今、世間で一番嫌われ、叩かれているものの一つといえば、ブラック企業です。ふだんは政府の経済介入や権力による自由の抑圧に批判的な人たちも、ブラック企業の話になると態度が一変し、政府に規制や摘発の強化を求め、政府がそれに応えると拍手喝采します。
しかし、そのようなやり方で、肝心の労働者は幸せになるでしょうか。ブラック企業についてメディアなどでしばしば問題視されるのは、長時間労働です。今の労働基準法がそうであるように、法定労働時間を一律に定め、それを超える労働を規制すれば、話は簡単です。
けれども労働とは、そのように単純なものではありません。人がどの程度の長時間労働を受け入れるかは、健康状態やライフスタイル、家計の状況、報酬の水準、仕事のやりがいなどにより千差万別です。それにもかかわらず、労働時間を一律に制限すれば、それ以上働きたい人たちの意志を無視し、幸福追求の権利を侵すことになります。
幸福とは主観的なものです。他人には「休みもろくに取らず、あんなに長く働いて、何が幸せなのだろう」と思えても、本人にとっては夢の実現に必要な努力かもしれないし、苦しい家計を支える貴重な仕事かもしれません。
労働のように個人によってさまざまに事情が異なる事柄に、法律による画一的な対処はなじみません。そんなときこそ、市場の出番です。
雇用に伴う数多くの規制や公的負担をなくし、企業がもっと自由に人を雇えるようにしましょう。そうすれば、やりたくない長時間労働を無理強いするブラック企業をさっさと去り、もっとまともな企業に移ることができます(ただし、その企業が従業員として望んでくれればですが)。起業の規制をなくすことも同様の効果があります。
SNSがこれだけ発達した時代に、わざわざ税金を使って厚生労働省にブラック企業の実名を公表してもらう必要はありません。日々社内で働く労働者の情報のほうがずっとスピーディーで有益です。
その結果、誰もが逃げ出すブラック企業はつぶれるでしょう。これが自由主義経済にふさわしい、ブラック企業の正しいなくし方です。(2017/09/06)
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