2019-10-30

生態系と経済

生態系と経済
経済は生態系より複雑だ。人間は砂糖に引き寄せられる蟻と違ひ、行動の価値基準が頻繁に変はるうへ、行動を自分の意志で制御するから。環境保護論者は、生態系は複雑で開発の影響を予見できないとして開発に反対しながら、複雑な経済に対する政府の介入は支持し強化を求める。
The Difference Between Ecology and Economics | Mises Wire

同意なき政府
政府のサービスを使ふからといつて、あらゆる課税や規制に暗黙の同意をしたことにはならない。公道を運転しても警察が薬物捜査のため自宅に突然押し入ることに同意したわけではないし、公営図書館を使つても情報機関や軍隊が世界中で内政干渉することに同意したわけではない。
Why the State Can't Claim Our "Implied Consent" | Mises Wire

政府も不合理
行動経済学が言ふやうに、人間は合理的でないとしてみよう。さうすると、政府の政策をつくる人たちも合理的ではないはずだ。彼らは天使ではなく、同じ人間である。だとすれば、事業への過度に楽観的な予想など「認知のゆがみ」は、官僚や議員にもあてはまらなければならない。
If People Can't Be Trusted with Market Freedom, They Also Can't Be Trusted with the Vote | Mises Wire

市場法則に例外なし
価格が高くなるほど需要が増すヴェブレン財は、市場経済の法則と矛盾しない。高級品はありふれた製品より需要を集めうる。iPhoneが人気なのは技術的理由よりも高級感からだ。もしアップルがiPhone 11 を5万円に値下げしたら、高級感が薄れ、たちまち市場シェアを失ふだらう。
Why Austrian School Economists Have a Better Understanding of Goods and Services | Mises Wire

2019-10-28

白井聡・進藤榮一『「日米基軸」幻想』


「(NYタイムズなど)いまのアメリカの主流派メディアがエスタブリッシュメントの一部を構成」(進藤)、「リベラルとコンサバは、ラディカルズを排除することにおいて……同じ穴の狢」「民主党と共和党に本質的な差異がないということと同じ」(白井)など、有益な発言多数。

2019-10-26

猿田佐世『自発的対米従属』


日本の政策形成に大きな影響力を持つ米シンクタンク、CSISやブルッキングス研究所。ところがその資金提供者には日本の政府や大企業。日本の支配層が自分たちの望む政策を実現するために、米国発で外圧をかけさせ、大手メディアが「米国の声」として報じるヤラセの構図を暴く。

経済成長はインフレを起こさない

経済成長はインフレを起こさない
経済成長とは、人々の生命と幸福を支へるのに必要な商品の生産が増えることをいふ。商品の価格とは商品一つあたりに払ふお金の量だから、お金の総量が一定なら、経済成長(商品量の増加)によつて起こるのは物価全般の下落(デフレ)であり、上昇(インフレ)ではないはずだ。
Economic Growth Does Not Cause Price Inflation | Mises Wire

マクドナルドは環境にやさしい
マクドナルドは最も環境にやさしいレストランの一つだ。牛肉の炭素放出は多いが鶏肉はずつと少なく、肉を使はないメニューもたくさん。ハンバーガーのやうな利ざやの薄い商品を世界中で売つて利益を出すには、食材、包装、エネルギーなどの無駄を最小限にしなければならない。
Why Extinction Rebellion should eat at McDonald's - CapX

資本主義は人類を救ふ
資本主義はこれまで現実に人類を繁栄させ、生活水準の向上に寄与してきた。私有財産と市場価格は理論的にも、希少な資源を最も効率よく活用するのに役立つ。かりに破滅シナリオが現実となり資源が著しく欠乏しても、資本主義は数学や科学と同様、重要な自衛手段であり続ける。
No, Capitalism Doesn’t Threaten Humanity | Mises Wire

ビジネスチャンスの発見
最近買つた製品に不満だつたら、満足させる方法を考へよう。サービスが期待外れだつたら、新サービスのチャンスを突き止めよう。消費者の期待と現実のギャップを発見し、満たすのだ。市場に注意を払へば、アマゾンやネットフリックスのやうなビジネスチャンスは目の前にある。
How Entrepreneurs Discover Market Opportunities Through Dissatisfaction | Mises Wire

2019-10-23

青木美希『地図から消される街』

 
入念な取材で明らかにされる手抜き除染。原発のがれき撤去でコメが汚染された可能性があるのに、住民には知らされず。廃炉の見通しも不透明。それでも政府が安全を唱えるのは、核武装には原発が必要だから。ところが原発の集中立地で守りに弱い日本。政府の無計画さが露わに。

