ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年2月6日)
米政府の対ウクライナ政策を支持する米国人はしばしば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を、すでに受けている以上の米軍支援に値する、民主主義の高貴な擁護者として描く。2022年12月下旬の米議会本会議でのゼレンスキー氏の演説に伴う政治とメディアの熱狂は、そうした英雄崇拝の最近の一例である。
— Aspie for peace! (@timmins316) February 27, 2023
ウォロディミル・ゼレンスキー氏 誤った恋愛関係?
〔米政府系メディア〕ボイス・オブ・アメリカは、ゼレンスキー氏の登場を1941年12月のウィンストン・チャーチル英首相の議会演説と比較する記事を掲載した。〔保守派評論家〕デビッド・フラム氏はアトランティック誌に寄稿し、ゼレンスキー氏は米国民自身と民主主義の価値観を思い起こさせると主張した。さらにフラム氏は、ウクライナの大統領が「ウクライナを支援している米国人に感謝するために米国に来た。感謝すべきは米国人だ」とも述べている。ブレット・ステファンズ氏はニューヨーク・タイムズ紙のコラムで、「米国人がゼレンスキー氏を賞賛するのは、同氏が自由世界の理念を本来の位置に回復させたからだ」と主張した。
このような賛美は、ゼレンスキー氏が市民の自由と民主主義の規範を著しく侵害している証拠が山ほどあることを無視している。米国人の盲目的な態度は、かつて偽りの民主主義の擁護者であったアンゴラの反乱軍リーダー、ジョナス・サビンビ氏に与えられた公平な扱いを彷彿とさせるものだ。1970年代半ばから1990年代初頭にかけて(特にロナルド・レーガン政権時代)、米国の多くの政治家やメディア関係者は、サビンビ氏率いるアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)とそのアンゴラ左派政府に対する反政府活動への支援を強化するよう働きかけたのである。そして、「民主的」な得意先の大きな欠点を見過ごすことも厭わなかった。
特に、米国の「保守派」のサビンビ氏に対する熱狂ぶりは顕著であった。ヘリテージ財団、フリーダムハウス、米国保守連合、ヤング・アメリカンズ・フォー・フリーダム、米国安全保障会議などの団体が、サビンビ氏への支持を表明した。また、ヒューマン・イベント、ナショナル・レビュー、アメリカン・スペクテイター、ウォールストリート・ジャーナルなどの出版物がサビンビ氏支援の主張を展開した。サビンビ氏の後援者は1979年、同氏の大規模な講演ツアーを手配し、1981、1986、1989年にはワシントンでの議会指導者や政府高官との会談を実現させた。
アンゴラ全面独立民族同盟の独裁的で粗暴な体質が指摘された時期もあったが、サビンビ氏への称賛の声は絶えなかった。ジョンズ・ホプキンス大学のピエロ・グレイジェス教授は、このように不快な内実にもかかわらず、サビンビ氏の米国の支援者は「自分たちこそは正しいと、米国の利害と道徳の両面から主張した」と述べている。現在行われている、ゼレンスキー氏への支援強化キャンペーンも同じようなものである。
米国保守連合とヤング・アメリカンズ・フォー・フリーダムからサビンビ氏に賞を贈ったジーン・カークパトリック国連大使は、サザンビ氏は「現代における数少ない本物のヒーローの一人」と称賛を浴びせた。カークパトリック氏がサビンビ氏に抱いた理想像は、米国右派の典型的な見方であった。レーガン大統領も同じ考えで、日記の中でサビンビ氏を「善人」と簡潔に表現している。
オーリン・ハッチ上院議員(当時)は、「私はサビンビ氏に会う機会に恵まれ、その正直さ、誠実さ、宗教的献身に非常に感銘を受けた」と述べている。アンゴラでの紛争は内戦ではないと、このユタ州選出の上院議員は主張した。「これはイデオロギーをめぐる戦いだ。ソ連の全体主義と、自由・自決・民主主義との戦いだ」。サビンビ氏への援助は「共産主義の覇権に抵抗する自由の戦士を助けるという、強いシグナルを世界に送ることになる」。もし「権威主義」を「ソ連の全体主義」に、「ロシアの侵略」を「共産主義の覇権」に置き換えれば、ゼレンスキー氏とその大義を支援しなければならないという、今の主流で徹底して単純化されたメッセージと、事実上同じものになる。
