バイデン米大統領の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ博士が新型コロナウイルスの拡大初期に関係者とやり取りした多数の電子メールの内容が報じられ、衝撃が走っている。
メールは米バズフィード・ニュース、ワシントン・ポストがそれぞれ米情報自由法(FOIA)に基づき要求し、入手した。対象期間は2020年1月から6月。
米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の所長でもあるファウチはこれまで、新型ウイルスは自然発生したと主張し、中国の武漢ウイルス研究所で作られ、流出したとの説を否定していた。ところがメールの文面から、早い段階で流出がありうると認識していたことが明らかになった。
ファウチは2020年1月31日、免疫学者クリスチャン・アンダーセンからメールを受け取る。アンダーセンと同僚の科学者らの見るところ、ウイルスはもしかすると遺伝子組み換えで生じたかもしれず、研究チームは全員、「ゲノム(全遺伝情報)が進化論の想定に反している」と判断したという。
ファウチは「ありがとう。すぐ電話で話そう」と返信。また、副所長のヒュー・オーチンクロスに「重要」というタイトルでメールを送り、「ヒュー、重要なので午前中に話そう。携帯を切らずにいてくれ。…今日やってもらう仕事がありそうだ」と書いた。
オーチンクロス宛のメールには「バリック、シー他、ネイチャーメディシン、SARS(重症急性呼吸器症候群)機能獲得」と題する文書が添付されていた。中身はわからないが、米免疫学者ラルフ・バリックが、武漢研究所の免疫学者で「バット・ウーマン(コウモリ女)」の異名を持つ石正麗(シー・ジェンリー)と共同執筆した論文とみられている。機能獲得とは、ウイルスの遺伝子を操作して感染力がどう高まるかなどを調べる手法を指す。
こうした経緯があったにもかかわらず、ファウチは最近の議会証言で、新型ウイルスが武漢研究所で生じたとの見方を否定していた。
メール問題を番組で取り上げたFOXニュースのキャスター、タッカー・カールソンは、ファウチの議会証言の映像を流し、「今思えば、ほとんど偽証だ」と批判した。
さらにカールソンは、今年4月17日の記者会見でファウチがコロナについて「動物から人への感染(という説)に完全に整合する」と述べた様子を流し、「このとき、ファウチが知っていると言ったことは、確実に知ることはできなかった。それは嘘だった」と一刀両断した。
カールソンは「ファウチは単に、連邦政府のたちの悪い官僚でしかなかった。ひどく政治的で、たいてい不正直だ」と憤る。そのとおり、政府高官はしばしば嘘をつく。
コロナ対策を導く専門家として米国民の尊敬を集め、聖人になぞらえるグッズまで登場したファウチ。自身はメールについて「誤解されている」と弁明し、ホワイトハウスも擁護しているが、いつまで聖人の座にいられるだろうか。
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