ジャーナリスト、ジャスティン・レイモンド
(2013年7月29日)
朝鮮戦争の「終結」から60年目の今年、オバマ大統領は海外軍事介入が失敗した典型例を歴史のごみ箱から救い出そうとした。大統領は、朝鮮戦争の退役軍人らを前にして、こう宣言した。
.@JustinRaimondo: Who Really Started the Korean War? https://t.co/MLsLbVLTjH
— Antiwar.com (@Antiwarcom) April 19, 2017
「あの戦争は引き分けではなかった。韓国は勝利したのだ。今や五千万人の韓国人が自由と活気に満ちた民主主義の中で生活し、…北朝鮮における抑圧や貧困とは対照的だ。それは勝利であり、あなた方の遺産である」
これはおとぎ話だ。勝利でもなければ、引き分けでもない。米国民は休戦のずっと前から戦争に幻滅しており、トルーマン(米大統領)は国内で、日々不人気になっている紛争を終わらせるよう、かなりの圧力を受けていた。「民主主義」に関する馬鹿話に至っては、米国が何のために戦っていたにせよ、戦争が始まった1950年から戦争が停止した1953年まで、民主主義は米国の大義名分とは言いがたいものだった。
米国は、みずから教育・支援した韓国の独裁者、李承晩のために戦っていた。李承晩がその力を示したのは、左派の政敵に対する大規模な虐殺である。22年間、李承晩の言葉は法律であり、何千人もの政敵が殺され、何万人もの人々が投獄され、亡命させられた。朝鮮半島では自由主義が優位になったが、それは米政府の活動と今も続く軍事駐留にもかかわらず、そうなったのである。朝鮮半島の人々がついに李承晩に反抗し、1960年のいわゆる四月革命で追放された際、李承晩は群衆が青瓦台(大統領官邸)に押し寄せるなか、米中央情報局(CIA)のヘリコプターで安全な場所に運ばれた。
朝鮮戦争にまつわる神話は、オバマ大統領の演説に象徴されている。この演説は、実際の歴史をほとんど無視した、高揚した表現の寄せ集めだ。歴史が挟み込まれたとしても、非常に焦点がぼやかされる。「韓国は私たちに思い起こさせる」という文句が流行歌のリフレインのように繰り返されるが、匿名のスピーチライターが書いたこの大統領演説には、朝鮮戦争の起源を思い起こさせるものはどこにもない。なぜ、このようなことになったのか。
ネオコン(新保守主義)と冷戦リベラルによる定番の解説によれば、北朝鮮がソ連、中国と結託し、1950年6月25日に侵略戦争を始め、北朝鮮軍が係争中の国境を越えて押し寄せたという。この省略された歴史で省かれているのは、北朝鮮軍がその行動によって、李承晩自身の北侵計画に先回りしたという事実である。立教大学教授で歴史学者のマーク・カプリオ氏が次のように指摘する。
「1949年2月8日、韓国大統領(李承晩)はソウルでジョン・ムチオ(駐韓)大使、ケネス・ローヤル陸軍長官と会談した。ここで韓国大統領は、北と戦争を始める正当な理由として、次のようなことを挙げた。韓国軍は、最近日本軍や中国国民党と戦った15万〜20万人の韓国人を集めれば、簡単に10万人増やすことができる。また、韓国軍の士気は北朝鮮軍より高い。戦争になれば敵から大量の離反が予想される。最後に、国連が韓国を承認したことで、韓国が半島全体を支配することが正当化された(憲法に規定されている)。つまり、『待っていても何も得られない』というのが李承晩の結論だった。」
李承晩が攻撃を開始しなかった唯一の理由は、必要な武器・援助の提供に米国が乗り気でなかったことだ。戦争が起これば、それは米国の意向に基づくことになるし、米国の指導者は、戦争がすぐにでも起こると考える十分な理由があった。米政府の政策は、李承晩が南部を支配するのに十分な武器を供給し続けることであった。CIA長官ヒレンコッター提督が議会で行った秘密証言によって米国の戦争責任が証明されるという、ハワード・バフェット米下院議員の主張には証拠がある。
共和党の反介入主義者でネブラスカ出身のバフェットは、その重要証言の機密解除を死ぬまで要求したが、残念ながら無駄だった。しかし、次のようなことがわかっている。米政府は6月25日の大規模な戦闘開始のかなり前、主要閣僚宛の情報報告を通じ、北朝鮮の侵略が間近に迫っていることについて十分警告を受けていた。しかし米政府は外交面でもその他の面でも、北朝鮮を抑止する行動をとらなかった。
