の野心を取り戻し、憲法上の特権を再構築しなければならないと結論づけています。

米軍、兵器枯渇の恐れ

BRICS Russia | US weapons stockpiles running out due to Iran war [LINK]

【海外記事より】米国はイランとの戦争という「無責任な決断」によって、かつてない軍事的代償を払わされています。軍事専門家のルーカス・レイロス氏による最新の報告によれば、わずか7週間の紛争で米軍の主要な武器備蓄が急速に枯渇し、短期間のうちに深刻なリスクに直面する可能性が出てきました。

戦略国際問題研究所(CSIS)のデータによると、米軍は精密打撃ミサイル(PrSM)の在庫の少なくとも45%、パトリオット迎撃ミサイルの約50%、そしてTHAAD(高高度防衛ミサイル)の半分以上を失いました。さらに、トマホーク巡航ミサイルも30%を使い果たしており、これらはペンタゴンの機密報告書の内容とも一致していると報じられています。これほどまでの損失が2ヶ月足らずの紛争で発生した事事実は、現代の高強度紛争の恐ろしさを物語っています。専門家は、これらの在庫を補充するには少なくとも1年から4年、本来あるべき水準まで拡張するにはさらに数年を要すると分析しています。

トランプ米大統領はかつて、米国の防衛産業には「実質的に無制限の供給能力」があり、戦争を「永遠に」戦い続けることができると豪語していました。しかし、イランとの現実の戦争は、その主張が誤りであったことを露呈させました。イランははるかに安価な兵器を使用することで、米国の高価な軍事アーキテクチャに対して、軍事的・経済的に甚大な打撃を与えたのです。現在、中東における米国の軍事基盤は以前の状態を維持できておらず、再建には膨大な費用と時間が必要となります。

さらに事態を深刻にしているのは、署名された停戦合意の期限がすでに切れており、紛争がいつ再開してもおかしくないという点です。イスラエルによるレバノンへの攻撃が続く中、米国は兵器備蓄が大幅に減少した状態で再び戦火に巻き込まれる危険性があります。レイロス氏は、トランプ大統領は本来の「MAGA」の理念に立ち返り、外国への介入よりも国内開発に注力するとともに、イスラエルに対して中東での摩擦を避けるよう圧力をかけるべきだと提言しています。

帝国の終焉近づく

America’s Suez Moment - Porter & Co. [LINK]

【海外記事より】「ポーターズ・デイリー・ジャーナル」は、現在のホルムズ海峡封鎖を、かつての大英帝国の衰退を決定づけた「スエズ危機」になぞらえ、米国ドルの覇権が崩壊しつつある現状を論じています。

1956年のスエズ危機において、英国は軍事的には成功したものの、米国がドルを武器に経済的圧力をかけたことでポンドが暴落し、帝国の終焉を世界に知らしめました。現在の米国も同様の局面にあります。2月28日に開始したイランとの紛争は、結果として世界の石油の20%、天然ガスの20%、そしてAIチップ製造に不可欠なヘリウムの30%が通過するホルムズ海峡の閉鎖を招きました。世界最強の軍事力をもってしても、イランの安価なドローンや高速艇の脅威を排除できず、海峡を再開できない現状は、米国の「執行力」に対する信頼を根底から揺さぶっています。

特に深刻なのは、米国の同盟国がエネルギー供給を止められ危機に陥る一方で、中国の「影の艦隊」が人民元建てでイラン産原油を円滑に運び続けていたという事実です。これは、ドルを介さない決済システム(CIPS)の有効性を世界に実証する形となりました。米国はこれに対抗し、ブロックチェーンを活用した「クリプト・ドル(ステーブルコイン)」や、AI計算能力を新たな戦略資源とする「GPUドル」といったデジタル戦略でドルの延命を図っています。しかし、通貨の信認を支えるのは、最終的には貿易路を守り抜く「軍事的な信頼性」であり、デジタルの仕組みだけでは基盤の脆弱性を補うことはできません。

レイ・ダリオ氏の帝国サイクル論によれば、帝国の衰退は「軍事維持費の増大」「債務の膨張」そして「通貨の信認喪失」というフィードバックループを経て進みます。現在のホルムズ危機は、単なる地政学的トラブルではなく、ドルを中心としたPax Americana(アメリカによる平和)の基盤が崩れ始めたことを示す、歴史的な「スエズ・モーメント」であると記事は締めくくっています。

力の政治と侵略戦争

Washington Is Undermining International Institutions With Power Politics - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】クリフォード・キラコフ博士はこの論評で、トランプ政権下のワシントンが国際法や国際機関を軽視し、外交を完全に軍事化させている現状を厳しく批判しています。かつて合衆国は、建国以来、正義と平和を重んじる国際法の理念を支持し、国際連盟や国際連合の設立においても主導的な役割を果たしてきました。しかし、現在の対イラン戦争は、こうした歴史的伝統を覆す「侵略戦争」であり、国際法に明白に違反していると著者は指摘します。

ワシントンが追求する外交政策は、かつてのドイツで「マハトポリティーク(力による政治)」や「レアルポリティーク(現実政治)」と呼ばれた、無謀で非道徳的な権力政治そのものです。こうした考え方は、1930年代にドイツから亡命したハンス・モーゲンソー教授などの学者を通じて、米国内の大学レベルで浸透しました。彼の「現実主義(リアリズム)」学派は、ニーチェの「権力への意志」という哲学に深く根ざしており、人間社会を「万人の万人に対する闘争」と見なす冷笑的な人間観に基づいています。

現在、ワシントンの政治家や新保守主義者たちの間では「力こそが正義」という考え方がカルト的な広がりを見せており、軍産複合体がその火に油を注いでいます。憲法学者のルイス・フィッシャー氏が警告したように、現代の大統領は国家の利益よりも、個人的あるいは党派的な理由で戦争に向かう傾向を強めています。かつての米国外交が持っていた、国際法への敬意という「理想主義」の要素は失われつつあり、それが世界的な混乱と経済的な激変を引き起こす要因となっているのです。

キラコフ博士は、米国がこうした冷笑的な権力政治や帝国主義的な姿勢を捨て去るべきだと主張します。ワシントンが自国の憲法を遵守し、国連憲章や国際法を尊重する立場に立ち戻ることこそが、平和的な共存と国際協力を実現するための唯一の道であると結んでいます。現在の中東における戦火は、国際社会が基本的な制度を再検討し、国際法の重要性を再確認するための重大な転換点となるべきであると著者は訴えています。

戦争と金銀市場

War, Rates, and Volatility in Precious Metals Markets [LINK]

【海外記事より】2026年の貴金属市場を形作る複雑な要因について、マネー・メタルズ・ポッドキャストが「メタルズ・フォーカス」のマネージング・ディレクター、フィリップ・ニューマン氏にインタビューを行いました。最新のデータに基づくと、現在の金・銀市場は地政学リスク、金融政策、そして産業需要の変遷がリアルタイムで交錯する極めて不透明な状況にあります。

当初、アメリカ、イラン、イスラエルの衝突によって金や銀への「有事の買い」が殺到すると予想されましたが、実際には市場の反応は限定的でした。その主な要因は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ期待が後退したことにあります。2026年当初は2回の利下げが見込まれていましたが、紛争によるエネルギー価格の上昇、特にガソリン価格の21%もの高騰を受けて、市場では利上げの可能性すら議論されるようになりました。金利の上昇は、利息を生まない貴金属にとって逆風となります。一方で、膨大な政府債務や中央銀行の独立性に対する懸念が深まれば、ドル安を通じて金・銀の価格が支えられるという対立する力も働いています。

投資家層によって行動が分かれている点も特徴的です。アジアや欧州の個人投資家は、現物のコインや地金を積極的に購入し、価格を下支えしています。これに対し、機関投資家は1月後半の価格調整を受けて慎重な姿勢を崩しておらず、リスク管理の観点から取引を控えています。銀市場においては、2025年後半から2026年1月にかけての上昇の多くが、上海やシカゴの取引所における個人投資家やデイ・トレーダーによる活動に牽引されていたことが判明しています。

銀の需給構造については、数年にわたる累積的な供給不足が深刻化しています。2026年までの累計赤字額は、世界全体の年間鉱山生産量に匹敵する規模に達しており、地上の在庫が着実に減少しています。産業需要の面では、銀価格の高騰を受けて太陽光発電パネルの製造で「銀の節約(スリフティング)」が進んでおり、この分野の需要は2024年から19%ほど減少する見通しです。

しかし、太陽光分野での減少を補うのが、人工知能(AI)インフラの爆発的な拡大です。データセンターの建設では、銀の代替を検討する余裕がないほどの緊急性を持って導入が進んでおり、需要は極めて堅調です。また、電気自動車や衛星技術、防衛産業からの需要も根強く、銀の産業需要全体としてはわずか3%程度の減少に留まり、6億オンス以上の高い水準を維持すると予測されています。市場は短期的にはFRBの政策に左右されつつも、長期的には構造的な供給不足という強固な土台に支えられています。

通貨を破壊したFRB

Peter Schiff: The Fed Destroyed Sound Money | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】著名な経済評論家ピーター・シフ氏は自身のポッドキャストで、米連邦準備理事会(FRB)の歴史的背景と、同機関が本来の使命を逸脱して健全な通貨制度を破壊してきた過程を解説しました。折しも、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長就任に向けた公聴会が行われる中、シフ氏はFRBが1913年に設立された比較的新しい機関であり、それ以前のアメリカには中央銀行が存在しない期間があったことを改めて指摘しています。

シフ氏によれば、FRBは政府機関ではなく、法的には民間の銀行シンジケートとして設立されました。その証拠として、政府機関からの郵便物には切手が必要ないのに対し、FRBからの手紙には切手が貼られているという具体的なエピソードを紹介し、政府から独立した存在であることを強調しています。設立当初、連邦準備券(ドル紙幣)は40%の金による裏付けが必要でしたが、現在の紙幣は何の裏付けも持たない「低品質な通貨」に成り下がっていると批判しています。

また、FRB設立の口実となった「弾力的な貨幣供給」という概念についても、シフ氏は鋭く切り込んでいます。本来、弾力性とは景気サイクルに合わせて通貨量を拡大・縮小させることを意味しますが、現実のFRBは通貨を拡大させる一方であり、それが政府の赤字支出やウォール街を支える道具になっていると述べています。これは、本来の目的であった通貨の安定とは真逆の行為であり、国民の犠牲の上に成り立つ不健全なシステムであるという主張です。

最後に、FRBが掲げる「物価の安定」という目標の欺瞞を指摘しています。FRBは年2%の物価上昇を安定と定義していますが、シフ氏は「安定」という言葉の本来の意味は「不変」や「定常」であるべきだと説いています。毎年価格が上がり続ける状態を安定と呼ぶのは言葉の再定義に過ぎず、インフレを常態化させているだけだという見解です。ウォーシュ氏が公聴会で述べた「誰も話題にしない程度の上昇なら問題ない」という姿勢に対し、シフ氏は本来の健全な通貨のあり方を見失っていると警鐘を鳴らしています。

米軍基地の損害深刻

What damage has Iran inflicted on US military bases? — RT World News [LINK]

【海外記事より】2月28日にアメリカが開始した「壮絶な怒り作戦」に対し、イランは中東全域の米軍基地を標的とした大規模な報復攻撃を展開しています。米国当局の認めるところによれば、攻撃を受けた拠点は複数の国にまたがり、特にサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地がその主要な標的となっています。国防総省は被害の全容を公表していませんが、一部の報道や米当局者の証言によれば、実際の損害は公式発表よりもはるかに深刻で、修復には数十億ドルの費用を要すると見られています。

今回の報復攻撃では、中東7カ国の施設が標的となり、倉庫や司令部、航空機格納庫、衛星通信インフラ、滑走路などが破壊されました。特に注目すべきは、高価値資産への損害です。3月27日の攻撃では、約3億ドルのユニットコストを誇るE-3セントリー(早期警戒管制機)が破壊されたと報じられており、F-35戦闘機も損傷を受けました。また、クウェートのキャンプ・ビューリングがイランの固定翼機によって爆撃されたことは、米軍基地が敵の航空機によって直接攻撃を受けた稀な事例として記録されています。

こうした被害状況の拡散を防ぐため、ワシントンは情報管理を強めています。衛星画像を提供しているプラネット・ラボ社などは、米政府の要請を受け、中東地域の画像公開に14日間の遅延を設け、さらに特定の関心領域については公開を自発的に保留しています。これは、敵対勢力が画像を戦術的に利用することを防ぐための措置ですが、同時に米軍基地の被害実態が一般の目に触れることを制限する結果となっています。

人的被害についても、深刻な数字が明らかになっています。3月末時点の報告によれば、一連の攻撃による米軍の死者は13人に達し、負傷者は300人を超えています。4月に入ってからも、イランによるドローンやロケット弾による追撃は続いており、バグダッド周辺の外交施設やイラク国内の米軍関連施設が繰り返し狙われています。米軍は中東全域に約20の常設・一時基地を展開し、現在5万人規模の兵力を駐留させていますが、イラン側はこれらすべてを「正当な標的」と見なしており、緊張状態が続いています。

国家に「存続権」はあるか?

The “Right to Exist” of States [LINK]

【海外記事より】イタリアをはじめとする多くの国々で、反ユダヤ主義の再燃に対抗するための立法措置が強化されています。しかし、2026年4月25日付の「プロパティ・アンド・フリーダム・ジャーナル」に掲載されたアレッサンドロ・フシッロ氏の論文は、こうした動きに潜む法的な矛盾を指摘しています。特にイタリアで提出された法案は、刑法を改正し、ホロコーストの否定だけでなく「イスラエル国家の存続する権利」を否定することも処罰の対象に含めようとしています。もしこの法案が成立すれば、イタリアは特定の国家の存続権を刑事罰によって保護する世界で1番目の国となります。しかし、法学的な視点から見れば、そもそも国家に「存続する権利」など存在するのかという根本的な問いが浮上します。

歴史を遡れば、古代ローマ法において国家は法人格を持たない「公共の利益」の総体でした。現代のような、国家を1つの人格として捉え、権利の主体とする考え方は、中世の教会法における「キリストの神秘体」という概念が世俗化したものです。つまり、国家の法人格は論理的な必然ではなく、歴史的なフィクションに過ぎません。フシッロ氏は、国家は暴力と強制に基づいた組織であり、その本質は「制度化された強盗」に近いと述べています。マッツィーニが提唱した「国民国家」の概念は、特定の民族が国家を持つ権利を主張しましたが、これは同時に、先住民の追放や他者の権利侵害を伴うことが少なくありません。

イスラエル国家の設立も例外ではなく、パレスチナにおける土地の接収や、継続的な武力衝突を背景としています。イスラエルは憲法上の規定により、都市部を除いて私有財産を認めておらず、その土地の多くは国家が所有し、ユダヤ人にのみ貸与されています。フシッロ氏は、特定の国家に特権的な存続権を認めることは、普遍的な法の原理である「不侵害の原則」に反すると批判しています。また、現政権の一部が「大イスラエル」構想を掲げ、領土拡張の野心を隠さない現状では、既存の国境すら確定していない組織に対して、法的にその存続を保証することは極めて困難です。

結論として、国家は人間のような自己意識を持つ存在ではなく、生存権を類推適用することはできません。むしろ、国家の存続を疑う自由は、自己防衛の権利の一部であると著者は主張します。特定の国家の存続権を聖域化し、批判を刑罰で封じ込めることは、言論の自由を損なうだけでなく、法理学的な根拠を欠いた危うい試みであると言わざるを得ません。国家というフィクションに対して、人間と同等の権利を付与することの是非を、私たちは冷静に見極める必要があります。

2026-04-25

ポピュリズムが失敗するとき

Why Trump’s Populism Failed - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】ドナルド・トランプ氏は、かつてエリート層の支配を打ち破り、腐敗した「沼」を掃除すると約束したポピュリストとして当選しました。しかし、就任から3年近くが経とうとする現在、彼の政治は結局のところ既存の統治エリートたちの利益を損なうものにはなっていません。ライアン・マクメイケン氏は、トランプ氏のポピュリズムがなぜ失敗に終わったのかを冷徹に分析しています。

記事によれば、トランプ氏は熱烈な支持者たちが期待したような、ワシントンの統治構造を根本から変える改革には何一つ成功していません。政府支出はかつてないほど増大し、金融政策は相変わらずのインフレ体質です。トランプ氏は選挙での勝利を永続的な法改正に結びつけることができず、代わりに大統領令という安易な手法に頼りました。これでは、次の大統領が就任した瞬間にすべての変更が覆されてしまいます。むしろトランプ氏が拡大させた大統領権限は、将来的に敵対する政党が政権を握った際、国民をより強力に管理する道具として引き継がれることになるでしょう。

真の支配層である「統治エリート」とは、政府機関と利益団体が結びついた、納税者から資源を吸い上げるネットワークのことです。軍需産業や巨大IT企業、金融機関などがこの利権構造に含まれていますが、彼らにとって党派争いはさほど重要ではありません。トランプ氏も結局は、軍事費の大幅な増額を求めることで軍産複合体を取り込み、監視国家を強化する法案を支持し、イスラエル第一主義を掲げるなど、体制側の利益に忠実な大統領へと変貌してしまいました。中絶やLGBT関連の政策で多少の調整はありましたが、こうした「文化戦争」は、権力が交代しているかのような錯覚を国民に与えるための、エリート層にとっての余興に過ぎません。

トランプ流のポピュリズムが失敗する根本的な理由は、それが「体制内ポピュリズム」であるためです。この思想は、国家の枠組みそのものは善であり、その巨大な権力を自分たちのために振るいたいという欲望に基づいています。権力を解体しようとするのではなく、単にその座を奪い合っているだけなのです。真の解決策は、国家を一つの巨大な組織として維持することに反対し、権力を分散・分割させることにしかありません。国家の「団結」や「正統性」というプロパガンダを捨て、腐敗し肥大化した体制を解体することを目指さない限り、どんなに選挙で「より激しく投票」したとしても、支配層が望む現状維持が繰り返されるだけであると、この記事は結論付けています。

経済回廊の争奪戦激化

War on Iran Reshapes the ‘War of Connectivity Corridors’ - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカが主導する対イラン戦争は、単なる地政学的な対立にとどまらず、21世紀のユーラシア統合の核心である「経済接続回廊」の争奪戦を激変させています。現在、ユーラシア大陸では、中国の「一帯一路(BRI)」、ロシア・イラン・インドを結ぶ「南北輸送回廊(INSTC)」、そして欧米が推す「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」などが、複雑に絡み合いながら勢力圏を競っています。イランはその地理的優位性から、古来より東西交流の十字路として機能してきましたが、今回の戦争はこの戦略的なネットワークを根底から揺さぶっています。

