2020-02-29

一つの国にあらず

アメリカ合衆国は一つの国ではないし、過去に一つの国だったこともない。国々の連合だ。だから建国期の人々は合衆国を「これらの国々」と複数で呼んだ。合衆国は独立した国々(州)による連邦の盟約だ。それが忘れられたのは、合衆国内におけるナショナリズムが死んだからだ。
The United States Is Not a Nation: The Problem with "National Conservatism" | Mises Wire

経済学者ダグラス・ノースらが明らかにしたように、前近代の欧州では多数の政体が互いに競合し、物質の豊かさと政治の自由に重要な役割を果たした。単一の支配的な国家が存在しない、相対的な「無政府状態」のおかげで、政治の自由が広がり、経済の繁栄につながったのである。
Why Rothbard Wanted "Radical Decentralization" | Mises Wire

独裁的な中国政府が強権を発動しても新型コロナウイルスを封じ込めることができないのだから、西側諸国でできるわけがない。パンデミック対策に必要なのは政府への権限集中ではなく、治療の地方分権化だ。感染した人々は都心の大病院に押し込むよりも、引き離したほうが良い。
Does the Coronavirus Make the Case for World Government? | Mises Institute

独裁者カエサルは、ばらばらの属州からなっていたローマ共和国を、統一国家に変貌させた。それ以前、ローマの属州にはかなりの自治が認められていた。とくにイタリア本土は独立した地域と文化のモザイクであり、これを統一するために暴力と財産の収奪、内戦が推し進められた。
Political Centralization Ended the Roman Republic | Mises Wire

2020-02-27

シンガポールの教え / 忌まわしい制度(ウェブスター)

1965年、シンガポールがマレーシアから分離独立した際、大国こそが繁栄するという通念の中で、天然資源もない都市国家の成功を予想した者はほとんどいなかった。50年後、シンガポールは豊かさでマレーシアを引き離したばかりか、1人あたりGDPは旧宗主国の英国の2倍になった。
What an Independent Britain Could Learn from Singapore | Mises Wire

米政治家ダニエル・ウェブスターは徴兵制の導入に反対し、徴兵制は自由な国の政府にふさわしいか、市民の自由と言えるか、合衆国憲法に本当にふさわしいかと問いかけた。彼によれば、もちろん否である。そして徴兵制という「忌まわしい制度」は憲法に根拠がないと結論づけた。
Daniel Webster thunders that the introduction of conscription would be a violation of the constitution, an affront to individual liberty, and an act of unrivaled despotism (1814) - Online Library of Liberty

世界は小さな国の時代に向かっている。国の数はここ数世紀で最も多い。貿易の隆盛で、国境を広げ人口を増やす帝国主義のメリットが薄れた。国家はしばしば自給自足経済を求めるがそのコストは高い。グローバル経済のおかげで小国は繁栄し、租税競争によって大国に自制を課す。
Why Governments Hate Secession | Mises Wire

旧ソ連諸国が世界市場に相次ぎ参入した当時、米経済学者ゲーリー ・ベッカーが述べたように、小国は世界に向けて隙間商品を生産することで繁栄できる。大国のように広範な商品は提供できないが、グローバル経済と統合を深め、世界で需要のある何らかの商品に特化すればよい。
3 Reasons Why More Secession Means More Freedom | Mises Wire

2020-02-25

帝国の犯罪(コブデン)/ 無血の分離独立

英政治家リチャード・コブデンは穀物法の撤廃で自由貿易の確立に成功した後、反戦・反帝国主義の主張のせいで、議会でしだいに孤立した。彼は英国によるビルマ併合に反対し、大英帝国はいつの日か、過去のあらゆる帝国と同じく、「帝国の犯罪」ゆえに罰されるだろうと論じた。
Cobden argues that the British Empire will inevitably suffer retribution for its violence and injustice (1853) - Online Library of Liberty

英政治家コブデンによれば、英国で奴隷反対運動が起こる前、国民は奴隷貿易を支持し、高い収益性を誇った。同様に、国民は自国の利益を強いるために世界中で軍隊を使い、将軍たちの像を熱心に建て、ほめ称える。平和を実現するには、こうした戦争の精神を和らげる必要がある。
Cobden on the complicity of the British people in supporting war (1852) - Online Library of Liberty