共産圏では、金日成(北朝鮮最高指導者)が「三日で勝利する」と言ったことに(ソ連の)スターリンが半信半疑で、朝鮮問題で意見が割れていた。ソ連の方針は「軍事援助はするが、介入はしない」であった。一方、中国の毛沢東は支援を申し出たが、これは米国が参戦し、北朝鮮に進攻するまで実現しなかった。
スターリンもトルーマン米大統領も、この紛争が勃発することをとくに望んでいなかったが、二人とも紛争は避けられないと考えていたかもしれない。その場合、敵が最初に発砲したと見せかけることができれば、プロパガンダ上、都合が良かった。
実際に誰が撃ったのかについては、シカゴ大学歴史学部のブルース・カミングス教授が『朝鮮戦争の起源』『朝鮮戦争論』の両書で決定的な答えを出している。朝鮮戦争が始まったのは米国の半島南部占領下であり、1950年の北朝鮮の攻撃よりずっと前に、米国の支援を借りて一連の攻撃を開始したのは李承晩だった。1945〜48年にかけて、米軍は李承晩に協力して何万人といわれる犠牲者を出した。反乱に対する鎮圧作戦は光州と済州島で多数の犠牲者を出し、6万人もの人々が米国の支援を受けた李承晩軍に殺害されたのである。
李承晩の軍隊と国家警察は、第二次世界大戦中、日本による占領に協力した人々から構成されており、これが内戦を不可避にした最大の要因であった。米国がこのような売国奴を支援したことは、金日成率いる共産主義勢力への広範な支持を確実にし、南北開戦の前段階である南部の反乱を誘発したのである。李承晩は米国を取り込み、北朝鮮は「プロレタリア国際主義」を掲げて中国やロシアを取り込もうと躍起になった。
第二次大戦でソ連と組んで毛沢東を支援した米国は、すでに中国を「失って」おり、トルーマン大統領も朝鮮を「失う」わけにはいかないと考えた。北朝鮮が攻めてくるという十分な警告があったにもかかわらず、(民主党の)トルーマンはこの「奇襲攻撃」を利用して、李承晩の政権を維持するために米軍を韓国に派遣することを正当化し、そのために議会に承認を求めず、事前通告さえもしなかったのである。
共和党は憤慨した。ロバート・タフト上院議員をはじめとする共和党の議員らは、憲法上の義務を踏みにじるこの行為は危険な前例となり、自分の身に降りかかってくるだろうと糾弾した(たしかにそれはベトナム戦争で現実になり、今日に至るまで続いている)。戦争に先立つ数カ月間、共和党の干渉反対派議員は李承晩政権に対する政府の6000万ドルの支援策を(わずか1票差で)否決したが、これは資金力のある中国ロビーの圧力で後に撤回された。トルーマンは、まるでローマ皇帝がガリアに軍団を送り込むかのように、米軍を外国の戦争に送り込んだのである。
リベラル派は政権擁護のために戦争支持を表明し、ネーション誌とニュー・リパブリック誌がその先頭に立った。反戦派の共和党員は「孤立主義者」であり、(憲法尊重を説く)「法律主義者」と組むのはお似合いだと、ニュー・リパブリック誌はさげすんだ。左派は憲法に感傷めいた愛着など持ち合わせてはいなかった。ネーション誌の編集者は赤狩りに乗り出し、ロバート・マコーミック大佐のきわめて保守的なシカゴ・トリビューン紙を、米国共産党と同類だと言った。興味深いことに、共産党の共鳴者だったヘンリー・ウォレス、コーリス・ラモント、そして共産党の全面的な支持を受けてウォレスを大統領選に立候補させた進歩党の幹部らが、トルーマンの後ろに集まり、「集団安全保障」のために国連が主催する戦争というアイデアを喜んでいた。左翼をそそのかして自慢の反戦の証しを投げ捨てさせる能力は、オバマに引き継がれているようだ。
60年後の今に至るまで朝鮮戦争は終結せず、平和条約も結ばれていない。この紛争の教訓は、オバマ大統領が演説で主張したような、「第二次世界大戦後の撤退のせいで米国に備えがなかった」ことではなく、他国の内戦への関与は決して米国や他国の利益にならないということである。60年が経過した今も、米軍は韓国に駐留し、自国の面倒を見ることのできる国(韓国)を守っている。もし北朝鮮が攻撃をしかけてきたら、格好の標的だ。ブッシュ時代の有望な取り組みを含め、平和的統一のあらゆる努力を阻止してきた米政府は、朝鮮半島の対立を助長し続け、そうすることで世界一最悪とはいかないまでも、最悪な一つである北朝鮮の体制を永続させている。
