2022-04-30

バイデンの「偽情報」取締官は、言論の自由に対する新たな攻撃

作家、ジェームズ・ボバード(2022年4月28日)

バイデン政権はもはや笑いものになるのを避けようともしないのか。なぜバイデンは、息子ハンター・バイデンのノートパソコン疑惑を隠蔽しようとした人物を新しい「真理省」の長として働くように任命したのか。国土安全保障省のマヨルカス長官は、同省が「偽情報管理委員会」を創設すると発表した。

委員長ニナ・ヤンコビッチは、外国での選挙介入で物議をかもす全米民主主義基金から多額の資金援助を受けている、全米民主主義研究所に勤務していた人物だ。2020年10月、ハンターのパソコンにあった問題のメールがNYポスト紙に暴露された際、ヤンコビッチは「トランプ陣営の製造物」と嘲笑した。

トランプとバイデンの最後の討論中、ヤンコビッチは「元国家安保当局者50人と元CIA長官5人がパソコン問題はロシアの影響と信じていると、バイデンが指摘」とツイートした。それは彼らの実際の発言ではなかった(正しくは「ロシアの陰謀の可能性がある」)し、証拠は示されず、パソコンは本物だった。

2020年の大統領選前、疑惑を報じる記事へのリンクをツイッターが制限した際、ヤンコビッチは不満を漏らさなかった。しかし先週、イーロン・マスクがツイッターを買収する噂が流れると、心配そうに語った。「言論の自由を絶対視する人々がもっと多くのSNSを占拠していたらと思うと、ぞっとします」

このヤンコビッチの言葉から理解できるように、新しい偽情報管理委の目的は「真実」ではない。真実は、競合する意見の衝突を通じて明らかになる。政治支配者が必要とするのは力だ。好ましくない意見を完全に弾圧しないまでも、信用を落とすことで、米国人の考えを方向づけようとしている。

新委員会は、物価高で庶民を苦しめているのは(プーチンではなく)バイデンだと責める記事を非難するだろうか。ハンター・バイデンが、父親が副大統領当時、ウクライナ企業から受け取った賄賂に関する新事実をけなすだろうか(ヤンコビッチは同国政府のコンサルタントだったからハンターに甘いかも)。

「偽情報」とはしばしば、政府の虚偽の発表とその否定との間に生じるタイムラグのことである。2003年初め、サダム・フセインが大量破壊兵器を保有していることを否定した人は、偽情報の罪を犯したことになる。ブッシュ(子)大統領のイラク侵攻後、大量破壊兵器が見つからなかったときまで。

連邦政府機関は何十年もの間、米国人に間違った情報を流し続けてきた。偽情報取締官に、政府の最新の教義に従うよう指示される必要はない。

(次より抄訳)
Biden's 'Disinformation' czar is latest assault on free speech [LINK]

不介入主義こそただ一つの賢明な道

米ペンシルバニア州ランカスター・リバタリアン党、ダニエル・マーティン
(2022年4月27日)

紛争の経緯や背景が複雑すぎて理解できないという諦めから、人々は単純化された物語を受け入れてしまう。 その結果、世間ではプーチン批判と、プーチンには一切譲歩しない(たとえウクライナ人自身を犠牲にしても)という考えが美徳とされるようになった。

外交上の不介入主義は、プーチンは米国の指導者ではないので、その悪い行動に米国人が責任を負うことはできない、という賢明な立場をとる。 逆に、ウクライナ紛争を誘発したNATOの役割を少なくとも認めれば、自国の指導者の責任を追及し、より外交的な雰囲気を作り出すよう圧力をかけられるだろう。

米欧はこの戦争を防ぐためにできる限りのことをしなかったし、戦争を終わらせる明確な提案を何もしていない。米国とNATOは、プーチンが要求したというウクライナ中立への同意、周辺NATO軍の撤退、ドネツクとルガンスクの独立などに対し、何も提示していない。

それどころか、反ロシアのNATO傀儡政権を据えた2014年のマイダン・クーデターにおける米国の役割を無視し、過去8年間にロシア語圏のドンバス地方で起きた1万4000人の死の多くに責任を負うウクライナ政府のネオナチ分子(アゾフ大隊など)も無視することが、一般的な物語となっている。

米国は過去数年間にウクライナに送った数十億ドルの兵器によって、すでにロシアに対して交戦国となっているのだ。バイデン政権はウクライナを武装させるために支出を増やし続けており、ロシアはそれをやめるよう公式に警告している。これが第3次世界大戦に発展しないと言えるだろうか。

大多数の米国人は、マスメディアに頼り、戦争が「勝利」につながるという仮定のもと、ウクライナの武装について沈黙するか、声高に支持する。 兵器が戦争を長引かせるだけかもしれないと、考えたことがあるのだろうか。 ウクライナの一般市民にとって、戦争が行われている限り、本当の勝者はいない。

「人道的戦争」という考えは高貴に聞こえるが、人類の真の勝利は、平和への最短距離の道筋をもたらすことにある。 その道が何かの解釈は、どの情報源に従うかによって大きく異なる。軍産複合体に親しい情報源によれば、ウクライナは勝利に近づいており、次の兵器の出荷さえできればいいらしい。

ダグラス・マクレガー大佐やスコット・リッター元国連兵器査察官ら軍事専門家の考えは異なる。ロシアが迅速かつ決定的な勝利を得られなかったのは、西側からウクライナに提供された余分な兵器のせいではなく、ロシア自身の自制心と軍事目標の限定に起因するという。

それでは、現在ウクライナで起きていることは、誰の説明が正しいのだろうか。 過去二十年間、公式発表が正しかったことは他にいくつあるだろうか。イラク、シリア、リビア、イエメンは、米国の軍事介入によって本当に良くなったのか。今回は何が違うのだろうか。

ウクライナが戦争に「勝つ」ために米国が何かしなければならないという考えは、オバマ氏が大統領就任前に述べた、「アフガニスタンは我々が勝たねばならない戦争だ」というのと同じくらい不確かな提案である。米国人の利用された同情心は、ウクライナをアフガンのような泥沼に変えてしまうのか。

(次より抄訳)
Non-Interventionism In the Only Sensible Path Forward | The Libertarian Institute [LINK]

2022-04-29

ウクライナの独立を支持する? では米国の州の分離も支持するわけだね。

ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン(2022年4月28日)

国家は突然出現するものではない。通常、二つの方法のいずれか、あるいは両方の組み合わせによって誕生する。まず、二つ以上の小さな国家から、征服や自発的な統合を経て形成されることがある。また、ある国家の一部が分離独立し、独自の国家を形成することによっても、国家は誕生する。

ウクライナの場合は、三十年前にソビエト連邦の一部から分離独立した国家である。実際、ウクライナは1990年代初頭に起こった地方分権と分離独立の潮流の一部だった。もちろん、こうした分離独立の動きには、当時の「正統な」中央政府が反対した。

1991年末にはバルト三国も独立を宣言した。ソ連はこれに反対し、違法と判断した。当時ソ連から15の国家が誕生した。分離独立はソ連の枠を超えて広がり、1991年にはスロベニアがユーゴスラビアからの独立を宣言した。1993年、チェコとスロバキアが分離し、チェコスロバキアは完全に解体された。

米国がこうした分離独立に概して反対したことは示唆に富む。バルト三国の独立を認めるのも遅かった。第二次世界大戦後のソ連によるバルト三国の併合を、公式には認めていなかったにもかかわらずである。ブッシュ(父)大統領はウクライナが分離独立を宣言する数カ月前、分離独立派に怒っている。

当時米国の立場は、ソ連であれチェコスロバキアであれ国境は神聖なもので、変更・廃止・軽視してはならないというものだった。しかし一世代のうちに、分離独立に反対するソ連を支援する立場から、分離独立を主張するバルト三国にNATOを通じて軍事防衛を保証する立場へと変化したのである。

米支配層は長い間、分離独立に対し二重基準だった。アフリカ、インド、パキスタンなど「脱植民地化」の場合には支持してきた。ウクライナの場合は次のような二重基準が採用されそうだ。「ソ連は当時、民主主義国家でなかったから独立は問題ない。(米国など)国民に投票権があるところでは許されない」

この説明には問題がある。ソ連は民主主義への移行を急速に進めていた。米国はゴルバチョフによるこの改革を支持しており、ウクライナの独立に反対したのもそのためだ。米国はウクライナやバルト三国が、ソ連が崩壊した後も存続する巨大な国家の中に残ることを望んでいたのである。

だがウクライナ人は、たとえ投票が認められても独立が必要と考えた。中央政府の支配層に好かれない文化的少数派は、民主主義よりも独立によって真に自決するチャンスがある。当時ウクライナの分離派は、ソ連崩壊後の民主主義ではロシア系民族が政治を支配すると考えた。それは正しかったのだろう。

分離独立と大胆な地方分権だけが解決できる問題は、民主主義では解決できない。今度、「ウクライナの味方だ」と言う米国人に会ったら、「分離独立派の仲間に会えてうれしいよ」と言ってあげたい。

(次より抄訳)
You Support Ukraine's Independence? Then You Support Secession. | Mises Wire https://mises.org/wire/you-support-ukraines-independence-then-you-support-secession

2022-04-28

分権と中立

経済学者・哲学者、ハンス・ホッペ(2022年4月26日)

国家はその国制にかかわらず、営利企業ではない。自発的に支払う顧客に製品・サービスを売ることで資金を調達するのではなく、強制徴収、つまり暴力の脅しと行使によって(そして無から生み出す紙幣によって)徴収する税金で、資金を調達する。

経済学者は政府、つまり国家権力の保持者を「定住型の盗賊」と呼んできた。政府とその雇われ人は、他の人々から盗んだ戦利品で生活している。抑圧された「宿主」である民衆の犠牲の上に、寄生している。

欧州は中世初期から近年まで何百、何千という独立した領地が存在し、高度な政治的分権を特徴とした。臣民は支配者の強奪から比較的たやすく逃れることができ、支配者は搾取を控えめにする圧力にさらされる。この節度あるふるまいが、経済的な起業家精神、科学的な好奇心、文化的な創造性を促した。

政府と政治家は実際のところ、定住型の盗賊、ギャング、ペテン師である。この二年間のコロナ体制は、外出、接触、集会の禁止を恣意的かつ不条理に行い、検査、証明書、ワクチン接種の規制を絶えず変更した。その結果、政治家の大半が、重武装した無節操な暴力犯罪者とみなされるようになった。

戦争を起こすのはロシア人でもウクライナ人でもドイツ人でも米国人でもなく、ロシア、ウクライナ、ドイツ、米国を支配し、戦争のコストをそれぞれの国の民間人に転嫁できる盗賊団(政府)である。

小さな国家は、小さな相手に対して小さな戦争をするだけだ。一方、小さな戦争の成功から生まれた大きな国家は、一般に戦争好きで、より大きな戦争も行う。最大かつ最強の国家である米国と、NATOに結集したその属国は、戦争と拡張に最も熱心だ。それだけでも、小さな国家と地方分権が必要な理由になる。

小国が大国の拡張主義と脅威に直面したとき、基本的に二つの選択肢がある。降伏するか、独立の維持を目指すかである。独立を維持し、戦争を回避する、あるいは戦争のリスクを最小化するために、唯一有望な方法は中立だ。大国の内政に干渉せず、大国を脅したり刺激したりしないことだ。

中立の義務は、同時に二つの大国が対立する主張を持ち、一方の味方をすることは他方にとってさらなる脅威となる場合、いっそう重要さを増す。今回の戦争は、ウクライナ政府が中立のルールに何度も違反した結果である。

2014年に米国が仕組んだクーデターで誕生したウクライナの政権が、NATOやEUへの加盟をスイスのようにはっきりと控え、当時離脱した東部のロシア語圏二州にいじめやテロを行うのではなく、手放していれば、ロシアに対する潜在的な脅威は和らぎ、今回の戦争はほぼ確実に起こらなかったはずだ。

しかし米国の圧力の下、ウクライナ支配層はNATO加盟を要求し続けた。実現すれば、敵国とされたロシアの国境まで米軍の駐留が拡大することになる。したがってウクライナ政府の行動は、ロシア側からみればとてつもない挑発であり、深刻な脅威と受け止められることは、誰も疑う余地がない。

西側で広まっている反ロシアのヒステリーと煽動は、事実誤認であるだけでなく、西側自身の役割から目をそらすことを主な目的としている。米国とそのNATOの属国がソ連崩壊以降30年にわたり、ロシアよりもはるかに多くの戦争の犠牲者と被害を出してきた事実を忘れさせることを意図しているのだ。

(次より抄訳)
Decentralized and Neutral | Mises Wire

核戦争か?

