2022-10-26

米政策が招いた北朝鮮ミサイル実験

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2022年2月15日)

ここ数週間、北朝鮮は弾道ミサイルの能力向上を生々しく示している。1月には、1カ月で7回の発射実験を行い、新記録を樹立した。金正恩政権はその締めくくりとして旧正月に、米国領グアムに到達可能な中距離ミサイルの発射実験を行った。この「火星12」の発射は、米国内の目標に到達する能力を持つとみられる3発のミサイルを実験した2017年以来、北朝鮮として最長距離の発射となった。1月の他の少なくとも1回の発射では、低空飛行できわめて機動性の高い、極超音速ミサイルが使用された。

この新たな実験は米政府関係者を驚かせたようだが、バイデン政権が金正恩政権との関係正常化につながる新たな目立った取り組みを行わなかったことに対する、北朝鮮の反応は予想できた。1月下旬に韓国(文在寅政権)の(鄭義溶)外相が、朝鮮戦争の公式な終結を宣言する宣言文の草案に米韓が合意したと報告したことが、唯一の柔軟さの兆しだった。しかしそれも北朝鮮との交渉次第であり、その重要なステップは依然として不透明なままである。

現在の米朝関係の行き詰まりは、非常に歯がゆい。ホワイトハウスはトランプ大統領の任期中盤に柔軟な政策を示した後、手を引き、他の問題で有意義な交渉を行う前に核兵器計画の放棄に向けた措置を取るよう北朝鮮に要求するという、米政府の長年の外交戦略を再開した。バイデン氏の外交チームも同じ手法をとっている。

しかし、北朝鮮の核開発を「完全で検証可能・不可逆的」に終わらせるという米政府の要求は、20年以上もの間、不発に終わっている。北朝鮮の弾道ミサイル発射計画が年々大規模化し、高度化していることに関する同様の要求も、無益であることが証明されている。それどころか、米政府と「国際社会」がこれまで以上に厳しい経済制裁を要求しているにもかかわらず、北朝鮮は核兵器とミサイル発射システムをさらに製造し続けている。米国防情報局の2021年の報告書によれば、北朝鮮はすでに「核兵器の備蓄を保持している。外部の専門家は、北朝鮮が20~60個の核弾頭を製造するのに十分な量の核分裂性物質を生産していると見積もっている」。2021年のランド研究所の調査では、今の傾向からすると、その数は2027年までに151~242個に達すると結論づけている。さらに、北朝鮮はそれら核兵器を発射する多数の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)を自由に使用できるようになる。

ただし、北朝鮮が2017年9月以降、核兵器実験を実施していないことは、トランプ政権が首脳会談を含む米朝の直接対話に意欲を示した時期と重なるので、注意が必要である。また、北朝鮮は短距離ミサイルの実験さえも自主的にモラトリアム(一時停止)を採用した。短距離ミサイルの発射が再開されたのは、米政府との関係打開の見通しが立たなくなったことが明らかになったからである。核実験のモラトリアムもICBM発射のモラトリアムも当面は有効だが、この自制がいつまで続くかはますます不透明になってきた。

トランプ氏がかつて約束した北朝鮮とのオープンな関係は、同氏自身の外交チーム内での妨害と、議会民主党とその盟友である既成ニュースメディアによる冷笑するような党派的批判との犠牲になった。前者のおもな原因は、トランプ大統領が見当違いにも超タカ派のジョン・ボルトンを国家安全保障担当の大統領補佐官に任命したことである。後者では、トランプ氏は金正恩総書記の友人であり代弁者だと、民主党が絶えず中傷した。これらの要因が相まって、実のある交渉の可能性を命取りにも妨げている。その交渉が米朝の正常な関係につながり、世界でもとりわけ危険な発火点に緊張緩和をもたらすかもしれないのに。

ジョー・バイデン氏がホワイトハウスに入る前から、新しい外交政策チームが北朝鮮問題について斬新な考えを示す気配はほとんどなかった。北朝鮮を孤立させようとする無益なゾンビ政策への肩入れは、2022年1月のミサイル発射実験後、バイデン政権が新たな制裁を課したことで確かになった。米政府が軌道修正しなければ、北朝鮮がICBMと核兵器の両方の実験を再開するのは時間の問題である。

その結果を回避する唯一の方法は、トランプ氏が一時選んだ路線を再開し、北朝鮮との正常な関係を確立するハイレベルな交渉を追求することだ。それが意味するのは、制裁を解除し、北朝鮮と正式な外交関係を結び、朝鮮戦争を正式に終わらせる条約に調印する、その意志を持つことである。また、北朝鮮を核以前の時代に戻すという奇想天外な要求を放棄することも意味する。好むと好まざるとにかかわらず、北朝鮮は世界の核兵器保有国の一員であり、今後もそうあり続けるだろうし、高性能なミサイル発射システムを急速に完成させつつある。そのような能力を持つ国とは、少なくとも米国は対話することが不可欠である。北朝鮮を孤立させ、威圧しようとする戦略は、長い間、無益な活動であった。今やそれはきわめて危険なものとなっている。

(次を全訳)
North Korea's Missile Tests a Response to a Zombie US Policy - Antiwar.com Original [LINK]

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