2021-06-19

知らなかったの?


新型コロナウイルスのワクチンを打ったら、マスクを外していいのでは。友達と会食もできるのでは。もしかすると、実家に帰省して親と会ってもいいのでは——。ワクチンを打つ人の多くは、こんな希望を抱いていることだろう。しかし残念ながら、その望みはかないそうにない。

ワクチン接種が進むにつれ、各種メディアで接種後の行動に関する特集記事が増えている。けれども、期待して読み始めた読者の表情は、みるみる暗くなることだろう。

NHKの記事では、二人の専門家が疑問に答える。川崎医科大学教授の中野貴司は「接種を受けたとしても、マスクを外していいわけではありません」と断言する。また、会食の際も「マスクを外しての会食は避けるべき」だという。

北里大学特任教授の中山哲夫は帰省について、緊急事態宣言などが解除された前提で、日頃から感染対策に気をつけ、移動中も注意を払い、なおかつ親が接種を終えていれば、「帰省先の実家で食事をともにするくらいは許容範囲」だろうと話す。それだけ厳しい条件をつけておいて、できれば食事も避けてほしいような口ぶりだ。

中山は「マスク着用や密を避けるといった基本的な対策は、この先、2~3年は続ける必要があると考えています」と述べる。

これでは、ワクチンを打つ前と変わらないじゃないか。なぜそうなるのか。川崎医大の中野によれば、「ワクチンを打ったあとも感染するおそれがあり、知らないうちにほかの人に広めてしまうおそれがあるから」だという。

これを聞いて、多くの人は驚くのではないか。だって、知らないうちに広めたくないから打つという殊勝な人も少なくないのだから。けれども専門家に言わせれば、それは「感染」と「発症」の区別がついていない。

中野はこう説明する。ワクチンの効果は、「感染」そのものを防ぐ効果や、感染しても「発症」を防ぐ効果などに分けられる。日本で接種が始まった新型コロナのワクチンは、「発症」を防ぐ効果は高いと考えられるものの、「感染」そのものを防ぐ効果については、まだはっきりわかっていない。

つまりワクチンを打っても、コロナに感染し、他人にうつす恐れは消えないのだ。これは別に隠されていたことではない。専門家からすれば、「知らなかったの?」という話だろう。

驚くことはまだある。北里大の中山によれば、新型コロナのワクチンは臨床研究が始まってから一年もたっておらず、長期的な効果はまだわからない。そのうえ、感染拡大が長引くと、ワクチンが効かない新たな変異ウイルスが現れる恐れもある。

打っても感染を防げないだけでなく、発症を抑える効果さえ長期で続く保証はなく、変異ウイルスには効かないかもしれない。なぜ副作用のリスクを冒してまでそんなワクチンを打たなければならないのか、はなはだ疑問だ。

それにもかかわらず二人の専門家は、どうなったら日常を取り戻せるのかという問いに対し、ワクチンの接種率を上げることだと口をそろえる。

そう、人にとって当然の権利で、憲法でも保障されているはずの自由は、ワクチン接種の人質に取られてしまったのだ。これも最初からわかっていたことだ。知らなかったの?

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