経済学者、ウォルター・ブロック(2022年4月27日)

NATOはソ連の西方拡大に対抗するために設立された。その後、ソ連は崩壊した。NATOもワルシャワ条約機構も解体する絶好の機会だったはずだ。しかしNATOは東へ東へと前進を続けた。NATOの侵略の歴史に照らし、ロシアは強く反対した。ためらうことなく、その熱烈な願いを明らかにしている。

ウクライナ政府は一時、東の隣国(ロシア)に友好的だった。しかしその後、NATO(この組織の有力加盟国はどこ?)が組織したクーデターで、民主的に選ばれた政府は転覆し、NATOに加盟まで申請した。ロシアにとって敵の大量破壊兵器が眼前に置かれることを意味する。ロシアは我慢の限界に達した。

それでもロシアはNATOの全加盟国にもれなく宣戦布告したりせず、ウクライナに進入しただけだった。プーチンの「狂気」とやらに感謝すべきだろう。さもなければ全人類の存在が危険にさらされていた。今でも核兵器によるハルマゲドンの可能性は、キューバのミサイル危機以来、かつてないほど高い。

米国の外交政策が招いた反動にもかかわらず、民主党も共和党もごく少数の例外を除いては、ロシアにあらゆる危害を加えよと呼びかけている。この連中は、自身はもちろんのこと、子供や孫にも危険が及ぶことを理解していないのか。核爆発は一日を台無しにしてしまうという教訓を、まだ学んでいないのか。

正気を取り戻すには、今何をすべきか。完全な停戦の後、平和を再建すべきだ。すべての軍隊は自国に戻るべきだ。他国はウクライナにいかなる種類の武器も供給すべきではない。ウクライナはNATOに加盟する試みをやめるべきだ。やんちゃで厄介で悪意のあるNATOは解散させ、その場に塩をまくべきだ。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Nuclear War?http://www.ronpaulinstitute.org/archives/featured-articles/2022/april/27/nuclear-war/

2022-04-27

ウクライナ戦争は詐欺

元米下院議員、ロン・ポール(2022年4月25日) 

1935年、米海兵隊のスメドレー・バトラー将軍は「戦争は詐欺である」と記した。彼はこう説明した。「見かけとは大違いだ。内部の小さな集団だけが、その正体を知っている。ごく少数の人々の利益のために、多数の人々を犠牲にして行われる。戦争から少数の人々が莫大な富を得る」 

プロパガンダが描き続けるウクライナの戦争は、巨人(ロシア)が無実の少年(ウクライナ)をいわれなく打ち殺そうとするもので、米国とNATOはウクライナに大量の軍備を提供しなければならない。プロパガンダの常として、特定の人々の利益のために感情的な反応をもたらすように操作されている。

この戦争で大きな利益を得る特別な利益団体の一つが、米国の軍産複合体だ。レイセオン社のヘイズCEOは最近、株主総会でこう述べた。「今日ウクライナに輸送されているものはすべて国防総省やNATO同盟国の備蓄品からで、これはすばらしいニュースだ。いずれは補充しなければならないし、ビジネスにも利益をもたらすだろう」 

レイセオンは、ロッキード・マーチンや他の無数の兵器メーカーとともに、ここ数年見たこともない幸運を手にしている。米国はウクライナに30億ドル以上の軍事援助を約束している。政府はそれを援助と呼んでいるが、実際には企業助成だ。米国は武器メーカーに何十億ドルも支払い、武器を海外に送り出しているのだ。

多くの人によれば、ジャベリン対戦車ミサイル(レイセオンとロッキードが共同製造)のような兵器がウクライナに到着するとすぐに爆破される。レイセオンはまったく気にしていない。ウクライナでロシアに爆破される兵器が増えれば増えるほど、国防総省から新たな注文が増えるからだ。

旧ワルシャワ条約機構加盟国で、現在NATOに加盟している国も、この詐欺に加担している。彼らは三十年前のソ連製兵器を廃棄し、米国や他の西側NATO諸国から最新の代替品を受け取る方法を見つけたのである。

ウクライナに同情する多くの人々が歓声をあげているが、この数十億ドルの兵器一式はほとんど何の変化ももたらさないだろう。元米海兵隊情報将校のスコット・リッター氏が語るように、「援助が戦場に届いたとしても、戦いに与える影響はゼロだと断言できる。バイデン大統領もそれを知っている」。

ロシアは、米国やNATOの最新兵器を大量に捕獲し、ウクライナ人を殺すために使っている。何という皮肉だろう。何千トンものハイテク兵器が欧州を漂い、テロリストに機会を与える。米政府は、ウクライナに送っている武器を追跡して悪人の手に渡らないようにする方法がないことを認めている。

戦争はたしかに詐欺だ。米国は冷戦終結後からウクライナに干渉し、2014年には政府を転覆させるまでに至り、現在のような戦争の種をまいてきた。穴から抜け出すただ一つの方法は、穴を掘るのをやめることだ。すぐにそうなるとは思わないほうがいい。戦争はあまりにも儲かるからだ。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : The Ukraine War is a Racket

腐敗し抑圧を強めるウクライナのために、核戦争の危険を冒す

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター(2022年4月26日) 

さいわいバイデン米大統領はこれまで、ロシアのウクライナ侵攻に対応してタカ派が推し進める最も危険な政策を拒んできた。強い圧力を受けているにもかかわらず、飛行禁止区域を宣言することを否定し、ウクライナへの米軍派遣を検討するような提案もきっぱりと拒否している。 

しかしバイデン政権が採用した政策でさえ、米国を核武装国との軍事対立に巻き込むリスクを伴う。米国とNATOの同盟国は、高性能の武器をウクライナにさらに注いでいる。ロシアは最近、このような輸送は合法的な軍事目標だと警告を繰り返した。米国は明白な交戦国になる寸前で戦争を回避しているのだ。 

たとえウクライナが歴史上最もすばらしく、汚れなき民主主義国家であったとしても、米国の指導者がそのために自国を危険にさらすのは軽率だろう。ましてや相手が腐敗し独裁色を強める国だとしたら、そのような行為はまったく無責任である。しかし、これはまさに今日のウクライナの姿そのものなのだ。 

ウクライナは長い間、国際社会で最も腐敗した国の一つであり、その状況は2005年1月のオレンジ革命で親欧米のユシチェンコが大統領に就任した後も、大きくは改善されなかった。19歳の息子が12万ドルのBMWスポーツカーでキエフの街を走り回るなど、派手な生活ぶりも目に余るものがあった。 

2014年のマイダン革命で米国の支援するデモ隊が親露派のヤヌコビッチ大統領を倒した後も、同様だった。オリガルヒのポロシェンコ新大統領は、少なくとも前任者と同様に腐敗していた。実際、金銭的な不正に対する国民の不満が、2019年の大統領選挙でゼレンスキーが勝利した大きな理由だった。 

マイダン革命のわずか数カ月後から、ウクライナ当局は反体制者への嫌がらせ、検閲、批判的とみなした外国人記者の出入りを禁止し、国際人権団体などから批判された。ネオナチのアゾフ大隊は、ポロシェンコ大統領の軍事・治安組織に不可欠な存在となり、ゼレンスキー大統領時代もその役割を担ってきた。 

ゼレンスキー政権下で汚職の程度が改善されたのはせいぜいわずかである。トランスペアレンシー・インターナショナルが2022年1月に発表した年次報告書では、ウクライナは180カ国中122位で、100点満点で32点であった。これに対し、汚職で有名なロシアは136位、29点とやや低い。 

民主主義と市民の自由も、汚職よりずっと良いわけではない。フリーダムハウスの2022年報告では、ウクライナは100点満点中61点の「部分的に自由」に分類されている。この区分にはフィリピン(55点)、セルビア(62点)、シンガポール(47点)など民主主義のお手本とは言いにくい国も含まれる。 

2021年2月、ウクライナ政府は複数の野党系メディアを「ロシアのプロパガンダの道具である」という疑惑のもとに閉鎖した。5月、ゼレンスキー政権は閉鎖したテレビ局のオーナー、メドベチュクを逮捕し、国家反逆罪で起訴した。12月下旬にはポロシェンコ前大統領を国家反逆罪で起訴した。 

戦時下で事態は決定的に悪化した。ゼレンスキーは戦争を理由に11の野党を非合法化し、いわゆる偽情報を防ぐために全国のテレビ局を1つの組織に統合した。国家安全保障のトップ2人を解雇し、裏切り者として非難した。漠然とした「反逆罪」疑惑は、反対派を逮捕・拷問・暗殺する万能の理由となった。 

19世紀ドイツの宰相ビスマルクはバルカン半島への軍事介入を拒み、「擲弾兵一人の命にも値しない」と主張した。腐敗して独裁色を強めるウクライナは、米国人一人の命にも値しない。核武装したロシアとの戦争で何百万人もの米国人の命を危険にさらすとは、恥知らずにもほどがある。

(次より抄訳)
Risking Nuclear War for a Corrupt, Increasingly Repressive Ukraine - Antiwar.com Original
https://original.antiwar.com/Ted_Galen_Carpenter/2022/04/25/risking-nuclear-war-for-a-corrupt-increasingly-repressive-ukraine/

#13 わがままこそ最高の美徳

 
人は子供のころから、「わがままはよくない」と教えられて育ちます。それには一理あるでしょう。けれどもわがままを押し殺すことで、何か大切なものを失っていないでしょうか。ドイツ出身の有名な作家は、あえて「わがままこそ最高の美徳」だと説きました。その意味を解説します。 

<参考資料>

2022-04-26

ミンスク2:主流メディアのニュースでは決して聞くことのできない言葉

平和活動家、ウォルト・ズロトー(2022.4.23)

百人の米国人に聞いても、ミンスク2という言葉を聞いたことがある人はまずいないだろう。しかしウクライナ戦争がどのように始まったかを尋ねると、「ロシアのプーチン大統領がある日、目を覚まし、ソビエト帝国を再建することに決め、まずウクライナに攻め込んだ」と返ってくる可能性が高い。

ミンスク2は、ドンバス東部のルガンスク、ドネツク両州において、親西欧の超国家主義政府と親ロシアのウクライナ人との内戦を終わらせるために、ロシア、ウクライナ、フランス、ドイツによって2015年に合意された。

なぜウクライナで内戦が起きたのか。ウクライナはロシア帝国とソビエト連邦によって四世紀にわたり、ばらばらの民族を寄せ集めて作られた国だ。主な民族は、北部・西部の西欧寄りのウクライナ語圏の人々と、東部・南部のロシア語圏の人々である。

ソ連の支配下では比較的平和が保たれていた。1999年にソ連の支配から解放されると、二つの異質な集団の緊張関係が再び表面化した。15年後、米国はロシア寄りのヤヌコビッチ大統領を暴力で排除し、ポロシェンコ率いる超民族主義政権を据えるクーデターを支援し、平和解決のチャンスを吹き飛ばした。

こうしてドンバス地方の内戦が始まり、キエフが憎むべきロシア寄りのウクライナ人を服従させ、疎外しようとした結果、1万4000人以上のウクライナ人が死亡した。過去3年間の殺戮を指揮したのが、現大統領のゼレンスキーである。

しかしウクライナには、2014年のミンスク合意、そして2015年のミンスク合意2という形で、早くから内戦からの出口があった。ミンスク2は、離脱したドネツク、ルガンスク両州の自治、戦闘員の恩赦、ウクライナ政府への代表派遣を求めたものだ。

しかし、米国と実権を握る超国家主義者に煽られて、クーデター後のポロシェンコ大統領とゼレンスキー大統領は、離脱州とクリミアとを奪還するために、内戦を続けることを選択した。

ロシアの犯罪的な戦争に先立つ数カ月で、ウクライナは米国による武器と訓練の助けを借りて、ドンバスでの犯罪的な砲撃を劇的に増やし、3月に予想された侵攻のために10万の軍隊さえ集結させた。

NATOがウクライナのロシア国境まで侵攻してくる脅威から、ロシアの侵攻は合法であり、国防上必要だったのだろうか。もちろん、そんなことはない。しかし、ロシアが何もしないで黙っていることを期待すれば、侵略は事実上避けられない。