中国にとってイランは、アメリカが支配する海上ルートやマラッカ海峡などの急所を回避し、陸路で西ユーラシアへ抜けるための不可欠なパートナーです。2021年に締結された4,000億ドル規模の投資を含む25年間の協定に基づき、中国とイランを結ぶ鉄道回廊はすでに稼働を始めています。これにより、海上輸送で40日かかっていた行程が陸路では15日以内に短縮されました。中国はこのルートを通じてイランの石油を確保しつつ、不安定なパキスタン経由のルート(CPEC)への依存を減らそうとしています。米軍がこの中国・イラン鉄道の一部や、関連する港湾施設を爆撃した事実は、この戦争がユーラシア統合を阻止しようとする意図を孕んでいることを示唆しています。

一方で、南北の軸となるINSTCは、ロシア、イラン、インドを直結する回廊ですが、今回の戦争でその先行きの不透明感が増しています。特にインドにとって、自らが投資してきたイランのチャバハール港は、中央アジアやロシア市場へアクセスするための「王冠の宝石」とも言える重要な拠点でした。しかし、アメリカからの圧力に加え、戦争による物理的な破壊により、インドの投資は停滞を余儀なくされています。対照的に中国は、インドが撤退した隙を突くように、イランの海岸地帯への大規模な投資計画を加速させています。

これらに対抗する形で提唱されたIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)は、イスラエルを戦略的ハブに据え、中国やロシア、イランをバイパスすることを目的とした欧米主導のプロジェクトです。しかし、戦争によってハイファ港などの重要拠点が損傷し、さらにアラブ諸国間の足並みの乱れも表面化しており、この回廊は現在「昏睡状態」にあると言っても過言ではありません。鉄道網の欠落やインフラへの攻撃により、その実現可能性は極めて低くなっています。

また、トルコも独自の「パイプライン国家」としての野望を抱き、カタールやイラク、中央アジアのエネルギーを自国経由で欧州へ運ぶ回廊を模索していますが、政治的合意の欠如や莫大な建設コストが壁となっています。結局のところ、今回の戦争はイラン、中国、BRICS、そしてユーラシア全体の統合に向けた動きを標的にしたものですが、皮肉にも、北極海航路(氷上のシルクロード)を含めた新たな interconnection(相互接続)の模索を加速させる結果となっています。戦争によって回廊を断絶しようとする試みに対し、ユーラシア側はさらなる結束と実利的な接続を強めることで対抗しようとしていると、この記事は伝えています。

核を持つ動機膨らむ

Has Iran Learned the North Korea Lesson: Nukes Are Essential To Deter the US? - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】軍備管理の専門家たちは、イランの核開発を阻止するという名目でアメリカが強行している攻撃が、核不拡散体制そのものを壊滅させる恐れがあると警鐘を鳴らしています。イランは現在、核不拡散条約(NPT)からの脱退を示唆しており、これが実現すれば国際社会による監視の目は完全に失われることになります。かつて朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が2003年に同様の歩みを辿り、核兵器保有へと突き進んだ歴史が繰り返されようとしています。

外交の専門家が注目しているのは、北朝鮮とイランに対するアメリカの対応の驚くべき乖離です。すでに核を保有している北朝鮮に対して、アメリカは極めて抑制的な姿勢を保っています。公式には非核化を求めてはいるものの、実質的には北朝鮮が構築した約50発の核弾頭と弾道ミサイルの存在を前に、軍事行動を控える「慎重な対応」を余儀なくされています。一方で、核兵器を保有していないイランに対しては、アメリカとイスラエルは容赦のない大規模な空爆を続けています。この対照的な現実は、イランの指導者層に対して「自衛のために核抑止力は不可欠である」という強烈な教訓を与えてしまいました。

かつてオバマ政権下で結ばれたイラン核合意(JCPOA)は、厳しい査察を受け入れることで平和的な核利用を担保していましたが、トランプ氏が2018年にこれを「最悪の合意」として一方的に破棄したことが、現在の混乱の起点となりました。イランが核兵器製造に近づいているという確実な証拠がないまま、イスラエルとアメリカの支持者による警告だけが一人歩きし、現在の戦争へと突き進んだのです。こうした状況下で、北朝鮮の金正恩氏が「わが国の核保有という戦略的選択は正しかった」と、イランの窮状を引き合いに出して語ったことは象徴的です。

現在、北朝鮮がイランに対して核開発の支援や、実戦配備可能な兵器の提供を申し出ているという報道もあります。アメリカとイスラエルがイランの核保有を断固として阻止しようとする姿勢は、皮肉にもイランにとって「核を持つ動機」を最大化させてしまいました。経済的、軍事的なリスクを冒してでも核抑止力を構築した北朝鮮の決断が、今やイランや他の対米対立国にとって「賢明な選択」に見えてしまっています。アメリカによる強硬で稚拙な外交手法が、かえって世界に新たな火種を撒き散らし、国民に不必要な危険をもたらしていると、テッド・ガレン・カーペンター博士は分析しています。

正しくない戦争

The Pope Is Right – The US-Israeli War With Iran Violates Just-War Theory - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】ローマ教皇レオ14世がSNSで発信した「神はいかなる紛争も祝福しない」という言葉が、波紋を広げています。教皇は、平和は対話と共存の促進からのみ生まれるものであり、爆弾を落とす側にキリストの弟子はいないと説きました。これに対し、トランプ大統領やバンス副大統領らは、キリスト教神学には1000年以上の歴史を持つ「正戦論(正しい戦争の理論)」があると反論し、教皇の姿勢を批判しています。しかし、哲学者ジョーダン・リズ氏によれば、現在のアメリカ・イスラエル連合による対イラン戦争こそが、その正戦論に真っ向から違反しているといいます。

正戦論には大きく3つの柱があります。第一に「開戦事由(ユス・アド・ベルム)」、つまり戦争を始める正当な理由があるかです。これには自衛目的であることや、交渉を尽くした末の「最後の手段」であることが求められます。トランプ政権はイランの核兵器開発阻止を理由に挙げていますが、具体的な証拠は提示されておらず、交渉が続いていたにもかかわらず一方的に対話を打ち切った経緯があります。また、憲法が定める議会の宣戦布告を経ていない点も、正当な権威による宣言という条件を欠いています。

第二に「交戦規定(ユス・イン・ベロ)」、すなわち戦争の遂行方法です。ここでは文民と戦闘員の区別、および必要最小限の暴力にとどめる比例性が求められます。しかし、実際の攻撃ではイランの小学校や医療センター、大学などが破壊され、多数の死傷者が出ています。ヘグセス国防長官が「慈悲は無用」と公言し、トランプ大統領も戦争犯罪を辞さない姿勢を示していることは、軍事目標と民間人を区別する意思が欠如していることを物語っています。

第三に「戦後責任(ユス・ポスト・ベルム)」、停戦時や終戦後の振る舞いです。敗者の権利を尊重し、民間人を罰しないことが重要ですが、アメリカ側は停戦中もホルムズ海峡の封鎖を維持し、経済制裁によってイラン国民に苦難を強いています。相手を「狂人」と呼ぶような蔑視的な態度は、持続可能な平和を遠ざけるものです。

結局のところ、この戦争は自衛のためではなく、征服と利権のためのものであると著者は断じています。教皇が指摘するように、世界を荒廃させる一部の統治者に対し、私たちは平和で公正な世界を築く努力を止めてはなりません。無実の命が失われた事実は取り返しがつきませんが、責任ある者たちを裁き、破壊された国への賠償と復興支援を行うことこそが、今求められている正義であるとこの記事は結論付けています。

中産階級への戦争

Doug Casey on Tax Day, Inflation, and the War on the Middle Class [LINK]

【海外記事より】米国では4月15日の納税の日が過ぎましたが、生産的な人々が毎年春になると「国にいくら貢がなければならないか」を計算することに時間を費やす現状は、社会の歪みを象徴しています。投資家のダグ・ケーシー氏は、税金は文明社会の維持に不可欠なものではなく、むしろ道徳的に問題のある存在だと主張します。世間では税率の妥当性や使い道といった技術的な議論ばかりがなされていますが、国家による強制や通貨の膨張といった仕組みそのものを疑う視点が欠落していると氏は指摘しています。

現在のエリート層は、実は中産階級を破壊したいと考えているのではないか、というのがケーシー氏の見立てです。彼らにとって、自分たちの地位を脅かす可能性のある自立した中間層は邪魔な存在であり、少数の支配層と、それを支える従順な労働者層だけで構成される社会を望んでいるというのです。これは、かつてレーニンが「中間層は税金とインフレという二つの石臼の間で粉砕されるべきだ」と述べた戦略と一致します。税金は資本の蓄積を困難にし、政府が発行する不換紙幣のインフレは、人々の貯蓄価値を密かに奪い去ります。国家という仕組みそのものが、暴力と強制を背景にした再分配の装置と化しているのです。

アメリカ国民は長年の教育を通じて、政府を慈悲深い守護者のように思い込まされてきました。4年ごとの選挙も、実際には似たような二つの選択肢から選ばされているに過ぎず、根本的な変革にはつながっていません。最近ではスコット・ベッセント財務長官が、源泉徴収額の調整を「実質的な賃上げ」と表現しましたが、これは自らの給与の一部を返してもらうだけの話をすり替えた、不誠実な嘘に他なりません。政府が配布するわずかな給付金や、AIによる失業対策としてのユニバーサル・ベーシック・インカムの議論も、個人の責任感を麻痺させ、人々を国家の福祉に依存する「羊」のように変えてしまう危険性を孕んでいます。

政府という組織は、遺伝子レベルで拡大を続けるようにプログラムされています。官僚は部下を増やし、より多くの予算を確保することで昇進しようとするため、税金や借金、通貨膨張は止まることがありません。社会で最も生産的な中間層を追い詰める国家の姿は、宿主を食い潰す寄生虫のようなものです。多くの国民は国家と社会を混同し、依存を強めていますが、莫大な債務によって通貨価値が崩壊したとき、彼らはさらに強力な指導者や政府による救済を求めるという悪循環に陥るでしょう。個人の資産を守る努力は続けなければなりませんが、略奪者として肥大化し続ける国家という巨大な問題に対し、安全かつ合法的な解決策を見出すのは極めて困難であると、著者は警鐘を鳴らしています。

銀、300ドルに上昇?

$300 Silver? Bank of America Says Maybe [LINK]

【海外記事より】バンク・オブ・アメリカが発表した、銀価格が年内に1オンスあたり135ドルから309ドルの範囲に到達する可能性があるという予測が、大きな注目を集めています。この予測の最低ラインである135ドルであっても、現在の水準から75%もの上昇を意味しており、非常に強気な見通しと言えます。これほど予測の幅が広いことは、地政学的な変動が激しい時期に市場を読むことの難しさを示していますが、同行のコモディティ調査責任者マイケル・ウィドマー氏は、この予測の根拠として「金銀比価」に着目しています。

金銀比価とは、金1オンスを購入するのに何オンスの銀が必要かを示す指標です。現代における平均的な比率は40対1から60対1の間ですが、2025年の最初の10ヶ月間は歴史的な高水準である91対1で推移し、一時は107対1まで跳ね上がりました。その後、比率は急低下し、銀価格の大幅な是正が進んでいることを示唆しています。過去の銀の強気相場では、この比率が平均を大きく下回ることが珍しくありません。例えば、2011年には32対1まで低下しており、金価格が5,000ドルに達すると仮定すれば、銀は135ドルになります。さらに、1980年の高騰時には14対1まで縮まった記録があり、これに基づくと銀価格は309ドルにまで跳ね上がる計算になります。

金市場の動向も銀に強い影響を与えます。現在、多くの主要銀行が年内に金価格が6,000ドルに達すると予測しています。貴金属市場は金融市場全体の約4%を占めるに過ぎず、富裕層のポートフォリオにおける金の割合もわずか0.5%にとどまっているため、投資需要が少し増加するだけで金価格はさらに押し上げられる可能性があります。ウィドマー氏は、投資需要が55%増加すれば金は8,000ドルに達すると分析しており、銀は工業用需要が高い一方で根本的には「通貨としての金属」と見なされているため、長期的には金の動きに追随する性質があります。

銀の供給不足という構造的な要因も無視できません。銀市場は2026年で5年連続の供給不足を記録する見通しです。昨年の需要は供給を約1,250トン上回り、過去5年間の累計不足量は約2万2,000トン以上に達しています。これは昨年の銀鉱山生産量に匹敵する規模です。需要が鉱山生産やリサイクルによる供給を上回る場合、利用者は地上在庫を取り崩すしかありません。在庫を保有する側に手放す動機を与えるには価格の上昇が必要であり、さらなる価格高騰、いわゆる「シルバー・スクイーズ」が発生しやすい環境が整っています。300ドルを超えるという予測は最高の場合のシナリオですが、供給不足と市場の勢いを考えれば、決してあり得ない話ではないとこの記事は結論付けています。

真の独立性誓う

Warsh Vows a Leaner, “Strictly Independent” Fed as Gold Brushes $4,800 | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】連邦準備理事会(FRB)の次期議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏は、上院の指名承認公聴会において、世界で最も影響力のある中央銀行のあり方を根本的に見直す意向を表明しました。トランプ大統領の支持を受けるウォーシュ氏は、雇用最大化と物価安定という任務を遂行するためには、FRBが真の独立性を再確立することが不可欠であると強調しました。同氏が法案提出者らに対して証言を行う中、市場では安定を求める投資家の動きが加速し、金スポット価格は1オンスあたり4,796ドルという史上最高値を記録しました。これは、既存の法定通貨に対する人々の信頼が揺らいでいることを象徴する出来事となっています。

ウォーシュ氏は、物価安定の責任はFRBではなく議会にあるとする考えを述べつつ、「インフレはFRBの選択の結果である」というミルトン・フリードマンの言葉を引用しました。同氏は、FRBが進むべき道として3つの指針を提示しています。まず、任務を定義するのは議会であること。次に、FRBの自律性は金融政策の実行においてのみ最大化されること。そして最後に、中央銀行は「自らの領分を越えてはならない」ということです。これは、近年のバランスシートの肥大化や、危機対応を名目とした即興的な政策が、現在の根強いインフレを招いたという批判を念頭に置いた、鋭い反論となっています。

公聴会では、大統領による金利への介入が独立性を損なうのではないかという懸念も示されましたが、ウォーシュ氏はこれを否定しました。選出された公職者による発言が独立性を脅かすのではなく、独立性を守り抜けるかどうかはあくまでFRB自身の規律にかかっていると主張したのです。かつての金融危機の際、FRBは不可欠な役割を果たしましたが、同時に経済や社会において過度に大きな役割を演じようとする誘惑に駆られたことも認めました。市場関係者は、同氏がこうした誘惑に抗い、10兆ドル規模に膨れ上がったバランスシートを縮小させ、ドルの購買力を回復させることに期待を寄せています。

ウォーシュ氏が掲げる「厳格で熟慮に基づいた、曇りのない意思決定」が、長年にわたる過剰な流動性供給の歴史を塗り替えられるかは、まだ未知数です。しかし、憲法と連邦準備法、そしてFRBの最良の伝統に忠実であるという同氏の誓約は、明確な転換点を示しています。もし次期議長がこの約束を果たせば、アメリカ国民は本来の役割に専念する中央銀行の姿を目にすることになるでしょう。一方で、金価格が最高値を更新し続けている現状は、中途半端な改革ではもはや市場の信頼を取り戻せないという、厳しい警告であるともこの記事は指摘しています。

金融界、「感染」の危機

The Private Credit Infection | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】「プライベート・クレジット」という非公開市場での融資が、銀行システムを破壊する脅威になり得ると、政治家や経済界から警告の声が上がっています。この問題は、2008年の世界金融危機を引き起こした要因と酷似していると指摘されています。従来の銀行融資に比べて規制が緩いため、公的な「お墨付き」がないまま、様々な形態の債権が蓄積されています。一部の銀行は、債務の質に応じて階層化して管理していますが、プライベート・クレジットを一つのカテゴリーとして一括りに扱うことは、個々のリスクの差異を見誤る可能性を孕んでいます。

懸念されるのは、金融機関が「もし市場が崩壊しても、最終的には政府が救済してくれる」という想定のもとに行動している点です。現在のシステムにおいて、政府による保護はほぼ不可避と見られており、それが皮肉にも銀行に対して、本来であれば負うべきではない高いリスクを伴うプライベート・クレジットへの投資を促す動機となっています。このようにリスクに対する緊張感が失われることで、質の低い債権が重要な金融機関に浸透していく「感染」のような事態が危惧されています。

一方で、プライベート・クレジットには、従来の銀行の枠組みにとらわれない自由で革新的な資金供給という側面もあります。2008年以降の厳しい規制により、銀行から融資を受けられなくなった企業にとって、この市場は重要な受け皿となってきました。必ずしも借り手すべてがハイリスクというわけではありませんが、銀行が規制上の手続きを嫌うような中堅企業や、苦境にある企業にとっての「最後の貸し手」として機能しているのが実情です。そのため、銀行が融資を行う市場よりも、全体としてハイリスク・ハイリターンの傾向が強くなります。

過去の銀行破綻における政府の対応を鑑みれば、一部の銀行がより高い利益を求めて過剰なリスクを取ることは避けられません。周囲の銀行が同様の投資を行っていれば、自らも罰せられることはないという安易な思い込みも生じがちです。しかし、実際に市場が急変した際、明暗を分けるのは単なる投資の有無ではなく、個々の債権の質です。プライベート・クレジットを一様に「怪物」のように恐れるのではなく、リターンとリスクのバランスを冷静に見極める判断力が求められています。

こうしたリスクの連鎖を断ち切るためには、連邦準備制度理事が、緊急事態においても安易な救済は行わないという姿勢を明確に示す必要があります。政府の保護を前提とした無責任な行動が許される限り、金融機関が自らの意思で慎重な判断を下すことは困難です。今後数年間の課題は、銀行を政府の支援から自立させることにあります。そうでなければ、アメリカの金融システムは不必要な混乱にさらされ続け、一般市民が産業上のリスクを背負わされることになると、この記事は分析しています。

最大1万6000人解雇へ

US big tech giants to axe up to 16,000 employees – FT — RT Business News [LINK]

