「タダより高いものはない」。庶民の堅実に生きる知恵を示す言葉です。なぜ政府は、庶民にその知恵を忘れさせるような罪深い政策を売り込むのでしょうか。
教育無償化に政府は熱心です。しかしこの世に無償のものなどありません。必ず誰かがコストを払う必要があります。日経電子版の記事によれば、3~5歳児を完全に無償化するには年7300億円、0~2歳児だと4400億円かかるそうです。
コストがかかるのに「無償」とは、言葉の矛盾です。表面上は費用を払わずに済んでも、その費用は税金から払われるのですから、国民の大部分はなにがしかの費用を負担することになります。そこには子供のない人も含まれます。
表面上にすぎなくても、政府が押しつける「無償」は厄介な問題を引き起こします。これも日経電子版の記事が指摘するように、幼稚園や保育施設が無料で入れるとなれば、想定より入所希望者が増える可能性があります。そうなると、さらに費用が膨らんだり、保育施設に入れない待機児童が増えたりする恐れも出てきます。
タダだと思って喜んだら、膨らんだ費用を賄うために増税されたり、保育施設に子供が入れなくなったりというコストが降りかかってくるわけです。これこそ「タダより高いものはない」です。
国民を「タダ」で釣る政策は今に始まった話ではありません。米山隆一新潟県知事がブログで指摘するとおり、1973〜83年には70歳以上の医療費が無料にされました。その結果、高齢者医療費の急増が財政を圧迫し、10年で幕を閉じたのです。
経済的弱者を助ける正しい道は、政府への依存心を強めることではありません。経済の自由度を広げ、生産活動を活発にして物価を引き下げる。最低賃金などの制限を取り払い、働くチャンスを増やす。税制を見直し、寄付や贈与をしやすくする——。これです。
残念ながら、衆院選でこんな政策を掲げる政党はないようです。(2017/09/28)
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