政府とメディアは、この戦争をクレムリンの狂人とソビエト帝国再建の夢と決めつけ、何百万という言葉を費やしてきた。しかし、ウクライナと米国がミンスク2を尊重・実行していれば、もっとうまくやることができた。

(次より抄訳)
Minsk II: Two Words You'll Never Hear on Mainstream News - Antiwar.com Original

2022-04-25

国際法上、ロシアのウクライナ介入が合法な理由

弁護士、ダニエル・コバリク(2022.4.23)
*米ピッツバーグ大学ロースクールで国際人権について教鞭をとる。

2022年2月のロシア軍侵攻に先立つ8年間、ウクライナではすでに戦争が起こっていたという事実を受け入れることから、議論を始めなければならない。

キエフ政府によるドンバスのロシア語圏の人々に対するこの戦争は、ロシアの軍事作戦以前から1万4000人(多くは子供)の命を奪い、150万人を避難させた戦争であり、間違いなく大量虐殺だった。米政府やメディアはこの事実を必死に隠そうとするが、以前は欧米の主流メディアが実際に報道していた。

2018年のロイターの記事によれば、ウクライナには30以上の右翼過激派グループがあり、それらは「ウクライナの軍隊に正式に統合されている」し、「これらのグループの中でもより過激なものは、不寛容で非自由なイデオロギーを推進する」とある。

国境にはロシア民族を攻撃する過激派集団が存在するだけでなく、この集団はロシア自体の領土保全を不安定にし、弱体化させるという意図を持って、米国から資金提供や訓練を受けている。

ヤフーニュースが報じたように、CIAはウクライナのエリート特殊作戦部隊やその他の諜報員のため、米国で秘密集中訓練プログラムを監督している。「米国は反乱軍を訓練している」とCIAの元幹部は言い、このプログラムはウクライナ人に「ロシア人を殺す方法」を教えている、と付け加えた。

ロシアが、ウクライナにおける米国、NATO、それらの過激派の代理人による不安定化の努力によって、深刻な形で脅かされていることに疑いの余地はない。 ロシアは丸8年間、そのような脅威にさらされてきた。

またロシアは、イラクからアフガニスタン、シリア、リビアに至るまで、そうした不安定化の努力が他の国々にとって何を意味するかを、つまり、機能している国民国家をほぼ完全に消滅させるということを目撃してきた。 国を守るために行動する必要性について、これほど切迫したケースはないだろう。

国連憲章は一方的な戦争行為を禁止しているが、同時に第51条で「この憲章のいかなる規定も...個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と定めている。この自衛権は、実際の武力攻撃だけでなく、差し迫った攻撃の脅威に対しても、各国が対応することを認めると解釈されてきた。

今回の侵攻は自衛権の発動である。ロシアは自衛のためにウクライナに介入する権利があった。ウクライナ政府は国内のロシア系民族だけでなく、ロシアそのものを攻撃するために、米国とNATOの代理人となっていた。反対の結論は、ロシアが直面している悲惨な現実を無視することになる。

(次より抄訳)
Daniel Kovalik: Why Russia's intervention in Ukraine is legal under international law — RT Russia & Former Soviet Union

2022-04-24

ウクライナにおけるロシアの核攻撃:その可能性は?

モスクワによるウクライナへの核攻撃の脅威はほぼゼロだが、NATOの無責任な行動が欧州への核の危険を増大させる可能性がある。

元国連大量破壊兵器査察官、スコット・リッター(2022.4.24)

バーンズCIA長官が最近、ウクライナ紛争を背景にロシアの核兵器の脅威について記者団の質問に答え、話題となった。「プーチン大統領とロシア指導部が自暴自棄になる可能性、さらにこれまでの戦局の停滞を踏まえると、戦術核もしくは低出力核兵器を使用する恐れがあることを軽視できない」と述べた。

西側諸国がロシアの核兵器情報に過剰反応するのは、ロシアがどのような状況で核兵器を使用する可能性があるのかについて、根深い理解不足があるためだ。2020年6月2日、ロシアは30年の歴史の中で初めて、核戦争対処方針を説明する文書「核抑止力に関する国家政策の基本原則」を一般公開した。

基本原則は、核以外の攻撃に対して核兵器で報復するシナリオを二つ示している。一つは、敵対国がロシアの重要な政府施設や軍事施設を攻撃し、その破壊によって核戦力の対応行動が損なわれる場合だ。もう一つは、国家の存立が危ぶまれる場合に、通常兵器を用いてロシアが侵略される場合である。

ラブロフ露外相がインドの報道機関に対する声明で指摘したように、ロシアの核兵器使用の基本原則で示されたどの条件も、現在のウクライナの状況には当てはまらない。

しかしウクライナ紛争が欧州で核戦争の可能性を高めないわけではない。プーチン大統領に安全保障を助言するメドベージェフ元大統領によると、もしスウェーデンかフィンランドがNATOに加盟すれば、「バルト海の非核化について語ることはもはや不可能になる。バランスを取り戻さなければならない」。

スウェーデンやフィンランドのNATO加盟論は、核兵器を搭載できるF-35A戦闘機の配備に向けた取り組みの後に出てきた。フィンランドは最近、F-35A戦闘機を60機購入する意向を表明したが、この動きはロシアにとって憂慮すべきものとしか言いようがない。

ラトビア、エストニア、リトアニアの上空で行われている「バルト海の航空警備」作戦を支援するために、米国と他のNATO空軍がF-35Aを多用していることは、ロシアにとって深刻な脅威とみなされている。

F-35A戦闘機推進派は、ロシアの基本原則が「核抑止力の実施によって無力化すべきシナリオ」の一つとして、「非核兵器国の領土への核兵器とその運搬手段の配備」を挙げていることを省みたほうがいいだろう。

ロシアはウクライナで核兵器を使用する準備はしていないかもしれない。しかし、NATOの無責任な態度は、ロシアの核兵器が欧州で使用される可能性を高める結果になりかねない。

(次より抄訳)
A Russian nuclear strike in Ukraine: How likely is it? — RT Russia & Former Soviet Union

2022-04-23

#12 資本家と労働者は敵じゃない



「労働者は資本家に搾取されている」という言葉をよく聞きます。社会主義思想家のカール・マルクスが唱えた理論です。社会において資本家と労働者の利害は完全に対立し、二つの別々の階級に分かれるといいます。けれどもこの理論、ほんとうに現実に合っているでしょうか。

<参考資料>

2022-04-22

元情報機関関係者がロシアを引き合いに出して言うには、ハイテク大手企業の独占力は国家安全保障に不可欠

ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド(2022.4.21)

元情報機関・国家安全保障当局者のグループは4月18日、フェイスブック、グーグル、アマゾンなど大手ハイテク独占企業の力を制限・解体しようとする立法措置は、米国の外交政策を進めるうえで集中的な検閲権力が不可欠であることから、国家安全保障を危うくすると警告する連名の書簡を発表した。

何人かは、自身が偽情報の主役だ。多くはハンター・バイデンの本物のメールにロシアの偽情報の「特徴」があると主張した元諜報関係者と重なる(クラッパー元国家情報長官、モレル元CIA副長官、パネッタ元CIA長官・元国防長官)。ハイテク企業と強い経済的つながりもある。

アップルCEOであるティム・クックは、ハイテク大手の力を少しでも弱めることは米国の国家安全保障を脅かすことになると主張。この発言に、シリコンバレーで十分な報酬を得る元安全保障当局者が共鳴している。独禁法の取り締まりに警告した12人の元当局者は、ハイテク企業とつながりがある。

米国の安全保障国家は、米国と世界の政治言論をより広く支配下に置きたい。プロパガンダ的な物語を問答無用に押し付け、反対意見なしに軍国主義を擁護できるようにしたい。そのためには、彼らに従属するほんの一握りの企業が、インターネットに対し可能な限りの集中的な権力を手にする必要があるのだ。

もし自由で公正な競争市場が生まれ、言論の自由をより重視するソーシャルメディア・プラットフォームがグーグルやフェイスブックと公平に競争できるようになれば、CIA、国防総省、ホワイトハウスが政治言論を取り締まり、彼らの政策や主張に対する反対意見を弾圧する力を真に脅かすことになるだろう。

インターネットを支配し、米国の安全保障国家への忠誠を長い間証明してきた少数のハイテク独占企業の手にすべての権力を維持することによって、戦争と軍国主義をめぐる閉鎖的なプロパガンダシステムを維持する安全保障国家の能力は保証されている。

米国の安全保障国家がつねに憎むべき外国の敵を求め、必要としているのは、外国の悪党を阻止するという名目で、権力と予算を求めることが可能になるからだ。これはほとんど議論の余地がなく、目新しいものでもない。すべての戦争と新しい敵は、新しい独裁権力をもたらし、市民の自由を踏みにじる。

安全保障国家は今、ロシアに対して煽った怒りと憎しみを赤裸々かつ恥知らずにも利用し、ハイテク大手がいかなる形でも弱体化・規制されないようにしようとしている。プーチンを憎む愛国者なら、グーグル、フェイスブック、アップル、アマゾンの権力を守ることだけ考えろ、というわけだ。

(次より抄訳)
Former Intelligence Officials, Citing Russia, Say Big Tech Monopoly Power is Vital to National Security

ロシアを孤立させたら出口なし

ジャーナリスト、ダニエル・ラリソン(2022.4.20)

米国とその同盟国は、ウクライナ戦争に対応して、ロシアの「孤立と弱体化」を目指す「長期戦略」を進めていると報じられている。制裁や脅しによって標的の国家を孤立させる他の「戦略」と同様に、この戦略も懲罰的な手段を用いて、自らの目的のために経済的苦痛を与えるものである。

西側諸国政府は、もはやロシアが自国に対する経済戦争を終わらせるために何かできるような素振りすら見せず、経済戦争を恒久的な状態にするための下準備を進めているのだ。このことは、交渉による解決の可能性にとって悪い兆候であり、ウクライナでの戦争が長期化することを保証しているに等しい。

大国を弱体化させるために、その大国の首を絞めようとすれば、標的となった国家を刺激し、最悪の場合、より大きな戦争を引き起こす危険がある。たとえそうならなかったとしても、孤立政策は何も解決せず、既存の不一致や紛争を何年も何十年も悪化させるだけだ。

集団的な罰は常に間違っており、不十分な定義や不可能な目標のためにその罰を課すことはさらに良くない。ロシアの指導者は国民の知らないところで、あるいは同意もなく、この戦争を始めた。戦争に対する「集団的責任」という無謀な言葉は、罪のない人々を苦しめることを言い訳にするための合理化である。

制裁を受け孤立した国の政治指導者とその仲間は、経済戦争によって生じた欠乏を利用して自分たちの利益を図り、他の国民はより大きな収奪を経験することになる。孤立政策は民族主義的な感情を助長し、政府が国内問題に対する非難をそらすことを容易にする。

ロシアを孤立させることで到達すべき目標が明確でないため、孤立政策は恒久化してしまうだろう。長期的な孤立は、別の目的を達成するための手段にはならない。孤立のための孤立となる。米国のキューバやイランに対する政策が示唆するように、プーチン亡き後もロシアを孤立させ続ける可能性がある。

米国とその同盟国は、ロシアと西側諸国の関係を今後数十年にわたり凍結させるような道を進んでいる。後に政府が他の重要な問題でロシアと協力する必要があるとあらためて気づいたとき、関係を再構築するのは格別に難しいだろう。

長期的な「戦略」を立てるという割には、ロシアの孤立を求めるのは近視眼的だ。この孤立化の道がロシア、欧州、米国をどこに連れて行くのか、真剣に考えたことがないように見える。孤立政策の多くの失敗は、米国とその同盟国に対して、この行き止まりの道を歩むことをやめるように警告している。

(次より抄訳)
Isolating Russia Is a Dead End - Antiwar.com Original

2022-04-21

ミーゼス、分離独立を語る

経済学者、ルートヴィヒ・フォン・ミーゼス

国家が地方に対し「お前は私のものだ。お前をいただく」と言う権利はない。地方はその住民で構成されている。この件について意見を聞いてもらう権利があるとすれば、それは住民の方だ。境界紛争は住民投票によって解決するべきである。