【海外記事より】アメリカの巨大IT企業であるメタとマイクロソフトが、全従業員の最大10%に相当する人員削減に踏み切ることが明らかになりました。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によれば、今回の決定の背景には、人工知能(AI)分野への膨大な投資に伴うコストの急増があります。フェイスブックを運営するメタは、全従業員の10%にあたる約8,000人を削減し、さらに6,000件の未募集枠を閉鎖する方針を社内メモで伝えています。この削減は5月20日から開始される予定です。同社は現在、GoogleやOpenAIといった競合他社に対抗するため、先進的なAIモデルの開発やデータセンターなどのインフラ整備に巨額の資金を投じています。

メタは2026年の資本支出が1,150億ドルから1,350億ドルに達すると予測しており、その主な要因はAI関連のデータセンター資産の減価償却費や運営コストの上昇です。一方で、ライバルのマイクロソフトも、アメリカ国内の従業員の約7%を対象に、早期退職の募集を開始しました。対象となるのは、年齢と勤続年数の合計が70年以上のベテラン社員で、約12万5,000人の米国内従業員のうち8,000人以上が該当します。同社は2025年にも1万5,000人以上の人員削減を行っていますが、独自のAIモデル開発を加速させるために1,400億ドルの支出を予定しており、組織の再編を余儀なくされています。

AI開発に関連した人員削減は、アメリカの労働市場においてますます一般的な現象となりつつあり、雇用への影響に対する懸念が広がっています。ある報道によれば、今年第1四半期だけで、米ITセクターにおけるAI導入に起因する解雇者数は5万2,000人を超えました。技術革新のスピードが、労働者の保護や公的な支援策を追い越している現状が浮き彫りになっています。

世論調査の結果では、アメリカ人の57%がAIの進化は「早すぎる」と感じており、79%もの人々が、失業から労働者を守るための政府の計画がないことに不安を抱いています。先端技術への野心的な投資が企業の財務を圧迫し、そのしわ寄せが従業員に及ぶという構図は、現代のハイテク業界が抱える矛盾を象徴しています。企業がAIという未来の競争力に資源を集中させる一方で、長年貢献してきた労働力がその代償を払わされているという実態を、今回の報道は淡々と伝えています。

安保の論理、世界貿易の脅威に

Opinion | Flexible dual-use claims could be new global trade chokepoint | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】米海軍がイラン船籍の貨物船を拿捕した事例は、現代のグローバル貿易が直面している新たな課題を浮き彫りにしました。この船は中国からマレーシアを経由して航行していましたが、軍事転用が可能な「デュアルユース(軍民両用)」の部品を運んでいる疑いがあるとされました。かつてこの分類は、明らかに軍事目的に転用可能な特定の品目に限られていましたが、近年の紛争の影響もあり、その範囲は急速に拡大しています。例えば、ウクライナで回収された兵器からは多数の外国製部品が見つかっており、その多くは民間供給網で流通している一般的な電子部品でした。このように、一見すると普通の商業貨物が、いつの間にか戦略的な意味を持つカテゴリーへと押し込まれる事態が起きています。

統計を見ても、欧州連合によるデュアルユース品目の輸出許可額は、2021年の385億ユーロから翌年には573億ユーロへと急増しています。これはすべての貿易が軍事転用を目的としているわけではなく、一般的な工業製品や技術集約型の貨物が、かつてないほど戦略的な関連性を持つようになったことを示しています。金属、電子機器、機械部品、ソフトウェアといった日常的な商品が、いつ戦略的な嫌疑をかけられるかわからない不安定な状況にあります。拡散のリスク自体は現実に存在するため、輸出管理そのものを否定することはできません。しかし、このカテゴリーが伸縮自在になり、正当な商取引が短期間の判断で戦略的措置の対象に書き換えられてしまうことが、大きな問題となっているのです。

海上貿易は予測可能性によって成り立っています。船舶会社や保険会社、物流業者は、実際に拿捕が相次ぐのを待たず、法的な曖昧さやリスクの予兆に即座に反応します。わずかな事例であっても、普通の貨物が突然「疑わしいもの」として再定義される可能性があれば、航路の変更や過剰なコンプライアンス対応、保険料の騰貴といった影響が瞬時に世界へ広がります。その結果、正式な海上封鎖が行われていないにもかかわらず、封鎖に近い経済的なショックが引き起こされることになります。当局が特定の軍事プログラムを支援する可能性があると判断すれば、民生用の工業原材料であっても、政治化された予測不能な環境に置かれることになります。

航行の自由は依然として重要な原則ですが、現在はそれを上回る「安全保障の論理」が台頭し、国家が通常の商取引を戦略的脅威として再定義できる余地が広がっています。かつては例外的に適用されていた法的論理が、今や世界貿易の日常的なインフラの奥深くにまで浸透しています。正当な安全保障規制と、選択的な経済的圧迫の境界線を維持するためには、証拠基準や貨物の分類、最終用途の確認に関する透明性を高める明確なガードレールが不可欠です。こうした枠組みが整備されなければ、拡散を防ぐための仕組みそのものが、世界の貿易を停滞させる新たなボトルネック、すなわちチョークポイントになりかねないと、パキスタンの研究員であるゾハイブ・アルタフ氏は警鐘を鳴らしています。

2026-04-24

エネルギー戦争の背景

The Energy War - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府によるイランへの電撃的な攻撃は、世界的な燃料不足や移動制限、さらには広範囲にわたる飢餓を引き起こしかねない経済的災厄を解き放ちました。この衝撃は、当初こそ局地的な混乱に見えるかもしれませんが、ホルムズ海峡の封鎖が長引くにつれ、その波紋は日々増幅しています。たとえ海峡が再開されたとしても、受け入れ先を失った産油国では油田の閉鎖が相次いでおり、一度停止した油井は地質学的な理由から永久に再開できなくなる恐れもあります。エネルギーインフラの破壊も含め、戦前の生産水準に戻すには数ヶ月の歳月が必要です。

この戦争の背景には、イスラエルの利益だけでなく、中国を封じ込めようとする意図が見え隠れしています。中国は石油の多くをロシア、イラン、ベネズエラから輸入していますが、アメリカは「麻薬テロ」への対処を名目にベネズエラの石油利権を事実上掌握しました。さらにイランへの攻撃でホルムズ海峡を封鎖し、カタールの天然ガス施設やロシアの製油所が相次いで攻撃を受ける中、オーストラリアの主要な製油所でも火災が発生しています。これらを統合して見れば、アメリカによるホルムズ海峡の封鎖は、中国へのエネルギー供給を断つ世界的な禁輸措置の一環であり、世界を米国産ドル建ての石油に依存させるための戦略のようにも映ります。

危機の余波はすでに世界各地に広がっています。アイルランドでは激しい抗議デモが起き、オーストラリアやニュージーランドでは食料輸送に必要なディーゼル燃料が不足し始めています。米国は産油国ではありますが、ディーゼルやジェット燃料の精製に必要な重質原油の多くを輸入に頼っており、自国の製油所も老朽化しています。欧州では航空燃料の在庫が数週間分しか残っておらず、各国の航空会社は欠航を決め、政府はエネルギー節約のために在宅勤務を推奨する事態となっています。かつて石油を断たれた日本が真珠湾攻撃に踏み切ったように、追い詰められた中国が台湾封鎖や希少資源の輸出制限などで激しく反撃する可能性も否定できません。

一方で、不幸中の幸いは、株式相場が記録的な高値を維持し、原油先物価格が100ドルを下回るなど、市場がこの危機を楽観視していることかもしれません。しかし、過去の金融危機やパンデミック直前の暴落時にも株価は直前まで高値を更新しており、現在の静けさが偽りのシグナルである可能性には注意が必要です。イランの指導部が混乱し、封鎖によって資金が枯渇していることで、この紛争が明日終わる可能性もゼロではありません。しかし、地面の揺れが収まったからといって、その後に続く大規模な火災まで免れるとは限らないのです。

世界経済の破綻

Iran-U.S.: The Strategic Limbo Breakdown - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】アメリカとイランの間で続く緊張は、外交的な停滞を超え、世界経済を巻き込む大規模な海洋封鎖へと発展しています。現在、イラン側の意思決定の中核は、革命防衛隊の指導者らを中心とした治安重視の強力な体制に移行しており、極めて強硬な姿勢を崩していません。彼らの主張は明確です。アメリカによる海上封鎖は事実上の戦争行為であり、自国の船舶が攻撃を受けている状況では、いかなる交渉にも応じないというものです。イランは「封鎖が解除されない限り、交渉はない」と断言しており、世界経済が破綻する責任はすべてアメリカ側にあると突きつけています。

国際法上の観点から見ると、他国の港や海岸を軍事力で封鎖することは侵略行為に該当します。これに対し、イランがホルムズ海峡で行っている通行料の徴収や敵対船舶の規制は、自国の領海を通過する船舶に対する主権の行使であり、帝国主義的な軍事行動に対する正当防衛であると彼らは主張しています。1958年の領海条約などに基づき、イランは自国の安全を脅かす船舶には「無害通航権」を認めない権利があると強調しています。世界で最も重要な戦略的要衝であるホルムズ海峡の管理権を盾に、イランは一歩も引かない構えを見せています。

この海上封鎖の影響はすでに世界経済を直撃しています。わずか2ヶ月足らずで世界のエネルギー供給は60%も減少し、航空便の欠航や肥料不足による食料危機への懸念が現実味を帯びてきました。ホルムズ海峡を通過するタンカーは激減し、湾岸諸国を航行する船舶の保険料はわずか1週間で400%も急騰しました。イラン側は、今後アメリカによる船舶の拿捕などが続けば、さらなる報復措置に出ることを示唆しています。もしサウジアラビアやアラブ首長国連邦の石油パイプラインが攻撃され、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)がバブ・エル・マンデブ海峡を完全に封鎖すれば、世界の石油供給の約32%が瞬時に消失することになります。

現在、世界のエネルギー市場は停止寸前の状態にあります。封鎖の影響を避けるために喜望峰回りのルートを選択すれば、輸送期間は2週間延び、コストは跳ね上がります。また、アメリカの封鎖戦略はイランだけでなく、ロシアや中国を含むグローバル・サウス諸国全体に向けられた「世界規模の海上封鎖」へと拡大しつつあります。沈黙を守っている中国も、自国のエネルギー安保を守るために西アジアへ艦隊を派遣せざるを得ない局面が近づいています。もはや現状維持は不可能であり、アメリカの強硬策がこのまま続けば、世界規模の経済破綻を招くことは避けられないという非常に厳しい見通しが示されています。

寸断される原油供給

A Tale of Two Ceasefires - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】現在のグローバルな石油市場をめぐる状況は、まさに「虚偽の平和」と「差し迫った破綻」が同居する、極めて不透明なものとなっています。トランプ大統領は最近、イランとの無期限の停戦延長を発表しました。これは「提案が提出され、協議が何らかの形で決着するまで」攻撃を控えるという、期限のない約束です。しかし、この握手は誰からも信頼されておらず、事実、発表からわずか数時間後には、イラン海軍がホルムズ海峡で船舶を拿捕し、別の船に発砲するという事態が発生しました。

現在、わずか21マイルの幅しかないホルムズ海峡には、二つの封鎖線が並立しています。一つは4月にトランプ大統領が命じた米海軍による封鎖、もう一つはイランによる封鎖です。米軍は警告を無視して航行を続けようとする貨物船のエンジンルームを砲撃して無力化し、一方でイラン側も独自の「通行料」を支払わない船舶に警告なしで発砲するなど、実力行使に出ています。これを米国は封鎖執行と呼び、イランは海賊行為と呼んでいます。停戦という言葉とは裏腹に、現地では両者が実際に船を奪い合い、砲火を交えるという「武装した静寂」が続いています。

この事態が長引くほど、石油危機の傷跡は深まります。現在、世界は史上最大規模の供給寸断に直面しています。イラクの生産量は60%以上減少し、クウェートやサウジアラビアも大幅な減産を余儀なくされています。これらは戦略的な減産ではなく、ホルムズ海峡が封鎖されて石油の行き場がなくなり、貯蔵施設が満杯になったことによる「強制的な閉鎖」です。一度閉鎖された油田を元の生産能力に戻すには数ヶ月の歳月が必要であり、たとえ海峡が今すぐ再開されたとしても、供給不足の解消には長い時間がかかります。

さらに、世界各地でこの混乱を模倣する動きが出始めています。インドネシアは、世界の貿易の約40%を担うマラッカ海峡において、イランの通行料システムをモデルにした規制や手数料の導入を検討し始めました。これは「自由な海」という幻想が崩れ、世界の海上交通の要所が武器化される時代の到来を予感させます。唯一の勝者は、封鎖に縛られず輸出を拡大できる米国の石油産業ですが、世界的な需要の減退や航空便の欠航、燃料規制などは、世界経済に重い影を落としています。石油価格は「より高く、より長く」維持される見通しであり、危機の出口は見えていません。

欧州、原発回帰の兆し

Atom's Eve in Europe | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】「危機を無駄にするな」という言葉通り、現在の深刻な状況がようやく欧州に建設的な変化をもたらそうとしています。過去30年間、欧州は原子力発電を「厄介者」として扱ってきました。フランスは耐え忍び、ドイツは追放し、イタリアは禁止しました。しかし、ホルムズ海峡にミサイルが飛び交う事態に直面し、欧州各国のエネルギー担当大臣たちは、必死に忘れようとしていた「原子」という言葉を突如として思い出したのです。

かつて欧州の電力の33%を担っていた原子力は、今や15%にまで半減しています。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長はこの状況を「戦略的ミス」と呼びました。2011年の福島第一原発事故後、当時のメルケル政権が下した脱原発の決断で、欧州はロシア産ガスやカタール産LNGに深く依存せざるを得ない状況に追い込まれました。そして今回のイラン危機によるガス価格の暴騰は、産業界と家庭に悲鳴を上げさせ、政治家に現実を直視させることになりました。現代経済は「希望と日光」だけでは動かせません。1月の極寒の深夜、風が止み太陽光パネルが雪に覆われても、安定してハミングし続ける「ベースロード電源」が必要なのです。

この分野で勝利を確信しているのがフランスです。電力の65%を原子力で賄う同国は、新たに6基の欧州加圧水型炉(EPR)の建設を進め、さらに8基の増設を視野に入れています。この動きは欧州全体に波及しており、ベルギーは原発の稼働期間を延長し、ポーランドは米国製原子炉の導入を決め、オランダやギリシャでも議論が進んでいます。欧州委員会も小型モジュール炉(SMR)の戦略を本格化させ、2030年代初頭の稼働を目指して多額の資金援助を表明しました。イタリアも2050年までの原発回帰を口にしていますが、実現にはまだ長い年月を要するでしょう。

真のエネルギー自立にはコストがかかります。しかし、ホルムズ海峡が封鎖されれば数時間で立ち往生するタンカーに頼るより、数年間は燃料交換が不要な原子炉に投資する方が、長期的には賢明な選択です。再生可能エネルギーは素晴らしいものですが、バックアップとしてガスに頼り続ける限り、他国の顔色を窺う状況からは抜け出せません。大人が計画を立て、政治的なリスクを排除したとき、エネルギー安全保障は初めて形になります。原子力はもはや「投資不適格」な対象ではなく、欧州の戦略的なインフラへと再定義されました。

ただし、楽観視は禁物です。欧州はいまだにロシア産のウラニウムや燃料サービスに依存しており、原発建設には常に予算超過や工期の遅れというリスクが付きまといます。現在建設中の原子炉が今年の夏を涼しくしてくれるわけではなく、原子力はあくまで2035年以降の電力価格を下支えする長期的な選択肢です。投資家にとって、原発を抱えるフランスの公益企業やSMR関連のエンジニアリング会社は魅力的な存在となりましたが、2026年の危機を即座に解決する魔法の杖ではないという冷徹な事実も、忘れてはなりません。

持続できない経済

How Much Further? in [Market-Ticker] [LINK]

【海外記事より】現在のレバレッジに依存した資産市場のゲームは、一体どこまで続くのでしょうか。消費者物価への明らかな影響や、一般市民の収入と生活コストの間に広がる絶望的な格差を考えれば、この問いは切実です。政府が短期金利を遥かに上回るペースで赤字支出を続けていることが、政権を問わずこの状況を加速させています。中央銀行の総裁たちは20年以上も「持続不可能だ」と言い続けてきましたが、連邦準備制度(FRB)は抜本的な対策を講じてきませんでした。しかし、真の責任はFRBではなく、2008年以降、こうした政策を要求し続けてきた議会にあります。

一般市民にとっての真の問題は、持続不可能なものはいつか必ず破綻するということです。住宅市場は多くの地域で事実上凍結しており、固定資産税や保険料の高騰が追い打ちをかけています。さらに、かつて安泰と思われていたコンピュータサイエンスや医療などの専門職も、人工知能(AI)や外国人労働者の流入によって将来の収益力が脅かされています。高い年収を前提にレバレッジを効かせた生活を送っていた人々が、突然の解雇で収入が激減し、深刻な窮地に陥る事例が相次いでいます。こうした個人の脆弱性が高まる中で、国家規模の赤字支出はさらに膨らみ続けています。

納税の日(4月15日)を迎え、改めて現状を直視する必要があります。トランプ政権はイランとの戦争を背景に、国防費をほぼ倍増させ、GDPの2%に相当する新たな赤字支出を提案しました。これに加えて、今会計年度のメディケアやメディケアなどの社会保障費はすでに約1.3兆ドルに達し、通年では個人の所得税収の総額を超える2.6兆ドルに及ぶ見通しです。さらに、利払い費用だけで社会保障費の約半分に相当する6,200億ドル以上に膨れ上がっています。議会がFRBに対して引き締めを強く要求しないのは、そうすれば増税か歳出削減という、政治的に痛みを伴う選択を迫られるからです。

結局のところ、抑え込まれているはずの利払いコストは、高い生活費という形で国民に強制的に転嫁されています。剰余資金を市場に投じる余裕のない一般市民が、この強制的なコスト上昇を上回る利益を出し続けることは数学的に不可能です。この状況で利益を得られるのは、全所得を投資に回せる富裕層や、破綻の兆候をいち早く察知して逃げ出せる立場の人々に限られます。市場は、戦争や巨額の支出が不況を招かないという楽観的な賭けを続けていますが、それは極めて危険な賭けです。2008年以来、目先の利益に慣らされてきた投資家たちが、次に投げ与えられる餌が「毒」であることに気づく日は、そう遠くないのかもしれません。

米、デフォルトに現実味

Get Ready for Another US Government Default | James Turk Blog [LINK]

