ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年1月9日)
ウクライナの米欧応援団は、恥を知らないようだ。事実は異なるという証拠が次々と出てきているにもかかわらず、ウクライナを自由を愛する民主主義国として描き続けている。12月下旬、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領のワシントン公式訪問と議会での演説に伴う政治とメディアの熱狂は、その最新の例である。
"Ukraine’s Western cheerleaders seem to have no shame."
— The American Conservative (@amconmag) January 10, 2023
By Ted Galen Carpenter:https://t.co/ZGnEIbOYPg
ボイス・オブ・アメリカは、ゼレンスキー大統領の演説を、1941年12月に行われたウィンストン・チャーチル英首相の議会演説と比較して、その英雄的な調子と実質的な意義について論じる記事を掲載した。ニューヨーク・タイムズ紙は、ワシントンでゼレンスキー氏が「英雄として歓迎」されたことによって、ウクライナ国民の士気が大いに高まったと主張した。米安全保障関連シンクタンク「19fortyfive」のシニアエディター、マット・スキュ氏は、コロラド州のローレン・ボーバート議員とフロリダ州のマット・ゲーツ議員が「先週行われたゼレンスキー・ウクライナ大統領の議会演説で拍手とスタンディングオベーションに加わることを拒否した」と非難し、ロシアのメディアが彼らの反対意見を強調したと指摘した。評論家デビッド・フラム氏はアトランティック誌に寄稿し、ゼレンスキー氏は「我々を自分自身に立ち返らせ」、民主主義の価値を思い出させたと主張した。フラム氏は、ウクライナの大統領が「ウクライナを支援してくれている私たちに感謝するために米国に来た。感謝すべきは米国人だ」とほめちぎった。
ゼレンスキー氏の演説は、ウクライナはロシアの攻撃から自由の城壁を守る勇敢な民主主義国だという神話を永続させた。バイデン米大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の初期に、この紛争は一方では自由と民主主義、他方では権威主義との間の世界的な闘争の一部だと主張し、その態度を象徴していた。ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニスト、ジャーマン・ロペス氏は、「ウクライナに関する西側の永続的な結集は、将来の世界の出来事に影響を与えうる2022年の重要な傾向を例証している」と論じた。ジャナン・ガネッシュ氏がフィナンシャル・タイムズ紙に書いたように、「今年は自由民主主義が反撃した年だった」のである。
複雑な世界をこのように痛々しいほど単純化することは、たとえウクライナが本物の民主主義国であったとしても、十分に悪いことである。しかしウクライナはロシアの侵攻以前からその地位に値しなかったし、同国政府の組織的抑圧への傾斜は、この紛争の勃発以来、はるかに悪化している。今日のウクライナは腐敗し、権威主義的な国家である。最も寛大な定義に照らしても、民主主義国とは言えない。残念ながら、西側諸国のウクライナ支持者はゼレンスキー政権の抑圧的な行動を無視・軽視し、正当化し続けている。
真の民主主義国は、複数の野党を禁止したり、野党系メディアを閉鎖したりはしない。また、存続を許したメディアを厳しく検閲する(政府の厳しい管理下に置く)こともない。真の民主主義国は、政府が嫌う政策を主張する教会を非合法化することもない。政権に反対する者を投獄することもなく、ましてや意味のある正当な手続きなしに、政治犯の拷問を容認することもない。真の民主主義国は、国内外の批評家の「ブラックリスト」を公表し、それによって背中に標的を置くようなことはしない。しかしウクライナ政府はこれらの行為を一つや二つではなく、すべて行っている。
国内批判者の息の根を止める努力は、マイダン革命〔米国に支援された民族主義者が親露派政権を倒した2014年のクーデター〕のわずか数カ月後に明らかになり、この一年ほどで劇的に加速している。ウクライナ当局は早くから、政治的反体制者への嫌がらせ、検閲措置の採用、政府やその政策に対する批判者とみなした外国人ジャーナリストの出入りを禁止していた。こうした攻撃的な行為は、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、欧州安全保障協力機構などの独立した監視団体から批判を浴びた。