いかなる国民も、また国民のいかなる部分も、その意思に反して、希望しない政治共同体に拘束されることはない。

国家にとって、領土の大きさは問題ではない。

国際法上の自己決定権(国家から離脱する権利)を一人一人の個人に認めることが何らかの形で可能であれば、それは実行されなければならないだろう。

自分が属したくない国家に属さなければならない状況は、それが選挙の結果であっても、軍事征服の結果として耐えなければならない場合に劣らず、うんざりするものだ。

Mises on Secession | Mises Institute [LINK]

戦争を続けるために、あなたが必要だ

ジャーナリスト、コナー・フリーマン(2022.4.19)

米国民は、政府の血にまみれた支配者たちがウクライナでの戦争を無慈悲に長引かせることを許している。加担するメディアは宣伝し、嘘をつき、政府がその最悪の攻撃性を倍加させるように仕向けた。プーチン露大統領を困らせ、ロシアを破壊するために、タカ派の無謀な第3次世界大戦の賭けが続いている。

バイデン政権と他のタカ派は、ウクライナでの戦争が終わることを望んでいない。彼らだけでなく、NATO加盟国の中にも、戦争がいつまでも続くことを望んでいる国がある。

ウクライナのゼレンスキー大統領はここ数週間、自国がNATOに加盟しないことを繰り返し認めているが、ワシントン・ポスト紙が引用した当局者や外交官によれば、一部の加盟国は、ウクライナ政府がロシアの重要な要求を受け入れるのを嫌がっているという。

ワシントン・ポスト紙の記事が掲載された直後、エストニアのカラス首相は 「どんな犠牲を払っても平和を」という考えに警鐘を鳴らした。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表もこの考えに共鳴し、戦争がどのように終わるかが重要だと述べた。

米国、EU、NATOが望むのは、単に現状維持ではない。この戦争にはるかに深く、危険な形で関与しようとしている。米国は戦争が始まって以来、ウクライナに25億ドル以上の軍事支援を行い、ほぼ毎週新しい武器を追加してきた。ジャベリン対戦車ミサイル、各種武装ドローン、スティンガーミサイルなどだ。

バイデン大統領は最近失言し、米軍がポーランドでウクライナ軍を訓練していることを明らかにした。その後のNATO外相会合で、トラス英外相は、同盟国がウクライナにNATOの武器を使う訓練を始めるよう決定したと明らかにした。ウクライナが旧ソ連時代の兵器を主に使わないで済むようにする。

想定される侵略を撃退するために、ロシアとの国境にある東欧にNATOを大規模に増強することも計画されている。馬鹿げたことに、ロシアとの戦争に勝つのに十分な戦力を備えようというのである。このような挑発は、ロシアの神経を逆なでするばかりで、核戦争の可能性をますます高めることになる。

兵器大手レイセオンの元取締役、オースティン米国防長官は上院軍事委員会で、米国が東部ドンバス地方でウクライナ軍に情報提供していると述べた。米国が据えたキエフのクーデター政権は、この地方のロシア系住民に対し戦争を開始した。ナチスがはびこる傀儡政権の統治を住民が拒否した後のことである。

8年前に始まったウクライナ政府による戦争は、1万4000人以上の死者を出した。民間人の犠牲者の多くは、ロシアに支援された分離主義の領域内の人々だった。2月、プーチン露大統領は「特別軍事作戦」を発表した際、独立を公式に認めたドンバスの人々に対する侵略を撃退するために必要だと述べた。

何百年もの間、ロシアはクリミアのセバストポリに黒海の艦隊を維持してきた。港が脅かされた2014年のクーデター以来、モスクワは半島を軍事的に支配してきた。またロシアは、ウクライナのネオナチに攻撃されたロシア市民が住む地域を見捨てることはないだろう。

プーチンの主な要求は、ウクライナの中立、ドンバス共和国の独立とロシアのクリミア支配の両方を認めることだ。合理的な要求である。ゼレンスキー宇大統領でさえ、NATOから同盟加盟はありえないとはっきり言われたことを認めている。ロシアを挑発するために、表向きはドアを開けておいただけなのだ。

米国がメキシコとの戦争に負けられないのと同じように、ロシアはこの戦争に負けることはできない。ウクライナがロシアを撃退する唯一の方法は、米国とNATOが永遠の戦争を約束することだ。武装し、訓練し、資金を提供し、援助し、支援し、何年も続く血生臭い反乱を維持することである。

この戦争は、米国がプーチンをそそのかして始めたことは明らかだ。同様に、1979年末のソ連のアフガン侵攻はカーター大統領、ブレジンスキー大統領補佐官、CIAによって引き起こされた。サイクロン作戦と呼ばれたこの戦略では、約1万5000人のソ連兵と少なくとも100万人のアフガン人が死亡した。

何百万人も殺し、米経済を破綻させたベトナム戦争は、米政府にとっては誇り高い勝利だった。米政府はウクライナでまたこのような勝利を望んでいる。しかしNATOとロシアの国境でアフガン戦争時のサイクロン作戦を再現すれば、第3次世界大戦を引き起こすだろう。

(次より抄訳)
We Want YOU to Keep The War Going | The Libertarian Institute

2022-04-20

ウクライナ戦争にまつわるいくつかの神話を暴く

ミーゼス研究所会長、ルー・ロックウェル(2022.4.18)

もしブチャで民間人が銃で撃たれ、意図して殺されたとしたら、間違いなく戦争犯罪であり、恐ろしいことだ。しかし実際にはロシア軍の仕業ではなく、ウクライナ人(地元の民兵やウクライナ保安庁)が「破壊工作員」や「ロシアの協力者」に対する残忍な報復の一環として行ったと考えるに足る根拠がある。

第一に、「ブチャの虐殺」は、捕虜の射殺や民間人への拷問などを撮影した多数のビデオで証明されているように、ウクライナ軍による戦争法規違反と共通点がある。ブチャの静止画とは異なり、これらの動画は行為そのものと加害者を映し出している。これは最近NYタイムズでさえ認めたことだ。

第二に、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「妨害者」「裏切り者」の処罰を求める演説を何度も行い、最終的にはウクライナの「脱ロシア化」で戦争を終わらせると述べている。これは厳しい言葉であり、明らかに過激派を煽り立てるものだ。

第三に、ウクライナの雰囲気は戦争犯罪に適している。米憲法修正第2条(武器保有権)を支持する立場からは、ウクライナ政府による国民への武器供与は朗報だが、その一部は犯罪者や自制心のない者の手に渡ってしまった。戦闘経験のある囚人を解放し戦わせたのだ。彼らが戦争法規に忠実だとは思えない。

ウクライナ人がスパイや破壊工作員に対する妄想から互いに殺し合った記録も数多い。ウクライナ人とロシア人の違いはわずかで、東部ではロシア語しか話せず、ロシアを支持するか、ウクライナ政権に対し冷めた人が多い。このため内戦的な暴力が起こりやすく、裏切り者を一掃するためと正当化される。

第四に、時系列でみて、ロシアがブチャの虐殺を行ったかどうか大きな疑問がある。ロシア軍は3月30日にブチャを撤退。ブチャ市長は3月31日の撤退発表時、戦争犯罪に一切言及しなかった。4月2日、ウクライナ保安庁は破壊工作員や裏切り者に対する「浄化」作戦を行うため、ブチャに移動すると発表した。

死者の写真が出たのは4月2日で、ゼレンスキー大統領は記者を案内するためすぐに姿を現した。ロイターやNYタイムズは、3月19日未明に街中に死体があったとする衛星画像を掲載したが、2週間も屋外に放置された遺体は、4月2日の写真に見られるような状態ではなく、かなり腐敗が進んでいるはずだ。

第一次世界大戦で主張された、ドイツ軍によるベルギーでのレイプ。コソボでの大量虐殺。クウェートでイラク軍が保育器から新生児を取り出し放置したという話。不必要な戦争への関与を促すため、誤った残虐物語が利用されてきた。情報源に嘘をつく動機がないかどうか、つねに問わなければならない。

ロシアは国連安保理を通じ、「ブチャの虐殺」の独立した調査を要求したが、議長国である英国は理事会の召集を拒否したようだ。独立した調査こそが、真実を判断する最善の方法であるはずなのに。ウクライナも米欧も真実は二の次で、ロシアを弱体化させ戦争を長引かせることに投資しているのは明らかだ。

(次より抄訳)
Exposing Some Myths About the Ukraine War - LewRockwell

偽旗作戦その他の寓話についてもっと考えてみる

元CIA局員・コラムニスト、フィリップ・ジラルディ(2022.4.19)

ウクライナのゼレンスキー大統領は米国のネオコン(好戦的なタカ派)から、国際感情に訴える適切なボタンを押すよう厳しく指導されている。ゼレンスキーはロシアの脅威に警鐘を鳴らし、より多くの優れた兵器を要求することに成功している。

偽旗作戦とは、自分とは別の誰かのふりをし、欺くことを意味する。諜報活動や、戦争行為の真相を隠蔽しようとする軍事行動で広く使用される。

プーチンに対する最近の非難は、ブチャで数百人の市民を虐殺したとされる事件や、4月8日にクラマトルスク駅で50人以上の市民が殺害された事件に基づく。しかしロシアが民間人を虐殺したり、非軍事的な標的を攻撃したりするのは筋が通らない。そんなことをすれば、世界の世論を敵に回してしまう。

ブチャとクラマトルスク駅での事件は「成功」だった。敵対メディアによって、ただちにロシアと結びつけられたからである。しかし話はそこで終わらない。3月30日、ロシア兵はブチャの町を後にした。2日後、ブチャはウクライナのアゾフ旅団に占領され、「裏切り者」の発見と排除が目的となった。

アゾフ旅団はきわめて民族主義的で、ネオナチとさえ言われている。4月2日、最初のビデオが公開され、殺されたばかりの男たちがブチャの通りに横たわり、そのうち数人がロシア軍の「友軍」であることを示す白い腕輪をつけていた。米欧とウクライナ当局は、ただちに「ロシアの残虐行為」の結果と呼んだ。

アゾフは、戦闘地域から「逃亡」する者を「裏切り者」として射殺し、ロシア軍に降伏や協力はしないと誓ったと伝えられている。過去には、ロシア系ウクライナ人に対する残虐行為も行ってきたとされる。

自国の市民を数百人殺害してプーチンをさらに悪者にし、米欧の直接軍事介入をもたらせばウクライナの利益になることは間違いなく、それはゼレンスキーと彼のネオコン顧問がやろうとしていることでもある。ウクライナ兵が意図してウクライナ人を殺害し、ロシアのせいにする偽旗作戦だったのだろうか。

根本の問題は、戦争に偽旗作戦が使われる可能性があることではない。問題は、何が起きているのかについて信憑性のある情報がほとんどなく、虚構に近い「真実」を信じ込ませるために、狂ったように嘘がつかれることだ。昔から知られるように、戦争の最初の犠牲者は真実である。

偽旗作戦や米欧から発信される嘘は忘れよう。嘆かわしいことに、残虐行為の可能性に焦点を当てることで、米欧がなすべきこと、つまりロシアとウクライナの双方に受け入れられる状況をもたらす、真の交渉につながる停戦への環境を整えることが、むしろ難しくなっている。

米国とその同盟国は、和平の環境づくりどころか、ロシアの戦争犯罪に関する疑わしい証言に基づいて、ウクライナに対しこれまで以上に武器を流し込むことに熱心なようである。

(次より抄訳)
Thinking Harder About False Flags and Other Fables, by Philip Giraldi - The Unz Review

#11 金が買われる本当の理由

 

金が値上がりし、国内で過去最高値を更新しています。ロシアのウクライナでの軍事行動による地政学的リスクの高まりや、円相場の下落が原因だといわれます。けれども、もっと深い理由があります。元本割れのリスクもある金が「安全資産」と呼ばれる理由とともに、解説します。 

<参考情報>

2022-04-19

ウクライナは依然劣勢。ではその策は何か?