バルト三国のソ連からの独立、チェコとスロバキアの分離、スロベニアのユーゴスラビアからの独立はいずれも実現した際、流血はきわめて限られた。チェコ人によるスロバキア人の虐殺もその逆も起こらなかった。それらの事実を無視して、国の分離独立は戦争を招くと非難される。
Nationalism as National Liberation: Lessons from the End of the Cold War | Mises Wire

アイルランド社会は有史以来、17世紀に至るまで無政府の原則で運営された。刑法と不法行為法に本質的な違いはなく、処罰は被害の修復が主眼で、賠償は国家ではなく被害者に支払われた。法の執行は保証と担保を通じ行われ、無法者は最終的には社会から追放され、保護を失った。
Reflections on Legal Polycentrism | Mises Institute

2020-02-22

軍隊の精神の害(コンスタン)

仏思想家・小説家のコンスタンが懸念したのは、長期にわたる戦争の後で、人々が「軍隊の精神」に侵されることだ。疑問を感じることなく命令に服従し、自分の頭で考えることを規律違反の始まりとみなす軍隊の精神。それは戦争によって守るはずだった自由そのものを蝕んでいく。
Benjamin Constant on the dangers to liberty posed by the military spirit (1815) - Online Library of Liberty

経済学者ミーゼスによれば、自由主義が究極の理想とするのは全人類の平和で完全な協力である。人類の一部だけが対象とは考えない。自由主義は国境を越え、全人類と全世界を取り込む世界市民の思想だ。自由主義はこの意味でヒューマニズムであり、自由主義者は世界市民である。
Mises on cosmopolitan cooperation and peace (1927) - Online Library of Liberty

米社会学者ウィリアム・グラハム・サムナーは、米国が米西戦争でスペインの植民地を奪い取ったことで、欧州の帝国列強と同類になりかねないと述べた。米国は戦闘でスペインを打ち負かしたかもしれないが、その代わり、スペインの征服と帝国の思想によって征圧されたと論じた。
Sumner and the Conquest of the United States by Spain (1898) - Online Library of Liberty

英政治家リチャード・コブデンは議会に対し、ロシアとオスマン帝国の紛争(クリミア戦争)に介入しないよう訴えた。世界中を見回り、目に入るあらゆる悪事を正す「欧州のドン・キホーテ」になるのは英国の仕事ではないからだ。コブデンは反戦の主張のせいで一時議席を失った。
Cobden urges the British Parliament not to be the “Don Quixotes of Europe” using military force to right the wrongs of the world (1854) - Online Library of Liberty

2020-02-21

常備軍廃止の夢(バスティア)

仏エコノミスト、バスティアは戦争、植民地主義(特にアルジェリアの仏植民地)、徴兵制、常備軍に強く反対し、こんな夢を語った。常備軍を廃止し40万人の国民を徴兵という奴隷制から解放するとともに税負担を年4億フラン減らす。常備軍は志願兵と米国流の民兵で置き換える。
Bastiat on disbanding the standing army and replacing it with local militias (1847) - Online Library of Liberty

英政治家ジョン・ブライトは、他国の問題に絶えず介入する英国の外交政策によって利益を受けるのは「猟官者」だと述べた。つまり、自分や家族、友人のために仕事を求める、支配階級のエリートたちだ。言い換えれば、英国の外交政策とは貴族階級のための巨大な福祉制度なのだ。
John Bright calls British foreign policy “a gigantic system of (welfare) for the aristocracy” (1858) - Online Library of Liberty

英政治家コブデンは内政不干渉の原則を堅く信じた。干渉する国の納税者の負担が増えるうえ、軍事占領される国民の生命と財産を破壊するからだ。干渉する側は秩序回復のためだと言うが、実際には彼ら自身、国内の秩序混乱に悩み、威嚇・侵略で他国に生み出した無秩序に苦しむ。
Cobden on the principle of non-intervention in the affairs of other countries (1859) - Online Library of Liberty

かつて戦争になると支配者は「臣民」をまるで家畜のように、意のままに使えると考えた。哲学者カントはこれに対し、人間には自身の権利と人生設計があるのだから、その生命と財産を危険にさらすいかなる戦争についても、議会を通じその都度同意を得なければならないと論じた。
Kant believed that citizens must give their free consent via their representatives to every separate declaration of war (1790) - Online Library of Liberty

