米ジョンズ・ホプキンス大学の名は、新型コロナウイルス感染の集計値を伝えるニュースで、いつも耳にしているだろう。メリーランド州ボルチモアに本部を置き、医学をはじめ多くのノーベル賞受賞者を輩出。附属のジョンズ・ホプキンス病院は世界で最も優れた病院の一つとして知られる。
ハーバード大学、スタンフォード大学など他の米有名大学と同じく、ジョンズ・ホプキンス大学は私立大学だ。創設者はジョンズ・ホプキンス。十九世紀に活躍した事業家で慈善家である。
メリーランド州のクエーカー教徒の家庭に生まれたホプキンスは、十七歳で早くも商人としての才覚を発揮し、食料品店や雑貨店から始めた事業を次々と成功させる。とくに米最古の鉄道会社の一つ、ボルチモア・アンド・オハイオ鉄道の大株主となり、同社の重役も務めたことで、莫大な富を築いた。
南北戦争中、同州では戦火に加え、黄熱病やコレラの流行で多数の人々が犠牲となった。ホプキンスは医療に関心を深め、遺言で七百万ドル(現在の約一億四千万ドルに相当)を大学と病院の設立資金として寄付する。これが現在に至る大学発展の基礎となった。
十九世紀の米国は、経済活動が自由だった。もしそうでなかったら、ホプキンスは事業で成功できなかったかもしれない。とくに鉄道事業は、人々の移動の自由がなければ成り立たない。ホプキンスが鉄道で巨富を築いていなかったら、ジョンズ・ホプキンス大学は生まれず、医学の発展は遅れていたかもしれない。
同じことは、米国の他の私立大学についても言える。また、米国と違い、大学が国立中心の国でも同じことだ。国立大学の設立・運営資金は税金であり、税金は経済活動が活発でなければ確保できない。
経済が繁栄しなければ、医学は進歩しない。十九世紀の米国は医学が未発達で、人々はしばしば怪我や病気で命を奪われた。米作家ジョン・タムニーによれば、大腿骨を折ると、三人に一人が死亡しただけでなく、命を救うには足を切断しなければならなかった。癌はほとんど死の宣告だったが、癌で死ぬ人は少なかった。結核や肺炎で早死にする人が多かったからだ。新生児が生き残る確率は半分しかなかった。
タムニーは続ける。自由はそれ自体に価値がある。自由は人々を守る重要な情報を提供する。自由な人々の生み出す富がなければ、病でたちまち命を奪われる。それにもかかわらず、政治家たちはコロナに慌てふためき、自由を奪い去った。「未来の歴史家は、2020年に政治家たちがとった絶望的なまでに馬鹿げた行動に驚愕するだろう」
自由の死は、人間の死をもたらす。
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