2020-03-29

リスクの最小化

自由な社会が繁栄してきたのは、個人に危機対応のさまざまなやり方を認めたからだ。あるものは成功し、あるものは失敗する。その結果、リスクが最小化される。政府による単一の対応策は、リスク最小化を困難にする。これは馬鹿げたやり方だ。誰にも未来はわからないのだから。
COVID-19: The "Experts" Have No Crystal Ball | Mises Wire

コロナ対策には他にもっと穏健な手段があるのに、政府はなぜ店舗の閉鎖に熱心なのだろう。理由の一つは、法的・政治的コストが安いからだ。店舗閉鎖に対し法的・政治的手段で組織的抵抗を試みる人々はほとんどいない。恐怖は政治家の強力な道具だから、危機を無駄にはしない。
Fear Makes It Easy for Governments to Expand Power | Mises Wire

コロナ感染拡大の下で自主的隔離を行うのはもっともだ。理解できないのは、カリフォルニア州などのように店舗を閉鎖させ、違反には罰金を科すことだ。これでは雇用を増やしたアマゾンも操業できない。インフルエンザと同じく、手洗いとうがいを励行し、人混みを避ければ済む。
The State Has Seized Many New Powers. It Won't Let Go of Them Easily. | Mises Wire

コロナ対策で多くの国が店舗の閉鎖を命じているが、これは大量倒産への道だ。経済の停滞と失業は人命を危うくする。今直面する厳しい選択は、短期間での多くの死と、貧困がもたらす長期間でのさらに多くの死のどちらを選ぶかだ。一刻も早く、普通の企業活動に戻る必要がある。
The Government's Pandemic Strategy Is a Reckless One | Mises Wire

2020-03-27

わかりやすくて単純な答え

あらゆる複雑な問題には、わかりやすくて単純な答えがあるものだ。そしてそれは間違っている。(米ジャーナリスト、H・L・メンケン)
*何でもかんでも一斉一律の自粛要請とか。

政治の目的とは、次々と果てしなく現れる怪物で大衆を怖がらせ、安全を求めさせることに尽きる。怪物のほとんどは張りぼてなのだが。(米ジャーナリスト、H・L・メンケン)
*今日のコロナ騒動を見越したような。
 
善良な政治家というのは、正直な泥棒と同じくらいありえない。(米ジャーナリスト、H・L・メンケン)
*ふだんよからぬことばかり考えている政治家が、非常時に限って立派になるわけがない。

あらゆる選挙は、盗品を前もって売りに出す競り市のようなものである。(米ジャーナリスト、H・L・メンケン)
*当選した政治家は税金を巻き上げ、それを何らかの形で支援者に分け与えるから。

12 Naughty Quotes from H.L. Mencken on Government, Democracy, and Politicians - Foundation for Economic Education

2020-03-26

文明の終わり

アダム・スミスが指摘したように、分業は経済発展のカギである。ところがコロナ対策で、世界中の政府は分業をやめさせようとしている。貿易に依存するアフリカなどには大打撃だ。人間はコロナウイルスを克服できるが、分業なしには生きていけない。それは文明の終わりである。
The End of Civilization? | Mises Wire

コロナウイルス拡大に対する政府の基本姿勢は、最悪のケースを想定して行動することだという。これは政府当局者が直面する誘因に照らせば、完全に論理的である。市民が感染症で死ねば、当局は非難される。けれどもコロナ対策のせいで経済が崩壊しても、責められることはない。
The Costs Are Mounting in this Government-Imposed Economic Collapse | Mises Wire

コロナ対策の各種規制は短期間だと政府は言う。しかしもし長引けば、経済への打撃ははかりしれない。本当の脅威はコロナウイルスそのものよりは、コロナ対策がもたらす多くの倒産や失業である。政府が救済に乗り出せばインフレを招き、貧困と健康状態の悪化をもたらすだろう。
Diseases Are Bad. Government-Forced Shutdowns Are Often Worse. | Mises Wire

コロナウイルス発生に対し中国の官僚は問題の解決より隠蔽を優先した。西側諸国もほめられたものではない。イタリアの社会主義的な医療制度は経済の供給ショックに備えがなく、崩壊した。シンガポールとチェコでは政府が値上げ規制に乗り出し、マスクの供給がほぼなくなった。
We're Learning Why Governments Can't Be Trusted with Health Crises | Mises Wire

2020-03-25

社会主義というウイルス

あるジャーナリストいわく「感染爆発のときには我々はみな社会主義者だ」。ご免こうむりたい。コロナウイルスより悪質な社会主義というウイルスを喜べるわけがない。彼によれば、医療で利益を追求するのは誤りで、政府にすべて任せればより良い医療をタダで享受できるという。
A Virus Worse Than the One from Wuhan - Foundation for Economic Education

コロナウイルスは経済に悪影響を及ぼしうるものの、感染拡大が一時的で経済が強ければ、心配はいらない。ウイルスが制御されれば、経済は立ち直る。問題はリーマンショック以降、政府の銀行・企業救済策で歪んだ経済の構造だ。米政府・中央銀行が直面するのはこの構造問題だ。
COVID-19 Isn’t the True Culprit of the Coming Recession - Foundation for Economic Education

コロナウイルス危機で明らかになったのは、人々の有益な行動を阻む、奇妙で理解しがたい障害の存在だ。医療関係者の州外での活動を禁止する法律、不必要な職業免許、ほとんどあらゆる経済活動を規制する官僚主義。これらの障害を一掃すれば、国民に現金を配るよりずっといい。
Flexibility Is Needed for Economies to Cope With COVID-19, Not $2,000 Checks - Foundation for Economic Education

人が自発的に協力し合う能力は、信じられないほど大きい。大人数の集会を禁じた地域もあるが、純粋に自発的な社会距離拡大は米国中に広がっている。通信技術がそれを助ける。寛容な多数の個人が、高齢者や持病を持つ人に野菜を届ける。コロナ危機を過度に悲観しなくてもいい。
Humanity Is Rising to the Challenge of the Coronavirus - Foundation for Economic Education

