2023-06-30

ドル覇権が自壊する日

繁栄を極めた古代ローマ帝国は、財政政策の誤りによって自滅した。遠征に伴う巨額の軍事費、豪勢な建築物に充てる公共事業費などが膨らみ、それを賄うために代々の皇帝は銀貨に含める銀の量を徐々に減らすという安易な策を続けた。その結果、通貨の信用が失われ、物価の高騰が止まらなくなる。通貨の信用失墜とともに、ローマ帝国自身も衰亡の道を歩んでいった。
21世紀の現在、もう一つの巨大な「帝国」がローマと同じ道をたどろうとしている。アメリカ合衆国だ。

米ドルは第二次世界大戦後、英ポンドから基軸通貨の地位を奪い、世界経済に君臨してきた。だがその価値はほぼ一貫して下がり続けている。米消費者物価指数をもとに計算すると、1945年当時の1ドルは、購入できる物・サービスの量でみて、2023年現在の約16.90ドルに相当する。言い換えれば、現在の1ドルは1945年当時の約6%の価値しかない。

ドルの価値の毀損が加速したのは、1971年夏、当時のニクソン大統領が金とドルとの交換を停止、つまり金本位制から離脱した「ニクソン・ショック」以降だ。米国は中央銀行(連邦準備理事会=FRB)を通じて好きなだけ不換紙幣のドルを作り、それによって世界中から物やサービスを買えるようになった。いわば「打ち出の小槌」を手に入れたのだ。

打ち出の小槌を手に入れて、それを我慢して使わないほど自制心のある人は多くない。とりわけ、何かとカネの入り用な政治家先生だとしたら、どうなるかは目に見えている。「権力は腐敗する。絶対権力は絶対に腐敗する」という英思想家アクトンの言葉どおりだ。

大統領をはじめとする米国の政治家は、建前では政府から独立したことになっているFRBに対し陰に陽に圧力をかけ、あるいはFRB側が忖度して、ドルを刷りまくった。政府は新たに作ったお金を何に使ったのか。戦争と福祉だ。ニクソン氏の前任であるジョンソン大統領が「偉大な社会」と銘打って始めた福祉国家は、今ではすっかり米社会に定着し、財政を圧迫している。米軍は自国の防衛に関係あるとは思えないような世界の隅々にまで介入し、多額の軍事費を浪費している。

その結果が、デフォルト(債務不履行)寸前まで膨らんだ巨額の政府債務と、94%の価値を失ったドルだ。エコノミストのパトリック・バロン氏は「米国はドルの供給を制御することで購買力を守るという責任を果たしていない」と批判する

このままだと、ドルの覇権が崩れ去る日は遠くないかもしれない。それは米国と政治的・軍事的対立を深めるロシアや中国のせいではない。ローマの愚かな皇帝たちと同じく、目先の利益にしか関心のない政治家たちが通貨の価値を失わせたことで招いた、自壊なのだ。

2023-06-29

徴兵制は奴隷制

自由主義(リバタリアニズム)の原則からは、自衛権を個人の手に取り戻したうえで、リバタリアンの経済学者マレー・ロスバード氏が言うように、外敵の脅威を本当に感じるのなら、自分たちの財布から金を出し、必要な軍事防衛を賄えばよい。そして自分たちで戦うか、代わりに進んで戦ってくれる誰かを雇うかすればよい。それが理想だが、すぐには実現できそうにない。政府が自衛権を独占する現状で、それでもできることはある。徴兵制の拒否だ。
徴兵制が個人の生命・身体に対する侵害であることは、言うまでもないだろう。リバタリアンの米評論家、ジェイコブ・ホーンバーガー氏は「徴兵制は軍事的な奴隷制の一種である。市民が政府による殺戮のために自分の時間と労働力を提供するよう強制されるからだ」と述べる

戦争中のウクライナとロシアは、ともに徴兵制を敷いている。とくに苦戦が伝えられるウクライナは、徴兵担当官が路上の市民を無理やり連れ去るか、連れ去ろうとする様子が、ソーシャルメディア動画にいくつもアップされている。徴兵制の下では「合法」なやり方なのだろうが、それだけに徴兵制の暴力的な本質が迫ってくる。こうした事実は、ウクライナ応援団と化した欧米や日本のメディアではまったく報じられない。ロシアも徴兵制を実施している点では同罪だ。

日本は、ただでさえ自衛官が「慢性的な人材不足」にあるうえ、「台湾有事は日本有事」などと言って、わざわざ他国の紛争に首を突っ込もうとしている。いずれ徴兵制導入の議論が高まってもおかしくない。そのとき自由主義者は、市民の先頭に立って反対しなければならないだろう。

おそらくそのときには、政府が市民の自由を奪おうとする際にいつもそうするように、メディアを利用して大々的なキャンペーンを繰り広げるはずだ。たとえばアジア・太平洋戦争末期の航空特攻や人間魚雷があらためて美談に仕立て上げられ、人々の愛国心や闘争心をかき立てる一方で、徴兵制に反対する少数派は非国民やスパイ呼ばわりされることだろう。そんな中で抵抗を貫くのはたやすくない。

そんなときは、ある偉大な人物のことを思い出そう。ベトナム戦争の際に米軍の徴兵を拒んだ伝説のボクサー、モハメド・アリ氏だ。

アリ氏はベトナム戦争が激化した1967年、米軍への入隊を求められたが、自分の信仰(イスラム教)に反するとして拒否した。「俺はあいつらベトコン(北ベトナムが支援した南ベトナムのゲリラ)に何の恨みもないんだよ」とも述べた。同氏ほどの著名な人物で、他に徴兵を拒否した者は誰一人いなかった。アリ氏は徴兵を回避した罪で有罪判決を受けた後、ボクシングのライセンスを停止され、ヘビー級王者のタイトルを剥奪される。

それでもアリ氏はめげず、戦争反対の発言を続けた。やがて彼の発言の影響力もあり、ベトナム戦争の支持率は低下していった。

政府やメディアにあおられ、「何の恨みもない」はずの外国人と戦えと叫ぶ人々は、いつの時代も世間の多数派を占める。一方、そうした大勢に抗し、アリ氏のように孤独な戦いを続ける人は少ない。どちらの道を選ぶのか、自由主義者の真価が問われる。

2023-06-28

「普通の市民」に武装権を!

自衛権が本来国のものではなく、個人のものだといっても、丸腰では武器を持つ相手から身を守れない。したがって個人に武装する権利が認められなければならない。これは自由主義(リバタリアニズム)から導かれる当然の帰結だ。
何をとんでもないことを言い出すのかと思うかもしれない。しかし少なくとも、同盟国である米国と「価値観を共有」すると信じる人々は、この考えを馬鹿馬鹿しいと笑うことはできないはずだ。個人の武装権は、アメリカ合衆国憲法で保障された権利だからである。

合衆国憲法修正第2条は、「規律ある民兵団は、自由な国家の安全にとって必要であるから、国民が武器を保有し携行する権利は、 侵してはならない」と定める。銃規制が強まる中でいろいろ議論はあるようだが、今でもこの定めによって、銃器を持つ権利は個人の憲法上の権利と認められている。

米国に限らない。自由主義発祥の地の一つであるフランスも、申告によって合法的な銃の使用が可能だ。第二次世界大戦中には、米英から供給された銃でナチス・ドイツに対する抵抗運動(レジスタンス)を繰り広げたことでも知られる。同じ欧州のフィンランド、スウェーデン、スイスなども銃保有率が高い。

一方、ドイツはナチス政権下で銃規制が進み、銃を没収された。もしユダヤ人市民が銃を持ち続けていたら、ホロコースト(大虐殺)の犠牲にならずに済んだかもしれない。沖縄戦のさなか、旧日本軍に殺害された沖縄県民にも同じことがいえる。

保守派の政治家はしばしば、日本は「普通の国」にならなければならないと説く。具体的には、必要に応じて軍事力を行使できる国になりたいということだ。

しかし、もし「普通の国」が必要に応じて軍事力を行使できる国ならば、その前に、その権利を政府に与えた主権者であるすべての市民に、同様の権利を認めなければならないはずだ。すなわち、武器を保有し、必要に応じてそれを使用する権利である。

そんなことを認めたら、真っ昼間から銃弾が飛び交う無法地帯になると、猛反対されそうだ。しかし銃保有率の高いフィンランドやスウェーデンスイスで乱射事件はほとんど起こらない。乱射事件が大きく報じられる米国でも、銃の販売数が増加するにつれ、殺人率はむしろ低下しているとの指摘もある。

日本を「普通の国」にする前に、まずは日本人に武装を認め、「普通の市民」にしよう。そうすれば、万が一外敵から攻められたとき、自衛隊が近くにいなくても、自分で自分の身を守ることができる。そして沖縄戦を教訓に、日本政府の暴力からも身を守ることができるだろう。

2023-06-27

「国の自衛権」という嘘

政府が「自衛戦争」を行う根拠は、「国の自衛権」にあるとされる。しかし、この「国の自衛権」という、世間で当然視される概念は、個人の自由を尊重する自由主義(リバタリアニズム)の原理にはそぐわないものだ。
防衛省・自衛隊ホームページの「憲法と自衛権」というコーナーでは、「平和主義の理想を掲げる日本国憲法は、第9条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認に関する規定を置いています」と述べた直後に、すかさずこう付け加える。「もとより、わが国が独立国である以上、この規定は、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではありません」

たいていの人はこの文章を読んで、「そりゃそうだよ、主権国家なんだから、自衛権があって当たり前」と思うことだろう。沖縄をはじめ国内に外国の軍事基地だらけで、そこから外国の大統領が出入国管理なしで堂々と出入りし、その大統領から「私が彼(日本の首相)を説得した結果、日本は防衛費を飛躍的に増やした」などと内政干渉の内幕をばらされてしまうような国が、果たして主権国家といえるかどうかはともかく、「国の自衛権」という考えは、自由主義からは出てこない。

自由主義において、権利が帰属する主体はあくまで個人である。代表的な権利は、自分の生命・身体・財産に対する権利だ。これらの権利を政府による侵害から防ぐ。これが自由主義の出発点である。当然、これらの権利を自衛する権利も、第一義的には政府ではなく、個人に属する。もし国が「自衛権」を持つとしたら、それは外敵の攻撃に際し、個人から権利行使の代行を委託されたものと解釈しなければならない。

さて、政府のあらゆる事業に共通する問題がここで生じる。一口に「自衛」といっても、そのニーズは個人によって千差万別だ。熱烈な愛国者で最後まで敵と戦うという人もいるだろう。家族の命が守れるなら戦場に行くという人もいるだろう。戦争の途中でもうやめたいと考える人もいるだろう。税金を余分に払う代わりに兵役は免除してもらいたい人もいるだろう。最初から戦うのはパスして外国に逃れたいという人もいるだろう。政府はこのような多様なニーズに、コネなどによる不正手段を別にすれば、対応できない。

自衛権が個人に属したままならば、それをどのような形で行使するか(あるいは行使しないか)は、個人が各自のニーズに合わせて自由に選択できる。国にいったん自衛権の行使代行を委託した後でも、その委託を取り消し、「自衛戦争」から離脱することができるはずだ。ところが実際には、そんなことは許されない。敵前逃亡として射殺される恐れすらある。

