2001年9月11日の米同時テロから16年。同じ年月、「テロとの戦い」も続いたことになります。しかし世界でテロはなくならないどころか、むしろ広がっています。何がいけなかったのでしょうか。
同時テロ直後に発行された、英経済誌エコノミストのカバーが鮮烈でした。ニューヨークの空にもうもうと立ち上る巨大な白煙を背景に掲げた文字は、「世界が変わった日(The day the world changed)」。ジャーナリズムの歴史に残るレイアウトでしょう。
ところが肝心の記事のほうは、今読み返してみると、的外れなものだったといわざるをえません。
「米国が盾の背後に逃げ込むことを選ぶ恐れはないか。ミサイルを防ぐ盾ではなく、世界を締め出す盾の後ろに。(略)答えはノーだと信じるし、そう熱望する。米国のおかげで世界は過去数十年、それまで想像だにしなかった自由とチャンスを享受したのだから」
エコノミスト誌が恐れたのは米国の孤立主義です。孤立主義とは、他国と同盟を結ばず、孤立を保つ外交方針を指します。世界が「自由とチャンス」を失わないために、米国は孤立主義に陥ることなく、果敢にテロとの戦いに打って出よというわけです。
どうなったかは知ってのとおりです。米国は孤立主義でおとなしくするどころか、対外介入の姿勢を強め、同盟国や友好国とともに世界各地で対テロ戦争に繰り出します。その結果、現地の反感や憎しみを買い、欧米人はテロの標的になりました。国内では監視社会化が進み、自由が失われました。世界はたしかに変わりましたが、エコノミスト誌の見通しとは正反対です。
後知恵でこれ以上批判するのはやめます。問題はこれからです。介入主義が間違っていたとすれば、捨て去られた孤立主義を見直すのが最初の一歩でしょう。
エコノミスト誌は孤立主義の典型として「世界のいかなる国とも恒久的な同盟を結ばない」とする米初代大統領ジョージ・ワシントンの言葉を挙げました。同盟は戦争を防ぐのでなく、むしろ多数の国を無用の戦争に巻き込むことが明らかになった今、ワシントンの先見の明は輝きを増して見えます。(2017/09/11)
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