2024-09-28

財産権は人権である

財産権は他の人権と対立するどころか、すべての人権の基本である。例えば、政府がすべての新聞用紙を所有し、誰がどれだけ使用するかを決定する権限を持っている場合、報道の自由という人権はどのようにして守られるのだろうか。報道の自由は私有財産権に依存している。
Property Rights Are Human Rights | Mises Institute [LINK]
人権と財産権の不自然な二項対立は、リバタリアンによって反論されてきた。リバタリアンによれば、(a)財産権はもちろん人間に、人間だけに生じるものであり、(b)生命に対する「人権」には、生命を維持し発展させるために、生産したものを保持する権利が必要である。
16. Human Rights and Property Rights | Man, Economy, and State with Power and Market | Mises Institute [LINK]

左翼は「人権」と「財産権」を分けて考えるが、その欠陥は、人間が抽象的な存在として扱われていることである。自分の「人権」、つまり自分自身における財産権を維持するためには、物質世界における財産権、つまり自分が生産する物における財産権も持っていなければならない。
Property Rights and "Human Rights" | For a New Liberty: The Libertarian Manifesto | Mises Institute [LINK]

言論の自由は特別な権利ではなく、財産権と密接な関係にある。もし他人の財産権を侵害しない場所と方法で自分の考えを表明していたのなら、平和的に、他人の権利を尊重する形で行動していたことになる。つまりその思想表明には、いかなる強制や暴力もなかったと思われる。
Europe's Latest Attack on Free Speech | Mises Institute [LINK]

インチキな「人権」は、権利の本質に対する誤解の産物であるだけでなく、真の権利を破壊するための手段である。差別からの自由という権利は、人々が他者について判断する際に、利用可能なあらゆる情報を利用することを妨げる、力の行使を可能にする手段にすぎない。
Inflating Away Our Human Rights | Mises Institute [LINK]

2024-09-27

自由主義対シオニズム

平和の大義において、米シオニスト帝国主義、NATO、シオニズムを糾弾することが重要である。自国の支配者がこのいずれかに服従を示したなら、糾弾すべきである。人々の生活を破壊する国家主義の悪に反対するならば、国際的な場面では、平和の最大の敵に反対すべきである。
To Promote Peace, You Must Fight Statism | The Libertarian Institute [LINK]
シオニズムはユダヤ人国家を信奉するものであり、いかなる国家をも否定する無政府資本主義的なロスバード派リバタリアニズムとは明らかに対立する。また、シオニズムはユダヤ教という国家宗教を意味するため、宗教と国家の分離を唱える最小国家主義の観点からも問題がある。
Libertarianism and Zionism Can’t Be Squared | The Libertarian Institute [LINK]

政治的シオニストは、世俗主義者であるにもにもかかわらず、自分たちの政策を、宗教であるユダヤ教と同一視してきた。ユダヤ人はその同一視を否定してきたが、裏切り者として辱められた結果、多くは沈黙し、やがて自称 「ユダヤ人国家」であるイスラエルの建国を受け入れた。
Zionism versus Judaism | The Libertarian Institute [LINK]

イスラエルの残虐な占領に対する怒りが、ユダヤ人全般への反感に波及しているのは間違いない。だがどんなに嘆かわしいことであっても、不思議なことではない。イスラエル批判に反ユダヤのレッテルを貼るならば、イスラエルへの反感がユダヤ人全般に波及しないほうが不思議だ。
Israel, Zionism, Jews, and Anti-Semitism | The Libertarian Institute [LINK]

ウクライナ生まれのアハド・ハアムは精神的・文化的シオニズムの提唱者で、テオドール・ヘルツルや政治的シオニズムと対立関係にあった。パレスチナのユダヤ人入植者は醜悪な行為で先住民の怒りを買ってはならず、むしろ友好的な尊敬の精神で接しなければならないと警告した。
TGIF: Ahad Ha'Am's Prophetic Warning about Political Zionism | The Libertarian Institute [LINK]

2024-09-26

ヘイトスピーチと言論の自由

ヘイトスピーチという概念は言論の自由と相容れない。あらゆる反対意見をヘイトと決めつけることは、言論・思想の自由の否定そのものである。自由、正義、平等といった普通の言葉、つまりほとんどの人が支持するような価値観が破壊され、社会主義の推進に利用されている。
The Ruling Elites Create An Orwellian Reinterpretation Of Human Rights | ZeroHedge [LINK]
政府やIT企業、主流メディアは、人々の意見、欲求、選択を決定する独占権限を確保したいと考えている。そのために、虚偽を真実に変えることにさえ手を染めている。あるテーマについて真実を語る者は、ヘイトスピーチや誤情報、偽情報を流布していると非難されるようになった。
The Great Reset in Action: Ending Freedom of the Press, Speech, and Expression | Mises Institute [LINK]

規制される言論の大半は、不人気な意見だ。多くの考えは悪いし、反論されるべきだ。しかし他者を黙らせるために暴力を行使することで、反ヘイト十字軍は、政治的暴力は気に入らない人々を黙らせるために使えるし使うべきだと主張している。それ以上に悪い考えがあるだろうか。
When You're Popular, You Don't Need Freedom of Speech | Mises Institute [LINK]

政府は人種差別騒動を、教育、雇用、富の再分配など権力拡大を正当化するために利用している。その一方で、政府の暴力を批判する者を、魔法のような、決して定義されることのない人種差別という言葉で黙らせる。批判者は残りの人生をかけて反証を試みなければならない。
The Freedom Crisis | Mises Institute [LINK]

パン屋には理由を問わず、望まない相手にパンを売らない権利がある。特定の人種などを憎んでいるのかもしれないが、動機は問題ではない。自由と私有財産の原則の下で、個人事業主には差別する権利がある。同様に、消費者は他者を差別するビジネスをボイコットする権利がある。
Wedding Cakes Have Nothing to Do With Free Speech | Mises Institute [LINK]

2024-09-25

リバタリアンとジェノサイド

リバタリアンは、究極の原則をオウム返しに唱えるだけでは、現実の世界に対処するには不十分だ。究極的にはあらゆる国家に罪があるからといって、どの国家も同罪であるということにはならない。それどころか、事実上すべての戦争において、一方は他方よりはるかに罪が重い。
War Guilt in the Middle East | The Libertarian Institute [LINK]
ネタニヤフ首相とその同盟者は、イスラエルが過去に得意とした、標的を絞った暗殺戦術や人質救出作戦を拒否し、爆撃作戦を選んだことで、不必要にパレスチナの家族を虐殺し、イスラエル人の人質を見捨て、10月7日以降にイスラエルが集めた同情をほとんど破壊してしまった。
What Israel Is Doing to Gaza Is a Choice | Mises Institute [LINK]

国際法は無差別大量殺人の問題に関し、自然法すなわちリバタリアン法と対立するものではない。明白な理由から、古典的自由主義と無政府主義とでは、この場合に非侵略原則をどう理解するかに違いはないはずだ。最小国家主義も無政府主義も、大量虐殺は自由主義では禁じられる。
Israel’s Waging Genocide, Not War | Mises Institute [LINK]

米国の血と金が単独で安定と平和を維持できるという前提で築かれた世界秩序は、深刻なストレスにさらされている。貧弱な基盤に亀裂が入り始めているのだ。政府債務は34兆ドルを超えた。軍事予算に対する監視は事実上存在しないため、資源の不正投資と配分の誤りが生じている。
Hamas, Israel, and the Collapse of the Fiat Global Order | Mises Institute [LINK]

中東の米軍基地は米国の国境を攻撃から守る役には立っていない。むしろ強引な駐留は、米国人を攻撃しようとする過激派やテロリストの動機付けになる。基地は軍産複合体にとっては利益かもしれないが、そのツケを払わなければならない一般納税者には何の利益ももたらさない。
Get the US Out of the Middle East | Mises Institute [LINK]

2024-09-24

迫り来るマネーの破壊

借金から逃れることはできない。政府が紙幣を刷って支払えば、通貨は下落し続け、賃金生活者や貯金のある人は困窮する。インフレは隠れた税金であり、政府にとっては非常に都合がいい。いつも商店や企業のせいにし、解決策がありますと言って、またお金を刷ればいいからだ。
An Unprecedented Monetary Destruction Is Coming | Mises Institute [LINK]
グローバル市場におけるデフォルト(債務不履行)の真のドラマは、米国の債務上限交渉ではなく、インフレによる借金の実質踏み倒しである。コロナとウクライナ戦争でインフレが起こった米国などの国々は、債務の実質価値を大幅に引き下げた。政治的な揉めごととは無縁にだ。
Default by Inflation Is the Real Drama in the Global Debt Market | Mises Institute [LINK]

一方では財政赤字と政府債務の増大、他方では成長率の低下という不整合は、投資家が世界経済の「安全な避難所」とみなしてきた米国債への投資を控えるという悪循環を招く可能性がある。そうなれば債券利回りは上昇し、債務返済のコストがかさむため、財政圧力はさらに高まる。
The Global Debt Crisis | Mises Institute [LINK]

破綻を隠すために、私たちは2つのゲームをしてきた。1つは、将来の収益からさらに多くの借金をし、現在の過剰債務のコストを支払う。もう1つは、資産バブルによって無から富を作り出す。資産バブルはレバレッジと融資を必要とする。融資がなくなれば、資産バブルは弾ける。
Will the Crazy Global Debt Bubble Ever End? | Mises Institute [LINK]

自由に変動するグローバルな不換紙幣の実験は、過去に何度も破綻しかけた。それをコントロールしようとするあらゆる試みにも抵抗してきた。不定期な介入によって支えられている、このような不健全な通貨は、一貫して安定した国際経済発展の基盤にはならない。
Global Inflation | Mises Institute [LINK]

2024-09-23

ローマ帝国の放漫財政

ローマ帝国は、帝国にありがちなことだが、余裕以上の出費をした。戦争は軍事費を飛躍的に増大させ、公共事業や社会援助も増加した。約200年の間に、デナリウス銀貨は銀含有率95~98%で鋳造されていたのが、2~5%程度になった。銀は90%以上も減少したのである。
The Denarius and the Dollar: Price Controls Then and Now | Mises Institute [LINK]
ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスの時代には、金貨は1ポンドあたり45枚で流通していた。カラカラはこれを50枚にした。その後72枚になり、ディオクレティアヌスが60枚に減らしたが、コンスタンティヌスが再び72枚に増やした。金貨でさえもインフレ、つまり劣化していた。
Inflation and the Fall of the Roman Empire | Mises Institute [LINK]

ローマ帝国の財政は、軍事費、社会援助、圧力団体への支払い、新しい公共事業、様々な種類の過剰支出の増加によって圧迫された。最初の2世紀のインフレは年平均0.7%と緩やかだったが、過剰な公共支出は、物価全体と帝国経済システムを制御不能に追い込む深刻な脅威となった。
It Didn't Begin with FDR: Currency Devaluation in the Third Century Roman Empire | Mises Institute [LINK]

ローマ帝国は滅びたが、それは起こりうる最高の出来事だった。ローマが滅亡したことで、競争主導の革新と小さな政府の自由が促され、それが近代を可能にしたからである。ローマが後世に残した最大の贈り物は西洋の創造ではなく、消滅によって西洋に台頭の余地を作ったことだ。
The Greatest Thing the Roman Empire Ever Did Was Go Away | Mises Institute [LINK]

今日の国民国家は、領土概念に根ざしている。一方、西欧の封建時代に国家は存在しなかった。様々な共同体、評議会、集会、協会が階層的に構成されていた。ここにはローマの影響が見られる。ローマの政治は、ローマ市民を基礎とする個人主義的な思想によって特徴づけられた。
Should We Embrace the Stateless Roman Political Thought? | Mises Institute [LINK]

2024-09-22

満州の暴走

1931(昭和6)年9月18日、中国東北部の奉天(瀋陽)近郊の柳条湖で、南満州鉄道(満鉄)の線路が爆破された。関東軍(「満州」=中国東北部に駐屯する日本軍)は、この柳条湖事件を中国兵の仕業であると称して、中国軍(張学良軍)に対する軍事行動を開始し、翌32年初頭までに満州全土をほぼ制圧した。この満州事変は、第一次世界大戦後の世界秩序を破壊する先駆けとなった重大な事件である。

図説 写真で見る満州全史 (ふくろうの本)

満州事変は、発端の鉄道爆破から関東軍の出動、治安維持・邦人保護を口実にした満州の制圧まで、「満蒙」(中国東北地方と内モンゴル)を武力占領しようとした関東軍の計画的軍事行動だった。作戦参謀・石原莞爾を首謀者とする関東軍は当初、満蒙の日本併合を目指していた。だが国際連盟による英国のリットンを団長とする調査団派遣や諸外国の批判に対応するために、関東軍は自らの満州の武力占領を「自治運動」の結果であるかのように偽装し、「満州国」を建国する方針へと転換する。吉林省では、関東軍参謀にピストルで脅されながら、省政府首脳が「独立宣言」をした。

東アジアの秩序の変更を目指した満州事変により、国家改造(政党政治を倒し、軍部主導・天皇中心の政府に代える)と大陸への膨張を求める軍部を中心とする勢力は活気づいた。英米協調の幣原外交(幣原喜重郎外相)を政策の柱としていた、第二次若槻礼次郎内閣は倒れた。満州事変は、結果的にクーデターの役割を果たしたといえる。事実、戦前の政党政治は、翌32年の5・15事件によって幕を閉じた。

柳条湖事件をきっかけに軍事行動を始めた関東軍に続き、1931年9月21日には、朝鮮軍(朝鮮の日本軍)が独断で満州へ越境出動した。この朝鮮軍の行動は、関東軍と事前に打ち合わせておいたものだったが、天皇の許可なく担当地区外に出兵することは、明らかに朝鮮軍司令官の擅権(越権行為)だった。だが天皇も軍中央首脳も、満州での衝突はさほど拡大しないだろうとの楽観的な見通しから、朝鮮軍の越権も、関東軍の独断専行も追認していった。

国民の徴兵による「天皇の軍隊」を勝手に、天皇の命令もなしに動かすことは、本来なら大罪である。石原莞爾やその盟友・板垣征四郎をはじめとする満州事変の首謀者、関東軍を助けに行くために朝鮮軍を勝手に動かして「越境将軍」と呼ばれた朝鮮軍司令官・林銑十郎らは、全員この時点で「擅権の罪」で死刑になるべきだったと、経済学者の安冨歩氏は著書『満洲暴走 隠された構造』で指摘する。ところが彼らはみんな出世した。石原莞爾は参謀本部作戦課長に栄転する。エリート中のエリート、英雄扱いである。