「政府は盗賊だ」と自由主義者は言う。もしそれを本当に信じるのなら、大切な自衛権を政府という盗賊にやすやすと引き渡すことはできないはずだ。

2023-06-26

政府は国民を守らない

少なからぬ自由主義者(リバタリアン)は、無能な政府が教育や医療やインフラ整備を独占することは批判しても、なぜかもっと重要な外交や防衛に関しては、その同じ政府の独占をあっさり認めてしまう。ことに「自衛戦争」の話になると、完全に白旗を上げて、これはもう政府の出番だ、つべこべ言うのはやめようと口をつぐむ。
しかし政府は、教育や医療やインフラ整備と同じく、「自衛戦争」においても無能である。その典型例を、現代史をまともに学んだ日本人なら知っているはずだ。アジア・太平洋戦争末期の沖縄戦である。

沖縄が6月23日、沖縄戦で犠牲になった人々を悼む「慰霊の日」を迎えたのを機に、大手各紙は社説で沖縄を取り上げた。

アジア・太平洋戦争には大きく、アジア諸国に対する侵略戦争という側面と、欧米諸国との植民地争奪戦争という二つの側面があるが、沖縄戦だけに限定すれば、日本を米軍の侵攻から守る「自衛戦争」だったとみることはできるだろう。

しかしその現実はどうだったか。毎日新聞の社説が述べるように、日米双方で約20万人が犠牲となり、うち一般住民の死者は約9万4000人に上った。「米軍の本土上陸を遅らせるため、沖縄での持久戦に持ち込もうとした旧日本軍の作戦が悲惨な結果を招いた」とされる。

日本政府は、時間を稼いであわよくば「天皇制護持」を条件とする和平交渉につなげようと、守るべき自国民である沖縄の人々を「捨て石」として使ったのだ。住民の中には、日本軍によって、戦火を避けていたガマ(自然の洞窟)を追い出されたり、「集団自決」に追い込まれたり、スパイ扱いされて殺された人々もいた。作家の故・司馬遼太郎氏は自分の軍隊経験に照らして、「軍隊はそれ自体を守るものであって、国民を守るものではない」と断言し、本土決戦が行われていたならば、沖縄と同じことが本土でも起こったであろうと述べている(新崎盛暉他『観光コースでない沖縄』)。

ところが司馬氏がかつて籍を置いた産経新聞は、「県民守り抜く決意新たに」と題し、玉城デニー知事に対し「中国や北朝鮮の脅威を直視し、政府や自衛隊と協力して県民を守り抜く態勢を整えてほしい」と注文をつけた。よく言えたものだ。

中国や北朝鮮を挑発していらざる「脅威」を招いているのは米国と日本だという事実はさておき、日本政府が沖縄県民や日本国民を「守り抜く」ことなどありえない。それは沖縄戦の歴史が証明しているし、司馬氏の言葉をもじっていうならば、政府はそれ自体を守るものであって、国民を守るものではないからだ。

2023-06-23

米財務省、制裁がドル覇権を脅かすと認める

多くの国が代替決済手段を選択し、準備資産の中でドル以外の保有を増やしている、とイエレン長官は認めた

RT
(2023年6月14日)

イエレン米財務長官は13日、米下院金融サービス委員会で国際金融システムの現状について議論した際、米国の制裁によって多くの国がドルに代わる決済手段を求めていることを認めた。
脱ドルのリスクについて質問されたイエレン長官は、世界経済におけるドルの利用が減少していることを認めた。

「我々の制裁措置の影響を受けることを恐れている国々が、ドルに代わるものを探しているのは驚くべきことではない。それは単に予期しなければならないことだ」と同長官は述べた。

ビセンテ・ゴンザレス下院議員から、フランスのような伝統的な同盟国でさえドル以外の取引を行っており、米国は対外政策における制裁の利用を減らすべきではないかと質問されたイエレン氏は、ほとんどの国にとってドルの利用に対する「意味のある回避策はない」と述べた。イエレン氏は世界の準備資産の中でドル離れが進んでいることは認めたが、ドルが支配的な通貨としての地位を維持する可能性が高いとの考えを示した。

「時が経つにつれ、各国が保有する準備資産に占める他の資産の割合が徐々に増えていくと予想される。多様化を望むのは自然なことだ。……しかしドルが世界の金融システムで今の役割を果たしているのは、他の国には真似のできない非常に優れた理由があるからだ。……どの国にとっても、ドルを回避する方法を考案するのは容易ではない」とイエレン長官は述べた。同長官によれば、ドルの主な強みは「流動性の高い開かれた金融市場、強力な法の支配、資本規制の不在」であり、「どの国も真似できない」という。

米国の広範な制裁措置により、この1年で貿易決済においてドル離れを始める国が増加している。例えば、ウクライナに関連したロシアへの制裁は、ロシアの外貨準備の半分を凍結し、ロシアの銀行が国際銀行間通信協会(SWIFT)を通じて取引を行う能力を制限した。

輸出規制をめぐって米国と争っている中国も、貿易決済における人民元の比率を高めている。中国の国営石油会社中国海洋石油(CNOOC)は最近、仏石油大手トタルエナジーズと初の人民元建て液化天然ガス(LNG)取引を完了した。

US Treasury admits sanctions threaten dollar hegemony — RT Business News [LINK]

2023-06-22

脱ドル化、予想より早く起こる可能性

スプートニク
(2023年6月15日)

制裁措置や貿易禁止をきっかけに、ロシアを含む多くの国々が、欧米による「武器化」の進む米ドルへの依存から脱却する取り組みを加速させている。BRICS諸国の最近の動きは、世界経済における米ドルの優位がいずれ根こそぎ失われることを期待させるものだ。
脱ドル化は、ほとんどの人が考えているよりもずっと早く起こる可能性がある。ネトリー・グループのマイケル・ゴダード社長は、サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPEIF)でそう述べた。

世界でも例のないグローバル経済・ビジネスイベントである同フォーラムは6月15日に2日目を迎え、米ドルの覇権を離れようとする国々の間で最近話題になっている「脱ドル化」に焦点を当てている。この動きはBRICS諸国が主導している。BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカという世界最大の途上国経済圏で構成されており、米主導の経済秩序から脱却するために、共通通貨の導入を検討している。

アルゼンチン、イラン、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、エジプトなど、BRICSへの加盟を希望する国が続々と現れており、脱ドルの流れはさらに強まりそうだ。

「BRICSの新通貨は、議論されているように、金や資産バスケットなど何らかの資産に裏打ちされたもので、貿易の基礎として、BRICS諸国や新加盟国がそれを用いて貿易すれば、貿易に使われるドルの量をほぼ直ちに減少させるだろう。そして数年の間に、それは大きく加速するだろう」。マイケル・ゴダード氏はスプートニクに語った。

しかし世界の準備通貨であるドルを捨てるという希望を抱くのであれば、「実際には〔ドルに代わる〕準備通貨が必要だ」とも明言した。現時点でのドルの圧倒的な優位は、米国の債券市場にあるとゴダード氏は述べ、こう付け加えた。

「BRICSがそれを再現し、さらにそれを置き換える方法の一つは、債券市場をリンクさせ、政府や国民が新しい通貨建ての債券を実際に購入することだ。そうすれば、多くの人が考えているよりもずっと早く、脱ドル化が実現すると思う」

BRICS通貨に懐疑的で、加盟国の経済が大きく異なることを警告する人たちに対して、ゴダード氏は、この「格差」をうまく克服する方法を列挙する。その一つは、BRICSが「金か信頼できる商品バスケットに裏打ちされた通貨」を作り、「世界の80%と取引する」やり方だ。

「米国、英国、欧州以外のほとんどの人は、ドルに代わる通貨を望み、制裁を受けたり、資産を凍結されたりするリスクを負いたくないと思っていると思う。その勢いが通貨を根付かせ、成長させると思う」とゴダード氏は締めくくった。

BRICSのメンバーであろうと、他の国であろうと、あるいは米国の現在の同盟国でさえも、米国の外交政策に反対するほど大胆であれば、米国はいつでもその国に対する制裁手段としてドルを振りかざすことができるし、実際振りかざす。それを認識する必要があると、ロシア安全保障会議のセルゲイ・バフルコフ副長官は警告する。

米国の直接の指示に従いたくない国は、様々な制裁や禁止措置に直面し、経済に深刻な影響を被る恐れがあると、バフルコフ氏はサンクトペテルブルク・フォーラムに合わせてスプートニクに語った。具体的には、ドルの流動性の制限、決済の問題、貿易の制限、課された制裁に伴う膨大な問題をもたらすかもしれない、と同氏は述べた。この脅威は米国の同盟国にも存在し、多くの国にとって米国の政策に縛られ続けることは経済的に不利になりつつあるとし、欧州の不況はその顕著な例だと付け加えた。

つまり重要なのは、主権の強化、国益に基づく交流、互いに利益のあるに重きを置き、ドル発行によって他人のルールを押し付けようとする試みを拒否することだ。そうバフルコフ氏は強調した。

今日、多くの人がすでに理解しているように、脱ドル化の流れは非常に活発に進行していると、バフルコフ副長官は述べた。

二つの国が交流し、貿易などを行う場合、なぜ片方が会計単位にすぎない別の手段の仲介を必要とするのかと、ロシア会計検査院の検査官、ドミトリー・ザイツェフ氏は考察する。ドルに代わるBRICS通貨は、試しに使ってみるには便利な仕組みかもしれないと同氏は同意したが、他の手段も含めて模索の幅を広げるよう勧めた。

「これこそ多極化、多中心的な考え方が求めるものだ」とザイツェフ氏は強調した。

De-Dollarization ‘Could Happen Much Quicker Than Most Think’ [LINK]

2023-06-21

平和の大統領を!

