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2026-02-20

貿易赤字の真の原因

Trade Deficits and Sound Money | Mises Institute [LINK]

【海外記事紹介】ドナルド・トランプ氏の台頭以来、貿易赤字は「国家の弱さ」や「不当な取引の証拠」として語られることが増えました。貿易黒字を勝利、赤字を敗北と見なすこの風潮は、関税や産業政策による是正を求める声につながっています。しかし、経済学者ミーゼスの思想を紐解けば、現代の政策担当者が国際貿易の本質をいかに深く誤解しているかが浮き彫りになります。

古典派経済学の正統な継承者であるミーゼスによれば、貿易収支とは管理すべき政策目標ではなく、健全な通貨制度の下で自然に調整される一時的な結果に過ぎません。金本位制のような健全な通貨制度の下では、ある国が貿易黒字になれば国内に金(ゴールド)が流入し、それが通貨供給量を増やして物価や賃金を押し上げます。その結果、輸出競争力が低下して輸入が増え、黒字は自然に解消されます。赤字国ではその逆が起こり、通貨供給量の減少が物価を下げて輸出競争力を高めます。この自律的な調整機能こそが重要であり、貿易に「勝ち」も「負け」も存在しないのです。

ミーゼスは、貿易赤字が必ずしも経済の不調を意味するものではないと強調しました。赤字は投資の活発化や消費者の福利向上を反映している場合もあり、逆に黒字が資本逃避や消費の抑制を示している場合もあります。重要なのは、個人が健全な通貨の下で自由に取引できているかどうかです。関税によって「赤字を是正」しようとする試みは、根本的な原因、特に「通貨の問題」を無視して症状だけをいじくり回すものに過ぎません。

現代の慢性的、かつ巨大な貿易赤字の真の原因は、貿易そのものではなく、通貨制度の失敗にあります。現在の不換紙幣制度、特にドルが基軸通貨である体制では、金本位制のような規律が働きません。米国は通貨を増発して消費を拡大し、調整圧力にさらされることなく赤字を垂れ流し続けることができます。つまり、貿易赤字は「不当な搾取」の結果ではなく、信用膨張や放漫な財政といった、自国の通貨政策が生み出した歪みなのです。

トランプ氏の重商主義的な主張は、こうした通貨の歪みを貿易政策で解決しようとする誤りを犯しています。関税は国内物価を上げ、資本配分を歪めるだけで、根本的な解決にはなりません。ミーゼスの洞察は、貿易の問題を議論するなら、まず通貨の健全性を取り戻すべきだと教えています。通貨の規律を欠いたままの貿易政策は、原因ではなく結果に対処するだけの、無力で的外れな手段に留まり続けるでしょう。

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