【海外動画より】シカゴ大学の政治学教授であり、数々の高名な著作を持つロバート・ペープ氏は、オーストラリアの国際政治番組に出演し、アメリカのトランプ政権が直面しているイラン情勢の泥沼化と、その背景にあるアメリカ国内の深刻な内政危機について包括的な分析を展開しました。ペープ教授は、現在のトランプ大統領の置かれた状況を「エスカレーション・トラップ(軍事対立の連鎖による罠)」という概念を用いて説明しています。米軍はイランの指導者を暗殺し、海軍による臨検を行うなど、戦術的には一定の成功を収めているものの、戦略的には大失敗を喫しているというのが教授の見解です。
実際、イランは開戦前と同等の濃縮ウランを維持しており、核開発の野心を放棄していません。さらに、ホルムズ海峡の戦略的封鎖を通じて、世界市場における原油や天然ガス、肥料などの供給統制力を高めており、支配的な原油シェアは戦前の約4%から15%へと急拡大しました。このトラップの恐ろしい点は、トランプ大統領がイラン側の要求を多く含む妥協案を受け入れれば国内の政治基盤を失い、かといってさらなる軍事侵攻に踏み切れば事態を一層悪化させるという、どの選択肢を選んでも裏目に出る状況に陥っていることです。これにより、ワシントンでは全面空爆の噂と和平合意の報道が交互に繰り返される、混迷した「ピンポン状態」が続いています。
ペープ教授は、このイランとの紛争がアメリカの覇権主義(プライマシー)の終焉を象徴する歴史的転換点になると指摘します。1991年の湾岸戦争で世界に誇示した「超高精度兵器による電撃勝利」という全能のイメージは完全に崩壊し、トランプ大統領がヨーロッパやアジア、オーストラリアなどの同盟国に対して中東への派兵を要請した事実は、アメリカの単独行動能力の限界を露呈させました。一方で、アメリカ国内に目を向けると、より本質的で致命的な危機が進行しています。教授が実施した大規模な世論調査では、数千万人のアメリカ人が自身の政治的目的のために「政治的暴力」を容認・日常化しているという衝撃的な実態が浮かび上がりました。
教授はこの内政の危機を「バイオレント・ポピュリズム(暴力的ポピュリズム)の時代」と名付け、その根底には歴史的な人口動態の変化があると分析します。アメリカは250年の歴史で初めて、白人が多数派の民主主義国家から、白人が少数派となる社会への過渡期にあります。この急激な変化が右派には排外主義的な恐怖を、左派には過度な反発を生み、国家の正当性を分断しているのです。さらにイラン紛争に伴うガソリン価格の高騰やインフレが、富裕層ではなく人口の90%を占める一般市民の生活を直撃しており、この経済的困窮が国内の不満にさらなる火を注いでいます。ペープ教授は、政治制度がこの急速な社会変化を吸収しきれていない現状に警鐘を鳴らしつつも、リスクを正しく認識することでより良い未来を創造できるはずだと、一抹の希望をにじませて議論を締めくくりました。
The mirage of peace | Professor Robert Pape - YouTube
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