2019-10-22

資本主義と信頼

資本主義と信頼
資本主義は人間の最も協力的な営みの一つだ。商品を取引するのは遠く離れた見知らぬ者同士で、それを導くのは価格機構と評判だ。取引参加者が売買を繰り返すうちに、信頼が育まれる。資本主義のこの道徳的な副産物は、あまり話題にされないし、まして称賛など聞くことはない。
Trust me, I'm a capitalist - CapX

進化に逆らふ繁栄
人間は進化によつて、小規模な集団の一員であるやうデザインされてゐる。近代の繁栄は進化の結果ではなく、進化に逆らつて実現された。法の下の平等。遠い国の他人同士を仕事仲間に変へるグローバル経済。人種や性別を問はない能力主義。これらは新しく、とてももろいものだ。
Explaining our miraculous flourishing - CapX

南米の明暗
ベネズエラはかつて南米では比較的自由な市場経済の国だつた。1950年代初め、1人あたりGDPは世界上位で、米国より大きく、82年まで南米一豊かだつた。一方、チリは70年代半ばに軍事政権が社会主義を放棄後、経済が発展。2016年時点で、世界で15番目に自由な経済の国となつた。
Capitalism vs socialism: lessons from Chile and Venezuela - CapX

「国民の声」の嘘
政治家や評論家が「国民の声」と言ふとき、単に一部地域の人を指してゐるにすぎない。他の地域の人はまつたく違ふ考へかもしれない。大きな国では、国民全員の意見が一致するのは難しい。この問題を改善する手段は地方分権だ。ところが右派も左派も望むのはいつも「国策」だ。
Taking a Stand for "the People" Usually Means Hurting Actual People | Mises Wire

2019-10-19

半田滋『「北朝鮮の脅威」のカラクリ』


北朝鮮のミサイル発射と核実験の狙いは、米国から先制攻撃され指導者が殺害されたリビアやイラクの二の舞にならない抑止力の保有。日本を標的としているかのように危機を強調する安倍政権の姿勢を批判。核管理とミサイル発射停止の見返りに米朝の平和協定をまず結ぶよう説く。

2019-10-18

最低賃金と歪んだ情報

最低賃金と歪んだ情報
最低賃金がなければ、求職者は賃金の市場価格で仕事にありつくことができる。しかし最低賃金は求職者の実力からかけ離れてをり、たいていその水準では雇つてもらへない。最低賃金は非熟練労働者の実力が現実より高いかのやうに嘘を伝へ、職に就ける賃金水準の情報を失はせる。
Markets Rely on Accurate and Honest Information — But Governments Want the Opposite | Mises Wire

被災者支援は政府の仕事か
そのやうな支出(水害に遭つた農家への補助金)を行ふ理由は憲法にないし、政府としてやるべきでもない。被災者は同胞の友情と慈善にいつでも頼れる。補助金は中央政府への依存心を強め、国民のたくましい性格を弱めてしまふ。(米第22/24代大統領グロバー・クリーブランド)
The Wisdom of Grover Cleveland | Mises Institute

貿易戦争は誰への戦争?
貿易戦争といふ言葉は、貿易で一方が得をすれば他方が損をするといふ誤つた考へに基づく。だが売り手と買い手はともに貿易で得を見込むから進んで取引する。だから貿易は富を生み出す。保護主義を戦争に例へるなら、国内生産者と政府の連合軍による国内消費者への宣戦布告だ。
The Trade "War" Is Only Making War on Our Freedoms | Mises Wire

小さなノーベル経済学賞
RCT(ランダム化比較試験)は経済理論の代はりにはならない。学生に熱心に試験勉強させる方法や人に健康な食事をさせる方法など、小さな問題しか扱はないからだ。社会的協業の基礎は何か? 経済成長の原動力は? 景気変動はなぜ起こる? かうした大きな問題には答へられない。
New Nobel Winners Are Latest Bad Sign for Economic Theory | Mises Wire

2019-10-14

吉田敏浩『日米戦争同盟』


安保法制で民間企業に課せられた自衛隊支援の協力責務。派遣要員に選ばれたものの会社から何の説明もなく、不安におびえる防衛産業の社員。派遣先で事故が起きたりテロに巻き込まれたりしても、防衛省・自衛隊が責任を取る考えはなし。対米従属がもたらす究極のブラック職場。

2019-10-13

社会混乱の元凶

社会混乱の元凶
昔から、政府と社会について大きく2つの見方がある。一方は、政府を自由と秩序の源泉と考へ、政府の存在しない社会を他の何よりも恐れる。もう一方は、政府こそ秩序を乱す元凶であり、混乱につけ込み、社会を犠牲にして、政府自身の権力と物的資源を拡大させる存在と考へる。
Two Views on Social Order: Conflict or Cooperation? | Mises Institute

