2023-01-20

ウクライナ戦争と米タカ派政策

マグネット・スクール卒業生、ジョン・ケネディ
(2023年1月13日)

12月21日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米政府からさらなる財政・軍事支援を得るため、議会で演説を行った。ゼレンスキー氏はウクライナの戦いの主な目標として平和、自由、連携を挙げ、ウクライナには米国の決意が必要だと話した。ゼレンスキー氏はこう述べた。
米国から中国まで、欧州から中南米まで、アフリカからオーストラリアまで、世界はあまりにも相互に結びついており、このような戦いが続くと、誰かが傍観していると同時に、安心していられなくなる。私たち両国は、この戦いにおける同盟国であり、来年は、ウクライナの勇気とアメリカの決意が、私たち共通の自由の未来を保証しなければならない、転換点となるであろう . . . 

演説の後、議会は1兆7000億ドルの支出計画を可決し、450億ドルがウクライナに支払われることになった。この資金はウクライナの戦費に充てられることになっているが、バイデン米大統領は、ウクライナに米軍の戦闘部隊を派遣するつもりはないと主張している。

歴史の中の類似性


第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争と同様、決して軍事支援だけではない。ウィルソン、ルーズベルト、ジョンソン各米大統領も、米国人を戦争に巻き込まないよう約束した。ウィルソン大統領は「彼のおかげで戦争に巻き込まれずにすんだ」という選挙スローガンを作った。ルーズベルト大統領は「中立」を維持しながら、英国や後のソ連を武装させるために武器貸与法を作成した。ケネディ、ジョンソン両大統領は、トンキン湾事件後に米国が戦闘部隊を派遣するまで、南ベトナム政府を支援するために軍事援助と顧問を派遣した。これらの政治家の約束とは裏腹に、戦争は結果的に起こってしまった。

欧米の政府高官の計画はわからないが、過去の計画や政策を分析することはできる。約束違反、条約違反、制裁、クーデターなどが東西間の不信を築き、今日見られるような有害な結果を招いたのである。

西側の東方拡大


最初の侵攻からわずか数時間後の2022年2月24日、プーチン露大統領はテレビに出演し、次のように侵攻の理由を述べた。

北多西洋条約機構(NATO)の東方拡大についてだ。NATOは軍事インフラをロシア国境にどんどん近づけている。過去三十年間、我々がNATOの主要国と辛抱強く協定を結ぼうとしてきたのは事実だ。それに対し、つねに皮肉なごまかしや嘘、圧力や恐喝の試みに直面してきた。

NATOの拡大は1991年のロシア連邦発足以来、ロシアにとってつねに懸念事項だった。このとき米国、英国、フランス、ドイツの外交官はNATOを拡大しないと約束していた。しかしこの約束は守られなかった。元米陸軍士官学校戦略研究部長のアラン・サブロスキー氏は次のように述べる。

まあ、我々にもできるようなことではあった。ロシアの大統領にはエリツィンという酔っぱらいのチンピラがいたが、我々ができないことはほとんどなかった。ロシアを経済的に、政治的に略奪したのだ。エリツィンはNATOが国境を越えて拡大することに対して、うまい対応をすることがまったくできなかった。我々はNATOを拡大できたし、実際拡大したのだ。

ビル・クリントン〔米大統領〕は以前の約束を破ってポーランドやハンガリーといった国々をNATOに加盟させたが、2000年にはロシアのNATO加盟要請を拒否している。ブッシュ大統領は2004年にバルト諸国とスロバキアに加盟を拡大し、2008年にはグルジアとウクライナを加盟させる方向で動いている。しかしこれはウクライナ戦争の始まりではない。始まったのは2014年、NATOの支援によるウクライナ政府の転覆によってだ。

マイダン革命として知られるNATO支援のクーデターは、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を転覆させた。これがNATOの支援によることは、エストニアのウルマス・パエト外相が欧州連合(EU)の外交政策責任者であるキャサリン・アシュトン氏にかけた電話の録音からわかっている。この電話でパエト外相は、新政府の連立政権の怪しげなメンバーが、独立広場でデモ隊と警察をともに殺害した銃撃を指示したと語っている。実際、マイダン活動家のイワン・ブベンチクはこの虐殺の際、ウクライナの警察官を射殺したと告白している。このクーデターの後、ロシアはクリミアを併合し、分離独立派の反政府勢力はウクライナからドンバス地方を奪取し、今日まで続く内戦の火種となった。

この怪しげなメンバーは、アゾフやスボボダといったネオナチ団体出身で、警察との激しい衝突を引き起こしたのと同じ集団である。2014年に記録文書が流出した電話で、ビクトリア・ヌーランド国務次官補とジェフリー・パイアット駐ウクライナ米大使は、野党新政府で誰を優遇するかを話し合い、バイデン副大統領〔いずれも当時〕が彼らを 「激励」するべきだとの意見で一致した。その記録にはこうある。

パイアット では、クリチコ〔キエフ市長〕については私に任せて、あなたはただ . . .こちらでは海外で名の売れた誰かを呼び寄せ、この件の仲介役を務めてもらいたいと考えています。もう一つの問題は、ヤヌコビッチ〔元ウクライナ大統領〕に対する何らかの働きかけですが、これについては明日、物事がうまく回り始めるのを見ながら、再度検討することになるでしょう。

ヌーランド そのことだけどジェフ〔パイアット大使〕、サリバン〔米副大統領補佐官(国家安全保障担当)〕にメモを書いたら、直接、バイデンが必要だと言ってきたの。明日にでも、激励と詳細説明をお願いしますと言ってあげたわ。バイデンはご機嫌よ。

この通話でヌーランド氏とパイアット氏は、オレハ・タヤニボック党首とそのネオナチ政党スボボダとの協力についても話している。スボボダやアゾフ大隊のメンバーは、再び警察への攻撃の先鋒となった。ヌーランド氏はこの電話で、タヤニボック氏は「問題」だが、オレクサンドル・シチ氏のようなスボボダ党員は新政府の内閣で地位を得るだろう〔シチ氏は副首相に就任〕と述べた。

まとめ


ウクライナ戦争から生まれた最高のたとえの一つは、反戦ニュースサイト、アンチウォー・ドットコムのスコット・ホートン氏の言葉だ。「ロシア政府がカナダ政府を転覆させ、反米になった政府が米国の海軍基地をアラスカから追い出すと脅し、ブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバーで分離主義者と戦争を始めたら、米国は数時間で政権交代を目論むことになるだろう」

この戦争は、米国のタカ派政策が直接招いた結果である。米国はウクライナに反露政権を据え、ロシアの目前まで軍事同盟を拡大し、ロシアが支援するドンバス分離主義者との戦いに数十億ドル相当の武器を与え、ミサイル廃棄条約を破棄してポーランドとルーマニアにサイロを設置し、制裁を通じてロシア国民に経済戦争をしかけた。私たちは今、米政府の行動がもたらした結果を目の当たりにしている。

(次を全訳)
Make No Mistake, War Hawk American Policy Helped Start This War in Ukraine | Mises Wire [LINK]

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