【海外記事より】アメリカ政府は今、自らの約束を再び破る「デフォルト(債務不履行)」という財政的な転換点に向かって突き進んでいます。かつてのアメリカは、憲法に基づき通貨を金や銀と結びつけることで、無制限なドルの発行を抑制してきました。しかし、こうした健全な規律を放棄して不換紙幣制度に移行した結果、政府は身の丈を超えた支出を続け、その穴を借金で埋めるという悪循環に陥っています。1971年に1オンス35ドルだった金価格が現在約4,800ドルに達している事実は、ドルの購買力がどれほど低下したかを如実に物語っています。

現在の深刻な状況を理解するためには、政府が公表する見かけの数字に惑わされないことが重要です。政府は「純利息」という数字を用いて利払い負担を少なく見せていますが、社会保障基金などへの支払いを含む「総利息」で見れば、その負担は遥かに巨額です。2025年度の実際の利払い費用は1.2兆ドルを超えており、これは政府収入の約23%に達しています。また、公表されている予算赤字と、実際に増えた債務残高の間には大きな乖離があり、真の赤字額は公表値よりも約4,000億ドルも多い2.1兆ドル以上にのぼります。

筆者が提唱する「支払不能比率(総利息÷総収入)」が30%を超えると、経済はもはや負債を維持できなくなり、歴史的に通貨や経済の危機が引き起こされてきました。現在この比率は上昇を続けており、2027年にはその警戒ラインである30%に到達する可能性があります。特にイラン紛争などによる石油価格のショックが重なれば、インフレと金利上昇が加速し、利払い費が防衛費や社会保障費を飲み込む「スタグフレーション・ショック」が現実味を帯びてきます。一度この連鎖が始まれば、政府には支払いをあきらめるか、通貨を大量に刷って価値を暴落させるかの二択しか残されません。

連邦準備制度(FRB)による金利操作や国債の買い支えは、問題を先送りしているに過ぎず、ドルの価値下落という代償を伴います。無秩序な支出を抑制できない政治状況を鑑みれば、通貨制度の崩壊という最悪の事態はもはや避けることができません。こうした歴史的な転換点において、紙の約束に過ぎない通貨や証券はデフォルトの対象となります。個人の資産を守るためには、1933年や1965年のデフォルト時と同様、政府の都合で価値を操作できない物理的な金や銀を保有することが、今、かつてないほど重要になっていると結んでいます。

金、ブロックチェーン技術で進化

The Dead Asset Wakes Up as Crypto Magic Makes Gold Pay Interest [LINK]

【海外記事より】最近の金価格の下落は、ドルの短期的な資金調達圧力によるものであり、金本来の価値を支える要因が変化したわけではありません。各国の準備資産を分散させるという構造的な需要は依然として根強く、さらに暗号資産の技術を用いた「トークン化」という新たな流通経路が、金の需要層を世界的に広げています。足元の金価格の弱含みは、急騰するエネルギー需要や債務支払いのために、市場参加者が追加のドル流動性を求めている「ペトロダラーの資金不足」が引き起こした一時的な現象であると考えられます。

現在、金市場には二つの大きな圧力がかかっています。一つは実質金利の上昇です。中東での対立激化によってエネルギー価格が高騰し、インフレ懸念が再燃したことで米国の長期金利が上昇しました。金は利息を生まない資産であるため、リスクのない債権の利回りが上がると、金を持つ機会費用が増大し、資金が流出するというのがこれまでの定石でした。しかし、この関係性は2022年以降、弱まっています。米国の財政赤字や地政学的リスクへの備えとして、各国の中央銀行が金を購入し続けているため、金利上昇局面でも金価格が支えられる傾向が続いてきました。

もう一つの大きな要因が、世界的なドル資金の枯渇です。日本や中国、欧州といった石油輸入国は、世界全体の原油の約70%を購入しています。今回の衝突を受けて石油価格が40%以上も跳ね上がったことで、同じ量のエネルギーを確保するために必要なドルのコストが急増しました。エネルギー輸入は先送りができず、また国境を越えた債務の多くがドル建てであるため、各国は支払いのために急速にドルを確保しなければならなくなりました。こうした「ドルへの需要ショック」が、換金性の高い金に対する一時的な売り圧力となっているのです。

しかし、こうした短期的な混乱の裏で、金は新たな進化を遂げています。それが、ブロックチェーン技術を活用して金をトークン化し、暗号資産のように扱う手法です。これにより、これまで金市場にアクセスしにくかった新興国の50億人以上の人々が、資産保存の手段として金を持てるようになります。また、デジタル化された金は分散型金融(DeFi)を通じて運用が可能になり、「利息を生む金」としての側面を持ち始めています。中央銀行による根強い需要と、デジタルの魔法による新たな市場の拡大は、一時的な価格の変動を超えて、金の長期的な価値をさらに強固なものにすると期待されています。

不換紙幣と文明の衰退

Fiat Money and the Decline of Civilization [LINK]

【海外記事より】不換紙幣(フィアットマネー)制度の下では、通貨価値が絶えず下落し、人々の購買力は月を追うごとに失われていきます。政府の視点に立てば、これは単なる欠陥ではなく、税収を超えた支出を可能にするための「仕様」です。中央銀行である連邦準備制度(FRB)は、いわば巨大な政府を動かすエンジンとなっています。しかし、この制度がもたらす害悪は経済的なものに留まりません。経済学者のサイファディーン・アモウズ氏は、不換紙幣制度が社会に「高い時間選好」という深刻な負の影響を及ぼしていると説いています。

時間選好とは、現在の消費と将来の消費のどちらを重視するかを示す経済用語です。健全な通貨制度の下では、人々は将来に備えて貯蓄し、目先の満足を後回しにする「低い時間選好」を持ちますが、通貨が減価し続ける制度下では「明日には価値が下がるのだから、今使ってしまおう」という「高い時間選好」が支配的になります。こうした刹那的な思考は、社会のあらゆる側面に浸透し、文明の衰退を招きます。例えば家族形成は究極の「低い時間選好」に基づく行為ですが、通貨下落による生活の圧迫は、若者から将来への投資意欲を奪い、少子化を加速させます。建築においても、数世紀続く美しさよりも、短期的な収益を優先した使い捨ての構造物が溢れるようになります。

食生活や科学の分野でも劣化が進みます。政府の助成金や歪んだインセンティブにより、土壌は疲弊し、栄養価の高い食品は安価で不健康な加工食品に取って代わられます。科学研究も、長期的な真理の探究より、政府の助成金を得るための煽情的な予測や政治的意図に沿った研究が優先されるようになります。教育についても同様で、多額の負債を抱えながら市場価値のない学位を乱発する「借金工場」と化し、真のスキル習得が疎かになっています。さらに、不換紙幣制度は政府に無限に近い戦費の調達を可能にさせるため、納税者の反発を回避したまま終わりのない戦争を継続させる一因にもなっています。

市場の機能も著しく歪められています。政府は特定の「クリーンエネルギー」部門に巨額の補助金を出すなどして、政治的判断に基づいて勝者と敗者を恣意的に選別しています。これにより、本来市場で起こるべき技術革新が妨げられ、資源の浪費を招いています。不換紙幣は単なる経済の問題ではなく、社会のあり方そのものを変質させてしまいます。私たちが文明の質を維持し、健全な社会を取り戻すためには、価値が安定した「健全な通貨」が必要不可欠であるというのが、この記事の筆者たちの共通した主張です。

イラン戦争と米覇権の崩壊

Why Iran war is the surest sign that the US is in decline | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】アメリカが展開する対イラン軍事作戦は、中国の識者や官営メディアの間で、ワシントンによる無敵の覇権が崩壊しつつある決定的な証拠であるとの見方を強めています。人民日報は最近の論評において、かつては国際的なルールの構築者として振る舞っていたアメリカが、今や自国の利益のみを追求する捕食的な覇権国家へと変貌したと厳しく批判しました。この記事によれば、冷戦後のアメリカは表面上こそ責任ある国際社会の一員を装ってきましたが、現在ではその仮面を脱ぎ捨て、自らの支配を維持するために野蛮な弱肉強食の論理に頼る「ルールの破壊者」に成り下がったと指摘されています。

こうした見方は中国国内の多くの専門家に共有されており、アメリカの無謀な行動が同盟国を遠ざけ、国際的な信頼を失墜させているとの分析が相次いでいます。ハーバード大学のスティーヴン・ウォルト教授も、アメリカがその地位を悪用して他国に経済的譲歩を強いる戦略をとっていると批判していますが、中国のような競争相手が存在する多極化した世界では、各国がアメリカへの依存を減らす選択肢を持つため、こうした強硬策はもはや通用しにくくなっています。特にトランプ政権の復帰以降、パナマやベネズエラに対する強圧的な介入や、2月に始まったイスラエルとの共同によるイラン攻撃は、世界に深刻な不安定感をもたらしました。

イランとの戦争は当初の目的に反して泥沼化し、アメリカにとって多大なコストを強いる膠着状態に陥っています。イラン側によるホルムズ海峡での非対称な抵抗策は、世界のエネルギー価格を急騰させ、アメリカ国内でも国民の不満を増大させています。中国の専門家たちは、NATOの主要な同盟国がこの軍事行動への支持を拒否していることや、戦場での苦戦、そして高騰する戦費をアメリカの衰退を示す具体的な兆候として挙げています。かつては鉄の盾と見なされていた中東の米軍基地が、今では報復の標的となっており、湾岸諸国の間ではアメリカの安全保障に依存することが自国の首を絞めることになりかねないという疑念が広がっています。

ワシントンが戦略的資源や貿易ルートの支配を狙って始めたこの戦争は、結果として同盟関係を歪め、支配的な大国としての信頼を根本から揺るがすことになりました。中国の学術機関の分析によれば、今回の軍事作戦は民主的な監視を欠いたまま決定されており、アメリカ国内のシステム上の機能不全を露呈させるとともに、国民の離反を招いています。かつての超大国としての地位がかつてない危機に瀕しているというのが、現在の中国側による一貫した評価です。このように、イラン情勢を巡る一連の混乱は、単なる局地的な紛争に留まらず、アメリカを中心とした世界秩序の終焉を予感させる出来事として捉えられています。

世界経済、混乱広がる

Middle East war fallout hits consumers worldwide — RT Business News [LINK]

【海外記事より】アメリカとイスラエルによる対イラン戦争の余波が世界経済に広がっています。エネルギー供給の混乱や、ホルムズ海峡という重要な海上交通路に関連する輸送ルートの寸断が世界市場に波及しており、多くの企業がコストの上昇や需要の減退に警鐘を鳴らしています。物流コストや原材料費の高騰によって、これまでの貿易の流れが変化し、最終的に消費者がその影響を吸収せざるを得ない状況にあります。ロイター通信の調査によれば、戦争開始以来、世界全体で20社以上の企業が財務見通しを引き下げ、30社以上が製品価格の値上げを示唆しています。経営者たちは、輸送費の増大や石油関連原材料の値上がり、そしてホルムズ海峡の不確実性が大きな圧力になっていると指摘しています。

製造業では石油ベースの材料や輸送費の負担が増しており、3Mなどの大手企業は、原油価格の上昇が製品価格を押し上げる可能性があると警告しています。また、旅行業界への打撃は特に深刻です。ドイツの観光大手TUIは不透明な先行きの影響で業績見通しを下方修正し、ユナイテッド航空やルフトハンザ航空も燃料費の高騰により利益の減少や大幅な減便を余儀なくされています。物流の混乱は食料品にも及んでおり、フランスのダノンでは乳児用粉ミルクの出荷に支障が出ており、一時的な品不足や価格上昇の可能性が報じられています。世界最大のコンドームメーカーであるマレーシアのカレックス社は、原材料費の上昇と配送時間の倍増を理由に、20%から30%の値上げに踏み切る方針を明らかにしました。

一方で、貿易ルートの変更により、意外な場所で需要が急増しています。中東を避ける動きからパナマ運河の利用が集中し、通航枠のオークション価格が以前の約14万ドルから、時には100万ドル以上にまで跳ね上がっています。また、アジアへのエネルギー供給の要であるマラッカ海峡にも注目が集まっています。しかし、こうした物流の変動は全体として家計を圧迫しており、国際通貨基金(IMF)はエネルギー価格の上昇を理由に世界経済の成長見通しを下方修正しました。欧州ではエネルギー輸入費用が急増し、家計や企業の間で太陽光発電への関心が高まっています。アメリカでも燃料価格の高騰により、消費者は旅行を控えたり、電気自動車への転換を検討したりするなど、生活スタイルの変化を余儀なくされています。経済の混乱が長期化すれば、世界経済はさらに厳しい局面を迎えると予想されています。

2026-04-23

世界支える中国の町

Inside Tesla’s hidden supply chain: how a Chinese town shapes the modern world | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】テスラをはじめとする世界の製造業を陰で支えているのは、中国浙江省台州市にある「黄岩(こうがん)」という小さな工業地帯です。一般にはあまり知られていないこの町は、プラスチック金型と成形技術に特化しており、現代の製造業の心臓部とも言える役割を担っています。自動車の内装材からリモコン、キーボード、化粧品のパッケージに至るまで、私たちの身の回りにある多くの製品が、この地の工場で形作られています。

特に電気自動車(EV)分野において、黄岩の存在感は圧倒的です。テスラの上海工場で生産される車両に使用されるプラスチック部品の3分の1以上が、同地区の企業との提携によって製造されています。ダッシュボードやコンソール、バンパー、バッテリーハウジングなど、主要なプラスチック部品の多くがここから供給されており、現地の工場主は「もし黄岩の生産が長期的に止まれば、イーロン・マスク氏も深刻な事態に直面するだろう」と語っています。その影響は上海だけでなく、ドイツのベルリン工場にも及んでおり、紅海での物流混乱が起きた際には、中国からの部品供給が滞りドイツ工場の稼働停止を余儀なくされた例もあります。

黄岩の強みは、設計から材料調達、精密加工までが一つのエコシステムとして完結している点にあります。人口の7分の1にあたる10万人以上が金型・プラスチック産業に従事し、4,000を超える企業が密集しています。ある工場で解決できない課題があれば、隣や向かいの工場が解決策を提示できるほどの密度とスピードを誇っており、専門家は「この効率的な集積地を他国で模倣することは極めて困難だ」と分析しています。この圧倒的な規模と柔軟性が、米国のクライアントが求める厳しい納期や大量発注を支える基盤となっています。

一方で、この供給網は海外技術とも深く結びついています。黄岩の工場では、日本やドイツ、スイスなどの超精密機器や特殊鋼が不可欠であり、世界の製造業は相互依存の状態にあります。中国が規模と効率を提供し、海外諸国が先端技術を提供するというこの関係は、昨今の「デカップリング(切り離し)」の議論がいかに現実と乖離しているかを物語っています。黄岩の事例は、中国の小さな町が、現代の私たちの生活水準やハイテク製品の普及をいかに深く、そして不可欠な形で形作っているかを浮き彫りにしています。

燃料危機、欧州の空直撃

Fight or flight: How the global jet fuel crisis could ground you — RT World News [LINK]

【海外記事より】アメリカ・イスラエルとイランの紛争により、世界のエネルギー航路の要衝であるホルムズ海峡が封鎖され、深刻なジェット燃料危機が欧州の夏休みを直撃しています。ルフトハンザ航空が燃料節約のために10月までに2万便の欠航を決定したほか、KLMやライアンエアーなど欧州主要各社も相次いで減便を発表しました。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、これが「史上最悪のエネルギー危機」になる可能性を警告しており、欧州の空は混乱の渦中にあります。

この危機の背景には、欧州の航空業界が抱える構造的な脆弱性があります。欧州で使用されるジェット燃料の約75%は中東からの輸入に依存しており、その輸送ルートが遮断されたことで供給が極端に引き締まりました。ジェット燃料は原油から精製される割合が10%程度と低く、需要に合わせて急増させることが難しい特性を持っています。2月28日の開戦以来、燃料価格は約2倍に跳ね上がり、航空各社は運賃の値上げや燃油サーチャージの導入、手荷物料金の引き上げなどでコストを乗客に転嫁せざるを得ない状況です。

旅客機が消費する燃料の量は膨大です。ボーイング737などの一般的な中型機でも1時間に約2,500から3,000リットルを消費します。これは、空港で見かける大型タンクローリー1台分の燃料を、わずか10時間程度の飛行で使い果たしてしまう計算になります。こうしたコストの急騰と供給不安を受け、旅行者の間では「飛行機の不確実性」を嫌い、海外旅行を控えて国内で休暇を過ごす動きが広がっています。欧州最大の旅行会社TUIによれば、出発直前まで予約を控える慎重な姿勢が顕著になっているとのことです。

欧州連合(EU)の輸送担当委員は、各国の燃料備蓄を共有する緊急対策を検討しており、米国など代替の供給源からの輸入も模索されています。トランプ大統領はイランとの停戦期間を延長したものの、海上封鎖は継続する方針を崩しておらず、物流の正常化は見通せません。専門家によれば、仮に今すぐ海峡の通航が完全に再開されたとしても、混乱した供給網が正常に戻るには少なくとも7月まではかかると見られており、今年の夏のバカンスシーズンに影を落とすことは避けられない見通しです。

ドバイの幻想

The myth of Emirati neutrality [LINK]

【海外記事より】アラブ首長国連邦(UAE)、特にドバイは、紛争の砂漠の中に浮かぶ「穏やかなオアシス」という幻想を長年振りまいてきましたが、その実態は「中立」とは程遠いものであるとこの記事は指摘しています。UAEの統治者たちは自国を「アラブのスイス」になぞらえ、秘密性の高い金融業や多くの外国人労働者を受け入れることで経済的な成功を収めてきました。しかし、外交面においてはスイスのような徹底した中立を貫くどころか、地域各地の紛争に深く介入し、膨大な数の敵を作り出しています。現在、自国領土が攻撃にさらされている状況は、これまで海外で撒き散らしてきた火種の報いであると言えるかもしれません。

1971年に英国の保護下から独立したUAEは、アブダビとドバイという二つの富裕な首長国によって実質的に支配されています。ドバイ政府系企業のDPワールドが世界最大級の港湾オペレーターであるように、この国では「私企業」と「国家」の境界線は事実上のフィクションです。オイルマネーによって築かれたドバイは、世界最高の超高層ビルや人工島を誇る国際都市となりましたが、人口の大部分は南アジアなどからの外国人労働者によって占められています。彼らの送金は母国の経済を支える一方で、UAE国内では自由民主主義とは無縁の厳格な統治下に置かれています。