たしかに、20万から30万といわれる張学良軍を、1万ほどの関東軍と増援の朝鮮軍であっという間に蹴散らし、日本の面積の3倍ほどある満州全土を占領したのだから、軍事的にみれば歴史に残るような大手柄である。「しかし、これが何よりもよくなかったのです」と安冨氏は述べる。これで「あ、なにやってもいいんだ、独断専行でやって、擅権だろうと何だろうと結果オーライだったら出世するんだ」と軍人みんなが思ってしまった。

その後、軍人が勲章と出世欲しさに暴走し、暴走を止めようとすると、止めようとした者が弾き飛ばされるというパターンが繰り返される。皮肉なことに、のちに中国戦線が拡大した際、関東軍を止めようと説得に行った石原莞爾は、現地参謀の武藤章に「私は閣下がやったことと同じことをしているだけです」と言い返された。

満州事変が始まると、新聞・ラジオなどは軍部を支持する報道を行い、国民の間に満州占領の軍事行動は当然であるとの空気が形成されていった。なお石橋湛山の主催する「東洋経済新報」は、事変直後に満蒙権益放棄論を唱えて事変を批判した数少ない例である。

戦線を拡大した関東軍は、10月8日には張学良政権の政庁が置かれていた錦州を爆撃した。この爆撃は、錦州が満鉄沿線から遠く離れ、英国の権益に属する北寧線(京奉線)沿線にあったこと、第一次世界大戦以来初の都市爆撃だったことによって、世界に衝撃を与えた。錦州爆撃に続いて、関東軍は1931年11月にはチチハルを、翌32年2月にはハルビンを占領し、満州北部まで制圧した。

日本の満州占領に対して国際世論の厳しい批判が集まり、満州に傀儡政権を樹立しようとする日本にとって障害となった。そこで国際社会の注目を満洲からそらすため、関東軍と日本の駐上海領事館の武官は共謀して、中国人暴徒に日本人僧侶を襲撃させる事件を企て、これを口実にして1932年1月、日本の海軍陸戦隊は上海の中国軍を攻撃し、日中両軍が衝突した(第一次上海事変)。

関東軍は32年3月、旧清朝の廃帝・愛新覚羅溥儀を担ぎ出して満州国を建国させた。満州国は、溥儀を執政(のち皇帝)に据え、「五族協和(日本人・漢人・朝鮮人・満州人・蒙古人の協力による平和な国づくり)」「王道楽土(徳に基づいて治められる安楽な土地)」をスローガンにして建国されたが、実際には関東軍と日本人官吏によって支配された傀儡国家だった。

満州国建国後も抗日勢力の活動は活発で、日本軍はこれらを匪賊であるとして「匪賊討伐」に明け暮れた。また匪賊討伐は、しばしば抗日軍とともに日本軍に敵対する一般住民への虐殺へと発展した。32年9月に撫順の日本軍守備隊が行った平頂山での住民虐殺(平頂山事件)はその最大級のものである。女性や子供、老人を含む3000人余りのほとんどが命を失った。

満州国は経済も迷走した。当初、資本主義経済の進入を拒否するという態度をとった。五族協和、王道楽土を金看板にする以上、満州では搾取があってはいけないという理想からだ。しかし日本が自由な資本主義なのに、満州だけが統制経済で進もうとしても油と水を混合するようなもので、無理な話である。日本の財界は「関東軍は赤(共産主義者)だ」と騒ぎ、大財閥の三井や三菱はそっぽを向いてしまった。

そこで商工省の高級官僚だった岸信介(戦後に首相)は新興財閥の日本産業株式会社(日産)を満州に引き入れ、「満州重工業開発(満業)」を発足させる。ところがこの満業の経営に対し、関東軍が何かと口を出した。ああしろこうしろと軍人の思いつきで、意味のないことばかりやらされる。結局、まったくもうからず、赤字を出しては本体の日産の子会社の利益でカバーするというような状態に陥った(前掲『満洲暴走』)。

満州で始まった軍の暴走は、日本をさらなる危機へと追いやっていく。

<参考資料>
  • 小田部雄次・林博史・山田朗『キーワード日本の戦争犯罪』雄山閣、1995年
  • 橋川文三編著『アジア解放の夢』(日本の百年)ちくま文庫、2008年
  • 安冨歩氏『満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦』角川新書、2015年
  • 平塚柾緒著、太平洋戦争研究会編『図説 写真で見る満州全史』(ふくろうの本)河出書房新社、2017年

2024-09-21

価値は主観である

マルクスのいうように労働力が商品であるとすれば、それは実に奇妙な商品である。マルクスによれば、この商品はつねにその価値よりも安く売られている。言い換えれば、労働者はつねに、自分の労働能力を価値よりも安く売り、資本家のために剰余価値を生み出しているのである。
Why Marx Was Wrong about Workers and Wages | Mises Institute [LINK]
経済学的にいえば、労働は生産の最終段階で消費者に価値をもたらすだけで、それ自体には何の価値もない(労働者自身が仕事に喜びを感じている場合は別だが)。生産量よりも長時間労働のほうが重要だと考える上司がいたら、オーストリア学派経済学を紹介してみたらいいだろう。
The Labor Theory of Value Refuted: Nobody Cares How Hard You Work | Mises Institute [LINK]

商品の価値は労働量で決まるという考えは、市場価格の形成における主観的評価の役割を完全に無視している。人間は先見的であり、過去の支出や努力は、商品の価値を現在決定することとは無関係である。過去の支出に関する記憶が突然失われたとしても、市場価格は形成される。
A Critique of the Labor Theory of Value | Mises Institute [LINK]

価値とはそれぞれの商品に内在する何かによって測られるのではなく、消費者の主観的評価によって測られる。商品が同じような金額で交換されるのは、それらが同じ量の労働力を含んでいるからではなく、消費者が、それらが満たす目的を同じような強さで評価するからである。
Three Arguments Debunking Marx’s Labor Theory of Value | Mises Institute [LINK]

ある時、ある場所ではほとんど価値のないサービスや製品が、別の時、別の場所では高く評価されることもある。個人の価値判断はさまざまだ。市場的な意味における価値は、客観的な判断というよりは、主観的な判断である。価値は、美と同じく、客観的に決定することはできない。
Leaving behind the Labor Theory of Value | Mises Institute [LINK]

2024-09-20

中央銀行「独立」の嘘

FRBの金融政策について政治環境を無視することはできない。FRBは「独立性」を強く主張するが、政治がその行動に直接影響を及ぼしてきた長い歴史がある。大統領選前を目前にした利下げによる短期の景気テコ入れは、実態経済の基礎を蝕むという長期の犠牲を伴うことだろう。
An Economy So Strong It Requires Crisis-Level Fed Action | Mises Institute [LINK]
パウエル議長やFOMCメンバーが経済について本当はどう考えているか知ることはできない。政治的な理由から、すべてが順調だと言わなければならないからだ。おおっぴらに「はい皆さん、あと数カ月で景気後退がやってくると思います。覚悟してね」などと言うことは決してない。
The Fed Hits the Panic Button and Slashes the Fed Funds Rate | Mises Institute [LINK]

中央銀行は紙幣、つまり現物通貨の発行を独占している。発行された通貨の額面と製造コストの差額はシニョレッジ(通貨発行益)と呼ばれ、通貨主権者に利益をもたらす。現代の中央銀行の紙幣は、金などに兌換できない。中央銀行自身の命令によって、無から生み出される。
Understanding the Basics of Modern Banking | Mises Institute [LINK]

中央銀行はかつて民有されていたが、つねに政府と密接な関係にあり、2つの主要な役割を担ってきた。(1)政府の財政赤字のファイナンス支援(2)民間商業銀行のカルテル化——である。カルテル化によって、取り付け騒ぎにつながりかねない信用失墜をなくし、融資拡大を助けた。
Enter the Central Bank | The Case Against the Fed | Mises Institute [LINK]

主流派の経済学者によれば、政府はカルテル、預金保険、不換紙幣を通じて、金融政策と銀行制度を管理しなければならない。オーストリア学派はこの枠組みを否定し、すべて民間市場を通じて管理する方がよいと主張する。景気後退に陥ったとき、政策決定者は何もすべきではない。
Money and Banking | Why Austrian Economics Matters | Mises Institute [LINK]

2024-09-19

マイクロリバタリアンを排す

ミレイ大統領は軍の支持者を前にした演説で、「大きなアルゼンチン、強いアルゼンチン、強力なアルゼンチン」と呼ぶビジョンを示した。これは政府支出の拡大を意味する。ミレイはF16戦闘機24機の購入とTAM戦車の近代化を自慢し、政府官僚(軍人)の給料を上げたいと述べた。
Milei Wants More Government Spending—For the Military, of Course | Mises Institute [LINK]
ミレイ・アルゼンチン大統領は、イスラエルおよび狂信的で邪悪なネタニヤフ首相と強く結びつき、ユダヤ教に改宗するまでに至っている。よりによって、イスラエルがパレスチナ人に対して大量虐殺を行い、世界大戦に発展しかねない恐ろしい地域戦争を煽っているときにである。
Milei Is Little More Than a Political Wolf in Sheep's Clothing: Beware the False 'Libertarian' Hype - LewRockwell [LINK]

小さな問題では自由主義の原則に基づいて行動するのに、大きな問題では原則を放棄するリバタリアンを見つけるのは簡単だ。小さな問題とはマリファナ、家賃統制、売春、ライドシェアなどだ。大きな問題とは戦争と平和、地政学、パンデミックなど、より物議をかもすテーマだ。
The Problem with Microlibertarianism | Mises Institute [LINK]

マイクロリバタリアンは、国家権力の制限は小さな問題では機能するが、大きな問題では機能しないと考える。その結果、国家権力の中核をなし、市民の生活や自由を最も脅かす権力は無制限に認める。「国家緊急事態」「国益」「国家安全保障」「公衆衛生」については政府に従う。
Libertarianism vs. Microlibertarianism | Mises Institute [LINK]

殺人が窃盗よりも凶悪な犯罪であるように、核戦争による大量殺人は最悪の犯罪である。大量殺戮の阻止はゴミ処理の民営化よりはるかに重要だ。リバタリアンは物価統制や所得税には正しく憤るのに、大量殺人という究極の犯罪には肩をすくめ、あるいは進んで擁護するのだろうか?
A Libertarian Theory of War | Mises Institute [LINK]

2024-09-18

保守ではなく自由

米国の右派(旧右派、オールドライト)はほんの少し前まで、現在とはほぼ正反対だった。自らを保守派とは表現しなかったし、そう考えてもいなかった。保守ではなく、廃止と転覆を望んだ。言論の自由、結社の自由、自決権など自由の理想に傾倒し、専制政治を打倒したいという願望を育んだ。
The Rebellious Old Right | Mises Institute [LINK]
米旧右派の外交政策に関する考え方は、米国の伝統そのものだった。ジョージ・ワシントンは外国との 「政治的なつながり」や「もつれた同盟関係」に警告を発したし、ジョン・クインシー・アダムズは「米国は滅ぼすべき怪物を求めて国外に行くのではない」と語った。
The Old Right Was Right | Mises Institute [LINK]

米国は立憲共和国として建国され、その軍隊は独裁者、専制君主、内戦、革命、飢饉、抑圧に苦しむ人々を助けるために世界中を巡りはしなかった。自由、平和、繁栄を求める人々に同情しなかったわけではない。単に、怪物を退治するために国外に行くことはなかったということだ。
America: The Dictatress of the World | Mises Institute [LINK]

米建国の父たちが国家間の平和と通商を主張し、政治的・軍事的同盟のもつれに反対したのは正しかった。つまり、不干渉主義である。不干渉主義は孤立主義ではない。米国が他国の内政に軍事的、財政的、秘密裏に干渉しないことを意味する。貿易、旅行、外交はむしろ推奨される。
The Original American Foreign Policy | Mises Institute [LINK]

戦後冷戦が起こったとき、米国の旧右派はたじろがなかった。冷戦に反対する最大勢力が、戦争陣営に引き入れられつつあった左派ではなく、ハワード・バフェット、フレデリック・スミス両下院議員ら「極右共和党」によって主導されていたとは、今では想像しにくい。
The Old Right on War and Peace | Mises Institute [LINK]

2024-09-17

インフレは隠れた税金

インフレは隠れた税金だ。政府はインフレが大好きで、それを永続させる。そのために赤字財政によってお金を刷り、貿易や競争、技術革新を害する規制を課す。大きな政府とは大きなインフレである。インフレは政府が市民を騙して、政府は何でも提供できると信じ込ませる手段だ。
Kamalanomics: More Inflation for America | Mises Institute [LINK]
物価インフレ(物価の上昇)は、お金の量の急激な増加によってのみ生じるし、生じうる。歴史上、急激な物価上昇は、ほとんど常に急激な通貨インフレ(通貨量の膨張)を伴っている。言い換えれば、本物のハイパーインフレが起こるとき、政府の通貨発行が必ず関与している。
Chapter 9: Monetary Inflation and Price Inflation | Understanding Money Mechanics | Mises Institute [LINK]

政治家は自分が作り出した危機の前では無力だ。思いつく対策はさらなるインフレ、つまりリフレ以外にない。だがお金の量を増やしても、世界は豊かにならない。最初は好況をもたらしても、遅かれ早かれ破綻し、新たな恐慌を招く。得られるのは、見かけ上の一時的な救済だけだ。
8. Inflation | Socialism: An Economic and Sociological Analysis | Mises Institute [LINK]

官僚が「インフレと戦う」というときに頭にあるのは、インフレを避けることではなく、インフレの必然的な結果を物価統制によって抑えることである。これは絶望的な企てだ。市場価格よりも低く価格を固定すると、一部の生産者は採算が合わず、生産を中止せざるをえなくなる。
19. Inflation | Economic Freedom and Interventionism | Mises Institute [LINK]

インフレは経済に不可分に組み込まれているわけではないし、世界が成長し繁栄するための前提条件でもない。米国で19世紀の大半は、米英戦争と南北戦争の時期を除けば、物価は下落していたが、経済は成長し工業化していた。物価の下落は、成長する市場経済の正常な働きなのだ。
Money and Inflation | For a New Liberty: The Libertarian Manifesto | Mises Institute [LINK]