ネオリベ路線の嘘
中南米諸国の経済政策はネオリベラル路線だと批判される。それが本当なら、IMFに助けてもらふたびに、自由な国に向かつてゐることになる。だが実際には、中南米諸国が真の自由な市場へと進んだことは一度もない。せいぜいポピュリスト政権による放漫財政を取り繕つただけだ。
Argentina's Faux "Neoliberalism" | Mises Wire

金融緩和のツケ
中央銀行は、金融緩和のメリットに対し誰もコストを負はないやうなふりをする。けれども誰かがいつかツケを払ふ。それは賃金労働者、貯蓄者、銀行預金をもつすべての人だ。年金に付くはずだつた利息も奪はれる。金融緩和の恩恵を受けるとされる、まさにその人々がツケを払ふ。
Central Bank "Stimulus" is Really a Huge Redistribution Scheme | Mises Wire

経済成長と技術革新
中世欧州には中国やロシア、インドなどと違ひ、国家間の競争が存在し、それが技術革新の発達を促した。支配階級は主権を守らうと技術革新に頼つたため、その発達を許した。これが人口増と繁栄をもたらす。経済を成長させるには規制と税をなくし、技術革新を促すことが必要だ。
An Old-Fashioned Recipe for Economic Growth | The American Spectator

2019-10-12

吉田裕『日本人の歴史認識と東京裁判』


東京裁判は米国が一方的に日本を裁いたのではなく、日米合作の側面があった。日米が水面下で連携し、全責任を軍部(特に陸軍)に押し付け、天皇を免責した。東京裁判は米国主導。「東京裁判史観」「自虐史観」批判は米国批判に帰着するという、自民政権に不都合な事実も指摘。

2019-10-09

ロビイスト規制の無駄

ロビイスト規制の無駄
ロビイングは国民が議員に要望を聞かせる手段だ。ロビイストは嫌はれるけれども、政府権力が拡大し続ける限り、高報酬で雇はれるだらう。特別利益団体が列をなし、政府に助成や保護を求めるからだ。ロビイストの力を弱めるには結局、政府の権限と影響力を小さくするしかない。
What Is Lobbying (And Do We Really Need Lobbyists)? - Foundation for Economic Education

総論賛成、各論反対
「自由な市場に対する批判の根底にあるのは、自由そのものに対する理解不足である」「一部の例外を除き、企業人は自由競争に対し総論賛成だが各論反対である」「政府の政策を評価する際に犯しがちな過ちは、結果でなく意図で判断することだ」。ミルトン・フリードマンの名言。
12 Truth Bombs from Milton Friedman - Foundation for Economic Education

良い独占、悪い独占
市場独占の評判が悪いのは、企業が政府と癒着し、起業家として価値を生み出すより、政治とのコネを使つて競争を免れようとする姿が目立つからだ。しかし他社が競争で太刀打ちできない商品によつて独占事業を築けば、消費者に恩恵をもたらし、長期でより大きな収益を生み出す。
Entrepreneurs Should Aim to Be Good Monopolists

自由な市場といふ嘘
自由な市場とは規制のない市場だ。航空業や金融業は自由な市場ではない。市場ではあつても、きはめて厳しく規制された市場である。そこで市場参加者は、規制がなければ選んだだらう取引をすることが許されない。それを自由な市場と呼ぶことは誤りだし、もつと言へば嘘である。
The Difference Between Regulated Markets and Free Markets | Mises Wire

2019-10-05

スマホは世界を救ふ

スマホは世界を救ふ
スマートフォンが世界中に普及したおかげで、今では南アフリカに住むナイジェリア人の炭鉱夫が故郷の母親に送金できる。コンゴの漁師が悪天候を察知できる。マサイ族の牧夫がケニアの牛乳価格を調べられる。人間が千年かけて集めた全知識をたやすく、たちどころに入手できる。
How smartphones are helping to save the planet - CapX

極貧は減つてゐる
1820年には世界人口の94%が極貧だつたが、1990年には34%、2015年には9.6%に低下。過去25年間で12億5000万人以上が極貧を脱した。1日あたり13万8000人、5分あたり480人の計算だ。1820年に極貧を免れたのは6000万人だけだつたが、2015年には66億人に増えた。資本主義の貢献だ。
The World's Poorest People Are Getting Richer Faster than Anyone Else - Foundation for Economic Education