UAEの「中立」という神話が崩れる最大の要因は、アメリカとの軍事同盟と地域紛争への積極的な介入です。UAEはアメリカの条約同盟国としてアル・ダフラ空軍基地を維持し、ドバイのジェベル・アリ港は米海軍にとって中東最大の寄港地となっています。さらに、2011年のリビア介入を皮切りに、シリア、スーダン、ソマリア、そしてイエメンでの戦争に至るまで、UAEは自国の「戦略的深み」や「資源へのアクセス」を求めて軍事・政治的に深く関与してきました。こうした多動的な外交政策は、かつては対岸の火事であった紛争の火の粉を、自国の領土へと呼び寄せる結果を招いています。

特にアブラハム合意によるイスラエルとの関係樹立や、ムスリム同胞団をテロ組織と見なして敵視する姿勢は、イスラム世界や反シオニストからの反感を買っています。首長たちが真に恐れているのは宗教的イデオロギーそのものではなく、自らの封建的で個人的な統治体制を脅かす「現代的な政治運動」です。トランプ政権のように予測不能な同盟国を後ろ盾に、際限のない富で影響力を買おうとするドバイ・モデルは、今や限界に達しつつあります。テロのリスクが高まり、自国領土への攻撃が現実のものとなる中で、金で安全を買い、中立を装いながら紛争に加担し続ける手法が、国の未来を破壊しようとしていると著者は締めくくっています。

自由主義経済とナショナリズム

Peaceful Nationalism as a Foundation for Economic Liberalism - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】自由主義経済とナショナリズムは、一見すると対立する概念のように思われます。特に自由な労働移動を求める経済的合理性と、国境管理を重視する国民意識の衝突は、現代の移民政策を巡る議論においても大きな焦点となっています。この記事は、オーストリア学派の経済学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの著書『国民、国家、経済』を紐解き、これら二つの概念が「平和的なナショナリズム」という形であれば、実は互いに補完し合い、自由の強固な基盤となり得ることを解説しています。

ミーゼスによれば、自由主義と両立し得るナショナリズムとは、軍事的な帝国主義とは明確に区別される「リベラル・ナショナリズム」です。それは個人の自己決定権を基礎としており、他国を侵略するためではなく、専制的な支配から自らの自由を守るための盾として機能します。歴史的に、独裁的な統治者は国民同士の連帯を嫌い、忠誠心を支配者個人にのみ向けさせようとしますが、国民が互いに強い絆と誇りを持つことは、こうした暴政に対する強力な防波堤となります。つまり、真のナショナリズムの刃は他国民ではなく、常に専制君主に向けられているのです。

また、この記事は「国家(ステート)」と「国民(ネーション)」を混同してはならないと強調しています。ミーゼスの擁護するナショナリズムは、決して国家権力の拡大を意味するものではありません。例えば、自由貿易を促進するために法体系を統一する際、それが欧州連合(EU)に見られるような中央集権的な強制によるものであれば、それは自由主義の理念に反します。国民の合意なしに強制される「共通市場」は、むしろ国家間の不和を招く原因となります。真の自由貿易と平和は、各国民が自らの文化と歴史を誇りに思い、それを尊重し合う自発的な合意の上でこそ成立します。

結論として、平和的なナショナリズムは「世界市民」としての視点や経済的自由主義と決して矛盾しません。むしろ、自らの自由を愛する国民は、同様に他国の自由も尊重し、共通の経済的利益のために協力し合うことができるからです。すべての国民が自由を手に入れ、個人の権利が保障された社会において、もはや戦争の根拠は存在しなくなります。ナショナリズムを専制に対する抵抗の力として再定義することで、それは閉鎖的な排外主義ではなく、世界平和と繁栄を支える「自由の守護神」としての役割を果たすことができるのです。

国民皆兵説く「死の商人」

Palantir CEO Calls for Draft to Fight the Empire’s Wars - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカの軍事・情報関連技術を担うパランティア社の最高経営責任者、アレックス・カープ氏が、その著書やSNSを通じて、志願兵制度から国民皆兵制度への転換を検討すべきだと主張し、大きな物議を醸しています。カープ氏は、2026年4月に発表したマニフェストの中で、国家奉仕は国民共通の義務であるべきだと述べ、誰もが戦争のリスクとコストを分かち合うべきだと提言しました。この記事は、こうした徴兵制の提唱が、国防総省やCIAといった国家安全保障体制と深く結びついた巨大企業にとって、いかに自社の利益にかなうものであるかを批判的な視点で分析しています。

パランティア社は、AIを活用した戦場情報システム「プロジェクト・メイヴェン」を設計し、イラクやシリア、イエメンでの攻撃支援に活用されています。最近ではイランに対する空爆においても、このAIシステムが数千もの標的を特定し、優先順位を付けるために利用されたと報じられています。こうした技術は「キルチェーン」、すなわち標的の特定から殺害に至るまでのプロセスを劇的に短縮させるものであり、イスラエルによるガザへの軍事行動においても、同社のデータ分析ツールが深く関与しているとされています。カープ氏は、イスラエルの戦争努力を全面的に支援していることを誇りに思うと公言しており、そこにはAIを用いた効率的な殺傷能力の提供が含まれています。

著者のカート・ニモ氏によれば、カープ氏が説く「西洋への奉仕」という概念には、個人の意思に反して戦場へ送り出す強制徴用が含まれており、これは自由を尊ぶべき技術先進国の理念とは相容れない「テクノ・ファシズム」とも呼ぶべき実態です。シリコンバレーの有力企業が国家と結託し、政府の資金や契約を通じて自らの影響力を拡大させる姿は、かつての第一次世界大戦時に莫大な利益を上げた「死の商人」の現代版であると厳しく指摘されています。カープ氏が売っているのは銃や弾薬ではなく、AIを通じて数千、数百万の人々をコンピューターの速さと効率で殺害することを可能にする技術であるというわけです。

この記事を執筆したニモ氏は、パランティア社のAIが関与したとされる空爆によって、イランの小学校で多くの子供たちが犠牲になった事例を挙げ、テクノロジーがもたらす惨劇に警鐘を鳴らしています。トランプ大統領は同社の戦争遂行能力を称賛していますが、投資家との通話で笑顔を浮かべながら「時に敵を殺害する」と語るカープ氏の姿勢は、一部のメディアから「不気味なCEO」として批判されています。民間企業が国家の暴力装置と一体化し、国民に徴兵の義務を説く現在の状況は、西洋の民主主義社会が直面している深刻な変容を象徴していると言えるでしょう。

米中レアアース戦争

Forget Iran, China is Next - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】2010年、日本は尖閣諸島付近で中国漁船の船長を拘束しましたが、それに対する中国の返答は、日本へのレアアース輸出を全面的に停止するというものでした。この「レアアースの武器化」により、日本のメーカーは生産ラインの停滞と価格高騰に直面し、供給網の多角化を余儀なくされました。この記事は、かつて日本が経験したこの危機が、今やアメリカにとっても現実の脅威となっていると警鐘を鳴らしています。中国は現在、世界のレアアース採掘の70%、加工・精製においては最大90%を支配しており、特にF-35戦闘機や電気自動車の高性能磁石に不可欠なジスプロシウムやテルビウムの分離に関しては、事実上100%の独占状態にあります。

2025年、中国はアメリカによる関税措置への報復として、主要な重要鉱物7種の輸出を制限しました。これによりアメリカの自動車メーカーや国防関連企業が資源確保に苦慮し、供給網の脆弱性が露呈しました。これを受けてトランプ政権は、二度と同じ事態を繰り返さないよう「プロジェクト・ヴォルト(Project Vault)」を2026年2月に始動させました。これは120億ドルを投じた民間向けの戦略的鉱物備蓄計画であり、レアアースだけでなく、リチウムやウラン、銅、コバルトなど50種類以上の重要鉱物を網羅しています。この備蓄は単なる在庫確保に留まらず、国内生産を経済的に成立させるための需要保証としての役割も担っています。

さらに、アメリカ政府は「冷戦時代の戦略」を彷彿とさせる強力な産業政策を展開しています。従来の補助金制度を超えて、鉱業企業への直接的な出資に乗り出しました。2025年7月には、米国内で唯一稼働しているレアアース鉱山を運営するMPマテリアルズ社に対し、国防総省が4億ドルを投じて15%の株式を取得しました。また、テキサス州で精製施設を建設中のUSAレアアース社に対しても、商務省が10%の出資を行っています。政府が株主となることで、取締役会の監視権や重要決定への拒絶権を持ち、国家戦略に基づいた企業運営を直接支える体制を構築しています。

こうした動きを支えるのが、採掘許可プロセスの劇的な迅速化です。アメリカでは通常7年から10年かかっていた鉱山の認可期間を、大統領令によって週単位にまで短縮する試みが始まっています。アリゾナ州のレゾリューション・カッパー・プロジェクトなどはその象徴であり、長年の規制の停滞を打破して承認が進められました。著者は、中国が30年かけて築き上げた独占体制を、アメリカがわずか5年で再構築しようとしている現在の状況を「国家安全保障上の緊急事態」と位置づけています。次の危機は漁船ではなく、台湾を巡って起こる可能性が高く、その際にレアアースは21世紀の石油に匹敵する戦略物資になると予測されています。

銅は印刷できない

You Can’t Print Copper! | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】「銅は印刷することができない」という刺激的な事実から始まるこの記事は、今後10年で訪れるであろう鉱業セクターの強気相場について、専門的な見地から解説しています。過去15年間、鉱業は株式市場において極めて不遇な時期を過ごしてきました。S&P500指数が鉱業株指数を500%も上回るパフォーマンスを見せる中で、投資家からの資本はテクノロジー分野や再生可能エネルギーへと流れ、鉱業は深刻な「資本不足」に陥りました。企業は投資家を繋ぎ止めるために、本来なら新規探査や開発に向けるべき資金を自社株買いや配当に充てざるを得ず、これが将来の供給不足を招く要因となっています。

鉱山は有限な資源であり、一度掘り尽くせば新しい鉱山を見つけなければなりません。しかし、長年にわたる過少投資により、新たなプロジェクトのパイプラインは極めて不十分な状態にあります。さらに、地表近くにある高品質で採掘しやすい鉱床はすでに掘り尽くされており、現在はより深い場所を高度な技術を用いて探査する必要があります。これには莫大なコストと高いリスクが伴い、投資家から資金を引き出すことを困難にしています。開発の現場でも、大型プロジェクトの多くが予算超過や大幅な遅延に直面しており、新規鉱山の稼働までにかかる平均期間は、かつての12.7年から現在は17.9年へと長期化しています。

こうした「低価格がさらなる供給不足を呼び、結果として価格を高騰させる」という循環が、今まさに起ころうとしています。パンデミック後の経済回復やエネルギー転換の加速により需要が急増する一方で、供給が追いつかない現状が浮き彫りになっています。今後数年で不足が予想される資源には、銅、グラファイト、リチウム、ニッケル、さらにはネオジムなどのレアアースやコバルトが含まれます。これらは現代のテクノロジーやグリーンエネルギーに不可欠な素材ですが、通貨のように中央銀行が増刷して増やすことは不可能です。

世界的なコンサルティング会社の推計によれば、予測される需要を満たすためには、鉱業分野に4.7兆ドルという天文学的な投資が必要とされています。現在のボトルネックは地中の資源そのものではなく、それを掘り出すための「資金」が決定的に不足していることです。投資家の財布を開き、必要な投資を促すためには、資源価格は現在よりもはるかに高い水準まで上昇する必要があると著者は指摘しています。過去10年の投資戦略に固執し、このセクターへの配分を怠れば、今後訪れる巨大なサイクルを逃すことになると警鐘を鳴らしています。

米国債、需要崩壊の危機

Ex-Treasury Secretary Paulson Urges Emergency Plan for US Treasury Market Crash | CoinMarketCap [LINK]

【海外記事より】元アメリカ財務長官のヘンリー・ポールソン氏が、米国債市場の需要崩壊という事態に備え、当局に対して緊急時の対応計画を策定するよう呼びかけました。ブルームバーグの取材に応じたポールソン氏は、危機が現実のものとなればその影響は極めて激しいものになると予測し、実際に問題が発生する前に「標的を絞った短期的な計画」を準備しておくべきだと述べています。現在、アメリカの連邦債務は39兆ドルを超えており、債務の増大が投資家による利回り上昇の要求を招き、それがさらに利払い負担を増やして財政赤字を拡大させるという、いわゆる「破滅のループ」への懸念が経済学者の間で長らく指摘されてきました。

もし財務省が利払いを賄うだけの資金を調達できなくなった場合、多くの専門家は連邦準備理事会、通称FRBが国債の主要な買い手として介入せざるを得なくなると予想しています。米国債市場は世界の社債や住宅ローン、株式などの価格決定の基準となっているため、この市場の不安定化はアメリカ国内に留まらず、世界経済全体に多大な影響を及ぼすことになります。また、こうした市場の混乱は暗号資産(仮想通貨)市場に対しても二面性の影響を与えると考えられています。一方で、債務を貨幣化するためのFRBによる介入がインフレ懸念を煽り、ドルへの信頼を損なうことになれば、ビットコインや金といった「代替的な価値の保存手段」へ投資家が流れる可能性があります。

しかし短期的には、利回りの急騰と世界的な流動性の低下が、暗号資産を含むリスク資産の売りを誘発する恐れがあります。特に、世界最大のステーブルコイン発行体であるテザー社は、その準備資産の63%を米国債で保有しており、米国債市場の混乱はステーブルコインの安定性を脅かすリスクを孕んでいます。もし信頼が失われ、裏付け資産を投げ売りせざるを得ない状況に陥れば、深刻な取り付け騒ぎやドルの価値との乖離を招く可能性があります。金融当局による国債の買い戻し操作などは流動性を改善させるための手段の一つですが、根本的な債務問題の解決には至っていません。

長期的には、米国債市場の危機は非政府系の価値保存手段への移行を加速させ、アメリカの債務やドルの覇権に対する信頼が揺らぐ中で、ビットコインを「デジタルゴールド」の代替案として位置づけることになるかもしれません。この記事の専門家は、最終的な結果が暗号資産市場にとってプラスに働くかどうかは、危機が限定的な範囲に留まるのか、あるいは広範なシステム全体の崩壊を引き起こすのかにかかっていると分析しています。ポールソン氏の警告は、世界で最も安全とされる資産が抱える深刻な不確実性を浮き彫りにしています。

どの金貨を買うべきか?

I Care Not Whether My Gold and Silver Are Government Minted Coins [LINK]

【海外記事より】貴金属販売の現場で顧客と接しているクリストファー・ラーセン氏は、米ドルの価値が損なわれた際に「実際に使える通貨」として、どのようなコインを購入すべきかという問いに対し、非常に本質的な視点を提示しています。多くの人々は政府が発行した「法定通貨」としての刻印があるコインを求めますが、著者は政府発行のコインにこだわらず、民間企業が製造する「ラウンド」と呼ばれる円形の地金やバーを選択肢に入れることを勧めています。その理由は、金や銀の価値は刻印された通貨単位にあるのではなく、そこに含まれる貴金属そのものの重さと純度にあるからです。著者は、金銀の製品を大きく三つのカテゴリーに分類して解説しています。

第一のカテゴリーは「地金型金貨・銀貨」です。これらは現代の政府発行コインで、カナダのメイプルリーフやアメリカのイーグルなどが代表例です。これらには「5ドル」や「50ドル」といった法定通貨としての額面が刻印されていますが、その額面はあくまで儀式的なものであり、実際の価値は含まれる金銀の市場価格を大きく下回ります。第二のカテゴリーは「スペシー」と呼ばれる歴史的な貨幣です。1933年以前の米国金貨や1965年以前の銀貨などがこれに当たります。これらはかつて実際に流通していた硬貨で、当時は刻印された額面と貴金属の含有価値が概ね一致していました。現在はアンティークや「ジャンクシルバー」として、その含有量に基づいた価値で取引されています。

そして第三のカテゴリーが、民間の精錬所などが製造する「ラウンド」や「バー」です。これらには「1ドル」といった政府の通貨単位は刻印されておらず、代わりに重量と純度のみが記されています。民間製品は政府発行のものに比べてプレミアムと呼ばれる手数料が低く抑えられており、より効率的に貴金属を保有できるという利点があります。たとえ政府の刻印がなくても、これらは価値のある商品として物々交換や取引に利用することが可能です。ラーセン氏は、ドルのような法定通貨の価値は、発行政府への信頼が続く期間だけの限定的なものに過ぎない一方で、金や銀の価値は永続的なものであると指摘しています。

結論として、著者は自分自身の資産形成において、政府発行のコインであるか民間製造の地金であるかを重視していません。最も重要なのは、通貨の額面という「外見」ではなく、その物体がどれだけの純度の金や銀を含んでいるかという「実体」です。経済が不安定になった際に真に頼りになるのは、政府が保証する数字ではなく、貴金属そのものが持つ普遍的な価値であるという考え方に基づいています。私たちは、コインを単なる「お金」として見るのではなく、特定の重さを持った「貴金属の塊」として捉えるべきだという、実務家らしい冷静な助言で締めくくられています。

経済ゆがめる金融政策

Interest Rate Manipulation: The Fed’s Fatal Feature [LINK]

【海外記事より】アメリカの連邦準備理事会、通称FRBは、2026年の最初の2回の方針決定会合において、政策金利を3.50%から3.75%の範囲で据え置きました。インフレ率が目標を上回り、労働市場が堅調を維持する中で、早期の利下げには慎重な姿勢を示しています。当局は今後の調整が経済データ次第であると強調していますが、この記事の著者であるアントン・チェンバレン氏は、こうした議論の前提にある「中央銀行による金利操作」そのものが抱える構造的な欠陥を指摘しています。一般的な見方では、利下げの判断は慎重さや信認の維持という観点から語られます。しかし、現在の経済が直面している苦境は、金利設定の是非によるものではなく、長年にわたる通貨操作によって経済の構造が歪められてしまった結果であると著者は分析しています。

2008年以降やパンデミック期に行われた人工的な低金利政策は、投資家に対して誤った信号を送りました。本来なら採算が合わないはずのプロジェクトが、安価な融資を背景に利益が出るように見えてしまい、資源が不適切に配分されたのです。インフレの急進を受けて中央銀行が金融引き締めに転じたことで、これらの投資の多くが不採算であったことが露呈しました。中央銀行は金利を経済全体を制御するためのダイヤルのように扱っていますが、実際には政治的な思惑に基づいた操作が行われており、それが持続可能な成長に必要な資源の再配分を妨げています。FRBは物価上昇を抑えるために高金利を維持するとしていますが、この記事は物価上昇を病気そのものではなく、通貨膨張という原因から生じる症状に過ぎないと捉えています。