2024-09-16

9/11テロは政府の失敗

米国の情報機関は重要な局面でその使命に何度も失敗してきた。9/11のテロ攻撃は、米国側の軍事・諜報面の大失敗によって可能になった。米政府は中東の内政に際限なく干渉することによってテロの動機を与えただけでなく、その反撃が来たときに自国民を守ることもできなかった。
9/11 Was a Day of Unforgivable Government Failure | Mises Institute [LINK]
冷戦終結をきっかけに、米帝国の解体を望むパット・ブキャナンら保守派とロスバード派リバタリアンは外交政策で一致しかけた。しかし9/11とブッシュの対テロ戦争で状況は一変した。米国の右派は共和党大統領による新たな安全保障国家の建設を声高に主張するようになった。
Lew Rockwell's Prophetic Warning About 9/11 | Mises Institute [LINK]

近年、9/11の記念行事で、米国民は「自由はタダではない」とか「軍隊を支援せよ」といった、米政府に承認された感情だけを記憶するよう言われる。米政府があの日、清掃員や受付係や消防士の死を利用して、プライバシー、私有財産、権利に対する攻撃を正当化したことではなく。
America Since 9/11: 22 Years of Lies and Despotism | Mises Institute [LINK]

9/11への対応によって米政府は以前よりはるかに大きく、費用がかかり、法律や憲法による歯止めがなくなった。これは国が自らを常に非常事態にあると信じている場合に起こることだ。政府高官は何の議論もなく、正当な手続きもなしに政令を発布する。これはコロナで加速した。
From 9/11 to Covid-19: Nineteen Years of Permanent "Emergency" | Mises Institute [LINK]

米軍はイラクとアフガンで敗れ、1945年以来主要な戦争に勝利していない。賢い新兵候補者なら、米国のイラク侵攻がロシアのウクライナ侵攻以上に道徳上正当化されるものではないことに気づくだろう。軍が米兵をロシアの大砲の餌食にしたがっていることにも気づくかもしれない。
Three Reasons Why Military Recruitment Is in Crisis | Mises Institute [LINK]

2024-09-15

第一次世界大戦と軍拡競争

20世紀初頭の欧州では、英国・ロシア・フランスの三国協商と、ドイツ・オーストリア・イタリアの三国同盟の対立が深刻となり、1914(大正3)年、バルカン半島のサラエボでオーストリア皇太子が暗殺されたのをきっかけに、第一次世界大戦が勃発した。戦争は西部戦線において激戦を繰り返しながらも、一進一退の膠着状態となる。米国の参戦(1917年4月)で西部戦線のバランスは崩れ、1918年11月、4年間にわたる戦争はドイツの敗北をもって終結した。

軍備拡張の近代史: 日本軍の膨張と崩壊 (歴史文化ライブラリー 18)

大戦勃発に先駆けて、各国は軍艦をはじめとする軍備の強化にしのぎを削った。英国は1905年に弩級戦艦(12インチ=30センチ主砲を8門以上搭載)の一番艦ドレッドノートを、1909年には超弩級戦艦(13.5インチ=34センチ主砲を8門以上搭載)オライオンを起工し、建艦競争を常にリードした。毎年のように、起工される戦艦の大きさと主砲のサイズ、搭載数は増えていった。

日本も日露戦争でロシアを破った日本海海戦を主力艦決戦の典型としてそれを理想化し、常にその再現を目指そうとして、大艦巨砲主義(大型の大砲をできるだけ多数搭載しようとする建艦方針。結果的に艦は大型化する)の道を突き進んだ。米国を仮想敵国とし、主力艦クラスの軍艦の国内建造が可能になったこともあり、弩級、超弩級戦艦の世界的建艦競争に参入した(山田朗『軍備拡張の近代史』)。

その財政負担は国民にのしかかった。大戦勃発時、当時の雑誌「風俗画報」はこう伝えた。「海軍砲の最新式12インチの砲口へは、人間1人が楽々と入りうるほどである。この大砲を製造するには、砲身のみにて12万円、砲塔を加算して40万円を要する。しこうしてズドンと1発放つときは1000円はかかる。この40万円を我々の日常生活費に割り当て三度の飲食費をかりに20銭とすると1日に200万人だけ生活され、一カ年に5350人の生活費を支弁されうる。〔略〕いまや欧州の天地においてこの大砲が惜し気もなくドンドン発砲さるるのである。それことごとく国民の血と肉であるを思えば、戦慄するばかりである」(今井清一編著『成金天下』)

日本は欧州で戦争が始まるとただちに1914年8月、ドイツに対して宣戦布告を行った。英国の要請により日英同盟に基づいての参戦というのが、大義名分だった。日本は英国からアジアの海域におけるドイツ艦艇(とくに商船を攻撃する仮装巡洋艦)掃討を要請されたことを格好の口実にして、中国山東半島の青島だけでなく山東鉄道や太平洋のドイツ領諸島(グアム島以外の赤道以北の南洋群島)を11月までに占領した。

日本は欧米諸国が欧州での戦争に全力を投入し、アジアのことを省みる余裕がない時をとらえて、中国における権益の拡大を図った。大隈重信内閣の加藤高明外相は、陸軍の中国への過大な要求に屈し、1915(大正5)年、中国の袁世凱政府に二十一カ条要求を突きつけ、大部分を強引に承認させた。その主な内容は、①山東省のドイツ権益を日本が継承する②旅順・大連の租借期限を99カ年延長する③南満州・東部内蒙古の権益の強化——などだった。この要求に中国国民は憤慨し、要求を受け入れた5月9日を国恥記念日とした。

第一次世界大戦の講和条約・ベルサイユ条約の調印は、1919年6月に行われた。大戦の終結とこの条約によって、従来の英独を軸とする諸国の対立図式は崩壊し、戦勝国である英米仏主導による一極的支配体制が成立した。この一極的支配体制は、一面では国際連盟(1920年成立)という平和維持機構を成立させるとともに諸国の軍備制限を行い、他面では欧州におけるベルサイユ体制、アジア・太平洋地域におけるワシントン体制という新たな国際秩序を生み出した。

ベルサイユ条約によって、敗戦国ドイツは領土を削減されるとともに、海外植民地はすべて戦勝側諸国によって再分割された。日本は中国と太平洋地域におけるドイツ権益をそのまま継承することになった。ドイツ領だった南洋群島(サイパン、テニアン、トラックなど)はそのまま委任統治領として、国際連盟から日本が委任される形式をとって統治することになった。委任統治領には軍事施設を建設することはできないものの、行政と住民への教育などの責任は日本が負い、事実上の領土といってもよい存在だった。

大戦が終わった後も、大艦巨砲主義に基づく建艦競争は、英国・米国・日本を対抗軸にして続いた。巨大化した主力艦の建造費用は膨れ上がり、日本の国家予算が15億円に満たない時代に主力艦は1隻3000万円から4000万円もしたため、建艦費は国家財政をひどく圧迫した。1920年には八・八艦隊案(戦艦8、巡洋戦艦8)が成立し、1921年、原敬内閣の時期の海軍費は国家歳出の31.2%を占めるに至った(陸海軍全体の軍事費は国家歳出の49.5%に達した)。

このような状況の中で、1921年、米国の提唱によるワシントン会議が開催された。この会議には、軍縮による平和維持と、植民地を有する大国の権益維持という二つの性格があった。会議には、米英仏日蘭ベルギー・ポルトガル・中国の9カ国が参加し、主力艦と航空母艦の大きさ、性能と保有量を定めた海軍軍縮条約、太平洋に関する4カ国条約、中国に関する9カ国条約の3つの条約が締結された。

ワシントン海軍軍縮条約によって日本の主力艦・航空母艦保有量は米国の6割とされたほか、4カ国条約の締結に伴い日英同盟は廃止され(1923年)、9カ国条約の結果、日本は旧ドイツ権益を中国に返還し、出兵していたシベリアからも撤退することを迫られた。すなわち、「満蒙特殊権益」については黙認されたものの、ワシントン会議において日本は、大戦中に拡大した中国での権益の大部分を失ったことになったのである。

このため、これらの諸条約は、米国による日本封じ込め政策であるといった反米論が日本国内で高揚した。軍縮条約の締結によって海軍の軍縮が実行されるとともに、1920年代には陸軍の軍備も削減されたが、軍内部においては、人員整理、すなわち職業軍人の失業と部隊の廃止によって軍縮に対する強い反発を残すことになった。

それでも、もしワシントン海軍軍縮条約が締結されていなかったら、日本は財政破綻の危機に直面していただろう。残念ながら、第二次世界大戦ではこうした歯止めは失われてしまう。

<参考資料>
  • 大日方純夫ほか『日本近現代史を読む』新日本出版社、2010年
  • 歴史教育者協議会編『ちゃんと知りたい! 日本の戦争ハンドブック』青木書店、2006年
  • 山田朗『軍備拡張の近代史』吉川弘文館、1997年
  • 今井清一編著『成金天下』日本の百年〈5〉、ちくま学芸文庫、2008年

2024-09-14

祖国防衛戦争という嘘

膨大な軍事費に充てるため大増税を実施し、庶民を苦しめた日露戦争。その目的は司馬遼太郎の原作のいう「祖国防衛戦争」などではなく、韓国の支配をめぐる日本とロシアとの戦いだった。戦争中、日本は英米にアジアでの植民地支配を承認する代わりに、韓国の支配を認めさせた。
▼スペシャルドラマ「坂の上の雲」 - NHK [LINK]
「ロシア・ウクライナ戦争の現実は、ウクライナにとって厳しい」という現実を踏まえ、これまでの「ウクライナ応援団」の態度は、「いずれ大きな試練を迎えるのではないか」と指摘。エセ言論人だけでなく、応援に熱狂した日本国民も借金の肩代わりなどでツケを払うことだろう。
▼「ウクライナ応援団」はどこへ行くか | アゴラ 言論プラットフォーム [LINK]

安全保障上の理由で買収を阻止するのは「同盟国の日本に対する理解しがたい判断だ」と読売。実質植民地の日本に対し、大統領選を前に必死の米政権がそんな配慮をすると本気で思っているのか。あまりにおめでたい。台湾有事が起こっても、米政府は国内事情を最優先するだろう。
▼社説:日鉄の買収計画 米政府の阻止は理解出来ぬ : 読売新聞 [LINK]

財政難だというのに、癒着した既得権益への支出を優先し、税収分をすべて使ってしまう政府。口を開けば「国家のため」「国益のため」と説教を垂れる政治家のセンセイたちが、庶民を道連れに国家破産と亡国への道を突っ走る。日本人の敵は中国でも北朝鮮でもない。日本政府だ。
▼ 自民総裁選「減税」訴える候補者なしの絶望…5年で22兆円負担増に専門家が危惧「社会保障がブラックホールのようにカネもヒトも飲み込む」(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース [LINK]

外来種のマングースを「根絶」したと環境省。今は多様性を大切にする時代ではなかったのか? いくら被害が出ているとはいえ、抹殺を快挙として宣言する冷血に身がよだつ。マングース一家の悲劇を描くアニメを見たいが、政府肝入りの映画戦略ナントカ委員会では無理だろう。
▼社説:マングースの根絶宣言 生態系崩すリスク教訓に | 毎日新聞 [LINK]

2024-09-13

ゼロサム思考の誤り

ゼロサム思考は前近代の世界によく当てはまった。経済成長がなかったため、所得や富は増えなかった。食料品などを多く手に入れるのは収奪によるものだった。頻繁な戦争は外国人嫌いを助長した。アダム・スミスをはじめとする経済学者たちは18世紀にこの世界観に異議を唱えた。
The Woke Plot To Destroy Our Economy | Mises Institute [LINK]
ねたみを煽るゼロサム思考は、社会が経済的自由を促進し、富を生み出すチャンスを増やしたときに、初めて弱まる。人々が自由に繁栄できるようになれば、成功をより高く評価するようになる。富の再分配よりも、経済的自由を原動力とする進歩こそが、ねたみの解決策なのである。
Progressives Want to Eliminate Wealthy Entrepreneurs but Need the Wealth They Create | Mises Institute [LINK]

強盗などで本人の同意なしに財産を奪うと、その人の犠牲によって利益を得ていることになる。これはまさにゼロサムゲームだ(ちなみに被害者の視点から見ると、「ゲーム」とは言いにくい)。平和な交換が道徳的であるのに対し、強盗は不道徳であるだけでなく、生産を妨げる。
The State, by Franz Oppenheimer | Mises Institute [LINK]

リンゴの値段を叫ぶ店主と、ライバルに死闘を挑む凶暴な捕食者を混同するのは馬鹿げている。それは貿易をゼロサムゲームとして描写するときに犯す混同と同じだ。平和な社会的協力だけが、人間生活の最良の部分を活用し、生物学的競争の暴政から逃れることを可能にする。
Planet Earth and the Tyranny of Mother Nature | Mises Institute [LINK]

市場競争で誰がレースに勝つかは、消費者にとっては、結果の向上よりもはるかに重要度が低い。競争の結果、製品が10%向上した場合、その利益は消費者にほとんど還元される。核心となるのは、競争が他の仕組みよりも優れた結果を生むかどうかということである。
Why the Marketplace Is Not a Zero-Sum Game | Mises Institute [LINK]

2024-09-12

ヘイトスピーチを犯罪化するな

個人の自由の価値を支持する社会では、刑法の唯一の目的は、他人やその財産に対する侵害行為を行う者を抑制し、罰することであるべきだ。刑法は、人々が他人を「憎む」ことを防止したり、「愛し合う」ことを強制したりするために使われるべきではない。
The Folly of Criminalizing "Hate" | Mises Institute [LINK]
言論の自由を絶対とする立場からは、「保護される」集団に対してであろうと、「保護されない」集団に対してであろうと、攻撃的な言論はすべて許される。ある集団はヘイトスピーチから保護され、他の集団は保護されないという考え方自体が憲法違反なのだ。
Free Speech and Legislative Bans on DEI | Mises Institute [LINK]

ヘイトスピーチに言論の自由はないという。ところで過去、共産主義政権のために世界中で1億人が死亡したとされる。共産主義者やそのシンパに、その危険な思想を広める自由を与えていいのだろうか。血に塗れたアカのたわ言を説く場を与えていいのだろうか。
Is Communist Speech Free Speech? | Mises Institute [LINK]

歴史上、「権利」とは、物理的暴力や強制からの自由に限定されてきた。これには暴行、誘拐、監禁などが含まれる。もしこの暴力の定義が、傷つけられた感情やストレスといった概念にまで拡大されるとしたら、実に革命的なことである。そして人間の自由にとって悲惨なことだ。
Redefining Violence: The Problem With PC Speech Codes | Mises Institute [LINK]

政府の役人がそう呼んだからといって、言論が「脅威」になることはない。政府関係者はしばしば、怒った有権者から「落選させるぞ」と脅されて、嫌がらせや脅迫を受けていると感じるが、だからといって、そのような言論が、保護されない脅迫になるわけではない。
Speech Isn't a "Threat" Just Because a Government Official Says So | Mises Institute [LINK]

2024-09-11

GDPで現実を測れるか?

