新型コロナウイルスの起源に関し、陰謀論として否定されていた中国・武漢ウイルス研究所からの流出説が最近にわかに有力視された背景について、米ニューズウィーク、ヴァニティー・フェアの両誌がほぼ同じタイミングで電子版に詳細な記事を掲載し、注目されている。しかし二つの記事を読み比べると、報道のスタンスに大きな違いがあることに気づく。
ニューズウィークの記事(日本語版は前編と後編に分かれる)はもっぱら、「DRASTIC(ドラスティック)」と名乗る「素人ネット調査団」の活躍にスポットを当てる。彼らの独自の調査により、いくつかの重要な事実がわかったという。
それらが示唆するところによると、武漢ウイルス研究所は長年、危険な複数のコロナウイルスを収集し、その一部を世界に公表してこなかった。研究所はそれらのウイルスについて、ヒトへの感染力がどの程度か、どのような変異が起きれば感染力がさらに強くなるのかを知るために、遺伝子操作による機能獲得実験を積極的に行っていたという。
このこと自体は興味深い。ところがニューズウィークの記事は、武漢研究所が行っていたという機能獲得実験のスポンサーに関する問題について、ほとんど触れていない。すでに多くのメディアで報じられているとおり、実験には米政府の助成金が注ぎ込まれていた。
ニューズウィークの論調はもともと、他の米主流メディアと同じく、中国を過剰に敵視している。今回の記事もその路線に従い、米国に都合の悪い事実を極力避け、中国への不信感だけを煽るために書かれたように見える。
それに対しヴァニティー・フェアの記事は、ネット調査団の活動にも触れつつ、米国自身の問題に踏み込んでいる。
記事によれば、問題含みのウイルス研究に対して多額の助成金を支給していることが一因となって米政府内に利益相反が生じ、ウイルスの起源に対する調査があらゆる段階で妨害された。
国務省のある会合で、中国政府に透明性を求めようとしている役人たちが話すには、武漢研究所の機能獲得研究について探るなと同僚から釘を刺されている。米政府がその資金を出していることについて、よけいな注目を集めかねないからだという。
国務省のある幹部は、職員宛の内部メモで、コロナウイルスの起源について調査するのはやめるよう「警告」した。もし続ければ「パンドラの箱を開けてしまう(open a can of worms)」からだという。
「Follow the money(金の動きを追え)」という言葉がある。金の動きを追えば、出来事の本質が見えてくるという意味だ。コロナウイルスの起源について、ニューズウィークがほとんど無視した金の動きを、ヴァニティー・フェアはしっかり追い、それによって本質に迫っている。
コロナの起源というパンドラの箱に蓋をすることを許さず、すべての真実が明らかになることを期待したい。
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