北朝鮮は危険なほど不安定であり、軍部内では金日成王朝の三代目となる金正恩の支配に反対する動きが顕著だ。(南北の)軍同士の銃撃戦も頻発しており、北朝鮮経済の窮状と相まって、早晩爆発を起こし、南側を巻き込むことは必至である。西側諸国は北朝鮮を孤立させ、その北朝鮮も孤立しているため、現地に大きな影響を及ぼす能力は限られる。
南北両国は非常に異なっており、多くの点で正反対である。しかし、一つのことが両国を結びつけている。強烈なナショナリズムだ。この同じナショナリズムが、どんな口実であれ、米国の駐留に憤慨し、いつの日か国家統一の成功という形で表現されるだろう。その日まで、未完の戦争とその影響は、米国に刺さった棘であり続けるだろう。
(次を全訳)
Who Really Started the Korean War? - Antiwar.com Original [LINK]
第二次大戦でソ連と組んで毛沢東を支援した米国は、すでに中国を「失って」おり、トルーマン大統領も朝鮮を「失う」わけにはいかないと考えた。北朝鮮が攻めてくるという十分な警告があったにもかかわらず、(民主党の)トルーマンはこの「奇襲攻撃」を利用して、李承晩の政権を維持するために米軍を韓国に派遣することを正当化し、そのために議会に承認を求めず、事前通告さえもしなかったのである。
共和党は憤慨した。ロバート・タフト上院議員をはじめとする共和党の議員らは、憲法上の義務を踏みにじるこの行為は危険な前例となり、自分の身に降りかかってくるだろうと糾弾した(たしかにそれはベトナム戦争で現実になり、今日に至るまで続いている)。戦争に先立つ数カ月間、共和党の干渉反対派議員は李承晩政権に対する政府の6000万ドルの支援策を(わずか1票差で)否決したが、これは資金力のある中国ロビーの圧力で後に撤回された。トルーマンは、まるでローマ皇帝がガリアに軍団を送り込むかのように、米軍を外国の戦争に送り込んだのである。
リベラル派は政権擁護のために戦争支持を表明し、ネーション誌とニュー・リパブリック誌がその先頭に立った。反戦派の共和党員は「孤立主義者」であり、(憲法尊重を説く)「法律主義者」と組むのはお似合いだと、ニュー・リパブリック誌はさげすんだ。左派は憲法に感傷めいた愛着など持ち合わせてはいなかった。ネーション誌の編集者は赤狩りに乗り出し、ロバート・マコーミック大佐のきわめて保守的なシカゴ・トリビューン紙を、米国共産党と同類だと言った。興味深いことに、共産党の共鳴者だったヘンリー・ウォレス、コーリス・ラモント、そして共産党の全面的な支持を受けてウォレスを大統領選に立候補させた進歩党の幹部らが、トルーマンの後ろに集まり、「集団安全保障」のために国連が主催する戦争というアイデアを喜んでいた。左翼をそそのかして自慢の反戦の証しを投げ捨てさせる能力は、オバマに引き継がれているようだ。
60年後の今に至るまで朝鮮戦争は終結せず、平和条約も結ばれていない。この紛争の教訓は、オバマ大統領が演説で主張したような、「第二次世界大戦後の撤退のせいで米国に備えがなかった」ことではなく、他国の内戦への関与は決して米国や他国の利益にならないということである。60年が経過した今も、米軍は韓国に駐留し、自国の面倒を見ることのできる国(韓国)を守っている。もし北朝鮮が攻撃をしかけてきたら、格好の標的だ。ブッシュ時代の有望な取り組みを含め、平和的統一のあらゆる努力を阻止してきた米政府は、朝鮮半島の対立を助長し続け、そうすることで世界一最悪とはいかないまでも、最悪な一つである北朝鮮の体制を永続させている。
北朝鮮は危険なほど不安定であり、軍部内では金日成王朝の三代目となる金正恩の支配に反対する動きが顕著だ。(南北の)軍同士の銃撃戦も頻発しており、北朝鮮経済の窮状と相まって、早晩爆発を起こし、南側を巻き込むことは必至である。西側諸国は北朝鮮を孤立させ、その北朝鮮も孤立しているため、現地に大きな影響を及ぼす能力は限られる。
南北両国は非常に異なっており、多くの点で正反対である。しかし、一つのことが両国を結びつけている。強烈なナショナリズムだ。この同じナショナリズムが、どんな口実であれ、米国の駐留に憤慨し、いつの日か国家統一の成功という形で表現されるだろう。その日まで、未完の戦争とその影響は、米国に刺さった棘であり続けるだろう。
(次を全訳)
Who Really Started the Korean War? - Antiwar.com Original [LINK]
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