国内総生産(GDP)は現実世界との関連性を欠いているが、政府の介入を正当化するため大きな需要がある。GDP成長率が高いことは、ほとんどの場合、実質貯蓄が集中的に浪費されていることを意味する。「良い」GDPデータにもかかわらず、多くの個人の暮らしは困難になっている可能性がある。
Is GDP an Accurate Measure of Reality? | Mises Institute [LINK]
GDPが社会に利益をもたらす経済活動を測定するものならば、政府支出を含めるのは好ましくない。民間経済では、支出はサービスの提供に対する自発的なものだから、生産物の価値を測定すればいい。政府のサービスは一方的な強制だから、測る方法はない。
How GDP Metrics Distort Our View of the Economy | Mises Institute [LINK]

GDPは、私たちが医療や教育にどれだけのお金を費やしているかを記録することはできるが、購入しているサービスが良いものかどうかを知ることはできない。民間の医療サービスを国有化すれば、GDPの数字は伸びるだろうが、医療の質は下がり、コストは上がる。
Should We Believe the GDP? | Mises Institute [LINK]

経済の歴史的な発展を統計で測ることには、根本的な問題がある。生活水準の向上を測る際、メールとファックス、自動運転車とポンコツ車、レコードと音楽ストリーミングなどを比較するのは難しい。この問題はGDPにとどまらず、経済的不平等や物価上昇率の変化の測定にも及ぶ。
The Poverty of GDP | Mises Institute [LINK]

健全な経済と成長への道を取り戻す方法は、いつだって大幅減税と歳出削減だ。たしかにこれは緊縮財政だが、政府にとっての緊縮でしかない。民間経済に対する政治の収奪を減らすことで、消費者は利益を享受できる。政府予算による資源の消費は、ほとんどすべてが無駄だからだ。
How Reducing GDP Increases Economic Growth | Mises Institute [LINK]

2024-09-10

チャーチルの真実

英雄とされる英首相チャーチルは1940年にすでに事実上終結していた戦争を再開し、ドイツ軍の侵攻の脅威がほとんどなかったにもかかわらず、市民爆撃で攻撃を続けた。ドイツの都市への恐怖の爆撃は、最終的に約60万人の市民の命を奪い、約80万人に重傷を負わせた。
The Truth about Churchill | Mises Institute [LINK]
チャーチルには主義主張がなかったが、一つだけ不変のものは戦争への愛だった。1925年に「人類の歴史は戦争である」と書いている。古典的自由主義の基本、とりわけ人類の真の歴史は協力と分業の拡大であり、戦争ではなく平和こそが万物の父であることを理解しなかった。
Rethinking Churchill | Mises Institute [LINK]

ある意味で、英首相を務めたチャーチルが「世紀の人」に選ばれるのは妥当なことだろう。20世紀は国家の世紀であり、福祉・戦争国家が台頭し、肥大化した世紀であったが、チャーチルは徹頭徹尾、国家の人であり、福祉国家の人であり、戦争国家の人であった。
Raico on Churchill | Mises Institute [LINK]

チャーチルは英国における福祉国家の立役者の一人であった。近代福祉国家は1880年代にビスマルク率いるドイツで始まった。英国では1908年発足のアスキス内閣で、財務相のロイド・ジョージ、通商相のチャーチルがドイツを訪問し、ビスマルク型の社会保険制度に改宗した。
How Churchill Built the Welfare State in Britain | Mises Institute [LINK]

チャーチルは英労働党を全体主義者と評したが、戦後の福祉国家の基礎を築いたベヴァリッジ報告を受け入れたのはチャーチル自身だった。経済学者ミーゼスがいうように、英国の社会主義はアトリー労働党政権の成果ではなく、チャーチル戦争内閣の成果だった。
The Real Churchill | Mises Institute [LINK]

2024-09-09

ナチスは社会主義

国家社会主義者(ナチス)は、革命的左翼の敵どころか、レーニン主義的左翼とは少し異なるタイプの全体主義に献身する左翼だった。国家社会主義者は、その名が示唆するように社会主義者だった。しかも全体主義的な社会主義者であり、その制度的モデルはソ連の全体主義だった。
The National Socialists Were Enemies of The West | Mises Institute [LINK]
現在ヒトラーは歴史上最も憎まれるべき人物だが、その見方は経済政策には向けられない。むしろ世界中の政府に受け入れられている。ヒトラーは金本位制を停止し、巨大な公共事業計画に着手し、外国との競争から産業を保護し、軍備を拡大し、国民医療と失業保険を実現した。
Hitler's Economics | Mises Institute [LINK]

ヒトラーは政権を握ると事実上、ケインズ政策に着手した。政府支出は経済を軍事路線に導くために重要になった。ケインズ自身はナチスの努力を好意的に見ていた。『一般理論』ドイツ語版への序文で、自著の考え方は権威主義的な体制のほうが容易に実行に移せることを示した。
Nazi Economic Policy | Mises Institute [LINK]

ナチスドイツのマスコミは初期のニューディール政策を熱狂的に歓迎した。機関紙によれば、米国はドイツと同様、市場投機の奔放な熱狂と決別した。同紙はルーズベルトが経済社会政策に国家社会主義思想の系統を取り入れたと強調し、ヒトラーと相通じるものがあると称賛した。
Three New Deals: Why the Nazis and Fascists Loved FDR | Mises Institute [LINK]

資本家や企業家が、共産主義かナチズムかという選択肢に直面し、ナチズムを選んだ理由は、説明するまでもない。スターリンによって「ブルジョア」として「清算」されるよりも、ヒトラーの下でただの店番として生きることを選んだのだ。資本家だって殺されるのは好まない。
"Progressive" Attacks on Capitalism Were Key to Hitler's Success | Mises Institute [LINK]

2024-09-08

大逆事件の闇

近代日本で国家主義が次第に台頭していた1910(明治43)年5月25日、長野県明科のとある製材所の奥で、注意深く隠された木箱が発見された。その中身は、明治天皇暗殺のために準備された爆裂弾の材料だった。後にいう大逆事件、すなわち社会主義者・無政府主義者の幸徳秋水一味が天皇暗殺を目論んだとして大逆罪に問われ、処刑された一大事件発覚の瞬間である。この事件は、国家によるフレームアップ(でっち上げ)の典型として知られる。明治の「闇」を象徴する出来事だ。

「社会」のない国、日本 ドレフュス事件・大逆事件と荷風の悲嘆 (講談社選書メチエ)

当時は産業革命の進展に伴って賃金労働者が増加し、社会主義運動が盛んになりつつあった。幸徳、安部磯雄、片山潜らは1898年に社会主義研究会をつくり、1901年、最初の社会主義政党である社会民主党を結成したが、治安警察法によってすぐに解散させられた。それでも幸徳らは日露戦争に反対し、反戦論を唱えた。

日露戦争反対を機に高揚した社会主義運動に対し、政府は機関誌紙の発禁や集会の禁圧、結社禁止などの抑圧を加えた。実質的な運動はほとんど展開できない状勢になり、幸徳、管野スガらの創刊した「自由思想」も発禁の連続で廃刊を余儀なくされ、合法的な運動は不可能になる。管野、宮下太吉、新村忠雄、古河力作の4人は、天皇の血を流すことにより日本国民の迷夢を覚まそうと爆裂弾による暗殺計画を練った。

宮下は長野県明科の製材所で爆裂弾を製造し、爆発の実験も試み、1910年1月には東京・千駄ヶ谷の平民社で投擲の具体的手順を相談するが、幸徳は計画に冷淡で著述に専念しようとした。

当時の第2次桂太郎内閣は、当局にスパイを潜入させたりなどしてこの計画を感知し、同年5月の長野県における宮下検挙を手始めに、6月1日には神奈川県湯河原で幸徳を逮捕した。政府は一挙に社会主義運動の撲滅を狙って、幸徳が各地を旅行した際の放談などをもとに26名を起訴するほか、押収した住所録などから全国の社会主義者、無政府主義者数百名を検挙して取り調べた。

検察当局は、爆裂弾で明治天皇の暗殺を計画したものとして、刑法の大逆罪を適用し、26人を起訴した。実際に計画を相談したことを認めたのは宮下ら4人だけだったが、翌1911年1月、わずか1カ月の審理で裁判所は幸徳ら24人に死刑を宣告し、その月のうちに幸徳、管野ら12人を絞首刑にした(12人は天皇の特赦として無期懲役に減刑)。管野はその手記に「今回の事件は無政府主義者の陰謀というよりも、むしろ検事の手によって作られた陰謀という方が適当である」と記している。

なお幸徳は弁護士宛の陳弁書で、無政府主義思想について「東洋の老荘と同様の一種の哲学」と述べ、「無政府主義者が圧制を憎み、束縛を厭い、同時に暴力をも排斥するのは必然の道理で、世に彼等程自由平和を好む者はありません」と力説した。このような無政府主義者からは、暗殺者は少なく、むしろ「暗殺主義なりと言わば勤王論愛国思想ほど激越な暗殺主義はない」と反論している。

大逆事件は同時代の文学者や思想家に衝撃を与えた。東京・本郷弓町の下宿に両親妻子5人とともに暮らしていた詩人、石川啄木にとって、事件の発覚した1910年は「思想上において重大なる年」となった。

啄木はかつて日露戦争を賛美したが、日露戦争後は痛烈な国家批判の立場に移っていた。幸徳やそのグループと接触はなかったが、大逆事件公判の進められている期間、絶えず旧知の弁護士から話を聞き、幸徳の陳情書などの記録を借り受けて、その膨大な記録を筆写した。幸徳らが処刑された日、「ああ、何という早いことだろう」と嘆いている。

小説家、徳富蘆花は翌月の2月1日、第一高等学校(現在の東大教養学部)弁論部の求めに応じて演壇に立ち、「謀叛論」と題して演説した。講演は暗くなってろうそくがともされるころまで続いた。それは痛烈な政府批判であり、また幸徳らの擁護論だった。

蘆花は幸徳らを「自由平等の新天新地を夢み、身をささげて人類のためにつくさんとする志士である」「死は彼らの勝利」であると断じ、志士をただ殺戮する以外に能のない閣臣、「蛇の蛙をねらうような」検察当局を痛罵したのち、「諸君、幸徳君らは時の政府に謀叛人と見なされて殺された。が、謀叛を恐れてはならぬ。謀叛人を恐れてはならぬ。自ら謀叛人となるを恐れてはならぬ。新しいものはつねに謀叛である」と訴えた。

しかし、蘆花のように幸徳らを堂々と擁護する言論人は他にほとんどいなかった。幸徳らを乗せた囚人馬車を偶然目撃した小説家、永井荷風は「わたしは世の文学者と共に何も言わなかった。私は何となく良心の苦痛に堪えられぬような気がした」と記した。

一方、取締当局は、事件をテコに弾圧体制の整備を図った。1910年7月、内務相は首相に社会主義に対する意見書を提出し、警察に社会主義専門の担当者を置いて偵察を徹底させることなどを提案した。このような意見を踏まえ、1911年4月、社会主義の取り締まりを専門に行う警察官の増員が図られた。8月には警視庁に特別高等課が設置された。のちの特別高等警察(特高)である。監視の網はいっそう厳しくなり、社会主義者などを「特別要視察人」としてリストアップして監視する体制が固められた。大逆事件を契機に社会主義には「冬の時代」が訪れた。

社会学者の菊谷和宏氏は著書『「社会」のない国、日本』で、ともに国家による冤罪であるフランスのドレフュス事件と日本の大逆事件を対比している。

ドレフュス事件では、軍部が捏造したスパイの証拠によってユダヤ系陸軍大尉ドレフュスが軍法会議で有罪とされる。これに対し作家ゾラはドレフュスを擁護し、一時亡命を強いられながらも、再審の道を開く。ゾラを衝き動かしたのは、「人間性が国の都合に優先されてはならない」「国家以前に尊重されるべきものがある」という信念だった。

このような信念を生んだものは何か。ゾラの同時代人である仏社会学者デュルケームによれば、それはキリスト教である。キリスト教が育んだ個人主義精神からみれば、国家という組織はそれがいかに重要であれ、ひとつの道具に過ぎず、目的のための手段でしかない。

一方、大逆事件では、荷風が恥じたように、ゾラのように立ち上がり、幸徳らを堂々と擁護する言論人はほとんどいなかった。キリスト教の伝統をもつフランスと異なり、日本には「国家以前に尊重されるべきものがある」という思想は根づいていない。菊谷氏の言葉を借りれば、国家のみがあって社会が存在しない。

日本では長い物に巻かれることがよしとされ、国家の暴走に歯止めをかける者がない。それは「和をもって貴しとなす」日本人の長所を帳消しにしかねない、深刻な短所である。

<参考資料>
  • 橋川文三編著『明治の栄光』日本の百年〈4〉、ちくま学芸文庫、2007年
  • 田中伸尚『大逆事件』岩波現代文庫、2018年
  • 菊谷和宏『「社会」のない国、日本 ドレフュス事件・大逆事件と荷風の悲嘆』講談社選書メチエ、2015年

2024-09-07

良い政治という幻想

なんとも甘っちょろい。民主制とは「調整して制度を作っていく仕組み」ではなく、多数派が権力を握る仕組み。政治とは「話し合いで合意するための手段」ではなく、権力で人々の財産や自由を一方的に奪う手段。政治は悪。良い政治がありうるという幻想をふり撒くのはやめよう。
▼言葉を消費されて 「正義」に依存し個を捨てるリベラル 星野智幸:朝日新聞デジタル [LINK]
齋藤氏は企業の「市民営化」を提案する。企業の大株主から経営者やその一族を排除し、従業員や地域住民に株を持たせるという。やってみればいい。経営判断でプロの発言権が弱まれば、会社は競争に敗れて最悪倒産する。従業員は路頭に迷ううえ、買った株の価値はゼロになる。
▼齋藤幸平が語る、資本主義の矛盾と新システムの必要性〜資本主義の限界を理解することが第一歩〜 | 100年企業戦略オンライン [LINK]