2020-02-20

内なる敵(プライス)/ EU離脱の価値

英哲学者リチャード・プライスによれば、国には二つの敵がいる。国内の敵(自国政府)と国外の敵(外国政府)だ。自国政府のほうが抜け目なく、危険である。権力者はつねに権力の拡大をうかがい、権力は国民から負託されたもので権力者自身のものではない、という原理を嫌う。
Richard Price on how the “domestic enemies” of liberty have been more powerful and more successful than foreign enemies (1789) - Online Library of Liberty

なぜ社会では多数の人々が少数の支配者の命令に服従し、苦しむのか。16世紀フランスの思想家ラ・ボエシによれば、人は生まれ落ちた国家の制度を普通だと思い込む。正義と法の支配が必要ではと疑う能力をもつ者はわずかで、多くの人は臆病なまま暴君に服従することに甘んじる。
Étienne de la Boétie provides one of the earliest and clearest explanations of why the suffering majority obeys the minority who rule over them; it is an example of voluntary servitude (1576) - Online Library of Liberty

ブレグジットで問われたのは、関税は高いより低いほうがよいかどうかではない。関税を誰が、どこで、どのように決めるかだ。多くの人がブレグジットを単なる経済政策の議論にしようとしたが、主流経済学の数字いじりで、人々がEU離脱の価値をどう測ったか知ることはできない。
Brexit Voters Aren't As "Irrational" As Their Opponents Think | Mises Wire

英政治家ジョン・ブライトは自由貿易と平和を強く擁護した。ロシア帝国は野蛮な脅威だとして戦争を主張する英政府に反対し、戦争は人間が被りうるあらゆる恐怖、残虐行為、犯罪、苦しみをひとまとめにしたものだと警告した。開戦論は止まらず、悲惨なクリミア戦争が起こった。
John Bright on war as all the horrors, atrocities, crimes, and sufferings of which human nature on this globe is capable (1853) - Online Library of Liberty

2020-02-17

金の力 / 税の拒否(スプーナー)

金(きん)はインフレの防御策だ。歴史上、金本位制を採用した政府は、財政赤字になると金保有高の減少を余儀なくされた。見境ない政府支出には歯止めがかかった。政府が金を失いたくないからだ。金は、中央銀行が引き起こすインフレという病の害悪から個人が身を守る手段だ。
The Power of Gold | Mises Institute

民主主義の選挙が機能するのは地方や小国だけだ。米国がこれ以上の社会分断を避けるには、大胆な連邦主義と地方分権がカギとなる。それによって、勝った政党がすべてを得る国政選挙の弊害は劇的に軽減する。米国のような大国における大衆民主主義は果てしない争いをもたらす。
Politics Drops Its Pretenses | Mises Wire

米法理論家ライサンダー・スプーナーは、現代の税法を英国のコモンローに照らせば、認められないだろうと論じる。なぜなら課税される個人から、明確な合意を得ていないからだ。納税拒否者は処罰されない。米独立革命の求めた「代表なくして課税なし」を徹底した理論といえる。
Lysander Spooner argues that according to the traditional English common law, taxation would not be upheld because no explicit consent was given by individuals to be taxed (1852) - Online Library of Liberty

連邦国家内に「統一市場」をつくる場合、構成国(州)が自分から貿易や移民の規制を緩和するのなら、問題ない。問題は米連邦政府や欧州委員会などの中央政府が画一的な法を上から押しつける場合だ。規制が厳しい州に合わせて強化され、中央政府の権力拡大につながりかねない。
Why Open Borders Between States in America Might Lead to Disaster | Mises Wire

2020-02-15

民主主義は理想か / 世論による支配(ヒューム)

民主主義が理想に値しない理由。理想とは個人の権利を侵してはならない。人々の望みに敏感でなければならない。人々の選択が尊重されなければならない。政策についてよく知り、深く考える動機を与えなければならない。多数決で生活を左右しないよう限定的でなければならない。
Why Democracy Doesn't Give Us What We Want | Mises Wire

ハンザ同盟の非公式の首都は欧州一豊かなリューベックで、自身で5万人の傭兵を擁したが、政治権限はなかった。同盟には統一した政治組織はなかった。加盟・離脱は商人たちの取引の利益によって決定された。はっきりした行政施設は存在しなかったし、徴税の組織さえなかった。
The Hanseatic League: An "Empire" of Commerce | Mises Wire

