2018-12-31

アンチゴーヌの問い

東京・新国立劇場で上演中の「アンチゴーヌ」を観てきました。ソフォクレスのギリシア悲劇をフランスの劇作家アヌイが翻案したものですが、主題は共通しています。それは「法律はつねに正しいか」という問いかけです。

主人公の少女アンチゴーヌは、野にさらされた兄ポリニスの遺体にとむらいの土をかけたことが罪とされ、捕らえられます。ポリニスは外国軍を味方につけ、王位を奪おうとした反逆者だったからです。アンチゴーヌのおじで王のクレオンはポリニスの埋葬を禁じ、背く者は死刑にするよう命じていました。

クレオンの息子でアンチゴーヌの婚約者でもあるエモンは、父にアンチゴーヌを助けるよう訴えますが、法律で決められた以上、王である自分にもそれはできないとクレオンは突っぱねます。アンチゴーヌは生き埋めの刑に処され、エモンは後を追って命を断ちます。

1944年に初演されたこの作品は、 ナチス・ドイツに占領されたフランスの対独協力行為に対する批判が込められているとされます。しかしそれにとどまらず、法律と道徳の対立という普遍的な問題について考えさせられます。

欧米社会では、この作品のもととなったソフォクレスの「アンチゴネー」が古典とされ、繰り返し上演されることが示すように、法律と道徳は対立する場合があるという認識は、ある程度共有されています。

ところが日本では、そうした認識はきわめて薄いように見えます。それどころか、ほんのささいなことでも、法律に違反すること、違反しそうなことを芸能人などがやると、それだけで一斉に叩きます。

言論人やメディアも、ある政策が国会で法案として議論されている間はさかんに批判しても、法律になったとたん、何も言わなくなります。そして企業や個人がその法律に違反すると、悪法だから廃止せよと主張するのでなく、犯罪として叩きます。

法律だから何でも正しいという態度は、思考停止ではないでしょうか。法律を超える価値観を持たずに、法律が正しいかどうか判断できるのでしょうか。生き埋めにされるため洞穴を一人降りていくアンチゴーヌの姿は、私たちにそう厳しく問いかけます。(2018/01/19)=「COMEMO」での連載終了

円の裏付けはあなたの税金

裏付けのない通貨
ビットコインはユーロやドルと違って中央銀行による裏付けがないため、通貨とは呼べないとドラギECB総裁。裏付けがないのはユーロやドルや円も同じです。昔は金が裏付けだったのでお札と交換で金をもらえましたが、今は何ももらえません。
ビットコイン「私なら慎重に」 欧州中銀ドラギ総裁

なぜ市場に任せないのか
自民「一部の地域でカジノを解禁しよう」 公明「ギャンブル依存症対策法案も不可欠」 野党「カジノ解禁は許さない」……。いや、全面解禁して自由に競争し、すぐれたカジノが残ればいいのでは?
カジノ法案、対決色強まる 与党、依存症対策呼びかけ 立民は抵抗「解禁許さず」

セーフガードは守ってくれない
和牛卸値、昨年末から1割下落。高値で消費が冷え、輸入物や鶏に需要シフト。昨年8月のセーフガード発動で関税率を引き上げたにもかかわらず、外国産牛肉の需要は引き続き拡大。セーフガードで守られるのは政治の利権だけ。
和牛卸値1割下落 昨年末比、輸入物や鶏に需要シフト 店頭価格に波及も

円の裏付けはあなたの税金
今の法定通貨には普通の意味で裏付けはありません。ただし記事で指摘するとおり、それに近いのは国の徴税権です。法定通貨の名目上の裏付けは国債で、国債は税金で成り立つからです。つまり日本国民は円の連帯保証人なのです。
マネー革命か狂騒か 仮想通貨が問うリアルの矛盾

2018-12-30

モンテスキューと商業の精神

1月18日は仏啓蒙思想家、モンテスキューの誕生日です。主著『法の精神』で三権分立を説き、アメリカ合衆国憲法に影響を及ぼしたことで知られますが、この本では法の精神ならぬ「商業の精神」についても、現代に通じる鋭い洞察をしています。いくつか紹介します。

「民主政が商業を基礎とする場合、個人が巨富をもちながらも習俗は腐敗しないということが大いにありうることは確かである。これは、商業の精神が、質素、倹約、節度、労働、賢明、平穏、秩序および規則の精神を導くからである。したがって、この精神が存続するかぎり、それが生み出す富はなんら悪い結果をもたない」(岩波文庫版上巻、第5編第6章)

現在、富の格差がしきりに問題視されます。しかしそれが商業の精神に基づく限り、悪い結果にはならないとモンテスキューは言っています。

「商業は破壊的な偏見を癒す。そして、習俗が穏やかなところではどこでも商業が存在しているというのがほとんど一般的な原則である。また商業が存在するところではどこでも、穏やかな習俗が存在するというのもそうである」(同中巻、第20編第1章)

現代社会には民族・人種・宗教などによる偏見が根強く残っています。けれども政府が号令をかけても偏見はなくなりませんし、むしろ政府は国家間の対立を煽るような行動を取ることが少なくありません。商業によって、たとえば日本は中国、韓国、北朝鮮などと分け隔てなく穏やかに付き合うことが可能になります。政府主導の協定や制裁などでこれらの国を貿易から排除すれば、偏見を強めるばかりです。

「もしわれわれ〔=政府〕が独占企業を営むならば、誰がわれわれを抑止しうるであろうか」(同中巻、第20編第19章)

ある皇帝は妻のための商品を載せた船を見て、これを焼かせ、妻に言いました。「もしわれわれが貧者の職業を依然として営むならば、彼らはなんによってその生活の資を稼ぐことができよう」。現代流にいえば、官業による民業圧迫でしょう。モンテスキューが皇帝はさらにこうも言えただろうと付け加えたのが、引用した文章です。同様の理由から「貴族が君主政において商業を営むのは、商業の精神に反している」とも述べています。

18世紀の人々を啓蒙するためにモンテスキューが説いた商業の精神。政府が経済の自由を縛り、前近代に逆戻りしかけている今、あらためて理解を深めたいものです。(2018/01/12

消費者は根に持たない

さらばケインズ
ベルリンの壁崩壊後、マルクスの社会主義には別れを告げても、ケインズの介入主義と縁を切れないままずるずる過ごした主要国。しかしそろそろ年貢の納め時。目先の選挙のために政府がどんどんカネを使うひずみが限界に。
世界の政府債務10年で2倍 大規模緩和でひずみ拡大

宇宙開発という公共事業
米、日本も協力する国際宇宙ステーションへの資金拠出を2025年までに打ち切り、民間に移転へ。なぜ7年後でなく今すぐやらないのでしょうか。というか、そもそも最初から民間に任せておけば、宇宙開発はもっと効率よくできたのでは。
ISSを民間移転へ トランプ政権予算、月探査優先

消費者は根に持たない
謝罪が遅いとか謝り方がなってないとか、そんなことを消費者はいつまでも気にしません。良い商品・サービスを納得できる値段で提供すれば、戻ってきます。企業に求められる社会的責任とはそれに尽きます。マクドナルド最高益に乾杯。
マクドナルド最高益 前期最終4.5倍 単価上げ、客数も増

固有の領土って何?
新設高校指導要領の改訂案、竹島、尖閣諸島を「我が国固有の領土」と教えることを初めて明記。それなら「固有の領土」が国際法では認められていない、政治的な用語であることもきちんと教えてもらいたいものです。
「歴史総合」「公共」を新設 高校指導要領の改訂案

2018-12-29

自由放任主義へのぬれぎぬ

国家による経済への介入を排除し、個人や企業の自由競争に任せて経済を営むべきだという思想や体制を「自由放任主義(レッセフェール)」といいます。今の世界に、完全な自由放任主義の国は存在しません。比較的自由な米国ですら、多くの産業に規制の網がかけられています。

ところが知識人の中には、そんな影の薄い自由放任主義があたかも世界中で猛威を振るっているかのように受け止め、政府の介入や規制の強化を求める意見が少なくありません。

1月4日付日経「経済教室」に掲載された、経済学者・岩井克人さんの論説はその一例です。この文章には腑に落ちないところがいろいろあるのですが、一番奇妙なのは、市場経済はハイパーインフレの危機に常にさらされているという部分です。