低所得者の食費にまで課される消費税の軽減には賛成。けれど低所得者を苦しめる税は消費税だけではない。法人税は消費者などが実質負担するし、富裕層への累進課税は生産活動への投資を減らし物価高につながる。英国でも日本でも官営福祉を廃止し、あらゆる税の縮小・撤廃を。
▼「低所得者から徴収する消費税 憲法の生存権の保障に抵触するのでは?」ブレイディみかこ(AERA dot.) - Yahoo!ニュース [LINK]

「大学はタダであるべきだ」と白石氏。「大学には国家や経済とは違う無償性の論理がある」という。教員の給与はどうするのだろう。もし全員無償にするというなら見上げたものだ。もし税金で賄うのなら、国家の「論理に支配されない」どころか、国家に取り込まれることになる。
▼「大学はタダであるべきだ」 国家や経済の支配に立ち向かうために:朝日新聞デジタル [LINK]

「デフレに戻るおそれがあるから」脱却宣言は出せないと政府。無邪気なリフレ派以外、こうなることはわかっていた。あらゆる政策は政治の産物で、金融政策はその最たるもの。国債頼みでバラマキを続けたい政治家は、庶民が物価高で苦しもうと、異常な低金利が終わっては困る。
▼「デフレ脱却」宣言、出せないまま アベノミクス的政策いつまで?:朝日新聞デジタル [LINK]

2024-09-06

時代遅れの公立学校

公立学校は長い間、情報化時代の流れについていけず、思想と暴力の両方から生徒の安全を守ることができず、無能に運営される政府の教育制度という、時代遅れのモデルだ。在宅教育は、親の自主性と責任の行使を意味するだけでなく、破綻したモデルから救うチャンスを提供する。
The Problem with Trump’s Agenda 47 for Homeschoolers | Mises Institute [LINK]
在宅教育に対するマスコミの見方は、「脅威」の一語に集約できる。なぜなら、すべての子供はあらゆることに関して、政府が承認した物語や教義を学び、身につけるべきだからである。政府による教育とは、子供を忠実な臣民として形成するための課程なのだ。
What the Media Says about Homeschooling | Mises Institute [LINK]

米国では連邦や州の官僚や職員の複数、あるいは過半数が民主党員である。官僚は研究助成金を支給し、資金提供を支配する。大学の収入の行き先は結局左翼の官僚だ。大学当局は思想的に左翼でなくても、自身の存在を正当化できるような政策や研究を推し進めるよう奨励される。
Bureaucracy: The Death Knell of Higher Education | Mises Institute [LINK]

米国の大学では左派の教授の数が右派の教授を5対1で上回る。保守的で有能な教授を差別し、保守的な消費者(学生)を排除するのはコストがかかる。政府の介入がなければ、ほとんどの大学は、ビジネス上の判断として不適切であると認識し、すべての顧客に対応するだろう。
It Is Time to Treat Higher Education as the Business It Is | Mises Institute [LINK]

大学は公的な教育機関から、意識が高い「ウォーキズム」という心のウイルスを生み出すイデオロギーの温床へと堕落している。しかし現代のリバタリアンには楽観的になるだけの理由がある。他の領域と同様に、民間主導の大学教育が政府に対抗し始めているからだ。
A Review of Nock'sThe Theory of Education in the United States | Mises Institute [LINK]

2024-09-05

核戦争という現実

米政治学者ミアシャイマーら現実主義者がいうように、敵対する大国(ロシア)が核兵器で徹底的に武装し、自分たちを狙っている場合、非常に注意深く対処しなければならない。その大国を絶望的な状況に追い込んではならない。核兵器が使用される合理的な可能性があるからだ。
Russia Updating Nuclear Weapon Doctrine Due To Western 'Escalation' Of Ukraine War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
何世紀にもわたり、ロシアは西側から攻撃されてきた。最近ではナポレオンとヒトラーによってである。当然ロシア人はこの血塗られた歴史に敏感だ。CIA長官らはこのことをよく考えたのだろうか。NATOがロシアに侵攻すれば、プーチンは折れるとでも想像したのだろうか。
The Western Way of War – Owning the Narrative Trumps Reality - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

ガザ保健省によれば、過去10カ月に米国の支援を受けたイスラエルによるガザ攻撃で、1万6000人以上の子供を含む少なくとも4万435人が死亡した。これには瓦礫の下で死亡したと推定される1万人を含まない。インフラ破壊により間接的な原因でさらに多くが死亡した可能性がある。
Israel Says US Has Delivered 50,000 Tons of Military Aid Since Start of Gaza Slaughter - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

経済学者ジェフリー・サックス教授によれば、イスラエルは今や完全な無法国家だ。中東での戦争を誘発するために何でもやっており、これは米国民が望んでいることではない。同教授は多くのインタビューで、米国はガザ地区で今も続く「大量虐殺に加担している」と語っている。
US Calls For Ceasefire But Keeps Supporting War - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

思想家トマス・ペインが警告したように、敵を罰しようとする情熱は自由にとって危険であり、罰する側の自由さえも危険にさらす。自分の自由を安全にしたいなら、敵であっても抑圧から守らなければならない。この義務に違反すれば、自分自身に及ぶ前例を作ることになる。
Searching for Monsters - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2024-09-04

排除する権利を守れ

排除する権利は何かのおまけではない。文明の機能にとって核心をなす。企業が人を雇うとき、採用される人とされない人がいる。その他ほとんどすべての団体も同じだ。誰もが排除する権利を行使する。もしこの権利が否定されたら、代わりに何が起こるか。政府による強制である。
Freedom of Association | Mises Institute [LINK]
暴君が権力を得る典型的な方法は、大衆に憎むべき人物を与えることだ。嫉妬を助長することは、左派が企業を支配する効果的な戦略だ。経営トップが稼ぐ金額は関係ない。もしそうなら、左派は何百万ドルも稼ぐハリウッド俳優やスポーツスターに対する嫉妬を助長しているはずだ。
The Politics of Envy - LewRockwell [LINK]

公立学校の学費が安く見えるのは、その費用が税によって全国民に分散されるのに対し、私立学校の費用はそこに通う生徒のいる家庭だけが負担するからだ。公立学校と義務教育法を廃止し、すべて市場提供型の教育に置き換えれば、半額でより良い学校が手に入り、より自由になる。
What If Public Schools Were Abolished? | Mises Institute [LINK]

南北戦争前の米南部では、奴隷制は邪悪な制度であり、平和な進化を通じて黒人は教育され、自由な住民の地位を得られるという意見が支配的だった。だがその展開は、北部による流血の奴隷反乱の扇動と、南部人を悪として描く奴隷廃止論者のプロパガンダのために終わりを告げた。
The War Against the South - LewRockwell [LINK]

CIAは創設以来、数多くの暗殺計画に関与してきた。有名なのはキューバのカストロ殺害の度重なる試みだ。フォード大統領は大統領令で暗殺を禁じたが、CIAは新たな名目で殺害を続けた。リビアのカダフィ、セルビアのミロシェビッチ、イラクのフセインを空爆で殺害しようとした。
The CIA’s assassination plots | Mises Institute [LINK]

2024-09-02

ESGは環境を改善しない

ESGは環境への配慮や社会的原因を改善しない。経済成長が環境への配慮を可能にする。基本ニーズを満たせるようになって初めて、周囲に配慮する余裕が生まれる。ロンドンで大気汚染は工業化により初め増加したが、結局減少し、1700年に初めて測定されたときよりも低くなった。
ESG Undermines Social Welfare | Mises Institute [LINK]
生きるのがやっとの人々は、環境のことなど気にも留めない。しかしある一定の生活水準に達すると、こうした高次の財に関心を持ち始める。人々が清潔で魅力的な環境を維持するためにお金を使うことをいとわなくなれば、こうしたサービスを得るための外的障壁はなくなるはずだ。
An Austrian contribution to the praxeology of nature conservation | Mises Institute [LINK]

脱成長は環境持続可能性への道だといわれるが、自由市場経済が生み出す技術革新は、化石燃料や石炭への依存を小さくする。市場に基づく革新がなければ、脱成長活動家が非難するエネルギー源に代わるものは生まれない。成長率の低下は、気候変動適応技術に投資する能力を奪う。
The degrowth movement is antihuman, and its advocates are fine with that | Mises Institute [LINK]

環境保護主義者は、各国政府が化石燃料から人々を強制的に引き離すことを強く望んでいる。しかし、そのような野望は空想の域を出ることはないだろう。太陽光発電や風力発電のような再生可能エネルギーは、現在の開発レベルでは世界の人口を支えることはできない。
Banning Fossil Fuels Will Make Heat Waves More Dangerous, Not Less | Mises Institute [LINK]

地球の1次エネルギー消費の85%は、化石燃料から直接来ている。気候変動、ネットゼロ目標、化石燃料依存の引き下げ、クリーンな再生可能エネルギーについて、信念を語るがいい。政府の資金を投入するがいい。公共の場で説教するがいい。だが事実は変わらない。変えられない。
Climate Worries Are Non-Credible, Luxury Beliefs That Harm Civilization Itself | Mises Institute [LINK]

2024-09-01

秩父事件はなぜ起きたのか

1884(明治17)年11月、「困民党」と呼ばれた埼玉県・秩父地方の農民たちが、借金の10年据え置きと40年賦返済、学校費軽減のための3年間の休校や減税などを求めて蜂起し、郡役所、裁判所、警察署などを襲撃し、高利貸しに放火するなどした。秩父事件である。

秩父事件: 圧制ヲ変ジテ自由ノ世界ヲ

蜂起の発端となったのは秩父地方だったが、群馬県や長野県にまで広がる。鎮圧には警察だけでなく、憲兵隊や高崎鎮台兵が出動した。農民の一部は軍隊と交戦して、30人以上が死亡したとされる。検挙者は埼玉県で約3500人、群馬県で約300人、長野県で約600人という。広域にわたる大規模な事件だった。秩父事件はなぜ起こったのだろう。

秩父事件の背景の一つには、高揚期に達していた自由民権運動の影響がある。

1881(明治14)年、開拓使官有物払い下げ事件で民権運動による政府批判が強まり、国会開設をめぐる政府内の対立も激化した。その結果、大隈重信が下野し(明治14年の政変)、国会開設の勅諭が出されて10年後に国会が開かれることになった。

民権運動派は国会開設に向け、政党の結成に動く。板垣退助を中心とする自由党、下野した大隈重信を中心とする立憲改進党などが結成された。しかし改正集会条例で政治結社の支部の設置が禁じられており、全国的な組織づくりが困難だった。さらに政府は自らの主導権で憲法を制定するため、伊藤博文を欧州に派遣し、その一方で、板垣退助を外遊させるなどして自由党の切り崩しを図った。党内でも対立があり、自由党は解散するに至る。秩父事件の直前のことだ。

党の中核を失い、方向性が定まらないなか、福島事件、高田事件、群馬事件、加波山事件など、自由党が何らかの形で関わった激化事件が頻発した。秩父事件も、その一つに位置づけられてきた。しかし他の激化事件より規模がはるかに大きいうえ、異なる特徴をもつ。

特徴の一つは、秩父の蜂起勢の指導部には博徒(博打打ち)がいたことだ。自由党員の井上伝蔵、落合寅市、高岸善吉らのうち落合、高岸は博徒でもあり、その親分にあたる加藤織平も蜂起勢の幹部となっている。最高指導者の田代栄作も博徒だった。蜂起には農民、自由党員、博徒といった多様な人々が参加していたのである。

日記や裁判記録などには、次のような農民の言葉が書かれている。「圧政を変じて良政に改め、自由の世界として人民を安楽ならしむべし」「恐れながら天朝様へ敵対するから加勢しろ」「総理板垣公の命令を受け、天下の政事を直し、人民を自由ならしめんと欲し、諸民のために兵を起こす」

これらの言葉からは、明治政府の圧制を改め、自由で安心して暮らせる政治を実現するのだという強固な思いが読み取れる。事件は全国各地の新聞のほか、ロンドンで発行されていた「ベルギー独立」紙、フランスの「ルタン」(現「ルモンド」)紙にまで報道された。

秩父事件のもう一つの重要な背景は、松方デフレだ。

1877(明治10)年に西郷隆盛を擁して士族が起こした西南戦争は、明治の士族反乱として最大規模のものだった。西郷軍の総兵力は約3万人であり、これに対して政府は約6万人の兵力を投入した。整ったばかりの徴兵制による軍隊だけでなく、軍夫も雇い、戦費は4200万円もの莫大な額になった。政府はその多くを、不換紙幣を増発することで賄った。

その影響は2~3年後に激しいインフレとなって現れた。市場に出回る紙幣が多くなったために、物価が急激に高騰したのである。この事態に対応するため、大蔵卿の松方正義は、不換紙幣の消却を急速に進めた。一言でいえば、デフレ政策である。これはインフレの害を静めるためにやむをえない措置だが、痛みを伴った。

政府は一方で、増税にも踏み切った。これは朝鮮半島での壬午軍乱(反日的クーデター)をきっかけに始まった、清国との交戦を念頭においた軍備拡張計画の財源でもあった。内務卿の山県有朋は軍備拡張の必要性を説き、たばこ・酒類などに課税することによって経費を生み出すと述べた。そして、増税の令を一度発すれば、増税反対が起こることは承知のうえだが、それには弾圧をもって臨むといった。

増税となったのは、地租以外の「雑税」だった。雑税の合計額は1879年が21万9975円、1884年が45万4619円と5年間で倍増した。税額のうち最も額が大きいのが酒税、次いで各種印紙税、車税、たばこ税などと続く。地方税も増加の一途をたどった。地方税とは県税で、地租割、戸数割、営業税、雑種税だ。地方税は5年間で1.9倍になった。とくに営業税の伸びが顕著だった(秩父事件研究顕彰協議会編『秩父事件』)。

折からの世界的な不景気の影響もあり、増税とデフレ政策によって多くの農家が深刻なダメージを受けた。租税が納められず、滞納によって強制処分を受けた農民は36万人にものぼり、やむなく競売にかけられた土地は4万7000歩にもなった(藤野裕子『民衆暴力』)。

