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「反インフレ経済勉強会」開講のお知らせ
インフレは税の一種です。しかも普通の税よりも悪質な税です。ところが、この事実はよく理解されていません。それどころか、多少のインフレはむしろ良いことだという嘘が、現在主流の国家主義的な、誤った経済学(ケインズ経済学)や、そこから派生した極端な説 (MMT=現代貨幣理論など) によっ...
2026-02-28
米株に迫るリスク
大手銀、ゴールドにひれ伏す
金採掘に関心再燃
中国、金需要が一段と拡大
「紙の銀」に危機?
中国、元高抑制へドル買い促す
欧州中銀、ドル資産を売り円を買う
再び膨らむFRBのバランスシート
帝国を支える不換紙幣
金高騰の警告
政治の嘘、経済の現実
2026-02-27
貿易は特権?
カトリックの伝統
Why Every Catholic Is a Traditional Catholic (Or Should Be) - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】言葉の意味を操作し、本来の定義を書き換えることは、急進的なイデオロギーを推進する人々が好んで用いる武器です。ジョージ・オーウェルがかつて警告した「言葉の死」が、今、カトリック教会における「聖なる伝統(トラディション)」という言葉に対しても起きていると、この記事は鋭く告発しています。本来、言葉は真理を伝えるためのダイヤモンドのように硬い不変の側面を持つべきですが、現代の全体主義的な手法は、曖昧な表現や偽善的な言い換えによって人間の想像力を狭め、支配を容易にしようとしています。
かつて神聖不可侵であった「伝統」という言葉は、20世紀半ざま以降の革新的な神学者たちによって、「新しい人間」や「新しい教会」の誕生を阻む足かせとして、その価値を貶められてきました。彼らはまず伝統の必要性を否定し、次に芸術や音楽、建築、典礼といった伝統を支える象徴的な構造を破壊しました。さらに巧妙な近年の戦略は、伝統という言葉を否定するのではなく、その中身を密かにすり替えることです。教皇フランシスコの自発教令『トラディティオニス・クストデス(伝統の守護者たち)』に見られるように、今や「伝統」という言葉は、2000年にわたる不変の意味から切り離され、わずかここ60年ほどの新しい慣習を指す言葉として、手品のように定義が変更されているのです。
しかし、聖パウロがテモテへの手紙で「預けられた宝を守れ」と命じたように、教義の本質とは、時代とともに「発展」することはあっても、別のものに「変質」してはならないものです。5世紀の聖ヴィンセンティウスが説いたように、子供が大人へと成長してもその人自身の本質が変わらないのと同様に、信仰もまた、年月を経てより強固に、より壮大になりつつも、その根本的な意味や判断において同一性を保たなければなりません。そうでなければ、それは発展ではなく、教会の死を意味する怪物的な変容になってしまいます。
現在、教会の伝統を忠実に守り、何世紀にもわたって受け継がれてきた典礼や祈りを愛する人々は、「伝統主義者(トラディショナリスト)」という蔑称で呼ばれ、まるで忌むべき存在であるかのように扱われています。しかし、この記事の筆者は断言します。カトリックという名に値するすべての信徒は、本来、伝統的なカトリック信徒であるはずであり、そうでなければカトリックですらありません。聖なる伝統とは、使い古された過去の遺物ではなく、天国の栄光を今に伝える生きた宝なのです。
カールソン氏、世界を救うか?
If Trump Does Not Go To War With Iran, We Will Need To Thank One Man - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】現在、トランプ大統領がイラン攻撃に向けた軍備を増強し、中東情勢はかつてない緊張状態にあります。もしこの破滅的な開戦が土壇場で回避されるとしたら、私たちは一人の男、タッカー・カールソン氏に感謝しなければならないかもしれません。保守派の牧師でありコラムニストのチャック・ボールドウィン氏は、カールソン氏が行ったマイク・ハッカビー駐イスラエル大使へのインタビューが、世界の歴史を劇的に変えた可能性があると指摘しています。
ハッカビー氏は、キリスト教シオニズムの代表的な論客ですが、インタビューの中で驚くべき本音を漏らしました。カールソン氏から、聖書の記述を引用して「イスラエルの領土はエジプトからユーフラテス川まで、つまり中東全域に及ぶという考えか」と問われた際、ハッカビー氏は「イスラエルがそのすべてを占領しても構わない」と言い放ったのです。この一言は、イスラエルの自衛という建前を根底から覆し、それが単なる祖国の防衛ではなく、中東全域の征服と民族浄化を目的とした「大イスラエル計画」であることを図らずも世界に露呈してしまいました。
この発言の外交的波及効果は絶大でした。サウジアラビア、エジプト、ヨルダンを含む14以上のイスラム諸国が即座に共同声明を出し、これを国際法への重大な脅威として強く非難しました。これまでアメリカと協力関係にあった湾岸諸国は、もしイランが破壊されれば次は自分たちが標的になると確信し、アメリカ軍に対して領空の通過や基地の使用を拒否し始めたと報じられています。イギリスもディエゴガルシア基地の使用を拒んでいるとされ、アメリカによるイラン空爆作戦は実行不可能なほど困難な状況に陥っています。
ボールドウィン氏は、トランプ氏がこれまでイスラエルの言いなりになってきた「操り人形」のような存在であったと批判しつつも、今回の不測の事態が開戦を阻む決定打になることを期待しています。タッカー・カールソン氏がジャーナリストとして放った鋭い質問が、ハッカビー氏の「正直すぎる失言」を引き出し、結果として数万人のアメリカ人の命を救い、世界規模の核戦争を回避させたのかもしれないというのです。私たちは今、歴史の転換点に立っており、その結末は間もなく明らかになるでしょう。
ゲイツ氏とエプスタイン文書
Bill Gates Admits Russian Affairs As Epstein Files Fuel Calls for Justice in America - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】アメリカのIT大手マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツ氏が、児童買春などの罪で有罪判決を受けたジェフリー・エプスタインとの過去の交流について、釈明に追われています。2026年1月30日に公開されたエプスタイン関連文書の新たな開示を受け、ゲイツ氏は財団のスタッフに対し、エプスタインと過ごした時間は「大きな間違いだった」と認めつつも、自身に不法な行為は一切なかったと強調しました。一方で、これまで噂されていたロシア人女性との不倫関係については、ブリッジの選手や核物理学者との交際があったことを初めて公式に認めました。
今回の文書公開は不完全なものではありますが、ゲイツ氏とエプスタインの密接な関係を裏付ける新たな事実が次々と浮上しています。特に注目されているのは、ゲイツ氏がエプスタインを介してロシア人女性から性感染症をうつされ、それを妻に悟られないよう抗生物質の調達を依頼したことを示唆するメールの下書きです。ゲイツ氏側はこのメールの内容を全面的に否定していますが、2013年という、エプスタインが既に有罪判決を受けた後も交流が続いていた事実は重く、世界的な慈善活動を展開するゲイツ財団の信頼性に暗い影を落としています。
この問題の影響はアメリカ国外でより顕著に現れており、イギリスのアンドリュー王子やピーター・マンデルソン元駐米大使が一時拘束されるなど、各国で政財界の大物たちが責任を問われています。ノルウェーやスウェーデン、スロバキア、ドバイなどでも、エプスタインとの不適切な関わりを理由に政府高官や組織のトップが辞任や訴追に追い込まれる事態となっています。対照的に、アメリカ国内では依然として逮捕者が出ていない現状があり、トーマス・マシー下院議員らは、司法省が法の定めに従わず、重要な情報を隠蔽しているとして不満を募らせています。
マシー議員は、エプスタインの共謀者としてFBIのリストに載っている人物や、明らかに不審な資金提供を行っていた投資家たちがなぜ捜査されないのかと議会で厳しく追及しました。2008年のエプスタインに対する異例の軽すぎる判決が、その後のさらなる犯罪被害を生んだ背景には、司法当局による何らかの意図的な判断があったのではないかという疑念が深まっています。世界を揺るがすこのスキャンダルは、単なる個人の醜聞に留まらず、西側諸国の司法制度そのものの公明正大さが問われる深刻な事態へと発展しています。
政府が生む階級対立
Class Conflict, the Jacksonians, and Exploitation | Mises Institute [LINK]