考えてもみてください。現在、深刻なハイパーインフレで国際ニュースをにぎわせている国といえば、ベネズエラです。ベネズエラは社会主義の国です。もし岩井さんが言うように、自由放任的な市場経済がハイパーインフレの犯人なら、自由放任とは正反対の社会主義国でハイパーインフレが起こるはずはありません。一方、最も自由放任に近いとみられている米国でハイパーインフレが起こったことはありません。

ハイパーインフレの原因は自由な市場経済ではありません。ウィキペディア「ハイパーインフレーション」の項にもあるように、米経済学者サージェントは第一次世界大戦後にハンガリー、オーストリア、ポーランド、ドイツの4カ国で生じたハイパーインフレを分析し、共通の原因は財政赤字の急膨張であり、不換紙幣である政府紙幣の発行による、財政赤字のファイナンスと結論づけています。これはベネズエラやジンバブエにも共通します。

つまりハイパーインフレの原因は、政府の放漫財政と、それによって生じた財政赤字を埋めるため行った政府紙幣の大量発行です。一言でいえば、ハイパーインフレの犯人は政府なのです。それなのに政府の介入を排する自由な市場経済を犯人呼ばわりするとは、とんだぬれぎぬです。

岩井さんは、市場経済が安定的に機能するには、政府や中央銀行の規制や介入が必要だと主張します。しかし実際には、国民が飢えや病に苦しむベネズエラの悲劇が物語るとおり、政府が規制や介入を強めるほど、経済は不安定になり、人々を不幸にします。自由放任で滅んだ国はありません。(2018/01/08

バレンタインデー礼賛

美しい日本のTPP
数年内に無料で読めるはずだった三島由紀夫や川端康成の作品、著作権期間の20年延長でお預けへ。TPP受けた措置。自由を拡大し、文化の発展を促すはずの協定の一つの結果。政治家・官僚任せの自由化を信じる人、まだいますか?
小説や音楽の著作権、作者の死後70年に 20年延長方針

バレンタインデー礼賛
バレンタインデーは菓子メーカーが考えた日本だけの奇祭? だったら何? 宝石のように美しいチョコの数々。アートが彩る箱に包み紙。背景には日本古来の恋愛文化。カカオ生産国を潤すグローバル貿易。これこそ世界に誇る文化でしょう。
チョコレートバブる 女子爆買い

悪いことは考えない
米予算教書、長期金利を2018年平均で2.6%、19年も3.1%と見込む。しかし足元ではすでに2.8%に達し、市場では19年末には3.5%を上回るとの見方も。都合の悪い予測は決してしないのはどの国の政府も同じです。
米財政赤字9840億ドルに悪化 19年度予算教書で見通し

補助金ビジネス2018
「事業をSDGs (持続可能な開発目標)と絡めることで、政府の補助金が出たり、国際機関の資金協力を得られたりとお金がつきやすい」と専門家の正直すぎるコメント。補助金のために増税されたら、経済の発展は持続できません。
「持続可能な開発」で巨大市場誕生、商機のつかみ方

2018-12-28

ピケティ氏の矛盾

前回の投稿で紹介したように、富の格差を論じる際にその前提としてはっきりさせなければならないポイントの一つは、格差がもたらす問題は正確には何かということです。もし貧困が全体として減っていて、個々人にも貧困を抜け出すチャンスがあるなら、そもそも格差を問題視する理由はないはずだからです。

ところが格差を正面から扱う著作ですら、この肝心な点がすっぽり抜け落ちている場合が少なくありません。その一例は、数年前に世界的ベストセラーとなった仏経済学者トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』です。

日本語訳で本文600ページを超すこの大著を最後まで読んでも、不思議なことに、そもそもなぜ格差が悪いことなのかという理由は見当たりません。

それもそのはず、訳者の一人である山形浩生さんがインターネット上で公開した「訳者解説」でも、「格差が拡大すると何がいけない?」という問いに対する明解な回答は「本書にはない」とはっきり述べられています。

代わりにピケティ氏が記すのは「民主主義的、能力主義な価値観と相容れない」「バルザックやオースティンを使った情緒的な議論」「各種革命や動乱は格差拡大で生じた」といった、「定性的、情緒的な話」でしかありません。

また山形さんは、格差と貧困は違うと正しく指摘したうえで、ピケティ氏がそれをどう考えているか紹介します。それによれば、ピケティ氏は、底辺層が豊かになれば格差があってもいいかもとインタビューなどで述べ、格差がある程度あれば競争促進になるとも述べています。つまり「格差それ自体は問題じゃない」と考えているといいます。

けれどもピケティ氏が格差それ自体を問題視していないとしたら、「r > g」(資本収益率が経済成長率を上回る)などという数式を掲げ、富裕層への富の集中を問題視するかのような分厚い本を書くのは矛盾です。ようするに、なぜ格差が問題なのかという本質を突き詰めないまま書いたり話したりしているうちに、筋が通らなくなってしまったというのが真相ではないでしょうか。

本質をあいまいにしたまま、格差問題という言葉が独り歩きし、それを口実にピケティ氏が主張するように富裕層・中間層への課税が強化されるとしたら、憂慮すべきことです。(2018/01/05

どこかで聞いた話

ゴールドの再評価?
金は希少さ、美しさ、利便性を備え、数千年にわたり代替通貨の役割を担ってきたとシラー教授。ビットコインとの対比とはいえ、主流派経済学者が金をほめるのは異例。ただし代替通貨とは不正確です。歴史上、金こそが通貨でしたから。
ビットコイン永続性疑問 エール大教授 ロバート・シラー氏

どこかで聞いた話
政治エリートが企業の後ろ盾となり、見返りとして、利益を吸い上げる。監督省庁は分け前(税金)と引き換えに、保護を提供する。政府とつながりのある企業が勢力を拡大し零細企業を駆逐--。やれやれ。えっ、北朝鮮の話なの?
力つける北朝鮮の"民間"企業

投票方法で解決できない問題
選挙の際、記号式やマークシート、電子投票は簡単で正確性が高いとか。それによって民意はより正確に反映されるかもしれません。でも、国民の大多数がナチスを支持したらどうするかという、より深刻な問題の答えにはなりません。
投票用紙お国事情映す ○×や電子化… 早さ正確さ工夫

輸出が増えるのは良いことか?
経済的に重要なのは、農産物をどれだけたくさん輸出できたかではありません。その農産物を作るために費やしたコストよりも収入が大きいかどうかです。もしコストのほうが大きければ、しゃかりきに輸出を増やしても意味はありません。
農水産物輸出8073億円 昨年最大、牛肉・緑茶けん引

2018-12-27

格差問題、4つのチェックポイント

格差問題に関する議論は、明確な論理に基づかなければならないと前回の投稿で述べました。これについて参考になる記事があります。

米経済学者のスティーブン・ホーウィッツ氏は、各種データに照らすと格差拡大の議論はその多くが誤りか誇張、あるいは反証を無視していると指摘します。そのうえで、格差を論じる際には、その前提として以下の4点を明確にしなければならないと述べます。

第1に、議論の対象が格差と貧困のどちらなのかということです。格差を懸念する人たちはしばしば、豊かな人がより豊かになるから貧しい人がより貧しくなると思い込んでいます。つまりこの人たちにとって経済とはゼロサムゲームであり、豊かになるには他人から富を奪わなければならないのです。

しかし、もし格差でなく貧困に関する話ならば、議論の余地はありません。世界でも米国内でも、このおよそ四半世紀で絶対的貧困は劇的に減少しているからです。

第2に、問題としている格差が所得、財産、消費のどれなのかということです。財産は資産と負債の差、つまりストックです。所得は特定の期間における財産の変化、つまりフローです。両者は別々の概念ですから、財産は多くて所得は少ないケースも、その逆のケースもあります。

一方、消費の格差は所得や財産ほど大きくありません。とくに米国ではそうです。個人にとって究極的に重要なのはどれだけ消費できるかですから、このポイントははっきりさせておく価値があります。

第3にはっきりさせておかなければならないのは、ある所得階層から別の所得階層への移動です。格差を問題にする人たちは、豊かな人と貧しい人はあたかも毎年同じ顔ぶれであるかのように話します。しかし実際には個人は階層間を移動するものです。

