2023-02-14

自由主義と多極世界

フィン・アンドリーン
(2023年2月7日)

現在の国際緊張は、少なくとも十年前から存在する、世界と国際関係に対する二つの根本から異なる見解、すなわち一極世界と多極世界の間の議論を激化させている。自由主義者が外交政策について意見を異にするとき、その根本の原因は、しばしばこの世界観の違いにある。本稿の目的は、一極世界は自由主義の原則に反し、多極世界は世界における自由への重要な一歩であることを示すことにある。

一極対多極


一極世界とは、一極の権力に主導された世界である。たとえば現在のワシントンを中心とする、自由主義的なルールに基づく国際秩序がそうだ。この国際秩序は、国際法とは異なる、柔軟であいまいな概念である(両者は時に一致することもあるが)。これは米国が西側の同盟国とともに1945年に作り上げ、1991年のソ連崩壊以降、拡大しようとしている世界である。

その根底にあるのは、西側の政治体制である「自由民主主義」には道徳的な優越性があり、その世界支配が正当化されるという考えである。それは定義上、覇権主義的な野心を持つ権力だ。一極世界とは、国民国家が独立性を欠く世界である。国民国家は(もちろん自らの利益のために)支配される。権力の中心によってだけでなく、その中心に忠誠を誓う超国家機関によって間接的にも支配される。

多極世界は、上記の一極世界とは正反対である。国際法、とくに国際連合憲章をより厳格に尊重する世界だ。このような国際関係に基づく見方では、政治体制に価値判断が下されることはない。それどころか、政治体制は特定の政治文化と歴史の帰結とみなされる。多極世界は普遍主義ではない。世界の政治権力は多極に分割・共有されており、国民国家は超国家的な制度に服従することはない。

このように、多極と一極は互いに相容れない。この事実によって、現在の国際関係の緊張はおおまかに説明できる。

一極世界を支持しない理由


一見すると、自由主義者が多極世界を好むのは奇妙に思えるかもしれない。たしかに一極世界は西側が中心であり、他の諸国よりも市民の自由が尊重されていると思われがちだ。さらに、自由主義者が思想として取り組むのは、異なる政治圏の企業・個人間の自由貿易を妨げる政治的・法的障害を最小化する、開かれた世界である。

自由主義者にとって、単一の政治主体が世界を管理し、平和を確保し、国民国家間の政治的境界を低くする一極体制を好むのは、自然なことではないだろうか。この問いに対する答えは、はっきり言って「ノー」である。一極世界を支持するのは、古典的自由主義の起源である普遍主義、啓蒙主義から生じた誤りだ。権力の勝者が慈悲深く平和を愛する保証はない。もしそうでなかったらどうなるか。実際、一極世界への支持は、米連邦政府の本質に対する無知によって説明できることが多い(その本質がジョン・T・フリン、ロバート・ヒッグス、ノーム・チョムスキー、エドゥアルド・ガレアーノ 、ジョン・パーキンスといった知識人やジャーナリストによって何十年にもわたって暴露されているにもかかわらず)。

さらに、現在の一極世界には、経済的にも政治的にも、それ自体で示されるような自由はない。欧米では非自由主義的な政策(苛酷な課税など)の例があふれている。西側のエリートは、たとえば西側と発展途上国の間の自由貿易を、後者〔訳注・「前者」の誤りか〕に不利になるように実施しようとは決してしない。加えて、欧米では民主主義の正統性の問題があまりにも一般化しており、大多数の意思に反して指導者によって意思決定がなされることがしばしばある。

さらに、マイケル・レクテンワルド教授が一連のすばらしい論文で示したように、一極世界は政治的グローバリゼーションに向かっており、これはまぎれもなく国際ファシズムの一形態である。当初から一極世界は、米ドルを基盤とする西側金融制度を優遇していたため、不公平で不安定だった。協力しない国に対しては、さまざまな形の強制が存在する。軍事利用の脅威は明らかだが、米国法の治外法権原則(海外腐敗行為防止法など)も脅威となる。一極世界はその本質からして、権力中枢の政治的立場に完全に従いたくない国々の内政に対し、違法かつお節介な介入を絶えず行わなければ存在しえない。それが一極世界を維持・拡大する唯一の方法なのである。

内政不干渉と権力分散


したがって一極世界は、自由主義の基本である内政不干渉の原則に真っ向から対立する。不侵略の原則、そして自由主義にとって重要な国家間の平和交流は、国際法によってよりよく表現され、保護される。

自由主義は、国民国家内における政治権力の分散を根本から認めている。同じく自由主義は、国家間における政治権力の分散を支持するはずだ。これはもちろん、多極世界を支持することに等しい。分権化の利点は、ラルフ・ライコ、ドナルド・リビングストンといった自由主義の歴史家によって証明されている。何世紀にもわたる欧州の小規模な政体間の競争は、欧州社会の経済発展と政治自由化のカギだった。

多極世界は、根強く残る国家主義のせいで、自由主義の観点からは十分な発展とはいえないが、一極世界に比べれば、自由への重要な一歩であることは確かである。したがって自由主義者は、先に述べた理由から、多極世界を支持し、一極世界を拒否しなければならない。この立場は、たとえ現在あまり人気がなくても、強く表明される必要がある。なぜなら多極世界は、自らの支配的立場に慣れた西洋ではまだ十分に理解されておらず、受け入れられにくいからである。

(次を全訳)
Why Libertarians Should Support the Multipolar World | Mises Wire [LINK]

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