値上げ規制の害悪

物価高は不愉快だし不人気だが、それ自体が問題ではない。本当の問題は需要に供給が追いつかないことだ。価格上昇は一時的な苦痛を起こすけれど、メーカーに供給不足を知らせる。一方、「便乗値上げ」の規制は政治家の点数稼ぎにすぎず、品不足とそれに伴う苦しみをもたらす。
Price-Gouging Laws Will Do More Harm Than Good During the Coronavirus Pandemic – Reason.com

政治家が非難する便乗値上げとは、単に供給と需要の結果にすぎない。価格はつねに上下する。米国の多くの州の値上げ規制法には「過度の値上げ」の定義すらない。あいまいな法律は政治家に危険な権力を与える。献金をせず、言うことを聞かない経営者を罰することに利用できる。
Why Price Gouging Laws Are a Bad Idea – Reason.com

ボトムアップを本質とする価格機構は、トップダウンの管理なしに、多数の消費者と生産者の活動を調整できる。「便乗値上げ」規制で値上げが妨げられたら、必需品の不足が長引き、店頭に長蛇の列ができ、配給が行われるだろう。その結果、闇市場、犯罪、暴力がはびこるだろう。
Let Prices Rise to Combat the Coronavirus - Foundation for Economic Education

自発的な取引は、売り手と買い手のどちらも得をすると思うから成立する。買い手が高い値段でも払うのは、それ以上のメリットを期待するからだ。コロナ拡大でトイレットペーパーの需要が高まったのに、値上げが規制されたら、不要不急の分まで買い込む人が増え、品不足になる。
Anti-Gouging Laws Are the Reason There Is a Toilet Paper Shortage | Mises Institute

2020-03-23

小さな政府はどこに

米政府のコロナウイルス対策を受け、NYタイムズは「小さな政府の時代は終わった」と書いた。しかし連邦・州・地方の政府支出は1980年にGDPの32%で、2018年には37%。オバマ政権の経済対策で39%のピークをつけ、その後31%を下回ったことはない。新自由主義なんてどこにもない。
Never Let a Good Crisis Go to Waste | Mises Institute

中国政府のお粗末なコロナ対応は、管理主義、秘密主義、中央集権の弱点を明らかにした。中国経済では価値創造より政府とのコネが物を言い、事業の優先度を決める際に消費者の意向はほとんど無視される。金融緩和政策のせいで、生産力過剰な赤字の工場やゾンビ企業がはびこる。
The Chinese Regime Has Made China's Woes Much Worse | Mises Wire

米国で実施されたコロナ検査がこれまで国民100万人あたり23件なのに対し、韓国は同4000件以上だ。早期発見・隔離の効果で死亡率は0.7%にとどまる。2015年のMERS流行を教訓に改革を行い、非常時には民間で開発された検査方法を政府がほぼただちに認可できるようになっている。
Coronavirus Testing Delays Caused by Red Tape, Bureaucracy and Scorn for Private Companies | Cato Institute

米国でコロナ拡大に対し「パニックにならず冷静に」と呼びかけると、お堅い評論家から叩かれる。催しや会合を完全にやめさせることが本当に必要か。憲法違反ではないか。対策のコストは適正か。過剰反応ではないか。こんな疑問を口にしようものなら、怒りと嘲りの標的になる。
Coronavirus Panic: From Trillion-Dollar Paternalism to "Cash for Bunkers" | Mises Wire

イラク戦争のコスト

イラク侵攻直前の2003年3月16日、チェイニー米副大統領は戦争の費用を1000億ドル、期間を2年と見積もった。17年後の今も費用は膨らみ続けている。米議会予算局の2007年の試算では2.5兆ドル。経済学者スティグリッツらによる2008年の試算では控えめに見ても3兆ドル以上という。
17 Years Later: The Consequences of Invading Iraq - Truthdig

米政府は実質破産している。1兆ドルの財政赤字を抱えるうえ、コロナ対策で1兆ドルの支出を検討中だ。すでに6.4兆ドルも費やした中東での終わりなき不毛な戦争に、さらに税金を浪費するのはやめよう。イラクで米国人がまともな目的もなくこれ以上死ぬ前に、今すぐ撤退しよう。
On Iraq, is Donald J. Trump Morphing Into George W. Bush? | The American Conservative

米軍がイラクから撤退を求められているのに同国にとどまれば、国際法違反なうえ、イラク政府や国民の支持もない状態が続く。非協力的なイラク政府と、間に合わせの爆弾だけでなく今やイランのミサイルでも武装する敵対的なシーア派勢力により、米兵の生命は危機にさらされる。
It’s time to leave Iraq once and for all - The Washington Post

イラク議会が全会一致で米軍の撤退を求めたところ、米政府はこれを拒否。イスラム国(IS)と戦うため、望まれなくてもとどまると返答した。イラクに民主主義を建設するために巨額の資金を投じてきたのに、イラク議会が自分の意に反するや否や、民主主義に興味を失ったようだ。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : A Million Iraqis Asked Us to Leave. We Should Listen.

コロナと政府の失敗

コロナウイルスの危険に関する情報開示や検査体制の遅れは、市場の失敗ではなく、政府の失敗である。中国政府は警告を発しようとした医師を黙らせ、習近平国家主席を擁護した。米国では政府機関のFDAやCDCが、未認可であることを理由に、開発された検査キットの使用を妨げた。
To Kill Markets Is the Worst Possible Plan – The Future of Freedom Foundation

米疾病対策センター(CDC)は新型肺炎を解決できないどころか、解決の妨げとなっている。民間の研究室は長々とした認可手続きを経なければ何もできない。韓国は迅速な検査で早期治療とコロナウイルスの封じ込めに成功し、米国に協力を申し出たが、CDCからはとくに反応がない。
Government Is No Match for the Coronavirus | The American Spectator

米政府の規制のせいでコロナウイルスの検出作業は無駄に数週間も遅れた。連邦政府以外の研究室は当初ウイルス検査の開発が妨げられた。政府機関CDCの検査は判定に2〜7日もかかったうえ不正確。規制緩和で民間に開発を認めたところ、わずか8時間で判定できる方法が開発された。
A Government Monopoly Led to Botched COVID-19 Test Kits, but Private Labs Are Now Saving the Day - Foundation for Economic Education

コロナウイルス危機で消費者がマスクなどの買いだめを始めたら、小売店は値上げしなければならない。そうすれば消費者が本当に必要な量以上に購入するのを防げるし、メーカーが市場への供給を増やす励みにもなる。非常時だからこそ、市場には価格統制ではなく、自由が必要だ。
When demand soars, prices should too - The Boston Globe

経済制裁の非道

米国によるイランへの経済制裁は、コロナ感染の悪影響を加速させている。制裁が人道支援を妨げないというのは形式上は正しくても、実際には米欧の企業や銀行は禁輸違反の危険を恐れ、人道物資の輸出やそれに関する融資を避けている。イラン国民は必須の医薬品を入手できない。
Coronavirus Is Killing Iranians. So Are Trump’s Brutal Sanctions.