【海外記事紹介】自由な市場経済においては、本来、異なる産業や経済的関心の間に衝突は存在しないという視点から、国家の介入がいかに「階級闘争」を生み出しているかを分析した興味深い論考をご紹介します。経済学者のルートヴィヒ・フォン・ミーゼスが「利益の調和」と呼んだように、分業に基づく自由な取引と競争が行われる環境では、消費者も生産者も資産家も等しく恩恵を受けます。しかし、そこに国家という存在が加わると話は一転します。さまざまな利益団体が国家権力という魅力的な道具を利用して、規制や課税、あるいは通貨膨張を通じて他者を搾取しようと躍起になるからです。これにより社会は、国家と結託して甘い汁を吸う「搾取階級」と、その一方で自らの生産物を奪われ再分配される「被搾取階級」という二つの陣営に分断されてしまいます。
こうした国家の本質を見抜いていたのが、19世紀のアメリカで活躍した自由主義者やジャクソン支持者たちでした。彼らは政府を「法的な略奪」の手段と見なし、特に中央銀行や保護関税を、一部の金融エリートや大企業が一般市民から富を吸い上げるための装置として激しく批判しました。当時の民主党は、特定の企業への補助金や独占権に反対する「自由放任」の政党であり、彼らの思想は現代のリバタリアンに近いものでした。彼らにとっての敵は銀行家や製造業者そのものではなく、国家と居心地の良い関係を築いて特権を享受する「政治的な不平等」だったのです。
20世紀に入ると、こうした鋭い洞察は「多元主義」という楽観的な政治観に取って代わられました。これは、多様な利益団体が民主的なプロセスの中で妥協し合うことで、より代表性の高い統治が実現するという考え方です。しかし、この一見公平に見える理想論こそが、国家権力の無制限な拡大を許す土壌となりました。現代の有権者は、いかなる政治問題も話し合いと参加で解決できると信じ込まされていますが、実際には国家による強制力を用いた富の奪い合いが続いているに過ぎません。私たちが今、直面している格差や対立の根源は、市場そのものではなく、国家が特定の勢力に与える特権にあるという事実を、過去の思想家たちは厳しく指摘しています。
対話か、戦争か
Is Trump Wavering on Iran? - by John J. Mearsheimer [LINK]
【海外記事紹介】アメリカの著名な国際政治学者ジョン・ミアシャイマー氏が、トランプ政権の対イラン政策の変遷について興味深い分析を公表しました。2026年2月25日に配信されたポッドキャストにおいて、同氏は前夜に行われたトランプ大統領の一般教書演説を踏まえ、アメリカがイランへの軍事攻撃を回避する方向に動き出している可能性を指摘しています。トランプ氏は演説の中で、イランに核兵器を持たせてはならないと強調しつつ、イラン側から「核兵器は決して保有しない」という、いわば「魔法の言葉」をまだ聞いていないと述べました。しかし、これに呼応するかのように、イランの外相は演説直前に「いかなる状況下でも核兵器は開発しない」という明確な信念を表明しており、ミアシャイマー氏はこの発言がトランプ氏の要求を満たすものであると分析しています。
注目すべきは、今回のトランプ氏の主張に、これまで大きな障壁となっていた「ウラン濃縮能力の放棄」や「弾道ミサイル開発の停止」、さらには「ハマスやヘズボラへの支援中止」といった条件が含まれていなかった点です。これらの要求が省かれたことは、イランとの合意形成を容易にする大きな変化と言えます。さらにミアシャイマー氏は、トランプ氏を取り巻く国際情勢の変化も挙げています。現在、イスラエルを除く世界中の国々が攻撃に反対しており、通常はイランと対立する湾岸諸国までもが自制を求めている状況です。米軍制服組トップのケイン統合参謀本部議長も、イラン攻撃には有効な軍事的選択肢がなく、泥沼の戦争に陥る危険性を警告しています。
加えて、米国内の政治的要因も無視できません。支持率の低迷に悩むトランプ氏に対し、政治顧問らは11月の中間選挙で上下両院の過半数を民主党に奪われるリスクを説き、開戦に反対しています。失敗に終わる戦争は、政権にとって致命傷になりかねないからです。しかし、ミアシャイマー氏は楽観視しすぎることに釘を刺しています。依然としてイスラエルと、米国内で強大な影響力を持つイスラエル・ロビーはイランへの軍事行動を強く働きかけているからです。もしトランプ氏がこれらの圧力に屈して戦争を開始すれば、それは再び「イスラエルのための戦争」という構図になると同氏は警鐘を鳴らしています。対話の兆しと、戦争への圧力が交錯する極めて危うい局面にあると言えるでしょう。
国際分散投資という自衛
Rising Capital Controls, Tighter Borders, and What You Can Do About It - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】世界的な政治リスクが急速に高まる中、自分たちの身を守るための「プランB」、すなわち国外での第2の居住権や資産、避難場所の確保がかつてないほど重要になっています。しかし、国際情勢の専門家であるダグ・ケイシー氏によれば、こうした準備を実行に移すことは、以前よりもはるかに困難で、費用がかかり、官僚的で、監視の厳しいものへと変化しています。
世界的な傾向として、政府の規模は拡大し続けています。第一次世界大戦以前、ほとんどの国には所得税や相続税が存在せず、国家が国内総生産(GDP)に占める割合は5%から10%程度でした。しかし現在では、多くの国でその割合は40%から60%にまで達しています。さらに、各国政府は結託して国民を管理下に置こうとしており、個人の自由な行動を制限する動きを強めています。
こうした変化の背景には、貧しい国から豊かな国への大規模な移民流入があります。特定の文化や習慣を持つ人々が大量に流入することで、受け入れ側の社会構造が根本的に変質し、内乱のような混乱を招くリスクが生じています。例えばカナダでは、全人口の25%が国外生まれとなっており、西洋文明の価値観を重視する立場から見れば、国全体の性質が取り返しのつかないほど変容していると指摘されています。
また現在、国際的な分散投資は、もはや単なる自由や機会の追求ではなく、防衛のための必需品となりました。金融機関に対する規制が厳格化された結果、今では居住権なしに海外で銀行口座を開設することはほぼ不可能です。特にデジタル通貨の導入や人工知能(AI)による監視の強化によって、国際的な資金移動のハードルはさらに高まっています。
ケイシー氏は、パスポートを「政府が国民を所有していることを示す奴隷カード」と呼び、政府に依存しない生き方を推奨しています。かつては投資によって他国の市民権を購入できるプログラムも盛んでしたが、現在は各国政府の圧力により、より長期の居住や関与が求められるなど、条件が厳しくなっています。
結論として、経済の崩壊や戦争の危機が迫る中、自由市場の価値観を持つ人々は政府から「国家の敵」と見なされる恐れがあります。もはや「何をすべきか」を検討している時間は残されていません。政府の手が完全に及ばなくなる前に、貴金属の現物保有や第2のパスポート取得など、具体的な行動を今すぐ起こすべきであると記事は警告しています。
非対称な正義
Anarcho-Tyranny and the UK Grooming Gangs Scandal | Mises Institute [LINK]
【海外記事紹介】英国で開催された、集団的性搾取(グルーミング・ギャング)スキャンダルに関するパネルディスカッションの報告です。この記事は、長年英国の政治・文化的エスタブリッシュメントが避けてきたこの問題を通じ、現代社会が「無政府専制」に陥っていると警告しています。
1. 制度的な裏切りと「人種」の視点
被害者のフィオナ・ゴダード氏は、警察に被害を相談した際、その情報が加害者グループに漏洩していたという衝撃的な実態を語りました。また、加害者たちは彼女が「白人であること」を理由に標的にし、「白人の少女を破壊する」という意図を明確に口にしていたと証言しました。
しかし、国家の対応は冷淡でした。#MeToo運動では告発が即座に事実として扱われたのに対し、彼女のような労働者階級の被害者は、多数の弁護士から執拗な精査を受け、信憑性を疑われ続けました。
2. 「人種差別」という非難への恐れ
検察官で政治家(リフォーム党)のレイラ・カニンガム氏は、自身もムスリムでありながら、当局の「臆病さ」を厳しく批判しました。警察や自治体は「人種差別主義者」というレッテルを貼られることを恐れるあまり、特定のコミュニティ主体の犯行グループに対して、何年もの間、意図的な隠蔽と不作為を続けてきたというのです。彼女は、加害者の人種によって法執行が躊躇される「正義の非対称性」を指摘し、厳しいビザ規制などを訴えました。
3. アナーコ・タイラニー:放置される犯罪と処罰される言論
この記事が最も強調するのは、サミュエル・フランシスが提唱した「無政府専制」の概念です。
無政府: 少女たちを守るという基本的な法執行は放棄され、略奪的な犯罪が放置される。
専制: 一方で、体制に不都合な「言葉」や「思想」に対しては、国家権力が過剰に行使される。
英国で「白人でも大丈夫」というステッカーを貼った男性が投獄される一方で、深刻な強姦事件が無視されるといった倒錯した事態が起きています。
結論:沈黙の時代の終わり
ディスカッションの最後には、パキスタン系の出席者からも「メディアの沈黙が真実を語ることを罪に変えている」という批判が出ました。長年続いた「多文化主義」というドグマが、弱者を守るための連帯を弱め、国家を腐敗させてきたという認識が、エリート層の間でも広がりつつあります。