松方デフレによるダメージがとくに大きかったといわれるのは、養蚕地帯だ。秩父事件に参加した地域は養蚕地帯だった。

幕末の開港によって生糸の輸出が増加したため、この地域は養蚕・製糸業に重点を移すことで農家の経営を発展させていった。生糸価格は下落しても一時的だった。収益性が高かったため、高利貸し(個人だけでなく、銀行・企業など)から高い利息で借金をしても、通常であればそれ以上の利益を得て返済できた。

しかし今回の急激なインフレとデフレは、政府の政策によってつくり出されたものだ。強気になって借金をしすぎた農家に自業自得の面はあるものの、激しいインフレを生み出し、経営判断を惑わせた政府の責任は軽くない。

借金を10年据え置きにし、40年かけて返済するという要求は、現在の感覚からすると、かなり法外な要求にも思える。だがこの要求の背景には、貧窮に陥った際に温情的な措置を施す、現在の金融とは異なる負債整理の伝統的な慣行があったと指摘されている。

事件後、憲兵隊と警察隊は各村々に入り、参加者を逮捕しつつ自首を強要していった。警察の厳しい尋問を経て、裁判は事件の中心人物らを死刑、懲役、禁固の刑に処し、多くの人々を罰金・科料とし、彼らを「暴徒」として断罪した。そのため事件参加者の遺族や子孫の多くは、事件に口を閉ざして生きてきた。近年に至り、ようやく名誉回復が進んでいる。

秩父事件を起こしたのは、インフレや増税など明治政府の誤った政策が招いた生活苦だった。蜂起した人々が夢見た、圧制のない、自由で安心して暮らせる社会は、今も庶民の理想であり続けている。

<参考文献>
  • 松沢裕作『自由民権運動 〈デモクラシー〉の夢と挫折』岩波新書、2016年
  • 藤野裕子『民衆暴力 一揆・暴動・虐殺の日本近代』中公新書、2020年
  • 秩父事件研究顕彰協議会編『秩父事件 圧制ヲ変ジテ自由ノ世界ヲ』新日本出版社、2004年

2024-08-31

権力とリバタリアン

ミレイ・アルゼンチン大統領は改革を推進するため、自らの権力を強めるよう求めている。これは気がかりだ。憲法上、可能かどうかあいまいだし、自称リバタリアンが制度上の制約を増やすのではなく、むしろ減らすよう主張するのは、多くの人にとって奇妙なことだ。
Javier Milei and Argentina's Economic Challenge | Mises Institute [LINK]
資本家に不公平な富を与えているのは、労働者からの剰余価値の搾取ではない。政府の経済支援策によって流れ込み続けるタダの金だ。マルクスは市場経済が問題だとし、解決するために政府の介入を求めた。介入政策は、皮肉にもマルクス主義が非難する不平等を永続させる。
How Corporate Bailouts Inflate the Money Supply | Mises Institute [LINK]

インフレと景気循環は必然ではなく、政策の選択である。インフレは終わりのない戦争に資金を提供する。インフレは政府が自分たちの政策にコストがかかっていないように見せるための簡単なトリックだ。その代償は、コスト上昇と市民社会の破壊という形で隠されている。
What Was Missing at NatCon 2024 | Mises Institute [LINK]

各国の不換紙幣を統合しても、より良い、信頼できる、倫理的に健全な通貨は生まれない。むしろさらに悪いものを生み出す。ユーロという創造物を何としても維持しようとする試みは、ユーロをさらに邪悪なものにするだけだ。それがもたらす損害は、ユーロ圏の人々を破滅させる。
The Euro Is a Frankenstein-Currency | Mises Institute [LINK]

財はそれが最も役立つ民間部門にできるだけとどまるべきであり、政府部門からはできるだけ資源をなくすべきだ。政府組織は解体するか、民間組織に転換し、誤りを犯したときにはその結果を明らかにし、市場が提供する情報を隠蔽・無視させないようにするべきである。
MMT: Feeding the economically inferior machine | Mises Institute [LINK]

2024-08-30

自然法は宗教ではない

自然法の原理は、神学的な原理から導き出されたものではなく、理性と合理的探究の独立した手順によって導き出されたものである。人間がそのような法則を理解する道具は理性であり、信仰でも直感でも恩寵でも啓示でもない。
Natural Law and Rothbardian Liberty | Mises Institute [LINK]
物理学における法則は絶対ではなく、暫定的なものでしかない。一方、経済学は基本的な公理(「個人は選んだ目標に向かって意識的に行動する」など)について完全で完璧な知識を持つ。それらの公理は人間の行為そのものに内在するもので、人間が存在する限り絶対有効である。
The Reality of Human Action | Mises Institute [LINK]

自然界を規制し、私たちが望むような自然を再構築しようとする試みは愚かである。野生動物が捕食者にならないように訓練することはできないし、「共有された価値観」を守るために多様性、公平性、包摂性の訓練を受けさせることもできない。
Praxeology and Animals | Mises Institute [LINK]

集団間の成果の違いを、成功した集団による、成功しなかった集団の支配と抑圧の証拠とみなすのは誤りである。こうした違いは、自然かつ有機的に起こりうるし、実際に起こっている。これは、抑圧と支配が過去および現在において存在することを否定するものではない。
The Primitive Superstition of our Age | Mises Institute [LINK]

人々が金持ちに抱く嫉妬を利用することで、政府は大衆に重い税負担を受け入れさせることができる。高所得者、とくにその最上位に課される高い税率から得られる税収は、税収全体に比べ非常に小さく、他の人々の税負担にほとんど違いをもたらさない。
The Politics of Envy - LewRockwell [LINK]

2024-08-29

ロシアは敵ではない

ウクライナ戦争によって、米国人がロシアを敵だと決めつけるのは自然なことだ。だがそれは違う。私たちの敵は、米国の国家安全保障機構だ。すなわち国防総省、CIA、NSAである。彼らこそウクライナでの戦争に責任を負い、米国人の生活、自由、幸福を破壊している。
Russia Is Not Our Enemy - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]
もし北朝鮮が米国に向けて核弾道ミサイルを発射したら、米国防総省はこれに応じ、北極上空から北朝鮮に向けてミサイルを発射する。ロシアは目標が自国の都市だと考え、撃ち返す。世界核戦争を防ぐには敵との意思疎通が不可欠だが、米政治エリートにとってそれはタブーだ。
Diplomacy, Distrust, and Nuclear War | Mises Institute [LINK]

ハリス大統領になれば、中東など特定の地域では戦争を多少抑えるかもしれないが、ロシアと中国に対しては、核戦争につながりかねない体制派の政策を続けるだろう。真の自制とは、戦争と対立は死と破壊をもたらすだけだと認識することだ。ハリス大統領で真の自制は望めない。
Personnel is Policy for Kamala Harris | Mises Institute [LINK]

米国の中国との戦争はコストがかかり、複雑なものになるだろう。米国は太平洋に艦隊を駐留させているが、必要な艦船を編成するには数週間かかる。米日台が中国と対峙する机上演習は通常、中国の敗北に終わるが、米国はおそらく数十隻の艦船と数百機の航空機を失うだろう。
Trump and Biden can't wait to send more assistance to Ukraine | Mises Institute [LINK]

2005年にイスラエルがガザから撤退した後、米国はパレスチナに民主主義を押し付けた。パレスチナ人はハマスを選び、ハマスは2007年からガザを支配した。米国がハマスの政権獲得を後押ししたのは皮肉だ。ハマスはイスラエルと米国からテロリスト集団とされているのだから。
Another Presidential Debate, Another Loss for the Palestinians | Mises Institute [LINK]

2024-08-28

自由主義は保守ではない

自由主義は、既成の見識を単に「保守」する思想ではない。むしろ急進的な思想である。自由に対する最大の脅威は、しばしば国家を含む既成の制度によってもたらされることを認識している。自由は人間の本性に根ざした道徳原理であり、正義の原理である。
An Optimistic Strategy for Liberty | Mises Institute [LINK]
自由な社会では、他者を攻撃したり財産権を侵害したりしない限り、親切で思いやりのある人間であろうと、凶悪で悪意に満ちた人間であろうと自由である。その場合、優しさや思いやりが自由主義者に不可欠ということにはならないし、悪辣さや悪意が必要ということにもならない。
Distinguishing Libertarian Philosophy from Political Strategy | Mises Institute [LINK]

良好なビジネス環境を成り立たせるのは、堅固な財産権と協力の自由である。政府はこれらの権利を政策で侵害することしかできず、ビジネスのしやすさには貢献しない。欧米諸国がビジネスのしやすさランキングで優位に立つのは、財産権に関する長い歴史があるからだ。
The Best Thing Governments Can Do for Business Is Get Out of the Way | Mises Institute [LINK]

関税は現実的な財源ではないし、かりに財源になりうるとしても適正な額を決める方法はない。トランプ氏は減税できるよう歳出削減に集中し、関税引き上げが歳入増に役立つという保護主義的でお粗末な言辞を弄するのはやめるべきだ。
Trump’s Faulty Tariff Scheme | Mises Institute [LINK]

ミレイ(アルゼンチン大統領)はファシストではない。むしろファシストを打ち負かした。ミレイの対立候補は公然たるペロン主義者だった。フアン・ペロン元大統領はムッソリーニを称賛し、その哲学の一部を信用するとともに、ナチスの戦犯を欧州から逃がす手助けをした。
No, Milei Is Not a Fascist | Mises Institute [LINK]

2024-08-27

税という搾取

政治権力は搾取の有効な手段だ。搾取は強盗、貢納、奴隷制、地代の徴収を経て、最後の段階で、政治権力は生産物に対する課税によって支えられるようになった。何世紀にもわたる慣行が私たちをこのビジネスに慣れさせ、習慣と法律が正しさのオーラを与えてきた。
Taxation Is Robbery | Mises Institute [LINK]
米大統領選挙では二大政党が異なる政策を示すが、いずれも国債発行の増加と財政赤字の拡大を招き、インフレを悪化させ、債券市場を脅かす恐れがある。現在と将来の世代にさらなる税と債務の負担を強いることに国民がどれだけ耐えられるかが問題だが、変化の兆しは見えない。
Be Prepared to Hear More about Taxes, Taxes, Taxes | Mises Institute [LINK]

西暦301年、ローマ皇帝は1200以上の商品に価格の上限を設けた。銀貨が過去250年の間に劣化し、市民が物価高に不満を抱いたからだ。銀貨の銀含有量は50年当時の約3.9グラムから、200年には2グラム以下に、250〜275年には「わずかな銀のコーティング」だけになっていた。
Thousands of Years Later, Price Controls Are Still a Bad Idea | Mises Institute [LINK]

どの国でも最低賃金法の影響を歴史的に調査すれば、他の条件がすべて同じであれば、労働力を売りたい労働者の一部の失業をつねにもたらすことが明らかになる。失業した大量の熟練労働者が非熟練労働市場に参入するため、非熟練労働者の賃金も低下する。
The New Minimum Wage Increase in Nigeria is a Pyrrhic Victory for Organized Labor | Mises Institute [LINK]

ポピュリズムはイデオロギーではなく、戦略である。どのような政治哲学にも染まりうるし、危険にも有益にもなりうる。ポピュリズムはエリートと大衆の利益が一致しているかどうかを問い、ほとんどの場合、政治エリートの利益は大衆の利益と対立すると正しく結論づける。
Tucker Carlson's Broadside Against Austrian Economics | Mises Institute [LINK]

2024-08-26

小さな政府の不正

思想家アイン・ランドの小さな政府論を批判する人々によれば、たとえ小さくても政府に正当性はなく、人間の本性に合致する唯一の社会制度は無政府資本主義である。政府が権利を侵害するのは避けられないし、小さな政府はいつまでも小さなままではいられない。
Anarcho-Capitalists Against Ayn Rand | Mises Institute [LINK]
ミーゼスが欧州で権力を握ったマルクス主義や社会主義と戦わねばならなかったように、今日我々は文化マルクス主義や左翼の暴徒に直面している。その誤った教義を暴露する以外、長期で勝利する方法はない。悲観する理由は十分あるが、少なくとも朗らかな悲観主義者になろう。
Mises the Sunny Pessimist | Mises Institute [LINK]

貯蓄と投資は豊かで進んだ経済への道を開く。貯蓄と投資を弱めれば、政府の財源である生産性も弱めることになる。アルゼンチンのミレイ政権は、規制緩和や一部減税の一方で、為替規制を維持し、広範な増税を行い、数十万人のサラリーマンに所得税まで導入した。
Milei's Monetary Conundrum | Mises Institute [LINK]

レーガン元米大統領は財政赤字を非難し、「お金を使っても金持ちにはならない」と述べた。保守派やリバタリアンによく引用されるフレーズだ。しかしレーガン政権下で政府支出は60%以上増加した。軍事費の増加は一部にすぎない。教育への支出は68%、医療費は71%増加した。
Romanticizing Reagan | Mises Institute [LINK]

米民主党全国委が承認した2024年党綱領で、中東に関する項目は驚くほどタカ派的で、まるでとびきり戦争好きの共和党議員が書いたかのようだ。イスラエルへの支援と武器輸出の継続は「鉄壁」だと繰り返し呼んでいる。トランプ氏はイランに甘すぎると批判している。
Democrats Release Insanely Hawkish Middle East Policy Platform - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2024-08-25

田中正造の戦い

北関東を流れる渡良瀬川の上流にある足尾銅山は、もとは幕府直轄の銅山だった。1876(明治9)年12月、生糸貿易商の古河市兵衛はこの銅山を買い取り、設備を近代化して採鉱を開始した。のちに会社組織の古河鉱業となる。開発が進むにつれて銅の産出量は年々増加した。

田中正造 (センチュリーブックス 人と思想 50)

ところがそれに伴い、渡良瀬川やその沿岸で異変が起こる。魚が大量に死んだり、山林や稲が枯れたりし始めたのである。銅の精錬に伴う亜硫酸ガスの放出量が増えるとともに、銅・亜鉛・鉛・砒素などの有毒重金属を含む鉱毒が川に大量に垂れ流されたせいだと、後日判明する。

栃木県選出の改進党代議士、田中正造は、この問題の解決は足尾銅山の操業停止しかないと考え、1891年の第2回議会に質問書を提出した。農商務大臣の陸奥宗光は答弁を避け、議会解散後に答弁書を官報に載せた。それには、被害は事実だが原因は確実でない、鉱業人(古河市兵衛)はなすべき予防の措置を準備しつつある、とあった。まるで「政府は鉱業人の代言人(弁護士)」のようだと批判を浴びる。陸奥大臣の次男は古河の養子だった。

