2022-10-31

マスク氏がツイッター買収、メディアはパニック

ジョージ・ワシントン大学法学教授、ジョナサン・ターリー
(2022年10月29日)

10月27日の夜、私はイーロン・マスク氏がツイッター社買収にあたり直面する課題についてコラムを書き、新しいことに全力で取り組む手順を提案した。以前のコラムで述べた明らかなステップの一つは、史上最大の検閲システムの一つを作り上げた主要人物であるパラグ・アグラワル最高経営責任者(CEO)、ネッド・セガル最高財務責任者(CFO)、ビジャヤ・ガッデ最高法務責任者(CLO)を解雇することだった。マスク氏は就任後数分でこれを実行し、アグラワル氏らの解任は世界における言論の自由という大義において異例の前進となった。

予想どおり昨日の朝、メディア関係者は、ツイッターが長年にわたる偏向した強引な検閲の後、言論の自由の保護を回復するかもしれないと考え、大パニックに陥った。物議を醸したワシントン・ポスト紙のコラムニスト、テイラー・ロレンツ氏は「今夜、このサイト(ツイッター)で地獄の門が開かれたようだ」と嘆いた。そのとおり、他人が自分の意見を表明するためツイッターを利用できるようになることは、多くのメディア関係者にとって地獄のようなものなのだ。

アグラワル氏とガッデ氏は、ツイッター社の検閲文化を体現しており、言論の自由や多様な意見に関する伝統的な考え方に臆することなく反対する人物だった。

アグラワル氏は就任してまもなく、「より健全な公共の会話につながると信じるものを反映した」コンテンツ規制を行うと宣言していた。

アグラワル氏は、同社が「言論の自由について考えることにあまり重点を置かないようにする」と述べた。「インターネットでは言論は簡単だ。ほとんどの人が発言できる。我々の役割として特に強調されるのは、誰の声を聞くことができるかということだ」

私はかねて、インターネットは言論の自由にとって印刷機の発明以来の大発展だと考える「インターネット原論者」だと自認してきた。しかし、議会から大学まで、言論の自由の価値が急速に損なわれているのは、憂慮すべき事態だ。

ジョー・バイデン大統領を筆頭に、民主党の指導者やメディア関係者は、気候変動、公正な選挙、公衆衛生、性自認などの諸問題について、反対意見を抑えるため、企業検閲のほか国家検閲さえ要求してきた。たとえば、ワシントン・ポスト紙のマックス・ブート氏は「民主主義が生き残るには、コンテンツの節度を高めることが必要で、低くする必要はない」と宣言した。

その同じ人物の多くが今や、気候変動、選挙規制、性自認などさまざまなテーマについて他人が反対意見を述べることができるかもしれないと考え、憤慨しているのだ。

ジャーナリストのモリー・ジョンファスト氏は、「誰か新しいツイッターを作ってくれないか、それともこれはとても愚かな質問か」と尋ねた。つまりこのジャーナリストは、他人が日常的に黙らされるようなソーシャルメディアのプラットフォームを作り直したいと思っているのだ。答えは簡単。フェイスブック、それに事実上他のすべてのソーシャルメディア・プラットフォームである。

マスク氏恐怖症の人々が騒ぎ出したのは、たった一つのソーシャルメディア企業が、言論の自由の保護を強化するという見通しによって引き起こされた。たった一社だ。しかし人々が代替手段を持てば、政治的・社会的言論を統制する努力は水の泡になると彼らは知っている。これらの企業が検閲を売り物にできるのは、言論の自由の競争相手をほとんど封じ込めてきたからにほかならない。今、代替手段ができるかもしれない。

一つのソーシャルメディアサイトで勃発した言論の自由に対するパニックは、ジャーナリズムや法学の教授たちにも共有されている。ニューヨーク市立大学のジャーナリズム教授、ジェフ・ジャービス氏は「太陽が暗い」「これは緊急事態だ! ツイッターは邪悪なシス卿(映画『スターウォーズ』の悪役)に乗っ取られることになる」と書いた。ジャービス氏は以前、マスク氏による買収の可能性が高いというニュースの後、「今日のツイッターは、ワイマール・ドイツの黄昏時にベルリンのナイトクラブで過ごす最後の夜のように感じる」と書いた。

ジャービス氏だけではない。

ジャーナリズムの学校では、アドボカシー(特定の主義の唱道)ジャーナリズムの台頭と客観性の否定について議論されてきた。作家、編集者、コメンテーター、学者らは検閲や言論統制を求める声の高まりを受け入れており、バイデン氏やそのおもだった顧問らも同様だ。この動きには、ジャーナリズムにおける客観性という概念そのものを否定し、あからさまな唱道ジャーナリズムを支持する学者も含まれる。

コロンビア大学ジャーナリズム学部長でニューヨーカー執筆者のスティーブ・コル氏は、合衆国憲法修正第一条による言論の自由の権利が、偽情報を守る「武器」にされていると批判している。スタンフォード大学のジャーナリズム教授であるテッド・グラッサー氏は学生新聞とのインタビューで、ジャーナリズムは「社会正義の感覚を身につけるために客観性という概念から自らを解放する必要がある」と主張している。グラッサー氏はジャーナリズムが客観性に基づいているという考えを否定し、「ジャーナリストは活動家」とみなすという。なぜなら「最良の状態におけるジャーナリズムとは、そして最良の状態における歴史とは、すべて道徳に関するものだからだ」という。したがって「ジャーナリストは社会正義を公然と、かつ率直に主張しなければならず、客観性の制約の下でそれを行うのは難しい」。

同様に、ハーバード大学の法学教授ジャック・ゴールドスミス氏とアリゾナ大学の法学教授アンドリュー・キーン・ウッズ氏はアトランティック誌に発表した論文で、「ネットワークの自由対管理に関する過去20年間の大議論において、中国はほぼ正しく、米国はほぼ間違っていた」と述べ、中国式のインターネット検閲を呼びかけている。

マスク氏が、ツイッターに言論の自由の保護を回復するという公約を忠実に守ることができるかどうか、見極めなければならない。そのために私は、同社を言論の自由の砦(サイト)に早急に作り変えることができる「憲法修正第一条オプション」(政府に適用される言論の自由の侵害禁止を、企業が自主的に適用する)を提案した。マスク氏がどのような方法で同社を再建するかはともかく、はっきりしているのは、大手ソーシャルメディアサイトで言論の自由が守られる可能性が出てきたことである。言論の自由に反対する人々のパニックは、ソーシャルメディアにおける多様な意見と議論を深めるため、一つの扉が今開かれたという希望を何百万人に与えるのに十分なものである。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : 'The Gates of Hell Opened': A Media Panic Ensues As Musk Takes Over Twitter and Fires Chief Censors [LINK]

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