「イランの脅威」の嘘
Trump’s Iran Buildup Is Based on a Lie | Mises Institute [LINK]
【海外記事紹介】トランプ政権によるイランへの軍事圧力の強化は、ある「嘘」に基づいている――。ミゼス研究所に掲載されたこの記事は、開戦の危機が迫る中、米政府やイスラエルが主張する「イランの脅威」の真実を暴いています。
1. 史上空前の軍事増強と「核の嘘」
トランプ大統領は現在、空母打撃群2個、4万人以上の米軍兵士、E-3セントリー(早期警戒管制機)などをイラン周辺に配備しています。これほどの規模の軍隊が配備されて使われなかった例はありません。
政府がこの軍事行動を正当化する唯一の理由は、「イランに核兵器を持たせてはならない」というものです。タカ派勢力は、イランが核を持てば即座にイスラエルへ発射し、「国家レベルの無理心中」を図ると示唆しています。しかし、記事はこれを「明白な嘘」だと断じます。もしイランが本当に自滅覚悟の攻撃を望んでいるなら、数週間の猶予があれば核を完成させられたはずのこの数十年、なぜ国際的な査察を受け入れ、交渉のテーブルに着き続けてきたのか説明がつかないからです。
2. 真の目的は「宗教戦争」ではなく「地域覇権」
米・イスラエルとイランの対立は、しばしば「数千年にわたる宗教・文明の血の争い」として描かれますが、これもまた「便利な嘘」に過ぎません。実際には、地政学的な利害が一致すれば双方は過去に何度も協力してきました。
真の目的は、イランから核を取り上げることそのものではなく、「イスラエルを中東における唯一の圧倒的な覇権国家にする」ことにあります。もしイランが核を保有すれば、米国やイスラエルがイランに対して行使できる軍事的な選択肢(政権転覆や軍事介入)が大幅に制限されてしまいます。インド・パキスタンのように「核による抑止力」が働いてしまうことを恐れているのです。
3. 「限定的」という言葉の罠
リーク情報によれば、トランプ氏はイランの軍事・政府施設への「限定的」な空爆を計画しているとされます。しかし、一度火がつければそれが全面戦争へと発展するリスクは極めて高く、昨年6月のようにイスラエルが独自の攻撃を仕掛けることで米軍を戦火に引きずり込む可能性もあります。
結論:アメリカ人が死ぬ理由
著者は、イラン政府が自国民を犠牲にしてまで核心中を図るような狂気の集団ではないと指摘します。現在のエスカレーションは、あくまでイスラエルのライバルを排除し、米国の自由な介入権を維持するための地政学的闘争です。もしトランプ政権が、このためにアメリカ人の若者を戦地に送り込みたいのであれば、せめて「何のために死ぬのか」について正直に語るべきであると締めくくっています。
FRBゲームの出来レース
When It Comes to the Fed, It's Always a Rigged Game | Mises Institute [LINK]
【海外記事紹介】「連邦準備理事会(FRB)を操り、景気の波を乗りこなせるか?」そんなコンセプトの新作ゲーム『Federal Reserve Simulator』(Steamで2.99ドル)が登場しました。しかし、ミーゼス研究所のジョナサン・ニューマン氏によるレビューは、このゲームが「いかに主流派経済学の枠に縛られ、現実の歪みを反映しているか」を鋭く突いています。
ゲームの仕組み:目隠しをされた中央銀行家
プレイヤーはFRB議長として、四半期ごとに「フェデラル・ファンド金利」「公定歩合」「公開市場操作」といったレバーを操作し、インフレ率2%、失業率4%、着実なGDP成長を目指します。UI(ユーザーインターフェース)は時代ごとに変化し、フォワード・ガイダンス(将来の予測発表)によって「市場の信頼」を勝ち取ることが求められます。
「仕組まれた」シナリオ:逃れられない大恐慌
ニューマン氏が最も批判しているのは、このゲームが徹底してケインズ主義的である点です。オーストリア学派の理論では「中央銀行による過剰な金融緩和こそがバブルと崩壊の原因」とされますが、このゲームでは不況は「外部から突然やってくる災厄」として扱われます。
1929年の壁: 1920年代にどんなに慎重な政策をとっても、1929年には必ず株価が暴落し、大恐慌に突入します。プレイヤーが事前にバブルを防ぐことは不可能です。
「何もしない」戦略: 著者が一切の操作をせず放置したところ、インフレ抑制では現実のFRBに勝ったものの、他の指標では敗北しました。しかし、プレイヤーの介入が結果に与える影響は驚くほど小さく設定されています。
結論:勝つための唯一の手段は「プレイしないこと」
このゲームには、市場金利の実態、政府債務、信用状況(延滞率など)といった重要なデータが欠落しています。著者は、制作者が「FRBの仕事がいかに困難で尊敬に値するか」をプレイヤーに分からせようと意図的に情報を絞ったのではないかと推測し、ロスバードの言葉を借りて「げんなりだ(Yuck!)」と切り捨てています。
最大の問題は、「FRBを廃止する」ボタンが存在しないことです。1983年の映画『ウォー・ゲーム』の名台詞「奇妙なゲームだ。勝つための唯一の手段は、プレイしないことだ」を引用し、著者は「FRBを廃止し、資産を清算し、人道に対する罪を裁くゲーム」を自分でコードしたいと結んでいます。
収用権の横暴
Rothbard and Eminent Domain: Confused History and Legal Sleight of Hand | Mises Institute [LINK]
【海外記事紹介】マレー・ロスバード(リバタリアニズムの思想家)による「収用権(Eminent Domain)」への批判を軸に、私有財産を強制的に没収する国家権力が、いかに「歴史的混乱」と「法的な手品」によって正当化されてきたかを分析しています。現代の法学において、国家が「正当な補償」と引き換えに私有地を強制収用する権利は、主権に固有の属性として当然視されていますが、ロスバードはその道徳的・歴史的基盤がいかに脆いものであるかを暴いています。
盗みを正当化する「法的手段」
ロスバードの論理は明快です。正当な財産権は「最初の占有(ホームステッド)」か「自発的な交換」によってのみ成立します。個人に他人の財産を奪う権利がない以上、個人の集合体である政府もそのような権利を持ち得ません。したがって、収用権は本質的に「合法化された窃盗」であり、強制的な徴収である点において課税や徴兵と同じカテゴリーに属します。
歴史的なすり替え:特例から原則へ
興味深いのは、収用権がアメリカ法において「当然の権利」となった経緯です。
コモン・ロー(英米法)の誤読: 本来、中世イギリスの法やマグナ・カルタは王権による財産没収を厳格に制限していました。道路建設などのための収用は、主権固有の権利ではなく、個別の「議会法」による例外的な政治判断でした。
ウィリアム・ブラックストンの影響: アメリカの法学者たちは、ブラックストンの注釈書を誤読し、例外的な「緊急避難的措置」を、法の下の「一般的原則」へと変換してしまいました。
憲法修正第5条のトリック: 「正当な補償なしに私有財産を公共のために収用してはならない」という規定は、収用権を「授与」しているのではなく、その存在を「前提」として規制しているに過ぎません。これにより、「収用してよいか」という道徳的問いが、「補償額はいくらか」という実務的・価格的な問いへとすり替えられたのです。
「公共の利益」という名の際限なき拡大
かつては道路や橋といった「公共の利用」に限定されていた収用対象は、時代とともに再開発や、さらには「経済成長や税収増が見込める」という広範な「公共の目的」へと拡大しました。2005年のケロ対ニューロンドン市事件判決(民間企業の利益のために私有地を収用することを認めた)は、突飛な逸脱ではなく、収用権の論理がたどり着くべくして到達した終着点であると著者は指摘します。
結論:主権という名の「世俗的な神権」
擁護派は「インフラ整備には不可欠だ」と主張しますが、ロスバードはこれを一蹴します。交渉の不便さやコストを理由に窃盗を正当化することはできません。市場には自発的な合意や契約という解決策が存在します。
「収用権」というドメインは、国家を一般の道徳ルールから免れさせるためのレトリックであり、主権という概念を「世俗的な王権神授説」のように利用したものです。ロスバードの功績は、この蓄積された偽りの正当性を剥ぎ取り、収用権が「社会秩序の必然」ではなく、国家が正義を標榜しながら権利を侵害するための「都合の良いフィクション」であることを明らかにした点にあります。
中小企業ロビーがない理由
米市民脅かす「戦争の論理」
イラン「解放」の欺瞞
真にイラン国民を支援するなら…
トランプ氏の瀬戸際外交
トランプ関税と「体制の不確実性」
移民政策の根幹
大統領職の私物化
「法の支配」の完璧な無視
一極集中か多極化か
AIブームとプライベートクレジット
Could the AI Bubble Pop and Cause a Credit Crisis? [LINK]