正造は政府の言い逃れに騙されはしなかった。翌年の臨時議会に再度質問書を提出する。今度は専門家の分析結果が発表されたので、政府も足尾の鉱毒を認めたが、一方で手を回して、県知事や県会議員を仲裁役に立て、被害農民と古河の間に示談を成立させた。それは古河に著しく有利なものだった。

日清戦争中、足尾銅山は一段と発展し、被害は依然として続いた。田中は議会ごとに声を枯らして政府を難詰したが、事態は容易に進まなかった。

田中正造は1841(天保12)年、栃木県の名主の家の生まれで、19歳の若さで名主を継ぐと、農民を苦しめる領主の悪政を改めるために奔走し、捕えられ投獄されたという前歴がある。自由民権運動を経て国会開設とともに推されて議員となり、ほぼ10年間の議員活動の大半を、この鉱毒問題に注いだ。

1901年2月に正造の行なった質問は、「亡国演説」として有名である。正式な表題を「亡国に至るを知らざれば之れ即ち亡国の儀につき質問書」という。登壇した正造は、次のように政府を厳しく批判した。「民を殺すは国家を殺すなり。法を蔑(ないがしろ)にするは国家を蔑(なみ)するなり。皆自ら国を毀(こぼ)つなり。財用を濫(みだ)り民を殺し法を乱して而(しこう)して亡びざるの国なし」

同じ月の13日、被害地の農民2500人が大挙して議会への請願のため、上京に向かった。ところが利根川べりの川俣(群馬県明和町)で当局が待機させた200人の警官・憲兵と衝突し、数十人が逮捕され、上京は阻止された。「川俣事件」である。

正造は川俣事件に強い衝撃を受け、ただちに議会で2度の質問に立ち、警察・憲兵の暴行を批判した。2月15日には憲政本党(改進党の後身)への失望から、同党を脱党した。

同年3月の第15回議会では、あらためて鉱毒についての質問を数度行う。そのなかでとくに重要なのは、人民は国家権力の不当な行使に対して抵抗することができるという「抵抗権」の思想をはっきりと表現したことだ。

もし政府が古河市兵衛の指図を受けて、憲法で保障された人民の請願を妨害したり、被害民を捕えて牢へ入れるといった乱暴なことをするなら、政府は人民に「軍(いく)さを起す権利を与えるのである」と正造は主張した。

第15回議会は、北清事変(義和団事件)の出兵に充てる増税案を可決して閉会した。この出兵を機に日本は帝国主義に向かって大きくカーブを切る。当時、銅は生糸、綿製品に続く重要な輸出品であり、政府は輸出の花形である銅を守り、被害民を切り捨てたのである。

同年10月23日、正造はついに衆議院議員を辞職した。「憲法・政府・政党・議会といった制度を他力的に頼っても、問題が少しも解決しない」(布川清司『田中正造』)と悟ったからである。

しかし、すべての制度に絶望したかにみえる正造にも、ひとつだけ最後の希望が残っていた。それが辞職からまもない12月10日、第16回議会の開会式から帰る明治天皇に対して敢行した直訴だった。

この日、正造は黒の綿服、黒の袴、足袋はだしで拝観人の中から飛び出し、直訴状を手に高く掲げつつ、「お願いがござります」と叫びながら天皇の馬車に突進した。慌てた警護の警官がこれをさえぎろうとして落馬。正造もつまずいて転び、警官に取り押さえらえた。正造は麹町警察署に連行され、一晩留め置かれ、「狂人」として釈放された。

直訴文は正造の依頼で、当時名文家として知られた社会主義者の幸徳秋水が執筆し、当日の朝、正造が訂正・捺印したものだった。直訴という衝撃的な行為によって世論を喚起しようとしたのである。世間の人々は鉱害の認識を深め、その惨状に心を動かされ、支援の輪が広がった。

1902年、政府は渡良瀬川下流の谷中村を買収して村民を立ち退かせ、遊水池にして洪水を防ごうという計画を打ち出した。正造は遊水池化に反対して村民とともに運動を展開し、谷中村に移り住んで抵抗したが、1907年、政府は「土地収用法」を適用し、最後に残った16戸を強制破壊した。ちなみに政府側責任者の内務大臣原敬は、前年まで古河鉱業の副社長だった。

正造には他にも、現在においてもなお輝きを失わない主張がある。非戦平和の思想だ。

正造は、日露戦争開戦前の1903年2月10日に、静岡県掛川で初めて非戦論を主張した後、「倍々(ますます)非戦争論者の絶対なるもの」になっていった。日露戦争の際には、「日本の開戦ハ誠に山師の主張ニて国民の主張ニあらず」と述べ、その階級的性格を鋭く指摘する一方で、「戦争ニ死するものよりハ寧ろ内地に虐政に死するもの多からん」と言う視点から、日露両国政府に抑圧されているもの同士が国境をこえて連帯する必要性も呼びかけた。

また、ポーツマス講和条約の締結後も、「矢張小国ハ小国なり」として、油断して大国ぶることを戒め、日露戦争に勝利した日本だからこそ世界に先駆けて軍備を全廃するのが日本の「権利」であるという独特の認識を形づくるに至った。

20億円の軍事費を全廃すれば、5人家族平均125円となり、10年間無税にすることができる。あるいはまた、そのかわりに外交費を30倍、300倍に増やして、日本が世界平和の唱道者にならなければならない、それこそが日本の世界的使命であると主張した。「人類は平和の戦争コソ常に奮闘すべきもの」というのが、正造の基本的な考えであった。「まぎれもなく、日本国憲法第九条の先駆者の一人であるといえよう」(『田中正造』)と歴史学者の小松裕氏は指摘する。

正造は残った農民とともになおも抵抗を続けたが、1913(大正2)年9月4日、71歳で死去した。

1911年6月9日の日記に、正造は次のように書いた。「対立、戦うべし。政府の存在せる間は政府と戦うべし。敵国襲い来らば戦うべし。人侵さば戦うべし。その戦うに道あり。腕力殺伐を以てせると、天理によりて広く教えて勝つものとの二の大別あり。予はこの天理によりて戦うものにて、斃れても止まざるは我が道なり。天理を解し、この道実践のもの宇宙の大多数を得ば、即ち勝利の大いなるもの也」

歴史学者の由井正臣氏は、「まことに彼の生涯は、人民の生活を破壊し、権利をうばうものとの、天理・人道にもとづく壮絶な戦いの連続であった」(『田中正造』)と総括する。

政府と親密な有力企業が環境汚染などによって人民の生活を破壊するケースは、今もなくならない。人間の権利という「天理」に基づく抵抗の大切さを、田中正造の生涯は教えている。

<参考文献>
  • 布川清司『田中正造』(人と思想)清水書院、1997年
  • 由井正臣『田中正造』岩波新書、1984年
  • 海野福寿『日清・日露戦争』(日本の歴史)集英社、1992年
  • 松本三之介編著『強国をめざして』(日本の百年)ちくま学芸文庫、2007年
  • 大日方純夫ほか『日本近現代史を読む』新日本出版社、2010年
  • 小松裕『田中正造——未来を紡ぐ思想人』岩波現代文庫、2013年

2024-08-24

デフレを止めるな!

経済成長は、起業家が生産コストを削減する新たな方法を採用することで起こる。産業によってコスト削減にばらつきはあるが、全体として、経済が成長すれば物価の下落(デフレ)が起こるはずだ。つまり購買力が高まる。デフレを止めるためにお金の量を増やす経済的理由はない。
Do We Need 3% Inflation? Economic Growth and Deflation | Mises Institute [LINK]
貧困の原因は誰か他の人の富だというゼロサム思考では、社会が経済的に成長し、貧困率が低下するために何が必要かを理解することはできない。経済が成長するのは、企業家が市場の中で、損得に導かれ、資源を価値の低いものから高いものへと移動させる方法を見つけるからだ。
What Anticapitalist Christian Economists Get Wrong | Mises Institute [LINK]

平等主義者は不平等の原因には関心がない。不平等は歴史的抑圧や人種差別などの不公正が原因であることは自明だと主張し、適切な救済策は富の再分配だと宣言する。富の再分配が全員を等しく裕福にすることに失敗すると、それはさらなる再分配が必要な証拠だという。
Identifying the Causes of Economic Inequality | Mises Institute [LINK]

自由主義とファシズムの政治戦術を区別するものは、暴力の役割に対する評価の違いだ。ファシズムが本当に社会主義と闘おうとするならば、社会主義に暴力ではなく思想で対抗しなければならないだろう。しかし社会主義に有効に対抗できる思想はただ一つ、自由主義だけである。
Was Mises a Fascist? Obviously Not. | Mises Institute [LINK]

政治学者ミアシャイマーがいうように、ウクライナ戦争は米国とその同盟国が引き起こした。ロシアがウクライナに侵攻し、戦争を始めたのは事実だが、紛争の主因は、ウクライナのNATO加盟決定にある。ロシアはこの脅威に対処するため、2022年2月24日に予防戦争を開始したのだ。
Why We Need Revisionist History | Mises Institute [LINK]

2024-08-23

無政府主義の倫理

無政府主義に反対するリバタリアンは、功利主義に基づいて、「無政府ではうまくいかない」などと主張する。しかし無政府主義とは、無政府状態が「うまくいく」と考えることではない。侵略は正当化されず、政府は必然的に侵略を行うと信じているだけだ。倫理的な見解なのだ。
What It Means To Be an Anarcho-Capitalist - LewRockwell [LINK]
トランプやマスクのような実業家は、政府を「ビジネスライク」にするといつも口にしており、「効率化委員会」はその第一歩だ。自分を責任者にすれば、政府はスムーズに動く機械になると彼らは言う。しかし効率的な政府はありえない。政府はその性質上、そもそも非効率なのだ。
Elon Musk’s D.O.G.E Is a DODGE - LewRockwell [LINK]

万人が主張できるのは、生命、自由、財産について、万人に同様に与えられる保護を受ける権利だけである。平等法制が形式的平等から実質的平等へと変質する傾向は、偶然や見落としではなく、公正を強制する性質に内在する。実際には、格差の根絶は結果の平等化と変わらない。
The Folly of Legislating against Unfairness | Mises Institute [LINK]

19世紀は独、米、露などの国々において、帝国と統合の世紀だった。政府の統合は、「民主主義国家」を権威主義国家に変えるカギだった。政府の意思決定が遠くなればなるほど、市民が政府に対して持つ影響力は小さくなるからだ。政府は国民のしもべではなく、むしろ主人になる。
U.S. Imperialism through the Lens of Mises’s Nation, State, and Economy | Mises Institute [LINK]

中東で都市を破壊し、何千人もの命を絶つことによって自由民主主義を創設することは、古典的な自由主義ではなく、絶え間ない不安定さの原因だ。米政府にとって自由と人権がそれほど重要であるならば、宗派に関係なく、中東で罪のない人々を虐殺する者を支援すべきではない。
U.S.-Zionist Imperialism and the Middle East | The Libertarian Institute [LINK]

2024-08-22

同意による国家

国家の境界線がすべて公正だとは限らない。リバタリアンの目標の一つは、既存の国民国家を、私有財産の境界線と同じ意味で、境界線が公正と呼べるような国家に変えることだ。あらゆる集団があらゆる国家から離脱し、同意した他の国家に加盟することを認められるべきだ。
Nations by Consent | Mises Institute [LINK]
リバタリアン社会を望むなら、右派の価値観を受け入れる必要がある。右派は人間の相違という現実を受け入れるが、左派はそうではない。左派はすべての人を平等にしようとするので、人間の違いをなくすために政府が大規模に介入することを支持する。
Getting Libertarianism Right | Mises Institute [LINK]

お金の量が同じで、商品の数が増えれば、他の条件がすべて同じなら、物価は下がる。物価上昇と経済成長が一緒に起こる可能性があるという事実は、経済成長が物価上昇につながることを証明するものではない。どちらもマネーサプライの拡大によって起こる。
Economic Growth Does Not Cause Price Inflation | Mises Institute [LINK]

トランプ前大統領はビジネスで「大金を稼いだ」ため、金利のあり方についてFRBのメンバーよりも「優れた直感」があると考えている。だからといって、「正しい」金利を知る能力が高いということにはならない。「正しい」金利は、人々の市場での自由なやり取りによって決まる。
Donald Trump Does Not Know the ‘Correct’ Interest Rate - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

人々に晩婚化、小家族化、核家族化を促したのは資本主義ではない。この傾向はすべて、工業化が始まる何世紀も前から北西欧州に存在していた。特異な家族習慣が資本主義への道を開いたのであって、その逆ではない。西洋における現在の家族観は、中世の習慣の遺産かもしれない。
Don't Blame Capitalism for the Decline of the Extended Family | Mises Institute [LINK]

2024-08-21

リバタリアンの使命

もしリバタリアンが自由社会への前進を望むのならば、特定の政策を主張するだけでなく、国家を善玉と考えるパラダイムを覆すべきだ。国家主義の教義だけでなく、「一般常識」も批判しなければならない。常識や直観的な概念を批判することは、知的リバタリアンがとるべき道だ。
Reflections on the Libertarian Role in Society | Mises Institute [LINK]
プーチン、金正恩、習近平をペテン師、ギャング、殺人者と呼ぶのは正しい。しかしミレイ(アルゼンチン大統領)のように、トランプやゼレンスキーをほめ称え、ネタニヤフの味方をするのは、ただ呆れるばかりだ。それだけでミレイはリバタリアンとしては完全に失格である。
Javier Milei Versus the Antiwar Cause - LewRockwell [LINK]

戦争にかかる費用は莫大だ。インフレは政府がその費用を国民から隠そうとする手段である。戦争がもたらす富の破壊は、もし開始と同時に増税をするしか手段がなければ、すぐに明らかになる。お金の量を自由に膨張させることができる政府は、このような破壊を隠すことができる。
War and the Money Machine: Concealing the Costs of War beneath the Veil of Inflation | Mises Institute [LINK]

入植者による報復がいわれのないものだとはいえないが、1864年のサンドクリーク虐殺や、2023年のガザでのアパート破壊を正当化するのは難しい。イスラエルによる民間人居住区の爆撃や都市住民の追放は、19世紀に入植者村が攻撃された際の米国の反応と全然異なるものではない。
American History Is a Preview of the Israel-Palestine End Game | Mises Institute [LINK]

