政府が新型コロナウイルス対策として呼びかけるマスク着用、対人距離の確保、事業者の休業・時短、イベント開催の制限・停止、住民の外出自粛、学校の臨時休業、ワクチン接種などはすべて、ある「事実」が前提となっている。
それは、新型コロナに感染しても症状がまったく出ない「無症状感染」の存在だ。発熱や倦怠感、味覚障害といった症状がなくても、コロナに感染しているかもしれない。だから国民の自由を大きく制限する対策や、死亡・重篤化の恐れがほとんどない子供へのワクチン接種までが正当化されるわけだ。
症状がないのに、なぜ感染がわかるかというと、新型コロナにはPCR検査があるからだ。結果が陽性なら、感染とみなされる(それがテレビや新聞で「感染者」として毎日報じられる)。陽性にもかかわらず症状がない場合を、無症状感染と呼んでいる。
しかしこの無症状感染なるもの、その根拠がきわめてあやふやなのだ。それどころか、わざと大げさに演出されたとの見方さえある。
米医療情報サイト、トライアルサイトニュースで、ポール・アレクサンダーという医師が、経済や学校の封鎖を正当化するのに使われた無症状感染について「それは嘘だった」と厳しく批判している。
アレクサンダーはまず、PCR検査の欠陥を指摘する。PCR検査は検体の温度の上げ下げを繰り返すことで、ウイルスの中にあるRNAを増幅し、感染の有無を判断する。増幅の回数をサイクル数(CT値)と呼ぶ。アレクサンダーによれば、実際の感染を検出する適正なCT値は25〜30程度なのに、米国では34〜35かそれ以上とされ、これだと97〜100%が偽陽性(感染していないのに陽性)になってしまうという。
日本でも、国立感染症研究所の検査マニュアルで原則40以内と高く設定され、感染者数が水増しされやすい。
感染判定の基準であるPCR検査に大きな問題がある以上、無症状感染について議論することにどれだけ意味があるのか疑問だ。それはいったん措くとしても、無症状感染を重視することにはやはり問題がある。
アレクサンダーが指摘するように、ホワイトハウスでコロナ対策の責任者を務めるアントニー・ファウチは当初、「歴史上、無症状感染がいくらかあったとしても、集団感染の主因になったことはない。集団感染の主因はつねに、症状のある人だ」と明言した。
ところがファウチはその後、科学的な証拠を示すことなく、主張を正反対に変えた。そして無症状感染のリスクを口実に、ロックダウン(都市封鎖)を正当化し、経済・社会に無用の損失を与えた。
最近公開されたメールのやり取りで、ファウチはやはり、大半の感染は「症状のある人から起こる」もので、「無症状の人からではない」と述べている。
無症状感染を重大な問題と考えることに否定的な見方は、専門家の間で増えている。医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)が昨年12月に掲載した論文によれば、無症状者の感染率は有症状者に比べて3倍から25倍低い。世界保健機関(WHO)も、無症状患者からの感染は「非常にまれ」だと述べている。
アレクサンダーは、もしロックダウンではなく、高齢者に的を絞った対策を最初からしていれば、「これほどの死者は出なかっただろう」と、無症状感染を煽った専門家を批判する。彼はWHOの米州事務局である汎米保健機構(PAHO)や米厚生省でコロナに関する顧問を務めた経験があり、いわゆる反ワクチン論者ではない。それだけに、その告発は重い。
新型コロナが流行し始めた当初、無症状は感染者全体の80%程度と言われていた。だがその後の研究で、実際には17〜20%程度だとわかってきた。しかも前述のように、その感染力は弱い。
無症状感染を恐れる必要がなければ、社会全体の移動や集まりを制限する緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置は、感染対策としてほとんど意味がない。経済・社会へのコストを考慮に入れればむしろ有害だ。それにもかかわらず、この誤った対策が全面解除される見通しは立たない。ひどい話だ。
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