2018-09-23

何のための戦争か

トランプ米大統領は、国連総会にあわせてアフガニスタンのガニ大統領と会談し、米軍兵士の増派などで「テロとの戦い」に全力を挙げる考えを強調しました。しかしテロの撲滅にはつながりそうにありません。政治にとってテロとの戦いは権力闘争や利権確保の名目にすぎず、むしろ新たなテロリストを育てる温床になるからです。

シリアの例をみましょう。米国が主導する有志連合は2014年8月から9月にかけて、テロ組織イスラム国(IS)を殲滅するとして、イラク、シリア領内で空爆を開始しました。しかし青山弘之『シリア情勢』(岩波新書)によれば、欧米諸国は最初からイスラム国に対し厳しい姿勢で臨んだわけではありません。イスラム国は前年からアサド政権に対抗し活発に活動していましたが、同政権を退陣に追い込みたい欧米諸国はこれを黙認しました。

欧米諸国がイスラム国への対処に本腰を入れたのは、イスラム国がシリアから石油供給地のイラクへと勢力を拡大し、2014年6月に北部の都市モスルを制圧して以降でした。米国はイスラム過激派以外の武装集団を「穏健な反体制派」と呼び、イスラム国と戦うよう積極支援します。

ところがこの「穏健な反体制派」は、戦う相手であるはずのイスラム過激派と共闘関係にありました。米国の政策はテロとの戦いのためにテロ組織を支援するという「マッチポンプ」だったと青山氏は批判します。

もしイスラム国が滅びても、テロの脅威は消えません。欧米が支援した「穏健な反体制派」から新たな脅威が生まれる恐れがあるからです。かつて米中央情報局(CIA)がソ連に対抗するためアフガニスタンで育てたムジャヒディン(イスラム聖戦士)が、テロ組織アルカイダになったようにです。

16年間続き、米史上最長の戦争といわれるアフガニスタン紛争。テロとの戦いがテロをなくさないのなら、一体何のための戦争かと問わずにいられません。NHKでは、米軍の増派によって治安が改善に向かうかは不透明な情勢と伝えています。(2017/09/23

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