グローバル化と貧困減少
人口に占める極貧の減少が顕著なのはアジアだ。1990〜2015年に東アジアでは62%から2%に、南アジアでは47%から12%に低下。中南米でも14%から4%に、サハラ以南アフリカでさへ54%から41%に低下した。中国やインド、ベトナムのやうにグローバル経済への統合に伴ひ貧困は減つた。
Globalization's greatest triumph: the death of extreme poverty | TheHill

消費者の投票
社会主義の下で消費者は無力で、国有企業のなすがままだ。消費者ニーズを無視されたら、どうしやうもない。競争がないからだ。資本主義の下では、消費者は顧客ニーズを無視する利己的な企業を罰しうるし、事実罰してゐる。毎日、製品を買ふか買はないか、財布を使ひ投票する。
The Driving Force of Free Markets Is Empathy, Not Greed - Foundation for Economic Education

2019-10-02

資本主義は搾取しない

資本主義は搾取しない
過去数十年から数百年の生活水準向上が示すとほり、賃金が名目・実質とも高まつたのは自由主義経済に基づく資本主義のおかげだ。賃金労働者を豊かにし、まだ残る貧困をなくすために重要な役割を果たすのは資本家だ。資本主義は労働者を搾取するどころか、その生活を改善する。
The End of Marxian Exploitation Theory | Mises Wire

自由放任主義の意味
自由放任主義は、すべての個人が自分にとって最善の利益は何かを知っているという現実離れした前提に立つ——。このような批判がある。その批判は正しくない。自由放任主義が主張するのは、すべての個人は自分が最善とみなす利益を追求する権利を持つべきだ、ということである。
Do Consumers Know What's Best for Them? | Mises Wire

統計が語れないもの
人間の活動には数字で計れないものがたくさんある。親が会社勤めをやめ、家庭で子供を教育すれば、統計上、雇用と賃金収入は減つてしまふ。託児所の売り上げが減り、騒ぎになるだらう。一方、親が子供と一緒の時間を過ごすことでどれだけの満足を得るか、統計は何も語れない。
Why the Government Can't Measure Income, Happiness, or Well-Being | Mises Wire

電子タバコ禁止の愚
コーヒーからベーコンまで、あらゆる食品・嗜好品は発癌性など副作用の可能性がある。消費者はリスクを覚悟のうへで買ひ、健康に役立てようとする。規制当局もその二律背反を認識してゐる。電子タバコは普通のタバコより無害で禁煙にも効果があるから、禁止するのはをかしい。
Hysterics Aside, Vaping Is the Safest Quit-Smoking Aid on the Market - Foundation for Economic Education

2019-10-01

イスラム資本主義の時代

イスラエルとの紛争がイメージされがちなパレスチナ自治区で、IT(情報技術)分野を中心とした起業の波が起きている。朝日新聞の記事によると、ガザ地区とヨルダン川西岸地区で設立されたITなど技術系の新興企業は、2009年の約20社から2015年には約140社に増加したという。

起業を生み出す市場経済は、中東を含む発展途上国で多く信仰されるイスラム教とは相容れないという印象が一般的だ。しかしパレスチナの例に見るように、イスラムが市場経済になじまないというイメージは必ずしも正しくない。それはイスラムの歴史からも明らかである。

7世紀のアラビア半島はオリエント世界や地中海世界からみると辺境で、メソポタミアやペルシャ、ローマなどの先行する文明からの影響は限られていた。半島にはアラブ人の諸部族が居住し、部族どうしで勢力争いをしていた。彼らの多くは多神教で、偶像崇拝を行なっていた。商業都市メッカは商人のクライシュ族が支配し、インド洋と地中海を結ぶ陸上交易で生計を立てていた。

クライシュ族の一人として生まれたムハンマドも商業に従事していたが、40歳のとき(610年ごろ)啓示を受け預言者となったことを自覚し、唯一神アラーへの帰依を説く。彼が啓示として受け取った言葉は、のちに「コーラン」としてイスラムの聖典となった。教義の基本は、唯一神アラーとやがて来る世界の終末を信じるものである。


イスラムは経済活動によって富を生み出すことを奨励した。コーランでは商業による利益を「アラーのお恵み」(第62章10節)と呼んでいる。自身が商人であったムハンマドは「金を儲ける者はアラーを喜ばす」と語ったという記録がある。

ムハンマドは物価統制に反対したことでも知られる。ある逸話によれば、敬虔な信者から市場の物価高を規制するよう求められた際、「アラーのみが物の価を支配したもう」と述べ、反対したという。後世の研究者の中には、ここに近代経済学の父とされるアダム・スミスの「見えざる手」に似た発想をみる向きもある。少なくともムハンマドが市場経済を否定する社会主義者でなかったことは確かである。