2023-02-28

ゼレンスキー氏は民主主義の英雄か

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年2月6日)

米政府の対ウクライナ政策を支持する米国人はしばしば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を、すでに受けている以上の米軍支援に値する、民主主義の高貴な擁護者として描く。2022年12月下旬の米議会本会議でのゼレンスキー氏の演説に伴う政治とメディアの熱狂は、そうした英雄崇拝の最近の一例である。

ウォロディミル・ゼレンスキー氏 誤った恋愛関係?


〔米政府系メディア〕ボイス・オブ・アメリカは、ゼレンスキー氏の登場を1941年12月のウィンストン・チャーチル英首相の議会演説と比較する記事を掲載した。〔保守派評論家〕デビッド・フラム氏はアトランティック誌に寄稿し、ゼレンスキー氏は米国民自身と民主主義の価値観を思い起こさせると主張した。さらにフラム氏は、ウクライナの大統領が「ウクライナを支援している米国人に感謝するために米国に来た。感謝すべきは米国人だ」とも述べている。ブレット・ステファンズ氏はニューヨーク・タイムズ紙のコラムで、「米国人がゼレンスキー氏を賞賛するのは、同氏が自由世界の理念を本来の位置に回復させたからだ」と主張した。

このような賛美は、ゼレンスキー氏が市民の自由と民主主義の規範を著しく侵害している証拠が山ほどあることを無視している。米国人の盲目的な態度は、かつて偽りの民主主義の擁護者であったアンゴラの反乱軍リーダー、ジョナス・サビンビ氏に与えられた公平な扱いを彷彿とさせるものだ。1970年代半ばから1990年代初頭にかけて(特にロナルド・レーガン政権時代)、米国の多くの政治家やメディア関係者は、サビンビ氏率いるアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)とそのアンゴラ左派政府に対する反政府活動への支援を強化するよう働きかけたのである。そして、「民主的」な得意先の大きな欠点を見過ごすことも厭わなかった。

特に、米国の「保守派」のサビンビ氏に対する熱狂ぶりは顕著であった。ヘリテージ財団、フリーダムハウス、米国保守連合、ヤング・アメリカンズ・フォー・フリーダム、米国安全保障会議などの団体が、サビンビ氏への支持を表明した。また、ヒューマン・イベント、ナショナル・レビュー、アメリカン・スペクテイター、ウォールストリート・ジャーナルなどの出版物がサビンビ氏支援の主張を展開した。サビンビ氏の後援者は1979年、同氏の大規模な講演ツアーを手配し、1981、1986、1989年にはワシントンでの議会指導者や政府高官との会談を実現させた。

アンゴラ全面独立民族同盟の独裁的で粗暴な体質が指摘された時期もあったが、サビンビ氏への称賛の声は絶えなかった。ジョンズ・ホプキンス大学のピエロ・グレイジェス教授は、このように不快な内実にもかかわらず、サビンビ氏の米国の支援者は「自分たちこそは正しいと、米国の利害と道徳の両面から主張した」と述べている。現在行われている、ゼレンスキー氏への支援強化キャンペーンも同じようなものである。

米国保守連合とヤング・アメリカンズ・フォー・フリーダムからサビンビ氏に賞を贈ったジーン・カークパトリック国連大使は、サザンビ氏は「現代における数少ない本物のヒーローの一人」と称賛を浴びせた。カークパトリック氏がサビンビ氏に抱いた理想像は、米国右派の典型的な見方であった。レーガン大統領も同じ考えで、日記の中でサビンビ氏を「善人」と簡潔に表現している。

オーリン・ハッチ上院議員(当時)は、「私はサビンビ氏に会う機会に恵まれ、その正直さ、誠実さ、宗教的献身に非常に感銘を受けた」と述べている。アンゴラでの紛争は内戦ではないと、このユタ州選出の上院議員は主張した。「これはイデオロギーをめぐる戦いだ。ソ連の全体主義と、自由・自決・民主主義との戦いだ」。サビンビ氏への援助は「共産主義の覇権に抵抗する自由の戦士を助けるという、強いシグナルを世界に送ることになる」。もし「権威主義」を「ソ連の全体主義」に、「ロシアの侵略」を「共産主義の覇権」に置き換えれば、ゼレンスキー氏とその大義を支援しなければならないという、今の主流で徹底して単純化されたメッセージと、事実上同じものになる。

アンゴラ全面独立民族同盟とその指導者サビンビ氏に対する熱狂は、次第に激しく、無批判になった。振り返ってみると、サビンビ氏を称えるキャンペーンで最も恥ずべきエピソードは、1986年にウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された、同氏の署名入りでゴーストライターが書いたとみられる論説であった。その内容は、資本主義と民主主義の美徳を称え、米国がルアンダ(アンゴラの首都)の親共産主義政府を追放するために自分の同盟を支援すれば、アンゴラを資本主義と民主主義の両方の価値のモデルとするよう約束するものだった。1989年のヘリテージ財団での講演でも、サビンビ氏は同じようなメッセージを売り込んだ。

サビンビ氏の論説とそれに続く講演は、米国の民主主義支持者(特に保守派)が聞きたかったことをそのまま伝えている。アンゴラ全面独立民族同盟の究極の目的は、親共産主義政権とその後ろ盾であるキューバ軍を打倒するだけでなく、再び民主的な国を建設することだと同氏は主張したのである。それだけではない。「宗教的寛容と言論の自由を備えた民主的な多党制のアンゴラを目指すという同同盟の公約に加えて、経済的自由の重要性を認識することが肝要だ」とサビンビ氏は主張した。ナショナル・レビュー誌は、同氏の「驚くべき自由の擁護」を称賛している。

親サビンビ陣営のプロパガンダの成果がどんなに目覚ましかったかといえば、アンゴラ全面独立民族同盟が支配していたアンゴラの一部では、こうした政治的、経済的原則を何一つ実践していなかったのである。民主主義や多党制の形跡はまったくなかった。同同盟は冷酷なまでに権力を独占し、市民に対する戦争犯罪や、政敵や指導者候補を組織的に投獄・殺害するなどの虐待を行った。その対象には、チト・チングンジ氏やウィルソン・ドス・サントス氏など、サビンビ氏と最も親しい仲間も含まれていた。サビンビ氏の米国人支持者でさえ、アンゴラ全面独立民族同盟が拷問や強制的な「再教育」に頼っていたことを不承不承認めざるをえなかった。

ゼレンスキー氏はウクライナの民主主義を損なう


同様に、ウクライナ政府の弾圧もますます露骨になり、警戒を強めている。ロシアの侵攻以来、ゼレンスキー氏は戦争を正当化するために、11の野党を非合法化した。また戒厳令を発動して、全国ネットのテレビ局を1つに統合する大統領令を発布した。2022年12月29日、ゼレンスキー氏は自分の党が国会で推し進めた新法に署名した。この措置は独立した報道をさらに制限するものだった。他の大統領令では、ロシア正教会の禁止を図り、その高位聖職者に厳しい制裁を課している。正当な手続きなしに投獄される人々の数は増え続けている。

ゼレンスキー氏とその側近たちは、国内外を問わず、最も平和的な敵対者に対しても容赦がない。2022年の夏、ウクライナ政府の偽情報対策センターは、多数の著名な米国人を含むウクライナ批判者のブラックリストを公表した。このリストが事実上の脅迫であることは、9月下旬に同センターが上位35人の標的の修正名簿(住所を含む)を発表し、これらの個人を「情報操作テロリスト」や「戦争犯罪人」と中傷したことでさらに明白になった。

サビンビ氏とゼレンスキー氏への誤った支援で、重要な違いの一つは、サビンビ氏支援に党派的な性格が強かったことである。保守派はアンゴラの詐欺師を支持する傾向が強かったが、リベラル派は控えめな支持からあからさまな敵対までさまざまだった。残念ながら、ゼレンスキー氏が民主主義と自由の擁護者だという見方は党派を問わない。これにはうんざりする。米国人のゼレンスキー支持者は、お得意先の思想的、行動的な欠点を認めようとしない。将来振り返えれば、その忠誠心は、サビンビ氏擁護派が最後はそうだったように、ゼレンスキー氏のファンにとっても恥ずかしいものだったとわかるかもしれない。

Volodymyr Zelensky: Not Exactly a Champion of Democracy - 19FortyFive [LINK]

2023-02-27

無邪気な物語「英雄対悪人」

ジャーナリスト、スティーブン・キンザー
(2023年2月21日)

ウクライナで戦争が激化している間、米国内は至って平和である。米国人は公式の物語(ナラティブ)を受け入れている。西部劇でさえこれほど明確かつ粗雑に善悪の線が引かれたことはない。ホワイトハウス、議会、報道機関は、ウクライナはいわれのない侵略の無実の犠牲者であり、ロシア軍を阻止しなければ欧州全土を脅かすことになる、米国は勝利を確実にするために「必要な限り」ウクライナと協力しなければならない、と主張している。
この総意に異を唱えることは、ほとんど不可能である。2003年のイラク侵攻のときでさえ、わずかに自制を求める声はあった。ウクライナ戦争に突入してからは、そのような声を見つけるのはさらに難しくなった。

今日、ウクライナ紛争のすべての当事者に何らかの責任があると示唆すること、米国は活発な紛争地帯に高性能の武器を投入すべきではないと主張すること、この紛争の結果に重大な利害関係があるか疑うことは、反逆罪ではないにしても異端とみなされる。知的な飛行禁止区域の厳格な実施により、ウクライナに関する理性的な議論はほぼ窒息状態にある。

ワシントンの政治権力の中枢では、ウクライナはほとんど神秘的な存在となっている。ウクライナは地理的な場所というよりも、人類の未来にとって決定的な戦いが展開されている宇宙的な舞台と考えられている。この戦争は、米国がロシアを血祭りに上げる輝かしいチャンスであり、世界のパワーバランスが変化しても、米国の支配に変わりはないことを示すものとみなされている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対する米国の熱愛の爆発は、抗しがたいメディアキャンペーンの勝利であった。ゼレンスキー氏は、自由の新たな世界的英雄として登場した。一夜にして、その姿が店のウィンドウやインターネットのサイトに躍り出た。 

一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、下品で堕落したな性格の典型として描かれている。プーチン氏は、国家や運動、思想などではなく、一個人に憎しみを集中させるという私たちの欲求を満たしてくれる。長年にわたり、私たちは〔キューバの〕カストロ、〔リビアの〕カダフィ、〔イラクの〕サダム・フセインといった色とりどりの敵に対して道徳的な優位性を享受してきた。プーチン氏はこの星座に完璧に当てはまる。漫画のように邪悪な敵がいることは、聖人君子のようなゼレンスキー氏が味方にいるのと同じくらい心強い。

昨年、戦争が勃発した直後、米議会はウクライナへの400億ドルの支援を決議した。驚くべきは、その規模だけでなく、民主党議員が全員賛成したことである。反対したのは上院議員11人、下院議員57人で、すべて共和党員であった。マスコミは拍手喝采した。

戦争中の国は、直接の戦争であれ代理戦争であれ、その戦争が良い考えかどうかという議論を奨励したりはしない。米国も例外ではない。エイブラハム・リンカーンやウッドロウ・ウィルソンは、自らが行った戦争を批判する者を投獄した。ベトナム戦争に反対した人たちは起訴された。ウクライナへの関与をめぐる議論が幽霊のように消えてしまったのは、公式の物語形成の最新の勝利といえる。

冷戦は間違いなく、現代史の中で最も強力に展開された物語であった。何年もの間、米国人は、いつ攻撃されてもおかしくない敵に命を狙われており、米国は破壊され、地球上の有意義な生活の希望はすべて失われると信じるように言われ、実際そう信じていた。その敵はモスクワにいた。

その頃、米国人はすでにロシアを「他者」、つまり文明をつねに脅かす野蛮な力の化身として見ることに慣れきっていた。1873年には、米国の漫画家がロシアを毛むくじゃらの怪物として描き、ハンサムなアンクル・サム〔=米国〕と世界の覇権を争っていた。この原型は世代を超えて受け継がれている。多くの国民がそうであるように、米国人も、憎むべきと言われた国に対しては、簡単に憎むように動員される。その国がロシアであれば、何世代にもわたって心理的な準備をすることになる。 

ワシントンの政治家たちは、ウクライナ戦争に飛びつくことを許されるかもしれない。有権者はもっと差し迫った関心事を抱えているから自分達を罰することはないし、武器メーカーは多大な報酬を与えてくれると踏んでいるのだ。しかし報道機関の態度は、あまり許されるものではない。報道機関は不快な疑問を投げかけて本来の役割を果たすどころか、ほとんどウクライナの公式の物語の一番の応援団になってしまっている。

戦場での報道はほとんどすべて、「我々」の側からのものだ。私たちは、ロシアの残虐行為やその他の非道な行為に関する記事を際限なく読む。その多くが正確であることは間違いないが、報道のバランスが悪いために、私たちはウクライナ軍が戦争犯罪を犯していないと推定してしまう。アムネスティ・インターナショナルが発表した、ウクライナが戦闘中に人間の盾を使用しているという報告書には、怒りと非難が向かった。その教訓は明確だ。すなわち、正義は一方にあるのだから、現場からの報告はそれを反映したものでなければならないのだ。

この紛争について書く人の多くは、冷戦時代の先達がそうであったように、米政府はチームであり、報道は我々のチームの勝利を保証する役割を担っていると信じているようだ。このような考え方は、ジャーナリズムにとって死を意味する。報道は誰のチームでもないはずだ。 我々の仕事は公式の物語に挑戦することであり、安易にそれを増幅させることではない。それがジャーナリズムと広報活動の違いである。

紛争がさまざまな視点から報道された時代に戦場記者だった私たちにとって、ウクライナに関する報道の一面性は最も印象的なものである。私は〔ニカラグアの左翼運動〕サンディニスタと〔同国の右派ゲリラ〕コントラ、セルビア人とクロアチア人、トルコ人とクルド人などを取材した。そのような経験から、紛争においては、片方が美徳を独占しているわけではないことを学んだ。しかし、今日の米国人はその逆のことを聞かされている。すべての美徳は一方にあり、すべての悪はもう一方にあるという、無邪気な物語を聞かされているのだ。

ウクライナ戦争を両側から取材しようとしない戦場記者たちの姿勢は、社説や論説のページにも反映されている。この戦争について根本的な疑問を投げかける大手新聞社はないようだ。 

プーチン氏が国境に敵の基地を置きたくないと思うのは正当なことなのか。政治的主張のために、何千人もの死者を出すことに貢献する必要があるのか。我々は戦争を誘発する手助けをしたのか。ウクライナの軍隊のどれだけが親ナチなのか。ドンバスの国境線がどこに引かれているかが、なぜ米国にとって重要なのか。巨額の援助を送る前に、世界で最も腐敗した国の一つであるというウクライナの評判を考慮する必要があるのか。この紛争は、本当に民主主義と独裁主義の対決なのか、それとも単なる欧州の山火事なのか。

米国がウクライナ戦争に深入りしているときでさえ、こうした疑問は失礼にあたるとされている。政党やメディアを束ねる息苦しい総意が、思慮深い議論を阻んでいるのだ。ウクライナ戦争がもたらした最悪の結果の一つは、すでに明らかだ。この戦争は、米国人の心を再び閉ざすことになったのである。

Putin & Zelensky: Sinners and saints who fit our historic narrative - Responsible Statecraft [LINK]

2023-02-26

【コラム】「徹底抗戦」を叫ぶのは誰か

木村 貴

ロシアがウクライナへの「侵攻」を始めてから2月24日で1年を迎えるのを機に、メディア各社はさまざまな特集を組んだ。残念ながらその多くは相変わらず、「ウクライナは善、ロシアは悪」という単純で誤った図式に従い、ウクライナへの支援継続、つまり戦争の継続を支持する内容だ。
朝日新聞デジタルが2月19日に掲載した、東野篤子・筑波大教授(国際関係論)へのインタビュー記事はその典型といえる。「徹底的に戦うつもりのウクライナを、米欧諸国は戦闘が続く限り支えるしかない」という結論に至る東野教授の主張は、一部に重要な事実を含むものの、問題点が少なくない。

「今も激しい戦闘が各地で続いているような状況を想定していましたか」という聞き手(多鹿ちなみ記者)の質問に対し、東野氏は「私はロシアが全面侵攻を始めた時点で、長期化は避けられないと思っていました」として、その理由を次のように説明する。

ウクライナ国内では2014年に東部ドンバス地方で戦闘が勃発しましたが、それから8年間、一度たりとも停戦はできていませんでした。その戦闘が規模を拡大し、ウクライナ全土に至る攻撃につながった形です。これまで8年間続いていた事態がさらに悪化しているのに、短期間で終わるわけはないだろうと思っていました。

ここで重要な事実がさりげなく語られている。今回のウクライナ戦争は、2014年にドンバス地方で勃発した「戦闘」から直接つながった延長戦上にあるということだ。言い換えれば、戦争が始まったのは2022年ではなく、2014年なのだ。そうだとすれば、今回の戦争の本質を考えるには、少なくとも2014年以降の経緯を論じなければならないはずである。

たとえば、2014年2月、米国の支援を受けたクーデター(マイダン革命)によって、合法に選ばれた親ロシア政権が倒され、民族主義者が権力を握った事実や、それ以降の出来事だ。新政府はロシア語の使用禁止などロシア系市民に対する差別政策を打ち出し、東部・南部で大規模な抗議デモが起こる。ウクライナ政府側はこれを暴力で弾圧し、血生臭い内戦が始まった。8年間でロシア系市民1万3000人が死亡したとされる。

だから2022年に侵攻を始めた際、ロシアのプーチン大統領がその目的として掲げたのも、「8年間、ウクライナ政府によって虐げられ、ジェノサイド(大量虐殺)にさらされてきた」ロシア系市民の保護だった。軍事侵攻がその手段として最善だったかどうかという議論はあるにせよ、これらの経緯を踏まえなければ、ウクライナ戦争に対して適切な評価はできないだろう。

ところが東野氏は、ドンバスでの「戦闘」が今の戦争につながったと認めながらも、それがウクライナ政府とロシア系市民との内戦であることや、内戦の原因については、少なくとも今回の記事ではほとんど触れていない。これでは何も知らない読者は、まるでウクライナ政府と全国民は一枚岩であり、一丸となってロシアに抵抗しているかのように誤解してしまうだろう。

東野氏は、後述する「ブチャの虐殺」などにより、ウクライナ人が「ロシアの支配下における平和はありえない」ことを骨身に染みて感じたから、「徹底抗戦という姿勢が固まったのだと思います」という。しかしロシア系市民にとっては、むしろ「ウクライナ政府の支配下における平和はありえない」と痛感する8年間だったろう。

東野氏はこの後も、ロシア系市民の存在を無視し、無理のある議論を展開していく。

実際、昨年3月に一連の停戦協議がありましたが、まとまりませんでした。ロシアが要求してきたのは、ウクライナの「中立化」と「非武装化」。ウクライナはどこの軍事同盟にも属することができず、自分で自分の身を守ることもできないという条件です。ウクライナ側がのめるわけはありませんでした。

ここで東野氏は、あたかもロシアが正当な理由もなく、ウクライナに無理難題を吹っかけたかのように語っている。しかしロシアが求める「中立化」「非武装化」とは、ロシア系市民の保護という目的を達する手段だ。その背景には、米欧諸国がウクライナ政府に大量の武器と資金を供与し、それがロシア系市民の虐殺に使われたという現実がある。

ウクライナ政府が米欧とつるんでそのような蛮行に手を染めてきた以上、ロシアから「中立化」「非武装化」を迫られたとしても、「どこの軍事同盟にも属することができず、自分で自分の身を守ることもできない」などと、泣き言をいえた立場ではあるまい。

2023-02-25

反戦デモはなぜ重要か

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年2月20日)

日曜日(2月19日)、ワシントンのリンカーン記念館に、米国の軍国主義、代理戦争、ウクライナでの核瀬戸際政策に抗議するため、さまざまな政治分野から何千人もの人々が集まった。