元米下院議員、ロン・ポール
(2023年6月19日)

1962年のキューバ危機以来、いつになく核戦争に近づいているというのが大方の意見だ。キューバのソ連ミサイルが米ソの核戦争を引き起こしそうになった、あの運命の日よりも、今のほうが近いと主張する人さえいるだろう。
当時言われたのは、共産主義と生死をかけた戦いのさなかにあり、一歩たりとも領土を譲ることはできない。さもなければドミノ倒しで「赤〔共産主義〕」に支配されることになるということだった。

キューバをめぐる米ソ対立の最中に徴兵された私にとって、その危機は非常に現実味のあるもので、人類絶滅の危機に瀕していると誰もが感じていた。

幸い、当時のホワイトハウスには、核の瀬戸際外交の危うさを理解している大統領がいた。ケネディ大統領は、ピッグス湾事件という愚かなキューバ侵攻を中止したことを決して許さないタカ派に囲まれながらも、電話を取ってソ連のニキータ・フルシチョフ〔最高指導者〕と話し合い、その結果世界を救うことができた。

ケネディ大統領はソ連がキューバからミサイルを撤去する代わりに、トルコから米国のミサイルを撤去することに同意したと、今では歴史家が教えてくれている。外交が適切に機能することを示す典型的なケースである。

しかし現在のホワイトハウスには、ケネディ大統領のような人物がいないことは明らかである。ロシアと対立する正当な理由として、ソビエト帝国や共産主義イデオロギーに直面することはもはやないが、バイデン政権は依然として米国を核紛争に引きずり込もうとしている。なぜ、私たちを危険にさらすのだろうか。それは冷戦時代に否定された「ドミノ理論」である。もし私たちがロシアと「最後のウクライナ人」まで戦わなければ、プーチン〔ロシア大統領〕がすぐにドイツを行進することになるという。

これはバイデン氏がロシアの報復を恐れ、ウクライナには軍服と医療品しか送らないと約束したことから始まった。そこから対戦車ミサイル、多連装ロケットランチャー、パトリオットミサイル、ブラッドレー戦闘車、数百万発の弾薬に至った。バイデン政権は先週、ウクライナに劣化ウラン弾を送ることを発表したが、これは今後何千年も地球を毒するものだ。長距離地対地ミサイル「ATACMS」が近々納入されるとの噂があり、これによりロシアの奥深くまで攻撃することができる。

どうやら、F16戦闘機も届くようだ。

米国のエスカレーション(紛争激化)の根拠として言われているのは、北大西洋条約機構(NATO)がウクライナの戦争機構を直接支援したことに対してロシアがNATOに直接報復しなかったので、ロシアは決して報復しないに違いないというものだ。

それは本当に賢明な賭けなのだろうか。米国製のF16戦闘機がNATOの基地から飛び立ち、NATOの操縦士がウクライナのロシア人、あるいはロシアそのものを攻撃することがロシアに対する宣戦布告であることは、多くの人にとって明らかだ。

それは第三次世界大戦を意味する。冷戦の間、私たちが何とか避けてきたことだ。

議会は沈黙し、あるいは従順で、米国の戦略的目標がはっきりしないまま、私たちは災厄に向かって突き進んでいる。バイデン氏は、あるいは実際に事を運んでいるのが誰であれ、まっすぐに前進している。

米大統領選挙に突入した今、ひとつだけ明らかなことがある。キューバ危機の際のケネディと同じことをしてくれる、平和の大統領が必要なのである。手遅れにならないことを祈るばかりだ。

The Ron Paul Institute for Peace and Prosperity : We Need a Peace President [LINK]

2023-06-20

NATOと永久戦争への道

作家・投資家、デビッド・サックス
(2023年6月16日)

米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は6月14日の記事で、来月〔リトアニアの首都〕ビリニュスで開く北大西洋条約機構(NATO)首脳会議(サミット)でウクライナのNATO加盟のタイムテーブルを発表するよう、バイデン〔米大統領〕に圧力がかかっていると報じた。
おそらくそれにバイデン氏は後ろ向きで、NATO同盟国の中で「孤立」しているようだ。記事の見方は、同じ記事の最後の段落(かつて〔政治評論家〕ノーム・チョムスキー氏は最初に読めと言った)とも矛盾する。そこではNATOへの加盟が「プーチン氏に戦争続行・激化の動機を与える可能性がある」と「静かに主張する国々もある」と認めている。

実際、ロシアはすでにウクライナのNATO加盟をまったく容認できず、存亡の危機であると宣言しており、その防止を主要な戦争目的の一つにしている。戦争が終わればウクライナがNATOに加盟するというビリニュス宣言は、戦争が永遠に続くことを事実上確実にする。また、平和実現のための西側諸国の重要な交渉材料であるウクライナの中立をテーブルから外してしまうことになる。

バイデン氏への「圧力」は、ゼレンスキー〔ウクライナ大統領〕と一部のNATO東側諸国、とくにポーランドとバルト3国から来ていることは明らかだ。ゼレンスキー氏は2週間前、最終的な加盟について確固たるシグナルがない限り、ウクライナはビリニュス・サミットへの出席さえしないだろうと述べた。NATOの前事務総長で、現在ゼレンスキー氏の顧問であるアナス・ラスムセン氏は「NATOがウクライナの明確な前進に合意できない場合、いくつかの国が個別に行動を起こす可能性がある」とまで脅した。とくに「ポーランドは本気で突入を検討」し、NATOとロシアの直接戦争の引き金となりかねない。

NYTの記事は、ストルテンベルグ現事務総長が、ウクライナのNATO加盟に向けた具体的なタイムテーブルの必要性について強硬派に同意していることを示唆しているが、ストルテンベルグ氏は13日にバイデン大統領との共同演説で、そうした約束をしていない。14日に同氏とNATOは、ウクライナのNATO加盟に関する具体的な日程はビリニュスでの議題にはならないと明らかにしている。ストルテンベルグ氏は「ウクライナの未来はNATOにある」という4月のコメントを繰り返し、ウクライナが「NATOと完全に相互運用できるようになる」ための「複数年プログラム」について加盟国の合意が得られると述べたが、それ以上具体的なことは約束しなかった。

どうやら「孤立」しているのはゼレンスキー氏とロシア国境沿いの同盟国であって、バイデン大統領ではないらしい。

ストルテンベルグ氏の個人的見解がどうであれ、近い将来ウクライナ〔の加盟〕を認めるかどうかという問題でNATOが分裂していることを同氏は知っている。NYT紙でさえ、ドイツ、ハンガリー、トルコの3カ国を挙げているが、これらの国の首脳は将来の特定の時期における加盟に間違いなく反対するだろう。さらに多くの首脳が内々に懸念を表明しており、バイデン氏もその1人であるように見える。

バイデン氏の言動は全般にタカ派だが(そして私は、今回の戦争に至るまでの数カ月、良い外交をしていれば戦争を完全に回避できたと言い続けている)、米国をロシアとの直接戦争に突入させたくないという希望において、みごとなまでに一貫性を保ってきた。ラスムセン氏の脅しは、全加盟国がいずれかの加盟国の軍事防衛を保証する同盟において、代理戦争がいかにたやすく現実の戦争に発展しうるかを示している。同氏のような外国人が、既存の保証を利用して米国を脅迫し、無謀な行動を取らせることができるのであれば、米国民は〔加盟国の1つに対する攻撃をNATO全体への攻撃とみなす、北大西洋条約〕第5条の新たな保証が賢明かどうか疑問を抱き始めるかもしれない。

ポーランドやウクライナという尻尾が、米国という犬を第三次世界大戦に駆り立てるようなことがあってはならない。

バイデン政権の外交政策担当者の一部、たとえばブリンケン国務長官は、NATO加盟がもたらす安全保障をウクライナに与えることよりも、ウクライナに「イスラエルの地位」を与えるという別のアイデアを推し進めている。これは武器、弾薬、資金を含む長期の安全保障(イスラエルの場合は10年間隔)で、現在の反攻の運命や選挙日程に左右されないというものだ。つまり、米国は反攻が失敗しても支援を見直すことはない。実際、厄介な有権者が考えを変えたとしても、支援はなくならないだろう。バイデン氏の「民主主義のための戦争」は、選挙に左右されるにはあまりにも重要だ。

しかし、ここに古典的な「おとり商法」を見る向きもあるだろう。昨年、ウクライナがハリコフとケルソン周辺の土地を奪還した後、米国民はウクライナ側が2023年の春から夏にかけて仕事を終わらせると保証された。この新たなウクライナの反攻は、ロシアの領土獲得を後退させ、おそらくはクリミアに対するロシアの支配を脅かし、それによってロシアを交渉のテーブルに着かせ、戦争を終わらせる。多くの米国人は、この根拠に基づいてウクライナへの1000億ドル以上の予算計上を支持した。暗黙の了解として、これは1回限りの出費であり、新たな永久戦争における毎年の予算計上の基準にはならない、ということだった。

今、反攻緒戦の苦戦とビリニュスでの複数年契約の提案を考え合わせれば、これが嘘か夢物語だったことは明らかである。しかし、これはいつも起こることなのではないだろうか。政府は迅速かつ容易な勝利を約束して我々を戦争に引きずり込み、いったん戦争に巻き込まれると、米国の信頼が危機に瀕するため、どんな犠牲を払っても撤退することはできないと言う。ベトナム、アフガニスタン、イラクの再来である。ただし今回は核武装した敵がいるため、戦争がいつ第三次世界大戦に発展するかわからないというリスクが高い。

NATO加盟国の間で現在行われている議論の中で最も無意味なのは、スケジュールの有無にかかわらず、ウクライナがNATOに加盟するというビリニュス宣言は、戦場におけるウクライナの運命が大きく転換しない限り、実行できない約束だということだろう。このような宣言は、2008年のブカレスト・サミットでの宣言と同じく、ウクライナのNATO加盟を保証することはできない。ただロシア側が必要な限り戦争を継続させ、NATO加盟の阻止を断固として決意していることだけは確かである。

つまり、ウクライナのNATO加盟を「いつか」認めるという我々の主張が意味するのは、第三次世界大戦に巻き込まれたくないという我々の(賢明な)願望とあいまって、「いつか」は決して訪れないということだ。現実的な達成の道筋が見えないのに、なぜ約束を続けるのだろうか。なぜ、いずれにせよほとんど理論上のものにすぎない、NATOの「開かれた扉」という原則をめぐって争うのか。ウクライナが実際に同盟に参加するには、大陸全体の混乱を引き起こすことが避けられないが、そもそもNATOは、そうした混乱を避けるために設立されたのである。

ビリニュスで会談する首脳らはそうした疑問を抱かないかもしれないが、彼らを裁く未来の歴史家はきっと疑問に思うだろう。

Will upcoming NATO summit launch forever war in Europe? - Responsible Statecraft [LINK]

2023-06-19

ナチス復活とメディア

ライター、ブライス・グリーン
(2023年6月12日)

ニューヨーク・タイムズ紙は、ウクライナ軍の写真にナチスのシンボルがたびたび現れる理由を説明しようとする記事(2023年6月5日)で、ウクライナのナチスを軽視し、あるいは祝福する路線を続けている。タイムズ紙は、このようなイメージは「西側ジャーナリスト」を「困難な立場」に追い込むとコメントした。記事中、ウクライナの報道担当者によれば、記者たちはウクライナ兵にナチスの記章を外すよう頼んでから写真を撮ったという。
見出しはこうだ。「ウクライナの前線におけるナチスのシンボルは、歴史の茨の道を照らし出す」。タイムズの袖見出しによれば、最大の懸念は、ウクライナにおけるナチズムの証拠が「ロシアのプロパガンダをあおる危険がある」という恐れである。

「複雑な関係」


問題は、「ウクライナ軍とナチスのイメージとの複雑な関係、第二次世界大戦中のソ連とドイツ双方の占領下で築かれた関係」だという。この関係は「微妙」だとタイムズ紙はいう。プーチン〔ロシア大統領〕が非ナチ化という戦争目的を明言しているためだ。

タイムズ紙の記者トーマス・ギボンズネフ氏は、ウクライナが多くの場合ナチスのシンボルを「受け入れている」にもかかわらず、同国には非ナチ化が必要だという考えを否定する。ゼレンスキー現大統領がユダヤ人であるという理由からだ。この説得力のない議論は、ゼレンスキー氏の血筋にかかわらず、同氏が極右・ネオナチ勢力を主要構成員とする権力構造の中心に位置していることが十分に立証されているため、さらに説得力を欠く。