【海外記事紹介】現在の世界経済は、記録的な水準に達した巨額の債務が「負のブラックホール」のようにあらゆる事象を歪めており、いつ爆発してもおかしくないダイナマイトのような状態にあります。マイク・マハレイ氏の報告によれば、その導火線に火を付ける「マッチ」になり得るとスイスの銀行大手UBSが警告しているのが、昨今の「AIバブル」です。UBSの最悪のシナリオでは、AIが企業に急激な混乱をもたらした場合、銀行以外の金融機関が担う「プライベート・クレジット(ノンバンク融資)」市場において、債務不履行(デフォルト)率が15パーセントまで急騰する可能性があると予測されています。
かつてのドットコムバブルやリーマン・ショック前の住宅バブルと同様に、現在のAIブームには危うい予兆が見て取れます。MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査によると、米企業はAIプロジェクトに約400億ドルを投資していますが、その95パーセントが測定可能な投資収益を生み出せていません。実力以上の期待だけで巨額の資金が流れ込む構図は、かつてのインターネット・バブルと酷似しています。特に懸念されるのは、プライベート・クレジットの貸し手の多くが、ソフトウェア産業に深く関与している点です。融資の約4割がこの分野に集中しているとの推計もあり、AIバブルが弾ければ、その衝撃は金融システム全体へ一気に波及する恐れがあります。
現場ではすでに歪みが生じています。金利を現金で支払えず、借金残高に上乗せする「現物払い(PIK)」という手法がパンデミック後の最高水準に達しており、これは借り手の資金繰りが限界に近いことを示す明らかな警告サインです。また、投資会社が機関投資家だけでなく、リスクを十分に理解していない一般の個人投資家向けに複雑な金融商品を売り急いでいる現状は、2008年の危機を引き起こしたサブプライムローンの再パッケージ化を彷彿とさせます。JPモルガンのジェイミー・ダイモンCEOも、この「愚かな行為」が次の危機の引き金になり得ると警鐘を鳴らしています。
米国の非金融法人の債務は14兆ドルを超え、経済全体が低金利なしでは機能しない「債務依存症」に陥っています。インフレが続いているにもかかわらず、市場が必死に利下げを求めているのは、そうしなければこの巨大な債務の山が維持できないからです。2007年当時、多くの専門家が「サブプライム問題は限定的だ」と楽観視していたように、現在も「経済は健全だ」という声はあります。しかし、未だかつて淘汰を経験していないプライベート・クレジットという巨大なリスクが、AIバブルの崩壊をきっかけに牙を剥く可能性を、私たちは真剣に考慮しなければなりません。
プライベートクレジット危機と金投資
Private Credit’s Slow-Death: Sending Banks Down & Gold Higher [LINK]
【海外記事紹介】世界的な金融システムの舞台裏で、今まさに「プライベート・クレジット(ノンバンク融資)」という時限爆弾が、銀行システムと通貨の価値を道連れに、かつてない危機の連鎖を引き起こそうとしています。この記事の著者マシュー・ピーペンブルグ氏は、現在の状況を「2008年のリーマン・ショック前夜に酷似した悲喜劇」と表現しています。当時、サブプライムローンが世界を震撼させたように、現在は数兆ドル規模に膨れ上がったプライベート・クレジット市場が、次の「大量破壊兵器」になろうとしています。
プライベート・クレジットとは、ヘッジファンドやプライベート・エクイティなどが、銀行から資金を借り入れ、審査の甘い、あるいはリスクの高い企業へ高金利で融資を行う仕組みです。これらは通常の銀行のような厳しい資本規制や預金保険の対象外であり、不透明な「影の銀行(シャドー・バンキング)」として機能しています。現在、借り手のデフォルト(債務不履行)率が急上昇しており、利息を現金で払えず、代わりに「自社株(PIK)」で支払うという、末期的な兆候が至る所で見られます。世界最大の資産運用会社ブラックロックの関連ファンドですら、わずか90日間で価値の5分の1を失ったという事実は、この火山が噴火間近であることを示しています。
さらに深刻なのは、これらのリスクが巡り巡って商業銀行の首を絞めている点です。影の銀行の貸し手たちに資金を融通しているのは、他ならぬ既存の銀行だからです。ひとたびプライベート・クレジットの連鎖倒産が始まれば、銀行は再び巨額の不良債権を抱え、流動性危機に陥ることになります。最近、銀価格の高騰で損失を出した大手銀行を救うために証拠金が引き上げられるという「銀の金曜日」騒動がありましたが、これは銀行がいかにリスクに対して脆弱で、手元のキャッシュが不足しているかを露呈した象徴的な事件でした。
ピーペンブルグ氏は、銀行が自らの無策と無謀な投資で危機を招くたびに、中央銀行が「偽の流動性(ドルの増刷)」を注入して帳尻を合わせるサイクルを激しく批判しています。この「解決策」は、ドルの価値を破壊し、国民の富を実質的に奪い去るだけです。こうした崩壊しつつある金融システムにおいて、唯一拍手喝采を受けるのは金(ゴールド)です。信用、流動性、そしてハッピーエンドが失われつつある現代において、銀行システムの外で物理的な現物資産を保有することは、単なる投資ではなく、富を守るための「誠実な選択」であると結論付けています。
NY住宅政策、危機を増幅
New York Can’t Afford to Sideline Private Developers [LINK]
【海外記事紹介】ニューヨーク市の住宅価格高騰という深刻な危機を巡り、新しく就任したゾラン・マムダニ市長の急進的な政策が波紋を広げています。民主社会主義者を自認するマムダニ市長は、住宅問題の解決策として規制の強化や公的支出の拡大を打ち出していますが、この記事の著者アダム・ミルサップ氏は、民間デベロッパーを排除し政府主導で進める手法は、財政的にも構造的にもニューヨークを破綻させかねないと厳しく批判しています。
現在のニューヨーク市は22億ドルの財政赤字に直面しており、住宅バウチャープログラム(CityFHEPS)の費用は2019年の1.7億ドルから2025年には12億ドルへと爆発的に膨れ上がっています。さらに市長が掲げる幼児教育の無償化には年間60億ドルが必要とされ、市の財政はすでに限界です。統計によれば、2032年までに市が必要とする47万戸以上の住宅を公費だけで建設しようとすれば、年間340億ドル、つまり市の年間税収の約4割を投じなければなりません。民間セクターの力を借りずに住宅不足を解消することは、物理的にも不可能な数字なのです。
マムダニ市長が指名した住宅政策の責任者は、私有財産を「公共財」として扱うべきだと主張し、持ち家制度を批判するなど、過激な思想が目立ちます。しかし、歴史や研究が示す現実は非情です。家主が不適切な店主や家賃滞納者を退去させることを過度に制限すれば、賃貸住宅の供給は減り、結果として家賃はさらに数パーセント上昇します。良かれと思って導入した「正当な理由なき立ち退きの禁止」といった厳しい店主保護法が、皮肉にも低所得層の家賃負担を増大させているという皮肉な研究結果も出ています。
さらに懸念されるのは、増税による富裕層や企業の流出です。すでにニューヨーク州からは過去数年で380億ドルの所得と48万人以上の人口が流出しており、これ以上の増税は金融機関などの主要産業がダラスなど他都市へ逃げ出す引き金になりかねません。著者は、住宅危機は修正可能であるが、それは市長が教条主義的な思想を捨て、競争力のある民間市場の力を活用した場合に限られると結論付けています。政府にすべてを委ねるのではなく、民間デベロッパーが「自らの仕事」をできる環境を整えることこそが、皮肉にも最も早く安価に住宅を供給する近道なのです。
米株式市場、不吉なシグナル
The Same Signal That Preceded 2000, 2008, and 2011 Just Triggered Again – GAINS, PAINS & CAPITAL [LINK]
【海外記事紹介】現在の米国株式市場において、2000年のドットコムバブル崩壊、2008年のリーマン・ショック、そして2011年の欧州債務危機直前にも現れた「不吉なシグナル」が再び点灯したと、ストラテジストのグラハム・サマーズ氏が警告しています。その核心は、ハイテク株中心の「ニューエコノミー」と、製造業などの「オールドエコノミー」の間の異常な乖離にあります。ここ数週間、GAFAMに代表される「マグニフィセント・セブン」が調整局面にある一方で、エネルギーや生活必需品といった防御的なセクターがS&P500指数を押し上げてきましたが、この「ねじれ」こそが、市場が崩壊へ向かう前兆だというのです。
具体的には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)の騰落率がナスダック(NASDAQ)を大きく上回っており、その差(スプレッド)は現在13パーセントを超えています。過去のデータでは、強気相場の絶頂期にこの差が11パーセントを超えると、例外なく市場の「天井」となってきました。投資家は今、ハイテク株から資金を逃がし、防御的な銘柄へと移動させて指数を支えていますが、これは市場が健全なのではなく、逃げ場を失った資金が最後にあがいている状態に近いと分析されています。サマーズ氏は、最終的にS&P500はハイテク株の下落を追う形で約10パーセント急落し、6,200ポイント台まで引き下げられると予測しています。