ソーシャルメディア上では、この人数を軽く見ようとする人も見受けられたが、「レイジ・アゲインスト・ザ・ウォー・マシーン(戦争機構への怒り)」の集会の映像から、参加者が数千人であることは明らかだ。
これは私が知る限り、近年の米国人の反戦デモのなかではかなり多い参加者数だ。イラク戦争に抗議する歴史的な数のデモにはとうてい及ばないし、このように人類の存亡に関わる重要な問題に対しても、あるべき姿にはとうてい及ばない。

しかし、これは始まりだ。何か良いことの始まりかもしれない。ANSWER(戦争をやめさせ人種差別をなくすために今すぐ行動しよう)連合は、イラク侵略20周年の3月18日にワシントンで行進を予定しており、ウクライナでの「紛争拡大ではなく交渉」を求め、海外での米国の軍国主義を終わらせることを要求している。このまま盛り上がるかどうか、見ものだ。

反戦デモの批判として耳にするのが、「変化をもたらさない」というものだ。「何百万人もの人々がイラク侵略に反対して行進したのに、米国はとにかくイラク侵略を行った」というのが、よく言われる感想だ。

たしかにデモはイラク侵攻を阻止できなかったが、イラク戦争後の米国の戦争機構の実際の行動を見れば、国民の反対に対して守勢に立っているのは明らかである。

もし反戦デモが何の変化ももたらさないのであれば、アメリカ帝国は2003年以降、全面的な地上侵攻を完全に放棄したりしなかっただろうし、より卑劣で効果の低い戦争手段に切り替える一方、反戦感情を抑えるために前例のない物語(ナラティブ)管理体制を立ち上げたりもしなかったはずだ。アメリカ帝国はブッシュ時代の超人ハルク流の地上侵攻を放棄し、無人偵察機、代理戦争、秘密作戦、制裁を選んだ。十分な数の人々が立ち上がり、「ノー」と言った結果、大衆が目覚めて帝国やその組織に敵対し始めることを恐れたのだ。

そして今、人々は代理戦争にさえ抗議し始めている。支配者が暴力と強制力によって世界を巧みに支配する能力を失い、私たちを支配し続ける能力さえも失う可能性があることに、神経質になっていることは保証できる。

これらの事実は、きわめて明瞭な違いを生んでいる。シリアとイランが主権を維持し、他国に吸収されず、今日帝国の死者数がそれほど多くない唯一の理由は、十分な数の人々がそのような戦争に「ノー」を突きつけたからだ。

私たちの支配者は、同意を得ることに多大な労力を費やしている。なぜなら、支配するには同意が絶対に必要だからだ。支配者の最悪のシナリオは、帝国の戦争機構に「ノー」と言う人々の大規模で強固な運動が出現することだ。軍事の暴力とその脅威が帝国をまとめる接着剤だからである。それは帝国の最も重要な側面に人々の意識を向けさせることであり、同時に最も防御しにくい側面でもある。

〔言語学者・政治評論家の〕ノーム・チョムスキーは「プロパガンダは民主主義国家にとって、全体主義国家にとっての棍棒のようなものだ」と言った。何世紀にもわたって、他の人間に対する大規模な権力を求める人々は、武力で支配するよりも人の心理を支配する方がエネルギー効率がよく、ギロチンの刃の先〔=革命・反乱〕で殺される可能性もはるかに低いことを発見したからだ。ひどく不自由な民衆を騙して、自分たちが自由だと思わせることができれば、民衆から自由を奪い取るためにこれ以上エネルギーを浪費する必要はない。

しかしこのことが意味するのは、私たちを支配する権力構造全体が、プロパガンダをうまく運用し、自由の幻想を維持できるかどうかに、完全に依存しているということである。もしやりたいことに対する同意を製造できないなら、必要な同意を製造できるようになるまで控えるか、あるいは国民の同意なしに、とにかくやるしかない。もしそうすれば、支配機関に対する国民の信頼はただちに崩壊し始め、人々を洗脳できなくなる。なぜなら、プロパガンダは人々がその情報源を信頼している場合にのみ機能するからである。

もちろん、支配者はその気になれば全体主義という直接の攻撃に切り替えることができるが、そうなれば怒れる民衆、しかも米国の場合は重武装した民衆に直面することになる。米国の中央集権的な権力構造を支えているすべての物語管理は、世界中で信頼を失うだろう。「自由を愛する善人」対「暴君の悪人」という帝国プロパガンダの枠組みが、もはや信じられなくなるからである。

アメリカ中央集権帝国は、国民に説明責任を果たし、対応しているという幻想を保てなくなれば、崩壊する。

もちろん一回の抗議行動に数千人が参加したからといって、世界に平和が訪れるわけではあるまい。数百万人でさえ十分ではないだろう。しかし公共の場でのデモは、この世界で実際に何が起こっているのか、支配者たちは本当は何をしようとしているのか、私たちはこれまでどれだけ騙されてきたのかということを、社会に認識させる多くの方法の一つだ。なぜなら、十分な認識を持てば、人々は自分たちの利益に反すると気づいたことに同意するのをやめるからだ。

人間の行動における好ましい変化は、つねに意識の拡大が先行する。だからデモは歴史上の公民権運動で非常に重要な役割を果たしたし、アメリカ帝国はベトナム戦争以来、西側世界で活発な反戦運動が再び起こるのを阻止しようと多くのエネルギーを注いできたのだ。

私たちがやっていることは、人類が意識を持つよう、少しずつ働きかけていくことだけだ。オンライン・ビデオ、ブログ、ツイート、ミームなどの新しいメディアや、小冊子、演説、落書きなどの古いメディアも、この目的のために使うことができる。帝国主義の戦争主義の恐ろしさに目を向けさせ、反戦運動に実際の動きをもたらすために、できることは何でもするべきだ。私たちの生存は、それにかかっているかもしれない。

The Power-Serving Myth That Anti-War Protests Make No Difference – Caitlin Johnstone [LINK]

2023-02-24

キューバとベトナム、何が違うのか?

自由の未来財団(FFF)代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年2月17日)

メキシコのロペスオブラドール大統領は、キューバのディアスカネル大統領のメキシコ来訪中、米政府に圧力をかけ60年に及ぶキューバに対する経済封鎖を解除させる、国際的取り組みを主導する意思を表明した。ロペスオブラドール氏は「アメリカ大陸のすべての国々が力を合わせる親善の印として、米政府はキューバ国民に対する不当かつ非人道的な封鎖をできるだけ早く解除すべきだと考え、謹んで表明する」と述べた。
ロペスオブラドール氏は良い点を指摘している。なぜ米政府は、キューバの人々に対して不当かつ非人道的な経済封鎖を行い、経済戦争を続けるのか。

いや、米当局者がディアスカネル氏らキューバの共産主義者を受け入れなければならないと言っているのではない。私が言いたいのは、米政府には、キューバ国民に対する経済戦争を正当化する道徳的・法的根拠がないということだ。

結局のところ、重要なことを忘れてはならない。キューバ国民もキューバ政府も、米国を攻撃したり侵略したりしたことはないのだ。一度もない。実際、米国とキューバの長い不毛な関係では、つねに米国が侵略者だった。

キューバ人亡命者を使ってキューバを侵略したのは米中央情報局(CIA)である。キューバの指導者フィデル・カストロを何度も殺害しようとしたのもCIAである。キューバ危機の前も後も、ケネディ大統領に圧力をかけ続け、米軍の総力を挙げてキューバに侵攻させたのは国防総省だった。キューバでの政権交代を実現するために、キューバ国民を死と経済的窮乏の対象としてきたのは米政府である。

なぜか。なぜペンタゴン(国防総省)とCIAにとって、キューバの人々に対して経済戦争を仕掛け続けることがそれほど重要なのだろうか。

結局のところ、冷戦時代に米政府がキューバ禁輸を正当化するために用いた反共主義が理由ではありえない。なぜ、そう言えるのか。それでは、米政府がベトナムをどう扱っているかを見てみよう。ベトナムはキューバ同様、長い間共産主義政権によって運営されてきた。

米国務省のウェブサイトにある、「米越関係」と題するこの文章について考えてほしい。

米越関係は、ますます協力的で包括的なものとなり、政治、経済、安全保障、そして人と人とのつながりにまたがる繁栄するパートナーシップへと発展してきた。米国は、国際安全保障に貢献し、互恵的な貿易関係を結び、人権と法の支配を尊重し、気候やエネルギー関連の課題に直面して回復力のある、強く、繁栄し、独立したベトナムを支持する……。米国とベトナムの人と人とのつながりも盛んになった。何万人ものベトナム人が米国に留学し、米経済に10億ドル近く貢献している......。ベトナムの自立を目指し、米国はさらなる成長と貿易競争力の強化、パンデミック対策、再生可能エネルギーの推進、戦争の遺産問題への取り組み、ベトナムの森林と生物多様性の保護に努めている。2001年の米越二国間貿易協定の発効以来、二国間の貿易と米国の対ベトナム投資は飛躍的に伸びている。

米戦略国際問題研究所(CSIS)のウェブサイトが次のように指摘している。

米国とベトナムのパートナーシップの現在の深さと広さは、決して予見されたものではなかった。両国の数十年にわたる努力と忍耐の結果である……。1995年の国交正常化以来、ベトナムは米国の投資家にとって最も関心の高い国のひとつに挙げられている。米国のベトナムへの海外直接投資は、2011年の10億ドル未満から2019年には26億ドルを超えるまでに成長した。

重要なことを忘れてはならない。キューバの共産政権とは異なり、ベトナムの共産政権は5万8000人以上の米軍兵士を殺害したのだ。 

したがって論理的な疑問が生じる。なぜ米国人はキューバの人々と普通の関係を結べないのか。なぜ米政府は、ベトナム共産政権と友好関係を築いているにもかかわらず、キューバ人に対して残忍な経済戦争を続けなければならないのか。

私見では、ペンタゴンとCIAが、キューバ赤軍に敗北し屈辱を受けたという事実を克服できないからだ。しかしキューバとベトナムには大きな違いがある。ペンタゴンとCIAは、キューバで政権交代を実現することにつねに固執していた。ベトナムで共産主義支配下での国の統一を防ごうとしていた。ベトナムで敗北した後、米政府はベトナムの共産主義支配による統一を覆せないとわかっていた。キューバでは、政権交代という目標達成への望みを捨てていない。

キューバ革命が始まった当初から、ペンタゴンとCIAはキューバの政権交代を実現することに執念を燃やしていた。例えば、共産主義者が権力から追放したキューバの独裁者バティスタや、ペンタゴンとCIAがチリで権力の確立を手助けした残忍な軍人暴君ピノチェト元大統領のようにである。

ペンタゴンとCIAは、その全能の力をもってしても、キューバにおける政権交代の目標を達成できなかった。第三世界のキューバ共産主義政権は米政府を一歩一歩くじき、その過程でペンタゴンとCIAの両者を深く辱め、屈服させた。

さらに何十年もの間、国防総省とCIAはあきらめて、フィデル・カストロが死ぬのを待ち、キューバ国民が蜂起して別の親米独裁者を据える日が来ることを期待した。しかしそれは実現せず、国防総省やCIAの内部では、恥ずかしさと屈辱感が深まるばかりだった。フィデルとラウルのカストロ兄弟の後を継いでキューバ大統領となったディアスカネルは、自らも共産主義者を自認している。

国防総省とCIAが決して認識できない、あるいは認識しようとしないのは、キューバ国民が一番望んでいないのは、米政府による支配を再び受けることだということだ。社会主義の下で生きることの恐ろしさにかかわらず、社会主義と米国の支配のどちらかを選べと言われれば、ほとんどのキューバ人はいつでも社会主義を選ぶだろう。経済的自由と社会主義のどちらかを選ぶとしたら、ほとんどのキューバ人は経済的自由を選ぶだろう。ただし、米政府が彼らの生活に介入しない限りはである。

ペンタゴンとCIAがキューバを支配することへの執念を捨てきれないでいることは、痛いほど明らかである。この道徳的、経済的な茶番に対する最終的な答えは、米国人にある。結局のところ、ペンタゴンとCIAによる経済的禁輸は、米国に対する攻撃でもあり、とくに経済的自由、旅行の自由、貿易の自由、結社の自由という、基本的で自然な、神から与えられた権利に対する攻撃なのである。

米国に必要なのは、米国人の良心の復活と自由への渇望である。その日が来れば、ロペスオブラドール大統領が正しく表現しているように、キューバの人々に対する(そして米国の人々に対する)「不当かつ非人道的な」経済封鎖は終焉を迎えるだろう。

Cuba and Vietnam: What’s the Difference? – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2023-02-23

ウクライナ戦争、アフガンの教訓

コロンビア大学教授、ジェフリー・サックス
(2023年2月17日)

経済発展の最大の敵は戦争である。世界がこれ以上グローバルな紛争に陥るようなことがあれば、私たちの経済的な希望も生存も火の海になりかねない。米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は、「終末時計」の針を午前0時まであと90秒に動かしたばかりだ。
昨年、世界で最も経済的損失を被ったのはウクライナであり、その経済は35%崩壊したと国際通貨基金(IMF)は報告している。

ウクライナの戦争はすぐに終わり、経済回復が始まるかもしれない。しかしこれはウクライナが、2014年に勃発した米国とロシアの代理戦争の犠牲者としての苦境を理解することにかかっている。

米国は2014年以降、北大西洋条約機構(NATO)の拡大とロシアの弱体化を目的に、ウクライナに多額の武装と資金提供を続けてきた。米国の代理戦争は通常、数年、数十年にわたって激化し、ウクライナのような戦場となる国を瓦礫の中に置き去りにする。

代理戦争がすぐに終わらない限り、ウクライナは悲惨な未来に直面する。ウクライナは、アフガニスタンの恐ろしい経験から学び、長期の惨状にならないようにする必要がある。また、カンボジア、イラク、ラオス、リビア、シリア、ベトナムにおける米国の代理戦争に目を向けることもできるだろう。

1979年、米国はアフガンでソ連に支援された政府に嫌がらせをするために、ムジャヒディン(イスラム主義者の戦闘員)を武装させた。米国の目的は、ソ連を刺激して介入させ、コストのかかる戦争でソ連を陥れることだったと、元米国家安全保障問題担当大統領補佐官のズビグニュー・ブレジンスキー氏は後に説明している。

アフガンが巻き添えになるのは、米国の指導者には関係ないことだった。

ソ連軍は米国の望みどおり1979年にアフガンに入り、1980年代を通して戦った。一方、米国が支援した戦闘員たちは、1980年代にアルカイダを、1990年代初頭にはタリバンを設立した。

米国のソ連に対する「策略」はブーメランとなった。2001年、米国はアルカイダとタリバンと戦うためアフガンに侵攻した。米国の戦争はさらに20年続き、2021年に米国はとうとう撤退した。アフガンで散発的な米国の軍事行動は続いている。

アフガンは廃墟と化している。米国が米軍の支出に2兆ドル以上を浪費する一方で、アフガンは2021年のGDPが1人当たり400ドルを下回る貧困状態に陥っている。

2021年、アフガンへの餞別として、米政府はアフガンのわずかな外貨保有高を差し押さえ、銀行システムを麻痺させた。

ウクライナでの代理戦争は、米政府が当時のヤヌコビッチ大統領の転覆を支持した9年前に始まった。

米国から見たヤヌコビッチ氏の罪は、NATOをウクライナ、そしてグルジアまで拡大しようとする米国の思惑にもかかわらず、ウクライナの中立を維持しようとしたことだ。米国の目的は、NATO諸国が黒海地域でロシアを包囲することにある。この目標を達成するため、米国は2014年以来、ウクライナに大量の武装と資金提供を行ってきた。

米国側の主役は変わらない。2014年のウクライナに関する米政府の指南役は、当時のビクトリア・ヌーランド米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)で、現在は国務次官(政治担当)である。

2014年、ヌーランドは、ジョー・バイデン現大統領が副大統領時代に同じ役割を担っていたジェイク・サリバン補佐官(国家安全保障担当)と緊密に連携していた。

米国は、ウクライナの二つの厳しい政治的現実を見落としていた。

第一に、ウクライナは民族的にも政治的にも、ウクライナ西部のロシア嫌いの民族主義者と、ウクライナ東部とクリミアのロシア系民族の間で深く分断されていること。第二に、ウクライナを含むNATOの拡大は、ロシアのレッドライン(越えてはならない一線)を越えるということだ。

ロシアは、米国によるウクライナのNATO編入を阻止するために、最後まで戦い、必要に応じて紛争を拡大するだろう。

米国は、NATOは防衛的な同盟だと繰り返し主張している。

しかしNATOは1999年、コソボをセルビアから引き離すためにロシアの同盟国セルビアを78日間空爆し、その後、米国はコソボに巨大な軍事基地を建設した。NATO軍は同様に2011年、ロシアの同盟相手であるムアンマル・カダフィ〔大佐〕を倒し、リビアに10年にわたる混乱を引き起こした。ロシアはウクライナにNATOを受け入れることはないだろう。

2021年末、ロシアのプーチン大統領は米国に三つの要求を突きつけた。ウクライナは中立を保ち、NATOに加盟しないこと。クリミアはロシアの一部にとどまること。ドンバス地方はミンスク2協定に基づき自治区とすること、である。

バイデン氏とヌーランド氏のチームは、NATO拡大に関する交渉を拒否した。ヤヌコビッチ政権転覆を支援した8年後のことだ。プーチン氏の交渉要求を米国が真っ向から拒否したため、ロシアは昨年2月にウクライナに侵攻した。

昨年3月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国とロシアの代理戦争の犠牲となったウクライナの苦境を理解したようだ。同大統領は、ウクライナが中立国になると公言し、安全保障の確保を求めた。そして、クリミアとドンバスに何らかの特別待遇が必要だと公然と認めた。

当時のイスラエルのナフタリ・ベネット首相が、トルコとともに仲介役として関与することになった。ロシアとウクライナは合意に至るまで近づいた。

しかしベネット氏は最近、米国が和平プロセスを「ブロックした」と発言した。

それ以来、戦争は激化している。米国の工作員が昨年9月にノルドストリーム・パイプラインを爆破したと、米調査記者セイモア・ハーシュ氏は述べている。

最近では、米国と同盟国はウクライナに戦車や長距離ミサイル、場合によってはジェット機を送ることを確約している。

平和の基礎ははっきりしている。ウクライナが中立的な非NATO諸国となること。クリミアが1783年以来と同じように、ロシアの黒海艦隊の本拠地として存続すること。ドンバス地域については、領土分割、自治権、休戦ラインなど現実的な解決策を見いだすことだ。

戦闘は停止し、ロシア軍は撤退し、ウクライナの主権は国連安全保障理事会やその他の国々によって保証されるだろう。このような合意は、2021年12月でも、昨年3月でも可能だった。

ウクライナ政府とその国民はロシアと米国に対し、代理戦争の戦場となることを拒否すると伝えるだろう。ウクライナの人々は民族間の深い溝を前にして、外部の力が妥協の必要を省いてくれるとは考えず、民族分裂の両側で、平和のために努力するはずだ。

What Ukraine needs to learn from Afghanistan - Taipei Times [LINK]

2023-02-22

ウクライナ支援のコスト

経済学者、デビッド・ヘンダーソン
(2023年2月18日)

2022年、米政府はウクライナへの援助に1130億ドルの支出を承認した。非営利団体「連邦予算責任委員会」によれば、次のとおりだ。
議会予算局(CBO)の推計によると、計1130億ドルのうち66億ドルが2022年度に、377億ドルが2023年度に支出される。さらに、承認された予算の半分以上が2024年度末までに、4分の3以上が2026年度末までに使われると見積もっている。
一般家庭にはどれくらいの負担になるのだろうか。米国には約1億3120万世帯がある。つまり、1世帯あたりの平均負担額は、1130億ドル÷1億3120万で861ドルということになる。

もちろん、平均値は情報不足であることが多い。今回の件もそうだ。ブルッキングス研究所によると、2018年に高所得世帯(所得分布の上位20%に属する世帯)は、連邦政府が徴収した税収の約68%を支払っている。その年、上位5分位に入るには、15万3301ドル以上の所得が必要だった。