ブログ「ムーン・オブ・アラバマ」(2022.4.18)

ロシア軍とドンバス軍は、ファシストのアゾフ大隊の多くを含む推定4000人が立てこもるアゾフスタリの鉄鋼コンビナートを除き、マリウポリ市を掃討した。日曜日(4月17日)、ロシアは前線に通路を開き、降伏を求めた。しかしゼレンスキー政権は降伏を認めず、ロシア軍を足止めし続けるよう命じた。

アゾフスタルのコンビナートは、2マイル(3.2キロ)四方の工業地帯だ。小規模な部隊で包囲し、支配できる。この地域の住民はもはや重砲弾を持たず、他の物資もほとんどないと思われる。ロシア軍は広々とした土地で動くものをすべて見て爆撃することができ、それ以外はじっと敵を待つことができる。

ロシア軍は東部でウクライナ軍に対し二つの大きな優位性がある。一つはもちろん制空権。もう一つは重砲弾、燃料、食糧を必要なだけ自軍に供給できる、障害物のない補給線だ。燃料がなければウクライナ軍は移動できないし、大量の砲弾を常時供給しなければロシア軍の大砲に対抗できない。

ウクライナの弾薬と燃料の供給は、ほぼすべて爆撃で破壊されている。西側の国境から流れ込んでくるものは、東側戦線に到達するのが難しく、活発に戦闘・機動している軍隊に供給するには、いずれにせよ十分ではない。

ウクライナ軍が日々受けているダメージは甚大だ。4月18日の露国防省の発表によると、作戦中に破壊されたのは航空機139機、無人航空機483台、対空ミサイル250基、戦車などの装甲戦闘車両2326台、多連装ロケット254基、野砲・迫撃砲1004基、ウクライナ軍の特殊軍事車両2184台という。

これがもう一カ月以上毎日続いている。数字の正しさはやや不明だが、それほど誇張されているとは思わない。この日は特に激しい戦闘があったわけでもなく、この日一日で破壊された装備は、すでに米国が派遣を約束した総量よりも多いのである。

つまり東部でウクライナ軍の破壊と敗北は、ほぼ確実なのである。だとすればウクライナ政府とそれを支配する米国がとっている戦略とは何なのか。なぜウクライナはあきらめないのか。なぜロシア側と交渉を続けなかったのか。

米国とウクライナが望むのは、毎日の大げさな「ロシアは劣勢」プロパガンダによって、大規模なNATO介入に十分な政治的機運を生み出すことだろうか。それはNATO軍にとって大失敗に終わるだろう。

(次より抄訳)
MoA - The Ukraine Is Still Losing So What Is Its Plan?

物価高の責任はプーチンや「強欲な」企業ではなく、FRBにある

元米下院議員、ロン・ポール(2022.4.18)

バイデン米政権とその同盟国は、ロシアのプーチン大統領を経済的失敗の都合のよい言い訳として使い続けている。最近のデマは、ロシアのウクライナ侵攻が3月の米消費者物価指数の前年比8.5%上昇を引き起こしたというものだ。

ロシア軍がウクライナに進駐するずっと前から、物価は急騰していた。さらに、プーチンが食料とガスの輸出を止めたのではなく、バイデン政権と議会が制裁を課し、米国の消費者をさらなる物価上昇で苦しめたのである。経済効果の責任は、ロシアではなく、米政府にある。

米国は長年にわたり、米国とNATOの軍事力をロシアに近づけるという明確な目標を持って、ウクライナの問題に干渉してきた。最も悪名高い例は、2014年に米国が組織したクーデターで、ウクライナの民主的に選出された政府を転覆させた。

冷戦終結をめぐる交渉で、米国はNATOをドイツの国境を越えて拡大することを支持しないと約束したにもかかわらず、ウクライナを含むNATOの拡大を支持した。ロシアの不満はもっともだ。冷戦時代の「封じ込め」戦略の立役者であるジョージ・ケナンら外交専門家は、NATOがロシアに接近すればロシアはこれに対抗すると警告していた。

ウクライナ紛争の前、バイデン氏とその仲間の民主党議員は、物価上昇を「強欲な」企業のせいだとし、反トラスト法の訴追を強化すれば何とか物価を下げられるとまで主張していた。そして、プーチンが新たな言い訳になった。

物価上昇の主犯は、プーチンでも「強欲」な企業でもない。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長らが悪いのだ。FRBは2019年9月、前代未聞のマネー創出の乱発に踏み切り、新型コロナ後はさらなる金融緩和と低金利、ゼロ金利政策に踏み切った。物価の上昇はFRBの政策の直接的な結果である。

FRBは金利を引き上げ、バランスシートを縮小することで、物価を調整しようと計画している。このため、景気は後退に転じる可能性が高い。金利を上げると連邦政府の債務支払いも増える。これが、FRBが自由市場の金利に近いところまで金利を上げない理由である。

最良のシナリオは、70年代型のスタグフレーションに戻ることだろう。最悪のシナリオは、FRBがインフレ抑制に失敗し、議会が財政支出を止められず、ドルの基軸通貨の地位が否定され、大規模な金融危機につながるというものだ。貧困の拡大だけでなく、自由への弾圧や全体主義をもたらすかもしれない。

危機はまだ回避できるかもしれないが、それは米議会が軍産複合体向け予算をはじめとする支出削減に真剣に取り組む場合のみだ。議会はまた、FRBを監査し、代替通貨を合法化し、貴金属と暗号通貨をすべてのキャピタルゲイン税から免除することで、金融政策の改革に着手すべきである。

福祉国家・戦争国家・不換紙幣が一体となった体制は終わるだろう。いつ終わるのか、さらに権威主義的な政府に取って代わられるのか、それとも限定的な立憲政治に戻るのかは、わからない。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Blame Powell, Not Putin or ‘Greedy’ Corporations, for Price Hikes

2022-04-18

NATO拡大をめぐるクリントンの歴史修正主義

安全保障専門家、メルビン・グッドマン(2022.4.15)

ビル・クリントン元大統領は最近、1990年代の北大西洋条約機構(NATO)の拡大は、ロシアが帝国主義に回帰しかねないという安全保障上の認識に基づく決断だったと主張している。 実際のところ、クリントンの決断は国内政治に基づくものであり、東西関係の将来とはほとんど関係がない。

クリントンは1996年の再選前、共和党の対立候補者はロバート・ドール上院議員(当時)になり、90年代半ばにクリントン政権がNATOの拡大に尻込みしていたことを衝くと考えた。民主党の成功の鍵はイリノイ、ミシガン、オハイオ、ウィスコンシンといった中西部の重要州における東欧系住民の支持だった。

さまざまな民族代表団がワシントン入りし、国務省の欧州専門家などの反対を押し切って、議会やホワイトハウスに働きかけ始めた。クリントンは再選のために、東欧系住民によるNATO加盟の要求に応えることにした。冷戦時代にその使命を終えたと多くの人が考えていた同盟の拡大に動いたのである。

クリントンはNATOで特別な協議の場を提供すれば、ロシアをなだめられると考えた。 大統領選の半年前(*)、クリントンはエリツィン露大統領と「NATO・ロシア基本文書」(1997年5月)に署名した。しかし定められた合同決定や協議・調整は実現せず、露国内でエリツィン批判が強まった。 

チェコ、ハンガリー、ポーランドがNATOに加盟した年(1999年)は、ロシアでプーチンが新大統領に決まる一方で、NATOが集団安全保障を初めて発動し、セルビアを空爆しコソボから撤退を強いた年でもある。 プーチンは就任当初から、クリントンによるこれらの決定に怒り、屈辱を感じていた。

オルブライト米国務長官とクラークNATO軍最高司令官から、NATOの軍事力を強化するようクリントンに圧力がかかっていた。 オルブライトらは空爆の威嚇だけでセルビアのミロシェビッチ大統領を威圧できると助言したが、実際は3カ月近くにわたり、NATO軍は500人以上の民間人を殺害した。 

エリツィンはクリントンに(ウクライナなど)旧ソ連共和国をNATOに入れないよう求めたが、クリントンは「欧州の平和と安定に対する新たな脅威」への対応だからと拒否した。まるでルーマニアとポーランドにある米国のミサイルは、ロシアではなくイランに向けられている、と言うようなものだ。 

(次より抄訳)
Clinton's Revisionism on NATO Expansion - CounterPunch.org

*クリントンの時系列を整理。NATO・ロシア基本文書の署名は大統領選の「半年後」の誤りか?
1992年11月 米大統領に初当選
1993年 1月 第42代大統領に就任
1996年11月 ドール共和党候補を破り再選
1997年 1月 2期目就任
1997年 5月 NATO・ロシア基本文書に署名
1999年 3月 チェコ、ハンガリー、ポーランドがNATOに加盟
1999年 3〜6月 NATO軍がセルビア空爆

2022-04-17

私の夢は千のリヒテンシュタインからなる欧州

経済学者・哲学者、ハンス・ホッペ(2022年4月16日)

私の夢は欧州統合ではなく、千のリヒテンシュタイン(のような小国)からなる欧州だ。国家は民間企業と異なり、強制的に徴収する税金と、お金の印刷によって存続している。したがって国家は搾取の機関である。経済学者からは(「放浪型強盗」に対し)「常駐型強盗」と呼ばれる。

国家は領土を拡大しようとする傾向がある。その一つの方法が戦争だ。私人や私的組織が侵略のコストを自ら負担しなければならないのに対して、国家は戦争のコストを民衆に転嫁することができる。そのため、国家は民間の組織よりも本質的に戦争好きなのだ。

大国といえども、戦争は自国民の支持を得て行わなければならない。自国民に対し、攻撃の理由を明確に説明しなければならないのだ。プーチンにとって最大の問題は、目先の軍事的な出来事ではなく、ロシアが少子化の国であることだろう。戦争で母親たちが子を失うにつれ、政権への支持率は下がっていく。

小国は厳格な中立政策をとらなければならない。もちろん武装は必要だ。とはいえ、外国勢力との戦争に勝つ見込みがないことがわかれば、降伏を考えざるをえない。なぜなら、腐敗した一団(自国政府)が別の腐敗した一団(他国政府)と交代するにすぎないからだ。

たとえば、ウクライナ戦争。ウクライナが西側の模範的な民主国家であったかといえば、そうではない。汚職の指標ではロシアより悪かった。ウクライナの一人当たりの経済生産性は、ロシアより低い。ウクライナの指導者は腐敗している。

大国の攻撃に備える一つの方法は、自分自身が大きな国家になることだろう。しかし大きな国家は自国民をひどく搾取するという問題がある。もう一つの方法は、小国が同盟を結ぶことだ。ただしNATOはバルト三国など小国が大胆に振る舞い、西側諸国全体を戦争に巻き込む恐れがある。拒否権が必要だろう。

(健全な国民国家とされる)米国ではとてつもなく残酷な戦争(南北戦争)があった。北軍は南部の民間人をわざと標的にしたから、今プーチンがウクライナでやっているより、もっとひどい戦争だった。今日に至るまで、南部の大部分の人は、これは北部による侵略戦争だったと考えている。

欧州共同体の基本的な考え方は、国と国との競争を減らすことだ。今の結束は、経済力のある国の強盗の親分(政府)が、経済力の弱い国の強盗の親分を買収することで保たれている。欧州全体の経済力が低下すれば、こうした支援はもはや不可能になる。そうなれば、EUはばらばらになるだろう。 

(次より抄訳)
Hoppe: “My Dream Is of a Europe Which Consists of 1,000 Liechtensteins.” | Mises Wire
https://mises.org/wire/hoppe-my-dream-europe-which-consists-1000-liechtensteins

ロシアと戦うことを約束すべきか – フィンランドのために?