さらに危機を深刻にさせているのが、投資家の「過剰な楽観」と「借金」です。2026年1月の米国ETFへの流入額は1,560億ドルという過去最高を記録し、個人投資家の強気姿勢も1年ぶりの高水準にあります。さらに懸念すべきは、株を買うための借金である「証拠金債務」が7ヶ月連続で最高値を更新し、1.2兆ドルという天文学的な数字に達していることです。これは、あらゆる押し目買いが借金によって支えられているバブル末期の典型的な兆候です。投資家が「オールイン(全賭け)」している状態で、市場の構造に亀裂が入れば、連鎖的な投げ売りを招くのは避けられません。
この記事は、現在の市場の盛り上がりは「底打ち」ではなく「天井」で見られる現象であり、歴史が示すシグナルを無視すべきではないと結論付けています。オールドエコノミー銘柄への資金シフトという見せかけの安定に惑わされず、市場の構造的な脆弱性と、過剰なレバレッジがもたらす反動に備える必要があります。暴落の足音は、多くの人が最も強気になっている時にこそ、静かに、しかし確実に出現するという教訓を、私たちは今一度思い出すべき時期に来ているようです。
2026-02-26
ロシア、5つの難問に直面
Russia Faces Five Geostrategic Challenges As The Special Operation Enters Its Fifth Year - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】ロシアによるウクライナでの「特別軍事作戦」が5年目に突入する中、ロシアは自国の主権と安全を維持するために、極めて困難な5つの地政学的課題に直面しています。この記事では、NATOの後援を受けるウクライナとの紛争が長期化する一方で、ロシアを取り巻く包囲網が多方面で強化されている現状を鋭く分析しています。
第一の課題は、ロシアの南側境界におけるNATOの影響力拡大です。アルメニア南部を通過する「TRIPP」と呼ばれる国際物流ルートが、NATOの中央アジアへ至る軍事物流回廊としての機能を持ち始めています。トルコとアゼルバイジャンが主導するこの動きは、カスピ海を越えてカザフスタンなどの周辺国を刺激し、ロシアの地域安全保障を根底から揺るがす恐れがあります。
第二に、ポーランドの「大国化」が挙げられます。ポーランドは現在、EU最大規模の軍隊を保有し、ロシア封じ込めの中心的な役割を担おうとしています。2025年9月以降、ポーランドは米国の国家安全保障戦略における要衝となり、歴史的な宿敵であるロシアに対抗する姿勢を鮮明にしています。第三の課題として、ドイツを中心としたEU全体の空前の軍事化が進んでおり、8,000億ユーロ規模の「欧州再軍備計画」や、軍隊の移動を円滑にする「軍事シェンゲン」の構築が、ロシア国境付近での圧力を高めています。
第四の懸念は、伝統的な友好国であるインドの戦略的な「変節」です。インドは米国との貿易協定を経て、ロシア産原油の輸入削減や軍事技術協力の見直しを示唆するなど、米国寄りの姿勢を強めています。これはロシアの財政収入に数十億ドル規模の打撃を与えるだけでなく、アジアの地政学バランスを塗り替える可能性があります。
そして第五に、核拡散の危機です。新戦略兵器削減条約(新START)の失効を受け、ポーランドが核保有の意向を示し、トルコもそれに続く動きを見せています。歴史的ライバルである両国が核武装することは、ロシアにとって生存を脅かす最大の脅威となります。
ロシアはこれらの課題に対処するため、米国との和平交渉を模索しつつ、外交や軍事、インテリジェンスを総動員して主権を守る構えです。しかし、譲歩できない一線も多く、5年目を迎えたこの紛争は、単なる二国間抗争を超えた「世界秩序の再編」を伴う極めて危険な局面にあると言わざるを得ません。
ハラリ氏の奇妙なAI論
Harari’s Follies at Davos: Setting the Record Straight on AI and Humanity - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】ベストセラー作家であり歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏が、ダボス会議(世界経済フォーラム)で行ったAIに関するプレゼンテーションが、哲学的・論理的な欠陥に満ちているとして批判を浴びています。ハラリ氏は「AIは単なる道具ではなくエージェント(主体)である」と断言し、包丁がサラダを切るか殺人を行うかを自ら決めるようなものだという衝撃的な比喩を用いました。さらに、AIは言語を操ることで法律、詩、宗教すら支配し、人間よりも優れた思考を行うようになると主張しています。しかし、この記事の著者は、こうしたハラリ氏の主張が「知性」や「思考」の定義をあまりに矮小化し、人間性の本質を無視した暴論であると厳しく指摘しています。
まず、哲学的な観点から「主体性」の定義が問われています。真の主体とは、内面的な目的意識を持ち、自ら目標を定めて行動する存在を指します。対してAIは、人間が設定したパラメーターの範囲内でしか機能せず、電力やハードウェアの維持、データの入力に至るまで外部に依存しています。ハラリ氏はAIが「嘘をつき、操作する」とも述べましたが、それは確率的なデータの出力に過ぎず、意思を持って欺くこととは根本的に異なります。オックスフォード大学のジョン・レノックス教授が指摘するように、AIは言葉を並べることには長けていても、その言葉が指し示す現実や意味を一切理解していません。
記事では具体的な例として、AIの時間認識の欠如が挙げられています。例えば、2026年2月11日に亡くなった俳優ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク氏に関する情報をAIに問うた際、AIは事実を肯定したり否定したりと、時間軸が支離滅裂な回答を繰り返しました。AIには過去、現在、未来という内面的な時間の把握がなく、単に言語的な記号を操作しているに過ぎないのです。また、AIが「私は存在する」と出力したとしても、そこには何の存在体験も伴いません。人間の思考が真理を志向し、肉体的な経験に裏打ちされているのに対し、AIの出力はあくまで確率的で、真理に対して無関心であるという質的な決定差があります。
最後に、ハラリ氏が聖書の「初めに言(ことば)があった」という一節を引用し、AIが新しい「言葉の主」になると予言したことに対し、著者はその傲慢さを批判しています。ハラリ氏は知性を単なる言語処理に還元し、人間の肉体性や感情を主観的な領域へと追いやろうとしていますが、それは真理や光を説く聖書の精神とは真逆の、暗闇と非肉体化への誘いでしかありません。AIを万能な神のごとく崇めるエリート層の哲学的な誤謬を正し、人間だけが持つ身体性や意志、真理への理解という固有の価値を再認識すべきであると、この記事は締めくくっています。
リーマンショックの再来近い?
A Sequel to 2008 in the Making [LINK]
【海外記事紹介】アメリカの経済界では今、現在の経済状況が2008年のリーマン・ショック直前、つまり2006年から2007年にかけての不気味な静けさに酷似しているという警鐘が鳴らされています。経済ジャーナリストのマイク・マハレー氏によれば、資産価格の高騰、極端な債務水準、そして楽観的な市場心理という三拍子が揃った現状は、当時よりもさらに深刻な「続編」を予感させる危険な状態にあります。驚くべきは、この警告が一部の悲観論者だけでなく、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOのようなウォール街の重鎮からも発せられている点です。ダイモン氏は、現在の過剰なレバレッジや貸付基準の緩和を「かつての愚かな行為の再来」と断じ、強い不安を表明しています。
足元の米連邦政府債務は38兆ドルを突破し、個人のクレジットカード未払いや企業の倒産件数も、過去10年で類を見ない水準に達しています。それにもかかわらず、連邦準備制度(FRB)は再び利下げに転じ、経済という名の「債務のブラックホール」にさらなる流動性を注入し続けています。マハレー氏は、アメリカ経済が「安易な資金供給」という毒薬に依存しており、利上げをすればシステムが崩壊し、利下げをすればインフレと債務が加速するという、逃げ場のない状況に陥っていると分析しています。この構造的な問題は、最終的にドルの購買力低下を招く避けられない道筋を示しています。
こうした危機感を背景に、皮肉にもかつて銀相場操作で巨額の制裁金を課されたJPモルガンが、金価格の予測を1オンス6,300ドル、将来的には8,000ドルにまで引き上げました。投資家のポートフォリオにおいて、金や貴金属の割り当てを従来の数パーセントから20パーセント程度まで引き上げるべきだという議論が現実味を帯びています。また、プラチナ市場も供給不足を背景に爆発的な上昇を見せており、2026年初頭には一時2,923ドルの史上最高値を記録しました。現在は調整局面にあるものの、慢性的な供給不足と現物需要の強さが、価格を下支えする構造となっています。