形式上、医療品は米国による経済制裁の対象外とされている。それは幻にすぎない。ベネズエラもイランも医療品をたやすくは輸入できない。コロナ流行下の禁輸は戦争犯罪であり人道への罪だ。イランはコロナ対策のアプリを開発したが、グーグルは制裁に配慮し販売中止を決めた。
Why Sanctions During a Pandemic are Cruel - CounterPunch.org

経済制裁という皆殺し政策は、国民と政府を同一視し、政府の罪を理由に国民を罰する。米国の経済制裁によって、イラクが国際市場で原油売却を妨げられた結果、原油価格が高騰し、米国の石油会社を潤した。経済制裁で利益を得るのは、互いに結託した政府と利益団体だけである。
Evil of Sanctions, The | Mises Institute

経済制裁の標的はその国の国民であり、政府ではない。1979年のイラン革命以来、禁輸が続いても、イランの政権は倒れなかった。キューバでも1960年から続く禁輸で政権は倒れずにいる。もちろん貧困の主因は社会主義だが、禁輸はそれを悪化させた。無意味な制裁はもうやめよう。
Trade Sanctions Are Both Immoral and Ineffective | Mises Wire

2020-03-20

便乗値上げは悪くない

災害時の「便乗値上げ」を規制すれば、希少な資源は消費者の購入の意志ではなく、店舗への物理的近さなどに基づいて分配されることになる。ハリケーン時のガソリン価格規制に関する研究によれば、消費者が規制で節約した代金より、待ち時間などの見えないコストが大きかった。
Coronavirus Outbreak: Government Should Not Set Price Controls | National Review

新型コロナに良い点があるとしたら、現代経済の仕組みについてじっくり考えるきっかけになることだろう。経済の繁栄は、専門化した多数の労働者による、調和のとれた日々の活動が生み出す。富とは簡単に作れるものでも、どこかに永久保存されて分配を待っているものでもない。
The Top Economic Takeaway of the Coronavirus Panic – AIER

政府が経済に介入しないまともな世界では、経済の減速は自動修正される。個人が消費に慎重になり、その結果、企業の使える資本が増えるからだ。平時でさえ政府の介入が役に立たないなら、有事にはますます役に立たないのは明らかだ。経済における唯一の不安要因は政府である。
Look Inward Politicians, the Only Economic Insecurity Is Government | RealClearMarkets

マスクなどの高値転売が許せないなら、どのような基準で物を配分すればよいか。必要に応じて? 自分の子に水を分けるなら、それでいい。でも他人の必要の大きさはわかりにくい。水を手に入れるチャンスが、必要の大きさを信じてもらえるかどうか次第だとしたら、なおさらだ。
The Ethics of Price Gouging - Bleeding Heart Libertarians

中国人敵視の誤り

中国が新型コロナの発生源だとしても、中国の人々のせいではなく、地方の医師らの警告を隠した中国政府の責任だ。それなのに国外で中国人や中国系市民が敵視される。彼らは毛沢東の社会主義による飢餓を生き延びた、勤勉な英雄だ。中国と戦争するのでなく、平和を取り結ぼう。
War on China? - LewRockwell

グローバル化で経済の相互依存が強まり、世界は平和になった。新型コロナをきっかけに、中国に製造拠点が偏らないよう見直すのはもっともだが、中国を世界経済から締め出すのは現実的でないし、経済的にも愚かだ。サプライチェーンの見直しは政府でなく企業自身が行うべきだ。
Commentary: Curbing globalization would compound coronavirus damage | Business | northwestgeorgianews.com

新型コロナの脅威は、経済的・政治的利益を得る人々によって誇張されている可能性がある。高齢者や持病のある人は用心するべきだが、似た状況は以前に何度もあった。政府は危機を大げさに言い立て、国民の自由を奪う口実にする。だが危機が去っても、自由を返そうとはしない。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Coronavirus Hoax

米FRBは2008年の金融危機以来、大規模な金融緩和を行い、できることはもうない。新型コロナに対する破れかぶれで無力な試みが示すように、中央銀行は市場原理に基づく金融機構に置き換えなければならない。貨幣の価値、利率、銀行の行動や収益性は市場参加者に決めさせよう。
The Financial System Is Now Totally Dependent on Government Intervention | Mises Institute

経済危機の元凶

中央銀行が無からお金を作り出し社会に供給すると、市場経済では生まれないような活動を生み、偽りの好景気をもたらす。その間、経営資源は非生産的な活動に浪費され、経済を弱める。新型コロナはそれを加速させるだけであって、主因ではない。中央銀行こそ危機の元凶である。
The Coronavirus Won't Be the Cause of the Next Bust, but It Will Make It Worse | Mises Wire

金利はお金の貸し手が負うリスクと不確実性を埋め合わす。マイナス金利は中央銀行・政府の介入なしにはありえない。お金を人に貸して利息まで払う者などいない。文明には貯蓄と生産が必要だ。社会であまりに多くの人が借金し、生産を上回る消費をするとき、文明は壊れていく。
Negative Interest Rates are the Price We Pay for De-Civilization | Mises Wire

新型コロナは工場閉鎖など供給面にショックを及ぼす一方、需要面にも悪影響があり、金融危機を招く恐れがある。だが危機の真の原因は、不十分な預金準備を許容する部分準備制度、過大なリスクを取らせる預金保険、放漫経営につながる金融機関救済といった不適切な政策にある。
The Impotence of Monetary Policy Exposed yet Again | Mises Institute

新型コロナの影響で欧州経済が悪化すれば、イタリアやギリシャの国債格付けは引き下げを迫られるだろう。欧州中央銀行は保有債券に多額の損失が生じ、ユーロの信認は揺らぐ。ドイツや北欧諸国の一部は金を裏付けとする新通貨によって「新ハンザ同盟」を結成するかもしれない。
Could the Coronavirus Be Fatal for the EU? | Mises Wire