ある年に貧しかった人の所得が何年後かにどの程度増えるかは、経済学者の間で意見が分かれます。しかし間違いなく、階層間の移動は存在します。その度合いに関する議論抜きに、格差を論じることはできません。

最後の第4点は、以上の点を踏まえ、格差がもたらす問題は正確には何かということです。もし貧困が減っていて、貧困を抜け出すチャンスがそこそこあるなら、格差拡大のいったい何が問題なのでしょう。

よくある意見は、もし貧困が減っているとしても、金持ちが超大金持ちになれば、政治に不当な影響力を及ぼしかねないというものです。それはもっともな心配ではありますが、超大金持ちと政治の癒着は縁故主義や再分配政策の問題で、格差自体が原因ではありません。

以上がホーウィッツ氏のきわめて論理的な指摘です。格差について議論する際は、まずこれらの前提を確認することが必要でしょう。(2018/01/03

簡素な納税、遠慮します

自業自得の市場混乱
株式市場の混乱に揺さぶられる米欧中銀。けれどもそもそも株価を急速に押し上げ、反動を招いた原因は、中銀自身による野放図なマネーの供給。つまり自業自得です。一段のマネー供給で混乱を鎮めようとすれば逆効果。
金融正常化ゆらぐ土台 米欧中銀、市場安定とジレンマ

共和党は小さな政府というウソ
共和党は小さな政府、民主党は大きな政府などという俗説をいまだに信じている人がいます。けれども現実は共和党は国防、民主党は福祉と名目は違えど、どちらも求めるのはより多くの国民のカネ。結果は政府債務の膨張と衰退への道です。
米歳出上限3000億ドル上げ 上院指導部合意、債務膨張

経済操作のツケ
幕を開ける米国債の「大増発」時代。FRBは過去の量的緩和で買い込んだ米国債を圧縮し、長期金利に一段と上昇圧力。緩和再開などで時間稼ぎはできるでしょう。しかし経済を操作してきたツケは、いつか払わなければなりません。
米国債「大増発」時代へ 長期金利に再び上昇圧力

簡素な納税、遠慮します
スウェーデンが簡単なチェックだけで申告が完了する仕組みを導入したのは、高い税負担への理解を得るためだとか。それなら納税が面倒なままで結構。なんならサラリーマンも戦時に導入された源泉徴収をやめ、確定申告に戻してください。
電子納税にカードの壁 「3000円」が普及阻む

2018-12-26

格差論の混乱

所得や富の格差は、2018年も経済ニュースをにぎわすテーマの一つになりそうです。ところが、これほど話題になるにもかかわらず、格差をめぐる議論にはしばしば混乱が見られます。

人が富を手に入れる方法には二つあります。一つは自発的な交換で、もう一つは強制的な収奪です。

資本主義は自発的な交換で成り立ちます。世界有数の富豪であるマイクロソフトのビル・ゲイツ氏やアマゾンのジェフ・ベゾス氏は、人々から強制的にお金を奪って富を築いたのではありません。便利な製品・サービスを提供し、それを多くの人々が自発的に購入したことで、富を手にしたのです。売り手と買い手の双方が得をするプラスサムゲームです。

一方、資本主義以前の社会では、強制による収奪が一般的でした。諸侯や領主は税や賦役、貢ぎ物の義務を負う奴隷や農奴を犠牲にして生活しました。競争はギルドによって制限され、特権を得た一部の生産者が利益を独占しました。奪う者が奪われる者の犠牲によって潤うゼロサムゲームです。こうした政治力による富の収奪は、現代でも民主主義の名の下に続いています。

自発的な交換によって生じる富の格差は、経済的にも倫理的にも、何ら問題はありません。ゲイツ氏やベゾス氏が億万長者になったからといって、私たちは何の不利益も被っていません。むしろ私たちが両氏から便利な製品・サービスという大きな利益を得たから、彼らは豊かになったのです。富の格差を問題にしなければならないのは、強制的な収奪の場合です。

ところがこの区別をきちんとしない、乱暴な議論が少なくありません。フィナンシャル・タイムズのコラムニスト、マーティン・ウルフ氏は「民主主義脅かす格差拡大」と題する記事で、富裕層優遇とされる米税制改革を、前近代の農業社会における収奪と同列に論じています。

かりに米税制改革が富裕層優遇だとしても、それは減税によるものです。富裕層は自分の富の一部を取り戻すにすぎず、他人の富を不当に奪うわけではありません。富裕層からいくらの税を取るのが適正かという意見はさまざまでしょうが、少なくとも減税を正反対の収奪と一緒くたにするのは正しい議論ではありません。

格差問題に関する実のある議論は、明確な論理に基づくことから始めたいものです。(2018/01/01

ああ社会主義医療

自動取引は悪玉か
自動取引は今は株の売り手でも、上昇局面では買い手だったはず。悪玉扱いはできません。90年代のバブル崩壊で裁定取引の売りが悪玉扱いされましたが、それまでの株高局面では買い手で、誰も批判しませんでした。
自動取引、株安を増幅 世界連鎖、日経平均1071円安

良い陰謀論、悪い陰謀論
ある事件が米CIAの陰謀だというと「陰謀論だ」と嘲笑されますが、ロシアや北朝鮮の陰謀だというと、確かな証拠がなくても騒ぎになります。記事によれば、コインチェック流出の北朝鮮関与説には懐疑的な見方もあるとのこと。
コインチェック流出、北朝鮮が偽メール攻撃か 官房長官「国際社会と連携」

ああ社会主義医療
かかりつけ医に800円の初診料上乗せ。大病院の要件を500床以上から400床以上に。「患者7人に対して看護師1人」から「患者10人に対して看護師1人」へ移行。需要と供給を反映しない机上の計算。ああ社会主義医療。
かかりつけ医の普及促す 診療報酬、初診料を上乗せ 介護との連携も進める

ルール整備の名を借りて
エアビーも政府には勝てず。合法な民泊物件は年間営業日数が180日までに限定され、民泊の営業をやめる貸し手が増える可能性もあるとか。毎度おなじみ、ルール整備の名を借りた既得権益の保護にしか見えません。
エアビー、違法物件を排除 民泊法施行にらむ

2018-12-25

守銭奴は悪くない

クリスマスの季節になると、英作家ディケンズの名作『クリスマス・キャロル』がよく話題にのぼります。先日も監督リドリー・スコットと俳優トム・ハーディがタッグを組み、同作をドラマ化すると報じられました。

残念なのは、しばしば映画やドラマで、いや原作そのものでも、主人公の商人スクルージが社会にとって迷惑でしかない、金の亡者として描かれることです。たしかにスクルージは金の亡者かもしれません。しかし見えない形で、社会に恩恵をもたらしています。

まず、スクルージが長年商売を続けられているということは、多くの取引相手を満足させていることを意味します。取引相手はスクルージの性格を嫌っているかもしれませんが、それでも取引を続けるのは、商売相手として信頼できるからです。スクルージは取引相手を満足させることで、間接的に取引相手の顧客も満足させ、社会全体の満足向上に貢献しています。

また、スクルージは稼いだお金を貯め込んでいることから、守銭奴と非難されますが、お金を貯め込む人は社会に貢献しています。銀行に預け、あるいは株式や社債を買えば、お金は企業の投資に使われ、生産力を高め、社会を物質的に豊かにするからです。

もし金融機関を信用せず、稼いだお金をすべてタンス預金にしたらどうでしょう。この場合も社会に貢献します。世間に出回るお金の量が減り、物価が安くなるからです。

今の世の中では、物価が下がること(デフレ)は悪いことで、物価安をありがたがるのは無知の証拠だという迷信が広められています。けれども実際には、物価安は個人にとっても社会全体にとっても、良いことです。

そしてスクルージは、なんといっても、争いを好まない平和的な人物です。暴力は振るいませんし、他人の物を奪うこともありません。カッとなって「死ねばいい」と口走ってしまうことはあっても、行動に移しはしません。死者から物を奪い手柄を誇る盗人に対し、怒りを燃やす正義感もあります。

