ジャーナリスト、ケイトリン・ジョンストン
(2023年1月28日)
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」と、しばしば怒りを込めて質問される。なぜ私が、ふだん批判を聞き慣れている〔ロシア〕政府を批判せず、自分が住んでいる権力構造の軍国主義を批判することに時間を費やすのか、人々は理解できないのである。
"Why Don't You Ever Criticize RUSSIA'S Warmongering??"
— Caitlin Johnstone (@caitoz) January 28, 2023
It's a question born of delusion and propaganda brainwashing, and it has several good answers. Here are some of my favorites.https://t.co/J0VuweCf9C
これは妄想とプロパガンダの洗脳から生まれた疑問で、いくつかの良い答えがある。私のお気に入りをいくつか紹介しよう。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
まず第一に、私は実際にロシアの軍国主義を時々批判する。それは、ロシアの軍国主義に対する批判がめいっぱい増幅され、わざと飽和させられた文明の中で、必要と思う限られた範囲においてである。その批判はおおむね次のようなものだ。プーチンの決断はプーチンに責任があり、アメリカ帝国の決断はアメリカ帝国に責任がある。プーチンはウクライナへの侵攻を決定したことに責任があり、アメリカ帝国はその侵攻を誘発したことに責任がある。
実は複雑な話ではない。もし私が誰かを挑発して悪いことをさせたら、その悪事に対してある程度の道徳的責任を負う。現代の帝国擁護論は、挑発など存在しないかのように装うことで、私たちが子どもの頃に学んだこの非常に単純で基本的な概念が、まるでロシア政府によって昨年発明されたばかりであるかのように主張する。それは奇妙で品位に欠け、恥ずべき考えだ。挑発が何であるかわかっているのか。馬鹿な真似はやめよう。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
代わりにすべての時間を費やして、地球上で最も強力で破壊的な政府を批判したほうがいい。その犯罪はいつも英語圏の政治・メディア機関によって無視されるか支持されるのだから。
世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させることは、実は唯一正常でまともなことなのである。私がそうすることが不思議で疑わしいのではなく、多くの人がそうしないことこそ不思議で疑わしいのだ。
米政府は地球上で最も専制的な政府である。現在、何百もの軍事基地を抱えて地球を一周し、今世紀に入ってから数百万人が死亡し、数千万人が避難した戦争を繰り広げている。ベネズエラ、イエメン、シリアなどの国々では、制裁と封鎖によって、一般市民が継続的に殺傷されている。米中央情報局(CIA)のクーデター、代理戦争、部分的または全面的な侵略、全世界で最も深刻な数の選挙干渉によって政府を転覆させ、命令に従わない国を破壊するために働いている。
これらのどれもロシアには当てはまらない。世界最悪の犯罪者に焦点を当てるのは普通のことで、とりわけ、その犯罪者が主要機関からほとんど意味のある批判を受けない西側のメディア環境ではそうである。このことは、私がロシアの政府がすばらしく完璧だと考えているということではなく、私たちの社会で最も批判を必要としているのはロシア政府ではないということだ。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
西側の大手報道機関で、すべての時間を外国政府批判に費やす代わりに、私が時間を費やして批判している軍国主義帝国に対してふさわしい水準の批判をしているところがあったら、教えてもらいたい。
なに、教えられない? 西側の政治・メディア階級全体が着実に広めるのは、帝国に利益となる情報だから?
それならいい。私が解決しようとしているのは、この不均衡なのだ。いつも批判される〔ロシア〕政府の批判と、はるかに悪質なのに批判されない〔米国〕政府の批判にそれぞれ半分の時間を費やしても、情報環境の崩れたバランスを回復する助けにはならない。バランスを回復させるには、適切な水準の批判を受けない、はるかに悪質な犯罪者に批判を集中させなければならない。一方に時間を費やせば、他方には費やすことができないのだから。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
とまどうかもしれないが、実は私にはロシア人の読者はいない。私の読者層は英語圏で、おもに西側帝国の支配下にある人々だ。私の声が届くのはそこであり、私の声が変化をもたらすのはそこなのだ。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
その質問を思いつくのは、あなたが一日中、ロシアの軍国主義を批判する声に囲まれていて、米国の軍国主義を批判する時間がないからだ。それがあなたの慣れであり、期待するように仕向けられているのだ。世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させる人は、あなたにとって奇妙に見えるだけだ。なぜなら、あなたはプロパガンダによって、ロシア批判は普通で、アメリカ帝国批判は異常だとみなすように仕向けられているからであり、帝国の物語(ナラティブ)作成者が、米国の外交政策に対する批判者はすべてクレムリンに忠誠を誓うものであるという新たな赤狩りの雰囲気を作り上げたからである。
世界で最も強力で破壊的な政府に批判を集中させることが奇妙で疑わしいと思えるのは、最もプロパガンダに惑わされた心の中だけである。最も洗脳された頭脳の中でだけ、これまで存在した中で最も強力な帝国に批判を集中させることが、不道徳、機能不全、反逆、ロシア支持の兆候に見えるのだ。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
テレビでも見てきたらどうだ? もしあなたが、もう一人西洋人がロシアの軍国主義を批判するのを聞きたくてたまらないなら、近くのテレビのどのチャンネルでもいいからスイッチを入れて、数分待ってみればいいのだ。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
西側諸国が24時間365日批判している〔ロシア〕政府の批判に、なぜ私が時間を費やさなければならないのか。その一方で、なぜ西側諸国はアメリカ帝国の犯罪を完全に無視しているのか。誰も一度として、論理的に一貫した答えができなかった。私よりもはるかに主流の世界観に近い準左派の人たちが、ロシアとアメリカ帝国の両方を批判すべきだと主張することがよくあるが、その立場について、精査に耐える明晰な論拠を示せた人は一人もいない。それはいつも、準左派が信念として持っている未検証の仮定にすぎない。
英語圏ですでに増幅されているメッセージに、さらに一人の西洋人が声を貸すことで、世界にとって実際に具体的にどんな良いことがあるのか、誰もわかりやすく説明してくれない。準左派はいつも、「両方とも批判しないと、あなたの印象が悪くなる」などと言い出す。まるで突然、私のパブリックイメージを守ることに深く気を配っているふりをする、無償のPRエージェントのように変身してしまう。本当は、黙って帝国を批判するのをやめてほしいだけなのに。
「なぜロシアの軍国主義を批判しないのか」
ペンタゴン(米国防総省)の宣伝係にはなりたくないからだ。代理戦争や軍国主義、核瀬戸際政策への同意を得ようとするプロパガンダが氾濫するメディア環境の中で、私たちは何にエネルギーを注ぐかについて深く注意しなければならない。とくに紛争縮小、外交、デタント(緊張緩和)を呼びかけ、人々が騙されていると理解させるために声を使うことができるのに、このような環境で「ロシアは悪い!」というメッセージに力を注ぐことは、無責任な声の使い方である。
爆弾が投下される前には、物語が投下される。ミサイルが発射される前には、プロパガンダ作戦が展開される。もしあなたが、死と破壊への道を開くために計画された物語統制作戦に力を貸すことを選ぶなら、死と破壊が起こったとき、発射ボタンを押した人と同じように、あなたにも責任がある。
あなたは自分が世界に送り出すものに責任があり、その結果にも責任がある。それが時々厄介だからといって、帝国の無給の宣伝係の役目を果たすのはやめてほしい。
(次を全訳)
"Why Don't You Ever Criticize RUSSIA'S Warmongering??" [LINK]
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