個人や団体が借金で破綻しないことは一般には望ましいものの、いつもそうとは限りません。とくに国の財政の場合、破綻しないのはかえって良くないとさえいえます。破綻を避けるために増税すれば、借金に責任のない国民まで苦しめるからです。
財務省ホームページの「日本の財政を考える」は日本の財政を家計にたとえて解説しています。このたとえ話には批判があります。9月2日付日本経済新聞の「大機小機」は「国と家計は異なる。家計は徴税できないが国はできる。通貨発行権という形の徴税権もある」と批判しています。これは正しい事実の指摘です。
けれども問題は、その事実が国民にとって喜ばしいかどうかです。
あえて家計にたとえてみましょう。ある町内に鈴木さんという借金漬けの夫婦がいます。夫の鈴木さんは町内の各家庭から強制的に町内会費を取り立てることができます。妻の鈴木さんは地域通貨を無制限に刷ることができます。だから鈴木家は借金を返せなくなることはありません(上念司『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』<講談社+α新書>を参考にしました)。
さて、鈴木家と同じ町内に住む人々は幸せでしょうか。借金返済のために町内会費を取られ、通貨の価値がどんどん下がってしまう。こんな形で鈴木家の破綻が避けられても、迷惑でしかありません。むしろさっさと破綻し、夜逃げでもしてくれたほうがましでしょう。
財政破綻で公営医療が崩壊した北海道夕張市では、意外にも高齢者が元気になり、寿命も延びたといいます。政府は潔く財政破綻し、責任者を処分し、夕張市を見習って規模を大幅に縮小し、税収の範囲内で仕事をしてもらう(残念ながら夜逃げはしてくれないので)。痛みは大きくても、国民の幸せにはそれが一番ではないでしょうか。(2017/09/07)
0 件のコメント:
コメントを投稿