2022-10-01

英雄エドワード・スノーデン

元裁判官・コラムニスト、アンドリュー・ナポリターノ
(2022年9月29日)

トランプ米政権が1917年スパイ活動法違反でエドワード・スノーデンを起訴したとき、合衆国憲法修正第4条(不合理な捜索・押収・抑留の禁止)の意味を信じる人々の多くは政府を強く批判したし、現在もそれに変わりはない。今週、スノーデンは米国籍を保持したまま、ロシア国籍を取得した。

スノーデンは米中央情報局(CIA)および国家安全保障局(NSA)の元工作員であり、NSA と連邦捜査局(FBI)が米国のあらゆる人物に対し行っている、令状のない大量の無差別スパイ活動を内部告発した人物である。

このスパイ活動は、米国内外に送信されるすべての光ファイバーデータを捕捉することで成り立っていた。令状も取らず、対象も特定せず、したがってスパイ行為は無差別であり、あらゆる人の通信を捕捉した。政府は憲法修正第4条の定めに反し、わざわざ証拠を探し出し、正当な理由があると認めた者だけを標的にすることはなかった。

1970年代初め、米議会は外国情報監視法(FISA)に基づく裁判所を創設した。このFISA裁判所は、政府の弁護士だけが出席して秘密裏に会議を開き、その判決のほとんどすべてを他の裁判官にも秘密にし、独自に作り上げた「相当な理由」という基準を用いる。その基準とは、監視令状の必要条件として、外国人と通信している相当な理由があるというものだ。この基準は憲法に大きく反する。

あなたがカナダの従兄弟や英国の書店員に電話をかけたとして、この恐ろしい法律の下で、FISA裁判所は NSA や FBI があなたのすべての通信を捕捉することを可能にするのだ。この「すべて」というのがミソで、監視の対象は従兄弟や書店員だけでなく、通信相手のすべてに及ぶ。

ジョージ・W・ブッシュ大統領は、2006年と2007年に立法を強行し、通信会社とインターネットプロバイダー会社に対し、FISA裁判所が出した令状に従ってFBIへの協力を強いる代わりに、責任から免除することを決定した。

スノーデンの暴露によれば、NSAとFBI がFISA裁判所から令状を取得するものの、それは大量の無差別無令状スパイ活動を行うための隠れみのにすぎない。NSAとFBIは法律を守るよりも、法律を破って令状なしでスパイするほうが簡単なので、FISA裁判所の利用はほとんど形だけであり、必要ないのである。

NSAとFBI の違憲で犯罪的なスパイの規模には、愕然とする。スノーデンのおかげで、FBI が収集した全データを印刷すれば、毎年、国会図書館の27倍の容量を満たすことがわかった。これは憲法修正第4条に反するので違憲である。たとえ大統領の許可があったとしても、コンピューター・ハッキングにあたるので犯罪である。

スノーデンはCIAとNSAで仕事を始めた際、二つの宣誓をした。一つ目は、上司から秘密だと言われたことは何でも秘密にすること。これにはおそらく、NSAが収集したデータだけでなく、そのデータすべてを取得するために用いた違憲で犯罪的な手段も含まれる。

スノーデンが行った二つ目の宣誓は、憲法を守ることだった。これは憲法の条文だけでなく、条文の根底にある価値観も意味する。

誓った法的義務が衝突したとき、どうすればいいのか。二つの誓いが根本から相反する場合、人はどのように遵守すればよいのだろうか。政治家やスパイに対する宣誓と、憲法の理想に対する宣誓とでは、どちらが偉大で上位の宣誓なのだろうか。

歴史の教えによれば、偉業にはしばしば挑戦が必要となる。スノーデンは米国務省からパスポートを無効にされ、モスクワの空港で立ち往生した際、「声(言論の自由)を失うよりは国籍を失うほうがましだ」と発言した。今日、スノーデンは祖国から追放された米国人である。しかし、彼は歴史的な偉大さの象徴であり、真実を求める英雄がしばしば耐えなければならない苦難を思い起こさせる存在であり続けている。

(次より抄訳)
Edward Snowden: An American in Moscow - Antiwar.com Original [LINK]

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