2022-10-27

政治にまみれた「正義」

ロン・ポール研究所常務理事、ダニエル・マカダムズ
(2022年10月24日)

(ソ連の独裁者)スターリンの一の子分は「どんな人物かわかれば、ぴったりの罪をつくってやる」と有名な言葉を残している。その意味は、ソ連の司法は法の支配ではなく、政治だったということだ。まず誰が政治上の理由で罰せられるかを決め、しかる後に、その人物が問われる犯罪を国が用意する。

この政治にまみれた「正義」の暗黒時代が戻ってきた。最近、トランプ陣営の元顧問スティーブ・バノン氏が、連邦議会占拠事件の経緯を調べる下院特別委員会(1月6日委員会)への出頭拒否をめぐり議会侮辱罪で懲役4月の実刑判決を受けたのだ。

米議会からの召喚状を無視したバノン氏の処罰が、どうして政治裁判なのか。なぜならバノン氏以前にも、エリック・ホルダー氏(元司法長官)、ジャネット・リノ氏(同)、ロイス・ラーナー氏(元内国歳入庁部長)といった民主党の名士を含む多くの人々が議会侮辱罪で起訴されたが、実刑判決を受けることはなかったからだ。

バノン氏の判決は、米国民に政治的なメッセージを伝える。トランプ氏を支持すれば犯罪者であり、スティーブ・バノンの隣の独房に入ることになるかもしれないということだ。

これが危険だということを理解するのに、トランプ氏を支持する必要はない。誰もが政治裁判を恐れているはずだ。これは両刃の剣であり、共和党が議会を占拠した場合、この前例に従わないという保証はない。

政敵を刑務所送りにするなど、先進国とは思えない。反アメリカ的だ。しかし、現に米国で起きている。

1月6日委員会の目的は、不法侵入してペロシ下院議長の神聖な机に足を乗せたという「罪」に対する正義を求めることではなく、ドナルド・トランプを二度と大統領選に出馬させないようにすることにある。そのために何百人もの人々が犯罪でもないのに不当に逮捕され、ひどい状態で拘束されている。大事の前の小事といういうわけだ。

議会侮辱罪といえば、そもそも本当の侮辱は、1月6日委員会の存在だ。この委員会は最初から党派的な裁判ショーであり、たった二人の「共和党」メンバーは共和党員によって選ばれたのではなく、ペロシ下院議長によって選ばれたのである。委員会の目的は、議事堂に乱入した少数の乱暴なデモ参加者が、どういうわけか(フランス革命の)バスティーユ襲撃に相当するという嘘の物語をテコ入れすることにある。

米政権は他分野でも物語の操作に関与している。先週メディアは、テスラとスペースXを率いるイーロン・マスク氏が、ツイッター買収をめぐり一転二転していること、ロシアとウクライナの和平案(ロシアへの核攻撃は含まない)を提案していることについて、「国家安全保障審査」を受けることになったと報じた。

マスク氏はまた、自分が責任者になったあかつきには、ツイッターを自由な言論の場に戻すと繰り返し誓ったことで、キャンセルカルチャー(排斥主義)左翼から非難を浴びている。元ニューヨーク・タイムズ記者のアレックス・ベレンソン氏をはじめ、多くのケースで見られるように、ツイッターはバイデン政権と密接に連携し、新型コロナやウクライナ、その他多くの事柄について、「通説」にあえて挑戦するあらゆる利用者を黙らせ、利用を禁止してきた。

司法と正義が政治に絡むと、自由は消え去ってしまう。これがバイデン政権に始まったことだと思うほどうぶではないが、癌のように広がっているのは間違いなさそうだ。自由の共和国アメリカを滅ぼさないためには、政治にまみれた正義を否定しなければならない。

(次を全訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Political ‘Justice’ in America [LINK]

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