東京都からコロナ対応として出された時短営業の命令が「営業の自由を保障した憲法に違反する」などとして、飲食チェーンのグローバルダイニングが都を提訴した。勇気ある行動に拍手を送りたい。
ところが、提訴自体はメディアでも大きく取り上げられたものの、憲法違反が問われたことに対するメディアやネットの注目度は今ひとつだ。それは先日、「同性婚できないのは憲法違反」とした札幌地裁判決に対する異様な盛り上がりと比べれば、一目瞭然だろう。同性婚に対する初の違憲判決が画期的だとしても、温度差が大きすぎる。
その理由は結局のところ、営業の自由をはじめとする経済的自由が、憲法論議においていつも置き去りにされている、「二流の自由」だからだろう。護憲勢力が熱心に擁護するのは、9条で定める平和主義のほか、25条の生存権、21条の表現の自由、24条の婚姻の自由あたりだ。
これに対し22条で定める職業選択の自由や、29条の財産権は、それらから導かれる営業の自由とともに、冷たく無視されている。毎年、5月3日の憲法記念日に市民団体が開く集会で、「平和を守れ!」とは叫ばれるのに、「財産権を守れ!」というプラカードや横断幕など見たことがない。
これはもちろん、護憲勢力の中心が左翼だからだ。左翼から見れば、経済的自由は資本家に都合の良い自由にすぎず、本音では守るどころか潰したいと思っている。じつは右翼も、その点ではたいして変わらない。
グローバルダイニングの提訴が、経済的自由の重要性を再認識するきっかけになることを祈りたい。ただでさえないがしろにされてきた経済的自由がこれ以上侵されれば、それ以外の自由もやがて音を立てて崩れ去るだろう。
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