【キーワード】論理的推論(logical deduction)とは、誰もが否定できないもっともな前提から出発し、一歩一歩、理屈を積み重ねることで、間違いのない結論を導き出す思考の方法です。この手法は、オーストリア学派経済学の大きな特徴の一つであり、私たちの日常の選択や行動の背後にある仕組みを明らかにするために用いられます。例えば、数学者がピタゴラスの定理を証明する時に、最初から正しいとされる前提から論理を組み立てていくのと非常によく似ています。
オーストリア学派は、経済学を単なる数字の集まりではなく、人間が目的を持って行う「意志のある行為」を分析する学問だと考えます。その出発点となるのが、「人間は行為する」という、あまりにも当たり前で否定できない根本的な前提、すなわち公理です。ここから論理的な推論を重ねることで、経済の普遍的な法則を見つけ出そうとするのです。一歩一歩の推論が正しく行われている限り、そこから導き出される結論は、公理と同じように正しいものであることが保証されます。
この論理的推論によって導かれた法則の一つに、物の値段が上がれば、それを欲しがる人の数は減るという「需要の法則」があります。もし、実際に値段が上がったのにある商品の売れ行きが伸びたというデータが見つかっても、それによって論理的に導き出された法則そのものが間違いだとされることはありません。なぜなら、現実の世界では流行の変化や他人の行動など、法則が想定していた条件以外の要素が影響しているだけだと考えられるからです。
ここが、統計や実験などの経験から法則を導き出そうとする一般的な経済学の手法とは大きく異なる点です。統計はあくまで「過去に何が起きたか」という歴史を記録したものであり、将来も必ず同じことが起きるとは限りません。しかし、人間の行動の性質に基づいた論理的推論によって得られた法則は、時代や場所を問わず、いつでもどこでも成り立つ普遍的なものとなります。このように、事実を解釈するための正しい「ものさし」を、論理の力で築き上げることこそが、論理的推論の真髄なのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