2022-10-29

チャンスの国、アメリカ

研究者、リプトン・マシューズ
(2022年10月26日)

危険を冒してまで入国しようとする移民の波ほど、米国への需要を物語るものはない。読者は毎日、米国の崩壊が迫っているという暗い話を聞かされている。しかし、このような警鐘を鳴らす風潮には、米国人の複雑な体験が隠されている。米国は世界各国から市民を集めることに長けている。それは、個人の成果を支援するために資源や制度を動員する優れた能力を持っているからだ。

移民が米国に魅力を感じるのは、米国では権力者であっても不正をすれば訴追されるという認識と現実があるからである。市民は制度の公平性を信じることで、その成功を実力によるものとし、目標達成のために努力する傾向がある。米国の市民文化は権力の中枢における汚職や非効率に容赦がなく、健全な市民文化は良い統治をもたらす。

しかし、多くの国では汚職が社会規範として浸透しており、不祥事を起こした役人が処罰されることはほとんどない。ジャマイカの例では、汚職疑惑は「九日間の不思議」に例えられる。数日間わめいた後、人々はそのような事件を忘れてしまうのが普通だからだ。移民たちは、米国はより公平な社会であるため、移住することで人生のチャンスが増えると強く感じている。

しかし社会によっては、縁故採用や顧客主義が、有能な個人を犠牲にして家族や友人を優遇し、社会的な地位上昇の機会を阻害し続けている。このような勢力が中南米などの社会に与える打撃を評価する人は、ほとんどいない。有能な人材が報われないことで、生産性の高い従業員の意欲を失わせ、最も有能な人材が重要な役割を果たせなくなるため、ビジネスを行うコストを増加させる。

フアン・フェリペ・リアーノは最近の論文で、コロンビアを「官僚縁故主義」 の典型例として紹介している。それによると、コロンビアの公務員の38%は親戚が行政機関におり、18%は家族ぐるみで公務員とつながっており、11%は同じ機関に所属する家族と一緒に働いている。コネのある人は給料も高く、高官とコネがあると、適性が見過ごされる恐れがある。

こうした雇用方針が公共財の提供に破滅をもたらすのは明らかだろう。官僚は公的資源を管理する責任があるが、そのために選ばれた人が不適格であれば、公共財の供給は劣悪なものとなる。移民は母国でそうした不都合な方針が慣行となっていることを承知しているので、公職を維持するのに高い水準を求められる米国に移住するきっかけになる。

また、移民は米国企業が業績と能力を重視していることも知っている。汚職というと公共部門の問題というイメージがあるが、民間部門の活力も同様に低下させる。ジャマイカで働くことを拒否した人々が、米国に移住して二、三の仕事を見つけ、並外れた成果を上げることは、見る者を長年困惑させてきた。

ケネス・カーターは1997年に出版した『なぜ労働者は働かないのか』でこの謎を解き明かしている。

カーターはジャマイカの従業員を調査し、ジャマイカで昇進につながるのは、同僚のゴシップを上司に聞かせること、上司のエゴを満たすことだという考えが広まっていることを発見した。カーターの調査によると、管理職は生産性を阻害する有害な環境を作り出していた。報酬と生産性が相関しないため、従業員にとっては、自己改善の機会が限られていることを考えると、優秀であることよりも生産性を抑えることの方が安上がりだったのである。

米国には、自分の努力が評価される環境を求めて人が集まってくる。移民は、自国できちんとした報酬を得られるのであれば、米国への移住をためらうだろう。さらに、米国は知能指数で1位を獲得しており、才能を開花させるのに世界で最も適した場所である。ベンチャーキャピタルの大手はほとんど米国にあり、現在でも最先端の大学がいくつかある。

さらに驚くべきことに、米国は再分配においてトップであり、「米国は国民所得のうち下位50%に最も多く再分配している国として際立っている」という調査結果がある。米国はもはや機会の国ではないという不満があるにもかかわらず、経済分析では、「過去に比べて現在、機会の平等が高まっているが、それは機会がそれほど平等でなかったことがおもな理由である」との見解が示されている。

メディアは米国批判に明け暮れているが、じつは米国は今でも多くの面で立派な国である。移民はアメリカンドリームとその永続を信じるからこそ、危険に遭遇しながらも果敢にその地を目指すのである。

(次を全訳)
To Many, America Still Is a Place of Opportunity (Unless Progressives Destroy That, Too) | Mises Wire [LINK]

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