2021-06-30

人の通らぬ道


異端とは、思想の自由の別名である。
 —作家、グレアム・グリーン

さまよう者すべてが道に迷っているわけではない。
 —作家、J・R・R・トールキン

自分が多数派に回ったと知ったら、行いを改めるか、ひと息入れて反省するときだ。

遠い昔、あるところで、
森の中で道が二つに分かれていた
そして私は、人のあまり通っていない方を選んだ
そのためにどんなに大きな違いができたことか
 —詩人、ロバート・フロスト

国家は、国民に陰謀論への嫌悪を叩き込む。陰謀の追究は、不正行為の動機と責任の追究を意味するからだ。陰謀論を非難すれば、国民は、国家が横暴な行為の口実とする「公共の福祉」を信じやすくなる。陰謀論は、国民に国家の思想的プロパガンダを疑わせ、体制を揺るがすことができる。

陰謀論のどれが本当でどれが嘘かは、多くの場合わからない。情報が不十分だからだ。ある陰謀論が本当だとわかるのはたいてい、ジャーナリストを含む歴史家が調査によって妥当な結論に達することによる。陰謀論の真偽は歴史が判断する問題といえる。このことに政府当局は満足しない。歴史は政府の天敵だからだ。

民主主義とは国家権力の一形態でしかないから、他の政治体制より自由であることを意味しない。ある集団が他の集団を力で支配する実態を、覆い隠すにすぎない。国民の一部があるとき弾圧者を選び、弾圧者は任期中、個人を「統治」し、経済を「計画」する合法な権威を手にする。

民主主義の信奉者は、平和な話し合いでは解決できない争いがあることを認めない。哲学や道徳上の争いだ。争う双方が同じ国家内で生きるよう強いられる限り、どんな和解も、一方が自分の立場を他方に強制する形をとる。敗者は課税され、自分たちの意見を無視する政府を支える。

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2021-06-29

ワクチンと心筋炎


米食品医薬品局(FDA)はモデルナとファイザーの各新型コロナワクチンについて、心炎のリスクに対する警告を追加した。十代後半の若者と子供に接種後、心炎が増えているという米疾病対策センター(CDC)の報告を受けたもの。それでも医療当局は、接種の利益はリスクを上回るとしている。

米アーカンソー州の18歳の少年が2回目のファイザー製ワクチンを打った後、心臓発作を起こし、コロナにかかるほうがましだったと話した。父親によれば、「医者はワクチンの影響を否定し続けた。すると看護師が、ワクチンが心筋炎を起こすかもしれないという研究を持ってきた」。

米国小児科学会はコロナワクチンに関する記者発表で「副反応はきわめてまれ」と述べた。嘘だ。公式集計でも副反応はもちろん、死亡ですらまれではない。副反応が「非常に少人数」というのも嘘だ。米疾病対策センター(CDC)は緊急会合を開き、接種後の心筋炎を問題として認識している。

親は子に接種させる前に、コロナワクチンがまだ正式に認可されていないことを知っておく必要がある。16~18歳に対する緊急使用許可は、大人の治験結果から統計的に推測した安全判断にしか基づいていない。しかも製薬会社は自身の実施計画書を守らず、より安全に見せている。

新型コロナウイルスなるものは、分離も同定もされていない。ウイルスの存在を確認するコッホの原則(分離・培養ができるなど)を満たす努力もされていない。そもそも存在しないウイルスならば、変異はありえない。しかしそんな理屈は消し飛び、捏造された怪物への恐怖が続く。

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2021-06-28

ワクチンと子供の死


米ワクチン有害事象登録システム(VAERS)によると、新型コロナワクチン接種に関し6月18日までの有害事象は38万7087人だった。うち死亡者は6113人と前週より120人増え、6000人を超えた。12~17歳の子供の死亡は9人で、うち13歳の少年はファイザー製接種から2日後に死亡した。

メルクとサノフィの合弁ベンチャーが米国で初の6種混合ワクチンを売り出す。ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、Hib、B型肝炎が対象だ。米医療当局は推奨ワクチンの接種率が高まると期待する。だが混合ワクチンは元来、子供の未成熟な免疫系に及ぼす影響が懸念されている。

カナダの外科医が子供へのコロナワクチン接種に懸念を表明し、勤務先の大学を解雇された。彼の主張は過激ではない。ウイルスは実在し、ワクチンは一般に有効で、高齢者らには利益があると信じている。子供への接種に反対し、親に十分な情報が与えられていないと思っただけだ。

バイデン大統領と米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、デルタ株は従来型より感染しやすく、命にかかわるとしてワクチン接種を勧める。しかしウイルスが変異して、感染力と毒性が同時に高まることはありえない。毒性が高まれば宿主は死ぬから、感染は遅くなる。実際には毒性は下がっているようだ。

医学雑誌ジャーナル・オブ・インフェクションに掲載された投稿によると、PCR検査で陽性だった個人の半分以上は、新型コロナウイルスに感染していない可能性がある。だからPCR検査の陽性反応を、コロナ感染の正確な測定だと考えるべきではない。投稿のこの指摘は、コロナ拡大が始まった15カ月前から何度も言われてきたことだ。

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2021-06-27

命を奪うステイホーム


ステイホーム政策の効果を43カ国と米50州で調べたところ、命を救う効果は見つからなかった。超過死亡数は政策の実施前にはおおむね減っていたのに、実施後にはむしろ増加した。全体を集計すると、ステイホームの期間が1週延びるごとに、超過死亡数は10万人あたり2.7人増えた。

米疾病対策センターの発表によると、2020年は十代の若者で、精神の不健康で自傷行為を行い、入院する人が急増した。精神関連の来院は若者の間で31%増加。とくに女性は自殺未遂の疑われる件数が50.6%増え、男性の3.7%増を大きく上回った。ロックダウン(都市封鎖)の影響とみられる。

米国の少なくとも15の州で、市民の自由を縛ったコロナ対策を見直そうとしている。マスク着用義務の禁止(ノースダコタ)、店舗休業を強いる知事の権限を剥奪(カンザス)、隔離命令を禁止(モンタナ)、州立大学・病院に学生・職員へのワクチン強要を禁止(アリゾナ)などだ。

米国の医師700人への調査で、60%近くがコロナワクチンの接種を終えていないことがわかった。54%は接種者が重い副作用に苦しんでいると答えた。ワクチンを打っていない医師の80%が「接種のリスクは罹患のリスクより大きい」と信じており、30%がすでにコロナに感染したという。

米最大の医療労働組合であるサービス従業員国際組合(SEIU)は、組合員にコロナワクチンの接種を強制しないと表明した。一方、NY長老派病院は全職員に対し接種を義務付けると伝えられたばかり。米疾病対策センターは、30歳未満の接種には心筋炎のリスクがあると警告している。

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2021-06-26

ワクチンと利益独占


新型コロナワクチンは承認されていない。緊急使用許可を得ただけであり、その許可は知られた治療法がないという嘘に基づいている。ヒドロキシクロロキン(HCQ)とイベルメクチンは最初から知られている。大手製薬会社の利益が、国民の健康や市民の自由に優先されているのか。

メディアは抗寄生虫薬イベルメクチンが新型コロナの治療に有望な検査結果を出したことについて、報じようとしない。製薬会社の関心は利益だが、イベルメクチンは古い薬のため、あまり利益が出そうにない。製造している会社が多いことも、大手製薬会社の利益を押し下げそうだ。

ユーチューブは投稿規定で、抗寄生虫薬イベルメクチンや抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン(HCQ)を新型コロナの治療薬として論じることを禁じている。フェイスブックも世界保健機関(WHO)が子供へのワクチン接種を今のところ推奨しないとした指針に関し、そのスクリーンショットの投稿を規制した。

mRNAコロナワクチンの考案者、ロバート・マローン博士によれば、人々にはワクチンを打つかどうか決める権利がある。実験的なワクチンであればなおさらだ。リスクはあるが評価することが難しい。米政府がデータを十分厳密に集めていないため、合理的な判断に必要な情報がない。

イスラエルの研究者によれば、ファイザー製コロナワクチンは、難病である血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の発生増加に関係している。TTPは自己免疫疾患で、体内のさまざまな臓器に血栓を生じさせる。シャミル・メディカルセンター血液学研究所の研究者によれば、同国ではそれまで年に2〜3件しかなかったのに、月4件に急増している。ワクチン接種とTTPの発症には時系列的関係があるという。

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2021-06-25

政治と科学の癒着


新型コロナワクチンのリスクが利益を上回るかもしれないのは、子供、若者、感染済みの人などだ。厚生当局は決して言わないだろうが、感染済みの人にワクチンの利益があることを示す論文は一本もない。米疾病対策センター(CDC)や米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がそれを進んで認めないのは、政治と科学の癒着を物語る。

米国で予想外に多数の若者(12〜24歳)がファイザー、モデルナ製のmRNAワクチンの接種後、心筋炎になったが、政府と医学会はすべて順調だとしている。米疾病対策センター(CDC)の予防接種実施に関する諮問委員会(ACIP)の会合で、報告者は「ワクチンが心筋炎の新たな引き金になったようだ」と述べたが、委員会は「患者は全般に回復し良好」と強調した。

