注目の投稿

「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ

インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...

2026-05-02

露の戦略的忍耐

Is Russia Really 'Too Soft' in Enforcing Its Red Lines? - LewRockwell [LINK]

【海外記事より】ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、ロシア国内の軍関係者の間では、政府の対応が「生ぬるい」との不満が募っています。元ロシア軍参謀総長のユーリ・バルエフスキー将軍をはじめとする軍高官たちは、欧米諸国が設定された「レッドライン(越えてはならない一線)」を繰り返し無視している現状に警鐘を鳴らしています。ウクライナ側がNATOの支援を受けてロシア本土の石油施設や民間インフラ、さらにはクレムリンまでをも攻撃対象としているにもかかわらず、ロシア政府が決定的な報復を控えていることが、さらなる挑発を招いているという主張です。軍の現場からは、言葉だけの警告ではなく、敵に恐怖を植え付けるような「本物の戦争」を求める声が上がっています。

しかし、記事の著者であるドラゴ・ボスニッチ氏は、プーチン政権が戦略的な忍耐を続けている背景には、極めて冷静な計算があると分析しています。ロシアが直ちにNATOの挑発に対して直接的な軍事報復を行わない最大の理由は、西側諸国の足並みを乱したままにしておくためです。現在、米国と欧州の関係は歴史的な低水準にあり、トランプ政権がNATOからの離脱を公然と示唆している状況です。もしロシアが今、強力な報復を行えば、崩壊の危機にあるNATOを再び団結させてしまうことになります。ロシアにとって、敵対的な軍事同盟を自らの手で「修復」してやる理由はなく、今はただ分裂を待つ方が得策であるという判断が働いています。

また、ロシアが全力を出さないもう一つの理由は、ウクライナという土地そのものに対する歴史的な認識にあります。ロシアにとってウクライナは1200年来の自国の領土であり、そこに住む人々は西側諸国によって洗脳された「同胞」であるという考えが根底にあります。軍事力でウクライナを完全に壊滅させることは容易ですが、それは自国の歴史的遺産や同胞を自ら破壊することを意味します。西側諸国はウクライナ人を単なる使い捨ての駒と見なしていますが、ロシア側は将来的に数世代をかけてでも、その「洗脳」を解き、非ナチ化と非軍事化を物理的に進める必要があると考えています。そのため、あえて片手を縛ったような状態で戦い続けているのです。

結局のところ、現在のロシア政府の姿勢は弱さの表れではなく、極めて長期的な地政学的戦略に基づいたものです。軍内部のフラストレーションは理解できるものの、性急なエスカレーションはロシアにとって最も避けたい「西側の再団結」を招くリスクがあります。経済活動への支障や本土へのドローン攻撃といった損害を許容してでも、戦略的な忍耐を維持することで、米国主導の既存秩序が自壊するのを待つ構えです。希望的観測に基づく戦略は危険ですが、ロシア政府は現在の苦境を乗り越えた先に、より有利な国際秩序が到来することを見据えて、あえて抑制的な対応を続けていると記事は結論づけています。

0 件のコメント: