景気が良いことと、経済が健全であることは、必ずしも一致しません。マネーの注入によって人為的に演出された好景気は、経済の健全な発展をむしろ妨げます。逆に、人為的な好景気が限界を迎えた後に訪れる不景気は、経済が健康を取り戻す過程です。
だから不景気を和らげるために市場にマネーを注入するのは、せっかくアルコールを断とうとしているアル中患者に酒を飲ませるようなもので、経済の正常化を遅らせます。
経済学者ハイエクは「強制的な信用拡大によって不況に対処することは、その災害をもたらしたまさに同じ手段によってそれを治療しようとすることである」と批判しました。信用拡大とは金融緩和のことです。そのうえで「そのような方法は、信用拡大が終わるやいなや、もっと深刻な恐慌を導くにすぎない」と指摘しています(古賀勝次郎他訳『貨幣理論と景気循環/価格と生産』)。
しかし今、ハイエクの言葉に耳を貸す政府はありません。経済を元気に見せたい政治家にとって、マネーは強壮剤のように便利です。中央銀行にしても、かつては「パーティーが盛り上がっているときにパンチボウルを片づけるのが仕事」といわれ、バブルの歯止め役を期待されましたが、最近ではパーティーが盛り下がる気配を見せると景気づけに新しいシャンパンの栓を抜くのが仕事のようです。
いつになるかはわかりませんが、宴は終わります。しかし、悲しむ必要はありません。それは経済が健全さを取り戻す第一歩だからです。(2017/10/18)
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