真の問題は、信用拡大による通貨膨張が、人々の実際の貯蓄と投資判断との結びつきを断ち切ってしまったことにあります。一度この結びつきが壊れてしまうと、金利を高く設定しても低く設定しても、命令によって経済構造を修復することはできません。経済の回復に必要なのは、金利が市場で自然に決定される状態に戻り、資本が最も価値のある生産プロセスへ再配分されることです。景気後退を需要不足と捉えて金融緩和で支えようとすれば、生産性の低い分野に資源が固定されたままになり、実質賃金も回復しません。回復のためには過去の誤りを表面化させ、修正させる必要がありますが、金融政策はそのプロセスを加速させるどころか、むしろ干渉して遅らせてしまうのが現実です。

FRBが利下げの速度に悩んでいるのは、金利政策によって消費者の好みを反映した構造調整が可能であるという、誤った前提に基づいているからだと著者は述べます。介入を繰り返すほど市場は政策シグナルに依存するようになり、市場の現実から遠ざかっていきます。今求められているのは、金利を巧みに操ることではなく、金利操作そのものをやめる謙虚な姿勢です。今年のFRBによる慎重な対応は、根本的な制度上の問題の表れに過ぎません。最大の危惧は利下げのタイミングが早いか遅いかではなく、通貨管理に依存し続けることで必要な調整が無期限に先送りされ、真の経済成長が損なわれ続けることにあるのです。

2026-04-22

主流メディアの物語が崩壊

Hope in the Data: Can Palestine Explain America’s Moral Shift? - Antiwar.com [LINK]

【海外記事より】アメリカ国民の国際社会に対する視線が、かつてない道徳的な転換点を迎えています。長年、中東の人々の目に映るアメリカ人は、自国の地理の外にある現実に関心がなく、メディアが作り上げた単純な善悪の二元論に支配された、政治的に浅薄な存在として描かれてきました。事実、数十年の間、アメリカ国民はイスラエルが「アメリカ的価値観」を反映した民主主義国家であるという教えを疑わず、パレスチナ人を平和の障害と見なす主流メディアの物語を無批判に受け入れてきました。

しかし、近年この「物語の支配」が崩壊しつつあります。ギャラップ社の調査によれば、民主党支持者、特に若年層の間でパレスチナへの共感がイスラエルを上回る傾向が2010年代半ばから現れ始め、2024年から2025年にかけてその差は劇的になりました。さらに今年2月27日の調査では、アメリカの世論調査史上初めて、国民全体でパレスチナに共感する人が41%に達し、イスラエルの36%を逆転するという構造的な断絶が確認されました。

この変化の背景には、ガザにおける悲劇的な状況が、企業のフィルターを通した既存メディアではなく、SNSや独立したジャーナリズムを通じて直接視覚的に伝えられるようになったことがあります。2025年までにアメリカ国民の主流メディアに対する信頼度は31%という歴史的な低水準に落ち込み、若者の間ではさらに深刻です。国民はもはや、エリートたちが用意した筋書き通りに結論を出すことをやめ、権力の不均衡や市民の苦しみを基準にした、独自の道徳的判断を下し始めています。

主流メディアや政治家たちは、この変化を「戦争疲れ」や経済的不安といった文脈に矮小化しようとしていますが、実態はより深い認知的な変化です。パレスチナ問題は、アメリカ国民の意識変革における道徳的な羅針盤となっており、正義や抵抗、そして権力のあり方を再考する象徴となっています。メディアがいまだにアジェンダを設定する力は持っているものの、大規模に「合意を捏造」する能力はもはや失われており、この流れが逆転することはないと考えられています。

中国、東南アで影響力拡大へ

Opinion | Can Iran fiasco help China edge out US in key arena of Southeast Asia? | South China Morning Post [LINK]

【海外記事より】アメリカがイランに対して開始した「大規模戦闘作戦」は、東南アジア諸国連合(ASEAN)におけるアメリカの地政学的な地位を揺るがし、中国がその影響力を拡大させる契機となっています。2月末にアメリカがイランへの攻撃を開始して以来、欧州の同盟国が相次いで距離を置く中で、戦略的に重要な東南アジアでも同様の現象が起きつつあります。ASEAN外相会議が発表した声明では、アメリカとイスラエルによる攻撃とそれに対するイランの報復の双方に「深刻な懸念」を表明しており、一部の同盟国を含め、加盟国がワシントン側に立つ意向がないことを示唆しています。

最新の意識調査によれば、米中二択の選択を迫られた場合、東南アジア全体では僅差で中国を支持する傾向が出ています。特にインドネシアでは80.1%が中国を選択しており、マレーシアやシンガポールでも中国支持が優勢です。ホルムズ海峡の封鎖によりエネルギー供給に大きな打撃を受けた地域諸国は、エネルギー源の多角化を急いでいます。インドネシアはロシアとのエネルギー協力を強化しており、アメリカの対露制裁下にあるにもかかわらず、フィリピンが5年ぶりにロシア産原油を輸入するなど、アメリカによる二次的制裁への恐れが抑止力として機能しなくなっています。

地域の人々にとって最大の懸念事項は、トランプ政権下のアメリカによるリーダーシップであり、ASEANが「大国間の競争の場」や「代理人」にされることへの警戒感が高まっています。一方で、中国は地域で最も影響力のある主体として認識されており、16年連続でASEAN最大の貿易相手国であるという地理的・経済的優位性を背景に、その存在感を強めています。アメリカのイランでの行動が「信頼できるパートナー」としての評判を損ねたことで、中国にとっては政治的な影響力を拡大する好機となっています。

ただし、中国がすぐにアメリカをこの地域から完全に追い出す段階にはありません。調査回答者の約66%が中国の政治的・戦略的な影響力の拡大に懸念を示しており、手放しで歓迎されているわけではないからです。中国が今後さらに地位を高めるためには、アメリカの失敗に乗じるだけでなく、自身のソフトパワーを磨く必要があります。最終的には、イランでの戦争の行方に加え、南シナ海において近隣諸国との対立を回避し、平和的な関係を構築できるかどうかが、この地域における米中の勢力均衡を左右することになりそうです。

砕かれる海洋ガス田の夢

Israel’s Lebanon occupation chokes Beirut’s offshore gas options — RT World News [LINK]

【海外記事より】イスラエルによるレバノン南部への新たな軍事侵攻と占領が、深刻なエネルギー不足に悩むレバノンにとって唯一の希望であった海洋ガス田開発の夢を打ち砕いています。イスラエル国防軍(IDF)は今月、レバノン南部に「前方防衛線エリア」と称する地図を公開しました。これは実質的な占領地であり、イスラエル当局者の一部は国家安全保障のためにこの地域の住民を排除する必要があると述べています。この主張領域は海域にも及び、レバノン領海のうち約9km幅の帯状の区域を切り取る形となっています。

2022年に米国の中介で合意に達したイスラエルとレバノンの海上境界線画定は、係争地に眠る天然ガス資源の開発を目的としたものでした。イスラエルが過去20年間で「レビアタン」や「カリシュ」といったガス田を次々と発見・開発し、経済的利益を享受しているのに対し、レバノンはいまだその恩恵を受けていません。レバノンは2022年の合意でカリシュガス田の一部への主張を断念する代わりに、カナ地区での探査権を得ましたが、これまでのところ期待された成果は上がっていませんでした。しかし今年1月、フランスのトタルエナジーを中心とする企業連合が、海岸からさらに離れた「第8ブロック」での新たな探査計画を発表し、再び期待が高まっていました。

レバノンの当時のエネルギー相は、海洋ガス資源が見つかれば同国の20年分に相当する電力を供給できると述べていましたが、現在の地政学的状況はこの展望を極めて困難にしています。トタルエナジーなどの欧州・カタールの企業連合による探査活動は、イスラエルによる海洋域の事実上の占領によって、実施される可能性が極めて低くなっています。境界線紛争によって詳細な地質データの収集が遅れていた海域において、ようやく本格的な調査が始まろうとした矢先の出来事でした。

レバノンは現在、3月初旬から続くイスラエルによる激しい攻撃によって、100万人以上の避難民が発生するという人道危機に直面しています。世界銀行の推計によれば、紛争開始から1年余りでレバノンが被った直接的な被害額は34億ドル、経済的損失は51億ドルに達しています。米国やイランが発表した停戦案を骨抜きにするかのようなイスラエルによる攻撃の激化は、レバノンから海洋資源という「希望の光」をも奪い去ろうとしています。中東におけるエネルギー貿易の構図が塗り替えられようとする中で、イスラエルはレバノンに資源開発の機会を与えない姿勢を鮮明にしています。

無能が招いた敗北

The Consequences of Incompetence - Real Scott Ritter [LINK]

【海外記事より】元国連査察官で軍事アナリストのスコット・リッター氏は、米国とイスラエルによるイランへの軍事作戦は事実上の「壊滅的な敗北」に終わったと分析しています。約40日間にわたる大規模な空爆が行われましたが、イラン政府の転覆や軍事力の無力化という目的は一切達成されませんでした。それどころか、イラン国民は政権の下に結束し、最新世代のミサイルやドローンによって米軍基地やイスラエルの重要拠点を正確に破壊し、既存の防空システムを完全に打破しました。リッター氏は、この失敗の根本原因を、米政権の「無能さ」にあると厳しく断じています。

トランプ大統領は、イランとの戦争を早期に終結させ、勝利のイメージを国内に印象づけることで秋の中間選挙を有利に進めようと焦っています。現在、共和党が議会の過半数を失えば大統領の弾劾や有罪判決が現実味を帯びるという政治的窮地に立たされており、そのためには「屈辱的な敗北」を「大胆な勝利」に書き換える必要がありました。しかし、イラン側は現実的な地政学的利益に基づいて交渉に臨んでおり、トランプ氏の個人的な政治パフォーマンスに付き合うつもりはありません。米国がイランの濃縮ウランの完全放棄や、勝利の立役者であるミサイル計画の破棄を求めているのに対し、イランがこれに応じる可能性は「地獄で雪玉が生き残る確率」ほどもありません。

特に深刻なのはホルムズ海峡の状況です。米国にはこの戦略的要衝を武力で開放する手段がなく、外交解決を模索せざるを得なくなりました。それにもかかわらず、トランプ氏は交渉の進展を待たずに強硬な姿勢を誇示し、実体のない海上封鎖を続けると宣言したため、イラン側は態度を硬化させ、海峡を再び封鎖して交渉を打ち切る事態を招きました。トランプ氏は自ら作り出した袋小路に追い込まれており、残された唯一の選択肢は、一度失敗した軍事作戦を再開することですが、それはさらなる悲劇への引き金にしかなりません。

もし米国が攻撃を再開すれば、イランはもはや段階的な対応を捨て、最初から「急所」を突く攻撃に出るとリッター氏は警告しています。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの周辺国のエネルギー施設だけでなく、生存に不可欠な海水淡水化プラントや発電所が標的となります。酷暑の夏を前に、水と冷房を失ったドバイやアブダビといった近代都市は居住不能なゴーストタウンと化し、イスラエルもまた近代国家としての存立基盤を破壊されることになります。アインシュタインが述べたように、同じことを繰り返して異なる結果を期待するのは「狂気」でしかありません。無能な指導者による誤った戦略判断の結果を、米国民はリアルタイムで思い知らされることになると、著者は強く示唆しています。

世界経済、見えない危機

Will Donald Trump's Iran War Crash the Global Economy?, by Ron Unz - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】米国の政治評論家ロン・アンズ氏が、トランプ政権によるイランとの紛争が世界経済に及ぼす「見えない危機」について、独自の視点から分析しています。米・イスラエル連合とイランの戦いが続く中で、米国の金融市場が驚くほどの平穏を保ち、史上最高値を更新し続けている現状に対し、アンズ氏は「ハンセン病」という医学的な比喩を用いて警鐘を鳴らしています。ハンセン病が痛覚を破壊し、体が傷ついていることに気づかせないまま病状を悪化させるように、現在の株式市場はインフレや供給網の崩壊という「経済的な痛み」を感じる機能を失っており、それが将来の破滅的な事態を招く可能性があると指摘しています。

トランプ大統領は、株価の好調を背景に「戦争が燃料価格に影響するという懸念はフェイク(偽物)だ」と豪語しています。確かに、ベンチマークとなる原油先物価格は100ドル前後と、戦前の予想を大幅に下回る水準で推移しています。しかし、アンズ氏はここに巧妙な「数字の乖離」があることを暴いています。実際に石油を即時取引する「スポット市場」では、一時1バレル150ドルから200ドルという記録的な高値がついており、先物価格(紙の上の価格)と現物価格(実体経済の価格)がかつてないほど乖離しています。この異常な「安価な先物価格」こそが、投資家を安心させ、トランプ氏に強硬な姿勢を続けさせている「麻酔」の正体であると同氏は分析しています。

ホルムズ海峡の封鎖により、世界の石油供給の約10%が市場から消失しました。これは近代史上最大の供給停止ですが、トランプ政権は戦略備蓄の放出やロシア・イランへの制裁解除という、なりふり構わぬ「その場しのぎ」の対策でショックを緩和してきました。しかし、こうした一時的な供給源は数ヶ月で枯渇し、4月以降はインフレの波が世界を襲うことが不可避です。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、この状況を「過去最悪のエネルギー危機」と呼び、特に新興国経済への深刻な打撃を警告しています。

軍事・外交面でも、事態は混迷を極めています。トランプ氏はパキスタンを介した和平交渉に合意したものの、交渉団にJ.D.バンス副大統領や不動産開発業者のジャレッド・クシュナー氏といった、イスラエル寄りの「交渉の素人」を送り込みました。その結果、イラン側の要求を一切無視して米側の要求を押し付けるだけの交渉となり、わずか24時間で決裂しました。さらに、トランプ氏がSNS上で「イランが降伏し、海峡を完全に開放することに同意した」と一方的に勝利宣言を行った際には、市場は一時熱狂しましたが、直後にイラン側が全面否定し、海峡での発砲を再開するという失態も演じています。

アンズ氏は、トランプ氏がイランに対して核攻撃を含む極端な選択肢を検討している可能性や、中国向けの石油タンカーを公海上で拿捕するという「違法な海賊行為」に手を染めている現状を伝えています。一方で、米国内ではペンタゴン(国防総省)の予算が1.5兆ドルにまで膨れ上がり、民間投資ファンド出身の「ディール・チーム6」と呼ばれる専門家集団が国防予算を牛耳るという、国家の私物化も進行しています。市場が現実を無視して楽観を続ける中で、実体経済は確実に「氷山」に向かって突き進んでおり、この麻酔が切れた瞬間に、世界は1930年代の大恐慌を超える破滅的な経済崩壊に直面することになると、著者は結論づけています。

ハイジャックされる米国

Supremacist Alliance: The Zionist-Hindutva Hijacking of America | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】マット・ウォルフソン氏によるレポートは、アメリカの政治、経済、軍事の核心部分が、ユダヤ・シオニズムとインドのヒンドゥトヴァ(ヒンドゥー至上主義)という二つの強力なイデオロギーによって「ハイジャック」されていると主張しています。著者は、今年行われたイリノイ州の連邦上院議員選挙を例に挙げ、インド系のラジャ・クリシュナムーティ氏のような候補者が、シリコンバレーのテック企業や軍事産業、そして特定の民族的ネットワークから巨額の資金提供を受けている実態を指摘しています。こうした勢力は、アメリカ憲法が定める本来の自由主義とは異なり、技術的な支配や特権階級による統治を重視する「帝国主義的」な性質を持っていると分析されています。

1965年の移民法改正以降、インド系アメリカ人は急速に人口を増やし、現在では500万人を超えています。彼らはアメリカ国内で最も高学歴かつ高所得なグループの一つであり、Google、Microsoft、IBM、FedExといった巨大企業のCEO、さらにはFBI長官や国家情報長官といった政府の重要ポストを占めるようになりました。著者は、これらヒンドゥー系のエリート層と、すでに確固たる地位を築いているユダヤ・シオニストのエリート層が、アメリカの企業、行政、大学の内部で「選民意識」に基づいた強力な連合を形成していると述べています。彼らはワシントン主導の集権的な権力を支持し、草の根の民主主義や各州の自治権を軽視する傾向にあると警鐘を鳴らしています。

さらに、この連合は技術を利用した監視社会の構築を推し進めています。パランティア社のようなテック企業が、不法移民の取り締まりだけでなく、中東政策に反対するイスラム教徒の監視にも関与している例が挙げられています。また、イスラエルとインドは軍事・技術面での提携を深めており、インドはイスラエル製兵器の最大顧客となっています。アメリカ国内でも、AIを用いた「反ユダヤ・反ヒンドゥー感情」のパトロールなど、言論の自由を制限しかねない動きが加速しています。これらの動きは民主党・共和党の両派に浸透しており、カマラ・ハリス氏やJ.D.バンス氏、ヴィヴェック・ラマスワミ氏といった有力政治家たちも、その背後にあるシオニストやヒンドゥトヴァのネットワークと深く結びついていると指摘されています。

著者は結論として、これら二つの勢力がアメリカの政党を「捕獲」した状態は、もはや陰謀論ではなく明白な政治的現実であると述べています。2028年の次期大統領選に向けて、反戦や反帝国主義を掲げる勢力は、こうした特定の民族至上主義的なグループとの決別を明確に要求すべきであると主張しています。憲法に基づいた真の自己決定権を取り戻すためには、背後で糸を引く「至上主義連合」の存在を白日の下にさらし、その影響力を排除する戦略が必要であると締めくくっています。

イラン戦争、激化の公算

Markets Prematurely May Celebrate, But the Next Phase Likely Will be More, Bigger War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】元外交官のアラスター・クルック氏が、イランを巡る情勢が新たな、そしてより激しい紛争の局面に入りつつあると警鐘を鳴らしています。トランプ米大統領はホルムズ海峡が完全に開放され、イランが高濃縮ウランの引き渡しに同意したと主張していますが、クルック氏はこれらを事実無根であると断じています。大統領のこうした発言は、市場を操作して原油価格を下落させるための策略か、あるいは現実認識に支障をきたしている可能性が高いと同氏は指摘しています。実際、イラン側は米国との二国間協議を拒否しており、停戦交渉の裏で米国側はイランに対して「ウラン濃縮の永久放棄」や「備蓄ウランの全量引き渡し」といった、イスラエルの長年の要求をそのまま突きつけているのが実態です。