米オハイオ州立大の学生で19歳のグレイソン・フォルマーは、優秀なアスリートで軍の訓練にも参加していたが、ファイザー製コロナワクチンを二度打った後、心臓の合併症に襲われ、まったく違う未来しか見えなくなった。以前コロナに感染し自然免疫を得ていたが、副作用のリスクを誰も警告しなかった。

米医薬大手ファイザーは自社の新型コロナワクチンについて、欧州医薬品庁(EMA)の審査に際し、生体内分布の試験を終えていなかった。この試験は注射された化合物が体内をどのように巡り、どの組織や臓器に蓄積されるかを調べるもの。ファイザーは販売するワクチンでなく、発光酵素を生むmRNAを代わりに使っていた。

ハーバード大学などの分析によると、ロックダウン(都市封鎖)の影響で低賃金の労働者の雇用が大きく減る一方、高賃金の労働者の雇用はむしろ増えた。多くの調査が示すように、ロックダウンには感染を抑える効果もなかった。新型コロナウイルスの感染が一番広がったのは職場やレストラン、ジムではなく、家庭だった。

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2021-06-24

ロックダウンの暴挙


私たちはパンデミックを理解するのではなく、それを恐れるよう促された。暮らしを奪われ、ロックダウン(都市封鎖)と死を押しつけられた。ロックダウンのせいでがんの診察が遅れ、心血管疾患が増え、心の健康が破壊され、それ以外にも公衆衛生に多くの打撃を受けた。結局のところ、ロックダウンが守ったのは若くて感染に伴うリスクが低く、在宅勤務のできる専門家たち(記者、弁護士、科学者、銀行家)だった。その犠牲となったのは子供や労働者、貧困層だ。米国で労働者に対するこれほど大規模な暴虐は、人種差別政策とベトナム戦争以来だ。(ハーバード大学医科大学院教授、マーティン・クルドーフ)

ドイツでの研究によると、ロックダウンはコロナウイルスの感染率を低下させる効果はなかった。昨年11月、12月、今年4月の3回とも、ロックダウンが始まる前に感染率はすでに低下していた。1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す実効再生産数も、実施前に1を下回っていた。昨年、同国内務省から漏れた研究によれば、ロックダウンのせいでコロナ以外の重病の治療を受けられず亡くなった人の数は、コロナによる死者を上回る見通しだ。

パニックは伝染する。1895年、仏心理学者ルボンが述べたように、「群衆の意見、感情、信念には病原菌のような伝染力がある」。パニックは人の判断力を鈍らせる。そのうえ普通の人は多数意見に反対できないから、コロナに関する政府の恐怖に満ちた説明を受け入れるのは当然だ。メディアや政府の関係者が経済の現実について哀れなほど無知であることからすれば、コロナに関して彼らが伝える統計、説明、解説は疑ってかからなければならない。(経済学者、ドナルド・ブドロー)

新型コロナに関するファクトチェックにより、フェイスブックは1600万のコンテンツを削除し、1億6700万の警告を発した。ユーチューブは85万以上の動画が「危険または誤った医学情報」にあたるとして削除した。意図的な誤情報だけでなく、科学的な意見まで一緒くたに消された。ツイッターはファクトチェックを社内で行なっているが、Facebookとユーチューブは、国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)傘下の外部のファクトチェッカーに依頼している。IFCNは非営利組織で、非営利の米ジャーナリズム学校であるポインター学院(フロリダ州セントピーターズバーグ市)が運営している。同学院のおもな出資者はチャールズ・コーク研究所(公共政策研究機関)、全米民主主義基金(米政府機関)、オミダイア・ネットワーク(自称「慈善投資会社」)、グーグル、フェイスブックである。

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2021-06-23

ワクチンか自然免疫か


感染による自然免疫だろうとワクチンによる人工免疫だろうと、免疫は免疫だ。どちらも集団免疫に寄与する。国民にワクチンを打てと言う人は、最終目標を忘れている。目標はワクチンの接種ではない。免疫だ。コロナウイルスに感染し、自然免疫を得た人々にワクチンはいらない。国民はすでに集団免疫を獲得しているかもしれないのに、州知事や厚生官僚は極端な非常権限を行使し、人々の自由と暮らしを侵害し続けている。

医療政策の支配層はその大半が、新型コロナウイルスの自然感染による免疫を否定する。理由は簡単。自然感染による免疫が増えるほど、人体実験のようなワクチンを打つ理由がなくなるからだ。自然感染による免疫は、ワクチン接種で得られる人工免疫と同等かそれより優れている。自然免疫を得た人々が、リスクの高いワクチン接種をやめると決意すれば、国民にワクチンを強制しようとする政府の試みは失敗するだろう。

ワクチンによる人工免疫に比べ、感染による自然免疫の効果が強く、長続きすることは、数十年にわたる証拠がある。ワクチンとアジュバント(強化剤)による人工免疫はたいてい不安定で、効果が短いか全然ない。これははしか、百日咳、インフルエンザなどの集団接種や、新型コロナワクチン接種後にまた感染する「ブレイクスルー感染」で繰り返し明らかになっている。

米国の大学の多くは、コロナワクチンの接種に際し、すでにコロナに感染したことによる免疫の有無を無視している。自然感染し、回復した学生は免疫を得るが、その効果の期間がわからないからだという。しかしそれはワクチンも同じだ。自然免疫と持続期間は変わらないとされる。

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2021-06-22

コロナとホロコースト


ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生き残りで医療活動家のベラ・シャラブによれば、コロナ危機における「優生学主導」の公衆衛生政策は「ファシズム独裁と大虐殺」をもたらしかねない。かつてユダヤ人は黄色いダビデの星を目印として着けるよう命じられ、普通の生活を禁じられた。財産は没収され、教育・宗教・文化などあらゆる集まりへの参加を禁じられた。旅行も禁止だったので、逃げ場がなかった。

仏ウイルス学者でノーベル賞受賞者のリュック・モンタニエは、コロナワクチンの集団接種は信じがたい歴史的大失策だと述べた。接種は変異株を生み出し、感染死をもたらす。多くの疫学者はADE(抗体依存性感染増強)として知られるこの問題を知りながら、沈黙しているという。世界保健機関(WHO)のデータでも、1月にワクチン接種が始まった後、新たな感染症汚染が急増し、とくに若い人が血栓症などによって死亡している。

元ファイザー副社長マイケル・イードンは、新型コロナの感染拡大を終わらせるためにワクチンを打つ必要はないと、きっぱり否定した。疫病の危険にさらされていない人に接種する必要はないし、広範囲な臨床試験を済ませていないワクチンを多数の健康な人に打つ計画もいらない。

コロナmRNAワクチンのスパイク蛋白は、大部分が注射した肩の筋肉にとどまると思われていたが、最近発表された研究によると、血液に流れ込む。また、スパイク蛋白はそれ自体、毒素であるという。そうだとすれば、血栓や心疾患、脳障害、生殖関係など多数の副作用の説明がつく。研究を発表したカナダ・ゲルフ大学のバイラム・ブライドル教授は「大きな間違いだった。スパイク蛋白自体が毒素だとは知らなかった」と述べた。

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2021-06-21

ワクチンを打たない理由


新型コロナワクチンの製造会社は、副作用や死亡のいかなる責任も負わない。ワクチン製造大手4社(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン)はいずれも、これまでワクチンを販売したことがないか、違法な行為でたびたび訴えられたことがあるか、その両方だ。2000年以後、旧型コロナ向けのワクチン開発が何度も試みられたが、実験で動物の多くが重症から死に至り、すべて失敗に終わった。

製薬各社が米食品医薬局(FDA)に提出した文書によると、コロナワクチンが過去のワクチンのようなサイトカインストーム(免疫暴走)を起こさないかどうかわからない。製薬会社は治験の生データを開示しない。長期の安全確認が行われていない。インフォームドコンセント(説明と同意)が不十分だ。副作用と死亡数が過少報告されている。

ワクチンを打っても感染は防げない。接種を終えた人も感染は続いている。米国でコロナの生存率は99.74%。なぜリスクを冒してワクチンを打たなければならないのか。コロナによる死亡者数は大幅に水増しされている。コロナ死とされるうち、コロナだけが原因なのは6%にすぎない。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)所長のファウチは1000以上の特許を保有し、それにはモデルナのワクチンに使用されるものを含む。NIAIDを監督する米国立衛生研究所(NIH)はモデルナとワクチンを共同所有している。ファウチは機能獲得検査の中国への違法な委託に関与した責任を問われている。

コロナウイルスは短時間で変異するので、そもそもワクチンが作れない。ワクチンに関する発言は検閲され、科学的な討論もされていない。著名なワクチン学者ギアート・バンデン・ボッシェによれば、コロナワクチンの強い圧力によりウイルスは変異し、より致命的になりかねない。ワクチン耐性のあるウイルスを生む可能性がある。数カ月か数年後、ADE(抗体依存性感染増強)によって多数の死傷者を出す恐れがある。

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2021-06-20

ワクチン禍は救済されるか


米ワクチン有害事象登録システム(VAERS)によると、新型コロナワクチン接種後に死亡した米国人は2020年12月から2021年5月までで3362人(一日あたり30人)となった。FOXニュースのタッカー・カールソンは「一つのワクチンだけで、過去十五年の合計より多くの人が亡くなった」と指摘した。「VAERSに報告されるのは副作用の1%未満」とする2010年の厚生省の報告書を引用し、実際の死者はもっと多い可能性があると述べた。