社会に平和的な人物が一人でも増えれば、社会はそれだけ平和になります。スクルージはその意味でも、社会に貢献しています。

おそらく作者ディケンズの意図とは裏腹に、この小説を読んでいくと、スクルージが悪い人間ではないことがわかります。光文社古典新訳文庫版の訳者あとがきで、池央耿氏が「人が何と言おうと誹(そし)ろうと、スクルージは断じて悪人ではない」と書いているとおりです。

それはディケンズが正直ですぐれた作家だったあかしでもあるでしょう。商人というものの姿を、不自然な嘘を交えず活き活きと描いた結果、それは暴力を振るわず、略奪もせず、争いを好まない人物にしかならなかったのです。政治家ではこうはならないでしょう。

スクルージに対する誤解を解いたうえで、平和を祈るクリスマスにふさわしい作品として、読み継がれていってほしいものです。(2017/12/25

政府に依存する科学

リーマン・ショックの再来?
米国株急落。カネ余りが市場を動揺させた点で、2008年のリーマン・ショックと相似。当時資金が向かったのはサブプライムローン関連商品。今回は仮想通貨。カネ余りがもたらした問題をさらなるカネ余りで解決できないことは確か。
株急落、歴史繰り返すか 金利逆風、頼みは低PER

安心安全のコスト
納豆の値上げ相次ぐ。非遺伝子組み換え大豆の値上がりが響く。安全イメージのある非組み換え農産物を消費者が選ぶのは自由ですが、それも値段とのかね合い。組み換え食品の表示ルールが厳格化されれば調達コストはさらに上昇の恐れ。
大豆の割増金、3割高 北米の18年産非組み換え、2年連続の上昇 製品価格に転嫁の動きも

補助金で地方の魅力を高める?
学生が来たがる大学は定員を増やしてはならないという、世にも不思議なお達し。その一方で「魅力を高める」計画を作った自治体には相変わらずの交付金。そういう社会主義的政策こそが地方の活力と魅力を失わせているのに。
23区大学 定員増10年禁止 法案決定、人口の一極集中是正

政府に依存する科学
かつて科学研究の多くは民間企業が担いました。量子論の父、ボーアの研究所はビール会社カールスバーグが建てたもの。民間なら資金の出し手を選ぶことができます。しかし政府に依存した科学者は政府のしもべになるしかありません。
ノーベル賞の梶田氏ら、国立大共同拠点の予算減に危機感

2018-12-24

クリスマス休戦の奇跡

クリスマスが間近に迫った先週末、国連安全保障理事会が北朝鮮に対する追加制裁決議を全会一致で採択しました。石油精製品の北朝鮮向け輸出を9割削減します。これを受け安倍晋三首相は「安保理理事国として、決議の完全な履行を全ての国連加盟国に強く働きかける」との談話を発表しました。

経済制裁で飢えや寒さに一番苦しむのは北朝鮮の庶民です。対外的な憎しみを募らせ、和平実現には逆効果としか思えません。政府に紛争防止を委ねれば、こうなってしまうのでしょう。しかし個人同士であれば、争いをやめることはもっと簡単なはずです。

第一次世界大戦中の1914年12月24日から25日にかけて、英独の兵士たちが対峙する西部戦線で一時的な停戦状態が生じました。政府の命令によるものではなく、自然発生的に生まれた非公式の「クリスマス休戦」です。

英作家マイケル・モーパーゴは児童文学『世界で一番の贈りもの』(評論社)で、架空の英国将校の目を通し、クリスマス休戦の様子を描きます。

英独両軍の兵士たちは間の無人地帯に向かって歩み寄り、真ん中で一緒になります。互いが持ってきた酒をくみ交わし、ソーセージやケーキを食べ、語り合い、サッカーに興じます。夜になりそれぞれ地下壕に引き揚げた後も、クリスマスキャロルを歌い合います。

教師出身の英国将校は故郷の妻にこう書き送ります。「来年のクリスマスには、この戦争も、ただの遠い思い出話になっていることだろう。今日のできごとで、どちらの軍の兵士も、どんなに平和を願っているかがよく解った」

残念なことに、第一次大戦は1918年まで終わらず、その後も2度目の大戦をはじめ、世界では何度となく戦争が繰り返されてきました。今も新たな戦争の恐れは消えません。

けれどもクリスマス休戦という奇跡のような出来事が実際にあったという事実は、一筋の希望の光を投げかけます。政府に外交交渉を任せきりにせず、個人が直接接したり、商取引で間接的につながったりすることで、悲惨な戦争を避ける可能性は高まるはずです。(2017/12/24

殺された側の記憶

今年最大のリスク
先週末に急落した米国株について「インフレ率が予想を上回り、金利が跳ね上がることが今年最大のリスク」と専門家。米国以上に金融緩和に頼ってきた日本経済に金利上昇が及ぼすリスクはさらに大きいと覚悟しておきましょう。
大論戦 米国株はバブルか

経済優先の中身
民意は「基地」よりも「経済」を優先との見方。けれどもその中身は、政府と協調した福祉や経済振興の推進。つまり普段なら批判にさらされるバラマキ政策です。補助金頼みの経済は市場経済ではなく、地域の自立につながりません。
名護市長選、辺野古移設容認派の渡具知氏が初当選

今度は大丈夫?
石油や天然ガスから再生エネにかじを切るアフリカ。日照時間が長く、風力も強いことから設備稼働率を高く維持しやすいとか。それはいいのですが、世界銀行はこれまで石油・ガス関連の資金支援をしてきたと。それって無駄遣いだったのでは。
アフリカ、再生エネ加速 エジプト、豊田通商が風力発電 エチオピア、伊電力大手が太陽光

殺された側の記憶
米南北戦争と同時代に繰り広げられた血みどろの内戦。官軍による市民への残虐行為。敗れた側に対する戦後の徹底した差別。戊辰戦争の歴史を知れば、日本人の絆などという都合のよい言葉を軽々しく口に出せなくなります。
「明治維新」より「戊辰150年」? 会津と長州、雪解け進むか

2018-12-23

フェニキア人の栄光

秋田県立金足農業高校の活躍が話題を集めた100回目の夏の甲子園、2018年全国高校野球選手権大会では、12年ぶりに出場した高知商業高校がベスト16入りを果たした。「鵬程万里果てもなき」で始まる高知商の校歌は、ユニークなことで知られる。

2番の歌詞はこうだ。「天にそびゆる喬木を/レバノン山の森に伐り/舟を造りて乗り出でし/フェニキア人のそれのごと」(竹村正虎作詞)

フェニキア人とは、古代地中海に栄えた商業民族。シドンやティルスなどの海港都市国家を建設し、レバノン杉を用いた優れた造船技術や航海術を使って、地中海交易を営んだ。キプロス島やギリシャといった東地中海から、さらに西地中海に進出し、有名な北アフリカのカルタゴをはじめ、遠くはイベリア半島に至る多くの植民地を築く。前8世紀まで地中海交易の中核を担った。

ティルスでは、前8世紀ころまでに西アジアや地中海各地の商品が扱われるようになった。近隣からは穀物、メソポタミア地方からは織物、アルメニア地方からは馬、ラバ、エーゲ海のロドス島を経由して象牙や黒檀(こくたん)、キプロス島とサルデーニャ島からは銅、イベリア半島南部からは銀をはじめとする鉱物資源がもたらされた。

高知商の校歌に歌われたフェニキア人は、商機を求め、危険を冒して荒海に乗り出す勇者である。しかし世界最古の商業民族の一団である彼らは歴史上、必ずしも好意的な目で見られてこなかった。

旧約聖書「エゼキエル書」によれば、フェニキア人の都市ティルスは、その富ゆえにバビロニアの王ネブカドネザル2世に破壊される。エゼキエル書はフェニキア人を「お前は取引に知恵を大いに働かせて富を増し、加え、お前の心は富のゆえに高慢になった」と非難する。古代ギリシャの詩人ホメロスはフェニキア人を容赦なく批判し、彼らは海賊に違いないとほのめかす。

ティルスの植民者が築いたカルタゴに対しては、ローマと軍事的に対立したからか、さらに手厳しい。ローマ時代の歴史家アッピアノスは「カルタゴ人は隆盛なときには冷酷で傲慢であり、ひとたび逆境に陥ると卑屈になる」と非難した。伝記作家プルタルコスも「楽しみやこの世の快適さには、あまり関心をもたない」と評する。