この対立の背景には、国内で政治的に窮地に立たされているイスラエルのネタニヤフ首相の焦りがあります。政権交代やミサイル計画の阻止といった当初の戦争目的が達成困難となる中で、ネタニヤフ氏は「ウラン」という最後の一枚に賭けており、外交的圧力や軍事行動を通じてイランに譲歩を迫るよう米側に強く働きかけています。一方で、バンス副大統領は水面下でパキスタンを仲介役とした交渉を試みていますが、イスラエルによるレバノンへの激しい攻撃が続いており、平和交渉が地上戦の準備を隠すための隠れ蓑として利用されている懸念も浮上しています。ロシア安全保障会議も、米国が地域への増員を続ける中で、これが大規模な地上作戦の布石であると警告を発しています。

経済面では、ベッセント財務長官が「オペレーション・エコノミック・フューリー(経済的怒り作戦)」を掲げ、イランの最大の顧客である中国を標的にした強力な経済封鎖を狙っています。イラン産原油の取引に関与する金融機関に二次的制裁を課すというこの方針は、単なる関税合戦を超え、中国のエネルギー供給ラインを直接脅かすものです。クルック氏は、こうした圧迫策がイランや中国を屈服させるどころか、かえって事態を悪化させ、経済戦をグローバルな規模へと拡大させるリスクがあると分析しています。

結局のところ、イスラマバードでの交渉が決裂したのは、両者の現実認識に埋めがたい溝があったためです。米国はイランが軍事的に追い詰められているという仮定で交渉に臨みましたが、イラン側はホルムズ海峡や紅海の制海権を握る自国の優位性を確信しており、譲歩する段階にはないと考えています。市場は一時的な楽観論に沸くかもしれませんが、現実は、イランのインフラを標的としたさらなる大規模なミサイル攻撃や、世界経済を巻き込む広範な紛争へと向かう「より大きく激しい戦争」の段階に差し掛かっていると、クルック氏は結論づけています。

中国、金輸入量が年初から増加

Chinese Gold Imports Up to Start the Year [LINK]

【海外記事より】世界最大のゴールド市場である中国で、2026年に入り金(ゴールド)の輸入が急増しています。マイク・マハレイ氏の報告によると、中国税関が発表した最新データで、1月の純輸入量は77トンに達しました。前年同月がわずか6トンであったことと比較すると、その差は歴然としています。この勢いは2月に入るとさらに加速し、輸入量は前年比63トン増の96トンを記録しました。こうした需要の強さは3月も継続しており、卸売需要の指標となる上海黄金交易所(SGE)からの金引き出し量は134トンに上っています。これは前月比で57%、前年同期比で12%の増加となっており、旧正月後の在庫補充という季節的な要因に加え、投資家の根強い関心を裏付ける結果となりました。

現在の中国における金需要は、宝飾品販売の低迷を、投資目的の強い需要が補うという二極化の様相を呈しています。金貨や金地金の販売は昨年から続く上昇傾向を維持しており、2025年に世界的な需要が12年ぶりの高水準を記録した際も、その半分以上が中国とインドによるものでした。特筆すべきは、中国の金上場投資信託、いわゆるETFへの資金流入です。中東情勢の影響で価格が一時的に下落した際、北米のファンドが保有量を減らした一方で、中国のファンドは逆に買い増しを行っていました。中国のETFは7ヶ月連続で保有残高が増加しており、3月だけでも8.4トンの資金流入を記録しています。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の分析によれば、中国の投資家は価格の下落にひるむことなく、むしろ安値を拾う動きを見せました。3月には中国の主要株価指数であるCSI300が6%下落し、現地通貨も対ドルで0.8%減価しました。こうした国内資産への不安に加え、米国やイスラエル、イランが関わる戦争や地域の地政学的緊張が、安全資産としての金への関心を高める要因となっています。これらの結果、第1四半期における中国の金ETFの運用資産残高は、価格上昇と流入増が相まって26%増の3,040億元、日本円で約7兆円規模に達し、保有総量は298トンにまで積み上がっています。

なお、ETFは信託会社が保有する金を裏付けとした金融商品であり、投資家にとっては市場に参加する便利な手段です。しかし、マハレイ氏は、ETFを所有することは、物理的な金を直接手元に保有することとは異なるという点にも注意を促しています。物理的な所有権が直接得られるわけではないものの、中国の投資家たちが現在の不透明な経済情勢や国際情勢のリスクヘッジとして、ETFを通じて積極的に金市場への資金投入を続けていることは間違いありません。こうした中国勢の旺盛な買い意欲は、世界の金価格を支える重要な要因の一つとなっており、今後もその動向が注目されます。

膨張続くバランスシート

Inflation Alert: The Federal Reserve Balance Sheet Is Growing Again [LINK]

【海外記事より】マイク・マハレイ氏が、米連邦準備理事会(FRB)のバランスシートが再び拡大に転じている現状について、その背景とリスクを詳しく解説しています。FRBが昨年12月に量的緩和(QE)の再開を事実上示唆して以来、そのバランスシートは2,000億ドル以上も膨らみました。量的緩和とは、中央銀行が市場から米国債などを買い入れる際、何もないところから資金を創出する行為です。これにより国債に対する人為的な需要が生まれ、金利を本来よりも低く抑えることができます。その結果、連邦政府はより低いコストで借金を重ねることが可能になります。しかし、この手法は本質的にインフレを誘発するものです。金融システムに新たに作り出された資金が注入され、通貨供給量が増大することは、定義そのものがインフレを意味するからです。

FRBが政府の債務を実質的に現金化しているこのプロセスは、債務のマネタイズ(財政ファイナンス)とも呼ばれます。昨年10月の会合でバランスシート縮小の終了が発表された際、マハレイ氏は量的緩和の再開を予見していました。実際、12月の会合では短期国債の買い入れ計画が発表され、当初は数ヶ月後に購入規模を大幅に縮小するとしていましたが、約5ヶ月が経過した現在も、目立った縮小は見られません。FRBのバランスシートは着々と積み上がり、現在は6兆7,000億ドルを超える水準に達しています。当局や主流の専門家たちは「量的緩和」という言葉を避け、「準備金の管理」や「テクニカルな操作」といった表現を使いますが、実態として通貨供給量が増え、資産バブルを助長している点では量的緩和そのものであると筆者は指摘しています。

かつて量的緩和は、2008年の金融危機に際して一時的な緊急措置として導入されました。当時のバーナンキ議長は、危機が去れば速やかに資産を売却し、バランスシートを正常化させると約束していましたが、それはついに実現しませんでした。緩和に依存した経済は、金利が正常化に向かうだけで市場が動揺する「中毒状態」に陥ってしまったからです。パンデミック以前の2019年にもバランスシートが再拡大した例があるように、低金利環境がなければ機能しなくなった経済を支えるため、当局は常に流動性を供給し続けなければならない状況にあります。パンデミックは、こうした脆弱な経済に対して大量の資金を投入する絶好の口実となってしまいました。

現在、FRBは物価上昇を抑えるための高金利政策と、膨大な政府債務を維持するための低金利への要求という、板挟みの状態にあります。物価上昇率が目標の2%を上回っているにもかかわらず、バランスシートを拡大せざるを得ないのは、連邦政府の赤字解消能力を維持しようとする必死の試みです。同時に、財務省もまた、記録的な規模で国債の買い戻しを行い、利回りを抑制しようとしています。これは長期債を買い戻すために短期債を発行するという、支払いを先延ばしにする手法です。現在、政府の利払い費用は年間1兆ドルを超え、社会保障に次ぐ第2の支出項目となっています。こうした綱渡りの政策が続く中で、インフレ再燃のリスクがかつてないほど高まっていると、マハレイ氏は結論づけています。

戦争と量的緩和の結果

Peter Schiff: War and QE Mean Higher Inflation | SchiffGold [LINK]

【海外記事より】経済評論家のピーター・シフ氏が、中東情勢の緊迫化と中央銀行による無謀な金融政策がもたらす影響について、自身のポッドキャストで分析を行っています。2026年4月現在の市場では、ホワイトハウスやイランからの報道を受けて楽観的な動きが見られます。トランプ氏は、ホルムズ海峡が完全に開放され、二度と閉鎖されることはないと主張していますが、シフ氏はこれに懐疑的です。イラン側は、停戦の行方や交渉次第では一時的な再開に過ぎないと示唆しており、トランプ氏が主張する「交渉は既に終わって勝利した」という見解とは温度差があります。イスラエルとレバノンの間でも停戦が報じられていますが、こうした地政学的な動向が市場を刺激する一方で、シフ氏は米連邦準備制度、いわゆるFRBの動向に強い警鐘を鳴らしています。

シフ氏の指摘によれば、FRBは実質金利の低下を容認しており、そのバランスシートは拡大を続けています。直近の1週間だけで約110億ドル増加し、現在は6兆7000億ドルを超えています。年初からの増加額は2000億ドルを上回っており、FRBは事実上の量的緩和を行っていると言えます。マネーサプライは前年比で5%以上増加しており、シフ氏はこれを極めてインフレを誘発しやすい金融政策であると批判しています。戦争が長引けば長引くほど、この政策によるインフレ圧力はさらに強まることになります。こうした状況下で、シフ氏は中央銀行が緩和姿勢を維持する局面では、健全な通貨や実物資産、あるいは海外資産やコモディティへの投資が賢明な回避策になると助言しています。

また、シフ氏は経済の本質的な原則として、民間の営利企業と政府による事業の違いについても言及しています。ビジネスの成功とは、顧客が求める価値を、その価値よりも低いコストで提供することで利益を生むことです。利益が出なければビジネスは失敗しますが、政府が運営する事業にはこの「利益動機」が欠けています。例えば、市営の食料品店を想定した場合、コストを抑える動機がないため、たとえ非営利であっても民間に比べて価格は高くなってしまいます。効率性を追求するインセンティブがない政府による運営は、結果として不必要なコストを増大させるというのが同氏の見解です。

最後に、シフ氏は住宅所有者に課される固定資産税の問題を指摘しています。賃貸に出さず自身で居住する住宅に対し、収入源がない退職者が税を支払い続けることは困難を伴います。住宅ローンを完済し、贅沢をせずに暮らしたいと願う高齢者であっても、他からの収入がなければ、納税のために家を追われることになりかねません。シフ氏は、所得を生まない財産に対する課税は所得税ではなく、実質的には財産の没収であると述べています。自分の所有する家に住む権利がある以上、税金が払えないという理由だけで政府が国民を追い出す権利はないはずだと、現行の課税制度が個人の所有権を侵害している現状を批判しています。

2026-04-21

拡大政策が招く不安定

Israel's Expansion Means An Unraveling of Middle East Stability | The Libertarian Institute [LINK]

【海外記事より】記事によれば、イスラエルとイランの間で最近交わされた停戦合意は、直接的な軍事衝突の一時的な休止にすぎず、中東の安定という根本的な課題は解決していません。この記事の著者は、イスラエルの戦略がこれまでの「封じ込め」から、より能動的な「地域再編」へと大きく転換したと指摘しています。現在のイスラエルは、国際法を遵守する通常の民主国家というよりも、野心的な拡大主義国家としての側面を強めています。

特に注目すべきは、「大イスラエル」計画という拡大志向の構想が、かつての非主流派の思想から、現在の政権中枢を担う方針へと格上げされた点です。この構想には、1967年以降の占領地を支配する限定的な解釈から、聖書の記述に基づきエジプトの川からユーフラテス川まで、つまりヨルダン、シリア、レバノンの一部を含む広大な地域を領土とする最大主義的な解釈まで存在します。スモトリッチ財務相やベン・グビール氏といった閣僚は、公然とレバノンやシリアへの領土拡大を口にしており、聖書に記された境界線こそが真の国境であるという主張が、今や世俗派の野党指導者ヤイル・ラピド氏の間でも共有されるほど、イスラエル社会全体が右傾化していると報じられています。

レバノンとの紛争も、このドクトリンの変化を加速させました。イスラエル政府高官は、国境から約30キロ北のリタニ川までの地域を恒久的に占領・併合することを明確に要求し始めています。カッツ国防相は、リタニ川以南の安全が確保されるまで、避難したレバノン住民の帰還を認めず、同地域を軍事的に管理し続ける姿勢を示しました。こうした動きを背景に、南レバノンへのユダヤ人入植を推進する「ウリ・ツァフォン」という運動が台頭し、政府や公衆の広範な支持を集めつつあります。彼らはこの地域を「北ガリラヤ」と呼び、レバノンとの国境を植民地時代の遺物にすぎないと否定しています。

さらにイスラエルは、周辺のアラブ諸国を分断し、軍事能力を解体することで自国の安全を図ろうとする「イノン計画」の系譜を継ぐ戦略を再燃させています。かつての友好国であったトルコとの関係は、カッツ外相がエルドアン大統領をサダム・フセインになぞらえるなど、極めて険悪なものとなりました。ネタニヤフ首相は、インドやギリシャなどと結託して、イランを中心とする「過激な枢軸」や、トルコを念頭に置いた新たな勢力に対抗しようとしています。こうした拡大路線は国際社会との間に深い溝を生んでおり、イギリスによる制裁や貿易交渉の停止を招いています。2026年初頭の軍事衝突とホルムズ海峡の封鎖がもたらした世界的な燃料危機や経済的損失は計り知れず、中東の地図が力によって書き換えられようとしている今、世界はその巨大な代償を支払わされていると記事は締めくくっています。

欧州、対露外交の代償

Impunity? Europe as the 'Strategic Rear' for Ukraine - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】ロシアのラブロフ外相は、ロシア側の我慢にも限界があること、そして彼らが引く「レッドライン」がどこにあるのかを誰にも分からせていない現状は、非常に好ましいことだと述べています。この記事によれば、西欧諸国には長年、自国への報復が及ぶことはないという「戦略的な錯覚」が根付いてきました。これは単なる抑止力への信頼ではなく、どんなに他国へ攻撃を輸出しても、欧州の地は安全なままであり、戦争は過去の抽象的な概念にすぎないという、根拠のない無敵感に近い信念です。こうした認識は、アメリカの圧倒的な軍事力という傘に守られてきた歴史的な背景や、西洋人特有の特権意識によって形作られてきました。

これまでロンドンやパリが、他国への介入に対する直接的な報復を受けることはありませんでした。ウクライナへの膨大な軍事支援に対しても、ロシアの反応が限定的であったことが、欧州の「免罪符」への確信を強めてきました。しかし、この記事はその計算が根本から覆されつつあると警告しています。第一の変化は、ロシアの姿勢の硬化です。メドベージェフ安全保障会議副議長は、ウクライナ向けのドローンを製造する欧州の企業は、ロシア軍の正当な攻撃対象になると明言しました。ロシア国防省はすでに、イギリス、ドイツ、ポーランド、スペインなどにある関連施設の名前と住所を公表しており、これは「戦略的後方」という概念が、すでに攻撃目標の座標に変わっていることを示唆しています。

第二の変化は、イランによる報復モデルの出現です。イランがアメリカやイスラエルの攻撃に対し、その発信源となった周辺国の基地を大規模なミサイル攻撃で叩き、アメリカ軍を撤退させた事実は、ロシアにとって強力な先例となりました。ロシアの戦略家たちは、兵器製造拠点は中立地ではなく、敵の戦争マシンの一部であるという論理を強めています。かつての「不可侵」という前提条件は崩れ去り、ロシアが工場の住所を公開したのは、欧州の市民に対し、自国政府の政策がもたらす直接的なコストを直視させる心理作戦でもあります。

欧州の政治エリートやメディアは、これまでリスクのない強硬な支援政策を推進してきました。しかし、イランの事例に触発されたロシアの新しいドクトリンは、報復がもはや理論上の話ではないことを示しています。ドイツの工業団地やイギリスの研究施設が軍事目標になるリスクを冒してまで、現在のウクライナ支援を継続すべきかという問いが突きつけられています。これまで抑制を訴えてきたプーチン大統領の忍耐がいつまで続くのか、そして2030年頃を見据えて軍備を整えている欧州諸国が、現在進行形の2026年の危機をどれほど認識しているのかは不透明です。代償のない外交政策の時代は、終わりを迎えようとしています。

大親友の3人

Best Buds: Milei, Netanyahu, and Trump - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アダム・ディック氏が執筆した記事によれば、2023年11月にハビエル・ミレイ氏がアルゼンチン大統領に当選した際、同氏はアメリカ政府、ならびにウクライナとイスラエルの戦争を熱狂的に支持する姿勢を鮮明にしていました。ディック氏は当時から、ミレイ氏がイスラエルという国家に惜しみない賛辞を送り、アメリカの政治指導者たちと同様に、イスラエルによる新たな戦争を一貫して支持していることを指摘していました。こうしたミレイ氏の大統領就任当初からのイスラエル政府およびアメリカが支援する戦争に対する献身的な姿勢は、その後も現在に至るまで継続されています。

今週の日曜日、ミレイ氏は大統領就任後で3回目となるイスラエル訪問の際、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と面会しました。その時の映像には、お気に入りの歌手に会った熱狂的なファンのような興奮を見せるミレイ氏の姿が映し出されています。ミレイ氏はネタニヤフ首相に対し、「最愛の友人」や「親友」といった言葉を重ねて、親密さを強調しながら挨拶を交わしました。

こうした国家首脳同士の親密な関係は、アメリカも交えた形にまで広がっています。アルゼンチンとイスラエルの関係強化を目的としたイベントにおいて、駐イスラエル・アメリカ大使のマイク・ハッカビー氏は、ミレイ氏とネタニヤフ首相の傍らに立ち、トランプ大統領にとっての最大の友人である二人の指導者と共にいられることは格別な光栄であると述べました。ハッカビー大使は、トランプ大統領が地球上のどの世界の指導者よりも尊敬し、個人的な関係を築いているのはミレイ大統領とネタニヤフ首相の二人であると断言しました。そして、アメリカ大統領の代表として、これら二人の素晴らしい友人と同盟国に対して、アメリカからの挨拶を伝えることができて光栄であると強調しました。

この記事によれば、これら三人の指導者が共有する最優先事項の一つがイランに対する戦いです。ミレイ氏は今回のイスラエル訪問中に、アルゼンチン政府がテロリズムおよびイラン政権との戦いにおいて、アメリカとイスラエルを断固として支持することを改めて表明しました。アダム・ディック氏は、かつてロン・ポール下院議員の立法補佐官を10年間務め、弁護士や選挙管理委員などの経歴を持つ人物ですが、今回の記事を通じて、ミレイ氏、ネタニヤフ首相、トランプ大統領という三者の非常に密接な連携と、共通の敵対勢力に対する強硬な姿勢が現在の国際政治において一つの大きな枠組みを形作っていることを淡々と描き出しています。