政権転覆の末路

NATOがリビア内戦で支援した反乱勢力の多くは、イスラム過激派に牛耳られ、暴力的な人種偏見を抱いていた。NATOはリビアの政府を崩壊させて国を不安定にし、アフリカ系移民が奴隷市場で売られる今の状況を生み出した。米欧主流メディアはNATOと米国の責任に口をつぐんでいる。
Whitewashing the West's Disastrous War in Libya | The American Conservative

米軍は10年以上もソマリアでイスラム過激派アルシャバブなどの武装勢力と戦っているが、米軍自身の監察によれば、東アフリカにおける武装勢力の脅威は衰えない。ブルキナファソ、マリ、ニジェールなど西アフリカはより深刻で、過激組織による暴力は過去2年間で3.5倍に増えた。
Pentagon Map Shows Network of 29 U.S. Bases in Africa

米軍がイランのソレイマニ司令官をテロリストとして殺害する発端となった、イラク軍基地への攻撃。米国はイラン系武装組織カタイブ・ヒズボラの仕業と責めたが、NYタイムズによれば、攻撃したのはカタイブ・ヒズボラではなく、過激派組織「イスラム国」(IS)だった疑いがある。
Lies, Missile Strikes and a Whole Lot of History - Antiwar.com Original

米国防総省は国家安全保障会議で、イラン革命防衛隊のテロ組織指定に反対し、もし国家組織である革命防衛隊をテロ組織に指定すれば、イランが対抗して米軍やCIAの高官をテロリストに指定するのを止められないと主張した。ところが会議の記録が改竄され、言い分は無視された。
How John Bolton and a Phony Script Brought Us to the Brink of War | The American Conservative

価格規制の害悪

危機における自然な価格上昇は、社会の利益を最大化する商品、サービス、資金を確保するのに欠かせない。政府が価格上昇を妨げれば、それは知らず知らずのうちに必需品の不足を生み出していることになる。そうした政府の介入は、人々が新型コロナから身を守るのを困難にする。
Supply and Demand, Hoarding, Price Gouging -- and the Coronavirus, by Veronique de Rugy | Creators Syndicate

新型コロナ拡大でマスクなどの価格が高騰するのは、社会にとって有益だ。過剰な購入や買いだめを抑えるとともに、シャープがマスク生産に参入したように、将来の供給増加を促進するからだ。価格高騰によって利益獲得の公算が高まれば、より多くの新規参入や増産が期待できる。
Coronavirus Anti-“Price Gouging” Madness | Cato @ Liberty

中国は独裁だからコロナ対策が見事だと言われる。それは間違いだ。迅速で強制的な行動が誤った情報に基づいていたり、人の生命や自由を尊重しなかったりすれば、悲惨そのものだ。分権的な意思決定は中央集権に勝る。情報収集にも地域の状況に応じた行動にもたけているからだ。
No, Authoritarian Governments Do Not Outperform "Open Societies" in a Crisis | Mises Institute

政府の権限拡大はたいてい、危機とそれへの対応に由来する。臨時の危機対策は危機が去ってもなくならず、恒久的な政策となる。新型コロナの感染拡大により、政府は移動と集会への規制を強めるだろう。そしてウイルスの危険が過ぎ去った後も、規制を残し、利用し続けるだろう。
Coronacrisis and Leviathan | Mises Institute

2020-03-14

コロナ以上の脅威

新型コロナとの戦いは、中国が監視とデータ収集の力を総動員するのに絶好の口実となった。問題はその後だ。伝染病が治まったとき、中国政府は新たに得た力を引っ込めるだろうか。歴史の教訓は明らかだ。どんな政府もいったん権力の拡大を認めたら、押し戻すのは不可能に近い。
Coronavirus vs. the Mass Surveillance State: Which Poses the Greater Threat? – The Future of Freedom Foundation

米政府は国民の健康を守るために、人をその意志に反して監禁することが認められるか。認められる。ただし憲法は法の適正な手続を求めている。つまり政府は、監禁されるあらゆる人のために裁判を開き、本人が感染し、他人への感染が差し迫っている証拠を示さなければならない。
Can the American government forcibly quarantine to protect the public from the coronavirus? - Washington Times

イタリアの医療は税金で賄われ無料だが、大病院だと診察までに数カ月も待たされ、病院数は減少を続けている。一方、韓国の医療は世界有数の自由市場だ。私立病院が急増し、1000人あたりベッド数は10とOECD平均の2倍以上。イタリアの3倍近い。医療価格は米国より30〜85%安い。
Markets vs. Socialism: Why South Korean Healthcare Is Outperforming Italy with COVID-19 | Mises Wire

カナダの医療はすべて税金で賄われ、患者の自己負担が一切ない。その代わり、治療を受けるのに時間がかかる。ローラという白血病の少女は、骨髄を提供するドナーが多く見つかったのに、病院から移植手術は1カ月に5件しかできないと言われた。ローラは待っているうちに死んだ。
Socialism Always Fails | Mises Wire

2020-03-13

在宅教育の大実験

新型コロナは在宅教育の意図しない大実験につながりそう。オンライン教育とともに注目されるのは、住宅を使う対面のマイクロスクール。生徒は複数年齢で、一度に最大でも8〜12人だ。プレンダ(Prenda)は米アリゾナ州で80校以上(生徒数約550人)を展開。州外進出も計画中だ。
Coronavirus May Lead to “Mass Homeschooling” - Foundation for Economic Education

ナイジェリアのラゴス州には1万4000校の安価な私立学校があり212万人の子供が通う。幼稚園児・小学生の70%だ。インドでも都市部で少なくとも70%、農村部で30%の子供が私立校に通い、その比率は年々高まっている。同国では9200万人の子供が45万校の低価格私立校に通っている。
Low-Cost Private Schools Are Revolutionizing Education for Millions of Children in Developing Nations - Foundation for Economic Education

19世紀半ばまで教育は幅広く多様で、画一的な学校教育が中心ではなかった。在宅教育が一般的だったが、それだけではない。米国の植民地・革命時代には、小さな「おばさん塾」や近所の台所を使った幼稚園が普通だった。家庭教師や徒弟奉公も盛んで、識字率はきわめて高かった。
Coronavirus Reminds Us What Education Without Schooling Can Look Like - Foundation for Economic Education