デビッド・ヒュームは、なぜ権力者は少数なのに多数の人々を支配できるのか、と問いを立てた。彼の答えは「世論」である。つまり、多数の人々が支配者は正当だと信じているから、その座は安泰なのだ。だから支配者が多数の人々を従わせるためには、最小限の暴力でこと足りる。
David Hume ponders why the many can be governed so easily by the few and concludes that both force and opinion play a role (1777) - Online Library of Liberty

英社会学者スペンサーによれば、暴力に基づく軍事型社会は平和な取引に基づく産業型社会へと移行する。古い支配層は権力を手放すまいとして、外国人に対する「憎しみの宗教」を人々に吹き込む。それによって大規模な軍隊を正当化し、経済の主要部分への支配を続けようとする。
Herbert Spencer on the State’s cultivation of “the religion of enmity” to justify its actions (1884) - Online Library of Liberty

2020-02-14

社会の2集団(バスティア)/ 国境紛争の解決法

19世紀の仏エコノミスト、バスティアは戦争の本質と戦争で潤う者についてこう考えた。社会は二つの集団に分かれる。他人の生産活動に依存して生きる者と、生産活動に従事する者だ。言い換えれば、働き、平和に取引し、税金を払う者と、その税に依存し、しばしば軍で働く者だ。
Frédéric Bastiat, while pondering the nature of war, concluded that society had always been divided into two classes - those who engaged in productive work and those who lived off their backs (1850) - Online Library of Liberty

経済学者で自由主義者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスによれば、国は州や郡に対して「お前はこっちに属する。こっちに来い」と言う権利はない。州や郡は住民によって構成される。意見を尊重されなければならないのは、この住民だ。国境紛争の解決は、住民投票によるべきだ。
Mises on Secession | Mises Institute

スペンサーの国家社会学の核心は、「軍事型社会」と「産業型社会」の区別である。軍事型社会は暴力に基づき、産業型社会は平和な経済活動に基づく。この区別はセイ、バスティアら古典的自由主義者に共通するほか、ミーゼスらのオーストリア学派経済学でも重要な役割を果たす。
Herbert Spencer makes a distinction between the “militant type of society” based upon violence and the “industrial type of society” based upon peaceful economic activity (1882) - Online Library of Liberty

米国の司法制度はテロに関する限り、中国と変わらない。グアンタナモ湾収容所には裁判なしに10年以上も監禁されている人々がいる。被告人は有罪とみなされ、拷問を受ける。手続きの多くは秘密だ。裁判がある場合、判決を下すのは米軍の人間で、結果はあらかじめ決まっている。
Copying the Communists – The Future of Freedom Foundation

2020-02-13

政府の起源(ペイン)/ 住民投票の尊重

革命思想家のトマス・ペインは、広く読まれた政治パンフレット『人間の権利』で政府の起源を問い、こう答える。田舎を支配していたごろつきの強盗どもが、時とともに洗練され、惰弱になり、昔の欧州の支配階級になった。彼らは、現在私たちがひざまずく連中の祖先なのだ、と。
Tom Paine asks how it is that established governments came into being, his answer, is "banditti of ruffians" seized control and turned themselves into monarchs (1792) - Online Library of Liberty

カタルーニャ州が住民投票を行い、結果が「悪い」決定で、スペイン政府やEU、第三者が反対しても、その意思は尊重されなければならない。独立で損をするカタルーニャ住民もいるだろうが、得をするスペイン国民もいるはず。損得はきわめて主観的で、他人が決めることではない。
Let Catalonia Decide | Mises Wire

一部の経済学者によれば、経済学の任務は社会の全員か最大多数の満足を最大にすることだという。彼らは気づいていないが、様々な個人の満足度を測る手段は存在しない。自分では証明のつもりでも、恣意的な価値判断を表明しているにすぎない。価値判断は経済学の仕事ではない。
Do People Really Seek to Maximize Profit? | Mises Wire

ある地域が国から分離した結果、その新しい国で少数派になった人々が不満を感じたら、どうすればよいか。答えはさらなる分離だ。カリフォルニア州が米国から分離したなら、都市と郊外などでさらに分離を進めればよい。国は数が多いほど、個人の価値観に合わせて選択しやすい。
If the Majority Votes to Secede — What About the Minority? | Mises Wire