ゼレンスキー氏の主要な支持者の一人である〔実業家〕イーホル・コロモイスキー氏は、かつてタイムズ紙(2019年3月15日)が「ネオナチの準軍事組織」と表現し、ウクライナ軍に統合されている組織、アゾフ大隊の支援者でもあった。

これらの事実はいずれも〔ロシアの〕違法な侵攻を正当化するものではない。しかし米報道機関において重要な事実が意図的に抑制・省略されているのは明らかであり、紛争の原因や解決の可能性に関する読者の理解が損なわれている。

「プーチン擁護派」のレッテルを貼られるという絶え間ない脅威は、最高レベルのリベラルな既存組織にさえも、ゾッとするような影響を生み出している。タイムズ紙によれば、

旧来、憎悪のシンボルを非難してきたユダヤ人団体や反ヘイト団体でさえ、ほとんど沈黙を保っている。ロシアのプロパガンダを受け入れていると見られることを内心懸念している指導者もいる。

タイムズの記事は、ジャーナリストが現実を報道することに不安を感じていることを認める。記事中のウクライナの報道担当者によると、ある時、匿名の報道機関の記者が撮影前、兵士にナチスのシンボルを取り外させたという。これはジャーナリストが明らかに政治的な理由のために、現実の描写を故意に歪めたという重大な疑惑である。

ホロコーストのパイオニア


タイムズ紙は、ナチスの隠蔽を正当化する資格のある人物を見つけた。

ウクライナの歴史家であり宗教学者でもあるイホル・コズロフスキー氏は、シンボルにはウクライナ独自の意味があり、他の場所でどのように使われていたかではなく、ウクライナ人がどのように見ていたかによって解釈されるべきであると述べる。

「シンボルは、地球の他の地域でどのように使われているかとは無関係に、どんな地域やどんな歴史の中でも生きることができる」

ナチスのシンボルがウクライナでどのように使われたかを「地球の他の地域」と区別することは、ウクライナのナチズムが他の場所よりも何らかの形で穏健であったことを示唆する。しかし実際には、ウクライナはユダヤ人大量虐殺の先駆けであり、推定150万人、つまりホロコーストによるユダヤ人犠牲者の4人に1人が殺された場所である。これらの殺害は主にウクライナの民族主義民兵によって行われ、ホロコーストに参加したこれら部隊の生存者は、2019年にウクライナから退役軍人の地位を与えられ、政府の給付を受けることができるようになった。

CIAのナチス


コズロフスキー氏は弁護の一環として、こうしたウクライナのナショナリストたちの戦後の反ソ連闘争に言及する。

今日、新しい世代がロシアの占領と戦う中で、多くのウクライナ人は、この戦争を第二次世界大戦中とその直後の独立のための闘いの継続とみなしている。

コズロフスキー氏とタイムズは、この「独立のための闘い」のファシスト的性格を省いている。今日ではほとんど認識されていないが、米国には西・東欧で元ナチスを訓練し、反共産主義の準軍事組織として活動させるという、大胆な政策があった。これは決して「ウクライナ独自」ではない。

ウクライナでは共産主義に対抗する民族主義運動の一環として、元ナチス親衛隊(SS)やナチスの情報部隊が米中央情報局(CIA)から支援を受けていた。今日ウクライナで見られるナチスは、これらのネットワークや組織の直系の子孫である。タイムズ紙がこの歴史に言及することを拒否したとしても、これらのシンボルは、米国が支援したナチス運動に明確にルーツを持っており、現在のナチスを擁護することは、より一層ひどいことである。

この戦争における多くの事実と同様に、ウクライナのナチス問題とその起源は、米国の企業メディアによって記憶の彼方に追いやられてしまった。印象的なのは、開戦前にウクライナのナチス問題を認める報道がいかに一般的であったか、そしてその問題が米議会で認識されていたことである。

しかしタイムズの報道で再確認されたように、米国のジャーナリストは、この戦争で正しいチームに属することが、読者に出来事の正確なイメージを提示することよりも重要だと判断した。このタイムズ紙の新たな記事は、この戦争や他の多くの戦線における米国の政策に対する合意をでっち上げるうえで、ジャーナリストが果たす役割を際立たせている。たとえそれがナチス民兵の復活を意味しようともである。

NYT on Ukraine's Nazi Imagery: It's 'Complicated'  - FAIR [LINK]

2023-06-16

カラー革命という内政干渉

オーストリア経済センター、チェン・ウェイミン
(2023年6月14日)

最近、米国の海外に対する関心はロシアに集中しているが、米政府の目により大きな魚として映っているのが中国だ。米国は一方ではウクライナ紛争に次々と援助を注ぎ込んでいるが、他方では太平洋を隔てて競合する超大国に警告を発している。しかし世界の他の国々と同様、中国も過去数十年間、米国の軽率な外交政策と介入主義を見続けてきた。そして今、中国もまた米国に警告を発している。

警鐘を鳴らす


中国は最近、古代シルクロードが中国帝国と西方の文化を結んだ歴史的な都市、西安で2日間の中国・中央アジアサミットを開催して終了した。習近平国家主席は中央アジア諸国の首脳を前に、投資計画、自由貿易、科学技術交流、観光・農業の振興、安全保障協力などを通じた、中国と近隣地域との今後の関わり方について発言した。

そして最後のポイントとして、習氏は米国に目を向け、言葉を濁すことなくこう言った。「〔中国が2023年3月に発表した〕グローバル・セキュリティ・イニシアティブに基づいて行動し、地域諸国の内政に干渉したり、カラー革命を起こそうとしたりする外部の企てに断固として立ち向かうべきだ」。この発言で習氏は米国を批判し、米政府がここ数十年目立たないように行ってきた類の干渉に対して警告を発した。

カラー革命の背景


カラー革命は、ソビエト連邦とその影響圏が崩壊した後の90年代初頭から一貫して観察されてきた。この革命は、名目上民主的でない国々で、自由を実現するために草の根の民衆運動が行われるのが特徴である。これらの運動は一般に、既存の政府体制の打倒や変更を目的とした大規模な抗議活動、デモ、市民抵抗運動を伴う。陰謀論や偽情報として理解されず無視されることも多いが、米政府は数十カ国でいわゆるカラー革命に資金を提供し、指導してきた。とくにロシアや中国の近隣やその周辺の重要な地理的位置で親中露に傾いている国々である。

カラー革命を起こす仕組みは非政府組織(NGO)である。NGOは表面的には民主主義制度、市民社会、統治改善の推進を謳っているが、全米民主化基金(NED)や〔ジョージ・ソロス氏が保有する〕オープン・ソサエティ財団のような団体は、政情不安をあおり、国内制度や選挙を混乱させ、親米派の指導者を政権に就かせるという決定的な役割を担ってきた。このように、民主主義と自由を守るという名目で、アメリカ帝国の名の下に、選挙と主権を損なうのがカラー革命である。

中国の外交政策


中国の権威主義的な指導はさておき、中国の外交政策は、国際関係における米国の「自分のやり方しか認めない」(あるいはそれ以下)の手法に代わるものを提供している。米国の介入主義とは対照的に、中国の外交政策はいわゆる平和共存5原則(主権と領土保全の相互尊重、相互不侵略、内政不干渉、平等と相互利益、平和共存)を軸にしている。この原則は1950年代半ば、共産主義の新政府である中華人民共和国が外国と友好を深めようとしたときに生まれた。

中国が他国の内政に干渉しないことを約束し、国家主権を尊重することは、欧米諸国やその組織と比較して、国際協力や開発に対する中国流のやり方の重要な特徴となってきた。今、中国はさらに一歩進んで、同盟国と協力し、国内問題を米政府が資金を提供するNGOのような外国の影響から共同で守る可能性があるようだ。

注目すべきこと


中国の首脳がカラー革命に対して明確に発言したのは、これが初めてではないだろう。ウズベキスタンのサマルカンドで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議で、習近平氏は中央アジア、ロシア、インド、パキスタン、イランの指導者に「カラー革命を引き起こす外部勢力の試みを許さないことが重要」と警告し、加盟国は「いかなる口実でも他国の問題への干渉に共同で反対する」べきだと述べた。

繰り返しになるが、これらの国はいずれも、我々西側諸国が見習いたいと思うような政権で運営されているわけではない。しかしこれらの国を密かにジェファーソニアン共和国〔=米国流の自由主義的な国〕に変えようとするのは卑劣であり、これらの国が米国とその価値観に完全に不信感を抱くよう仕向けることになる。結局のところ、ウクライナを引き裂いた10年で2回のカラー革命〔2004年のオレンジ革命、2014年のマイダン革命〕は、現在のロシアとの紛争の大きな要因になった。

皮肉なことに、中国は国家主権のもとで経済協力を行い、平和を促進する国になっている。一方、米国は「ルールに基づく国際秩序」を守ると主張し、世界中で政府を転覆させ、経済の混乱をもたらし、卑劣な戦争と軍国主義を繰り広げている。米中間の緊張と対立が予測可能な将来にわたって激化し続けるなか、多くの国が事業活動における中国の手法を支持し始め、世界の舞台ですでに揺らいでいる米国の影響力に反撃する自信を持つようになるかもしれない。米政府は、このままカラー革命のシナリオを実行し続けることは危険を高めると考えるかもしれない。

China Calls Out the USA for Instigating the Infamous Color Revolutions | Mises Wire [LINK]

2023-06-15

第2次世界大戦は「善対悪」の戦いか?

ランドルフ・ボーン研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年6月8日)

〔経済学者〕ポール・クルーグマン氏は、6月6日のノルマンディー上陸作戦79周年を記念する米紙ニューヨーク・タイムズのコラムで、第2次世界大戦に関する欧米の利己的な決まり文句をほぼすべて首尾よく再掲した。クルーグマン氏によれば、「第2次世界大戦は、悪に対する善の戦いであることが明らかな数少ない戦争の一つだった」。大多数の米国人が同氏に同意すると考えて差し支えないが、その説明はひどく不正確である。
連合国を聖人扱いする一部のアナリストとは異なり、クルーグマン氏は少なくとも「善人も決して完全な善ではなかった。米国人はまだ基本的な権利を否定され、時には肌の色を理由に虐殺された。英国はまだ広大な植民地帝国を支配し、時には残酷に支配していた」と認めている。しかし不思議なことに同氏は、第2次大戦の大同盟の第3のメンバーであるスターリンのソ連の存在によって、大戦が善と悪との存亡を賭けた清き戦いだったという考えを台無しにするという重要な点を無視している。ケイトー研究所の研究者ジーン・ヒーリー氏は、スターリンは20世紀の大量殺戮オリンピックの銀メダリストに値すると正確に指摘する。

スターリンが「良い側」のメンバーである場合、クルーグマン氏や他の物書きは自分の論説を考え直す必要がある。クルーグマン氏は記事の後半で、1930年代にスターリンがウクライナで行った残虐行為に言及しているが、それは大戦中にナチス・ドイツの侵攻を支持したウクライナ人と、ナチスのシンボルや価値観を受け入れることに浮かれている現在のウクライナ人を免責するだけだ。クルーグマン氏は、大戦におけるスターリンの重要な役割が、大戦に関する単純化された「善と悪」の物語を損なうものであることを認めない。