ある研究者はプルタルコスに同意し、こう記す。「ギリシャ人にとって、カルタゴの町は何ともつまらぬ退屈な生活の場に映ったことだろう。劇場もなければ、競技場も見られない。催しものといえば、宗教的な祭りぐらいなもので、彼らを愉しませるものといったら何ひとつなかった。お祭りだけがどんちゃん騒ぎだった。この商人社会では芸術などというものは役にも立たぬものとみなされ、当然、さかんになりようがなかった」

古来、商業に対する蔑視論は少なくない。古代ギリシャの哲学者プラトンは利得のために行う商業の禁止を論じ、その弟子アリストテレスは、利潤目的の商業と高利貸しは富の獲得に限度を知らず、非難に値する職業と指摘した。

古代ローマでも遠隔地方との通商に対する偏見はきわめて強く、高利貸しの高い利潤とともに、商業の高い利潤を非難した。古代キリスト教神学者アンブロジウスは、商人の利得の性質を多く詐欺的だとみなした。

古代世界におけるフェニキア人に対する非難は、こうした商業蔑視論の系譜に属する。しかしそれは他の商業蔑視論と同じく、不当な偏見といわざるをえない。

2018-12-22

お金は上手な使い手に

成長産業を政府が判断する国
何が未来の成長分野なのかを政府が判断するという発想は、市場経済とは縁遠いものです。自動車や家電など、戦後日本を支えた産業はいずれも政府が当初見向きもしなかったもの。成長戦略に入れられたIoTやフィンテックの先行きが心配です。
成長戦略法案30本提出へ  政府会議了承、働き方など柱

お金は上手な使い手に
アマゾン、法人減税の増益効果7億8900万ドル(約863億円)。これを投資し、さらに便利なサービスを提供してくれるでしょう。何をやらせても非効率な政府に税金を使わせるのとどちらが社会にとってプラスか、言うまでもありません。
アマゾン最終益2.5倍、売上高も最高 10~12月

実力か、徒花か
金融緩和政策の問題の一つは、企業収益が上向いたとき、どこまでが企業の実力で、どこからがカネ余りによる徒花かわからなくなることです。サププライム問題前夜、空前の好決算を謳歌していた日本企業がダブって見えます。
上場企業7割が増益 17年4~12月、幅広い業種で

TPPという打ち出の小槌
TPPなどの発効をにらみ、国内農業対策に3465億円。もしTPPのおかげで輸入品が多少安くなっても、農業対策のために取られる税金と差っ引いてマイナスになるのではたまりません。もしかして米国が加わったらまた取られるの?
補正予算が成立 人づくり革命や災害復旧など2.7兆円

2018-12-21

中小企業衰退の犯人

中小企業衰退の犯人
税軽減はニュースですが、それとともに知ったのは、政府が問題視する中小企業の廃業による雇用や技術の喪失は税制が一因であること。しかも今回の税軽減も、生産性の向上や財務の改善という基準をクリアしないとダメだとか。やれやれ。
M&A、自社株活用促す ベンチャー成長後押し

大統領の朝三暮四
大型減税で中間層や小規模事業者に大きな安心と効果を力説。でも目玉である巨額のインフラ投資の原資の一部が国債だとしたら、それは将来の増税につながります。「朝三暮四」という言葉、英語では何と言うのでしょうか。
「米インフラ投資163兆円」 トランプ氏一般教書演説

M&Aとナショナリズム
日本企業が海外の名門を買収。もし逆のパターンだったら、ナショナリズムによる反発や危機感を煽る声が国内にあふれることでしょう。しかしどの国の企業がどの国の企業を買収しようと、成功すれば消費者にはプラスです。
富士フイルム、世界展開へ主導権 米ゼロックス買収

体力低下で高まるリスク
マイナス金利で貸出金利の低下に拍車、銀行の体力を蝕む。メガバンクはまだしも、地方金融機関は深刻です。もし国債・株式相場の急落に襲われたらどうなるか。投資信託の販売拡大で乗り切れる話ではありません。
大手銀決算、体力低下鮮明に 2年で利ざや14%減る

2018-12-20

ネット投票の代償

雇用は多ければよいのか
雇用は多ければよいというものではありません。極端な話、政府が日本中でピラミッドの建設を計画し、全労働者数を上回る求人をすれば求人倍率は大きく上昇しますが、暮らしは豊かになりません。重要なのは仕事が消費者を豊かにするかどうかです。
有効求人倍率、17年平均は1.50倍 44年ぶり高水準

ベーシックインカムの夢物語
フィンランドで実験されているベーシックインカム(UBI)を実行に移すと、財政赤字が5%増加するとの指摘。仕事でいくら稼ごうと関係なく月7万円以上もらえるとか。少なくとも深刻な財政難の日本には縁のない夢物語でしょう。
[FT]最低所得保障を試すフィンランド、経過はいかに

匿名コインつぶしが始まった
心配していた方へと風向きが怪しくなってきました。匿名コインつぶしです。金融庁はマネーロンダリング(資金洗浄)などに使われる可能性があるといいます。もしそうだとしても、匿名性は個人のプライバシーを守る大切な手段です。
「匿名コイン」悪用されやすく コインチェックが取り扱い 金融庁、監視体制を調査

ネット投票の代償
若者の一部にも賛成意見のあるネット投票。けれどもその実現は、プライバシー侵害につながりかねないマイナンバーの存在が前提です。グーグルやアマゾンの個人情報把握を気持ち悪いと感じても、政府には無抵抗な人が多いのはなぜでしょうか。
ネット投票、マイナンバー合憲が前提

2018-12-19

楽にたくさん納税しよう?

AI麻雀の人間臭さ
AI、囲碁の次は麻雀。機械学習で強いプレーヤーをまねるだけでなく、鳴いて早上がりしたり、安い手でも2番手確定させたりするなどの要素を組み込んでいくとか。なんとも人間臭い! 寝なくても平気なところ以外は……。
AI、麻雀でも5年以内にトッププロより強く

楽にたくさん納税しよう?
税や社会保険の手続きが簡単になるのは、一見良いことのようですが、本当にそうでしょうか。いくら楽な手続きでも、税や保険料をがっぽり取られたら全然うれしくありません。減らしてほしいのは手続きの負担ではなく、払う負担のほうです。
税・社会保険、オンライン一括申請 企業の負担軽く

特許の副作用
特許の目的は「産業の発達に寄与すること」(特許法第1条)のはずですが、実際にはむしろ足かせになっているのではないでしょうか。バイオ薬の場合、従来型の低分子薬と比べ、特許の権利の幅が広く、後発薬の販売を大きく妨げています。
バイオ後続薬、特許が「壁」 先行海外勢が相次ぎ提訴

適温相場のコスト
米国株高にストップをかけた長期金利の上昇。FRBが再びマネーの供給ピッチを上げれば、しばらくは長期金利の一段の上昇を抑え、株の「適温相場」は続くかもしれません。けれどもそれが続くほどドルの価値は毀損し、米経済を蝕んでいきます。
金利上昇で揺らぐか適温の構図

2018-12-18

ピラミッドと重税国家

東日本国際大エジプト考古学研究所は、エジプトにあるクフ王のピラミッド内部に存在するとされる巨大空間の有無を調査する。吉村作治学長らが2018年7月5日、福島県いわき市の同大で記者会見し、プロジェクト概要を説明した。年内にも現地に機材を運び込み、調査に着手する。

ピラミッド研究で有名な吉村学長は「ピラミッドの探査は予測がつかないこともありますが、ぜひ結果を出して、いわきのエジプト研究所はすごいと、名をとどろかせるよう力を尽くしてまいります」と決意を述べた。

古代エジプト文明の象徴ともいえるピラミッドは、今でも多くの謎に包まれる。その一方で、調査や研究の進展により、次第にわかってきたこともある。

その一つが、ピラミッドの建造に直接携わった人々の労働環境である。

100基を超すエジプトのピラミッドで最も大きいクフ王のピラミッドは、使われた石の数が約300万個。建設機械などない約4500年も前のエジプトで、このような大規模な建造物がどうやってつくられたのだろうか。