政府の補助がなければ貧しい子供は学校に行けないという主張がかりに本当だとしても、政府自身が学校を運営する必要はない。資金を提供し、私立学校への通学や在宅教育を可能にすればよい。公立学校とは、低所得者向け食費補助をやめ、政府が食料品店を経営するようなものだ。
Abolish Government Schools | Mises Wire

2020-03-12

中央銀行は社会主義

中央銀行は社会主義だ。社会主義経済の本質は政府による経営資源の配分である。その手段は、工場などの生産手段を直接支配するか、価格を固定するかだ。中銀は金利の操作でお金の価格を固定しようとする。それは金利が投資家に発するシグナルをゆがめ、偽りの好況をもたらす。
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Central Banking is Socialism

新型コロナによる経済の供給ショックは、利下げや財政出動という需要サイドの政策では解決できない。バブルに油を注ぎ、GDPを人為的に膨らませるだけだ。中期では新たな経済危機を招くだろう。2009年、ユーロ圏では債務危機に対し大規模な財政支出を行い、危機拡大を招いた。
The Fed Panicked, and Its Rate Cut Is Making the Economy Worse | Mises Wire

新型コロナは、英国のEU離脱や貿易戦争と同じように、楽観的な経済成長見通しを下方修正する口実に利用されるだろう。すでに2019年10〜12月から欧州や日本、中国の経済は悪化していた。政府はウイルスという外敵を非難し、借金による支出拡大を景気対策として売り込むだろう。
Governments Are Using the Coronavirus to Distract From Their Own Failures | Mises Wire

新型コロナへの対応で金融緩和や財政支出より望ましいのは、税金・関税をはじめ商業・貿易に対する障害を今すぐ取り払うことだ。マスクなど必需品の値段は、便乗値上げなどと非難せず、上昇を認めなければならない。そうすれば利益の最も高い分野で生産が増え、需要を満たす。
Economic Policy Must Prepare for Pandemic Disease – AIER

国防予算の闇

米会計検査院によれば、国防総省は深刻な財務管理上の問題がある。昨年度は不完全な監査でも1300件以上の新たな問題が明らかになった。それでも同省は支出を大幅に増やした。24省庁のうち国防総省と住宅都市開発省だけが、浪費の調査以前に、資金使徒の確認さえできなかった。
The National Debt Is ‘Unsustainable’ and the Pentagon’s Finances Are a Total Mess, Federal Audit Says – Reason.com

米国の国防予算は、国防総省以外に振り分けられた分を合わせた実質値では1.21兆ドルで、公表値の2倍に達する。エネルギー省管轄の核兵器開発のように、多くは無駄遣いが指摘される。より多くの税金を国防に注ぎ込めと主張される一方で、国内インフラなどには予算が回らない。
Tomgram: Mandy Smithberger, Letting the Pentagon Loose With Your Tax Dollars | TomDispatch

歴史上最も高額な戦闘機であるF35は、製造元のロッキード・マーチンによれば、45の州で12.5万人の雇用を生んだとされる。実際に生まれた雇用はその半分未満だ。そのうち半分以上はカリフォルニア、テキサスの両州に偏っており、実のところ、雇用の多くは海外で生まれている。
Trump Is Trying to Ride the Pentagon Gravy Train to Reelection | Mises Wire

財政赤字の削減は誤った政策になりかねない。経済にとって重要なのは財政赤字の規模ではなく、政府支出の規模だ。政府が3兆ドルの支出を計画し、税で2兆ドルを賄えば、1兆ドル足りない。その分は他の方法で調達しなければならない。国債、通貨の増刷、新たな課税のどれかだ。
How Government Spending Destroys Wealth | Mises Wire

2020-03-10

監視社会のコスト

エドワード・スノーデン氏が暴露したように、米国家安全保障局(NSA) は米国民の電話通話に関するメタデータ(通話開始時刻、通話時間、電話番号)を収集している。2015年から2019年には1億ドルもの税金を費やしたにもかかわらず、役に立つ情報はほとんど提供できなかった。
The Costs of Spying - The Atlantic

ジニ係数など所得の不平等を測る尺度の多くは、特定の時点を対象としており、個人の人生における所得の変化を調べない。上位1%の金持ちに関する議論は、所得が一生変わらないことを暗黙の前提としている。地位で所得が決まる封建社会はそうでも、市場経済には当てはまらない。
Decrying Income Inequality Is a Tactic to Gain More Power for Government – AIER

NY市は3月1日からスーパーなどでプラ製レジ袋の提供を禁止した。だがプラ製のレジ袋や包みが市のゴミ全体に占める割合は1%弱でしかないし、プラスチックのごく一部にすぎない。5セントで買う紙袋は4回使わないとプラより環境負荷が軽くならないのに、たいてい使い捨てられる。
The Useless Ban the Useful - LewRockwell

警察の言い分によれば、街中に多数のカメラを設置し、車のナンバーを読み取ることで誘拐、車泥棒、テロ、殺人容疑者などに対応できるという。たしかに市民の安全は良いことだ。しかしそのコストはいくらなのか。個人の自由はどれだけ犠牲になるのか。憲法に脅威とならないか。
Big Brother grows alarmingly bigger - Washington Times

核戦争の危機

1962年のキューバ危機以来の核戦争の危機は、1983年、NATOが行った大演習「エイブルアーチャー(有能な射手)作戦」である。演習のふりをした先制攻撃かとソ連が疑い、核戦争の寸前まで行った。今年、NATOが準備中の演習「ディフェンダー2020」は同様の危機を招く恐れがある。
Threat of a US and Russian Nuclear War Is Now at Its Greatest Since 1983 - Antiwar.com Original

米国がロシアの脅威を煽る背景はカネだ。非営利団体NATO委員会は、1990年代に防衛大手企業ロッキード・マーチンの副社長、ブルース・ジャクソンがNATOの東方拡大を目指して創設した。2014年のクリミア危機で、米軍事産業は探し求めていた新たなロシアの脅威を大喜びで祝った。
The New Cold War With Russia Is All America’s Fault - Antiwar.com Original