あの恐ろしい世界的な大虐殺をより正確に表現するならば、それは悪と大きな悪との対立であった。クルーグマン氏は明らかに、大戦中に行われた連合国の戦争犯罪を一切取り上げていない。だが都市人口集中地区への集中爆撃作戦を承認した英米首脳らの行動を弁解することは不可能である。推定8万〜13万人が死亡した東京大空襲、戦争末期のドレスデン大空襲、広島・長崎への原爆投下を命じた首脳らは、「善人」ではなかった。これら攻撃の犠牲者の大半は軍人ではなく、罪のない民間人だった。このような行為は今日紛れもなく戦争犯罪であり、当時もそうだったはずである。

しかし米国をはじめとする西側の識者は、泥沼の武力闘争を善対悪の戦い以外のものとして描くのは大いに困るようだ。ベトナム戦争、米主導の2度の対イラク戦争、リビアやシリアの内戦に対する米国の干渉政策も、同じように単純化された物語がメディアの扱いと世論を支配した。

第2次世界大戦を善対悪の戦いとして描くことは、クルーグマン氏の真の政策課題への道を開く。同氏は、ウクライナの軍事攻撃は「ノルマンディー作戦に相当する道徳的なもの」だと主張し、ウクライナ政府を「不完全だが本物の民主主義国家であり、大きな民主主義共同体に加わることを望んでいる」と表現する。逆に「プーチン〔大統領〕のロシアは悪意ある厄介者であり、世界中の自由の友はその完敗を望まなければならない」と述べる。ウクライナとロシアの間に「道徳的な対等性」はありえないと確信を込めて主張する。

現実には、ウクライナは単なる「不完全な民主主義国家」にはほど遠い。ゼレンスキー大統領は、腐敗し権威主義を強める政権を仕切っている。人権侵害はまったく当たり前のことになっている。米首脳とそのそのお抱え報道機関がベトナム、セルビア、イラク、リビア、シリアとの対決を悪に対する聖なる十字軍として描いたように、同じ脚本がロシア・ウクライナ戦争に関しても使われている。クルーグマン氏は同じ目的のために、北大西洋条約機構(NATO、ウクライナを代理人として使用)とロシアの間の権力闘争を、欺瞞に満ち理想化された第2次大戦の道徳的枠組みに露骨にはめ込もうとしている。

第2次世界大戦をもっと冷静かつ現実的に検証すれば、こうした世論操作の試みに対して米国民(および他の西側の人々)が免疫をつけるのに役立つだろう。第2次大戦は、自由と民主主義を守る諸国が、絶対的な悪の勢力に対して行った崇高な十字軍ではなかった。ファシスト勢力の描写は正確だが、連合国を美化するのは現実をグロテスクに歪曲している。

Paul Krugman's World War II is a Propagandistic Fairy Tale | The Libertarian Institute [LINK]

2023-06-14

帝国主義リバタリアンという矛盾

ランドルフ・ボーン研究所主任研究員、テッド・ガレン・カーペンター
(2023年5月31日)

「リバタリアン(自由主義者)の原則や立場に賛成だ。外交政策を除いては」と言われて困ったことが何度もある。その態度はたいてい、冷戦時代やソ連崩壊後の世界情勢に対する米政府の軍国主義的な取り組みを、忠実に支持することを意味する。外交政策を例外とするリバタリアンは、冷戦時代の北大西洋条約機構(NATO)を支持するだけでなく、1990年代後半からの東欧へのNATO拡大を擁護するのが普通である。
タカ派リバタリアンはまた、「テロとの戦い」を声高に支持したが、それはサダム・フセイン打倒のためにイラクへの軍事行動を求めたブッシュ政権の宣伝キャンペーンを含む。当時ケイトー研究所の副所長であり、現在は名ばかりのリバタリアン系シンクタンクであるニスカネン・センターで同様の役職にあるブリンク・リンゼー氏は、タカ派が採用した論理を典型的に示している。リンゼー氏の警告によれば、「全体主義的なイスラム主義の野蛮人こそ、明確な現在の危険である。彼らとの戦いを遂行するには、多くの戦線で前進しなければならない。まず最も明白なのは、テロ組織そのものを追及することだ。大量破壊兵器をテロリストの手に渡さないよう、あらゆる努力を払わなければならない。今、イラク、イラン、北朝鮮のようなならず者国家との対決に注目が集まるのは当然だ。そのような国家は武装解除されなければならない。つべこべ言わずにだ」。米主導のイラク侵攻の3カ月以上前に書いた文章で、リンゼー氏はこう断言した。「アフガニスタンやイラクのように、紛争が避けられない場合、その政策は米国の武力に頼ることになる」

別の記事でリンゼー氏はさらに率直に、イラクに対する武力聖戦を望んでいる。「9・11テロが起こらず、アルカイダという存在がなかったとしても、イラクに対する軍事行動を支持するだろう。結局、1991年の湾岸戦争を支持したのは、サダム・フセイン政権が核の野望を果たす前に打倒するためだった」

さらに最近では、自称リバタリアンの何人かが、ロシアと対立するウクライナを熱心に支持している。〔国際学生団体〕スチューデンツ・フォー・リバティの〔ウェブサイト「自由を学ぶ」で、米リバタリアン党古典的自由派会長の〕ジョナサン・ケーシー氏は、ロシアの行動は全くいわれのないものだというバイデン政権の立場に共鳴した。ケーシー氏が率直に述べるには、「侵略がNATOによって引き起こされたという考えは完全に否定されなければならない」し、それどころか「NATOはロシアにとって想像上の脅威でしかなかった。NATOへの非難は、ロシアの侵略を弁解する都合の良い方法にすぎない」。

ケーシー氏は少なくとも、ウクライナへの米国の軍事介入をストレートに主張することからは距離を置いた。しかし他の「リバタリアン」はもっとずけずけと、ロシアとウクライナの戦争に関し積極策を望んでいる。ケイトー研究所のカルチュラル・スタディーズ研究員であるキャシー・ヤング氏はこの選択肢を熱心に支持し、ロシアを米国にとって危険で手強い敵として悪者扱いするキャンペーンを展開している。ダーラム米特別検察官の待望の報告書で完全に否定された「ロシアゲート」陰謀説を擁護し、ウクライナをロシアに対する将棋の駒として利用する米・NATOの代理戦争を支持することにもためらいはない。軍事援助に関しても、米国は「ウクライナの勝利のために、十分な量を、迅速に提供する必要がある」と主張する。驚くことに同氏は、何千もの核兵器を持ち、ウクライナを重要な安全保障上の関心事と考える国〔=ロシア〕に対し代理戦争を仕掛けることによって米国が被る、様々な危険に気づいていないようだ。

「外交政策を除けば」と但し書きをする自称リバタリアンには、戸惑いと落胆を感じる。それは「ステーキやハンバーガーを食べる以外はベジタリアン」と言うのと同じだ。米国が世界中で秘密任務や明白な軍事介入を果てしなく行い、それでも自由な国に向かって前進できると考えるのは、良くいっておめでたい。世界中で介入を繰り広げる外交政策は、他のすべての意義ある政治的、経済的、社会的価値を台無しにする。

そのような外交政策には、巨大な軍隊と巨額の税金が必要だ。米国は世界帝国を安上がりに運営することはできないからだ。1945年以降、米国がグローバル安全保障の「義務」を担って以来、連邦政府の規模と費用が爆発的に増大したのは偶然ではない。今日、米国の軍事費は2位以下の10カ国を合わせたよりも多い。

介入主義外交政策の弊害は経済面にとどまらない。同盟国や傀儡国のために世界各地で迅速に介入するには、意思決定の一元化が必要である。その結果、危険なほど強大な権力を握る帝国大統領が誕生し、憲法に定める権力分立を崩壊させてしまった。特に議会の戦争権限と、議会が大統領の軍事的冒険主義に対して行使しうる抑制力が衰えた。また中央情報局(CIA)を筆頭に恐るべき監視機構が拡大し、主流の外交政策に異議を唱えるような米国人をスパイし、嫌がらせをするのも、その現れである。

タカ派リバタリアンは目を覚まさなければならない。自由主義を推進しながら、その目的を根本から損ないかねない国際問題への取り組みを支持することはできない。ウクライナに関する政策は、米政府を縮小し、規制を緩和するという目標にどれだけ真摯に取り組んでいるかを示す最新の試金石である。今回もまた、あまりにも多くのリバタリアンが、そのテストにみごとに落第している。

No, It Is Not Possible to be an Imperial Libertarian – The Future of Freedom Foundation [LINK]

2023-06-13

バイデン氏のナチスの盟友

米退役軍人・非営利団体代表、ダン・マックナイト
(2023年6月7日)

慈善団体や非営利団体にお金を寄付しようと決めたとき、その団体が寄付に値するかどうかを判断するために、ある程度の調査をするに違いない。
慈善団体Xがお金を多く与えるのは人々か、それともその団体の幹部か。団体Yは努力を示す実績があるのか、それとも口先だけなのか。

例えば、私が示すことができるのは、州兵保護法案に関する20の法案番号、委員会の公聴会や退役軍人の証言の動画、アリゾナ、モンタナ両州での前例のない勝利であり、これらはすべて過去6カ月間で、私の非営利団体「部隊を故郷に」が成し遂げたことだ。

〔この寄稿を掲載した〕リバタリアン研究所も、読者から寄せられた寄付金によって、同様の成功を収めることができるに違いない。

残念ながら米政府は、何十億ドルもの資金を提供する前に、こうした調査を行うことはない。

これは何も新しいことではない。

レーガン政権は1980年代、議会の目を盗み、中米最悪の類の死の部隊〔ニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」〕に資金を提供した。この連中は内戦を戦っていないときは、暇さえあれば修道女を虐殺していた。

オバマ政権はシリアの反体制派に何十億ドルもの資金と武器を与えたが、そのほとんどがイラクで米兵を殺害した〔国際テロ組織〕アルカイダ関連組織だった。

そして今、バイデン大統領は数十億ドルを贈ろうとしている。ナチスにだ。

これは冗談ではない。

ドイツのナチ党、武装親衛隊、強制収容所の看守が使用した鉤十字などのシンボルの刺青や制服のパッチは「現在前線で戦う(ウクライナの)兵士の制服に一定の頻度で見られる」と米紙ニューヨーク・タイムズは今、認めている。

戦争党は第三次世界大戦を戦うために突撃隊が必要になり、第二次世界大戦からナチスを呼び寄せたのだ。

1年以上にわたって、ウクライナ政権のソーシャルメディアのボット(自動プログラム)や雇われたロビイストは、第三帝国の紋章を誇らしげに掲げる兵士たちの写真を消そうとしては、失敗を繰り返してきた。

タイムズ紙はこう続ける。

どの写真でも、制服姿のウクライナ人は、あるシンボルのパッチを付けている。ナチス・ドイツによって悪名高くなり、それ以来、極右ヘイト集団の図像の一部となった、あのシンボルだ。

旧来、憎悪のシンボルを非難してきたユダヤ人団体や反ヘイト団体でさえ、ほとんど沈黙を保っている。ロシアのプロパガンダを受け入れていると見られることを内心懸念している指導者もいる。

米国のいわゆる「記録の新聞」〔ニューヨーク・タイムズ紙の異名〕が、完全に事実として正しいと認めていることが、「ロシアのプロパガンダ」でもある。このパラドックスを解き明かしてみてほしい。