ハリウッド映画などでは、灼熱の太陽の下で多数の奴隷たちがむち打たれながら大きな石を苦しそうに運ぶ様子が描かれる。これは古代ギリシャの歴史家、ヘロドトスがその著書『歴史』に書き残した「クフ王のピラミッドは、10万人の奴隷が20年間働いてつくった」という記述が広まったためとされる。

現在では、こうしたイメージは誤りとわかってきた。

1988年、クフ王のピラミッドの近くで発見された「ピラミッド・タウン」と呼ばれる遺跡から、パンをこねて焼いたとみられる場所が見つかった。その後の調査でパン以外にも肉やニンニク、玉ねぎなどさまざまな食料が配給されたことがわかり、労働者はかなり高カロリーの食事にありついたと推測される。

エジプト考古学者の河江肖剰氏は、ピラミッド建造に携わった人々は奴隷ではなく「大量生産による大量消費を享受していた労働者たち」だったと指摘する。

このように近年のエジプト考古学は、ピラミッドが奴隷の過酷な労働で建造されたという旧来のイメージ払拭に一役買っている。それ自体は学問の進歩として興味深い。

しかし経済的な視点で注意が必要なのは、ピラミッド建造で働く人々が好待遇を享受していたとしても、当時のエジプトの人々すべてが幸せだったとは限らないことだ。むしろピラミッドでの労働条件が恵まれている分、その背後には庶民の苦しみがあったと見なければならないだろう。ピラミッド労働での好待遇は庶民から取り立てる税に支えられていたからだ。

2018-12-17

TPPという政治ゲーム

TPPという政治ゲーム
自由貿易とは、どの国と取引するかを政府が決めたり、何百ページもの協定で細かい条件を決めたりせず、自由に行える貿易のことです。だからTPPは自由貿易ではありません。それに加盟するかどうかには政治的意味しかありません。
「米、多国間協議の用意」 トランプ氏、TPP参加国と

安全を生むのは規制より競争
仮想通貨に限らず、官庁の規制によって金融市場の不正をなくすのは無理な話。むしろ利用者に不便やコストを強いたり、官庁のお墨付きがあれば大丈夫という誤解を招いたりしかねません。競争によって優れた取引所が残ればよいのです。
仮想通貨に精通の人材、金融庁でも一握り

根拠なき金融政策
日銀のマイナス金利導入から2年。国内景気回復を狙ったものの、銀行のお金が向かったのは不動産と海外。最近「根拠に基づく政策立案」が日本でも流行ですが、現実には根拠のない金融政策が堂々とまかり通っています。
マネー向かった先は 企業、成長投資伸び悩み

長期金利の不気味な上昇
米主要株価指数が軒並み過去最高値を更新する陰で、不気味な長期金利の上昇。減税の穴埋めに国債が増発されれば上昇に弾みがつき、株式相場も無傷ではいられないと指摘。もちろん日本株もです。
ダボス会議があぶり出したリスク

2018-12-16

ロボット化に万歳三唱

科学政策のひずみ
巨額の国費がつぎ込まれ、研究者へのプレッシャーが大きいiPS研究。特に任期付き雇用の若手には焦りも強く、論文捏造・改竄を招いた可能性。世間の注目を浴びやすい分野に偏った予算を配分し「結果」を求める、科学政策のひずみです。
iPS論文不正が問うもの

ギグ・エコノミーという朗報
グローバルな規模で安い労働供給が増え、賃金や物価が上がりにくい経済構造に。デフレは悪いという神話をふりまく中央銀行や評論家にとっては不愉快な現実でしょう。しかし働くチャンスを求める普通の人々にとっては、朗報でしかありません。
国をまたぐ雇用が急成長 ネットで請負37兆円市場へ

ロボット化に万歳三唱
AIの普及で経済は完全にロボット化しかねないと専門家。かりにその予測が正しいとして、一体何が問題なのでしょう。ロボットに労働させ、人間が働かずにその成果を享受できる世界は天国です。労働は幸福になる手段にすぎず、目的ではありません。
AI普及 余剰労働者の未来は

仮想通貨のリスク
仮想通貨を取引所に預けておくと盗難されるリスクはかねて指摘されていました。取引所の責任は問われなければなりませんが、利用者は万が一に備え過大なリスクを取らないこと。損をしても税金では助けてもらえません。
仮想通貨流出、安全性「話が違う」 利用者憤り

2018-12-15

号令がもたらした混乱

低金利頼みのツケ
高成長なら歳出抑制を一切しなくても財政健全化が順調に進む、と内閣府の試算。でも記事にあるように、高成長なら日銀は緩和縮小という出口を探り、長期金利はおのずと上がるはず。そのショックに経済は耐えられるのでしょうか。目先の景気を最優先する低金利政策のツケを払うときが近づいています。
危うい発射台(下)債務残高GDP比が急低下? 超低金利頼み、失敗続き

一番得をしたのは政府?
仮想通貨取引で年20万円以上の利益を上げるとその最大55%が課税されます。株や外国為替証拠金(FX)は損失を向こう3年の利益と相殺して税金を減らせますが、不公平なことに仮想通貨にこの仕組みはないそうです。ビットコインバブルで一番得をしたのは政府かもしれません。
ビットコインバブル(5)得したのは誰だ

号令がもたらした混乱
気象庁などが「早めの帰宅」を促した結果、主要駅には家路を急ぐ会社員らが殺到。夜まで帰らず待っていれば混乱は避けられたのに。官庁やその意を受けた企業が一斉に帰宅を促すことのデメリットが浮き彫りに。こういう仕事、人工知能(AI)に任せたほうがうまくいくのでは? お役所の号令に従う時代ではないでしょう。
早めの帰宅 混乱拍車? 大雪で呼びかけ 駅に殺到、行列100メートル

信頼できないのはビットコインだけ?
仮想通貨には「信頼できる機関が必要だ」とスウェーデン中央銀行副総裁。通貨の発行量を過大でも過小でもなく適切に管理することが重要と。でもバブルの歴史を振り返れば、発行量を適切に管理できないのは中央銀行が管理する法定通貨も同じでは?
ビットコイン、値上がり期待に警鐘 ダボス会議で議論

2018-12-14

会計が文字を生んだ

2018年9月3日まで東京・六本木の国立新美術館で開催された「ルーブル美術館展」で、入場してまもなく目に入ったのは、小瓶を抱えて座る小さな女性の像だ。

高さ20センチのこの石像は、「アリュバロス(小瓶)を持つ女性」と呼ばれ、メソポタミア(現イラク)から出土した紀元前2200〜同2000年ごろの作品。下ろした髪をヘアバンドで固定し、「カウナケス」と起毛した毛織物で作られた丈の高いワンピースを見に着けている。誰を表しているかは不明だが、神殿に仕える女祭司との見方もあるようだ。

メソポタミアはティグリス・ユーフラテス両川流域の沖積地帯で、人類最古の文明が成立した地域の一つとして知られる。灌漑農業にもとづく村落文化が発展し、前3000年ごろになると、シュメール人によってウルク、ウル、ラガシュなどの都市国家がつくられた。都市は城壁で囲まれ、中心に固有の守護神を祭る神殿があった。ルーブル展の女性像もどこかの神殿の祭司かもしれない。

古代メソポタミアでは数学、占星術、暦法などの学問が発達したが、最も注目すべきは、文字の誕生である。

メソポタミア文明の文字といえば、楔(くさび)の形をした楔形文字が有名である。しかしウルクの遺跡で発見された最古の粘土板文書には、楔形文字の原型となった絵文字が多く記されている。これが現在わかっている最古の文字である。

ところが近年、この最古の文字のさらに前身が明らかになってきた。

2018-12-13

政府という暴力

政府という暴力
「政府が何かを得るには暴力を用いるしかない」「政府が人を自由にするという考えは馬鹿げている」「政府の力を弱め、人の暮らしに暴力で介入させないようにしない限り、個人が生まれながらにして持つ自由を行使することはできない」。作家ローズ・ワイルダー・レインの名言。
Rose Wilder Lane: 19 Choice Quotes on Liberty, Government, and Force - Foundation for Economic Education