脱成長論者は、地球がずっと居住可能だと信じ、人類の文明を終わらせかねない自然の脅威を無視している。小惑星の衝突、超新星爆発、ガンマ線バーストなど、地球は見えない危険に直面している。マスク氏が構想する宇宙移民に向けて、テクノロジーと富を進歩させる必要がある。
Degrowth Means Certain Death for Humanity - Human Progress [LINK]

2024-08-20

戦争と中央銀行

戦争には資金が必要であり、そのため政府は銀行に助けを求める。中央銀行による貨幣増発は戦争屋を活気づける燃料だ。インフレ、つまり偽金づくりは、中央銀行の特権である。米議会がウクライナやイスラエルに何十億ドルもの不換紙幣を送ると決議しても、合法とされる。
What has the Fed Done to Our Lives? | Mises Institute [LINK]
評論家やエセ経済学者は、政府はほとんど何の制限も害もなく、お金を使ったり、借りたり、作ったりできると信じ込ませようとしている。国債の利子が予算の多くを食い尽くし、他の予算がほとんどなくなったら、どうなるだろう。残念ながら、政府が店じまいすることはあるまい。
TGIF: Gaslighting | The Libertarian Institute [LINK]

米国で1973年初めまで、生産者は1年半の価格統制を受けた。価格の凍結は多くの生産者にとって、製品を市場に出すことがもはや採算に合わないことを意味した。商品とサービスの供給は減り、価格は上昇した。消費者物価は1972年に3.8%、1973年に8.8%、1974年には12.2%上昇した。
Kamala Wants Price Controls, and It's Not Because She Has "Good Intentions" | Mises Institute [LINK]

エンジニアリングは社会にとって重要なツールだが、その限界を認識する必要がある。社会の成功は、最適化の専門家だけでは達成できない。人間の繁栄には起業家もまた欠かせない。起業家はこう問いかける。そもそもこの最適化プロセスは必要なのだろうか、と。
Elon Musk on the Difference between an Engineer and an Entrepreneur - FEE [LINK]

ウォルズ副大統領候補は最悪の「進歩主義者」であり、完全な共産主義者に近い。悪名高いジョージ・フロイド暴動の際、BLM(黒人の命は大切だ〈しかし白人の命は大切でない〉)の略奪や放火を許し、白人の生命と財産を守るために州警察と州兵を派遣することを拒否した。
The Dangerous Tim Walz | Mises Institute [LINK]

2024-08-19

FRBは金を持たない

米FRBは金を所有していない。1934年の金準備法により、FRBはすべての金の所有権を財務省に移すよう義務づけられた。それと引き換えに、財務長官はFRBに対し、財務省が保有する金に対してその時点で適用される法定価格で、移管された金の量に応じた金証券を発行した。
The Federal Reserve Does Not Own Gold | ZeroHedge [LINK]
金で測ると、イーロン・マスク氏のドルはロックフェラーのドルよりもはるかに価値が低い。約90年にわたるドル切り下げの結果、金は今年1オンス約2500ドルの記録的水準に達した。それでもマスク氏の2350億ドルの富は9400万オンスの金にあたり、ロックフェラーの2倍強ではある。
John D. Rockefeller, Elon Musk, Millionaires, and the Price of Gold - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

自由な市場価格が乱れると経済に影響が生じる。最高価格が定められた商品の不足だ。以前は政府と消費者は値段の高さを心配したが、今では入手できるかどうかも心配しなければならない。今の価格で購入する意思のある消費者でさえ、もはや市場でそれを見つけることはできない。
Nigerians Should Understand Their Long-Run Interests | Mises Institute [LINK]

古代ローマ帝国は、銀貨の銀含有率をわずか0.02%にまで切り下げた。その結果、物価は高騰し、帝国全体の経済を脅かした。ディオクレティアヌス帝は、900種類の商品と130種類の労働力・運賃の価格統制を導入し、違反者には死刑を科すことで、物価高を食い止めようとした。
Price-Control Failures, Then and Now | Mises Institute [LINK]

19世紀前半、ほぼすべての米国人は、連邦政府が一方的に奴隷制を廃止する法的権限を有しているとは考えていなかった。唯一の平和的な代替案、つまり唯一受け入れられる代替案は、連邦からの分離独立だった。
Leggett: Disunion Is Better than Slavery | Mises Institute [LINK]

2024-08-18

政商から財閥へ

ロシア報道に登場する「オリガルヒ」は、「新興財閥」と訳されることが多いが、ときに「政商」という訳語を目にする。こちらのほうが本質を言い当てている。政商とは「政治家や高級官僚といった政治権力者と関係を持って、利権や情報を得ている商人」をいうからだ。

企業家に学ぶ日本経営史 -- テーマとケースでとらえよう (有斐閣ブックス)

日本では、政商は明治初期に登場し、特権的立場を利用して膨大な富を蓄積した。その半面、権力者との癒着には大きなリスクもつきまとった。その一つは、権力者が政商に特権を与えた見返りに、何らかの利益を求めてくることだ。後で述べるように、三井銀行ではそうした要求を断れず、権力者に融通した資金が不良債権となり破綻の危機に瀕した。

そこで、ある時点で一部の政商は、政府との関係を意図的に弱めていく。政商のままでは、権力者の意向を配慮するあまりに、自由な事業活動が束縛されてしまうからだ。権力者との関係を弱めることに成功した政商は、それまでに蓄積した資本を元手に、多角的な事業活動を展開し、「財閥」へと発展していく。財閥とは「富豪の家族・同族の閉鎖的所有、支配下に成り立つ多角的事業経営体」を指す。

財閥が多角的な事業を展開するにあたって、事業を管理するトップマネジメントが必要となった。旧来の番頭経営では近代的なビジネスに対応することはできない。そこで、専門知識と企業家精神を持った人材を外部に求め、管理者として登用していく。そうした人材の多くは「学卒者」と呼ばれる高等教育機関の出身者だった。代表的な人物の一人が、三井銀行の雇われ経営者として同行の再建に成功し、三井の近代化の担い手となった中上川(なかみがわ)彦次郎である。

三井銀行は官金取り扱いを目的に設立された私立銀行だ。しかし1882(明治15)年に日本銀行が設立されたことによって、一般の商業銀行への転換が急務となった。

当時、三井銀行は多額の不良債権を抱え、経営危機に陥っていた。不良債権の多くは、官金取り扱いの見返りとして、不利な条件で政府関係者に貸し出したものだった。政商活動は三井にとって官金取り扱いといううまみがある半面、見返りの融資によって不良債権が増えていくというジレンマがあった。官金を取り扱っている限り、政府関係者に強く返済を促すことができなかったのである。

1891年、三井銀行の京都分店で取り付け騒ぎが発生し、同行は倒産の危機に直面した。そこで明治政府は、明治の元勲で、三井家顧問の井上馨に三井銀行の救済を依頼する。井上は、三井家内部に適当な人材が見当たらないことから、中上川彦次郎を三井家に推薦した。

中上川彦次郎は1854(安政元)年、中津藩(大分県中津市)に生まれた。母親は福沢諭吉の姉だった。1869(明治2)年、上京した中上川は叔父の福沢が設立した慶応義塾に学び、21歳で英国に留学する。帰国後、ロンドンで知り合った井上馨の招きで工部省に入るが、「明治14年の政変」による井上の失脚とともに明治政府を後にする。その後、福沢と設立した新聞社「時事新報社」の社主を経て、山陽鉄道の経営に携わっていた。

三井入りをするにあたって、叔父であり恩師でもある福沢諭吉に相談したところ、福沢は「三井の信用をもってすれば天下の金を左右することができるのだから面白い仕事だと思う」と勧めた。三井入りを決断した中上川は三井銀行の実質的経営者である副長となり、三井の改革を進めていく。

中上川はまず、不良債権の原因となっていた官金取扱業務から撤退する。業務を政府に返上し、全国に23あった取扱店を廃止した。

次に、徹底した債権回収に着手する。不良債権の筆頭は、京都の東本願寺に対する100万円の貸付金だった。中上川は東本願寺の別邸である枳殻邸(きこくてい)を抵当に取り、1年以内の返済を求めた。本願寺は中上川を仏敵として非難しつつ、全国の信者から浄財を集め、借入金を返済した。

政府高官の情実や口利きによる融資、高官個人への貸付なども断固とした態度で回収していった。三井入りを推薦した井上馨の反対を無視して、井上の友人・知人に対して返済を迫ることもあった。これが井上の不興を買い、のちの失脚の原因となる。「中上川は自分の信念に反することは、恩人の井上からの忠告であっても聞くことはなかった」と経営学者の山崎泰央氏は指摘する(『企業家に学ぶ日本経営史』)。

中上川は官金取扱業務からの速やかな撤退と不良債権の徹底回収によって、わずか2年で三井銀行の再建に成功する。この過程で三井と政府の関係を弱め、政商路線からの脱却を成し遂げた。

さらに中上川は、三井銀行の不良債権処理で回収した資金などを利用して、工業分野への展開を進める。それまでの三井家事業は呉服に始まって、銀行、商社など商業的な色彩が強いものだった。

鐘淵紡績(鐘紡)、芝浦製作所(東芝の前身)、新町紡績所、富岡製糸場などを経営したほか、王子製紙、北海道炭礦鉄道を三井傘下に収めた。同時にこの時期には三井物産が三池炭鉱の払い下げを受けた。455万5000という巨額の払い下げ代価であったが、同炭鉱とともに三井に入ったマサチューセッツ工科大学(MIT)出身の技術者・団琢磨の努力により、三池は発展し、三井のドル箱となった。

中上川の急進的な改革は、長くは続かなかった。日清戦争後の不況によって工業部門が不振になると、改革に不満を持つ反中上川派の台頭や井上馨の反発、三井同族からの警戒などによって、三井内部で孤立していった。さらに彼自身、健康を害したこともあり、療養のため第一線から身を引くことになった。1901(明治34)年10月、48歳という若さで失意のうちに世を去る。三井改革は、彼の死とともに、およそ10年で終わった。

失脚したとはいえ、中上川の改革は三井家だけにとどまらず、日本経営史に大きな足跡を残した。その成果は、①三井家が財閥に発展する基盤をつくったこと、②財閥の事業発展の方向を示したこと、③専門経営者(雇われ経営者)進出の端緒をつくったことだ。「中上川は三井を政商から近代的財閥へと再出発させたエース投手であった」と経済学者の宮本又郎氏は評価する。

<参考文献>
  • 宇多川勝・生島淳編『企業家に学ぶ日本経営史』有斐閣、2011年
  • 宮本又郎『企業家たちの挑戦』(シリーズ日本の近代)中公文庫、2013年

2024-08-17

貧困からは抜け出せる

米国で貧困から抜け出す最も一般的な方法は、生涯をかけて株式で財産を築き、それを子供たちに残すことである。移民たちの物語が示すように、人々が貧困から永久に抜け出すことは可能なのだ。「よほど幸運でない限り、勝ち組になることは不可能だ」という主張は間違っている。
Is Poverty Inescapable? An Immigrant's Perspective [LINK]
お金を節約するには、物をたくさん持たないこと。物を持つには購入時のお金のほか、維持するお金や時間、心のコストがかかる。購入時のコストしか考えず、いらない物専用の部屋や収納スペースを作る人が多い。所有の生涯コストを考えると、物の入手をためらうようになる。
7 Simple Ways to Save Money—and Tens of Thousands of Dollars [LINK]

独禁法訴訟でイノベーションをもたらすことはできない。企業は財産権と法の支配という憲法上のルールの下で活動しており、官僚主義的な市場介入体制の下では苦しむことになる。独禁法戦略は、企業のインセンティブを歪めることで成長の見込みを著しく減退させる。
Innovation through Antitrust Litigation? The Myth of Linear Progress | Mises Institute [LINK]

インフレは米国民の暮らしを荒廃させた。しかしそれは米政府の経済介入がもたらした経済的な苦痛の一部にすぎない。FRBを通じた人為的な低金利によって、企業は持続不可能な生産ラインを立ち上げることになり、不況、あるいは市場の調整は避けられなくなった。
The Harris Campaign Will Base Its Platform on Biden’s Fake Economic Accomplishments | Mises Institute [LINK]

イラン国民のためだけでなく、米国民のためにも、現時点で米政府ができる最善のことは、イランを放っておくことだ。制裁を解除し、脅しをやめ、陸海軍をすべて米国に帰還させるのだ。しかし残念なことに、カマラ・ハリスもドナルド・トランプもそれを望んでいない。
US Hypocrisy on Supposed Iranian Meddling in the US Election - The Ron Paul Institute for Peace & Prosperity [LINK]

2024-08-16

社会主義はお好き

社会主義を語ることと実際に生きることは全然違う。人に利用されるのが嫌な人、何かを強制されるのが嫌な人、限られた選択肢や独占が嫌な人、騙されたり操られたりするのが嫌な人、傲慢で悲観的な人とつるむのが嫌な人は、どんな形であれ、社会主義を好きになるべきではない。
You May Think You Like Socialism, But You’re Probably Not a Socialist at Heart [LINK]
現代の人道的介入がしばしば現地住民の流血と貧困に終わったという事実は、民族自決の否定が何をもたらすかを思い起こさせる。西洋の帝国主義がすべて地元民に啓蒙をもたらす「価値あるもの」であったとは到底思えない。むしろ西洋への反感を生み出す役割を果たしてきた。
Self-Determination, Imperialism, and Secession | Mises Institute [LINK]

人間は人種差別を含め、コストを度外視して何かをすることはない。人種差別は差別される側にコストを課すが、差別する側にもコストがかかる。 人は本能としてコストを削減しようとするから、経済学によって、差別者がコストを減らすために用いる方法を分析することができる。
Walter Williams and the Race Hustlers | Mises Institute [LINK]

政府が国内の特別利益団体のご機嫌を取ろうと自由経済を介入経済に変えると、保護主義の前提条件が整う。政府が保護する雇用や産業は、安価な代替品の輸入に脅かされる。保護主義の高まりは、外交政策や国際紛争をもたらす。これは戦争や軍事衝突へとエスカレートする。
The Goose that laid the Golden Egg | Mises Institute [LINK]

中央銀行がお金の量を増やして政府支出をまかなうとインフレが起こる。同じ量の商品をより多くのお金が追い求めることになる。これによって、なぜほとんどの商品の価格がいつも上昇しているのか、誰がそれを引き起こしているのか、それが何を意味するのかを説明できる。
Musk-Trump Interview: What Really Caused the Inflation of the Biden Presidency? | Mises Institute [LINK]