米国はベトナムにきわめて重要な利益などなかったし、ベトナムの未来はその国民に任せるのが最善だった。ジョンソン大統領と側近たちにそれがわかっていたら、ベトナム戦争の悲劇は避けられただろう。今の中東での軍事介入も同じだ。中東の未来はその住民たちに委ねるべきだ。
Gene Genovese and Our Criminally Reckless Wars | The American Conservative

英名誉革命後、1689年の権利の章典は「議会の同意なしに、平時に常備軍を徴募し、維持することは法に反する」と明記した。革命で追放されたジェームズ2世の常備軍は、市民への攻撃に使われるのではないかと懸念されていた。後に常備軍を巡る意見対立でホイッグ党は分裂する。
Writings on Standing Armies | Liberty Fund

2020-03-09

アフガン戦争の教訓

長く不毛なアフガン戦争の教訓は明らかだ。すなわち、米軍の正しい使命は抑止と防衛である。もう二度と、自分好みの政治秩序を打ち立てるというあいまいな期待に基づいて、はるか遠くの国の政権を転覆することを、米軍の目的にしてはならない。それは終わりなき戦争への道だ。
Op-Ed: The American defeat in Afghanistan - Los Angeles Times

アフガニスタンのような広大で人口の少ない国を制圧するのはたやすくても、占領を何年も続けるのは別の話だ。ラムズフェルド、チェイニーらブッシュ政権の高官たちはアフガン制圧を急ぐあまり、占領のコストと困難を安く見積もりすぎた。その結果、勝てない戦争に身を投じた。
Afghanistan: Imagine There's No Future - Antiwar.com Original

米連邦政府は23兆ドルもの債務を抱える。福祉給付は予算をすべて食いつぶすだろう。アフガン戦争という徒労に注ぎ込む金はない。タカ派はこのコストを正当化しようと、かつては民主主義を世界に広めると言い、今は国際的混乱を食い止めると主張する。だがもう国民は信じない。
What We've Lost in Afghanistan | The American Conservative

米軍はアフガニスタンからもっと早く、むしろただちに、全面撤退するのが望ましい。介入主義の権力層が、敗れた戦争から急に撤退するのは非効率で危険だと不平を言っても、信用してはならない。占領を永遠に続けるためのごまかしにすぎない。進軍したなら、撤退だってできる。
Happy Afghanistan Surrender Day! - Antiwar.com Original

2020-03-08

正戦の条件(トマス・アクィナス)

中世の神学者トマス・アクィナスは戦争が正義にかなうための3条件を論じた。⑴君主は宣戦布告の正しい権限を有するか⑵損害の回復という正しい理由を有するか⑶善の推進または悪の回避という正しい意図を有するか—。これらはめったに満たされることのない厳しい条件である。
St. Thomas Aquinas discusses the three conditions for a just war (1265-74) - Online Library of Liberty

米社会学者サムナーは米国のスペインに対する戦争(米西戦争)を批判し、絶え間ない戦争、借金、課税、外交、大規模な政府制度、高慢な振る舞い、栄光、大きな陸海軍、浪費、汚職は、米国が意図したものとは正反対の結果をもたらすだろうと予言した。すなわち帝国主義である。
William Graham Sumner denounced America’s war against Spain and thought that “war, debt, taxation, diplomacy, a grand governmental system, pomp, glory, a big army and navy, lavish expenditures, political jobbery” would result in imperialsm (1898) - Online Library of Liberty

経済学者ミーゼスは、現代の戦争は限定戦争の時代に発展した国際法のルールからはるかに遠ざかったと嘆いた。妊婦や幼児にも情け容赦なく、無差別に殺害し破壊する。中立の権利を尊重しない。何百万人もが殺され、収容され、先祖の代から何百年も住んだ土地から追い出される。
Ludwig von Mises laments the passing of the Age of Limited Warfare and the coming of Mass Destruction in the Age of Statism and Conquest (1949) - Online Library of Liberty

米社会学者ロバート・ニスベットによれば、もし米建国の父たちが現代の米国を見たら、衝撃を受けるに違いないものが二つある。一つは、信じられないほど巨大な規模の軍事施設。もう一つは、怪物のように肥大し、州、都市、町の問題や個人の生活に介入する、中央政府の存在だ。
Robert Nisbet on the Shock the Founding Fathers would feel if they could see the current size of the Military Establishment and the National Government (1988) - Online Library of Liberty

2020-03-07

リヒテンシュタインの成功

リヒテンシュタインには11の村があり、それぞれ人口は400〜6000人である。村の自治権は強く、独自の法を制定し、税を課すことができる。各村には直接民主制が導入され、村民の5%の署名で住民投票が実施される。2003年の憲法改正で、すべての村に分離独立の権利が与えられた。
Why Liechtenstein Works: Self-Determination and Market Governance | Mises Wire

リヒテンシュタインは2度の世界大戦中、常備軍を持たない原則を貫いた。元首ヨーハン2世は第1次大戦中、オーストリア支援へ軍隊の復活を求める一部国民の圧力に抵抗した。強い親オーストリア世論やリヒテンシュタイン家とオーストリアの歴史的つながりからは驚くべきことだ。
Freedom and Prosperity in Liechtenstein: A Hoppean Analysis | Mises Institute

中世にフィレンツェとベニスが繁栄した当時、人口はそれぞれ7万人と11万5000人だけだった。海の交易路に恵まれ、小国のハンデを貿易で補った。現代のカリブ海の国バルバドスは人口30万人だが、経済は栄え、政治は安定し、子供はほぼ全員が高校まで卒業し、寿命は米国並みだ。
Is Iceland Too Small? An Icelander Says No. | Mises Institute

歴史上、小国が大国の侵略を防ぐためにとった手段は、一時的な連合や相互防衛である。たんに防衛条約・連盟・同盟を結ぶだけで、十分な抑止力になることもある。大国にとって多数の小国を征服するのは、ただでさえ難しい。小国が協力して自衛にあたれば、さらに手強いだろう。
Small Is Better: A Review of Human Scale Revisited | Mises Institute

軍事型社会という現実(スペンサー)

英社会学者スペンサーによれば、平和な取引に基づく産業型社会では、国家による行政は存在しないか極度に分権化される。一方、暴力に基づく軍事型社会では、国家による義務教育、国家が設立する教会、国家による広範な産業規制などが特徴となる。これは19世期末の現実だった。
Herbert Spencer argued that in a militant type of society the state would become more centralised and administrative, as compulsory education clearly showed (1882) - Online Library of Liberty

