【キーワード】財政赤字(budget deficit)とは、政府が一定期間に集めた税金などの収入よりも、使ったお金の方が多くなってしまった状態を指します。政府は足りない分のお金を、誰かから借りることで補わなければなりません。一般的に、政府は「国債」という債券を売ることで、民間からお金を借ります。オーストリア学派の視点に立つと、この財政赤字は単なる帳尻合わせの問題ではなく、私たちの生活に深刻な影響を及ぼす仕組みであることが見えてきます。
政府が不足した資金を調達する方法は、大きく分けて3つあります。1つ目は税金ですが、これ以上の増税が政治的に難しい場合、政府は2つ目の方法である「借金(国債の発行)」を選びます。もし、政府が民間の投資家から直接お金を借りるだけなら、世の中に出回るお金の総量は変わりません。しかし、民間が政府にお金を貸すと、その分だけ民間の会社が事業を広げるために使えるお金が減ってしまいます。これを「クラウディング・アウト」と呼び、本来なら新しい製品やサービスの開発に使われたはずの貴重な資源が、政府の事業に吸い取られてしまうのです。
さらに深刻なのが、3つ目の調達方法である「お金の追加発行(インフレ)」です。政府の借金を支えるために中央銀行が新しいお金を刷り、それを使って国債を買い支えることがあります。こうなると、世の中にお金があふれ出し、お金1円あたりの価値が下がって、結果として物価が上がります。これは、国民の貯金の価値をこっそり削り取る「目に見えない税金」のようなものです。特に、固定の年金で暮らす人々や、後からお金を受け取る人々が、物価上昇の被害を最も強く受けることになります。
オーストリア学派の経済学者は、こうした財政赤字が経済をゆがめ、不自然な好景気とその後の景気後退、つまり「バブルの崩壊」を引き起こす原因になると警告しています。政府が人為的に作り出した好景気は、資源が間違った場所に投資される「誤った投資」を招きます。最終的には、政府が無理に支出を増やすのではなく、支出そのものを大幅に削減し、民間の自由な活動を妨げないことこそが、健全な経済を取り戻す唯一の道であるとオーストリア学派は主張しているのです。
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