インフレ調整後のこの数字は、現在もほぼ同じだと仮定する。また、嘘だとわかっていても、この1130億ドルは新たな借金ではなく、すべて税金から支払われると仮定することにする。これは見た目ほど悪い仮定ではない。新たな負債から支払われ、将来の税金でその負債を返済する限りにおいて、現在のような累進課税構造に基づくと、かなり良い仮定と言えるだろう。

つまり、上位5分位が1130億ドルの68%、768億ドルを負担することになる。上位5分の1の世帯は約2600万世帯ある。つまり、上位5分の1の世帯あたりのコストは768億ドル÷2600万で、2956ドルだ。

他人の戦争に参加するのは大変なことだ。

妻と私の場合を考えてみよう。2018年に私たちの所得は上位5分位、おそらく上位10%のすぐ下に位置している。つまり、私たちは上位10%と同じ程度に高い所得税率に苦しめられているわけではないので、コストは2956ドルよりも2000ドルに近いと考えられる。2200ドルくらいだろう。

このように考えてみよう。戦争が始まった最初の1カ月、妻と私はウクライナ人を助けるために「何かしたい」と思った。友人が、ウクライナに親戚のいる地元のレストラン経営者にお金を渡すことを勧めてくれた。友人は経営者を信頼し、私たちも友人を信頼している。そこで私たちは経営者100ドルを贈った。たいした額ではないことはわかっているが、上記の2200ドルという数字が、いかに「たいした額ではない」かを物語っている。私たちは自発的に寄付した額の約22倍を、連邦税で支払うことになるのだ。

How Much Is US Aid to Ukraine Costing You? - Antiwar.com Blog [LINK]

2023-02-21

自国政府と戦う人たち

自由の未来財団(FFF)代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年2月16日)

最近、ニューヨーク・タイムズ紙に興味深い記事が載った。「祖国と戦うロシア人、その理由は」というタイトルである。記事は、ウクライナ側でロシア兵と戦うロシア人グループについて述べている。このロシア人たちは、ウクライナに侵攻したロシアが悪いという結論に達し、自分たちが正しいと信じる側で戦うことにした。また、プーチン〔露大統領〕の独裁政権に反対し、プーチンを権力の座から引きずり下ろすべきだと考えている。ウクライナ軍内に「自由ロシア軍団」という特殊戦闘部隊を結成している。
当然のことながら、ロシア政府は祖国への裏切り者とみなすものに対して好意的な見方をしていない。タイムズの記事によれば、「先週、ロシア検察庁は軍団をテロ組織と宣言するよう、国の最高裁判所に提訴した」。

ウクライナの対ロシア戦争を支援している米当局者が、ウクライナとともに戦うロシア人を、良心に従って正しいと信じる側で戦う「愛国者」だと考えているのは間違いあるまい。

しかし米国人が同じことをすれば、米政府の立場がロシアの立場と同じになることも間違いない。つまり、かりに米国がロシアと戦争を始めたとする。米国人の中に、米国が戦争を始めたのは間違っていると考え、ロシア側につくことを決意した人がいたとする。ペンタゴン(米国防総省)や米中央情報局(CIA)がその米国人を「愛国者」とみなす可能性はない。米国の当局者はロシアの当局者と同じ立場に立つことになる。米当局者は自国民をテロリストか裏切り者、あるいはその両方に指定することになる。

実際、米国が正式にロシアと戦争していないにもかかわらず、ウクライナに対してロシア側につく米国人がいれば、今日でも米当局者がそのような立場を取ることは疑いない。その米国人は帰国するや否や、連邦刑務所か、キューバのグアンタナモにある米国の拷問・無期限拘留センターに収容されることになるだろう。

事実、戦争となれば、すべての国民は、たとえ自分の国が間違っていても、自分の国の側で戦うよう期待される。国民は、自分の政府が間違っていると断じるのは自由だが、自分が正しいと信じている側につくのは自由ではない。もしそうすれば、厳しく罰せられ、敵対関係が終わった時には処刑される可能性が高い。

それはもちろん、第二次世界大戦中のドイツ政府の立場でもあった。ドイツ国民は、たとえ自分たちの政府が間違っていると思ったとしても、政権と軍隊を支持するよう求められた。政権を批判しただけでも罰せられた。

それが「白バラ」の物語を際立たせている。私は1996年、「白バラ、反体制の教訓」という記事で白バラについて書いた。歴史上、最も感動的な勇気の物語の一つだと考えている。すばらしい映画『白バラの祈り -ゾフィー・ショル、最期の日々』でも学ぶことができる。

ハンスとゾフィーのショル兄妹は第二次世界大戦中、ミュンヘン大学の学生だった。キリスト教徒だった。自分たちの政府が悪いと考え、「白バラ」という小冊子を数人の仲間とともに密かに出版し始めた。ドイツ国民に反抗と政権の追放を呼びかける内容だった。

当然ながら、ヒトラー政権はゾフィーらを快く思わなかった。ゾフィーらが捕まった後、政権はすぐに裁判を行い、有罪を決定した。逮捕から3日後、ゾフィーらは処刑された。

実は、米国にも自由ロシア軍団と似たようなエピソードがある。メキシコ戦争に先立ち、米当局者はメキシコに対し、同国の北半分を購入する金額を提示した。メキシコはその申し出を断った。諦めきれないポーク米大統領は、メキシコが売却を拒んだ土地を支配する目的で、メキシコとの戦争を仕組んだ。

米軍に所属するアイルランド系兵士のグループは、自分たちの祖国が悪いのであって、メキシコが正しいと断じた。そしてメキシコ側で戦おうと決意した。

当然のことながら米当局者は、ウクライナ側で戦うロシア人兵士にロシア当局が示すのと同じような反応を示した。米軍はメキシコシティに到着して戦争に勝つと、アイルランド系米国人兵士を拘束し、うわべだけの裁判もなく即座に処刑した。拙稿「南部国境沿いの愛国心、その2」 を参照されたい。興味深いことに、メキシコはこの聖パトリック大隊の隊員を愛国者、英雄として讃えている。

また、拙稿「テキサスの自由思想家たち」でも、〔南北戦争時の〕南部連合は間違っていると判断し、代わりに北軍に加わろうと決めたテキサスのドイツ系米国人の集団に何が起こったかを取り上げているので、ご覧いただきたい。

戦争になれば、どの国の国民も良心を捨てて、善悪にかかわらず自国の政権を支持するよう期待される。良心に従って行動する者は不幸である。

What If Americans Were Fighting on Russia’s Side? – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2023-02-20

ベトナム戦争とテロの口実

作家、ジェームズ・ボバード
(2023年2月16日)

2001年9月11日の米同時テロ以来、テロは米国の政治エリートにとって究極の権利獲得手段となった。米国人に対する不法なスパイ行為であれ、ソマリアの反体制派を粉々に吹き飛ばすことであれ、テロリズムを持ち出せば、ワシントンの政策立案者にとって必要なすべての隠れ蓑が提供される。しかし、政治家にテロとの戦いの白紙委任状を与えることがもたらす悲惨な結果は、およそ60年前には否定できなかったはずである。
1960年代には、テロは共産主義者のやることだった。反テロの道徳的熱狂とイデオロギーの盲点が、米国を第二次世界大戦以来、最大の外交政策の失策に追い込んだ。

第二次世界大戦後、フランス外人部隊はベトナムの再征服に奮闘していたが、米政府は常にストーリーを誇張し、共産主義者の反対勢力を悪者扱いしていた。1952年、サイゴンの広場に仕掛けられた巨大爆弾の材料を提供したのは、米中央情報局(CIA)の諜報員であった。ライフ誌のカメラマンが現場に待機し、撮影した写真にベトミン(ベトナム独立同盟会)共産主義者の仕業とキャプションを付けて掲載した。ニューヨーク・タイムズ紙は「赤軍の時限爆弾がサイゴンの中心部を襲う」という見出しで報じた。この爆破は「革命テロの長い歴史の中で、最も壮大で破壊的な一つの事件」であり、「この地のベトミンの工作員」によるものだと宣伝された。報道は、共産主義者と戦うフランス軍への米政府の援助に対する国民の支持を高めた。CIAの協力者であるベトナムの軍閥、チン・ミン・チー将軍は、爆弾は自分の手柄だと主張したが、米国のメディアはその発言を無視した。

1954年のフランスの敗戦を受け、ベトナムには米国の軍事顧問団が押し寄せた。1961年、ケネディ大統領はこう宣言した。「今、我々の力を信用させることが問題になっているが、ベトナムはその場所だ」。ケネディ政権はベトナム政策に関して、米国人と議会を深く欺くことで信頼を高めようとしたのである。ケネディ政権は、1954年にフランスとベトナム共産主義者の間で結ばれたジュネーブ平和条約で定められた米国人軍事顧問の数の制限を破った。また南ベトナムに駐留する米軍部隊の数が増え、戦闘が活発になりつつあるときに、顧問という誤った表示で米国人を欺いた。

米政府は、ゴ・ディン・ジエム率いる南ベトナム政府を腐敗、圧政、無能とみなしていた。1963年5月8日、南ベトナムのフエ市で起きた大惨事をペンタゴン文書(米国防総省の秘密文書)はこう伝えている。「政府軍が仏教徒のデモに発砲し、9人が死亡、14人が負傷した。この事件は、全国的な仏教徒の抗議行動を引き起こし、ディエム政権に対する国民の信頼の危機を招いた。(南ベトナム政府は)この事件は(ベトコン=南ベトナム解放民族戦線=の)テロ行為だと主張している」

ジエム政権は、仏教徒がカトリック教徒との法的平等と仏教旗の掲揚を要求したことに激怒した。1963年8月、ペンタゴン文書によると、南ベトナムの特殊部隊は「国中の仏教の仏塔に対して真夜中の襲撃を行った。僧侶を中心に1400人以上が逮捕され、その多くが殴打された」という。CIAはこの特殊部隊を資金援助していた。特殊部隊はベトコンや北ベトナムに対する秘密作戦に使われるはずであり、宗教弾圧のために使われるのではなかった。ディエムの仏教徒に対するテロは、米国を動かしてクーデターを支援させ、ジエムは数カ月後に暗殺された。

米ジョンソン政権は、テロリストというレッテルを利用して米国人を動かし、米国のベトナムへの関与拡大を支持させた。1964年5月18日、ベトナムへの追加資金を求める議会への特別メッセージで、ジョンソン政権はこう宣言した。「ベトコンゲリラは北の共産主義者の命令を受けて、南ベトナムの平和な人々に対するテロ行為を激化している。このテロ行為の激化には、さらなる対応が必要だ」。ジョンソンは、フランスのドゴール大統領が提案した、拡大するベトナム紛争に関するジュネーブ会議を軽蔑していた。ドゴール大統領が提案したジュネーブ会議が「恐怖の批准」になると断じたからだ。1964年6月23日の記者会見で、ジョンソンは「我々の目的は平和である。南ベトナムにいる私たちの仲間は、テロから人々を守るために協力している」と述べた。

米国の政策立案者は、空爆を行う口実を求めていた。1964年5月15日、ヘンリー・キャボット・ロッジ米大使は、南ベトナム空軍が「北ベトナムの特定の目標」を攻撃する計画を、「北ベトナムによる事前の適度な規模のテロ行為」の後に慎重にタイミングを合わせて提案したことが、ペンタゴン文書で明らかになった。

ペンタゴン文書によると、米国は当時すでに北ベトナムに対し「無差別爆撃」を展開していた。「情報収集のための北ベトナム市民の誘拐、破壊工作や心理戦チームの北への降下、海からの鉄道や高速道路の橋の爆破、PTボート(哨戒魚雷艇)による北ベトナム沿岸施設に対する砲撃」などだ。米軍機を操縦するタイ人パイロットが北ベトナムの村を爆撃したり、空爆したりした。しかしジョンソン政権は、米国が挑発行為を行っていることを否定した。

ジョンソンは選挙戦を盛り上げるために、すでに北ベトナムへの攻撃を決定していたのだ。1964年8月2日、駆逐艦マドックスは北ベトナム沿岸で北ベトナム船に発砲した。その2日後、マドックスは北ベトナムのPTボートから攻撃を受けていることを報告した。その数時間後、マドックスの艦長はワシントンに、艦への攻撃は誇張されたものであると電報を打った。「戦闘全体が多くの疑念を残す」。しかしマドックス号の第一報は、ジョンソンがテレビで北ベトナムへの即時「報復」空爆を命じたことを発表するのに必要なものだった。ジョンソン大統領は、北ベトナムを攻撃する無制限の権限を与える決議案を議会で可決した。この決議文は数カ月前に作成され、政権はそれを発表するタイミングを待っていた。

1965年に米国の関与が急速に拡大した当時、ベトコンと南ベトナム政府の両方が人々を恐怖に陥れていた。しかし米政府はベトコンのテロ行為だけを取り上げて、戦争終結前にベトコンや北ベトナム軍よりもはるかに多くの民間人を殺した自国の空爆作戦を正当化しようとした。

米国のメディアは、米政府がベトナム戦争の激化を正当化するために作り出したテロリストの物語を延々と繰り返した。カリフォルニア大学のダニエル・ハリン教授はこう述べる。「民間人に対するテロというテーマは、テレビの描く敵のイメージの中心であった。……北ベトナムに関するテレビ報道は......政治をほとんど排除して、テロに焦点を当てた。米国のメディアも、米軍によるベトナム市民への攻撃をほとんど完全に無視した」

ベトナム戦争を引き起こした政治的陰謀は、米国人に、支配者が唱えるいかなる救済の使命にも注意を払うよう思い起こさせる。米政府は、秘密裏に介入して外国に破壊をもたらした後、つねに無実の傍観者であると主張している。罪のない人々を虐殺する悪の政府や悪の勢力には事欠かない。しかし外国の残虐行為は、現実であろうと想像であろうと、米政府を信用する理由にはならない。

The Forgotten Terrorist Pretext of the Vietnam War | The Libertarian Institute [LINK]

2023-02-19

【コラム】パイプライン爆破とメディアの沈黙

木村 貴

ロシアから欧州に天然ガスを供給する海底ガスパイプライン「ノルドストリーム1」と、未稼働の「ノルドストリーム2」が昨年9月に爆破されたのは米国の工作によるものだという衝撃の記事を、米国の著名な調査報道ジャーナリスト、セイモア・ハーシュ氏が公表した。
ベトナム戦争における米軍の旧ソンミ村虐殺を暴いたことなどで知られ、ピューリツァー賞を受賞している85歳のハーシュ記者は2月8日、メールマガジン発信サービスのサブスタックで執筆を始め、いきなりこの超弩級の暴露記事を公開した。同記者が匿名の消息筋の話をもとに書いたところによれば、米海軍の潜水士たちがバルト海に潜り、パイプラインに爆弾を装着して爆破した。工作にはノルウェー海軍の支援を受けたという。

米政府が工作に動き出したのは2021年12月、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)が米軍統合参謀本部や中央情報局(CIA)などの関係者を招集した会議。当時高まっていたロシアのウクライナ侵攻の可能性に関する対策を協議し、着手が決まった。その後、バーンズCIA長官が海軍潜水士を含む工作計画を練ったという。

記事に対し、ホワイトハウスの報道官は「まったくの虚偽であり、完全なフィクション」と断じた。CIAと国務省の報道官も同じことを述べた。ハーシュ記者は続報を出すと予告しており、真実が明らかになっていくだろう。事実なら、米国はロシアや同盟国であるドイツに対し、戦争行為を行ったことになる。

情けないのは米欧の大手メディアだ。ハーシュ記者の古巣であるニューヨーク・タイムズ紙をはじめ、ほぼすべてが記事に反応せず、国際調査を求めるロシアと中国の声も無視した。かつて同紙やワシントン・ポスト紙は、米軍のベトナム戦争犯罪に関するハーシュ氏の暴露記事を掲載したが、今では「国家の安全保障や戦争と平和の問題」に関心がないように見えると同氏は非難した

大手メディアは昨年9月、パイプラインが破壊された際には、元政府高官らの専門家といっしょに、確たる根拠もなくロシアが怪しいと声高に唱えていた。都合が悪くなるとだんまりを決め込むとは、あまりに無責任だろう。

その点、日本のメディアや専門家もたいして変わりはない。パイプライン破壊当時の報道を振り返ってみよう。

日本経済新聞(電子版)は昨年9月28日、「パイプライン意図的損傷の疑い 欧州はロシア関与を示唆」と題する記事を掲載している。記事のリード文には「欧州各国はロシアによる意図的な破壊工作の可能性があるとみて警戒を強めている」とあるものの、ロシアの関与に言及した実際の発言は、次のようにウクライナ、ポーランドの二カ国だけだ。

ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はツイッターで「ロシアが計画したテロ攻撃で、欧州連合(EU)に対する侵略攻撃だ」と非難した。ポーランドのモラウィエツキ首相も同様にロシアの関与を示唆した。

ウクライナはロシアと戦争中の敵国だし、ポーランドも対露強硬派の急先鋒だ。ロシアに関して客観的な判断ができるとは考えにくい。実際、「テロ攻撃」だと断言したり、関与を疑ったりする根拠も示されてはいない。「欧州はロシア関与を示唆」というタイトルは行き過ぎだと感じる。日経はその後、10月3日の記事で「ガス管損傷、米欧はロシア関与断定回避」と軌道修正している。

産経新聞は10月17日の「主張」(社説)で、「欧州当局はウクライナ情勢にからんだロシア側による破壊工作との見方を強めている」としたうえで、米欧やウクライナが故意に損傷させたとの見方を示したプーチン露大統領に対し、「あまりにも身勝手な言い分である」と非難した。ハーシュ記者にも同じことを言うのだろうか。

一方、朝日新聞デジタルが10月2日に掲載した「ノルドストリームのガス漏れの首謀者は? 欧米とロシアが非難の応酬」という記事は、タイトルからもわかるように、比較的バランスが取れた内容だ。

バイデン米大統領が9月30日、ホワイトハウスでの演説で、ガス漏れの首謀者こそ明言しなかったものの、ロシアを名指しで「偽情報とウソを流し続けている」と非難したと記述。その一方で、ロシアのネベンジャ国連大使が国連安全保障理事会の緊急会合で述べた主張も紹介している。

それによると、同大使は「我々が巨額の投資を行い、経済的利益が得られる可能性のあるプロジェクトを自ら破棄するのは理屈が合わない」と否定。この問題で最も利益を得るのは米国だと名指しした。

NHKのニュースサイトも10月1日の記事「海底パイプラインのガス漏れめぐり 米ロが激しい応酬」で、同じくネベンジャ大使の「ガス漏れで利益を得るのはヨーロッパに天然ガスを供給するアメリカの業者だ」という主張を紹介している。

このネベンジャ大使の主張はまさしく、ロシア犯人説に当初から疑問を投げかけていた海外のジャーナリストアナリストらも指摘していた点だ。ロシアが多額の費用をかけて建設し、経済的な利益を生むパイプラインを自ら破壊するとは、とても合理的に説明がつかない。

ロシアを犯人と決めつけ、合理的に説明のつかないことを無理やり説明しようとすると、おかしなことになる。朝日新聞デジタルの10月2日の記事に、ロシア・東欧が専門の服部倫卓・北海道大学教授がこんなコメントをしている。

確かに、ロシアが巨額の投資を行い、経済的利益が得られる可能性のあるプロジェクトを自ら破棄するのは、普通に考えれば理屈が合わないのだが、ロシアはもうすでに経済的合理性では理解できない国になっている。

ロシアは「経済的合理性では理解できない国」になってしまっているという。すごい話だが、そんなことが実際ありうるのだろうか。服部教授は続ける。

破壊工作がロシアによるものだった場合に、一つの動機の可能性として指摘されているのが、海底インフラの安全性に関する不安感を欧州側に植え付けたいという思惑である。海底にはパイプラインやケーブルなどのインフラが張り巡らされているが、陸上のインフラと違って警備はほぼ不可能である。そこでロシアは、ノルドストリームをわざとらしく破壊することで、「ロシアを怒らせたら、欧州の海底インフラもただでは済まない」という警告を与えた、という解釈である。

なるほど、ロシアは「俺を怒らせたらただでは済まないぞ」と他国に警告する狙いで、せっかく苦労して建設したパイプラインを「わざとらしく破壊」したのか。まるでキレた不良みたいな行動だ。たしかに周囲の国は、「ヤバい奴だ」と恐れをなすに違いない。ただし、この服部教授の紹介する説には問題が一つある。もしその説が正しければ、ロシアは米欧に罪をなすりつけたりせず、ノルドストリームの破壊は自分がやったとドヤ顔で誇らしげに言うはずだ。

2023-02-18

秘密の戦争、国民の無関心

元米ニュージャージー州判事、アンドリュー・ナポリターノ
(2023年2月15日)

秘密裏に戦争行為を行う政府と、それに無関心な国民と報道機関、どちらが個人の自由を破壊するだろうか。反ロシア的な憎悪と戦争の太鼓を鳴らす、現在の米国の毒々しいごった煮(バイデン大統領の米国)には、その両方がある。
以下はその背景である。

ウクライナでの戦争は12カ月目に入った。ロシア軍は西へゆっくりとした、抑えがたい動きとなり、500万人のウクライナ人が痛みを伴って国外に移住し、13万から15万人のウクライナ軍が犠牲になったのは言うまでもない。

米議会は、絶望的な状況にあるウクライナ軍を支援するために、大統領に最大1000億ドルの借金をすることを許可した。大統領はこれまで、軍備と現金の寄付でその約半分を浪費してきた。

軍備の多くは米国の余剰品からではなく、自衛装備の倉庫から提供されたものだ。提供した装備の多くは、ウクライナ軍がオクラホマ州でその使用・維持・修理を学んでいるほど高度なものである。あまりに高性能なため、米軍は制服を脱いでウクライナの現場に立ち、装備の使用や保守をウクライナ人に指導している。米軍兵士がロシア軍に照準を合わせてミサイルを発射しなければならないような装備もある。

軍服を着ていない米兵は、バイデン氏にとって諸刃の剣となる。もし米兵が非武装で軍服を着ていないなら、バイデン氏は合法的に米国の「派兵」を否定することができる。しかし米兵は軍服を着ておらず、敵対行為を支援しているため、合法的にロシア軍に銃撃され、捕らえられ、ウクライナのために働くスパイとして処刑される可能性がある。このようにして、米国は悲惨で犯罪的なベトナム戦争を始めたのである。

バイデン氏の目標は何なのか。ウクライナから、さらにはロシア語圏のクリミアからロシア軍を追放することなのか、それともロシアのプーチン大統領を公職から追放することなのだろうか。どちらの目標も軍事的に達成可能でなく、道徳的、憲法的に問題があるため、ホワイトハウスはこれについて正確に説明することができないし、するつもりもないだろう。

合衆国憲法の文言から明らかなように、議会は宣言していない米国人を巻き込む戦争に資金を提供することはできない。さらに、ロシアの地上軍は30万から50万人規模に拡大しようとしている。これらの部隊は、米国がどのような装備を提供し運用しようとも、ウクライナ軍とその米国人教官を圧倒するだけだろう。

しかし制服のない軍隊を使い、明確で達成可能な目標なしに500億ドルを費やすことは、バイデン氏がこの紛争で下した最悪の決断ではない。そのような無駄はすべてよく知られている。先週まで知られていなかったのは、バイデン政権がドイツとロシアに対して行った戦争行為である。ドイツに対して? そうだ。

ドイツとロシアの産業界は、バルト海に「ノルドストリーム・パイプライン」と呼ばれる天然ガスパイプラインを建設した。このパイプラインにより、ロシア政府は安価なロシア産天然ガスをドイツの電力会社に販売・供給できるようになった。

有名な調査ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ(ソンミ村虐殺事件、ウォーターゲート事件、米中央情報局=CIA=の国内スパイ計画、米国人拷問、ピューリツァー賞で有名)によると、バイデン氏は昨年6月にCIAと海軍の共同作戦でパイプラインを爆発させる準備を命じたという。海軍特殊部隊は海底に潜り、パイプラインに爆薬を仕掛けた。

ハーシュ氏の記事によれば、バイデン氏は9月にCIAに爆薬の設置を命じ、それが実行され、パイプラインに100億ドルの損害を与え、ドイツ、ロシアの経済とバルト海にそれ以上の損害を与えたという。

もし本当なら、これは同盟国であるドイツと、敵国とされているが米国が一度も戦争をしていないロシアに対する戦争行為である。

大統領は、同盟国であれ敵対国であれ、明確な軍事的必要性なしに他国に合法的に暴力を設置することができるのだろうか。一言でいえば、できない。

憲法上、宣戦布告できるのは議会だけである。米国が加盟している条約では、そのような宣言には道徳的・法的根拠、つまり外国軍からの確かな軍事的脅威がなければならない。1973年の戦争権限法では、大統領はすべての暴力的な軍の配備について議会に通知することが義務づけられている。今回の暴力は通告しなかっただけでなく、防衛的でもなく、外国軍から差し迫った危険にさらされている人命を救うことを意図したものでもない。しかも、同盟国に対してである。

別の言い方をすれば、道徳的な軍事目的がないことを知りながら、ドイツとロシアの経済を弱めるために攻撃したことで、この戦争行為は犯罪行為(戦争犯罪)にもなってしまったのである。

CIAの利用は、もちろん偶然ではない。戦争権限法で議会報告と承認が必要なのは、軍事的暴力だけである。もしバイデン氏が攻撃を認めることがあっても、CIAを責任者にすることで、諜報活動だったと主張できるだろう。

CIAの無法で、道徳と無縁で、憲法違反の、殺人的な文化に加え、ハリー・トルーマン〔大統領〕以来、すべての米大統領がCIAを進んでかばってきたことで、第二次世界大戦後の大統領は、破壊と殺害に使用する秘密の私兵を手に入れたのである。

しかしハーシュ氏の報道が真実であれば、バイデン氏は同盟国を攻撃するためにCIAと海軍を利用したことで知られる最初の米大統領になるだろう。独当局がこの攻撃について沈黙しているのは不可解ではないのだろうか。米国の主流メディアはどこにいるのだろうか。思うに、ハーシュ氏はドイツ人と米メディアに恥をかかせたのだ。

報道機関は国民の目であり、耳である。しかし、もし報道機関が臆病になったり、政府と手を結んだりしたら、政府が秘密の戦争を行うときに、誰がそれを暴露するのだろうか。国会議員はどこにいるのだろう。国民の怒りはどこにあるのだろう。

バイデン氏は、自分の大統領としての弱い立場を強化するために、本当に戦争を望んでいるのだ。 どうやら米国民はそれを耐え忍ぶようだ。なぜなら世論をカネで買い、作り上げる政府やメディア、軍産銀行複合体のエリートは、道徳心を持たず、歴史を理解せず、憲法に忠実でなく、罪のない人々を全滅させることに何のためらいもないからである。

What is Biden's goal in Russia-Ukraine war? - Washington Times [LINK]

2023-02-17

私が親ロシア派である理由

米空軍退役中佐、ウィリアム・アストア
(2023年2月13日)

同志諸君、とうとう起きてしまった。私は親ロシア派であると非難されているのだ。

非難されたのは、私が外交とロシア・ウクライナ戦争の交渉による解決を提唱しているからだ。一般に、私は平和派、反戦派だが、ロシア・ウクライナ紛争ではそれが仇となった。
どうやら親ウクライナとは、ロシア軍に対するウクライナ軍の完全勝利を主張し、それに向けて努力すること、つまり、どんな犠牲を払ってでも、すべてのロシア軍をウクライナから追い出すことであるらしい。また、ウクライナは米国や北大西洋条約機構(NATO)から要求されるあらゆる兵器システムを、費用がいくらかかろうとも、その兵器で何人が殺されようとも、手に入れるべきだということである。プーチン〔露大統領〕は悪であり、ロシア人は悪であり、連中が理解できるのは最大限の暴力だけなのだ。

同志諸君、私は自分の親ロシアの立場を受け入れて、それをきちんと説明すべきだと思う。そこで、私のキャッチフレーズが「ロシアより愛をこめて」である理由のトップ10を紹介しよう。

  1. ウクライナに勝ってロシアに負けてほしいし、一年前のプーチンの侵攻は違法かつ非道徳的であったと受け止めている。だから私は親ロシアなのだ。
  2. ウクライナに勝ってほしいが、「勝つ」ための最善の方法は、ウクライナの領土で関係者に多大な犠牲を払って戦う長い戦争だとは思わない。だから私は親ロシアなのだ。
  3. ロシアとウクライナの間で交渉が可能であり、即時停戦によって無数のロシア人とウクライナ人の命が救われると信じている。だから私は親ロシアなのだ。
  4. 欧米のウクライナへの軍事援助が、利害に関係なく、民主主義への愛ゆえに行われているとは思わない。だから私は親ロシアなのだ。
  5. 戦争が長引くと同時に、より激しいものになると、危険な紛争激化につながり、おそらく核戦争にまで発展するのではないかと心配している。この危険は、「終末時計」が真夜中にますます近づいていることに示されている。だから私は親ロシアなのだ。
  6. プーチンを打倒することで終わる戦争は、核の確実性が損なわれる不安定なロシアにつながるのではないかと心配だ。だから私は親ロシアなのだ。
  7. 歴史はロシアがウクライナに不法に侵攻する前に始まっており、NATOがロシアの国境まで拡大することは不必要かつ賢明でないと信じている。だから私は親ロシアなのだ。
  8. 米国の化石燃料会社が、ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の破壊もあり、液化天然ガス(LNG)の輸出を中心に莫大な利益を得ていること、また武器商人の悪徳商法や米国防総省予算の急増に注目しており、この戦争における米国の動機に疑問を抱いている。だから私は親ロシアなのだ。
  9. この戦争ですでに生み出された気の遠くなるような犠牲者(双方でおよそ10万人の兵士が死傷)、何百万人もの難民、ウクライナにもたらされた何十億ドルもの破壊に注目し、さらなる殺害、さらなる戦争に「ノー」と言う方法を模索する。だから私は親ロシアなのだ。
  10. すべての当事者に、成熟した態度を示すこと、さらなる暴力と殺戮を超えた別の方法を模索すること、すべての関係者の安全保障上の利益を尊重する方法、平和と和解を促す方法を求める。だから私は親ロシアなのだ。

同志諸君、以上である。私が親ロシアであり、プーチンの手先であり、ロシア帝国主義の操り人形、あるいは役に立つ馬鹿であることに同意していただけると思う。きわめつけは、フェイスブックのプロフィール写真やツイッターのタイムラインに、小さなウクライナの旗を追加していないことだ。だから本当に、これ以上証拠が必要だろうか。

(次を全訳)
William J. Astore: Why I'm Pro-Russia - Antiwar.com Blog [LINK]

2023-02-16

ロシアとの戦争をどう食い止めるか

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年2月13日)

20年前の今春、米政府はついにイラクとの戦争に我々を陥れることに成功した。政府が次から次へと制裁を加え、爆撃し、侵攻してきたが、ついに20年前のこの春、ブッシュ〔息子〕政権は「衝撃と畏怖」作戦に乗り出し、米国を脅かすことのない、脅かすことのできない国を破壊してしまったのだ。
イラクでの8年間の戦いの後、おそらく100万人もの罪のない人々が、直接的にも間接的にも、米国の侵略行為によって死亡した。その嘘と破壊について、誰も法廷に立たされることはなかった。誰も謝罪さえしなかった。ワシントンの操り人形であるアハメド・チャラビ〔元イラク統治評議会議長〕は、イラクの大量破壊兵器に関する嘘を、戦争推進者たちは「誤りを犯した英雄」だと宣言することで片付けた。彼らは政権交代を実現し、それだけが関心事だったのだ。

当時、イラク戦争を推進するプロパガンダ機構は圧倒的だったようだ。その頃、何人かの同僚議員が党派を超えて連絡を取り合い、戦争を阻止する方法を模索しはじめた。故ウォルター・ジョーンズ元下院議員や同ジョン・ダンカン元下院議員のような保守派から、デニス・クシニッチ元下院議員やジム・マクガバン下院議員のような進歩派、その他多くの議員が組織化され、戦略を練り始めた。

私たちが使った道具の一つは、戦争に反対するために左翼と右翼が団結する「ありえない」連合というアイデアだった。マスコミは私たちの反戦論には関心がなかったかもしれないが、この「人が犬を噛む」というストーリーを見せられたら、どうしようもなかった。「ありえない」グループは、何度も何度も記者会見を開き、さまざまな立法手段を紹介し、舞台裏で連絡を取り合って、イラク戦争に反対する運動を拡大しようとした。

残念ながら2008年にバラク・オバマ氏が当選し、反戦候補として立候補しながらも海外で数々の軍事攻撃を開始したため、この古い連合は崩壊してしまった。進歩派の中には、オバマ氏の軍国主義を許し、保守派との協力に関心を持たなくなった者もいた。保守派の中には、オバマ氏に対する個人的な嫌悪感に駆られ、目標を見失う者もいた。

しかし突然、ウクライナをめぐって、核武装したロシアと直接軍事衝突するというかつて想像もできなかった事態に直面し、左右を超えた連合が長い眠りから覚めようとしている。今週の日曜日、2月19日、ワシントンのリンカーン記念館に広範で非常に多様な団体が集まり、米政府の第三次世界大戦への夢遊病を糾弾する予定だ。

この「戦争機構に怒れ」集会は間違いなく、政府の強力な戦争ロビーに反対する、ここ何年かで初めての大規模な集会となる。私は親友であり元下院議員のデニス・クシニッチ氏とトゥルシー・ギャバード氏、親友でありリバタリアン(自由主義社)仲間のアンドリュー・ナポリターノ判事、さらに幅広い政治領域からの非常に多くの講師と舞台を共有することを楽しみにしている。

私たちの多くは、バイデン政権が多くの共和党議員の熱心な支持を受けてロシア・ウクライナ紛争への関与を絶えず激化させ、今や地球上最大の核保有国との熱い直接戦争に危険なほど近づいているのを警戒しながら見守ってきた。

なぜこんなことになってしまったのだろう。まともな声と冷静な判断力はどこにあるのだろうか。それがどこにもないように思えたから、我々はここにいる。できるだけ多くの人々が加わり、この重要な目的のために集まり続けるよう望む。今のうちに力を合わせなければならない。ロシアと戦争してはならない。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : How We Can Stop the Coming War With Russia [LINK]

2023-02-15

ディープステートへの警告

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年2月10日)

今朝、ロシアがウクライナに向けて発射したミサイルがモルドバ上空を通過し、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるルーマニアの22マイル圏内に入った。もしミサイルがルーマニアに命中していたら、北大西洋条約第5条に基づき、とくにウクライナ上層部で、NATOが即応してロシアを攻撃する要求が高まったことだろう。
またNATOはモルドバを加盟させたいと考えており、そうなれば米国民が自動的に守らなければならない国の数は31カ国になることも注目すべき点だ。

米国防総省(ペンタゴン)が米国民をロシアとの全面核戦争という殺戮に近づける今、アイゼンハワー大統領が米国のディープステート(闇の政府)について米国民に発した警告を思い出さずにいられない。

アイゼンハワーは「告別の辞」の中で次のように述べた。

巨大な軍事組織と大規模な軍需産業の結合は、米国の経験上、新しいものである。経済的、政治的、精神的なものまで含めたすべての影響が、あらゆる都市、州議会、連邦政府のあらゆる官庁に及んでいる。この事業を急ぎ進めることが必要であることは認識している。しかし、その重大な意味を理解しないわけにはいかない。私たちの労苦、資源、生活すべてが関わっている。私たちの社会構造そのものもしかりである。

政府の審議会では、それが意図されたものであろうとなかろうと、軍産複合体による不当な影響力の獲得を防がなければならない。誤って与えられた権力の出現がもたらすかもしれない悲劇の可能性は存在するし、存在し続けるだろう。この軍産複合体の影響力が自由や民主手続きを危険にさらすことを決して許してはならない。何ごとも確かなことは一つもない。警戒心を持ち見識のある市民だけが、巨大な軍産機構を平和的な方法と目標にふさわしく結びつけ、安全と自由をともに繁栄させることができる。

アイゼンハワーは、左翼的な平和主義者ではなかった。陸軍士官学校の卒業生である。元陸軍大将で、正確には五つ星の将官だった。第二次世界大戦では連合国軍の最高司令官を務めた。軍部の構造を深く理解していた。

アイゼンハワーが演説したのは、米国がロシアをはじめとする共産圏と冷戦状態にあった頃である。したがって、アイゼンハワーが「この事業を急ぎ進めることが必要であることは認識している」と述べたのは、冷戦が米国のディープステートの大規模な台頭を必要としていたことを指摘したのである。

私はその正当性に疑問を感じている。米国がこれまでに犯した最大の過ちは、連邦政府を、建国時の最小限の政府による共和制から、安全保障国家に転換したことだと考える。安全保障国家は国家主導の暗殺などで、共産主義者や全体主義者が行使するような多くの全体主義的権限を行使している。自由な国は自由によって共産主義と戦うのであって、全体主義や闇の政府の力によって戦うのではない。

とはいえ、冷戦が表向き1989年に終結したのは紛れもない事実である。したがってアイゼンハワーがディープステートを正当化する根拠は、この年に消滅した。残されたのは、米国の中核にある巨大で不変の軍産機構が私たちの生き方にもたらす危険についての警告だけである。この機構は、1962年のキューバ・ミサイル危機を前にしたときと同じように、私たちを核戦争に危険なほど近づけている。

今こそ、米国民はアイゼンハワーの警告を真剣に考え、反省し、わが国の異なる方向性、すなわち、建国時の最小限の政府による共和制の回復と、不干渉主義という建国時の外交政策の回復を考える良い機会だろう。

アイゼンハワーが警告したような非常に危険で有害な方向に、国防総省が米国を動かしていることに疑いの余地はない。米国人が国の方向を変える機会を得る前に、国防総省が全面核戦争という殺戮を引き起こすことに成功し、この問題を無意味なものにしないよう祈ろう。

(次を全訳)
Ike Was Right about the Deep State – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2023-02-14

自由主義と多極世界

フィン・アンドリーン
(2023年2月7日)

現在の国際緊張は、少なくとも十年前から存在する、世界と国際関係に対する二つの根本から異なる見解、すなわち一極世界と多極世界の間の議論を激化させている。自由主義者が外交政策について意見を異にするとき、その根本の原因は、しばしばこの世界観の違いにある。本稿の目的は、一極世界は自由主義の原則に反し、多極世界は世界における自由への重要な一歩であることを示すことにある。

一極対多極


一極世界とは、一極の権力に主導された世界である。たとえば現在のワシントンを中心とする、自由主義的なルールに基づく国際秩序がそうだ。この国際秩序は、国際法とは異なる、柔軟であいまいな概念である(両者は時に一致することもあるが)。これは米国が西側の同盟国とともに1945年に作り上げ、1991年のソ連崩壊以降、拡大しようとしている世界である。

その根底にあるのは、西側の政治体制である「自由民主主義」には道徳的な優越性があり、その世界支配が正当化されるという考えである。それは定義上、覇権主義的な野心を持つ権力だ。一極世界とは、国民国家が独立性を欠く世界である。国民国家は(もちろん自らの利益のために)支配される。権力の中心によってだけでなく、その中心に忠誠を誓う超国家機関によって間接的にも支配される。

多極世界は、上記の一極世界とは正反対である。国際法、とくに国際連合憲章をより厳格に尊重する世界だ。このような国際関係に基づく見方では、政治体制に価値判断が下されることはない。それどころか、政治体制は特定の政治文化と歴史の帰結とみなされる。多極世界は普遍主義ではない。世界の政治権力は多極に分割・共有されており、国民国家は超国家的な制度に服従することはない。

このように、多極と一極は互いに相容れない。この事実によって、現在の国際関係の緊張はおおまかに説明できる。

一極世界を支持しない理由


一見すると、自由主義者が多極世界を好むのは奇妙に思えるかもしれない。たしかに一極世界は西側が中心であり、他の諸国よりも市民の自由が尊重されていると思われがちだ。さらに、自由主義者が思想として取り組むのは、異なる政治圏の企業・個人間の自由貿易を妨げる政治的・法的障害を最小化する、開かれた世界である。