英著作家ジョン・トレンチャードは古代ローマの歴史に詳しく、大規模な常備軍が将軍や政治家に利用され、市民を脅迫し、隷属させることを恐れた。トレンチャードによれば、たとえ良い君主であっても軍を利用する誘惑は残るし、常備軍が廃止されない限り、その誘惑は消えない。
Trenchard on the dangers posed by a standing army (1698) - Online Library of Liberty

米建国の父マディソンによれば、戦争の発生率を下げるには、国債を発行して将来の世代に戦争の費用をツケ回しするのではなく、現在の国民がすべての戦費をただちに払うようにすればよい。現在の世代が戦争の費用を本当に知っていれば、開戦を抑制し、戦争の発生率が低くなる。
James Madison on the need for the people to declare war and for each generation, not future generations, to bear the costs of the wars they fight (1792) - Online Library of Liberty

英法学者ダイシーは早くも1905年に、増税と政府支出の拡大を主張する左翼の台頭を警戒した。かつては国外における平和と、国内における政府の規模・費用の縮小とが結びついていたのに、それが放棄された。あらゆる増税は個人の財産権と自由の縮小であるとダイシーは指摘した。
A.V. Dicey noted that a key change in public thinking during the 19thC was the move away from the early close association between “peace and retrenchment” in the size of the government (1905) - Online Library of Liberty

2020-03-06

徴兵という圧制(ジェファーソン)

米建国の父ジェファーソンは独立戦争の戦況が思わしくない時期でさえ、徴兵に反対し、徴兵は人民にとって「最も望まない圧制」だと述べた。国家の存続よりも個人の自由を重んじたからだ。徴兵される者にとっては、王制だろうと他の政府だろうと徴兵は徴兵であり、虐待である。
Thomas Jefferson on the Draft as "the last of all oppressions" (1777) - Online Library of Liberty

米建国の父マディソンによれば、宣戦布告とは事実上、平時における法の運用をすべて停止することであり、行政府の権限を大きく踏み外している。行政府の役割とは、立法府が認めた法を執行することだからだ。マディソンは、剣(行政府)と財布(立法府)を分けるよう強調した。
James Madison on the necessity of separating the power of “the sword from the purse” (1793) - Online Library of Liberty

米建国の父ハミルトンは、軍隊が市民よりも重要になると自由にとって脅威になると警告した。戦争が常態化すると、国家は戦争国家に変容する。財政への需要が莫大になり、人民は兵役に心身をすり減らす。権利が侵害され、軍隊を防衛の手段でなく服従の対象とみなすようになる。
Alexander Hamilton warns of the danger to civil society and liberty from a standing army since “the military state becomes elevated above the civil” (1787) - Online Library of Liberty

アダム・スミスは『国富論』で戦争について述べた。英本国の市民は戦地から遠く離れているため戦闘を直接経験せず、報道で国家の栄えある勝利を楽しむ。政府が戦費調達で大幅な増税を避けて国債に頼るため、増税は国債の利払い分にとどまり、戦争の真のコストを知らされない。
Adam Smith observes that the true costs of war remain hidden from the taxpayers because they are sheltered in the metropole far from the fighting and instead of increasing taxes the government pays for the war by increasing the national debt (1776) - Online Library of Liberty

2020-03-05

私立都市の構想

民間企業が防犯、法制度、独立した紛争解決などの政府サービスを供給する「私立都市」を構想してみよう。市民は契約で定めた年間手数料を支払う。政府サービス会社はこの契約を事後に一方的に変更してはならない。課税で成り立つ旧来の制度と違い、サービスと対価が直結する。
Private Cities: A Model for a Truly Free Society? | Mises Wire

民間企業が公的サービスを供給する「私立都市」は周りの地域に経済的な成長と価値をもたらす。これは周囲の国が都市への侵略を思いとどまる要因になる。軍事介入はライバル国にも介入の口実を与えるから、大国でも好き勝手に小国を占拠できない。現実に世界はそうなっている。
Can Free Private Cities Replace the State? | Mises Wire

リヒテンシュタインはかつてドイツ連邦の一員だったが、プロイセンを盟主とする帝国化に反対し独立した。ドイツにその後起こったのは戦争や革命、ホロコースト、東西分断だ。リヒテンシュタインは戦争も革命もなく、今や1人あたり所得でドイツを大きく上回り、犯罪も少ない。
What We can Learn from Liechtenstein | Mises Wire

法学者フランシス・バックリーによれば、フィンランドなど北欧の小国が豊かで国民が健康なのは、社会主義のおかげではなく、人口が少なく、社会の結束力が強いからだ。小国のほうが幸福だし腐敗も少ない。大国にメリットはあっても、コストが上回る。大きいことは悪いことだ。
Small Countries Are Better: They're Often Richer and Safer Than Big Countries | Mises Wire

2020-03-04

キューバ医療の幻想

キューバの識字率は1950/53年から2000年までに26%上昇したとされる。だがパラグアイでは37%も上昇している。キューバの公式統計で平均余命は1960年から2017年までに25%伸びたという。しかしメキシコでは35%、ドミニカ共和国では43%、貧困に陥ったハイチですら51%伸びている。
Senator Sanders Is Wrong on Cuban Education and Healthcare | Cato @ Liberty

キューバではカストロが社会主義革命を起こす前から、医療制度は整っていた。貧困層は無料で治療を受けることもしばしばだった。最近では医療と余命の改善が乏しい。首都ハバナでは病院が文字どおり崩れ落ち、患者は必要品を持参することもある。枕もシーツも薬もないからだ。
No, Fidel Castro Didn't Improve Health Care or Education in Cuba - Foundation for Economic Education

米国における社会主義の典型は安全保障国家である。北朝鮮やキューバと同じく戦後の米国は安全保障国家だ。国防総省、CIA、国家安全保障局は官僚が運営し、自由経済とは無縁。社会主義国におなじみの侵略戦争、クーデター、暗殺の支援、拷問がまかり通るのも不思議ではない。
Socialism in America – The Future of Freedom Foundation

