バイデン米大統領は、新型コロナウイルス発生源の解明に向けた追加調査と九十日以内の報告を米情報機関に指示した。動物から人間に感染したか、中国のウイルス研究所から流出したか、二つの可能性があるという。同大統領は情報収集・分析の強化を求めるとともに、中国の協力も訴えた。
中国・武漢の研究所からのウイルス流出説といえば、トランプ前大統領が在職中、早くから唱えていた説だ。当時、トランプに敵対する主流メディアや左派言論人は「陰謀論」と決めつけ、あざ笑った。今になって自分たちの「身内」であるバイデンから、その「陰謀論」を蒸し返されたわけで、皮肉な話だ。
ジャーナリストのグレン・グリーンウォルドは、ツイッターでこう批判した。「大手メディアは一年かけて、中国研究所流出説を非常識な陰謀論に仕立て上げた。検証サイトも嘘だと断言した。その説をほのめかせば、偽情報だとしてオンラインから締め出された。主流メディアは今、その説が本当かもしれないと仕方なく認めている。説明責任はないのか」
トランプ前大統領は武漢研究所流出説に基づき、新型コロナウイルスを「中国ウイルス」「武漢ウイルス」と呼び、中国への敵愾心を煽った。しかし、ことはそう単純ではない。武漢研究所から流出した可能性のあるウイルスの開発には、米国自身が少なくとも間接的に関与していたとみられるからだ。
米国はオバマ大統領時代、国内でのウイルス研究を禁止する方針を打ち出した。米疾病対策センター(CDC)で重大な事故が多発したためだ。このため米国立衛生研究所(NIH)で実施されていたウイルスの研究を、武漢研究所に外部委託することにした。外部委託を積極的に推し進めたのは、NIH傘下の米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長で、現在コロナ対策のトップを務めるアンソニー・ファウチとされる。
最近、武漢研究所で行われていた、コウモリのコロナウイルスを遺伝子的に改変する研究に対しては、ニューヨークの非営利研究機関エコアライアンスを通じ、NIHの連邦助成金六十万ドルの一部があてられていた。その助成金は、米保健福祉省内にある監督委員会(P3CO)の審査を受けていなかったという。
在米ジャーナリストの飯塚真紀子は「審査されなかったために、リスクが見出されることなく交付された連邦助成金で研究が行われ、それが、新型コロナの流出に繋がった可能性もあるのかもしれない」と指摘する。
コロナウイルスの起源は藪の中で、何が本当か軽々に断言できない。一つだけ言えるのは、コロナ問題に限らず、陰謀論を笑ってはいけないということだ。そこには往々にして真実が隠れている。
<関連記事>
0 件のコメント:
コメントを投稿