米国で新型コロナワクチンの接種後に深刻な副作用に見舞われても、CNBCが弁護士に取材したところ、裁判で争うことは基本的にできない。連邦政府はファイザーやモデルナなど製薬会社に対し免責を与えている。食品医薬品局(FDA)の監督責任や、雇い主が雇用条件として接種を求めた責任を問うこともできない。FDAを訴えることができないのは、米国における国家無答責の法理による。国家賠償の制度はあるにはあるが、利用のハードルは非常に高い。

新型コロナワクチンの1回目の接種後に死亡した米国の男性を調べたところ、抗体はできていたものの、感染は防げなかったことがわかった。男性は86歳で症状はなく、1月9日、ファイザー製ワクチンを接種。15日後に意識を失う。入院し、腎不全と呼吸不全で死亡する数日前、同室の患者と本人が陽性となった。死亡後、検査した九つの臓器のうち、器官、肺、心臓、腎臓、脳など七つから新型コロナウイルスが見つかった。同ワクチンに関する初めての剖検で、ドイツの研究者によって行われた。

デルタ株変異ウイルスによる死亡率は、ワクチン接種後2週間以上の人のほうが、まったく接種していない人より6倍高い。英イングランド公衆衛生庁のデータでわかった。接種者4087人のうち6人が死亡(死亡率0.00636)し、無接種の死亡者は3万5521人のうち34人(0.000957)だ。どちらの死亡率もきわめて低い。同庁によれば、デルタ株は英国で支配的な変異種となっており、変異前より感染しやすいものの、重症度は低い。

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2021-06-19

知らなかったの?


新型コロナウイルスのワクチンを打ったら、マスクを外していいのでは。友達と会食もできるのでは。もしかすると、実家に帰省して親と会ってもいいのでは——。ワクチンを打つ人の多くは、こんな希望を抱いていることだろう。しかし残念ながら、その望みはかないそうにない。

ワクチン接種が進むにつれ、各種メディアで接種後の行動に関する特集記事が増えている。けれども、期待して読み始めた読者の表情は、みるみる暗くなることだろう。

NHKの記事では、二人の専門家が疑問に答える。川崎医科大学教授の中野貴司は「接種を受けたとしても、マスクを外していいわけではありません」と断言する。また、会食の際も「マスクを外しての会食は避けるべき」だという。

北里大学特任教授の中山哲夫は帰省について、緊急事態宣言などが解除された前提で、日頃から感染対策に気をつけ、移動中も注意を払い、なおかつ親が接種を終えていれば、「帰省先の実家で食事をともにするくらいは許容範囲」だろうと話す。それだけ厳しい条件をつけておいて、できれば食事も避けてほしいような口ぶりだ。

中山は「マスク着用や密を避けるといった基本的な対策は、この先、2~3年は続ける必要があると考えています」と述べる。

これでは、ワクチンを打つ前と変わらないじゃないか。なぜそうなるのか。川崎医大の中野によれば、「ワクチンを打ったあとも感染するおそれがあり、知らないうちにほかの人に広めてしまうおそれがあるから」だという。

これを聞いて、多くの人は驚くのではないか。だって、知らないうちに広めたくないから打つという殊勝な人も少なくないのだから。けれども専門家に言わせれば、それは「感染」と「発症」の区別がついていない。

中野はこう説明する。ワクチンの効果は、「感染」そのものを防ぐ効果や、感染しても「発症」を防ぐ効果などに分けられる。日本で接種が始まった新型コロナのワクチンは、「発症」を防ぐ効果は高いと考えられるものの、「感染」そのものを防ぐ効果については、まだはっきりわかっていない。

つまりワクチンを打っても、コロナに感染し、他人にうつす恐れは消えないのだ。これは別に隠されていたことではない。専門家からすれば、「知らなかったの?」という話だろう。

驚くことはまだある。北里大の中山によれば、新型コロナのワクチンは臨床研究が始まってから一年もたっておらず、長期的な効果はまだわからない。そのうえ、感染拡大が長引くと、ワクチンが効かない新たな変異ウイルスが現れる恐れもある。

打っても感染を防げないだけでなく、発症を抑える効果さえ長期で続く保証はなく、変異ウイルスには効かないかもしれない。なぜ副作用のリスクを冒してまでそんなワクチンを打たなければならないのか、はなはだ疑問だ。

それにもかかわらず二人の専門家は、どうなったら日常を取り戻せるのかという問いに対し、ワクチンの接種率を上げることだと口をそろえる。

そう、人にとって当然の権利で、憲法でも保障されているはずの自由は、ワクチン接種の人質に取られてしまったのだ。これも最初からわかっていたことだ。知らなかったの?

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2021-06-18

『PCRは、RNAウイルスの検査に使ってはならない』〜PCR検査のまやかし


テレビや新聞は連日、都道府県の発表に基づき、新型コロナウイルスの感染者数を報道している。それを見て人々はコロナを恐れ、早くワクチンを打たなければと焦る。しかし、もしそれが大きく水増しされた不正確な数字だったら、どうするだろう。

新型コロナに感染しているかどうかは、おもにPCR検査によって判定されている(抗原検査もあるが、その割合は小さい)。PCRとはpolymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、ウイルスの遺伝子を大量に増やす手法だ。遺伝子の基礎研究のほか、個人識別や親子鑑定、犯罪捜査など広範に利用されてきた。

それが新型コロナの発生とともに、世界保健機関(WHO)のお墨付きにより、コロナ感染の判定手段として各国で大々的に活用されるようになった。

しかし一部の専門家は、コロナ感染の判定にPCRを使うのは問題だと指摘する。徳島大学名誉教授の大橋眞はその一人だ。大橋は著書『PCRは、RNAウイルスの検査に使ってはならない』(2020年)で、PCR検査の本質的な欠陥を以下のように指摘する。

PCRの利点として、特異性(特定の抗原を認識する性質)が99%と非常に高いことが強調される。いわば精度が高い。しかしコロナのPCR検査は、病原体のゲノム遺伝子全体のごく一部だけを調べる検査であり、この限られた部分についてのみ、高い精度で調べることができるにすぎない。

遺伝子の一部だけを高い精度で調べても、あまり意味はない。遺伝子のごく一部が他の遺伝子と類似するのは、ごくありふれた現象だからだ。大橋は「設計図図面の切れ端だけを見て、2つの建物全体が同じであるという推定をするようなもの」と喩える。

また、新型コロナウイルスなどのRNAウイルスは、変異が多いことで知られる。変異が進めば、PCR検査では検出できなくなる。2019年12月初旬にウイルスが発生したとして、2020年8月には変異率10%に達した計算で、「PCR検査ではほとんど検出できないレベル」になっていたはずだ。

ところがその後もPCR検査は続けられ、陽性者は感染者としてカウントされている。新型コロナウイルスは変異によりPCR検査では検出できないはずなので、それ以外の遺伝子を検出している可能性が高いが、その検証はされていない。

大橋は「もはや、医学的に意味のない検査を使い続けて、一体何の意味があるのだろうか。ただ何かわからないが、陽性反応が出るから良いだろうというようないい加減なことで済まされることではない」と批判する。

PCR検査の問題については最近、米国の医師ポール・アレクサンダーも別の角度から指摘している。

大臣や知事は「感染拡大」を口実に、市民の自由をいつまでも縛るつもりだ。マスク着用や対人距離の確保、外出・営業自粛といった対策の多くは、無症状者が感染源になるという説に基づき、その説の根拠はPCR検査だ。PCR検査という手法がまやかしであれば、根底から覆る。

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2021-06-17

無症状感染の欺瞞


政府が新型コロナウイルス対策として呼びかけるマスク着用、対人距離の確保、事業者の休業・時短、イベント開催の制限・停止、住民の外出自粛、学校の臨時休業、ワクチン接種などはすべて、ある「事実」が前提となっている。

それは、新型コロナに感染しても症状がまったく出ない「無症状感染」の存在だ。発熱や倦怠感、味覚障害といった症状がなくても、コロナに感染しているかもしれない。だから国民の自由を大きく制限する対策や、死亡・重篤化の恐れがほとんどない子供へのワクチン接種までが正当化されるわけだ。

症状がないのに、なぜ感染がわかるかというと、新型コロナにはPCR検査があるからだ。結果が陽性なら、感染とみなされる(それがテレビや新聞で「感染者」として毎日報じられる)。陽性にもかかわらず症状がない場合を、無症状感染と呼んでいる。

しかしこの無症状感染なるもの、その根拠がきわめてあやふやなのだ。それどころか、わざと大げさに演出されたとの見方さえある。

米医療情報サイト、トライアルサイトニュースで、ポール・アレクサンダーという医師が、経済や学校の封鎖を正当化するのに使われた無症状感染について「それは嘘だった」と厳しく批判している

アレクサンダーはまず、PCR検査の欠陥を指摘する。PCR検査は検体の温度の上げ下げを繰り返すことで、ウイルスの中にあるRNAを増幅し、感染の有無を判断する。増幅の回数をサイクル数(CT値)と呼ぶ。アレクサンダーによれば、実際の感染を検出する適正なCT値は25〜30程度なのに、米国では34〜35かそれ以上とされ、これだと97〜100%が偽陽性(感染していないのに陽性)になってしまうという。

