2018-10-24

右翼と左翼は変わらない

インターネットの世界では日々、ネット右翼とネット左翼がののしり合っています。国政選挙ともなると大変です。なんだかばかばかしくなってきます。だって、右翼と左翼が正反対に見えるのは表面だけの話で、本質は同じなのですから。

右翼と左翼に共通する本質を一言でいえば、国家主義です。どちらも社会のさまざまな問題は国家権力によって解決できるし、解決しなければならないと信じています。

右翼と左翼の同質性を象徴する人物がいます。安倍晋三首相の祖父、岸信介元首相です。岸氏はタカ派の保守派政治家として知られます。けれども姜尚中・玄武岩『大日本・満州帝国の遺産』が述べるように、政治思想は社会主義の強い影響を受けていました。

戦前、企画院を根城として軍部幕僚層と結びつき、国家改造をめざす「革新官僚」と呼ばれる官僚グループがいました。商工省出身の岸氏はその有力メンバーです。彼らに共通するのは、若い頃、当時インテリの間で流行していたマルクス・レーニン主義的な社会科学の影響を受けたことです。

一方で岸氏は東京帝国大学の学生時代、日本の国家社会主義者である北一輝に心酔していました。北の著書『国家改造案原理大綱』を夜を徹して筆写したといいます。

官僚として出世し満州国に渡った岸氏は、ロシア革命で誕生したソ連の統制経済をモデルに、国家建設の実験に取り組みます。けれども企業の利潤追求を制限したため、開発は思うように進みませんでした。

敗戦でA級戦犯となった岸氏はやがて政界に復帰し、戦後も国家社会主義的な政策の実現に努めます。第二次岸内閣のときに最低賃金法や国民年金法が成立し、社会保障制度の充実が図られたのはその表れです。

現在、社会保障が弱者に満足のゆくサービスを提供できず、財政を危機状況に追い込んでいることを考えると、岸氏の国家社会主義的な経済政策は厳しく評価されなければならないでしょう。右翼と左翼のもう一つの共通点は、経済の道理に無知なことです。(2017/10/24

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