自由とは平和
自由とは、自分から最初に物理的な暴力を振るう者がいないことである。これは平和が自由の当然の帰結であることを意味する。自由のあるところ、平和がある。なぜなら暴力が使用されないからだ。暴力を自分から最初に振るう者がいなければ、防衛や復讐に暴力を使う必要がない。
13 Illustrations of the Benevolence of Capitalism | Mises Institute

公的部門は強制部門
「民間部門とは自発部門。公的部門とは強制部門」「政府が何かを与えることができるのは、何か他のものを奪ったときだけである」「すべての自由は一体である。経済の自由を否定すれば、結局すべての自由を破壊することになる」。ジャーナリスト、ヘンリー・ハズリットの名言。
Henry Hazlitt on Liberty: 21 Choice Quotes - Foundation for Economic Education

政府のデジタル通貨
政府が現金を廃止しデジタル通貨を発行したら、支配力は絶大だ。税金の滞納や犯罪の容疑によって、保有する通貨を無効にされるかもしれない。金融危機時にオンライン口座を一斉に凍結されるかもしれない。あらゆる購入履歴が把握され個人データが吸い上げられるかもしれない。
Sweden Is on the Verge of Going Completely Cashless - LewRockwell

2018-12-09

ブラック企業は救命ボート

経済介入が失敗する理由
政治家が市場経済への介入を成功させるには、能力以上のことを知らなければならない。市場における知識は一カ所に固まっておらず、散らばり、一様でない。市場では多数の参加者が試行錯誤で誤りを正せるが、政治家は政策の誤りを認めるより、それを続けるほうがましと考える。
Ten Reasons Why Governments Fail | Mises Wire

政府は短期志向
株主が所有するのは将来利益の現在価値で、単なる現在の利益ではない。だから現在価値を高める長期投資に反対しない。短期の好業績で株価が上昇するのは、投資家が目先の利益しか考えないからではなく、将来の好業績への期待から。落選で地位を失う政治家のほうが近視眼的だ。
Politicians Who Accuse Business Leaders of Being "Too Short-Term Focused" Have It Backwards - Foundation for Economic Education

グローバル化の恩恵
取引を通じて暮らしを良くしようとする人が増えたからといって、害を被る人は誰もいない。グローバル化と自由貿易には恩恵しかない。天然資源のない香港はほとんどすべての物資を輸入しなければならないが、社会問題を起こしてはいない。むしろ香港市民は繁栄を謳歌している。
When Conservatives Bemoan Globalization, They Embrace Victimhood | RealClearMarkets

ブラック企業は救命ボート
救命ボートに乗って海の真ん中で過ごしたいとは誰も思わない。飢え、暑さ、サメの群れ、見渡す限り島一つなく、狭苦しい舟の上。どう考えても海を楽しむ理想の方法ではない。だからといって救命ボートを廃止すべきだろうか。ブラック企業の廃止を唱えるのはそれと同じことだ。
"Sweatshops" Are Like Lifeboats for the Poor — Don't Sink Them | Mises Wire

2018-12-08

国営医療の教訓

医療版ウーバーが来る
Qured(キュアード)という人気のアプリを使えば、ロンドンの住民は2時間以内に医師を自宅まで呼べる。公営の医療サービスだと料金こそ無料だが、診察まで2週間も待たされる。昨年発売されたばかりにもかかわらず、3万人以上がダウンロードし、450人の医師が登録している。
An Uber-Like Service Might Help Patients Escape Britain’s Socialist Health System | Mises Wire

国営医療の教訓
1918年、ソ連は世界で初めて公的医療の終身提供を宣言し、憲法に「健康への権利」を定めた。市場競争の無駄をなくせば実現可能という。実際には不潔な病院に悪臭が立ち込め、猫がうろつき、職員は酔っ払い、石鹸にもこと欠いた。汚れた注射針から多くの人がエイズに感染した。
The Lesson of Soviet Medicine | Mises Institute

デンマークが豊かな理由
デンマークが豊かになったのは福祉国家になるより前、今から40-60年前のことだ。1960年代まで税収の対GDP比は米国と同水準で、英国より低かった。福祉政策を導入したから豊かになったのではない。逆にまず豊かになった後で、政府が富の一部を再分配する政策を始めたのである。
Paul Krugman Learns the Wrong Lesson from Denmark | Mises Wire

女性幹部が少ない理由
スウェーデン政府は夫婦に子育ての責任を分担させるため、所得税を引き上げ官営のデイケアを提供し、共働きを促した。労働市場で女性が急増したが、企業の幹部以上に昇進する例は少ない。女性の多くが選ぶ教育やヘルスケアの仕事は巨大な公的セクターに独占されているからだ。
https://mises.org/wire/why-scandinavia-isnt-exceptional

2018-12-07

鉤十字と槌と鎌

多様性の強制
文化マルクス主義はどんな意見も認める思想ではなく、人々の意見を監視する思想である。重要なのは「文化的な豊かさ」が人々自身によって自由に選ばれたものか、それとも少数の文化的一派やメディア、政府と関係を強める経済エリートらによって押しつけられたものかどうかだ。
Yes, PC is Real. Yes, it is Illiberal | Mises Wire

文化マルクス主義の戦略
文化マルクス主義は実体のない陰謀論ではない。社会主義者ラクラウとムフは1980年代、民族・人種・性における少数派を社会主義運動に組み入れる戦略を訴えた。お得意の搾取論で、女性は男性に搾取され、同性愛者は異性愛者に搾取され、若者は老人に搾取され……というわけだ。
Why Marxism Shifted from Economics to Culture | Mises Wire

鉤十字と槌と鎌
鉤十字を見ると、人々はナチスドイツの悪を思い出し、嫌悪感を抱く。欧州の多くの国では鉤十字の表示は犯罪ですらある。ところが共産主義はホロコーストと同じく多数の命を奪ったにもかかわらず、象徴である槌と鎌のマークは禁じられていないどころか、マルクスの像まである。
Why the Hammer and Sickle Should Be Treated Like the Swastika - Foundation for Economic Education

慈善の強制
政府の社会保障とは、自由な社会とは正反対の、強制に基づく仕組みである。それは慈善の強制という発想に基づく。政府がある人の金を力づくで取り上げ、他の人に与える。マルクス主義の「各人からはその能力に応じて、各人にはその必要に応じて」という発想がその根底にある。
Few Dare Call it Socialism: Social Security and Medicare | Mises Wire

2018-12-06

アイスクリームの資本主義

アイスクリームの資本主義
わずか350年前、アイスクリームを味わえるのは王侯貴族だけだった。科学技術の発達で誰もが口にできるように。ガラスの容器を不潔な布で拭くのをやめ、コーンに。贅沢品が日常食に変わる進歩は、ほとんどの食品に共通する。残り物を捨てないのも冷蔵庫があるからできること。
From palace to parlour, the story of ice cream is the story of capitalism - CapX

贅沢は敵か
貧しい人がいるのに、ペットにハロウィンの服を着せるのは許されない贅沢か。そのお金を政府が再分配すべきか。そのためには政府は誰が贅沢品を買ったか把握し、所得のどれだけを誰に再分配するか決めなければならない。得をする人、損をする人が生じ、官僚だけが確実に潤う。
It's OK To Buy Your Pet a Halloween Costume (and Other Luxuries) | Mises Wire

ハロウィンとグローバル経済
ハロウィンの衣装が劇的に見栄えよくなったのは、分業がグローバルに広がったからだ。才能ある中国の人々が自分で縫うのでなく、会社を興してデザインし、アフガニスタンで大量生産している。分業拡大のおかげでブラック企業労働者が起業家となり、すべての人が恩恵を受ける。
Why Halloween Costumes Used to Be Terrible - Foundation for Economic Education

不合理だって構わない
経済にとって重要なのは、個人の意思決定の過程やその背後にある動機、能力ではなく、利潤である。利潤を生み出すのは競争に優れた者であり、最も知的な者でも、最も合理的な者でもない。知性や個人の合理性はどうでもいい。無知な者しかいない社会でも利潤は存在するだろう。
The Problem with Prescriptive "Rationality" in Economics | Mises Wire