日本でも、国立感染症研究所の検査マニュアルで原則40以内と高く設定され、感染者数が水増しされやすい。

感染判定の基準であるPCR検査に大きな問題がある以上、無症状感染について議論することにどれだけ意味があるのか疑問だ。それはいったん措くとしても、無症状感染を重視することにはやはり問題がある。

アレクサンダーが指摘するように、ホワイトハウスでコロナ対策の責任者を務めるアントニー・ファウチは当初、「歴史上、無症状感染がいくらかあったとしても、集団感染の主因になったことはない。集団感染の主因はつねに、症状のある人だ」と明言した

ところがファウチはその後、科学的な証拠を示すことなく、主張を正反対に変えた。そして無症状感染のリスクを口実に、ロックダウン(都市封鎖)を正当化し、経済・社会に無用の損失を与えた。

最近公開されたメールのやり取りで、ファウチはやはり、大半の感染は「症状のある人から起こる」もので、「無症状の人からではない」と述べている

無症状感染を重大な問題と考えることに否定的な見方は、専門家の間で増えている。医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)が昨年12月に掲載した論文によれば、無症状者の感染率は有症状者に比べて3倍から25倍低い。世界保健機関(WHO)も、無症状患者からの感染は「非常にまれ」だと述べている

アレクサンダーは、もしロックダウンではなく、高齢者に的を絞った対策を最初からしていれば、「これほどの死者は出なかっただろう」と、無症状感染を煽った専門家を批判する。彼はWHOの米州事務局である汎米保健機構(PAHO)や米厚生省でコロナに関する顧問を務めた経験があり、いわゆる反ワクチン論者ではない。それだけに、その告発は重い。

新型コロナが流行し始めた当初、無症状は感染者全体の80%程度と言われていた。だがその後の研究で、実際には17〜20%程度だとわかってきた。しかも前述のように、その感染力は弱い。

無症状感染を恐れる必要がなければ、社会全体の移動や集まりを制限する緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置は、感染対策としてほとんど意味がない。経済・社会へのコストを考慮に入れればむしろ有害だ。それにもかかわらず、この誤った対策が全面解除される見通しは立たない。ひどい話だ。

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2021-06-16

安全保障という嘘


自衛隊基地や原子力発電所の周辺、国境離島などの土地の利用を規制する法(土地規制法)が16日未明の参院本会議で、自民、公明、日本維新の会、国民民主各党の賛成多数で可決し、成立した。

この法律はもともと、防衛施設の周辺の土地が中国などの外国人や外国法人に買い占められており、安全保障に脅威だという理由から発案された。だがすでに各種報道で指摘されるとおり、そのような事実は存在しない。

政府が外国資本による土地買収の具体例として挙げたのは、航空自衛隊千歳基地(北海道千歳市)と海上自衛隊対馬防備隊(長崎県対馬市)周辺の土地だ。

国会審議で、小此木八郎領土問題担当相はこの二地域の買収事案に触れ、「全国の地方公共団体から、安全保障の観点から土地の管理を求める意見書も提出されている」と説明。「地域住民の不安」が広がっていると強調した。

ところが実際は、自治体からの意見書はわずか16件で、千歳、対馬の両市からは出されていなかった。意見書の内容も、リゾート地への外国資本進出などが多かった。これではそもそも、立法事実(法律制定の前提となる事実)が存在しない。

それにもかかわらず、この法律によって政府は、自らが「重要」とする施設周辺の土地所有者や市民を監視できる。重要施設の具体的内容は政令で定めるため、国会の承認が必要ない。

政府が軍事的脅威を煽り、安全保障の名の下に国民の権利を奪っていく。これは新型コロナの恐怖を煽り、社会福祉の名の下に国民の自由を奪っていくのと同じやり口だ。本質は暴力団と変わらない政府が、本気で国民の生命や財産を守るという幻想を信じている人は、政府の嘘を見抜くことができない。

今回の法律を支持する評論家の有本香は、中国系資本が北海道旭川市にあるスキー場周辺の数十ヘクタールの土地を買い占めており、商業開発に見えるが、実際は有事の際、近くにある陸上自衛隊の電波塔を攻撃するためだと主張する

遠くからでも可能な電波塔攻撃のために、近くにわざわざ広大な土地を買い、商業開発のふりまでするとは、なんとも非効率な作戦だ。実際はただのリゾート開発だと思うけれども、かりに有本の主張が事実だとすれば、中国軍はどうしようもなく愚かであり、全然脅威ではない。

国防の最善の手段は、経済関係の強化だ。もし中国から日本を守りたいのなら、土地をどんどん買わせればいい。せっかく買った土地やそこに建てた商業施設を自分から戦争でダメにする者はいない。

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2021-06-15

地球規模の人体実験


英コーンウォールで開いた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、途上国に10億回分の新型コロナワクチンを提供することで合意した。すでに各国が表明した寄付計画は約9億回に達する。2022年末までに全世界の人々にワクチンを行き渡らせ、コロナ危機の封じ込めを狙うという

一方、G7サミットに合わせて記者会見した世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、2022年のG7サミットまでに「世界人口(約80億人)の少なくとも70%にワクチン接種することを目標にしなければならない」と述べた。110億回分のワクチンが必要だという

思わず震えてしまう。G7やWHOの人道心に感動してではない。恐怖のためだ。

政府や国連はワクチンは安全だと強調し、メディアの多くはそれを拡声器のように広めているが、今回のワクチンが未知のリスクを抱えることは、公然の事実だ。

通常、ワクチンの実用化には膨大な時間がかかる。動物実験を経た後、三段階の治験をクリアしなくてはならない。各段階に最低でも半年から一年以上かけ、どんな副作用が起こるかを確認していく。全体では五~十年という期間で開発するのが普通だ。

しかし周知のとおり、今回のコロナワクチンはわずか一年にも満たない短期間で完成された。

異例のスピードで開発されたコロナワクチンについて、現代ビジネスは昨年10月の記事でそのリスクを指摘している。

記事中、新潟大学名誉教授で医学博士の岡田正彦はこうコメントする。「副反応の中には、長期間を経て現れるものもある。それこそ、発がん性があったとしても、短期間では判別できないのです。この状態でワクチンを承認して一般の健康な人に打つというのは、人体実験に近いと言えるでしょう。自分の家族にも、接種は勧められません」(強調は引用者)

コロナワクチンは、従来型のワクチンとまったく異なる、「遺伝子ワクチン」という仕組みだ。この点について、国立遺伝学研究所発生遺伝学研究室教授の川上浩一はこう解説している。「遺伝子ワクチンはこれまで承認された例はほとんどなく、未知の領域です。仕組み自体が未知のものなので、いきなり数億単位の人間に接種した場合、何が起きるのか、予測することができません」(同)

何が起きるかわからない未知のワクチンを、いきなり数億単位の人間に接種する。まさに「人体実験」としか言いようがない。

すでに日本国内で公式に報告されただけでも、接種後に196人が亡くなっている。政府はワクチンとの因果関係は不明としているが、因果関係が疑われることは否定していない。それなら少なくとも一時、接種を中止するのが安全上、当然の対応だろう。ところが驚くことに、何事もなかったかのように接種やその呼びかけは続いている。

G7首脳らやWHO事務局長も、副作用の警鐘に耳を貸さず、ワクチン接種を途上国に広げるという。地球規模の人体実験の結果が完全にわかる頃には、彼らは責任を問われる地位から退いているだろう。

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2021-06-13

ワクチン推しの異様な論法


新型コロナワクチンの接種後に亡くなる人が相次げば、ワクチンの安全性に疑問を抱くのは自然だ。しかしワクチン推進派の人々にとっては、それは愚かで許せない態度らしい。

ジャーナリストの佐々木俊尚はツイッターで、「反ワクチン運動がまた猖獗を極めつつありますが、厚労省のこのリリースを広めましょう」と呼びかける。その発表資料には「国内外で注意深く調査が行われていますが、ワクチン接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるという知見は得られていません」と述べられている。

けれどもこの記述がフェアでないことは、一緒に掲載されている図表(上)をよく見ればわかる。医療現場から厚労省に寄せられた「副反応疑い報告」は、二つの事象に分かれる。「接種による副反応」と「接種と因果関係のない偶発的な事象」である。たしかに現時点では、「接種による副反応」と認定されたものはない。

しかし実際には、二つの事象のどちらに入るのか、わからないものが多い。図表では二つの事象にまたがる形で楕円が描かれ、「偶発的か因果関係があるかが分からない事例や、直ちに判断できない事例」と書かれている。

つまり、ワクチンが危険だと証明されたわけではないが、安全だと証明されたわけでもない。それなのに、「死亡者が増えるという知見は得られていません」とあたかも安全であるかのように表現するのは詭弁だし、そんなミスリーディングな資料を「広めましょう」などと呼びかけるのも不適切だ。

また、神戸市の女性がワクチン接種後に死亡したことを伝えるTBSの報道について、医師の木下喬弘はツイッターで「丁寧な報道が必要なのに、まるで因果関係があるように報じるTBSも最悪ですね」とコメントした。