自由主義者にとって、単一の政治主体が世界を管理し、平和を確保し、国民国家間の政治的境界を低くする一極体制を好むのは、自然なことではないだろうか。この問いに対する答えは、はっきり言って「ノー」である。一極世界を支持するのは、古典的自由主義の起源である普遍主義、啓蒙主義から生じた誤りだ。権力の勝者が慈悲深く平和を愛する保証はない。もしそうでなかったらどうなるか。実際、一極世界への支持は、米連邦政府の本質に対する無知によって説明できることが多い(その本質がジョン・T・フリン、ロバート・ヒッグス、ノーム・チョムスキー、エドゥアルド・ガレアーノ 、ジョン・パーキンスといった知識人やジャーナリストによって何十年にもわたって暴露されているにもかかわらず)。

さらに、現在の一極世界には、経済的にも政治的にも、それ自体で示されるような自由はない。欧米では非自由主義的な政策(苛酷な課税など)の例があふれている。西側のエリートは、たとえば西側と発展途上国の間の自由貿易を、後者〔訳注・「前者」の誤りか〕に不利になるように実施しようとは決してしない。加えて、欧米では民主主義の正統性の問題があまりにも一般化しており、大多数の意思に反して指導者によって意思決定がなされることがしばしばある。

さらに、マイケル・レクテンワルド教授が一連のすばらしい論文で示したように、一極世界は政治的グローバリゼーションに向かっており、これはまぎれもなく国際ファシズムの一形態である。当初から一極世界は、米ドルを基盤とする西側金融制度を優遇していたため、不公平で不安定だった。協力しない国に対しては、さまざまな形の強制が存在する。軍事利用の脅威は明らかだが、米国法の治外法権原則(海外腐敗行為防止法など)も脅威となる。一極世界はその本質からして、権力中枢の政治的立場に完全に従いたくない国々の内政に対し、違法かつお節介な介入を絶えず行わなければ存在しえない。それが一極世界を維持・拡大する唯一の方法なのである。

内政不干渉と権力分散


したがって一極世界は、自由主義の基本である内政不干渉の原則に真っ向から対立する。不侵略の原則、そして自由主義にとって重要な国家間の平和交流は、国際法によってよりよく表現され、保護される。

自由主義は、国民国家内における政治権力の分散を根本から認めている。同じく自由主義は、国家間における政治権力の分散を支持するはずだ。これはもちろん、多極世界を支持することに等しい。分権化の利点は、ラルフ・ライコ、ドナルド・リビングストンといった自由主義の歴史家によって証明されている。何世紀にもわたる欧州の小規模な政体間の競争は、欧州社会の経済発展と政治自由化のカギだった。

多極世界は、根強く残る国家主義のせいで、自由主義の観点からは十分な発展とはいえないが、一極世界に比べれば、自由への重要な一歩であることは確かである。したがって自由主義者は、先に述べた理由から、多極世界を支持し、一極世界を拒否しなければならない。この立場は、たとえ現在あまり人気がなくても、強く表明される必要がある。なぜなら多極世界は、自らの支配的立場に慣れた西洋ではまだ十分に理解されておらず、受け入れられにくいからである。

(次を全訳)
Why Libertarians Should Support the Multipolar World | Mises Wire [LINK]

2023-02-13

中国スパイ気球のデマ

コラムニスト、ポール・クレイグ・ロバーツ
(2023年2月7日)

ロシアゲートのデマ、コロナ感染症のデマ、米連邦議事堂襲撃のデマに続いて、今度は中国スパイ気球のデマがやってきた。

米政府と取り巻きメディアによると、中国が送った気球は、米国防総省によれば爆発物を積んだ「可能性」があり、米国をスパイする目的だという。ある上級将官は、同様の気球が以前にも発見されずに米国領空に侵入したことがあると述べた。 気球は高さ200フィート、重さ2000ポンドの巨大なものだ。このような大きな物体が発見されずに領空に侵入できるのであれば、はるかに小さな大陸間弾道ミサイル(ICBM)も可能ということになるのだろうか。
この事件は、中国に対する反感をさらにかき立て、アジアでの防衛費を増やすためのプロパガンダとして、意図的に作られたものであることを理解してほしい。 マレーシアの旅客機を中国のせいにすることはできないが、気象観測気球はできる。

国防総省のブリーフィングで洗脳されたジム・ハイムズ議員(民主党、コネチカット州)は、撃墜された「中国のスパイ機」の破片から米当局が「多くを学ぶだろう」という。

他の二人の下院議員(一人は共和党、一人は民主党)は、吹き飛んだ気象観測気球を「米国の主権の侵害」と断言した。

中国側の説明だけが道理にかなっている。

「これは主に気象学の研究に使われる民間の飛行船である。偏西風の影響を受け、自己操縦能力に限界があったため、予定したコースから大きく外れた。 中国側は、予期せぬ意図しない結果で、飛行船が米国領空に入ったことを遺憾に思っている。中国側は米国側と連絡を取り続け、風と限られた操舵能力によって生じたこの予期せぬ事態を適切に処理する」

しかしスパイ話は終わらない。 中国との関係を悪化させるために必要なのだ。中国という第二の核保有国を敵に回すために、米政府は可能な限りのことをやっている。 最近のスパイ活動は気象観測気球ではなく、人工衛星によって行われていることに留意してほしい。 もし中国が気球を使って米国をスパイしているなら、なぜ中国はコロンビア上空に気球を飛ばしたのだろう。 なぜ中国は南米をスパイしているのか。

コロンビア軍は、この気球が国家安全保障、防衛、航空安全に対する脅威にはならないと判断した。 米政府はコロンビア軍の能力に欠けている。なぜなら米政府の仕事は問題のでっち上げだからだ。

政府が真実を語ったことがあるか、考えてみてほしい。 トンキン湾事件〔米駆逐艦が北ベトナム軍に攻撃されたという捏造〕。ルビーリッジ事件〔連邦捜査局=FBI=が狂信者一家を射殺〕。ウェーコ(テキサス州ウェーコでFBIが新興宗教教徒を虐殺)。オクラホマシティーの連邦ビル爆破テロ事件。9月11日の同時テロ。サダム・フセイン〔イラク元大統領〕の大量破壊兵器。アサド〔シリア大統領〕の化学兵器使用。カダフィ〔リビア元大統領。テロの黒幕との理由で殺害〕。ロシアゲート。1月6日の反乱〔米連邦議事堂襲撃事件〕。新型コロナ感染症。コロナワクチン。マレーシア旅客機墜落事故。 一つでも真実だったものがあるだろうか。

政府の嘘はすべて秘密の計画を推し進めるために企図されていて、マスコミがそれをおうむ返しに広める。国民は嘘で洗脳され、政府の意図に沿うようになる。 これが米政府のやり方だ。 もはや米国のメディアは存在しない。ただの洗脳機関だ。許されるのは政府公認の物語だけ。それ以外はすべてデマといわれるのだ。

(次を全訳)
The Chinese Spy Balloon Hoax | [LINK]

2023-02-12

【コラム】「いわれのない」攻撃の真実

木村 貴

ロシアがウクライナに「侵攻」を始めた昨年2月下旬、バイデン米大統領は声明を出し、「ロシア軍によるいわれのない不当な攻撃」を非難した。それ以来、この「いわれのない攻撃」という言葉が、ロシアを非難する西側の政府関係者によってしばしば使われる。
最近では、日米両政府が今年1月にワシントンで開いた外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)でまとめた共同文書に、「ロシアによるウクライナに対する残虐でいわれのない不当な戦争を強く非難した」という文言が盛り込まれた。ロシアの軍事行動が始まってから一年近くも、「いわれのない(いわれない)攻撃」という非難が一つ覚えのように繰り返されている。

スマホアプリ「大辞林」によれば、「いわれない」とは、「正当な理由がない。納得できる根拠がない」ことを意味する。また、「いわれのない」と訳される英単語「unprovoked」は、「provoke」(挑発する)から派生した言葉で、文字どおりにいえば、「(攻撃などが)挑発されたわけではない」という意味だ。

政府の発表をそのまま垂れ流す大手メディアの報道ばかりに接する人々は、ロシアのウクライナ「侵攻」は、誰かに挑発されたわけではなく、ロシアが一方的にやっただけだと信じ込んでいることだろう。しかし、それは本当だろうか。

米国のリバタリアン(自由主義系)シンクタンク、自由の未来財団(FFF)代表のジェイコブ・ホーンバーガー氏は最近、「『いわれのない』とは何を意味するか」と題するコラムを公開し、過去の経緯からロシアの攻撃は米国によって挑発されたものであり、したがって「いわれのない」と呼ぶのは間違いだと論じている。

その根拠はこうだ。1989年にベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終わると、ソ連に対抗する軍事同盟の北大西洋条約機構(NATO)はその本来の役割を終えた。しかしNATOの盟主である米国はそう考えなかった。冷戦下で安全保障機構の権力が増大し、軍事産業と一体となって巨額の税金を食い物にする構造が出来上がっていたからだ。

米国防総省はNATOの存続を決定し、そればかりか、NATOに旧ワルシャワ条約機構の加盟国を吸収し始めた。米国とドイツが軍隊、ミサイル、基地、軍備を東へ、つまりロシアの国境近くへ移動できるようにしたのである。

当然ロシアは猛反発した。NATOの拡大に絶えず異を唱えながら、最後には「レッドライン(越えてはならない一線)」を明らかにした。それはウクライナのNATO加盟という脅しをちらつかせることだ。ウクライナがNATOに入れば、米独は戦車、核ミサイル、基地、軍備、軍隊をロシア国境に配置できるようになる。ドイツが過去にソ連を侵略し、米国が暴力的であることを考えると、それはロシアにとって容認できないことだった。

ところが米独はロシアのレッドラインであることを十分承知しながら、わざとその一線を越えた。具体的には、ホーンバーガー氏は触れていないので補足すると、2008年、NATOはウクライナを将来的な加盟国と認めた。またウクライナは、米国の支援する2014年のクーデターで親露派政権が倒れた後、2019年2月の憲法改正により、将来のNATO加盟を目指す方針を確定させた。

こうした経緯から、「米国防総省がNATOを通じてロシアを挑発し、ウクライナに侵攻させたことは間違いない」とホーンバーガー氏はいう。つまり、ロシアの侵攻は挑発の結果であり、「いわれのない」ものではないということだ。

もちろん挑発の結果だからといって、ロシアの行動がただちに正当化されるわけではない。しかし少なくとも、「いわれのない攻撃」という言葉を連呼し、ロシアの行動には納得できる根拠が何もないかのように人々に信じ込ませようとする西側政府やメディアの態度は、明らかに公正さに欠ける。

オーストラリアのジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン氏はこう強調する。「プーチン〔露大統領〕の決断はプーチンに責任があり、アメリカ帝国の決断はアメリカ帝国に責任がある。プーチンはウクライナへの侵攻を決定したことに責任があり、アメリカ帝国はその侵攻を誘発したことに責任がある」。ジャーナリズムとしてバランスが取れ、常識にもかなう見解だろう。同氏がいうように、「もし私が誰かを挑発して悪いことをさせたら、その悪事に対してある程度の道徳的責任を負う」のは常識だからだ。

ところが日本を含む西側の大手メディアは、その常識が理解できないようだ。その一例が、毎日新聞(オンライン版)に先日掲載された、「元ピンク・フロイドが国連安保理で語った言葉と、その危うさ」と題するコラムである。

記事が取り上げるのは、国連安全保障理事会が2月8日に開いた、ウクライナ情勢をめぐる公開会合だ。そこに一人のミュージシャンが登場し、オンライン演説で即時停戦を訴えた。英人気ロックバンド「ピンク・フロイド」元メンバーのロジャー・ウォーターズ氏である。

ウォーターズ氏は昨年9月、欧米によるウクライナへの武器供与に反対する公開書簡を出し、同国のゼレンスキー大統領はロシアが示してきた「レッドライン」をいくつも越える「極端な民族主義」を許してきたと非難している。すでに紹介したホーンバーガー氏やジョンストン氏らと同様の指摘だ。

ロシアはウォーターズ氏のそうした持論に着目してだろう、みずから開催を要請した今回の会合で、同氏に演説を依頼した。ウォーターズ氏は演説でまず、「ウクライナ侵攻は違法だ。最も強い言葉で非難する」とロシアを批判した。その一方で「ウクライナ侵攻はいわれのないものではない。私は挑発した者も可能な限り強い言葉で非難する」と述べ、ウクライナや欧米を批判した。

「いわれのないものではない」「挑発した者」という言葉に注目したい。これもホーンバーガー氏らと同じく、挑発した側(米欧やウクライナ)の責任を見逃さない、バランスの取れた常識にかなう見方だ。

ところが毎日新聞の記者(隅俊之ニューヨーク特派員)は「ウォーターズ氏の発言には、正しそうな響きがある。だが、そこには危うさがある」と批判する。

ウォーターズ氏は安保理に向けて「あなた方の目的は何なのか。軍需産業の利益拡大か。世界での覇権の拡大か。世界的なケーキの取り分を増やすことか」と問いかけた。これに対し隅記者は「軍需産業が巨大な利益をむさぼるために戦争をしかけているという主張はよくみられる。物事の背景には何か大きなものがうごめいているに違いないという疑いだ」と書く。

まるで戦争が軍需産業の利益になるという周知の事実が、怪しげな陰謀論だとでもいいたげである。そのうえで隅記者は「だが、欧米による武器供与はウクライナの自衛を助けるためだ」と強調する。たとえ武器供与が軍需産業の利益につながったとしても、それはウクライナの「自衛を助ける」ためなのだから、問題はないというわけだ。さらに隅記者は「何よりも、隣国の領土を武力で奪うというこの戦争は、ロシアが始めたものでもある」とたたみかける。

この主張には少なくとも問題点が二つある。まず、ウクライナでの戦争を「ロシアが始めた」のは事実だが、そこに至るまでには、すでに述べたとおりの経緯がある。ロシアにはウクライナへの侵攻を始めた責任があるが、米欧側にもそれを誘発した責任がある。つまり米欧は自分が誘発して起こした他国の戦争に対し、これ幸いと武器を供与し、潤っているわけだ。むしろ利益を得るために、意図して戦争を誘発したのかもしれない。そうした可能性に一切触れず、ひたすら、ウクライナとそれを支援する米欧は善、ロシアは悪という単純な図式を唱えるだけでは、国際情勢の冷静な分析というより、政治的なプロパガンダでしかないだろう。

もう一つの問題点は、たとえウクライナの自衛戦争であっても、武器を供与し続ければ、その間さらに多くの人命が失われ、国土が破壊されることだ。すでに多くの武器が供与されているにもかかわらず、ウクライナが勝利する兆しは見えない。自衛戦争の目的は国民の生命・財産を守ることのはずなのに、このまま続ければ、その本来の目的に反する結果になりかねない。

ロジャー・ウォーターズ氏が訴えたように、即時停戦こそ採るべき道だろう。この主張に対し、隅記者はフランスの外交官の言葉を引用しながら、「ロシアが撤退すれば平和はすぐにでも取り戻せる」と記す。

この言葉は逆に、この仏外交官や西側政府、そして隅記者に、早く平和を取り戻したい気などさらさらないことを物語る。戦況で劣勢に立たされているわけでもないロシアが、一方的に撤退する理由などないからだ。本気で平和を取り戻したいなら、和平協議の場を設け、当事国双方がそれなりに納得し、折り合う点を探らなければならない。

「ロシアが撤退すれば」などという非現実的な主張は、妥協を本質とする外交の知恵とは最もかけ離れたものだ。この妥協を許さず、平和を遠ざける政府や国民のかたくなな態度を煽っているのが、ロシアを一方的に悪として描き、その行動には何の「いわれ」もないと絶叫する大手メディアなのだ。

2023-02-11

消費税という悪税

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年2月6日)

米下院共和党のグループは、連邦所得税、給与税、遺産税、贈与税を30%の全米消費税に置き換える法案を支持している。この法案はまた、内国歳入庁を廃止し、各州に対し、売上税を徴収し、その収入を連邦政府に送る責任を負わせる。
このように各州に連邦税の徴収役を任せることは、連邦主義の原則に反する。とくにこの法案では、住民に売上税を払わないことを選択した州に対して、消費税を徴収する仕組みを作るよう求めている。

すべての商品に30%の消費税をかけ、例外や控除を認めないということは、何百万人もの米国人に課される税金を増やすことになる。この消費税法では、消費税の費用を相殺するために、米国人が毎月「払い戻し」を受け取ることができる方法を提供している。それでも多くの納税者は、新しい全国的な消費税制度のもとでは、より多くの税金を支払うことになる。

もし消費税が成立すれば、議会は消費税率を30%以上に引き上げる必要はなくなるかもしれない。なぜなら、連邦準備理事会(FRB)がインフレによって消費税を引き上げる〔=物価が上がれば消費税の絶対額が増える〕ことを当てにできるからだ。その結果、このインフレ税は、消費税が米国民に与える苦痛を増大させることになる。

全国的な消費課税は、多くの商品の闇市の隆盛を招くだろう。そうなると、政府は市民の買い物の監視を強化することになる。また、政府の官僚が私たちの購入品リストを所持することにもなりかねない。この情報は、政府官僚が政敵を困らせたり罰したりするために悪用されるかもしれない。監視によって、個人が政府の食事勧告を守っているか、「過激派」のコンテンツを購入しているかを追跡することができる。税法を確実に遵守する必要上、現金を政府が発行・管理するデジタル通貨に置き換えることも正当化されるかもしれない。

提案された国の消費税率が高い水準に設定されているのは、法案の提出者が連邦政府の歳入を減らしたくなかったからである。税制改革で大きな問題となるのは、連邦政府の支出削減が含まれていない場合である。

残念ながら自由主義者(リバタリアン)の中にも、ワシントンの政治ゲームにのめり込んでしまう者がいる。税制改革と政府支出の削減を結びつける必要性を無視し、その代わり、税制の効率化に重きを置く。さらに悪いのは、政府の歳入を増やすために特定の税金を削減すべきだというサプライサイドの主張をすることである。自由主義者は、政府歳入の増加は、本来なら健全な税制の不幸な結果だと考えるべきだ。減税が政府の歳入を増やす点をはるかに超えた、減税を提唱しなければならない。

消費税は消費を抑制し、貯蓄と投資を促進するからという理由で消費税を支持する人がいる。貯蓄と投資は自由市場にとって重要だが、政府の政策は可能な限り、貯蓄と消費の間で中立であるべきである。貯蓄を奨励する政策は、消費を奨励する政策と同じように、市場を歪める。

自由市場の支持者が支出を削減することなく、さまざまな税制改革を追求するのは本末転倒だ。政府が憲法上の制限に戻るまで、米国民は税の専制政治から解放されることはないだろう。それが実現するのは、多くの人々が福祉戦争国家を拒否し、平和と自由に向けた道徳的かつ実践的な主張を受け入れるときだ。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : (Sales) Taxation is Theft [LINK]

2023-02-10

パイプラインを破壊した米政府

ジャーナリスト、カート・ニモ
(2023年2月9日)

昨年9月、選挙で選ばれたわけでもない欧州連合(EU)の役人、ウルスラ・フォンデアライエン氏(欧州委員長)は、ノルドストリーム・パイプラインの破壊におけるロシアの関与を示唆した。
欧州委員会のボスは、表に出てきて直接ロシアを非難したわけではない。しかし英国の戦争プロパガンダ機関であるBBCによれば、フォンデアライエン氏の発言は、ロシアが「ウクライナへの支援をめぐって西側に対する武器としてガス供給を利用している」というEUによるこれまでの言いがかりを助長した。

今月初め、第4代ロザミア子爵〔ジョナサン・ハームズワース氏〕が所有する英デイリー・メール紙は、ロシアが自国のパイプライン(その費用は95億~100億ユーロと推定される)を爆破した責任があると主張する、「情報機関」の言葉を引用した。