アメリカ、不自由の国

America: Land of the (Not Really) Free - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

【海外記事より】アメリカのロン・ポール氏が執筆した記事によれば、先週、ドナルド・トランプ大統領は所得税の支払い期限に合わせ、ホワイトハウスにマクドナルドの食事をデリバリーで注文しました。これは、2025年に成立した通称「BBB(一つの大きな美しい法案)」と呼ばれる大規模な法案により、チップへの課税が廃止されてから1年が経過したことを祝うためのパフォーマンスでした。かつて議会で最初にチップ非課税法案を提出したポール氏は、この変更に加え、残業代への課税廃止や2017年の減税措置の延長が法案に盛り込まれたことを肯定的に捉えています。しかし一方で、この法案が連邦政府の支出と債務を増大させた点については、懸念を表明しています。ポール氏は、所得税という制度そのものが、個人の権利は政府からの贈り物であり、統治者の意志でいつでも取り消すことができるという考えを暗に認めるものだと指摘しています。所得税の導入は、人間には創造主から与えられた譲ることのできない権利があるという信念を捨て去ったことを意味すると、彼は主張しています。

自然権を信じる立場からは所得税は受け入れられず、同様に中央銀行が通貨価値を下げ、人々の購買力を奪う「隠れたインフレ税」も、国民の権利の侵害であると記事は述べています。現在の所得税制度が個人の権利を否定している象徴的な例として、ポール氏は源泉徴収制度を挙げています。これは政府が個人の稼ぎに対して優先的な請求権を持つ仕組みであり、政府はその中から一部を「還付金」として返却します。しかし、本来の還付とは顧客が商品やサービスに不満を感じた際に企業が支払いを戻すものであり、盗んだ金の一部を返すような行為とは異なると、彼は批判的な見解を示しています。源泉徴収は第二次世界大戦中の「一時的」な措置として導入されましたが、数十年が経過した今も存続しています。著名な経済学者ミルトン・フリードマンも若き日にこの制度の開発に関わりましたが、後に彼は自由市場の支持者となり、徴兵制の廃止を訴えることで、過去の自身の過ちを償おうとしたと紹介されています。

ポール氏にとって、政府が建国の理念を否定している最悪の例は徴兵制です。徴兵制は政府に対し、若者を軍隊に強制加入させ、戦争で人を殺害させる、あるいは自らが殺されることを強いる権限を与えます。一部の進歩主義者が主張するような、軍務か他の奉仕活動かを選択できるという形であっても、強制的な奉仕であることに変わりはなく、正当化はされないと説いています。現在、アメリカに徴兵制はありませんが、選抜徴兵制度への登録を通じてその基盤は維持されています。今年の国防権限法には、18歳から25歳のすべての男性を自動的に登録できる規定が含まれており、これにより政府はこれまで以上に容易に徴兵制を復活させることが可能になりました。所得税や徴兵制、その他の強制的な奉仕活動は、自由な社会とは相容れないものであり、自由と平和を重んじるすべての人が反対すべきだとポール氏は結んでいます。かつてロナルド・レーガンが述べたように、徴兵制は「子供は国家に属する」という前提に立っていますが、その考えはかつてのナチスと同じものであると、記事は警鐘を鳴らしています。

金相場、和平でも追い風続く

The $41.8 Trillion Golden Question - Energy & Capital [LINK]

【海外記事より】金価格は現在、地政学的な混乱と通貨への不安が交錯する中で、歴史的な転換点を迎えています。1980年にソ連のアフガニスタン侵攻やイラン革命を背景に記録した当時の最高値、850ドルという水準は、28年もの間破られることはありませんでした。そして今、私たちは再び「地政学的な混沌」と「金融パニック」が相まみえる、金にとっての「完璧な嵐」の中にいます。

金価格は今年1月に1オンスあたり5,595ドルの最高値を記録した後、現在は4,900ドルを下回る水準で推移しており、約15%の調整局面を経験しています。この背景には、アメリカとイランの間で繰り返される停戦合意と交渉決裂、そしてトランプ政権による海上封鎖といった、目まぐるしく変わるニュースに翻弄される市場の姿があります。現在、ホルムズ海峡では「10日間の航行延長」が合意されていますが、これは真の平和というよりも、一時的な演出に過ぎないとの見方も強く、多くのトレーダーは「平和が続けば金の上昇は止まるのか」という問いに向き合っています。

しかし、JPモルガンなどの大手金融機関は、今回の調整を「下落トレンドへの転換」ではなく「一時的な地固め」と捉えています。その最大の理由は、構造的な需要の柱である中央銀行の動向にあります。中国人民銀行は今年3月に5トンの金を追加し、17ヶ月連続で購入を続けています。ポーランドもまた、準備資産に占める金の割合を高めるために大規模な買い入れを継続しています。特筆すべきは、こうした公的機関は価格の短期的な変動で狼狽売りをせず、むしろ調整局面を絶好の買い場と見なしている点です。

さらに、世界的な「脱ドル化」の動きが加速しています。今年第1四半期時点で、世界の中央銀行の準備資産において、金は米国債と並びそれぞれ約25%を占めるまでになりました。これは1990年代半ば以来の事態であり、ドル覇権の揺らぎを象徴しています。2022年のロシア資産凍結以降、多くの国々が他国によって無効化されない「制裁に強い資産」として、現物で保有可能な金を求めているのです。

今後、金価格が6,000ドルの大台に乗るかどうかは、単に戦争が続くかどうかという点だけにかかっているわけではありません。たとえ平和が実現したとしても、中央銀行による年間750トンから850トン規模の戦略的購入、そして莫大な財政赤字や債務問題という構造的な追い風は消えません。現在の調整局面は、初期の上昇に乗り遅れた投資家にとっての新たな入り口に過ぎないのかもしれません。金は再び足場を固め、6,000ドルへの道を歩み始めています。

米国株、危うい上昇

Bull Trap Snaps Shut? | The Rude Awakening [LINK]

【海外記事より】現在の株式市場では、投資家の心理と実際の資金動向が大きく乖離する、極めて矛盾した状況が生じています。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の4月の調査によれば、ファンドマネジャーたちの警戒感は2025年6月以来の最高水準に達していますが、その一方で彼らは記録的な規模となる1722億ドルの現金を市場に投入しました。口では「怖い」と言いながら、実際には強気な姿勢を崩していないこの状況は、典型的な「ブルトラップ(強気の罠)」の様相を呈しています。

ブルトラップとは、下落局面にある相場が一時的に反発し、重要な抵抗線を突破した後に急反転して下落トレンドに戻る現象を指します。最近のナスダックは13営業日連続で上昇し、2009年以来最長の上昇を記録しました。S&P500もわずか11日間で「売られすぎ」から「買われすぎ」の状態へと急激にシフトしています。これは空売りの買い戻し(ショートスクイーズ)や、トレンド追随型のファンドによる強制的な買いが引き起こしたもので、実需に基づかない危うい反発と言わざるを得ません。

資金の流出入を詳しく見ると、世界中の投資家が新興国や日本、中国、欧州、さらには米国のハイテク株からさえも資金を引き揚げ、米国の一般株へと一斉に群がっている実態が浮かび上がります。また、ヘッジファンドのレバレッジは過去5年間で上位2%に達するほど極限まで高まっており、市場はいつ破裂してもおかしくないほど緊密に巻き上げられています。先週末には、イランの外相が「ホルムズ海峡は開かれている」と発言したとの報道を受けて原油価格が急落し、株価が急騰する場面がありましたが、こうした不確実なヘッドラインに左右される展開こそが、ブルトラップ特有の脆さを物語っています。

今後の焦点は、インフレが本当にピークを打ったのかという点に集約されます。もし第2四半期に原油価格が反発し、消費者物価指数(CPI)が上昇を続ければ、2022年から2023年にかけての悪夢のような相場展開が再来する恐れがあります。BofAのアナリスト、マイケル・ハートネット氏は、リスクヘッジとして商品(コモディティ)や中国株への注目を促していますが、多くの投資家が盲目的に飛びついた現在の米国株ラリーは、誰も予期せぬ罠となる可能性を秘めています。13日連続の上昇や極端なレバレッジなど、市場に点灯している数々の警告灯を無視すべきではありません。

停戦実現でも深い傷跡

Peace Won’t Fix This: The Closure of the Strait of Hormuz Has Already Done Its Damage – GAINS, PAINS & CAPITAL [LINK]

【海外記事より】ホルムズ海峡を巡る混乱は、たとえ停戦が実現したとしても、世界経済に拭い去れない深い爪痕を残しています。世界の石油と液化天然ガス(LNG)の20%が通過するこの要衝では、物理的な封鎖こそないものの、イランによる攻撃リスクを懸念した保険会社が引き受けを拒否し、運送会社が航行を断念したことで、3月上旬から通航量が激減しました。この事態によるエネルギー供給へのダメージは、平和が戻ればすぐに解消されるという単純なものではありません。

専門機関の分析によれば、仮に4月末までに海峡が完全に正常化し、通航量が100%回復したとしても、これまでの閉鎖に関連した石油の生産損失は累計で約11億2000万バレルに達すると試算されています。中東の産油国は、出荷不能に伴い生産を縮小させており、4月だけで約3億3000万バレルが市場から失われた計算になります。さらに、陸上の貯蔵施設が満杯になっているため、生産をフル稼働に戻すにはまずこれらを空にする必要があり、消費地に石油が届くまでには航行と荷揚げを含めて30日から45日の空白期間が生じます。

こうした供給不足を補うため、世界各国は4月に7500万バレルもの戦略備蓄を放出する見通しですが、供給網の目詰まりを完全に解消するには至っていません。また、イランが海峡を通過する船舶に対して「通行料」を課す可能性も浮上しており、これが実現すれば新たなコスト増要因となります。これらの複雑な要因が絡み合い、たとえ停戦が維持されたとしても、中期的には原油価格の高止まりが避けられない情勢です。

米国経済に目を向けると、このエネルギー危機が起きる前から、インフレの圧力は着実に強まっていました。米連邦準備理事会(FRB)が重視する個人消費支出(PCE)価格指数の構成項目のうち、3%を超える上昇を示している品目の割合は、昨年の45%から現在は54%へと拡大しており、インフレが広範囲に波及していることを示しています。今回の原油高はこの傾向に拍車をかけることになり、株式市場が堅調であっても、実体経済は深刻なインフレの嵐にさらされ続けることになります。投資家は、もはや「平和による解決」という楽観論に頼るのではなく、長期化する物価上昇という新たな現実に備えるべき段階に来ています。

海峡封鎖、世界経済を破壊

The Blockade Stage of Trump’s Absurdities, by Michael Hudson - The Unz Review [LINK]

【海外記事より】トランプ政権によるペルシャ湾およびオマーン湾の封鎖宣言は、イランとの対立をかつてないほど不条理な段階へと押し進めています。米当局はこの措置を、イランによるホルムズ海峡の支配への対抗策としていますが、軍事資産が数千キロも離れた場所にある米国に、実効性のある封鎖が可能かどうかは極めて疑わしいのが現状です。実際、イラン関連の船舶が海峡を通過しているとの報告もあり、米国の威信は揺らいでいます。この封鎖の試みは、単にイランを標的にするだけでなく、エネルギー供給の寸断を通じて世界経済全体を「経済的な核の冬」とも呼べる深刻な不況に陥れる危険性を孕んでいます。

経済学者のマイケル・ハドソン教授は、現在の状況を「第4の通貨価値低落サイクル」における重大な局面と指摘しています。米国によるドルの武器化や制裁の乱用は、世界各国にドルの保有がリスクであると認識させ、金や他国通貨への移行を加速させています。特にヘリウムや肥料の原料となる硫酸など、ハイテク産業や農業に不可欠な資源の供給が滞ることで、物価の高騰だけでなく、実体経済の生産能力そのものが破壊される「傷跡」が残ることが懸念されます。ハドソン氏は、米連邦準備理事会がインフレ対策として利上げを行う従来の手法は、エネルギー価格などの供給側の問題には無力であり、むしろさらなる不況を招く「ジャンク経済学」であると批判しています。

さらに、この紛争の本質は核開発問題ではなく、イランの石油資源の支配にあるとの見方が示されています。トランプ氏は米国がエネルギーの純輸出国であることを強調し、混乱の中でも自国は優位に立てると主張していますが、これは債務超過に陥っている米国内の一般市民や、同盟国である欧州、日本、韓国に多大な犠牲を強いるものです。イラン側は、自国の石油施設が攻撃されれば、サウジアラビアなど周辺諸国の輸出施設を破壊し、世界全体を道連れにする構えを見せています。このような極限状態において、これまで米国に依存してきた各国は、自国の安全と繁栄を守るために、米国中心の秩序から離脱し、中国やロシアを含む新たな多極的枠組みへの移行を真剣に検討せざるを得ない状況に追い込まれています。

歴史的に米国の「忠実な僕」と見なされてきた英国でさえ、イランへの攻撃に加わらない意向を示すなど、NATO(北大西洋条約機構)の結束にも亀裂が生じています。米国がもはや世界の安全や繁栄の守護者ではなく、むしろ最大の脅威になりつつあるという認識が世界中に広まっています。日本や韓国といった同盟国も、米国の軍事基地を維持し続けることが、イランからの石油供給停止という致命的な報復を招くリスクとなっている現実に直面しています。このように、トランプ政権が引き起こした不条理な封鎖劇は、米国が世界経済の中心的地位から周辺的な存在へと転落していく、歴史的な転換点となる可能性を強く示唆しています。

銀価格押し上げる供給不足

Silver Price Surged Last Year Despite Modest Drop in Demand [LINK]

【海外記事より】2025年の銀市場は、需要が2%減少したにもかかわらず、価格が年初の28.84ドルから一時100ドルを超えるという、147%もの劇的な上昇を記録しました。この現象は、物理的な銀の供給不足がいかに深刻であるかを浮き彫りにしています。調査機関のメタルズ・フォーカスがまとめたデータによると、昨年の銀需要は11億3000万オンスでした。産業用の需要が3%減少した一方で、投資需要の伸びがその落ち込みを補う形となりました。産業面では、人工知能(AI)インフラや自動車向け、電力網への投資による構造的な成長が需要を支えましたが、銀価格の高騰によって太陽光パネル製造における銀の使用量を抑える動きや代替品の活用が進んだことが響きました。

宝飾品についても、価格上昇が足かせとなり、世界全体の需要は8%減少しました。特にインドでは販売が20%も落ち込みましたが、中国では金からの乗り換え需要により5%増加するという対照的な結果となっています。また、銀食器の需要は24%減少し、過去4年間で最低の水準となりました。こうした価格高騰による実需の減少を下支えしたのが、14%の急増を見せた銀貨や地金への投資需要です。地域別で見ると、インドが33%増と牽引し、欧州や中東、中国でも大幅な伸びを記録しました。唯一の例外は米国で、トランプ大統領の当選によって安全資産としての買いが抑制されたことや、価格上昇局面での利益確定売りが出たことで、3年連続の減少となりました。

供給面では、鉱山生産量が3%増加し、リサイクルも12年ぶりの高水準となりましたが、それでも需要を満たすには至りませんでした。その結果、供給不足は5年連続となり、昨年は需要が供給を4020万オンス上回りました。この5年間の累積不足量は7億1600万オンスに達しており、これは昨年の年間総生産量に迫る規模です。メタルズ・フォーカスは、今年も4630万オンスの供給不足が続くと予測しています。需要が供給を上回り続ける状況では、市場参加者は地上にある在庫を取り崩すしかなく、保有者に売却を促すためにはさらなる価格上昇が必要になります。こうした物理的な不足が、昨年の価格急騰を招いた要因と言えます。2026年も、産業用や宝飾用の需要減を投資需要が補うという、昨年と同様の市場動向が続くと見られています。

金、来年8000ドルも

Wells Fargo: Debasement Trade Could Drive Gold to $8,000 [LINK]

【海外記事より】米国の金融大手ウェルズ・ファーゴのアナリストが、金価格が来年までに1オンスあたり8000ドルという極めて高い水準に達する可能性があるとの強気な予測を示しました。同社のチーフ・エクイティ・ストラテジストであるオーソン・クォン氏によれば、この背景には「ディベースメント取引」と呼ばれる動きがあります。これは、投資の世界でドルなどの法定通貨が価値を減じる中で、中央銀行や諸機関がそれらを売却し、より中立的な安全資産である金へと資金を移す動きを指します。いわゆる「脱ドル化」を象徴する言葉であり、金は相手方の信用リスクに左右されない真の通貨として再評価されています。

クォン氏は、2022年から始まった現在の状況を「第4の通貨価値低落サイクル」と位置づけています。同氏のモデルによれば、現在の金価格の適正値は4500ドルに近いとされていますが、今後さらに通貨の価値が下がる要因が揃っているといいます。実際、世界の中央銀行による金の購入量は2022年に急増し、それ以降も高い水準を維持しています。もともと米国政府の財政規律の欠如による将来への不安はありましたが、それに追い打ちをかけたのがロシアに対する経済制裁でした。米国とその同盟国がロシアをドル主体の金融システムから排除し、資産を凍結したことで、ドルが外交の武器として利用されることへの警戒感が世界中で強まりました。

制裁のリスクを回避したい、あるいは世界的な金融危機から自国を守りたいと考える中央銀行は、記録的なペースで金を積み増しています。その結果、金は準備資産としてユーロを抜き、今や米国債を上回るシェアを占めるまでになりました。過去の通貨価値低落サイクルを分析すると、平均して8.5年ほど継続しており、2022年に始まった現在のサイクルはまだ半分にも達していない計算になります。過去のサイクルは大恐慌やニクソン・ショック、リーマン・ショックといった大きな経済危機と重なってきましたが、今回は明確な危機が見当たらない点が特徴的です。

しかし、パンデミック時に連邦準備理事会(FRB)が5兆ドル近い資金を供給したことが、通貨価値の低下を決定づけた可能性があります。急激に価値が目減りし、政治的な武器にもなり得る通貨を保有し続ける動機は薄れています。世界はドルの役割が縮小する多極的なシステムへと移行しつつあり、これは借金と通貨増刷に依存する米国経済にとって厳しい状況を意味します。ウェルズ・ファーゴは、想定される5つの経済シナリオのうち4つで金の強気相場が続くと見ており、2026年の標準的な予測価格を6000ドルから6300ドルの範囲に設定しています。最も弱気なシナリオであっても、2027年には4000ドルまでしか下がらないと予測されています。