TBSの報道は、ワクチンが原因としか考えられないという趣旨の夫の発言を伝えており、たしかにワクチンと死亡に因果関係があるかのような印象を受ける。それはTBS報道陣の意図でもあるだろう。しかし、それがなぜ「最悪」なのか。

客観状況から見て、女性の死とワクチンに因果関係があると疑うには十分だ。そうであれば、そのリスクに警鐘を鳴らすのは報道機関として当然だろう。むしろ、それを怠るメディアこそ「最悪」である。

木下は別のツイートで、「そろそろワクチンを打った後に何人死んだと騒ぐのはやめましょう。ワクチンは毒薬ではありませんし、不老不死の薬でもありません」とコメントしている。

信じられない発言だ。ワクチンを打った後に死者が出れば、騒ぐのは当然だろう。ワクチンは薬事法上、毒薬に準じる劇薬だし、まして日本で打たれている新型コロナワクチンは人類史上、初めて大々的に使用される「遺伝子ワクチン」だ。人体への影響は不透明な部分が多い。

コロナワクチンを推進する人々は、無理な論法でリスクを小さく見せようとしている。その異様な姿からは、むしろワクチンの隠された危険の大きさを感じずにいられない。

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2021-06-12

私権軽視のツケ


安全保障上、重要とされる土地の利用を規制する法案に対し、保守系の一部メディアを除き、主要メディアの多くは反対している。健全な反応だが、いつまで続くか心もとない。

この問題のキーワードは、「私権」という言葉だ。今回の法案をきっかけに、メディア各社はこの言葉をにわかに多用するようになった。

法案は、国境にある離島のほか自衛隊・米軍施設の周囲一キロ以内を「注視区域」に指定し、所有者情報や利用実態の調査を可能にする内容だ。電波妨害、偵察など安全保障上の機能を阻害する行為があれば土地利用の中止を命じ、応じなければ刑事罰を科す。司令部などの周辺や防衛上特に重要な離島は「特別注視区域」とし、一定面積以上の土地売買に届け出を求める。

これに対し、毎日新聞は「私権制限の歯止め足りぬ」と題する社説(5月30日付)で、「調査を口実に、市民への監視が強まる懸念は拭えない。基地や原発に反対する市民活動を排除するために使われるのではないか、と危惧する声も出ている」と指摘する。

東京新聞も「私権侵害を危惧する」と題する社説(4月7日付)で、「基地に隣接する街やリゾート地が指定されれば、外国資本による開発が阻害され、地価下落や地域経済の停滞を招きかねない」と批判する。

いずれも、これだけ見ればまっとうな主張だ。しかし、私権がそれほど大切だと思うのなら、ふだんからそう言わなければ説得力がない。

実際にはこの一年半、コロナ騒動の中で、主要メディアは人々の私権をないがしろにしてきた。政府・自治体による外出・営業規制という私権制限を容認するにとどまらず、むしろ積極的に支持し、求めてきた。

メディアは「命を守るためにはやむをえない」と言うかもしれない。けれども政府や自民党に言わせれば、安全保障だって国民の命を守るためにある。コロナという脅威から国民の命を守るために私権制限が許されるのであれば、外国の軍事的脅威から国民の命を守るための私権制限だって認められなければおかしいと、政府・自民は言うだろう。

メディアの主張を見直すと、土地利用の規制そのものに反対しているわけではない。「国の安全保障に関わる重要な施設を妨害工作などから守ることは必要だ」(毎日)と認めたうえで、基準があいまいという理由で反対している。

だがこの論法も、コロナを思い出せば説得力に欠ける。劇場や演芸場は営業できるのに映画館はできないなど、基準があいまいで混乱を招いたことは記憶に新しい。メディアはその混乱ぶりを伝えはしたものの、営業自粛そのものに反対することはなかった。

近代法の原点の一つであるフランス人権宣言は、その第17条で「所有は、神聖かつ不可侵の権利」だと謳っている。政府の横暴から身を守るカギは、自由の基礎である所有権だという洞察が、その背景にある。

それに引き換え、今の「リベラル」なメディアや野党はコロナ騒動の先頭に立ち、営業や移動の自由という私権をないがしろにしてきた。土地利用規制法案によって、そのツケが回ってきたのだ。付け焼き刃のように私権擁護を言い出しても、頼りにならない。

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2021-06-11

突然の別れ



新型コロナワクチンの接種直後に急死した人について、TBSが独自取材に基づき報じた。大手メディアでは初めてで、価値ある報道だ。

報道によると、亡くなったのは神戸市に住む73歳の女性。先月28日午後4時半ごろ、かかりつけの病院で夫と一緒にファイザー製のワクチンを接種した。女性は十五年前から糖尿病の持病があったが、当日の体調に特に問題はなかった。

ところが帰宅後、呼吸が一気に荒くなるなど容体が急変。救急搬送で病院に着いた時にはすでに心肺停止状態で、午後8時すぎに死去した。「ワクチンを受けてわずか3時間半あまり、突然の別れでした」と報道は伝える。

死亡した女性の夫は「どこかが調子が悪くてという話であればわかりますけど、何もない状態でほんとうにすぐでしたんで・・・。時間がたつにつれて、もう考えたらそれしかない消去法で言ったらそれしかない」と、死因はワクチンの副作用だと強く疑う。

国内ではワクチン接種後に少なくとも196人が死亡している。副反応を検討する厚生労働省の専門部会は、分析を行った139人について「ワクチンとの因果関係が評価できない」としており、これまで死亡との関連性を認めた例はない。厚労省の資料で、報道された女性とみられる記載の死亡原因は「評価中」となっている。

遺族は死因究明のため、大学病院に詳細な検査を依頼しているという。夫はこう語る。「政府が一生懸命やっているのはよくわかるんですけど・・・。(因果関係を)つまびらかにする必要がある。誰でもかれでも打ちなさいということではないと私は思います」

一方、TBSの報道と同じ6月10日、HPVワクチン薬害訴訟九州原告団・弁護団が福岡で記者会見を開いた

HPVワクチンはいわゆる子宮頸がんワクチンで、国内では2009年に承認。小学6年から高校1年相当の女子を対象とし、13年4月に定期接種になった。しかし全身の痛み、知覚障害、運動障害、記憶障害など深刻な健康被害を訴える声があり、同年6月、厚労省は接種を積極的に勧める「勧奨」をやめた。今月はそれから8年にあたる。

全国弁護団ホームページによると、ある原告の女性はビデオ会議で参加し、こう語った。「仕事や通学ができず、自宅で過ごしている。家族の助けがなければ生活することができず、夢を諦めざるを得なかった。同世代は大学の卒業を控えている。私は日々を生きるので精一杯。私はただ、がんを防ぎたかっただけなのに」

女性は最後に「メディアの皆さんには平等な情報提供をお願いしたい」と訴えた。新型コロナワクチンの報道にもあてはまる言葉だろう。病気の怖さを過剰に煽らず、ワクチンのリスクを隠さず伝える公平な報道が、家族や平穏な日常との「突然の別れ」を避ける助けになる。

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2021-06-10

死と沈黙


三カ月半で139人が死亡する出来事があれば、新聞やテレビは間違いなく、トップニュースとして大々的に報道するはずだ。ところが、新型コロナウイルスワクチンに関してはそうではない。大手メディアには不気味なほどの沈黙が漂っている。

厚生労働省は6月9日、新型コロナウイルスワクチンの接種後の副反応について検討する専門部会を開いた。そこではワクチンに関するさまざまなデータとともに、接種を始めた今年2月17日以来、5月30日までにワクチン副反応の疑いとして報告された死亡事例が139件(いずれもファイザー製ワクチン)あったことが明らかにされた。

大手メディアは日頃、「命は大切」「命を守れ」とあれほど強調しているのだから、何はおいても、この139人の死亡について大きく報じなければならないはずだ。ところが、実際は違った。

そもそも、専門部会の開催について報じた大手メディアが少ない。グーグルで検索した限り、NHK、読売新聞、毎日新聞、時事通信の四社しかない。タイトルを示すと、以下のとおりだ。


しかしこれらの記事も、死亡に注意を喚起してはいない。ワクチンの安全性を強調するようなタイトルばかりだ。NHKと読売は、今回初めて公表されたモデルナ製ワクチン(武田薬品工業が国内販売)の副作用を取り上げ、死亡や重いアレルギー反応のアナフィラキシーがなく、「重大な懸念」は認められないとの厚労省の見解を伝えている。

ファイザー製による139件の死亡については、おおむね記事で触れてはいるものの、「接種との因果関係は情報不足で評価できない」ことから、「重大な懸念は認められない」との厚労省の見解を伝えるにとどまる。

この冷ややかな報じ方は、新型コロナそのものの過熱した報道と比べ、温度差がありすぎる。厚労省が「接種との因果関係は情報不足で評価できない」と言っている以上、決めつけるような報道はよくないという判断からだろうか。そうだとすれば、せめて今後、その「情報不足」をカバーする情報を読者に届けてほしい。