西側の情報機関は、パイプラインを破損させたのは、冬の間、欧州のエネルギー価格を上昇させ、西側諸国民にウクライナへの支援を見直すよう促すための戦術の一部だと主張し、ロシアに責任を負わせることにした。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、ロシアが自国のパイプラインを爆破したという非難に対し「予測可能で、愚かで、ばかげた話だ」と反論した。

事実上ドイツに対して行われた経済戦争であるテロ攻撃に米政府が共謀した証拠は、数カ月間無視された。

その間、プロパガンダと心理戦争のメディアは、ロシアがやったと主張するために、信用できない米中央情報局(CIA)の〔ロシアがパイプラインを攻撃する可能性があるという〕調査結果を持ち出した。

バイデン米大統領が、ロシアがネオナチや国家安全保障への脅威に対処するためにウクライナに攻め入ると決めたら、欧州の人々を寒さで震え上がらせるだろうと発表したことを思い出してほしい。

さらに、ビクトリア・ヌーランド米国務次官(政治担当)が1月に「ノルドストリーム2が破壊されたことを知り、政権は非常に喜んでいる」と発言したことを思い出してほしい。

ヌーランド氏は、絶望したドイツ人が公園や森林で木を切り倒して家を暖める可能性についてコメントしなかった。1990年代のロシアで、米政府が国際通貨基金(IMF)と「ハーバード・ボーイズ」と共謀して同国を破壊し、数え切れないほどのロシア人を死に追いやる「ショック療法」を行った際、同様のことが起こったものだ。

ウクライナでロシア系民族の保護に踏み切ったプーチン露大統領をテッド・クルーズ米上院議員が批判した後、ヌーランド氏が行った発言を考えてみよう。当然ながらクルーズ氏は、議会の公聴会を党派的なものにせずにはいられなかった。まるで米国の一党二派閥〔民主党と共和党〕の間に違いがあるかのようにである。

2月8日、米国の著名な調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が事実を明らかにした。

作戦計画を直接知る関係者によれば、昨年6月、広く知られた真夏の北大西洋条約機構(NATO)演習(BALTOPS22)を隠れ蓑にして、海軍の潜水士が遠隔操作による爆発物を仕掛け、3カ月後に4本のノルドストリーム・パイプラインのうち3本を破壊したという。

ハーシュ氏は、ホワイトハウスの報道官エイドリアン・ワトソン氏、CIAの報道官タミー・ソープ氏にそれぞれ、自らの暴露記事についてコメントを求めている。「これは虚偽であり、完全なフィクションだ」とワトソン氏は答えた。嘘、破壊工作、暗殺、選挙で選ばれた政府の転覆などの長い歴史で知られるCIAは、「この主張はまったくもって虚偽である」と言い添えた。

バイデン大統領とその外交チーム(ジェイク・サリバン大統領補佐官、トニー・ブリンケン国務長官、ビクトリア・ヌーランド国務次官)は二つのパイプラインに対し、一貫して声高に敵意を示していた。このパイプラインはロシア北東部、エストニア国境近くの二つの異なる港からバルト海底750マイルを並走し、デンマーク領ボーンホルム島の近くを通ってドイツ北部で終了する。(強調は引用者)

ジャーナリストのペペ・エスコバール氏は、ハーシュ氏の記事は「必読」だとツイートする一方で、地政学的には「子供じみている」と評した。「ヤンキー〔米国〕がやった」ことは、爆発当日に多くの人が知っていたからだ。

予想どおり、ハーシュ氏の記事は、戦争プロパガンダの企業メディアによって無視されている。

(次を全訳)
Biden’s Navy Sabotaged Nordstream Pipeline [LINK]

2023-02-09

「ロシアのプロパガンダ」を騒ぐ本当の狙い

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年2月5日)

米国の外交政策を批判しただけで毎日毎日、ロシアの宣伝屋のレッテルを貼られるのは実に不愉快だが、そのおかげで、これまで人々が「ロシアのプロパガンダ」の危険を警告してきた本当の意図について、有益な視点を得られるという利点もある。
私はロシアの宣伝屋ではない。ロシアからお金をもらっていないし、ロシアとのつながりもないし、2016年にこの政治評論の仕事を始めるまで、ロシアについてほとんど考えていなかった。私の記事を使いたい人には使わせているので、西側帝国に関する私の意見がロシアのメディアに載ることもあるが、私が提供することはないし、いかなる支払いも勧誘もなく、ロシアのメディアが勝手にやったことだ。私は文字どおり、インターネット上で政治的な意見を共有する、ただの西洋人だ。その意見はたまたま、アメリカ帝国自身やその行動に関する物語に同意しないだけだ。

しかし私は何年もの間、人々が私を「ロシアのプロパガンダ」の一例として指さすのを見てきた。このことは、この6年間に流れた「ロシアの影響」に関するすべてのパニックを理解するのに役立ち、それがどれほど深刻に受け止められるべきかということについて、私にいくつかの洞察を与えてくれた。

これが、「ハミルトン68」に関するツイッター文書の暴露を伝えるマット・タイビーの記事に驚かなかった理由の一つだ。ハミルトン68は、ワシントンの沼地の怪物が運営し、帝国主義シンクタンクが支援する情報操作で、長年にわたってロシアのオンライン上の影響に関する完全に偽の主流報道を、何千とはいわないまでも何百も作り出していた。

ハミルトン68は、ソーシャルメディア上で西側の思想に影響を与えようとするロシアの試みを追跡すると称していたが、ツイッターは結局、この作戦が追跡してきた「ロシア人」は実際にはほとんどが本物で、たまたま当局の見解と完全に一致しないことを言っただけの、大半が米国のアカウントであることを突き止めた。これらのアカウントは右寄りであることが多いが、コンソーシアム・ニュースの編集者ジョー・ローリア氏のような、右派からはほど遠い人物も含まれていた。

ハミルトン68はロシアのオンライン上の影響力について大衆のヒステリーを煽るのに大きな役割を果たしたが、ロシアの影響力工作の行動を追跡しているように見せかけて、実際には反対意見を追跡していたのである。

今日世界で起こっている最もおかしなことの一つは、西洋のプロパガンダによって西洋人が洗脳され、西洋では意味のないロシアのプロパガンダにパニックになることである。英国で〔ロシア国営放送局〕RTが閉鎖される前は、英国の全テレビ視聴者のなんと0.04%しか引きつけていなかった。フェイスブックで盛んに行われたロシアの選挙干渉活動は、ほとんどが選挙とは無関係で、フェイスブックによれば「2万3000のコンテンツのうちおよそ1つ」が影響を受けたとされる。2016年の選挙に向けたツイッターでのロシアの迷惑行為に関するニューヨーク大学の研究では、「ロシアの対外影響作戦に接したことと、態度、偏向、投票行動の変化との間に意味のある関係を示す証拠はない」という結果が出ている。アデレード大学の研究によると、ロシアのウクライナ侵攻後、ロシアのボットや迷惑行為についてあらゆる警告がなされたにもかかわらず、その間にツイッター上で行われた真偽不明の行動の圧倒的多数は、反ロシア的なものであったことが判明した。

ロシアは西洋人の思考にほとんど影響を与えないが、我々は「ロシアのプロパガンダ」に関して騒ぐことになる。一方、西洋の寡頭政治家や政府機関は、自分たちの利益になる現状への同意を捏造するために作られたプロパガンダで、私たちの心を揺さぶり続けている。

これだけでなく、〔ネオコンの評論家〕ビル・クリストル氏らが推奨した最近のアメリカン・パーパスの記事「イデオロギーの長い戦争」が示すように、西側帝国からさらなる物語管理を求める声が依然として上がり、冷戦時代に使われたような米中央情報局(CIA)の文化戦争戦術を復活させるよう呼びかけている。毎日、新しいリベラル派の政治家が、ロシアの影響と戦い、米国の心を「偽情報」から守るためにもっと努力する必要があると説教しているが、その本当の狙いは反対派の声を封じることだと、何度も見せつけられた。

まだある。ネット検閲を強化しようとする努力の継続。インチキな新しい「ファクトチェック」産業、ラジオ・フリー・ヨーロッパ、ラジオ・リバティ、ラジオ・フリー・アジアのような米政府の公式宣伝活動の出力を上げようとする呼びかけ。近年、西側メディアからロシアに関するすべての異論が強制排除されていること。帝国が拡大した迷惑行為作戦がオンラインで米国の外交政策に対する批判者を罵倒し、かき消すこと。アルゴリズムによる検閲が反対派の言論を制限する主要な方法の一つとして浮上していること。これらがその例である。

「ロシアの影響力」と戦うために、プロパガンダ、検閲、オンライン心理作戦を大幅に強化する必要があるといわれているが、私たちが意味ある形で受けている唯一の影響力の行使は、これまでのところ西側諸国によるものだけである。連中はそれをもっとやりたいだけなのだ。

支配者たちは「ロシアの影響」を心配しているのではなく、反対意見を心配しているのだ。私たちの心に大きな影響力を行使しない限り、自分たちが計画している「大国間競争」に、国民が同意しないことを心配しているのだ。そうしなければ、ロシアを支配し、中国の台頭を阻止する作戦に必ず伴う経済戦争、軍事費の急増、核瀬戸際政策によって私たちの利益が直接損なわれると知っているからだ。

支配者たちは外国のプロパガンダの脅威について私たちに宣伝しているが、それは私たちに対しもっとプロパガンダを行うことを正当化するためだ。私たちは、健康な人なら大量の操作なしに決して同意しないような計画に同意するように、操作されているのだ。

(次を全訳)
They're Not Worried About "Russian Influence", They're Worried About Dissent [LINK]

2023-02-08

フェイスブックのナチス擁護

ライター、ブライス・グリーン
(2023年2月3日)

フェイスブックの親会社であるメタは1月19日、ウクライナのアゾフ連隊を「危険な組織」とみなさないと発表した。この極右準軍事組織は、米国が支援した2014年のクーデターでウクライナ大統領の打倒を支援したストリートギャングから発展した。元々、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の権力奪取を支援したのと同じウクライナのオリガルヒ(新興財閥)が資金を提供し、アゾフは東ウクライナの内戦の最前線に立ち、後にウクライナ国家警備隊に完全に統合された。
この動きをおもに報じたのはキエフ・インディペンデント紙(2023年1月19日)で、西側の「民主化促進」活動と密接に結びついたウクライナの報道機関である。このつながりは、フェイスブックの動きに関する報道にも反映されている。アゾフ連隊の説明をみてみよう。

この集団は極右集団との関連疑惑をめぐって論争を巻き起こしている。極右集団は、ロシアのプロパガンダが繰り返し利用する話題だ。

「極右集団」との「関連」は、「疑惑」をはるかに超え、組織のメンバーによって十分に文書化され、公然と認められている。「極右」という言葉を使うことで、彼らがナチスのシンボルを身につけ、ナチスの敬礼をする姿さえも日常的に目撃されてきたという事実を軽視している。北大西洋条約機構(NATO)は、戦争広報の一環として流された連隊の写真で、兵士が第三帝国〔ナチスドイツ〕のシンボルを身につけているものをツイートした後、謝罪に追い込まれた(ニューズウィーク、2022年3月9日)。

連隊のロゴでさえ、人気のあるナチスのシンボルを変形させたものである。また、2019年にニュージーランドのクライストチャーチで複数のモスクに発砲した犯人の上着には、アゾフに所属するナチスのシンボルがプリントされていた。

連隊の創設者はかつて、ウクライナの使命は「世界の白色人種を、ユダヤ人に率いられた劣等人種に対する最後の十字軍に導くこと」だと断言した(ガーディアン、2018年3月13日)。

戦争の数年前からウクライナ軍に資金援助していた米議会でさえ、連隊のネオナチ所属を認めている。2018年には、それらの資金がアゾフの戦闘員に向かうことを制限する法律を可決した(ザ・ヒル、2018年3月27日)。しかし現地の関係者は、アゾフに援助が届くのを防ぐ実際の仕組みは決してなかったと認めている(デイリー・ビースト、2019年12月8日)。

キエフ・インディペンデント紙の記事は、ヤフーニュース(2023年1月19日)によって米メディアに再掲載され、クラウドファンディングのパトレオンの同社口座へのリンクが付記された。

ワシントン・ポスト(2023年1月21日)もこの動きを報道し、連隊が正式にウクライナ軍の管理下に入ったので、「アゾフ連隊」は「アゾフ運動」から分離されたと示唆した。連隊のことを「物議をかもす」としたポスト紙は、メタの動きを批判せず、代わりにこの決定を称賛するウクライナのデジタル変革担当相ミハイロ・フェドロフ氏を取り上げた。

テック系ニュースサイトであるエンガジェット(2023年1月21日)は、「この変更により、部隊のメンバーはフェイスブックとインスタグラムのアカウントを作成することができるようになる」と指摘している。

NATOのPRをバックアップ


プラットフォームの方針が米国の広報目的のために利用されたのは、今回が初めてではない。2022年2月、フェイスブックはアゾフ連隊に対応するため、白人至上主義の称賛を禁じるポリシーの例外を設けると発表した(ビジネスインサイダー、2022年2月25日)。フェイスブックは2022年3月、侵略の文脈の中でロシア人に対する暴力を呼びかける投稿を許可すると発表した(インターセプト、2022年4月13日)。これにはロシアのウラジーミル・プーチン大統領、さらにはベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の死を呼びかけることをユーザーに許可することも含まれていた。

フェイスブックはロシア人に対する暴力的、憎悪的な言論に対するポリシーを緩和することで、ロシア人に対する民族的憎悪をさらに助長させた。インターセプトが調べた資料(2022年4月13日)によると、フェイスブックとインスタグラムのユーザーは、「ウクライナとベラルーシからロシア人を(明確に)排除せよ」と要求することが許されるようになったそうだ。イスラエルによるパレスチナへの攻撃の犠牲者の生々しい画像を許可しない方針とは対照的に、フェイスブックはロシアの侵略による同様の画像を投稿することをユーザーに許可し始めた(インターセプト、2022年8月27日)。

こうしたことがすべて、米国におけるネオナチの正当化や受け入れに寄与している。戦争の初期、西側メディアはアゾフの広報イベントを無批判に宣伝したが、この集団がナチと関係があることにはまったく触れなかった(FAIR.org、2022年2月23日)。10月にはニューヨーク・タイムズ(2022年10月4日)が「ウクライナの有名なアゾフ大隊」を称賛する記事を書いたが、この集団のナチスとの結びつきを完全に無視した(FAIR.org、2022年10月6日)。ナチの刺青を入れたアゾフの兵士は、リベラルの象徴であるコメディアン、ジョン・スチュワート氏によってディズニーワールドで歓迎されたほどだ(グレーゾーン、2022年8月31日)。

これらはすべて、米メディアが自国における極右の成長と影響力に表向き懸念を宣伝しているときに起こった。灯台下暗しとはこのことだ。米国の白人至上主義者が新たな米国の内戦に備え、アゾフ連隊と訓練するためにウクライナに向かったという数多くの記録があるのだから(ヴァイス、2020年2月6日)。

(次を全訳)
Facebook Protects Nazis to Protect Ukraine Proxy War - FAIR [LINK]

2023-02-07

なぜ軍事費を削減しないのか?

自由の未来財団(FFF)創設者・代表、ジェイコブ・ホーンバーガー
(2023年1月31日)

警察への財政支出削減が叫ばれるなか、重要なことに気づいてほしい。誰も軍への財政支出削減について語らない。それは軍事組織があまりにも強力で、米国の生活における不変の特徴として受け入れられるようになったからである。自由主義者を除いては、誰もが軍隊を神として扱っている。
しかし年間8000億ドルもの税金を投入している軍隊の資金削減こそ、なすべきことなのだ。とりわけ制御不能な支出、負債、通貨の乱発は、米国を内部から崩壊させる恐れがある。言うまでもなく、軍事組織は現在、米国をロシア、中国、またはその両方との核戦争に巻き込むためにあらゆることを行っている。

2022年9月7日のオムニ・フィナンシャルの記事によると、米国は国内に約450〜500の軍事基地を有する。50州すべてに少なくとも1つの基地がある。いくつかの州には数十の基地がある。カリフォルニアは123、テキサスは59、フロリダは56、ハワイは49、そしてアラスカは47である。

この国内軍事基地の帝国は、どのような目的をもっているのだろうか。

答えよう。何の目的もない。これらの基地はすべて、それ自身のために存在している。つまり、年間8000億ドルの税金による恩恵を受ける軍人が生活し、働く場所として機能するためだけなのだ。

考えてみてほしい。19世紀には、アメリカ先住民の攻撃から地域を守るために軍事基地があることは理にかなっていた。しかし今や先住民の攻撃という脅威はどこにもない。その脅威はずっと以前になくなったのである。

もう一度聞くが、これらすべての軍事基地は何のためにあるのだろうか。答えてほしい。何の目的もない。

外国からの侵略の脅威はどうだろうか。外国が米国を侵略した場合、450〜500の基地が米国人を守っていると言えないだろうか。

しかし、米国に外国からの侵略の脅威はない。まったくないのだ。

国防総省が冷戦時代の45年間と同じように、ロシアを米国に対する重大な脅威に転換させるよう望んでいたことは、今や明らかである。北大西洋条約機構(NATO)を利用してロシアを挑発し、ウクライナに侵攻させた後、軍当局者が何を叫んでいたかを思い出してほしい。ロシアの侵攻は、ウクライナを征服した後、西に移動し、欧州全体を征服する究極の目的を持っており、その後、大西洋を渡り、米国を侵略し征服するつもりであることを示していると言っていたのだ。

ところがだ。今となっては、ロシアはウクライナすら征服できていない。米国にとっての大きな「脅威」は、見せかけであることが露呈したのだ。ロシアが大西洋を渡り、米国に侵攻し、補給線を維持し、国を征服し、連邦政府と米国の公立学校を乗っ取ることができる可能性はまったくなかったのである。

すべてでたらめだったのだ。しかし、これは明らかに計画だった。ロシアを再び巨大な脅威として提示し、不必要な450〜500の国内軍事基地の存続を正当化するために利用できるものだったのである。

国防総省とその信奉者である主要メディアが、米国のもう一つの主要な「敵」「競争相手」「ライバル」「反対者」「敵」と考えている国である中国は、どうだろうか。

中国は台湾を征服することさえ難しいだろう。太平洋を渡り、米国を侵略し、征服し、占領するための補給線維持の課題を含む、わずかな軍事能力もない。それどころか、中国は米国を侵略したり、国家を征服したり、米国の社会主義的な公立学校制度で米国人に共産党宣言を学ばせたりすることに、まったく関心がないのである。

しかし450~500もの国内軍事基地の存在を正当化するために、国防総省は冷戦時代の騒動と同じように、中国が米国にとって重大な脅威であることを示すためにできることは何でも必死にやっているのである。

ベネズエラ、キューバ、北朝鮮、ニカラグア、シリアなど、国防総省が「国家の安全保障」に対する脅威とみなす第三世界の社会主義・共産主義国についてはどうだろうか。繰り返すが、これらの国々には米国を侵略・征服・占領する軍事力、資金、軍備、軍隊、そして関心すらない。実際、もし実行しようとしたら、米国の十分に武装した市民がすぐに排除することは疑いの余地がない。

もちろん軍事国家主義者は、「国内の軍事基地がなければ、国防総省は海外の軍事基地帝国を維持することができない」と叫ぶだろう。それは約80カ国にある750の基地のことを指しているのだろう。そう、想像してみてほしい。ペンタゴン(国防総省)は米国内よりも海外に多くの軍事基地を置いているのだ。

それらも閉鎖すべきだ。何のためにあるのだろうか。国防総省が外国の政権を支配したり、外国を侵略・占領したり、ウクライナで最近行ったように、外国の危機や戦争を引き起こしたりする能力を提供するためである。キング牧師が米国の国家安全保障国家について言ったことを思い出そう。それは「世界最大の暴力の提供者」だということだ。

その危険かつ有害な海外介入主義が、どうして米国民の利益になるのだろうか。死と苦しみと破壊を与えるだけで、怒りと憎しみを生む。それが報復テロとして現れ、そのテロがまた、国内外の軍事基地の広大な帝国の存在を正当化するために利用されるのだ。