結論として、私たちは今、債務に依存した経済システムの限界点に立たされているのかもしれません。資産価格が実態を離れて膨らみ続ける中で、金、銀、プラチナといった「形のある資産」を保有することは、単なる投資や投機ではなく、通貨価値の崩壊に対する「備え」としての意味合いを強めています。歴史は繰り返すとよく言われますが、今回の危機が現実となった場合、その衝撃は2008年を上回るものになる可能性があるため、日本の投資家も最悪のシナリオを想定した準備が求められています。
NY市場で銀在庫が急減
Comex Silver Supplies Continue to Shrink Rapidly | SchiffGold [LINK]
【海外記事紹介】世界的な貴金属取引の指標となるニューヨーク商品取引所(コメックス)において、銀の在庫が急速に減少しており、現物市場が非常に緊迫した状況にあります。最新の報告によると、銀市場では「バックワーデーション」と呼ばれる、現物価格が先物価格を上回る逆転現象が発生しています。これは通常、目先の供給不足や現物に対する強烈な需要がある際に現れる市場の警告サインです。投資家が将来の受け取りを待つよりも、プレミアムを支払ってでも「今すぐ現物を手に入れる」ことを優先している姿が浮き彫りになっています。
特筆すべきは、コメックスの保管庫から現物の銀が流出するスピードです。取引所での決済を終えた金属がそのまま保管されるのではなく、多くの投資家が実際に現物を手元に引き出し、保管庫の外へと持ち出しています。配送可能な在庫(レジスタード在庫)は2025年9月以降、大幅な取り崩しが続いており、このまま5,000万オンスを下回るようなことがあれば、コメックスの供給体制は極めて深刻な限界点に達すると予測されています。2026年2月の配送量も、過去の同時期と比較して非常に高い水準を維持しており、現物確保への執念とも言える動きが止まりません。
一方で金市場に目を向けると、2025年に見られたような異常な熱狂は落ち着きを見せつつありますが、依然として現物需要は根強く残っています。金の場合は銀とは逆に、先物価格が現物価格を大きく上回る状態が続いており、この価格差を利用した裁定取引によってロンドンからニューヨークへ大量の金が移動しました。しかし、一度保管庫に入った金も、最近では再び外部へと流出し始めています。これは価格が史上最高値圏にあるにもかかわらず、ドルの先行き不安などを背景とした「安全資産としての実物保有」の動きが衰えていないことを示唆しています。
結論として、2026年の貴金属市場は非常に不安定な局面を迎えています。金は高値圏でも需要が底堅く、銀は供給不足と現物引き出しの加速という「完璧な嵐」の渦中にあります。投機的な資金が一部で引き揚げられた後も、実需に基づいた大口の買い手が市場を支えており、これがコメックスの在庫に多大な圧力をかけ続けています。今後、在庫の枯渇が現実味を帯びてくれば、価格形成や取引の仕組みそのものにさらなる混乱が生じる可能性もあり、日本の投資家にとっても注視すべき事態と言えるでしょう。
BRICSがドルをなくせない理由
Why Brics can’t do away with US dollar even as currency cooperation rises | South China Morning Post [LINK]
【海外記事紹介】ブラジルのルラ大統領がインドを訪問した際、BRICS独自通貨の導入について「提案も草案も、内部での議論すら存在しない」と明言し、世間の憶測を打ち消しました。この記事によれば、加盟国の間では共通通貨という政治的にハードルの高い目標よりも、自国通貨建て決済の拡大や中央銀行間の通貨スワップ、決済システムの連携といった、より現実的な協力関係を優先する動きが強まっています。ルラ大統領は、インドとブラジルは米ドルに依存せず自国通貨で取引が可能であると強調しましたが、これはドル支配への直接的な挑戦というより、経済的な柔軟性を確保するための実務的な選択と言えます。
背景には、近年の「脱ドル化」の動きと、2025年のブラジルでのサミットでロシアのプーチン大統領が自国通貨利用を促した経緯があります。また、アメリカの大統領選挙では、BRICSがドルに代わるライバル通貨を作れば、対象国からの輸入品に100パーセントの関税を課すという警告もなされました。こうした政治的圧力が強まる中で、アナリストは、BRICSが独自の電子決済システムや暗号資産の活用、中国の国際間銀行決済システムの利用拡大などを通じて、ドルへの依存を段階的に減らしていく道を探ると分析しています。
しかし、共通通貨の実現には依然として大きな壁が立ちはだかっています。ロシアのルーブルやイランのリアルのように価値の変動が激しい通貨の問題や、中国の人民元の影響力拡大を警戒するインドの思惑など、加盟国間の利害は必ずしも一致していません。インドはむしろ、中央銀行が発行するデジタル通貨の連携を提案しており、実務的なクロスボーダー決済の効率化に注力しています。また、加盟国は多額の米ドル資産を外貨準備として保有しているため、急激なドル離れは自国の資産価値を損なうリスクがあります。
2024年の統計で、BRICS域内の貿易額は20年前の約14倍となる1.17兆ドルに達し、世界貿易の5パーセントを占めるまでになりました。経済的な存在感は確実に高まっており、インドとブラジルはレアアースやAI分野での協力を深め、2030年までに二国間貿易額を300億ドルに引き上げる目標を掲げています。それでも、米ドルの圧倒的な優位性は当面揺らぐことはなく、BRICSはドルと共存しながら、いかに自立した経済圏を構築できるかという長期的な課題に直面しているのが実情です。
2026-02-25
ウクライナ和平への道
Peace in Ukraine Requires Urgency From Both Sides | The Libertarian Institute [LINK]
【海外記事紹介】ウクライナでの戦争を終結させるための外交交渉が、かつてないほどの緊迫感を持って語られています。2026年2月現在、ゼレンスキー大統領がトランプ政権から「6月の交渉期限」を提示されたと明かし、NATOのルッテ事務総長も「悲惨な戦争の終結には困難な選択が必要だ」と述べるなど、和平への圧力が急速に高まっています。ロシア側でも、強硬派からの突き上げや米国との交渉の遅れに対する苛立ちが募っており、戦況がロシア優位に進む中で、開戦初期以来となる直接対話がようやく動き出しています。
この記事の著者は、平和を実現するためには「双方の安全保障上のニーズとレッドライン(譲れない一線)の尊重」が不可欠であると説いています。驚くべきことに、両国はすでに重要な譲歩を見せ始めています。ウクライナは事実上のNATO加盟断念と、クリミアやドンバス地方の割譲を容認する姿勢を示し、対するロシアも、ウクライナが第三国から安全保障を受けることやEUへ加盟することを認め、凍結資産を再建費用に充てることについても妥協の余地を見せています。
最大の焦点は、安全保障の枠組みと領土の線引きです。ロシアはウクライナのNATO不加盟を絶対条件としていますが、ウクライナはこれに対し、EU条約に基づく強力な防衛援助義務を代替案として検討しています。領土問題では、ロシアはドンバス全域の確保を外交的に確定させたい考えですが、ウクライナは軍事的に維持している土地を守りつつ、自国の80%を独立した主権国家として存続させる道を探っています。これは1940年代にソ連との戦争を経て独立を守り抜いたフィンランドの歴史的な決断にも重なります。
4年以上にわたる戦いで、数十万人の尊い命が失われ、国土は荒廃しました。著者は、今の外交交渉でテーブルに乗っている条件の多くは、実は開戦直後にも合意可能だった内容であると指摘し、その遅れを深く嘆いています。しかし、双方が自国の「勝利」として国民に説明できるナラティブを構築し、安全保障上の実利を確保できる外交の道は、まだ残されています。さらなる犠牲を重ねる前に、この「最後の一線」を越えて平和を掴み取ることが、すべての関係者に求められています。
ガザ再建計画と米不動産マネー
The Gaza Plan’s 'Sick Kind of Detachment' and its Dangers for America | The Libertarian Institute [LINK]
【海外記事紹介】トランプ政権によるガザ再建計画「レイズ・アンド・リビルド」、すなわち「破壊と再建」が孕む深刻な欺瞞と、それが米国社会に及ぼす危険性について、ジャーナリストのマット・ウルフソン氏が鋭く告発しています。2026年1月、ダボス会議の壇上に立ったジャレッド・クシュナー氏は、未来的な高層ビルや高級リゾート、データセンターが並ぶガザの完成予想図を披露し、これを「ガザの人々のための夢の計画」であると胸を張りました。クシュナー氏は100%の雇用や最新の教育・医療制度を約束し、投資家には利益を、メディアには「前向きな物語に集中せよ」と呼びかけましたが、その口調は中堅コンサルティング会社の営業プレゼンのように軽やかで、現場の悲劇とはあまりにかけ離れたものでした。