今この瞬間もワクチン接種が全国で続くなか、メディアは接種後の死について口をつぐんでいる。死亡者やその家族の無念が、沈黙のうちに葬り去られるとは思いたくない。

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2021-06-09

陰謀論は便利なレッテル


「陰謀論」とはつくづく安易で便利なレッテルだ。バズフィードジャパンが新型コロナワクチンにまつわる「陰謀論」を批判してみせた、二回にわたる記事を読んで、あらためてそう痛感した。

記事によれば、5月中旬、東京・渋谷でマスクを外した人々が行ったデモは、次のようなメッセージを発していたという。

  • 新型コロナウイルスそのものを否定する言説
  • ワクチンを否定する言説
  • マスクが有害であると主張する言説
  • 緊急事態宣言などの政府の強権的な政策を批判する言説

これに対し、記事は「これらはいずれも誤りだ」と断言する。なぜなら「新型コロナウイルスは確かに存在しているし、ワクチンの高い効果や安全性は治験などで実証されている」。そして「無症状者にも感染性があること、マスクが感染予防に有効であることは、科学的に確認されている」からだという。

しかし、これらの断言は乱暴すぎる。

たとえば、「ワクチンの高い効果や安全性は治験などで実証されている」といっても、それはまさしく事前の治験にすぎない。実際に接種が始まってからワクチンの効果はまだ証明されていないし、安全性についてはむしろ三カ月で八十五件もの死亡事例が報告されている

これらの死亡事例は、ワクチンとの因果関係が証明されたわけではない。それでも接種直後の相次ぐ死は、安全性に疑問符を付けるのに十分すぎる事象だろう。

「マスクが感染予防に有効であることは、科学的に確認されている」というが、それはせいぜい、至近距離で話す場合に飛沫感染を防ぐ効果にすぎない。ウイルスは微小で、市販のマスクの網目など通り抜けてしまうから、空気感染は防げない。

だから少なくとも、一人で道を歩くなど、至近距離で人と話さない状況であれば、マスクをする意味はない。むしろ酸欠や熱中症になる恐れがあるし、同じマスクを何度も使えば不衛生にもなる。したがって、マスクは有害というデモの主張を頭から否定するのはおかしい。

記事では、日本医大の勝俣範之教授(腫瘍内科)がこうコメントする。「ワクチンに対する有害事象をきちんと拾っていくことは大事ですが、因果関係がないことが多いので(中略)すぐにワクチンのせいと思わないようにしたほうが良いでしょう」

勝俣教授は「因果関係がないことが多い」と言い切るが、厚労省の審議会でさえ、八十五件の死亡事例はいずれも、ワクチンと死亡との「因果関係が評価できない」と言っているだけで、「因果関係が認められない」という判断は一つもない。

陰謀論を非難する人々は、陰謀論は非科学的で非論理的だと主張する。けれども往々にして、非科学的で非論理的なのは彼らのほうである。

<参照記事>
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2021-06-08

ワクチン接種後の死


大規模会場まで設置し、新型コロナワクチンの接種が推し進められるなか、ワクチン接種後の突然死に関する情報が伝わってくる。

日刊ゲンダイも報じるように、厚労省の「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」(PDF)によると、医療機関などから報告された死亡事例は、2月17日から5月21日までに計85件。このうち、同部会は5月16日までに報告された55事例の評価を実施し、26日に公表している。

死亡事例は「ワクチンと症状名との因果関係が否定できないもの」「ワクチンと症状名との因果関係が認められないもの」「情報不足等によりワクチンと症状名との因果関係が評価できないもの」の三つに分類されることになっている。今回評価された55事例はいずれも「因果関係が評価できないもの」とされたが、各事例(いずれもファイザー製ワクチン)の詳細は衝撃的だ。

多くは70〜90代の高齢者だが、若者や中年も少なくない。基礎疾患のなかった「26歳の女性」は3月19日午後2時にワクチンを接種。急激なアレルギー症状であるアナフィラキシーや体調変化もみられず、職場で普段通りに勤務していたが、同23日午前11時ごろ、脳出血などで死亡した。

とくに異様なのは、「25歳の男性」の事例だ。男性は医療従事者で、4月23日午後4時にワクチンを接種。27日に出勤した際、事件が起こった。

NEWSポストセブンの記事によると、男性は病院内で、医薬品(KCL=カリウム製剤)を無断で持ち出している行為を発見されて暴れ、取り押さえられた。「顔を確認するが、表情なく、ボーッとして、ブツブツ言っており聞き取れない。(中略)1回見ても本人とはわからないくらい表情が違っていた」という。

迎えに来た両親が車で他の病院の精神科に搬送中、男性は高速道路で家族の制止を振り切って車から飛び降り、後続車にひかれ、その夜、死亡した。

「53歳の女性」は、3月24日に一回目、4月14日に二回目をそれぞれ接種。4月16日早朝、自宅で死亡が確認された。縊死による自殺だった。「(インフルエンザ薬)タミフルによる小児の異常行動等に類する脳・精神への影響があり得るかもしれない」と報告されている。

初めに述べたとおり、ワクチン接種と死亡の因果関係はいずれも「評価できない」、つまり不明とされている。しかし、もともとワクチンと副作用の因果関係は、証明が非常に難しいとされる。

接種直後に亡くなる人が相次いでいるのに、因果関係は不明の一言で片づけられ、接種が国策として推し進められる。背筋の寒くなる思いだ。

<参照記事>

2021-06-06

オランダと寛容の精神

米国で2020年の大統領選以来、社会の分断が加速している。信条や文化の異なる人々が対立せず、調和した社会を築くには、どうすればよいのだろう。

そのヒントは、米最大の都市ニューヨークにゆかりの国、オランダにあるかもしれない。ニューヨークの名は、1664年に英国のヨーク公(のちのジェームズ二世)に占領されたことにちなむが、それ以前はニューアムステルダムというオランダ人の植民地だった。

15世紀末からスペインの支配下にあったネーデルラント(現在のオランダ、ベルギー、ルクセンブルク)では、古くから毛織物業や商業が栄え、南部のフランドル地方のアントウェルペンは国際商業の中心地となっていた。宗教的にはプロテスタントのカルヴァン派が勢力を拡大していた。

16世紀後半、スペインのフェリペ二世がネーデルラントにカトリックを強制し、都市に重税を課したため、貴族が自治権を求めて反抗し、これにカルヴァン派の商工業者が加わって、オランダ独立戦争が始まる。カトリック勢力の強い南部十州(のちのベルギー)は途中で脱落したが、ホラント州など北部七州はユトレヒト同盟を結び、英国の援助を受けて戦い続けた。1581年に独立を宣言し、ネーデルラント連邦共和国(オランダ)を成立させる。

独立戦争の混乱の中で、スペイン軍に封鎖されたアントウェルペンの市場は壊滅した。代わりに、独立した北部のアムステルダムに南部から多数の商工業者が亡命し、その経済活動は劇的に発展する。造船の技術が高かったオランダ人は、バルト海貿易でも優位だった。毛織物工業、陶器業、醸造業などのほか、大規模な干拓によって耕地を拡大した近郊型の農業やニシン漁を中心とした漁業も繁栄した。

オランダといえば、1602年に設立され、アジア貿易を独占した東インド会社が有名だ。しかし意外にも、東インド会社の貢献がオランダの貿易量全体の10%を超えることはなかったという(『リートベルゲン『オランダ小史』)。

スペイン王権の束縛から解放され、自由な経済活動によって他に例を見ない繁栄を築いたオランダの17世紀は「黄金時代」と呼ばれる。

黄金時代を築いたオランダの国制の特徴は、その分裂状態にあった。七つの州があり、それぞれが主権を有していた。七州の中で最も勢力が強かったのはホラント州だったが、他の州に対し強引に自分たちの主張を押しつけられるほど強くはなかった。

オランダには国王がおらず、ホラント州の総督が指導権を発揮することが多かった。とはいえ、総督は給与を支払われる立場にあり、現実にオランダの支配権を握っていたのは各州だった。

オランダには各州の代表からなる連邦議会があった。とはいえ、この議会の権限は弱かった。連邦議会はホラント州のハーグで開催され、対外政策、戦争や和平の宣言のような共和国全体に関する問題を扱ったが、総督がそれに参加することはなかった(玉木俊明『近代ヨーロッパの誕生』)。

オランダはこのように分裂した国家であり、真の中央政府がなかった。これがむしろ経済の発展に寄与した。当時、他の欧州諸国の大半では中央政府が保護主義的な経済政策を採り、貿易や経済の自由な発展を妨げた。地方分権の徹底したオランダは幸い、この弊害を免れることができた。

政治の分権と経済の繁栄を背景に、オランダには独特の自由主義的な文化が広がった。その大きな特色は宗教的寛容である。

オランダはカルヴァン派の国家であり、同派の改革派教会はカトリックに敵対的だったが、それでも宗教的には他国よりもはるかに寛容だった。ユトレヒト同盟結成時に「何人も宗教的理由で迫害されることも、審問されることもない」と決められていたし、経済が急速に発展したため、宗派にこだわっていては取引ができなかった。

オランダ、なかでもアムステルダムは欧州の宗教的寛容の中心だった。このためさまざまな宗派の商人がアムステルダムに移住した。彼らは出身地と緊密な関係を持ち、独自のルートを用いて経済情報を入手した。