2020-02-09

ステークホルダー資本主義の問題

株主の利益だけでなく従業員や地域社会、環境にも配慮を求めるステークホルダー(利害関係者)資本主義の考え方は、問題をはらむ。経営者を評価する基準があいまいになることだ。経営者は本来の仕事であるはずの経営がお粗末でもクビにならず、慈悲深い人物として尊敬される。
Why Shareholders Are Better Than Corporate "Stakeholders" | Mises Institute

経済学者ミーゼスは著書『自由主義』で、国からの離脱権をあらゆる集団に認めよと論じた。地域の大小にかかわらず、自由な住民投票の結果、今属する国を離れ、独立や他の国への編入を望むなら、その意思は尊重・実現されなければならない。極端な話、それが1人であってもだ。
Mises, Rothbard, and Catalonia | Mises Wire

国家の犯罪性は目新しくもなければ驚くことでもない。人間の最初の寄生集団が集まり、国家をつくったとき以来、世界で国家が存在する限り、国家は犯罪集団であり、根本から反社会組織である。国家が何らかの社会目的に役立つため生まれたという考えは、歴史上の根拠が皆無だ。
The Criminality of the State | Mises Institute

米国が国際通貨体制の中心でなくなれば、米政府と国民は不利な状況に置かれる。ドル需要の減退は米国債への需要減につながる。すると金利に上昇圧力がかかり、政府の利払い負担が重くなる。中央銀行が金利を抑え込もうと国債を買い取れば、物価や資産のインフレが激しくなる。
The World Looks to Abandon the Dollar as US Sanctions Tighten Their Grip | Mises Wire

2020-02-08

1人1票の限界 / 政府は戦争が生む(ヒューム)

米上院の定数は州の人口にかかわらず各州2名だ。これを1票の格差と批判するなら、もし将来、中国、韓国、日本、ベトナム、インドネシアで「東アジア合州国」を結成したらどうなるか考えてみればよい。単純な人口比例で票数を割り当てれば、中国が他国を圧倒し、支配権を握る。
Why "One Man, One Vote" Doesn't Work | Mises Wire

生産のコストは商品の価格を決める最大の要因に思えるかもしれないが、そうではない。最終的には買い手の価値判断で価格は決まる。各人の生活や幸福にどれだけ役立つかで、払う金額を決める。もし生産コストが価格を決める最大要因なら、未開発の土地に価格は付かないはずだ。
What We Really Mean When We Talk About Values and Prices in the Marketplace | Mises Wire

デビッド・ヒュームは政府の起源について二つの重要な洞察をしている。⑴政府はしばしば戦争から生まれる⑵政府がいったんできると、自由と権力の間に絶え間ない闘争が起こる--。ヒュームは後年、英王室を支持したとされるが、初期の論文ではラディカルな物の見方をしていた。
David Hume on the origin of government in warfare, and the “perpetual struggle” between Liberty and Power (1777) - Online Library of Liberty

フランツ・オッペンハイマーは国家の起源を分析し、富を手に入れるには二つの根本から対立する方法があると論じる。強制による「政治的手段」と、平和な取引による「経済的手段」である。この国家理論は、J・B・セイら19世紀前半のフランスの自由主義者によく見られたものだ。
Franz Oppenheimer argues that there are two fundamentally opposed ways of acquiring wealth: the “political means” through coercion, and the “economic means” through peaceful trade (1922) - Online Library of Liberty

2020-02-05

解決策のコスト / 治安サービスの欺瞞(シニア)

トレードオフは経済学の核心だ。あらゆる行動は選択であり、より良い選択をするには、どのような選択肢があるかを知らなければならない。コストを考慮せずに解決策を示すことなら誰でもできるが、現実的な解決策とは言えない。後でむしろ問題を悪化させるかもしれないからだ。
The True Costs of Bad Economists, Explained | Mises Wire

自由な市場経済では、株主の利益のために生産すること自体、あらゆる関係者にとって利益となる。従業員を雇うには、他社より多くの利益を提供しなければならない。そうしなければ他社に行かれてしまう。企業が繁盛し、多くの人を高い賃金で雇うことは、地域が繁栄する基礎だ。
Shareholders, Not "Stakeholders" | Mises Wire

治安・防衛サービスの分業は奇妙だ。サービスを提供する政府は権力を持つ。サービスを受ける国民は自分を守る手段と意思をほぼ失う。この状況では、通常の取引原則は通用しない。政府は正当な対価だけでなく、暴力と恐怖でできるだけ巻き上げようとする。(ナッソー・シニア)
Nassau Senior argues that government is based upon extortion (1854) - Online Library of Liberty

