トランプ米大統領は個人所得税の最高税率や連邦法人税率の引き下げを盛り込んだ税制改革案を正式に発表しました。これに対し野党・民主党は「富裕層優遇だ」と批判しています。金持ち優遇であることは事実です。けれども、それは悪いことではありません。
お金持ちの多くは大小の企業のオーナーです。事業で得た利益が減税によって多く手元に残るようになれば、事業意欲が高まり、製品・サービスの供給増につながります。これは社会全体を豊かにします。
繁栄を誇った1920年代米国で実行された大型減税が参考になります。推進したのは当時のアンドリュー・メロン財務長官です。財閥出身で米国有数の大富豪。その点、不動産王のトランプ大統領と似ています。
1921年に所得税の税率区分上限は73%という高率でしたが、メロン長官は25年までに25%にまで引き下げました。24年に次のように語っています。
「課税の歴史をみると、仮に税率が高すぎると税収は減少していることが分かる。納税者は、税率が高いと、必ず資金を生産的な事業から引き上げようとする」(マーフィー著、シェフナー他訳『学校で教えない大恐慌・ニューディール』)
メロン長官の考えは正しいものでした。富裕層に対する大幅な減税で税収が減るどころか、逆に所得税収入は10年間にわたり増加しました。いわゆる自然増収です。
大富豪のメロン長官自身、減税の恩恵にあずかったことでしょう。しかしそれ以上に、減税は経済に活力をもたらし、中間・貧困層を含む国民全体を潤したのです。
今回のトランプ減税が米国ひいては世界の経済に活力をもたらし、人々の暮らしを楽にする見込みは十分あります。
カギは政府支出の削減です。支出を減らさないまま減税を実施すれば、国債頼みとなり、結局将来の増税につながりかねません。
メロン長官は税収が増えても財布のひもを安易にゆるめず、第一次世界大戦中に膨らんだ軍事費をはじめ、削減に努めました。
トランプ大統領も海外で不必要な軍事介入をやめ、軍事費を削ることが、減税策を成功させるうえで課題です。(2017/09/28)
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