もう一つ忘れてはならないのは、安全保障体制による国内の自由の破壊だ。たとえば愛国者法、大規模な秘密監視、超極秘でろくに審議されない外国情報監視法(FISA)法廷、無期限拘留、軍事法廷、適正手続きの否定、国家が支援する米国民の暗殺と拷問などである。

わが国は、最小限の政府を持つ共和国として建国された。それは憲法の存在を求めた政府機構である。それが百年以上にわたるわが国の政府体制であった。その特徴は、簡単で比較的小規模な軍隊を持つことであった。私たちの祖先が最も望まなかったのは、今日の米国のような、国内外に軍事基地の大帝国を有する巨大な軍事機構だった。建国の父らは常備軍に猛烈に反対した。

連邦政府の安全保障国家への変貌は、わが国がこれまでに犯した最悪の過ちである。制御不能な連邦支出、負債、通貨の乱発の主因であり、それはわが国を破産に追い込んでいるだけでなく、今や生命を奪う核戦争で脅かしている。

国家安全保障体制を廃止・解体し、比較的小さな軍隊と最小限の政府しか持たない共和国を取り戻す必要がある。今、それを行う必要がある。私たちの自由、平和、繁栄、調和、そしておそらく私たちの生存さえも、それにかかっている。

(次を全訳)
Why Not Defund the Military? – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2023-02-06

本当の偽情報は「ロシアの偽情報」デマだった

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年1月30日)

今回公開された「ツイッター文書」のおかげで、2016年にドナルド・トランプ氏が大統領に当選した後に起こった、「ロシアの偽情報」騒動全体が、米国の選挙を弱体化させ、おそらく米国内の「体制転換」を後押しするための大規模な情報操作だったことが、間違いなく判明した。
以下はその背景である。選挙直後の2016年11月、ワシントン・ポスト紙は、「ロシアのプロパガンダ活動が選挙中の『フェイクニュース』拡散に貢献。専門家が語る」と題する記事を掲載した。記事の目的は、トランプ大統領をロシアの「偽情報」キャンペーンの産物として委縮させることだった。

「ロシアの作戦がトランプ当選の決め手となったかどうかは分からないが、研究者は、米国の民主主義とその指導者に不信感を植え付ける広範に有効な戦略の一部であると描いている」とクレイグ・ティンバーグ氏は書いている。ロシアの作戦がトランプ氏を選んだのであって、米国民が選んだのではない、という含意は明らかである。

この報告書が引用した「専門家」の中には、「プロップ・オア・ノット」と呼ばれる匿名の組織があり、その言葉によると、「選挙期間中にロシアのプロパガンダを売り込んだ、合わせて少なくとも1500万人の米国人の読者がいる、200以上のウェブサイトを特定した」という。

この組織の報告書はあまりにも荒唐無稽で、ワシントン・ポストは、ゼロヘッジやアンチウォー・ドットコム、さらには私のロン・ポール研究所といった独立系ニュース機関を「ロシアの偽情報」として誤って告発したこの報告書へのリンクを載せたことで、後に釈明を発表せざるをえないほどだった。

2016年のワシントン・ポストの記事には、元米連邦捜査局(FBI)防諜官で、米国で「ロシアの偽情報」を狩ると主張する別の組織、「ハミルトン68」プロジェクトを設立した「専門家」、クリント・ワッツ氏も登場した。このプロジェクトはウィリアム・クリストル、ジョン・ポデスタ、マイケル・マクフォール各氏らネオコン(新保守主義派)のトップが名を連ねる、非常に資金力のある組織「民主主義確保連合」によって立ち上げられた。

「ツイッター文書」の新たな公表により、ジャーナリストのマット・タイービ氏は、600の「ロシアの偽情報」ツイッターアカウントを監視すると主張したハミルトン68プロジェクトが、まったくのデマだったことを明らかにした。同プロジェクトはどのアカウントを監視していたかは明らかにせず、その手法も明かそうとしなかったが、ツイッター社はリバースエンジニアリングを用いて、600余りの「ロシアとつながりのある」アカウントを特定できたという。その結果、ハミルトンの主張とは裏腹に、これら「ロシア」アカウントの大半が英語を話す人々であることを突き止めた。ロシアで登録されていたアカウント(その数は644件中わずか36件)のほとんどが、ロシアのニュース番組「RT」の従業員だった。

すべてが嘘であり、最新のツイッター文書は、マスク氏以前の「覚醒した」ツイッター社員でさえ、疑いの目を向けていたことを裏付けている。しかし、このデマには重要な目的があった。このネオコンの組織は、匿名の後ろに隠れて、完全に正当な組織や個人を「ロシアの工作員」として中傷し、誹謗する記事を何百と作成することができたのである。それは承認されたネオコンのシナリオに従わない人物を悪魔化する、非常に便利な方法を提供した。

ツイッター社の新しいオーナー〔イーロン・マスク氏〕は、そのカーテンの裏側を見せてくれたが、週末のツイートでそれをうまく表現していた。「米国の団体が米国の選挙を妨害するために、ロシアの選挙干渉について虚偽の主張をした」

「ロシアの偽情報」というデマは、1950年代のマッカーシズムに戻ったような衝撃的なもので、ある意味ではもっとひどいものだった。米国の個人や非営利団体を外国人に雇われているとして標的にし、「抹殺」するためのリストを作ることは、卑劣な行為だ。このような詐欺的な行為は、対処すべき現実的な被害をもたらしている。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Real Disinformation Was The ‘Russia Disinformation’ Hoax [LINK]

2023-02-05

財政学者・新井白石の慧眼

政府の財政危機をどう乗り切るかについて、昔も今も日本人の考えにあまり変化はないようだ。政府が独占する通貨発行権を、財政収入の「打ち出の小槌」として利用するのである。

元禄時代、この手法をフル活用した財務官僚・荻原重秀は「経済学者ケインズの理論を先取りした」とよく称賛される。しかしケインズ理論に基づく経済運営で日本を含む先進主要国が巨額の政府債務を抱え、財政難に瀕する今になってみれば、むしろ荻原を厳しく批判した儒学者・新井白石の慧眼に注目したい。

江戸幕府・破産への道―貨幣改鋳のツケ (NHKブックス)

徳川幕府の財政は、江戸時代の初期には直轄領(天領)からの年貢収入のほか、 金銀鉱山からの収益と活発な外国貿易の利益があり、かなり豊かだった。しかし中期にさしかかる5代将軍・徳川綱吉の時代になると、明暦の大火の復興などで支出が増大する一方で、銀産出量の減少などで収入は頭打ちとなっていた。

窮した幕府は通貨の改鋳を決断する。金貨は金と銀、銀貨は銀と銅が原料だったが、金貨の金含有率、銀貨の銀含有率を引き下げることで、その分、鋳造量を増やそうと目論んだ。つまり増加分の金貨や銀貨も支出に充て、財政危機を乗り切ろうとしたのである。

1695年(元禄8)8月、幕府はそれまでの慶長小判、慶長丁銀の回収とともに、元禄小判、元禄丁銀の鋳造を始める。回収した慶長金銀貨は元禄金銀貨の原料となるが、新旧金銀貨の重さは同じであるものの、金や銀、銀や銅の含有率は異なっていた。

元禄小判の場合、金の含有率が87%から57%になり、30%も引き下げられた。その分、銀を多く含んだわけだ。元禄丁銀の場合、銀の含有率は80%から64%になり、その分、銅を多く含んだ(安藤優一郎『徳川幕府の資金繰り』)。

金や銀の含有率を引き下げた分、幕府は金貨や銀貨を大量に鋳造できるようになった。その分、収入が増えた。増収分は「出目(でめ)」と呼ばれた。通貨の品質を下げることで得られた臨時収入である。新井白石はこの手法を「陽(あらわ)にあたえて陰(ひそか)に奪う術」と批判した。

実際、改鋳の行為は、貨幣の品位を下げてはならぬという江戸幕府の開祖、徳川家康の遺命にもとるものだった。それだけに秘密行動とならざるをえない。改鋳は金銀貨の鋳造所である金座や銀座ではなく、本郷霊雲寺近くの大根畑のなかに造幣所を臨時に設け、職人を集めてひそかに作業にあたらせた。

元禄の改鋳で得た出目は約500万両ともいわれる。当時の幕府の歳入は100万両強であり、数年分の収入を労せずして得た計算だった。

この改鋳を建議したのは、幕府の財政を預かる勘定所で吟味役を務める荻原重秀である。荻原は佐渡奉行を勤めた経験もあり、金銀の産出動向に通じていた。元禄の改鋳の功績により、翌1696年(元禄9)に勘定奉行へ昇進する。

荻原の発言として、こんな言葉が伝えられる。「貨幣は国家が作るところ、瓦礫を持ってこれに代えるといえども、まさに行うべし」。国家が造る貨幣は瓦や小石でもいい、と言い放ったというのである。

改鋳により金銀貨の発行量が大幅に増え、幕府の財政危機は一時救われた。通貨の流通量が増えたことで、「元禄バブル」といわれる派手で華美な好景気も起こった。

味をしめた幕府は再び改鋳に踏み切る。1709年(宝永6)に叔父・綱吉の死を受けて6代将軍に就任した徳川家宣は、翌1710年(同7年)4月に宝永小判、宝永丁銀の鋳造を開始させた。この改鋳も荻原が主導した。

宝永の改鋳では、金の含有率が慶長金と同水準にまで引き上げられたが、問題は重さだった。宝永金は慶長金の約半分の重量しかなかったため、金の含有量も約半分だった。 含有率が引き下げられた元禄金と比較しても、重さが半分しかなかった分、含有量は約76%に減った計算だ。つまり金の含有量が元禄金よりも減った分、出目として幕府の収入が増える仕掛けが施されていた。

宝永小判は「二分小判」と俗称されたという。額面は1両だが、重さは半分であったため、1両の半分にあたる2分の価値しかないとみなされたのだ。実際、金の含有量は慶長小判の半分で、その重さも半分だった。銀貨は宝永年間に4度の改鋳を繰り返す。最後の「四ツ宝銀」は銀の割合が20%(銅が80%)まで下がり、慶長銀の80対20から逆転してしまった。

改鋳により幕府財政はひと息ついたものの、一方で副作用も広がった。物価高(インフレ)である。質の落ちた金貨や銀貨が大量に出回ったことで、通貨の価値が下がり、インフレが引き起こされたのである。

江戸の庶民は、1回目の元禄の改鋳では、幕府に寄せた絶対的信頼が仇になり、最初の事件ということもあって不意をつかれ、反応にはかなり時間がかかった。しかし2回目以降には両替商や商人を中心にすばやく反応するようになり、強制交換にも応じず質の良い貨幣を隠した。「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則どおりである。両替商は厳禁を犯してまでも、自身のためはもちろん、依頼に応じて貨幣を鑑定し、三井両替店の場合には、その証明に「イ」のような自店特有の小極印を打つなどして自衛手段を講じた。

商人は商品の販売価格を貨幣の品質低下に応じて引き上げ、被害の軽減を図った。これによりインフレが進行し、物価高が出目の収益を実質相殺していく。幕府は自分の首を絞める形となった。

宝永年間、幕府が何度も改鋳を繰り返したのは、こうした庶民の自衛手段に対して出目を確保しようとの焦りからだ。極度に品質の落ちた四ツ宝銀の出現で、さらに悪質な貨幣が出るとの風説が発生すると、庶民は金銀貨の代わりに米穀・絹布・薬種などの入手に走った(三上隆三『江戸幕府・破産への道』)。

一方、貨幣改鋳は対外貿易で深刻な問題をもたらした。権力を背にした出目追及のための悪貨発行は、国内では何とか無理を通せても、貨幣の実力のみを問う国際取引では通用しない。

朝鮮は日本に朝鮮人参・生糸などを輸出し、その支払いを日本の銀貨で受け取っていた。その銀を朝貢貿易で清朝に再輸出していたのである。純度の下がった元禄銀をそのまま清に輸出できないので、朝鮮は純度を80%に再精製しなければならなかった。そのため、朝鮮は銀含有率64%の元禄銀貨を、一定の割引をもって、貿易窓口の対馬藩から受け入れた。すなわち貨幣改鋳は、日本の主要輸出品目である銀の価値を下げ、結果的に日本国内における輸入品の額面上の値上げをもたらしたのである。

しかし、銀の含有率を50%にまで下げた1706年(宝永3)の「宝字銀」は、どれだけ割引しようとも、朝鮮側には受け入れられなかった。対馬藩の財政は、朝鮮との貿易に完全に依存していたため、幕府は対馬藩のために、対朝鮮支払い用に限って、改鋳前の純度80%に戻した銀貨を鋳造するという措置をとった。この銀貨は「人参代往古銀」と呼ばれる(トビ『「鎖国」という外交』)。

荻原重秀主導の改鋳政策に対し、幕府内には強く反発する人物がいた。新井白石である。家宣が将軍の座に就くと侍講に任命され、政治顧問として幕政に大きな影響力を及ぼす。

白石は金銀の含有量を引き下げて通貨の品位を落とすことは、鋳造者である幕府の威信を低下させるものという考えの持ち主だった。国辱とまで考えており、二度の改鋳の立役者である荻原を退けるよう家宣に諫言を繰り返した。

1712年(正徳2)9月、荻原は白石の弾劾を受け入れた家宣により勘定奉行を罷免される。翌10月に家宣は死去し、わずか5歳の嫡男家継が7代将軍の座に就くが、白石は引き続き幕政に関与し、劣化した貨幣の品質を回復させようと改鋳の準備を進めた。「正徳の治」である。

1714年(同4)5月、幕府は慶長金銀の品位に戻す改鋳を断行した。これには材料となる金銀の確保が必要になる。幕府は貿易制限で金銀の流出を防ぎ、逆にその流入をはかったが、材料不足を改善するには至らなかった。このため元禄・宝永金銀に比べれば鋳造量の減少は避けられず、 流通量も減少した。その結果、商品経済は停滞し、デフレ不況に陥る。

しかし、もし白石が通貨価値の劣化に歯止めをかけていなかったら、財政危機はさらに深刻になり、江戸幕府の寿命を縮めたかもしれない。事実、再び改鋳に頼り始めた1818年(文政元)以降、幕末にかけて幕府は破産への坂道を転げ落ちていく。

日本円の通貨価値が問われる今、財政学者としての新井白石の見識を再評価するべきではなかろうか。

<参考文献>
  • 安藤優一郎『徳川幕府の資金繰り』彩図社
  • 三上隆三『江戸幕府・破産への道―貨幣改鋳のツケ』NHKブックス
  • 村井淳志『勘定奉行 荻原重秀の生涯 ―新井白石が嫉妬した天才経済官僚』集英社新書
  • ロナルド・トビ 『「鎖国」という外交』(全集日本の歴史)小学館

2023-02-04

なぜロシアの軍国主義を批判しないのか?

ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年1月28日)

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」と、しばしば怒りを込めて質問される。なぜ私が、ふだん批判を聞き慣れている〔ロシア〕政府を批判せず、自分が住んでいる権力構造の軍国主義を批判することに時間を費やすのか、人々は理解できないのである。
これは妄想とプロパガンダの洗脳から生まれた疑問で、いくつかの良い答えがある。私のお気に入りをいくつか紹介しよう。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


まず第一に、私は実際にロシアの軍国主義を時々批判する。それは、ロシアの軍国主義に対する批判がめいっぱい増幅され、わざと飽和させられた文明の中で、必要と思う限られた範囲においてである。その批判はおおむね次のようなものだ。プーチンの決断はプーチンに責任があり、アメリカ帝国の決断はアメリカ帝国に責任がある。プーチンはウクライナへの侵攻を決定したことに責任があり、アメリカ帝国はその侵攻を誘発したことに責任がある。

実は複雑な話ではない。もし私が誰かを挑発して悪いことをさせたら、その悪事に対してある程度の道徳的責任を負う。現代の帝国擁護論は、挑発など存在しないかのように装うことで、私たちが子どもの頃に学んだこの非常に単純で基本的な概念が、まるでロシア政府によって昨年発明されたばかりであるかのように主張する。それは奇妙で品位に欠け、恥ずべき考えだ。挑発が何であるかわかっているのか。馬鹿な真似はやめよう。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


代わりにすべての時間を費やして、地球上で最も強力で破壊的な政府を批判したほうがいい。その犯罪はいつも英語圏の政治・メディア機関によって無視されるか支持されるのだから。

世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させることは、実は唯一正常でまともなことなのである。私がそうすることが不思議で疑わしいのではなく、多くの人がそうしないことこそ不思議で疑わしいのだ。

米政府は地球上で最も専制的な政府である。現在、何百もの軍事基地を抱えて地球を一周し、今世紀に入ってから数百万人が死亡し、数千万人が避難した戦争を繰り広げている。ベネズエラ、イエメン、シリアなどの国々では、制裁と封鎖によって、一般市民が継続的に殺傷されている。米中央情報局(CIA)のクーデター、代理戦争、部分的または全面的な侵略、全世界で最も深刻な数の選挙干渉によって政府を転覆させ、命令に従わない国を破壊するために働いている。

これらのどれもロシアには当てはまらない。世界最悪の犯罪者に焦点を当てるのは普通のことで、とりわけ、その犯罪者が主要機関からほとんど意味のある批判を受けない西側のメディア環境ではそうである。このことは、私がロシアの政府がすばらしく完璧だと考えているということではなく、私たちの社会で最も批判を必要としているのはロシア政府ではないということだ。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


西側の大手報道機関で、すべての時間を外国政府批判に費やす代わりに、私が時間を費やして批判している軍国主義帝国に対してふさわしい水準の批判をしているところがあったら、教えてもらいたい。

なに、教えられない? 西側の政治・メディア階級全体が着実に広めるのは、帝国に利益となる情報だから?

それならいい。私が解決しようとしているのは、この不均衡なのだ。いつも批判される〔ロシア〕政府の批判と、はるかに悪質なのに批判されない〔米国〕政府の批判にそれぞれ半分の時間を費やしても、情報環境の崩れたバランスを回復する助けにはならない。バランスを回復させるには、適切な水準の批判を受けない、はるかに悪質な犯罪者に批判を集中させなければならない。一方に時間を費やせば、他方には費やすことができないのだから。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


とまどうかもしれないが、実は私にはロシア人の読者はいない。私の読者層は英語圏で、おもに西側帝国の支配下にある人々だ。私の声が届くのはそこであり、私の声が変化をもたらすのはそこなのだ。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


その質問を思いつくのは、あなたが一日中、ロシアの軍国主義を批判する声に囲まれていて、米国の軍国主義を批判する時間がないからだ。それがあなたの慣れであり、期待するように仕向けられているのだ。世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させる人は、あなたにとって奇妙に見えるだけだ。なぜなら、あなたはプロパガンダによって、ロシア批判は普通で、アメリカ帝国批判は異常だとみなすように仕向けられているからであり、帝国の物語(ナラティブ)作成者が、米国の外交政策に対する批判者はすべてクレムリンに忠誠を誓うものであるという新たな赤狩りの雰囲気を作り上げたからである。

世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させることが奇妙で疑わしいと思えるのは、最もプロパガンダに惑わされた心の中だけである。最も洗脳された頭脳の中でだけ、これまで存在した中で最も強力な帝国に批判を集中させることが、不道徳、機能不全、反逆、ロシア支持の兆候に見えるのだ。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


テレビでも見てきたらどうだ? もしあなたが、もう一人西洋人がロシアの軍国主義を批判するのを聞きたくてたまらないなら、近くのテレビのどのチャンネルでもいいからスイッチを入れて、数分待ってみればいいのだ。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


西側諸国が24時間365日批判している〔ロシア〕政府の批判に、なぜ私が時間を費やさなければならないのか。その一方で、なぜ西側諸国はアメリカ帝国の犯罪を完全に無視しているのか。誰も一度として、論理的に一貫した答えができなかった。私よりもはるかに主流の世界観に近い準左派の人たちが、ロシアとアメリカ帝国の両方を批判すべきだと主張することがよくあるが、その立場について、精査に耐える明晰な論拠を示せた人は一人もいない。それはいつも、準左派が信念として持っている未検証の仮定にすぎない。

英語圏ですでに増幅されているメッセージに、さらに一人の西洋人が声を貸すことで、世界にとって実際に具体的にどんな良いことがあるのか、誰もわかりやすく説明してくれない。準左派はいつも、「両方とも批判しないと、あなたの印象が悪くなる」などと言い出す。まるで突然、私のパブリックイメージを守ることに深く気を配っているふりをする、無償のPRエージェントのように変身してしまう。本当は、黙って帝国を批判するのをやめてほしいだけなのに。

「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」


ペンタゴン(米国防総省)の宣伝係にはなりたくないからだ。代理戦争や軍国主義、核瀬戸際政策への同意を得ようとするプロパガンダが氾濫するメディア環境の中で、私たちは何にエネルギーを注ぐかについて深く注意しなければならない。とくに紛争縮小、外交、デタント(緊張緩和)を呼びかけ、人々が騙されていると理解させるために声を使うことができるのに、このような環境で「ロシアは悪い!」というメッセージに力を注ぐことは、無責任な声の使い方である。

爆弾が投下される前には、物語が投下される。ミサイルが発射される前には、プロパガンダ作戦が展開される。もしあなたが、死と破壊への道を開くために計画された物語統制作戦に力を貸すことを選ぶなら、死と破壊が起こったとき、発射ボタンを押した人と同じように、あなたにも責任がある。

あなたは自分が世界に送り出すものに責任があり、その結果にも責任がある。それが時々厄介だからといって、帝国の無給の宣伝係の役目を果たすのはやめてほしい。

(次を全訳)
"Why Don't You Ever Criticize RUSSIA'S Warmongering??" [LINK]

2023-02-03

戦争研究所とは誰か?

