衆院解散を前に、財政問題の議論が活発になってきました。巨額の借金を抱えた日本の財政は深刻な状況で、再建が重要な課題とされるのは理解できます。しかしその場合重要なのは、やり方です。
借金を返す方法は①収入を増やす②支出を減らす——の2つしかありません。国の場合、①の収入は税しかありません。
普通の税のほか、国債も将来税によって返済しなければなりませんし、通貨の増発で得られる通貨発行益は別名「インフレ税」と呼ばれるとおり、財布の中のお金の価値を知らないうちに引き下げる「見えない税」です。
問題は、どのような形であれ、税は経済の活力を奪うことです。とくに重要なのは企業活動への影響です。
普通の税で現在、本命とされるのは消費税の増税です。消費者の財布の紐が固くなれば、企業の売り上げは減り、研究開発や設備投資に回せるお金が減り、将来の成長への土台が崩れます。
いわゆるリフレ派の人々は、消費増税に反対し、代わりに通貨の増発、つまり一段の金融緩和で景気を刺激して税収アップを図ればいいと主張します。増税に反対して「見えない税」を推奨するのもおかしな話ですが、経済的にも問題です。
金融緩和をすれば、1980年代のバブル経済がそうであったように、景気は一時良くなります。しかし人材や資源が建設・不動産や金融業など一部の業種に偏り、経営資源が無駄遣いされます。一見華やかでも、健全な経済を蝕みます。しかも結局は反動が避けられず、深刻な不況に見舞われます。
要するに、政府が財政再建のために税収(「見えない税」を含む)を増やそうとすれば、どうやっても経済に良い影響はありません。収入増による財政再建は「悪い財政再建」です。それならやらないほうがましです。
「良い財政再建」は②の支出削減によるものです。弱者を幸せにしない不効率な官営福祉をやめるのは、その第一歩でしょう。(2017/09/27)
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