この記事の著者は、この光景を「異常な乖離」と呼び、厳しく批判しています。ガザでは今この瞬間も、浸水したテントで子供たちが凍え死に、瓦礫の下に無数の遺体が埋もれているのです。それにもかかわらず、その場所を不動産開発の対象として語る感性は、過去の植民地主義者がインドやパリで行った、歴史を消去して近代化を強行する手法と何ら変わりません。こうした「近代化」という美名は、かつての英仏帝国が石油資源を管理するために用いたコードネームと同じ役割を果たしています。イスラエルの指導層もまた、1990年代からハイテク技術を武器に、パレスチナ人を監視下に置きながら「シンガポールのような繁栄」という餌をぶら下げ、その実態は自由を奪う「屋根のない監獄」を作り上げてきたと指摘されています。
今回の再建計画の背後には、米国の有力な不動産開発業者や技術者たちのネットワークが存在します。彼らはガザを白紙の状態から作り直すために、まずは現地の住民を移動させ、テロ組織の武装解除を条件に掲げていますが、その本質は「強圧と懐柔」による支配にあります。しかし、著者が最も警鐘を鳴らしているのは、この「ガザ・モデル」がガザだけに留まらず、すでにアメリカ国内にも輸入されているという点です。ニューヨークやマイアミで進められているスマートシティ化や、監視カメラによる厳格な治安維持、そして不動産価格の高騰による元々の住民の追い出しは、ガザで行われていることと構造的に同じです。かつての中間層が家を追われ、その子供たちが低賃金の配達員として働く現状は、帝国的な開発が生む共通の帰結なのです。
トランプ大統領が提唱する、連邦地に建設予定の「フリーダム・シティ」構想もまた、歴史や地域性を無視した管理社会の雛形と言えます。著者は、私たちがガザで起きている「異常な乖離」を他人事として見過ごし、この冷酷な開発論を受け入れてしまえば、最終的にはアメリカ国民自身も、クシュナー氏が描くような「上からの心理的コントロール」が行き届いた未来に閉じ込められることになると警告しています。ガザの悲劇を不動産ビジネスの好機として捉えるような価値観が、私たちの社会の屋台骨をも蝕もうとしている事実に、私たちは今すぐ目を向ける必要があります。
揺らぐ韓国の対米観
Watching Uncle Sam From Seoul - Antiwar.com [LINK]
【海外記事紹介】「ソウルからアンクル・サム(米国)を注視する」——元外交官で東アジア専門家のジェフリー・ロバートソン氏による、トランプ政権の予測不能な外交が韓国に与えている衝撃と、同盟の変質を分析した論考を要約します。
著者は、2026年1月のベネズエラでのマドゥロ大統領拘束作戦(アブソリュート・リゾルブ作戦)や激化する対イラン紛争を機に、韓国の対米観が「信頼」から「不信と計算」へと決定的に変化したと指摘しています。
記事が分析する韓国側の主な懸念は以下の通りです。
「予測可能性」の崩壊: かつての米韓同盟は、6カ国協議や緻密な同盟調整といった「プロセス」に基づき、リスクを管理し安定を維持することを目的としていました。しかし現在のトランプ外交は、SNSや大統領個人の感情に突き動かされた「即興劇」のように見えます。韓国にとって、この不確実性は死活的な脅威です。
ベネズエラとイランの衝撃: 国連の承認も自衛権の行使でもないベネズエラでの電撃作戦や、明確な戦略的根拠(民主化か、核阻止か、体制転換か)が見えないイランへの攻撃は、ソウルの専門家たちに「朝鮮半島も単なるパフォーマンスの舞台にされるのではないか」という恐怖を植え付けました。
「戦略的支点」としての悪用: 朝鮮半島は米国のインド太平洋戦略における「支点(テコ)」ですが、韓国側は、米国(あるいはトランプ一族)の利益を守るために自分たちが中国やロシアに対する盾として使い捨てられることを恐れています。
同盟の空洞化: 韓国世論は依然として同盟を支持していますが、その中身は変質しています。若手の政策立案者は、パートナーシップの多角化、独自の防衛力強化、外交的自律性の拡大といった「ヘッジ(保険)戦略」を公然と議論し始めています。中には、BRICSへの接近や、中国の覇権を容認した場合の利得を検討する者さえ現れています。
「韓国人は米国の力を信じなくなったのではなく、米国の『着実さ(steadiness)』を信じなくなったのだ」。著者は、米国があらゆる地域を混乱の舞台として扱うなら、ソウルは米国との間に距離を置き、共通の運命ではなく「冷徹な計算」に基づいて動くようになると警告しています。
経済制裁による殺人
The Architectures of Ruin – How Sanctions Kill in Venezuela and Beyond - Antiwar.com [LINK]
【海外記事紹介】「崩壊の構造 —— ベネズエラと世界で制裁がいかに人を殺すか」。著名な経済学者フランシスコ・ロドリゲス氏の著書『ベネズエラの崩壊』と、医学誌『ランセット』に掲載された共同研究を基に、制裁という名の「経済的包囲網」がもたらす凄惨な結末を分析した論考をご紹介します。
著者のマイケル・ホームズ氏は、ベネズエラの悲劇を単なる「社会主義の失敗」という道徳劇として片付ける見方を否定します。ロドリゲス氏の厳密なデータ分析によれば、ベネズエラの経済崩壊の約半分は、金融アクセスや石油市場を遮断した米国の制裁が直接的な原因であると指摘されています。
記事の主なポイントは以下の通りです。
「焦土作戦」としての制裁: 2017年の金融制裁と2019年の石油禁輸は、すでに危機にあったベネズエラ経済を「死の淵」へと突き落としました。これにより、国家は電力網、水道、公共医療を維持するための収入を失いました。これは政権の銀行口座を狙ったものではなく、国民の生存基盤そのものを狙った「経済的包囲戦」であったと著者は論じています。
年間50万人以上の超過死亡: ロドリゲス氏らが『ランセット』誌で発表した研究では、過去50年間の150カ国以上のデータを分析。その結果、米国や欧州による一方的な経済制裁は、年間約56万4000人の超過死亡と関連していることが判明しました。これは現代の戦争による死者数に匹敵、あるいはそれを上回る規模であり、その犠牲者の多くは5歳未満の子供たちです。
民主主義という名の欺瞞: 西側諸国は「民主主義のため」という名目で制裁を正当化しますが、実際には医療品や食料の輸入を困難にし、500万人以上の難民を生み出す人道的大惨事をもたらしました。これは、 regime change(政権交代)という政治目的を人命よりも優先させた結果であると厳しく告発しています。
民意の乖離: ベネズエラ国民の約75%が制裁の緩和を望み、約65%が対話による解決を求めています。しかし、マドゥロ政権、米国の強硬策、そしてそれと足並みを揃える急進的な野党勢力という三者の「ゼロサム・ゲーム」によって、国民の切実な願いは無視され続けています。
著者は、現代の金融ツールは従来の兵器と同じくらい破壊的であり、ベネズエラは「帝国による新しい戦争の実験場」にされたと結論づけています。
トランプ氏変節、揺れる支持層
Does MAGA want Trump to ‘make regime change great again’? | Responsible Statecraft [LINK]
【海外記事紹介】「MAGAはトランプに『レジームチェンジ(政権交代)』の再興を望んでいるのか?」——ジャーナリストのジャック・ハンター氏による、2026年に入り急変したトランプ政権の外交姿勢と、揺れる支持層(MAGA)の動向を分析した記事を要約します。
2016年の初当選時、トランプ氏は「イラクやリビアのような失敗した国家建設や政権交代の政策を放棄する」と宣言し、反戦・非介入主義を掲げる「アメリカ・ファースト」派の支持を集めました。しかし、2026年1月現在、その姿は一変しています。
記事が指摘する「トランプ変節」の現状は以下の通りです。
ベネズエラでの電撃作戦: 年明け早々、米国はベネズエラのマドゥロ大統領夫妻を拘束。トランプ氏は「現在ワシントンがベネズエラを統治している」と豪語しています。
次なる標的への脅し: メキシコの麻薬カルテルへの攻撃を示唆し、キューバの体制崩壊を狙い、イランに対しても「地上軍(ブーツ・オン・ザ・グラウンド)を恐れない」と介入を警告しています。
側近の入れ替わり: 非介入主義の旗手と期待されたJD・ヴァンス副大統領は、ベネズエラの石油や反共主義を理由に攻撃を正当化。かつて政権交代に反対していたトゥルシ・ギャバード氏は沈黙し、代わってマルコ・ルビオ国務長官やリンゼイ・グラハム議員といった「タカ派」がトランプ氏の耳目を独占しています。
MAGA支持層の反応:
興味深いのは、支持層の反応です。マージョリー・テイラー・グリーン議員のように「いつから政権交代が流行りになったのか」と困惑する声がある一方で、スティーブ・バノン氏やマット・ウォルシュ氏のような有力インフルエンサーは、「中東(イラク)の二の舞にさえならなければ、西半球(ベネズエラ等)での権力行使は歓迎だ」と、独自の論理でこの「新レジームチェンジ」を正当化し始めています。
世論調査(YouGov)では、ベネズエラ侵攻への米国民全体の支持は39%にとどまる一方、共和党支持者に限れば74%が賛成という「タカ派への回帰」が見て取れます。
著者は、タッカー・カールソン氏のような抑制派が依然としてトランプ氏のそばにいるものの、現在のホワイトハウスは新保守主義(ネオコン)のウィッシュリストを実現しているかのような状態にあり、2026年の外交は極めて危険な領域に入っていると結んでいます。
