債務の総額が資産の総額を超えている状態を債務超過といいます。言い換えれば、財産をすべて売り払っても借金を返しきれない状態です。企業の場合、債務超過がきわめて深刻な状態であることは想像がつくでしょう。
東芝は米原発事業の巨額損失で2017年3月期末に5816億円の債務超過に陥り、2018年3月期でそれを解消できなければ上場廃止にすると、日本取引所グループ(JPX)から言い渡されています。破綻リスクの大きい会社の株式を、投資家に買わせるわけにはいかないからです。
非上場会社でも同じです。銀行は通常、債務超過に陥った企業には新規の融資をしません。経営が破綻すれば、融資を回収できない恐れが大きいからです。
ところが世の中には、債務超過を何年も続けていながら、堂々と借金を増やしている組織があります。日本政府です。
財務省が公表している政府の貸借対照表(バランスシート)をみると、2015年度末で債務1423兆円に対し、資産は958兆円しかありません。差し引き465兆円の債務超過です。
実際には、明治大学の田中秀明教授が指摘するように、政府の資産には米国債、地方公共団体や政府出資会社への貸付金、空港、防衛施設、国会、刑務所、裁判所、庁舎・宿舎といった公用の土地など外交上・行政上の理由から売却が困難なものもあります。それらがすべて額面どおりに売れたとしても、465兆円の借金が残るのです。
論者によっては、上記のバランスシートには日銀が含まれないので、日銀を含む「統合政府」ベースでみるべきだという意見もあります。そうすれば政府の負債である国債と、日銀が資産として保有する国債を相殺でき、その分負債が減るというのです。
これは乱暴な議論です。単純化していうと、日銀が保有する国債(349兆円)は民間銀行からの借金(民間銀行が日銀に預けた預金)で買ったものです。政府との間で国債を相殺すれば、日銀は民間銀行に借金を返せなくなります。民間銀行のお金は私たち国民の貯蓄ですから、それが返らないということは、政府に貯蓄を没収されるのと同じです。
かりに国民をそんなひどい目にあわせたとしても、統合政府ベースの負債は349兆円減るだけで、依然として116兆円の債務超過であることに変わりはありません。
収入を得るには消費者に製品を買ってもらうしかない東芝と違い、政府は課税で国民のお金を無理やり召し上げることができます。せっぱ詰まれば貯蓄の没収だってやらないとはいえません。だから債務超過でも危機感がないのです。
すごいぞ、日本政府。でも、それは日本国民にとって喜ばしいことでしょうか。(2017/09/29)
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