ロシアの侵攻が始まる前から、ゼレンスキー政権下の国内弾圧の度合いはひどくなっていた。今回の戦争以前の民主主義と市民的自由に関するウクライナ政府の実績は、立派だったとはいえない。フリーダムハウスの2022年の報告書では、ウクライナは100点満点中61点を獲得し、「部分的自由」のカテゴリーにリストアップされている。ヒューマン・ライツ・ウォッチの2021年のウクライナに関する報告書も、政府軍による虐待を挙げ、「恣意的な拘束、拷問、虐待を含む」と、好ましいものとは程遠いものであった。ジャーナリストやメディア関係者は「報道に関連した嫌がらせや脅迫に直面」している。2021年2月、ウクライナ政府は、いくつかの野党系メディアをロシアのプロパガンダの道具であるという申し立てに基づき閉鎖した。
2022年秋にロシア系の正教会が直面したように、宗教機関さえも政府の嫌がらせや弾圧から安全なわけではない。12月2日、ゼレンスキー氏はロシアと関係のあるすべての宗教の禁止を目指すと発表し、この動きは「ウクライナに精神的独立を保証する」ために必要だと主張した。この禁止令は、特にロシア正教徒を自認する数百万人のウクライナ人に影響を与えるだろう。実際、ウクライナ政府はすぐに特定の正教会の宗教家に対して制裁を課した。西側諸国の典型的な態度は、あるゼレンスキー擁護者の「この問題は非常に複雑だ」という反応だった。信教の自由を守るための積極的な姿勢とは言いがたい。
政治・メディアによる抑圧の雰囲気はますます濃くなり、政権反対派に対する勝手な投獄や拷問さえも報告されている。しかしウクライナ支持者の中には、同国の政権がネオナチに媚びを売っていることを非難する気さえないように見える人もいる。特にひどいのは、ウクライナ防衛におけるアゾフ大隊(現アゾフ連隊)の役割についてである。アゾフ大隊はロシアの侵攻以前から、極端な民族主義者と完全なナチスの拠点として悪名高い存在だった。
そのため、アゾフ連隊がマリウポリ市の戦いで重要な役割を果たした際、米欧のウクライナ崇拝者にとっては問題となるはずだった。しかしほとんどの報道は、マリウポリの住民の苦しみ、ロシアの侵略者の冷酷な悪意、街の勇敢な守備隊の粘り強さに焦点を当てるだけだった。これらの記事は通常、防衛側にアゾフの戦闘員が目立つことを無視し、そのイデオロギー的な血統を明らかにすることができなかった。しかしアゾフ隊員との共謀は、ウクライナの政治エリートがネオナチ分子やその活動を長年にわたって全面的に許容してきたことの一つの表れでしかない。
おそらく民主主義の規範を軽んじていることが最もよく分かるのは、ゼレンスキー氏とその親しい同僚らが、国内外を問わず最も平和的な反対者たちに対してさえ寛容でないことだろう。外国の批判者を標的にし、威嚇しようとする意欲は2022年の夏、ウクライナ政府の情報対策センター(一部は米国の納税者が出資)がそうした反対者の「ブラックリスト」を公表した際、はっきりと明らかになった。そのリストには、シカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授、FOXニュースの司会者タッカー・カールソン氏、元下院議員トゥルシー・ギャバード氏、ケイトー研究所上級研究員で元レーガン大統領補佐官のダグ・バンドウ氏ら、多数の著名な米国人が名を連ねていた。
ブラックリストの脅威的な性質は、9月下旬に同センターが上位35人の標的の住所などを修正した名簿を発表した際にさらに明確になった。このブラックリストは、「情報操作テロリスト」「戦争犯罪人」と糾弾している。批判者をテロリストや戦争犯罪人と表現すれば、狂信者が危害を加えるために直接行動を起こすよう奨励することになる。ブラックリストは簡単に殺害リストとなり得るが、ウクライナ政府は自らが煽った危険に対してせいぜい無関心でしかない。
こうした警告のサインにもかかわらず、西側諸国のウクライナ熱烈擁護派はプロパガンダに固執している。その典型的な例が、ブレット・スティーブンス氏によるニューヨーク・タイムズ紙のコラムで、米国人が「ゼレンスキー氏を賞賛するのは、自由世界の理念を本来の位置に回復させたからだ」と主張した。スティーブンス氏によれば、「自由世界の一員とは、国家権力は何よりもまず個人の権利を守るために存在するという考えに賛同する、すべての国である」。スティーブンス氏が言っているのはどの国のことなのだろうか。ウクライナはそのような表現には当てはまらない。
ウクライナを賞賛する西側諸国は、自分たちの大切な外国顧客に関する不愉快な現実に直面する必要がある。ウクライナは民主主義国ではないし、ゼレンスキー氏は民主主義的価値観の高貴で悩める擁護者でもない。ロシアとウクライナの戦争は、自由と権威主義の存亡をかけた戦いの一部ではない。腐敗した抑圧的な両政府間の醜い縄張り争いである。米国をはじめとする西側社会は、この戦いに利害関係を持たない。少なくとも持つべきではない。
(次を全訳)
False Democracy - The American Conservative [LINK]
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