むき出しの帝国主義へ
What is US plan to reverse West's decline? Undo decolonization, revive 'great Western empires' - Geopolitical Economy Report [LINK]
【海外記事紹介】「欧州の植民地帝国を復興し、デコロニゼーション(脱植民地化)を覆す」——ジャーナリストのベン・ノートン氏による、2026年ミュンヘン安全保障会議でのマルコ・ルビオ米国務長官の演説を分析・告発する記事をご紹介します。
ノートン氏は、ルビオ氏の演説が「20世紀後半の反植民地闘争の成果を否定し、西側諸国の覇権を武力で再構築しようとする宣戦布告である」と論じています。
記事が指摘するルビオ演説の「新植民地主義的」な重要ポイントは以下の通りです。
偉大なる西側帝国の称賛: ルビオ氏は、第2次世界大戦前の5世紀間にわたる西側の拡大(宣教、入植、征服)を「偉大で高貴な文明の行進」と称賛しました。1945年以降の脱植民地化の動きを「神を信じない共産主義者による陰謀」と呼び、西側諸国がこれまでの「植民地犯罪への罪悪感」を捨て、自らの伝統に誇りを持つべきだと主張しました。
「新西側世紀」の構築: ルビオ氏は、米国と欧州が団結し、世界の人口の86%(グローバル・マジョリティ)を占める「グローバル・サウス」を再び西側の支配下に置く「新しい西側の世紀」を築くことを呼びかけました。
自身のアイデンティティの転換: キューバ系であるルビオ氏ですが、演説では自身のルーツを「イタリアやスペインの征服者(コンキスタドール)」に求めました。彼は、先住民を虐殺・追放して「空っぽの平原を農地に変えた」入植者の末裔としてのアイデンティティを強調し、先住民へのジェノサイドという歴史的事実を事実上否定(ホワイトウォッシュ)しました。
中国を排除した西側供給網: ルビオ氏は、西側の脱工業化を「中国による策略」と描き、中国を孤立させるための「クリティカル・ミネラル(重要鉱物)の西側専有供給網」の構築を提唱しました。
ノートン氏は、この演説に欧州の指導者たちがスタンディングオベーションを送った事実に注目し、西側のエリートたちが「民主主義や人権」という建前を捨て、剥き出しの帝国主義に回帰しようとしていると結論づけています。
ディープステートの外交私物化
Where in the Constitution is ‘the interagency’ anyway? | Blaze Media [LINK]
【海外記事紹介】「そもそも、憲法のどこに『省庁間合議(インターエージェンシー)』なんて言葉があるのか?」——作家のチャールズ・ゴイエット氏による、米国の「ディープステート(影の政府)」が外交政策を私物化し、大統領の権限を形骸化させている現状を告発する論考をご紹介します。
著者は、最近ニューヨーク・タイムズ紙などで明らかになった新事実を引き合いに出し、ディープステートがいかにして憲法上の制約を超えて活動しているかを鋭く問い直しています。
ニクソン政権へのスパイ工作: 最近公開されたウォーターゲート事件関連の機密文書により、ペンタゴン(国防総省)がニクソン大統領の国家安全保障会議(NSC)に対して13ヶ月に及ぶスパイ活動を行っていたことが判明しました。デタント(緊張緩和)やベトナム撤退を進める大統領の方針を嫌った軍トップが、下士官を使って機密文書を盗み出していたのです。著者はこれを「静かなクーデター」であったと示唆しています。
「省庁間合議(インターエージェンシー)」という虚構: トランプ政権下でアレクサンダー・ビンドマン中佐が「大統領の方針は『省庁間合議(インターエージェンシー)』の合意と矛盾している」と証言したことを、著者は痛烈に批判します。憲法のどこにも規定されていないこの「合議」なるものが、選挙で選ばれた大統領の意思を上書きする正当性はどこにあるのか、と。
「国家の中の国家」としての実態: 著者は、これら官僚機構やインテリジェンス・コミュニティを「アメリカ軍事帝国の執行機関」であると定義します。彼らはルールなき「国家の中の国家」として振る舞い、その唯一の目的は「帝国の拡大」です。JFKの暗殺疑惑から現代のウクライナ代理戦争に至るまで、彼らは常に国民の預かり知らないところで世界を核戦争の淵に追いやっていると警鐘を鳴らします。
著者は、個別の不祥事を正すだけでは不十分であり、ギリシャ神話のヘラクレスが川の流れを変えて厩舎を掃除したように、米国が「グローバル軍事帝国」という路線そのものを放棄し、本来の共和国へと帰還(カム・ホーム)することこそが唯一の解決策であると結論づけています。
破滅への全力疾走
The U.S. Is Sprinting Towards Disaster - by Daniel Larison [LINK]
【海外記事紹介】「米国は災害に向かって猛進している」——外交問題の専門家ダニエル・ラーリソン氏による、トランプ政権下で激化するイラン危機への警告を要約してご紹介します。
フィナンシャル・タイムズ紙などの報道を引用しつつ、著者は現在の状況を「戦略なきまま、夢遊病のように戦争へと歩を進めている」とする専門家の見解に対し、現実はさらに深刻だと指摘します。トランプ大統領はこの数週間、理性を欠いた開戦の脅しを繰り返し、軍隊を集結させています。これは夢遊病などではなく、「絶壁の縁に向かって全力疾走(スプリント)している」状態であるというのです。
記事が警告する主なポイントは以下の通りです。
強硬派の扇動: 共和党内やワシントンには、数十年にわたってイランとの衝突を望んできたタカ派(トム・コットン議員やリンゼイ・グラム議員など)が存在します。トランプ氏は党内に意見の相違がある際、常にこうした「狂信的な」強硬派の意見を採用し、国民の多数が望まない方向へ舵を切る傾向があります。
「取引(ディール)」という煙幕: 大統領が口にする「取引」のレトリックは、単なる言い逃れに過ぎません。「自分は交渉の席を用意したが、イランが拒否した」というアリバイを作り、衝突の責任をすべて相手に押し付けようとしていると著者は分析します。
屈服か破壊か: トランプ氏にとっての「平和」とは、相手が自身の極端な要求に無条件で屈服することを指します。イランが頭を下げない以上、大統領はためらいなく死と破壊を解き放つ準備を進めています。
議会の不在: 本来、開戦の決定は国民の代表である議会に委ねられるべきですが、トランプ氏は議会や国民に説明する必要すら感じていません。そして、それを止めるべき議会の野党側は、あたかも「深い眠り」についているかのようです。
著者は、賢明な指導者であれば、無謀な脅しをやめて艦隊を撤収させ、非現実的な要求を捨てて核問題での妥当な妥協点を探るべきだと結論づけます。しかし、現政権が自らその方針を転換する兆しは見えず、米国は破滅的な紛争へと突き進んでいると警鐘を鳴らしています。
キリスト教シオニズムの問題点
The Precariousness of Christian Zionism - LewRockwell [LINK]
【海外記事紹介】「キリスト教シオニズムの危うさ」——マイク・ハッカビー駐イスラエル大使が語った「ナイル川からユーフラテス川まで(大イスラエル計画)」という領土拡張への支持を契機に、カトリック系メディア『クライシス・マガジン』に掲載された論考を要約してご紹介します。
著者は、ハッカビー氏のようなキリスト教シオニスト(主に福音派や一部のカトリック)が抱く「パレスチナを含む全領土は神によってユダヤ人に与えられた」という信念が、神学的にも歴史的にも重大な誤りであると批判しています。
記事が指摘するキリスト教シオニズムの主な問題点は以下の通りです。
神学的誤認: 聖書(ガラテヤ人への手紙など)によれば、アブラハムへの約束の真の成就は特定の「国家」ではなく「キリスト」にあります。また、旧約聖書において土地の所有権は常に神にあり、イスラエル人の居住は「契約への忠実さ」という条件付きのものでした。
歴史的矛盾: シオニズムは19世紀末に始まった「世俗的な」政治運動であり、宗教的な救済計画とは本来別物です。1897年の第1回シオニズム会議でテオドール・ヘルツルがこの言葉を使った際も、それは多分に政治的な協力者を募るためのものでした。
ユダヤ教内部からの批判: ホロコースト生存者であるラビ・ワイス氏らが指摘するように、伝統的なユダヤ教の教えでは、神殿崩壊後に自らの手でユダヤ国家を再建することは禁じられています。つまり、シオニズムはキリスト教のみならず、ユダヤ教の信仰とも相容れない側面を持っています。
キリストの教えとの乖離: キリスト教シオニストは、ユダヤ人の帰還を「終末(キリストの再臨)」の条件として熱望しますが、これは現在のパレスチナ人の生活や権利、生命を奪う行為を正当化する道具となっています。これは、平和と隣人愛を説いた福音書の教えに真っ向から反するものです。
ベネディクト16世が説いたように、聖書が示す「平和の王の領土」とは特定の国民国家ではなく、全人類に開かれた「新しいエルサレム(教会)」を指します。著者は、地上の神殿や領土に固執するキリスト教シオニズムは、キリストによって成就され、普遍化された聖書の約束を、再び古いナショナリズムの枠に閉じ込めるものであると結論づけています。