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2026-05-10

ミーゼス研の機能不全

The Influence and Significance of Human Action After 75 Years Finally in Print [LINK]

【海外記事より】オーストリア学派の経済学に多大な影響を与えたルートヴィヒ・フォン・ミーゼスの主著『ヒューマン・アクション』。その出版75周年を記念した論文集『75年を経たヒューマン・アクションの影響と意義』がようやく刊行されましたが、その内容と出版プロセスを巡って混乱が生じています。法学者のステファン・キンセラ氏は、ミーゼス研究所による今回の出版が、組織内の不協和音を露呈するものになっていると指摘しています。当初、この論文集は2024年に開催された会議の成果として、寄付者や参加者に約束されていたものでした。しかし、潤沢なリソースがあるはずの研究所が1冊の本をまとめるのに2年を要したことに対し、関係者からは生産性の低さを批判する声が上がっています。

さらに、完成した書籍には看過できない不可解な点が見受けられます。まず、裏表紙の紹介文では「序文(Foreword)」を引用しているにもかかわらず、実際の本文には「はしがき(Preface)」しか存在しないという、初歩的な編集ミスが指摘されています。しかし、それ以上に衝撃的なのは、重版分の目次に追加された脚注の内容です。そこには、同研究所の最も著名なフェローの一人であるハンス・ヘルマン・ホッペ教授が、2026年4月1日付でその地位を解任された旨が記されています。学術書において、その著者の一人を冒頭で否定するような注釈を入れるのは極めて異例であり、読者や寄付者の間では困惑が広がっています。

著作権の扱いについても議論を呼んでいます。今回の書籍は、商用利用を制限する比較的厳しいライセンスで発行されました。しかし、執筆者の一人であるホッペ教授は、自身の論文をより自由度の高いライセンスで公開しています。キンセラ氏は、資本主義を標榜する団体がなぜ「商用利用」を制限するようなライセンスを採用し、読者に誤解を与えるような権利主張を行うのかと疑問を呈しています。かつての研究所はオープンな出版方針を掲げていましたが、近年はその姿勢が後退しているようです。

今回の出版をめぐる騒動は、単なる事務的なミスの積み重ねではなく、伝統ある研究所内部での深刻な対立を反映しているように見えます。ホッペ教授は他にも軍事史に関する会議の論文集への寄稿を終えていますが、そちらの出版も遅延しており、刊行の目処は立っていません。偉大な経済学者の功績を称えるはずの記念碑的な著作が、皮肉にも組織の機能不全と変質を浮き彫りにする結果となってしまいました。自由社会の原則を説く学術団体にとって、情報の公開性や執筆者への敬意は不可欠なはずですが、現在のミーゼス研究所はその岐路に立たされているといえるでしょう。

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