政治評論家、パトリック・ブキャナン(2022.4.15)

スウェーデンのアンデション首相とフィンランドのマリン首相はNATOへの加盟を申請する可能性が高いことを示唆した。ワシントン・ポスト紙は「歓迎すべきこと」だという。喜ぶ前に、この北欧2カ国のNATO加盟が米国にとって何を意味するのかを点検しておく必要があるかもしれない。

フィンランドはドイツと同じ大きさの国だが、人口はロシアの4%しかなく、ロシアとの国境は1335キロメートルもある。フィンランドがNATOに加盟すれば、これに怒ったロシアがフィンランドの国土を奪った場合、米国はNATO条約第5条に基づき、核保有大国であるロシアと戦争を行い、取り戻す義務が生じる。

ウクライナでの戦争とそれに伴う東欧の危機を考えれば、スウェーデンとフィンランドの政府が米国の「核の傘」の下でより大きな安全を求めるのは理解できる。だからといって、なぜ米国はロシアと戦争をすることまで約束するのか。その戦争は戦術核兵器の使用までエスカレートする可能性があるのに。

歴史はここで私たちに教訓を与えてくれる。1939年3月、英国はポーランドに無条件の戦争保証を行った。同年9月1日、ドイツがポーランドに侵攻した際、英国は英本国や大英帝国の重要な利益とは関係のない問題で、ドイツに宣戦布告する義務を負うことになった。

2008年8月のロシア・グルジア戦争、2014年の米国が支援したウクライナのクーデター、プーチンのクリミア併合、ウクライナ東部のルハンスクやドネツクの領有問題などはすべて、2008年のブカレスト宣言でNATOがグルジアとウクライナに加盟の道を開いたことがきっかけで進行した。

ドイツの宰相ビスマルクは、世界大戦が起こるとすれば「バルカン半島で起こるばかげたこと」がきっかけになると予言した。実際、第一次大戦は1914年6月にサラエボで起きたオーストリア大公の暗殺事件をきっかけに勃発した。オーストリアに戦争の「白紙委任状」を渡していたドイツは参戦した。

米国が二度の世界大戦に途中まで巻き込まれずに済んだのは、もつれた同盟関係から自由だったからだ。しかし今では30カ国からなる同盟(NATO)を率い、さらに2カ国(スウェーデン、フィンランド)が増える見込みで、そのうち1つはロシアと長い国境を接しているのだ。米国の幸運はいつまで続くだろうか。

(次より抄訳)
The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : Should We Commit to Fight Russia – for Finland?

2022-04-16

#10 「新自由主義」という奇妙な言葉

 

「新自由主義」という言葉をよく目にします。とくに最近は岸田政権が新自由主義の修正を政策に掲げ、注目されています。けれどもこの新自由主義、そもそも正確にはどういう意味なのでしょう。言葉の使い方を確かめていくと、つじつまの合わない、おかしなことに気づきます。

<参考情報>

2022-04-15

バイデン政権高官、米国がロシア侵攻前にウクライナとNATOへの対応を拒否したと認める

クインシー研究所「リスポンシブル・ステートクラフト」(2022年4月14日)

バイデン政権の高官が最近認めたところによると、ロシアのウクライナ侵攻前、米国は、プーチン大統領が最も頻繁に口にする安全保障上の最大の懸念の一つであるウクライナのNATO加盟の可能性について、何の努力もしなかったという。

米国の外交・防衛政策分析サイト「War on the Rocks」が水曜日に公開したポッドキャストで、NATOのウクライナ進出について侵攻前に「交渉のテーブルにはなかったのか」と問われ、アントニー・ブリンケン国務長官の顧問、デレク・コレット氏は「なかった」と答えている。

コレット氏の発言は、バイデン政権が、ロシアがウクライナに対して戦争を仕掛けるのを防ぐために、ウクライナのNATO加盟を拒否または延期することを提案するなど、十分なことをしていなかったと考える多くの評論家の疑念を裏付けるものである。

「我々はロシアに対し、彼らの真の懸念、つまり軍備管理のような、ある意味で正当な問題について話し合う意思があることを明らかにした」とコレット氏は述べ、バイデン政権は「ウクライナの将来」をそうした問題の一つとは考えておらず、NATO加盟の可能性は「取るに足りない問題」だと付け加えた。

「NATOは関係ない」とコレット氏は述べたが、しばらくして「このまったく不当な、いわれのない戦争で、(プーチンの)目標は、米国を欧州から引き離し、NATOを弱体化させようとすることだった」と矛盾したことを言った。

ロシアがウクライナに対して戦争を開始する数週間前、プーチンはNATO拡大に関するロシアの懸念が無視されていると主張した。「私たちは今、この問題を解決する必要がある......私たちの懸念がパートナーに聞かれ、真剣に受け止められることを強く望んでいる」と後に述べた。

「私たちはNATOについて、NATOは防衛的な同盟であると話した。NATOはロシアにとって脅威ではない」とコレット氏は述べた。

(次より抄訳)
Biden official admits US refused to address Ukraine and NATO before Russian invasion - Responsible Statecraft

米国/NATOのウクライナ政策に対する米欧メディアの反対意見は少ないが、検閲キャンペーンは過激

ジャーナリスト、グレン・グリーンウォルド(2022.4.13)

ウクライナ戦争に関する米国・NATOの一般的な見解に反するニュース、情報、視点に触れようと思えば、厳密な検索が必要である。そして、その検索が成功する保証はない。なぜなら、この戦争に関して西側で行われている国家と企業の検閲体制は、驚くほど積極的で、迅速かつ包括的だからである。

ロシアのウクライナ侵攻からわずか1週間後の3月上旬、EU27カ国は「偽情報」と「公序良俗」を理由に、ロシアの国営メディアであるRTとスプートニクを欧州全域で視聴禁止にすると公式に決定した。フェイスブックとグーグルはすでにこれら露メディアを禁じており、ツイッターも同様に禁止することを発表した。

ツイッターはいつものように何の説明もなく、Russians With Attitude という反体制派アカウントの一つを突然凍結した。英語を話す2人のロシア人によって2020年末に作られたこのアカウントは、開戦以来人気が爆発し、フォロワーは侵攻前のおよそ2万人から、凍結時点では12万5000人以上となっていた。

米政府、NATO、ウクライナ政府の主張をなぞる米欧メディアから追放された報道や情報に、米欧の人々は飢えている。ワシントン・ポスト紙が認めたように、「ロシアのウクライナ侵攻の最初の4日間に、ユーチューブではロシアが支援する12以上のプロパガンダチャンネルの視聴者が異常に急増した」のである。

親ウクライナの偽情報、プロパガンダ、嘘に対する検閲は、西側諸国によってもシリコンバレーの独占企業によっても、ほとんど行われていない。検閲の方向はただ一つ、偽情報を流したかどうかにかかわらず、「親ロシア」とみなされる声を黙らせることだ。

封殺の対象となるのは「偽情報」ではなく、「誤った意見」なのだ。ウクライナにおけるNATOの計画を推進するためなら、いくらでも嘘や偽情報を流すことができる。しかしNATOとウクライナのプロパガンダの枠組みに疑問を呈することは、追放という非常に大きなリスクを伴わなければできないことなのである。

シリコンバレーの独占企業が、米政府の外交政策上の利益と完全に一致した検閲権力を行使するのは当然のことである。グーグルやアマゾンなど主要ハイテク独占企業の多くは、CIAやNSAの両方を含む米国の安全保障国家に対し非常に有利な契約を日常的に求め、獲得している。

これらハイテク企業のトップは、民主党の幹部と非常に親密な関係を享受している。議会民主党は、ハイテク企業の経営者を様々な委員会に何度も呼び寄せ、もし彼らが党の政策目標や政治的利益に従って検閲を強化しなければ、法律や規制で報復すると露骨に脅してきたのである。

軍事費増加で誰が利益を得ているかは、謎でも何でもない。国防総省は米大手兵器メーカー8社のトップを招き、ロシアとの戦争が何年も続いた場合にウクライナの兵器需要に応える業界の能力について議論するという。参加企業には、元役員のオースティン退役将軍が国防長官を務める幸運なレイセオンも含まれる。

(次より抄訳)
Western Dissent from US/NATO Policy on Ukraine is Small, Yet the Censorship Campaign is Extreme

米政府は最後のウクライナ人までロシアと戦う

ケイトー研究所主任研究員、ダグ・バンドウ(2022.4.14)

ロシアのウクライナに対する戦争は激化している。米国と欧州はウクライナ政府を支援し続けている。しかし、和平のためではないようだ。むしろ同盟国は、ウクライナが最後の一人までロシアと戦う限り、ゼレンスキー政権を支持する用意がある。これはウクライナ政府に対する米欧側のいつものやり方だ。

同盟国はウクライナ政府に豊富な武器を提供し、ロシアに耐えがたい制裁を課しているが、これはすべてウクライナを戦争に巻き込むためのものだ。米欧は戦闘に参加するつもりはないと明言している。

最も気がかりなのは、ウクライナの人々が最も必要としている平和を、同盟国が支援しないことだ。ある作家がいうように、戦争を始めることに次いで非難されるべき行為は、事態が好転する望みもないのに戦争を続け、死ぬ人を増やすことだ。証拠が示すように、米国はウクライナの外交的解決を阻害している。

もちろん、いつ戦闘をやめるかはウクライナが判断する。しかし米欧政府は少なくとも戦争と同程度に和平を支持するべきだ。米欧は長い間、和平よりもウクライナにおける支配を優先してきた。2014年の一連の対立の後、和平の機会が訪れたときもそうだった。ミンスク合意を守らせることもできなかった。

現在米政府は、ウクライナの指導者が平和に向け妥協することを妨げ、ウクライナ人が死すべき大義に関するありがたいお説教を好むようになったようだ。国務省のプライス報道官は、ウクライナに自国の外交政策を決める権利があることをしぶしぶ認めつつ、NATOに加盟する権利を諦めさせまいとした。

バイデン政権は現状、ウクライナに和平の可能性を無視して戦争を続けろと求めてはいない。専門家はそう遠慮がちではない。「ウクライナは勝たなければならない」とアトランティック誌のアン・アップルバウムは宣言した。エコノミスト誌によれば、ウクライナの勝利は「西側にとっての賞」だそうだ。

戦争で破壊されているのはウクライナだ。紛争の停止を最も求めているのはウクライナ人だ。恒久的で安定した解決策がいる。それは紛争の原因、特にロシアの安全保障上の懸念に対処する合意によって達成するのが最善だ。米欧はロシアの利益と脅威を無謀にも無視し、ウクライナにその代償を支払わせた。

(次より抄訳)
Washington Will Fight Russia to the Last Ukrainian - The American Conservative

2022-04-14

#09 分業がもたらす繁栄



米欧日がロシアに対し経済制裁を発動しています。政治的な意味はあっても、経済的には標的にされた側だけでなく、発動した側にもマイナスです。経済が繁栄するカギは「分業」だからです。アダム・スミスの有名な本『国富論』を紹介しながら、分業の大切さについて解説します。

<参考情報>

経済制裁の悪

経済学者、マイケル・ロゼフ(2014年)

経済制裁の背後にある理論は、標的となった国の指導者が要求に屈するまで、その国の罪のない人々をできるだけ多く傷つけ、没落させ、殺すことだ。大量殺人、大量の不幸の理論だ。罪のない人々を標的にし、彼らの不幸が政府の政策変更につながると期待する。それ自体間違っている。

ロシアは、米国が暴力団(政府)に率いられているのと同様、暴力団に率いられている。暴力団のリーダーに自分たちの食い違いを解決させるのが正しい道だ。両国の国民は、自国政府の指導者の争いから離れたところにいる。オバマ(当時)やプーチンの行動の責任を、米露の有権者に押し付けるのは無理だ。

モスクワへの水爆投下が間違いであるのと同じ理由で、制裁は間違っている。罪のない人々を標的にしているからだ。ビンラディンが告発された際にアフガニスタンのタリバン政府を攻撃したこと、サダム・フセインのイラク、カダフィのリビアを攻撃したのと同じ理由で、間違っている。

制裁では米国のギャングが同時に告発者、検察官、裁判官、陪審員、死刑執行人として振る舞った。どの事件も証拠が不十分。証拠と情報は改竄・捏造された。シナリオが創作・宣伝され、事実として提示された。問題を引き起こした米国の役割は葬り去られた。「敵」が悪者扱いされた。すべて間違っていた。

制裁の結果も間違っていた。相手国の国民を罰しても指導者の政策が変わらないため、争いが長引き、ときに戦争に発展した。オバマの不支持率が上がり、支持率が最低になっても、政策は変わらない。民主主義を自慢する国でこれなのに、民主的でない国で国民の不幸が指導者に影響を与えるはずがない。

(次より抄訳)
The Evil of Economic Sanctions - LewRockwell
https://www.lewrockwell.com/2014/03/michael-s-rozeff/the-evil-of-economic-sanctions/

2022-04-13

米国務省は戦争防止に失敗した。今度は平和を阻止するのか?