ガイ・サマセット
(2023年1月27日)

学生諸君、最初に断っておくが、このタイトルは誤植ではない。

「シンクタンク」「研究会」「非営利団体」「非政府組織」など、厄介な団体を調査するときは、「何」よりも「誰」から始める必要がある。

単なる慈善事業か極悪非道な団体かは、そこに関わる人々によって違ってくる。
後述するように、戦争研究所の連中は、これ以上ないほど不吉な連中である。

なぜこの団体は身近に聞こえるのか……


ウクライナ紛争に少しでも関心があるなら、あるいはその種のニュースをあえて避けようとしていても、地元のニュースで息せき切って取り上げられる報告、勧告、検証等によって、間違いなく感覚が攻撃されたはずだ。それらを親切にも届けてくれたのが、戦争研究所である。

この団体は、数カ月前まではほとんどの政策専門家を含めて誰も聞いたことがなかったのだが、今では毎日いたるところで目にするようになった。

この名称は非常に無味乾燥に聞こえるので、毎晩(あるいは毎時)その情報を受け取る一般視聴者は、「研究所」が緑豊かな大学の施設であり、そこでは薄暗い黒いローブを着たチップス先生〔ジェームズ・ヒルトンの小説の主人公〕のようなヘソ曲がり老教授が、鼻歌まじりに講義を進めていると信じるようになるのかもしれない。

残念ながら、そうではなさそうだ。

この恐怖の大学をちょっと見てみよう……


以下は、人間の苦しみの「研究所」のトップメンバーとしてリストアップされている愚か者たちだ。ジャック・キーン将軍〔元陸軍大将〕、キンバリー・ケーガン〔戦争研究所所長〕、ケリー・クラフト元国連大使、ウィリアム・クリストル〔ウィークリー・スタンダード誌編集長〕、ジョー・リーバーマン元上院議員、ケビン・マンディア〔マンディアント社〕、ジャック・マッカーシー〔A&Mキャピタルパートナーズ社〕、ブルース・モスラー〔クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド社〕、デビッド・ペトレイアス将軍〔元陸軍大将〕、ウォレン・フィリップス〔CACIインターナショナル社〕、ウィリアム・ロベルティ〔元陸軍大佐、アルバレス・アンド・マルサル社〕。

この「研究所」は、戦争屋と戦争犯罪者によって構成されている。

連中にはもう一つ共通点がある。

一人一人が軍需企業に関わっている。つまり、連中は(文字どおりの意味で)血税でまかなわれているのである。

この団体に関わる人間で、人類そのものの敵でない者は一人もいないのだ。

さて、シラバスを見直そう……


言うまでもなく、戦争を検証で信頼できる場は論理的に、紛争解決の最も無駄な方法として戦争を結論づけるだろう。

したがって、この「研究所」は、戦争全般、とくにウクライナでの戦争の激化に反対していることは明らか……だろうか?

というのは? 戦争研究所は、敵対行為の拡大を最も声高に主張する機関だというのか? このニュースは本当にショックだ。

しかし親愛なる学究諸君、少なくともいくつかのケースでは、「研究所」は、平和が紛争に対する適切な解決策だと結論づけなければならないのでは?

またか。2007年の時点で、「研究所」はイラクでの「急襲」(これは成功せず、その代わりに両陣営で多くの人々が殺された)を提唱していたと言うのか? いや、そんなはずはない。

主戦論者でいっぱいの軍事擁護団体が、何の理由もなく地球の裏側で殺されに行くように、米国人を密かに扇動しているかもしれないなんて、誰が信じるだろう?

単に、それが連中の高給を支える兵器メーカーの役に立つからというだけの理由で?(ちなみにケーガン氏は、あなたの息子を死に追いやるように言って、年間20万ドル近くを受け取っている)

驚くべきことだ。

以前の提言はどうだろうか……


もし、「おい、見ろよ!  これはまったく新しい団体で、突然どこにでも現れる!」という主題歌が、必要もなく、欲しくもなく、関係のない戦争に、米国人を巻き込もうとする、昔の組織を連想させるなら……まさしくそれなのだ。

この「研究所」は、「アメリカ新世紀プロジェクト」の化けの皮がはがれた子供にすぎない。この団体は、無防備な市民をアフガニスタンとイラクの戦争に引きずり込むことに貢献した(連中はイラン戦争でも我々をだまし討ちにしようとしたが、うまくいかなかった)。

アフガンとイラクの場合、別の犯罪者集団が、米国を、何兆ドルもの税金を吸い込み、それぞれ10年と20年の繁栄を犠牲にし、何千人もの米軍兵士を傷つけ殺害する戦争へと駆り立てた(正確にいえば、共謀させた)。

ところで、アメリカ新世紀プロジェクト出身の国内の敵(とくにクリストル氏やケーガン一族)の何人かは「偶然」、現在もう一度我々をだまそうとしている戦争研究所の第五列(スパイ)反米旅団ともつながっている。

何でもない。さあ、もう一度戦って死ね、平民のクズどもよ。

この大学に資金を提供しているのは誰か……


では、紛争を煽ることを使命としているような「研究所」に誰が資金を提供しているのか、それを問うてみる必要がある。

よくぞ聞いてくれた、学友よ。かなり重要なことだ。

その中には、以下のようなものがある。

- ダイナコープ社……航空機の製造から始まったが、現在は「民間軍事請負業者」、あるいは傭兵殺しの大群だという人もいる。

- ゼネラル・ダイナミクス社……航空機用銃、海軍用銃システム、その他人を殺すためのあらゆるものを製造している。

- ゼネラル・モーターズ(GM)……その子会社であるGMディフェンスは、軍用車を製造している。(面白い事実。ベトナム戦争中、GMは50万丁以上のM16ライフルを送り込み、殺人で金を稼いだ)

- レイセオン社……あらゆるミサイルやミサイルシステムを製造している。その多くが、腐敗したワシントンの政治家によってウクライナに流されている。……これもまた、殺戮の偶然の一致である。

組織に退廃を広める他の人々は、一連の「資本管理」会社である。これらの会社は美徳の模範としてよく知られており、平均的な米国の納税者や人類一般にとって不都合な活動には決して参加しない人々である。

マイダン蜂起の余白のノート……


万が一、講義室で、これは歴史の偶然の産物だと考えている人がいたら……覚悟しておいてほしい。

ウクライナの首都キエフで「マイダン蜂起」が起こったとき、それは当時のウクライナ大統領を追い出すための政治的クーデターだった。

長い話をすごく短くすると、西側はウクライナに自分たちと仲良くしてほしかった。ロシアも同じように望んでいた。西側はこの特権のために何も提供しなかった。ロシアは実質無料の天然ガスを提供した。ウクライナ大統領はロシア側を選んだ。西側は大統領を追い出すために政治的クーデターを組織した。

それを知る一つの方法は? 米外交官ビクトリア・ヌーランド氏とその西側担当者が、実際に何が起こったのか、誰がクーデターを支持するのかについて電話会議で議論し、その内容がリークされた。

ここでクイズ。戦争研究所にも関わる人物は?

そう、学生諸君。ビクトリア・ヌーランド氏は(もちろんまったくの偶然だが)ロバート・ケーガン氏〔ネオコンの政治評論家〕と結婚しており、ロバート氏は驚くべきことに、キンバリー・ケーガン氏(ウクライナの戦争で米国人を死なせる方法を研究する「研究所」を運営)の義兄にあたる。

おい! もう言ったと思ったが……何でもない!...ちなみに、君はもうウクライナのために死ぬべきじゃないのか、このバカ百姓は!

高い学識と優れた身体能力に注目……


さて、話を戻そう。

石器時代の偶像を崇拝する、金に狂った文明の敵によって、米国人がアフガニスタンやイラクに連れ去られる直前に戻ろう。

連中は、自分たちの組織が屠殺場の隠れ蓑以外の何かだと錯覚させようと、しゃれた小さな肩書きを作り上げたのだ。

間違いなく、ケーガン氏とその手下は、我々の喉をかき切りたいと思っている。連中の目的は、自分たちと軍備メーカーの利益のために、第三次世界大戦を起こすことだ(あるいは、中国をこの大混乱に巻き込む方法を見つけられれば、第四次世界大戦も可能かもしれない)。

このジレンマの解決策は何なのだろうか? それはまた別の日の記事で。

今は、悪が何であるか、何を望んでいるかを認識することで十分だ。

それは諸君の目を真実から遠ざけ、永遠の闇に仕えるために諸君を殺させることだ。

今日の授業はここまで。

(次を全訳)
Warmongers 101 – Who Is the Institute for the Study of War? - Antiwar.com Original [LINK]

2023-02-02

米国の戦争、価値なき代償

ケイトー研究所主任研究員、ダグ・バンドウ
(2023年1月26日)

世界は混乱している。しかし米国はそれを解決しようと決意している。国務長官は世界中を飛び回り、敵味方に関係なく指示を出す。外国の役人が聞く耳を持たないとき、アンクル・サム(米国のニックネーム)は鉄拳を振りかざす。
そして、その命令を裏付けるために制裁を加える。経済戦争を遂行する米国の能力と意志は、比類がない。米国とその同盟国は、貿易制限、観光禁止、投資制限など、中国の経済的な威圧を心配するのは当然である。しかし財務省はほぼ毎日、新たな経済制裁を発動している。現在、数千の政府、企業、政府関係者などがその「悪者リスト」に載っている。

まともな議論もなく、議会はまた、その意思に背く敵国や友好国にも制裁を加えている。最悪なのは、すでに困窮している国民に経済制裁を加え、その国の政府を追い出したり、影響を与えたりしようとすることである。米国人は、国際的な投資、貿易、サービスを大幅に複雑化させるこのような規制の代償を払うことになるが、外国人はそれ以上に苦しむことになる。

制裁はキューバ、ベネズエラ、シリア、イラン、北朝鮮に見られるように、その害と効果のなさの両方において顕著である。米国が経済全体を対象とする場合、結果として生じる苦難は広範囲に及び、時には命にかかわることもある。米国の政府関係者は、罪のない人々に害が及ぶことを知っているが、単に気にかけないだけである。例えば、制裁によってイラクの子供たちが大量に死んだことに直面したとき、マドレーン・オルブライト元米国務長官の悪名高い応答はこうだった。「その代償に見合うだけの価値があると思う」

しかし、このような高い人的コストをかけても、ほとんど実際的な成果は得られていない。米国の制裁は結果的に対象国の政権を弱体化させるかもしれないが、米国は敵対するいかなる国に対してもその意志を貫くことができなかった。数年、数十年にわたる制裁にもかかわらず、キューバは共産主義を維持し、ベネズエラは権威主義を維持している。北朝鮮は核兵器を放棄せず、シリアはアサド大統領を追放せず、イランは核活動を放棄していない。米国はまた、グローバル・マグニツキー法〔入国禁止や資産凍結などの制裁を科せる人権侵害制裁法〕に基づく標的制裁を試みたが、敵対する政府に対するインパクトはさらに小さい。

しかし制裁は一様に米国に対する反感を強めている。標的とされた国家は、他国に支援を求め、とくにロシアや中国に目を向けるようになった。米国の「敵対政策」は、北朝鮮の核開発計画を正当化するもう一つの理由となった。

現在進行中のアフガニスタンとロシアに対する制裁も、同じように失敗する可能性が高い。アフガニスタンでは一年が経過し、タリバンの支配が過激になり、国民は経済崩壊に苦しんでいる。ロシアはウクライナに対する軍事作戦を拡大している。ロシアは経済がハイテク分野中心に苦しくなるが、相当な軍備を展開できることに変わりはない。ロシアは大きな北朝鮮のように、貧しく孤立しているが、いっそう好戦的な体制になるかもしれない。

米国の第二の介入手段は軍事行動である。抵抗されれば、あなたの国を爆撃・侵攻・占領する用意があるのだ。この政策の代償は、国防総省の予算をはじめ莫大なものである。先月、レームダック(死に体)議会は、「防衛」(実際は攻撃)のために8580億ドルという記録的な支出を承認した。いわゆる世界規模の対テロ戦争だけでも、負傷したり障害を負ったりした軍人のケアを含め、最終的に約8兆ドルの費用がかかる。これは現在公にされている国家債務のおよそ3分の1を占める。

さらに悲劇的なのは、失われ、傷つけられた命である。過去20年間の米国の戦争で死んだ人の数は、控えめに見積もっても約100万人である。しかしある尺度では、米国の侵攻後に死亡したイラク人だけでも、その数に近づいている。米軍の死者数は軍人や軍属を含めても数千人である。公式の統計では負傷者の数は少なく、数万人にのぼる。しかし自殺が多発し、死者数は戦死者の4倍以上に増え、数千人が重傷と心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えて生きている。

苦しんでいるのは米国人だけではなさそうだ。同盟軍、とくに現地部隊は何万人もの死者を出している。イラク、シリア、イエメンでは何十万人もの民間人が亡くなっている。アフガニスタンでは数万人、リビアでは数千から数万人(推定値は大きく異なる)が死亡している。これらの紛争で多数の人が負傷し、数百万人が避難している。

たしかに、米国は被害のほとんどを直接には引き起こしていない。しかしその空爆は歴代政権が認めた以上に多くの民間人を殺害している。むしろ米国の得意技は、政府を混乱させ、国を分裂させ、残忍な紛争と大量殺戮を誘い、持続させることである。米国はまた、サウジアラビアのような、成功の見込みがなくなっても殺人や騒乱を続ける戦闘員を支援してきた。米国の最近の戦争は、約束した平和、安定、繁栄、民主主義をどれもまだ実現していない。

米国はドローン(無人機)による戦争も完成させ、遠く離れた土地で罪のない人と罪のある人を同様に死に追いやっている。本格的な侵略に比べれば抑えられてはいるが、殺人ドローンはその利便性ゆえに、あまりにも簡単に使われる。有効な武器であるにもかかわらず、ドローンは無造作かつ乱暴に使われ、多くの死をもたらす。オバマ政権の関係者が、誰を殺すかについてくつろぎながら議論している光景は、権力の腐敗を浮き彫りにしている。

最悪なのは、〔標的が定かでなくても、テロリストの特徴とされる不審な行動をとっていれば攻撃する〕「識別特性」殺害である。防げない恐ろしい間違いの例として、米国のアフガニスタン撤退時に起きたカブールでの空爆がある。この空爆で援助関係者と数人の子供が死亡した。残念ながら、死をもたらすドローン攻撃は、米市民を対象に含むテロリストからの報復を生んでしまう。バイデン政権は、無人機の使用に関する規則を強化したことは評価できる。

冷戦終結後、米国は世界で最も危険な国となっている。昨年のウクライナ侵攻でロシアもその座を狙えるようになったが、米国は現在でもロシアよりも多くの国を攻撃し、多くの混乱を引き起こし、多くの民間人を犠牲にしている。中国については、半世紀前のプロレタリア文化大革命まで遡らなければ、中国政府が自国民にこれと同等の人的被害を与えていることを知ることはできないだろう。

米国は依然として世界一の強国であり、最大の経済力、最大の文化的影響力、最強の軍事力を有する。しかし、その外交政策は大失敗してきた。米国が経済制裁や軍事力で最も強力な介入をしたときに、最も劇的に失敗したのである。国際的な社会工学を目指した米国の壮大な試みの失敗は、カブール空港を出発する飛行機から人々が落下する光景によって悲劇的に示された。

大まかに言えば、米国は攻撃的な行動ではなく、信頼できる脅しによってロシアを拘束することで冷戦に勝利したのである。朝鮮戦争は、韓国の独立を維持したまま、引き分けに終わった。グレナダやパナマのような迅速な侵略を除いて、米国の他の武力介入は、とくにベトナム、イラク、アフガニスタンで、ほとんどが悲劇的な大失敗であった。

バルカン半島攻撃など、米国の死傷者が少なかったものでさえ、民族の分裂を解消し自由民主主義を実現することができなかった。米国の重大な利益、ましてや不可欠な利益を守ることができたものはない。経済戦争も同様で、米国は偽善的な美徳を誇示しながら、現地の人々を貧困に陥れることがほとんどである。

元国家安全保障副顧問のベン・ローズ氏が「外交政策エスタブリッシュメント」と呼んだ集団のメンバーが、これほど一貫して無能でありながら、職業上の影響をほとんど受けていないことは衝撃的だ。この説明責任の欠如は恥ずべきことである。しかしワシントンのエリートたちは、時に外国人犠牲者が膨大になることを冷淡に正当化することをためらったことはない。

たとえばオルブライト氏は、米国は他の国よりもっと先の未来を見据えていると傲慢に主張し、米国の一貫した攻撃的、軍事的な政策を正当化した。過去数十年にわたる米国の介入によって引き起こされた数々の大惨事を考えれば、同氏の意見は明らかに馬鹿げているにもかかわらず、ワシントンでは広く共有されている。米国の取り組みが先見の明があり、成功していると判断するのは、天下りと役所復帰を繰り返すワシントンの役人以外に誰がいるのだろうか。

とはいえ、前述のようにオルブライト氏は何十万人もの子供たちの死を問題にせず、「その代償に見合うだけの価値があると思う」と言い放った。イラクにおけるジョージ・W・ブッシュ、アフガニスタンにおけるバラク・オバマ、イエメンにおけるドナルド・トランプの各大統領も、同じように考えていたに違いない。しかし、たとえばプーチン露大統領や習近平・中国国家主席といった外国の高官が同様の主張をしたら、米国人はどう反応するか想像してみよう。ロシアの大統領が、ウクライナ紛争で民間人が犠牲になったのは残念なことだが、必要なことだったと説明したら。結局のところ、ロシアは独自の先見性を発揮し、その代償は「それだけの価値あるもの」だったのだ。

誰かが負担しているのであれば、どんなに高いコストでも正当化するのはたやすい。今日の米国の外交政策は、単に愚かで逆効果であるだけでない。不道徳きわまりない。米国は国民をアンクル・サムの目的のための手段とし、しばしば究極の代償を払わせることになった。

次期政権は謙虚、思いやり、自制、共感、現実主義、リアリズムといった外交政策の美徳を学び直すべきだ。世界は、米国の政策立案者が米軍兵士や外国の民間人を駒として多く犠牲にしながら大混乱を引き起こす権利をもつような、グローバルなチェス試合ではない。

(次を全訳)
The Limits of Number One - The American Conservative [LINK]