トーマス・ディロレンゾ(ミーゼス研究所所長)
2024年11月9日
経済学者ミーゼスは、1880年代に設立された米経済学会に一度も参加しなかった。その理由については、同学会の設立文書にヒントがある。「政府は教育・倫理的な機関であり、その積極的な支援は人類の進歩に不可欠な条件である」と、その文書はうたっている。一方、「自由放任の教義」は「政治的には危険であり、道徳的には不健全である」と、同学会を設立した国家主義的な道学先生は述べている。
Most economists are political apologists masquerading as economists. They are Rothbard’s “court historians” with degrees in economics instead of history. | Thomas J. DiLorenzohttps://t.co/ajsSCK0Mnc
— Mises Institute (@mises) November 11, 2024
典型的な経済学入門の教科書は、ほとんどのページを「市場の失敗」に関する果てしない話(フリーライダー問題、外部性、独占と寡占、独占的競争、非対称情報など)に割いており、資本主義の礎である起業家精神についてはほとんど触れていない。
米国で産業革命が進んだ1880年代に「独占化の横行」を理由に独禁法が必要になったというのは大嘘だ。私は「法と経済学の国際論集」誌の記事で、当時独占行為で告発された業界が、米国で最も競争力があり、ダイナミックで、値下げを行い、革新的で、生産拡大を続ける業界だったことを示した。独禁法の目的は競争を妨げることであり、競争の「保護」ではなかった。
経済学の学生に教えられてきた最も馬鹿げていることの一つは、フリーライダー問題のせいで、米国は「国防」に費やす費用が少なすぎるというものだった。「効率性」は課税の強制を必要とするらしい。国防費を拡大しているからという理由で、国防総省の汚職や不正を擁護する経済学者もいる。国防費の拡大はフリーライダー問題によって妨げられているはずだという。一体誰が、国防総省の支出を「効率的」だと決めるのだろうか。
ノーベル経済学賞は、その後の研究で偽物であることが証明された「市場の失敗」に関する数多くの理論に対して授与されてきた。ジャネット・イエレン(米財務長官、元米連邦準備理事会議長)の夫であるジョージ・アカロフは1970年、「情報の非対称性」によって中古車市場がまもなく消滅するという論文で、ノーベル賞を共同受賞した。自動車の買い手が不良品を買わされたかどうかを判断できるようにする30日間の保証制度については、まったく知らなかったようだ。
デビッド・カードは、最低賃金法が失業の原因ではないとする論文でノーベル賞を受賞したが、全米経済研究所がその研究を再調査した際には、論文には「重大な欠陥がある」とされた。このようなたぐいのエピソードは数多くある。
財政学では、課税の「抜け穴」は非効率的だと教えられている。なぜなら、それは「人為的な」市場の歪みを生み出すからだ。政府官僚が国民の税金をより多く使う方がはるかに効率的だと教えられている。そしてケインズ経済学の要である「節約のパラドックス」という俗説がある。これは、貯蓄が消費を減らし、それが国内総生産(GDP)を減らし、結果として貯蓄が減るという主張だ。この理論は何十年にもわたって、貯蓄の利子所得に対する没収的な課税を「正当化」してきた。
主流派経済学の精神的指導者といえば、おそらくポール・サムエルソンを挙げることができるだろう。その著書『経済学』は40年間にわたり教科書販売のトップを独走し、その間、他の教科書のほとんどはその模倣だった。この本やそのたぐいの本に浸透している国家主義的な偏見は、1988年版でサムエルソンが書いた内容に集約されている。2000年までにソ連のGDPが米国を上回るだろうという予測である。
(次を抄訳)
All States are Empires of Lies | Mises Institute [LINK]
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