2018-12-05

ヒトラーの経済学

右と左の共通点
右翼と左翼は互いをどれだけ嫌っていても多くの共通点がある。どちらも人間関係をゼロサムゲームとみなす。人は属する集団(人種、性別、国籍、階級)で決まると考える。生活に対する人々の不満につけ込んで栄える。人をまるで将棋の駒のようにみなし社会を組織しようとする。
You're not a centrist. You're a liberal - CapX

便利なファシズム
抜け目ない社会主義者は、完全な社会主義ではなくファシズムを選ぶ。生産手段を国有化し中央管理する完全な社会主義が存続できないと彼らは知っている。規制や課税、財政支出で目的の大半は達成でき、経済の破綻を防げる。何か問題があれば資本主義のせいにすることもできる。
Astute Socialists Opt for Participatory Fascism in Practice

個人の傲慢、集団の傲慢
集団的な傲慢は、個人的な傲慢よりタチが悪い。集団的傲慢に対する社会的制裁は、個人的傲慢に対する社会的制裁よりもずっと弱いからだ。あなたが「私は偉大だ」と言えば、親や親友でさえあきれるだろう。ところが同じ集団内で「私たちは偉大だ」と言えば、逆に友人ができる。
Why People Should Stop Appealing to Their Identity to Win Arguments - Foundation for Economic Education

ヒトラーの経済学
ヒトラーは歴史上最も憎まれている人物だが、その経済政策は各国が採用している。高速道路など巨額の公共事業、保護貿易、金融緩和、雇用対策、価格と生産への行政指導、軍備増強、資本規制、家族計画、喫煙禁止、国民医療、失業保険、教育基準の強制、そして多額の財政赤字。
Hitler's Economics | Mises Institute

2018-12-04

消えた行商人

道路は民間で
米国史上、最初の主要道路は民間の有料道路だった。企業は株式を発行して開発資金を賄い、通行料で得た利益を株主に配当する。商品を市場に運ぶ商人が通行料の大半を支払い、その分を商品の値段に含めた。その意味であらゆる人が道路の建設と維持を支えた。税金は不要だった。
Before Public Roads - LewRockwell

アイデアは民間から
経済の発展にとって最も重要なアイデアは、政府の支援を受けない民間の個人によって生み出されてきた。コンピューター、電気、ラジオ、テレビ、自動車、航空機などはそのほんの一部。政府の補助金は市場メカニズムをすり抜けて希少な資本の利用をゆがませ、経済成長を妨げる。
Is Technological Know-How the Key to Economic Growth? | Mises Wire

消えた行商人
かつて企業は行商人から出発した。百貨店、鉄鋼業、自動車会社。小さな商売から始め、勤勉に働き、倹約し、貯めたお金を投資した。今では様変わりだ。起業家が貯蓄を使う前に所得税で吸い上げられてしまうからだ。野心や意欲のある人々の起業を妨げ、貧しさに縛り付けている。
Cheers to the Peddler Class | Mises Institute

介入政策の代償
政治家は最低賃金や関税を支持する際、これらの政策がほとんどすべての人に恩恵をもたらすと言う。しかし実際には、ほぼすべての人に害を及ぼし、利益を得るのはほんの一部の人だけである。しかもその利益はせいぜい短期的で、長期で見ればむしろマイナスとなる可能性もある。
Why Bad Economics Makes Such Good Politics | Mises Wire

2018-12-03

民主主義と自由は別物

「政府は我々」の嘘
民主主義では政府は国民自身だといわれる。一部の者を潤す支出のせいで政府が多額の負債を負っても「国民が自分自身に借金しているだけ」。政府が国民を徴兵しても、自分の意思によるとみなされる。極論すれば、ナチスドイツによるユダヤ人市民の殺害は自殺ということになる。
What the State Is Not | Mises Wire

選挙の悪用
選挙の本当の利点は、権力者をその地位から引きずり下ろすことにある。有権者はしばしばそれを実行する。対照的に、支配階級は選挙を利用して政府の規模を拡大し、税で集めた富をばらまき、仲間にほうびを与え、身内の天下り先を用意する。多数の委員会では官僚が高給を食む。
Exploiting Elections to Expand Government Power

毎日できる投票
投票すると、民主主義に積極的に参加したと感じるかもしれない。しかし選挙は社会を変える最善の方法ではない。個人として一番有効な行動の機会は、何年かに一度の選挙ではなく、財布を開いて買い物をするたびに訪れる。選挙と違い、消費者の主権は一年中いつでも行使できる。
Consumers Should Be Voting Every Day—with Their Wallets - Foundation for Economic Education

民主主義と自由は別物
民主主義が重要なのは、自由を守るのに役立つ場合のみである。あいにく民主主義は自由に役立つとは限らない。多くの人は民主主義と自由は同じものだと考えるが、民主主義は自由を破壊する政策と完全に両立しうる。選挙が終わって政府ができたら、自由の重要性を再認識しよう。
Economist Explains the Greatest Threat to Liberty in the Modern World - Foundation for Economic Education

2018-12-02

シリコンバレーの変容

顧客満足より政治癒着
政府が経済に介入する国で企業の成功にとって一番重要なのは、顧客を最善かつ最安価な方法で満足させることではない。国を支配する政治勢力と「良好な関係」を築き、介入が事業に利益をもたらすようにすることだ。企業トップには官僚や政治家との付き合いのうまい人物が就く。
The Myth of the Failure of Capitalism | Mises Institute

シリコンバレーの変容
大手テック企業が政府から享受する特権は現実に存在し、その特権は自由な市場経済から生まれたものではない。フェイスブックと政府系シンクタンク大西洋評議会との連携や、テック企業と軍産複合体との友好関係は、シリコンバレーが自由な市場経済から遠ざかったことを物語る。
How to Solve the Social Media De-Platforming Problem | Mises Wire

アマゾンを誘致する理由
アマゾンを政治家が誘致するのは、地元企業が成長する環境を整えるより大企業の求めに応じるほうが重要だという考えに基づく。よその知事や市長に自慢できるし、大物ぶれる。マスコミに取り上げられ、票にもつながるかもしれない。多くの雇用や税収を創出したとも言いやすい。
Why Politicians Love the Amazon Deal | Mises Wire

データプライバシーを守るには
ネット企業はデータ収集で利用者にお好みの商品を勧めてくれる。データ取得は利用者の同意に基づく。責任は企業側だけでなく利用者にもある。プライバシーを守りたければ、ネット企業を批判する前に、やみくもに承認ボタンを押さないこと。解決策は規制ではなく消費者教育だ。
Why Data Privacy Is a Controversy That Shouldn’t Exist - Foundation for Economic Education

2018-12-01

課税・徴兵・戦争

課税・徴兵・戦争
あらゆる政府は課税や徴兵、戦争という大量殺戮を通じ自国市民を攻撃する。だから戦争に参加する政府が増えるほど、罪もない市民が命を奪われ、税を強いられ、徴兵される。これをなくすには世論に訴え、政府が戦争を始めたり加わったりしないよう圧力をかけなければならない。
Our Anti-Imperialist Heritage - The Libertarian Institute

財産権はなぜ重要か
財産権は国家に先立つ個人の権利であるという考えと、政府はその権利を社会や「より大きな善」のために侵害できるという考えは両立しがたい。そうした議論は集団虐殺、社会主義、優生学などの正当化に利用される。そこでは何が社会にとって「より大きな善」かは政府が決める。
Property Rights: The Individual Over the State | LIFE Philosophy

参戦の代償
米国が第一次世界大戦に参戦したことにより、戦争を外交交渉で終わらせる可能性が断たれた。これは戦後の混乱につながり、ファシズム、ナチズム、共産主義の興隆と恐ろしい第二次世界大戦をもたらした。それだけではなく、米国内で国家主義の台頭と市民の自由の抑圧を招いた。
Why Cass Sunstein Prefers Pro-War "Experts" to Pro-Peace Populists | Mises Wire

治安維持のアウトソーシング
中世イタリアの商業都市国家ジェノバは、軍隊と治安維持を外国人にアウトソーシングした。内乱鎮圧を自国の総督に任せず、フランスから知事を招いた。市民は政治の主権より経済の自由を尊び、外国人の支配より、同胞を食い物にする権力者を恐れた。秩序は回復し都市は栄えた。
Private Government in Genoa - The Future of Freedom Foundation