Craft共同創業者兼ゼネラルパートナー、デビッド・サックス(2022年4月8日) 

ウクライナの戦争は防ぐことができた。プーチンの行動が戦争を引き起こしたからといって、戦争が避けられなかったわけでも、戦争を防ぐ手段を講じることができなかったわけでもない。数年前、多くの学者がウクライナの将来の危機を予測し、国を破滅させるだろうと述べていた。

NATOがウクライナとグルジアの加盟に門戸を開いた2008年のブカレスト宣言以来、ロシア側はこの2つの隣国のNATO加盟を「越えてはならない一線」だと表明してきた。そして同年末にグルジアに侵攻し、ロシア系住民が多く住む地域を確保することで、その本気度を証明したのである。

この14年間、プーチンとロシアのエリートは声をそろえ、「ウクライナのNATO加盟は安全保障上の脅威として耐えがたい」と語ってきた。米国はこの越えてはならない一線を無視し、NATOの拡大を推し進め、正式加盟前にもかかわらずウクライナの軍隊をNATOと連携させた。

今年1月、ブリンケン米国務長官はラブロフ露外相との交渉で、NATO加盟について何の譲歩もしなかった。実際、彼は西側の強硬姿勢を誇りに思っているようで、「今までもこれからも変わることはない」と発言し、「NATOの門戸は開かれており、今も開かれている。それが私たちの約束だ」と述べた。

ロシアが敵対的な軍事同盟による包囲を本当に心配していると想像するのは、そんなに難しいことだったろうか。外交官は相手の立場に立って考えられるはずではないか。もしNATOが純粋に防衛的な同盟だとしても、ロシアがその巨大な軍事力を攻撃の可能性とみなすとは本当に考えられないのだろうか。

ロシアは、NATOがリビアのカダフィを倒し、コソボ紛争でセルビアの同盟国を爆撃するのを見ている。ウクライナ国境に米国の軍隊、武器、基地が配備されるというロシアの想像を理解するのは、それほど難しいことだろうか。米国はキューバ危機を経験したのに、ロシアの同じ懸念は狂気と片付けている。

国務省は外交官失格だ。もちろんこんな無能は隠蔽しなければならないから、政府高官は戦争が始まるとすぐ、ウクライナ侵攻はNATOの拡張とは無関係だと主張し始めた。サキ報道官によれば、異を唱えることは「プーチンのオウム返し」でしかないという。米政府はこの話題をタブーにした。

バイデン政権のバーンズ現CIA長官は2008年のロシアに関する有名なメモで、当時のライス国務長官に対し、ウクライナへのNATO拡大は「(プーチンに限らず)ロシアのエリートにとって絶対越えてはならない一線」と書いた。これはプーチンのオウム返しでしかなかったというのだろうか。

(次より抄訳)
The State Department Failed to Prevent the War. Will It Now Prevent the Peace? - The American Conservative

戦争の代わりに、ロシア・ウクライナ・同盟国は自由な市場経済を試すべし

リービー・ビジネススクール卒業生、エドワード・フラー(2022年4月14日)

ウクライナ危機の打開は、真の自由市場経済という究極の目標に合致したものでなければならない。それには3つの緊急措置が必要だ。(1)米政府はロシアに対するすべての制裁を解除する(2)露政府はウクライナからすべての軍隊を撤収させる(3)宇政府はNATOに絶対に加盟しないことを保証する。

ウクライナはロシアが永久に占領するには広すぎる。ロシアはドンバス地方と沿岸部を吸収しても、国土の大部分には関心がない。自衛戦争は正義の戦争だが、同時に、勝ち目のない戦争を戦うことは不当だ。ウクライナの指導者は不当にも、NATOという失われた大義のために不必要な人的被害を許容している。

ロシアの指導者たちは、今さら引き下がることは政治的に不可能だと感じているに違いない。それでも和平への第一歩を踏み出すのが賢明だろう。経済力ではNATO側が圧倒的に優位だ。米国やNATOとの勝ち目のない戦争を避けるために、ウクライナから直ちに軍隊を撤収させることは、ロシア自身の利益となる。

米政府はロシアに対するすべての経済制裁をただちに撤廃すべきだ。制裁は罪のないロシア人に害を与える。罪のない米国人にも大きな痛みをもたらす恐れがある。経済制裁を多発すると、他の国々も次は自分たちの番だと恐れ、ドルから逃げ出すかもしれない。これは米国の物価高を悪化させることになる。

ロシアへの制裁は、米国や他の金融センターで金融危機を引き起こす恐れがある。世界の片隅で思わぬデフォルトを生むかもしれない。それが米国に飛び火し、金融危機を引き起こすかもしれない。制裁によって現実的な金融リスクが生じる。経済的な反動を避けるために、ただちに制裁を解除するのが最善だ。

米政府はウクライナの指導者に対し、NATO加盟を諦めるよう圧力をかけるべきだ。もしウクライナが拒否すれば、米政府はウクライナをNATOに加盟させないと発表すべきだ。また、米国がNATOに他の加盟国を決して認めないことを約束すれば、それも有効だろう。NATOはすでに大きすぎるのだ。

(次より抄訳)
Instead of War, Russia, Ukraine and Their Allies Should Try the Free Market | Edward W. Fuller

2022-04-12

赤狩りの再来とウクライナ政策論争

ケイトー研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター(2022年4月11日) 

米国の対露政策に関し、「赤狩り(マッカーシズム)」と同じパターンが現れた。ロシアがウクライナに侵攻するずっと前から、ネオコンとタカ派リベラルの連合がそれを主導した。2014年に親露派の大統領を失脚させるため米政府が干渉し、ロシアのクリミア併合につながったと主張した専門家は、罵詈雑言の標的になった。

初めに標的とされた一人は、プリンストン大学のスティーブン・コーエン教授である。ソビエト連邦とその後継国を長年研究した著名な学者だ。コーエン氏の動機と評判は貶められ、「米国でのプーチン擁護者」「プーチンの仲間」などという誹謗中傷が日常茶飯事となった。

2014年以降、非難はさらに露骨になった。NATOの東方拡大がロシアを不必要に刺激したと主張するアナリストは「プーチンの擁護者」「手先」「ロシアの回し者」「カモ」「役に立つバカ」と揶揄され、FOXのタッカー・カールソンは「全米一注目されているクレムリンの宣伝マン」とレッテルを貼られた。

1990年代から名高い学者らは、NATOのロシアへの拡大は東西関係を悪化させ、新たな冷戦、あるいは熱い戦争につながると警告を発していた。そのような学者には、冷戦時代の対ソ封じ込め政策の知的立役者であるジョージ・ケナンや、現実主義的国際関係論の長であるジョン・ミアシャイマーが含まれていた。

評論家キース・オルバーマンは、FOXのカールソンと民主党のトゥルシ・ギャバード前下院議員を「敵性戦闘員」として逮捕し、偽情報の罪で裁くため拘束せよと軍に要求した。ロムニー上院議員は、戦闘地域で勤務したことのある優秀な退役軍人ギャバードが「反逆的な嘘」を流布していると非難した。

最近の風潮は少数意見に対する明白な脅威であり、赤狩り時代だけでなく、第一次世界大戦中のさらに非道な言論弾圧を思い起こさせる。当時、米政府は戦争反対者2100人以上を起訴し、ほとんどを刑務所に送り込んだ。現実主義と自制に基づく外交政策を守り、不寛容な雰囲気を再び蔓延させてはならない。

(次より抄訳)
McCarthyism re-emerging stronger than ever in Ukraine policy debates - Responsible Statecraft

#08 正しい戦争とは何か? 核兵器はなぜ悪なのか?


ウクライナ紛争をきっかけに、正しい戦争とは何かという議論が関心を集めています。また、この紛争が世界的な核戦争につながりかねないとも心配されています。自由主義によって平和を実現しようとする立場からは、「正しい戦争」や核兵器の問題をどう考えればよいでしょうか。

<参考情報>

2022-04-10

リバタリアンの戦争理論

経済学者・法哲学者、マレー・ロスバード(1963年)

リバタリアン理論の基本原則は、誰も他人の身体や財産に対し暴力を振るったり、暴力を振るうと脅迫したりしてはならない、というものである。暴力は、そのような暴力を振るう人間に対してのみ用いることができる。つまり、他者の攻撃的な暴力に対する防御としてのみ用いることができる。

無実の人の身体や財産に対する暴力を禁ずるルールは絶対的である。 このことは、侵害の主観的動機が何であろうと、当てはまる。 たとえロビンフッドであっても、飢えに苦しむ人であっても、別の人の攻撃から自分を防衛している最中の人であっても、他者の財産や身体を犯すことは悪であり、犯罪である。

自分の身体や財産を守るために犯罪者に対して暴力を行使することは正当であり、他の罪のない人々の権利を侵害することは完全に許されない。戦争は、 暴力行使の対象が個々の犯罪者そのものだけに厳しく限定されている場合にのみ適正である。歴史上の戦争や紛争のうち、一体どれほどがこの基準に合致していたか、我々自身で判定できよう。

弓矢は侵害的な目的にも使えるが、侵害者に対してだけ使うにとどめることもできる。核兵器は、たとえ「通常型の」投下爆弾でさえ、そうすることができない。 核兵器はそれ自体で、無差別大量破壊の装置なのである。したがって、 核兵器ないし類似の兵器の使用、あるいは使用するという脅迫は、微塵も正当化の余地のない、人類に対する犯罪であると結論しなければならない。

選択的に使うことができない、つまりリバタリアン的な仕方では使えないというところが、まさに現代兵器の特性である。したがって、その存在自体が非難されねばならず、核軍縮はそれ自体目的として追求されるべき善である。

それとも、リバタリアンは価格統制や所得税については適切にも憤りをおぼえるのに、大量殺戮という究極の犯罪に対しては肩をすくめるか、あるいは積極的にこれを支持しさえするというのだろうか?

(次より抄訳)
A Libertarian Theory of War | Mises Institute
https://mises.org/library/libertarian-theory-war

ロシアへの重い制裁は、より大きな経済戦争の始まりを意味する

ミハイ・マコベイ、ルーマニア・ミーゼス研究所研究員(2022年4月9日)

今回のロシアに対する経済制裁の種類と規模は、通常の貿易戦争の域を超えている。外国製品や外国での事業活動を自主的にボイコットするなら私有財産権は侵害されない。一方、政府が直接間接に外国貿易や事業活動を禁止すれば、私有財産権を侵害するだけでなく、その規模から経済的な損害も大きくなる。

外国資産の差し押さえや完全な没収は、正当な裁判所の判決や国際契約、国連決議などの条約の結果でない場合、財産権の観点からはさらに有害だろう。正当な法的根拠がなければ、憲法の文言と精神の双方を遵守することにならない。

制裁で誰がより多くの損失を被るかは別として、一段のエスカレートや本格的な経済戦争につながる恐れがある。契約や財産権の侵害は企業の信頼や貿易、投資に打撃を与えかねない。中国、サウジアラビア、インドなどは今と将来の制裁を避けるため、国際取引で米ドルから離れることをすでに検討している。

ロシアは、世界のGDPの約4割を占める他の新興国と取引を続けているため、経済制裁は期待したほど効果がない。米国と同盟国は、ロシアを非難せず経済制裁も行わない中国やインドなどに圧力をかけるが、ほとんどの国が態度を変えない。中東の友好国でさえ、バイデン大統領の石油増産の要請を無視した。

過去30年間のグローバル化が終わり、制裁が世界的な経済戦争に発展した場合、国際分業の解体による生産性の損失は相当なものになろう。最近の研究によると、経済のグローバル化が1%進むと、OECD加盟国では長期的に生産性が0.5%上昇する。グローバル化の終わりは、それを削り取ることになる。

(次より抄訳)
Heavy Sanctions against Russia Could Usher in a Wider Economic War | Mises Wire

2022-04-09

ウクライナ政府の武装はネオナチの武装

経済学者、マイケル・ロゼフ(2015年)

米政府がウクライナ政府を武装させれば、ネオナチを武装させることになる。ウクライナの政府と軍に存在するネオナチ分子は強力であり、議論の余地はない。ウクライナ政府はナチスではないが、ネオナチの部隊は組織、武器、肉体を持ち、街頭を統制している。

米国がシリアでテロリストを武装させたように、今、バイデン(副大統領、当時)やグラハム(上院議員、同)ら米政府要人が、ウクライナのネオナチを武装させようとしている。オデッサの虐殺(2014年5月。ロシア系住民が襲撃され死亡)を引き起こしたのと同じ、ネオナチをである。

たとえウクライナの政権がこうした人種差別主義者を抱えていなかったとしても、同国の武装化には反対だ。米国が選んだ(反政府勢力などの)「善人」はたいてい、まったく善人ではないし、米国は彼らをコントロールすることも、彼らを使ってよい結果を得ることもできない。

(次より抄訳)
Arming Kiev Is Arming Neo-Nazis - LRC Blog

#07 伝統文化を守るには、政府の補助金?