商品や国債、東インド会社の株式などを扱うアムステルダム取引所では、プロテスタント商人とカトリック商人、場合によってはユダヤ人、さらにはアルメニア人までもが狭い空間で商業活動に携わった。このような場所は、16〜17世紀はおろか、18世紀になってもどこにも存在しなかった(前掲『近代ヨーロッパの誕生』)。

市民社会の発展したオランダでは、画家たちが宮廷ではなく、裕福な市民のために肖像画や風俗画を描いた。とくに17世紀最大の画家の一人とされるレンブラントの作品は、オランダにおける複数宗派の共存を伝えている。

レンブラント「放蕩息子の帰還」

レンブラントはもともと、神話や聖書の非日常的世界を描くことを画業の目標としていた。そのための素材探しに役立ったのが、国際商業都市アムステルダムの多様な異邦人の存在だった。たとえば、偶然見かけてスケッチしたユダヤ人の姿は、聖書の逸話を描いた「放蕩息子の帰還」の右端の人物の描写に生かされている。

レンブラント「織物組合の見本検査人たち」

レンブラントの集団肖像画の傑作の一つ、「織物組合の見本検査人たち」には、無謀の召使いを除いて五人の組合幹部が描かれている。彼らの所属宗派はすべて判明していて、左からカトリック、メンノー派、カルヴァン派、レモンストラント派、カトリックである。品質管理という組合内で最も重要な責務を分担する同僚たちが、私生活上の宗派の違いを超えて協力し合っていたという現実を、この絵は表している(桜田美津夫『物語 オランダの歴史』)。

オランダは宗教だけでなく、新しい思想についても寛容だった。米歴史学者イマニュエル・ウォーラーステインは、オランダは「哲学者にとっての天国であった」として、こう述べる。

デカルトは、フランスではえられなかった落着きと安定をオランダに見いだした。スピノザは、破門されてセファルディ(スペイン)系ユダヤ人のヨーデンブラー通りから追い立てられ、オランダ人市民の住む、より友好的な地域に引っ越した。ロックもまた、ジェイムズ二世の暴虐を逃れて、オランダ人がイギリスの王位についた、より幸せな時代まで、この地に避難場所を求めた。

ウォーラーステインはオランダの宗教的寛容にも触れたうえで、それらはすべて「禁止は最少に、導入はどこからでも」というオランダ人の商業上の原則をこうむったと指摘している(前掲『近代ヨーロッパの誕生』)。

オランダはその後、ナポレオンによるフランス併合をきっかけに王国となり、現在に至る。首都アムステルダムの広場に面して建つ豪壮な王宮は、共和国時代に市庁舎として建設されたもので、往時の繁栄を今に伝えている。

米国はかつてのオランダ共和国と同じ連邦国家だが、時代とともに中央政府の権限と影響力が強まっている。だから大統領選が過剰なまでに国民の注目を集め、対立の原因にもなる。地方分権を強めることで、人々の自由な経済活動を促し、寛容の精神を育むこと。これが米国に限らず、世界がオランダの歴史から学ぶことのできる教訓ではないだろうか。

<参考文献>
  • ペーター・J・リートベルゲン(肥塚隆訳)『オランダ小史 先史時代から今日まで』かまくら春秋社
  • 玉木俊明『近代ヨーロッパの誕生 オランダからイギリスへ』講談社選書メチエ
  • 桜田 美津夫『物語 オランダの歴史 - 大航海時代から「寛容」国家の現代まで』中公新書
(某月刊誌への匿名寄稿に加筆・修正)

2021-06-05

コロナのパンドラの箱


新型コロナウイルスの起源に関し、陰謀論として否定されていた中国・武漢ウイルス研究所からの流出説が最近にわかに有力視された背景について、米ニューズウィーク、ヴァニティー・フェアの両誌がほぼ同じタイミングで電子版に詳細な記事を掲載し、注目されている。しかし二つの記事を読み比べると、報道のスタンスに大きな違いがあることに気づく。

ニューズウィークの記事(日本語版は前編後編に分かれる)はもっぱら、「DRASTIC(ドラスティック)」と名乗る「素人ネット調査団」の活躍にスポットを当てる。彼らの独自の調査により、いくつかの重要な事実がわかったという。

それらが示唆するところによると、武漢ウイルス研究所は長年、危険な複数のコロナウイルスを収集し、その一部を世界に公表してこなかった。研究所はそれらのウイルスについて、ヒトへの感染力がどの程度か、どのような変異が起きれば感染力がさらに強くなるのかを知るために、遺伝子操作による機能獲得実験を積極的に行っていたという。

このこと自体は興味深い。ところがニューズウィークの記事は、武漢研究所が行っていたという機能獲得実験のスポンサーに関する問題について、ほとんど触れていない。すでに多くのメディアで報じられているとおり、実験には米政府の助成金が注ぎ込まれていた。

ニューズウィークの論調はもともと、他の米主流メディアと同じく、中国を過剰に敵視している。今回の記事もその路線に従い、米国に都合の悪い事実を極力避け、中国への不信感だけを煽るために書かれたように見える。

それに対しヴァニティー・フェアの記事は、ネット調査団の活動にも触れつつ、米国自身の問題に踏み込んでいる。

記事によれば、問題含みのウイルス研究に対して多額の助成金を支給していることが一因となって米政府内に利益相反が生じ、ウイルスの起源に対する調査があらゆる段階で妨害された。

国務省のある会合で、中国政府に透明性を求めようとしている役人たちが話すには、武漢研究所の機能獲得研究について探るなと同僚から釘を刺されている。米政府がその資金を出していることについて、よけいな注目を集めかねないからだという。

国務省のある幹部は、職員宛の内部メモで、コロナウイルスの起源について調査するのはやめるよう「警告」した。もし続ければ「パンドラの箱を開けてしまう(open a can of worms)」からだという。

「Follow the money(金の動きを追え)」という言葉がある。金の動きを追えば、出来事の本質が見えてくるという意味だ。コロナウイルスの起源について、ニューズウィークがほとんど無視した金の動きを、ヴァニティー・フェアはしっかり追い、それによって本質に迫っている。

コロナの起源というパンドラの箱に蓋をすることを許さず、すべての真実が明らかになることを期待したい。

<参照記事>
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2021-06-04

政府高官は嘘をつく


バイデン米大統領の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士が新型コロナウイルスの拡大初期に関係者とやり取りした多数の電子メールの内容が報じられ、衝撃が走っている。

メールは米バズフィード・ニュース、ワシントン・ポストがそれぞれ米情報自由法(FOIA)に基づき要求し、入手した。対象期間は2020年1月から6月。

米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長でもあるファウチはこれまで、新型ウイルスは自然発生したと主張し、中国の武漢ウイルス研究所で作られ、流出したとの説を否定していた。ところがメールの文面から、早い段階で流出がありうると認識していたことが明らかになった。

ファウチは2020年1月31日、免疫学者クリスチャン・アンダーセンからメールを受け取る。アンダーセンと同僚の科学者らの見るところ、ウイルスはもしかすると遺伝子組み換えで生じたかもしれず、研究チームは全員、「ゲノム(全遺伝情報)が進化論の想定に反している」と判断したという。

ファウチは「ありがとう。すぐ電話で話そう」と返信。また、副所長のヒュー・オーチンクロスに「重要」というタイトルでメールを送り、「ヒュー、重要なので午前中に話そう。携帯を切らずにいてくれ。…今日やってもらう仕事がありそうだ」と書いた。

オーチンクロス宛のメールには「バリック、シー他、ネイチャーメディシン、SARS(重症急性呼吸器症候群)機能獲得」と題する文書が添付されていた。中身はわからないが、米免疫学者ラルフ・バリックが、武漢研究所の免疫学者で「バット・ウーマン(コウモリ女)」の異名を持つ石正麗(シー・ジェンリー)と共同執筆した論文とみられている。機能獲得とは、ウイルスの遺伝子を操作して感染力がどう高まるかなどを調べる手法を指す。

こうした経緯があったにもかかわらず、ファウチは最近の議会証言で、新型ウイルスが武漢研究所で生じたとの見方を否定していた。

メール問題を番組で取り上げたFOXニュースのキャスター、タッカー・カールソンは、ファウチの議会証言の映像を流し、「今思えば、ほとんど偽証だ」と批判した

さらにカールソンは、今年4月17日の記者会見でファウチがコロナについて「動物から人への感染(という説)に完全に整合する」と述べた様子を流し、「このとき、ファウチが知っていると言ったことは、確実に知ることはできなかった。それは嘘だった」と一刀両断した。

カールソンは「ファウチは単に、連邦政府のたちの悪い官僚でしかなかった。ひどく政治的で、たいてい不正直だ」と憤る。そのとおり、政府高官はしばしば嘘をつく。

コロナ対策を導く専門家として米国民の尊敬を集め、聖人になぞらえるグッズまで登場したファウチ。自身はメールについて「誤解されている」と弁明し、ホワイトハウスも擁護しているが、いつまで聖人の座にいられるだろうか。

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2021-06-03

中国叩きのブーメラン


新型コロナウイルスの起源に関して、世界保健機関(WHO)は、近く次の調査の検討を始める方針を明らかにした。再調査は、ジュネーブの米国代表部がWHOに要求していた。バイデン米大統領も、中国の研究所から流出した可能性も含めて米情報機関に追加調査を指示している。