これはタイムズ紙がついに取り上げようと決めたずっと前から存在していた問題だ。アゾフ大隊のようなネオナチ部隊は、米政府が仕組んだ2014年のウクライナのクーデター以降、ウクライナの軍に組み込まれていた。

この過激な極右派が〔ウクライナの〕ゼレンスキー大統領に対してどれだけの影響力を持つかについては、未解明の問題さえある。

そして、これはまさにバイデン氏と軍産複合体が1000億ドル以上の資金を提供した相手、〔ナチス・ドイツの独裁者〕アドルフ・ヒトラーの子分どもだ。

この状況を終わらせるには、2つの方法しかない。

ウクライナでの戦争が北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間で激化し続け、完全な核ハルマゲドンに見舞われるか……

あるいは戦争が終わり、ウクライナが壊滅し、分割され、怒り狂った武装十分のナチスの狂信者たちが、資金提供者である我々に恨みを抱くようになるかだ。

そうなると人類滅亡のほうがましだと思えてくるね。

Biden's Nazi Allies | The Libertarian Institute [LINK]

2023-06-12

ロシアを悪とみなすな ケネディ演説の教訓

米誌ネーション発行人、カトリーナ・バンデン・ヒューベル
コラムニスト、ジェームズ・カーデン
(2023年6月9日)

米国のジョン・F・ケネディ大統領が、ワシントンにあるアメリカン大学のキャンパスで行われた卒業式で、冷戦と冷戦思考に対する痛烈な批判を述べてから、6月10日で60年になる。
その中でケネディは、核時代における平和のあり方について構想を語っている。

「我々はどのような平和を求めるのだろうか」とケネディは問いかけた。

米国の戦争兵器によって世界に強制されるパックス・アメリカーナではない。墓場の平和でも、奴隷の安全でもない。本物の平和だ。地上の生活を生き甲斐のあるものにし、人間や国家が成長し、希望を持ち、子供たちのためにより良い生活を築くことができるような平和だ。単に米国人のための平和ではなく、すべての男女のための平和、単に我々の時代における平和ではなく、あらゆる時代のための平和だ。

ケネディにとって核戦争の危機は、前年10月のキューバ危機で米国とソ連がその寸前まで迫るものだった。そのため敵対するソ連との平和を追求することが必須となった。しかしこのことは若い大統領を、自国の国家安全保障・軍事・情報体制と、おそらく致命的なまでに対立させることになった。

だがアメリカン大学でケネディは、健全で合理的、そして何よりも倫理的な冷戦政策を米国民に直接訴えかけた。

平和は理性ある人間の必要かつ理にかなった目的である。平和の追求は戦争の追求ほど劇的ではないと理解しているし、平和を求める者の言葉はしばしば耳に入らない。しかし、これほど緊急の課題はない。

そしてケネディは大統領就任後、国防総省と米中央情報局(CIA)を大いに困惑させながら、平和追求の最もありえないパートナーを見つけた。ソ連のニキータ・フルシチョフ(最高指導者)である。ケネディとフルシチョフは一連の米ソ危機(ピッグス湾、ウィーン・サミット、ベルリン危機)を通じて信頼関係を築き、キューバ・ミサイル危機の際には、人類を終末から遠ざけるのに貢献した。この危機の後、2人は核実験禁止条約に向けて動き始めた。

ケネディは、前進のためには、自分が見られたいと思うように相手を見ること、つまり共感が必要であることを理解した。

ケネディは言った。「どんな政府も社会制度も、その国民が美徳を欠くとみなさなければならないほど邪悪ではない」

だから違いに目を奪われることなく、共通の利益に注意を向け、違いを解決する手段にも目を向けよう。もし今、違いをなくすことができなくても、少なくとも多様性のために世界を安全にする手助けはできるはずだ。詰まるところ、我々の最も基本的な共通点は、全員がこの小さな惑星に住んでいるということだ。我々は皆、同じ空気を吸っている。我々は皆、子供たちの未来を大切に思っている。そして我々は皆、死すべき存在なのだ。

現在敵対するロシアに対するこのような考え方が、バイデン米政権の権力中枢に欠けているのは明らかだ。

実際ケネディの演説は、それから数十年の間に、最近の民主党政権がいかに間違った方向に進んできたかを示す重要な指標となるものだと思う。私たちはプーチン〔ロシア大統領〕の侵略をはっきり非難する一方で、戦争を防ぎ、終わらせる外交手段を追求しなかった米政権に心を痛めている。

今日私たちは、核兵器によるエスカレーション(激化)に近い状況に立たされている。米政権が自ら設定したレッドライン(越えてはならない一線)を無視し、ウクライナへのF16戦闘機の供与に同意することでタカ派に屈しているからだ。60年前のこの日に伝えられたケネディ大統領のメッセージが、何らかの形で政府内外の新しい世代に理解され、戦争と平和の行方に影響を与えることを願うばかりである。

What kind of peace do we seek? At 60, JFK's speech never gets old - Responsible Statecraft [LINK]

2023-06-11

【コラム】ダムの破壊、ジャーナリズムの崩壊

木村 貴

ロシア軍が支配するウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所の巨大ダムが6月6日、爆発で決壊した。同水力発電所はロシア軍占領下にあり、ダムの貯水池からザポロジエ原子力発電所に給水している。水位が低下し冷却水が確保できなくなれば、原子力災害につながる恐れがある。ダムの水が流れ込むドニエプル川の下流で浸水被害も広がっている。
誰がダムを破壊したのか、真相は不明だ。ウクライナが「ロシアのテロリストが爆発を起こした」と非難する一方、ロシアは「ウクライナ側による破壊行為だ」と主張している。ところが日本の大手メディアは、十分な根拠もなくロシアが「犯人」だとほとんど決めつけたり、破壊したのが誰であれ、とにかくロシアが悪いと無茶な主張をしたりしている。

大手各紙は6月7〜8日、それぞれ社説でダム破壊問題を取り上げた。点検してみよう。

日本経済新聞は「ダム爆破は人道危機であり環境破壊だ」と題し、「深刻な人道危機であり、ウクライナ国土のさらなる荒廃を招くものだ。決して容認できない」と強調する。破壊の犯人については「ロシアにとっては下流地域を洪水にすることでウクライナの反転攻勢を阻むことができる一方で、実効支配するクリミア半島への水供給は制限される」としたうえで、「ロシア、ウクライナともに相手の破壊工作だと非難しており、真相は不明だ」と述べる。

ダム破壊によってロシアが得る利益(下流地域を洪水にすることでウクライナの反転攻勢を阻む)だけでなく、不利益(実効支配するクリミア半島への水供給は制限される)も挙げているのはバランスが取れている。もっとも、ダムはロシア軍が支配しているのだから、洪水にしたければ水門を開放するだけでいいのに、なぜわざわざ貴重なインフラであるダムを破壊したのか、という大きな疑問が残る。

また日経は「真相は不明だ」と認めながら、社説の後半では「そもそもロシアがウクライナに侵攻し、ダムを占拠しなければこのような惨事は起きなかった。〔略〕悲劇を繰り返さないためにはロシア軍の即時撤退が不可欠だ」とロシアを非難する。この「そもそもロシアが」論は、あとであらためて検討しよう。

朝日新聞は「巨大ダム決壊 国際法無視は許されぬ」というタイトルで、ダム決壊が「意図的な破壊行為だとすれば、重大な戦争犯罪である。被害の拡大を防ぐ努力とともに、真相の究明と責任者の処罰が必要だ」と訴える。ウクライナとロシアは非難の応酬に終始しているとしたうえで、「根拠を示さずにウクライナを非難する姿勢は説得力を欠く。国際的な調査団の受け入れなどを検討するべきだ」とロシアの説明責任を強調する。

朝日は、ロシアが「根拠を示さずにウクライナを非難する」というが、根拠を示さず相手を非難しているのは、ウクライナも同じだ。また「国際的な調査団の受け入れ」については、すでに6日開いた国連安全保障理事会の緊急会合でロシアのネベンジャ国連大使が国連のグテレス事務総長に「客観的な評価」を求めているが、そもそも国連側にやる気があるのかという問題がある。それというのも国連はこれまで、ウクライナの首都キーウ(キエフ)に近いブチャでロシア軍が市民を虐殺したとされる「ブチャの虐殺」や、ロシア産天然ガスをドイツに送る海底パイプライン「ノルドストリーム」の爆破について、ロシアから調査を求められたにもかかわらず、拒否しているからだ。

一方、トルコのエルドアン大統領は7日、ウクライナのゼレンスキー大統領、ロシアのプーチン大統領と個別に電話会談を行い、ダムの決壊について調査を行う国際的な委員会の設置を提案した。ところがウクライナはこれを「ロシアを甘やかすためのゲームにすぎない」(クレバ外相)として拒否している

2023-06-09

露、ウクライナ南部で大規模攻撃を撃退 ショイグ国防相が発表

反攻の「本命」開始か

アンチウォー・ドット・コム
(2023年6月8日)

ロシアのショイグ国防相は8日、西側メディアがウクライナの反攻が正式に始まったと報じる中、ロシア軍がウクライナ南部ザポリージャ州でウクライナの攻撃を撃退したと発表した。
ロシアのタス通信によると、ショイグ氏は「午前1時30分、敵は第47機械化旅団から最大1500人の兵士と150個の装甲を率いて、我々の防御を突破しようと試みた」と述べた。

ロシア軍総司令官を務めるショイグ氏は「敵は四方すべてで足止めされ、多くの死傷者を出して退却した」と述べた。同氏によれば、ウクライナは「30台の戦車、11台の歩兵戦闘車、最大350人の人員」を失った。

ショイグ氏の主張は、ウクライナ指導部が攻撃計画について沈黙を守っているため、確認されていない。米政府関係者はニューヨーク・タイムズ紙に対し、ウクライナの反攻の「本命」が始まっているようだと述べた。

米当局者は今週初め、東部ドネツク州の戦線沿いで攻撃が報告されたことから、ウクライナの攻勢が始まった可能性が高いと述べた。しかし西側メディアは8日、ウクライナの反攻が今、正式に始まったとする報道であふれかえった。

ウクライナの反攻は、ロシアが確保したクリミア半島からロシア本土への陸橋を切断するため、南部のザポリージャ地方とケルソン地方に集中するとみられていた。

米国と北大西洋条約機構(NATO)はウクライナの反攻準備を支援しており、ドイツ製のレオパルド戦車と米国製のブラッドレー戦闘車がザポリージャの前線近くで目撃されたという報告もある。ミリー米統合参謀本部議長は5日、米国とNATOがウクライナに提供してきた大規模な支援について「訓練や弾薬、助言、情報、その他」などと説明した。

Russia Says It Repelled Large Ukrainian Attack in Southern Ukraine - News From Antiwar.com [LINK]

2023-06-08

NATO前事務総長「一部加盟国、ウクライナに派兵検討」

リバタリアン研究所
(2023年6月7日)