アンゴラ全面独立民族同盟とその指導者サビンビ氏に対する熱狂は、次第に激しく、無批判になった。振り返ってみると、サビンビ氏を称えるキャンペーンで最も恥ずべきエピソードは、1986年にウォールストリート・ジャーナル紙に掲載された、同氏の署名入りでゴーストライターが書いたとみられる論説であった。その内容は、資本主義と民主主義の美徳を称え、米国がルアンダ(アンゴラの首都)の親共産主義政府を追放するために自分の同盟を支援すれば、アンゴラを資本主義と民主主義の両方の価値のモデルとするよう約束するものだった。1989年のヘリテージ財団での講演でも、サビンビ氏は同じようなメッセージを売り込んだ。
サビンビ氏の論説とそれに続く講演は、米国の民主主義支持者(特に保守派)が聞きたかったことをそのまま伝えている。アンゴラ全面独立民族同盟の究極の目的は、親共産主義政権とその後ろ盾であるキューバ軍を打倒するだけでなく、再び民主的な国を建設することだと同氏は主張したのである。それだけではない。「宗教的寛容と言論の自由を備えた民主的な多党制のアンゴラを目指すという同同盟の公約に加えて、経済的自由の重要性を認識することが肝要だ」とサビンビ氏は主張した。ナショナル・レビュー誌は、同氏の「驚くべき自由の擁護」を称賛している。
親サビンビ陣営のプロパガンダの成果がどんなに目覚ましかったかといえば、アンゴラ全面独立民族同盟が支配していたアンゴラの一部では、こうした政治的、経済的原則を何一つ実践していなかったのである。民主主義や多党制の形跡はまったくなかった。同同盟は冷酷なまでに権力を独占し、市民に対する戦争犯罪や、政敵や指導者候補を組織的に投獄・殺害するなどの虐待を行った。その対象には、チト・チングンジ氏やウィルソン・ドス・サントス氏など、サビンビ氏と最も親しい仲間も含まれていた。サビンビ氏の米国人支持者でさえ、アンゴラ全面独立民族同盟が拷問や強制的な「再教育」に頼っていたことを不承不承認めざるをえなかった。
ゼレンスキー氏はウクライナの民主主義を損なう
同様に、ウクライナ政府の弾圧もますます露骨になり、警戒を強めている。ロシアの侵攻以来、ゼレンスキー氏は戦争を正当化するために、11の野党を非合法化した。また戒厳令を発動して、全国ネットのテレビ局を1つに統合する大統領令を発布した。2022年12月29日、ゼレンスキー氏は自分の党が国会で推し進めた新法に署名した。この措置は独立した報道をさらに制限するものだった。他の大統領令では、ロシア正教会の禁止を図り、その高位聖職者に厳しい制裁を課している。正当な手続きなしに投獄される人々の数は増え続けている。
ゼレンスキー氏とその側近たちは、国内外を問わず、最も平和的な敵対者に対しても容赦がない。2022年の夏、ウクライナ政府の偽情報対策センターは、多数の著名な米国人を含むウクライナ批判者のブラックリストを公表した。このリストが事実上の脅迫であることは、9月下旬に同センターが上位35人の標的の修正名簿(住所を含む)を発表し、これらの個人を「情報操作テロリスト」や「戦争犯罪人」と中傷したことでさらに明白になった。
サビンビ氏とゼレンスキー氏への誤った支援で、重要な違いの一つは、サビンビ氏支援に党派的な性格が強かったことである。保守派はアンゴラの詐欺師を支持する傾向が強かったが、リベラル派は控えめな支持からあからさまな敵対までさまざまだった。残念ながら、ゼレンスキー氏が民主主義と自由の擁護者だという見方は党派を問わない。これにはうんざりする。米国人のゼレンスキー支持者は、お得意先の思想的、行動的な欠点を認めようとしない。将来振り返えれば、その忠誠心は、サビンビ氏擁護派が最後はそうだったように、ゼレンスキー氏のファンにとっても恥ずかしいものだったとわかるかもしれない。
Volodymyr Zelensky: Not Exactly a Champion of Democracy - 19FortyFive [LINK]
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