もともと新型コロナウイルスの流出説は、トランプ前政権が主張を始めた。トランプ前大統領らが「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼んで中国への敵愾心を煽ったこともあり、主流メディアは陰謀論と決めつけ、バイデン新政権も距離を置いてきた。

ここに来てバイデン政権が流出の可能性に触れたのは、大きな転換だといえる。その背景には、米国世論の関心の高まりがあるとされる。

先月、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、米情報機関の未公開の報告書の内容として、武漢ウイルス研究所の研究者三人が新型コロナの確認前に「病院での治療が必要になるほど体調を崩していた」と報じた。米FOXニュースも、ファウチ大統領首席医療顧問がイベントで「ウイルスが動物を介して人に感染した可能性が高いという人もいるが、他の可能性もある」と発言したと伝えた

これら両メディアはいずれも保守系であり、保守層の間に根強い中国への不信感に火をつけた格好だ。

しかし中国への不信感を煽っているのは、トランプや保守系メディアだけではない。バイデン政権自身、発足以来の短期間で、中国に対し強硬姿勢を示してきた。新疆ウイグル自治区や香港の人権問題、台湾問題などだ。

米国の大統領にとって、中国やロシアに対する強硬姿勢をアピールするのは、軍産複合体の支持を得るのに便利な手段だ。ウイルス流出説にしても、トランプの印象が強いうちは使いにくかったが、そろそろ手の内のカードに加えておこうということかもしれない。

流出説を報じたウォールストリート・ジャーナルのマイケル・ゴードン記者は、ニューヨーク・タイムズ記者時代の2002年、同僚のジュディス・ミラー記者と連名で「イラクのサダム・フセインは原子爆弾の部品調達を急いでいる」という一面トップ記事を書き、当時のブッシュ政権にイラク戦争を始める口実を与えた。記事の情報源は匿名の「情報専門家」だった。しかし結局、核兵器を含む大量破壊兵器はイラクに存在しなかった

今回の流出説報道も、情報源が米情報機関であることといい、バイデン政権の対中強硬策を後押しする形になったことといい、十九年前のイラク戦争の構図と似ている。米情報機関とメディアが裏で手を組んだ可能性は否定できない。

武漢研究所からのウイルス流出が、イラクの大量破壊兵器のように、まったくの嘘かどうかはわからない。しかし本当だとしても、中国叩きにとっては裏目に出るかもしれない。武漢のウイルスは、皮肉なことに、米国民の税金によって育てられた可能性があるからだ。

オバマ政権時代、米国立衛生研究所(NIH)は機能獲得研究と呼ばれる遺伝子操作実験が危険とされたため、武漢研究所に外部委託した。NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長のファウチが委託を推進したとされる。

ファウチは5月11日、上院公聴会で、NIHは武漢での研究に資金提供しているかとのランド・ポール上院議員(共和党、ケンタッキー州)の質問に答え、「資金提供したことはないし、今もしていない」と否定した。ところがその後、武漢研究所は資金使途について嘘をつかなかったかとのジョン・ケネディ上院議員(同、ルイジアナ州)の質問に対し「保証する方法はない」と述べ、資金が研究に使われた可能性を認めた

米国と武漢の奇妙なつながりはこれだけではない。2019年10月末に武漢で行われた世界軍人オリンピックに参加した米軍人がウイルスを持ち込んだとの説もある。

物や人がグローバルに移動し、国を越えた研究活動も行われる現代に、ウイルスの起源を特定の国に結びつけ、政治的な攻撃材料にすること自体、時代錯誤である。米国の政治家や情報機関、メディアが流出説を中国叩きに利用すれば、自分たちにブーメランのように戻ってくるのではないか。

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2021-06-02

戦争はいかがわしい商売


バイデン米大統領は、アーリントン国立墓地でメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)の演説を行った。

ロイターの報道によると、バイデンは「民主主義とは、単なる政府の形態ではなく、存在のよりどころや世界観であり、国民の規範を意味する」と述べた。そのうえで、イラクやアフガニスタンでの最近の紛争で命を落とした七千人を超える人々に触れ、「彼らは民主主義のために生き、そのために亡くなった。われわれは名誉ある死者のためにも、国を完全なものにするために全力で努力する責務がある」と述べた。

政治家らしい美辞麗句だ。けれども米国は本当に、日本も協力したイラク戦争やアフガン戦争で、民主主義(それがすばらしいものだとして)のために戦ったのだろうか。そうは思えない。

ソ連崩壊からまもない1992年3月7日、ニューヨーク・タイムズは「米戦略計画、敵対国の台頭抑止めざす」と題する記事を掲載し、米国防総省の最高幹部間で回覧されていた国防計画指針(DPG)最終草案の内容を明らかにした。草案によれば、冷戦後の世界における米国の政治的・軍事的任務は、唯一の超大国である米国自身に敵対する大国が西欧・アジア・旧ソ連圏で生まれないよう、確実にすることだという。

この誇大妄想的な方針は、ネオコン(新保守主義)の代表的人物の一人で、のちに国防副長官となったポール・ウォルフォウィッツにちなみ、ウォルフォウィッツ・ドクトリンと呼ばれる。これが米政府の方針だったとすれば、米国の兵士たちは民主主義のためではなく、ジャーナリストのケイトリン・ジョンストンが言うように、世界支配のために戦ったことになる。

戦争は金儲けのためでもあった。第一次世界大戦の英雄だった米海兵隊のスメドレー・バトラー将軍は、「戦争はいかがわしい商売だ」と吐き捨てた。その言葉をタイトルとする小冊子で、軍需産業が戦争を利用してぼろ儲けしたことを告発し、民主主義を戦争の大義として掲げる偽善をこう批判する。

ロシアやドイツやイギリスやフランスやイタリアやオーストリアが民主主義のもとにあろうが、君主制のもとにあろうが、米国にどう関係があるのだろうか。彼らがファシストであろうが共産主義者であろうが? われわれの問題は、われわれ自体の民主主義を守ることにあるのではないか。

今なら、バトラー将軍は「ロシアや中国が民主国家だろうが独裁国家だろうが、米国にどう関係があるのだろうか?」と問いかけることだろう。

一方、バイデン大統領はアーリントン墓地での演説で、「民主主義のための闘争は世界中で行われている。それは民主主義と独裁主義との対決であり、尊厳と良識のための戦いでもある」と語ったという。

米国自身の民主主義を守るのであれば、わざわざ海外に出かけて行って戦争をする必要はないはずだ。歯の浮くような言葉で海外派兵を正当化しなければならないのは、バトラー将軍が見抜いたように、戦争が本当は「いかがわしい商売」だからに違いない。

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2021-06-01

危うい民主十字軍


バイデン米大統領は、ジュネーブで6月に開くロシアのプーチン大統領との初の首脳会談で、人権問題を提起する意向を示した。ロシアによる反体制派ナワリヌイ弾圧の問題などを取り上げるらしい。プーチン政権に近いベラルーシのルカシェンコ政権が旅客機を強制着陸させて反政権派を拘束した問題に関しても、会談で懸念を伝える方針という。

また、バイデンは「民主サミット」の開催を目指している。民主主義という「価値観」を共有する国々と協力体制を構築し、中国やロシアに対抗して「民主主義対専制主義」の構図を描く狙いらしい。「民主同盟」といった組織を作ることも念頭にあるようだ。

日本のメディアも「民主主義は善玉、専制主義は悪玉」というわかりやすい構図は大歓迎だ。朝日新聞は「民主連合の価値自覚を」と題する社説で、「北朝鮮と中国に向き合う日米韓の結束の価値はいっそう増す」と書く。善玉は民主主義の日米韓、悪玉は専制主義の北朝鮮と中国というわけだ。

しかし専門家の見るところ、民主主義連盟といった組織の設立はもちろん、民主主義サミットという催しでさえ、実現には問題がある。仲間にしたい国が、文句のない民主主義国とは限らないからだ。民主主義国かどうかは事実上、米国が独断で決めるにしても、困難に直面するのは間違いない。

北大西洋条約機構(NATO)加盟国のうち、少数民族政党を弾圧するトルコのエルドアン政権が、非の打ちどころのない民主主義だとは言いにくいだろう。他のNATO諸国でも、とりわけハンガリーポーランドは、人権抑圧でトルコにさほど劣らない。

アジアでは、日米豪とともに中国を包囲するQuad(クアッド)の一員であるインドのモディ政権が、反イスラム色の強い政策を打ち出し、強権の度合いを強めている。米国が中東で親密な関係を築くサウジアラビアやエジプトは、やはり強権体制で知られる。

米シンクタンク、ケイトー研究所の上級フェロー、テッド・カーペンターは「ロシアと中国に対抗する民主十字軍という考えはきわめて危険」と指摘する。米国の強硬姿勢によってすでに中露との間に大変な緊張が生じている。バイデン政権はこの緊張を和らげなければいけないのに、危機を引き起こしかねない政策を追求したがっている。民主サミットや民主同盟といった計画は「早くやめるほど良い」。

冷静で正しい見方だ。民主主義対専制主義という単純な図式に基づいて国家間の対立を煽ることが、世界の平和に役立つとは思えない。

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