ステファニー・ケルトン氏は米国の経済学者で、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校教授。昨年の米大統領選で民主党左派のバーニー・サンダース上院議員が党候補指名を争った際、経済政策顧問を務めました。
そのケルトン教授が最近、2つの有力紙上で立て続けに、財政問題に関する楽観的な持論を披露しました。ジャーナリストのロバート・ウェンゼル氏がブログで紹介しています。
ケルトン教授はまず9月28日のロサンゼルス・タイムズで、議会にはドルを合法的に作り出す特権があると指摘。「政府は何もないところから魔法のようにお金を取り出すことができるのかって? そのとおり」と強調しました。
次に10月5日のニューヨーク・タイムズでは、財政赤字が拡大しても国の資金調達に支障はないと主張しました。なぜなら「政府の赤字はつねに、他部門の黒字と同額だから」。
これらの主張は問題だらけです。ドルを大量に刷って大幅なインフレになったらどうするのでしょう。同教授は「政府がインフレを制御する方法はたくさんある。たとえば課税によってお金を取り去ればいい」といいますが、インフレで生活が苦しくなったうえに増税までされたら、国民は踏んだり蹴ったりです。
政府の赤字を民間の黒字が埋め合わせ、金額上は釣り合っても、そこには大きな不公平があります。政府は課税(通貨発行に伴うインフレ税を含む)によって民間から力ずくでお金を奪うからです。
政府の通貨発行の特権を強調し、財政赤字を問題視しない点で、ケルトン教授の意見は日本のアベノミクスそっくりです。そしてアベノミクスの信奉者と同様、政府の行為は権力の行使であり、たとえ合法でも個人から自由を奪い、不幸にするという認識が完全に欠落しています。
社会主義寄りのサンダース上院議員と保守を標榜する安倍晋三首相とでは、政治的立場は正反対です。それにもかかわらず、財政政策に関する限り、考え方はほとんど変わりません。どちらのブレーンたちも、政治の力で「魔法のように」無から有を生み出せると浅はかにも信じているからです。(2017/10/07)
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