 

日本の伝統文化を守るには、補助金を出したり輸入を規制したりして国産品を保護しなければならない、という意見をよく聞きます。それって正しいのでしょうか。日本酒を例に考えてみましょう。朝ドラで人気を集めた川栄李奈さんが数年前に初主演した傑作映画が、手がかりです。

<参考情報>

2022-04-08

なぜウクライナにいるのか?

プリンストン大学名誉教授、スティーブン・コーエン(2019年)

数世紀にわたり、ロシアとウクライナの大部分は国境、歴史、民族、言語、文化、人的関係、貿易など多くを共有してきた。2014年以降、両国政府の対立が激化した後でも、両国民の多くは自分たちを家族的な関係で考えている。米国はウクライナとこうした共通点がほとんどない。「重要な国益」などない。

1990年代、クリントン大統領はNATOをドイツから東へ拡大し、最終的にはウクライナまで拡大すると決断した。それ以来、民主党も共和党も、ウクライナは「米国の重要な国益」だと主張してきた。その愚かさに反対する私たちは、ロシアとの危険な衝突や戦争につながるかもしれないと警告した。

もしカナダやメキシコと米国との国境にロシアの軍事基地が出現したら、米国はどのような反応を示すか想像してみてほしいと、私たちは指摘した。それは間違っていなかった。ドンバスでのウクライナとロシアの戦争で、推定1万3000人が死亡し、200万人が避難している。

民主党はウクライナへの大規模な軍事支援を差し止めたトランプ大統領(オバマ大統領は強い圧力にもかかわらず、賢明にもそうした)を激しく批判している。2020年の民主党の大統領候補はトゥルシ・ギャバードを除き、ウクライナへの軍事支援を競うことになりそうだ。民主党は戦争政党になりつつある。

一方、ロシアのプーチン大統領は、「米国のウクライナ侵略」に対し消極的だと政府内の強硬派から非難され続けている。しばしば悪口を言われるトランプとプーチンが、もろい冷戦の平和をそれぞれの国の好戦派から守っているかもしれないとは、皮肉というべきか、悲劇というべきか。

(次より抄訳)
Why Are We in Ukraine? - LewRockwell

2022-04-07

#06 「言葉の暴力」に殴るのはありか?

 

心ない言葉を誰かに浴びせた人は、相手に殴られても仕方ないでしょうか。ある種の発言は「言葉の暴力」と呼ばれ、それに対し物理的な暴力や政府の刑罰で「報復」しても許されるような空気があります。アカデミー賞授賞式での珍事と、ある作家の考察をもとに考えてみましょう。

偽りのエリート

ミーゼス研究所所長、ジェフ・ダイスト(2022年4月6日)

政治と癒着したエリート層は過去百年以上を費やして、米国の教育、医療、外交、通貨、銀行、大企業、文学、芸術、娯楽などを駄目にしてきた。

ジェフ・ベゾスのように、市場ですばらしい業績を上げながら、最悪の超国家と深い結びつきを保っているエリートもいる。アマゾンは多くの犯罪的な連邦機関にクラウドサービスを販売し、ベゾス自身はCIAの機関紙ワシントン・ポストを単独で所有している。

イーロン・マスクは最近テスラ株式の一部を売却してツイッター株を購入、同社の取締役になった。彼の富はペイパル、テスラ、スペースXを創業した先見性と不屈の努力によるもの…だろう。テスラの富の少なくとも一部は政府がEV市場を補助したことによるし、スペースXはNASAと直接契約している。

オバマ夫妻の7000万ドルの純資産は、すべて大統領職を踏み台にしている。ブッシュ(息子)は4000万ドル。彼は石油・ガス会社をジョージ・ソロスの会社に売っている。バイデンの純資産は2009年の3万ドル以下から、現在では1000万ドル近く。彼は1970年以来、一度もまともな仕事に就いていない。

元ジョージア州知事候補ステイシー・エイブラムスの純資産は、2018年の10万9000ドルが今は317万ドル。彼女は何を築き、何を生み出したのか。ヴァンダービルト財閥に生まれエリート大学を卒業し、CIAでインターンを務めたCNNキャスターのアンダーソン・クーパーは、その地位にふさわしい人物なのか。

貧しく腐敗した国では、エリートはスイスの銀行預金を増やす一方で、市民のわずかな財産に寄生する。裕福で腐敗していない国では、エリートははるかに慈悲深く行動する(例・リヒテンシュタインのハンス・アダム2世)。必要なのはエリートを排除することではなく、より優れたエリートを作り出すことだ。

(次より抄訳)
The Wrong Elites | Mises Wire
https://mises.org/wire/wrong-elites

2022-04-06

「ルールに基づく国際秩序」は死んだ。米政府が殺した

ミーゼス研究所編集主任、ライアン・マクメイケン(2022年4月5日)

今回のロシアの侵略が何か特殊なものだという見方は、歴史を完全に書き換え、2003年の米国のイラク侵略を無視している。当時は米国が国連安保理の常任理事国でも問題なかったのに、なぜ今ロシアは許されなくなるのか。米国は好きな国を侵略し、それでも逃げ切れるだけの力を持っているからだ。

米国は厚かましくも、「ルールに基づく国際秩序」を守る白馬の騎士を自任し続けている。しかし米国が先制攻撃や選択的戦争で国々を侵略する以上、その「ルール」が何の意味もなさないことは明白だ。米自身が反故にすることを望む「ルールに基づく国際秩序」で、指導的立場になれるかは疑わしい。

米国の偽善的態度は世界貿易、国際法、新たな冷戦の可能性にまで影響が及ぶ。多国間主義という概念は、米国の体制転覆計画の妨げとなる場合、何の意味も持たない。米国はウクライナ問題で多国間の道徳的な十字軍を要求しているが、他の国からほとんど協力を得られないのは、偶然ではあるまい。

北大西洋条約機構(NATO)以外の国で、ロシアの石油や小麦、その他あらゆるものから自国民を切り離し、貧困化させるという米国の要求に応じようとするものはほとんどない。アジアからアフリカ、中南米に至るまで、世界の多くは米国の政治家を喜ばせるために国民を飢えさせることを望まないだろう。

今こそ国連廃止の好機かもしれない。米国は30年間、国連を軍事介入にお墨付きを与え、同盟国への口実にし、敵の烙印を押す米主導の機関にしてきた。ルールに基づく国際秩序の体裁を整えたが、都合で無視もした。イラク侵攻前には安保理で反対国を非難し、ウクライナなど東欧の友好国を抱き込んだ。

世界は少なくとも反ロシア圏と中立圏の二つのブロックからなるポスト・グローバリゼーションの世界に突入しつつある。バイデン米大統領は「新しい世界秩序」で、米国が「自由世界」をリードすると主張している。

それには少なくとも部分的には道徳的リーダーシップに基づく、ソフトパワーの拡大が必要だ。だがここ数十年、米国がルールに基づく秩序をあからさまに無視してきたせいで、その可能性はますます低くなっているように思われる。

(次より抄訳)
The "Rules-Based International Order" Is Dead. Washington Killed It. | Mises Wire [LINK]

ウクライナと新しいアルカイダ

ジャーナリスト、ホイットニー・ウェッブ(2022年3月6日)

ウクライナとロシアの紛争が激化し、世界の注目を集め続けるなか、米中央情報局(CIA)がウクライナ反乱勢力の創設と武装化に取り組んできたという証拠が増えつつある。その影響力の大きさに比べ、ほとんど注目されていないのが現状だ。

ロシアがウクライナで軍事行動を始めた直後、外交問題評議会のフォーリン・アフェアーズ誌は「来るべきウクライナの反乱」という記事を掲載した。著者はダグラス・ロンドンという「CIAの元作戦官」である。「プーチンは、複数の国境を越えて広がる、長く血なまぐさい反乱に直面する」と述べている。

ロンドンは、この明らかに差し迫ったウクライナの反乱のモデルとして、1980年代のアフガニスタンにおけるCIAの支援による反乱と、2011年から現在までのシリアの「穏健な反乱」に明確に言及した。CIAが支援した反乱を、ウクライナへの「秘密」援助のモデルとして宣伝しているのは、彼だけではない。

ヒラリー・クリントン元国務長官はMSNBCでウクライナ情勢について、CIAが支援したアフガンやシリアの反政府勢力を「(米政府の)人々が今注目しているモデル」として挙げた。国務省で彼女に仕えたジェイク・サリバンが、バイデン大統領の補佐官(国家安全保障担当)であることは注目に値する。

アフガニスタンで反乱を支援した米国の作戦は、同国におびただしい破壊をもたらし、多くの死者と戦争犯罪を生み出し、米軍史上最も長い(したがって最も費用のかかる)戦争と占領を引き起こした。また、他のいくつかの国々を爆撃し破壊し、国内では市民の自由を削り取る結果となった。

CIAはヤフーの取材に対し、反乱軍の訓練を行っていることを否定したが、同じく1月に掲載されたニューヨーク・タイムズの報道では、ロシアが侵攻した場合、米国はウクライナの反乱軍への支援を検討していることが述べられている。

2020年5月、米政治ニュース専門サイト、ポリティコは「専門家はパンデミックの到来を予見していた。次に心配されるのはこれだ」と題する記事を掲載した。筆者はギャレット・グラフ(元ポリティコ編集者、ジョージタウン大学ジャーナリズム・広報プログラム教授)である。 

グラフはアスペン研究所のサイバー・イニシアティブ担当ディレクターでもある。同研究所は、ロックフェラー兄弟基金、カーネギー公社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団からおもに出資を受けている「無党派」シンクタンクだ。

(次より抄訳)
Ukraine & The New Al Qaeda - The Washington Standard

2022-04-05

#05 メディアが伝えない無自覚の暴力

 

「無自覚の暴力」という言葉、メディアでよく目にします。相手のつらさが「わかります」と安易に口にして精神的に傷つけてしまった、などというものです。それも一種の暴力かもしれません。しかし多くの人はもっと物理的で直接的な暴力に、無自覚なまま加担しています。

<参考文献>

2022-04-03

ウクライナ紛争の真相

中国シンクタンクCCG研究員、アンディ・モク(2022年4月2日)

ウクライナに軍事紛争の拡大が可能なのは、米国が煽動し、永続させてきたからだ。スティンガーミサイル、ジャベリンミサイル、自爆ドローンといった武器や物資の果てしない供給や、米欧での何年もの秘密軍事訓練と情報支援がなければ、ウクライナは短期の戦闘さえできないだろう。

CNNをはじめとする企業メディアが主導し、二方向からプロパガンダ戦争をしかけている。一つは、ロシアの軍事作戦はいわれのない攻撃で、失敗しているとする攻撃。もう一つは、米国と西欧はロシアに対し不可分の同盟を結んでおり、世界はこれらいわゆる自由の擁護者とともに立っている、というものだ。

どちらも真実ではない。第一についてはケナン、キッシンジャー、ミアシャイマーらが、ロシアのレッドラインを越えてはならないと警告してきたが無視された。また一部の軍事アナリストは、ロシアの行動を、迅速かつ成功した軍事攻撃の例として賞賛されるナチスの電撃戦と好意的に比較している。

第二のプロパガンダについて無視されているのは、米主導の対露制裁を支持しない国の数だ。これらの国には中国、インド、イラン、その他地政学的に重要な数カ国が含まれる。OPEC加盟国から南アジア、アフリカ、ラテンアメリカに至るまで、ロシアには西側メディアが伝える以上に多くの友好国がある。

欧州はロシアから天然ガスの供給が途絶えれば、とくに冬には悲惨なことになる。これは米主導の対露連合の結束を打ち砕く可能性がある。具体的には、ドイツは米国の「リーダーシップ」の下に置かれるよりも、ロシアと経済的な運命をともにする方が良いのかどうか、公に議論することになるかもしれない。

(次より抄訳)
What's really behind conflict in Ukraine - a thread [LINK]

2022-04-02

#04 市場の神秘に目を見張ろう

 

「自然の神秘」「自然の驚異」という言葉をよく聞きます。生物学者レイチェル・カーソンは、自然の不思議さに目を見張る感性(センス・オブ・ワンダー)を大切にしたいと語ります。けれども自然に劣らないすばらしい神秘を、私たちは日常で気づかないまま、目にしています。

<参考文献>