北大西洋条約機構(NATO)の元文民トップは、近く開催されるNATOサミット(首脳会議)で同盟諸国がウクライナに重要な誓約をしない場合、一部の東欧諸国はウクライナに派兵する用意があると警告している。
NATO前事務総長で、現在はウクライナのゼレンスキー大統領の顧問を務めるアナス・ラスムセン氏は、7月に〔リトアニアの首都〕ビリニュスで開くサミットでウクライナが期待できる支援の程度を測るため、欧米を回っている。ラスムセン氏によれば、「ポーランドは、ウクライナがビリニュスで何も得られなかったら、有志連合の結成を真剣に検討すると思う。ポーランドの感情を過小評価すべきではない。ポーランドは西欧があまりにも長い間、ロシアの真の心理に対する自分たちの警告に耳を傾けなかったと感じている」

ラスムセン氏によれば、NATOがリトアニア・サミットでウクライナに十分強く関与できない場合、ポーランドとバルト3国はウクライナに軍隊を派遣する可能性がある。「もしNATOがウクライナの明確な前進に合意できない場合、いくつかの国が個別に行動を起こす可能性があるのは明らかだ。ポーランドがウクライナへの具体的な支援に積極的なことは周知のとおりだ。ポーランドが国単位でさらに強く関与し、それにバルト諸国が続き、もしかしたら軍隊が進攻する可能性も排除できない」

NATO加盟国は数カ月前から、ビリニュス・サミットでウクライナの地位をどのように格上げするかについて議論してきた。一部の西欧諸国と米国はこれに同意せず、ロシアとの戦争に議論を集中させようとしている。

「ブカレスト9」と呼ばれるNATO内の東欧諸国の小グループは6日、声明を発表し、ウクライナ加盟の道筋をつけるよう求めた。「ビリニュスでウクライナとの政治的関係を新たなレベルに格上げし、条件が整えば同国のNATO加盟につながる新たな政治的軌道を開始するよう期待している。ウクライナがその道を歩めるよう支援を継続する」と声明は述べている。

フランスのマクロン大統領は先月、同国はウクライナの完全な加盟を支持しないと述べた。同大統領はNATOに対し「イスラエルに提供される安全保障と完全な加盟の間に何かを構築する」よう求めた。

NATO加盟国の間では、重要な複数年の関与の一部としてウクライナを武装させることに合意があるようだ。「米国と同盟国は、現在の戦場におけるウクライナのニーズを満たすと同時に、今後何年にもわたって侵略を抑止・防御できる戦力を構築する手助けをしている」とブリンケン米国務長官は2日、フィンランドでの講演で述べた。「つまり長期的な資金で、将来のウクライナ軍の構築を支援するということだ」

ラスムセン氏によると、マクロン氏はこの問題について譲る兆しがある。今ではフランスを含め、「スタートは遅かったが、この考えの背後に勢いがついている」という。またドイツなど一部の加盟国が、ウクライナに加盟の道筋をつけるとロシアを刺激しかねないと考えていると指摘した。

しかしラスムセン前事務総長は、ウクライナに軍隊を派遣すると脅す加盟国が、ドイツや他の加盟国に対し、ウクライナ加盟の道筋を早く整えるよう働きかけると考えている。

Former NATO Head: Some NATO Countries Are Considering Sending Troops to Ukraine | The Libertarian Institute [LINK]

2023-06-07

ザポロジエ原発に給水のダム爆破

ウクライナとロシア、互いを非難

アンチウォー・ドット・コム
(2023年6月6日)

ウクライナ南部ドニエプル川沿いにあるノバ・カホフカ・ダムが6日、破壊された。ウクライナとロシアは攻撃について互いを非難しているが、ロシアはダムの破壊によってより多くの影響を被ることになる。
ダムは1950年代にソ連によって建設され、1年以上にわたってウクライナ戦争の最前線に置かれてきた。高さは100フィート近く、幅は1万フィート以上ある。水力発電所として建設され、2000平方キロメートルを超えるカホフカ貯水池を作り出した。欧州最大の原子力発電所であるザポロジエ原発(ZNPP)とクリミア半島は、この貯水池から給水されている。

6日朝、爆発がダムを切り裂き、下流で洪水が始まったと伝えられている。攻撃が意図的なものであったかどうかは不明。英BBCは、ダムは先週中に破損していたと指摘した。

ダム破壊の最も直接の影響は周辺地域の洪水で、少なくとも1万6000人が避難すると予想されている。ウクライナ政府関係者によると、すでに8つの町が一部または完全に浸水しているという。ロシアが支配する地域では、洪水はさらにひどくなると予想されている。

また、この地域では、洪水による環境破壊や、水力発電所で使用されている多量の工業用潤滑剤も問題になりそうだ。

もう一つの懸念は、ロシア軍が支配しているザポロジエ原発だ。カホフカ貯水池は、この巨大な発電所に冷却水を供給していた。国連の核監視団体である国際原子力機関(IAEA)は「状況を注意深く監視している」が、「直ちに核安全上のリスクはない」と述べている。

うウクライナは直ちにロシアを非難し「テロ攻撃と戦争犯罪」と呼んだ。ウクライナ国防省は、ロシアがこの地域の戦術的防衛としてダムを破壊したことを示唆した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、ウクライナ人によるダムの破壊の実行は不可能だと主張した。「ロシアは1年以上にわたってダムとカホフカ水力発電所全体を支配してきた。外部から砲撃でどうにかして爆破することは物理的に不可能だ」とし、「ロシア占領軍が機雷を仕掛け、爆破したのだ」と述べた。

しかしウクライナのアンドリー・コバルチュク少将が昨年、米紙ワシントン・ポストに語ったところによれば、昨年のウクライナの反攻の際、ダムへの攻撃を検討したという。ポスト紙によれば、「コバルチュク氏は川を氾濫させようと考えた。ウクライナ側はノバ・カホフカ・ダムの金属製の水門の1つにHIMARS(高機動ロケット砲システム)で試験攻撃を行い、3つの穴を開け、ドニエプル川の水を十分に上げてロシアの横断を妨げつつ、近くの村を水浸しにしないかどうかを確認したという。試験は成功したとコバルチュク氏は語った」

ロシアのペスコフ大統領報道官は、ダム破壊の背後にはウクライナ勢力がいると述べた。「〔プーチン〕大統領は、国防省や他の機関を通じて、カホフカ水力発電所の周辺で起きていることについて報告を受けている。現時点ですでに、ウクライナ側による意図的な妨害行為だと明確に言うことができる」と述べた。

ダムへの攻撃は、ウクライナにおけるロシアの関心の核心に影響を与えることになる。カホフカ貯水池は、全長250マイルの北クリミア運河を通じ、ロシアが2014年に併合したクリミア半島に水を供給している。ウクライナ侵攻前、ロシアはウクライナに対し、クリミアに水を供給する灌漑システムを開放したままにするよう定期的に要求を出していた。

ペスコフ報道官は、ウクライナの攻撃の動機の一部はクリミアから水を奪うことだと述べた。「貯水池の水位が下がっているため、(北クリミア)運河への水の供給が激減している」とし、「この妨害行為は明らかに、2日前に大規模な攻撃作戦を開始したウクライナ軍が、その目的を達成できないことにも起因している。彼らの作戦は停滞している」と付け加えた。

Critical Dam in Southern Ukraine that Provides Water to Crimea Destroyed - News From Antiwar.com [LINK]

2023-06-06

仏、NATOの日本事務所開設に反対

マクロン大統領、北大西洋にとどまるべきだと考える

アンチウォー・ドット・コム
(2023年6月5日)

フランスのマクロン大統領は、北大西洋条約機構(NATO)が日本に連絡事務所を開設する計画に反対し、同盟は北大西洋にとどまるべきだと考えている。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が5日報じた。
NATOがアジア太平洋に初の事務所を開設しようとするのは、米国が西側の同盟国をこの地域の対中国戦略にもっと関与させようとする計画の一部である。NATOの日本事務所開設計画は、5月上旬に日経アジアによって初めて報道され、中国から反発を招いた。

関係筋がFT紙に語ったところによれば、フランスの立場が、数カ月続いている日本事務所に関するNATOの協議を複雑にしている。ある仏政府関係者によると、フランスはNATO憲章が同盟の地理的範囲を北大西洋に限定すると考えている。

マクロン氏は、NATOが北大西洋を越えて拡大すべきだとは思わないと公言している。「もし……我々がNATOに領域と地理を拡大するよう働きかけるなら、大きな間違いを犯すだろう」と先週述べた。

新しい連絡事務所の開設には、NATO加盟国31カ国すべての同意が必要であり、フランスはこの動きを阻止する可能性があることを意味する。マクロン大統領が、台湾をめぐる中国との紛争に欧州は米国に追随すべきではないと発言してから約2カ月後に、フランスの見解が報道されたことになる。

NATOはここ数年、中国に目を向けており、中国はNATOにこの地域から手を引くよう繰り返し警告してきた。中国外務省の毛寧報道官〔副報道局長〕は先月、「NATOがアジア太平洋に東進し、地域問題に干渉し続ければ、地域の平和と安定を損ない、陣営対立を煽ることになるのは避けがたい。地域諸国は強い警戒心を求められる」と述べた。

France Objects to NATO Opening Liaison Office in Japan - News From Antiwar.com [LINK]

2023-06-05

米国務長官、停戦の呼びかけ拒否 「ウクライナの軍備増強を支援」

外交より軍国主義の優先求める

アンチウォー・ドット・コム
(2023年6月2日)

米国はウクライナの武装に力を注ぎ、戦争を交渉による解決に持ち込もうとしないと、米外交官トップが発言した。ブリンケン米国務長官は和平協議が始まる前に、ウクライナの軍備を大幅に拡張する計画を打ち出した。
ブリンケン氏は2日にフィンランドで行った演説で、米国は「同盟国や協力国とともに、今日も、明日も、必要な限り、ウクライナの防衛支援に固く関与する」と述べた。同氏は続けて、「有意義な外交と真の平和の前提条件は、将来の侵略を抑止・防御することができる、強いウクライナだと信じる」と述べた。

ブリンケン氏は、戦闘を一時的にでも休止するという考えを否定した。「停戦を呼びかける国もあるだろう。そして表面的には、それは賢明で魅力的にさえ思える。何といっても、戦争当事者に武器を捨てさせたいと思わない人はいないだろう。殺戮がなくなることを望まない人はいないだろう。しかし停戦は単に現在の戦線を凍結し、プーチン〔露大統領〕は奪った領土の支配を強化できるようになる。それはロシアによる領土の奪取を正当化することになる。侵略者にほうびを与え、被害者を罰することになる」

ブリンケン長官は、ウクライナの将来の軍事力について野心的なビジョンを提示した。「米国と同盟国は、現在の戦場におけるウクライナのニーズを満たすと同時に、今後何年にもわたって侵略を抑止し、防御することができる戦力を構築する支援を行っている。それは長期の資金、最新の戦闘機を中心とした強力な空軍、統合された航空・ミサイル防衛ネットワーク、先進的な戦車や装甲車、弾薬を生産する国家能力、部隊や装備を戦闘可能な状態に保つ訓練や支援など、未来のウクライナ軍の構築を支援するということだ」

ブリンケン氏の構想する抑止力を構築するのに、どれだけの時間がかかるかは不明だ。米国の武器備蓄は、ウクライナ軍の戦闘を維持するのに十分な軍備を移送しようとするため、減少している。米国はさらに、台湾への武器供与を大幅に増やす計画がある。