今日、国家と社会の区別は、概念上も組織上もなくなった。国家という権力機構が実はむしろ社会の敵であり、国家と社会の利益が相反するとは、人は考えもしない。近代以前は、国家はつねに監視されなければならず、有害な性向が組み込まれていることは、自明の理とされていた。
What Is Statism? | Mises Institute

2020-02-04

己の無知を知れ

芸能人の仕事は芸能だ。その仕事が上手なら高い報酬を受け取るし、その資格がある。人は延々と続く授賞式でさえ喜んで観る。だがその式での政治演説にはあくびを噛み殺す。ソクラテスが己の無知を知れと戒めたように、一芸に秀でているからといって、何でも得意とは限らない。
When Ricky Gervais Meets Socrates: A Lesson on the Limits of Knowledge - Foundation for Economic Education

民主主義社会における根本問題は、経済に関する市民の無知である。市民が市場の働きや、利己的な人々の行動から有益な秩序が自然に生まれることを理解していなければ、物事を何でも政治で解決しなければならないと信じてしまう。政治と経済の間の正しい境界線を壊してしまう。
Economics: The "Other Side" of Politics | Mises Institute

同じ国に利害の対立する集団を一緒に住まわせると、問題が起きる。互いに政府の支配権を握ろうと熱狂し、相手を屈服させようとする。暴力の可能性を小さくするには、政府の力を最小限にすればよい。自由放任的な政府の下では、誰が政府を支配するか気にする必要がないからだ。
Secession in Virginia Would Defuse the State's Conflict over Guns | Mises Wire

気候変動に対処する最も有効な方法は、経済成長の促進だ。人口を制限する必要はない。途上国が豊かになるにつれ、出生率は自然に低下する。家族が子供の数を減らし、より多くの資源を投資しようとするからだ。資本主義をやめて社会主義を導入すれば、前近代の貧困に逆戻りだ。
Population Control Isn’t the Answer to Climate Change. Capitalism Is. – Reason.com

2020-02-02

自由の海、南シナ海

南シナ海といえば、現在は政治対立の舞台となっている。石油や天然ガスなどの資源が豊富で、海上交通の要衝であることが背景だ。各国がいくつかの島を占拠・占領するなどして、軍事衝突も含む対立が深刻化している。

2019年11月にタイの首都バンコク郊外で開いた東アジアサミットでは、南シナ海のほぼ全域に主権が及ぶとする中国の主張を米国が真っ向から否定。中国は米国を念頭に域外国が介入しないよう要求し、応酬となった。

南シナ海を舞台とした国家間の対立は泥沼化し、容易に解決できないように見える。しかし、歴史には解決のヒントがある。かつて南シナ海には国家のくびきから解放されることによって、自由と繁栄を謳歌した時代があった。

中国の唐では875年、黄巣の乱が起こる。以前このコラムで触れたように、唐は財政を維持するために厳しい塩の専売を行なっていたが、これに反発する商人による密売が横行した。これをきっかけに唐は滅亡に向かう。

前回のコラムで、イスラム教徒(ムスリム)の商人がダウ船に乗って中国に到来し、唐最大の海外貿易港(港市)であった広州を拠点としたことを紹介した。黄巣の乱のさなか、南シナ海に面するこの広州が破壊される。このためムスリム商人は中国から撤退してマレー半島のクダに拠点を移した。ムスリム商人に代わり、南シナ海に進出したのが中国商人である。

中国商人がムスリム商人から造船・航海の技術を学び、建造した独特の帆船はジャンク船と呼ばれる。大きな船腹をもったジャンク船は、陶磁器や銅銭など新しく登場してきた重い交易品の積載に適していた。ジャンク船は遠洋航海のために開発された羅針盤を搭載し、外洋に繰り出していく。

多くの中国人が東アジア、東南アジアに渡航し、各地で中国人居留地を建設していった。東シナ海、南シナ海一帯はムスリム商人と中国人商人が共存する空間となった。国家間のぎすぎすした対立に覆われた今のアジアの海とは大きな違いだ。


船乗りたちの共通言語もマレー系の言葉に加えて中国語が広く使われるようになった。ちなみにジャンクという呼称は、中国語で船を意味するchuanがマレー語のjong、ポルトガル語のjuncoに転訛し、ポルトガル語が英語のjunkになったとされる。