政治家は何もしないほうが良いときでさえ、積極的に行動したがる。人を幸福にする道筋に反して行動する動機がある。政府支出の拡大は、経済成長を阻害しようと、目立ちやすいから選ばれる。海外での軍事介入は、事態を悪化させるかもしれなくても、目立ちやすいから選ばれる。
Enough of this Idea of Presidential Greatness – AIER

2020-03-03

ウイルスより怖いもの

コロナウイルスに対する政治的なスタンドプレーと「緊急対策」は、ウイルスそのものよりも多くの人々の命を奪うだろう。あらゆる「緊急対策」は経済活動の停滞というコストを押しつける。移動とビジネスの規制は物価高と失業をもたらし、感染時に医者にかかるのを困難にする。
The Politics of Panic are Far Deadlier Than the Coronavirus | The William Lloyd Garrison Center for Libertarian Advocacy Journalism

無政府社会では、危険なウイルスの感染者は、不動産の所有者が立ち入りを拒否する。もしある教会がこの感染者を受け入れたいなら、それは自由だ。無政府社会における隔離とは、不動産所有者の大半から進入を拒まれ、治療施設以外に行き場がなくなることを意味するにすぎない。
How the Free Market Would Handle Quarantines | Mises Institute

中国などの「国家資本主義」の台頭を恐れ、自由競争の国でも政府による統制経済を取り入れようという意見がある。コロナウイルス感染症に対する中国政府のお粗末な対応を見れば、そうした心配が無用とわかるだろう。社会主義に対抗するために自分も社会主義になる必要はない。
Three Cheers for the Coronavirus??? - Econlib

映画『パラサイト』の最大の矛盾は、貧しい人々が、邪悪で高慢で愚かな金持ちに煮えたぎるような憎しみを抱いているという物語だ。もしそれが本当なら、なぜ大金持ちのひしめくソウルが多くの貧困層を引きつけるのか。金持ちの住む土地は、貧しい人々にチャンスを与えるのだ。
“Parasite” Is a Preposterous Film Rooted in Class-Struggle Nonsense – AIER

2020-03-02

権力肥大の乳母(マディソン)

米建国の父マディソンは、大統領が議会に諮ることなく宣戦布告する権限を持つことを強く警戒した。マディソンは、合衆国憲法で最も思慮深い条項は、戦争開始の判断を行政府ではなく、立法府に委ねている部分だと指摘。戦争は国家権力を肥大させる「忠実な乳母」だと警告した。
Madison argued that war is the major way by which the executive office increases its power, patronage, and taxing power (1793) - Online Library of Liberty

米建国の父ジェファーソンは戦争好きな英国を、牛のように大きくなろうとして破裂するイソップ物語の蛙にたとえた。戦争と債務から成る英国の帝国組織は巨大すぎて破裂し、虐げられた国民は王侯の統治を脱し、より安上がりな共和政府の下、労働の成果を平和に楽しむと考えた。
The 8th Day of Christmas: Jefferson on the inevitability of revolution in England only after which there will be peace on earth (1817) - Online Library of Liberty

英経済学者ジェームズ・ミルは、国富創造に対する商業の貢献を強く擁護した。ナポレオン戦争のさなか、戦争は庶民に悲惨な経済的影響を及ぼすと批判。戦争による出費と経済停滞を、国の繁栄を枯らす「疫病をもたらす風」や、国の貯蓄を食い尽くす「むさぼる悪魔」にたとえた。
James Mill likens the expence and economic stagnation brought about by war to a “pestilential wind” which ravages the country (1808) - Online Library of Liberty

英政治家で自由主義者のジョン・ブライトは1854年、ロシアとのクリミア戦争に反対したが、四半世紀後の1878年、またもや英国内で対露開戦論が起こり、これにも反対した。ブライトは英外務省が昔から絶え間なく戦争を煽り、マスコミが好戦的な一派に牛耳られていると批判した。
John Bright denounces the power of the war party in England (1878) - Online Library of Liberty

2020-03-01

宋と都市の時代

中国の南東部に位置する、江西省・景徳鎮。千年以上の歴史を持つ、陶磁器の都である。この街が米中摩擦で大きな打撃を受けている。2019年6月25日に放送されたテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」によると、ある陶磁器メーカーでは、米国が前月、中国から輸入する陶磁製品の一部に対する関税を10%から25%に引き上げたことで、売り上げが約3割落ち込んだという。

景徳鎮は宋の時代に新しく興った都市である。以前は昌南鎮と呼ばれていたが、景徳年間(1004~1007年)に年号にちなんで景徳鎮と改称された。

ところで、景徳鎮の「鎮」は何に由来するか、ご存じだろうか。それは宋代の新興都市を指す「鎮市」である。この言葉は、宋代が中国史上、画期的な「都市の時代」だったことの名残である。大小多数の都市が、宋に空前の経済繁栄をもたらした。

中国の古代都市は、その多くが政治的理由から建設された。政府は都市の管理機能を維持するため、経済活動に対し、しばしば厳しい統制を行った。後述するように、唐の都・長安で、商人が決められた市場でのみ交易を許されたり、夜間の外出が禁止されたりしたことはその例だ。

これに対し、唐の滅亡後、五代十国の時代を経て全国を統一した宋(北宋)は、今の河南省に位置する開封に都を置いた。開封は周囲が平坦で攻められやすく守りにくい地勢のため、宋代以前には、ここに統一王朝の都が置かれたことはなかった。

しかし唐代中期以降、経済の中心が南の江南一帯に移ると、開封は大運河に面し、水上輸送の中枢であったため、経済的地位が大きく向上する。北宋を建てた太祖・趙匡胤は、地勢の険しい長安を放棄し、開封を国の首都とすることで、中央政府に十分な財政を確保しようとした。

著者 : 杭侃
創元社
発売日 : 2006-03-01

開封は、宮城と皇城(官庁街)からなる大内、その外側の内城(旧城)、一周26㎞あまりの外城(新城)という三重の城壁で囲まれた城郭都市に成長する。人口は最大で150万人にも達した。各城壁の周囲には運河兼用の堀が巡らされ、これらは城内を横断する汴河(べんが)や、城内に引き込まれたいくつかの小河と機能的に連結されていた。こうして首都開封は、大量の物資を満載した大小の船が運河を行き交う、商業・消費の大都市として繁栄する。