2023-01-23

異論許さぬダボス会議

ジャーナリスト、ジョーダン・シャクテル
(2023年1月20日)

今週〔スイス東部の〕ダボスで開かれている世界経済フォーラム(WEF)の支配者層会議を見ていると、そこにいる金持ちや権力者たちの間に意見の相違がないことに驚くかもしれない。ダボス会議の各討論は強化された共鳴室として機能し、そこには一つの問題、一つの目的、一つの解決策しかない。ダボス会議の討論や講演の参加者が、企業メディア、政府関係者、企業経営者の誰であれ、反対意見や異論が出ることはない。
世界経済フォーラムが、世界の支配階級のための物語と発想の場として最もよく理解されていることを考えると、ダボス会議は健全で強固な議論の場であるとの印象を持つかもしれない。そのためダボス会議の新しい参加者の多くは、このスイスの隠れ家〔=ダボス〕で講演者や参加者が示す信じられないほどの意見の一致に困惑している。

元CNNの司会者だったブライアン・ステルター氏は報道の自由の重要性を主張したが、ある共同パネリストが言論の自由に対し悪意ある攻撃をした際、微笑んでうなずいていたことに多くの人が気がついた。

元ニューヨーク・タイムズ紙編集主幹のジル・エイブラムソン氏は、この問題に関して臆することなく、独自の論評〔ニューヨーク・タイムズ紙と同紙発行人アーサー・グレッグ・サルツバーガー氏のダボス会議参加を批判〕を展開した。

作家のウォルター・カーン氏は、「意見の相違の少なさ」が不思議だとツイートしている。

問題の真実は、世界経済フォーラムとその指導者たちは、議論よりも一致を好むということだ。実際、議論はあまり奨励されず、一線を越えるようなこと、つまり物語(ナラティブ)違反は、クラブ・ダボスから永久に追放される根拠となる。

クラウス・シュワブ氏は、その悪名高い『グレート・リセット』シリーズの二冊目である『グレート・ナラティブ』という本で、まさにこの話題を論じている。

シュワブ氏は世界経済フォーラムの目標について、自分の組織はあらゆる思想・政治的視点に開かれていると主張することから始めている。しかし、シュワブ氏のいう「あらゆる思想・政治的視点」とは、自分が正当と考えるものだけを指していることがすぐにわかる。

ある特定の人々は、例外なく否定される。それはもちろん、世界経済フォーラムの気候変動に関する物語や、気候問題に対する非常に具体的な「解決策」を受け入れない個人や団体である。

「気候変動対策、持続可能性、包摂性、国際協力、心身の健康」は、「いま最も重要」だとシュワブ氏は書いている。「いますぐ断固とした行動を起こさなければ地球の生物圏は生存に適さないものとなり、世界経済の成長を妨げ……政治や社会の安定をさらに危険にさらすことになる」

ようするに、シュワブ氏の物語によれば、世界は火の海であり、この問題には議論の余地はなく、人類の進歩を後退させることが唯一の解決策なのだ。

外交的なシュワブ氏は、コンプライアンス(規範遵守)に反するこうした振る舞いを行う人々を完全に軽蔑しており、そうした人々はおもに米国にいると苦々しげに指摘している。

シュワブ氏は非協調的な人々を憎み、非協調的な人々は陰謀論者であり、世界のあらゆる悪の元凶であると決めつけている。同氏は、これらの「科学的な知見をかたくなに否定する運動」が「COVID-19のパンデミックの収束を遅らせている」とし、「公衆衛生の改善と、より根本的には私たちが集団として危機に対処することの両方を妨げている」と付け加えている。

世界経済フォーラムはすべての大項目について、すでに完全な合意が得られている課題として取り組んでいる。同フォーラムにとって重要なことはすべて、何らかの形で「緊急事態」として分類され、ダボス会議ではこれらの問題に議論の余地はないと主張している。この「緊急事態」は、ダボス会議の発言者にとってあまりにも深刻であり、その物語に挑戦することはできない。すでに問題は確定し、解決策も合意されている。残されたのは、この問題と解決策をどれだけ早く進めるか、その過程で個人の権利をどれだけ激しく踏みにじろうとするか、という議論しかない。

(次を全訳)
At Davos, conformity is required, and debate is a cancel-worthy sin [LINK]

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