コロンビア大学教授、ジェフリー・サックス
(2023年2月17日)
経済発展の最大の敵は戦争である。世界がこれ以上グローバルな紛争に陥るようなことがあれば、私たちの経済的な希望も生存も火の海になりかねない。米誌「ブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツ」は、「終末時計」の針を午前0時まであと90秒に動かしたばかりだ。
What Ukraine needs to learn from Afghanistan https://t.co/R8KiOfDgaj
— Michael W. Chapman (@ChapmanCNSNews) February 21, 2023
昨年、世界で最も経済的損失を被ったのはウクライナであり、その経済は35%崩壊したと国際通貨基金(IMF)は報告している。
ウクライナの戦争はすぐに終わり、経済回復が始まるかもしれない。しかしこれはウクライナが、2014年に勃発した米国とロシアの代理戦争の犠牲者としての苦境を理解することにかかっている。
米国は2014年以降、北大西洋条約機構(NATO)の拡大とロシアの弱体化を目的に、ウクライナに多額の武装と資金提供を続けてきた。米国の代理戦争は通常、数年、数十年にわたって激化し、ウクライナのような戦場となる国を瓦礫の中に置き去りにする。
代理戦争がすぐに終わらない限り、ウクライナは悲惨な未来に直面する。ウクライナは、アフガニスタンの恐ろしい経験から学び、長期の惨状にならないようにする必要がある。また、カンボジア、イラク、ラオス、リビア、シリア、ベトナムにおける米国の代理戦争に目を向けることもできるだろう。
1979年、米国はアフガンでソ連に支援された政府に嫌がらせをするために、ムジャヒディン(イスラム主義者の戦闘員)を武装させた。米国の目的は、ソ連を刺激して介入させ、コストのかかる戦争でソ連を陥れることだったと、元米国家安全保障問題担当大統領補佐官のズビグニュー・ブレジンスキー氏は後に説明している。
アフガンが巻き添えになるのは、米国の指導者には関係ないことだった。
ソ連軍は米国の望みどおり1979年にアフガンに入り、1980年代を通して戦った。一方、米国が支援した戦闘員たちは、1980年代にアルカイダを、1990年代初頭にはタリバンを設立した。
米国のソ連に対する「策略」はブーメランとなった。2001年、米国はアルカイダとタリバンと戦うためアフガンに侵攻した。米国の戦争はさらに20年続き、2021年に米国はとうとう撤退した。アフガンで散発的な米国の軍事行動は続いている。
アフガンは廃墟と化している。米国が米軍の支出に2兆ドル以上を浪費する一方で、アフガンは2021年のGDPが1人当たり400ドルを下回る貧困状態に陥っている。
2021年、アフガンへの餞別として、米政府はアフガンのわずかな外貨保有高を差し押さえ、銀行システムを麻痺させた。
ウクライナでの代理戦争は、米政府が当時のヤヌコビッチ大統領の転覆を支持した9年前に始まった。
米国から見たヤヌコビッチ氏の罪は、NATOをウクライナ、そしてグルジアまで拡大しようとする米国の思惑にもかかわらず、ウクライナの中立を維持しようとしたことだ。米国の目的は、NATO諸国が黒海地域でロシアを包囲することにある。この目標を達成するため、米国は2014年以来、ウクライナに大量の武装と資金提供を行ってきた。
米国側の主役は変わらない。2014年のウクライナに関する米政府の指南役は、当時のビクトリア・ヌーランド米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)で、現在は国務次官(政治担当)である。
2014年、ヌーランドは、ジョー・バイデン現大統領が副大統領時代に同じ役割を担っていたジェイク・サリバン補佐官(国家安全保障担当)と緊密に連携していた。
米国は、ウクライナの二つの厳しい政治的現実を見落としていた。
第一に、ウクライナは民族的にも政治的にも、ウクライナ西部のロシア嫌いの民族主義者と、ウクライナ東部とクリミアのロシア系民族の間で深く分断されていること。第二に、ウクライナを含むNATOの拡大は、ロシアのレッドライン(越えてはならない一線)を越えるということだ。
ロシアは、米国によるウクライナのNATO編入を阻止するために、最後まで戦い、必要に応じて紛争を拡大するだろう。
米国は、NATOは防衛的な同盟だと繰り返し主張している。
しかしNATOは1999年、コソボをセルビアから引き離すためにロシアの同盟国セルビアを78日間空爆し、その後、米国はコソボに巨大な軍事基地を建設した。NATO軍は同様に2011年、ロシアの同盟相手であるムアンマル・カダフィ〔大佐〕を倒し、リビアに10年にわたる混乱を引き起こした。ロシアはウクライナにNATOを受け入れることはないだろう。
2021年末、ロシアのプーチン大統領は米国に三つの要求を突きつけた。ウクライナは中立を保ち、NATOに加盟しないこと。クリミアはロシアの一部にとどまること。ドンバス地方はミンスク2協定に基づき自治区とすること、である。
バイデン氏とヌーランド氏のチームは、NATO拡大に関する交渉を拒否した。ヤヌコビッチ政権転覆を支援した8年後のことだ。プーチン氏の交渉要求を米国が真っ向から拒否したため、ロシアは昨年2月にウクライナに侵攻した。
昨年3月、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、米国とロシアの代理戦争の犠牲となったウクライナの苦境を理解したようだ。同大統領は、ウクライナが中立国になると公言し、安全保障の確保を求めた。そして、クリミアとドンバスに何らかの特別待遇が必要だと公然と認めた。
当時のイスラエルのナフタリ・ベネット首相が、トルコとともに仲介役として関与することになった。ロシアとウクライナは合意に至るまで近づいた。
しかしベネット氏は最近、米国が和平プロセスを「ブロックした」と発言した。
それ以来、戦争は激化している。米国の工作員が昨年9月にノルドストリーム・パイプラインを爆破したと、米調査記者セイモア・ハーシュ氏は述べている。
最近では、米国と同盟国はウクライナに戦車や長距離ミサイル、場合によってはジェット機を送ることを確約している。
平和の基礎ははっきりしている。ウクライナが中立的な非NATO諸国となること。クリミアが1783年以来と同じように、ロシアの黒海艦隊の本拠地として存続すること。ドンバス地域については、領土分割、自治権、休戦ラインなど現実的な解決策を見いだすことだ。
戦闘は停止し、ロシア軍は撤退し、ウクライナの主権は国連安全保障理事会やその他の国々によって保証されるだろう。このような合意は、2021年12月でも、昨年3月でも可能だった。
ウクライナ政府とその国民はロシアと米国に対し、代理戦争の戦場となることを拒否すると伝えるだろう。ウクライナの人々は民族間の深い溝を前にして、外部の力が妥協の必要を省いてくれるとは考えず、民族分裂の両側で、平和のために努力するはずだ。
What Ukraine needs to learn from Afghanistan - Taipei Times [LINK]
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