2021-05-10

中国脅威論の中身


最近、メディアで中国脅威論がかまびすしい。しかしその中身は、米国の立場にあまりにも偏っている。たとえば、脅威論の根拠の一つとされる、アフリカでの影響力拡大だ。

米アフリカ軍のタウンゼンド司令官はAP通信とのインタビューで、中国がアフリカ西海岸に大規模な海軍施設の建設を目指していると警告。「港湾建設、経済拡大、インフラ建設、合意や契約によって将来、さらに密接な関係を築くだろう。中国はアフリカに賭けている」と述べた。

しかし、中国は東海岸のジブチにまだ海軍施設が一つあるだけで、駐留兵士は二千人とみられている。これに対し、米国はアフリカの十七カ国に二十九もの軍事基地があり、六千人以上の兵士を擁する。

元国連大量破壊兵器査察官で評論家のスコット・リッター氏は、ロシア系放送局RTのウェブサイトに寄稿し、軍隊を使ってアフリカにおける経済的・地政学的な利益を守ろうとする中国のやり方は、米軍の手法を見習っているにすぎないと指摘。タウンゼント司令官が中国による基地建設の可能性を心配してみせるのは、「きわめて偽善的」だと批判した

こういう公平な視点による論説は、日本の大手メディアでは見たことがない。

日本のメディアは、中国の「東シナ海や南シナ海での威圧的な海洋活動」(読売新聞)を騒ぎ立てるけれども、米軍だってアジアの海で「威圧的な海洋活動」を行っているし、日本や韓国には軍事基地まである。

米国は同盟国だから、その立場で報道しておけばいいというのでは、国を誤るだろう。

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