ブリンケン氏によれば、「ウクライナへの支援によって、中国やその他の国からの潜在的な脅威に対応する能力は弱まったわけではなく、むしろ強化された」という。米紙ウォールストリート・ジャーナルは昨年11月、「米政府と議会関係者は、ウクライナの紛争によって台湾向けの約190億ドルの兵器の滞留が悪化し、台湾の武装化をさらに遅らせることを恐れている」と報じた。

さらにホワイトハウスは、ウクライナでのこのような大規模な軍備増強に対して、議会で必要な支持を得られないかもしれない。ブリンケン氏は「米国ではこの支持は超党派である」と断言した。しかし下院外交委員会委員長のマイケル・マッコール議員(共和党、テキサス州)は5月初め、今後のウクライナ支援は、同国が長い間計画していた反攻作戦の成功が条件となると述べた。

マッコール議員の発言以降、ウクライナは〔東部ドネツク州の要衝〕バフムトを含め、ロシア軍に徐々に多くの領土を奪われている。ゼレンスキー〔ウクライナ大統領〕は西側支援国の忠告にもかかわらず、数カ月にわたる戦闘でバフムトに限りない資源を投入した。ホワイトハウスは今、反攻が失敗することを覚悟している。

ブリンケン氏が示した米国の戦略は、ウクライナを武装させ、ロシアを弱体化させることだ。同氏は「ロシアは現在、ウクライナへの全面侵攻前よりも軍事的、経済的、地政学的に著しく悪化している。プーチン大統領はすべての大陸でロシアの影響力を低下させている」と述べた。

しかし米欧州軍のカボリ司令官は議会で4月、ロシアの地上軍は昨年ウクライナ侵攻を開始する前よりも「現在の方が大きい」と発言している。

ホワイトハウスがクレムリンを孤立させようとする一方で、ロシアは〔南半球を中心とする新興・途上国〕グローバルサウスとの関係を発展させることで、西側の制裁を乗り越えてきた。ロシア政府関係者は2日、サウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)を含むBRICS連合のメンバー候補と会談した。イランのライシ大統領は昨年9月、プーチン氏との会談で「イランやロシアなど米国から制裁を受けている国同士は、多くの問題や課題を克服し、関係を強化することができる」と述べた。

ブリンケン長官はバイデン米政権が軍国主義的手法に関与していることを正当化しようと、ウクライナ侵攻の前にホワイトハウスがクレムリンに意味のある外交を試みたと主張している。同長官によれば、「バイデン大統領はプーチン大統領に、我々はお互いの安全保障上の懸念について話し合う用意があると伝えた。このメッセージは、ラブロフ露外相と直接会うことも含め、繰り返し再確認したものだ。我々は緊張を緩和するための提案を書面で提示した。同盟国や協力国とともに、北大西洋条約機構(NATO)・ロシア理事会(NRC)、欧州安保協力機構(OSCE)、国連、米国の直接のルートなど、戦争を防ぐためにあらゆる場を利用した」という。

バイデン政権高官のデレク・ショレ氏〔国務省顧問〕は2022年4月、プーチン氏の関心の核心であるウクライナのNATO加盟について、ホワイトハウスがクレムリンとの交渉を拒否したことを認めた。同氏は「我々はロシア側に対し、真の懸念と思われる問題については対話する意思があることを明確にした」と述べ、米政府は「ウクライナの将来」がその問題の一つとは考えておらず、NATO加盟の可能性は「問題ではない」と付け加えた。

Blinken Dismisses Calls for a Ceasefire, Says US Must Build Up Ukraine’s Military - News From Antiwar.com [LINK]

2023-06-04

【コラム】戦争をやめたがらない人たち

木村 貴

「くらたま」こと漫画家の倉田真由美氏のツイートが話題になっている。5月31日の2本の投稿をまとめて引用しよう。

もし自国で戦争始まったら、「絶対勝ちたい」より「一刻も早く戦争やめてくれ」だよ。だから「頑張れよ!」と背中押しながら武器をくれる国なんか、ありがたいわけない。/自分や自分の大切な人たちの命を懸けていいものなんか、この世にない。
ウクライナ戦争を念頭に置いているとみられるが、全く同感だ。最初の投稿は、自分が交戦国の一庶民、あるいは一兵士だと想像してみればいい。戦争の始まった当初こそ、気分が高揚して「絶対勝ちたい」と思ったとしても、戦争が長引き、戦争を続けること自体が自分や家族の生命・財産を脅かすようになれば、たとえそれが「自衛戦争」(自国民の生命・財産を脅かす「自衛戦争」とは形容矛盾だが)であっても、「一刻も早く戦争やめてくれ」と願うようになる人は少なくないだろう。安全地帯の他国から「頑張れよ!」と励まされ武器を渡されても、その武器の使用によって即座に戦争が終わる(人類全体も終わるかもしれないが)保証でもない限り、ありがた迷惑でしかないはずだ。

2本目の「命を懸けていいものなんか、この世にない」という投稿は、最初の投稿の趣旨を踏まえれば、自分や大切な人の命を、戦争によって無理やり犠牲にさせられることへの批判と読むべきだろう。返信や引用リツイートで「自分の大切な人のためなら自分の命は懸けられる」「妻、母。私は命を懸ける」などと自分に酔ったように書いている人たちは、戦争とは何かをわかっていない。戦争は自分の愛する人を守るためにあるのではない。たとえ愛する人を犠牲にしようとも、政府が守れと命じたものを守るためにある。

ところが倉田氏のツイートにコメントした人の多く(いわゆる「保守」が中心のようだ)は、そうした戦争の冷酷な本質を理解していない。そのうえ、政府やメディアの喧伝する「ウクライナは善、ロシアは悪」という単純な図式を無邪気に信じ込んでいる。そして戦争をやめようというくらたまさんを偉そうに非難する。おめでたい限りで、これこそ本当の「お花畑」である。その中には著名な言論人や、プロパガンダを嘘だと知りつつ、それに乗っかって戦争をあおる悪質な専門家もいる。「戦争をやめたがらない人」を何人か紹介しよう。

2023-06-02

FBI、アサンジ氏の調査再開

バイデン米政権に告発取り下げの圧力高まる中で

アンチウォー・ドット・コム
(2023年6月1日)

米連邦捜査局(FBI)が内部告発サイト、ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ氏に対する調査を再開した。豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(SMH)と同エイジが1日報じた。
SMH紙の1面記事によると、FBIはアサンジ氏に対する立件を検討している。同氏は2019年、情報源から入手した機密文書を公開したところ、ジャーナリズムの通常の手法であるにもかかわらず、米国の戦争犯罪を暴露したとして米司法省から起訴された。

記事によると、FBIは先週、アサンジ氏の自伝のゴーストライターを務めたスコットランドの小説家、アンドリュー・オヘイガン氏に連絡を取ったという。オヘイガン氏は、報道活動を理由にアサンジ氏を投獄しようとする米国の動きに反対するとして、FBIの要請を拒否した。

「真実を語ったために追われるジャーナリスト仲間に不利な証言はしない。この皮肉な取り組みで米国の安全保障体制に何らかの形で加担するよう同意するくらいなら、喜んで刑務所に行く」とオヘイガン氏は述べた。

アサンジ氏の弁護団は、このFBIの要請に驚いた。同氏に対する告訴を取り下げるようバイデン米政権に圧力がかかる最中だからだ。オーストラリアの議員団は最近、駐豪米国大使と会談し、アサンジ氏を解放するよう米政府に要請した。同氏は起訴以来、英ロンドンのベルマーシュ刑務所に収容されている。

アサンジ氏のオーストラリア人弁護士であるスティーブン・ケニー氏はSMHに対し「捜査は続いているようだが、開始以来、経過した時間を考えると、異常だと思う」と述べた。

「ジュリアンが帰国できるような取り決めをしようと努力してきたのだから、これは懸念すべきことだと思う。FBIが汚名を晴らす証拠を集めようとしているとしたら、極めて異例だ」とケニー氏は付け加えた。

アサンジ氏の弟ガブリエル・シプトン氏は、米国がアサンジ氏に対する新たな起訴を求める可能性があるようだとし、アサンジ氏に対する「罪状がいかに弱いか」を認めたことになると述べた。

バイデン政権はアサンジ氏をめぐる米国内の圧力にもさらされている。ラシダ・トライブ議員(民主党、ミシガン州)を中心とする下院民主党のグループは最近、ガーランド司法長官に書簡を送り、起訴を取り下げるよう促した

FBI Reopens Probe Into Julian Assange - News From Antiwar.com [LINK]

2023-06-01

チェコ軍司令官、NATOは対露戦争に「目下進行中」

リバタリアン研究所
(2023年5月31日)

チェコの軍司令官は、北大西洋条約機構(NATO)とロシアは直接戦争への道を歩んでいると述べた。戦争の可能性は「最悪のシナリオ」と表現したものの、はっきり残っていると強調した。
チェコ軍参謀総長のカレル・レフカ将軍は5月29日、自国の議会でNATOとロシアの戦争の可能性について語った。「誰もそれを望んでいないが、不可能ではない。可能性があるのだから、可能性がないと言うのをやめる必要がある。起こりうることであり、長い目で見てそれに備えることが必要である」と述べた。

「ロシアと北大西洋同盟(NATO)の戦争は最悪のシナリオと捉えているが、不可能ではない。可能性はある。……(ロシアは)現在、同盟(NATO)との衝突に向けたコースを歩んでいる」とレフカ氏は続けた。

ロシアと西側諸国との間の緊張は、ここ数週間で急増している。5月に開催された7カ国(G7)会議で、米国とその同盟国は、ウクライナにF16戦闘機を供与する計画を発表した。ロシアのラブロフ外相は、ウクライナに先進的な戦闘機を供与することは「受け入れがたいエスカレーション(激化)」であり、欧米は「火遊びをしている」と警告した。

さらにウクライナはロシア国内で一連の攻撃を行った。5月3日には、ロシアのプーチン大統領を暗殺しようと、クレムリンに向けて2機のドローン(無人機)が発射された。先週、ウクライナと同盟を結ぶネオナチ民兵は、米国製の武器を使い、ロシアに対して国境を越えた襲撃を行った。そして5月30日、ウクライナは数機のドローンでモスクワを攻撃した。

レフカ将軍は、ロシアもNATOも直接の衝突は避けたいと考えていると主張した。「しかしそれはロシアが望んでいるわけでも計画しているわけでもない。我々がそれを望んでいないのと同じように、たしかに今はそうではない。それは悲劇であることは誰もが知っている」とレフカ氏は述べた。

NATO諸国の高官たちは、ロシアとの直接衝突を避けたいと言っているが、それらの国々は、ロシアが定めた「レッドライン」(越えてはならない一線)を越え続けている。サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は最近、ウクライナが米国から受け取った武器を使ってクリミア半島を攻撃する可能性があると断言した。ブリンケン米国務長官は以前、クリミアを標的とすることはロシアにとって「レッドライン」であると認めていた。

Czech General Warns NATO ‘Is Currently on a Course’ for War with Russia | The Libertarian Institute [LINK]